○小沢和秋君 私は、日本共産党を代表して、
確定拠出年金法案について、厚生、労働両
大臣に
質問いたします。
この
法案で、まず第一に
厚生大臣に
お尋ねしたいのは、今なぜ
確定拠出年金制度を
導入する必要があるのかということであります。
これまでの我が国の
年金制度は、ほとんどが、
保険料や加入した期間で
年金額が決まる
確定給付年金でありました。ところが、
確定拠出年金になると、受け取る額は
積立金の
運用の結果次第で大きく変動いたします。最悪の場合には
年金をほとんど失うことにもなります。
この十年間、不況による失業、倒産などが続き、加えて
年金、
医療などの改悪が進められてきましたために、
国民の中には将来への不安が強まっており、
老後の不安を訴える人は八割にも達しております。そういうときに、
企業が
掛金を拠出しさえすれば、あとは
積立金の
管理と
運用の
責任をすべて
加入者に押しつけることができるような
制度を、今なぜ
導入する必要があるのか。これでは、
老後の不安をさらにひどくし、不況を長期化させるだけではありませんか。
質問の第二は、この
法案は、今多くの大
企業の重荷になっている
厚生年金基金を
確定拠出年金に切りかえることで解決しようとしているのではないかという問題であります。
バブル経済が崩壊して以来、ほとんどの大
企業は、
年金、退職金の支払い財源の
積み立て不足を放置しております。それが今や数十兆円に達しております。今まではそれを隠すことができましたが、二〇〇一年三月期の決算からは、新しい国際会計基準により、その
積立金の不足額をすべて明示しなければなりません。そうなると、
企業は、信用を失いかねないと慌てております。
バブルの時代には、国に納付すべき
厚生年金保険料の
管理、
運用の代行を引き受け、巨額のもうけを稼いでおきながら、不況になったら
積立金を不足のまま放置しているというのでは、余りにも無
責任であります。
お尋ねしますが、厚生省は、この
積立金不足を解決するため、どのように指導してきたのか。実際にはそういう指導をせず、九七年には予定利率の引き下げや
給付額カットを認め、ついに今回、これ以上
積立金不足がふえないように
厚生年金基金を解散し、拠出
年金への切りかえを認めるまでに至ったのではありませんか。
第三に、この
法案によって、金融機関は巨大なビジネスチャンスを得る反面、
加入者には
負担ばかり強いるのではないかということであります。
拠出された
掛金は、その後は
加入者が
自己の
責任で
運用の
指図を行います。しかし、我が国では多くの
国民は株や公社債を
運用した経験を持ちません。そのため、大変な損失をこうむる危険があります。
法案も、こういう危険を減らすため、
資産管理機関と
運営管理機関を設け、
加入者からの
指図を代行することにしております。これらの
管理や
運用は銀行などが引き受けることになりますから、金融機関にとっては巨大なビジネスチャンスです。
管理と
運用の両方で手数料を取ることができます。その上、株や債券の取引がふえたり値上がりすれば、そこでももうけることができます。結局、拠出型
年金で一番利益を得るのは金融機関ではありませんか。(
拍手)
第四に、この
法案が中小
企業や
自営業者に新たな
選択肢を
提供するのかということであります。
この拠出に対して国が
税制で優遇することになっていますが、この程度のことで魅力ある新たな
選択肢になるのでしょうか。今まで
中小零細企業で
企業年金が普及しなかったのは、決して
選択肢が不足していたからではなく、
中小零細企業が、この十年、不況のしわ寄せを最も深刻に受け、
厚生年金等の
保険料支払いにも苦しんでおり、
企業年金に加入する余裕など全くなかったからではありませんか。
特に重大なのは、労使の合意という手続さえ整えば、労働者一人一人の
意見を無視して、この
年金への加入などが押しつけられることであります。これでも新たな
選択肢が広がるなどと言えるのでしょうか。お答えください。
第五は、厚生、労働両
大臣への
質問であります。
この
法案では、
加入者が転職した場合、拠出された
掛金を転職先に引き継いでいくことができるとされております。
確かに、積み立てた残高は各人ごとに区別されておりますが、転職先がこの拠出
年金に加入していなければ引き継ぐことはできません。
加入者本人が自分で
掛金を払っていく以外にありません。低賃金に苦しむ中小
企業労働者にこのようなことを期待できるでしょうか。
何より問題なのは、今の深刻な雇用情勢の中で、次々に転職ができ、この
年金を持って移動するなどということが現実に可能か。結局絵にかいたもちに終わるのではありませんか。
お尋ねをいたします。
第六に、
政府は、これまでの相次ぐ
年金改悪で、
公的年金水準を大幅に切り下げてきました。その分を補うものとして、今回の拠出型
年金のような
私的年金制度を積極的に拡大していこうと考えているのではありませんか。
既に、昨年二月、首相の諮問機関である経済戦略
会議は、
年金の報酬比例部分の三十年後の完全民営化を打ち出しております。
大臣はこの経済戦略
会議の
意見についてどう考えるのか、
お尋ねいたします。
最後に、今急がなければならないのは、このような
確定拠出年金制度の
導入などではなく、真に
老後を
安心して暮らせる
年金制度の確立、当面、
国会でも決議しております
基礎年金財源の国庫
負担二分の一への
引き上げと、
基礎年金額の
充実を一日も早く
実現することではありませんか。
明確な答弁を求め、
質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣津島雄二君
登壇〕