○中塚一宏君 自由党の中塚一宏と申します。
私は、自由党を代表して、財政の諸問題並びに
補正予算案に対して
質問をいたします。
まず、
補正予算の歳入面について伺います。
今回の
補正予算編成に当たっては、
国債発行額を抑制するため、前年度剰余金を国債整理基金へ繰り入れず、全額を財源としております。また、新発債の内容は、二年債、五年債が
中心で、十五年債は変動利付債という極めて変則的なものであります。
一度短期債を発行すれば、長期債に乗りかえることは容易ではなく、借りかえを頻繁に行わなければならなくなります。短期債の発行は、一見利率は低いように見えても、結果的にはかえって償還コストをふやすことにつながり、将来の国債費の
増加要因そのものであります。
本来、今のような低金利のときには、剰余金を将来の償還に充て、長期債にウエートを置いて新発債を発行した方が、長期的な金利負担は低下するはずであり、それが国債管理
政策の原則であります。にもかかわらず短期債を
中心にするのは、目先の需給悪化を懸念する余り、かえって長期的な金利負担をふやしていることにほかならないのであります。
また、地方
自治体の財政を賄う地方交付税特別会計は、借入金が年度末で三十八兆円あり、もはやその財源は交付税ではなく借金であります。公共
事業などの追加に伴う地方
自治体への財源
措置についても、地方交付税交付金によって追加公共
事業の財源を二〇%を手当てすることとしているものの、交付金の半分以上を翌年に繰り越すこととしており、その使途が明確になっておりません。
国債を引き受ける立場、つまり、お金を貸す立場からいえば、返ってくるかどうかわからないお金を貸す人はいるわけがありません。あわせて、時価会計の導入によって、金融機関は保有国債の評価損に神経質にならざるを得ないのであります。国債の円滑な消化が懸念されるということは、言いかえれば、返済の
ビジョンを明確にしろというメッセージであって、今すぐに返済できなくても将来は必ず返済できるということを、
政策によって強くアピールする必要があります。
大蔵大臣にお伺いします。
剰余金の繰り入れ停止と短期債の発行は、将来の財政赤字増大につながるのではないですか。折しも、来年度から財投債の発行が予定されております。マクロで見れば、現在
我が国は貯蓄過剰であり、
民間企業の資金
需要も低調であることから、直ちに需給
関係によって長期金利が上昇するとは考えにくい
状況にありますが、将来の需給悪化への懸念が、現在においても国債市場の不安定要因となっているのではないですか。大臣の御見解を伺います。
次に、歳出面について伺います。
当面、
景気回復が大切であることは言うまでもありません。
平成九年の
政策運営の失敗を繰り返してはならないのであります。そのための公的な
需要追加や金融緩和といった
政策自体を否定するものではありませんが、それだけで
日本経済が本格的な
回復軌道に乗るとは到底思えません。
我が国経済混迷の原因は構造問題にあるのであります。
また、
経済の
構造改革と同時に必要なのは財政の
構造改革であり、それは
経済構造改革と同時に進行させるべきであると考えますが、
総理の御所見を伺います。また、
総理の言われる
経済構造改革とは具体的にはどういうことなのかをお聞かせください。
問題なのは、たび重なる
経済対策によって国、地方とも財政
システム全体に対する信用力が低下しているということであり、このままの
システムで資金のやりくりを続けるのはもはや限界であります。
また、借金返済については
景気が回復してから考えるというのでは論外であります。
景気が悪くなったから
需要追加策を実施する、
景気がよくなったから財政健全化に着手するというのではなくて、両者を同時に進行させ、財政
システムに対する信用を回復させるべきであります。
また、財政の健全化とは、
国民負担の
増加によって財政赤字を埋めるというものではありません。財政の
仕組み、お金の出し方を変える、そのことによって効率的な財政支出を行えるように
行政、税制を含めて
改革することであって、これこそが本来の
財政構造改革であります。
具体的には、十年間で二五%の
国家公務員削減を着実に実施し、あわせてその仕事を減らしていくこと、つまり
規制撤廃の
推進であります。国の権限を大幅に減らして
民間にできることは
民間に任せること、国の権限を簡素化した上で地方に移譲することが必要であり、フェアな競争が促進されることによって
経済構造改革にも資するものであります。
また、地方財政については、地方債の元利償還を国が負担するようなことなしに、地方
自治体独自の信用力によって資金調達が可能となるようにしなければなりません。地方
自治体の広域化、合併化を図り、全国の市町村を三百程度の市に再編して、その上で独自税源を与えるべきであります。
あわせて、公共
事業については、
事業補助金相当分を一括して交付する
制度を創設して、身の回りのことはすべて地方に任せ、本当の地方
分権を確立するべきであります。
また、公共
事業を実施する以上、その財源が公債であれ税金であれ、維持管理を含めた費用対効果の原則から公共
事業評価の客観的な基準を明確にした評価法の制定を行い、
社会的に有用な公共財に対して投資を行わなければなりません。
これらの
改革によって、
我が国が間もなく直面する公務員の大量退職や
社会資本の更新、いわゆるストック循環にも
対応できるよう準備をしておくべきであります。
以上申し述べた
改革によって、国、地方の歳出を少なくとも一割、十五兆円の削減を段階的に実施して、新発債の削減、
基礎的財政収支の均衡を目指すべきであります。
大蔵大臣の御所見を伺います。
次に、税制
改革について伺います。
将来の財政支出増要因の
一つに、
高齢化の
進展による
社会保障経費の増大があります。現行の給付水準を維持しようとすれば、保険料負担は五年後には現在の一・六倍、十年後には二・二倍に引き上げられることになりますが、
社会保険
制度への不信や不況の
影響によって、今後も保険料の未納、未加入者がふえることが予想されるため、保険料負担は予想以上に重くなる
可能性があります。
消費税の使途を
基礎年金、高齢者
医療、介護の三
分野に限定し、負担の公平化と
基礎的
社会保障の財政
基盤を
強化するべきであります。
そもそも、保険料は特定財源の性格を持っております。完全捕捉困難な所得を賦課標準とし、高額所得者には頭打ちなどがある保険料方式よりも、賦課ベースの広い
消費税方式の方が公平であり、そして
国民一人当たりの負担を抑制することが可能となります。あわせて、保険料徴収コストも抑制することが可能であり、
少子高齢化社会にはふさわしい
制度と考えます。
また、特定財源として
消費税方式を導入する場合には、簡易課税
制度などは廃止して、益税問題を解消するべきと考えます。
消費税率、つまり保険料率については、給付水準と
関係することであり、
国民の議論、判断にまつべきであります。
所得税、住民税についても、各種控除を原則廃止し、手当に改めた上で、税率構造の簡素化と税率の引き下げを実施し、たとえわずかな額であっても
国民全員が自分で納税できる、わかりやすい公平な税制とするべきであります。控除を手当に改めることによって、負担の調整を図ることができ、あわせて
政策目的がより明確となります。
また、ここ数年来、
補正予算による公共
事業の追加が恒常化しておりますが、公需から民需への円滑なバトンタッチを目指すのであれば、公共
事業費を圧縮するなり、あるいは陳腐化している租税特別
措置を廃止するなりし、それらを財源にして、償却
制度の適正化など税制全体の均衡を図った上で、法人税率をさらに引き下げるべきであります。
大蔵大臣の御所見を伺います。
最後に、財投機関、特殊法人についてであります。
財政投融資の
規模が余りにも大きくなり過ぎたために、長期的に
民間部門の資本蓄積が不足し、それが
経済成長の鈍化と
生産性の低下を招いているのではないかと懸念を抱かざるを得ません。
財投機関は、本来有償資金であるはずの郵便貯金などを原資として運営されていますが、報道によれば、七つの
政府系金融機関が抱えるリスク管理債権は三兆七千億円に上るとのことであります。
また、純資産額がマイナスの特殊法人も多数ありますが、
政府系金融機関が倒産しないのは、それが公的機関であるからであり、最終的には欠損を税金によって補てんするという
前提があるからであります。また、地方交付税特別会計の借入金にしても、その大部分は財政投融資に頼っています。
これまでは、有償資金であっても、ニューマネーが次々と入ってきたので帳じりは合っておりますが、ほとんど追い貸しに近い状態であって、最終的には税金による補てんがなければ、郵便貯金など財投の原資の元本が返ってこない場合があることを示しております。
新財投にウエートが移る前に、直ちに特殊法人の財務内容をディスクローズして、
事業内容の
政策評価を行い、二十一
世紀初頭の
日本財政のリスクを特定しておくべきであります。その上で、不要な特殊法人から順次廃止をしていくべきと考えます。
大蔵大臣の御所見を伺います。
今、未曾有の財政の危機にあって、最も求められていることは、
政策体系に対する信頼を取り戻すことであります。既存の
制度をどう手直しするかではなくて、白紙に絵をかくように、更地に家を建てるように、まさに従来の発想にとらわれない大胆な
政策、つまり
日本一新が必要であることを申し上げまして、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣森喜朗君
登壇〕