○東門美津子君
社会民主党の東門美津子でございます。
私は、
社会民主党・
市民連合を代表して、ただいま
趣旨説明のありました
周辺事態に際して実施する
船舶検査活動に関する
法律案に関連する問題について、本来なら総理にお伺いしたいところですが、出席しておられませんので、外務大臣並びに防衛庁長官に質問いたします。
昨年のガイドライン関連法
審議の過程で、
船舶検査活動に関する部分は削除されました。これにはさまざまな事情があったものとはいえ、そのときに絶対に必要なものならば削除されるようなことはなかったはずです。すなわち、当時でさえ、
船舶検査活動に関する法
整備は不要不急のものであったと言えるでしょう。あれから一年半、
我が国を取り巻く国際情勢は大きく変化しております。それでもなお、
船舶検査活動法案を提出してくる意味があるのかどうかという観点から質問させていただきます。
まず、東アジア情勢に対する
政府の認識についてお伺いいたします。
昨年のガイドライン関連法
審議の時点では、北朝鮮は、ミサイル発射問題、不審船問題などで
我が国と緊張関係にあり、東アジア地域における不安定要因となっておりました。しかし、本年六月、金大中大韓民国大統領と金正日朝鮮
民主主義人民共和国総書記によって史上初の首脳会談が行われて以降、日朝国交正常化交渉の再開、欧州各国との国交樹立に向けた動き、さらにはオルブライト米国務長官が訪朝し、米国、北朝鮮双方が関係改善の動きを模索するなど、これまでに考えられなかった事態が進行しております。
また、近年、
我が国と中国との間で懸念材料となっていた、中国による
我が国周辺地域における海洋調査船の
活動問題については、八月の日中外相会談において、相互事前通報
制度の枠組みづくりに着手することで一致し、さらには十月の森総理と朱鎔基首相との日中首脳会談で、この枠組みづくりを加速することで合意するなど、
我が国を取り巻く東アジア情勢は以前と比べ好転したように感じられます。
外務大臣は、このような東アジア地域における緊張緩和の動きをどのように認識しておられますか。
関連して、先日行われました日朝国交正常化交渉の進捗状況についてお尋ねいたします。
南北首脳会談以降の流れの中で、今回の日朝国交正常化交渉においても何らかの進展があるものと期待されておりました。
政府は、この交渉過程及び結果について、北朝鮮側の要望により公表できないとしていますが、報道などで見る限り、過去の清算について双方の
意見が折り合わず、
議論は平行線のまま終わってしまったのは残念なことです。拉致問題、過去の清算問題など難しい問題を抱えておりますが、一日も早く国交正常化が実現するように努力していただきたいと思います。
今後の交渉に向けての
政府の方針について、外務大臣にお伺いいたします。
このような東アジア地域における緊張緩和の動きにもかかわらず、新たな在
日米軍駐留
経費負担特別
協定が、以前とほとんど変わらない形で
締結されようとしています。我が党は、先ほどの特別
協定採決に
反対いたしました。時代の変化を全く反映せず、他国に見られない巨額の財政
負担を行い、基地の固定化につながる特別
協定を、なぜ今
締結しなければならないのでしょうか。外務大臣の御見解をお伺いいたします。
在
日米軍にとって居心地のよい条件となる特別
協定の
締結は、沖縄県民が求めている基地の整理縮小の方向とは全く逆の新たな基地の押しつけにも関連しています。そこで、普天間代替
施設についてお伺いいたします。
十月三日の代替
施設協議会において、米軍普天間飛行場の代替
施設をめぐる協議は、基地使用
協定などに関する話し合いの場が設置されるということで、
政府と県、名護市による共同歩調体制は維持されることとなりましたが、移設作業の重要なポイントになる十五年使用期限問題の進展はなく、
政府は地元要望に最大限配慮する姿勢を示すにすぎませんでした。十五年使用期限問題では、県、名護市ともに、あらゆる機会で主張するとの姿勢を変えておりませんし、一方の米国側も使用期限設定には否定的な姿勢を崩していません。
外務大臣にお尋ねいたします。十五年使用期限問題に決着をつけないままで工事に着工する
可能性はあるのでしょうか。
次に、
船舶検査活動法案の
内容についてお尋ねいたします。
今回の
船舶検査活動法案においても、
周辺事態に対応して
船舶検査活動を行うことになっています。この
周辺事態については、昨年のガイドライン関連
法案の
審議でも、地理的な概念ではなく、事態の性質に着目した概念であるとして、とうとうその適用範囲が明らかにされませんでした。安保条約第六条は、米軍が
日本の基地を使用して戦闘行動のできる範囲を極東に限定しております。なぜ
周辺事態も極東の範囲であると明言できないのでしょうか。結局のところ、
我が国には
周辺事態を判断する権限はなく、米国が
日本の協力を求めることが必要であると考えたところはすべて
周辺事態とされてしまうのではないでしょうか。防衛庁長官の見解をお伺いいたします。
また、
船舶検査活動法案では、第二条において、「
我が国領海又は
我が国周辺の公海において
我が国が実施するもの」とされていますが、この「
我が国周辺の公海」はどこまでなのか、明らかにできますか。防衛庁長官にお伺いいたします。
船舶検査活動は経済制裁の実効性を
確保するための
日本の軍艦による
活動であり、制裁をされている国から見れば敵対的な行動であることに変わりはありません。
法案では、
船舶検査活動の対象から軍艦等は除かれていますが、相手国が船舶検査を阻止するために軍艦を出動させてくることは当然考えられることではないでしょうか。
また、
法案では「自己又は自己と共に当該職務に従事する者の生命又は身体の防護のためやむを得ない必要があると認める相当の
理由がある場合」に武器の使用を認めていますが、自衛のための必要最小限の武器使用であっても、そこから大きな紛争に
発展するおそれがあることは過去の歴史が証明しています。船舶検査を行うことによって
我が国が戦争に巻き込まれることは絶対にないと断言できるのですか。外務大臣にお伺いいたします。
昨年のガイドライン関連
法案審議において、
政府は、国連安保理決議に基づく船舶検査は、国連憲章第四十一条に基づくいわゆる経済制裁が実施されている場合において、その実効性を
確保するため国連安保理決議を根拠に行われる集団安全保障の一環であり、集団的自衛権の行使とは違う旨の答弁をしていますが、今回の
法案では、国連安保理決議に基づかない船舶検査も行えるようになっています。国連安保理決議という根拠がない場合、集団安全保障の一環とは言えないのではないでしょうか。これは、
周辺事態の定義のあいまいさと相まって、なし崩しに集団的自衛権行使に踏み込むことになるのではないですか。防衛庁長官の見解をお伺いいたします。
このように、
法案の
内容自体にもいろいろ問題がありますが、最も問題なのは、現在、東アジアにおいて、船舶検査を行わねばならないような問題のある国がどこにあるかということです。東アジア情勢が大きく変化したのは既に述べたとおりです。このような情勢の中で、
国民に必ずしも受け入れられているとは言えないこの
法案をなぜ今提出しなければならないのでしょうか。今この
法案を提出することにより、
我が国の平和と安全の
確保に資するよりも、むしろ周辺諸国の疑心を招き、東アジア情勢の不安定化に資することになるのではありませんか。東アジア諸国はこの
法案をどのように受けとめているとお考えですか。外務大臣の認識をお伺いいたします。
最近、国連平和維持
活動協力法の中で凍結されているPKF本体業務を解除しようという動きが見られます。しかし、本体業務を解除する場合、武器使用が問題となります。
武器使用は、自己または自己とともに現場に所在する
我が国要員の生命または身体を防護するための必要最小限のものに限るとされていますが、最近の実情を見ますと、PKF本体業務は、武器を使用せざるを得ない状況に巻き込まれる
可能性が大きいと言わざるを得ません。現在、PKO法の本体業務には含まれていない警護任務や国連
施設の防護を本体業務に規定しようという動きもあります。なぜそのような武器使用の
可能性のある業務に参加することを急ぐのでしょうか。先に実績をつくって憲法改正につなげようという意図が感じられてなりません。
国際の平和と安全のために、
我が国に対しても人的貢献が大きく求められていることは事実です。しかし、
我が国が行うべき貢献は、武器使用につながりかねないPKF本体業務ではなく、警察官、文民、NGO等による人的貢献を可能な限り行うことではないでしょうか。
我が国のPKO協力のあり方について、外務大臣の見解をお伺いいたします。
さきに述べましたように、緊張緩和へ向けて動きつつある東アジアの中で、時代の変化を反映しない特別
協定を
締結し、戦争協力につながる船舶検査法を制定し、武器使用につながりかねないPKF本体業務への参加を急ぐことは、東アジアの緊張緩和に逆行する動きであり、周辺諸国に対して間違ったメッセージを与えかねません。平和憲法を持ち、広島、長崎という最初の悲惨な被爆の経験を持つ
我が国は、このような手法ではなく、あくまでも平和外交を通じた努力により、アジア太平洋地域の平和と安定に貢献すべきです。
また、最近、憲法を改正し、集団的自衛権行使を可能にしようとする動きもありますが、
日本国憲法の平和
理念は、二十一
世紀を迎える今こそ、
世界に拡大すべきです。
平和外交の推進と憲法の平和
理念の
世界的拡大について外務大臣の見解をお伺いして、質問を終わります。(
拍手)
〔国務大臣河野洋平君
登壇〕