○久保哲司君 公明党の久保哲司でございます。
ただいま
議題となりました
高度情報通信ネットワーク社会形成基本法案に対しまして、公明党、
自由民主党、保守党の
与党三党を代表して
質問させていただきます。
本
法案は、
IT基本法と通称されておりますように、
我が国が今後、
IT革命を
推進し、質的にも量的にも
世界最高水準の
高度情報通信ネットワーク社会を構築するために、関連する諸
施策を実行するに当たっての
基本となるべきベース、すなわち
基本理念、目標等を確定して、その上に立って各種政策の具体的な方向性を示すという、今後の
我が国社会の
あり方について非常に重要な意義と影響力を有するものであると
考えます。
その意味から、いわゆる
基本法というものが
一般的に批判されがちな、行うべき
施策の項目を単に羅列するだけに終わったり、あるいは精神規定としての存在だけにとどまったり、もしくは時間稼ぎ的な便法に使われたりというようなことであっては断じてならないことは言うまでもございません。
その点、本
法案は、法律の
目的や定義、
基本理念、
施策の
基本方針等々とあわせて、
施策を実施する上での期日を明確にする
趣旨での
重点計画を盛り込むことにしているほか、この
推進のために、現在
内閣に設置されております
IT戦略本部に法的な根拠を与え、
政治的リーダーシップの必要性を明確にするなど、
IT革命の
推進に具体性を持たせる内容となっていることを高く評価するものであります。
しかし、とはいいながら、幾つかの明確にしていただきたい点をなおなしとはいたしません。以下、順次、具体的に、特に重要と思われる項目に絞って
総理にお伺いをいたします。
まず、
IT革命の
推進に当たって各種
施策の具体的な方向性を示すものが、本
法案の中に位置づけられている
重点計画であると
考えます。その意味では、この
重点計画の内容、
策定時期、施行期日が非常に重要な意味を持ってまいります。
現在の
戦略本部が本
法案によって根拠を与えられ、そして、その最初の大仕事がこの
重点計画の
策定だというふうに
考えます。本年中に示されるとも聞いておりますいわゆる
国家戦略とこの
重点計画との
関係、特に、この
重点計画を
策定される時期、内容の方向性について、まず明らかにお示しをいただきたい。
次に、現在、
IT戦略本部、同戦略
会議においても鋭意
IT関連の
施策が検討されておりますが、その中でも
指摘されており私どもも最も大事と
考えている通信料金の引き下げ、これについての処方せんが、本
法案においては明確に示されておりません。
私どもは、通信料金の問題をいわゆる
デジタルデバイド解消のための最
重要課題、すなわち全
国民的な
重要課題と位置づけ、全力を挙げて取り組んでまいりました。
例えば、昨年には、通信料金の引き下げの
署名運動に一千万人を超える
国民の皆さんの御賛同をいただき、当時の小渕
総理にお届けしたところであります。また、さきの衆議院選挙においても、通信料金の引き下げを
国民の皆様に対する選挙公約といたしました。その後においても、
国会における代表
質問等の
機会を通じて、すべての
国民がその果実を享受できる
IT社会の
実現に向けて通信料金の引き下げこそが最大の決め手であり、これを
国家意思として国策に盛り込むべしと、総力を挙げ運動を展開してきたところであります。
あらゆる通信料金の引き下げは、
IT社会実現への
基本戦略にとって
基本中の
基本であらねばならないと確信します。
例えば、先般来、株価が日経平均で一万五千円台を割り込むなど、景気の回復的基調に対して水を差しかねない
状況が見えましたが、これについても、米国の市場動向の影響ももちろんあるんでしょうが、
我が国サイドの株価下げの要因としては、
IT産業の先行きに対する市場筋の
懸念も見過ごすわけにはいかないと思うのであります。
もちろん、
我が国IT産業に対する過剰期待が失われ、安定的なレベルに戻りつつあるという見方もないではありません。しかし、そうした一方で、これまでの株価水準を支え、牽引してきた
IT銘柄について魅惑的な買い材料がなくなってきている、そういう見方が次第に浸透しつつあります。
特に、内外の市場筋が一番注目しているのは、
我が国の通信コストの高さが資本市場から見て非常なマイナス要因となっているということであります。
我が国が、今後、通信コストの軽減策を具体的に講じるか否か、通信市場に競争政策を本気で導入しようとしているのかどうか、それをこそ市場筋は注目しているのであります。今ここで、高い通信コストを
是正するための政策を具体的にかつ着実に打っていかないと、
我が国経済産業の景気動向、パフォーマンスが伸びず、さらに悪化していく
可能性すらあると言わざるを得ません。
その意味からも、また、
教育の
情報化や
産業の
育成、
デジタルデバイド予防の面等からも、通信料金の引き下げについて、目標値を現行水準の半分ぐらいのレベルとして、それを遅くとも二〇〇二年中に
実現するなどの努力目標を
国家戦略として設定すべきと
考えます。
通信料金の引き下げは、その背景として、当然市場の公正有効な競争の促進を
前提としております。それは単にコストの軽減のみにとどまらず、
経済産業システムのグローバル化をも意味します。この通信料金引き下げへの
国家目標化について、
総理の明確な御
見解をお伺いいたします。
関連して、通信・放送に関する諸
規制について伺います。
通信・放送の融合は必然の流れであり、こうした業態の枠を超えた
経済社会の
変化こそが大きなビジネスチャンスにつながることは言うまでもないことであります。
産業構造の
枠組みの
変化こそは、新ベンチャービジネスが立ち上がる苗床であると
考えます。その意味から、自由なビジネスの発動の芽を摘みかねない諸
規制については徹底して簡素化し、関連する制度を全面的に見直すべきだと
考えます。
これらに関連する諸制度の見直しは、まず法律を改正し、その後付随する政省令等の細部の
ルールを手直しするわけですが、すべてを手直しするには一年程度の少なからぬ時間を見込まざるを得ません。そのことを
考えたとき、他の先進諸国の動向を踏まえましても、次期通常
国会において関連する法律の改正がどうしても不可欠であると
考えます。
また、
国民に対しても、さらには若きベンチャー起業家や内外市場筋等に対するわかりやすいメッセージとしても、通信・放送関連の現在ある七つの法律で三百余りある許認可を、精査の上百以下にするなど、簡素化の指標を明確に提示すべきだと思います。これら次期通常
国会における法改正への
取り組み並びに許認可の大幅簡素化についていかがお
考えか、御
見解を伺います。
また、通信料金の引き下げへの
施策等と関連して、高速大容量の通信環境の
整備の促進についても重要であります。これも、
情報通信市場の公正有効競争の
確保を通じてこそ
実現するものと
考えます。この高速大容量の通信インフラについても、いつ、どの程度のものを
整備するのか、米国等の
IT先進各国におけると同様な意味における
国家目標が必要と
考えます。
総理の御
見解をお伺いいたします。
次に、
電子政府について伺います。
本
法案の
施策の
基本方針に、
電子政府、電子自治体の
推進が挙げられております。公明党は、
電子政府早期
実現推進法案を
議員立法として昨年から準備するなど、その早期
実現のために全力を挙げてまいりました。その
観点からお伺いいたします。
まず、膨大な
政府の申請手続の電子化をどのようなスケジュールで行うお
考えか、いつまでにこれに関する法的手続を完了されるのか、この点については
重点計画に盛り込むことを想定しておられるのか、さらには、膨大な作業を効率化させるという
観点から、全省庁横断的な
対応、例えば
行政手続法のような手続の電子化のための
一般的な法律を、現行の縦割り
行政の非効率を乗り越え、まさに
総理のリーダーシップで
策定されてはどうかと
考えるところであります。
総理、これらの諸点についてお
考えをお伺いいたします。
加えて、各省庁がばらばらのシステムでは、
利用する側の利便性に
もとることになるのではないかと恐れます。本来、
行政は
国民に奉仕する機関として存在するわけでありまして、
電子政府という以上、
行政の電子化が
行政の内部的な効率化ということに閉ざされるようなことは決して許されません。
電子政府の早期
実現は、すなわち
利用する
国民の使い勝手のよい
政府の早期
実現であらねばなりません。
電子政府の
実現に当たって
利用者本位をどう担保するのか、御
見解を伺います。
いま一つは、
地方自治体の電子化、すなわち電子自治体の
実現をどのように促進していくのかという点であります。
中央
政府のみが電子化されたとしても、それだけでは不十分であることは言うまでもありません。
国民一人一人に利便をもたらすという
行政の本来の
あり方、すなわち
国民生活に直結するという
観点からは、むしろ中央
政府よりも
地方自治体における電子化の方がより重要であると言うべきであります。
過日、先進的自治体と言われております横須賀市を訪問し、さまざま現地視察を行いました。その後、沢田市長と面談した際、市長に、
ITをどのような角度で市民に訴えておられるんですか、このようにお伺いしたときに、市長は、
ITを使えば得をする
社会づくり、これをやりたいんだ、このように言っているというふうにおっしゃっておられました。手続の点で、また買い物等において、時間を節約できる、価格の面で得をする、まさにそのとおりと感服して帰ってまいりました。
IT、
考えてみれば、Iはいいことありまっせ、Tは得しまっせ、このような言い方もできるのかなと思いますけれども、
ITを活用していかに住民
サービスを向上させるか、重要な
課題であります。
地方行政の電子化の早期
実現、特に
利用者本位の住民
サービスの向上を担保した電子自治体の早期
実現への
基本方向、スケジュールをお示しいただきたいと存じます。
次に、
IT基本法の成立は、
我が国が
IT先進国の仲間入りをし、さらには世界最高、最速の
IT社会を
実現するとの内外に向けた決意の表明であると
考えます。
競争政策の促進と料金低廉化と高速大容量
基盤の
整備は、ともに
相互に密接に関連する
課題であります。また、
IT革命の光とともに影の
部分をも直視して、
個人情報保護等の新しい法体系の
整備を急ぐことも必要であります。
与党三党は、
世界最高水準の、速く、安く、安心な
IT社会の一日も早い
実現を目指しております。今後、それを
実現するに当たっては、縦割り
行政の弊害の克服と各種利害の克服が何よりも重要だと
考えます。まさしく
総理のリーダーシップをもってする以外にそれを進める方法はありません。
現在の
我が国の
経済の
状況、また世界各国の
IT化のスピードを
考えると、この一年間に、大きな
制度改革はすべて集中的に解決することが不可欠です。そういう意味で、本臨時
国会、また次の通常
国会がまさしく天王山になると
考えます。この二つの
国会を通じて、
総理御自身が
IT関連の諸
施策の
推進を火だるまになってもみずからがやり抜くという、そのお覚悟のほどがぜひとも不可欠だと
考えます。
総理の
IT革命、すなわち
情報通信制度の革命にかける御決意のほどをお伺いし、私の
質問を終わります。ありがとうございました。(
拍手)
〔
内閣総理大臣森喜朗君
登壇〕