○谷津義男君 私は、自由
民主党を代表して、
森総理大臣の
所信表明演説に対し、
総理及び関係閣僚に対しまして
質問を行います。
まず
質問に入ります前に、
有珠山、三宅島初め
伊豆諸島周辺における
地震、火山災害、さらに
東海地方を
中心に起きた大水害に被災された皆様に心よりお見舞い申し上げますとともに、お亡くなりになりました方とその御遺族に対し、心より哀悼の意を表します。
政府におかれては、
監視活動を強化するとともに、避難されている
方々の
生活支援や
復旧復興対策に万全を期していただけまするよう、まずもってお願い申し上げます。
さて、今百五十回臨時国会は、二十
世紀最後の国会となると思います。今
世紀に入って、既に七十七回の帝国議会と百四十九回の国会が開かれました。
日本のかじ取りを行う国会で示された国の方針、成立した
法律は、一時不幸な
時代もありましたが、今日の
日本の繁栄の基礎を築いてまいりました。
では、二十一
世紀の
日本の姿はどうあるべきでありましょうか。もう既に
日本を取り巻く
環境が大きな
変化をしていることは御承知のとおりであります。
具体的には、高齢化、少子化の一層の進展、CO2の排出等による
地球の温暖化やごみ、産業廃棄物など
環境問題の重要性の高まり、金融
分野を
中心とした
経済のグローバル化、
IT革命に見られるような情報
分野の急激な進歩などが挙げられます。
政府は、こうした
環境の
変化に
対応すべく、二十一
世紀の
国づくりに向けてさまざまなビジョンや
政策を打ち出し、
経済団体や
国民からも提言がなされ、一部の
改革は既に実行段階にあります。しかし、
国民にとって、
生活が今後どのように変わるのかについては見通しが不透明なままであり、このことが
国民の将来に対する不安を高めているのではないかと思うのであります。
今
国民が求めているものは、不安のない
生活、
国民一人一人が平和と真の豊かさを実感でき、みずからの将来にしっかりとした目標や希望を持ち、誇りと自信を持てるような夢のある
社会の実現です。それは、個人個人の豊かさへの追求が国全体としての安定した
経済成長につながり、その結果が個人の
生活環境の向上に結びつくという、これまでと同様の成長過程が今後とも続くということであります。
その一方で、工業を興し富をなすことに価値を置く人、他方では、
生活に必要な資金を稼ぐものの、より多くの時間や労力を自分のやりたい趣味やボランティア
活動に注ぐことに生きがいを見出し、生き生きと
生活する人など、人の持つ価値の多様化が一層進展した
社会が実現するということであります。
そうした
社会を実現することこそ、我々
国会議員が果たさなければならない責務ではないでしょうか。
現在、シドニー・オリンピックが開かれております。連日、
日本の若い力が遺憾なく発揮されているニュースを目にし、耳にします。まことに喜ばしいことであります。
そこで私は、二十一
世紀の
日本が目指し、実現すべき姿を五輪の色になぞらえてみたいと思います。
黒は、蒸気機関車のごとく力みなぎる
経済。緑は、自然あふれる
環境と心豊かな
社会。黄色は、太陽のもと、将来を担う
子供たちが生き生きと心豊かに学べる
教育。紫は、色の持つイメージのように、
国際社会からとうとばれる
外交。赤は、温かい血の通った
政治です。
こうした姿を実現するために、二十一
世紀を目前にした今こそが我々にとってまさに真剣勝負のときではないでしょうか。
今ここにいる我々
国会議員は、二十一
世紀日本のスタート台に立ち、多くの
国民から大いに注目、そして期待されているところであり、
責任感と使命感を持って事に当たらねばならないと思うのであります。
総理におかれては、オリンピックの入場行進の旗手のように、我々の先頭に立っていただき、二十一
世紀日本の
改革の旗を高らかに掲げられ、我々とともども、来るべき
世紀への明るい展望を開くため邁進されますことを確信し、以下、幾つかの重要
課題についてお尋ねいたします。
まず、
景気対策について
質問いたします。
我が国経済は、
政府・連立
与党挙げての各般の
政策努力の結果もあって、緩やかな改善を続けており、
企業部門を
中心に自律的回復に向けた動きが徐々に強まってきておりますが、いまだ手放しで
景気回復を喜べる
状況にはありません。
経済の主役である民間の
経済活動は、前向きの動きは出てきているものの、本格的な回復軌道に乗った
状況とは言えず、民需主導の自律的な
景気回復が図られるか否か、今まさに正念場を迎えております。
公需から民需へのバトンタッチを円滑に行い、
景気を本格的な回復軌道に乗せていくため、今後の
経済運営に
総理がどのように臨まれるのか、まずお伺いいたします。
ところで、現在我々が抱えている最大の
政治課題は、何といっても
景気対策であることは言うまでもありません。今年度じゅうに自律的な
景気回復まで持っていくためにも、また、
政府経済見通しで目標としている一%成長を確実なものにし、さらなる成長を実現するためにも、新たな
経済対策が必要ですし、その核となる
補正予算による下支えが必要であると
考えます。
今般、
政府が国費で三兆円台後半、総事業規模で十兆円を超える
平成十二年度
補正予算の編成を決断したことは、まことに時宜にかなった
財政政策であると高く評価したいと思うのであります。(
拍手)
そこで、十月中旬ごろに策定されると聞いております新
経済対策はどのような
分野が
中心になるのか、また、十一月十日ごろには編成を終えたいとしている
補正予算はどのような
分野に重点的に配分するのか、新
経済対策及び
補正予算に対する
総理の
基本的な
姿勢、
考え方、さらに、業況の回復がおくれ、投資もいまだ低い水準にとどまっている中小零細
企業対策についてお聞かせください。
雇用失業情勢については、依然として厳しい
状況が続いているものの、改善の動きが広がりつつあります。これは、これまで
政府、連立
与党が一体となって全力で取り組んできた
経済対策、雇用対策の成果があらわれてきているものと
考えます。
しかし、これからの
雇用情勢を展望しますと、雇用の維持に向けた対策とあわせ、良好な雇用機会の創出、確保を図るとともに、
経済産業
構造の
変化に
対応し、労働者の円滑な労働移動に対する支援を効果的に講じていくことなど、重要性が今後一層増すのではないかと
考えられます。
そこで、
総理に、このような
構造転換の時期における今後の雇用対策についてのお
考えについてお伺いをいたしたいと思います。
次に、
財政問題について伺います。
我が国の
財政が大変厳しい
状況にあることは、改めて申し上げるまでもありません。一方で、
経済を本格的な回復軌道に乗せることが現下の最優先
課題であることは言うまでもなく、二兎を追う者は一兎をも得ずといった
事態に陥ることは厳に避けなければなりません。目先の
経済指標が若干の改善を見たからといって、単に数字合わせの
財政再建を唱えるということは、余りにも日和見主義であり、
経済の実相に対する洞察を欠いた無
責任な
議論であると言わざるを得ません。(
拍手)
経済運営は、
景気動向、
経済動向を十分に見きわめつつ、適時適切な
財政運営、機動的、弾力的な
財政政策に努めることが重要であります。
また、
財政問題は、単に収支均衡を図ればよい、公債の発行が抑制されればよいという数字合わせの
議論にとどめるべきではありません。画一的、機械的な歳出抑制を掲げるだけでは、
財政の機能不全への不安感を増大させこそすれ、
我が国財政への内外の信認を回復することは不可能であります。
我が国の将来のあるべき姿を見据え、新たな発展を支え、新たな安心を
国民に提供していくために真に必要な施策は何か、しっかりと見きわめた上で、こうした施策に必要十分な
予算配分が行われるような仕組みを
構築していくことこそが重要な問題であります。単なる
財政再建ではなく、二十一
世紀における
我が国経済社会を支える
財政システムの
構築、すなわち字義どおりの
財政構造改革でなければならないと
考えているのであります。
このような点を含め、
総理の
財政構造改革に対する
基本的な取り組み
姿勢をお伺いいたしたいと思います。
次に、
外交の諸問題についてお尋ねいたします。
まず、日ロ関係についてですが、去る九月四日、五日にかけて行われたプーチン大統領との日ロ首脳会談では、平和条約交渉を初めとして、日ロ関係全般について話し合われたことと思いますが、東京宣言に基づき二〇〇〇年までに平和条約を締結するよう全力を尽くすとのクラスノヤルスク合意の実現はどうなっていたのか、また、
経済分野での橋本・エリツィン・
プランの進展はどのようになったのか、その会談の成果についてお伺いしたいと思います。また、今回の首脳会談を踏まえて、今後の日ロ関係にどのように取り組まれるお
考えか、お聞かせください。
次に、
日米関係について伺います。
両国の関係は、
我が国外交の基軸であるのみならず、
アジア太平洋における安定と繁栄にとって不可欠な基盤であり、首脳及び閣僚レベルの会談も数多く開催され、九月十一日もニューヨークで、
日米外相会談、
日米安全保障協議委員会、2プラス2が開催されるなど、その関係はますます緊密化しております。こうした
状況を踏まえ、
日米関係の今後の展望、さらに、普天間飛行場の移設、返還問題を初めとする沖縄の米軍基地問題への
対応についての
総理のお
考えをお伺いします。
次は、朝鮮半島情勢についてですが、歴史的な南北首脳会談の開催や、史上初の日朝・南北・米朝外相会談の開催に加え、先月には東京で日朝国交正常化交渉が開催され、さらに、シドニー・オリンピックの開会式では、韓国、北朝鮮の選手団がオリンピック史上初めて統一旗を先頭に同じ装いで一緒に入場行進する等、北朝鮮情勢が大きく進展いたしております。こうした情勢の
変化を受けて、
総理は今後日朝関係をどのように進めていくお
考えか。また、九月二十二日に金大中大統領が訪日され、二十三、二十四日の両日、
総理との間で日韓首脳会談が行われましたが、この会談を踏まえて、
総理の今後の日韓関係に向けた抱負をお伺いいたします。
日中関係については、最近、
我が国周辺の海域で、中国側の船艦の遊よく、調査船のEEZへの進入等、波風の立つ動きも見られます。河野外相も、訪中した際、中国側の
対応を求めたようでありますが、良好な日中関係を維持発展させていくことは、今後の日中両国、ひいては
アジア太平洋
地域の安定と繁栄にとって極めて重要であります。九月の国連ミレニアムサミットの際の江沢民主席との首脳会談に引き続き、十月には朱鎔基
総理の訪日が予定されていますが、
総理は日中関係の展望をどのようにお
考えでしょうか、お伺いいたします。
総理は、八月下旬、十年ぶりに南西
アジアを一週間にわたって訪問されましたが、南西
アジア地域は、
我が国にとって重要な
地域であると同時に、親日
国家でもあります。最近は
アメリカ大統領が訪問するなど、
国際社会の中で戦略的な重要性を増しつつあるインド、パキスタン等の南
アジア訪問をされたことは、まことに時宜にかなったものだと
考えます。しかしながら、一方でカシミールをめぐる紛争や核不拡散等の難しい問題も抱えております。
総理は、訪問した際、
我が国の懸念、核開発の抑制、CTBTへの早期批准を求めたと思われますが、どのような反応があったのかお聞かせください。また、今後どのように南
アジア関係を発展させていくのか、こうした点を念頭に置きつつ、今回の訪問の成果についてお聞かせ願いたいのであります。
次に、
憲法問題について、
総理の御所見をお伺いいたします。
本年一月から、衆参両院に
憲法調査会が設置され、
憲法問題についての本格的
論議が行われることになりました。
憲法調査会設置の意義は極めて大きいものと
考えます。各種世論調査でも、
憲法改正に賛成する人が六割を超え、改めるべきところは改めるという意見が
国民の中でも過半数を占めております。
自主
憲法の制定は、我が党立党以来の党是であり、二十一
世紀にふさわしい
国民のための
憲法の制定が必要と
考えます。(
拍手)
憲法を
論議するということは、すなわち
我が国の
あり方や
国家像を
論議することにほかなりません。二十一
世紀の
我が国の
あり方について、
国民各界各層との
議論を通じて吟味し、
国民のための
憲法を制定するべきであると
考えますが、
総理の御所見をお聞かせください。
次に、
IT関連について
質問いたしますが、
総理は、
日本新生プランの最重要な柱として
IT戦略を掲げ、
所信表明演説においても、
IT憲章の取りまとめや
IT基本法案の
提出について述べられ、
IT社会の実現を
国民的
課題と位置づけられております。
私は、
IT社会を実現するには、まず
IT革命の成果を享受できる
環境整備が最優先
課題ではないかと
考えております。特に、電気通信
分野における競争の促進に向けた法整備が急務と
考えており、このためには、競争促進法の整備や、国が直接経営に介入する規制の廃止などを含むNTT法の
見直しが必要ではないかと思いますが、
総理のお
考えをお聞かせください。
次に、
少年犯罪対策について、
総理並びに法務大臣の御所見をお伺いいたしたいと思います。
昨今、青少年による凶悪事件が多発し、マスコミをにぎわわせております。本当に残念なことであります。青
少年犯罪の多発、凶悪化の原因は、一概には総括できないとしても、現行少年法の不備がその一因であることはだれもが認めざるを得ないことではないでしょうか。
与党三党は、こうした判断に基づき、少年問題に関するプロジェクトチームを設置し、少年法の
改正案について鋭意検討を重ねてまいりました。
そして、今般、
議員立法とあわせて成案を得ることができました。この臨時国会に早急に
提出すべく準備をしておりますが、
総理並びに法務大臣の少年法の改正に対する御所見をお聞かせください。
また、
少年犯罪対策は、少年法改正にとどまらず、
教育、
文化、児童
福祉、
精神的医療・ケアなど、各般にわたる
課題について総合的施策を策定することが必要と
考えますが、
総理の御所見をお伺いいたします。
次に、食料・農業・農村に関する
政策についてですが、昨年七月、新しい食料・農業・農村
基本法が制定され、さらに、本年三月には、これを具体化するものとして、食料・農業・農村
基本計画が策定されました。この
基本計画において、現在四〇%の食料自給率を
平成二十二年度には四五%まで引き上げることとされていますが、
政府として、この自給率目標達成に向けてどのように取り組むおつもりなのか。また、本年は米の豊作が見込まれますが、これらの影響が懸念されている稲作農家の経営安定対策を含む総合的な米対策についても、あわせて
総理にお伺いいたします。
さらに、WTOの農業交渉は既に本年から開始されており、各国は本年十二月末までに交渉提案を取りまとめて
提出することになるわけでありますが、
我が国としてはどのような
基本的
考え方のもとに取りまとめるお
考えなのか、
総理にお聞きしたいと思います。
次に、
環境問題ですが、ごみ処理問題に限って
質問いたします。
私
たちは、これまで、大量生産、大量消費、大量廃棄の
社会経済システムのもと、豊かな
生活を享受してきました。しかし、その結果、大量のごみを出し続け、産業廃棄物の最終処分場はあと一年半でどこも満杯となります。新規に造成しようにも埋め立てる候補地も見つかりませんし、
地域住民の理解をいただけない
状況です。このような
状況下、不法投棄が
全国各地で発生しております。このままでは
日本はごみであふれ返るでしょう。
私は、解決策の一つとして、最終処分場の建設をこれまで以上に
公共事業でできないものかと
考えておりますが、
総理の御所見をお聞かせください。
次に、いわゆる
あっせん利得罪
処罰法案についてお尋ねいたします。
与党提出の
法律案は、最近の一連の不祥事の反省の上に立って、とりわけ公職にある者は、一部の
利益のためではなく、
国民全体の
利益のために奉仕、行動する責務を負っていることを自覚し、みずからの
政治活動を厳しく律し、その適正化、透明化を図っていくことを主眼に置いて提案したものであり、法案作成に携わった者の一人として、現在
考え得る最善のものであると確信するものであります。
また、
与党案は、いかに公職者の
政治活動をより一層適正なものにするかという
課題と、いかに公職者の
政治活動の自由が萎縮することがないようにするかという
課題の二つの
課題を解決した自信作であると
考えるものであります。
与党案に対する
総理の御所見をお伺いしたいと存じます。
次に、
公共事業の
見直しについて
質問いたします。
社会資本の整備を図る
公共事業は、安全で豊かな
国民生活の実現や均衡ある国土づくりなど、これまで大きな
役割を果たしてまいりました。しかしながら、
公共事業の配分比率の硬直化や事業の長期化などにより、
経済社会の
変化や
時代のニーズに必ずしも適応したものになっていないとの批判があることもまた事実であります。
我が党は、こうした批判に真摯に耳を傾け、その批判にこたえるために、亀井静香政調会長のもとに
公共事業抜本
見直し検討会を設置し、私が座長を務めて
公共事業の
見直しに着手しました。そして、事業採択後五年以上しても未着工の事業は原則中止などの四項目の
見直し基準をまとめ、
与党三党でその基準を決定するとともに、基準に基づいて鋭意
見直し作業を続け、先月の二十八日、二百三十三件の
公共事業を原則中止とするよう
政府に対して申し入れを行ったところであります。
政府におかれては、今回の中止勧告や提言を受け、今後どう対処されていくおつもりなのか、
総理から明確にお答えを願いたいと存じます。
二十
世紀の幕が、数々の大きな
変化や事件を歴史に残しながら閉ざされようとしております。これはまた、二十一
世紀の新しい幕あけのときでもあります。
森総理は、こうした大きな節目のときにこそリーダーシップをとって、力強く二十一
世紀の扉を切り開いていただきたいのであります。もちろん、私
たち政治を託される者も力を合わせ、
国民が安心感を持てるよう努力しなければなりません。
森総理の唱える
日本の
国家目標に向かって、
日本に生まれてよかったと実感できる、そして
世界の
人々からも尊敬と
信頼を集めることのできる品格のある
国家にすべく、また、物質文明一色から、
精神文明と物質文明の融合を図りながら、
経済だけでなく
文化の面でも、スポーツ、芸術
文化の振興によって、
先進国と呼ばれるよう新しい
国家モデルを築かなければなりません。(
拍手)
こうした二十一
世紀の
国家像について、
国民的
議論を踏まえつつ明確にしていくことが、今こそ我々
政治家に求められる責務であると思います。それがまた、
自民党と公明党、保守党との連立の使命であり、
国民の望みを確実に実現させることとなるでしょう。
森総理、私
たち与党は、一糸乱れずさらに研さんを重ね、全力を挙げて森内閣を支え抜くことをお誓いいたしまして、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣森喜朗君
登壇〕