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2000-11-15 第150回国会 衆議院 法務委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十二年十一月十五日(水曜日)     午後二時開議  出席委員    委員長 長勢 甚遠君    理事 太田 誠一君 理事 杉浦 正健君    理事 山本 有二君 理事 横内 正明君    理事 佐々木秀典君 理事 野田 佳彦君    理事 漆原 良夫君 理事 藤島 正之君       岩屋  毅君    河村 建夫君       後藤田正純君    左藤  章君       笹川  堯君    菅  義偉君       武部  勤君    平沢 勝栄君       森岡 正宏君    渡辺 喜美君       石毛えい子君    手塚 仁雄君       日野 市朗君    肥田美代子君       山内  功君    山花 郁夫君       上田  勇君    木島日出夫君       瀬古由起子君    植田 至紀君       上川 陽子君    土屋 品子君     …………………………………    議員           熊代 昭彦君    議員           滝   実君    議員           田端 正広君    議員           東  順治君    議員           松浪健四郎君    法務大臣         保岡 興治君    内閣官房長官      上野 公成君    法務政務次官       上田  勇君    政府参考人    (内閣審議官)      金口 恭久君    政府参考人    (法務省人権擁護局長)  横山 匡輝君    政府参考人    (文部省初等中等教育局長    )            御手洗 康君    政府参考人    (厚生省児童家庭局長)  真野  章君    政府参考人    (労働省職業安定局次長) 青木  功君    法務委員会専門員     井上 隆久君     ————————————— 委員の異動 十一月八日  辞任         補欠選任   保坂 展人君     植田 至紀君 同日  辞任         補欠選任   植田 至紀君     保坂 展人君 同月十五日  辞任         補欠選任   加藤 紘一君     菅  義偉君   枝野 幸男君     手塚 仁雄君   平岡 秀夫君     石毛えい子君   木島日出夫君     瀬古由起子君   保坂 展人君     植田 至紀君 同日  辞任         補欠選任   菅  義偉君     加藤 紘一君   石毛えい子君     平岡 秀夫君   手塚 仁雄君     枝野 幸男君   瀬古由起子君     木島日出夫君   植田 至紀君     保坂 展人君     ————————————— 十一月十四日  人権教育及び人権啓発推進に関する法律案熊代昭彦君外八名提出衆法第一二号)  民事再生法等の一部を改正する法律案内閣提出第一一号)(参議院送付)  外国倒産処理手続承認援助に関する法律案内閣提出第一二号)(参議院送付) 同月二日  犯罪捜査のための通信傍受法廃止に関する請願大谷信盛紹介)(第八〇七号)  同(川端達夫紹介)(第八〇八号)  治安維持法犠牲者国家賠償法制定に関する請願石毛えい子紹介)(第八〇九号)  同(伴野豊紹介)(第八一〇号)  同(肥田美代子紹介)(第八一一号)  同(石井一紹介)(第八六四号)  同(岩國哲人紹介)(第八六五号)  同(大谷信盛紹介)(第八六六号)  同(山口わか子紹介)(第八六七号)  同(島聡紹介)(第九二七号)  法務局更生保護官署及び入国管理官署増員に関する請願肥田美代子紹介)(第八一二号)  裁判所の人的・物的充実に関する請願佐々木秀典紹介)(第八一三号)  同(肥田美代子紹介)(第八一四号)  同(漆原良夫紹介)(第八六八号)  子供の視点からの少年法論議に関する請願木島日出夫紹介)(第九二六号) 同月九日  治安維持法犠牲者国家賠償法制定に関する請願(大幡基夫紹介)(第九八二号)  同(奥田建紹介)(第九八三号)  同(鈴木康友紹介)(第九八四号)  同(辻元清美君紹介)(第九八五号)  同(土井たか子紹介)(第九八六号)  同(土肥隆一紹介)(第九八七号)  同(横路孝弘紹介)(第九八八号)  同(山花郁夫紹介)(第一〇六九号)  法務局更生保護官署及び入国管理官署増員に関する請願日野市朗紹介)(第九八九号)  同(保坂展人君紹介)(第九九〇号)  裁判所の人的・物的充実に関する請願日野市朗紹介)(第九九一号)  同(山花郁夫紹介)(第一〇七〇号)  犯罪捜査のための通信傍受法廃止に関する請願山花郁夫紹介)(第一〇六八号) 同月十三日  裁判所の人的・物的充実に関する請願平岡秀夫紹介)(第一一五四号)  犯罪捜査のための通信傍受法廃止に関する請願原口一博紹介)(第一二四一号)  治安維持法犠牲者国家賠償法制定に関する請願鍵田節哉君紹介)(第一二四二号)  同(原口一博紹介)(第一二四三号) 同月十五日  治安維持法犠牲者国家賠償法制定に関する請願細野豪志君紹介)(第一三〇三号)  同(東門美津子紹介)(第一三九六号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  政府参考人出頭要求に関する件  人権教育及び人権啓発推進に関する法律案熊代昭彦君外八名提出衆法第一二号)  民事再生法等の一部を改正する法律案内閣提出第一一号)(参議院送付)  外国倒産処理手続承認援助に関する法律案内閣提出第一二号)(参議院送付)     午後二時開議      ————◇—————
  2. 長勢甚遠

    長勢委員長 これより会議を開きます。  熊代昭彦君外八名提出人権教育及び人権啓発推進に関する法律案を議題といたします。  提出者より趣旨説明を聴取いたします。熊代昭彦君。     —————————————  人権教育及び人権啓発推進に関する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  3. 熊代昭彦

    熊代議員 人権教育及び人権啓発推進に関する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。  我が国におきましては、すべての国民基本的人権の享有を保障する日本国憲法のもとで、人権に関する諸制度の整備や人権に関する諸条約への加入など、これまで各般の施策が講じられてきましたが、今日におきましても、社会的身分門地人種信条性別等による不当な差別その他の人権侵害がなお存在しており、また、我が国社会国際化情報化高齢化進展等に伴って、人権に関するさまざまな課題も見られるようになってきております。  このような情勢のもとで、平成八年十二月、人権擁護施策推進法が五年間の時限立法として制定され、人権教育及び人権啓発に関する施策推進すべき国の責務が定められるとともに、これらの施策の総合的な推進に関する基本的事項等について調査審議するため人権擁護推進審議会が設置されました。同審議会においては、二年余りの調査審議を経て、昨年七月、法務大臣文部大臣及び総務庁長官に対して答申を行い、人権教育及び人権啓発を総合的に推進するための諸施策を提言し、現在、政府において、行財政措置によりこれらの実施が図られておりますが、人権教育及び人権啓発に関する施策の一層の推進のためには、同答申趣旨を踏まえ、人権教育及び人権啓発に係る基本理念や国、地方公共団体及び国民責務を明らかにするとともに、人権教育及び人権啓発に関する基本計画の策定や年次報告等の所要の措置を定めることが不可欠と考え、この法律案提出することとした次第であります。  法律案の概要につきましては、基本理念として、国及び地方公共団体が行う人権教育及び人権啓発は、学校、地域家庭、職域その他のさまざまな場を通じて、国民が、その発達段階に応じ、人権尊重理念に対する理解を深め、これを体得することができるよう、多様な機会の提供、効果的な手法の採用、国民自主性尊重及び実施機関中立性の確保を旨として行われなければならないこととし、国及び地方公共団体は、その基本理念にのっとって、人権教育及び人権啓発に関する施策を策定し、実施する責務を有するものとしております。また、国民責務として、人権尊重の精神の涵養に努めるとともに、人権尊重される社会の実現に寄与するよう努めなければならないこととしております。  また、国は、人権教育及び人権啓発に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、人権教育及び人権啓発に関する基本的な計画を策定しなければならないこととし、政府は、毎年、国会に、政府が講じた人権教育及び人権啓発に関する施策についての報告提出しなければならないこととしております。  さらに、国は、人権教育及び人権啓発に関する施策実施する地方公共団体に対し、当該施策に係る事業の委託その他の方法により、財政上の措置を講ずることができることとしております。  なお、この法律は、この法律施行の日から三年以内に、人権侵害された場合における被害者救済に関する施策充実に関する基本的事項についての人権擁護推進審議会調査審議の結果をも踏まえ、見直しを行うこととしております。  以上が、この法律案趣旨でございます。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願い申し上げます。ありがとうございました。
  4. 長勢甚遠

    長勢委員長 これにて趣旨説明は終わりました。     —————————————
  5. 長勢甚遠

    長勢委員長 この際、お諮りいたします。  本案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣内政審議室内閣審議官金口恭久君、法務省人権擁護局長横山匡輝君、文部省初等中等教育局長御手洗康君、厚生省児童家庭局長真野章君及び労働省職業安定局次長青木功君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 長勢甚遠

    長勢委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  7. 長勢甚遠

    長勢委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石毛えい子君。
  8. 石毛えい子

    石毛委員 民主党石毛えい子でございます。  ただいま与党提案法案としまして御説明をいただきました人権教育及び人権啓発推進に関する法律案につきまして質問をさせていただきます。私のいただきました質問時間は八十分という大変長い時間をちょうだいいたしました。どうぞよろしくお願いいたします。  さて、激動の世紀と言われました二十世紀ももうあと一カ月半で幕を閉じようとしております。新しく二十一世紀を迎えることとなります。  今世紀を振り返ってみますと、この二十世紀は、一方で科学技術が急速に発達し、人々生活に豊かさをもたらした反面、改めて申し上げるまでもないことですが、二度の世界大戦、あるいはまた冷戦体制の終結後もなお地球上の各地に生起する紛争に見られるように、この二十世紀人類に多くの災いをもたらした世紀でありました。他方で、各国の経済優先政策地球規模で深刻な環境破壊環境汚染をもたらし、人類の生存をも脅かしかねない状況をも招いております。  迎える二十一世紀は、こうした紛争ですとか、あるいは環境問題を解決し、真に生きとし生けるもの、その命が大切にされるように、人権世紀というふうに私どもは言うようになっております。その人権世紀といいますとき、その表現には、ただいま申し上げました二十世紀の経験を踏まえて、人類の幸福が実現する時代にしたいという全世界人々の願望が込められていると思います。  この人権尊重ということにつきましては、一九四八年の世界人権宣言以来、国連を中心にさまざまな努力が続けられてまいってきておりますが、それでも、今なお、たった今申し上げましたように、世界各地で民族や人種宗教の違いを理由にした紛争は後を絶っていないという状況にあります。  国連は、このように打ち続く人権侵害に対しまして、その克服の有効な手だてとして、人権教育による解決を求めて、一九九四年十二月二十三日に、総会におきまして「人権教育のための国連十年」を決議しております。  私は、今回のこの人権教育及び人権啓発推進に関する法律案審議に当たりまして、改めてこの国連人権教育の十年の基本文書を読み返してみましたけれども、なぜに今人権教育が大切なのかという点に関しまして、大変感銘深い記述がなされております。  この人権十年の設定に関しまして、国連総会決議は、経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約の第十三条を考慮し、また、人種差別撤廃条約あるいは女子差別撤廃条約、そして、もう日本条約批准後十年がたつかと思いますが、子ども権利に関する条約、こうした条約等々に教育についての権利が規定されておりますが、その教育についての権利を踏まえて、国連人権教育の十年を定めたというふうに決議をしております。  繰り返しになりますが、改めてその経緯をたどっておりまして、私はいわゆる国際人権A規約と呼ばれている経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約におきまして次のような文章が記載されていることに感銘を受けました。少し長くなりますけれども、一部を読ませていただきます。「締約国は、教育が、すべての者に対し、自由な社会に効果的に参加すること、諸国民の間及び人種的、種族的又は宗教的集団の間の理解、寛容及び友好を促進すること並びに平和の維持のための国際連合の活動を助長することを可能にすべきこと」、これが教育についての権利に触れられております。  改めて、こうした国連決議あるいは諸条約推移をたどり返してみまして、今人権教育及び人権啓発推進に関する法律案審議を行い、そして法によってこの推進を定めていくことの意義を痛感している次第でございます。  ただ、翻りまして、我が国人権状況を注目しますと、人権尊重基本原理とする日本国憲法のもとに、人権尊重は次第に定着しつつあると言えます。しかし、同和問題、女性差別障害者差別など不当な差別が、憲法施行後五十年以上経過した今日でも、なお解消されているとは言えません。日本世界人権尊重に寄与し、そして国際社会で名誉ある地位を得るためにも、これらの課題を早急に解決していくことが重要であると考えるものです。  このたび、その人権尊重の一環として、人権教育及び人権啓発推進に関する法律案提案され、私はこの人権尊重目的にした法案趣旨に基本的に賛成したいと考えるものでございますが、なお内容を豊かにし、そして真に人権尊重人権啓発推進するために有効な法律を策定したいという立場で、以下、質問をさせていただきたいと存じます。  まず最初に、提案者への御質問でございますけれども、法の第一条「目的」の条文の中に「人権尊重緊要性に関する認識高まり、」と記されてございます。私はこの表現積極性を受けとめるという立場をとらせていただきたいと考えますが、ここで「緊要性に関する認識高まり、」これはなぜ今この法案審議するのか、成立を求めるのかという点で大変重要なポイントになるかと思いますので、この点、どういう御認識であるのかということをお伺いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
  9. 熊代昭彦

    熊代議員 石毛委員の大変に御高邁な人権に関する御理解と、そして二十一世紀に向けての決意をお伺いしまして、心から敬意を表する次第でございます。  御質問の「人権尊重緊要性に関する認識高まり、」ということでございますけれども、御指摘ございました国連A規約の問題とか、本当に人権、人が人たるゆえに持っている権利、そして幸せになる権利というものに対する高まりが御指摘のとおり国際的にも非常にございました。  私ども国内的な高まりについても大いに認識してございまして、例えば、一、二申し上げれば、同和問題の解決に向けた方策の基本的あり方審議した地域改善対策協議会意見具申平成八年五月十七日に出されておりますけれども差別意識の解消に向けた教育及び啓発推進人権侵害による被害救済等の対応の充実強化を今後の重点施策として提言していただいております。  また、人権擁護施策推進法平成八年十二月二十六日に成立いたしましたけれども、同法に基づいて設置されました人権擁護推進審議会から、人権尊重理念に関する国民相互理解を深めるための教育及び啓発の総合的な推進に関する基本的事項について答申をいただいております。平成十一年七月二十九日のことでございます。  また、御指摘ございましたように、国際的に見れば、「人権教育のための国連十年」が、平成七年一月一日から平成十六年の十二月三十一日までの十年間、一九九五年から二〇〇四年まででございますけれども平成六年十二月二十三日に国連総会決議されました。  我が国においても、それを受けまして、平成七年十二月十五日に閣議決定を行いまして、人権教育のための国連十年推進本部内閣総理大臣本部長として設置されました。そして、同本部が「人権教育のための国連十年」に関する国内行動計画を取りまとめた、平成九年七月四日のことでございます。そして、同計画が現在実施されているところでございます。  また、国際的に見ますと、超大国アメリカ人権外交推進している、こういうこともございます。心身障害者対策充実の中にも、やはり人権を緊急な課題として取り上げていくという思想があると思います。いじめ問題が大変にクローズアップされておりますけれども、これも子供たち人権を大切にするという観点から積極的に取り組まなければならない問題だと思います。  以上、一例を申し上げましたが、人が人として尊重される、幸せに生きるべき権利を守る、二十世紀の最後の年に当たりまして、二十一世紀をにらんで、それを実現したいということが緊要性認識でございます。
  10. 石毛えい子

    石毛委員 ただいま大変総合的な広がりの中で、なぜこの法律提案に至ったかという御説明をいただきました。日本の、それこそ歴史的な問題として長く続いてまいりました同和問題を解決する、その方向に向けた地域改善対策協議会の提言ですとか、あるいは先ほどの提案理由説明の中にもございました人権擁護施策推進法、それに基づきました審議会教育啓発に関する答申、そしてまた、私も触れさせていただきました国連人権教育の十年、こうした法制度的な推移について御指摘をいただきまして、さらにまた、国際関係の中での人権外交推進、あるいは国内的には、障害者対策の中での人権に対する政策的な展開、大変幅広い御指摘をいただきまして、そうした経緯の上で、この法律制定に向けた審議に至っているということ、私も理解をいたします。  それでは、次の質問、引き続いて提案者にさせていただきますが、同じくこの「目的」の中で、二行目から三行目にかけまして、「不当な差別発生等人権侵害現状その他人権擁護に関する内外情勢にかんがみ、」という記述がございます。ただいま御答弁いただきました中身と重なるところもあるかと存じますが、少し具体的な内容に入っている規定ぶりだと思いますので、この点について、どのような現状あるいは情勢を御認識なさっていらっしゃるかということをお尋ねいたします。
  11. 熊代昭彦

    熊代議員 「社会的身分門地人種信条又は性別による不当な差別発生等人権侵害現状その他人権擁護に関する内外情勢にかんがみ、」というのは、具体的にどのようなことかというお尋ねでございます。  これも一例を申し上げるにとどめざるを得ないと思いますが、例えば、次のようなことを念頭に置いている次第でございます。  いわゆる部落差別外国人に対する差別アイヌ人々に対する差別女性に対する差別障害者に対する差別エイズ等感染者に対する差別など、差別事象が現在もなお発生しているということ。そして二番目に、差別事象以外にも、先ほど申し上げました子供に対するいじめ、体罰、虐待やプライバシーの侵害など、さまざまな人権侵害が発生していることがその一例でございます。  「人権擁護に関する内外情勢」ということも書いてございますので、これについても申し上げますと、これは、あらゆる国内、国外の情勢を意味しているわけでございます。  例えば、さまざまな人権問題として今社会的に注目されていること。先ほど申し上げた児童虐待などの子供人権問題、それから、高齢化進展に伴いまして、高齢者人権問題といいますか、痴呆等後期高齢には出てまいりますので、そういう人権問題とか、あるいは、インターネットが普及してまいりまして、インターネットを利用した差別情報を掲示する、それが多くの人の目に触れる、そういうインターネット時代差別事象等もございます。それから、人権に関する諸条約、例えば人種差別撤廃条約とか児童権利条約、これも御指摘がございましたけれども、加入しておりますので外の事象国内に及んでくる、こういうことも含まれると思います。  以上、一例を申し上げました。
  12. 石毛えい子

    石毛委員 御指摘いただきました事象と申しますか、それは私も同じように受けとめておりまして、先ほど来御指摘のあります人権擁護推進審議会教育啓発に関します答申の中にも、例えば、女性における固定的役割分担意識ですとか、職場における男女差別、セクシュアルハラスメント、ドメスティック・バイオレンス、子供についてのいじめ、あるいは高齢者虐待障害者就職差別、同和問題として根深く続く就職差別結婚差別アイヌ人々外国人HIV感染者ハンセン病方々、刑を終えて出所した方に対する差別の問題というように、答申にも広く指摘をされているところでございます。  児童虐待高齢者虐待は昔からあったということをおっしゃる方もおられますけれども、昔からあったといたしましても、少なくとも、現実に今社会問題としてとらえられるようになっているということは、人権意識が一定の広がりを持ってきている、そのあらわれであるというふうにも思います。  それからもう一点、私の認識として、内外情勢という意味で申し述べさせていただきますと、御提案者は既に御存じのことでいらっしゃいますけれども、一九九八年十一月五日に採択されました国連規約人権委員会日本に対する勧告でも、例えば、婚外子子供さんに対する差別でありますとか、先住民族であるアイヌ方々土地権や言語、高等教育に関する差別、そしてまた、同和問題に関して、教育、収入、効果的な救済制度において存在している差別というような勧告指摘されている中身も、内外情勢というときにやはり受けとめるべき内容であるかというふうに私は存じます。  ここで、実は、私ども民主党、そして社会民主党共同提出をさせていただきました、人権に関する教育及び啓発推進に関する法律案、これは内閣委員会に付託になっておりますけれども、少しその中身について触れさせていただきたいと存じます。  私ども提出いたしました法律の第一条「目的」のところでは、とりわけ日本差別問題の歴史的な大きな事象でございます部落差別を含意いたしまして、「歴史的社会的理由により生活環境等安定向上が阻害されている地域」、こういう記述をいたしております。また、もう一方で、民主党社会民主党提案法律の第一条の「目的」の中には、「障害による不当な差別その他の人権侵害」ということも規定いたしまして、憲法に規定されております、社会的身分門地人種信条性別に加えまして、人権侵害差別事象につきまして豊富化をしている、そういう内容になっております。  九八年十月に成立をいたしました、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律、これは前文が付されまして、この前文の中に、「我が国においては、過去にハンセン病後天性免疫不全症候群等の感染症の患者等に対するいわれのない差別や偏見が存在したという事実を重く受け止め、これを教訓として今後に生かすことが必要である。」こうした、日本におきましても、障害をお持ちの方、病をお持ちの方に対する偏見や差別の問題があったということを法文の中に規定してきたという経緯も含めまして、民主党社会民主党法案目的には、今申し上げました事象をも含めて、差別の解消、人権侵害の解消を目的に置いているということをこの場でつけ加えさせていただきたいと存じます。  それでは、次の質問に移らせていただきます。  やはり、提出者にお伺いをいたしますが、この法律の中で、第二条の「定義」におきまして、「人権教育とは、人権尊重の精神の涵養を目的とする教育活動をいい、」という規定になっております。  実は、国連人権教育の十年及びその行動計画では、教育につきまして、大変中身の豊かな規定のされ方がしております。紹介をさせていただきたいと思いますが、教育、研修、宣伝、情報提供を通じて、知識や技能を伝え、態度をはぐくむことにより、人権文化を世界じゅうに築く取り組みというような規定がこの国連人権教育の十年及び行動計画ではなされておりまして、大変幅広い定義でありますし、そしてまた、人権教育のあり方、内容をめぐりまして、豊富化する規定になっているというふうに私は受けとめるものでございます。  与党提出のこの第二条の人権教育の定義に関しましても、今私がここで述べました大変幅広い内容を射程として持っている定義であるというふうに受けとめさせていただいてよろしいでしょうか。御確認をさせてください。
  13. 熊代昭彦

    熊代議員 与党案の人権教育内容についてお尋ねでございますが、御指摘ございました「人権教育のための国連十年」が含んでいる広い教育についての意味といいますか期待、そして教育が果たす機能に対する大変な思い入れといいますか、大変に尊重したものだと思います。  明治以来、日本という国は教育に対して大変にしっかりとした考え方を持ってまいりまして、現在少し緩んでまいりましたけれども、しかし教育そのものについては、非常に、あらゆる可能性を教育が持っているということで、そういう意味では、国連十年の教育と同じ意味でございます。  ただ、この法律は、人権教育人権啓発という二つの概念を書き分けておりますので、次元の低いことを申し上げて恐縮でございますが、人権教育は学校教育社会教育といういわば定型化された教育をいっておりまして、人権啓発はそれも含んでのもっと広いものでありますけれども、一応、この法律では、定型化された学校教育及び社会教育を除いて定義してございます。  そういう言葉遣いの細かい違いはございますけれども、いずれにいたしましても、教育の大切さ、そして教育人権の確立に対して持つ意味ということは、「人権教育のための国連十年」と同じ思想に立っているというふうに思います。
  14. 石毛えい子

    石毛委員 第二条の「定義」の書きぶりで、「人権尊重の精神の涵養を目的とする」、この規定の仕方に私は特段の異議を持つものではございませんけれども教育のあり方と申しましょうか、あるいは方法論も含めて、今大きな転換期に来ているのだというふうに私は認識をしております。  その次の啓発ともかかわりますけれども、例えば、一方的な承り型の教育というよりは、教育を受ける主体がみずからをエンパワーメントしていくというか、自分自身を力づけていくといいましょうか、インスパイアしていく、活気をつけていく、そういう中で人権教育において人権尊重の態度を身につけていく。  与党の法案の中にもそうした記述がなされている部分も、例えば、第六条では「人権尊重される社会の実現に寄与するよう努めなければならない。」という規定もございますので、二条が人権尊重の精神の涵養を、その涵養の結果が自分自身の人間的な可能性の実現と同時に社会への寄与、そうした多義的なといいましょうか幅広い内容を持っているというふうに理解をさせていただきたいと存じます。  ただいま、国連人権教育の十年の定義が持っている射程と異なるものではないという御答弁をいただいたかと存じますので、私もそのように考えますということを申し述べさせていただきます。  次でございますけれども、同じく「定義」の「人権啓発とは、」につきまして、私はこの点に関しましても、第三条の「基本理念」におきまして、後段の部分、「人権尊重理念に対する理解を深め、これを体得することができるよう、多様な機会の提供、効果的な手法の採用、」とございますので、本当に啓発というのが、先ほども申しましたように、よくなされている一方的な講演会ですとかポスターの掲示、こういうようなことも方法の一つとしては大切かとも思いますけれども、さまざまな啓発の手法がこれからは駆使されていく、そういう多様な経験を生かしていく、参加型あるいは双方向の啓発活動を行っていくというようなところまで含めて、幅広くとらえたいと思います。その点に関しまして、これは御感想ということになろうかとも思いますけれども、いかがでございましょうか。
  15. 熊代昭彦

    熊代議員 教育の幅広い方法論ということにつきましては、委員指摘のとおりだと思います。全くすばらしい御指摘でございまして、承り型の一方的に聞くだけとかいうことではなくて、聞く側もみずから発信し、先生と生徒がお互いに、いわば対等な立場で情報交換をし、お互いに高め合うということも含めまして、あるいはもうインターネット時代でございますから、双方向性のある、これから非常にマス教育も出てくるでございましょうし、そういうあらゆるものを含んだことということで、しかもそれが聞く側の自発性を大いに尊重した教育ということで、先生の御指摘のとおりの広い意味での教育を我々考えさせていただいております。
  16. 石毛えい子

    石毛委員 ありがとうございました。  続いて、提案者にもう一度お尋ねをしたいと思います。  第三条の「基本理念」の中で、「国及び地方公共団体が行う人権教育及び人権啓発は、学校、地域家庭、職域」、このところが先ほど御指摘になられました学校教育社会教育というところの分解した具体的な場面になるかと思いますけれども、その続きのところに「その他の様々な場を通じて、」とございます。大変細部にわたりますけれども、「その他の様々な場」と申しますのは、具体的にはどのような場を想定しておられますでしょうか、御紹介をお願いいたします。
  17. 熊代昭彦

    熊代議員 石毛委員は大変正確に読んでおられまして、確かにここまで言うと、あといろいろ考えますと、「その他の様々な場」というのは、もう抽象的に言えば、その他さまざまなあらゆる場でございます。  なかなかそのほかに考えられないわけでございますが、例えば、今NPO法、ボランティア活動を大いに推進しておりますので、ボランティア活動をともにやっていく中でお互いに教育をし合うというようなこととか、あるいは各種の団体活動がございまして、趣味の会とか職業団体の会とかいろいろございます。そういう団体の活動の中でも同様なことを考えていくということも含まれておりますので、今直ちに思いつくのはそういう二例でございますけれども、あらゆる場面ということを想定しております。
  18. 石毛えい子

    石毛委員 大変すばらしい御指摘をいただき、私としては感謝をいたします。  NPOの活動をされる方たちが、みずから人権教育啓発について学び、あるいは発信するというような御指摘は、今の社会あるいはこれからの社会にとって大変大事な点だと思いますし、各種の団体活動についても同じように指摘ができるかと思います。  私も、八十分質問時間をいただきましたので、逐条解釈という意味もありまして細かい点まで触れさせていただいておりますけれども、私は、国連人権教育の十年、あるいは推進本部で毎年御報告をされております実施状況、これを拝見しておりまして、例えば刑務所というのは、そこに働いている方は職場になるのでしょうけれども、受刑中の方が例えば人権教育を受けるとするとそこは何に当たるのだろうとか、そういうようなことをいろいろ思いました。学校、地域家庭、職域、そこが人権教育の場、啓発の場として重要なのはもちろんでございますけれども、本当に多様な、人がいるところあまねくと言っても言い過ぎではないぐらい、工夫を凝らして、さまざまな場で取り組まれていくということが大事なことではないかというふうに考えまして、細かい点ではございますけれども質問をいたしました。  それでは、また引き続きまして提案者にお尋ねをいたします。  第七条「基本計画の策定」というところでございますけれども、ちょっと率直な表現で失礼でしたらおわびをしなければなりませんけれども、すごくさっぱりした書きぶりなので、もう少し中身を知りたいというのが正直なところでございます。  それで、幾つか具体的に質問をいたします。  まず、計画ですから期間があると思いますけれども、期間についてはどのようにお考えになっておられるのでしょうか。例えば十年計画ですとか、そういうお考えなのでしょうか。
  19. 熊代昭彦

    熊代議員 大変に簡潔に書いてございます。短い法律でございますし、基本法的な性格でございますので簡単に書いてございますので、御質問趣旨はもっともだと思います。  基本計画は、一つは期間ということもございましょうが、基本という質的なこともあると思います。一番肝心なことはこれだというようなこととかですね。それから、基本計画でございますから、余りショートタームではなくて、中長期に達成すべきこととか、そういうことをにらんでやっていくということでございます。しかしまた、短期のものも、質的には非常に重要であるというものも取り込まれると思います。  いずれにいたしましても、法律を定めまして、その中で実施機関に十分考えていただく。審議会もございましょうし、そしてまた国会報告にもなっておりますので、国会報告の中で我々もチェックできますので、実施機関がこの抽象的な表現を非常に具体的な、豊かなものにしていただくということを期待して、書かせていただいております。
  20. 石毛えい子

    石毛委員 ありがとうございました。  それでは、同じく基本計画についてですけれども、この計画の総合性と申しましょうか、広がりにつきましては、どんなふうにお考えになっていらっしゃいますでしょうか。
  21. 熊代昭彦

    熊代議員 計画の総合性、広がりでございますけれども、これも、法律といたしましては、実施機関にお任せしていきたい、しかし、それを国会報告でチェックしていきたいということでございますけれども、総合性、広がり、国際的に見ても遜色のない立派なものを出していただける、今先生の御質問でいろいろと御指摘ございました、歴史的なもの、国際的なもの、そして国内的なもの、国内の歴史的なもの、そういうものも含めて、総合性あり広がりあるものを基本計画としてこの法律を所管する行政当局が定めてくれるもの、そういう期待のもとに書いております。
  22. 石毛えい子

    石毛委員 ただいまの御答弁の中で、実施機関にゆだねていくというふうにおっしゃられましたけれども、この計画の策定機関はどのように今構想なさっていらっしゃいますでしょうか。
  23. 熊代昭彦

    熊代議員 この法律の所管官庁は、現在の体制では法務省と文部省でございます。全体の総括を法務省が行う、その総括のもとで文部省が人権教育を所管するということでございます。しかし、関係各省は法務省の統括のもとに協議会を現在でも設置しておりまして、関係全省庁はこの協議会のもとに参集してまいります。ですから、一義的な基本計画の策定は法務省、それから、文部省は来年からは文部科学省になりますけれども、法務省、文部科学省のもとに置かれておりますが、全省庁の関係する部分はそれに十分参画しながら基本計画の策定が行われる、このように考えております。
  24. 石毛えい子

    石毛委員 この点、策定機関に関しましては、民主党社会民主党提出内閣委員会付託の法案では、内閣府に人権教育啓発推進会議を設置するというように定めたところでございますけれども、与党案につきまして、策定機関をどのように考えておられるかという点につきましてはただいまの御説明理解させていただきました。  計画推進体制ということでございますけれども、この点につきましても念のために御指摘いただければお願いいたします。
  25. 熊代昭彦

    熊代議員 計画推進体制も、先ほど申し上げました計画の策定体制と同様だと思います。所管官庁、法務省が中心になりまして、もう一つの、サブの中心は文部省でございます。しかし、各省庁はその統括のもとにすべてそれを参画しながら実施していくということでございまして、地方公共団体も、この法律の関係のあらゆるところも関係しますが、それを統括して推進し、あらゆるところはそれに御協力していただくということだというふうに思います。  内閣府のお話もございましたが、総務庁で従来同和対策をやっておりまして、総務庁でやるのがふさわしいのじゃないかという御意見も確かに私ども伺いました。ただ、今は人権問題として人権問題の中に統括して、すべての人権問題の一環として同和対策もやらせていただくということでございます。  そういう意味で、人権の所管官庁の法務省ということでございますけれども、附則の第二条に見直しの条文をつけてあります。ですから、この体制を実施しながら、そしてまた、人権擁護推進審議会答申も見ながら、その点も十分に見直していくということも考えておりますが、いずれにしましても、私どもは、法務省及び文部省、そして全省庁が協力する、この実施体制に自信を持って提出させていただいております。
  26. 石毛えい子

    石毛委員 今の御答弁を伺いますと、国連人権教育の十年あるいは人権教育国連十年の推進体制、実施機関とどのように違っていくか。確かに、閣議決定と法的規定として違ってくるというところはあると思いますけれども中身的にどう違ってくるのかという点につきましてちょっとわかりにくいのですけれども、この点につきましてはまたもう一度後ほど質問させていただきたいと思います。  熊代先生、少しお休みをいただきまして、「人権教育のための国連十年」につきまして、内政審議室にお尋ねをしたいと思います。  ことしから十年の後半期に入っていくわけでございますが、推進状況につきまして、どのような段階に到達しているかということを簡単に御説明いただきたいと思います。
  27. 金口恭久

    金口政府参考人 お答え申し上げます。  「人権教育のための国連十年」の推進状況でございますが、国際的な視野に立ちまして人権という普遍的な文化が構築され、一人一人の人権尊重されることが我が国にとって極めて重要でありますことから、国連の決定を踏まえ、平成九年七月に、人権教育のための国連十年推進本部におきまして国内行動計画を作成したところでございます。現在、関係省庁におきまして関連施策を鋭意推進しているところでございますが、推進本部といたしましては、この国内行動計画ができました翌年の平成十年以降、毎年フォローアップを行って国内行動計画推進状況について取りまとめを行っているところでございます。  本年度も九月二十一日に、平成十一年度における実施状況を中心としてその取りまとめを行ったところでございますが、本年は特にこの国連十年が中間年を迎えたということもございまして、これまで以上にこれまでのフォローアップを行ったわけでございます。その中でも取りまとめてございますように、これまで三年間、この国内行動計画が取りまとめられて以来、関係省庁におきまして所要の施策が着実に推進されているもの、このように認識しているところでございます。  今後とも、この後残された期間がございますが、この国連十年の推進本部を中心に関係省庁が連携いたしまして、国内行動計画に掲げられました施策を鋭意推進していきたい、このように考えておるところでございます。
  28. 石毛えい子

    石毛委員 国連人権教育の十年の中に、人権にかかわりの深い特定の業務に従事する者に対する研修が規定されておりますけれども日本ではこれにつきましてはどのような状況になっておりますでしょうか。
  29. 金口恭久

    金口政府参考人 お答え申し上げます。  人権教育推進に当たりましては、今先生御指摘のとおり、人権にかかわりの深い特定の職業に従事する人たちに対する研修の充実が不可欠であると考えております。  このため、「人権教育のための国連十年」に関する国内行動計画におきましては、検察職員、矯正施設・更生保護関係職員等、人権にかかわりの深いと考えられます十三の特定の職業に従事する人たちに対する人権教育の研修の充実に努める、このようにされているところでございまして、現在、関係各省庁におきまして、それぞれ関係する職員の人権教育に係る研修の充実に鋭意努めているところでございます。  この国内行動計画が策定されて以降、人権に関する講義内容充実させたり、あるいは研修の機会の拡大を図る、こういうことから参加人員がふえるとか、関係省庁におきましてそれぞれの実情に応じまして研修の充実を図っている、このように承知しているところでございます。  また、この推進本部におきましても、これらの研修のより効果的な推進という観点から、研修の内容でございますとかあるいは教材などにつきまして適宜情報交換を行う、このようなことで、人権教育に関する研修の充実が図られるように努めておるところでございます。  今後とも、この人権教育のための国連十年推進本部におきまして、関係省庁相互の緊密な連携を図りながら、人権教育に係る研修のより効果的な推進というものに努めていきたいと思っております。
  30. 石毛えい子

    石毛委員 人権にかかわりの深い特定の業務に従事する者につきましての教育、研修で、この「国内行動計画推進状況」を読ませていただきますと、特定の職業に従事する者ということで、日本の場合は、法律家、裁判官それから議員などの研修については記載をされておりません。研修はされていないというふうに理解していいのでしょうか。そしてまた、していないのでしたら、その理由はどこにあるのでしょうかということをお尋ねいたします。
  31. 金口恭久

    金口政府参考人 ただいまのお尋ねでございますが、この国内行動計画は、閣議決定で行政府人権教育を進めていく上の指針としてつくったものでございますので、そういう観点から、ここに書かれておりますものは行政府に限った施策推進という観点から書かせていただいているところでございます。
  32. 石毛えい子

    石毛委員 そういたしますと、今回この法案審議をされまして、人権教育啓発法律として策定されまして、その基本計画中身に、例えば議員法律家というような職業が明示されていくことになりますと、これからはそうした広がりを持つことになるというふうに理解してよろしいのでしょうか。  あるいは、この国連人権教育の十年といいますのは、国連に対して各国からどういう報告がされているのかということを私はちょっと知らないのですけれども、特定の職業に従事する者に対して諸外国ではどんなふうになっているかということを、例えば国会議員や自治体議員に対して人権教育が行われているのかどうかというようなことは把握されておりますでしょうか。おわかりでしたら、御指摘ください。
  33. 金口恭久

    金口政府参考人 ただいまのお尋ねでございますが、私どもは、我が国でこのような国内行動計画を策定して毎年どのような取り組みを行っているかということにつきましては、適宜外務省を通じて国連報告をさせていただいているところでございます。  また、諸外国の状況でございますが、国会議員や裁判官などを含めているかどうかということでございますが、かなり国によって状況が違いますので、ちょっと私ども一律にそれを把握しておりませんが、それぞれの国の状況に応じまして国内行動計画を策定しているもの、このように考えております。
  34. 石毛えい子

    石毛委員 答弁を一ついただいておりません。先ほどは、閣議決定で行政府としての範囲なので、私ども国会議員は立法府に属していますから入っていないのですという御答弁だったと思いますけれども、この法律成立いたしまして、今後の方向性ということにつきましてはどうお考えでいらっしゃいますかということを、この御答弁はまだいただいておりませんので。
  35. 金口恭久

    金口政府参考人 私ども内政審議室といたしましては、国内行動計画を策定いたしまして推進本部の庶務を取り扱っておるわけでございますけれども、先生が今お尋ねの件につきましては、私どもとして行政府立場として策定しておりますので、国会議員方々あるいは裁判官の方々も含めてどうしていくかということは、ちょっと私どもとしてこの場でお答えすることは適切でなかろうかというふうに考えております。
  36. 石毛えい子

    石毛委員 そうしますと、どの場で議論することが適切になるのかということを念のために御教示いただきたいと思います。
  37. 金口恭久

    金口政府参考人 何度も同じようなお答えになって恐縮でございますが、この国内計画を策定いたしますときには、私どもはとりあえず行政府の内部のものとしてどういう形で進めていくかということでつくらせていただいたものでございますので、先生今御指摘がございましたような広がりを持ったものになるということは、またもっと国会の場とかそういうところで御審議の上、私どもとしては行政府として今後ともこの国内行動計画に基づきまして進めていきたい、このように考えておるところでございます。
  38. 石毛えい子

    石毛委員 裁判官それから議員、いずれも人の命、安心、安全、人権にかかわる重要な業務と申しましょうか、仕事を担っているわけでございます。そして、裁判官や議員はそうした人権侵害の実情、実態に触れる、出会う機会は多いという理解もあるのかもしれません。それからまた、今御答弁いただきましたように、閣議決定の中で行政府の範疇だけというふうに実務的な理由があるのかもしれませんけれども、今、大変激動の時代、そして人権侵害の実情というのは、侵害されているその方たちからの発言といいましょうか発信が一番大きいわけですから、人権に密接にかかわる司法関係の方あるいは議員、それぞれに人権教育をやはりきちっと学んで、自分自身を絶えずリフォームしていくといいましょうか、そうしたことが大事だというふうに私は考えておりますということを申し述べさせていただきます。  それから、できましたら、外務省を通じて国連報告をしているということでございますから、諸外国では人権にかかわりの深い特定の業務に従事する者に対する人権教育というのはどのような広がりを持って行われているかということを、後ほどで結構でございますから教えていただければとお願いをいたします。  それでは、次の質問でございますけれども、事業者に対してはどのように人権教育啓発推進しているのでしょうか。やはり内政審議室に、審議官にお尋ねいたします。
  39. 金口恭久

    金口政府参考人 国内行動計画におきましては、先ほど申し上げましたように、十三の特に人権にかかわりの深いという形で書かれております。そういうことから、先生今おっしゃいました事業者という意味がちょっとあれでございますけれども、私どもとしては、このように、特にこういう人権にかかわりの深いと考えられております職種につきましては、それぞれ推進本部の下にいろいろな研修の連絡会などを設けておりまして、そこで適宜情報交換をしながら、また今後さらに一層こういう研修を進めていくということをしておりますので、その中で、さまざまな十三の職種の方々について研修をいかに進めていくかということは、定期的にそういう御相談を申し上げてやっておるところでございます。
  40. 石毛えい子

    石毛委員 それでは、もう一点審議官にお尋ねをいたしますけれども、都道府県、区市町村の地方公共団体での人権教育啓発に関する推進状況、それから行動計画の策定がどの辺まで広がっているかということをお願いします。
  41. 金口恭久

    金口政府参考人 国の国内行動計画ができましてから、都道府県においても同じような取り組みを行っていただいているところがかなりふえてきているわけでございます。都道府県におきましては、これは平成十二年八月現在でございますけれども、現時点で三十五の都府県におきまして国の推進本部に相当いたしますような行政機関内での横断的な組織を設置されているということでございます。また、国の国内行動計画に相当する都道府県のそういう行動計画というようなものを策定しておりますところがかなりふえてきておる、こういう状況でございます。また、都道府県だけではなく市町村におきましてもかなりそういういろいろな取り組みも行っているところがございますので、そういうことから、各県におきましてもそういう取り組みが広がってきているものというふうに理解しております。
  42. 石毛えい子

    石毛委員 恐縮ですけれども、行動計画につきまして、かなりという表現ではなく、具体的に都道府県の数がおわかりだと思いますので、御指摘ください。
  43. 金口恭久

    金口政府参考人 失礼いたしました。  昨年の段階では二十一府県でございましたが、本年度では二十六の府県で行動計画を策定しておる状況にございます。
  44. 石毛えい子

    石毛委員 十年のうち半分の期間が過ぎまして行動計画策定が二十六といいますのは、決して多いというふうには言えないのではないかという思いが私はいたします。都道府県でそうですから、区市町村になればもっと格段に少ないというふうにとらえざるを得ないのではないかと思います。  これ以上は質問は控えますけれども、与党の法案の中の第五条が「地方公共団体責務」といたしまして、「地方公共団体は、基本理念にのっとり、国との連携を図りつつ、その地域の実情を踏まえ、人権教育及び人権啓発に関する施策を策定し、及び実施する責務を有する。」という規定になっておりますので、この法律成立いたしました後は、残す人権教育十年の後半、ここ一年のうちに急ピッチでそれぞれの都道府県、区市町村がこの計画を進められるであろうということを期待しておりますということを申し上げて終わりにしたいと思います。  それでは、きょうは省庁からもおいでいただいていますので、まず労働省にお伺いいたします。  先ほどの質問に重なりますけれども、事業者に対する人権問題の教育、研修の実施状況について教えてください。
  45. 青木功

    青木政府参考人 労働省におきましては、国民の職業選択の自由、就職の機会均等などを確保いたしまして雇用の促進等を図るために、事業主に対してさまざまな角度からの研修等を行っております。  まず一つといたしましては、同和関係住民を初めとする労働者の採用に当たっての公正な採用選考の確保の問題でございます。この点につきましては、百人以上の事業所にお願いをしております公正採用選考人権啓発推進員という方々を各事業所に選考していただいておりますが、これらの方々に対する研修を実施しております。平成十一年度の数字がございますが、七百七十回やっております。それから、同じように企業の役員などトップクラスに対する研修もあわせて実施しておりまして、これも同じ平成十一年に四百三十一回実施をいたしております。  それから、いわゆるセクシュアルハラスメントについてでありますけれども、これは男女雇用機会均等法において、職場におけるセクシュアルハラスメントを防止するため事業主に対して雇用管理上必要な配慮を行うことを法律によって義務づけておりまして、指針に基づきまして、各事業所においてセクシュアルハラスメントに関する方針の明確化、従業員に対する周知啓発などが行われておるところでございます。  また、御案内のように、障害のある方々につきましても、雇用促進月間の設定とか雇用促進大会の開催、啓発用のポスターその他の啓発手段を使いまして採用選考に関する各種啓発活動を行っておるところでございます。  以上でございます。
  46. 石毛えい子

    石毛委員 ありがとうございました。  続きまして、文部省にお尋ねしたいと思いますが、学校教育社会教育人権教育状況、そして今後の課題につきまして簡単に教えていただきたいと思います。
  47. 御手洗康

    御手洗政府参考人 文部省におきましては、憲法及び教育基本法の精神にのっとりまして、学校教育及び社会教育を通じて人権尊重の意識を高める教育推進に努めているところでございます。  学校教育におきましては、小中学校を通じまして日本国憲法を学習する中で基本的人権に関する指導を行うこととしておりまして、例えば中学校で申し上げますと、人間の尊重日本国憲法の基本原則というような項目の中で、人間の尊重についての考え方を基本的人権を中心に深めさせる、また日本国憲法基本的人権尊重等を基本的原則としていることについての理解を深めさせる。学校教育の中で扱っておりますし、また道徳教育におきましても、人間尊重の精神を具体的な家庭や学校や地域生活の中に生かすということを目標といたしまして、具体的には、例えばだれに対しても差別をすることや偏見を持つことなく人間尊重の精神をはぐくむよう指導するということを学校教育全体を通じて行っているところでございます。  また、この推進のために、学校の人権教育の実践的な研究を委嘱する事業や、あるいは社会教育におきましては公民館等の社会教育施設を中心に各種の学級、講座の開設や交流活動等の事業を行っているところでございまして、文部省としてもそのための助成等の事業を推進しているところでございます。
  48. 石毛えい子

    石毛委員 今後の課題については十分に御指摘いただかなかったように思いますし、私は人権教育啓発というのは非常に具体的な方法論が問われているのだと思いますけれども、時間がございませんし、これ以上お尋ねさせていただけませんので、また教えていただきたいと思います。  厚生省にお尋ねいたしますけれども、就学前の保育に、保育指針の中で人権についての取り組みが指摘されていると思いますが、ごく簡単に教えてください。
  49. 真野章

    真野政府参考人 お答えいたします。  子供が大人との相互作用の中で人への信頼感や愛情を獲得していくことから、日々の保育の中で、保育士との愛着関係を基礎に人に対する愛情と信頼感を醸成し、人権尊重する心を育てていくことが重要だというふうに考えておりまして、平成八年の地対協の意見具申平成九年の人権教育国連十年国内行動計画などを踏まえまして、平成九年の四月に「「人権を大切にする心を育てる」保育について」という通知を各都道府県にいたしまして、各留意点を示しております。  こういうものを踏まえまして、昨年の十月に保育所保育指針の改定を行ったわけでございますけれども、「第一章 総則」の中に、従来から「保育の目標」として、「人権を大切にする心を育てる」ことを目指すということが入っておったわけですが、昨年の改定におきましては、これに加えまして、「保育の方法」として、「子ども人権に十分配慮するとともに、文化の違いを認め、互いに尊重する心を育てるようにすること。」「子どもに、身体的苦痛を与え、人格を辱めることなどがないようにすること。」に留意するというように、方法のところでもそういうものを規定いたしまして、それぞれの保育現場での子供人権に配慮した保育が実践されるように各都道府県を指導いたしているところでございます。  現に、そういう保育士の皆さん方それから園長さんなどの研修を通じてそれを教育いたしますとともに、いわば保育士さんの卵であります保育士さんになるための養成学校におきましても人権教育などのカリキュラムを組んで教育をいたしております。  今後とも、そういう面に努力をしていきたいというふうに考えております。
  50. 石毛えい子

    石毛委員 ありがとうございました。  各省庁からそれぞれ、人権教育啓発現状あるいはこれからについて御指摘いただきましたけれども、これからもそれぞれ省庁、総合的な連携のもとで取り組まれるということが大変大事な点かと思いまして、きょう御指摘をいただきました。ありがとうございました。  大臣にお尋ねをいたします。  基本計画の策定等に関しまして、地方公共団体また人権団体等に経験を尋ねるとかあるいは意見を聞くとか、そうした意見反映の仕組みと申しましょうか、あるいは参加の仕組み、こうしたことをきちっと講ずべきだというふうに私は考えるものでございますけれども、いかがでございましょうか。
  51. 保岡興治

    ○保岡国務大臣 基本計画の策定については本法律案成立を待ちまして具体的に検討することにいたしておりますけれども、その策定に当たっては、人権教育及び人権啓発に関する施策の総合的、計画的な推進を図るとの本法の第七条の趣旨にかんがみまして、地方公共団体など関係各方面の意見をよく踏まえて、その踏まえる方法についてもいろいろ工夫のできるところはいたしまして、充実した内容のものになるように努力したいと考えています。
  52. 石毛えい子

    石毛委員 時間がありますとそれぞれ各省庁から御指摘いただきました点を、今どんな実践方法が開発されているかとか、それから、私は障害者の方に随分友人がたくさんおりますけれども、例えば自分自身を開いていくといいましょうか開放していくときに、今皆さんがとても大事になさっていらっしゃる、ある意味で啓発の方法と言っていいと思いますけれども、ピアカウンセリングをされるというようなことが随分広がっております。  今まで、ともすると教育といいますのは一方向的な方法論が多かったと思いますけれども、今本当に、各地域女性や被差別部落の方あるいは障害をお持ちの方、それぞれいろいろなつらい経験をされていらっしゃる方が、自分自身を開放していくと申しましょうか社会に向けて発言していくということで、いろいろな実践方法を編み出されているのだ、その時期だというふうに私はとらえております。  そうしたことを思いますと、本当に、国が基本計画をつくっていかれますときに、各地地方公共団体人権団体がさまざまに創意工夫を凝らして取り組んでいる実践を踏まえた内容ですとか方法、これを計画の中にきちっと位置づけていただくことが大事だというふうに私は考えるものでございます。  そしてまた、既に介護保険法の中には被保険者の意見の反映という条文もございますし、それから男女共同参画社会基本法の中にも「方針の立案及び決定に共同して参画する機会が確保されること」というような条文もございます。バリアフリー法の基本指針の中には、高齢者障害をお持ちの方の参画によりその意見を基本構想に反映させるというような規定もございます。今、参加なくして施策推進というのはなかなか難しい状況もあると私は思いますし、何よりも有益な方法論を編み出し推進していくためには、当事者の方あるいは工夫をしてこられた地方公共団体の方の御参加が大事だと思いますので、ぜひとも参加ということにつきましてお受けとめいただきたいと要望を申し上げたいと思います。  時間が本当に残り少なくなってしまいましたけれども提案者熊代先生にお尋ねいたします。  第九条「財政上の措置」ということが記載されてございます。この財政上の措置を条文に規定されたということは、政策推進のための裏づけがきちっと担保されたという意味でとても重要だと私も考えるところでございますけれども、この条文の中で「事業の委託その他の方法により、財政上の措置」と規定されてございます。「その他の方法」というのは、具体的にはどのような方法を今の段階でお考えになることができますでしょうか、そこを教えていただきたいと思います。
  53. 田端正広

    ○田端議員 石毛委員の大変に御熱心な、また現場を踏まえた御議論、そしてまた、二十一世紀を目指して人権世紀をというその熱い思いが伝わってくる非常に敬意を表する御意見を拝聴いたしまして、心から我々も賛同するところでございます。  今お尋ねの第九条の「その他の方法」ということについてでございますが、国は人権啓発地方委託事業という委託によって地方公共団体に対して毎年財政上の措置を講じているところでありますが、人権擁護推進審議会答申において、国が全国的に一定の水準の啓発活動を確保するという観点から、これは非常に意義のあることだと評価しているところであり、平成十二年度には大幅にその充実を図っていると承知しているところであります。そしてまた、補助金の交付という形で財政上の措置も行われていますので、それが「その他の方法」に当たる、そういうふうに考えているところでございます。
  54. 石毛えい子

    石毛委員 国が構想されます施策、その事業委託をするという方法もあると思いますし、今御答弁いただきました補助金の交付ということもございます。  私は、新しく法律制定されるというこの期に際しまして、地方公共団体が、そして地域で活動するさまざまな人権団体等の民間団体が、この法律制定によりまして本当に元気よく人権教育啓発活動を進めていけますように、例えば人権教育啓発総合補助金というようなグラント、人を特定しないような、創意工夫を生かしていけるような財政上の手だての仕方を工夫されてはいかがかというふうに考えるものでございますけれども、その点につきまして御所見をお伺いしたいと思います。
  55. 田端正広

    ○田端議員 大変貴重な御意見としてお伺いいたします。そして、この補助金の交付されている事業は、今の現実においては、地方公共団体が行う公民館等の社会教育施設における学習会、あるいは社会教育指導者に対する研修会の実施等、そういった形のところに今行われているわけであります。ちなみに、予算を申し上げますと、人権啓発地方委託事業の法務省関係、平成十二年は約二十四億二千万円でございます。そして、補助金が交付されている文部省の人権教育促進事業の予算額は、平成十二年度十八億二千七百万円、こういう形になっております。  それを踏まえた上で、委員の御指摘の考えも含めて、今後また我々も思いを一緒にやっていきたい、こう思います。
  56. 石毛えい子

    石毛委員 ぜひとも積極的なお取り組みをお願いいたしたいと思います。  最後にお尋ねをしたいと思いますけれども、先ほど、提案者熊代先生が、実施機関等に関しまして、それぞれの省庁の連携のもとにシステムをつくっていくという御答弁でございました。附則第二条の見直しで、次に出てまいります中身救済機関と申しましょうか人権機関の設置ということになりますけれども、この人権機関それから教育啓発推進に関しまして、機関につきましてはこれから検討が重ねられていくということになるわけでございますけれども提案者としてはどのようなお考えをお持ちでしょうか。  そしてまた、最後に一つだけお答えいただければと思いますが、熊代先生はNPO議連の事務局長でもいらっしゃいますので、人権NPOに対しましても大変御理解をいただいていると存じます。この財政的な支援あるいはさまざまな支援というようなことで御所見がおありと思いますので、お教えいただければと存じます。  お答えをいただきまして質問時間は終わりになるかと思いますので、お願いいたします。
  57. 田端正広

    ○田端議員 前半の部分については、附則第二条の、人権擁護推進審議会における調査審議結果も踏まえ見直しを行うものとするとしているこの規定に基づく救済機関の設置とこの法律との関係性をおっしゃっているのかと思いますが、私どもは、人権擁護推進審議会において、人権侵害された場合における被害者救済に関する施策充実に関する基本的事項について調査審議を行っているところであり、その中で、人権救済機関が所掌すべき事務として人権啓発もあわせて行うべきではないかという議論がされていると承知しております。  今後、その旨の答申が行われるものと予想されますので、その場合、その内容によっては人権教育及び人権啓発に関して定めた本法案も見直すのが適当か、そういう思いをしてこの規定を置いたところでございます。
  58. 熊代昭彦

    熊代議員 人権NPO等NPOに対する支援の御質問がございました。  御指摘のように、NPO議員連盟の事務局長をさせていただいておりまして、今、一つは寄附した人ないしは法人の税の優遇措置を、ぜひ本年度に政策を決定して来年度には法律を定めたいということで、民間からの寄附を促進しての人権NPOその他NPOの大いなる活動ということでございますが、海外に出ておりますNGOを中心にしまして、外務省の方でもいろいろとNGOの活動促進のための政策を推進しておりますので、これもさらに推進してもらいたいし、国内のものにつきましては、今のところ都道府県、市町村が主でございますが、いろいろと促進されております。  そういうものを、全体像を見ながら、民間の活動が、民間の創意工夫に基づいた公益を実現していく、二、三千万人の人が楽しみながらも世のため人のために本当に効果的な働きをしていく、そういう社会をつくるために御指摘のような努力をしてまいりたいと思っております。
  59. 石毛えい子

    石毛委員 ことしから国連人権教育の十年は後半期に入っていくことになります。そうした時期にこの人権教育啓発に関する法律審議をされて、そしてこの内実が充実していくということは本当に時宜を得て、そして大事なことだというふうに私は認識しております。ぜひこの国連人権教育の十年の取り組みを上回る質、量のものとして内実が推進していかれますように要望をさせていただきまして、長時間にわたりました質問を終わります。  ありがとうございました。
  60. 長勢甚遠

    長勢委員長 藤島正之君。
  61. 藤島正之

    ○藤島委員 自由党の藤島正之でございます。  きょうはこの法案につきまして、私は、本当にこの法律が必要なんだろうか、あるいはまた、運用のいかんによっては弊害もあるのではなかろうか、こういう観点から、提案者に幾つか質問をさせていただきたいと思います。  まず「目的」でございますけれども、第一条、「この法律は、人権尊重緊要性に関する認識高まり社会的身分門地人種信条又は性別による不当な差別発生等人権侵害現状その他人権擁護に関する内外情勢にかんがみ、人権教育及び人権啓発に関する施策推進について、国、地方公共団体及び国民責務を明らかにするとともに、必要な措置を定め、もって人権擁護に資することを目的とする。」こうあるのですが、非常に一般的、抽象的でわかりづらい。  民主党、社民党の案によりますと、「歴史的社会的理由により生活環境等安定向上が阻害されている地域に係る差別をはじめとする」云々、それから「障害による不当な差別その他の」、こう書いて、これがいいか悪いかは別にしまして、その法律目的がかなりはっきりしておるという感じはするわけです。  内容につきましても、私は、今議論の対象となっております与党の法案は非常に単純過ぎて、内容が何を言いたいのかが非常にわかりづらいという感じはしておるわけであります。  そこで、提案者は、この不当な差別の発生、人権侵害現状につきましてどのように把握しているから、それだから立法措置が必要だ、こういうことなんでしょうか、お伺いしたいと思います。
  62. 滝実

    ○滝議員 お答えいたします。  ただいま委員から、書き方が抽象的で内容が把握しにくい、ついては不当な差別の発生、そういった問題についてどのような把握をしているのか、こういうお尋ねでございます。  これにつきましては、人権擁護推進審議会人権あるいは人権教育啓発現状についてということで把握をいたしておるわけでございますけれども、先ほども熊代提案者の方から申し上げましたように、女性子供高齢者あるいは障害者、同和問題等々、さまざまな人権課題というのは現在現実に存在している、こういうような現状把握をこの答申がいたしているわけでございまして、この法案におきましては、そのようなさまざまな実態というものを前提にして目的規定を組み立てているわけでございます。
  63. 藤島正之

    ○藤島委員 それでは、さらにお伺いしますけれども、この法案成立しないといいますか、現状と、これが成立することによりまして具体的に新しいものとしてどのような効果があるのか、お伺いしたいと思います。
  64. 滝実

    ○滝議員 この法案でどのような具体的な効果があるか、こういうお尋ねでございます。  先ほど委員が御指摘されましたように、法案内容そのものは非常にシンプルに、簡潔にできているものですから、内容が把握しにくいということはおっしゃるとおりでございます。  そこで、この法案では、具体的な内容につきましては、法案の中で、基本計画を作成していただく、そういうような計画の作成を通じて具体的な施策を打ち出していくというような組み立て方をいたしているわけでございます。  そして、それだけではございませんで、従来いろいろな角度から人権教育あるいは人権啓発が行われてきたわけでございますけれども、それはそれで、個々の事業がそのまま放置されてきた、啓発活動がマンネリ化する、あるいは実施主体間の連携が不足だということは、この人権擁護推進審議会答申でもあるわけでございます。さような答申というものを踏まえて、やはりここはもう少し具体的に、その連携あるいはマンネリ化を反省する、そういうようなことを考えながら、この法案では年次報告というようなものを挿入しながら、この人権擁護推進審議会答申を受けて、もう少し具体的な、一歩踏み出した実施ができるように、こういうような趣旨でこの法案を組み立てているわけでございます。
  65. 藤島正之

    ○藤島委員 今具体的に具体的にとおっしゃいますが、ちっとも具体的でないのでありまして、例えば基本計画の話がございましたけれども、いわば丸投げなんですね。基本計画に具体的にとおっしゃっていますが、何にもないんでありまして、これは内容はまるで本当に丸投げの形になっておる。結局、そういうことからすると、この法律がなければやれないのかどうかという点について、私は非常に疑問に思うわけであります。  それはそれといたしまして指摘させていただくとして、財政助成でございますけれども、昨日伺いましたら二十一億円程度やっておられる、こういうことなんです。法務省にお伺いしますけれども、この内容については、どういうものをどれぐらいやっておるんでございましょうか。
  66. 上田勇

    上田政務次官 法務省で実施しております人権啓発の財政支援措置といたしましては、中央委託事業と地方委託事業の二つがございます。  中央委託事業は、財団法人人権教育啓発推進センターに対します委託事業でありまして、主な事業内容といたしましては、人権啓発教材の作成、人権啓発映画の作成、人権啓発フェスティバルの開催それから人権関係情報データベースによる各種情報の提供や人権啓発資料の作成等でございます。予算規模といたしましては、三億九千八百万円、平成十二年度の委託費でございます。  地方委託事業は、都道府県それから政令指定都市に対する委託事業でございまして、講演会の開催、啓発資料の作成や配布、放送番組の提供や新聞広告の掲載、地域行政関係者研修会等の開催のほか、地域人権啓発活動活性化事業などであります。これの平成十二年度の委託費が二十四億一千九百万円でございます。  また、先ほど申し上げました財団法人人権教育啓発推進センターの運営あるいは相談事業に関しましても、平成十二年度で四千七百万円の補助金を交付しているところでございます。
  67. 藤島正之

    ○藤島委員 さらにお伺いしますけれども、今のような現状で十分だという認識を法務省は持っておいででしょうか、それとも不十分である、こういう認識でございましょうか。
  68. 上田勇

    上田政務次官 法務省といたしましては、こうした人権啓発活動に対します予算につきましても、平成十二年度大幅に増額をさせていただいたところでございます。十分かどうかということは、我々の方で判断することが適当かどうかはわかりませんが、私どもといたしましては、今の行政、いわゆる人員と予算の中でできる限りのことはさせていただいているというふうに認識をしているところでございます。
  69. 藤島正之

    ○藤島委員 私のお伺いしたいのは、要するに、今まで法律がない状況でとってきた、そういう状況に対して、ここでさらに法律をつくってまでも財政助成について配慮しなければならない、こう言っているわけですけれども、そういう必要があるのかどうかということを伺っているわけです。
  70. 上田勇

    上田政務次官 新しい法律ができることによってどういう変化があるかということは、ちょっと直ちにお答えすることはできませんけれども、この法律ができることによって、国民の皆さん方の中に、先ほどからいろいろ御質問がありますように、人権啓発人権教育に対する認識が深まるという意味では、法務省の行政の推進に向けまして意義のあるものだというふうには私としては理解しております。
  71. 藤島正之

    ○藤島委員 それでは、次に、人権侵犯事件が年間一万七千件ぐらいあり、それがきちっと処理されているというふうに伺っているんですが、そのように理解してよろしゅうございましょうか。
  72. 横山匡輝

    横山政府参考人 私の方からお答えいたします。  ただいま委員指摘のとおり、人権侵犯事件は年間約一万七千件ほどでありまして、これらにつきましては、私ども人権侵犯事件調査処理規程という規程に基づきまして適切な対応に努めているところでございます。
  73. 藤島正之

    ○藤島委員 それで、提案者に伺いますけれども、今のように人権侵犯事件は一万七千件が一応きちっと処理されているわけでありまして、人権救済はかなりきちっとやっているということだと思うんですが、それと今回の教育啓発、この関係はどういうふうに認識されておりましょうか。
  74. 滝実

    ○滝議員 人権侵犯はもとより侵犯としてきちんと処理されているということは、ただいまの御答弁のとおりだと存じます。ただし、その前提として、なぜそのような侵犯事件が後を絶たないかということが、人権啓発について引き続きやはり力を入れていかなければいけない、そういうことにつながってくるわけでございます。
  75. 藤島正之

    ○藤島委員 続きまして、第三条の「基本理念」でございますけれども、「国民自主性尊重及び実施機関中立性の確保を旨として行われなければならない。」こう書いてあるわけでございますけれども国民自主性とは何か、また実施機関中立性とは何か、これを提案者にお伺いしたいと思います。
  76. 滝実

    ○滝議員 この点に関しましては、やはり人権擁護推進審議会答申にも指摘されているわけでございますけれども、このような人権教育あるいは啓発は、ともすれば押しつけになるんじゃなかろうかというような意見もあるわけでございまして、そういうようなことを危惧しなければいけない、あるいは、そういうものは注意を喚起しなければいけない、そういう意味で、あえてここでは国民自主性ということをうたっているわけでございます。  そしてまた、実施機関中立性ということにつきましても同様でございまして、この法律では、国民責務ということで、あえて国民の皆さん方にこの問題点に対する考え方を投げかけているわけでございますけれども国民理解と共感が得られるということがその前提でございます。そのためには、どうしても国民に信頼されるということが前提でございますので、当然のことでございますけれども実施機関中立性ということを、あえてそこでは明示いたしているわけでございます。
  77. 藤島正之

    ○藤島委員 今、押しつけがあってはならない、こういう答弁があったわけでございますが、これはまさに重要なことだと思うのですね。それで中立性中身は何かということを伺ったわけでありますけれども、その意味は、今おっしゃったような、押しつけがあってはならないということ、これは一番大事なことだと私は思うわけであります。  それでは、しからばその自主性中立性について、押しつけ云々ということについて、何をもって担保しようとしているのか、提案者にお伺いしたいと思います。
  78. 滝実

    ○滝議員 これにつきましては、担保というのは、最終的には私どもは、国会に対する報告、そういう具体的なアプローチの問題の中で、こういった点について反省すべきものがあれば反省していくということに尽きると存じております。
  79. 藤島正之

    ○藤島委員 私は、それでは担保になっていないというふうな感じがします。これは、なかなか実際問題としては何をもって担保するかというのは難しい問題だろうとは思うのですけれども、今の答弁は答弁にはなっていないという認識でございますが、これ以上追及はしないことにしたいと思います。  それから、第四条に、「国は、」こう書いてあるわけでございますけれども、この国というのは一体所管をどこに考えておられるのか、お伺いしたい。
  80. 滝実

    ○滝議員 国は、多方面にわたると存じます。人権教育につきましては主として文部省、あるいは、啓発は法務省が所掌する、そういうような主とした所掌はあるわけでございますけれども、その他、労働省が関連する部分もございますし、農林水産省が関連する部分もある、そういうことで、それぞれの所管行政の中で関与してくる部分があり得るというふうに存じております。
  81. 藤島正之

    ○藤島委員 それではさらに、四条でございますが、「人権教育及び人権啓発に関する施策を策定し、及び実施する責務を有する。」こう書いてあるわけですけれども、最初から申し上げているように、何も中身が書いてないのですね。この施策内容というのがどんなものをイメージしているのか、少し具体的に答弁願いたいと思います。
  82. 滝実

    ○滝議員 中身につきましては、この人権教育なりあるいは人権啓発なりは、それぞれの省庁が、あるいはそれぞれの地方団体が長年にわたって取り組んできた問題でもございます。  そのような中から、人権擁護推進審議会におきまして答申が出されているわけでございますけれども、そのようなものを一つのガイドラインとして、基本計画の中でそういうものの施策のあり方について示していく、こういうことになるわけでございます。
  83. 藤島正之

    ○藤島委員 非常に不十分だとは思いますけれども、最後に、何か逆差別という意見もあるやに聞いておるのですけれども、その点について提案者はどのようにお考えでしょうか。
  84. 滝実

    ○滝議員 差別解消のいろいろな今までの取り組みの中で、行き過ぎがあるんではないだろうか、あるいは、差別の解消が逆な差別を生んでいるんじゃなかろうかというような意見は時たまあるわけでございますけれども、問題は、そのような逆な差別が生じるということは、これはあってはならないことでございます。  しかし、何をもって逆差別というのかは、それはそのとり方の問題が今までの例の中ではあるわけでございまして、これは一概に何が逆差別かというような議論は、なかなかそこのところが難しい問題ではあるだろうとは存じております。
  85. 藤島正之

    ○藤島委員 今お話しのように、あってはならないことだろうと私は思うわけであります。  最後でございますけれども、今まで質疑してきましたように、私は、この法律は非常に問題が多い法律であるということを指摘し、特に、中立性の問題、あるいは、押しつけがあってはならない、こういった面を運用面できちっとしていただくというようなことをお願いして、結果的ではございますけれども一応賛成に回りたい、こう考えております。  ありがとうございました。
  86. 長勢甚遠

  87. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 日本共産党の瀬古由起子でございます。  私は、学校現場で人権教育と称してどのような混乱と悲惨な事態が起きているのかということを、三重県の例で質問させていただきます。  昨年十二月十五日、三重県立の松阪商業高校で校長が自殺をいたしました。この校長は、自分の学校のY教員の居住地での言動が差別事件とされて、県の教育委員会が二十回以上も校長から異常な聞き取りや指導を行っていることが明らかになりました。八月九日、二十三日には、部落解放同盟から、差別者とされたY教員とともに、確認会に参加させられております。  校長は、事件が起きてから、体重が半年間で六キロから七キロ減った、このように言われています。亡くなった十二月十五日には、生徒に謝罪する報告集会の開催を決める職員会議が開かれることになっておりました。そして、解同は、報告集会は一回限りじゃないんだ、糾弾会と同じように何回も続けよなどと、開催のやり方にも、あるときには県の教育委員会に指示をしてまいりました。  校長は、教員が生徒の前で差別者だったという報告をすれば、生徒の不信感を広げて教育が成り立たなくなるといって悩まれたわけですね。そして、その報告会が何回も続くということになって終わりがない。校長が、やる自信がない、こういうように言われると、解同と連絡をとり合っている教員が、あんたが後ろ向きな発言をしてどうするのやといって、いすをけり上げて恫喝する。そして、とうとう、決断を迫られる職員会議の日の朝、みずから命を絶たれたわけでございます。  法務省、この追い詰められた校長の死という事実は、当然重大な人権侵犯のケースとして調査の対象になると思いますけれども、いかがでしょうか。     〔委員長退席、横内委員長代理着席〕
  88. 横山匡輝

    横山政府参考人 今委員指摘の松阪事件というのは、ただいまいろいろ委員がおっしゃいましたけれども、三重県内の高等学校教諭が差別発言を行った事件を指すものと私ども承知しております。  ただ、法務省の人権擁護機関としましては、一般に、人権擁護上看過することができない差別発言を認知した場合、人権侵犯事件として調査を行い、人権侵犯の事実を認定したものについては説示等により行為者の啓発を行っているところでありますけれども、具体的な事案に関する調査処理の内容等につきましては、関係者のプライバシー保護の観点から答弁を差し控えさせていただきたいと思います。御理解いただきたいと思います。
  89. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 私は、校長の例を言っているんですよ。校長が、県の教育委員会から何度も何度も指摘を受けて、そして追い詰められていった、こういう状況について、これは人権侵犯として扱われるべきじゃないかというふうに言っているんです。
  90. 横山匡輝

    横山政府参考人 今委員が発言されました校長先生が自殺されたという事実も私ども承知しておりますけれども、この具体的な事案に関してどういう調査処理をしたのか、どういう対応をしたのか、これにつきましては、やはり関係者のプライバシー保護の観点から答弁を差し控えさせていただきたい、このように考えております。
  91. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 私は、具体的な事例の内容についてお話ししたんですが、例えばこういうケースが起きていて、校長が毎日のように県の教育委員会からどうなんだどうなんだと追及されて、そして、実際にはだんだん追い詰められていくわけですね。実際には暴力を受けたということではないかもしれないけれども、精神的にこういう追い詰められ方というのは、こういう事例はここだけでない、幾つかの問題もございます。  例えばそういう事例が起きたとすれば、これは何らかの人権侵犯の事件として、一般論としても当然調査しなきゃならないというふうに思われるんじゃないでしょうか、いかがですか。     〔横内委員長代理退席、杉浦委員長代理着席〕
  92. 横山匡輝

    横山政府参考人 一般的な形で御説明させていただきたいと思います。  まず一般に、民間運動団体が行います、いわゆる確認・糾弾行為につきましては、昭和六十一年の地域改善対策協議会意見具申、あるいはまた、平成十一年七月の人権擁護推進審議会の第一号答申でも指摘されておりますように、その性質上、確認・糾弾の対象となる者の人権への配慮に欠けたものとなる可能性を本来的に有しており、また、同和問題に対する国民の自由な意見表明を抑制してしまうなどの問題があるところでありまして、法務省としても、このような確認・糾弾行為は啓発の手段として相当ではないと認識しているところであります。  また、確認・糾弾行為により具体的な人権侵害が発生した場合には、法務省の人権擁護機関として、人権侵犯事件の調査処理等を通じて適切に対応すべきものと考えております。  以上でございます。
  93. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 そうしますと、こういうケースの場合は、この確認・糾弾の中に校長が引っ張り出されて謝罪もさせられてという事例がある場合には、今言われた法務省の通知ですけれども、その通知の精神に基づいて当然処理されるというふうに考えていいですね。
  94. 横山匡輝

    横山政府参考人 委員指摘のとおりでございます。
  95. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 では、もう一点お聞きします。  十一月五日に解同による第一回の糾弾学習会が松阪市役所で行われました。五百人が参加したと言われております。県の教育委員会からも、教育次長、県教委の三課長の幹部、そして教職員も二百二十四名参加のうち百二十一名が出張で糾弾会に出ております。そして、十一人が研修扱いで行われております。多くの教員が見ているところで、校長は、ここでもY教員とともに謝罪させられ、自己批判をさせられております。  ここに、実は部落解放同盟三重県連合会の解放新聞という新聞がございますけれども、その糾弾学習会の内容が大変詳しく載っております。本当に私は胸が痛くなる思いをいたしますけれども、ここではどう言っているかというと、「本人が、具体的に、いつどのように差別がすり込まれたのかを検証する第一回の糾弾学習会であった。」どのように差別が刷り込まれたか、こういう糾弾会だったわけですね。そして「小さい頃からの差別のすり込みがあったことを確認して第一回を終了した。」小さいときからあなたは差別意識があったんじゃないかということを言うまでここで迫られていくわけですね。  私は、本当にひどいと思ったのは、このY教員は、この糾弾学習会が自分だけでなく自分の両親まで差別者だということを言わせることを意図していた、このように語っております。あなたを育てた親はどうだったんだ、親に差別心がなかったのかというところまでやられて、実際には、このY教員は「自分をみつめて」という反省文を書いていますけれども、そこには祖父母や両親の差別意識が書き込まれて、どう言っているか、これから、今まで差別心を持ってきた両親や家族、親戚、友人を反差別の人に変えるように、こういうふうに迫られて書き込まされているわけですね。この反省文の書き直しは十数回に及んでおります。  十二月末には第二回糾弾学習会が予定されておりましたが、Y教員は解同の幹部からこの糾弾会に向けて体力がもつかどうか健康状態も確かめられております。Y教員はことし二月に、新しい校長の指示でこのような始末書を書かされているんです。同和教育推進するために一生をささげます、ここまで追い詰められて書かされているわけですね。そして、このY教員はどう言っていたかといいますと、私は校長先生が亡くなられた後、ずっと後を追って死ぬことばかり考えていました、このように語っておられるわけですね。あと一歩で犠牲者が出る、こういう状態まで追い詰められていたわけです。  法務省、意識を変えるまで、いわゆる洗脳されるような、こういう状態まで糾弾学習会で追い詰めるケースも、当然、先ほどの一九九六年の法務省の通知に基づけば、重大な人権侵犯のケースとして調査の対象になると思いますけれども、いかがでしょうか。
  96. 横山匡輝

    横山政府参考人 今委員がいろいろ御指摘したような事実関係、法務省としてそういう事実関係を把握したのかどうなのか、それ自体調査処理の内容になりますので、そういう事実関係を前提として、それがどうこうということを言うことは、答弁を差し控えさせていただきたいと思いますけれども、一般的に、この問題について法務省としてはどういうふうに対応する姿勢あるいは考え方を持っているかということにつきましては、先ほど答弁したとおりでございます。
  97. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 この問題についても、この通知に基づいて、当然、人権侵犯のケースとして調査をされる対象になるということでよろしいですか。イエスかノーか、お願いします。
  98. 横山匡輝

    横山政府参考人 私どもとしましても、この事案につきましても、当然、いろいろな情報収集には努めたところでございますけれども、具体的内容については答弁を差し控えさせていただきたいと思っております。(瀬古委員「一般論」と呼ぶ)  一般的に申し上げますと、先ほど言いましたように、確認・糾弾行為により具体的な人権侵害が発生した場合には、法務省の人権擁護機関として、人権侵犯事件の調査処理等を通じて適切に対応すべきもの、このように考えておるところでございます。
  99. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 ぜひこのY教員の問題、そしてこの校長のケースともに人権侵犯として調査をしていただきたいと思います。  やはり、私たちは人権尊重というのはとても大事だと思っています。しかし、人権の名のもとに精神的な暴力、マインドコントロールまでされて追い込んでいくという、これはもう本当に人権じゅうりんのやり方だと思うんですね。Y先生は人権侵害被害者として本来調査されなければならないのに、無理やりに書かされた始末書をもとに、三重県の教育委員会は加害者として懲戒処分にいたしました。そして、津の法務局も加害者として説示という処分を行っているわけですね。  一体どういう状態にその人たちが置かれているのかということをもう一度きちっと調査していただきたいと思うんです。やっていることが本当に逆さまで、校長とこのY先生の問題は、被害者として、ちゃんと事実関係を調査すべきだというふうに思います。  そこで、伺いたいのですけれども、一九九六年八月四日に法務省から、解同の確認・糾弾会についてのこういう見解が出されております。これについて何が問題なのかということを明確に出されていると思うんですが、この基本的な問題点について報告をしていただけませんか。
  100. 横山匡輝

    横山政府参考人 それでは、平成元年に法務省が出しております確認・糾弾会に関する見解、そのうちの確認・糾弾会の基本的な問題点としてどのようなことを挙げているかということについて御説明いたします。  まず一つ目ですが、確認・糾弾会は、いわゆる被害者集団が多数の威力を背景に差別したとされる者に対して抗議等を行うものであるから、被糾弾者がこれに異議を述べ、事実の存否、内容を争うこともままならず、また、その性質上行き過ぎて、被糾弾者の人権への配慮に欠けたものとなる可能性を本来持っている。  それから二つ目。被糾弾者の人権擁護に対する手続的保障がない。すなわち、被糾弾者の弁護人的役割を果たす者がいない上、被害者集団が検察官と裁判官の両方の役割を果たしており、差別の判定機関としての公正中立性が望めず、何が差別かということの判断を初め、主観的な立場から、恣意的な判断がなされる可能性が高い。  三つ目。被糾弾者には、確認・糾弾行為の完結時についてのめどが与えられていない。反省文や決意表明書の提出、研修の実施、賛助金の支払い等々、確認・糾弾行為を終結させるための謝罪行為が恣意的に求められ、これに応じることを余儀なくされる。  以上でございます。
  101. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 まさに、このような指摘をされた状況の中で、この校長と先生は追い詰められていくわけですね。法務省は、今言われたこの基本的な問題点に対する認識、先ほど伺いましたけれども、もう一度確認しておきますが、この通知の法務省の見解や立場というのは今でも変わりないと明確に言えますでしょうか。いかがですか。
  102. 横山匡輝

    横山政府参考人 法務省といたしましては、民間運動団体が行う確認・糾弾会につきましては、現在におきましても基本的に平成元年の通知と同様の考え方でありまして、確認・糾弾会は啓発の手段としては好ましくないと考えております。
  103. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 この通知では、さらに、行政機関に対して確認・糾弾会への出席が強要されているが、これは行政の公正中立性を損ない、適正な行政の推進障害になっている、このように指摘をしております。  ところが、三重県は、先ほど言いましたように、教育委員会の幹部以下みんなそこに出て、そして教員には出張扱いでそこに参加させる、こういう問題はこの通知の指摘からいうと大変問題があるというふうに思うんですけれども、その点、いかがでしょうか。
  104. 横山匡輝

    横山政府参考人 私ども、今委員が御指摘の事実関係について把握しているのかどうか、その点もなかなかお答えしにくいところでありますし、また、今委員が御指摘の事実関係をすべて把握しているとも言えないところでございます。そういうことでありまして、全く仮定の話ということになるわけでありますけれども委員指摘のような事実関係がもしあるとすれば、やはり委員が御指摘のような問題はあろうか、このように考えております。
  105. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 この通知では、さらに、確認・糾弾会は同和問題の啓発には適さないと言わざるを得ない、このために、法務省の人権擁護機関は、差別をした者、被糾弾者から確認・糾弾会への出席について相談を受けた場合は言うまでもなく、相談を受けない場合にも必要に応じて、確認・糾弾会には出席すべきでない、出席する必要はない等の指導をしている、このように述べております。  そして、このケースの場合はどうだったかということで聞いてみましたら、このY先生も、本当につらくて、どうしようかと迷っていたときに、実は法務省から、その確認・糾弾会には出る必要がないと連絡があった、そういう援助があって本当に助かったと言っておられるのですね。そういう点では、この通知の機能ですね、出席する必要がないということを言われたのがある意味では人の命を助けたということもあるわけで、こういう姿勢といいますか立場はこれからも、相談を受けない場合でも、こういう確認・糾弾会には出るべきでないという、そういう指導等はやっていくというふうにお考えでしょうか。
  106. 横山匡輝

    横山政府参考人 委員指摘の法務省の見解は、法務省内部での検討資料として作成されたものでありまして、法務局、地方法務局人権擁護担当職員が執務に当たっての参考とすることを目的とするものであります。外部から確認・糾弾会に対する法務省の見解を尋ねられた際に、統一的に答えられるように配慮したものでございます。  なお、法務省としましては、関係省庁や地方自治体との意見交換の場や同和問題に関する各種研修会、講演会などを通じて、この考え方に対する理解を求めてきたところでありまして、今後とも、このような方法により周知を図っていきたいと考えておるところでございます。
  107. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 相談があった場合、相談がなかった場合も、法務省がつかんだ場合には、この通知に基づいてぜひ進めていただきたいと思います。  一方では頑張っていただいているわけですが、一方ではどうしても見過ごすことのできない問題がございます。それは、法務局が三重県当局と一緒になって人権侵害して差別を助長しているのじゃないかという例がございます。  きょう、私はこういうものを持ってきたのですけれども、これは「差別的な落書きを発見したり、通報を受けたときは」、こういうチラシでございまして、津の地方法務局と三重県が一緒になって発行したものがございます。ここにどういうものが書いてあるかというと、落書きがあったときには「確認・保存」、そして二つ目には「通報・連絡」、三つ目には「記録」、四つ目には「被害届・処理・報告」、五つ目には「管理・監視」、こういうふうになっていまして、落書きが発見されたら、これは大変なことだといって、それこそトイレをロックにして使用禁止にするとか、現場保存をして警察に被害届をやるとか、こういうところまでやるようなチラシが配られ、ステッカーも張られているのですね。  この落書きという問題は大変微妙な問題がありまして、この落書きはだれが書いたかというのはなかなか難しい問題がありますけれども、これを発見したら、それを保存して徹底して追及をするみたいなやり方は、結局これは住民を監視するという役割を果たさないか。こんなものを、三重県のやり方については大変問題があるのですが、法務局がこういうやり方を一緒になってやっているというのはちょっと異常だと思うんですが、これは法務省に御相談があってつくられたものなんでしょうか。
  108. 横山匡輝

    横山政府参考人 委員指摘差別落書き対応チラシについては私どもも承知しております。この差別落書き対応チラシは、差別落書きを発見したときの手順を示したものでありまして、その左上の部分には「施設管理者用」とあると思います。そこにありますように、庁舎やビルの管理について責任を負う方々を対象にしたチラシでございます。  人権擁護機関としましては、日ごろから差別落書きを人権擁護上看過できない事象であると認識し、行為者を啓発するためにその特定に努めているところでありまして、御指摘のチラシもこのような取り組みの一環として津地方法務局が三重県と共同で作成したものと承知しております。
  109. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 直ちにこれは廃棄すべきもの、処分をすべきものというように考えるべきじゃないでしょうか。実際には、関係職員に周知をして、やはり監視せよというふうに言っているわけですから、不適切だと思いませんか。
  110. 横山匡輝

    横山政府参考人 先ほども申し上げましたとおり、差別落書き自体は人権擁護上看過できない事象でございます。私どもといたしましては、このチラシにつきましても、差別落書きそのものにつきまして、これを発見した場合のいろいろな手順を示したものと考えております。そして、できる限り早期にそういう差別落書きを発見し、それに対して適切な対応をとるということは、人権擁護上も非常に重要なことではないか、このように考えております。
  111. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 私の関係する部分についての質問はこれで終わって、木島議員にバトンタッチいたします。
  112. 杉浦正健

    ○杉浦委員長代理 次に、木島日出夫君。
  113. 木島日出夫

    ○木島委員 日本共産党の木島日出夫です。  法案提出者にお聞きいたします。  ただいま瀬古議員から指摘があったように、部落解放同盟が各地で、括弧つきですが、差別発言をとらえて、いわゆる確認・糾弾行動をやっておりますが、これは、この法案第二条の人権教育人権啓発に当たるんでしょうか。
  114. 熊代昭彦

    熊代議員 先ほど法務省の担当局長から御答弁がございましたように、法務省の見解にも明らかに示されているとおり、確認・糾弾というのは大変に、差別者といっても人権がございます、その人権を守るということが十分な手続ができていないということでございまして、確認・糾弾がいろいろな問題があるというふうに思います。  ただ、確認・糾弾だから直ちに相手の思想、信条の自由を侵害するというふうに一概には言えないと思いますけれども、法務省が定義して、問題があるというふうに指摘されました確認・糾弾会というのは、人権啓発の手段として好ましくないと思います。
  115. 木島日出夫

    ○木島委員 熊代提案者にお聞きしたいと思います。  あなたが総務庁長官官房地域改善対策室長として手がけられました、八六年、昭和六十一年十二月の地域改善対策協議会意見具申、翌八七年、昭和六十二年三月の地域改善対策啓発推進指針では、解放同盟のこのような確認・糾弾行動に対してどういう評価をしておりましたか。  私に与えられた時間はわずか十分だけでありますから、簡潔に答弁願いたい。
  116. 熊代昭彦

    熊代議員 事前に御通告がないので、ちょっと読み返しておりませんけれども、記憶に基づいて、若干不正確になるかもしれませんが申し上げますと、やはり犯罪者にも法の裁き、デュー・プロセス・オブ・ローが保障されるということでございます。差別者にもデュー・プロセス・オブ・ロー、法の手続と同様な精神が適用されなければならない。確認・糾弾というものは、それを一般的には無視することが極めて多いということでございますから、差別差別事象として人権擁護局の裁きにゆだねる、あるいは裁判所にゆだねる。自分の人権も大切であるけれども、相手の人権も大切であるということはきっぱりと守らなければならない、それが人権尊重の精神だと思います。
  117. 木島日出夫

    ○木島委員 指針はこのように述べております。抜粋だけでありますが、「民間運動団体の行う啓発の問題点」「民間運動団体の行う意識的、無意識的啓発活動の中には同和問題解決に逆行する結果をもたらしているものがある。また、一部の民間運動団体が自他への教育と位置付けている確認・糾弾行為も、被糾弾者を大衆の面前に引き出すことによって、被糾弾者のみならず、一般国民に、こわいという意識とともに、接触を避けた方が賢明という意識を助長している傾向が見られる。」また、指針は次のようにも述べております。「自由な意見交換のできる環境づくり」「また、言論に対して、言論による批判に徹しないで集団による圧力に安易に訴えるならば、世論の有形無形の批判を受け、前述の新たな差別意識を助長することになることを民間運動団体も十分理解すべきであり、国及び地方公共団体はこれらに関する啓発に努める必要がある。」そういう論でずっと貫かれております。大変立派な指針であり、具申だったと私は思うんです。  そこで私は、熊代提案者がお書きになった「同和問題解決への展望」というのを読み返してきました。大変立派な著書だと思っております。それで、今あなた方が提案している本法案は、熊代提出者が決死の覚悟でその根絶のために取り組んできた、こうした確認・糾弾活動に新たな法的根拠を与えるんじゃないか。これを助長することに手をかすことになるんじゃないか。一番懸念しているところでありますが、提案者はどう考えますか。
  118. 熊代昭彦

    熊代議員 木島委員がお読みになったのは、啓発推進指針策定委員会のものでございまして、委員会の意見でございますが、私も全く同じ意見でございます。今日も同じ意見でございます。  差別者といえども人権が守られなければならない。そして、被差別者の人権も当然守らなければならないということでございます。この法案は、同和問題の法案ではございません。人権一般でございます。御指摘のようなことがあってはならない、そういう精神のもとで、今法務省の局長も、実際問題としてきっちりとそれに対する態度を確立してやっております。その精神のもとで行われるということでございますから、民間運動団体の方々も、その精神を理解していただいて、立派な民間運動団体としての運動形態を確立してくださるであろう、そういう期待のもとにこの法案は出しておりまして、それに反することがあればそれを正してまいりたい、そういう決意でございます。
  119. 木島日出夫

    ○木島委員 あなたは、解放同盟の糾弾・確認行動によって人権侵害されているものを差別者という言葉を使っております。私は非常にそこは不満でありますが、時間がありませんから、その問題についてきょう深入りいたしません。  答弁がありました。それでは一体、あなた方が提案しているこの法案の中に、こういう新たな人権侵害ともいうべき確認・糾弾活動を認めない歯どめの措置は入っておりますか。
  120. 熊代昭彦

    熊代議員 歯どめの措置と申しますが、現在の実態が、先ほど法務省人権擁護局長のお答えいただきましたとおりでございまして、確実にそれは守られていく。そして、国会で歯どめをつくるということは、国会報告がございます。国会報告を受けてきっちりとそれを守っていただくという歯どめといたしたい、そのように考えているところでございます。
  121. 木島日出夫

    ○木島委員 何の歯どめもないんですよ。法務省は事実関係について完全に答弁を拒否しましたが、私は、松阪事件の全部を知っておりますよ。なぜ松阪商業高校の校長が自殺したのか、Y先生がどんな迫害を受けたのか、私は全部知っていますよ。現に目の前で起きているんです。この法案は、そういう歯どめは何にもありません。歯どめの担保もありません。自由党の質問者から質問がなされたとおりであります。  私は、ああいう団体にそういう無法な糾弾・確認行動をとらせないための最大の歯どめは、それに法的根拠を与えるこのような法案をつくらないこと、つくらないことこそが最大の歯どめではないかと思うんです。  人権擁護推進審議会の会長は、昨年七月二十九日、教育及び啓発に関する答申を出しました。その答申を出したその日に、わざわざ談話を発表したわけであります。その談話はこう述べております。「答申人権教育啓発に関する法的措置を盛り込む必要があるという趣旨の意見が各方面から寄せられました。」と。恐らく解放同盟がたくさん寄せたんでしょう。そういう意見が各方面から寄せられました、審議会としては、答申に盛り込まれた諸施策については、いずれも行財政措置で十分対応が可能であるとの認識に至ったところであります、こう述べているんです。  私どもは、ああいう活動に対して行財政措置をとることも反対であります。しかし、審議会の会長はわざわざ、法的措置はとらない、こういうことを言っていたんじゃないんでしょうか。そのように昨年の審議会答申をお読みになっておらないんですか。
  122. 熊代昭彦

    熊代議員 御指摘の会長談話、この委員会に出る前に読みました、ちょっと今は手元にございませんが。法的措置をとらないというよりも、財政的な措置で十分だろうというようなことを言っていたと思います。  御指摘のような問題点があるということを十二分に理解しております。しかし、人権問題として同和問題ということを特別に書かない、あるいは歴史的云々というえんきょく表現でも書かないということでございます。人権問題の一環としてきっちりと処理する。  人権問題というのは、お互いの人権尊重することでありまして、だれか一方の、主張の強い、力の強い人の人権を、あるいは力の強い団体の人権尊重するものではございません。そのような精神に立ってきっちりとやってまいりたいという趣旨でこの法案をつくり、提出してまいったわけでございます。
  123. 木島日出夫

    ○木島委員 昨年、推進審議会がわざわざ、いろいろ要求はあったけれども法案はつくらないんだと言ったのはなぜか。私はここに答申を持っておりますが、これを読み込んでいくとその答えが見えてきます。  答申はどう言っているでしょうか。「人権教育啓発の基本的在り方」というところでこう述べております。「人権教育啓発は、国民一人一人の心の在り方に密接にかかわる問題であることから、その性質上、押し付けにならないように留意する必要がある。」また、「この観点からすると、人権教育啓発は、その内容・方法等において、国民からあまねく受け入れられるものであることが望まれ、また、これを担当する行政は、主体性を確保することが重要である。」中略をいたしますが、「人権上問題のある行為をしたとされる者に対する行き過ぎた追及行為は、国民人権問題に関する自由な意見交換を差し控えさせることになるなど、上記環境づくりの上で好ましくないものと言える。」中略をいたします。「なお、人権問題を口実とした不当な利益等の要求行為の横行も、人権問題に対する国民理解を妨げ、ひいては人権教育啓発の効果をくつがえすものであるから、その排除に努める必要がある。」  まさに、熊代提出者が、あなたが地対室長のときに体を張って、本当に体を張ったと思うんです、ああいう無法な糾弾・確認行動と立ち向かってきた、そういう流れの中から、推進審議会は、法制化の要求はあったけれども、この人権啓発教育というのはこういう特質を持っているから法律はつくらないんだということに読み取れるんです。そう読み取るべきじゃないでしょうか。そう思いませんか。答弁を求めます。     〔杉浦委員長代理退席、委員長着席〕
  124. 熊代昭彦

    熊代議員 お読みになった文章の精神は、私は今でも持っております。そのとおりでございます。  しかし、これは人権問題一般の法律として出しました。そして、力ある団体にも自制を求めたい、そして弱い方々は守られなければならない、そういう思いでございます。法務省も、警察も、裁判所システムも、すべてのものがその精神に立っていただきたい、その前提のもとでこの法律案を出しております。それに反することがあれば、逐一それを取り上げて、解決の方策を図っていかなければならない。それが、力ある団体にとっても、あるいは弱い人にとっても、ともに必要なことである、そして将来に向かって大切なことであると考えております。
  125. 木島日出夫

    ○木島委員 確かに、この法案人権一般に関する法律の形になっております。しかし、この法律がつくられてくる過程、これは議員立法でありますが、過程の中は明らかに同和問題から発生してきていることはもう明々白々であります。時間がありませんから、その経過については私は触れません。角度を変えます。  現在、日本社会の中にはさまざまな人権問題があります。実態としての人権差別もあり、人権問題があります。この法案は、これらの人権問題、実態として存在しているこうした差別を取り除くんじゃなくて、国民の中にある差別意識、この問題に焦点を絞ってきて、そしてこの差別意識人権教育啓発の名によって除去することを国と地方自治体の責務としております。国や地方自治体や民間団体などが、人権教育啓発の名によって国民の内心の自由にまでかかわってくる、入り込んでいくことは、私は、それは憲法が保障する思想、良心の自由を侵害するおそれを来すんじゃないか。  我々の目の前で行われているある民間団体の、解放同盟の糾弾・確認行動なるものは、自殺者までつくり出してきているんです。まさに人権の名による人権侵害が引き起こされてくるんじゃないか。この法案は、国民の内心に入り込むことによって、そういう本性を持っているんじゃないか。私は法律家の一員としても大いに危惧するところでありますが、提案者の御所見を伺って質問を終わらせていただきます。
  126. 熊代昭彦

    熊代議員 差別事象解決する、それも大切でございます。それも当然この法律の所掌の範囲に入っていると思います。  啓発教育でございますから、これは意識に対する訴えかけでございます。しかし、それは自由な意思を尊重しながら意識に対して訴えるわけでございまして、自由な意思を抑圧するようなものに対しては、これを排除していく、自由な意識を抑圧するような人権教育人権啓発はやらない、そういうことでございまして、法律の文言に書かれた精神をそのまま真っすぐにやってまいります。  あらゆる事態に適応しなければならない法律でございます。抽象的に書いてございますけれども、基本は、一人一人の人権をしっかりと守るということでございます。特に守るのは、弱い立場にある人、例えば、犯罪を犯しても弱い立場にある人もございます。犯罪を犯して大変に強い立場にある人もいます。それは別でございますけれども、そういう意味で、真の意味での人権を私どもはきっちり守れる、そういう法律提出した、そういう自負がございます。それを現実のものにしてまいりたいと考えております。
  127. 木島日出夫

    ○木島委員 終わります。
  128. 長勢甚遠

  129. 植田至紀

    植田委員 社会民主党・市民連合の植田至紀と申します。  きょうは、この与党案に対して、こうした法案提出されたことにまず心より敬意を表したいと思います。当然ながら、先ほど民主党石毛委員も申し上げましたように、我々は、民主党社会民主党の共同で法案提案させていただいているわけでございますし、私個人としては野党案の方ができはいいと思っているわけですけれども、やはりこれは、いろいろな議論がありましたが、広範な国民の願いの中で、人権確立に向けてまさにこの世紀末、二十一世紀に向けて、二十一世紀人権世紀にしていくためにきちっとそうした活動を保障していく立法というものは必要であろう、そういう問題意識を与党も野党も通じておおむね共有できているというこの現状。かつては、いわゆる人権問題の大切さが語られる割には、そうした人権差別にかかわって具体的に政策課題とすることが、ある場合、時としてやはり避けられてきたような状況もあったかもしれないわけです。  また、先ほどの議論にもありましたけれども差別をなくしていこうというさまざまな動きの中で、やはり差別を受けた、心の痛みを受けた方々というのは、時として非常に大きな怒り、また激しい行動に出る場合もあります。しかし、その現象だけをとらえて、そのことをもって本来ある差別の解消というもの自体が遠のいてしまうような局面も私自身あったかのように思っています。  そういう意味で、この段階に至って、普遍的なテーマとして人権が立法府で語られるということは、やはり、これはもう与党であるとか野党であるとか政治的立場を超えて、まず喜び合いたいということを申し上げたいと思います。そういう意味から、いろいろな思いはありながらも、私ども社会民主党といたしましても、この与党案に賛成をさせていただきたいという立場質問させていただきたいと思うんです。  それで、まずこの法案提出経緯についてでございますけれども、確かに、今共産党の木島委員の方からも、この法案のそもそものきっかけにあるのは、いわゆる部落解放運動のそうした流れの中で、ぶちあけて言えば部落解放基本法制定の要求の高まりの中で出てきたものじゃないか、だからけしからぬじゃないかと今一刀両断で切られたわけです。  私自身、九六年に制定された人権擁護施策推進法制定過程の中で、当時、私は社会党、社民党の政策審議会の事務局で事務方の一人として作業させていただいてきたわけですけれども、出発点は確かに、それは熊代先生もおっしゃいますように、いろいろな差別を受けている団体でも、強いと言われるような運動もあれば、なかなか弱いという運動もある、そういう意味では、強いと言われる運動がやはりクローズアップされてくる中で、部落解放基本法の制定運動の中からこうした人権の政策の要求というものが出てきたことは確かでございます。  しかし、そうした中で、やはり我々の側もいろいろな中で妥協もし、考えもする、また運動団体の側もよりよい人権政策の展開ということを考えながら、いろいろな立場をいろいろなところでそれなりに調整し合いながら、一つの到達点として九六年に人権擁護施策推進法がまず制定されたのではないか、私はそういうふうに考えるわけです。  そして、私もよく覚えているのですけれども、赤坂プリンスだったかどこかで、当時は自民、社民、さきがけという三党の与党プロジェクトで、九六年の六月五日にいわゆる当時の与党三党合意というのがまとめられた。一点目が教育啓発推進についての法的措置の検討、二点目は人権侵害による被害救済についての法的措置の検討、そしてもう一点、この三点目のみがいわゆる同和問題、部落問題に直接的にかかわる部分ですけれども、地対財特法の延長にかかわる問題、この三点が合意をされていたわけです。  そして、今申し上げました二点目については、今、人権擁護推進審議会で鋭意審議をされているところでございます。今は政党、与党の枠組みが違いますけれども、いわゆる政策的には、人権確立に向けたさまざまな流れの中で、特に今さまざま議論されております今の法案の前提たる人権擁護施策推進法制定、そして、そこに込められたさまざまな思い、やはり今回の与党案も野党案も含めて、そういう問題意識に立っているであろうと私は思うわけです。  きょう、この法案にかかわっての政府の御認識をお伺いしたいということで、官房長官にお越しいただければと思っておったのですが、実は上野官房副長官も、当時の自社さ時代の与党の人権差別問題にかかわるプロジェクトチームの有力メンバーとして、この間のそうした策定にかなり深くかかわってこられた方でございます。私自身、今こうした到達点へ立っているということが、今私がかいつまんで申し上げましたような認識で、今これからまずは提案者の皆さんに質疑をさせていただいていいかどうか。もしよければ、当時の思いも含めて、若干でも結構でございますので、お答えいただければと思います。
  130. 上野公成

    ○上野内閣官房長官 今、植田委員からお話がありましたように、内閣官房長官というよりは、むしろこれまで人権にかかわってきた一人としてお答えをさせていただいた方がいいのじゃないかと思っております。  今御指摘のように、自社さのとき、これは自民党のメンバーは、その当時は野中幹事長と前田元法務大臣と、そして私。社民党は、社会党だったと思いますけれども、野坂浩賢先生、それから山口鶴男先生、相当強力なメンバーで、かなり長い間議論をいたしまして、今委員から指摘がございましたその三つについて合意がなされたわけでございます。  本日は、人権教育及び人権啓発推進に関する議題でございますけれども、今お話がありましたように、その中から、人権擁護施策推進法、そういうものができ、その中に人権擁護推進審議会というものが設置をされたわけでございます。  先ほどからいろいろな答申のお話も出たわけでございますけれども、この法律が衆参を通ったときに附帯決議がございまして、この中に、法的な措置というものも今後検討していくということもございました。そして、そのときの結論としては、先ほどからお話が出ておりますように、行財政措置でとにかく当面はいくのだ、こういう二点があったわけでございますけれども、その後、いろいろな議論の中から、やはりこのままでいいのだろうかということが、最初は自自公だったのですけれども、それから結論が出たときは自公保のプロジェクトチームというよりは、正確に言いますと与党の人権問題等懇話会というところ。私が座長をさせていただきまして、やはりこういった法律というものが必要ではないか、この間の経緯を見てそういう結論に達して、私がきょうの法案のもとになっております法律案の大綱を取りまとめさせていたということでございますから、今委員の御指摘のように、さかのぼりますとそのときのことの結果がこういうことになっているのだというふうに言ってもいいのじゃないかなと思っています。
  131. 植田至紀

    植田委員 どうも副長官、ありがとうございました。あとは各提案者方々にいろいろ個別逐条的に、時間の許す範囲でお伺いさせていただきます。きょうは御足労賜りまして、本当にありがとうございました。  さて、きょう一日の短い議論の中で、各党の先生方も非常に密度の濃い御議論をされたと思うんですけれども、一点気になるのが、今回のいわゆるトータルな人権教育啓発にかかわる法案であるにもかかわらず、どうも一方で、この中に部落問題という課題が入るか入らないかというような議論の中でぐるぐる回っていたような部分も私はちょっとあるような気がするんです。  私自身、例えばこの法案制定経緯が、今も申し上げましたようにさまざまな課題を持ったさまざまな立場方々の要求の結果取りまとめた法案であって、たまたまそこで目立つのが部落解放運動であったとして、そのことをもってこの法案自体がけしからぬということは、差別を解消して人権を確立するという立場からすれば主客転倒した議論だと思います。  また、そうした差別をなくそうという動きの中で、確かにさまざまな問題が指摘されてきたことも今の議論の中でも明らかになっていると思いますが、少なくとも私自身、かつて事務局時代も、記憶をたどっていきますと、やはりこの九六年当時の人権擁護施策推進法制定段階において、当時の与党協議の中で、少なくとも今幾つかの指摘があった、いわゆる問題とされる問題についてはかなり自社さの間でも議論をして、私自身としては、今の議論を聞いていますと、具体的に言うと共産党の先生との御議論を聞いていますと、少なくとも九六年の段階で、そうした問題は人権擁護施策推進法制定するということを確認した段階で全部決着済みであるというふうに認識いたします。そして、その決着した以降の延長線上において、与党の先生方はこういう立場法案提出されたというふうに私は理解しておるわけですけれども、その点についてはいかがでしょうか。
  132. 松浪健四郎

    ○松浪議員 お答えさせていただきたいと思いますが、その前に、植田委員におかれましては、九六年十二月に成立をいたしました人権擁護施策推進法ができるまでに多大なる御尽力を賜りましたことに対し、心から敬意を表したいと思います。  そこで、その法律成立して以降、この問題は党派を超えて考えていかなければならない重要なテーマである、ましてや、そこにもう二十一世紀があるではないか、我々は二十世紀の間にこの問題を処理することができないで大変な後悔をするであろう、このような思いから、超党派で私どもは二十一世紀人権政策勉強会というものを発足させていただきました。初代の座長に自民党の自見議員、そして社民党からは中西績介先生にも座長になっていただきました。そして私どもは、これからどのような形で人権問題を処理していけばいいかというようなことを熱心に議論をしてまいったわけであります。  そこで、やはり人権教育啓発に関する推進法律が必要である、こういうふうな形になってまいりまして、また政治的には、委員からも御理解を賜りましたけれども、与党、野党の対立等もございました。そこで、上野官房副長官からお話がありましたが、もちろん政権の組み合わせも変わってまいりましたけれども、与党で人権問題の懇話会をつくらせていただいて、そして勉強会と並行して、法案をまとめるために、勉強、議論、これらを続けさせていただきました。  結果的に、こういうふうにきょう法案審議していただく段階に至りましたけれども、それまでには自社さの人権擁護施策推進法ができるまでにおおむね基礎ができていたのではないか、こういうふうに私は理解をし、感謝をし、そして今日来たということをお話しさせていただきたい、こういうふうに思います。
  133. 植田至紀

    植田委員 いずれにいたしましても、そうした立法府におけるさまざまな取り組みの延長線上の中にこれが位置づけられる。たまさかそのときの提案者の、また議論に参加した方のいわゆる組み合わせはやや違いますけれども、作業としてこれはもうそれぞれ思いが共有できる分野でのお仕事であったと私も改めて理解いたします。そういう意味では、恐らく九六年までの、自社さ時代の議論を基本的に踏まえられたその延長線上の中で、与党三党で最大限おまとめになったというふうに理解いたします。  そこで、先ほど民主党石毛委員からも幾つかやりとりがあったと思うのですが、改めてちょっと私もここをお伺いしたいのですが、人権教育啓発の定義、いわゆるこれの書き分けにかかわってなのです。  少なくとも、「人権教育のための国連十年」の国内行動計画では、国連が定義した「知識と技術の伝達及び態度の形成を通じ、人権という普遍的文化を構築するために行う研修、普及及び広報努力」、言ってみれば、教育啓発も含んでもっと広義に人権教育として定義をしている。少なくとも、人権教育のための国連十年推進本部での国内行動計画においてはこれを援用しているというか踏襲しているわけでございます。今回、改めてこの法案を見ますと、いわゆる教育啓発というのがそれぞれ分けて定義をされている。これは恐らく、昨年七月の審議会答申でもそういうふうに書き分けられているわけですけれども、当然ながら、書き分けられる以上、幾つかの理由があろうと思うのです。  そして、私はここでお伺いしたいのは、さきの答弁の中で、書き分けた幾つかの理由についてはお述べいただきましたけれども、少なくとも書き分ける以上は、人権教育人権啓発推進していく上でそうした方が具体的に推進しやすい、そういう認識があったからだろうと思うのです。ですから、そういう意味で、では人権教育として具体的にどういう活動を想定し、そして具体的に人権啓発としてどういう活動を想定し、そしてそのことを分けた方がやりやすい。答申では、分ける際に実践的な観点からそうした方がいいなどということを述べていますけれども、当然そういう答申も踏まえられたのだと思いますので、実践的な観点から、ややここは具体的に御答弁いただければと思うのです。
  134. 松浪健四郎

    ○松浪議員 お答えいたします。  委員は、おおむね御理解をしていただいた上で質問をされているのではないのか、そして、もしかしたなら私以上にこの法律について理解をしていただいているのではないのかというふうに今お聞きいたしました。  昨年七月に人権擁護推進審議会から出されました人権教育及び人権啓発に関する施策の総合的な推進に関する基本的事項についての答申におきまして、人権教育人権啓発とを分けて提言されておりますことは、委員指摘のとおりでございます。  そこで、政府におきまして責任を持って対応してもらうために、これら施策の所管となる省庁を明確にすべきであることなどの理由から、人権教育人権啓発の定義を分けて規定したものであります。具体的にということでございましたので申し上げるならば、人権教育は文部省、そして人権啓発につきましては法務省というようなぐあいでございます。
  135. 植田至紀

    植田委員 そこはもうちょっと伺いたいのです。それだけ聞いてしまうと、文部省があって法務省があるので、まずその所管省庁があったので分けてしまったみたいに聞こえちゃう部分もあるのですね。ですから、問題意識として、具体的に教育のイメージ、啓発のイメージというのを、ではここから今やろうとすればどういう活動がある、そしてそれをとりあえず分けた方がやりやすい。所管省庁が分かれているのでそうしましたとなると、ちょっとそれだけではまだ私としては満足いかないので、もうちょっとそこはお答えいただきたいのですが。
  136. 松浪健四郎

    ○松浪議員 委員は熱心でございまして、たくさんの質問をいただいております。私は、答弁するに当たりましては、時計を見まして、できるだけ多くの質問をしていただいて答弁をさせていただくのが適当かと思い簡単に申し上げましたけれども、具体的に言えということになりますと、かなり時間を要します。  そこで、とりあえず、「人権尊重理念に関する国民相互理解を深めるための教育及び啓発に関する施策の総合的な推進に関する基本的事項について」という答申の骨子がございます。それを後ほど委員にお渡しをさせていただいてお許し賜りたいと思います。
  137. 植田至紀

    植田委員 わかりました。お許しいたします。  さて、基本計画の策定にかかわってお伺いしたのですけれども、いわゆる国民参加、国民の意見の反映ということで、いろいろ今も質疑の中でなされたと思いますので、そこは重複を避けたいと思うのです。  私自身、こうした人権教育啓発を進めていく上で、地域でのさまざまな具体的な諸活動というものをきっちりとすくい上げていく、また、地域のそうした活動というものをきっちり保障していくという意味では、地域のそうした問題に着目したいのです。  そういう意味で、一つの例として、例えば、いわゆる隣保館でありますとか北海道におけるウタリの生活館であるとか、既にこうした箱物があるわけです。この間、特に隣保館につきましては、地対財特法の根拠法がとれまして今は社会福祉事業法になっていますし、もともとアイヌ生活館も地対財特法の規定を援用して閣議決定で予算措置を講じていたという経緯があるわけですけれども、これらが、地域のいわば人権センター、人権コミュニティーセンターとしての役割をこれから担っていくべきではないか。  例えば、隣保館だからいわゆる部落にかかわる問題、被差別部落の問題ということに限定するのではない。北海道の生活館だからといってアイヌ民族問題に別に限定することはない。高齢者の問題、女性問題、子供人権、在日外国人外国人労働者の問題、さまざまな問題というものを、その箱物のセンターの中で集まれる、そういうコミュニティーセンターとして、例えば隣保館の場合、地対財特法から外れてしまって一般対策に工夫を加えてやるということになった瞬間、むしろ今まであった隣保館の役割よりももっと大きな役割が実は課せられているのではないかというふうに私は思うわけです。そして、昨年七月の答申でも、隣保館にかかわって、人権尊重意識の普及高揚を図る上で効果を上げておるとか、その取り組みを一層充実させることが望まれるというふうなことが述べられているわけです。  ですから、もっと幅広い人権問題、差別の撤廃という観点から、これまでの先進的な取り組みというものを踏まえながら、もっともっとそうした取り組みとの連携、またその取り組みに対する支援というものを具体的な課題として設定する必要があると思うのですけれども、その点についての御見解はいかがでしょうか。
  138. 松浪健四郎

    ○松浪議員 委員の御質問をお聞きしておりまして、私も人権問題には熱心に取り組んでまいりましたけれども、まだまだ熱心な人がいらっしゃるということに大変感銘を受けさせていただきました。このように多くの委員人権問題に真剣に取り組んでくれるならばこの国から差別という言葉もなくなるであろう、そのような印象を持ってお聞かせをさせていただいたところでございます。  隣保館につきましては、平成八年の地域改善対策協議会意見具申におきまして、周辺地域を含めた地域社会の中で福祉向上や人権啓発の住民交流の拠点となる開かれたコミュニティーセンターとして今後一層の発展が望まれるとされていると承知いたしております。この意見具申を受けまして、平成九年度の一般対策への移行に際し、隣保館が福祉の向上や人権啓発のための住民交流の拠点となる地域に密着した福祉センターとして、所管省庁においてその役割を明確にしたところと承知しております。  今後とも、人権教育関係機関との連携を図りつつ、その目的に沿った活動を行うことが重要であると考えております。一部地域では既になされているところもございますけれども、さらに進めていっていただければありがたい、このように思います。
  139. 植田至紀

    植田委員 もちろん、今回の法案というのは人権教育啓発にかかわってのものですから、この基本計画をつくるに当たっては教育啓発という観点から当然つくられるわけですけれども国連が定義しているように幅広い施策を包摂するものですので、基本政策策定に当たって、やはりもう一度改めて日本におけるさまざまな法制度社会制度というものを、人権を確立する、差別を撤廃するという観点から検証し直してみる。そして、もし必要があらば、現行法制度の改正等々も含めて、そうしたこともやはり念頭に置くべきじゃないだろうかなというふうに思うんですけれども、その点についてはいかがでしょうか。
  140. 東順治

    ○東(順)議員 私もただいまの植田委員の御意見に賛成でございます。  広く国民方々人権尊重理念に対する理解を深め、あるいは体得をしていく、そういう視点に立てば、中長期的な展望のもとにこれに資する各種の基本的な施策を盛り込んだものが策定されるという期待があるわけでございます。したがって、御指摘のとおり、ただいまの御意見、そういう角度、観点も当然検討の対象になるもの、このように考えております。
  141. 植田至紀

    植田委員 それと、直接的に今現行で人権を所管する省庁の役割分担等々にかかわるわけじゃないんですけれども、我々が現在想定している人権差別にかかわる問題は、五年後、十年後、やはり様相を変えていることはたくさんあるかと思います。例えば、いわゆる部落問題についても当初は物的事業から始まったわけですよね。しかし、ソフトの面がおくれているというような指摘もなされてきた。そういうふうに、一つの問題についてもその解決に向けた政策の手法も当然変わっていくわけです。  また、我々が本来もともとは差別であるとか人権問題だと想定してこなかったような、そうした課題というものも新たに人権問題としてやはり認識しなければならない、そういうことも出てくるだろうと思うんです。  例えば、いわゆる女性差別にかかわる問題。戦前の家族制度のもとで女性差別というものを我々は認識したかどうかというと、当たり前の制度の中で家父長制というものを我々は受けとめていた。やはり、戦後になって憲法のもとでいわゆる当たり前の男女平等ということが言われ始めた。そして、それがやっと最近になって当たり前のように基本法ができた。こういうふうに長い年月を経ているわけです。ですから、その意味で、今我々自身が人権問題として考えていない問題がまた我々の目にあらわれてくる、そういうことがあろうと思うんです。  それで、私自身、これは非常に個別な話なんですけれども、いわゆる性的指向にかかわって、もうこれは既に国連の中では解決すべき課題だということが述べられているわけです。ずばり言えば、いわゆるゲイであるとかレズビアンとかいう問題。今までは言ってみれば際物の趣味の問題というふうに語られてきましたけれども、最近はやはり生得的なものであるという認識が深まりつつあります。そういう意味で、今まではこの種の問題を人権差別の問題として認識すること自体懐疑的な風潮があったわけですけれども、最近はそうした考え方が改められつつあるわけです。既に国連では、そうしたことを解決すべき課題ということで触れられているわけです。  人権差別にかかわる問題、人権全般といっても、一つ一つの政策は帰納法的にやっていかなければ、個々の問題、個々の問題ごとに政策手法も変わってまいりますので、例えばで申し上げたわけですけれども、こうした我々が必ずしも認識していないような問題が新たに差別人権にかかわる問題として我々の面前にあらわれてくるということも踏まえて、今申し上げたような課題もやはり課題としてきっちりと加えていくべきじゃないかと思うんですが、その点はいかがでしょうか。
  142. 東順治

    ○東(順)議員 おっしゃるように、時代とともに提起される問題というのはさまざまに生じてくるわけでございまして、ただいま植田委員指摘の性的指向というのですか、例えば性同一性障害というのですか、こういったことですごい悩んでおられる方の痛切なる心情を私直接聞いたこともございます。  したがって、当然そういった事柄も十分踏まえて基本計画というものを策定していかなければならないものである、このように認識をしております。したがって、時代とともに、差別あるいは人権問題というものは古いものもあれば新しく生じてくるものもある、それらを柔軟性を持ってしっかりと踏まえていくべきものでなければならない、このように考えております。
  143. 植田至紀

    植田委員 ありがとうございます。  これはもう答弁を求めませんが、最後に申し上げたいんです。  附則第二条で、三年以内に見直す、当然いわゆる人権侵害被害救済審議会での審議結果も踏まえ見直すというふうに書かれてあるわけですけれども、先ほどの、例えば性的指向にかかわるような新たな課題であるとかというのを申し上げましたのは、やはり時代の流れは速うございますので、そうしたさまざまな課題というものがどんどん立ちあらわれてくる。やはりこの法律も、三年見直しということであれですけれども、一応恒久法として設定されているわけでございますから、そうしたさまざまな問題意識に常にアンテナを張る姿勢が必要じゃないかなというふうに改めて感じるということと、そういう意味で、今ある、例えば所管がどこやとか何省がこれをやるんだあれをやるんだということも、いろいろな問題が立ちあらわれてきたときに改めて考え直さなければならない場面も来るだろうなということをやはり今回提案者の皆様方にも念頭に置いていただければということを強く要請いたしまして、時間が来たということでございますので、私の質問を終えさせていただきます。
  144. 長勢甚遠

    長勢委員長 上川陽子君。
  145. 上川陽子

    ○上川委員 21世紀クラブの上川陽子でございます。きょうは、人権という大変大きな課題につきまして質問をさせていただく機会をいただきまして本当にありがとうございます。  日本社会というのは、同質な文化風土を持つゆえに、異なるものを排除する傾向が強い社会だというふうに思います。そのために、人権についての意識あるいは感性を磨く人権教育人権啓発のためには、忍耐強い、目標を持った取り組みが必要であると考えます。さきの少年法の改正審議でも明らかになりましたけれども社会が複雑になりますと命を奪っても何ら心の痛みを感じない少年の犯罪がふえているという事実を目の当たりにいたしますと、人の痛みを自分のものとして感じることのできる心を育てる教育の大切さを痛感せざるを得ません。  そうした中にありまして、既に昨年の七月に人権擁護推進審議会により提言されました人権教育啓発に関する諸施策実施されているところではございますが、今回の法律案は、そうした政策をさらに確かなものにし、国、地方公共団体あるいは人権関係のボランティア団体・グループあるいは個人というものの日々の絶え間ない努力の活動をさらに確かなものとするという前向きな意味で、意義のあるものと評価しております。そうした考えを踏まえまして、人権への取り組みの基本ということにつきまして四点ほどお尋ねさせていただきます。  まず第一に、一九九四年、平成六年の第四十九回国連総会におきまして、九五年から二〇〇四年までの十年間を「人権教育のための国連十年」とする決議が採択されたところでございます。日本でも平成九年の七月に国内行動計画が策定されております。しかし、日本人権に関する現状につきましては、さまざまな人権問題が存在しまして、しかもその取り組みについては十分ではないということで内外から厳しい批判を受けている、厳しい評価を受けているということも事実でございます。  そうした厳しい評価に対しまして、日本としてはどのように受けとめていらっしゃるのか、こうした現状を乗り越えるために今回の法案がどの程度貢献するものかということにつきまして、基本的なお考えをお願い申し上げます。
  146. 横山匡輝

    横山政府参考人 まず私の方からは、現在、「人権教育のための国連十年」の取り組みに対する諸外国の評価というものについて、私どもはどのように認識しているかについてお答えいたしたいと思います。  我が国は、平成九年七月、インドネシア、フィリピンに次ぎ、世界で三番目に「人権教育のための国連十年」に関する国内行動計画を取りまとめております。また、国連総会及び人権委員会において採択される人権教育に関するすべての決議の共同提案国となるなど、積極的に取り組んでおりまして、このような我が国における人権に対する取り組みは諸外国からも高く評価されている、私どもはそのように理解しております。  法務省としましては、今後とも、「人権教育のための国連十年」の趣旨及び国内行動計画を踏まえて、人権啓発活動の一層の推進に努めてまいりたいと考えております。また、現在御審議されております本法案成立しましたときには、もとよりこの法案を踏まえまして、法務省としましては人権啓発の取り組みに一層努めてまいりたい、このように考えております。
  147. 上川陽子

    ○上川委員 積極的に取り組んでいらっしゃるということでございますけれども国連関係の人権関係の条約は二十四本ある中で、日本が批准しているのは十本ということでありまして、その中には制度的なものとかいろいろな考え方の違いで批准ができないというものもあるとは思いますけれども日本としては、人権の国ということを積極的に標榜する以上、そういった面の二十四本のことにつきまして、できるだけ批准ができるような御検討をしていくべきだと考えますけれども、ぜひともよろしくお願いしたいというふうに思います。  二十一世紀人権世紀と言われております。日本としても、まさに今回の法律案に示されるとおり、国や地方公共団体におきまして積極的な取り組みをすべきだということで、はっきりとした指針を打ち出しているわけでございますが、人権問題としては、日本社会に古くからある同和の問題あるいはアイヌ人々の問題というもの、きょうも大変な御質問も出ました。また最近では、子供に絡むいじめ児童虐待、買春、ポルノなど、現代社会の病理に係る問題も深刻でございます。人権教育啓発推進するに当たり、二十一世紀に向けた人権の取り組み課題として、何に重点を置いて推進しようとお考えなのか、提案者の方にお伺いしたいと思います。
  148. 松浪健四郎

    ○松浪議員 委員も外国生活が長いというふうにお伺いしておりますけれども、私も外国での生活が長うございます。そして、諸外国における差別の問題、また人権教育啓発の事柄等については、私たちは肌を通じてその国々でのことを理解してきている、それは委員も同じであろう、こういうふうに思います。  そして、この人権の問題につきましては、ヨーロッパでは既に数世紀前に解決をしておりますけれども、悲しいかな、世界に冠たる先進国の私たち日本にありましてはいまだに差別がある。これを何とかしなければならない、こういう思いであります。そして、何としても二十一世紀人権世紀にし、ありとあらゆる差別をこの日本社会からなくしたい、こういう思いでこの法律に取り組んできた次第でございます。  そこで、お尋ねの件でございますけれども人権擁護は申すまでもなく憲法の柱でございます。また民主政治の基本でもございます。すべての人々人権尊重される平和で豊かな社会の実現が望まれるところであります。御指摘のように、二十一世紀人権世紀と言われておりますけれども、二十一世紀に向けて、本法案趣旨を十分に踏まえて、人権教育及び人権啓発の総合的かつ効果的な推進を図るとともに、現在、人権擁護推進審議会におきましても活発に審議されておりますように、人権侵害被害者救済についても積極的に取り組むことが重要であるということを考えております。  そして、この被害者救済という面、最近、さきに議論されました少年法にもございましたけれども、あるいはいろいろな犯罪者から救済をするというような面もございましたけれども、我々はいろいろな面において目を配っていかなければならない、こういうことだというふうに考えております。
  149. 上川陽子

    ○上川委員 あと二問具体的なことにつきましてお伺いいたします。  企業活動の国際化が進むにつれて、私の地元静岡県でも、年々自動車工場等で働く外国人がふえ、異文化の子供たちが地元の学校に通い、また国際結婚もふえているという状況でございます。そうした中で、内なる国際化の影の部分として、アパートへの入居を断られるといった形で差別的な扱いがなされているケースがあるというようなことも事実でございます。  現在、国内において外国人に対する差別等の人権侵犯に対しましてどのような対応をなさっていらっしゃるのでしょうか。
  150. 横山匡輝

    横山政府参考人 委員指摘のような外国人に対します差別は、法のもとの平等を定めた憲法十四条やあらゆる形態の人種差別の撤廃を定めたいわゆる人種差別撤廃条約趣旨に反する人権侵害でありまして、あってはならないものと考えております。  法務省の人権擁護機関におきましては、外国人のための人権相談所等を法務局、地方法務局に開設しまして外国人からの人権相談に応じております。また、そのような相談の過程等におきまして外国人人権侵害されていることを認知した場合には、人権侵犯事件の調査処理等を通じまして、その排除等のために積極的に対処しているところであります。  さらに、平素から各種の啓発活動を通じまして広く人権尊重思想の普及、高揚に努め、その防止を図っているところでありまして、今後ともこのような取り組みを一層充実してまいりたい、このように考えております。
  151. 上川陽子

    ○上川委員 もう一つ具体的なことでお伺いいたしますけれども、数カ月前に、ある民放テレビで報道された番組なんですけれども、不法入国しようとした外国人を強制退去させるまでの扱いにおいて、暴行等のあるまじき行為をしていること、また帰国後、そうしたケースの場合に訴訟を起こしている方もいらっしゃるということで、先進国日本としてのイメージも損なわれるというような結果になっているという内容の報道でございました。  そこでお伺いいたしますけれども、仮に不法入国した外国人であったとしても最低限人権を守るべきというふうに考えますが、こうした外国人の強制退去の場合の処遇も含めまして、人権擁護の観点からどのように考えていらっしゃるのか、お聞かせください。
  152. 松浪健四郎

    ○松浪議員 提案者が答えてよろしいでしょうか。それとも法務省の方がよろしいでしょうか。(上川委員「法務省の方に」と呼ぶ)法務省の方が具体的な答弁になろうかと思います。
  153. 横山匡輝

    横山政府参考人 どうも失礼いたしました。法務省の方からお答えいたします。ただ、私、入国管理行政そのものを所管しておりませんで、まさに人権擁護立場からお答えさせていただきます。  不法入国した外国人の退去強制手続における処遇等、法を犯した外国人に対する処遇につきましても、出入国管理及び難民認定法等の関係法令の規定に従って適正に行われなければならないことは当然のことでありまして、人権擁護の観点からも、必要な範囲を超えてこれらの外国人方々人権を不当に制約するようなことがないよう十分配慮する必要がある、このように考えております。
  154. 上川陽子

    ○上川委員 時間が来ましたので質問は終わりますけれども、国際交流がふえまして、そうしたケースが非常にふえてくるということでございますので、ぜひともきめ細かな行政をお願いしたいというふうに思います。  ありがとうございました。
  155. 長勢甚遠

    長勢委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  156. 長勢甚遠

    長勢委員長 これより討論に入ります。  討論の申し出がありますので、これを許します。木島日出夫君。
  157. 木島日出夫

    ○木島委員 私は、日本共産党を代表して、与党三党提出人権教育及び人権啓発推進に関する法律案に対して、反対の討論を行います。  本法案は、人権教育啓発に関する一般法の形をとっており、法文の中に同和の文言を一切使用しておりませんが、本法案人権教育啓発に名をかりた確認・糾弾活動の合法化をねらう部落解放同盟の要求による議員立法であることは、立法の経過を見れば明らかであります。  部落差別解消のための政府施策は、一九六五年の同和対策審議会答申以来、同和対策事業特別措置法等による同和対策事業が実施されてきました。九七年三月末、特別措置法による特別対策はほぼ目的を達成したとして基本的に終結し、残務処理として一部事業、施策が現在行われています。  右経過の中で、九六年秋の臨時国会では、当委員会において審議された人権擁護施策推進法成立し、人権擁護推進審議会が九七年五月設置されました。同審議会は、九九年七月、人権尊重理念に関する国民相互理解を深めるための教育啓発に関する施策について答申しました。この答申では「人権教育啓発は、国民一人一人の心の在り方に密接にかかわる問題であることから、その性質上、押し付けにならないように留意する必要がある。」と指摘し、人権教育啓発のための法的措置を提言しなかったのであります。これを受けて、政府も法的措置を見送ったのであります。  問題とされる確認・糾弾に対しては、政府の方針ともいうべき八六年の地対協意見具申ではっきりと基本的考えが示されています。  具申は、同和問題の解決のための基本的課題として自由な意見交換のできる環境づくりを挙げ、自由な意見交換の阻害要因として民間運動団体の行き過ぎた言動を指摘し、民間運動団体の確認・糾弾という激しい行動形態が国民に同和問題は怖い問題、面倒な問題であるとの意識を植えつけ、同和問題に関する国民各層の批判や意見の公表を抑制してしまっていると明確に述べています。さらに、確認・糾弾行為についての基本的考え方として、被害者集団による一種の自力救助的かつ私的裁判的行為であるから、被糾弾者が当然にこれに服すべき義務を有するものではないと明確な判断を下しているのであります。  それにもかかわらず、部落解放同盟は、現在に至るも確認・糾弾行為を強行しており、自殺者まで出ているのであります。このような確認・糾弾行為に口実を与えるような本法案は、断じて認めるわけにはまいりません。  法案の最大の問題は、幅広く奥深い人権という重い課題を、実態として存在するさまざまな人権問題に真正面から取り組むのではなく、殊さらに差別のみに焦点を当てて矮小化し、国民差別意識の問題として、国と地方公共団体責務として教育啓発を法定している点であります。これは、憲法で保障された思想、良心の自由、表現の自由などを侵害するおそれある立法と言わなければなりません。  学校現場では、人権教育と称して、狭山事件の教材化、同和地区児童の身分暴きと解放の戦士の育成、物言えぬ人権参観・懇談の押しつけ、生徒や教師が確認・糾弾の対象にされるなどの実態が現にあるのであります。人権教育の法定化は、こうした偏向教育、確認・糾弾を逆に励まし、助長することになり、賛成できません。  以上の理由から、本法案に対し強く反対することを表明し、討論といたします。
  158. 長勢甚遠

    長勢委員長 これにて討論は終局いたしました。     —————————————
  159. 長勢甚遠

    長勢委員長 これより採決に入ります。  熊代昭彦君外八名提出人権教育及び人権啓発推進に関する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  160. 長勢甚遠

    長勢委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     —————————————
  161. 長勢甚遠

    長勢委員長 この際、ただいま議決いたしました本案に対し、横内正明君外六名から、自由民主党民主党・無所属クラブ、公明党、自由党、社会民主党・市民連合、21世紀クラブ及び土屋品子君の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨説明を聴取いたします。佐々木秀典君。
  162. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 ただいま議題となりました附帯決議案について、提出者を代表しまして、案文を朗読し、趣旨説明といたします。     人権教育及び人権啓発推進に関する法律案に対する附帯決議(案)   この法律施行に伴い、政府は、次の点につき格段の配慮をされたい。  一 人権教育及び人権啓発に関する基本計画の策定に当たっては、行政の中立性に配慮し、地方自治体や人権にかかわる民間団体等関係各方面の意見を十分に踏まえること。  二 前項の基本計画は、「人権教育のための国連十年」に関する国内行動計画等を踏まえ、充実したものにすること。  三 「人権の二十一世紀」実現に向けて、日本における人権政策確立の取組みは、政治の根底・基本に置くべき課題であり、政府・内閣全体での課題として明確にするべきであること。 以上であります。  何とぞ委員各位の御賛同をお願いして、提案を終わります。よろしくお願いします。
  163. 長勢甚遠

    長勢委員長 これにて趣旨説明は終わりました。  採決いたします。  横内正明君外六名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  164. 長勢甚遠

    長勢委員長 起立多数。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決まりました。  この際、ただいまの附帯決議につきまして、法務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。保岡法務大臣
  165. 保岡興治

    ○保岡国務大臣 ただいま可決されました附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処したいと存じます。     —————————————
  166. 長勢甚遠

    長勢委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  167. 長勢甚遠

    長勢委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  168. 長勢甚遠

    長勢委員長 次に、内閣提出参議院送付民事再生法等の一部を改正する法律案及び外国倒産処理手続承認援助に関する法律案の両案を議題といたします。  順次趣旨説明を聴取いたします。保岡法務大臣。     —————————————  民事再生法等の一部を改正する法律案  外国倒産処理手続承認援助に関する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  169. 保岡興治

    ○保岡国務大臣 最初に、民事再生法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。  近年、いわゆるバブル経済の崩壊後の経済情勢の悪化及びこれに起因する社会経済構造の変革等に伴い、住宅ローン等を抱えた個人債務者の破産件数が急増しておりますが、現行の倒産法制においては、経済状態の悪化した個人債務者が経済生活の再生を図るための手続が必ずしも十全でないとの指摘がされております。すなわち、個人債務者を対象とする現行の倒産処理手続のうち、破産法上の破産・免責手続につきましては、債務者がその有する全財産を清算されることになり、持ち家住宅を保持することができない上、破産者として事実上の社会的不利益をこうむるといった問題点が指摘されており、また、民事再生法上の再生手続につきましても、主として中小企業の再生手続として構想されたものであるため、個人債務者が利用するには手続的な負担が重過ぎる等の問題点が指摘されております。  また、近年は、経済活動の国際化進展により、複数の国において事業を行い、資産を保有する企業等が増加しており、このような国際的な経済活動を行う企業等が倒産に陥る事例がふえております。ところが、我が国の倒産法制においては、破産法及び会社更生法が、国内で開始された破産手続等の効力は債務者の外国財産には及ばないものとし、他方、外国で開始された倒産処理手続の効力は債務者の国内財産には及ばないものとする属地主義を採用しているなど、企業倒産事件の国際化に十分に対応したものになっておりません。  そこで、この法律案は、住宅ローンその他の債務を抱えて経済的に窮境にある個人債務者の経済生活の再生を迅速かつ合理的に図るための再生手続の特則を設けるとともに、国際倒産法制に関し、同時に提出をいたしております外国倒産処理手続承認援助に関する法律案と相まって、国際的に整合のとれた財産の清算または経済的再生を可能とする手続の整備を図ろうとするものであります。  この法律案の要点を申し上げますと、第一は、住宅ローンを抱えた個人債務者が、できる限り住宅を手放さないで再生できるようにするため、住宅資金貸付債権に関する特則を設けたことであります。この特則におきましては、住宅ローン債権について、再生計画による弁済の繰り延べを一定の厳格な要件のもとに認め、当該債権等を担保するために住宅に設定された抵当権の実行を制限することにより、住宅ローンに関する債権者、債務者間の利益の適切な調整を図っております。  第二は、継続的な収入の見込みがある個人債務者の小規模な事件を対象として、小規模個人再生と給与所得者等再生という二種類の再生手続を設けたことであります。いずれの手続におきましても、その対象を債務額が小規模の個人債務者に限定して、再生債権の調査手続や再生計画の認可のための手続等を簡素で合理的なものとすること等により、個人債務者が利用しやすい再生手続を整備し、債権者にとっても破産の場合よりも多くの支払いを受けることができるようにしております。  第三は、破産法、会社更生法、民事再生法等における国際倒産に関する規定を整備したことであります。破産管財人及び更生管財人の財産の管理処分権を債務者の国外にある財産にも及ぼすとともに、同一の債務者について外国倒産処理手続国内の破産手続等とが並行的に進行する場合に相互調整を行う旨の規定や、国際倒産管轄についての規定等を設けることにより、国際的に活動する企業等について公平かつ適正な倒産処理の実現を図っております。  なお、この法律制定に伴い、最高裁判所規則の制定等所要の手続を必要といたしますので、その期間を考慮いたしまして、この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとしております。  続いて、外国倒産処理手続承認援助に関する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。  近年、国際的な取引が活発になり、資産の国外移転も容易になったことから、複数の国で事業を行い、資産を保有する企業等がふえるとともに、国際的に経済活動を行う企業等が経済的に破綻する事例も増加しております。ところが、我が国の国際倒産法制においては、国内で開始された破産手続等の効力は債務者の外国にある財産には及ばず、他方で、外国で開始された倒産処理手続の効力は債務者の日本国内にある財産には及ばないものとする属地主義が採用されており、国際的に公平、適正な倒産処理という観点から問題があるとの指摘がされております。さらに、平成九年には、国際連合の国際商取引法委員会において国際倒産モデル法が採択され、国連総会において、加盟各国に対して、モデル法を踏まえた法整備が勧告されておりまして、現在、各国で立法作業が進められている状況にあります。  そこで、この法律案は、モデル法の趣旨を踏まえ、外国倒産処理手続について、その効力を日本国内において適切に実現するための承認援助手続を創設することにより、国際的に整合のとれた債務者の財産の清算または経済的再生を図ろうとするものであります。  この法律案の要点を申し上げますと、第一は、外国倒産処理手続を承認する手続を創設したことであります。外国倒産処理手続の効力を日本国内に及ぼす必要がある場合には、外国管財人等は、我が国裁判所に対し外国倒産処理手続の承認の申し立てをし、申し立てを受けた裁判所は、その外国倒産処理手続について、日本国内において援助を与える適格性を備えているか否かを審査して、承認の決定をすることとしております。  第二は、外国倒産処理手続を援助するため、債務者の日本国内にある財産に関して、各種の必要な処分をすることができるようにしたことであります。個々の事案に応じて、強制執行等の手続の中止命令等により、債権者の個別的な権利行使を制限し、また、債務者による財産の処分または債務の弁済の禁止を命ずる処分や、財産の管理処分権を承認管財人に専属させる管理命令等により、債務者の財産の管理処分権を制限することができるものとしております。  第三は、国内債権者の利益を保護するため、外国倒産処理手続承認援助手続に入った債務者または承認管財人が日本国内にある財産の処分または国外への持ち出し等について裁判所の許可の制度を導入し、これに違反した場合の罰則についても整備をしたことであります。  第四は、同一の債務者につき複数の外国倒産処理手続承認援助手続が競合し、または外国倒産処理手続承認援助手続と国内倒産処理手続とが競合した場合について、手続相互間の調整の規律を設けて矛盾抵触を回避することができるようにしたことであります。  なお、この法律制定に伴い、最高裁判所規則の制定等所要の手続を必要といたしますので、その期間を考慮いたしまして、この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとし、また、証券取引法等の関係法律につき所要の整備をしております。  以上が、これら法律案趣旨でございます。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。
  170. 長勢甚遠

    長勢委員長 これにて趣旨説明は終わりました。  次回は、来る十七日金曜日に委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時三十分散会