○保岡国務大臣 最初に、
民事再生法等の一部を改正する
法律案につきまして、その
趣旨を御
説明いたします。
近年、いわゆるバブル経済の崩壊後の経済
情勢の悪化及びこれに起因する
社会経済構造の変革等に伴い、住宅ローン等を抱えた個人債務者の破産件数が急増しておりますが、現行の倒産法制においては、経済状態の悪化した個人債務者が経済
生活の再生を図るための手続が必ずしも十全でないとの
指摘がされております。すなわち、個人債務者を対象とする現行の倒産処理手続のうち、破産法上の破産・免責手続につきましては、債務者がその有する全財産を清算されることになり、持ち家住宅を保持することができない上、破産者として事実上の
社会的不利益をこうむるといった問題点が
指摘されており、また、民事再生法上の再生手続につきましても、主として中小企業の再生手続として構想されたものであるため、個人債務者が利用するには手続的な負担が重過ぎる等の問題点が
指摘されております。
また、近年は、経済活動の
国際化の
進展により、複数の国において事業を行い、資産を保有する企業等が増加しており、このような国際的な経済活動を行う企業等が倒産に陥る事例がふえております。ところが、
我が国の倒産法制においては、破産法及び会社更生法が、
国内で開始された破産手続等の効力は債務者の外国財産には及ばないものとし、他方、外国で開始された倒産処理手続の効力は債務者の
国内財産には及ばないものとする属地主義を採用しているなど、企業倒産事件の
国際化に十分に対応したものになっておりません。
そこで、この
法律案は、住宅ローンその他の債務を抱えて経済的に窮境にある個人債務者の経済
生活の再生を迅速かつ合理的に図るための再生手続の特則を設けるとともに、国際倒産法制に関し、同時に
提出をいたしております
外国倒産処理手続の
承認援助に関する
法律案と相まって、国際的に整合のとれた財産の清算または経済的再生を可能とする手続の整備を図ろうとするものであります。
この
法律案の要点を申し上げますと、第一は、住宅ローンを抱えた個人債務者が、できる限り住宅を手放さないで再生できるようにするため、住宅資金貸付債権に関する特則を設けたことであります。この特則におきましては、住宅ローン債権について、再生
計画による弁済の繰り延べを一定の厳格な要件のもとに認め、当該債権等を担保するために住宅に設定された抵当権の実行を制限することにより、住宅ローンに関する債権者、債務者間の利益の適切な調整を図っております。
第二は、継続的な収入の見込みがある個人債務者の小規模な事件を対象として、小規模個人再生と給与所得者等再生という二種類の再生手続を設けたことであります。いずれの手続におきましても、その対象を債務額が小規模の個人債務者に限定して、再生債権の調査手続や再生
計画の認可のための手続等を簡素で合理的なものとすること等により、個人債務者が利用しやすい再生手続を整備し、債権者にとっても破産の場合よりも多くの支払いを受けることができるようにしております。
第三は、破産法、会社更生法、
民事再生法等における国際倒産に関する規定を整備したことであります。破産管財人及び更生管財人の財産の管理処分権を債務者の国外にある財産にも及ぼすとともに、同一の債務者について
外国倒産処理手続と
国内の破産手続等とが並行的に進行する場合に相互調整を行う旨の規定や、国際倒産管轄についての規定等を設けることにより、国際的に活動する企業等について公平かつ適正な倒産処理の実現を図っております。
なお、この
法律の
制定に伴い、最高
裁判所規則の
制定等所要の手続を必要といたしますので、その期間を考慮いたしまして、この
法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から
施行することとしております。
続いて、
外国倒産処理手続の
承認援助に関する
法律案につきまして、その
趣旨を御
説明いたします。
近年、国際的な取引が活発になり、資産の国外移転も容易になったことから、複数の国で事業を行い、資産を保有する企業等がふえるとともに、国際的に経済活動を行う企業等が経済的に破綻する事例も増加しております。ところが、
我が国の国際倒産法制においては、
国内で開始された破産手続等の効力は債務者の外国にある財産には及ばず、他方で、外国で開始された倒産処理手続の効力は債務者の
日本国内にある財産には及ばないものとする属地主義が採用されており、国際的に公平、適正な倒産処理という観点から問題があるとの
指摘がされております。さらに、
平成九年には、
国際連合の国際商取引法
委員会において国際倒産モデル法が採択され、
国連総会において、加盟各国に対して、モデル法を踏まえた法整備が
勧告されておりまして、現在、各国で立法作業が進められている
状況にあります。
そこで、この
法律案は、モデル法の
趣旨を踏まえ、
外国倒産処理手続について、その効力を
日本国内において適切に実現するための
承認援助手続を創設することにより、国際的に整合のとれた債務者の財産の清算または経済的再生を図ろうとするものであります。
この
法律案の要点を申し上げますと、第一は、
外国倒産処理手続を承認する手続を創設したことであります。
外国倒産処理手続の効力を
日本国内に及ぼす必要がある場合には、外国管財人等は、
我が国の
裁判所に対し
外国倒産処理手続の承認の申し立てをし、申し立てを受けた
裁判所は、その
外国倒産処理手続について、
日本国内において援助を与える適格性を備えているか否かを審査して、承認の決定をすることとしております。
第二は、
外国倒産処理手続を援助するため、債務者の
日本国内にある財産に関して、各種の必要な処分をすることができるようにしたことであります。個々の事案に応じて、強制執行等の手続の中止命令等により、債権者の個別的な
権利行使を制限し、また、債務者による財産の処分または債務の弁済の禁止を命ずる処分や、財産の管理処分権を承認管財人に専属させる管理命令等により、債務者の財産の管理処分権を制限することができるものとしております。
第三は、
国内債権者の利益を保護するため、
外国倒産処理手続の
承認援助手続に入った債務者または承認管財人が
日本国内にある財産の処分または国外への持ち出し等について
裁判所の許可の
制度を導入し、これに違反した場合の罰則についても整備をしたことであります。
第四は、同一の債務者につき複数の
外国倒産処理手続の
承認援助手続が競合し、または
外国倒産処理手続の
承認援助手続と
国内倒産処理手続とが競合した場合について、手続相互間の調整の規律を設けて矛盾抵触を回避することができるようにしたことであります。
なお、この
法律の
制定に伴い、最高
裁判所規則の
制定等所要の手続を必要といたしますので、その期間を考慮いたしまして、この
法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から
施行することとし、また、証券取引法等の関係
法律につき所要の整備をしております。
以上が、これら
法律案の
趣旨でございます。
何とぞ、慎重に御
審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。