運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

2000-10-31 第150回国会 衆議院 法務委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十二年十月三十一日(火曜日)     午前九時開議  出席委員    委員長 長勢 甚遠君    理事 太田 誠一君 理事 杉浦 正健君    理事 山本 有二君 理事 横内 正明君    理事 佐々木秀典君 理事 野田 佳彦君    理事 漆原 良夫君 理事 藤島 正之君       岩屋  毅君    加藤 紘一君       河村 建夫君    後藤田正純君       左藤  章君    笹川  堯君       林 省之介君    平沢 勝栄君       森岡 正宏君    渡辺 具能君       渡辺 喜美君    枝野 幸男君       奥田  建君    中山 義活君       日野 市朗君    肥田美代子君       平岡 秀夫君    牧野 聖修君       山内  功君    山花 郁夫君       上田  勇君    太田 昭宏君       木島日出夫君    原  陽子君       保坂 展人君    上川 陽子君       土屋 品子君     …………………………………    議員           麻生 太郎君    議員           杉浦 正健君    議員           谷垣 禎一君    議員           漆原 良夫君    議員           高木 陽介君    議員           松浪健四郎君    法務大臣         保岡 興治君    法務政務次官       上田  勇君    最高裁判所事務総局家庭局    長            安倍 嘉人君    政府参考人    (警察庁生活安全局長)  黒澤 正和君    政府参考人    (法務省刑事局長)    古田 佑紀君    政府参考人    (法務省矯正局長)    鶴田 六郎君    政府参考人    (法務省保護局長)    馬場 義宣君    法務委員会専門員     井上 隆久君     ————————————— 委員の異動 十月三十一日  辞任         補欠選任   河村 建夫君     林 省之介君   武部  勤君     渡辺 具能君   日野 市朗君     牧野 聖修君   平岡 秀夫君     中山 義活君   山内  功君     奥田  建君   上田  勇君     太田 昭宏君   保坂 展人君     原  陽子君 同日  辞任         補欠選任   林 省之介君     河村 建夫君   渡辺 具能君     武部  勤君   奥田  建君     山内  功君   中山 義活君     平岡 秀夫君   牧野 聖修君     日野 市朗君   太田 昭宏君     上田  勇君   原  陽子君     保坂 展人君     ————————————— 十月三十一日  治安維持法犠牲者国家賠償法制定に関する請願家西悟紹介)(第五八〇号)  同(佐藤敬夫紹介)(第五八一号)  同(春名直章紹介)(第五八二号)  同(三井辨雄君紹介)(第五八三号)  同(伊藤英成紹介)(第六九九号)  同(釘宮磐紹介)(第七〇〇号)  法務局、更生保護官署及び入国管理官署の増員に関する請願漆原良夫紹介)(第五八四号)  裁判所の人的・物的充実に関する請願赤嶺政賢君紹介)(第六七七号)  同(石井郁子紹介)(第六七八号)  同(枝野幸男紹介)(第六七九号)  同(小沢和秋紹介)(第六八〇号)  同(大幡基夫紹介)(第六八一号)  同(大森猛紹介)(第六八二号)  同(木島日出夫紹介)(第六八三号)  同(児玉健次紹介)(第六八四号)  同(穀田恵二紹介)(第六八五号)  同(佐々木憲昭紹介)(第六八六号)  同(佐々木秀典紹介)(第六八七号)  同(志位和夫紹介)(第六八八号)  同(塩川鉄也紹介)(第六八九号)  同(瀬古由起子紹介)(第六九〇号)  同(中林よし子紹介)(第六九一号)  同(春名直章紹介)(第六九二号)  同(不破哲三紹介)(第六九三号)  同(藤木洋子紹介)(第六九四号)  同(松本善明紹介)(第六九五号)  同(矢島恒夫紹介)(第六九六号)  同(山口富男紹介)(第六九七号)  同(吉井英勝紹介)(第六九八号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  政府参考人出頭要求に関する件  少年法等の一部を改正する法律案麻生太郎君外五名提出衆法第三号)     午前九時開議      ————◇—————
  2. 長勢甚遠

    長勢委員長 これより会議を開きます。  この際、麻生太郎君外五名提出少年法等の一部を改正する法律案に対し、藤島正之君から修正案提出されております。  提出者から趣旨説明を求めます。藤島正之君。     —————————————  少年法等の一部を改正する法律案に対する修正案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  3. 藤島正之

    藤島委員 ただいま議題となりました修正案について、その趣旨及び概要を御説明いたします。  与党三党案については、以下の点を修正すべきであると考えます。  一、少年法適用年齢を二十歳未満から十八歳未満に引き下げること。  二、右の措置に伴う関連諸法修正を行うこと。  本修正案提案理由は、十八歳以上二十歳未満のいわゆる年長少年凶悪犯が占める割合が他の年齢層少年に比べて高いことから、罪を犯せば罰せられるとの規範意識を与えて犯罪一般予防を達成するため、少年法適用年齢を十八歳未満に引き下げる必要があるからでございます。  何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
  4. 長勢甚遠

    長勢委員長 これにて修正案趣旨説明は終わりました。     —————————————
  5. 長勢甚遠

    長勢委員長 麻生太郎君外五名提出少年法等の一部を改正する法律案並びにこれに対する佐々木秀典君外三名及び藤島正之提出の両修正案を一括して議題といたします。  お諮りいたします。  本案及び両修正案審査のため、本日、政府参考人として警察庁生活安全局長黒澤正和君、法務省刑事局長古田佑紀君、法務省矯正局長鶴田六郎君及び法務省保護局長馬場義宣君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 長勢甚遠

    長勢委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  7. 長勢甚遠

    長勢委員長 次に、お諮りいたします。  本日、最高裁判所安倍家庭局長から出席説明要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 長勢甚遠

    長勢委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  9. 長勢甚遠

    長勢委員長 質疑申し出がありますので、順次これを許します。藤島正之君。
  10. 藤島正之

    藤島委員 きょうは時間の制約がございますので、私は、被害者救済といいますか被害者保護についてだけ、一点お尋ねしたいと思います。  まず法務省に、現行制度では犯罪被害者全般に対してどのような救済措置がとられているのか、これをごく簡単に御説明いただきたいと思います。
  11. 上田勇

    上田政務次官 現行被害者保護救済に関します法制度について御説明をさせていただきます。  犯罪被害者保護については、当初は、被害者証人という立場にも立つということから、主としてその保護という観点から、昭和三十三年に刑法及び刑事訴訟法の一部改正によりまして、証人威迫罪新設あるいは証人尋問中の被告人退席退廷規定新設などが行われるとともに、証人等被害についての給付に関する法律制定されました。  その後、昭和五十五年には、犯罪被害者等給付金支給法制定をされまして、犯罪被害給付制度が定められ、さらに平成十一年八月に成立いたしました刑事訴訟法の一部改正法律によりまして、証人住居等に関する事項につきましては尋問制限規定新設をされました。  そして、御承知のとおり、本年五月には、いわゆる犯罪被害者保護のための二法が成立をさせていただいたところでございます。この二つ法律は、犯罪被害者保護のために証人負担軽減のための制度等を導入するものでございますが、一部の規定を除きまして、ことしの十一月一日から施行とされたところでございます。  これらの法制度は、これは必ずしも少年犯罪被害者のために特に設けられたというものではございませんけれども少年保護事件の性質にかんがみまして適用、準用されない場合を除きまして少年による犯罪被害者にも対象となっているところでございます。  以上でございます。     〔委員長退席横内委員長代理着席
  12. 藤島正之

    藤島委員 私どもは、厳罰厳罰ということをこの少年法改正で言っているわけではございませんで、少年犯罪は、犯罪を犯した少年被害者それから一般国民に対する影響、この三つの観点から考えていかなければいけない、こう思うわけでありまして、その際、やはり被害者保護というのは、一般犯罪のとき以上に保護される必要があるのじゃないか。  というのは、片や加害者は非常に保護されている、片や被害者は、逆に言うともう丸裸で、報道自由放題、非常に苦痛をこうむっているというケースが多いわけです。一般犯罪ですと、相手方も一般の形になるものですから、非常に応報性といいますか、加害者被害者関係が明確なものですから、それはそれで国の裁きであれば被害者も納得するということになるのですけれども少年犯罪の場合は非常にそこの辺が不明確になっているということなんです。  参考人質疑で、バスジャック事件被害者家族ということで塚本さんがお見えになって、その際、政府は何もしてくれていない、あるいは葬儀費生活費にも困ったということもおっしゃっておりまして、そういうことが逆に、ひいては加害者に対して厳罰望むようになるんだというようなこともおっしゃっておりまして、これは大事な問題だと考えております。  実は、このお話がありましたので、警察庁の方に尋ねてみましたところ、金額的には塚本さんのケースですと約三百万から七百万の間ぐらいになるだろうということで、七月三日に申請を受理したと。かなりおくれているわけでございますけれども、さらにまだ結論が出ていないわけです。やはりこの制度にも若干問題があるようなんです。損害賠償との関係で差し引きするような形になるということで、まだ議論があるようでございます。鋭意努力はしているようですけれども、私も、被害者の気持ちを考えてぜひ急いでほしいということを申し上げまして、佐賀県警連絡をとりながら急ぐことにしますというようなお話があったのですが、現実運用を見ると、そういういろいろな問題で、法制度から来る問題もかなりあるようでございます。  また、もう一件の参考人質疑のときの岡崎さんの事件で、岡崎さんは二点話があったわけです。警察、検察の捜査に対する疑念というものをかなりおっしゃっていたわけですけれども、それはそれといたしまして、被害者遺族の心のケアといった点も非常に大事なんだ、こういうことをお話しになっておったわけであります。  そういうことから、私は、少年犯罪被害者というのは一般犯罪とはちょっと別な配慮というものが必要なんじゃなかろうか、こう思うわけですけれども、今回、その少年犯罪被害者対策として三点盛られている面があるわけでございます。第五条の二で被害者等による記録の閲覧、謄写等、九条の二で被害者等申し出による意見の聴取、それから三十一条の二で被害者等に対する通知、これはこれでかなり改善の方向だというふうに私は考えておるわけでございます。  いずれにしましても、今申し上げたような被害者に対する心のケアだとか経済的な支援だとか、あるいはもう一点、せんだっての私の質問のとき申し上げたのですけれども被害者マスコミに対する公開、これは、マスコミ加害者の方を報道できないせいか、被害者の方を写真入り実名入りでどんどんやって、もう電話が殺到するわ大変な思いをして、雲隠れもしたくなるようなことだというふうに被害者家族の方がおっしゃっていたわけです。私は、そういう意味では、少年犯罪に関して言えば被害者に対する報道も何らか規制できないかというふうなことも考えておるわけです。  そういうふうに、少年犯罪被害者への総合的な保護制度といったものを全般に考えて整備すべきじゃないか、こう思うわけですけれども、この辺については、提案者は何か全体的に考えられたのでしょうか。     〔横内委員長代理退席委員長着席
  13. 松浪健四郎

    松浪議員 お答えいたします。  少年犯罪被害者保護につきましては、委員指摘のとおりでございます。さまざまな分野でさまざまな施策を講じる必要があると考えております。そのためには、本改正法案少年犯罪被害者への配慮を充実させるための具体的な制度を盛り込みましたように、現実的で具体的な個別の施策を講じていくことがまず必要なことであると考えております。  そこで、犯罪被害者対策関係省庁連絡会議は、平成十一年の十一月に第一回会議が開催されました。平成十二年三月三十日には「犯罪被害と当面の犯罪被害者対策について」と題した報告書が取りまとめられております。加えて、本年十月十七日に幹事会を開催し、その後の各省庁取り組み状況等についての報告が行われたところでございます。  基本法制定犯罪被害者保護基本法のことでございますけれども、これにつきまして議論することは大変意義のあることであるというふうに考えておりますが、少年審判制度を含む刑事司法制度の適正な運用に与える影響などを踏まえつつ、こうした種々の個別具体的な施策を講じていく中で、総合的な見地から検討をするのが適当であろうと考えております。  なお、それらにつきましては、百四十七国会におきまして、民主党所属議員により、衆議院及び参議院に犯罪被害者基本法案提出されましたけれども、いずれも廃案となっております。この民主党犯罪被害者基本法の主な問題点として、幾つかの難点があったような気がいたします。  例えば、被害者において、刑事手続に関連した意見表明情報の提供を受ける旨の規定を置くこととするなど、被害者側の権利のみが一方的に強調されており、被疑者被告人防御権が不当に制約されるなど、刑事司法制度の適正な運用に悪影響を及ぼすおそれがございました。  また、人が心身、財産等損害をこうむる場合は犯罪による被害に限られないところから、特に犯罪による被害者被害回復社会復帰について基本法制定することは、犯罪被害者以外の損害をこうむった者や社会復帰すべき者との均衡を十分考慮する必要がございます。  そして、犯罪被害者被害回復等についての基本法を作成するには財政当局理解が不可欠でございまして、そのような理解が得られるか否かは不透明でもございました。  なお、公明党は、犯罪被害者救済の一環として、犯罪被害者対策基本法制定を目指すとお聞きいたしておりますし、我が保守党にありましても、その重要性を痛感しておるところでございます。御党におかれましても、ぜひ御検討いただければありがたい、こういうふうに思います。  また、マスコミ被害の件でございますけれども、ことしの十月十一日に個人情報保護基本法の大綱が発表されましたけれどもプライバシー保護の視点からいたしますれば、いかにマスコミ被害を防止するか、今後も真摯に議論を重ねていくべきだと考えております。  なお、この法律にありましては、マスコミは多くの面で適用除外というふうになっておりますけれども、十分な議論を深めていかなければならない、こう考えておるところでございます。  なお、委員指摘の雑則第六十一条の問題につきましては、私ども委員と全く同じ考えを持っておることをつけ加えさせていただきたい、こういうふうに思います。
  14. 藤島正之

    藤島委員 どうもありがとうございました。  先ほど法務省の方からお話がありましたように、一般刑事事件被害補償はもちろん少年犯罪にも適用になるわけでございますけれども、ただいま提案者側質問した件に関しまして、法務省の見解をお伺いしたいと思います。
  15. 保岡興治

    保岡国務大臣 今、松浪提案者からいろいろ御説明がありましたとおり、また、先ほど総括政務次官からもお話がありましたとおり、被害者救済保護、そういったことについては従来も一生懸命努力をしてまいりましたし、今度の少年法改正でもかなり前進した内容を盛り込んでいただいております。  制度的に言えば、法務省としては、例えば被害者被害をどう救済していくかという民事的な観点から、刑事手続の中で被害者への対応をいろいろ工夫できないかということが今後検討していくべき課題じゃないかと思いますし、また、今お話のありました被害者の精神的なケアの問題についても厚生省を中心にして検討をしていかなきゃならないだろう。また、今、警察庁で事実、検討を鋭意進めているところであると承知しておりますが、被害者給付金を見直して、今金額が非常に少ないんじゃないかという御指摘もありますので、その点についてのいい答えが出る努力をすべきだ、そういうふうに私も考えております。  また、マスコミの問題については、私自身も、やはり一義的にはマスコミがきちっとしたガイドラインを持って、不当なプライバシーの侵害がないようにすることが大切だと思いますが、これについてももっと議論をする必要がある。  それから、被害者救済のための基本法お話もありましたが、こういったいろいろな省庁に分散している問題を、理念を持って総合的に、体系的につくり上げていく、そういう指導理念というものが法律であるということは意義のあることとは存じますけれども、先ほど松浪提案者から言われましたとおり、少年審判刑事司法全体の関係との調整など、いろいろ慎重に議論をするところもまた大切だ、そういうふうに考えています。  また、検察庁としては、被害者支援員制度を昨年の十月からスタートさせて、きょう、あすと全国から百名のメンバーを集めて研修をすることになっています。これは、被害者救済制度がいろいろ進んでいる中で、こういったものの被害者国民へのPRその他、支援員に知識やいろいろな運用について適切な対応をしていただくための勉強をしていただくということなど、法務省としても、被害者救済保護については今後も全力を尽くして頑張ってまいりたいと考えております。
  16. 藤島正之

    藤島委員 私は、最初に申し上げましたように、この問題は今回の少年法改正の裏表というような性格があると思いますので、ぜひ前向きに取り組んでいただきたいと思います。  終わります。
  17. 長勢甚遠

  18. 保坂展人

    保坂委員 社会民主党保坂展人です。  保岡法務大臣に、さきに続いて質問をしたいと思います。  さきに、私は、少年犯罪凶悪化しているかどうか、あるいは低年齢化しているかどうかということについて刑事局から答弁を求め、そして二つデータ、これは日経新聞の九月七日に報道されたデータでございまして、少年刑法犯検挙人員比率について九七年から九八年まで漸減をしているというデータ、もう一つは、八三年から九八年までの少年刑法犯検挙人員年齢別を見ていくと、年少少年検挙者減少傾向を見せている、逆に高校生、大学生の、ハイティーンといいますか、そちらの方がふえている、このデータはもう刑事局長、確認していただいているんですね、当時の議事録を見直してみますと。  ここで私が指摘したのは、戦後、少年非行のピークというのが幾つかあって、昨今も大きな事件大変世間耳目を集めるようになっているのは事実。しかし、数として凶悪事件が際限なくふえ、その検挙数がここ直近のデータだとむしろ減ってきていたり、あるいは年少少年の大変大きな問題が言われたのは校内暴力が言われた一九八〇年代の初めごろで、現在見てみるとこういうデータが出ているわけですね。  法務大臣に改めて、当委員会での議論の中でも凶悪化あるいは低年齢化ということを言われてきているんですけれども、一方において私が指摘しているような事実があるということを踏まえると、立法をめぐる動機の問題ですけれどもお話しいただきたいと思います。その点どう思われるか。
  19. 保岡興治

    保岡国務大臣 統計数字ですから、これは保坂委員の御指摘の点もあろうと思います。しかしながら、少年犯罪あるいは凶悪犯罪の数というのはでこぼこで、ふえたり減ったりしている。確かにこの数年、年によっては減ったりするところもあるんですけれども、また一つの山にかかってきているんじゃないかというような傾向もあるかと思うんですよ。そういうことや、また、最近の少年非行犯罪というものは、なぜこういう重大なことをやるんだろうかとか、あるいは非常に突発的、短絡的な事件が多かったり、また世間耳目を集める凶悪重大な事件が続いていることや、年少少年でもかなり重大な事件を起こした例もこのところ続いておりますし、そういうことから世間一般国民が非常にこういう傾向危機感を持ったということが今度の立法の背景だと私は思います。  それに、長い間少年法も見直しておりません。世界にもいろいろな少年非行犯罪をめぐる立法の動きもありますが、我が国でも、この際いろいろな観点から少年法改正をすべきだという国民意見というものが強い。そういうことを踏まえた立法であって、事実、私は、今度の少年法改正というものは、いろいろ議論もあると思いますが、内容においてすぐれた改善も多く盛り込んであって、国民の期待にこたえるものである、そして、ぜひこの機会に成立を期待しているところでございます。
  20. 保坂展人

    保坂委員 簡潔にお答えいただきたいんですが、確かに統計でこぼこがあるわけです。俯瞰をしてみれば、凶悪犯罪、殺人などの罪で立件された少年というのが一番多かったのは一九六〇年前後でしょうか、大変に多いわけですね。現在、そこから比べれば三分の一とか、かなり急減した。またそこがふえていくんじゃないかという部分で危惧があったわけですね。そしてそれがふえたかと思うと、また少し減る、こういう状況だ思うんです。もう一つ凶悪事件ということでいえば、前回紹介をしたような、本当に世間に衝撃を与えるような、考えられない事件というのはかつても起こっていたということがございますね。大臣もお認めになったと思います。  ですから、そういうところで大変冷静にデータも見ながら議論をしていかなければいけないと思うんですが、そこはしっかり踏まえていただきたいと思います。つまり、凶悪事件あるいは年少少年の起こす事件が今極めて急上昇を描いているという状態では必ずしもないということは確認できると思います。  そこで、大臣に次の質問なんですが、日本少年院をどう評価するかということをお聞きしたいと思います。  統計上も、例えば少年院を出た少年たちがまた再犯を犯す比率というのはかつてより半分近くに減っているんじゃないでしょうか。それでも二十何%。以前はたしか四割台、もう少し高かったように思います。数字の詳細については構いません。つまり、再犯率は減っているという現実を御存じと思います。  少年院は、少年時代犯罪を犯した少年を丁寧に、辛抱強く教育し指導するという役割を持っている。日本少年院というのは、いろいろ問題はあったとしても、全体を見れば成功してきたんじゃないか。いかがですか、私はそう思うんです。
  21. 保岡興治

    保岡国務大臣 保坂委員のおっしゃるとおり、私も就任後、少年院を視察いたしたりしまして、関係者がいろいろな工夫をして、努力をして少年教育改善に当たっている姿を改めて見ました。非常にすぐれた財産だ、私はそういうふうに思いました。  おっしゃるように、再犯率もこのところ非常に改善されてきていますし、少年院の活動というものはとても重要な意味を持っていると思っております。
  22. 保坂展人

    保坂委員 大臣、続いてなんですが、それならば、少年院再犯を防止する効果も上げていたというのであれば、少年院を充実させる、少年院教育を拡張する方向で少年犯罪対策を考えるべきではないか。  今回の与党案のように、国民の世論ということもあって、保護よりむしろ刑罰を前面に出す、そういう考え方が前面に出た審議が今されていますけれども少年院の役割をもし正当に評価されているのなら、そこのところをきちっと拡充させて広げる、そちらの方が正しいのではないかと思うんですが、いかがでしょう。
  23. 保岡興治

    保岡国務大臣 今度の少年法改正をめぐって厳罰化か教育改善かという議論がなされていますが、私は両方大事だ、こう思っていて、決してどちらかという議論ではないと思っております。  少年規範意識が非常に薄くなっているのも事実でありますし、私は、社会人として少年も、犯した行為の責任、結果というものについてはみずからしっかり認識して、そして反省して一定のけじめをつけるということは当然のことだと思います。そういう点で、ある程度厳罰化の選択の幅が広がっていることも評価できると思います。  ただ、先生がおっしゃるように、教育改善においても、少年院、すぐれた資源があるように、日本のいいところですから、これについても充実強化をすることは大切なことだと思っております。
  24. 保坂展人

    保坂委員 これは答弁を求めませんが、例えば、先日官房長官が辞任をされるという事態がございました。このことをなかなか家庭で子供に親が説明できない、これは具体的には申し上げませんけれども、そういうことはありますよ。規範意識というのは一体何なんでしょうかということを考えたときに、物事へのけじめだとか、あるいはやってはいけないことはやってはいけないんだとか、うそはつきませんとか、そういうことも指すんだと思いますけれども、やはり政治という場で、これは規範意識というところでいえばメディアを通してどんどん若者に影響を与えるわけですから、そこは私指摘するだけにとどめておきたいと思いますけれども、大変大きな影響をもたらしていると思います。  さて、大臣にもう一問だけ聞きます。  つまり、今刑罰と保護の相関関係をおっしゃいましたけれども、こういった刑罰を伴う、しかもかなり多くの刑罰を伴う法制を考えていくときに、やはり、国家百年の計といいますけれども少年犯罪対策五十年の計ぐらいのことは我々考えておくべきだということを再三申し上げている。  例えば、少年院でみずからに向き合い、そしてその罪の大きさにやがて気づいていく。最初はわかりません。しかし、教官等のいろいろな努力で本人が気づいていく。期間はある程度短いかもしれない、少年刑務所に六年、七年というよりは短いかもしれないけれども、そういった少年たちが矯正をされて再出発しているという現実もあります。しかし、それでは、刑罰をきちっと与えようという世論や、ある意味での被害者感情は満たされないかもしれない。  しかし、どうでしょう。刑罰ということを科していく、そこで世論は、一定程度それは、厳しいことをやるのはいいことだというふうに納得いただけるかもしれない。しかし、刑罰としての本質はやはり教育とは違うわけです。いわゆる保護の概念とは違うわけで、そうすると、再犯の問題ですね。結局は、刑期を終えて社会に出てきたときに、社会に対する恨みであるとか、あるいは社会生活を再出発していけないなどのハンディを抱える中で、結局犯罪がふえていくという心配はないのか。ここはやはり非常に重大な点だと思うのですね。この点、どうお考えでしょうか。
  25. 保岡興治

    保岡国務大臣 少年刑務所というものもありますが、そこでも確かに受刑者は所定の作業をすることになっております。しかし、これとあわせて教育改善のいろいろな工夫もやっております。こういったところには、少年院教育改善のいろいろなノウハウが生かされるような努力が現にされております。そういうことなど、少年が受刑者になったから、教育改善がうまくいかなくて再犯につながるということは、必ずしもそう言えたものでもない、そういうふうに私は思います。  そして私自身は、やはり少年といえども一定の重大な社会の規律違反をした場合の責任はどうとるかということの一方の要請にもきちっとこたえる制度でなければいけない、そういうふうに思います。
  26. 保坂展人

    保坂委員 残念なんですが、何か参議院があるそうで、では大臣、どうぞ。  それでは、かわって上田政務次官に伺いたいのですが、先日、参考人で葛野先生がこの席で、アメリカのケースについていろいろお話をされました。そして、再三私も紹介している議論なんですけれども日本少年法の生みの親となったアメリカの少年法の法制が、やがて刑事司法化していくというか、適正手続を取り入れるという考え方が六〇年代、特に七〇年代ぐらいに全米の各州の少年法あるいは少年事件の扱いを変えていった、そういう話がありますね。いわゆる厳罰化ということがそこで行われた。結果として、八〇年代半ばより九〇年代半ばまでは、暴力犯罪は一・八倍、殺人二・五倍など大変ふえている。そしてまた、受刑者も大変に過密な状態にある。そして九四年以降、犯罪全体の総数も減っているし、少年事件についても一定の減少を示している、これは事実なんです。九四年までいかないで、一九六〇年代から七〇年代にかけてのアメリカの議論、そして厳罰化とその後の流れについて、葛野先生のような指摘をどういうふうに受けとめられるか。
  27. 上田勇

    上田政務次官 先日、葛野先生から参考人としていろいろと御報告をいただいたことについての御質問でありますけれども、アメリカにおきましても、今保坂委員からのお話にありましたように、ちょうど七〇年代を境として、少年裁判手続における、これは厳罰化と言うのが正しいかどうかわかりませんが、適正手続保障を強化するとともに、処分の刑罰的な性格を強化する、いわゆる少年司法の刑事司法化が進んだわけでありまして、特に近年はさらに、ワシントンDCを含めまして四十一州において少年の刑事訴追を容易にする法律制定されたというふうに伺っております。  それでは、こうした法律改正犯罪発生件数との関係ということだというふうに思うのですが、犯罪発生件数というのは、法制度だけではなくて、社会の状況や教育、あるいは場合によっては経済の状況などにも、さまざまな要因によって増減するものだというふうに思いますので、いろいろな傾向性についてのお話はあるかと思いますが、それを科学的に原因を特定するというのはなかなか難しいことではないかというふうに思います。  今委員からの御質問の中にありましたように、九四年をピークに今度は少年犯罪減少傾向にあるということでありますけれども、こうしたことから考えれば、では法律の強化によってどのようなプラスの効果があったのかということもなかなか特定しがたいと同様に、必ずしも、この少年法厳罰化が増加につながったというようなことを結論づけるのも困難ではないかというふうに思います。
  28. 保坂展人

    保坂委員 この点については、実際にアメリカの現場を調査すれば、特に六〇年代から七〇年代、八〇年代とたどればわかる話だと思うので、これ以上深入りしませんけれども、九四年以降の減少というのが厳罰化の成果だという議論は、これもまた結論づけられないということだけはきちっと指摘をしておきたいと思います。  先ほどちょっと規範意識のところで大臣にお聞きをしたのですが、提案議員の皆さんにもお聞きをしたい、できれば自民党の方にお聞きをしたいのですけれども。  官房長官が辞任をされた。この中身については言いません。しかし、これは親が子供に対して説明ができない。先生が教室の子供に対してどれだけ説明できるか、こういう問題を含んでいるのですね。規範意識というのは、これはトータルな、社会全体がつくっていかなきゃいけないものだと思いますよ。しかし、子供たちに倫理や道徳や規範意識ということをおっしゃるからには、やはりそれより厳しい自己規律は必要じゃないか。こういう問題を議論している中で、そういうことをお考えにならないか。  例えば、今回の辞任などが青少年及び子供の規範意識に悪影響を及ぼす心配はないのかという点について、どなたかお答えになられたら……。
  29. 麻生太郎

    麻生議員 片っ方は殺人事件凶悪事件を取り上げている話なんであって、今の話と中川官房長官の辞任の話とが直接どこでどう結びつくのだか、ちょっと私の想像力を超えているところがあるのですが、すべて少年犯罪というのは、あれも決していい影響を与えたとは思いませんが、いろいろな少年犯罪を構成するその背景につきましては、これはもうこの間の議論の中から、いろいろなものが複雑に絡み合っておるというのは再三皆さん方、これはすべて合意をしておられるのであって、少年法改正されたからといって直ちに少年犯罪が激減するということも考えられぬし、また逆に激増することも考えられない。しかし、何らかの社会的な規範を、少年といえども刑事罰の対象になり得るということをきちんとさせることが大事なんだという提案を申し上げているのであって、中川先生の事件も、これに全然関係ないとは申し上げませんけれども、直接これが深くかかわっているというのもちょっと話が、そこまではよく考えておりません。
  30. 保坂展人

    保坂委員 それではわかりやすく言いますと、少年法というのは、別に殺人とか重大結果だけをピックアップしてやっていく法律ではないのですね。現場はむしろ、窃盗であるとか、あるいは今多いのは薬物ですよね。それから性非行と言われる、援助交際と言われるようなこともそうかもしれない。非常に身近なところで少年たちが逸脱をし、逸脱をしつつまた戻ってくるということがあるわけじゃないですか。そういう意味で私は指摘をしたわけです。おわかりいただけるでしょうか。ここは余りやりませんので、内容に入りたいと思います。  少年院の話を先ほど大臣とさせていただきました。これは矯正局に伺いたいんですが、少年院の定員がございますね。その定員を幾らか残していた方が、例えば二百人定員だったら百七十人とか百八十人ですか、あるいはもうちょっと少ない方が、やはり全体のローテーション、この子はこの部屋に置こうとか、こういう矯正のプログラムで回していこうとかというところで、ある程度のあきは必要なんだというお話を聞きましたけれども、現在、過剰収容になっているなど、そういう処遇が必ずしも物理的にできないという現実はございますか。やはりそうやって定員ぴったり入ってくると大変に難しくなるというようなこともございますか。
  31. 鶴田六郎

    鶴田政府参考人 お答えいたします。  少年院の収容率でありますけれども、本月の十五日現在、八五%ということになっております。また、その中には定員を超える少年を収容している施設もございますけれども、これらの施設におきましても適正な矯正教育が行われる体制を確保する、それは、模様がえとかあるいは収容調整、そういったような方法で、いろいろ工夫しながら対応しているところでございます。
  32. 保坂展人

    保坂委員 では、警察に伺いますが、簡易送致が近年非常にふえているというふうに聞くんですね。実は犯罪の芽となるようなそういう事件も、これは手間がかかるので放置して簡易送致にしてしまうということで、結果としてその後の重大な事態になっていくというような心配がないのかどうか、こういうことについて簡潔に、なぜこういうふうにふえているのか、お願いします。
  33. 黒澤正和

    黒澤政府参考人 お答えいたします。  少年事件の簡易送致件数でございますが、近年、全体的に増加傾向にございます。その理由につきましては、簡易送致の対象となるべき軽微な少年犯罪の増加によるものと思われます。  なお、なぜ増加しておるかということにつきましては、先ほど来出ておりますように、少年規範意識の希薄化、家庭のしつけ、学校のあり方、地域社会の少年問題への無関心、少年を取り巻く環境の悪化等の要因が複雑に絡み合っておるものと考えておるところでございます。
  34. 保坂展人

    保坂委員 先ほど、少年院の定員がもう満杯になっているという現実もある、一方においては簡易送致が非常にふえている。いわば少年事件の処理の仕方が二極化というんですか、一つ一つの個別のケースを丁寧に当たるのではなくて、ある程度のことまでは目をつぶり、そしてある一線を越えれば厳しくやるというような実態になってはいないかということをちょっと心配するんです。  先ほどからずっと少年院のことをやっております。提案者の皆さんにお聞きをしたいんですが、委員長がまとめられた少年院報告書、読ませていただくと、実によくまとまって書いてありますね。  例えば少年院の役割については、前回も聞きましたけれども、この中に出院準備期教育という時期がありますね。「教育の最後の段階である出院準備教育に移行する。教育活動の場を、より開放的な空間に移し、院内においては農作業、園芸作業、環境美化作業等の活動を、院外においては社会奉仕、野外訓練、社会見学等を実施している。」こうありますね。先般から問題にしている少年院収容受刑者の場合にも大体こういうことになるんでしょうか。提案議員の方、どうでしょうか。そこのところを非常に悩んだというお話だったので、もうちょっと掘り下げて。
  35. 漆原良夫

    漆原議員 十六歳未満少年の場合は、そのまま少年刑務所というわけにはいかない、まだ義務教育も終わっていない人がいるわけですから、その方については、やはり義務教育を受けさせるという観点から少年院の方が妥当だろう、こういう判断でございます。  具体的にどんなふうな処遇をするかということは、今おっしゃったような方法も踏まえて今後検討していくんだろうなというふうに考えております。
  36. 保坂展人

    保坂委員 多分少年院の中では、長年の積み上げの中で、そしてまた近年の難しいケース、つまり、大人とあるいは友達ともほとんど言葉が交わせない、自分の心の殻の中にこもって、犯罪行為それ自体に対する痛みやあるいは反省の念がなかなか見られない、ある局所的なことについては特別の知識を有して、そういう意味でバランスがとれていない。これを見ても、感情のコントロールができなくて興奮しやすい少年であるとか、自己中心的で共感性が乏しい、いろいろそういう少年たちを受けとめて大変苦労しているんだということが書かれていますね。  例えば、そういう中で、少年たちに対して辛抱強く、感動体験や成功体験をしてもらうんだ、土や植物、動物に親しませながら、心をまず開いていくという実践をされる、そして、このような体験の積み重ねを通して他者の痛みのわかる心の豊かさをはぐくんでいくことは、一見迂遠なようでも、非行そのものの反省につながっていく、こういう考え方、それは少年院受刑者についても同じでしょうか。
  37. 漆原良夫

    漆原議員 まことに大事な視点であると思いますが、少年院受刑者についてもそのような方向でやられるものと考えております。
  38. 保坂展人

    保坂委員 これは大変大事なポイントなので、少年院の矯正教育の構造は閉鎖から開放へ、そして規律の教育ということ、一言で言うと他律から自律へ、そういう流れをたどるわけですね。最初に入ったときにはかなり厳しく規則づけて、また生活習慣などのことを、きちっとそこのルールを、ある面そこで矯正をしながら、だんだん自発的に、こうやってみようとかそういうふうにしてみようとか、こんなことできたよとか、そういうふうに自分で決める、他律から自律なんですね。  そうすると、今度の少年院収容受刑者の場合は、他律から自律へ、そしてまた他律へ、こういうふうに変わりますか。本質的な問題だと思うのですね。
  39. 漆原良夫

    漆原議員 やはり少年刑務所における受刑者にしても、自律心がなければ刑執行の効力がないわけでございまして、そういう意味では、少年院においてきちっと自分の行為が反省できて、自分で判断できる、そういうところまで持っていければ、少年刑務所に行ったとしても効果はあらわれる、また、そういうふうにしていかなければ、少年刑務所で刑を受ける本来的な前提が成り立たない、こんなふうに思っております。したがって、少年院においてきちっと他律から自律という道を踏んだ上で少年刑務所に行くことが最も妥当だろうというふうに考えております。
  40. 保坂展人

    保坂委員 この報告を見ると、少年院は通信の自由はあるわけですね、手紙のやりとりができる。被害者に対してとか親に対してとか、手紙を書くでしょう。そして、なかなか文章も書けないという子が、手紙を何回も書いていくうちに文章になれ、そしてだんだん自分の罪を見詰めていく、そういう行為を積み重ねていくし、また、教官の方もそれを激励するだろう。  ところが、少年刑務所の場合は、当初は面会も手紙の発信も月に一回、これは一般受刑者同様に。その手紙についても検閲もあり、発信を許さない等のこともある。そして、親が危篤なときに会いに行くことができるんですかという参加された委員質問に対しては、そんなことはできないんだという答えが返ってきているようです。  杉浦議員にちょっと伺いたいんですけれども、この少年院収容受刑者の点について、民主党との修正の協議で、どのくらいされたのかわからないんですけれども、話題になり、このあたりの扱いをもう少しすっきりした方がいいんじゃないかという議論が交わされたやに聞いているんですが、そのあたり、どういう議論をされているのでしょう。
  41. 杉浦正健

    杉浦議員 今の点については、民主党修正案の中に、十四歳、十五歳は刑務所で処遇すべしという趣旨修正案が出ておりますので、それについては今後協議されていくと思いますけれども、まだ具体的な議論はいたしておりません。
  42. 保坂展人

    保坂委員 私は、少年刑務所が今の状態では、民主党修正案少年刑務所ということで統一したというロジックはわかるんですけれども、実態としては難しいんじゃなかろうかというふうにはっきり思うんですね。  それと同様に、やはりこの議論をしていくと、少年院とは何か、つまり少年院にいるたくさんの子供たちの中で少年院収容受刑者だけは、そこを一たん行方不明になると扱いが違うわけですよね。いわば刑法で言う逃走ということになり、そして、一般の子は裁判官の連れ戻し状で四十八時間経過後は連れ戻されるという扱いから、収容受刑者は収監状、こういうことになるわけで、やはりこれは少年院に監獄的な機能を持たせることには間違いないんですね、苦慮された結果だとはいえ。そこは少年院の骨格を傷つける心配はないのか、これはやはりきちっと議論しておかなきゃいけないことだと思うんです。
  43. 杉浦正健

    杉浦議員 私ども与党は、先生のおっしゃった前段の意味においては同じ意見でございます。つまり、監獄、刑務所に収容するよりも、十四歳、十五歳は少年院で矯正教育をした方がいいという考えでございます。ただ、十四歳、十五歳の受刑者が少年院にいることによって性格が変わるのかという点については、そうは思っておりません。今度の私どもの案でも、十四歳、十五歳は少年院に収容して矯正教育をするというふうにしております。私ども少年院を見てまいりましたが、大変長い経験、知識を持っておられまして、きちっと矯正教育をやっておられる。  また、監獄法の適用は、少年院についてはその中身についてはないわけでして、私どもの案でも、例えば脱走した場合のあれには適用になりますが、中で収容している、少年院の中にいる状態については監獄法の適用はございませんので、通常の少年院で矯正教育を受けている子たちと同じようにきちっと矯正教育を受けるということで適正な処遇がなされるというふうに思っております。
  44. 保坂展人

    保坂委員 では、続けて杉浦議員に伺いますけれども、この十四歳、十五歳というのは、該当する場合にはすべからく少年院で収容受刑者になるんでしょうか。すべてなんでしょうか。
  45. 杉浦正健

    杉浦議員 私ども法律でも「できる」としておるわけでございまして、刑務所でもできるというふうに思います。ただ、川越の少年刑務所を見てまいりましたが、この法律が変わった場合、刑務所あるいは少年院で、余り多くはないと思うんですけれども、その子たちの受け入れの体制の検討が始まると思うんですけれども、現在の少年刑務所で十四歳、十五歳の子たちを収容する体制が十分にできているとは思いません。  例えば、教育ができるのは松本の一カ所だけだということですが、あそこへ収容しますと、北海道から行った子は、親が通うのに大変ですね。そういった事態もございますので、今の時点での収容が適正かどうかという点については刑務所は問題がある、そう思っております。だから、将来、刑務所がきちっとした体制ができれば別ですけれども、当面は刑務所へ収容するのは相当ではないんじゃないかというふうに私どもは思っております。
  46. 保坂展人

    保坂委員 十四歳、十五歳の少年院収容受刑者は、重大犯罪を犯したのでしょうから、ひときわまたその処遇も難しい、あるいはその矯正を始めていく入り口を見つけるのが難しいという話を医療少年院で私大分聞かせていただきました。大変にこれは難しいんだと。もちろんこれは、まずは話ができるような状態に持っていく、このことだけでも大変だし、そしてまた、例えば繰り返す自殺衝動もあるだろうし、あるいは精神的にさらにバランスが悪くなっていくということもある。そういうところで治療ともう一つは教育を課しながら、まずは罪に向かい合う主体というか、そういうものを丁寧に、これは時間をかけてなんでしょうけれども、つくり出していく中で、やはり罪と向かい合ってもらう、こういうことをやられているわけですね。  私は、杉浦議員に聞きたいんですけれども、確かに世論があります。世論はあるんです、甘えじゃないかという世論が。だけれども、この日本社会の将来において、そういった重大犯罪を犯した子が、それこそ終身刑あるいは死刑ということにならない限りは、必ずやはりどこかの時点で社会に戻ってくるわけですね。そのときに、徹底した治療的な、あるいは自分の罪を見詰めつつもう一回再出発しようという教育を受けた方が社会にとって安全なんじゃないかという議論を私どもはしているわけですが、この辺は、本当に本音のところ、どうお考えですか。
  47. 杉浦正健

    杉浦議員 私ども少年院少年刑務所を視察させていただいた限りでは、今の日本の刑務所、少年院の矯正のシステムは、先生のおっしゃった罪と対面させて矯正教育を施して更生を図っていくという意味では、非常にいい成果を上げておられるんじゃないかという印象を受けております。  先生の御指摘するもっと大きな社会全体の問題というのは、これはあると思います。一番大事なのは予防ということ、子供たちを非行に走らせないためにどうするかということだと思うんですけれども、社会全体がそういう意味では緩んでいると申しますか、私も親だったことがあるんですが、私が親や祖父母から受けた教育に比べると、子供たちにどういうことをしたかなという反省はございます。  子供のころが、幼児のうちが一番大事じゃないかと僕は思うんです。私はおばあさんから、文字も書けない明治初め生まれのおばあさんだったですが、朝晩仏壇に一緒に参らされて、うそを言っちゃいかぬぞ、悪いことしちゃいかぬぞ、極楽と地獄があって、私は真宗大谷派ですが、悪いことしちゃ地獄へ行くぞ、うそをついたら閻魔様に舌を抜かれるよ、針の山があるよ、火の池へぶち込まれるよと朝な夕なおばあさんから言われまして、教育を受けてまいったわけですね。大人になって、うそも方便というような知恵もつきましたけれども、あのころ受けたこと、まだおばあさんのことは覚えておりまして、私の規範意識の根底にあると言ってもいいと思うのですが、小学校の教育よりも、もっとそういう幼児のときの教育の方が大事なんじゃないだろうかというふうに思っております。
  48. 保坂展人

    保坂委員 時間がないので。そういう、うそをつくなよと閻魔様のお話をされるおばあちゃんに国会にも何人か来ていただいて、やはり政府もお互い議員も責任を持って発言するように見てもらいたいなと思います。  参考人質疑で非常に重い証言がありました。これは警察、検察に端的に短く伺いたいのですが、岡崎さんの事件なんですね。これは、被害者の苦痛そして絶望、何とも言えない息子を失った苦しみに加えて、捜査がまるで被害者の側に立ってくれないじゃないか。そして、被害者保護の問題がこの法務委員会でも重々語られていたそのときに茨城県警が謝罪をして、そして、謝罪をしたことについて、少なくとも地検がそういうことを踏まえた対応をされているに違いないと我々は思うわけですけれども、どうもそうじゃなかったという証言をされているのですね。このことについて、公式見解はもういいです。今、岡崎さんの、捜査はまことに被害者の側に立ってくれなかった、今もなおそう感じている、そういうことに対して、何かお答えになる言葉はありますか。あれば言ってください。
  49. 黒澤正和

    黒澤政府参考人 私ごとでございますが、私も第一線で、刑事部長、捜査課長の経験がございます。先般の参考人質疑における御発言につきましては、子供さんを失われた被害者の気持ちを厳粛に受けとめているところでございます。  警察といたしましては、被害者対策重要性を強く感じているところでございまして、被害者対策被害者やその御遺族の方々の心情に十分配意してなされるよう、各都道府県警察に対する指導を一層徹底してまいりたい。また、捜査におきましては、基本捜査を徹底いたしまして、広範な証拠を収集することに努めるなど、科学的、合理的な捜査を行うことが重要であると考えておりますが、そのような捜査を一層徹底してまいりたい、このように考えておるところでございます。
  50. 古田佑紀

    古田政府参考人 ただいま御指摘の件につきましては、前にもこの委員会でも申し上げたこともございますけれども、いろいろな御遺族のお気持ちというのを聞くにつれ、そういうことに十分配慮した捜査の必要性を本当に痛感する事件だと思っております。  多少、どうも、いろいろ事情を伺っていますと、中にはやや行き違いの部分から始まってしまったと思われるところもあるわけでございますけれども、いずれにいたしましても、先ほど申し上げましたような点から、今後ともやはり遺族の方の心情に配慮した捜査の徹底を図っていきたいと思っております。
  51. 保坂展人

    保坂委員 今の二つの答弁をちょうどされているような国会のときに起きた事件だということを重々やはり考えていただきたいと思うのですね。当時、こういう議論がもう始まっていました。今始まった議論ではありません。きょうは時間がないのでこれ以上できませんけれども、大変に重い証言をされたと思うので、やはりそのことをもう一回洗い直して、何が問題だったのか、行き違いと言うのならどこが違っていたのかを調べていただきたいと思います。  では、民主党提案者に一点だけ御質問します。  事実認定裁判所という立法上の工夫をなされたことは評価したいと思うのですけれども、具体的にこれを本当につくるとなると、やや幾つかの懸念があるかと思います。  結局、事実認定裁判所に原則送致するということになれば、少年審判少年司法のプロセスの中で隅に追いやって、また刑事裁判化してしまうのではないかという危惧がございます。そして、原則事実認定裁判所送りとなれば、これは五十日という制限はございますけれども、原則逆送と同じく家裁の調査がおざなりになるという危険もあり、また、期間の問題、事実認定裁判所において検察官抗告がされた場合、再延長が特に制限されていないというと、これは、一応考えられるケースとしてはエンドレスに延びてしまうということで多大な苦痛を与えないか、この点について本当に簡単にお願いしたいと思います。
  52. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 修正案提案者としてお答えをいたします。  ただいまの御質問ですけれども、私ども修正案では、家庭裁判所が必要があると認めるときは、事実認定裁判所が行う事実認定手続によって非行事実の認定を行うことを可能とする、そして事実認定の適正化を図りたい、こう考えているわけです。  この非行事実の認定を正確に行うということは、少年に対する適切な処置、処分の前提となるものですから、これは大事にしなければいけないと思うのですが、検察官が非行事実の立証を行うなど、刑事訴訟手続に準じた手続で正確に非行事実の認定を行おうとする認定手続というのは、決して少年法の一条に反するものではないのではないだろうか。  また、保護審判事件と切り離して、保護事件の審判に関与した裁判官以外の裁判官によって構成される裁判所で非行事実の認定を進めるということは、今の制度だと裁判官が時に検察官の役割も同時に果たさなきゃならないわけですね。そういうことから考えますと、そういう限度で検察官を関与させるということは、むしろ事実の、真実の発見ということに役立つのではないか、そういう考えを持っております。  なお、先ほども申し上げましたけれども、事実認定手続はあくまでも少年に対する処分の適切性を決定するための前提となるものですから、刑罰の適用の可否を決定する刑事裁判手続とはその性質は全く違う、そこに一線を画しているということを強調しておきたいと思うのですけれども、御懸念のないように、運用の面でも十分な配慮をできるのではないか、私はこんなふうに考えております。
  53. 保坂展人

    保坂委員 実は、ここまでで間もなく時間だという紙が来ているのですが、質問はあと一時間分は優にあるのです。  こういったことは、多数決で決めること、これは国会ですから最後は採決するわけですけれども、やはり議論を尽くして、かつての国会は、野党の側から指摘が出たら与党の方は、その指摘がこれは当たっているなというふうに受けとめれば、これを修正したりあるいは答弁できちっとそこを枠づけしたりという余裕があったものです。国会対策というところで、本日の審議の打ち切りということは非常に我々としては不本意、納得しがたいのですが、残された時間、法務大臣にお聞きするとすれば、当初から聞いていた少年院の問題なんですね。  こういう少年院収容受刑者ということで入れ込むのを、提案者の中でも苦慮された、悩まれたと言っているわけですからね。そして、現場の矯正局の方は、何とかやります、これは言いますよね。しかし、実際のところ、少年院で積み上げてきたさまざまな伝統や、あるいはよい意味での成果をやはり壊さないように、最大限運用の部分で努力を尽くすべきじゃないかと思うのですね。  これが機械的に行われると、少年院の柱になっている、まずは他律から入るんだ、そしてやがて自律、みずからを律するような子供にして、いろいろな意味の社会訓練もし、学習もさせ、そして最後に送り出していくんだという少年院の空間が変わってくるおそれが十分あるのですね、これはきちっとやらないと。そこをやはり法務大臣、どういう決意で臨むのか、はっきり明言していただきたいのです。
  54. 保岡興治

    保岡国務大臣 この審議を通じて、非行や犯罪を犯した少年に対する社会の一員としてのけじめ、責任というものも十分自覚させる必要があるが、同時に、可塑性に富むというか成長過程にある少年に対して、少年受刑者にしろ少年院の収容者にしろ、その他保護観察に付されるなどする場合を含めて、全体として、やはり教育改善ということにも、本当に過去の蓄積を生かし、さらに工夫を重ねて、この少年非行犯罪の重大化、凶悪化そして国民危機感というものにこたえていけるように、適切な努力をしていきたいと考えております。
  55. 保坂展人

    保坂委員 もう一言でいいんですけれども。私、総括的に全部を聞いていないんです。少年院で蓄積をされていった、今手紙を使ったりしていろいろやっていますよ、あるいはカウンセリングもやっている、そして自分の心と向き合う、罪の重大さを発見していくというその努力があるじゃないですか。その努力の体系をやはりきちっと守る、これを法務大臣として最善を尽くしていただきたい。そこについて決意を伺いたいということです。
  56. 保岡興治

    保岡国務大臣 わかりました。委員の御指摘の点を踏まえて、努力してまいりたいと思います。
  57. 保坂展人

    保坂委員 最後に、私はきょう少年院の問題を中心に話しましたけれども、今回、与党の皆さんも、我々野党もこれから心して見ていかなきゃいけないと思いますけれども、結局は、これは法律ができて、そして現場に全部戻っていくんですね。やはり現場の声を我々十分聞いたのかというと、それはまだまだ聞いていないというふうに思います。  この法律の採決の仕方に我々は反対ですけれども、しかし、一番大切なのは現場である、そのことだけは、行政の方々、大臣初めお忘れないようにしていただきたいというふうに思います。  終わります。
  58. 長勢甚遠

    長勢委員長 山花郁夫君。
  59. 山花郁夫

    ○山花委員 民主党の山花郁夫でございます。  まず、法案の審議というものに先立ちまして、保岡法務大臣にお伺いしたいことがございます。  大臣は、十月十日の法務委員会で、憲法改正や教育基本法の見直しということについて、この少年法改正という論議に絡んで言及をされているわけであります。既に何度か御説明がございました。また、十月二十五日の当委員会でも野田委員がこの点に質問をしておりまして、御答弁がございましたけれども、いま一つちょっと私にはよくわからない点があるのであります。私たち民主党は、憲法について論じるということについて全く否定するつもりは毛頭ないのでありますが、しかし、やや唐突な印象を否めないわけであります。  と申しますのも、今回のこの少年法に絡んでという話でありましたから、今回の少年法関係でいうと、憲法のいかなる条項を見直そうというお話なのでしょうか。刑事手続上の人権ということですから憲法三十一条以下のお話なのか、あるいは、対審構造をとるか否かという問題になりますと憲法の三十二条とか八十二条の問題を論じようというお話なのか、そのあたりを少し明らかにしていただきたいと思うのです。
  60. 保岡興治

    保岡国務大臣 山花委員が御指摘の過日の私の発言については、るる御説明申し上げましたとおり、個々の条文にわたり具体的な憲法改正意見を述べたものではありません。少年非行犯罪についてどう考えるかという私の日ごろの思いの中に、社会全体のありようというものが、大人の社会のありようというものがやはり反映している面があるだろう。そういう点から考えると、やはり、二十一世紀の日本の社会の大きな問題として、社会全体として規範意識とか、権利や自由だけじゃなくてそこに内在する義務や責任というものを深く論じ、私としては、そういったものが憲法の見直しの論議にもわたって将来議論されていくべきものだという認識を示したものでございます。
  61. 山花郁夫

    ○山花委員 ちょっと、やはりよくわからないと思うところがあるのです。現にこの委員会の中でも、そういう法務大臣の御意向にかかわらず、提案者の側からもあるいは与党の側の委員の方からも、別に憲法に関する問題ということについては何ら疑義が示されるところもなかったわけであります。  私の印象ですが、やや失礼な言い方かもしれませんが、ちょっと唐突であるとともに、法務大臣としては軽率な発言だったのではないかという気がするのですが、いかがでしょうか。
  62. 保岡興治

    保岡国務大臣 私は、二十一世紀の国の姿や形を今求めるべき大切な時期だと思っております。  そういう点からいえば、政治家として、やはり社会全体の気質、体質というものは、憲法の理念とか憲法にどういうことが書かれているかということが非常に重要な影響を及ぼす。ここでは深く議論はしませんが、戦後の憲法の中にも、新しい時代を目指してそういう点で議論をし、見直す点があるのではないか。特に、権利や自由、そういったものは非常に大切であって、そういうものは憲法の基本理念として今後も最大限尊重していくべきものだと思いますが、一方で、社会生活をしていく上での義務や責任ということも、これも深く論じてバランスのとれた社会にしていく必要がある。そういった点から、私は、憲法の議論をしていくべきだ。それは政治家として申し上げたので、決して軽率だと思っておりませんし、私の信念でございます。
  63. 山花郁夫

    ○山花委員 この点についてはまた別の機会に議論をすることができればと思います。  それでは、提案者の方にお伺いをしたいことがございます。これは先ほど保坂委員からも類似の質問がございましたが、少し違った観点から質問をさせていただきたいと思うのであります。戦後の少年非行の動向についての問題であります。  戦後の少年非行の動向については、一般的には三つの波があったと言われております。一九五一年をピークとする第一波、そして一九六四年をピークとする第二波、一九八三年をピークとする第三波があった、分析の仕方によって年度は少し変わるようでありますが、そしてまた、現在がその第四波というものに当たるかどうかということについては多少議論があることかと思いますが。  そこで、このように波があったわけでありますけれども、この間少年法改正論議というものは何度かあったものと承知しておりますが、実際には改正はなされておりません。なされていないということは、あくまでも現象だけをとらえてみればということでありますけれども少年法改正しなくても少年非行が減ったという時期があったのは、これは間違いない事実なわけであります。もちろん、だからといって、今の少年非行もほうっておけば何とかなるだろう、ほうっておけば減るだろうという認識ではもちろんないわけであります。しかし、このたびこのような少年法改正ということが検討されているわけでありますから、過去に少年法が特に改正されるということもなく、しかも少年非行というのが減っていた時期があるというこの現象について、一定の総括というものが必要なのではないかと思うのであります。  この点、なぜふえたり減ったり、ふえた時期もあるではないかという御意見もあろうかと思いますが、やはりふえても何らかの原因によって減っていった時期が三回あるわけですから、この点についてどのような御認識をお持ちでしょうか。
  64. 谷垣禎一

    ○谷垣議員 今山花委員指摘のように、昭和二十六年それから三十九年、五十八年ですか、三回ピークがあったわけですね。社会現象と少年非行犯罪との関係というのはやはりいろいろな相関関係がありますので、なかなかその分析も難しいのです。  ちょっと個人的なことを申し上げて恐縮ですが、今の三つの時期は、私の人生にとりましてもそれぞれ個人的に意味のあるときでございまして、昭和二十六年に小学校へ入りまして、昭和三十九年に大学に入りまして、昭和五十八年に国会に出た、そういう時期と少年非行のピークが一致しているのですね。  そのときのことを思い出しながら考えますと、昭和二十六年は、やはり戦後の混乱の中で非常に生活も苦しかった、貧困家庭も多かった、そういう中で、食うがゆえの犯罪、非行というものも随分あったと思います。それが、だんだん経済復興を遂げるにつれて第一のピークは終息していった、単純にいえばそういうことだろうと思うのですね。  第二の時期は、三十九年というのはちょうど東京オリンピックもあった年でございますけれども、高度経済成長で社会も大きく変動していく、それと同時に、豊かにもなっていくけれども社会のひずみもあらわれてくる、そういう中で、いろいろ社会に対して、私どももちょうどその当時の大学紛争と申しますか闘争時代の学生でございますけれども、社会に対して非常に反抗的な気持ちを持ったこともある、そういう時期であったと思います。したがいまして、その時期も、そういう社会の変化に伴ういろいろな混乱が終息していくにつれて、この時期はおさまっていったのかな、こう思うわけでございます。  それから、三番目の昭和五十八年、これがピークになっているのは何なのかな。実はここのところが一番答えが難しくて、表面的に申し上げれば、少年非行数字が非常に上がっているのは、窃盗犯が非常にふえた。その後、窃盗犯の件数がある程度少なくなっていったということとともに、この時期の数字は、ピークは落ちていったわけであります。それと同時に、物の本を、学者などのお書きになったものをいろいろ読んでみますと、今までの戦後の、言うなればそういう経済的な困窮やらあるいは激動期の社会に対する反抗やら、そういうものとちょっと違いまして、豊かになっていったということだろうと思いますが、ある意味では非社会的な、そして享楽的なというような非行がふえてきて、その五十八年ピークの数字はおさまっているんですが、そこらあたりの問題を今完全に我々の社会が克服し得たものなのかどうなのかということになりますと、一概に克服し得たとはまだ言えていないのではないか。数字の上で一時おさまってきていることはございますけれども、また数字がじりっとふえてきているということを考えますと、このあたりの分析はまさにこれから議論をしていかなきゃなりませんし、私どももクリアカットな答えがまだ十分出せていない、こういうことではないかと思っております。
  65. 山花郁夫

    ○山花委員 この点につきまして、私どもも明快にこうではないかというものを持ち合わせているわけではないのでありますが、現在の少年非行の動向については、現在進行形であることもあり、やはり明確な原因というものははっきりしないのだと思うのであります。そうした中で、今回の少年法改正ということが一つの処方せんとして出てきたのかなという認識を持っているわけであります。  ところで、最近また少し増加しているというお話もございましたが、こうした少年犯罪についての分析の中で、少年犯罪はここのところ凶悪化しているではないかというような分析もございます。一方で、いや、それは凶悪化という指摘は当たらないのだという意見もあるわけであります。後者の、つまり凶悪化していないという主張の根拠として、凶悪事件に分類されるような罪名で処理するかどうか、具体的に言いますと、窃盗罪と傷害罪という形で処理するかどうかということと、人の財物を自分の占有下におさめてけがをさせているわけですから、これを強盗致傷という形で処理するかどうかということについて、検挙方針によって数字がかなり変わってくる、こういう指摘があるわけであります。  これは、先日の参考人として来ていただいた葛野先生の論文などにも出てくる例なのでありますが、例えば大阪府警などでは、一九九六年と申しますから今から四年ほど前であります、そのころからひったくりについて厳しい姿勢で臨むという方針を出しまして、たとえ少年でも逮捕して、余罪を調べて処分を重くする方針というのを打ち出しているようであります。その結果、強盗少年検挙人員というものが、一九八七年の指数を一〇〇とした場合に、一九九七年の東京における指数が一七四であるのに対して、大阪における指数というのは七五四というふうになっている。  こういった事情からいたしますと、ここのところ少年事件というものが、マスコミをにぎわす事件というものが大変多くなっているのは、私もテレビや新聞紙などを拝見していましてそう思うわけでありますが、一般論として少年犯罪凶悪化している、その数値がふえているという話になりますと、やや疑問の余地が出てくるのではないかという気がするのであります。  この点、もう既に似たような質問があったかもしれませんけれども、もう一度、提案者の方、現在、少年犯罪凶悪化しているかどうかということについてのいかなる御認識をお持ちなのか、ちょっと伺いたいと思います。
  66. 麻生太郎

    麻生議員 数字のとり方、検挙方針の仕方でいろいろ数値が変わるという山花委員の御指摘は確かだと思います。  人数だけ言いますと、先ほど御指摘にありました、昭和二十六年、三十九年、五十八年、昭和でいきますとそういう時期にいわゆるピークを迎えたというお話がありましたけれども、今の場合、御存じのように、少子化に伴いまして少年の実数が減っております。したがって、人口比でいった方が正確に出てくるんだと思います。その意味からいきますと、平成十年、十一年で、殺人等々のいわゆる比率というものは、検挙人員に対して、人口比でいきますと〇・〇〇五ということであって、過去平均〇・〇〇二とか〇〇一に比べて、この数年、間違いなく上がってきていることは事実です。また、強盗という御指摘もありましたけれども、強盗につきましても、過去三年間、平成九年、十年、十一年でいきますと、その前のときが〇・〇七、〇・〇六、大体そんな数字なんですが、この三年間で見ますと〇・一一七、〇・一〇七、〇・一一六と、比率、人口比でいきますとその数値が上がってきておりますので、今申し上げたように、数字であえて言わせていただければそのような、人口比で見た犯罪は間違いなく凶悪犯につきまして増加しております。
  67. 山花郁夫

    ○山花委員 この点については、数字の読み方にもよることですので、凶悪化しているかどうかということだけをちょっと取り上げて問題にしたいわけではないわけであります。  今、私が凶悪化していないという側の意見紹介させていただきましたが、今のように、いや、数字の上ではふえているんだという説明もあるわけであります。ただ、この読み方に対して、例えば今申しましたように、検挙方針というものがかなり数字を動かすというところがあるわけであります。  これはどなたにお伺いすればいいのかよくわからないのですが、少年犯罪に対して、例えば先ほどの大阪府警などの場合であると、これは個別の例ですが、厳しい措置で臨むのであるとか、そういう形で、検挙方針というのは一体どういう経緯で、どこのところで変わってくるものなのでしょうか。
  68. 古田佑紀

    古田政府参考人 委員指摘の検挙方針と申しますと、これは一線で実際に犯罪の取り締まりを行っております警察御当局がいろいろお考えになってされておられることでございますので、個別具体的に申し上げることはできませんけれども一般的に申し上げまして、例えばある地域である特定の犯罪が非常に問題になっている、そういう場合に、そういう犯罪について重点的に取り締まりを行うとか、そういうことはあるわけでございます。  委員の御指摘の中で、罪名について何かあるのかというようなことかと思うのですけれども、罪名については、これはあくまで法律と証拠に照らしまして、それによって認定できる範囲で行っているということでございます。
  69. 山花郁夫

    ○山花委員 統計の読み方に影響を及ぼすということだけではなくて、今回の改正案に照らしますと、この点、ちょっと重大な影響を及ぼすのではないかと考えられるわけであります。  つまり、与党案の第二十条のいわゆる原則逆送と言われている条項についてでありますが、一線で働いている方をこの場で指弾するつもりはないですが、実態としては余り変わらない、つまり、窃盗プラス傷害なのか強盗致傷なのかというのはかなり微妙な判定のところであるものが、検挙方針によって重い方で処理するということも行われる。そういった中で、例えば原則逆送に当たるかどうかの判断について、そういった検挙方針によって原則逆送に当たる罪と当たらない罪というのが出てくるようなおそれというのはないのでしょうか。
  70. 古田佑紀

    古田政府参考人 法案の内容と申しますよりは検察の現場での処理ということで申し上げますと、検挙方針というのは、これは実際に警察が犯罪を摘発するときの例えば重点を置くべき犯罪とか、そういうことを言っているわけでございます。  委員指摘の点は検察庁における処理の問題だろうと思いますが、これにつきましても、先ほど申し上げましたとおり、実際の証拠関係に基づいて、あと法律を踏まえて、適正な判断をしているということでございまして、それについて大幅な変化とか変動とかそういうことというのは、検察庁の仕事の性格上これはないということで御理解いただきたいと存じます。
  71. 山花郁夫

    ○山花委員 それでは、ただいま申し上げました第二十条の点について、ちょっと条文の中身等についても質問させていただきたいと思います。  いわゆる原則逆送というふうに言われてはおりますが、この改正案に照らしてみますと、まず第一項の方では家裁の調査というものが前提となっているというふうに読めるわけであります。そして、第二項は「前項の規定にかかわらず、」という形で、故意の犯罪行為によって被害者を死亡させたような罪の場合には逆送の決定をすべきということが二項の原則というか、そういうことになっているわけであります。ただし書きでまた「調査の結果、」ということになっているわけでありますけれども、この点、二点ほど確認をしたいことがあるのであります。  以前も御答弁があったようにも思われるのですが、この二項は「前項の規定にかかわらず、」とあるのですけれども、これは一体どこの部分に係るのかということを少し正確にお願いをしたいと思います。と申しますのも、たしか麻生議員からの答弁だったと思いますが、死亡させた結果が生じた場合であったとしても調査が前置されるのだということを、逆送に当たるようなケースであったとしても、その少年についての犯行の動機とか態様、犯行後の状況などについての調査をやった上で逆送するかどうかを決めるのだというような御答弁があったと思うのですけれども、そうだとすると、この「前項の規定にかかわらず、」というのは「調査の結果、」というところには係らないと考えてよろしいのでしょうか。
  72. 漆原良夫

    漆原議員 この点、私が先回ちょっとお答えさせていただいたと思いますが、少年法八条は、検察官等から少年事件の送致を受けたときには事件について調査をしなければならないことになっております。これは原則逆送の対象となった事件でも同じことであります。この点は、二十条二項ただし書きに、「ただし、調査の結果、」「刑事処分以外の措置を相当と認めるときは、この限りでない。」というふうになっていることからも明らかだろうと思います。第八条の調査を経た上で逆送するか保護処分とするかを決定する、こういうつくりになっておると理解しております。
  73. 山花郁夫

    ○山花委員 この点は見解の相違になってしまうのかもしれませんが、二十条の条文の体裁としてはちょっと読み取りづらいような印象を持つわけであります。手前みそで申しわけないのですが、民主党案の方がはっきりとしているように思われるのでありますが、この点についての御所見はいかがでしょうか。
  74. 麻生太郎

    麻生議員 与党案民主党案との差は、人の命をどの程度大切に考えるかという違いによるものかなと民主党修正案を読みながら感じたところなんですけれども、明らかに殺してやろうという目的で、故意の犯罪によって人を死亡させるという行為は、これは何といったって、自己の犯罪目的を達成するために人様の命を奪うという話ですから、これは極めて反社会性また反倫理性の高い許しがたい話なんです。こういう、少年であっても刑事処分の対象としますよ、年齢が若くても、少年を対象にしますよということによって、私どもとしては、基本的にはそういった子でも社会の規範を犯せば罰せられるということをはっきりさせるべきというのがもともとの発想です。  ただし、今の御指摘のように、対象が広過ぎるというような感じでとっておられるんだと思いますが、民主党案を読ませていただく範囲では、少なくとも傷害致死とか強姦致死とかそういった重大事件が排除されてしまうことになるのではないかと読めないこともないという感じがするのですね、民主党案の書き方を見ると。そういった強姦致死であろうとも、これは殺人にほぼ近いような話なんであって、死ぬ可能性が十分にあることはわかっていた上での話ですから、そういった意味では、傷害致死とか強盗致死等々につきましても考えるべきなんだ、私どもは基本的にそう思っております。  それから、民主党案の第二十条の第二項のところですけれども、「人を殺した罪の事件であつて、その罪を犯すとき十六歳以上の少年に係るものについては、前項の規定によるほか、調査の結果、保護処分その他の刑事処分以外の措置を相当と認めるときを除き、」「検察官に送致することができる。」そのようになっていると思うんですが、十六歳以上の少年による人を殺した罪というのは、現行法でもこれは逆送できることになっておりますので、そういった意味では、今回、第二項において送致できると規定する意味は余りないんじゃないのかなというのが民主党案を読んだ点での私ども意見でありまして、今その点が私どもとは見解を異にしているというような感じがしております。
  75. 山花郁夫

    ○山花委員 ただいま、民主党案と与党案との間で人の命に対する考え方が違うのではないかというお話があったわけでありますけれども、この点は、確かに結果に注目をされれば与党案の言われることも私個人としては全く理解できないわけではないのであります。先日もこの場におきまして、少年犯罪被害者の御遺族の方が来られてお話をされているのを拝聴いたしまして、自分の親族の命が奪われたということについてのその心境というものは本当にいかばかりのものかと思われるわけであります。  ただ、それはそれとしてというところがあるわけでありまして、その方たちの気持ちは非常に、例えばの話、加害者をいかに厳罰に処してもらったとしても、やはりまだいやされることのない気持ちを持っているんだろうなという思いは受けとめたのであります。しかし、このことは、成人の犯罪において心身耗弱であるとか心神喪失者が犯罪を起こした、特に猟奇的な犯罪を犯したような場合にも同様に言い得ることでありまして、例えばこういった犯罪に対して世論調査を行えば、厳罰に処すべしという、これは仮定の話ですから何とも言えませんが、恐らくそういった論調も出てくるのではないかということも予想されるわけであります。もしそれを取り上げて議論してしまう、では法律改正してしまえということになると、責任主義の原則であるとかそういうことも見直せというような話になってしまうわけでありまして、世論であるとか、あるいは被害者の方のお気持ちは十分酌み取っても、やはりそれでも法務としてはちょっと譲れないという部分があるのではないかと思うわけであります。  その上で、被害者の方の被害感情の中身について、私が出席をしていなかったときの会議録及び先日の参考人の方の御意見を賜りまして、少年法に対する不満として最も取り上げるべき点はやはり被害者の側の権利なのではないかという印象を強く受けたわけであります。来ていただいた方の中には、例えば岡崎参考人なんかは、厳罰化だ何だということよりも被害者の側の権利というものをしっかりしてほしい、そういった痛切なお訴えがあったわけであります。  こうした被害者の側の気持ちというものに対して国の側が果たす役割というものは、それぞれの国家機関によって異なるのだろうなという思いがあります。行政の部門においては、適切な法の執行の中で被害者のお気持ちを聞いてあげる。あるいは国会は、これは立法機関で、私たちは立法機関にいるわけでありますから、もし法改正ということで対処ができることであれば対処をしてあげるということが必要なのだと思います。また、裁判所というものは、法に基づく権限の中で適正な処遇というものを行うということになるかと思うのですが、国家機関の一つである私たち国会、そしてこの委員会も十分に被害者の声に耳を傾けてあげるということが必要なのではないかと思います。結果的にどういう形で採決をされるにしても、こういう場に出てきて、国会で一応思いを語るということによって多少なりともそういった被害者の方の心をいやす機会を提供できるのであれば、そういう機会をできるだけ保障してあげるべきではないかと思います。  そして、さきの十月二十七日の岡崎参考人、少年事件被害者の方でありましたが、主な論旨は、先ほども申し上げましたけれども厳罰化ということよりも、そして委員会の審議を急ぐということよりも、やはり被害者保護ということをしっかりやってほしい、その中で特に被害者の母親の意見を聞いてほしいということを非常に痛切に述べておられました。  本日は、これで審議が終わった後、採決という段取りになっているようでありますが、委員の方各位におかれましては、もし別の院に回ったときにもそういった被害者の方の意見というものを聞く機会というものを多く設けるよう委員の方から希望を出すということは恐らくできると思いますので、最終的には理事会の決定ということになるかと思いますが、そういった方たちの意見を多く聞いていただきたいということを御要望いたしまして、質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  76. 長勢甚遠

  77. 日野市朗

    日野委員 私、この審議をずっと、委員会に出なかったときもありますが、できるだけテレビ等を通して拝見はしていたつもりです。  そして、またいろいろな議論が出ましたね。国内でいろいろな議論が出た。その議論二つに大別してみて、厳罰化という方向、それから保護という方向、この二つ。  どういうグループがどういう議論に属しているかなということも一応私なりに見ていたんですが、更生保護とか、何とかして犯罪者それから少年たちを立ち直らせたいということで仕事をしている人たち、そういう実務に携わっている人たちはやはり保護の方を重視するという傾向が、これははっきり見てとれるというふうに思いますね。  実は、私も保護司なんですよ。今もケースを持ちまして、そして仕事をやっております。あなたの任命によりましてやっておるわけでございますが、私もやはり同じように思います。犯罪者という烙印というものがいかに重いものか、そしてそういう人たちが社会に戻っていくときにそのバリアがいかに高いか、壁がいかに高いかということ、そういうことを私自身も非常に強く感じております。  本当にみんな涙ぐましい努力をやっているわけですね。きょうは法務大臣に対する質問はしませんが、さっき法務大臣が、今まで少年院などで行ってこられた成果、それから勉強の成果、そういったものは日本の宝だとおっしゃったが、私も全く同感。  それと同時に、地方で働いている保護司、それから更生保護婦人会なんかを初めとしてやっている人たちの努力、さらにBBSという組織がありまして、この組織は、少年たちといろいろ交わりを深めながらその少年たちの心を解きほぐし、そして人とのつながりをつくり、これなんか本当にすばらしい仕事をやっておられる、こう思うんですね。そういう仕事をやっていれば、私も含めてですが、犯罪を犯した者に対しては罪にふさわしい刑を、罪にふさわしい罰をという考えにはなかなかなりにくい、特に少年事件については、そういう一面があることはやはり間違いないところなんでしょう。  先日、当委員会における参考人として守屋教授が、社会にそういった少年が戻ってくる、そのときにどのように社会が受け入れていくかということが非常に大事なんだと。その少年自身がどう変わって社会に戻ってくるかということが大事なんだという視点を決して我々は忘れてはいけないんだと思うんですね。  最近、少年事件、まあ統計上の数字のことを私は、もうこれは言ってもしようがないことですから言いません。ただ、それが非常に凶悪化をして世間耳目を聳動するという、このごろは言葉は変わって、世間をびっくりさせるような事件が起きていること、これもまた一方で事実でありますね。でありますから、その側面を見れば、これはやはり厳罰化、犯した罪にふさわしい罰をという考え方になる。一方では一般の人々の心の中にそういう考え方が兆すということは否定できない事実であろうと私は思う。  しかし、我々はもっと冷静に、そういった少年たちがまた社会に戻ってくるときに、どのようにその少年の人格が改造されているか、犯罪的性向といいますか、そういったものが消し去られているか、どのように社会がそれを受け入れるかということは非常に大事なんだと私は思いますね。  やはり、今までの少年院で行われていた教育、少年刑務所でも行われているんだよという御意見もありましたが、少年院少年刑務所との間にはやはりきちんとした区別をしなくちゃいかぬ、私はそう思いますし、それから、更生保護関係に一生懸命仕事をしている人たち、こういった仕事に対する評価もきちんとしておくべきだと思うんですね。  私は、守屋さんの使われた言葉、よく社会復帰とかなんとかいいますが、それより、そういう人たちは現実にまた社会に戻ってくるんだよ、そういう人たちをどのように受け入れるかが大事なんだ、そして、それまでにどのように犯罪を犯した少年たち、こういった人たちに対して教育的措置を行っていくか、これが大事なんだという視点は絶対に忘れてはいけないと思います。もし同じような犯罪的な性向を持って戻ってきたら、また罪を犯す、そうするとまた新しい被害者が生ずる。でありますから、私どもは、やはりそういう教育的な効果というものを最大限に重視していくこと、感情に押し流されるのではなくて、教育を施してその効果を十分に得る、こういう仕事というものを決してないがしろにしてはいけないというふうに私は思うんですね。  これについて今皆さんからどう思うかと聞いたって、それはこの少年法を提案されて審議がここまで来て、もう採決も目の前ということになれば、ごもっともというか、まあそんなところでお茶が濁るのでありましょうから、それ以上多くを聞かないことにいたします。しかし、そういうことを決して忘れないでこの少年法運用というものはなされなければならない、こういうふうに思いますので、そのことは私の方から一方的に主張をさせていただいて、この点については終わらせていただきます。  そこで、今度はちょっと法律内容について伺いたいと思います。  今、山花議員も言っておりましたこの二十条です。改正案の第二十条「検察官への送致」でありますが、私はこれはどうしても納得できないんです。二十条一項には、調査の結果逆送できる、こう書いてあるんですね。しかし、前項の規定にかかわらずこれこれの要件を満たした場合、つまり故意の犯罪行為、被害者の死亡、その罪を犯すとき十六歳以上の少年に係るもの、これは検察官に逆送しなければならない、こう書いてあるわけですね。読んで字のごとし、必ずこれは逆送しなければならない、こう書いてある。そして、ただし書きがついていて、「調査の結果、犯行の動機及び態様、犯行後の情況」云々、こう書いてあります。  この第一項における「調査の結果、」それから第二項ただし書きの「調査の結果、」この調査というのは同一のものでしょうか、それともまたさらに別個に調査をするんでしょうか。いかがですか。
  78. 谷垣禎一

    ○谷垣議員 先ほども漆原委員から御答弁申し上げたところでございますが、八条がございます。送致を受けたときはその事件について調査をしなければならないと書いておりまして、これは原則逆送の対象となる事件であっても同様である、つまり八条の規定は一項にも二項にもかかってくるんだ、一項の「調査の結果、」も二項の「調査の結果、」も八条に言う調査である、同じものである、こういうふうに理解しております。
  79. 日野市朗

    日野委員 一項も二項も同じだ。そうすると、一つの調査の結果によってこのただし書きが発動するかどうかが決まるんだ、こういうお話理解してよろしゅうございますね。特に、この第二項本文の要件を満たしていても、もう既に行った調査の結果によって逆送する場合と逆送しない場合と二つに分かれる。
  80. 谷垣禎一

    ○谷垣議員 日野委員のおっしゃるとおりです。
  81. 日野市朗

    日野委員 そうすると、私、ここで非常に違和感を覚えるんですよ。  調査の結果にかかわらず同項の決定をしなければならない、つまり逆送の決定をしなければならないわけですね。そうすると、もう既に調査の結果ができて——これは時系列的に見ながら私は言っていますよ。もう既にそこで調査の結果というものについては見ているわけだ。そうすると、ここでただし書きが発動されてくる、つまり逆送しなくてもいいという措置。この措置がとれるかどうかということについては非常に判断する側の混乱というものがあり得るわけですね。  これだけの要件を備えて、これは逆送すべきケースなんでありますよ、こう本文には書いてある。しかし、ここで、ではどのようなものが、「動機及び態様、犯行後の情況、少年の性格、年齢、行状及び環境その他の事情を考慮し、」これはかなり総合的な要件がここに盛り込まれている。こんなものは最初の調査のときにもう既に全部調査されているという前提で、そして二項本文が書いてあるわけです。そうすると、こんなものは調査の段階で全部見ている、そして本文の要件があった場合は逆送しなさいよ、こう書いてあるわけです。  ですから、この本文の要件以外に、この調査の結果出てきたこれらの資料、こういったものはどのような効果を果たし得るのか。これは判断をする者としては本文に従って判断せざるを得ないじゃないですか。ただし書きに書いてあるような事情、こういったものはもう見ているのです。そして、その中にある事情、これはどう見たって二項本文の要件を乗り越えることはできない、私はこう思いますが、いかがですか。
  82. 谷垣禎一

    ○谷垣議員 今の日野委員の御議論の前提として、第二項の「前項の規定にかかわらず、」というのを、一項に書いてあります「調査の結果、」とお読みになっているように今伺ったわけでありますが、私どもは、その「前項の規定にかかわらず、」というのは、一項が保護処分を原則としているにもかかわらず、かくかくの場合には刑事——一項が刑事処分を原則としているにもかかわらずと、こう読むべきだ、こういうことでございます。
  83. 日野市朗

    日野委員 何かどうもそこのところ、ちょっと答弁者側も迷われたようですが、今の間違いは合理的な間違いだと私は思います。  二十条、これは刑事処分を原則としているのですよ。少年法保護主義で貫かれていますよ。しかし、二十条というものがありますよ。この二十条は刑事処分を原則とする規定なんですよ。違いますか。
  84. 杉浦正健

    杉浦議員 その点はちょっと違うと思うのです。  二十条一項は、調査の結果、これは二項にもかかわりますけれども、罪質、情状に照らして刑事処分を相当と認めるときは送致しなければならないとなっておるわけでありまして、刑事処分を相当と認めなければ送致しなくていいわけであります。現実に、五十年間の家庭裁判所運用の結果、例えば殺人事件でも、逆送と言っていますが、逆送されたケースは二割から三割という現実で、七割から八割の殺人事件についても、保護処分相当ということで送致していなかったという事実があるわけでございます。
  85. 日野市朗

    日野委員 ここを、原則がどっちだなんていうと学者の議論みたいなことになってしまいますから、余り深入りするつもりはないのだが、実は保護主義というのは少年法全体を貫く流れですね。そして二十条の場合は、刑事処分に回しますよ、逆送いたしますよということですから、二十条が対象にしているのは刑事事件なんですよ。「家庭裁判所は、死刑、懲役又は禁錮に当たる罪の事件について、調査の結果、その罪質及び情状に照らして刑事処分を相当と認めるとき」。ですから、これは刑事処分ができますよ、こう言っている。二十条はそういう規定なんです。  ここのところは、訓詁学みたいなことはここではやめるにしても、これは二十条第二項の原則を書いてあるわけで、そうすると、これらの罪についてはまた別なんです、こう書いておいたら別になるじゃないですか。
  86. 杉浦正健

    杉浦議員 二十条第一項で逆送できる罪の範囲は非常に広うございます。死刑、懲役または禁錮に当たる罪の事件と、非常に広いわけですね。窃盗でもそうですし、業務上過失でもそうですし、非常に広い範囲で逆送できる。刑事処分を相当と認めた場合は逆送しなければならない、逆送できる、こうしておるわけでありますが、二項ではそれを絞り込みまして、そういう非常に広い罪ではなくて、故意の犯罪行為によって被害者を死亡させた罪の事件、これは非常に絞り込まれております。罪種は二ページぐらいに非常に多種にわたりますが、典型的な罪は、殺人、強盗致死、強姦致死、傷害致死等が主なものであります。そういう非常に重大な、凶悪な犯罪で結果が重大なもの、人が死に至るということは大変重大なことでありますが、その罪については、十六歳以上の少年に限りましたが、原則として決定をしなければならない、こうしたわけであります。  ただし、人が人を殺した事件でもいろいろございます。グループで傷害致死という事件は割合多いのですけれども、主犯格の少年と従犯の子とは違いますから、ただし書きで、かくかくしかじかの場合には、そして刑事処分以外の措置を相当と認めるときは逆送しなくていい、こう除外したわけでございまして、第一項と二項はちょうど裏腹になっておるわけであります。二項で、そういう重大な事件については原則として逆送をして、少年に刑事裁判を受けさせるというふうにすべしというのが立法者の意思でございます。  ただし、御質問はないのですが、つけ加えますが、刑事裁判の結果、保護処分相当と刑事裁判所が認定した場合は、五十五条に規定がございまして、家庭裁判所に移送することができるようにもなっております。  今までの五十年の家庭裁判所運用で、その移送がほとんどないんですね。私どもは、原則逆送することによって公開の裁判に付せられる、そこで対審構造で検察官が訴追して、事実もきちっと審理する、被害者の方々も傍聴できる、場合によっては証人にも立つ。そういうことで、今被害者の方々もいろいろ思っておられる御不満も、原則逆送をきちっと家庭裁判所がやってくれれば相当の部分は解消するということを私どもは期待しておるわけであります。
  87. 日野市朗

    日野委員 杉浦先生のお話杉浦先生というときは代議士先生という意味と弁護士先生という意味を含めて申し上げますが、もう百も御承知のはずだ。我が国の実務は共謀共同正犯理論をとっている。その広がる範囲は非常に広い。見張りなんというのは、見張りという類型だけで、それは第二項の本文におけるもの、少年はその要件を免れることなんてできないんですよ。違いますか。そして犯行の動機、態様、犯行後の状況等、これらの事情がずっと書いてありますが、その中で、共謀共同正犯理論をとってこれだけは別よということは、私は非常に難しいと思う。  この間、漆原さんでしたか、見張りは別よ、こんなことをおっしゃった。しかし、見張りだって重大な、本当はそいつが主犯だったなんていうことはよくあることです。ですから、ここらのただし書きに書いてある事情なんというものは、一人の裁判官などがこれを判断するにはこの第二項本文の記載が余りにも重い。これはとても、ただし書きなんかを発動する余地はほとんどないな、こういうふうに私は思いますし、そうすれば当然、その事件を扱う家裁の裁判官は、これはもう逆送、原則に従いましょう、そういうことにならざるを得ないと思います。  どうでしょう。何かこの委員会の中では、ただし書きの方がむしろ重大なんだ、これがあるんだから本文のような規定があったっていいんだみたいな答弁が、たしか杉浦先生じゃなかったかな、なされていたように思いますが、どうですか。
  88. 杉浦正健

    杉浦議員 御指名の漆原提案者がいらっしゃいませんので、私からお答えさせていただきます。  個々の具体的な事件については、もう個別さまざまな態様がございますから一概にどうこうと申し上げるわけにはまいらないわけですが、このただし書きはただし書きでございますので、きちっと家庭裁判所が調査をし、審理をし、裁定合議制も導入されますので、事実が争われている事案とか難しいのは三人の裁判官が、これは逆送するかどうかについても審理することに相なると思いますし、適正にこのただし書きの運用がなされるというふうに思っておる次第であります。
  89. 日野市朗

    日野委員 私はそうはならないと思いますよ。これはもう、家庭裁判所の裁判官が本当に保護主義の意味をきちんと理解して、そしてよほどの勇気を持っている人でなければこれはできないだろう、私はそう思います。  それから、事実の認定の話について伺います。この間も聞いたのですが、時間がなくて意を尽くさなかったので、もう一度聞きます。  事実認定をこの審判という中でどのように位置づけておられるのか。私は、事実認定というのは一つの最も大事な部分であり、これをなあなあで決めることはできないと思う。まあ我々は職権主義での事実認定ということに余り通じてはいないんだけれども、職権主義での事実認定というものは私は果たしてうまくいくかなというような感じがいたします。各国の法制を見ても、一応予審は通っても、ちゃんとした法廷では事実認定をやるわけですね。  そういった意味で、事実認定について、疑わしきは被告人の利益にという原則は、この提案されている事実認定の手続の中で生きているんでしょうな。どうなんでしょう。
  90. 谷垣禎一

    ○谷垣議員 被告人という言葉が少年審判の場合に適切かどうかわかりませんが、おっしゃった原則はここでも通用するのだろうと思っております。
  91. 日野市朗

    日野委員 その証拠を示してください、根拠を。
  92. 谷垣禎一

    ○谷垣議員 これは要するに裁判官の心証形成ということになるだろうと思いますが、少年法の構造として、疑わしきものを少年の不利益にという構造にはなっていない、こういう解釈だと考えております。
  93. 日野市朗

    日野委員 ですから、その根拠になる条文はどうですか。
  94. 谷垣禎一

    ○谷垣議員 それは、刑事訴訟法の中にもそのこと自体は直接は示されていないと思うのですね。刑事訴訟の、要するに裁判官の心証を形成していくときの前提の原理として理解されているのだろうと思います。この少年法でも同じように理解してよいのではないかと考えております。
  95. 日野市朗

    日野委員 当然の前提であるということを言いながら、確かに刑事訴訟法はそれは書いてありません。しかし、それを担保するための措置はちゃんととってあるわけですね。まず、予断排除がそうでしょう、対審構造がそうでしょう、公開の原則がそうでしょう。そういった担保処置がこの場合にないような気がするのですね。そして、「審判は、懇切を旨として、和やかに行うとともに、」懇切、和やか、こう書いてあるわけですね。  それは、検察官も付添人も裁判長の審判の指揮には従うだろうと思う。ただし、ここで考えなくてはいかぬのは、やはり審判の指揮をする裁判長ですね。これは既に一件書類を全部見て、いろいろな情状から何から全部見ているわけですよ。それに検察官が立ち会ったら、今度は検事が二人いるようなものだ。ところが、事実の認定というのは私は非常に大事だと思う。もし、少年が否認をしている場合、そして現実少年がその犯行を行っていなかった場合、警察、検察、こっちの方からじっくりと手順を踏んで上がってきた一件書類、それに対する裁判長の見方というのはやはりかなり固まっていると思わざるを得ないですよ。  一人の無罪の者も有罪にしてはいかぬというのは刑事手続の原則だけれども、それは原則として生きている、こうおっしゃるが、それを担保するものがここには消えていると私は思うんですね。これを何か考えられませんか。事実認定をきちんと行っていくんだという、その担保がなくてはいかぬと私は思う。いかがですか。
  96. 谷垣禎一

    ○谷垣議員 これは、日野委員もおっしゃるように、少年法が、多分、柔軟に事実認定、審判をやれという構造に立っているという理解のもとに、職権主義的な事実認定を規定したわけですね。  それで、そもそも大前提としまして、日野先生は、事実認定をきちっとやるためには当事者主義的な対審構造の方がいいんだという前提に立っておられると思いますが、そこのところがまず一番、ある意味では実証の難しい議論でもございまして、職権主義イコール事実認定としては不的確だと言う必要はないんではないかと思っております。  私どもは、今度の中で取り入れましたのは、今までは単独の裁判官がやっていたわけでございますけれども、複雑な事件には合議制ということも取り入れる。これは、裁判所は合議制というのに長い経験を持っているわけでありますから、合議制も取り入れる。それから、検察官の関与というのは、あるいは弁護士の付添人の関与というのは、対審構造のときのような攻める者、守る者という立場では必ずしもございません。何度も御答弁しておりますように、裁判官の指揮のもとに協力してやっていくという構造でございますけれども、そういう形で今までよりも事実認定を適正にやっていこう、こういうことでございますから、日野先生のおっしゃるような真実を担保する道がないということではないのではないかと思っております。  それから、日野先生のおっしゃるような対審構造と申しますか、当事者主義の構造を取り入れるということになりますと、これは事柄の性質上、憲法にもございますように、当然公開の法廷ということで多分やっていかざるを得なくなるんだろうと思いますね。それで、公開の法廷で予断排除の原則をとって、対審構造、当事者主義的な構造をとっていくということになりますと、どうしても手続全体がある意味ではかたい、リジッドなものになっていくだろうと思います。  それは、実体的真実の発見だけではなくて、デュープロセスの要請も重視していこうということになればそうならざるを得ないんだろうと思うんですが、果たしてそういうことが少年法の前提としている柔軟に少年の矯正を考えていこうという方向とぴたっと一致するかどうか、ここが多分一番議論のあるところだろうと私も思うんですが、私どもは、そういう少年法の構造の中では直ちに対審構造を取り入れるということは適切ではないのではないかという判断のもとにこういう形にしたわけでございます。
  97. 日野市朗

    日野委員 事実認定というのは非常に難しい話でございまして、問題は、予断排除、対審構造、公開、こういったものは被告人——今、少年法を論じているのは、被告の場合について言いますよ、被告人の納得、その裁判にかかわる者の納得というものを非常に重大な要素に据えていることは間違いないんです。  ところが、少年の場合は審判というのは非公開であります。そして、予断排除の原則もとられてはいない。それから対審構造もとらない。こういうことになると、ここで少年がどうしても納得できない事実認定が行われていくということも私は非常に危惧をいたします。  そういったことを申し上げて、時間ですから終わりましょう。
  98. 長勢甚遠

  99. 木島日出夫

    ○木島委員 日本共産党の木島日出夫です。  質問の順序を変えて、最初に、検察官関与の問題について法案提出者にお聞きをいたします。  何のために少年審判手続に検察官の関与が必要なのか、御答弁をお願いします。     〔委員長退席横内委員長代理着席
  100. 杉浦正健

    杉浦議員 お答えいたします。  検察官関与を認めた趣旨は、審判の協力者として事実認定を適正にする、真実の発見に協力してもらうという趣旨で導入したわけであります。
  101. 木島日出夫

    ○木島委員 少年審判手続におきましても、厳正、適正な手続で犯罪事実が認定されることは非常に大事なことだと考えます。我が党も、その立場から、少年審判手続に検察官が関与することに全面否定という立場には立ちません。それは、非行少年が自己の犯罪行為に真摯に立ち向かう、そして、被害者の側の苦しみ、痛みを知り、本当に更生の道に踏み出すためにも大事だ、また冤罪をなくすためにも大事だ、また逆に被害者側が一方的に悪者にされてしまう逆冤罪をなくすためにも大事なことだと考えているからであります。  しかし、与党案には二つの点で大きな問題があると考えますので、これから順次ただしたいと思います。  第一は、これで真実が本当に認定できるのかという問題であります。刑事裁判における証拠法上の適正手続、今も御論議がありましたが、予断排除の原則や伝聞証拠排除の原則など、これらの適正手続なしに、ただ検察官の関与を認めればどうなるか。少年は捜査官の言いなりになる可能性は成人に比べてはるかに大きい。これはもうほぼ公知の事実だと思うんですね。それだけに、今の捜査構造、そして刑事裁判における証拠法上の適正手続なしに、ただ検察官の関与だけを認めていきますと、逆に冤罪が生まれやすくなる心配があるのではないでしょうか。御答弁願います。
  102. 杉浦正健

    杉浦議員 日本共産党が検察官の関与を原則として……(木島委員「原則じゃない。全面否定の立場には立たない」と呼ぶ)ある意味ではお認めいただいているということは、非常に卓見でございまして、高く評価させていただく次第でございます。  御指摘の点、結論から申しますと、そういうことがないように、今度の検察官関与についても十分な配慮をいたしておるつもりでございます。少年審判の特質は、委員がおっしゃったように、さまざまあるところでありまして、その中で真実を発見しなきゃならない、非常に重要なことでございます。対審構造をとりませんから、証拠も伝聞法則等の制限もございませんので、非常に難しいわけでありますが。  ただ、検察官が関与することになりますのは事実認定手続であります。裁判官が必要と認めた場合に限りまして、つまり、家庭裁判所少年審判の職権主義的構造の中で、事実認定について、公益的立場で、証人尋問とか鑑定人尋問等、必要な場合に検察官が立ち会う。事実誤認がないようにしようという趣旨で導入されておりますので、委員の御指摘のような御心配はないと私どもは考えております。     〔横内委員長代理退席委員長着席
  103. 木島日出夫

    ○木島委員 答弁になっていないと思うんです。  私、改正法案を見まして、配慮がなされているとすれば二つだなと思います。一つは検察官関与の対象事件が絞られているということ、もう一つは検察官が関与する事件には少年の方にも付添人たる弁護士がつくということ、それだけだと思うんですね。  しかし、今のような捜査の状況少年は警察官、捜査官の手のひらの上に乗って、非常に誘導を受けやすいということは公知の事実だと私はさっき言いました。そういう構造の上に立って、一件記録が全部、証拠法則のシェルターを通らずに裁判官に行くという手続のまま、ただ検察官を関与させただけでは、真実の発見すらできないじゃないかという指摘をしたわけでありますが、明確な答弁がありません。  そこで次に、少年側が犯罪事実を争っている事件で、刑事訴訟法の、大人の裁判ですが、適正手続の保障のないまま検察官を関与させて証拠調べを行うことについて、改めて憲法三十一条の適正手続の趣旨に反しないのかという質問をいたします。それは、少年審判手続といえども保護処分の結果によっては少年院送致などでは少年の身柄が拘束されることは明らかだからであります。  既にそういう立場から、昭和四十一年二月八日の仙台家庭裁判所の決定におきましては、自白法則が適用されております。任意性のない自白の証拠能力が少年審判手続でも排除されている。それから、昭和四十九年三月二十日、名古屋家庭裁判所の決定ではさらに進んで、違法収集証拠の排除ということが少年審判手続でも前進しているんですね。  そういう流れの中で考えますと、私は、少なくとも、少年の特性から考えますと、事実を争っている事案、僕はやってないと激しく主張しているような事案については捜査段階から弁護人が付添人として関与すること、そういうことなしに実体的真実の発見ができないんじゃないかと思うんですが、そんなことも含めて、こういう構造では、これまでの少年審判の流れの中で、憲法三十一条の趣旨が次々と前進させられてきているという流れの中から逆行ではないかという指摘をしたいんですが、提案者、どうでしょうか。
  104. 杉浦正健

    杉浦議員 本改正法案におきましては、委員指摘のとおり、検察官が関与する場合には弁護人をつける、付添人がいない場合は国選でつけるというふうにいたしておりますし、あくまでも職権主義的な構造のもとで、審判協力者として、公益の代表者として関与するということに相なっております。その上で、必要な証人尋問等の手続が行われるということでありますから、憲法三十一条に定める適正手続保障には反していないというふうに考えておるところでございます。  あくまでも、少年審判の特質に配慮しながら事実認定手続の適正化を図るものでございまして、真実の発見に寄与するものと考えております。
  105. 木島日出夫

    ○木島委員 答弁は結論をお述べになっているだけであって、質問に対する答弁になっていない、理由を述べていないと指摘をして、次の問題に進みます。  第二の問題は、与党案の検察官関与の仕組みによりますと、検察官の関与が、少年の犯した犯罪事実の認定だけでなく、いわゆるその少年再犯の可能性、矯正の可能性、学説上要保護性の認定という言葉で言われている問題でありますが、この分野にまで及んでしまうおそれがあるのではないかという問題であります。そうだとすれば、少年審判の構造の根幹にかかわる重大なゆゆしき問題でありますから、この問題について提出者にお聞きします。  法案第二十二条の二によりますと、検察官が関与できるのは、その非行事実を認定するための審判の手続に検察官を関与させる必要があると認めるとき、裁判官が必要があると認めるときという構造になっておりますが、どういう場合でしょうか。大事な部分ですから、厳格な答弁を求めます。
  106. 杉浦正健

    杉浦議員 改正案におきましては、委員指摘のとおり、認めておるところでありまして、そこにある非行事実とは、改正法案第五条の二第一項に規定されているとおりであります。当該犯罪の構成要件該当事実のみならず、犯行の動機、態様、結果その他の当該犯罪に密接に関連する重要な事実を含む事実でございまして、いわゆる要保護性のみに関する事実を含まない趣旨であります。これら非行事実の認定に関して問題がなければ、検察官が関与することはあり得ないところでございます。  また、これらの非行事実に関して争いがございまして、検察官の関与が認められたとしても、そういう事実は証拠によって客観的に認定されるものでございます。家裁調査官の社会調査によりまして、いわゆる要保護性の調査がなされるわけでありますが、そういう調査とは違うものでございます。少年の資質、性行その他少年の内面に踏み込んだ解明をされるべき要保護性の調査とは異なるものでございます。  したがって、繰り返しになりますが、検察官が動機等を含む非行事実の認定手続に関与する場合があるとしても、要保護性の認定や処遇決定過程そのものに踏み込むということはあり得ないと考えております。
  107. 木島日出夫

    ○木島委員 後で聞こうと思ったことを先に答弁されたのですが、私の質問は、二十二条の二の検察官関与をさせる必要があると認めるときはどういうことか、どういう場合かという質問をしたのです。答弁になっていないのです。  少年側が犯罪事実を全く争っていない、そのような事件についても検察官の関与が必要な場合があるのでしょうか。
  108. 杉浦正健

    杉浦議員 最終的には裁判所が判断するわけでありますが、例えますと、少年が事実を否認している場合……(木島委員「争っていない場合に、必要があるときということで関与させることができるのかということ」と呼ぶ)争っていない場合は、ほぼあり得ないと思います。
  109. 木島日出夫

    ○木島委員 非常に大事な部分ですから、そんなほぼあり得ないなんというあいまいな答弁では到底納得できないのです、これは。  先ほど答弁者は、検察官関与を何のためにするのかという私の問いに対して、事実認定手続に限るとおっしゃいました。だから、聞くのですよ。少年側が犯罪事実を争っていない事件日本少年審判事件の九九%ぐらいでしょうか、ほとんどそうなんです。そういう事件について、法二十二条の二、必要があるときというときに該当するのか。争っていないのだから、先ほどのあなたの答弁によると、そんな場合には検察官関与はできないということに論理必然的になるのじゃないかと思うから、はっきりと答弁を願います。
  110. 杉浦正健

    杉浦議員 まず争っていない場合にはあり得ないと考えますが、事件というのはいろいろございまして、検察官が申し出裁判所がそれを認める場合も絶対ないかと言われますと、ないとは言い切れないのじゃないかと思います。
  111. 木島日出夫

    ○木島委員 立法者は法案を出しているのですから、その法案の中に「必要があると認めるときは、」という条文が入っているのですから、そういうあり得ないなんという答弁では立法者としての責任を全うしたことになりませんよ。  では、どんな場合ですか。少年犯罪事実を全く争っていない場合で、なおかつ検察官関与の必要があると裁判所が認めるときというのはどんな場合を想定しているのですか、もしそうだとすれば。
  112. 杉浦正健

    杉浦議員 具体的にこうということを答弁しろと言われても困るわけでありますが、検察官が申し出裁判所が必要性を認める、最終的には裁判所の判断になるわけでありますが、その場合が絶無かどうか。絶無と言える自信はありません。
  113. 木島日出夫

    ○木島委員 これはもう欠陥法案だと思うのですね、少年側が犯罪事実を争っていない場合について、どういう場合に裁判官が検察官関与を必要があるときとして認めることができるかどうか言えないということは。そうはっきり書いたらどうなんですか。非常に大事な問題だから聞くのですね。
  114. 杉浦正健

    杉浦議員 非行事実、すなわち構成要件該当事実のみならず、犯行の動機、態様、結果その他の当該犯罪に密接に関連する重要な事実を含む事実につきまして、非行事実に関して争いがないことなどによりまして事実認定に問題がないと認められるような場合にあっては、検察官が関与する必要があると認められることはないものと考えられます。
  115. 木島日出夫

    ○木島委員 そこで次に、非常に重大な問題が今浮き彫りになってきたと思うのです。私は、質問をするに当たって、犯罪事実という言葉を使いました。非行事実という言葉を使いませんでした。それは、この法案の最大の問題として、犯罪事実という概念と非行事実という概念を区別して使っているからなんです。そこにごまかしがあると見るからなんです。  先ほど、答弁の中で、第五条の二ですが、「非行事実(犯行の動機、態様及び結果その他の当該犯罪に密接に関連する重要な事実を含む。以下同じ。)」こういう言葉が入ってきております。そして、この非行事実という概念が、検察官関与の問題でもそのままの形で潜り込んでいます。  そこで、非行事実というのは、私が厳密に使った犯罪事実、罪となるべき事実をはるかに超えているということは法案の構造上明らかです。犯行の動機その他当該犯罪に密接に関連する重要な事実を含む。  そこで、聞きます。「当該犯罪に密接に関連する重要な事実」とは何でしょうか。非常に大事な、新しい概念ですから、明確に述べてください。
  116. 漆原良夫

    漆原議員 先ほどの、認めている事件、全部認めておる場合に検察官関与があるかという御質問なんですが、これは、私はあると思うのですね。  例えば、身がわり事件なんかの場合は、身がわりの可能性がある、あるいは身がわりだという心証を持っている場合に、幾ら全部認めておるからといって、それをそのまま放置しておくわけにはいかない、こんなふうに考えております。そのような場合には検察官関与がなされるというふうに思っております。  また、非行事実についてのお話がありましたが、これは、当該構成要件のみならず、犯行の動機、態様、結果その他当該犯罪に関連する重要な事実であれば、いわゆる要保護性のみに関する事実を含まないという趣旨でございます。
  117. 木島日出夫

    ○木島委員 少年犯罪事実を認めている場合でも検察官関与の必要がある場合として、身がわりの場合を言いました。とんでもない話だと思うのです。身がわりだったというのがわかったら、それは検察官の家庭裁判所への送致が間違っていたということがはっきりしたということであって、それを撤回するか、あるいは直ちに家庭裁判所は、罪となるべき事実がないということで不処分決定すればいいのです。そんな間違ったような送致をしておいて、身がわりになったからといってそれで検察官がのこのこその少年少年審判手続に入り込む余地なんて全くないじゃないですか。そんな場合しか例を挙げられないというのは、全くこの法案の欠陥だと思うのです。  そこで次に、犯行の動機、密接に関連する重要な事実は要保護性に関する起訴事実を含まないという答弁がありました。そうでしょうか。犯罪の動機、その他犯罪事実の周辺事実、それこそまさに、その少年が将来再び罪を犯すんじゃなかろうか、再犯の可能性、あるいはその犯罪行為、罪となるべき事実の周辺事実こそが、その少年が矯正の可能性、立ち直る可能性があるかどうかの基本的な認定をするのに一番大事な部分じゃないでしょうか、もちろん、罪となるべき事実がその根幹ですが。  ですから、この与党法案が、罪となるべき事実、犯罪事実と表現しないで非行事実という非常に大きな概念を持ち込んできて、それに検察官を関与させるということは、まさに要保護性の部分についてまで、全部とは言いませんよ、要保護性を判断する非常に大事な中核的な部分にまで検察官が関与してくるんじゃないかと私は指摘せざるを得ないのです。そうじゃないならそうじゃないという答弁、明確な理由を述べてください。
  118. 漆原良夫

    漆原議員 まず、動機の部分でございますけれども、これは単に要保護性という観点からだけではなくて、被害者の立場から見て、一体どんな動機でこの少年事件を犯したのだろうかということもまことに重要な問題であろうと思っております。したがって、動機の解明という観点からも重要な事実だと思います。  また、今、要保護性にまで及ぶんじゃないかということを御質問でございますけれども、事実の認定そのものと、その事実を前提とした要保護性というのが観点が違うわけでございますから、まず事実の認定そのものをきちっとやる、こういうことでございます。
  119. 木島日出夫

    ○木島委員 動機についての事実認定について検察官を関与させたら、動機なんというのはどんどん深くさかのぼっていくのです。十四、十五の少年あるいは十六の少年が殺人を犯してしまった、理由がわからないというのが最近の少年の殺人という重大犯罪の特徴だとすら今言われているのです。動機は何だ、何でそんな突発的な、切れたような突如としての殺人行為に及んだのか、全く大人からは見えない。  だからこそ動機とか背景とかをずっと調べ上げていくことになるんでしょう。それはまさに大事なことなんです。家庭裁判所はやっています。調査官もやっています。そこまで解明して初めて、この少年の矯正可能性、再犯のおそれ、それが認定されて、要保護性の認定となって、これはやはりこういう少年だからこそ少年院で人格の矯正が必要だとなるのです。それを放棄したのが刑事処分ですよ、ただ拘禁して懲役刑に付すればいいというのですから。  ですから、この少年の要保護性の認定、刑事処分送りか少年院で矯正かというその分岐点に一番かかわる問題が、まさに動機であり背景なんです。そこに検察官が入ってくる。まさに要保護性そのものへの検察官の関与じゃないですか。
  120. 漆原良夫

    漆原議員 今委員のおっしゃったのは、まことに大事なことだと思います。動機が解明されなければ、要保護性という観点からも判断できない。したがって、こういう事件をどんな動機で起こしたのかというのはやはり大事な問題でございます。したがって、そこに検察官関与をさせる、その動機を確定した上で、その上で要保護性を論じていく、これは私は別な次元だと思うのです。動機の解明そのものが要保護性というふうにおっしゃっているのであれば、これはいささかどうかなというふうに思うのです。動機を含めた要保護性の大前提となる事実、こういう意味で動機そのものを解明していく、それを明らかにした上で要保護性を判断していく、こういう作業になろうかと思いますので、よろしくお願いします。
  121. 木島日出夫

    ○木島委員 それはなぜ大事かというと、次の質問に移るのですが、三十二条の四で、検察官の抗告受理の申し立てについてかかわってくるからであります。  再三提案者は、家庭裁判所保護処分決定に対して、刑事処分相当を理由としては抗告受理の申し出はできないと、きのうもずっと答弁していました。ところが、この三十二条の四を見ますと、「非行事実の認定に関し、決定に影響を及ぼす法令の違反又は重大な事実の誤認」が抗告受理の申し立ての理由となっているのです。  ここで「非行事実の認定に関し、」と、「非行事実」という言葉を使われています。この非行事実というのは、罪となるべき事実よりはるかに広い、動機も含む概念です。そして、さらに「重大な事実の誤認」という言葉を使って「事実」という言葉を使われています。では、ここで言っている「事実」というのは何ですか。罪となるべき事実ですか、それともこの法案で言う非行事実ですか。狭い概念なんですか、広い概念なんですか。「重大な事実の誤認」の「事実」の解釈を聞きます。
  122. 杉浦正健

    杉浦議員 非行事実が一般的に広い概念といいますか、言葉の意味を持っていることは委員指摘のとおりかもしれませんが、ここに言っている非行事実、犯罪事実というのは、ほぼ同一の内容だと御理解していただいていいと思います。  それで、委員がおっしゃったように、非行事実の認定に関して、法令の適用影響を及ぼす非行事実に関する法令違反ないしは重大な事実誤認があった場合のみ抗告受理の申し立てができることは、再三御答弁を申し上げたとおりであります。
  123. 木島日出夫

    ○木島委員 だから、「重大な事実の誤認」の「事実」というのは何かと聞いたのですよ。罪となるべき事実じゃなくて、非行事実と聞いていいんですね。
  124. 漆原良夫

    漆原議員 非行事実についてお尋ねでございますが、三十二条の四第一項の非行事実、これは改正法案第五条の二第一項に規定されているとおり、当該犯罪の構成要件、該当事実だけではなくて、犯行の動機、態様、結果その他の当該犯罪に密接に関連する重要な事実を含む事実という意味でございます。
  125. 木島日出夫

    ○木島委員 答弁の中で、与党案は検察官関与も広い、それからまさに抗告受理の申し立ての範囲が限りなく広がるということが明らかになったと思うのです。犯行の動機、犯罪に密接に関連する重要な事実の中には、当然、犯行に至る経過、犯行時の少年の精神状況、犯行後の少年の動向なども含むわけであります。まさにそれらは、要保護性を判断する極めて重要な起訴事実です。刑事処分送りか保護処分か、まさに分岐点にかかわる起訴事実で、結局、そこに検察官が関与し、その認定が不服なら抗告申し立てができるということになっているという点は、まさに私は、少年審判の構造を根幹から覆すような状況が生まれてくるということを懸念いたします。  その点だけ指摘をして、非常に大事な十六歳以上の少年の原則逆送についてお聞きをいたします。時間も迫っていますから、本当はどんな罪が該当するのか、すべて挙げてもらいたかったのですが、はしょります。  なぜ被害者死亡の事件だけを特別に扱い、原則逆送としなければならないのですか、簡潔に答弁願います。
  126. 杉浦正健

    杉浦議員 故意の犯罪行為によりまして人を死亡させるということは、何物にもかえがたい人命を奪うという点で極めて反社会性、反倫理性の高い、許しがたい行為であることは申し上げるまでもございません。このような罪を犯した場合には少年であっても刑事処分の対象となるという原則を示すことによりまして、何よりも人命を尊重するという基本的な考え方を明らかにし、少年に対して自覚と自制を求めるということに相なります。  そのようなことで、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件を原則逆送の対象としたものであります。
  127. 木島日出夫

    ○木島委員 人命尊重もそのとおりだと思います。犯罪を犯した少年に自覚と自省を求めるのもそのとおりだと思います。問題は、その少年に本当に自覚と自省を求めるのに、刑事処分にして刑務所に送った方がいいのか、あるいは保護処分にして、少年院に送って徹底的に人格矯正をした方が本当の意味で少年の自省と自覚を促すことになるのか、そこが問われているんですよ。そういうことを、現行法は家庭裁判所が非常に厳格に、個別個別に判断しているわけですね。  ところが、原則逆送となりますと、その判断がほとんど厳密にやられなくなる。この事件被害者死亡事件だ、じゃ原則逆送だ、じゃ刑事事件にやってもらいましょうということになるんじゃないのでしょうか。それを、私どもは結局厳罰化につながるんじゃないかと指摘しているわけであります。  被害者すべてが少年厳罰を求めているものではありません。先日のこの委員会にお越しいただいた、西鉄バスジャック事件被害者の遺族の方も述べているとおりであります。国民の声も同じだと思うのです。厳罰、刑事処分では逆に規範意識も生まれない、再犯防止にも逆効果だという意見も非常に強く国民の中にもあるし、とりわけ裁判所の中、矯正の中、そういう現に少年保護、教育、矯正のために奮闘されている皆さんの中に多くあるということを指摘しておきたいと思うのです。現行制度のもとで家庭裁判所は、十六歳以上の少年に対しては、犯罪行為の重大性、もちろん死亡事件かどうか、少年の育成史、生活環境等、あらゆる面の調査をして、刑事処分がよいのか保護処分がよいのか、まさに個別的に厳密に判断していると思います。  そこで、提案者にお聞きします。家裁の判断が少年に甘過ぎる、そのような実証的な研究報告があるのでしょうか。
  128. 杉浦正健

    杉浦議員 先日おしかりを受けましたので具体的な事件については触れませんが、最近立て続けに起こっております、社会を震撼させるような少年の凶悪重大事件の処分の状況、殺人、強盗、強姦などの凶悪事犯における逆送率が低いという現実を見ますと、もちろん、先生がおっしゃるように少年が成長過程にあることを重視すべきであることは当然といたしましても、その自覚と自制を求める必要があるという観点から、少なくとも故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件におきましては、その重大性に照らし、刑事処分に付される割合がもっと高くてもしかるべきではないかと考えておる次第であります。
  129. 木島日出夫

    ○木島委員 だから、私の質問は、今答弁者は逆送率が低いとおっしゃいました、何を根拠にそういうことを言っておるのかということなんです。  私は手元に、最高裁判所から、一九九五年、平成七年から一九九九年、平成十一年までの、いわゆる重大事犯、傷害致死事件、殺人事件、強盗致死事件、この三種の犯罪についての年少少年、年中少年年長少年の三分野に分けた事件数、そして検察官送致、いわゆる刑事処分相当とする家裁の決定の数字を持ってきております。三種の犯罪を全部五年間ひっくるめますと、十六、十七の年中少年については、件数三百九十八件、検察官送致三十二件、八%です。十八、十九の年長少年については、三種の事件で五年間で三百三十七件、検察官送致九十五件、二八・二%です。年齢によってちゃんと裁判官は見ているということもわかりました。全部ひっくるめますと、七百三十五件に対して逆送が百二十七件、一七%。  何をもってこれが低いと。その根拠ですよ、それを聞いているんですよ。そういう実証的な研究はあるのか。単なる感情じゃだめなんです、これは。そこで聞いているんです。
  130. 杉浦正健

    杉浦議員 実証的研究があるかないかは存じませんが、今おっしゃられたような数字が高いと見るのか低いと見るのか、見解の相違だろうと思います。
  131. 木島日出夫

    ○木島委員 この根本的な原則を変えるわけでしょう、原則と例外を変えるわけでしょう、そういう重大な法案をあなた方は提案しているんですから、その提案を裏づけるだけの、こんな逆送率では低過ぎるという客観的な根拠が示されなければ、私は法案審査はまともにできない、見解の相違だなんという答弁でこの審理を終えるわけにいかないと思いますが、どうですか。
  132. 杉浦正健

    杉浦議員 殺人罪ですら二〇%から三〇%の逆送率という数字であります。私ども凶悪犯罪について問題にいたしております。  それと、これも再三申し上げておりますが、公開の法廷で対審構造で審理されるということによりまして、被害者の方々の感情が著しく治癒される、こういう面もございますし、また、五十五条で、審理の結果、保護処分相当の場合は家裁に移送することができるという規定もあるわけでございますので、そこのところがきちっとワークすれば、適正な処分が行えるものと思っております。
  133. 木島日出夫

    ○木島委員 とんでもない間違いの答弁でしょう。凶悪犯罪について論じているとおっしゃいましたが、とんでもないでしょう。十六歳以上の原則逆送は、凶悪犯罪についての条文じゃないでしょう。被害者死亡事件についての条文でしょう。凶悪犯罪といったら強盗も入るんですよ。しかし、十六歳以上原則逆送には強盗は入らないでしょう。強盗致死、被害者死亡事件でしょう。そういう基本的なことについてあいまいにして答弁するというのは、本当に私はおかしいと思うんです。
  134. 杉浦正健

    杉浦議員 十六歳を超えて、しかも故意の犯罪行為によって被害者を死に至らしめた犯罪について原則逆送を規定したのであって、それが重大な犯罪でないとおっしゃるお気持ちがわかりません。
  135. 木島日出夫

    ○木島委員 今まで法務省凶悪犯罪という概念として四つ挙げているんですよ。それは、被害者死亡事件だけじゃないんですよ、放火や強盗、強姦なんですよ。放火、強姦、強盗、被害者死亡事件じゃないでしょう。ところが、この十六歳以上原則逆送は、被害者死亡事件についてあなた方は提起してきたし、今私ここで論じているわけですから、きちっと概念を正確にして答弁を願いたいということを触れて、次の質問に移ります。  検察官が裁判所に送致するときに、本件は逆送相当という意見をつけて送致したのにもかかわらず、家庭裁判所はそれを認めないで保護処分にした、少年院送致にしたということで、それが甘いんだという論拠に使っている論もたくさんお見受けしましたが、私はそれは全然根拠がないと思います。  それは、検察官はまさに犯罪事実の捜査だけはしっかりやりますが、その一点で送致しているのであって、要保護性、その少年の矯正可能性、再犯の可能性、そういうまさに家庭裁判所のやるべきことについてほとんど捜査もしていないし、調査もしていないし、事実認識もないわけです。まさにそれをやっているのは家庭裁判所であり、調査官であり、それを徹底してやった結果として、やはりこの少年規範意識を植えつけるには刑事裁判じゃだめだ、刑務所では規範意識は生まれない、少年院で徹底的に人格矯正することこそが規範意識を生む道だということで、家庭裁判所は慎重審査の上、少年院送りをしているんじゃないでしょうか。  法務大臣にお聞きしますが、先ほど、規範意識少年に持ってもらうことが大事なんだと再三おっしゃいました。私もそれはそうだと思うんです。  そこで問題なのは、規範意識を本当に少年に持ってもらうために、今の刑事裁判と刑務所送りの方がいいのか、懲役刑にして働かせる方がいいのか、それとも少年院に送って、徹底的に二十四時間全人格教育をした方がいいのか、そこが問われているんですよ。  規範意識というのは、少年の内面の問題でしょう。心の問題でしょう。外から矯正できる問題じゃない。少年がみずからその犯罪を直視し、被害者の気持ちも聞き、ああ、自分は悪いことをやった、こんなことは二度とやっちゃいかぬ、真っ当な人間にならなきゃいかぬと本当に内面から感じるような処遇をしなければ規範意識は生まれないと思うんです。どうでしょうか。
  136. 保岡興治

    保岡国務大臣 私は、やはり少年一般に、重大な事件を起こしても、社会の一員として適切な処罰を受ける、けじめをつける、こういった風潮が希薄になって、本当に犯罪の重大性というものを認識していない、甘く見ているという傾向があるのも事実だと思います。また、そういうことについて世間一般危機感を持っているのも事実だと思います。  したがって、今度の少年法改正は、具体的な事案においては、先生が言われるように、いろいろ少年教育改善、更生ということに着目した十分な検討や判断があってしかるべきだと思いますし、そう運用されていくものと思いますが、しかし、一方で重大な犯罪を犯した場合には厳しい処分もあり得るという選択の幅をしっかり持つ、そういうことも今度の少年法改正の重要な柱になっているものと思料しております。
  137. 木島日出夫

    ○木島委員 質問に答えていないんですよ。  重大な犯罪を犯した、確かに重大です、被害者死亡です。何で突如としてああいう重大な事件を起こしたのか、なかなかわからない、少年の心に大きな傷があるんだろうというのが最近の専らの定説ですよ。本当にこれまで十四年、十五年この日本社会に生きてきて、そういう傷を負った少年の傷を取ってやるということのために、刑事裁判に送って懲役刑を付した方がいいのか、少年院で徹底的に二十四時間人格矯正した方がいいのか、どっちがいいと法務大臣は思っているんですか。
  138. 保岡興治

    保岡国務大臣 それはどちらがいいというような二者択一ではないと思います。  私は、やはり教育改善、更生という点について言えば、先生がおっしゃるような理念というものをしっかり踏まえて対応すべきだと思うし、一般予防や世の中、社会の一員としてのけじめをつけるべきだという規範意識を明確にするための法の対応というものも一方であると存じます。
  139. 木島日出夫

    ○木島委員 大きく見たら二者択一じゃありませんけれども、個々の裁判官がこの少年をどっちに送るかについてはまさに二者択一なんですよ。刑事処分で刑務所へ送るか、保護処分で少年院に送るか、まさにそのぎりぎりの選択を毎日毎日裁判官はやっているんです。調査官はやっているんです。その原則を、どちらにウエートを置くかが今度は法律によって根本から変えられようとしているんでしょう。だから、そこが大事だと言っているんです。  時間が迫っておりますから、次の質問に変えます。  原則逆送となってしまいますと、家庭裁判所が事実上トンネル化してしまうんじゃないかと懸念されます。本年の十月十八日、神戸の連続殺傷事件を担当した井垣裁判官が次のような警告を朝日新聞紙上でしています。「「故意の犯行で人を死亡させた十六歳以上の少年は原則逆送」となると、やがて裁判官は捜査記録を読んだだけで、十分な調査もさせずに逆送を決意するようになるだろう。凶悪事件の経験が減った調査官の実務能力は低下し、家裁は少年を更生させる力を失っていく」、こういう非常に重い指摘が現場からなされているんです。  こうした意見提案者はどう考えますか。
  140. 杉浦正健

    杉浦議員 原則逆送の規定が設けられた場合であっても、家庭裁判所の調査というのは大変大きな役割を果たす。罪質や犯行の動機、態様、犯行後の状況等の客観的要素ももちろんでありますが、いわゆる要保護性という、少年の性格、年齢、行状、環境等の事情をきめ細かく調査していただくという機能はいささかも変わるところではございません。そういった調査を踏まえまして、逆送すべきかどうかも検討されるわけであります。改正法案成立した暁におきましても、裁判所においては、法の趣旨を踏まえたしっかりした運用をしていただける、適切にやっていただけると期待しております。  なお、井垣判事の論文に触れられましたが、井垣判事は少年審判についての反省もしておられます。実務改革の提案もしておられます。「被害者の遺族に対する配慮がなかったことは事実であり、私自身大いに反省している。」とも申しておられるわけでございます。  原則逆送の制度が設けられることによりまして、私は、これも何回も申し上げておりますが、まず検察官、その第一線の一次捜査に当たる警察官がきちっとした捜査をした上で家裁に送ってもらえる、真実発見の事実認定がきちっとしてもらえる、こう思っておりますし、その上で適切な家裁の処分が行われる。そして原則逆送という制度によりまして、被害者の方々に公開の法廷で、一体自分の子たちがなぜ、どういう形で殺されるに至ったかも十分理解していただけるようになる、こういうふうに思っているところでございまして、それらのことを家庭裁判所が五十年の伝統に基づいて、新法の趣旨に従って適切に運用してくださるものと確信をいたしております。
  141. 木島日出夫

    ○木島委員 これで原則逆送の制度ができても家庭裁判所のしっかりした審査、審理は変わらないだろうとおっしゃいました。そうあってほしいと思うんです。それなら逆に、変わらないのなら、原則と例外をひっくり返してしまうこんな法案を出す根拠がなくなるじゃありませんか。現在だって、十六歳以上は家庭裁判所の審査によって刑務所送りもできれば少年院送りもできる、その判断をしているんですから。あなたの今の答弁だったら、この法案で原則と例外をひっくり返す理由がなくなると思いますよ。そういう意見は守屋克彦元家庭裁判所の裁判官が参考人としてここでも述べたということを指摘しておきます。  時間が迫っておりますから次の質問に移りますが、少年法の第一人者である国学院大学の沢登俊雄教授は、少年法適用年齢をどうすべきかは少年法運用実績を考慮して結論が得られる問題なのだと指摘をしております。私、再三言っているところであります。  少年法の基本的な目的である非行ある少年の性格の矯正及び環境の調整の成果、再犯率が非常に低いということも含めまして、現在の少年法運用の実績、成果についてどう評価しているのか、基本的な評価について提案者の考えをお聞かせください。
  142. 杉浦正健

    杉浦議員 戦後五十年、新しい少年法のもとで、家庭裁判所が青少年の非行防止に大きな役割を果たしていたことは十分認識いたしております。  ただ、このところの少年犯罪の低年齢化、特に十四歳、十五歳の少年の凶悪な犯罪もふえております。その背景には社会の変化があります。少年も変わってきているという実情があります。その時代を背景にした少年たちの変化に対応し切れていないのではないかというのが私ども議員立法でこれを提案させていただいた者の共通認識であることだけは申し上げさせていただきます。
  143. 木島日出夫

    ○木島委員 東条伸一郎元法務省矯正局長、これは矯正の最高責任者ですが、九七年の十二月九日、読売新聞でこう言っています。  再犯率が昨年、九六年は一九・七%と二割を切った。五人のうち四人が何とか再犯に走らないで生きているということになれば、矯正をやってよかったと言えるのではないか。少年は劇的に変わるものだという可塑性を信じるとすれば、もう少し今の少年法をやらせてほしい。  この矯正の現場の最高責任者の言葉は重いと思います。提出者はこの現場の、三年前でありますが、最高責任者の意見をどうお聞きしますか。
  144. 杉浦正健

    杉浦議員 矯正の現場の人たちは本当によく頑張っておられると思いますし、保護司、日野先生もそうですが、ボランティアの方々も非常によくやって成果を上げておられる。更生し、再犯率は世界の中でも胸を張っている状態であるということは認めない人はいないのじゃないか。私どもも認めておるところであります。  私どもが願って提案した趣旨は、少年のこういう状態からして、何とか少年たちがそういう凶悪犯罪に走らないように抑止したい、少年法改正だけでできるとは思いませんがという願いから出ておりまして、五十年続いた家庭裁判所運用をこの新しい時代に向かって変えていただきたいという願いからであります。
  145. 木島日出夫

    ○木島委員 時間ですから終わりますが、最近の少年犯罪の質が変わった、少年の質が変わったんじゃないかという指摘をされました。そのとおりだと思うのです。そこを私、一番憂えているところです。だからこそ、こういう少年を、刑事裁判じゃなくて少年院送致で徹底的に人格矯正が必要だと考えているわけなんです。  そこを本当に論じたかったのですが、最後に一つだけ、元法務省矯正局長の坂井一郎さんが「罪と罰」という雑誌、九八年十一月号に「現代の少年非行について」という短文を載せております。そして、そこでその問題について触れています。  最近の少年の、少年院からのいろいろな経験からして最大の特徴は、「現代の非行少年の特質として指摘されていることを集約すれば、「歪み」から「未熟」への変化として集約して表現できるのではないか、」未熟だということをまさに現場の最高責任者は集約しているのです。そして、「矯正における処遇現場の実感からは、「傾向」として、このように理解した方が少年の特質を理解し易い事例が増加しつつあるというのが、」こういう冊子を出したのですが、その結論だと言っています。  そして、これが大事なんです。「もしそうだとすれば、少年院教育の課題は、この未熟さを本人に自覚させ、成熟を促す各種の処遇を行うことにあることになるが、そのためには、当該少年にそれまでに欠落している各種の体験を追加体験させることが重要になってくる。」これが当該少年の内面化を伴わなければ、単に表面的な追随にとどまってはだめなんだということを言って、最後に結論としてこの方は、「少年院は、その処遇の豊富な実践を通じて、様々な技法を蓄積しており、私としては、これに十分対応できるものと確信している。」ここまで言い切っているのです。  まさに、こういう現代の少年の内面にかかわる特質、犯行の特質から説き起こして、だからこそ刑事裁判じゃだめなんだ、少年院で二十四時間人格矯正することこそが大事なんだと説き起こしていることを紹介し、質問を終えます。  まことに、論議がこれからというところで委員長が職権を発動して、審議をこれで封殺してしまったことに厳しく抗議をいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。
  146. 長勢甚遠

    長勢委員長 これにて原案及び両修正案に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  147. 長勢甚遠

    長勢委員長 これより原案及び両修正案を一括して討論に入ります。  討論の申し出がありますので、順次これを許します。横内正明君。
  148. 横内正明

    横内委員 私は、自由民主党、公明党及び保守党を代表いたしまして、ただいま議題となっております少年法等の一部を改正する法律案に賛成する立場から討論を行うものであります。  近時の少年犯罪の情勢を見ますと、殺人、強盗等の凶悪犯検挙人員についてここ数年増加の傾向が認められます上、特に最近においては、社会の耳目を引く凶悪重大事件が相次いでいる事態にかんがみ、与党三党から提出されている少年法改正法案は、切実な国民の声を踏まえた、まことに時宜を得たものであると考えます。  以下、少年法等の一部を改正する法律案に賛成する主な理由を申し上げます。  第一に、この改正案は、刑事処分可能年齢を刑法の刑事責任年齢に合わせて十四歳以上に引き下げ、また、犯行時十六歳以上の少年に係る故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件について原則として検察官に送致することとしておりますが、これらの措置は、少年に対して、罪を犯せば処罰されることがある旨を明示し、社会生活における責任を明らかにしてこれを自覚させるとともに、何物にもかえがたい人命を尊重するという基本的な考え方を明らかにし、少年に対して自覚と自制を求めるために有益であり、少年に社会生活上必要な最小限の規範意識を持たせることに資するものであると言えます。あわせて、保護者にもその責任を自覚させるための措置を盛り込んでおります。  第二に、本改正法案には、裁定合議制度の導入、少年審判への検察官関与、検察官の申し立てによる抗告受理制度、観護措置期間の延長、保護処分終了後における救済手続の整備が盛り込まれておりますところ、これらはいずれも、少年審判における事実認定の一層の適正化のため不可欠の法整備であると考えます。  第三に、少年事件被害者やその御遺族への配慮の充実を図ることも重要な課題となっておりますが、これにこたえるため、本改正法案は、家庭裁判所による少年審判の結果等を通知する制度のほか、被害者等申し出による意見聴取や被害者等による記録の閲覧、謄写の制度を盛り込んでいるところであります。  このように、本改正法案に盛り込まれた法整備は、非行のある少年の健全育成を図る観点からも、また、少年審判に対する国民の信頼を維持、強化する観点からも、いずれも極めて意義のあるものであり、私は、この改正法案の一日も早い成立を強く願うものであります。  以上をもちまして、私の賛成討論といたします。(拍手)
  149. 長勢甚遠

    長勢委員長 次に、藤島正之君。
  150. 藤島正之

    藤島委員 私は、自由党を代表いたしまして、ただいま議題となっております少年法等の一部を改正する法律案について、自由党修正案に賛成、民主党修正案に反対、原案について賛成の討論を行うものであります。  少年法改正問題は、平成五年一月の山形マット死事件において家裁と高裁の判断が食い違ったことにより、現行法による事実認定手続の適正化が最初の論点となりました。その後、神戸の児童連続殺傷事件や西鉄バスジャック事件等、少年凶悪犯罪が続発し、殺人などの重大な罪を犯した少年に対しては、自分の犯した罪の重さを認識させるべく、少年にも刑事責任を問うべきであるとの世論も高まってきたところでございます。  このような状況の中で、今国会で与党三党が議員立法少年法改正案を提出されました。今般の法案は、年齢区分の見直し、凶悪事件を犯した少年に対する処分のあり方の見直し、被害者への配慮並びに事実認定手続の適正化など、長らく指摘されてきた少年法問題点をある程度解決する内容となっており、それなりに国民の期待にもこたえ得るものであると考えております。  しかしながら、少年法適用年齢の引き下げが盛り込まれていないこと、凶悪重大事件において記事等の記載の禁止の例外規定を設けていないこと、及び審判への必要的検察官関与を認めていないことなど、本改正案はいまだ不十分なものであると言わざるを得ません。  しかし一方、少年法を速やかに改正することが国民的な要請であることから、次善の策として、与党案の範囲内でも少年法改正すべきであると考えているところでございます。ただいま申し上げた改正案の不十分な点につきましては、今後の運用を見守りながら、再度改正の提案をするつもりでございます。  最後に、本改正案が成立し、少年犯罪の抑止、少年の健全な育成、被害者側の権利の尊重、並びに事実認定の適正化が促進されることを強く期待申し上げ、私の討論といたします。(拍手)
  151. 長勢甚遠

    長勢委員長 次に、木島日出夫君。
  152. 木島日出夫

    ○木島委員 私は、日本共産党を代表して、与党提出少年法等の一部を改正する法律案に対して、反対の討論を行います。  本法案は、義務教育下にある十四歳、十五歳の少年に刑事処分の道を開くこと、十六歳以上の少年の重大犯罪を原則として検察官送致、刑事処分とすることとしておりますが、これは、非行ある少年の性格の矯正や環境の調整を図りながらその健全育成を達成するという少年法の基本的枠組み、基本理念の重大な後退であり、認めるわけにはいきません。  厳罰化が少年犯罪の防止に有効でないことは、アメリカの教訓でも明らかであります。我が国では、家庭裁判所少年院、鑑別所、更生保護あるいは教育、カウンセリングなどの仕事に携わる関係者努力により、非行少年再犯率はかなり低く抑えられており、現行少年法保護主義という基本理念はかなり機能していると言えます。  検察官の立ち会い、裁定合議制の導入、観護措置期間の延長など少年審判における犯罪事実認定手続をより厳正、適正化することについては、我が党も、重大事件で事実関係に疑義がある場合は必要であると考えます。しかし、このような条件のない与党案では、予断排除や証拠法則がない審判手続の中で、また、検察官への抗告受理の申し立て権の付与とも相まって、保護主義的構造が機能しなくなるおそれがあり、より慎重な限定が必要であります。  再審制度の導入は賛成であります。  被害者対策については、一歩前進であり、賛成であります。しかし、与党案による改正だけでは不十分であり、さらに、損害補償と被害者ケア対策の充実、加害少年との対面など、欧米諸国で進んでいる被害者対策を取り入れ、犯罪被害者基本法制定犯罪被害者等給付金支給法の抜本改正など、犯罪被害者対策を抜本的に構築しなければなりません。  以上述べてきましたように、与党案は、若干の改善を含んでいるとはいえ、厳罰主義の立場から、少年法保護主義の基本理念を改変するものであり、非行少年、未来を背負って立つ青少年の健全育成に禍根を残すことになると言わざるを得ず、反対であります。  なお、民主党修正案については、十四歳、十五歳の逆送に道を開き、十六歳以上についても、刑事処分、保護処分のどちらが原則であるか不明確であり、現行少年法保護主義の理念の後退につながりかねないので、反対といたします。  自由党修正案は、十八歳選挙権が前提となっておりませんので、賛成しかねます。  以上で反対討論を終わりますが、最後に、本改正法案が、参議院における公選法の非拘束名簿式導入の強行のもとで、野党が審議に入れない状況の中で、再三にわたる野党の抗議にもかかわらず強行されてきたこと、正常化後も、本格的な審議は緒についたばかりであり、参考人や関係者の皆さんからも慎重な審議が強く求められていたにもかかわらず、委員長の職権で質疑が打ち切られたことはまことに残念であります。  子供の未来と日本の将来にとって重大な少年法改正法案は、広い視野からの深い審議が必要であることを強く訴えて、反対討論といたします。(拍手)
  153. 長勢甚遠

    長勢委員長 次に、原陽子君。
  154. 原陽子

    ○原委員 社会民主党・市民連合を代表して、与党提出少年法等の一部を改正する法律案及び民主党提出修正案、自由党提出修正案、いずれも反対の立場から討論を行います。  まず最初に強調しておきたいのは、少年法改正立法事実が存在しないということです。  検察や警察の統計を見ても、少年による凶悪犯罪が激増している事実はなく、年少少年比率が目立って増加している事実もありません。少年犯罪の発生件数自体、昨年は一昨年より六・三%減少しています。凶悪犯罪についても、三十年前と比べて七割近く減っており、昨今急増しているとは言えないのです。少年犯罪凶悪化している、犯罪が低年齢化しているという今回の改正案の前提そのものに問題があり、戦後日本における長期的な犯罪減少傾向とその要因について何ら分析を行っていない現状において提出された本案は、最近起こった残虐な犯罪に便乗した世論の誘導以外の何物でもありません。  残虐な犯罪が続いているのは成人による犯罪も同様であり、犯罪傾向全体の問題です。少年法少年を甘やかしているために少年だけが凶悪化しているという思い込みは、現実を反映したものではありません。与党案のように安直に少年審判の手続をいじることによって少年犯罪が抑止できるとは考えられません。  今行わなくてはならないのは、罪を犯した少年被害者に犯したこと、被害者の苦しみを理解すること、そしてそれを犯した自分自身について徹底的に向き合い、心から内省することを可能にする手だてを整えるということではないでしょうか。一方で、犯罪を犯すに至った少年たちは、私たちの想像を絶するような悲惨な環境に身を置かれていたケースも多く、その環境を整えることも必要と思います。  よって、今必要とされるのは、少年自身の内省を支え、みずから立ち直る力を引き出すよう援助し、犯罪につながる環境の調整といったことをさらに丁寧に行うことであり、与党案に盛り込まれた刑事罰の適用年齢引き下げや特定犯罪の原則逆送化、検察官の関与の強化、裁定合議制度の導入などに対しては、いずれも全く現実を把握していない筋違いの対策と言わざるを得ず、どれも反対です。  被害者意見表明権など、被害者救済という点で評価できる面もありますが、現在提示されているいずれも現行少年法のもとで実現できるものばかりであり、大変不十分だと言わざるを得ません。  民主党提出修正案につきましては、与党案に比べ検察官の関与に慎重であるという面では評価できるものであり、その御努力には敬意を表するものですが、事実認定手続等に関してあいまいな規定が多く、十分に議論が重ねられたものとは認められません。  自由党提出修正案につきましても、少年法適用年齢を引き下げようとするものですが、十八歳、十九歳の少年に成人としての責任を求めるのであれば、選挙権など成人としての権利もまた付与されるべきであり、こちらも議論が煮詰まっているとは言えません。  民主党修正案、自由党修正案の両案は、以上の理由で賛成をすることはできません。  私ども社会民主党・市民連合の反対討論といたします。(拍手)
  155. 長勢甚遠

    長勢委員長 これにて討論は終局いたしました。     —————————————
  156. 長勢甚遠

    長勢委員長 これより採決に入ります。  麻生太郎君外五名提出少年法等の一部を改正する法律案及びこれに対する両修正案について採決いたします。  まず、藤島正之提出修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  157. 長勢甚遠

    長勢委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。  次に、佐々木秀典君外三名提出修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  158. 長勢甚遠

    長勢委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。  次に、原案について採決いたします。  原案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  159. 長勢甚遠

    長勢委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     —————————————
  160. 長勢甚遠

    長勢委員長 この際、ただいま議決いたしました本案に対し、太田誠一君外四名から、自由民主党、公明党、自由党、21世紀クラブ及び土屋品子君の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨説明を聴取いたします。藤島正之君。
  161. 藤島正之

    藤島委員 ただいま議題となりました附帯決議案について、提出者を代表いたしまして、案文を朗読し、趣旨説明といたします。     少年法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、本法の施行に当たっては、次の諸点について格段の努力をすべきである。  一 少年審判における事実認定手続及び検察官送致の在り方について、実務の運用を見ながら、今後とも検討を行うこと。  二 観護措置期間を更に延長できるものとすることの要否について、実務の運用を見ながら、引き続き検討を行うこと。  三 少年法適用年齢を二十歳に満たない者から十八歳に満たない者に引き下げることについて、時代の変遷、主要各国の現状、選挙権年齢等他法令に定めるその他の年齢区分との均衡を勘案しつつ、検討を行うこと。  四 悪質重大な少年事件で、社会的に正当な関心事であるものにつき、少年に係る記事等の掲載の禁止を定める少年法第六十一条に例外規定を設けることについて、司法判断等の動向をも踏まえ、検討を行うこと。  五 少年の健全育成及び非行防止のための施策並びに非行少年の更生保護など社会復帰のための施策を充実・強化すること。 以上であります。  何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
  162. 長勢甚遠

    長勢委員長 これにて趣旨説明は終わりました。  採決いたします。  太田誠一君外四名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  163. 長勢甚遠

    長勢委員長 起立多数。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。  この際、ただいまの附帯決議につきまして、法務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。保岡法務大臣
  164. 保岡興治

    保岡国務大臣 ただいま可決されました附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。     —————————————
  165. 長勢甚遠

    長勢委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  166. 長勢甚遠

    長勢委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  167. 長勢甚遠

    長勢委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時三十二分散会