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杉浦議員 お答え申し上げます。
原則逆送という
制度は、御承知のとおり、
廃案になりました
少年法改正案にはなかった重要な
部分でございます。これが
自民党内で取り上げられ、成案になり、三
党協議で現在のような形になったわけであります。
さまざまな
経緯がございましたが、故意の
犯罪行為によって死に至らしめた、例えば
殺人、強盗
殺人、強姦致死、傷害致死、監禁致死、まだほかにもあるかもしれませんが、そういう凶悪な
犯罪に結果として絞り込みましたが、原則逆送をきちっとやれば、そのほかの罪の類型においてもきちっと移送してくれるようになるのではないかという
考え方が
一つございます。
最初、
自民党案では恐喝も入っていました。名古屋で五千万円恐喝なんという
事件が出まして、恐喝も入れるべきだという
議論があったのですが、恐喝まで入れると、窃盗はどうかと、同じあれとしていろいろありまして、
自民党案では恐喝も入っておりましたが、三
党協議で絞り込もうということになったわけです。しかし、あのような五千万、凶悪ですから、ああいうような
事件も、故意の
犯罪行為によって
被害者を死に至らしめた
事件を原則的に逆送することによって、それにはない類型の
凶悪事件については移送されるようになるのではないかというふうに期待しております。
そもそも、なぜこういうことを持ち出したかといいますと、この五十年、
家庭裁判所が中心になって
運用してこられた
少年法、私は実に立派な成績を上げてきておられるとは思っております。評価はいたしておりますが、現在の
少年法の中にある逆送、現実にある
制度が、果たして十分に
国民の期待にこたえる形でなされてきたかどうか。時代の変化とともにきちっとやるべきところを怠ってきたのではないかという批判が
国民各界各層にある。
殺人事件にしても、逆送された例というのは、刑事局長に答弁させればわかりますが、少ないはずです。人を殺しておきながら刑事裁判にかけられない、おかしいじゃないかということがございます。
今度の佐賀の
バスジャック事件、十七歳の
少年ですが、逆送しませんでした。新法であれば当然、原則逆送ですから刑事裁判になったはずであります。審決の主文を取り寄せまして読みましたところ、新聞報道もありましたが、裁判官は
少年の
責任能力を認めておるんですね。
責任能力を認めながら逆送しない。非常に詳細に審理をした節があります。家系の遺伝因子を調べて、精神病の因子はないとか、精神病の
可能性はあるけれども現実には発病に至っていないとか、詳細に
認定しておりながら逆送していない。
我々
国民は、その審判に対して抗告できないんですね。審判がおかしいからといって高裁へは言っていけない。
検察官関与制度というものもそういうところからきておるわけです。私の地元でも多くの方から何ですかという御質問を受けるようなそういう扱いを、極悪な、凶悪な
事件について現実に
家裁がずっとやってきた。それではいけない、
家裁の
運用を変えてもらおうというのが大きな理由でございました。
それから、
被害者に対する
配慮もあります。
先ほど、
河村委員の質問に答えさせてもらいたかったのですが、
家裁の審理に立ち会いたいという
被害者の御要望、
被害者の会とかいろいろ、淳君の
お父さんも言っておられるのですが、それはもう重大な
犯罪なんですね。特に、
少年犯罪によって殺された方、
被害者からは強い要望があります。
原則逆送によって、要するに公開の裁判になる。普通の裁判になれば公開法廷です。
被害者は証人として呼ばれるかもしれない。傍聴もできる、呼ばれるかもしれない。
現行法でも記録の
閲覧、
謄写等、
可能性がないわけじゃない。原則逆送によって、そういうごくごく一部の
凶悪事件を公開法廷に持ち出すということは、
被害者を救済する、
被害者感情に沿うという
意味もあると思っております。罪を絞り込みましたが、それによって
家庭裁判所を中心とする司法システムの
事件への
対応が、今よりはもっともっと逆送をふやして、公開の法廷で
凶悪事件が裁かれるようになるということを期待しております。
なお一言付言いたしますと、
少年法五十五条で、刑事裁判の結果、
保護処分が相当と認める場合は、刑事裁判所は、
家裁へ移送してもいいという規定がございます。この規定をいろいろ聞いてみますと、ほとんどワークしていないんですね。ごくごく少数しか戻っていない。審理した結果、実刑を科するよりも
保護処分の方がいいというのも随分あるに違いない。そういう
事件は、そもそも
家裁は刑事裁判所へ送らない。
家裁の中だけで処理してしまう。
家裁はいわば密室の世界ですから、さまざまな事実
認定の問題とか
被害者の問題とかが起こるわけでありまして、これを契機にして、
少年事件がより広く公開の法廷で裁かれる、そしてより適正な
処分が行われることを期待しておる次第であります。