○岩國
委員 そうした樹医
制度の普及、そして当初の念願であります、庭の木、それから道端の木にも命があるということを、小さな子供たちにもわからせるように、ぜひ樹医さんの数がふえるように、県別に適切な指導をどんどんする、そのような
方向でやっていただきたいと思います。予算が少ないということでありますけれども、予算ばかり、お金ばかり使ってろくな仕事をしないよりは、小さな予算でも、いい仕事をやっていただければ、私はその方がいいと思います。
木を育てるという
観点から幾つか質問させていただきましたけれども、また、木の利用についても、農水省、林野庁、もっと真剣に取り組んでいただきたい。
例えば、静岡大学の農学部が昨年発表いたしました、木の建物の効用について、動物を使った実験で、これは昨年の
林業白書にも
紹介されておりますから繰り返しませんけれども、コンクリートや金属の建物に比べて、木の建物の中で住んだ動物は、生殖率、内臓の発達率、生存率、ずば抜けて高く、金属の箱の中ではその半分、コンクリートの建物では十分の一、これぐらいはっきりとした差が出ております。これからの少子化問題が大きな政治問題になっているときに、若い人ほど木づくりの、あるいは木のたくさん使われた建物の中で勉強させる、住まわせる、動物扱いするわけではありませんけれども、やはり
日本人の体にそういう
影響がはっきり出てくるわけですから、木の建物を推進する、木の校舎を推進する。
島根県出雲市では、小学校、中学校、幼稚園は全部木づくり、私は、二期六年間市長をしておりましたけれども、木の建物以外に判こを押したことはありませんでした。私は建設
委員会でもそういう質問をしたことがありますけれども、建物のことは建設
委員会に任せればいい、建設省に任せればいいというのではなくて、私は、農水省の方がもっと真剣にこうした木の建物を推進する、木の効用というものをもっと普及する、それは建設省の
役割ではなくて、むしろ農水省の
役割ではないか、そのように思います。
農政のあり方については、
農家の方が強い
期待と同時に不安も持っておられます。私は、また、市長時代の話で申しわけありませんけれども、いろいろな部長がかわって答弁することを許しませんでした。
農業の問題だけは市長が全部答えてきました。それは、
農家の人がそれだけ真剣に心配しておられたからです。
中にはおもしろい質問もあります。「市長さんは世界じゅうのおいしいものをいっぱい食べてこられたげなけれども、ウルグアイの米というのはそんなにうまいもんですか」、ウルグアイ、ウルグアイと新聞で毎日毎日書かれていますから、出雲の
人たちはウルグアイのお米が世界で一番おいしいお米だと思った、そんな質問を受けたこともありました。私も百姓をしておりましたけれども、出雲市では百姓ということを名刺にきちんと刷り込んで、堂々と胸を張って、誇りを持って仕事をしている、私はそれもうれしく思いました。
農業というのは、大地と水と気象、そして、その背景にある多種多様な生命体と自然のリズムに支えられた産業でありますから、工業などが持っているような、より速く、より多くというリズムとは全く合いません。それだけにより長期的な取り組みが必要だと思います。
その長期的な取り組みを支えるのは
農業集落だと思います。残念ながら、
日本の各地で
農業集落は今崩壊しつつあります。
一つのわかりやすい例を見れば、小学校の数がどんどん農村地帯から消えているということです。この二十年間に約一千の小学校がいわゆる
農業集落地帯から消えています。小学校が消える、子供が消える、だから親が消える、高齢者も消える、そして、畑が荒れ地になっていく。
私は
農業基本法が新しく制定されてその中で一番画期的だと思いましたのは、今までの
農業基本法は
農業だけのこと、新しい
農業基本法は農村のあり方についてまで踏み込んでおります。そうした
農業を支える農村、地域社会のあり方にまで
農政の視野が広がっていったということは大変いいことであると同時に、今までの農水省のお役人の
人たちがしっかりと視野を広げて、そういう問題意識を持ってそれに挑戦できるかどうか、そこに不安もあります。
そうした農村集落のあり方について、イギリスでもフランスでも、これは
日本と似たような
農業国です。そして、その国の隅々にまで行きましても、どこへ行っても小さな村には三つのものがあります。教会とパブ、つまり居酒屋、そして学校です。学校は必ず小さくてもある。
私は、
日本の文部省は間違いをしているのではないかと思います。そうした隅々にまで、山間地、中山間地
農業を大切にしてそこの定住を促進しようというときに、学校はちょっと小さくなると、すぐまとめてどんどん町の方へ町の方へと引っ張っていった。そして、子供たちがあぜ道を歩いて通学する風景がなくなります。おじいさんもおばあさんも、高齢者になっても畑の中で、田んぼの中で一生懸命仕事をしておられる。そのおじいさん、おばあさんの一番の励みは、お孫さんたちがおしゃべりをしながらそばの道を通って帰ってくる、通学する、あぜ道を通る、その姿は
一つの楽しみであり励みなんです。そういう風景がなくなってしまったら、
農業集落は次々と崩壊していきます。
こうした新しい
農業基本法の中で農村のあり方、
農業集落を守っていこうという姿勢があるならば、農水省から文部省の方に対しても今の学校統合の安易なやり方についても一言あってしかるべきだと私は思います。谷
大臣、御感想がおありでしたら、お願いいたします。