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2000-11-09 第150回国会 衆議院 内閣委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十二年十一月九日(木曜日)     午前八時三十分開議  出席委員    委員長 佐藤 静雄君    理事 大野 松茂君 理事 阪上 善秀君    理事 平沢 勝栄君 理事 持永 和見君    理事 荒井  聰君 理事 山元  勉君    理事 斉藤 鉄夫君 理事 塩田  晋君       岩倉 博文君    岩永 峯一君       岡下 信子君    熊谷 市雄君       自見庄三郎君    谷川 和穗君       谷田 武彦君    近岡理一郎君       根本  匠君    森  英介君       山本 明彦君    井上 和雄君       石毛えい子君    大畠 章宏君       今野  東君    中田  宏君       中村 哲治君    楢崎 欣弥君       山花 郁夫君    白保 台一君       松本 善明君    植田 至紀君       北村 誠吾君    粟屋 敏信君       徳田 虎雄君     …………………………………    内閣総理大臣       森  喜朗君    国務大臣         堺屋 太一君    内閣官房副長官      安倍 晋三君    沖縄開発政務次官     白保 台一君    郵政政務次官       佐田玄一郎君    政府参考人    (内閣総理大臣官房審議官    )            勝野 堅介君    政府参考人    (文部大臣官房審議官)  白川 哲久君    政府参考人    (厚生大臣官房障害保健福    祉部長)         今田 寛睦君    政府参考人    (通商産業省機械情報産業    局長)          太田信一郎君    内閣委員会専門員     新倉 紀一君     ————————————— 委員の異動 十一月九日  辞任         補欠選任   熊谷 市雄君     山本 明彦君   二田 孝治君     岩永 峯一君   森  英介君     砂田 圭佑君   井上 和雄君     中村 哲治君   石毛えい子君     大畠 章宏君   楢崎 欣弥君     今野  東君 同日  辞任         補欠選任   岩永 峯一君     二田 孝治君   砂田 圭佑君     森  英介君   山本 明彦君     熊谷 市雄君   大畠 章宏君     石毛えい子君   今野  東君     楢崎 欣弥君   中村 哲治君     井上 和雄君     ————————————— 十一月九日  非核法の制定に関する請願(土井たか子君紹介)(第九八一号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  政府参考人出頭要求に関する件  高度情報通信ネットワーク社会形成基本法案内閣提出第一四号)     午前八時三十分開議      ————◇—————
  2. 佐藤静雄

    佐藤委員長 これより会議を開きます。  内閣提出高度情報通信ネットワーク社会形成基本法案を議題といたします。  この際、お諮りいたします。  本案審査のため、本日、政府参考人として内閣総理大臣官房審議官勝野堅介君、文部大臣官房審議官白川哲久君、厚生大臣官房障害保健福祉部長今田寛睦君及び通商産業省機械情報産業局長太田信一郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 佐藤静雄

    佐藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  4. 佐藤静雄

    佐藤委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。荒井聰君。
  5. 荒井聰

    荒井(聰)委員 荒井聰でございます。  最後の御質問を、堺屋国務大臣議論を申し上げたいと思います。  さて、前回もお話ししたのですけれども、この政府の提案しているIT法案というのは、どうも急ぎ過ぎているなと、森政権の人気を浮揚させるという目的がおありなんでしょう。急遽担当大臣をかえたり、あるいは内容が十分煮詰まっているんだろうか。特に、この基本法というのは、この中に重点計画の概要もございますけれども、本来重点計画なるものが具体的に提示されていたり、あるいは関連法案、そういうものが具体的に提示されていて、基本法というものを審議する、論議するというのが本来ではないか。その意味では少し急ぎ過ぎたのではないかなという感じがいたします。  しかし、世の中ITというものがどんどん進んでいて、片一方では、民間企業ではもう猫もしゃくしもITだという感じになっていて、ある意味では遅きに失するところもあります。そういう意味で、ITの持っている本来的な意味、あるいは政府が取り組まなければならないことを明らかにしていくということも、またこれは遅きに失するところもあって、そのような意味で、おくれた部分について、あるいは誤解を与えそうな部分について、この際、しっかりと議論をしながら、この法案の成立を実現するということには意味のあることなんだろうというふうに思います。  そこで、世の中大変誤解を与えている点、あるいは明らかにしていかなければならない点というものを若干御質問したいと思ってございます。  第一に、前回大臣に私はお尋ねしたのですけれども日本ITがおくれているというのはそれなりの理由があったのではないか。単に政策がおくれたとか、あるいはそういう配慮が欠けたということではなくて、IT推進するための基盤部分あるいは社会的な基盤部分なり文化的な基盤部分というものが、アメリカ日本とでは相当違うのではないか、違ったのではないか。アメリカの場合には発展するそれだけの要素があったのではないか。例えば、この技術の基礎的な部分はペンタゴンのつくっていった軍事産業民間転用だと私は思うんですけれども、そういうものがもともとあって、しかも労働市場が、モビリティーが非常に高くて、創造性のある人たちと一般的な労働者部分とが明らかに分かれているという階層分化社会の中で、極めて効果的な技術だったのではないか。  それに対して、日本はどうもそういう状況とは違うのではないか。中間管理層が非常にしっかりしていて、日本社会あるいは会社文化、そういうものを支えていたのがこの中間管理層であったり、あるいは一般の働く労働者人たちについても非常に高いクオリティーを持っていて、その人たち創造性を発揮して、非常に高いクオリティーのものをつくり上げていった。それが日本生産性のある意味で非常にすぐれた点であったわけでありますけれども、そういう社会の中では、このITが本来的に目指しているものとはかなり様相が違っていたのではないだろうか。その意味で、日本ITが進まなかったという基本的な原理原則というものがそこにあったのではないかというふうに思うわけであります。  しかし、ITというのは世界的にこれだけ普及あるいは拡大をしつつありますから、日本もこのIT化の波の中で対応していかなければならないと思います。  その際に、このIT推進によってさまざまな面で社会的な摩擦が生ずるのではないか。これはアメリカ社会で起きた社会的摩擦よりもはるかに大きな規模で、ある意味では社会的な、文化的な根底のところまで揺さぶるような大きな摩擦なのではないかというふうに思うんですけれども大臣、そのあたりはいかがお考えでございましょうか。
  6. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 まさに委員おっしゃるとおりだと思います。  事の発端はアメリカ軍事技術転用であった、これもまた事実でございますけれども、それが一たん転用されますと、アメリカ北欧諸国などが急速に発達いたします。その背景には、やはり通信生活をする、例えば昔からカタログ販売が盛んであるというようなことと、それからもう一つ、やはり労働流動性が高かった社会というものがあったと思うんです。  それに比べますと、日本は、特に戦後社会になりまして、各職場の人間関係が非常に安定していて、フェース・ツー・フェースの、顔を見合って話をする、みんなで集まって会議をするというような顔と紙の世界が非常にしっかりしていた。そういうことが日本通信技術発想的に一歩おくれさせたというところがあったと思います。  したがって、これが入ってくると、日本社会、特に企業組織構造変化を与えるということは十分予想されることでございますが、逆に申しますと、今まで新しい技術が入ってきたときに、日本では従来の労働者勤労者、社員を再教育して使う。これはいろいろな新しい技術、例えば製鉄所でも、昔は金てこで線を引っ張っていた人がそのままコンピューターの圧延にかわったとか、あるいは、フリクションの時計をつくっていた人がそのまま勉強してクオーツの技術者になったとかいうようなことがございますので、日本では、一部にそういった変化もございますが、同時に、同じ人にITを学んでもらって、企業従業員を勤めていく、そういう面も出てくると思うんです。  だから、アメリカに比べてどっちが大きいかというとなかなか難しいのでございますけれども、やはり社会根底あるいは文化発想にかかわる大きな変化が生じるだろう。したがって、私たちも単なる技術変化ではなくして、これはIT革命あるいは知価革命だ、社会変革だ、こう認識しておりまして、それに十分これからも対応するような政策をその現象に応じてとっていきたいと考えております。
  7. 荒井聰

    荒井(聰)委員 今大臣のおっしゃったように、革命である、単なる技術的な革新というものを超えている、私もそう思います。  その革命なんですけれども革命というのは人間の生き方とかあるいは発想とか、そういうものも変えていく、それが革命だと思うんですけれども、このIT革命というのは基本的に二つのことを前提としているというか、あるいは大きな影響を持っていると私は思っております。  一つは、人間自立性とか創造性とか、あるいは人間情報を発信していくという能動的といいますか主体性といいますか、そういうものが極めて重要なファクターになっているということ。  もう一つは、社会全体として、自由な競争あるいは規制を緩和していく、この二つがやはりIT革命の場合には大きな前提になっているのではないか。そのあたり日本社会の中で果たしてそこまで成熟しているんだろうか。お上の言うことをそのまま聞いていく、あるいはなかなか規制緩和が図られていない。特に、今いろいろな形で政府規制緩和を図ろうとしているんですけれども、政治的なさまざまな圧力で規制緩和がなかなか進行しない。  こういう状況の中で、ITを進めていく基盤部分というものは、もちろん鶏と卵みたいな関係がございますから、どちらがどちらということも一概には言えないと思うんですけれども、私は、そこのところの発想の転換ということが果たして本当に日本人の中に根づいていくのかどうか。その点、大臣、どうお考えでございましょうか。
  8. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 確かに、長い間、明治以来日本官主導でやってきた。それぞれの人が情報を選び、商品を選び、生活を選び、そしてみずから主張を発信するということが少なかった。これは欧米の社会に比べて確かに言えるところだと思いますが、今急速に、やはり日本社会の中でも、情報選択商品選択、あるいは自分の運命をみずから決めていくという社会になりつつあるし、また、最近の若い人たちの流行を見ておりましても、服装にしても化粧にしても、あるいは発言、文章、パフォーマンスその他の中にも非常に自己表現が出てまいりました。  私は、これは、民主主義から見ても、それぞれの人が情報選択し、みずからの表現ができるのは大変いいことだと考えております。当然、政府規制緩和をして、そういうことを助成するといいますか拡大するように持っていくべきだ。ちょうどそういうときに、こういうITという一つ技術ネットワークができ、人々の期待している方向と一致する。もちろん、それによって、さまざま、この委員会でも議論されましたような影の部分があることは事実でございますから、これはこれで手当てしなければいけないんですけれども、大きく言うと、日本人が本当にみずから選び、みずから表現し、そして情報をできるだけ共有する社会に持っていく、これは急がねばならないことで、ここで一歩おくれると、日本人全体の表現力あるいは選択の習慣というのが世界におくれてしまうんじゃないか。  それで、ぜひこの法案を通していただくと同時に、ハード、ソフト、そしてコンテンツの創造というのをあわせて日本社会全体をかさ上げしていく、民主的な社会にしていくということが今大事な時期だと考えております。
  9. 荒井聰

    荒井(聰)委員 革命というのは、いつでも、成功するか失敗するか、その渦中にいる人たち大変心配なわけであります。  そこで、IT革命と言われている中で、よくわからない、あるいはこれに置いていかれるのではないか、そういう不安を持っている人たち日本社会の中のかなりの部分で存在しているということはまた事実だと思います。  これは、通産省アンダーセンコンサルティングに頼んだ「IT革命がもたらす雇用構造変化」という大部の調査書がここにございます。これによりますと、アメリカは、一九九一年にITが進行したときに、約百十五万人の失業者が発生をしております。日本も、IT推進によって、一時的には百六十三万人ぐらいの雇用不安というか失業状態が発生するのではないかというのが、このアンダーセンコンサルティング調査結果なんですけれども、これについて、通産省、少し御説明願えますでしょうか。
  10. 太田信一郎

    太田政府参考人 お答えいたします。  今、荒井委員の御指摘の調査は、私どもアンダーセンと共同で調査を行い、昨年の九月に発表をさせていただいたものでございます。この調査では、情報化により、今後五年間、ですから、二〇〇三年から二〇〇四年ぐらいまでの間に約百六十三万人の雇用が減っていくのではないか。  これはどういうことかと申しますと、企業内の情報化ということで、やはり事務効率化が相当図られると、今まで報告書をつくっているとか、いろいろな資料を作成している人も、それほどは総体的に要らなくなるというような意味で、過剰雇用の削減。それから、例えば電子商取引が進みますと、卸とか小売に頼る割合が今までよりは減っていくだろう。余りいい言葉ではございませんが、中抜きというようなことも言われております。そういうことで、五年間で百六十三万人の雇用マイナス。  ただ一方、情報通信産業の成長、これは当然のことながら、半導体を含めていろいろな形で産業が出てまいります。ITを活用した新製品、サービス拡大もございます。五年間で二百四十九万人の雇用が創出される。差し引き八十六万人の雇用が創出される。それ以外の、情報化以外の部分で、これはどうしても構造変化ということでマイナスになりますが、私どもとしては、情報化の効果により、五年後には、それほど大きな数字ではございませんけれどもトータルプラスになる。  今後の国としてやるべきことは、こういう新しい産業をさらに加速的に起こしていくことと、あわせて、中小企業等どうしても対応できないところに対して人材育成とか、先ほどIT担当大臣言われましたように、社会人の再教育ということも必要か、関係省庁力を合わせてやっていかなくちゃいかぬと思っております。
  11. 荒井聰

    荒井(聰)委員 そのとおりなんですね。一時的に相当な失業状態が発生するのではないか。特に、その失業状態階層というのは、私は、中間管理職のところに多く発生するのではないか。年齢でいきますと、四十代後半から五十代にかけてというところが雇用不安の状況になるのではないか。そこについて、恐らく再教育あるいは再研修といいますか、政策的な訓練ということをやっていかざるを得ないんだと思うんです。  しかし一方、その人たちが、これから発生する新しい企業群産業群、そういうところで吸収されるかというと、私はそうではないと思うんですね。これからのIT産業を担っていく新しい産業群というのは、もっと違う人たちが担っていくのであって、現在の企業中間管理層人たちが、再訓練したから直接そこへ移行できる、そういうものではないんだと思うんです。  そうすると、そこで職を失いそうなおそれのある人たちについて、そこを吸収できる受け皿というものを産業的につくっていく必要があるのではないか。その点、大臣もしくは通商産業省の方、お答えいただければと思います。
  12. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 確かに、おっしゃるように、ITを訓練すればすぐその会社ITを使った中間管理職あるいは高級管理職が務まるか、こう問われますと、そういう人もいるでしょうけれども、全員というわけにいかない、これは事実だと思います。したがいまして、新しい産業育成ということも非常に重要になってまいります。  アメリカの例を見ますと、ハイテク産業がどんどんふえている、これは事実でございますけれども、新たに生まれている一三%、一四%の創業率の中で結構大きいのは、個人サービス中小企業でございます。それから、企業サービス会社もおります。その中には、例えば介護でございますとか、あるいは男女共働きの御家庭のケータリングとかガーデニングとか、町の産業といいますか、そういうものが非常に発達しております。  私たちも、これから高齢化が進むにつれて、一方では高齢者女性方々にも働いてもらう。そうなりますと、その高齢者共働きの御家庭のお世話をするような産業というのが結構大きなウエートを持ってくるんじゃないか。そういう分野でもまた中高年の方々に働く場があり、そして、それにさまざまな資材や情報を供給するような産業も生まれてくる。だから、ITの中で全部が解決するということではございませんで、そういった日本全体の社会的な変革考えながらやっていかなきゃならないと思っております。
  13. 荒井聰

    荒井(聰)委員 今大臣がおっしゃったのは、まさしくそのとおりだと思うんですね。  私は、この技術というのはアメリカ発でありますけれども、本当に日本に定着するのかどうかというのはまだわからないところがあるのではないか。  今、危険な部分というか、影の部分をいろいろ御質問させていただいたんですけれどもITというものを積極的に活用して日本社会を変えていく、その手段として使っていくためには、日本型のIT化日本型のIT文化IT社会というものの構築が大事だと思うんです。その構想を打ち出すことこそ政府の役割だと思うんですね。  私は、今提案されている法案の中では、そのあたり、まだまだ十分ではないような気がするんです。日本型のIT化あるいは日本型IT文化というものを、今大臣高齢化の話でありますとかあるいは共働きの方の話をされておりましたけれども、今日本が抱えている大きな課題、その課題にどうこのITで対応していくのかということが大きな課題であり、またそれが日本型IT社会をつくるキーワードだと思うんですね。  その具体的な対策、政策というものを、本来はこの法案審議の際に、関連法案でありますとかあるいは重点政策というものがその部分で出てくるのが私は本当のような気がするのですけれども、そこで、何か具体的なお考えがあれば、ぜひお聞かせ願えればと思うんです。
  14. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 まさにその点を今後、高度情報社会ネットワークをつくる戦略本部総理を頭といたしました戦略本部で練っていかなきゃいけない重点政策だろうと考えております。  どんなことが想像できるかと言われますと、これは、教育の問題から雇用の問題あるいは人口構造の問題まで、非常にたくさんの問題が含まれております。IT一つ道具でございますけれども、その道具がもたらす社会的変革というのは、これが普及すればするほど大きく変わってまいります。  今、十年先どうなるかというのはだれにもわからないところがございますが、日本的という意味で言えることの一つは、まず第一に人間関係。この人間関係に、ある種の日本的伝統といいますか、日本的精神といいますか、そういうものが含まれていなきゃいけないだろう。こういうものを維持しながらITを入れていく。古い言葉で言えば、和魂洋才といいますか、そういった感覚が必要なんではないかと思っております。  そのほか、日本アメリカ以上に高齢化が進む、したがって、女性労働力あるいは高齢者の就業をいかに維持していくかという問題、あるいは、各企業社会が今まで余りにも終身雇用で固まってきたのをいかに変えていくか、それを摩擦なくやっていくかという問題、さまざまな問題がほとんど全部の分野に広がってくる。  そういうことを用心深く考えながら、第一期、第二期と変革して、そして日本独特の、日本的な伝統にのっとった、日本的よさのあるIT社会をつくっていく、それがこれからの実施の段階での大変重要なところだと思っております。
  15. 荒井聰

    荒井(聰)委員 IT化というのは、使い方によっては弱者に対して大変強力な武器になるというふうに思います。  アメリカの場合なんですけれども、耳の聞こえない人たちのために、テレビの中に字幕スーパーを入れるチップを入れるようなことが法制化されているという話がございまして、これはワンチップ二十五セントなんだそうであります。これは、必ず入れるようにという法制化がされているために大量生産できて安いんだと思うんですね。これが、日本が耳の聞こえない人のためのテレビをつくる、あるいはそういうITをつくるということになると、恐らく、前回参考人の方からもお話がございましたけれども、百万円とか五十万円とか非常に高く、開発費から何から全部そこにオンされますから、高くなるわけでございますね。  こういう弱者に対するIT化を進めていく、それを制度化していくことによって相当なコストダウンが図られていって、使いやすい、まさしく弱者に優しい日本というのは昔から日本伝統的なものでありましたから、そういうものを本当はこのIT基本法案の中でも盛り込むべきだったのではないか、そういうふうに私は思います。  ところで、このITを進めていくために、戦略本部というのが基本法の中に出てございます。私は、前回も少し御質問をさせていただきましたけれども日本的なシステムでいきますと、いろいろな計画をただホチキスでつなぎ合わせる、あるいはどこかで、各省庁で行われているものをそのまま寄せ集めるということになりがちなんではないか。  組織というのは本当に、予算と、あるいは組織をつかさどる人事権をしっかり持つような事務局体制でなければ、強力なIT推進というものは図れないのではないか、そういうふうに私は思うんですけれども大臣の御所見はいかがでしょうか。
  16. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 この点につきましては二度、三度申し上げておりますけれどもITに関する問題というのは、全省庁にまたがるような重要かつ広範な問題になります。したがいまして、一つの省をつくるというような形よりも、やはり総理大臣自身主導権を持って、この本部で、ホチキスではなくして、みずから発案し、調整するということが必要だろうと思います。  その中で、今の人事権の問題ですけれども総理大臣もしくはそれを補佐する担当大臣などが適切な人事をやっていくというのが必要だろうとは思いますが、私たち考え方では、この変化の激しい時代に、固定的な権限あるいは人事権、それに伴ってさまざまな権限を持たすよりも、総理大臣がこの変化に対応しながら全官庁を監督し、指導していく、この体制が最善だと考えております。
  17. 荒井聰

    荒井(聰)委員 今の大臣の御答弁なんですけれども、私はかなりいろいろなことをその点について経験してございまして、日本の場合には各省庁の力が強い、省の中でも局ごと縦割りぐらいの権限になっていて、非常に強い権限争いが行われていて、結果的にはこういう寄せ集め省庁というのは強いリーダーシップが発揮できないという実例を何度も見てございます。恐らく堺屋長官も、経済企画庁の中で、各省庁の調整をするという中でそれを味わうことも多いのではないかと思います。そういうものを反省の材料にしながら、ぜひ強いリーダーシップを発揮できるような体制を構築していただけるようにお願いいたします。  ところで、最後に郵政省の方、来ていただいていると思うんですけれどもITを進める上でどうしても基本的なものというのは、アメリカと特に違う、おくれをとっているという部分通信と放送の融合でありますとか、電気通信事業の中の競争原理の大幅な導入とか、そういう分野について大変おくれているような気がいたします。  そこで、この重点計画の中でこのあたりをどこまで具体的に盛り込めるのか。これはNTTの問題でありますとか、あるいは放送事業と電話事業との関係でございますとか、難しい問題をたくさん抱えているんだと思うんですけれども、ここを具体的な計画として御提案いただかないと、ITをどこまで具体的に進めていくのかというメルクマールにならないような気がするんですけれども、郵政省、いかがでございましょうか。
  18. 佐田玄一郎

    ○佐田政務次官 先生が仰せのとおりでありまして、今後ITを進展させるためにも規制緩和等を積極的に進めていかなくてはいけない、かように思っております。  特に、今回まとめられました経済対策、いわゆる日本新生のための新発展政策では、IT革命の飛躍的推進が重要四分野一つと位置づけられるなど、情報通信が対策の根幹をなす重点項目となっているところでありまして、郵政省関係としましては、特に補正予算にかかわる政策、特に今回は地域間格差の是正のための地域イントラネットの拡充、こういう点を中心に要求をさせていただいております。  また、今先生が御指摘ありました通信と放送の融合の進展に伴う諸課題への対応、または、規制緩和にもかかわりますけれども、電気通信事業における競争政策のあり方等の制度改革についての検討が盛り込まれているところでありまして、特に、具体的に申し上げますと、通信と放送の融合の進展に伴う諸課題への対応につきましては、放送に用いるハードの利用をより柔軟にし、ソフト、ハード分離を一層円滑に進める制度の整備等について検討しているところであります。  もっと具体的に申し上げますと、要するにハードの部分通信・放送の壁をなくしていこう、こういうことを規制緩和の一部として今進めておるところであります。  また、電気通信事業における競争政策のあり方につきましては、本年七月、電気通信審議会に諮問を行ったところであり、速やかに措置すべき事項につき、本年度中にも一部答申をいただければ、これは臨機に法改正を含めた所要の措置を講じていきたい、かように思っております。
  19. 荒井聰

    荒井(聰)委員 ITを進めていくためには、これから地域間格差をなくしていく、あるいは人による技術格差をなくしていくということも大事だと思うのですね。そのための基盤というので、恐らく光ケーブルとかそういうものを一生懸命やっているのだと思うのですけれども、しかし、それは経済原則にのっとりますから、なかなか引けないところもあるでしょう。そういう場合には、無線ですとか、あるいは通信というものの効果的な使い方というのが求められてくると思うのです。  今度の思いやり予算で三十数億ですか、削減をしたということを政府は実績として述べられていますけれども、私は、そのような思いやり予算よりも、むしろ、今アメリカ軍が持っている電波帯を日本に返してくれということを交渉する方が、日本の資源を有効に使うという意味でははるかに大きな意味があると思います。  時間が来てしまいましたけれども、ぜひ大臣には、単なる森総理のパフォーマンスに終わるのではなくて、この法案が本当に実効性のあるような形として今後展開していくために、雇用の不安を抱いている人たちに対して十分な対策を練る、あるいは、日本型のIT化というものを、弱者に優しいIT化といったようなものをぜひ具体的に進めていく、あるいはこれに必要な規制緩和をぜひ図っていく、そういうようなことを要望いたしまして、私の質問を終わらせていただきます。  どうもありがとうございました。
  20. 佐藤静雄

    佐藤委員長 塩田晋君。
  21. 塩田晋

    ○塩田委員 堺屋大臣にお尋ねいたします。  デジタルデバイドの問題でございますが、地域間の格差の是正をどのように考えておられるかということをまず最初にお聞きしたいと思います。  いわゆるITのエクスチェンジ、接続拠点の問題でございます。これは民間サイドでございますから、政府がどの程度タッチできるかは問題でございますけれども、東京と大阪に拠点をというお話も進んでおるようでございますが、それがなお一層地域間の問題としては東京に一極集中するのではないか、このように考えられるのでございますが、その見通しと対策をどう考えておられるか、お伺いいたします。
  22. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 ただいま委員の御指摘いただきました問題は日本として大変重要な問題でございまして、現在のところ、結節点が東京、大阪に集中しておりますが、さらにそれが東京に集中する。  その意味は幾つかございまして、特に、情報の発信の方で見ますと東京に集中する仕組みができておりますし、これまでの政府政策も大体東京一極集中、情報発信の方は東京一極集中、そして日本全国の情報格差をなくするというのは、東京からのニュースの情報の受信をするという格好になってまいりました。これは、私は地域分散論者といたしまして、ゆゆしきことだと考えております。  そのために、できるだけ日本じゅうどこからでも情報発信のできるようなハードウエアをつくると同時に、そのコンテンツをつくるような、そういう人材の育成組織の養成ということが必要だろうと考えております。  ことしの暮れから行いますインターネット博覧会、インパクにおきましても、東京都を除く全道府県、主要都市などに出展をいただき、地方の企業あるいはNPOにも大量に出展をいただいておりますのもそういう趣旨からのことでございまして、やはり全国各地からすぐれた才能の人がすぐれたコンテンツを持って情報発信をする習慣、そういう組織と人材と習慣が必要だと考えています。委員御指摘のとおりでございまして、今後ともその点は十分研究していかなければならないところだと思っております。
  23. 塩田晋

    ○塩田委員 発信については今言われたとおりだと思いますが、受信の地域格差是正ということでは、農山村、漁村まで満遍なく、日本国じゅうこれが格差がなく受信できるようにということが必要だと思うんです。そのためには、いわゆる公共施設、例えば共同の鉄塔をつくるとか、また光ファイバー等につきましてもやはり全国じゅう満遍なく行き渡るような、そういう設備投資が必要だと思いますが、これが今見ておりますと、各省庁縦割りで競争的に、この際とばかりに公共事業予算をとってそれに対応しようという動きがあるやに見受けられますが、この点はいかに調整をされますか、お伺いいたします。
  24. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 地域間の受信の方について申し上げますと、郵政省を中心にいたしまして、電波関係の不良地域、携帯電話が通じないところ、よく電波の届かないところにいるようですという電話の応答がございますけれども、そういった不利益地域を解消するために鉄塔を建てております。この地域格差の是正のために、毎年幾つかずつ、国が一、地元が一、市町村が一、県が一というような費用で鉄塔を建てておりますが、さらに山ひだが細かくなってまいりますと、一本の鉄塔で伝わる地域が非常に小さいものですから、運営費の点でも支障を来すというようなことがございまして、非常に力を入れてやらなきゃならないと思っております。  また、地域イントラネット整備、これも郵政省の仕事といたしまして、地域の教育、行政、福祉、医療、防災等のために、地域のLAN、高速LAN、イントラネットを行っております。  それから、農水省の方でも、田園地域マルチメディアモデル事業というのを行っておりまして、これは主としてCATVを核として大容量のものをつくっております。  そのほか、自治体自身がおやりになっているものがございます。決してこれはばらまきでやっているわけではございませんで、郵政省関係では主として電波関係とこのイントラネット、それから農水省では田園地区のCATV、そして自治体が自主的にやっておられるという形でございまして、よく言われる、一部のマスコミに伝わっておりますような、ITと名をつければ何でもできるんだというようなことは厳に戒めて、この問題は明確に政策的な地域格差をなくすという点で現在のところ進行しております。  むしろ、日本の国というのは山ひだが多くて人口が分散している、大きく見れば集中してるのですが、谷間谷間に集落がございましてなかなかそこに届かないという問題がございまして、私もこの職につきましてから、多くの人々と話し合って、今大変苦労しているところでございます。  ぜひ、これは全国どこでも無線の携帯電話、あるいは無線を利用したインターネットが通じるようにしなければならないと思っております。
  25. 塩田晋

    ○塩田委員 次に、年齢間の格差解消について、どのような対策また見通しがございますか。第二世代の携帯電話あるいは第三世代、第四までというせんだっての参考人の意見もありましたが、どういう段階に今来ているか、お伺いいたします。
  26. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 高齢者の問題でございますけれども、やはりインターネット、その他新しい機器、特にキーボードに対しまして、日本人はタイプを打つ習慣を持っておりませんでしたので、中高年以上の方はなかなか抵抗感があるというので、普及しにくいところがございます。  しかし最近は、携帯電話クラスと言うとちょっと語弊があるかもしれませんが、携帯電話の一からゼロまでで通用するものは非常に高齢者の間にも普及しております。また、あいうえお順に並んだ文字盤を使うとかさまざまな形で、メーカーの方でもそういった工夫がなされております。  各省庁高齢者あるいは心身に障害のある方々のためにいろいろなテーマをとっておりまして、情報バリアフリー対策を各省ともとっております。読みますと長いものですから、そういう一覧表もできておりますので、もし必要でございますれば、またお届けに上がります。
  27. 塩田晋

    ○塩田委員 身体等にハンディキャップのある方々についてのバリアフリーは、どのような対策を考えておられますか。
  28. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 身体に障害のある方々もいろいろございまして、各省それぞれ努力をしているところでございます。  例えば、目の不自由な方のために音声転換ソフト対応のホームページを整備するとか、あるいは逆に、聴覚の不便な方にはできるだけ放送で手話をつけ、文字が出るようにするというようなこともやっております。これは厚生省が行っている機器整備の研究開発であります。また、通産省では、高齢者、身体障害者向けのIT開発等を行っておりますし、郵政省では、身体障害者向けの通信・放送等の提供も行っております。  大きく分けますと、まず機器の開発で、身体にそれぞれ障害のある方に向けた機器を開発し、普及させようということが一つでございます。もう一つは、そのための技術を開発し、ソフト分野の普及をしようということでございます。  今度の対策の中では、特にこういったものを重点的に行いまして、身体に障害のある方々IT社会に格差なく参加していただくというように考えていきたいと思っております。千差万別でございますので、各省、例えば法務省が点字ファイルのダウンロードサービスをしておりますとか、あるいは、労働関係で心身に障害ある人の職業訓練を行っておりますとか、各分野で最大限の努力をしておりますが、これをさらに統一的に一斉に戦略本部で取りまとめて、全体を漏れなくやっていきたいと考えております。
  29. 塩田晋

    ○塩田委員 最後にまとめて二問お伺いいたします。  一つは、今回提案されております基本法案の一番いいところと思いますのは、原則が民間主導であるということをうたってございます。これは非常に結構なことだと思います。自由競争の中で民間活力を引き出し、そしてITの環境を活性化する、ひいては日本経済を活性化するということをねらうんだという点は、非常に多とすべきところでございます。国は公正な競争というものを促進する環境の整備をするんだということだと思うのでございます。  そこで、どのように民間の活力を引き出し、活性化するための方策をやっておられるのか。実際やっておられるところは、今もお話いろいろありましたが、公共投資、それから自治体等におきましても研修会、講習会というものを自治体の側から講座を開いたり研修の機会を設ける。こういった、民間主導といいながら、実際は、予算面に出てくるのは官主導あるいは公共団体主導というような面が見受けられるわけでございますが、この点はどのようにお考えになっておられますか、お伺いしたいのが第一点です。  第二点は、今日日本ITの水準が世界各国に対して、またアジアですら非常におくれておるということは、共通認識であったと思うのです。これを五年以内に世界のトップ、あるいはアジアにおいてはリーディングカントリーにするんだ、こういう意気込み、これは非常に結構だと思うのですが、やはり、なぜ今日おくれたかという大きな原因の一つは料金。これはどなたも指摘されておりますが、確かに料金が高過ぎて、民間で競争する場合も非常な支障を来しておったということが言えるわけでございますが、料金の問題、受信料金、発信料金を含めまして、どのように、どこまで持っていけるか。早い時期からNTTは三分の一の料金にできるんだということを言われながら、なかなかこれに取り組まなかった。そして、外国から言われてやっと腰を上げて、やっと二分の一ぐらいのところまでいくかなという見通しになってきたようにも思うのですが、実際、これについて堺屋長官はどのようにお考えになり、どのような対策をしようとしておられますか。  以上、二点についてお伺いいたします。
  30. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 まず第一に、民間主導の政策ということについて御説明させていただきます。  今回の法案におきましても、民間主導を原則として、国は公正な競争を促進するという立場にあります。したがって、できるだけ多くの新規参入者が楽に入れるように、管路の設定の開放というようなことも積極的に進めていきたい。具体的に申しますと、電柱でありますとか、下水道の管でありますとか、そういったところに光ファイバーを引きたいという業者が出てまいりましたら、これを積極的に認めていく。また、現在優位な立場にあります事業者、これは多くの場合NTTであるのでございますけれども、そういった管路も線路もできるだけ合理的な価格で競争的に使えるようにしていきたい、そういうことも考えております。  そういった民間の競争条件を整える一方、国といたしましては、先ほど委員の御指摘のありました不利益地域でございますとか、あるいは公共施設、学校でございますとか図書館でございますとか、公共施設へのラストワンマイルといいますか、引き込み線を整える。そして、特に技術開発の面では国は先導的な役割を果たす必要があるのではないか、こう考えております。  そういう意味で、民間主導ということを守りながら、国が自由なる競争条件を整え、技術を開発し、デジタルデバイドを解消し、またセキュリティーの面で守っていく、そういう立場を堅持していきたいと思っております。  第二に、料金の問題でございますが、これも競争政策と大変関係がございまして、日本が立ちおくれた一つの理由は、電話線を前提といたしまして、電話で合理的なシステムをつくったら、今度は高速大容量になりますと甚だ高価につくというような条件が出てまいりました。こういうのも、やはりどんどん競争がございますと、また新しい価格、新しいサービスが生まれてくる、こう考えております。  それで、既にさまざまな点から改善をいたしまして今料金がかなり下がってきております。特に、放送と通信の融合、あるいは高速大容量の専用線、そういった面では次々と新しいサービス、新しい料金が打ち出されておりまして、東京、大阪等ではかなり低料金でインターネットが使えるようなケースも出てまいりました。できるだけこういうことが大いに進むようにいたしまして、競争を確保しながら料金を低廉化し、使いやすくしていきたい。  特に、無制限なつなぎっ放しの料金というのも、電話の場合は一分何ぼ、こういう発想から来ましたけれども、今度はつなぎっ放しの料金というものを引き下げる方向にしていきたいと考えております。これも、競争が進む、それから需要がふえる、さまざまな点から非常な勢いでこの五年間には進むだろう、一年のうちにもかなり進むんじゃないか、そういう期待を持っております。
  31. 塩田晋

    ○塩田委員 ありがとうございました。  終わります。
  32. 佐藤静雄

    佐藤委員長 松本善明君。
  33. 松本善明

    ○松本(善)委員 IT基本法、きょうにも採決という日程になっておりますが、野党四党の要求した公聴会の要求も与党は受け入れない、それから修正も本当に部分的で、基本法と言うには私は値しないというふうにも思います。  最初に堺屋長官に伺いたいと思いますのは、IT革命とかIT基本法と言っていながら、やはり国民的な論議は非常に不十分。長官は御存じかどうかわかりませんが、財界からも批判が出ています。奥田日経連会長が「論争東洋経済」で「「ITは経済に計り知れない恩恵をもたらすから、何をおいても推進すべきである」という立場から議論をスタートするのではなく、まずはこれがどのような意味やインパクトを持つものかを冷静に検討すべきだ」、私はこれはやはり一つの見識だと思いました。  やはり国会で議論をし、時間をかけて、そして国民的な論議の中で、IT社会についてどういうふうに我が国は臨むべきか、そういう論議は極めて不十分。長官はこの奥田日経連会長の見解についてどう思いますか。
  34. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 奥田日経連会長は、私どものインターネット博覧会、インパクの懇話会の座長もしていただいておりまして、この件につきましても話し合うことが甚だ多いのでございますけれども、奥田会長の御真意は、インターネットを中心といたしましたIT社会推進しなきゃいけないけれども、そこに生じる社会的問題というのは非常に広範にわたるから、そういったことも目配りをしながら進めろという趣旨だと思います。  私どもが一緒に懇話会の座長としてお願いしておりますインターネット博覧会でも、実に多様なものが出てきておりまして、奥田座長も大変この点は頼もしく思っているとおっしゃっておられたんですが、あらゆる地域からあらゆる情報発信が生まれてきているんですね。そういったものがどんな状況を生み出すか、今のところ明確にこれがこうだということばかりは言えませんけれども、とにかく、ITを進めることによって世界におくれない文明、社会に入っていく。その文化、文明の変化というものがいろいろな影響を与えるけれども、それを立ちどまって先に観察をしてから進めるのじゃなしに、やはり歩きながら、走りながら、技術変化社会変化を実態的に研究しながら常に予防、防止、影の部分を取り除く、そういう用心深いといいますか、目配りのきいた政策が必要だ、そういう御趣旨だと思います。必ずしもすべての予測をしてから動くというのでは、今の世の中で国際的にも立ちおくれていくんじゃないかと思っております。
  35. 松本善明

    ○松本(善)委員 ITそのものを否定するなんというのは、野党でもどこもありません。そういう意味では、奥田さんと程度は違うかもしれぬけれども、同じですよ。国会という最もよく議論せにゃいかぬところでこういう状態だ。  私は偏っていると思いますのは、やはりITを手段とした産業の新生、産業の振興、ここに偏っている。国民的なものにしようとするあれがやはりないんだと思います。デジタルデバイドだとかデジタルリストラ、デジタル不況というようなことも指摘をされているわけですから、やはりもっともっと広範にこれは議論をされなければならないものだと思いますが、これについて、いわば光ファイバーが突出をしているという感じがしますので、一つの例として伺おうと思います。  特に、公共事業予算の関係では盛んに議論もされましたけれども、経済対策閣僚会議IT関連の補正予算を八千億円程度にする枠を決めて、今年度当初予算でも五千億円の公共事業予備費を三百四十億円ほどIT名目の事業に振り分けた。そのうちの九十億円が道路予算。IT推進策として道路予算をふやすというのも、世界で聞いたことがありません。  実際の工事はどういうものかというと、建設省が国道わきに二十センチから三十センチ四方の箱状のトンネルを掘るもので、九本の光ファイバーを入れる管をつくり、三本は建設省自身が道路管理用として使い、残りを民間に開放するという。今年度末までに一万五千九百キロのトンネルが掘られるというのですが、民間で使っているのは四百五十キロしかない。  長官、この事実は御存じですか。
  36. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 今御指摘がありましたのは、光ファイバー収容空間の整備等公共事業関係費の一部の御指摘ではないかと思うのでございますけれども、光ファイバーを入れますときに、電柱にかける方法もございますが、地下に収容空間をつくって引くという方法も広くとられておりますし、また、都市景観、災害等、いろいろな点で利便がございます。その中には、道路、河川、下水道等々の空間を利用することがございまして、そういう面では、道路をつくりながら、あるいは改修しながら光ファイバーを入れていくという事業が入っております。先生の御指摘はその部分だと思いますけれども、この関係の予算全体から見ますとそれは余り大きな部分ではございませんで、そういうところもあるということだろうと思います。
  37. 松本善明

    ○松本(善)委員 額の問題ではなくて、構想の問題なんですよ。先日の参考人質疑でも出井戦略会議議長が認めておりましたが、日本の光ファイバーの整備はアメリカの二倍で、世界有数の光ファイバー大国だと。マスコミでは、光ファイバー大国でIT後進国だ、言うならばそのアンバランスを指摘されているわけですよ。光ファイバーばかりやったってそれはおかしいのじゃないかという指摘がいっぱい出ている。  日本では、NTTを中心に、既に全人口の三六%をカバーするだけの光ファイバー網がある。政令市と県庁所在地に限ってみれば五六%、ビジネスエリアでは九三%カバーされている。しかも、今申しましたように、民間企業が借りて使用しているのは四百五十キロだ。都市部など利益がある一部地域を除いてはほとんど使われていない。これは月額十五万も料金がするからだと言われておりますけれども、マスコミでも、これでは光ファイバーをむやみに延長しても、全国に休眠状態の光ファイバー網がいたずらにふえることになりかねませんと。  あなたは八月の三十日に亀井さんのところに行かれたそうですが、亀井さんも、ちょっとこれは、私たちとは違った立場で、今までの建設業的な公共事業を推進するという立場でですけれども、景気対策で公民館まで光ファイバーを結んだってだれも使わないと、与党の政調会長がそう言っている。公民館どころか、全家庭に光ファイバーをやろうというのでしょう。それは物すごくアンバランスじゃありませんか。しかも、今度は道路、河川、下水道にまで光ファイバー網を設けようとしている。  こういう傾向に対して、情報処理学会など情報関連学会六学会が戦略会議に、光ファイバーの敷設などハード整備に偏重し過ぎているという立場から、人材養成を初めとする七項目の提言を行っている。こういうことを考えますと、ITITといって予算化するのを急ぐのじゃなくて、やはり全体をよく吟味して計画を立てる必要があるのじゃないかと思います。長官、どう思いますか。
  38. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 八月三十日に亀井政調会長とお目にかかったときに、いろいろな雑談の中でそんな話も出ました。  正確に申しますと、現在、道路、河川、下水道等に光ファイバーも設置されておりまして、その中には、例えば河川の洪水管理用あるいは下水道の管理用のものもございます。また、鉄道にも引かれておりまして、これは鉄道施設のもので、鉄道の運行のために通信をしているものでございますが、鉄道事業者の私有財産でございますけれども、過剰な部分、能力の余っている部分は他の業者に貸している例もございます。  それぞれに引かれた光ファイバーを、これからできるだけ多くの目的に相互に利用できるようにしていきたいと考えておりますが、それぞれその必要性があって、例えば下水道なら下水道、これが十三年度末、来年度末では千六百キロほどになるそうでございますが、現在はまだ占用率が、民間が使っておる率は非常に低いのでございますけれども、こういうものもできるだけ利用するようにしていきたいと思っています。  それで、委員御指摘の光ファイバーばかり引いていて意味がないじゃないかというところでございますが、これこそ私どもが今度の重点戦略で考えておりますハードの整備、これは、光ファイバー網から各拠点に、学校であるとか図書館であるとか、それはもちろん一般家庭でおとりになる方もおられるわけでございまして、そういうところへハードウエアを引くと同時に、あわせて、初めてそれを利用する多くの人々に技能を学んでもらうというソフトウエアの普及の方も今度の新発展政策でとりました。  あわせて、コンテンツをつくる、これが進んでいないからハードはございましても利用率が低い、今お話がございましたように、余り使われないということがございます。したがって、今度はコンテンツの方をつくっていかなきゃいけない。それで、今Eコマースでございますとかあるいは電子政府でございますとか、そういった点で利用価値を高める。また、インターネット博覧会で大いに楽しめる内容のものをつくっていただく。これを全国から発信し、全国民に参加してもらって、アーカイブズを積み上げまして、そういう利便と楽しみをつくる。  こういう三本柱の政策を今立案し、これがまさにIT戦略というものだろうと私は思っております。決して光ファイバーだけに偏っているわけではございません。
  39. 松本善明

    ○松本(善)委員 大分弁明をされていますけれども、やはり光ファイバーの使用状況でも明らかなように、インフラの整備を民間主導に任せておきますと、利益の上がるところはファイバーが敷設をされる、離島や中山間地、過疎地などもうからないところは敷設されないおそれがあるわけです。こういう点はどうなんだろうか。  全国知事会は、IT戦略会議に対して、国が社会資本整備の一環として位置づけ、国、地方公共団体、民間の役割分担を明確にして整備することが必要であるということを要請しています。基本法で言います、「すべての国民が情報通信技術の恵沢を享受できる社会の実現」ということを実際に実現するということであるならば、やはりこういう問題についてもきちんとした解決の方針をつけなければならない。  私は、やはりそういうことをやるについての論議は本当に極めて不足していると思いました。これは、光ファイバーは例として言いましたけれども、やはり産業の振興というような観点からだけだ。だから、それは確かに、ソニーはこのとおりいきましたらすごい企業になります。私は、財界からも批判が出ている、国民的にもいろいろな心配が出ている、それをやはり全部よく議論をして基本法というのをつくるべきじゃないかと思いますけれども、長官、どう思いますか。
  40. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 委員御指摘のとおり、民間主導型だけでやりますと、いわゆる不利益地域、離島でございますとか山間部でございますとか、そういうところはなかなかつかない、これは事実でございますので、先ほども御説明申し上げましたように、国あるいは自治体が助成をいたしまして、鉄柱を立てるとか、そういう不利益地域の解消のためにさまざまな方法を考えております。また、個別政策といたしましては、ユニバーサルサービスというものをどうしていくかということも必要だろうと考えています。  私たちは決して財界中心とか産業界中心ということではございませんで、さまざまなパブリックコメントなどを受けまして、総理官邸でもそうでございますし、各官庁でもインターネットで御意見を伺うとか、そういうような形で意見を集約してまいりましてこの方策を立てました。  したがいまして、三条には、全国民がひとしく恵沢を受けられるようにということもございますし、十五条には、先生御指摘のように、ハードだけではなしにソフトウエア、コンテンツの三本柱も整備しなければいけないという条項も入れさせていただいております。そういう点では、かなり幅広い議論を踏まえてこの法案をつくらせていただいたつもりでございます。
  41. 松本善明

    ○松本(善)委員 今、民間だけではない、国も自治体もやるのだと。そうなると、財政危機の中でどういうバランスでやっていくかというようなことも考えなければいかぬですよ。それは、私は本当に、公共事業のために名前を使っているというのは一生懸命否定されますけれども、そういうことだとか、森内閣の看板のためだとか、いろいろ批判が出てくるわけですよ。やはり落ちついて、奥田さんの言うように、冷静に、長い、一定の時間をかけて論議をするということが必要なのではないかと思います。  もう時間もありませんので、最後にちょっと個別の問題で伺います。  障害者の問題では参考人から非常に感銘のある陳述がなされましたけれども、厚生省は、障害者の日常生活用具をコミュニケーション機器として給付及び貸与できることになっております。しかし、現行では、重度障害者に電動タイプライター、ワードプロセッサーの給付はあるが、私は意味がわかりませんけれども、パソコンは多機能だからということで給付できないことになっている。これは、もうこういう時代にはこういう考えは改めるべきではないか。これは厚生省に伺います。  それからもう一つは、通産省や郵政省が情報処理機器アクセシビリティ指針をつくっておりますけれども、強制力がないのが弱点で、アメリカでは、米国リハビリテーション法によりまして、連邦政府が購入、用いる機器は障害者でも使えるものでなくてはならないということになっております。せめて日本でもこの程度のことにすべきではないかと思いますが、これは総理府の審議官ですか、それぞれお答えいただきたい。
  42. 今田寛睦

    今田政府参考人 御指摘の日常生活用具給付等事業につきましては、重度障害者の方々の日常生活がより円滑に営まれるようにするための用具の給付を行うという事業でございます。給付品目につきましては、障害者団体の御要望等も聞きながら、その必要性を総合的に勘案しながら改善に努めてきたところであります。  御指摘のパソコンでございますが、今御指摘のように、パソコン自体が汎用性があるということもさることながら、障害があるがゆえに必要となる用具であると明確に位置づけがたいことから、本事業の給付品目に加えることは困難だというふうに考えております。なお、本年の補正予算におきましては、障害者の情報格差解消に向けまして、各障害者施設に障害者が容易に利用できる障害者用パソコンを設置いたしまして、在宅の障害者が利用できるようにする事業を要望いたしているところであります。  いずれにいたしましても、障害者が情報通信の利便を享受できる環境づくりについては、今後とも努めていきたいと考えております。
  43. 勝野堅介

    勝野政府参考人 IT機器を初めといたしまして、政府の購入する物品につきましては、各省庁がそれぞれの必要に応じまして、予算の適正かつ効率的な執行の観点を踏まえて判断しているものでございまして、これを一律に規制することはなかなか困難であると思いますけれども、各省庁の障害者施策に関する連絡調整を担当している総理府の立場からお答えいたします。  御承知のとおり、政府の障害者施策の基本理念は、ノーマライゼーションの実現を目指すことであります。このため、日本型IT社会を実現するに当たりましては、障害者が障害のない国民と同じようにITを利用、活用できることが大切であると認識しております。このためには、障害者に使いやすいIT機器等の開発普及を進めることが必要であり、障害者施策推進本部の庶務を担当する総理府としても、こうした視点を踏まえてまいりたいと考えているところでございます。
  44. 松本善明

    ○松本(善)委員 終わります。
  45. 佐藤静雄

    佐藤委員長 植田至紀君。
  46. 植田至紀

    ○植田委員 社会民主党・市民連合の植田至紀です。最後になりました。  私自身も、このITの問題、この課題について、決して専門家ではございませんので、この間、担当大臣にもいわゆる初歩的な、また素朴なそうした質問を何度かぶつけさせていただいたかと思いますけれども、その都度丁寧にお答えいただきましたことは、本当にまずは冒頭御礼申し上げます。  さて、御礼は申し上げますけれども、ただ残念ながら、この基本法案について、私は、IT革命推進する立場からして賛成できないという立場に立つわけでございます。  といいますのは、この間の担当大臣のいろいろな御答弁、私自身、個人的にはわくわくするような話もたくさんあるのですけれども、そういう話を伺えば伺うほど、実際に出ている基本法案との乖離がどんどん深まっていっているのではないか。むしろ、堺屋担当大臣がイメージされているようなIT革命の像が本当にこの基本法案でできるのだろうか、そういう疑問がますます深まっている。そういう意味で、担当大臣のかつての著作ではないですけれども、「巨いなる企て」をやるためには、この基本法ではしょぼいのではないだろうか、私はそう思わざるを得ないわけです。  ただ、そうした中で、担当大臣がおっしゃっていた中で、特に、これからそうしたさまざまな個人が自立していく、そしてそれぞれのニーズに従ってその多様性を花開かせていくという意味で、そういう個人、そして多様性というところに着目されておられる点は非常に首肯できるわけでございます。  もちろん、担当大臣自身は、ある一定程度、日本伝統なり文化なり、また秩序なりというものの上に日本型IT社会というものを考えておられるようですから、私自身はそうしたもの自体をひっくり返すような条件を持っていると考えていますので、ややそこは私自身も認識が違うのですが、少なくとも、そうした個人、そしてそうした人たちのさまざまな問題意識、多様性というものを花開かせていく上でIT社会をこしらえていく、まさにそうした社会こそがIT社会なのだという思いは、決してそれほどたがえないだろうと思うのです。  ただ、にもかかわらず、どこが問題かというと、一つは、これはあえて答弁を伺いませんけれども、やはり基本法の中で国民参加というものは全然担保されていないではないかという根本的な問題がございますし、もう一つは、やはりこれから個別に若干申し上げますけれども、格差の是正ということについて、基本法の中で必ずしも明示的に示されていない部分がたくさんあるのではないかというふうに思うわけです。  そういう意味では、確かにその影の部分への手当てということについても、この間他の先生方の質疑の中でもかなりいろいろと具体的にお話を伺いましたけれども、よくよく考えてみると、IT革命を進める上での影の部分というよりは、むしろ今の日本社会にある影の部分を、IT社会をつくっていこうという問題意識の中で、むしろ光と影の現在ある影の部分IT革命推進によって解消していこうということからすれば、IT革命における光と影という言い方は、実はひょっとしたらおかしかったのと違うかなという印象も受けているわけです。  そういう意味で、IT革命を前向きに推進するという立場からすれば、そうした今ある影の部分に対する手当てがこの基本法の中でどういうふうに描かれているかということが問われるのではないかと思うわけですけれども、バリアフリー、また障害を持った方々の問題についてはこの間伺ってきましたので、今回、八条の利用の機会の格差是正にかかわって、特にいわゆる所得格差とのかかわりについてお伺いしたいのです。  確かにここで、第八条では、「地理的な制約、年齢、身体的な条件その他の要因に基づく」というふうに書かれているわけですから、全部「その他」に入るのだと言ってしまえばおしまいなのだけれどもIT革命IT社会を形成していく上で、所得格差によってその差がかなり大きいという問題というのは、既に先行事例で明らかになっている。そのことを踏まえるならばやはり大きな課題であろうと思うわけです。  例えば、ことしの通信白書でも、パソコン、インターネットの普及が所得によって大きな格差を生んでいるということが書かれているわけですし、先日もバージニア州のフェアファックスカウンティーの例を出したわけですけれどもIT先進国のアメリカでは、そうした意味で、知識を積極的に活用している人、そして、そうでない人の間に収入格差が生まれる、同時に、低所得者層のデジタルデバイドが深刻な問題になっているという意味では、「その他の要因」で読み込もうとしているのかもしれないけれども、デジタルデバイドの問題というのは、デジタルデバイドの中でも所得格差の問題というのは、地理的な制約、年齢とまさるとも劣らないやはり重要な問題ではないだろうかと私は思うわけです。  そういう意味で、利用の機会をいかなる環境に置かれている人でも担保されていなければならないという立場に立つのであれば、やはり所得格差にかかわっての明示的な書き込みが必要だったと思いますし、また所得の格差にかかわってのいわゆるデジタルデバイドの問題の解決にかかわって、当然もう法案には書き込んでいただけないでしょうから、今後、具体的にどうした施策を検討すべきであるかというところの御所見をお伺いできますでしょうか。
  47. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 所得格差によるIT機器の利用の差というのは、これは大変大きな問題で、私たちも十分それは意識しております。  その状況、内容を調べてみますと、まず第一に、単に所得の格差があるというだけではなしに、それぞれの人々の職業、職場の関係と非常に結びついております。比較的所得の高い人は職場においてもパソコンを使う、インターネットを使う、そういうような職場におられる方の方が多くて、所得の低い人では余りIT機器に接しないような職場の人が多い、あるいは全然職がないような人が多い。したがって、日本の職縁社会におきましては、職場において技能を習得する例が多いものですから、より鮮明に出てくるという問題がございます。そういうことも考えまして、今回、新発展政策の中では、全国でソフトウエアの利用技能の講習会を広げていこう、あるいは労働能力の向上の中でリテラシーを高めていこう、こういう政策をとっております。  それで、もう一つは料金の問題でございまして、現在までのところ大変料金が高かったものですから、所得格差が普及に大きく影響してまいりました。しかし、携帯電話で見ればよくわかるのでございますけれども、料金が下がり、機器の代金が下がってまいりますと、所得の低い人にも非常に普及しやすくなります。そういう意味で、競争政策を激しくいたしまして料金全体を下げる、多様なサービスをする。  こういう、一方においてリテラシー、ソフトウエアを普及する、これを安い値段で市町村などが提供する、あるいは労働省が労働訓練として提供する、もう一つは、料金を下げることによって所得の低い人にも使っていただけるようにする、この二つが基本的な政策だと考えております。これは、この八条の部分では重々意識しておりますので、委員御安心いただきたいと思っております。
  48. 植田至紀

    ○植田委員 やはりこういう問題、お金がかかるさかいに所得が少ない人にはなかなか手が届かないという問題はあるわけですけれども、特に、アメリカなんかでもユニバーサルサービスの実現がうたわれて、例えば公共図書館みたいな施設は今でもあるわけですから、こういうところでインターネットの無料公開なんかの施策を、アメリカでも行われていたと伺っているんですよ。  実際にいろいろな箱物をこしらえぬかて、今だって公共図書館といったらぎょうさんあるわけですし、休日なんか行くと、それこそ子供もおればお年寄りもいるし、女性も男性も、老若男女集っている。本当に結構、そういう意味では、ここは活用のしがいのある、使い勝手のある箱物がぎょうさんあるわけですよね。  その中で、特に、二年前も、正式に言うと、生涯学習審議会の社会教育分科審議計画部会図書館専門委員会報告書を出されたそうですけれども、そこでも図書館を地域情報の拠点にしていくべきだと報告しているということなんです。しかも、その当時の資料でいくと、当時、二年前ですと、日本のインターネットの世帯での普及率が一三パー、そして、公共図書館でインターネットに接続されたコンピューターを利用者へ開放しているのは全体の三・五パーだ、そういう事実も当時指摘されているわけです、今はもっとふえているとは思うんですが。  そういう意味では、総理が所信表明の中で、国民が自由に利用できる公衆インターネットの拠点整備についても触れられているわけですから、こういう日本IT革命IT社会を形成していく上での推進拠点としての公共図書館の役割というのももっともっと大きく認識していくべきだと思いますし、また市役所や区役所、支所、出張所、場合によっては郵便局なんかでもいいと思うんですけれども、そうしたところの施設、現にある施設を情報通信流通の基盤として位置づけて整備するということは一つのアイデアではないかと思うんですが、この点についてまず担当大臣の方から御所見をお伺いして、あと詳細についてはまた別途お伺いしたいと思います。
  49. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 お説のとおりでございまして、今度の新発展政策におきましても、施設整備の点でいろいろと考えております。その中には、公民館、図書館等におきまして、八千カ所ぐらいのパソコン等の講習会を行う場所をつくりたい、大いに活用していきたいと考えております。  さらに、現在インターネットにつながっているといっても電話線のところも多いんでございまして、これをできるだけ高速大容量のものにして、委員御指摘のように、みんなが使える場所、安くかつ自由に使える場所を広げていきたいと考えております。
  50. 白川哲久

    白川政府参考人 図書館の件について御質問がございましたので、補足をさせていただきます。  先生御指摘のように、各地域の図書館は、地域住民のニーズに応じましてさまざまな情報の提供を行う施設でございまして、御指摘の平成十年十月の報告にも述べられておりますように、住民が自由に使えるコンピューターの整備やインターネットへの接続を進めるということによりまして、地域の情報拠点として一層重要な役割が求められておる、私どもそのように認識をしております。  文部省の方といたしましても、このような図書館の情報化推進するために、コンピューターの整備への補助をこれまでも行ってきておるところでございますけれども、国全体としてのIT革命推進において図書館に期待される役割が極めて大きいということから、今後とも一層図書館の情報化に努めてまいりたいというふうに思っております。  それから、利用料金の件でございますけれども、図書館が、電子化情報サービスに伴いまして、通信料金等の対価をどういうふうに利用者の方から徴収するかということにつきましては、基本的にはやはり図書館の設置者でございます地方公共団体の裁量にゆだねられるべき問題でございますけれども、先生御指摘のような状況がございますので、私どもは、地域住民が図書館からなるべく気軽に情報を入手できるように、可能な限り低廉な使用料が設定されるように期待をしておるところでございます。
  51. 植田至紀

    ○植田委員 対価の徴収にかかわっては、今は指摘していなくて、次の質問で言おうと思ったんで、恐らく答弁を先に進んで読まれたんでしょうか。  今の話ですけれども、九八年の十月の報告書では、図書館でのインターネットの利用は、今御説明にありましたけれども、図書館資料の利用には当たらへんから対価を徴収しても構わぬと書いております。ただ、そうなると、やはりこれ、閲覧するのが有料になるわけですよね。だから、そこはやはり改善が求められるところだと思うわけでございますが、特に、ただとは言いません。私も、やはりそういうのは、当然ながら、一定、コピー代ぐらいは、だって情報公開法でもコピー代ぐらいのあれは取るわけですから。  ただ、高額な機器を購入できない高齢の方であるとか退職者、低所得者、そういう方々にそういう場が活用できる場にするためには、低廉な料金でネットワークを利用する条件整備をするというのがやはり情報格差の是正だと思うんですけれども、その点については、私としてはやはり無料利用ということを前提考えたいわけですけれども、どうなんでしょうか、改めてお伺いいたします。
  52. 白川哲久

    白川政府参考人 若干先走って御答弁申し上げまして、申しわけございませんでした。  若干繰り返しになりますけれども、基本的にはやはり図書館自身は地方公共団体の方で設置をされておりますので、そこの自主的な裁量ということが基本になるわけでございますけれども、先生御指摘のように、地域住民が図書館からなるべく気軽に情報を入手できるという観点からは、可能な限り使用料が低いことが望ましいわけでございますので、私どもはそういう状況になることを期待しておるわけでございます。  これは、もちろんひとり図書館だけの問題ではなくて、図書館を含めました全体の教育施設、そういうところに対する通信料金の設定の問題にもなるわけでございますが、そういうことも含めまして、ぜひなるべく低廉な通信料金が設定可能になるような条件の整備に私ども努めてまいりたいというふうに思っております。
  53. 植田至紀

    ○植田委員 できるだけやはり低廉な料金、ただとは言いませんけれども、限りなくただに近い方が活用する者にはありがたいと思います。余り綿密に事前にレクをしておくとこういうアクシデントもありますので、これからはちょっとまたお互いに気をつけてやりたいなと思います。  最後ですけれども、個人情報の保護にかかわって、この間も私伺ったのですけれども、一点やはり私自身、通信傍受法とのかかわりについて伺わないとたまらぬわけなんです。  仮に百歩も万歩も譲って、国際社会からの要請が高かったんだということで、先進国の中で通信傍受法を制定していないのは日本だけだったのだと言うけれども、しかし、そうした通信傍受法を制定している国というのは、既に先行的に、包括的な個人情報を目的にしたプライバシー保護法というものが現にあったわけですよ。その意味日本の場合は、少なくとも通信傍受法、盗聴法だけが先行して、プライバシー保護法はおくれているという状況があるわけです。そういう意味日本の場合、通信傍受法だけが先行してできたわけですけれども、これはむしろ国際的に見て、諸外国から見れば、常識外れではないかと思われても仕方がないと思うのです。  実際に、インターネット盗聴のツールというのは世の中に出回っているわけですし、電子メールだけを対象にしたメール盗聴ソフトというのもあるらしいです。そういう意味で、死んだ子の年を数えるような話かもしれませんけれども、少なくとも通信傍受法を制定する前に、人権保護の立場を明確にした包括的なプライバシー保護法が先に用意されるべきであったのではないか。改めて、この基本法の提案を受けて、そのことを強く思うわけですけれども担当大臣の御見解をお伺いしたいのです。
  54. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 通信傍受法は、特別の犯罪捜査のために、限られた条件のもとで、裁判所の許可を得て傍受するものでございまして、このインターネットあるいはIT分野とは根本的に違います。ITで保護しなければいけないのは、一般的な個人の情報、広く市民の情報でございまして、裁判所も認めるような特定の組織犯罪ということになりますと、これは個人情報という範囲とちょっと概念が違うのではないかと考えております。  これはIT関係なく電話のときから言われていることでございまして、そういった組織犯罪を前提として、十分容疑があって、裁判所が認められて傍受するということと、何万人何十万人の個人情報を管理しているという人たちに、個人情報の流出を防止するということとは、これはちょっと範囲の違った、概念の違ったことでございます。次元の違ったことでございますので、これは全く矛盾なく両立すると私は考えております。
  55. 植田至紀

    ○植田委員 今担当大臣が、いわゆる通信傍受法も組織犯罪に対応したものだというふうにおっしゃいましたけれども、それは認識が違うのですよ。組織犯罪関連三法案というのがありました。その組織犯罪に対応するために通信傍受法が必要だと言って、さあ、通信傍受法ができました。これは、それこそ一対一の会話が全部できるわけです。何も組織犯罪であるかないかということが要件にはならないはずです。それがゆえに私は非常に危惧するわけなんです。  ですから、特にインターネットの盗聴の場合は、ネットワークに流れるすべての通信が実際上盗聴されてしまうわけで、無差別盗聴になってしまうわけですから、少なくとも今の、盗聴法と言ったら語弊があるなら通信傍受法と言いましょう。通信傍受法で仮に裁判所が許可して盗聴させる、通信を傍受させるというのは、何も組織犯罪を前提としている、していないということじゃないということです。だから、個人のそうした意味での多様性というものがこのことによって侵害されて、もっと言えば、IT革命を進める、IT社会をつくっていく上で大きな障害になるんじゃないか、相矛盾するんじゃないかということを伺っているわけです。  時間がありませんから、そのことだけもう一度お伺いして、最後、終えたいと思います。
  56. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 ITであれ電話であれ、そこは同じなのでございますけれどもITだから、傍受するソフトを使って、通信傍受法で定められた範囲を超えて、あるいは定められた人物以外が傍受したということになりますと、これは明らかにのりを越えた、場合によっては犯罪ということになると思います。  この通信傍受法というのは、目的も決まり、手続も決まり、そして裁判所の許可を得て傍受することが許されるものでございまして、目的がはっきりしておりますから、一般的な個人情報の問題、それから傍受した人がそれを他に、目的以外に個人情報を漏らすというようなことは厳に戒められておりますから、委員考えられるような心配はないのではないかと思っております。
  57. 植田至紀

    ○植田委員 終わります。
  58. 佐藤静雄

    佐藤委員長 これより内閣総理大臣に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大畠章宏君。
  59. 大畠章宏

    大畠委員 民主党の大畠でございます。  IT基本法、まさに森総理がこの臨時国会はIT国会だとおっしゃっておられましたが、このIT基本法案に対する審議が非常におくれました。この問題については自由民主党、そしてまた与党の責任は大変大きなものでなければならないと思っています。  というのは、本来、国民が非常に、IT社会というものが進むという流れがあるのですが、どうも先が見えない、これから雇用の問題や、あるいはどんな変化が起こるんだろうか。政府の方では非常に希望に満ちあふれた形のお話がありますが、実際どうなんだろうかという不安が募っているというのが実態ではないかと思うのです。  そういう意味では、十月の初めからこのIT基本法についての審議が促進されなければならないと思っておりましたが、とにかく与党の大幹部が、まさに選挙制度の改正が重要なんだ、予算以外の法案は飛んでもいいなんという、そういう不見識な話もありまして今日までおくれてしまったという問題に対しては、森総理も責任を負ってもらわなければならないと考えているところであります。  さて、質問に先立ちまして、実はきのうの夜、森総理も御存じのとおり、アメリカの大統領選挙が行われました。まさにITの先進国アメリカの大統領選挙らしいなと思っています。  もう一度フロリダの票の再確認を行うということでありますが、まだ結論が出ていないわけでありますが、今回のアメリカの大統領選挙について森総理はどのように考えておられるのか、最初に森総理考えをお伺いしたいと思います。
  60. 森喜朗

    ○森内閣総理大臣 今、大畠委員からお話がございましたように、IT法案につきまして皆様方が大変御熱心に御議論をいただいておりますことに、まずお礼を申し上げたいと思います。  国会運営の交渉の中から委員会の議題を取り上げていくことでございますので、私から、ただ皆様がこうして精力的に、きょうも朝早くからこうして御議論をいただいておりますことに対して、政府として心から感謝を申し上げたいと思っております。  さて、突然の御質問でございますが、今お話がございましたように、アメリカの大統領選挙の帰趨はまだ明確にわかっておりません。アメリカの大統領選挙、また日本で行われます各種の選挙、それぞれ国情も違いますし、仕組みも違いますし、きのうもいわゆるぶら下がりという記者団の皆さんに、どう思いますかと聞かれたわけでありますけれども、それだけに、アメリカの皆さんは、両大統領候補がやはり誠心誠意、精力を傾けて選挙運動に努力してこられた。その結果、大変激しい双方の支持の皆さんの選挙戦がこういう形になってあらわれてきたものだと思っています。  どういう評価をするかということは、これは一概に言えるわけではありませんが、アメリカらしい、アメリカの国民が求めている選挙制度といいましょうか、そういうものに対して、大変そういうアメリカの民意というのがよくあらわれている。これはある意味では、日本もそういう方向に政治改革の中で求めなければならないな、お互いに政権交代というのは容易にできていくんだというような仕組みにしようよというのは、当時、政治改革に取りかかったときの、今では民主党にいらっしゃいます方々あるいは他の政党にもいらっしゃる方々で我が党に所属しておられた方々も、アメリカのようなそういう仕組みがいいなというような思いもあったのかもしれません。そういう形で進められたものでありますが、日本日本でまた選挙の方法が違うわけであります。  いずれにしても、そういうアメリカ民主主義の成熟した一つの形があらわれているんだなということを、昨日からこの開票結果を見ながらそんな感想を持っておりました。
  61. 大畠章宏

    大畠委員 私は、IT革命というものがどういう影響といいますか、どういう効果があるのかというのは、二つあると思うのですね。端的に言いますと、情報をみんなが共有できるという、そんなものもあるでしょう、あるいは上から下に、みんなに情報を瞬時に伝えることができる、あるいはみんなの声を吸い上げることができるという、これが幾つか現象面で見ればあると思うのですね。  IT情報民主主義という観点を私ども民主党は持っているのですが、そういう観点からしますと、まさにアメリカ情報民主主義だな、国民の総意でもって大統領を選ぶ。ところが、日本の場合どうかというと、国民はそっちのけで、どこかで決まってしまう。ここにどうも国民の政治に対する不信、あるいは、どこでどうなってしまったんだ、各政党がこっちで一つの政権をつくってみたり、途中で別れてこっちになってみたり、非常に私は、十年間政治家をさせていただいていますが、国民の意思とはちょっとかけ離れたところで政権ができたり、政権が移譲したり、そこに私は、どうも日本の国民の政治に対する不信感が増しているのではないかという感じがします。  したがって、今後、きょうはIT基本法に関する話でありますから、どういう形で国民の信頼を取り戻すかという観点からの検討が、このアメリカの大統領選挙等々を踏まえて行われなければならないなと思っています。  例えば、首相公選制なんかも一つでしょう。国民の総意で日本総理を決める、そういうことになれば森総理だってもっと自信を持って、どんといけるんじゃないかと私は思うのですよ。森総理、この首相公選制についてはどんな感想を持っておられるか、ちょっと伺いたい。
  62. 森喜朗

    ○森内閣総理大臣 今アメリカの大統領選挙が大変エキサイティングになって、外から見ていると、ある意味ではすごいなという感想もありますし、おもしろいなという見方もあるでしょうし、それから、各州が持っております投票者といいますか、その票数の分け方というのはどうなのかとか、いろいろな話題は多く出ていると思います。  すべからくアメリカの大統領制がいいというわけでもないと私は思うし、日本には議院内閣制という制度があるわけでありますし、それから、何か大畠さんの本意ではないと思うけれども、何か片隅でだれかが決めてしまったということではないので、やはり国民から選ばれた代議士たちが、それぞれ本会議において首班指名を行うというきちっとした民主主義の手続をとっているわけだし、それから、それぞれの政党によって違いますけれども、きょうは、新聞を見ていると、自由党の小沢さんが引き続き党首をやるというのが出ておりましたけれども、どういう選び方をされるのかなとちょっと私も関心を持ちましたけれども、私どもが自民党の総裁を選ぶということになって、その総裁は候補者としての首班に党として決めるわけでありますから、党の総裁を選ぶということは我が党の中にもそれだけのまた議論もあるし、いろいろな実情もあるんだと思います。  一概にどの制度がよくてどの制度が悪いということはなかなか決められるものじゃありませんが、アメリカの大統領選挙のようなこういう帰趨を見ますと、この方がより国民の意向が確かめられて、民主主義が反映されるのではないかなという見方もあるのかもしれませんけれども、やはり公選制についてどう思うかということであれば、そういう考え方も、今までずっと進めてきた日本の議院内閣制というものを改めて大統領選挙制度のような形にすることがいいか悪いかと言う前に、やはり憲法をどうするのかという問題が出てまいりますね。  ですから、そういう意味で、やはり憲法調査会というのが国会にできたというのもそういう意味では大変意義があることでありますから、そういう問題も私は大いに議論をしていただいて、各党各会派の意見の総意をまとめ上げていかれるということも、国民から見ればまた期待されることではないかなというふうに思っております。
  63. 大畠章宏

    大畠委員 今うちの方の理事から、この問題についても一言総理考えを聞いてほしいということが来ましたので、質問させていただきます。  きょうの新聞の各紙面に、KSD疑惑で理事長が八千万円横領容疑で逮捕されたという話で、これはここ一カ月ぐらいいろいろあるのですが、どうもこれは労働省の管轄の財団法人。一体労働省というのは何を管轄しているんだ。労働省も総理の管轄下でありますから、さらにその疑惑の内容を見ると、年間三十億円近いお金があって、その一部が自民党の支部に流れたり、村上さんのところに、一部には、党員が九万人ぐらいいるのでそれを肩がわりしたとか、いろいろあるわけでありますが、こんなことも明らかになってきますと、私は先ほど政治に対する国民の不信というのを申し上げましたが、ますます広がるのではないかという感じがしますね。  これは総理、きょうは総理として御出席でありますが、自民党総裁としても、こんな問題を内在しているわけでありまして、この問題に対して自民党総裁としてはどういうお考えをお持ちかお伺いして、その後にIT基本法についての質問に入りたいと思います。
  64. 森喜朗

    ○森内閣総理大臣 ケーエスデー中小企業経営者福祉事業団の理事長が逮捕されたということを知りました。大変残念なことでありますし、残念といいますのは、理事長に対して残念だということではなくて、こういう事態になったということはまことに遺憾だという意味のことを申し上げたわけでございます。  ただこれは、労働省としては、今御指摘ありましたように、いろいろ御批判もあろうとは思いますが、必要に応じて立入検査も実施いたしておりますし、また、改善勧告なども出しておりまして、指導監督をやってきているというふうに我々も報告を聞いております。そのようにも承知をいたしておるところです。逮捕されました以上は、今後これらの捜査を厳しく明らかにされていくことであろうと思いますので、その推移を見守っていかなければならぬと思っております。  ただもう一点、我が党に関する、自由民主党のいわゆる豊明支部ということもいろいろと御批判をいただいているわけでありますが、これは寄附については補助金が充当されていない、そして、それ以外の収入によるものであったということを、我々はそういう報告も受けております。  あと、いわゆる政党に対する寄附等については政治資金規正法の中で明らかに報告されている、このように我々は承知をいたしております。
  65. 大畠章宏

    大畠委員 これは、私よりもずっと先輩である森総理は政治家として長い経歴をお持ちですが、まさに信なくば立たず、政治というのは信頼を失ったら終わりなんですね。しかし、今、残念ながら、そういう不信という形の国民からのものがずっと広がっている中で、私たちは与野党を超えて、国民の信頼を取り戻すためにどうしたらいいか。総理としては国のこともやらなければいかぬでしょう。しかし、自民党総裁としても、自民党のこういう問題についてはきちっとするということをぜひこれからもやっていただかないと、日本の国がだめになってしまうと私は思うんですよ。  これはもちろん、日本の国内にも情報は流れますが、世界にも流れます。例えばアメリカでこういうことがあった、ヨーロッパでこういうことがあった、私たち日本人が知ります。それを逆の立場になったら、日本に対するイメージはどうなるでしょうか。私は、そういう意味で、ぜひ自民党総裁としてこういう問題に対するけじめをつけていただきたいということを申し上げておきたいと思います。  それから、IT基本法の問題に入りますが、実は総理もこのIT問題について非常に熱心だと聞いておりますが、ある企業の、西新橋の方にあるサイバーガバメント・スクエアというところに総理も行かれたという話を新聞で読みました。サイバーガバメント・スクエア、日立のショールームというところへ行ったという話を聞いておりますが、私も行ってきたんです。  それで、実はその中でいろいろな話を聞いてきましたが、今回のIT基本法の基本的な問題は何かというと、よくわからないと。要するに戦略会議をつくりますというだけで、一体どういう方向に進むのか、あるいはどんな社会になるのか、よくデジタルデバイドと言われておりますが、弱者はどうなるのか、あるいはデジタルリストラという話もありますが、失業者はどうなるのか。国民にとっては本当にいいのかどうかというのがよくわからないというのが実態だと思うんですね。  私ども、この基本法についてはどうも実体がないんじゃないかということでいろいろ議論をしてきました。そして、方向性というものをまず、こうあるべきだというものがあって基本法というのがなければならないので、こういう社会にしようというのがない中で、ただ基本法でまず始めますよというだけでは問題が多過ぎるんじゃないか、逆に国民に不安を与えるだけじゃないかというような感覚を持っていました。  先ほどのアメリカの例でありますが、世界的にどんな形になっているかということがある書物にも入っていますが、世界的に政府の役割が大きく変貌しようとしている、先進国を中心に政府の役割は縮小し、過去に果たしていた役割の一部を企業やNPOなどほかの経済主体に移転するか、あるいは分担して責任を果たすようになってきた。こうした流れのきっかけは、一九七〇年代のイギリスのサッチャー政権、あるいはアメリカのレーガン政権の流れがそういうものを始めたというのですが、いずれにしても、政府みずからの支出による需要創出や産業育成という観点から転換して、大規模な規制緩和と減税の組み合わせによって市場競争を拡大させ、経済の活性化を図る政策へと大きくかじを切ったというのが世界の流れだと書いてあるんですね。これが、強いて言えば、IT基本法の目指すべき流れだと私は思うのですよ。  それから、市場競争の主体である企業は、国家という枠組みを飛び越えて活動の自由を拡張することが必然となる。すなわち、企業が国を選び始めたという時代になり始めている。結果的に、政府は、みずからが企業に対して圧倒的な支配力を有していた状況が逆転したことを認識せざるを得ないことになる。要するに、政府が方針を出したり、政府が救援策をやったり、それで企業を誘導するという時代はもう終わったんだと。政府の影響力というのがだんだん少なくなって、企業が国を選ぶ時代になったという流れだと思うのです。それで、いずれにしても、そういう流れから、国家としての戦略を持たなければ企業に見放されるというのが私はこれからの流れなんだと思うのです。  そこで、いろいろな話がありますが、デビッド・バラムさんという元商務省副長官が今アメリカのGSAの長官をされているんですが、この方の話を私はビデオで見たんです。その中で、重要なことは、民も官も客を第一番目に考えることが重要だ、国民イコール顧客であるという指摘、こういう視点が重要だというのです。  私は、果たして今回の与党のIT基本法というものの流れの中で、国民がお客さん、いわゆる顧客第一主義、いわゆるITを進めることによって国民は非常に快適なサービスを受けることができるようになるんですよという視点があるのかどうか、それからもう一つは、そういう世界的な流れの中で、日本が戦略的な思想を持ってこのITを進めようとしているのか、どうも日本の国、与党としての戦略が見えないんです。  そこら辺にどうも国民が、あるいは私たちが不信というか不安感を覚えるんだと思うんですが、最初に、総理日本としての基本的な戦略というものをお持ちでこのIT化を進めようとしているのかどうか、そこら辺についてお伺いしたいと思うのです。
  66. 森喜朗

    ○森内閣総理大臣 例えは余りよくないのかもしれませんけれども大畠委員はそうした関連の企業にいらっしゃったわけですから、恐らくここにいらっしゃる委員の中でもかなり御専門的なことはお詳しい、むしろ私よりもはるかに詳しいだろうと思います。詳しい人が余り知らない人に聞くというのも的確なお答えにはならないと思いますが、車社会というのが出てきた。もうとにかく、車を使い始めればこんな便利なものはない、大きなバスもあればトラックもあれば、小さな軽自動車もあれば、みんながどんどん使い始める。当然これは便利だけれども、町の中にはんらんをしてしまう。そうであれば信号機も必要ですね、道路の区分も必要ですね、あるいは分離帯も必要になります、さらに高速道路も整備しなければいけませんねということになって、そうしたインフラ整備をどんどんこれは国なり地方自治体が中心になって進めていく。  私は、本当に例えはよくないのかもしれませんが、パソコンを中心とするIT関連産業というものはどんどん進んでいっている、そういうことに対して、民の役割というもの、それから公の、国の役割、あるいは自治体も含めて官の役割、これはなかなか難しい、区分を、線を引くのは非常に難しいところがあるかもしれません。  要は、アメリカの場合はこれが産業にとって大変大きな起爆剤になって、そしてここ数年アメリカのいわゆる経済の大好況というものを迎えた、これは今、大畠議員が資料でお示しになったとおりだろうと思います。  決して我が国は、おくれていたという御指摘は確かにあるのかもしれませんし、見方によればそういう面もあるんだろうと思いますが、しかし政府全体としては、これまで、平成七年に策定をいたしまして十年には改定いたしました高度情報通信社会推進に向けた基本方針の策定、こうしたことで取り組んではいたと思います。しかし、どこまでが民の役割、どこまでを国が加わっていけるのか、そういう点についてやはりちゅうちょもあったというふうに、私はそういうふうに見ている、自分の感想としてはそういう思いを持っているわけです。  今ちょっと御指摘がありましたが、私は、すぐそこの新橋といいますか、虎ノ門の日立製作所の、いわゆる電子政府を進めていく、そのシステムをいろいろ拝見させていただきました。びっくりしました、もう我々が考えていた以上に進んでいますねと。これがどんどん進んでいくと、確かに大変な快適な二十一世紀社会ができることは間違いがない。  しかし、それについては、やはり促進すべきバックアップ体制をしいていくことと、もう一つは、やはりある程度、規制と言うと言葉はよくありませんけれども、きちっとした姿勢を正しく進めていくということもやはり役割としてあるな。しかし、国が何もしなくても、民間の方はどんどん技術革新を進めて積極的に取り組んでおられるということについては、これは私は大変好ましいことだと思います。  ですから、そういう意味で、政府としては、これらの問題が、できるだけ多くの国民にこのことを享受できるようにしていくこと、そして先ほど申し上げたように、こうした従来と違って大量の容量の情報というものが動きやすくしてやるための、そういう面での公の役割というものは何なのかということをきわめて、そういう体制をきちっととっていくということが、私ども日本型のIT社会というものをぜひ実現するためにIT基本法というのを皆様方にお願いをして、そして国民全体としてこの問題に取り組んでいけるようにしていきたい、こういうふうに考えたわけです。  ですから、そういう意味で、高度情報通信ネットワーク社会、すべての国民がインターネットを通じて自由かつ安全に多様な情報や知識を入手して、また共有して、そして発信することによって、あらゆる分野における創造的な、かつ活力ある発展が可能となる社会、その社会の実現が結局かぎになる、私どもこのように考えたわけでございます。
  67. 大畠章宏

    大畠委員 民間のそういうものが非常に進んでいてびっくりしたというお話がありましたが、私は、あれを見てびっくりされたのでは困るんだと思うのですね。  森総理がまさにIT戦略会議のリーダーでありますし、先頭を走ってこれからのIT社会というものを創造しようという、まさに責任者なんですね。責任者というものは、こういう社会をつくろうというものをある程度描いて、それで進んでいかないとならないのでありまして、私は、ああここまで来たか、自分が描いていたこんな社会にしたい、国民にとって利便性がある、あるいは行政サービスやいろいろなサービスがよくできるんですよという意味で、ああここまで来たかというような感じで見ていただかなければならないんですが、これは技術的に知っているとか知っていないの話じゃなくて、政治家としてビジョンを持っているかどうかだと思うのですね。  私は、結局、今総理からお話がありましたが、そこら辺がどうも、政府IT戦略会議というものを中心としてやろうというんですが、いろいろな話を伺いますと、九月四日に招集をして、九月二十八日にはもうパブリックコメントを締め切った、大体百五十件か何か国民からの話を聞きました、それでIT基本法というものをまとめまして法律を出したというんだけれども、余りにも駆け足で、インスタント法案みたいな形で、どこにかけるんだというのがよく見えない、政府から出されたIT基本法をいろいろ読ませていただきましたが、見えないんですよ。  したがって、私たちは修正案を出したんですね。ここのところはどうなんだろうか、ここのところはどうなんだろうか、デジタルデバイドの問題はどうなんだろうか、あるいは法律関係、この関係する法律の規制が多過ぎる、これじゃだめなんじゃないか、そういうことから七点の修正案を出させていただきました。  それでもって何とかいい法律案にしようと思ってきたわけでありますが、いずれにしても、私ども民主党は、すべての国民が、地理的条件、年齢、身体的な条件その他の要因に制約されることなく、インターネットその他の高度情報通信ネットワークを通じて、自由かつ安全に多様な情報世界的規模で入手して、共有し、または発信することにより、多様な生き方や価値観を尊重し合うことができる、いわゆるあらゆる分野における創造的かつ活力ある発展が可能となるような社会をつくっていこうということを私どもはきちっとすべきじゃないかと思うんですが、こういうものがどうも明らかではなかった。  ただ単に、あの基本法を読んでみますと、とにかく戦略会議をつくってこれからやります、この基本法に基づいて来年、各法をたくさんつくって一斉にやりますからという、それだけしかないんじゃないかという感じがして、私どもはこの基本法について非常に疑問を持っていたんです。  それで、もう一つ雇用の問題があるんです。先ほど言いましたように、この雇用の問題、情報を上から下、下から上という、情報の伝達をする役割の方はどうも要らなくなるということで、いわゆる中間管理職が外の方にはじき出されるんじゃないか。あるいはまた、これは非常に深刻だと思うんですが、今でも四十代、五十代の失業者が非常にふえているんですね。  先ほど労働省の話を、私はきのうの山田委員の話を伺いました。ミスマッチを解消するためにいろいろやります、そういうことで再教育をしますと言うんです。それから、きょうの午前中の質疑でも、失業者が出ます、そしてそれを上回るだけの雇用を増大しますと言うんですが、私は、失業層と新しく雇用創造できる層というのはどうも質が違うんじゃないかと思うんですね。そういう新しい産業が生まれてそこに入ってくる人と失業してしまう人がイコールではなくて、失業者失業者で新たに雇用が生まれるという形で、その失業した人はずっと失業したままじゃないかという感じがするんですよ。  それで、雇用問題について政府はどう考えていくのかというのがこの基本法には全く書かれていなかったんですね。この雇用問題について、IT社会が進むことによって雇用問題、ミスマッチという話もありますが、特に中高年層が、中間管理職がはじき出されると思いますが、ここら辺の問題をどうするのかというのを、総理のお考えを伺いたいと思います。
  68. 森喜朗

    ○森内閣総理大臣 これまでの御議論の中で担当大臣からもお話があったのであろうと思いますが、繰り返しになるのかもしれませんが、ITの普及に際しましては、今大畠議員から御指摘ありましたような、いわゆる情報格差もございますし、それから雇用問題等の弊害が生じる懸念があることは十分承知をいたしておりますし、現に今の我が国の経済状況もいろいろ見ておりましても、確かに有効求人倍率も上がっておりますし、そういう意味では、雇用側からすれば働く人たちを求めていることは間違いがない、しかし、なかなかその仕事にすぐにはつけないというのが、今議員の御指摘があったミスマッチということになるんだろうと思います。  しかし、これからIT社会をますます実現していくということになれば、これらにやはり対応でき得る、そういう指導とか教育でありますとか、そういうことは当然進めていかなければならぬことだと思っています。  政府といたしましては、今後そういう面で成長が見込まれます新たな産業に対しまして、必要な人材を早期に育成をする、そして着実な就職促進を図ることを目的とする、先ほど申し上げましたミスマッチ解消を重点とする緊急雇用対策を本年度から実施をいたしているわけであります。  したがって、例えばこのIT基本法をお願いしておりますことも、今大畠議員にとっては、遅いとかいろいろ御意見はございますし、短兵急過ぎるじゃないかとおっしゃいますが、こうしたことの基本法をつくることによって国民全体がこの問題に対して取り組む、私はやはりそういう姿勢が見えてくることが大事だというふうに思っていますし、事実、そういう立場の中で先般、日本新生のための新発展政策を私としても発表したわけでありますが、その中で、IT利用技能の向上を図ることにして、これによって約百五十万人の方々に対してITの技能習得の機会を提供するというようなことも提起をしているわけでございます。  この基本法案では、このような認識のもとに、基本理念や施策の基本方針におきまして、利用の機会の格差の是正、あるいは新たな事業や就業機会の創出、教育や学習の振興等についても規定をいたしておりますので、ぜひこの法案を通していただいて、一段とIT社会への対応を政府がバックアップできる、あるいは大畠議員のように先頭を切っていけという面もあるんだろうと思いますし、そういう面についてはリーダーシップも持っていきたい、このようにも考えているところであります。
  69. 大畠章宏

    大畠委員 もう一つは、IT基本法は単に経済対策の一環にすぎないんじゃないか、産業主導の単なるIT利用の普及促進に終始するのではないかというような懸念の声もあります。  私はまさにこういうことであってはならないと思いますし、先ほど言いましたように、IT社会が進むことによって行政の国民に対するサービスが向上します、顧客第一主義、行政も政府も、国民第一主義という言葉がいいかどうかわかりませんが、いずれにしても国民のための行政になります、そのくらいの姿勢を示していかないと、行政が、中央官庁が国民を支配している、全部コントロールしてやるんだというこれまでの、ここら辺は堺屋長官が一番得意な分野かもしれませんが、江戸時代以降の国民、民を支配するという体制から、まさに憲法の理念に基づいて国民を第一に置いて、国民のためのサービス機関に転換するというのが、私はIT革命の基本なんだと思うのですよ。そこら辺がどうもあいまいなまま、とにかくIT基本法をやります、いろいろな施設を準備しますというのですが、そこら辺が私は国民が非常に不安感を抱いている根本だと思うのです。  例えば、先ほどの雇用問題でいいますと、現在、有料職業紹介事業に対する事務所設置の義務づけがあるのですが、それを例えばIT、コンピューターで自由にできる。ある面積があって、そこに行って話をしないと職業が得られないなんという規制を撤廃して、まさにインターネットで、私はこういう能力を持っているのですがこういう仕事はないでしょうかと言うと、それをすっとマッチングさせて、こういうのがありますということもできるように私はすべきだと思うのです。あるいは、きのうも神奈川の方のある研究所に行きましたら、電柱にはいろいろなものをつけちゃだめですというので、新たなアンテナ等はつけられないという話で、こういう規制も撤廃してもらえませんかねというような話もありました。  いずれにしても、そういうもろもろのIT化社会推進しようとするときに、いろいろな規制があるのですね。最近では行政のための規制でしかないのではないかというような感じもするものがあるのですが、ここら辺をやはり総見直ししないといけないのじゃないかと思うのですが、その件についてお伺いしたいと思います。
  70. 森喜朗

    ○森内閣総理大臣 まさに、今大畠議員からいろいろと御指摘がありました、そういう問題を解決するためにもこの基本法が必要なのでありますし、また、IT戦略本部というものも当然必要になってくるわけです。  今、政府で民間の皆様方からもいろいろなお話を伺って、今大畠議員がおっしゃるとおりなので、こういうところの規制、こういうところの規制、なるほどなということになります。政府のためにある規制ということではないのであって、当然国民のためであることは間違いありませんが、歴史的な経緯もあるということはぜひ御理解をいただきたいと思います。  この目指しておりますネットワーク社会は、インターネットを通じまして、国民が自由かつ安全に多様な情報や知識をグローバルに入手、共有、発信することが可能となる社会というふうに申し上げているわけでございます。したがいまして、御指摘の政治や行政の分野におきましても、国民一人一人の情報の受発信能力が大幅に拡大されまして、主体的にそれが利用されて、これを通じて個々の能力が総合的かつ最大限に発揮されることが期待されるわけでありますし、それは単に日本の国内だけではなくて、国境を越えて全世界にわたってそれぞれの人々の個人の能力というものが最大限に発揮されていく、そういう社会になるということを我々としては期待もいたしますし、そのことも想定をして対応していかなければならぬ。そういう意味で、この法案はまさに民主主義の基本に沿ったものだというふうに私は考えているわけです。  もう一点、政府としては今、IT分野におきまして、規制緩和推進三カ年計画等に基づきまして、電気通信分野におきます参入規制の緩和、電子認証制度や申請届け出等の手続の電子化の推進などに取り組んでいるところであります。既存の規制につきましては、消費者の保護等の必要性から設けられているものでありまして、一挙に廃止するということはなかなかできないわけでありますが、実施可能なものから所要の措置を一つ一つしっかりと講じてまいりたい、このような方針でおります。  民間におきます商取引等におきましても、書面の交付等を義務づけているものにつきましては、電子的な手段をもってこれにかえることを容認するための法案をこの国会に提出をいたしたところでございます。さらに、今回の書面一括法で対応できなかったものについても検討を進めまして、規制改革委員会の見解もいただいて、本年度末までには規制緩和推進三カ年計画にできる限り盛り込んでまいりたいと思っています。  具体的に御指摘がございました有料職業紹介事業に関する事務所設置規制につきましても、今後、緩和の方向で検討を予定いたしております。また、医薬品の販売につきましても、人の命にかかわることである問題でもございますので、より慎重な検討が必要だというふうに考えております。
  71. 大畠章宏

    大畠委員 IT基本法の骨格という資料、あるいは法律案の内容を見ますと、IT戦略本部というものは総理のリーダーシップによる強力な推進のために内閣に置く、総理本部長として全大臣及び民間有識者の参加ということになっていますが、アメリカの例を見ますと、いわゆるNPRという組織を大統領のもとに置いて、全省庁を指揮下に置いてしまうのですね。それで、六十人のスタッフで、利害調整ではなくて本当にこういうことをするんだ、要するにプットイン・ピープル・ファーストといいますか、国民第一主義でやるんだ、国民のためのサービスを向上するために全省庁が意識を変えてやれということでやっているというのです。民も官も客を第一番目に考えることということを、全省庁に、あるいは全市町村に号令をかけて始まっているというのですよ。  私は、今回の戦略会議というものがどうもよくわからない。例えば、十一月に大臣がころっとかわるわけでしょう。一年ごとにかわっていくときに、またこの戦略会議のメンバーがかわる。こういう意味では継続性がないのじゃないですか。私は、充て職的な形ではなくて、まさにその分野のエキスパートを集めて、全省庁挙げて一つの省を設置してやるぐらいの勢いがないと、さあ内閣が改造されました、全大臣がかわりました、また半年か一年たってかわりました。IT基本法のもとに戦略会議をつくったとしても、どうも断続的になってしまう。  そういう意味から、民主党としては、IT情報通信省ぐらいを設置して、それを各省庁のトップに据える。それは未来永劫ではなくてもいいかもしれません、とにかくそのくらい、全省庁に指示を出すような体制で臨むべきだと私は思うのですが、どうでしょうか。
  72. 森喜朗

    ○森内閣総理大臣 IT革命推進してまいりますには、御指摘どおり政治の強力なリーダーシップが必要だろうと思います。特に、省庁の横断的なスピードを持った対応が求められているわけでありますから、各省庁縦割り、あるいは硬直的な行政体制を是正すべきという御指摘は、私も同感であります。  この法案におきましては、そのための推進体制として、内閣に、内閣総理大臣本部長として、すべての国務大臣と民間有識者により構成されます高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部を置くことにいたしたわけであります。内閣に置かれますこの官民合同の本部は、総理の直接のリーダーシップのもとに、各省庁縦割り行政の障壁を排して、そして、政府としての統一的、一体的な取り組みを進めることはもちろんでありますが、官民の総力を結集する拠点というふうになるものでもございまして、IT革命推進する上でも極めて重要な役割を担う組織である、このように考えております。  今や、IT革命は我が国経済社会の全般にまたがるものでございまして、したがって、IT諸施策はほぼすべての省庁の任務に関係しております。したがいまして、今大畠議員が御提案ありました情報通信省という、そういう役所の設置ということではなくて、本法案戦略本部によって政府として統一的な、一体的な取り組みを進める体制が適切である、このように考えておりまして、このような体制のもとで、総理大臣としてのリーダーシップを発揮しながらIT革命推進に全力を挙げてまいりたい、こう考えているところでございます。
  73. 大畠章宏

    大畠委員 時間が来ましたので終わりますが、私ども、民主党としていろいろ議論してきましたが、今の質疑等々を通じても、この基本法そのものがどうも国民の疑念に十分こたえていないと私は言わざるを得ません。ただ、いろいろな議論の中で、政府の方も、雇用問題について、IT社会変化に伴い、雇用その他の分野における各般の新たな課題について適確かつ積極的に対応しなければならないという条文をつけるというお話もいただきましたので、この部分を評価して、私ども民主党としてはこのIT基本法に賛成することにいたしました。  しかし、これから来年の通常国会で関連法案が出てくるでしょう。その具体的な法案の中でまたいろいろと論議をし、本当の意味で国民のためのIT社会になるように、総理にもお願いしているし、私どもも頑張ることをお誓いして、質問を終わります。  ありがとうございました。
  74. 佐藤静雄

    佐藤委員長 塩田晋君。
  75. 塩田晋

    ○塩田委員 日本の現在のITの水準は、世界の中においてもまたアジアにおいてもかなりおくれをとっている、低い水準にあるということは、今まで議論されてきた中でも、また参考人の御意見を聞きましても、共通した認識でございます。  これに対しまして、何としても五年以内には世界の先進国として、またアジアでもリーディングカントリーとして、ITの面で日本の国のレベルを上げていきたい。こういうことに積極的に取り組み、この国会においても最大のポイントとして、総理が積極的に、意欲的に取り組んでおられますことに対しまして、森内閣総理大臣の御努力に対しまして敬意を表したいと思います。ぜひとも頑張っていただきたいと思います。  ところで、ITそのものは、国民生活の豊かさあるいは利便さ、そして企業活動における企業経営の面でも効率化が図られる。いろいろな面でこれは非常に我々の生活あるいは経済活動にプラスになる。また、ぜひともこれを世界各国に伍して、先進国として、この国のITの問題に取り組み、これの水準を上げていかなければならぬ、このように思うわけでございます。  ところで、ITにつきましては、そのようなプラスの面、非常にいい面はもう大いに評価しないといけないし、重視しなければならないことでございますが、反面、これからのマイナスの問題があると思います。有名なマイクロソフト社におきましても、ハッカーが入ってきて被害を与えた、こういうこともあるわけでございます。  また、電子商取引におきましても、いろいろな問題が既に生じております。注文したのに相手の会社から品物を送ってこない、法外な代金をいろいろな形で請求される、あるいは欲しくもない情報、広告を随分向けられる。いろいろな面で、また中傷誹謗するような、個人に対しても、あるいは国の中傷誹謗なんかも個人的な受信で行われている。こういったことも、余り外には出ておりませんけれども、かなりひどいものがあるということも知っております。  また、電子政府をつくりたい。これも非常に結構なことでございますが、そこには既に電子署名あるいは電子の認証、こういった法律もできましたが、これがそんなに進んでいない。やはり不安感があるわけですね。やはり印鑑証明、判ことカードを持って役所へ行って、ちゃんと確かめてやる方がという、そういう不安感というものがつきまとっておりまして、なかなか普及しない。確かに、税金を納めるのも保険料を納めるのも、一つの手続で簡単に、在宅でもできるといったことは非常に便利なことでございますけれども、そこにやはり不安感がつきまとっておる。やはり、いろいろなまた犯罪的な行為も行われる。  こういうことについては、やはりセキュリティーの問題なんですね。このセキュリティーについても私は質問いたしましたけれども、セキュリティー、これはもう技術のイタチごっこの問題だ。どちらが先へ技術を越すかということにかかっているということでございました。  そういった観点から、もっと重要な問題は、国民の生命財産あるいは福祉、経済、これを守る国の安全保障、これについて、軍事的な面ではかなりITなりその技術が活用されている。これは早期に敵を発見し、そして早期に対処してミサイル等も撃ち落とすというようなことには大いに使えると思うのですけれども、逆にこれがハッカー等によって、あるいはウイルスが侵入して、これは極端な例ですけれども、例えばミサイルに向かって撃つべきものが国会に向かって落とされる、あるいは総理官邸に向かって落とされる、こんなことがあっては、これは大変なことです。取り返しがつかない。こういった面の、安全のための施策を、国としてよほどこれは真剣に取り組まないと、重大な事態が起こってからでは済まないわけでございます。  国民生活あるいは企業活動のすべての面、あるいは役所の文書のやりとり等においても非常にプラスになりますけれどもマイナスの面、これに対するセキュリティーの対策によほど本腰を入れて、国としてこの対策をする必要があると思います。  これは、もちろん各省庁でもやり、また必要に応じて民間でも自己防衛の立場から一生懸命やっておられることと思います。ただ、それが個々にやられることはもちろんいいですけれども、それを統合し、調整し、全体をつかんでおくということ。そして、技術の面では、十分に民間で技術の投資ができない面については、国がやはりこの面の専門の研究機関を持ち、そしてまた、それを統合する専門の組織をつくる必要がある、このように考えるのでございますが、総理の御所見を承りたいと思います。
  76. 森喜朗

    ○森内閣総理大臣 技術革新がどんどん進んでまいりますと、確かに国民に大きな幸せも招来をさせるわけですが、その反面、デバイドといいましょうか、それによって支障を来すケースも多いわけです。  先ほど私はつまらぬ例を申し上げましたけれども、車もやはりそうなんで、こんな便利なものはないし、これだけ経済を、物流を動かして、大発展をさせた原動力だけれども、しかし、我が国では毎年毎年一万人近い人たちが交通事故によって亡くなられているということにもなった。しかし、便利なものだから、いろいろな問題があるからこれを使わないということにはなかなかならない。それに対する対応をどうしていくかということが極めて大事なことで、そういう点について、今、塩田議員からいろいろと例示をしていただきながら御指摘をいただきました。まさに、私はそのとおりだと思っております。  政府としましては、そういう安全で信頼ができますネットワーク社会の基盤をつくるために、情報セキュリティー対策を推進しているところでありますが、IT戦略本部に、民間有識者から成る情報セキュリティー部会及び全省庁から成ります情報セキュリティー対策推進会議を設置しておりますほか、これらの取りまとめの機関として、内閣官房情報セキュリティー対策推進室も整備をいたしておりまして、官民一体となりまして、今御指摘がございましたようなことなどを含めて、情報セキュリティー対策を推進しているところでございます。  具体的には、関係省庁におきまして、情報セキュリティー関連の研究開発に取り組んでいるほかに、政府省庁では、情報の漏えいあるいは不正アクセス等の脅威から政府情報システムを防護するための情報セキュリティーポリシーを年内に策定すべく、今取り組んでおります。さらに、年内を目途に、情報セキュリティー対策推進会議におきまして、いわゆるサイバーテロ防止等のための行動計画、これも策定することといたしております。  コンピューターのネットワーク化の進展とともに、これを悪用した犯罪も増加しておりますし、これらの犯罪は、高度情報通信社会の健全な発展を阻害しかねないものであるというふうに認識をいたしております。これらの犯罪は、現行法上も、刑法の電子計算機及び電磁的記録に関する罪のほか、不正アクセス禁止法等の関係法令の規定により、相当程度までは処罰の対象となっておりますが、今後とも、コンピューターを利用した犯罪の発生状況等を十分に把握した上で、実体法及び手続法の両面から法整備について検討を進め、適切に対処してまいりたい、このように考えているところでございます。
  77. 塩田晋

    ○塩田委員 個人情報の保護の問題、あるいは特許だとかの技術面、企業の秘密等につきましてはもとよりでございますが、先ほど申し上げましたように、国の安全、防衛の問題、これは本当に真剣に積極的に意欲的に取り組んでいただくということがぜひとも必要でございます。  また、セキュリティーの問題につきましては、お話ございましたが、やはり内閣府において、民間も含めて、各省庁のそういった対策の連絡調整、そして附属機関としての技術面の研究所をやはり持つ必要がある、このように思いますので、その線でひとつぜひとも取り組んでいただきたいと考えます。本当にサイバーテロの恐ろしさというものをまだまだ実感的にはつかめないわけでございますけれども、本当にあり得ることであるし、現に各所で起こっている問題でございますから、十分に対処をしていただきたい。それにはやはり、申し上げましたように、組織と研究施設が必要だ、このように思いますので、よろしく御配慮をいただきたいと思います。  最後に、現在出されておりますこのIT基本法は、森総理の非常に意欲的な面、そしてレベルが低い日本の段階から一挙に世界の先頭を切っていくようなレベルまで上げなければならないという意欲があらわれていると思うのでございますが、やはり、意欲が先行して、この法案自体は中身が余り整ってない、いうならば拙速の法案だというふうに見るわけでございます。  およそ基本法というものは、これはもう言うまでもないことでございますけれども、十分内容を検討して、長期的な観点で、基本路線というものを明確にあらわすものでなければならないし、その後出てくる関連法案、これの基礎になるものでなければならぬ、方向をはっきりと示さないといけない。その面では、この現在の法案は、民間主導を原則とする、これは非常にいいことだと思います。しかし、実態はそうでもないということは先ほど来質問をしておるのでございますけれども、いずれにいたしましても、基本法というからには本当に日本の長期にわたっての路線を国民にはっきり示す、そして実際行おうとするいろいろな政策の基本にならなければならない、指針にならなければならない、こういうものが基本法だと思うのでございます。  基本法は現在既に十八本できているようでございますし、また環境等は、非常に重要であるからではございますけれども基本法と名づけるものだけで四本ある、このような状況で、なお今基本法が検討されているのが五、六本あるというようなことも聞くわけでございまして、まさに基本法のオンパレードといいますか、はんらんと言うのは語弊がございますけれども、そういう状況の中で、この基本法の中身は余りにも拙速に過ぎておるのではないか、このように思うわけでございます。  これは、もう森総理も当然御存じのことではございますが、一つ「広く会議を興し、万機公論に決すべし」。二つ「上下心を一にして、盛に経綸を行ふべし」。三つ「官武一途庶民に至る迄、各其志を遂げ、人心をして倦まざらしめん事を要す」。四番目「旧来の陋習を破り、天地の公道に基くべし」。五番目「智識を世界に求め、大に皇基を振起すべし」これは、御存じのとおり、五カ条の御誓文でございます。これができたのは、実に慶応四年三月であります。もう既に百数十年たっております。これは、今でもこれを読んでも通用する。ただし、日本の現在、近代国家から、日本国家がここまで発展してきたやはりその基本、もと、出発点、しかもこれは現にさんさんとして輝く原理として生きておると思うのでございます。そういうような基本法がやはりなければならないと思うんです。  そういうものがこの現代の基本法にあるかというと、私は、皆無とは言いませんけれども、非常に薄い、頼りない、内容が粗雑だ、このように思うわけでございます。非常に急がれたことが如実にあらわれていると思うのですけれども、その点で私たちは非常に残念に思っております。  それからなお、基本法というものは、あってもなくてもいいというような基本法もありますけれども、この法案はむしろない方がいいというような内容だと思うんです。  なぜない方がいいかといいますと、例えば最初の、第一の基本法は、御存じのとおり、いわゆる教育基本法であります。これは非常にプラスの面もありました。確かに、基本法は、教育は、人格の完成を目指し、平和的な国家及び社会の形成者として、真理と正義を愛し、個人の価値をたっとび、勤労と責任を重んじ、自主的精神、心身ともに健康な国民の育成を期す、こういうことも書かれておりまして、これが主眼になっておるわけですね。これはいいことです。  ところが、この基本法は、これからも大いに論議されると思いますけれども、国という観念、家という観念、あるいはコミュニティー、郷土とかふるさととか、そういった観念が全然ない。そういう基本法をつくってしまったために今日どのような悪い結果がこの面から出てきておるか、これは文部大臣をやられました総理も十分御存じのとおりだと思います。  日本伝統を重んじて、それを踏まえて、民族の文化というものを伝承するとともに、将来に向かって、東西文化の融合とかあるいは宗教、文化の併存の中で、新しい日本の国をつくっていく、国民をつくっていく、そして文化創造していく、こういうところが欠けておるわけですね。これはGHQによって、日本伝統という言葉が、原案にはあったにかかわらず、それを取れと言われて削られてしまった。そのことが今日どのような悪い結果をもたらしているか。この基本法につきましては、やはり五カ条の御誓文と比べてそれは本当に問題の教育基本法だと私は思います。  そういった基本法にならないように、もっともっと慎重に中身を検討して取り組むべき基本法でなかったかと思うのでございますが、総理はいかがお考えでございますか。
  78. 森喜朗

    ○森内閣総理大臣 五カ条の御誓文、また教育基本法、先生の大変含蓄のあるお話を承りまして、それについて私は今お答え申し上げて感想を申し上げる時間も余りないようでございますが、例えば今の五カ条の御誓文を伺っていても、このIT社会を進めていく、IT革命一つ一つ適合しているところが随分あるなと思って、本当に驚いて今聞いておりました。  ただ、当時と今と全く違ってないという御見解も述べられましたけれども、逆に言えば、また当時と違って技術革新が物すごく進んでいるということ、それから全く国境というものが希薄化されて、まさにグローバル社会になっているということ。そして、何といっても経済が非常に進んでいて、それが国際社会全体に大きく及ぶいろいろな意味での原因になっていくということも考えますと、やはりこれは、いろいろ御指摘がございますが、このIT基本法は私はこの国会でぜひ成立をさせていただいて、そしてこれから種々の問題が出てまいりますこと、また対応しなければならぬ点、これらについてもやはり即座にしっかりと政府としての取り組みをしていきたい。また、国民の皆さんにも、思い切ってこういうIT社会実現のためのそれぞれの対応の御努力もしていただきたい。  そういう意味で、私どもとしては、この法案は、世界的な規模で生じております急激かつ大幅な社会経済構造の変革に的確に対応するために、拙速だという御指摘もございましたけれども、先ほど大畠議員のときにも申し上げましたが、平成六年以来ずっと高度情報通信社会本部を中心にして議論を積み重ねてきたその成果でもございますし、IT戦略本部の戦略会議の本年の七月以来の議論も十分に踏まえて、この国会に提出をさせていただいたものでございます。急速に変化しておりますITを取り巻く環境に的確に対応して適切な施策を柔軟に講じていく必要もあるという意味でも、三年以内の見直しということを規定をいたしたのも、そういうことからでもございます。  ぜひ、そういう意味で、拙速という御意見もございますが、それよりも超えて、この法案を早く成立をさせることによって、国民の皆さんがこれに取り組む、やはりその対応をでき得るようにしていくことも政府の大事な、また国会の大事な意思ではないかなというふうにも考えております。  この基本法は、今後予定されております一連のITの関連の法改正、政策展開の基本的な枠組みになるわけでございますので、これらをリードしていく役割が期待をされている、このように考えております。  具体的には、今国会に、民間同士の書面の交付等を義務づけた法律も一括して改正するための法律案を今提出しておりますし、次期通常国会におきましても個人情報保護に関する基本法案、電子商取引の特質に応じた新たなルールなど、情報化社会の基本ルール整備のための法律案等の提出を今予定いたしているわけでございまして、電子政府の実現やセキュリティー対策など、具体的な施策を次々と展開してまいりたい、このように考えております。  いろいろ御指摘いただきましたことにつきましては、政府としても十分にその御意見等を踏まえて検討をしてまいりたい、このように考えております。
  79. 塩田晋

    ○塩田委員 終わります。
  80. 佐藤静雄

    佐藤委員長 松本善明君。
  81. 松本善明

    ○松本(善)委員 総理総理にきょうは、IT革命ということを盛んにおっしゃっていますけれども、その構想の一端を聞かせていただきたいということと、それからIT担当大臣の任命責任の問題を伺わせていただきたいと思います。  任命責任の方からまずまいりますが、私は、中川前官房長官・IT担当大臣との議員としてのつき合いも結構ありました。堺屋さんにつきましては、この委員会での御答弁をずっとつぶさに拝聴しておりまして、堺屋さんと中川さんを比べるというのは、ひょっとしたら堺屋さんに失礼かもしれないけれども堺屋さんは、私どもと立場は違うし、それから考えも違いますが、弱点もあると思いますけれども、何で、じゃ内閣、当初に、中川さんではなくて堺屋さんを総理大臣は任命されなかったんだろう、私は、そこのあたりはどういうことなんだろうかと。  副本部長はもう一人、IT担当大臣を任命することができるわけですよね。その前は官房長官、中川さんがIT担当大臣も兼ねるという。やはりよほどの思い入れが中川官房長官・IT担当大臣にあったのかな。その辺の事情をまず伺わせていただきたいと思います。
  82. 森喜朗

    ○森内閣総理大臣 中川前官房長官は、今御指摘もございましたけれどもIT戦略を進めていく上において大変御専門的な知識も持っておられました。また、堺屋さんも、それと遜色のないといいましょうか、両方とも大変な御専門の立場でございます。  ただ、各省庁、これは全体に関係する法案でございますし、政府全体で取り組むということになりますと、やはりどの省庁が、どの省の大臣がどう取り組んでいくかということについては、大変やはり各省庁の思いもいろいろあるわけでございます、率直に申し上げて。そういう意味で、政府全体で取り組む、そして各省庁にすべてが関係をするということから考えますと、官房長官がこれを所掌していく、掌握をしていくということがより適切ではないか、このように私は判断をいたしたわけでございます。
  83. 松本善明

    ○松本(善)委員 そうしますと、何で福田官房長官がIT担当大臣にならなかったんだろうかという、極めて解きがたい矛盾がありますが、それはさておき、この今の御答弁を伺いますと、やはり中川氏について非常に強い思い入れがある、非常に、内閣の最重要閣僚の一人として任命されたと思うんです。  その中川さんについてのいろいろな問題が起こっているわけですが、私は、十一月八日号のフォーカスに出ている、中川さんと女性との間の会話、これは詳報が出ております。テレビで放映されたものよりももっと詳しいです。これは大変重大なものだと思っています。それは単なる週刊誌の報道ではなくて、女性との会話自身は中川氏が認めているものである、しかも内容も重大です。放映されましたテープでは、覚せい剤の捜査情報の漏えい部分がありまして、二カ所で警視庁の保安課が動いているという趣旨のところがあります。その間をつなぐ部分が今度のフォーカスで言われているわけです。  ちょっと読みますと、「その警視庁の保安課が動いているから。覚醒剤のいろんな動きがあるよ。本当に……」「えっ、どういうことですか」「いや、君の関係を内偵しとるちゅうんだよ」「そうですか、えっ、それはどこの情報ですか」この辺からちょっと大事になるんですが、「それは警察情報だよ」「それは先生が調べた情報ですか」「そう、私の方の情報だ」「私、でも絶対そういうことないですから」「こっちも全部は言えないからさ。どういうことかなーって言ったら、」これは警察に言ったんでしょう。「それはないなら、堂々とちゃんと対応されればこちらは何でもフォローしますと……。心配せんでくださいって言われたわ、保安課から……」保安課から言われたということを御本人が認めたんですよ。「いや、そういう噂があるんで、内偵してますから、一斉に挙げますと……。こういう話なんだよ。だから、君まで巻き込まれると言うんだよ」「あのー、保安課が動いとるから、それは本当に気をつけないとダメよ。」  こういうことが、私はこれは本当に重大なことだと思います。御本人が保安課から聞いたということを認めている、それをこのまま放置するわけにいかないと思うんですよ。任命責任者としてこの事実を、こういう人を任命したということについて今何とお考えになっているか、お聞きをしたいと思います。
  84. 森喜朗

    ○森内閣総理大臣 今御指摘ありました件につきましては、中川前官房長官個人にかかわることでございますし、また官房長官に就任をいただきましたときよりも随分と以前のことでもございまして、こうしたことにつきましてあらかじめ予想できなかったということでありますが、このような事態になりましたことはまことに遺憾であります。全閣僚とも私は任命権者でございますので、そういう意味では、私が任命をいたしましたという点につきましては重く受けとめているわけでございます。  今、松本議員が御指摘いただきました、また、そこでお読みをいただいたわけですが、これはやはり週刊誌という雑誌でありますから、本当に御専門の立場でお調べをいただいたものというよりも、週刊誌とか新聞とかというのはある種のまた伝聞でもあるわけでありまして、そういうものだけをここで取り上げられるということは私は適切ではないという感じがいたします。  しかし、官房長官就任より、今お話がありました録音テープというものは、だれがどのように作成したのか、そしてどのような経路でそうした雑誌社に入ったのか、そういうことも明らかではないわけでありまして、そういう意味では、警察情報が漏えいをあたかもしたのではないかというような御指摘がございますけれども、前官房長官自身は、辞任の際の記者会見でも警察情報であることを明確に否定しているということを私は承知いたしております。  そういう意味で、私は中川議員にも、おやめになったときにごあいさつに見えましたので、一政治家としても、また前閣僚としても、このことについては明確に御自分でよく調査もされて、そしてそのことだけはしっかり明らかになさることが大事だよということを私は申し上げておりましたから、この間のクエスチョンタイムでも申し上げましたが、少し時間を彼に与えてやってほしいというふうに思うんです。  新たな何か的確なる情報で御指摘をされるということであれば、それはまたそれで受けとめなきゃなりませんが、週刊誌も週刊誌としての存在はありますけれども、その週刊誌だけを読み上げられてこれは重大なことだというふうに言われることは、果たしてそのことが適切なことかどうかな、私はやはりそういう疑問を持っております。
  85. 松本善明

    ○松本(善)委員 それは単なる週刊誌でないというのは先ほど申し上げたとおりです。御本人がこのテープを、この会話を認めておられる。それで、中川氏の調査を待つと言われますけれども、中川氏は本委員会で、辞任される前の質問に答えてどう言ったかというと、捜査情報の漏えいについては全くないという立場で答えられたわけであります。その日にテープの放映があって、その日にテープの会話を認めて辞任する。これは中川氏に任せておくというわけにはいかないですよ、この部分だけは否定をするといっても。  そしてまた、御疑念があるならば、私は本委員会でも、テープとそれから写真を取り寄せて調べようじゃないかと。中川氏と一緒に聞けば一遍にわかるんです。野党四党は予算委員会で中川氏の証人喚問を要求しています。もしこの内容について疑問があれば、そういう方法があるわけですよ。総理大臣としては、この問題は政治的な道義的な責任で、刑事責任の問題ではないですよ。国会も責任があります。内閣としても責任があると思うんですよ。  私は、やはり任命権者としては、今、当時のことはわからなかった、わかっていたら任命しないということなのかというふうにも思いますが、そのときわかっていなければ、調べる機会が何回もありました。最初は、この問題で、任命した七月四日の二日後に、七月六日に問題の六項目の質問状を送ったことが週刊誌に出ております。それから質問主意書が出ました。それについては、この部分がありますけれども、このときにも事実を調査すべきではなかったか。  今これだけ問題になっているから、内閣としては当然、任命責任者としてこの事実をやはり明らかにするということが政治的、道義的な責任ではありませんか。お聞きします。
  86. 佐藤静雄

    佐藤委員長 本日の議題はIT基本法ですから。それを念頭に御質疑願います。
  87. 松本善明

    ○松本(善)委員 それはわかっています。IT担当相の任命問題ですよ。
  88. 森喜朗

    ○森内閣総理大臣 先ほども申し上げましたように、中川前官房長官の件につきましては、この問題がいろいろと今おっしゃったように週刊誌とかに出ておるじゃないかということですが、いずれにしてもこれは数年前の話でありますし、また個人的な問題でもございます。ですから、当時としては私もそうしたことは承知をいたしていなかったわけですが、その後こうした形になってまいりましたので、御本人から御迷惑かけたくないということで辞任をされたわけであります。  したがいまして、先ほど申し上げましたように、御本人にとって大変苦痛なことかもしれないけれども、政治家として、このことをよく調査をして、先ほど申し上げたように、テープをここへ持ってきてあれすればいいじゃないかということですが、そのテープがどういうふうにしてつくられたのか、どうしてそういうものがそういう雑誌に届くのか、そういう背景というものをやはりよく考えてみる必要があると思うんです。  そんなに偶然な形で電話が聞かれていたとか、そしてそのことがテープになって雑誌社に届けられたということは、そんな偶然で行われたというふうに私は思いません。そういう背景をやはり中川さん自身もよくお調べいただいて、何らかの形で明確にその調査を発表されたらいいのではないかということを私は申し上げておりまして、御本人もその努力を今したいということで、法的な手続も含めて進めておられるというふうに私は聞いております。  先ほどもちょっと触れましたけれども、警察情報が漏えいしたのではないかという指摘に関しては、中川前官房長官は、辞任の際の記者会見でも警察情報であることを明確に否定しておられるわけでありますから、今松本議員が言われたのはそこのところが問題だということでありますが、御本人が明確にしておられるということを私どもはやはり大事にしなければならぬと思っています。  ただ、一般論として、捜査の必要があるというふうに判断されれば、警察当局において法と証拠に基づいて適切に対応されるべきものである、このように私は考えております。
  89. 松本善明

    ○松本(善)委員 内閣の任命責任者としての責任をやはり果たされるよう強く要求して、IT革命総理の構想について若干伺いたいと思います。  総理は、今国会の所信表明で二十三回ITということを言われたようでございますが、それとの関係でお聞きしたいんですが、同時に、所信表明でIPバージョン6についても触れられました。これは一体、IPバージョン6を使ってどういうふうに日本社会を持っていこうとお考えなのか、伺いたいと思います。
  90. 森喜朗

    ○森内閣総理大臣 極めて専門的なことでありますから、私が説明するとかえってわからなくなってしまうことがございますが、郵便番号が前の二けたから四けたに変わったんですか、そのときは結果的にはそれに対応でき得る容量ではなかったということで広げていくわけですが、今のインターネットにアクセスをしていくということについては、四十七億ぐらいの容量があるということですが、これが全世界がそこまでいくというふうなことを考えられるかどうか別といたしましても、相当無限に広がっていくことになるだろうということで、さらにそれをまさに無限にアクセスができ得るような、そういうシステムにしていこうということであるというふうに、私は専門家の方々にはわかりやすく言えばそういうことだというふうに伺っております。
  91. 松本善明

    ○松本(善)委員 私の聞いている範囲では、IPバージョン6はドメインが四十三億ぐらい、これがさらに四十億倍ぐらいになる。総理がお答えになっているように無限のドメインができるんですね、インターネットのいわばアドレス、住所が。こういうことになる。専門家の中でもアドレス不足はしばらく起きないと。きょう堺屋長官との間でもやったんですが、光ファイバー網ばかりつくっても使えない、亀井政調会長もそう言っている。マスコミではいっぱい言われています。そういう状態で、今すぐドメインが足りないという要求は私はないと思うんですよ。  総理はそういうこともお考えになってIPバージョン6のことをお話しになったんでしょうか。総理が所信表明でおっしゃった、そのときの気持ちを伺っているのです。中身は私わかっているのですよ、堺屋長官に説明してもらわなくたって。
  92. 森喜朗

    ○森内閣総理大臣 確かに、専門の方から見ればそれまで必要はないということにもなるのかもしれませんが、備えあれば憂いなしともいうわけでありまして、ですから、専門の方ではやはりそれだけのことを対応しておくことが、日本の国がこれから五年後に世界ITに関してのリードをしていける国になるということでありますから、そういう御専門の方々の意見も十分に伺って、その実現に努力するということも大事だというふうに私も考えています。  IPアドレスというのが飛躍的に増大する、これは、情報家電とかモバイルが世界じゅうに普及した時代においてもIPアドレスの枯渇の問題はなくなるということが大きな理由だと思いますし、恐らくこのことについては、今松本議員がお話しのように堺屋さんとやりとりをなさったと思いますので、私はその話を伺っておりませんので、私の判断といたしましては、そういう御専門の方々のお気持ちがそういう方向に、やはり技術革新を進めていくことが日本にとって大事なことだということでございますし、それがまた世界の流れであるということであるというふうに私どもは承知をいたしているわけです。
  93. 松本善明

    ○松本(善)委員 備えあれば憂いなしという話ではないですよ、これは。  もう一つ伺いますが、一九九四年の電気通信審議会の答申によりますと、光ファイバー網整備のための試算が出ております。それは、少なくて三十三兆円、多くなれば五十三兆円というものです。今はもう六年たっていますから、もっと整備しよう、もう一回り整備しようということが言われていると思いますけれども、一体総理は、このためにどれだけの金が要るのか、今の財政危機の中でどうするのか、そんなバランスを考えて御発言になっているのでしょうか、伺いたいと思います。
  94. 森喜朗

    ○森内閣総理大臣 先ほどからいろいろと御答弁申し上げておりますように、民がどこまでこれにかかわるか、あるいは公がどういう立場でこれをバックアップしていくかということだろうと思います。光ファイバーを敷設していくということについても、主要なものはやはり民間が進めていくということであろうと思います。
  95. 佐藤静雄

    佐藤委員長 持ち時間が終了しました。
  96. 松本善明

    ○松本(善)委員 堺屋さんは、いや、民間だけではだめだとさっき言われたのですが、それについては質問しません。  最後の質問になりますが、さっき堺屋さんにも言ったのですけれども、奥田日経連会長が、ITは何でも推進すべきだという立場から議論するのではなくて、やはりこれがどのような意味やインパクトを持つものか冷静に検討すべきだと、財界の方でこう言っている。私はそれなりの見識だと思いますよ。私は、どうもITITということで、何もかもそれでやっていけるかのような、本当にそういう不安といいますか、森内閣のスタンスの弱さといいますか、それを感じてしようがないのです。  総理にそのことを最後に伺って、終わります。
  97. 森喜朗

    ○森内閣総理大臣 いろいろと御指摘をいただきました点も、十分私どもとしても考えながら進めているわけでありますが、基本的なことをやはり民で進めていって、その中にあって種々いろいろな問題が出てくる、それに対して適切に対応していくということが大事だと考えています。
  98. 松本善明

    ○松本(善)委員 終わります。
  99. 佐藤静雄

    佐藤委員長 植田至紀君。
  100. 植田至紀

    ○植田委員 社会民主党・市民連合の植田至紀でございます。総理におかれましては、日々お元気でお過ごしのことと思います。よろしくお願いいたします。  さて、まずきょう総理にお伺いしたいのは、当然ながらIT基本法案に限ってのみでございます。それのみ、当たり前のことでございますけれども、お伺いいたします。あと二十分間、御辛抱いただきたいと思います。  さて、先ほども出ていましたけれども、二十三回もITITとおっしゃるぐらい、所信表明の中で森総理IT革命について力説、また強い決意を表明されているわけです。所信表明の中でも、全国民がインターネットを使えるように一大国民運動を展開してまいりたい、IT革命を一大国民運動として展開したいとおっしゃっているわけなんですけれども、では、今その一大国民運動が展開されるような現状にあるかというと、私、正直申しまして、やはりほど遠いのじゃないかと思うわけでございます。  例えば、きょうの内閣委員会。きょうはさすがに総理がわざわざ御臨席でございますので、傍聴席の方も比較的たくさんいらっしゃいますし、カメラも五台もあります。でも、この間の基本法審議、もうこの委員会はいつもがらがらやったわけですね。基本法議論をしている国会でそんながらがらな状況で、もし国会を一歩出たら、それはITというのはみんな知っています、でも、ではそれが一大国民運動やと言ったときに、ぴんとくるかいなという状況にあるかと思うのです。  でも、そういう意味一つ一番象徴的なのが、パブリックコメント。一応やられたのですけれども、来たのが八十二件、やったのは十日間。日本の人口を考えたら、一大国民運動、革命やというのに、パブリックコメントが十日しかとっていないといっても一日に八件ぐらいしか来てへんような、そういう勘定になるわけでございます。  これはどういうふうに認識されているのか。せっかくあれだけIT革命を一大国民運動やと力説されているのに、この状況というのは一体何に起因するのかということをまず伺いたいと思うのですが、どうですか。
  101. 森喜朗

    ○森内閣総理大臣 この基本法案の立案に当たりましては、民間の有識者から成るIT戦略会議議論を踏まえますとともに、広く国民の皆様からも御意見、情報をいただくため、法案骨子案を提示の上に、パブリックコメントの募集も行いました。  その結果、まず第一番目に、デジタルデバイドの解消に努めること。それから二番目は、光ファイバー網等のインフラ整備が必要です。三番目は、通信費等の低廉化が必要であります。それから四番目には、すべての国民がITを利用できるようIT活用能力の向上を図るべき、そういう幅広い御意見をいただいております。期間が短いと数が少ないということをおっしゃいますが、いろいろなパブリックコメントを政府としてもいただいていますが、これはそういう意味ではかなり量的に多いのです。  それから、そのほかに、私どもの官邸にホームページなどもございます。いろいろなEメールが参りますが、やはり非常に関心が高くて、従来のテーマ、従来のベースよりもはるかに高いということに、私どもとしても驚いているところもございます。  IT革命への取り組みにはやはりスピードが極めて大事でありますし、この委員会での御議論の中にも遅いではないかという御意見もあったわけでございますので、この臨時国会でこの基本法の提出に向けて作業を急がせたという、これはそのとおり事実ではございます。しかし、この基本法の立案に当たりましては、こうしたパブリックコメントでちょうだいした意見を十分踏まえておりますし、限られたスケジュールの中で最大限努力をしたものだというふうに、植田議員、ぜひ御理解をいただきたいと思います。
  102. 植田至紀

    ○植田委員 確かに、数が多い、少ないかといえば多いという認識のようですが、実際これは八十二件で、たくさん来ましたとはやはり言い切れないと思いますね。男女共同参画社会基本法のときにどれぐらい来たかとかいうことを考えれば、それこそ産業革命に匹敵するようなIT革命なんだというときに、国民の関心はないことはないだろうと思います、それはあるでしょう。しかし、言ってみれば、そういう意味で、大きな一大国民運動にしていくにはまだまだ困難な条件があるのじゃないかと思わざるを得ないわけです。  ただ、少ないとはいえ、八十二件の貴重なパブリックコメント、私概要しかいただいていないのですが、非常にいろいろな貴重な意見が寄せられているわけです。一応こうした意見については今の政府案ですべてきちっと盛り込んでおりますから御安心くださいと言い切れるのかどうかということをまずお伺いしたい。  それと、期間は短いがたくさん寄せられたとおっしゃいますけれども、パブリックコメント募集をして、パブリックコメントの期間が短いというような意見も寄せられているわけでございます。これだって貴重な意見だと思います。やはり、こういう意見が出されること自体、国民運動としてこのIT革命推進してIT社会の形成というものをやっていく上で、政府にはほんまにどこまでやる気があるんかいなということを疑問に思わざるを得ない部分もあるわけです。その点についてはいかがでしょうか。
  103. 森喜朗

    ○森内閣総理大臣 そうしたパブリックコメントを十二分に参考にしながらこの法案を策定し、またこれからの政策を進めていくということであろうと思います。そして、先ほど松本議員のときにも申し上げましたように、基本的にはそういう方向を進めながら、また多くの問題が出てくるわけでありますから、それに対して適切に対応していくということが大事だと思っております。  国民運動にして、さあ、やれよということではなくて、既に今の社会の中に、また国民生活の中に、もう十分これが入っているわけですね。私どものわからないところにどんどん進んでいく。それに対して、逆に我々としてはそれに取り残されていったり、あるいはそのことによって障害が生じたりということがあるわけですから、そういう意味で、政府がそれに対して適切な対応をしていく、あるいは国も、あるいは自治体も、ある意味での指導も助言もしていくということが大事だ、こう考えています。  民間の活力というのは、やはり私はすばらしいものだ、こう思っています。我が国の中ではそこだけ進んでおりませんが、既に特定の日本企業が、日本でない他の国との契約をしながら、すべて国民のオーナーズカードなんというのをもう既につくって、そういうことを実施している国もあるわけでありますし、それに日本企業がきちっと技術を指導し、協力しているというようなこともございます。  先週でございますが、工作機械の見本市というのを私はちょっと見てきましたけれども、ほとんどの工作機械は、全部IT化していました。ですから、国民運動とかそういうことよりも、国民の生活の中にすべてIT化がどんどん進んでいるというこの事実を我々はやはり十分に認識しておかなければならないというふうに考えているのです。
  104. 植田至紀

    ○植田委員 また、総理は所信表明でいろいろなことをおっしゃっておられるのですけれども、こんなふうにもおっしゃっておられるのです。「我々の目指すべき日本型IT社会は、すべての国民が、デジタル情報を基盤とした情報、知識を共有し、自由に情報を交換することが可能な社会であります。」また、IT革命を成功に導くために、国民一人一人が知恵を出し合って新しい仕組みをつくっていくことが重要だとおっしゃっているわけです。  ここの話は全くもってそのとおりだと思うわけですけれども、実際に、既に今まさに知恵を出し合っていろいろなことが進んでいる例を総理はおっしゃっておられたわけですけれども、まさにそのように知恵を出し合う主体というのは一人一人の国民なわけですね。そういう意味で、この基本法でそういう意味での国民参加をどう担保するのか、やはり基本法の中で明確になってへんやないかと私思いますし、そういう意味では、国民のそうした新しい仕組みをつくっていくための主体的な参加というものをどういうふうに保障していくのかという点について、森総理はどういうふうにお考えでしょうか。
  105. 森喜朗

    ○森内閣総理大臣 IT革命推進するに当たりましての具体的な政策を策定するに際しまして、国民の意見を反映させるということは、御指摘のとおり、極めて重要であると考えております。  こうした考えのもとで、本法案では、高度情報通信ネットワーク社会の形成に関する施策を推進するために設置する高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部に、民間の有識者の方にも入っていただくことによって、国民の意見を反映させることとしているわけでございます。  さらに、各政策においてその策定過程は異なりますけれども、これまでもそれぞれの政策の内容に応じまして、例えばニーズ調査などの実態調査の実施、公開討論会でありますとかヒアリングの実施、審議会等におきます審議、そして、先ほど御指摘もございましたように、パブリックコメントの実施など、国民の意見をできるだけ反映する仕組みを設けて政策策定に当たっているところでございます。  IT革命の本質は、すべての国民がデジタル情報を基盤とした情報、知識を共有し、自由に情報を交換することが可能なIT社会を実現することにあると考えております。そのための政策策定に当たりましては、こうした国民の意見を反映する仕組みを十分に活用してまいりたい、このように考えております。
  106. 植田至紀

    ○植田委員 お話を伺っていますと、要は、今度こしらえる戦略本部ですか、それがこしらえますのでよろしくねというお話なわけですね。要するに、我々下々の人間が、では、どこで、どの場で、どういうふうに物が言えるんだ、この基本法を通じて、では一体、そうした、あまねく国民がいろいろな場面でいろいろなふうに物を言っていく、新しい仕組みをつくっていくために、具体的に、では我々はどんな方法があるのかということについて、やはりもうちょっと明確にお答えいただきたいのです。
  107. 森喜朗

    ○森内閣総理大臣 我々下々と言われるとちょっと困るのですけれども、植田さんがそんな下々にいらっしゃるお立場だと私は思っておりません。国会におきますそうした御意見も大事に私ども伺いながら、参考にさせていただきたいと思っております。  国民の視点といいましょうか、国民の声をどう反映させるのかというお問いかけだろうと思いますが、先ほど申し上げましたように、いろいろな施策を講じ、いろいろな情報を収集し、さらにそれぞれの御専門の方々の御意見等を十分踏まえながら、こうしたIT全体は、極めて専門的なことも多いわけでありますから、そういう皆さんの御意見を十分いただきながら政策を策定していきたい、こういう姿勢でおります。
  108. 植田至紀

    ○植田委員 要は、基本法の中で戦略本部をこしらえます、そして、その戦略本部の中で重点計画をこしらえますのでよろしくねというお話だろうと思うのですが、これは委員会議論の中でも、私ども委員、また他党の先生方も取り上げたのですけれども、この重点計画自体についてまとまった、重点計画自体については何で国会報告事項にせえへんのやという議論があったかと思うのです。この重点計画はまとまりました、これについてはきちんと国会に報告させて国会で審議しようじゃないか、そういうことが何でこの基本法では盛り込まれないのか、そういう必要がないのであれば、その理由をお答えいただけますか。
  109. 森喜朗

    ○森内閣総理大臣 御指摘のとおり、国民運動としてこのIT革命推進していくためには、国民の皆さんの意見を聞くことが不可欠でありまして、そういう意味で、先ほどから植田議員の御指摘につきまして、私どもとしてもそれは謙虚に受けとめていきたいと考えているわけです。  この法案の立案に当たりましても、民間の有識者から成りますIT戦略会議議論を聴取いたしますとともに、先ほど申し上げましたように、広く国民の皆さんの御意見、情報をいただくためのパブリックコメントの募集も行いました。そして、それらの意見も踏まえて立案作業を進めてきたわけでございます。  今御質問がございました重点計画は、高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部が策定するものでございますが、その過程で国民の皆さんの意見が反映されるように工夫をしたいというふうに考えております。  さらに、重点計画の内容や各施策の目標の達成状況につきましては、国民の皆様に直接お伝えすることが望ましいと考えておりまして、このため、本法案では、インターネット等を通じまして広く、迅速に公表していくということにいたしております。  また、重点計画そのものの国会報告は予定しておりませんけれども、この重点計画のうち、法律、予算等、国会の審議や承認等の関与が必要な事項というのはあるわけでございますから、これにつきましては当然に国会の御審議等をお願いするということになろうかと思います。
  110. 植田至紀

    ○植田委員 要するに、せんだっての答弁でも、個々の予算審議でやればいいんじゃないかとか、そういう答弁があったのですけれども、だから、そういうところでITについてはやってくれという話なんですが、それはちょっと納得しかねるわけですよ。  というのは、これは、それこそ所信表明演説の中で、ITと一言、一行出てきて、このことも大切ですから私はやりますという程度の所信表明ならそれでいいけれども、あれだけ前面に打ち出されたわけです。しかも、産業革命に匹敵するというようなIT革命というごつい課題を、やはりIT革命という枠組み、政策の枠組みの中で議論すべきなんじゃないか。個々の、これにかかわっての、関連する施策はそれぞれあるんだから、それについて個々議論する場が保障されているんだから、それで結構じゃないですかというのは、話は戻りますけれども、一大国民運動として、日本型IT社会をこしらえていこうという広範な国民的な論議を盛り上げていくという意味においては、ちょっと納得しかねるわけなんですが、それでよろしいのでしょうか。森総理、お願いします。
  111. 森喜朗

    ○森内閣総理大臣 先ほど申し上げておりますように、各般の国民の皆さんの御意見を承りながら、またそういう意味では、そういう代表者の方々政府が一体になって戦略本部をこれからつくっていくわけでございますから、国民の皆さんに対していろいろな形でお諮りを申し上げたりすることも可能だというふうに思っております。  先ほども申し上げましたように、既に情報技術革新というものはさまざまな、社会でどんどん進展をしていることでございます。それにつきまして、政府としてはしっかり対応をして、先ほど申し上げたように、民と官の役割をしっかり、どういう区分をしていくのか、そして、民が進めていく上において政府としてあるいは自治体としてどのようなバックアップ体制をとり得るのか、あるいは、それによって伴ってきたデバイドでありますような障害、いろいろございますから、それに対する対策をしっかりとっておくというようなことを進めていくことがこれからの戦略本部で大事でありまして、特にこれらに関して、私はかなり多い法律改正が必要になってくると思います。それはその都度国会で御審議をお願いしなければならぬということにもなるわけでありますから、そういう審議を通じて、国民の御意見を政府としても十分お聞きし受けとめていくという機会もこれから多く出てくることになるだろうというふうに考えておりまして、必ずしもこの重点計画そのものを国会に報告しなければならぬという、私どもとしてはそういう立場はとっていないわけでございます。
  112. 植田至紀

    ○植田委員 法案では、今も総理も御説明されましたけれども、「重点計画を作成したときは、遅滞なく、これをインターネットの利用その他適切な方法により公表しなければならない。」とあるわけでございますけれども、公表しなければならないといいますけれども、これは当たり前のことが書いてあるだけなんです。公表しない方がおかしいわけであって、公表するのは当たり前なわけです。要するに、それで、はいそうですかということにはなかなかならないわけです。要は、法案が通れば、あとは総理が任命するメンバーで戦略本部が構成されて、あとは好きにやらせてもらいますよということになっちゃうわけです。  だから、今森総理が具体的におっしゃらなかった部分を聞きたいわけです。その重点計画を策定する中で、いろいろな形で国民の声が反映できるようにしたいという趣旨のことをおっしゃったと思いますけれども、いろいろな形で国民の声が反映できるようにといっても、それは具体的にどんな仕組みで、どういう形で反映されるように努力されるのか、それについてどういう方法をとられるのかということについて具体的におっしゃっていただかないことには、はいそうですかとは言えないわけです。それは聞いてもらわぬことには困るわけです。聞きますよ、ではどんな形で聞いてくれるんですかということについて、今の段階でおっしゃれる範囲でも結構ですから、具体的なことをおっしゃっていただけませんでしょうか。
  113. 森喜朗

    ○森内閣総理大臣 先ほども申し上げましたように、これらに関します新しい仕組み、またそれの対応策というのをつくっていくわけですから、そういう意味では、また国会の御審議そして国民の声を代表する議員の皆様のお話を伺っていくということも、広く意見を求めていく、意見を参考にしていくということにもなるだろうと思いますし、また、これから進めてまいります中で、またパブリックコメントを進めながら多くの国民の皆様からの御意見を集約していく、参考にしていくということも考えられることではないでしょうか。
  114. 植田至紀

    ○植田委員 私は、この基本法の中で、やはり国民の意見の反映ということについて十分に保障されていない、これは実は、一大国民運動である限りにおいて、IT革命革命と呼ぶ限りにおいて、この今回の基本法案が持っている一番根本的な問題だと思っているわけです。  総理もおっしゃっていましたけれども基本法をつくる以前から、実際、情報通信技術というのは浸透してきているわけですし、そういう意味で、むしろこの内閣委員会、きょうこれだけ、数十人いらっしゃっていますけれども、この人たち、我々含めておじさんの領域にも入りつつある、三十を超えてしまった私を含めてこういう人たち情報通信技術、パソコンを操るよりは、アトランダムに、二十三区内から小学生を同じ数だけ集めてパソコンをやらせた方がよっぽど習熟度も高いし、よっぽど詳しいでしょう。  そういう一人一人の個人がいろいろなニーズを持ちながら、いわゆるITと向き合っている、そういう中で、そういう向き合っているさまざま具体的なところで起こってきた問題なり課題なりというものを具体的に反映してこそ日本型IT社会というものが形成されるはずなんです。  にもかかわらず、一大国民運動といいながら、国民の政策形成過程に対する参加、参画というものが、いや国会の場で御議論ができます、いやこういうふうにしていますと。今聞いた範囲では、重点計画をこしらえる中でパブリックコメントを求めますよということぐらいですね、具体的な話は。それ以外にもっと広範に、しかもいろいろな現場があるわけですから、もっと言うなら、これからIT基本法ができてIT革命をやるという場合に、そういうことについてパブリックコメントを出すような問題意識を持った人だけじゃなくて、現場でなかなかそういうことと向き合うことができない人たちのニーズについてももっとこたえていかなければいかぬと思うわけです。  そういう意味で、もうちょっとそこのところを突っ込んで、今思いつく範囲でもいいですから、その辺お伺いできませんでしょうか。
  115. 森喜朗

    ○森内閣総理大臣 先ほどもお答えの中で申し上げましたように、その策定過程は、各政策において異なるわけですけれども、その政策内容に応じてニーズ調査など実態調査の実施をする、公開討論会やヒアリングの実施をする、審議会等における審議、そしてパブリックコメントなどの実施をその都度その都度やっていくわけでありますし、それから、この政策を進めていく中において、常に広く迅速にこれを公表していくわけでありますから、その都度公表をして、そして多くの国民の皆さんの意見を十分に集約する機会は、その点についてはきちんと確立しているというふうに私ども考えております。
  116. 植田至紀

    ○植田委員 一言だけ申し上げて終わりますけれども、何度説明を伺っても、基本法のどこをひっくり返しても、せんだってからおっしゃっている多様性や個人のニーズに対応するそういう方途というのは見えてこない、どこを見たら国民がこれに参加できるのかというのがやはりこの最後の段になっても見えなかったということだけ申し上げまして、終えさせていただきます。  どうもお疲れさまでございました。
  117. 佐藤静雄

    佐藤委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  118. 佐藤静雄

    佐藤委員長 この際、本案に対し、持永和見君外三名及び松本善明君から、それぞれ修正案が提出されております。  提出者から順次趣旨の説明を聴取いたします。山元勉君。     —————————————  高度情報通信ネットワーク社会形成基本法案に対する修正案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  119. 山元勉

    ○山元委員 民主党の山元勉でございます。  私は、ただいま議題となりました高度情報通信ネットワーク社会形成基本法案に対する修正案について、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、21世紀クラブを代表して、その趣旨を御説明申し上げます。  IT革命がもたらすいわゆる影の部分への対応も視野に入れながら、社会経済構造の変化に伴う雇用などの分野において新たな対策を講じる必要性があることにかんがみ、社会経済構造の変化に伴う新たな課題への対応に係る条文を創設しようとするものであります。  以下、条文を読み上げます。   高度情報通信ネットワーク社会の形成に当たっては、情報通信技術の活用により生ずる社会経済構造の変化に伴う雇用その他の分野における各般の新たな課題について、適確かつ積極的に対応しなければならない。  以上が、修正案の内容であります。  委員各位の御賛同をいただき、成立が図られるようお願い申し上げ、趣旨説明を終わります。  以上です。
  120. 佐藤静雄

    佐藤委員長 松本善明君。     —————————————  高度情報通信ネットワーク社会形成基本法案に対する修正案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  121. 松本善明

    ○松本(善)委員 私は、日本共産党を代表し、ただいま議題となっております高度情報通信ネットワーク社会形成基本法案に対し修正の動議を提出し、その提案理由と概要を御説明申し上げます。  コンピューターを初めとする情報通信技術の発展は、人類の文化技術の発展の中でも画期的な一段階を開きつつあります。特にインターネットは、既に国民の二割以上が利用し、多様な情報を入手し発信する新しいコミュニケーションの手段となっております。  今、政府に求められている課題は、この新しい技術の成果を国民のすべてが受けられるようにする方策であり、また否定的な諸問題に的確に対応するという長期的で本格的な対策であります。しかし、政府案には、こうした点で根本的問題があります。  本修正案は、基本法として必須となるべき、国民に権利としてのアクセスの保障、その政府の責任など、民主主義的立場を徹底するものであります。  修正案の概要の第一は、法案の目的に、高度情報通信ネットワーク社会の形成が、我が国の民主主義の発展及び国民生活文化の発展、公共の福祉の増進に資するものであることを明記いたします。  第二は、高度情報通信ネットワークへのアクセスを国民の権利とし、それを保障することを国の責務として、具体的な内容を明記しました。その具体化のための重点計画を策定することを義務づけております。所得、地理的制約、年齢、身体的制約などに対して具体的な対策を推進し、現実に国民のネットワークへのアクセスを保障しております。  第三に、個人情報の保護や消費者保護の徹底は、高度情報通信ネットワークを国民が安心して利用するための不可欠の要件であります。個人情報の保護や消費者保護の徹底を図るための施策を重点計画で定めることとしております。  第四に、実際に施策の策定、推進を行う高度情報通信ネットワーク社会推進本部に、国民各層からの意見を反映させるために、教育文化、科学及び産業の各分野からすぐれた識見を有する者から任命することとしております。  以上が、修正案の提案理由と概要であります。  何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたしまして、趣旨説明を終わります。
  122. 佐藤静雄

    佐藤委員長 以上で両修正案の趣旨の説明は終わりました。     —————————————
  123. 佐藤静雄

    佐藤委員長 これより本案及び両修正案を一括して討論に入ります。  討論の申し出がありますので、順次これを許します。塩田晋君。
  124. 塩田晋

    ○塩田委員 私は、自由党を代表して、高度情報通信ネットワーク社会形成基本法案に対しまして、反対の討論を行います。  まず、この法案の成立の経緯についてでありますが、IT問題に対処して意欲的に取り組んでおられる森総理の気持ちはわからぬわけではありませんが、本法案は余りにも拙速で、内容が抽象的、空虚であります。それは市場の反応を見ても明らかであります。IT戦略会議でもこの法案の詰めた議論がなされておりません。  そもそも、基本法そのものが必要かどうかを含めて十分な議論が必要であるにもかかわらず、この九月四日にできた内閣IT担当室が大急ぎで作業をして、十月二十四日、衆議院本会議で論議が始まり、はや本日、十一月九日に委員会で採決という、拙速の感は否定できません。  およそ基本法は、十分内容を検討し、長期的に国民に基本路線を明確に示すものでなければなりません。本法の見直しを三年以内とする規定があるのは、その自信のなさを示しております。  法案の内容については、第一に、目的に危機意識が不足していることであります。第二に、官と民との役割分担についての戦略が不明確であることであります。第三に、法文自体が抽象的で、あいまいな内容に終始しているということであります。第四に、ネットワーク社会推進戦略本部を設置とありますが、従来の高度情報通信社会推進本部の看板のかけかえにすぎないことであります。  以上、反対の理由を申し上げましたが、この内容の法案では修正にも値せず、政府は撤回をして出し直すべきであると考えます。  以上です。
  125. 佐藤静雄

    佐藤委員長 松本善明君。
  126. 松本善明

    ○松本(善)委員 私は、日本共産党を代表して、高度情報通信ネットワーク社会形成基本法案に対して、反対の討論を行います。  この法案は重要な基本法でありますので、公聴会も開き、国民的議論の中で審議をするなど、慎重で十分の審議が必要であります。ところが、野党四党の公聴会開催の要求を拒否して採決となったことは、極めて遺憾であります。  情報通信技術の発展は、人類の文化技術の発展の中でも画期的な一段階を開きつつあります。特にインターネットの発展と普及は、多様な情報を入手し発信する新しいコミュニケーションの手段となっています。  我が党は、新しい技術社会全体が活用できるように国民の共有財産とし、その成果をすべての国民が享受できるようにする方策が必要であるとともに、ITを利用した新たな犯罪など否定的諸問題への対応を重視すべきだと考えております。  法案に反対する第一の理由は、基本法として最も重要な民主主義の立場が欠落しているということであります。  情報通信技術の発展は、民主主義の発展、国民生活や福祉の向上、さらに文化の発展に貢献するものでなければなりません。法案は、情報技術の発展、高度なネットワークの構築を、日本民主主義の発展、多くの国民が情報を入手し発信できる言論の自由の新しい段階につなげるという基本的観点が見られません。  第二の反対理由は、高度情報通信ネットワークへのアクセスを国民の権利として明記し、国民のアクセス権保障を国の責務とするという立場が欠落していることであります。  この問題は、既に審議の中で明らかになったように、情報技術の恵沢をあまねく享受できる社会が実現できることを旨とする第三条の規定は、努力目標にすぎないだけでなく、責任を果たすべき主体さえ明記されていないことが指摘されました。そのことは、アクセス権保障が、具体的施策である基本方針や重点計画の項目で軽視されたり排除されていることを見れば明らかであります。  第三は、高度情報通信ネットワーク社会形成の必須の要件として、個人情報保護及び消費者保護の徹底を国の責務として行う点で極めて不十分であるということであります。  個人情報の流出、プライバシーの侵害という問題をどう防ぐかは、高度情報通信ネットワーク社会形成にとって最も重要な課題一つであります。ところが法案では、個人情報の保護、通信の秘密の厳格な適用と、それを保障する国の責任があいまいになっております。同様に、電子商取引の消費者保護についても、国の責任は極めてあいまいであります。  最後に、四会派共同の修正案は、我が党の修正案とかなりかけ離れているものであり、賛成できないことを申し述べまして、討論を終わります。
  127. 佐藤静雄

    佐藤委員長 植田至紀君。
  128. 植田至紀

    ○植田委員 私は、社会民主党・市民連合を代表し、高度情報通信ネットワーク社会形成基本法案に反対する立場から討論を行います。  まず第一に指摘しなければならないのは、IT革命推進の主体たる国民の参加が何ら保障されていないことです。法案のどこを読んでも、知恵を出し合って新しい仕組みをつくる政策決定過程への国民参加は保障されていません。  第二は、高速通信網などインフラの整備のみが強調され、IT革命をパソコンの普及程度にしか認識されておらず、国民一人一人にまなざしを置いた、暮らしの安心と安全の回復という視点が完全に欠落していることです。  第三は、適切な制度設計がなされなければIT革命の果実を享受できる人々とそうでない人々との間に大きな断絶が生ずるにもかかわらず、法案では、情報格差、デジタルデバイドの解消に関して、それら施策を国の責務として明示しないだけでなく、施策の方向性すら示していないことです。すなわち、国民の権利としてそれを保障する観点が欠落しているのです。  第四は、IT革命推進に伴う雇用不安への対応が不明確だということです。多くのデータや先例が示しているように、情報化の進展は必ずしもプラスの側面ばかりとは限りません。雇用の不安に対するしっかりとした対応を講じなければ、全体として中間層が先細りし、我が国においても、富裕化する層とそこからはじき出される層への二極化が進む懸念さえあります。しかし、情報化による雇用の喪失を懸念する声を受けとめた具体的な施策の方向性が明らかにされていません。  以上、政府案の問題点について幾つか指摘いたしましたが、各修正案につきましては、政府案を幾らかでも豊富化しようとの真摯な姿勢は評価いたしますし、その内容についても首肯できる点もありますが、法案を国民本位のものとするにはまだ不十分であり、また十分な論議を経たものとは言いがたく、賛成できないことをつけ加えさせていただき、反対討論とさせていただきます。
  129. 佐藤静雄

    佐藤委員長 これにて討論は終局いたしました。     —————————————
  130. 佐藤静雄

    佐藤委員長 内閣提出高度情報通信ネットワーク社会形成基本法案及びこれに対する両修正案について採決いたします。  まず、松本善明君提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  131. 佐藤静雄

    佐藤委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。  次に、持永和見君外三名提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  132. 佐藤静雄

    佐藤委員長 起立多数。よって、本修正案は可決いたしました。  次に、ただいま可決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  133. 佐藤静雄

    佐藤委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。     —————————————
  134. 佐藤静雄

    佐藤委員長 ただいま議決いたしました法律案に対し、平沢勝栄君外四名から、附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨の説明を聴取いたします。平沢勝栄君。
  135. 平沢勝栄

    ○平沢委員 ただいま議題となりました自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党及び21世紀クラブの各派共同提案に係る附帯決議案につきまして、提案者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     高度情報通信ネットワーク社会形成基本法案に対する附帯決議(案)   政府は、本法施行に当たり、次の事項について配慮すべきである。  一 すべての国民が、地理的な条件、年齢、身体的な条件その他の要因に制約されることなく、インターネット等を通じて自由かつ安全に多様な情報や知識を受発信することにより、多様な生き方や価値観を尊重しあうことができる社会の実現に努めること。  一 高度情報通信ネットワーク社会の形成に関し地方公共団体が講じる施策について、その実施に当たり阻害となっている要因の解消及びその実施の支援のため、必要な措置を講じること。  一 高度情報通信ネットワーク社会に関する統計等の資料の作成・公表については、世界最高水準の高度情報通信ネットワークを構成する諸要素に係る指標についても資料を作成し、インターネット等により随時公表すること。  一 所得によってデジタル・デバイドを発生させることなく、国民全体にIT革命の果実を還元するために、高速インターネットサービス市場への新規参入の促進などの競争促進策により、通信料金の一層の低廉化を図ること。  一 電子商取引等の促進を図るために必要な措置を講じるに当たっては、消費者保護の観点に万全を期すこと。  一 インターネット等を活用することにより、すべての国民が、行政に対する適確な理解の下に主体的に意見を表明する等の活動が可能となり、もって公正な行政の実現に資するよう、行政の情報化を一層推進すること。  一 高度情報通信ネットワーク社会の形成に関する施策の策定に当たっては、縦割りや硬直的な対応ではなく、政府として統一的、一体的な取組を進めること。  本案の趣旨につきましては、当委員会における質疑を通じて既に明らかになっていることと存じますので、説明は省略させていただきます。  よろしく御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  136. 佐藤静雄

    佐藤委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  137. 佐藤静雄

    佐藤委員長 起立多数。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。  この際、政府から発言を求められておりますので、これを許します。堺屋国務大臣
  138. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 高度情報通信ネットワーク社会形成基本法案につきましては、本委員会において御熱心な御審議の上、ただいま議決を賜り、深く感謝申し上げます。  ただいまの附帯決議につきましては、その御趣旨を十分に尊重いたしまして、努力いたす所存でございます。     —————————————
  139. 佐藤静雄

    佐藤委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  140. 佐藤静雄

    佐藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  141. 佐藤静雄

    佐藤委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時十四分散会