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2000-11-02 第150回国会 衆議院 内閣委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十二年十一月二日(木曜日)     午前九時四分開議  出席委員    委員長 佐藤 静雄君    理事 大野 松茂君 理事 阪上 善秀君    理事 平沢 勝栄君 理事 持永 和見君    理事 荒井  聰君 理事 山元  勉君    理事 斉藤 鉄夫君 理事 塩田  晋君       岩倉 博文君    岡下 信子君       熊谷 市雄君    谷川 和穗君       谷田 武彦君    近岡理一郎君       根本  匠君    二田 孝治君       松野 博一君    井上 和雄君       石毛えい子君    大畠 章宏君       中田  宏君    楢崎 欣弥君       山花 郁夫君    白保 台一君       松本 善明君    矢島 恒夫君       植田 至紀君    平井 卓也君       粟屋 敏信君    徳田 虎雄君     …………………………………    国務大臣         堺屋 太一君    内閣官房長官      安倍 晋三君    総務政務次官       海老原義彦君    科学技術政務次官     渡海紀三朗君    沖縄開発政務次官     白保 台一君    大蔵政務次官       村田 吉隆君    文部政務次官       鈴木 恒夫君    通商産業政務次官     坂本 剛二君    通商産業政務次官     伊藤 達也君    郵政政務次官       佐田玄一郎君    建設政務次官       植竹 繁雄君    自治政務次官       中谷  元君    政府参考人    (内閣審議官)      古田  肇君    政府参考人    (内閣審議官)      平井 正夫君    政府参考人    (国税庁課税部長)    村上 喜堂君    政府参考人    (通商産業省機械情報産業    局長)          太田信一郎君    政府参考人    (特許庁総務部長)    北爪由紀夫君    政府参考人    (郵政省電気通信局長)  天野 定功君    政府参考人    (労働省職業能力開発局長    )            日比  徹君    政府参考人    (自治省行政局選挙部長) 片木  淳君    内閣委員会専門員     新倉 紀一君     ————————————— 委員の異動 十一月二日  辞任         補欠選任   熊谷 市雄君     松野 博一君   石毛えい子君     大畠 章宏君   松本 善明君     矢島 恒夫君   北村 誠吾君     平井 卓也君 同日  辞任         補欠選任   松野 博一君     熊谷 市雄君   大畠 章宏君     石毛えい子君   矢島 恒夫君     松本 善明君   平井 卓也君     北村 誠吾君     ————————————— 十一月二日  国民本位行政体制充実等に関する請願(石井一君紹介)(第八六三号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  連合審査会開会に関する件  政府参考人出頭要求に関する件  参考人出頭要求に関する件  高度情報通信ネットワーク社会形成基本法案内閣提出第一四号)     午前九時四分開議      ————◇—————
  2. 佐藤静雄

    佐藤委員長 これより会議を開きます。  内閣提出高度情報通信ネットワーク社会形成基本法案を議題といたします。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本案審査のため、来る七日火曜日、参考人出席を求め、意見を聴取することとし、その人選につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 佐藤静雄

    佐藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  お諮りいたします。  本案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣内政審議室内閣審議官古田肇君、内閣官房内閣内政審議室内閣審議官平井正夫君、国税庁課税部長村上喜堂君、通商産業省機械情報産業局長太田信一郎君、特許庁総務部長北爪由紀夫君、郵政省電気通信局長天野定功君、労働省職業能力開発局長日比徹君及び自治省行政局選挙部長片木淳君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 佐藤静雄

    佐藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  5. 佐藤静雄

    佐藤委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大畠章宏君。
  6. 大畠章宏

    大畠委員 民主党大畠章宏でございます。  私は、今回のIT基本法通称IT基本法に対して、民主党の基本的な考えを申し上げながら質問をさせていただきたいと思います。  最初に、この法律案提出に至る経緯について、堺屋担当大臣に端的にお伺いしたいと思います。
  7. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 情報通信高度化の進展に伴いまして、政府といたしましては、従来より、高度情報通信社会推進本部、これは平成六年の八月にできておりますが、それをつくりまして、翌七年二月に、高度情報通信社会推進に向けた基本方針の策定をいたしました。これは、さらに平成十年十一月に改定をしております。また、電子政府実現等に向けたミレニアムプロジェクト、これは、平成十一年十二月に推進等を閣議決定いたしますなど、個別政策の実施に取り組んできたところでございます。  しかしながら、近年のインターネット等高度情報通信ネットワークの急速な普及によりまして、これまでの技術開発産業構造変化とは異なり、社会人間関係や組織の構成原理根本から変えるものになってまいりました。その結果、個人の生活様式社会経済の活動、行政のあり方など広範な分野において本質的な改革が進みつつあります。産業革命以来の大革命になると私ども考えておるわけでございますが、そういった歴史的な段階の飛躍ということを考えまして、これがIT革命と言われるゆえんでもあるのでございますが、こういった大きな文明的な変化を象徴的に表現しているのがIT革命でございます。  そんなことを考えますと、これによって生じる知識創造型の社会にふさわしい多様な国民生活と活力ある経済社会実現のためには、従来にも増して積極的な取り組みが必要であり、政府といたしましても、ことしの七月より、全閣僚と産学の有識者等をメンバーとして、IT戦略本部戦略会議を設置して検討してまいったところでございます。  一言で言いますと、日本が今までずっと考えてきた情報政策というのは、コンピューター電話線をつないだ感じだったのですね。それが、インターネットが一九九三年にアメリカから始まりましてから、条件が非常に変わってまいりました。平成七年につくったときには、まだインターネットというものを主軸に置いた考え方が乏しかった、ここに日本がやや立ちおくれた点がございました。  そういうことを反省いたしまして、日本もそれなりには進歩したのでございますけれども世界が飛躍的な進歩をしたので、これにおくれちゃいけないということで、今回、ただいま審議していただいております基本法案提出したわけです。  このように、高度情報通信社会推進本部中心としていろいろと積み重ねてまいりましたけれどもインターネット、それが電話線コンピューターのものとは違うということが明確になりまして、今度、新しい理念世界におくれない理念で飛躍しよう、そういうことでこの法案を出させていただいている次第でございます。
  8. 大畠章宏

    大畠委員 今担当大臣からお話をいただきましたが、非常に重要な法律案だと思いますね。  しかし、私は、ここでちょっと質問に入る前に指摘しておきたいんですが、森総理が今臨時国会冒頭で、今国会はまさにIT国会だという趣旨の発言をずっとしたにもかかわらず、自由民主党の幹部が、選挙法が重要なんだ、選挙法改正案を通すために他の法律案は全部流れたっていい、予算案以外は全部流れてもいいなんて、そういう暴言を吐いていたわけですよ。私は、一体何を考えているんだ。自分たち選挙で当選することを優先するのか、あるいは日本の将来を考えてきちっとしたことをやろうとするのか、どっちをとるかといったら、自分たちの当落を考えたわけですよ。私は、この今回の一カ月間の空白は、まさに与党の政治的な姿勢そのもの原因があったと思いますよ。それを冒頭にちょっと強く指摘しながら質問に入りたいと思います。  今、堺屋大臣からお話ありましたように、このITというのは、正直言って、残念ながら五年間ぐらいおくれてしまいました。アメリカ、ヨーロッパ、アジアもかなり進んできていますが、残念ながら五年間ぐらいおくれたのかな。このIT基本法というのが本当に、私たちも正直言ってここまで進むとは思っていませんでしたけれども、五年前ぐらいにこういう形の動きがとれていたら、そんな思いをします。  さらには、景気回復ということで、非常に公共事業にウエートを置いた形の投資がずっとされてきましたけれども、もっと早く転換をして、そういう投資先というものを形を変えていればという残念な思いを持っております。  いずれにしても、今回IT基本法というのが与党の方から出されたということは、一つ考えとして理解するところでありますが、ただ、今回のIT基本法というものをよく読ませていただきましたが、どんな社会を目指すのかというのがさっぱりわからないというのが実態であります。ITというのは手段であって目的ではないということをよく言われています。一体この日本型IT社会というのは、政府の方としてはどのような社会考えているのか。これは非常に広範なものであって難しいのでありますが、堺屋長官のお考えを端的にお伺いしたいと思っています。
  9. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 法案では、インターネット等高度情報通信ネットワークを通じて自由かつ安全に多様な情報知識をグローバルに入手し、共有し、発信することにより、あらゆる分野における創造的かつ活力のある発展が可能となる社会高度情報通信ネットワーク社会と定義しております。  法案の定義はこういうことでございますが、委員のお尋ねはこのことではございませんで、もっと根本的なお話をしておられると思いますので、ちょっとつけ加えさせていただきたいと思うのです。  今起こっておりますIT革命というのは、中心になっているのはインターネットでございます。これまでの情報というのは、大体マスコミというのが一つございまして、これが天の板のようになっていた。そこから情報が雨のごとく降ってくる。全国一律に同じような情報が降ってくる。そして、一般に、情報を受ける者からマスコミの方に、放送、出版の方にはね返す方法というのは、放送に関する限りはなかった。これは手紙を出すとか電話をかけるという、通信では反応できたわけですが、放送は上から下へ行く。それに対して、一般の受け手の側は電話のような、地をはうような形になっていて、この二つの間に大きく乖離がございました。  インターネットというのは、この間を詰めまして、上からも情報が流れるけれども、一人一人の人が情報発信機能を持てるということで、情報環境立方形になっている。二枚の板から立方形になる、このことによりまして社会が大きく変わると思います。  人間は、人類は、一番昔には、血縁社会、先祖を同じくする者が一つになって部族とか氏族をつくって、狩りをしたり貝を拾ったりしておったわけでありますが、それがやがて農業をして、土地の縁、水の流れをともにする者の縁で地縁社会をつくった。ところが、産業革命になりまして自由に移動するようになった。その結果、地縁社会血縁社会が緩みまして、職場一緒に働く者が同じ共同体、特に戦後の日本会社一緒にする者、役所で一緒にする者、これが非常に強いきずなになってまいりました。  ところが、ここへ参りまして、産業流動化が進み、労働力流動化し、さらに長寿社会になりますと、職場から離れた後の人生も長い、そういうことを考えますと、職縁社会が急速に崩れつつある。これに、これからの社会というのは、こういったインターネット中心とする高度情報社会でつながって、それによって自分と同じ趣味の者、自分と同じ好みの者、あるいは同じ悩みを持った者、そういったものが結びついていく、私の言葉で言いますと、好みのえにし、好縁社会、そういったものができていく。それが助け合い、また情報を交換し、楽しみ合う、そんな社会が生まれてくるんじゃないか。そういう意味で、非常に大きな変化が出てくるんだろうと思っております。  この法案も、そういった社会一つの前提と考えて構成されたものでございます。
  10. 大畠章宏

    大畠委員 堺屋大臣の話を伺っていると、歴史論から始まって、非常に広がりがあるんですが、今回の法律案を見る限り、そんなイメージは全く浮かんでこないんですよね。  私は、電気通信審議会というところの資料をいただきましたけれども行政、教育、医療、福祉、防災、家庭、娯楽と、非常に広範にバラ色といいますか、夢が語られているわけでありますが、正直言いまして、このIT革命の進んでいるアメリカでどんな現象が起こっているのか。これは、いわゆる光と影といいますと、影の部分というものをかなり意識しなければならないんじゃないかと思うんです。  堺屋長官も御存じだと思いますが、アメリカIT革命が進んで、景気が上昇しました、景気がよくなりました。しかし、そのよくなった影に失業者がふえました。これは、いわゆる中間管理職というのが不要になりまして失業者がふえたわけでありますが、そういう影の部分というものをとらえていかないと、単に今回の政府の案はいわゆるIT普及促進法的なものであって、ただ単にIT化すればいいんだ、後の社会はどうなるかわからない。  今の日本経済の不況の原因というのは日本人の心の不安なんですね、未来に対する不安。ですから、今回のIT促進についても、未来は安心できるんだ、人間にとってプラスになるんだという、そんなイメージを出していかないと、このIT促進によってそこからはじき出される人、あるいはコンピューターを扱えない人とか、コンピューターを買えない人とか、あるいはそういう中間管理職の人ですとか、どんどん社会的に不安が広がってしまうんじゃないかという懸念も私はあるわけであります。  私ども民主党は、基本的に、「人間中心情報化社会をめざして」という政策をことし三月時点でまとめましたけれども、内容は、やはり人間というものを考えた、人間というものの尊厳を考え社会にしていきたい、そのためのIT化なんだという目標をきちっと示しています。それから、情報公開地方分権を進めて、政府行政スリム化を図りながら住民サービスの向上を図る。もちろん、そのIT社会の恩恵を受ける人間というものをきちっととらえていく、あるいは影の部分に対してきちっと手当てをしていく、そういう理念というものを明確に持って私は行っていくべきじゃないかと思うんです。  今回、このIT基本法というものを読ませていただいていますが、どうもそこら辺が欠落しているんじゃないか。九月四日に指示が出て、九月の十八日にはもうパブリックコメントを締め切る、非常に駆け足なんですね。言ってみれば、各省庁からどんなことがあるんだというので、その部分だけを集めてつくり上げてしまったというのがIT基本法ではないかと思うんです。  私は、用意ドンスタートボタンを押すことはいいのですが、では、どっちの方向に走るんだということを明確にしておかないと国民は戸惑うのじゃないかと思うわけでありますが、この件について、歴史観はまた別のときにお伺いしますから、この問題について堺屋長官考え伺いたいと思います。
  11. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 提出させていただいております法案の第三条に、「すべての国民が、インターネットその他の高度情報通信ネットワークを容易にかつ主体的に利用する機会を有し、その利用機会を通じて個々の能力を創造的かつ最大限に発揮することが可能となり、」という、この「すべての国民」ということを理念一つにうたっております。  また、八条でございますが、ここには「利用機会等格差の是正」ということが書いてございまして、この高度ネットワーク社会形成に当たっては、地理的な制約、年齢、身体的な条件、そういったものに基づく情報格差をなくさなければならないということを述べております。  さらに、先生指摘の時間的な問題、これは全体の目標としての理念でございますが、時間的に、アメリカでも始まったとき、最初中間管理職がかなり減ったということが報告されておりまして、実はその報告書、「アメリカの没落」という名前の本でございますが、私が翻訳したのでございますけれども、そのころ、確かに二年から三年、ジョブレスリカバリー、景気は変わってきたけれども仕事はふえないのだと言われたことがございました。  そういうことも重々参考にして、そんなことがないようにしなければならないと同時に、さらに、そういう経済変化消費者利益を通じて日本全体の生産性を高め、すべての人々に格差なくこの利益が恩典するようにしていかなければいけない、これをこの基本法、そしてその基本法に基づいてつくられる戦略重点計画等に盛り込まねばならないと考えております。
  12. 大畠章宏

    大畠委員 非常に駆け足でやっているわけでありますから、いろいろと大変だったというのはわかりますが、長官も覚悟を決めてこのIT担当大臣というのをお受けになったわけですから、ぜひ全力で政府のいろいろな問題点というのを克服していただきたいと思うんです。  もう一つ、実はアメリカの方のIT革命の中核は何かというと金融であるという話を聞いています。いわゆるアメリカの直接金融というのが非常に進んでいて、今日本でも東京大学等金融工学部というのをつくろうという話をされているそうですが、結局、今のアメリカ経済というのはインターネットバブルではないか、実績がないのだけれども期待感でどんどん膨らんでしまう、そして、会社の方は株価を高くするのが会社の目的化している、健全な社会観というのを取り戻さなければならないというような声もアメリカから聞こえてくるのですね。  私は、日本がこのIT革命をして、やはり金融機関がどんどん伸びるでしょう、アメリカと同じように実体がないインターネットバブルみたいなものを生んでしまったら、日本の物をつくるというものが滅びてしまうのじゃないか、衰退してしまうのじゃないかと、そこは非常に強く懸念しています。したがって、日本IT革命を進めるためにはそういうところに十分配慮をしなければなりません。  さらに、具体的な例で言いますと、最近では、電気屋さんでインターネット販売を始めましたね。そうすると、町の電気屋さんなんかは必要なくなっちゃうわけですよ。町の電気屋さんはどうしたらいいのだ、こんな声も聞こえてきます。したがって、今長官国民すべてに利益を享受するという総論をおっしゃいましたけれども、実際問題はかなり谷あり山あり日陰あり、全部享受するなんというのは難しいと私は思うんですよ。  例えば、この電気屋さんがインターネット直販を始めたときに、町の電気屋さんはどうしたらいいかと聞かれたときに、長官は今答えることは多分できないと思うんですが、私はここら辺も十分考えてやっていかなければならないと思います。  そこで、きょうは各省庁から政務次官の方にも来ていただいていますので、具体的な各省庁の対応についての現状をお伺いしたいと思います。  質問通告をいろいろしておりますが、私は、まず最初に、やはり担当郵政政務次官にお伺いしたいと思うんですが、諸外国に比べて高くて遅いインターネット回線が我が国のIT化をおくらせているという指摘がありますが、郵政省としてはどのようにこの指摘を受けとめておられるのか、お伺いをいたします。  さらにもう一つ情報通信関連法諸法抜本的見直しが必要ではないかということで、競争促進的な整合性のある法体系を整備すべきだという御指摘もいただいているところでありますが、このことについて郵政政務次官の御見解をお伺いしたいと思います。
  13. 佐田玄一郎

    佐田政務次官 先生の御指摘のとおりでありまして、今のところ従量制料金というものが使われておりまして、通信料金が高いというふうに言われております。そしてまた、大容量データを伝送する、これがちょっと遅いのじゃないか、こういう御批判も受けております。  それに伴いまして、定額料金制の導入については、従来より民間事業者に対して要請を行ってきたところでありまして、特に東西NTTは、ISDNを利用した月額四千五百円の完全定額制サービスを本年七月から本格サービスとして行っておるところであります。  また、NTT以外の事業者においても、CATV事業者DSLサービス提供事業者は既に定額制実現しているところでありまして、なお一層低廉な完全定額制全国で早期に実現できるように環境整備を整えていきたい、こういうふうに思っております。  それと、通信ネットワーク関係でありますけれども、超高速そしてまた大容量通信を可能とする光ファイバー網について、従来から、これは民間主導原則でありますけれども各種支援措置を通じて整備促進を図ってきているところであります。  また、光ファイバーのみならず、今いろいろと御指摘をいただいておりますけれども、例えばDSLCATVそしてまた無線アクセス回線など、高速インターネット利用を可能とする多様な広帯域加入者網普及促進を図ることが重要であり、こうした認識のもとに、これまでDSLサービスに関連した接続ルール、これはいろいろ御批判も受けておりますけれども接続ルール整備等を行っているところであります。  また、全国的には、二〇〇五年に向けた光ファイバー網全国整備に向けて、地方中心とした光ファイバー網の一層の整備促進を図るとともに、広帯域加入者網普及を促進するために、御案内のとおり、電気通信基盤充実臨時措置法に基づく財政上、税制上の支援の一層の強化充実を図っているところでございます。  それと、先ほどの法体系の問題でありますけれども、本年七月に、電気通信審議会に「IT革命を推進するための電気通信事業における競争政策の在り方について」諮問をしているところでありまして、現在、同審議会特別部会におきまして、支配的事業者規制そしてまた線路敷設円滑化等競争政策をめぐる主要論点について御審議をいただいているところでありまして、同審議会から速やかに措置すべき事項につき一部答申があり次第、電気通信事業法NTT法改正を含む所要の措置を講じ、電気通信事業者が低廉そして高速、安全な通信サービスに対するニーズに的確に対応できるように尽力していく所存であります。  以上です。
  14. 大畠章宏

    大畠委員 また、関連する問題については同僚の委員から質問させていただきます。  その次、私は、実は、ことしの九月にアメリカのシリコンバレーにもちょっと行ってまいったんですが、そのときに聞いたのは、もちろんITという言葉も聞きましたが、ICという言葉を聞いたんですね。ICというのは、インド、チャイナということですよ。IT革命IC革命というふうな話も聞いたんですが、要するに、インドの方と中国の方、人材的に非常にこの分野ですぐれているんですね。アメリカソフト開発とかそういうものには、非常にインドの方、インド系アメリカ人中国系アメリカ人の方が活躍しているという話なんですが、この人材問題について、文部政務次官科学技術政務次官にお伺いをしたいと思うんです。  いずれにしても、どんなに機械を配っても、パソコンを配っても、それを扱いながら、そして新しいソフトを開発するという人がいなければできないわけでありまして、そういう意味では、一言で言いますと、現在の芝刈り機方式の教育方式、余り出ちゃいけない、下がっちゃいけないというので、平準化した教育というものはもう日本になじまないんじゃないかと私は思います。  このIT社会を迎えるに当たって、文部省は、人間教育のためにどんなことを考えているのか。あるいは、今の大学というものをもっと活用しなければならないと私は思います。アメリカのシリコンバレーでも、スタンフォード大学というのが中核になって入っていることはもう間違いないわけでありますし、日本でも、大学というものの活用を考える、あるいは教授、助教授、大学院生、大学生を総動員して、この分野の最先端の技術開発を図っていくということも大変重要だと思うんです。  この件は、文部省だけではなく科学技術庁の担当でもあると思うんです。したがって、学校教育問題について文部省はどう考えているのか、あるいは、IT社会を支える技術者を育てるという観点から科学技術庁はどのように考えているか、あわせてお伺いしたいと思います。
  15. 鈴木恒夫

    ○鈴木(恒)政務次官 お答えを申し上げます。  私ども文部省、教育改革を懸命に今進めようとしているところでございますけれども、一番大きな問題点として、戦後教育の中で我々は余りにも画一化、平準化というものにウエートを置き過ぎてきたのではないかという反省がまず基本的にございます。そうした意味で、平成十四年度から、新しい学習指導要領に基づきまして、特に小中学校、高等学校の初等中等教育においては、もう少し子供たち自分考える、あるいは自分で問題を解決していく能力を持つ、自分で自主的に行動ができる、そういう、我々の用語でございますけれども、生きる力を持った子供をつくろう、こういうところに基本を置きまして、今さまざまな具体的な努力を制度面あるいは法律面、その他で進めているところでございます。  生きる力をつけるために、例えば小学校三年以上の子供たちには、いわゆる総合的な学習の時間、これは、それぞれの学校あるいは教師自身が、極端に言うとどんなことをやってもいい、子供に生きる力をつけるためにさまざまな実験的教育を施し得る、そういう時間帯を持たせよう、こう考えて、これを目玉に今新しい学習指導要領を進めているところでございます。  先生指摘ITに対する教育も、そうした中で、我々は一本の大きな柱として、例えば語学教育などと並んで重要視していくことにしてございまして、平成十四年度から、小学校におきましては、今申し上げました総合的な学習の時間の中で、あるいは中学校におきましては、同じように、技術・家庭という教科がございますけれども、その中で情報コンピューターを必修にしよう、あるいは高等学校におきましては、情報科という科を新設することにしてございます。  先生先ほどお話しの、大学その他についてはどうかという御指摘でございますが、我々文部省は、平成十二年度に国立情報学研究所というものを新たにつくりまして、つい先日お亡くなりになって非常に残念なことをいたしましたが、文化勲章をとられました猪瀬博士を先頭にいたしまして、共同利用機関を設置したところでございます。九十億円の予算をこれにつぎ込んでございます。  それから、大学におきましては、トータルの数字で申し上げますと、平成十一年度まで八百五十二学科しかございませんでした情報関係学科を平成十二年度は九百十一学科にふやす、あるいは大学の入学定員も、平成八年度六万三千人でございましたけれども、これを平成十二年度七万四千人にふやす、そうした人材育成を心がけているところでございます。  それから、お話インド中国が非常にコンピューター教育が進んでいるではないか。私は不勉強にして、パハレというんですか、こういうものは全然わかりませんけれどもインドの方々は、こういうことでシリコンバレーなどでも活躍されているということがございます。我々も外国人の力をどんどん導入しなければならぬと考えまして、例えば外国人研究員受け入れ制度というものを今進めておりまして、平成十年度で七百十八人の方々に日本に来ていただいておりますし、若手の外国人特別研究員制度も進めてございまして、平成十一年度、千二百四十人受け入れてございます。このうち、実に、インドの方が百十二人、チャイニーズが三百四十人、両国合わせて三分の一がこのICの国々からの受け入れでございます。  なお一層、IT教育につきましては努力を続けるつもりでございます。
  16. 渡海紀三朗

    ○渡海政務次官 大畠議員おっしゃる人材というのは、大変重要な問題でございます。私は、研究開発のポイントというのは、やはり、まず環境をつくること、そして、研究開発に適正に十分な資金が用意されること、そして、何よりも適正な人材が配置をされていること、こういうふうに考えておるわけでありますが、その中で、ITもこれは委員指摘のとおりであろうというふうに思います。  そういう中で、科学技術庁が所管をいたしておりますといいますか事務局をやらせていただいております、国の科学技術政策を決めさせていただく科学技術会議、ここでも、実は平成十一年の六月に、このIT分野情報戦略において人材が少し薄いというふうな指摘もされておりまして、さまざまな制度を用意しながら、現在、人材の育成を図っておるところでございます。  例えば、平成七年から行われておりますポスドク一万人計画というのがございますが、そういった中でもできるだけ若手研究者が活用されるような施策を講ずるとともに、最近よく使われる言葉でございますけれども、競争的資金、簡単に言いますと、研究室の若い方々が提案した、その提案に対してちゃんとお金が用意される。そういったような資金を用意して、より創造性豊かな——大畠議員よく御存じだと思いますが、アメリカインターネットというのは、本当に、学生のNPOからスタートしたわけでございますよね。そういうことも考えますと、そういった創造性の非常に豊かな、我々の世代、同じ世代でございますが、創造性豊かかどうかちょっと危ないかなと思っておりますが、やはり、こういう若くて創造性豊かな方々がもっと活躍していただけるような環境をつくっていく。  先ほど鈴木総括政務次官からもお答えになりましたが、我が省に振興事業団というのがございまして、特殊法人でございますが、こういったところのフェローシップ制度も活用させていただいております。  これは、後の方の御指摘でございますけれどもICの問題、そんな問題等とも絡みますが、海外からの優秀な研究者を日本に呼ぶという制度もつくっておりまして、数字でいいますと、平成十一年度で全体で四百九人、そして中国がこの中で九十六人、インドが四十五人、全体の中の割合としては結構多いかな、そんなふうに思っております。  今後とも、大変重要な問題でございますので、しっかりとこういうことの施策を遂行していきたいというふうに考えております。
  17. 大畠章宏

    大畠委員 また機会がありましたらいろいろと質問させていただきます。  今文部省からもお話ございました、鈴木政務次官からもお話ありましたが、日本の子供たち未来に夢を持っているかというアンケートに対して、三割しか持っていないという答えが来ているんですね。これは、中国とか韓国、アメリカ、ヨーロッパ、大体七割ぐらいが子供たちは夢を持っているというんですよ。ここから解決しないと私は難しいんじゃないかと思うんですね。どんなにいろいろ、先ほどお話がありましたが、もっと抜本的なところに問題があるのかなと思いまして、またぜひ努力をしていただきたいと思うんです。  それから、電子政府の早期実現をという声がございます。私はやはり、情報公開地方分権というのをこの際IT革命と同時並行的に進行させて、もっと、地方政府と言ってもいいんでしょう、地方自治というよりも地方政府をつくって、がらりと変わる。地方の方々は、言ってみれば、中央政府の抑圧から、束縛から逃れて自由に生きられる、そういうことに私は転換をすべきだと思うんですが、この件について、総務政務次官自治政務次官にお伺いしたいと思います。
  18. 海老原義彦

    ○海老原政務次官 お答えいたします。  このIT革命というのは、やはりITの技術というものを推進することは国民生活にとって一つ革命的な意味が出てくる、いわば技術の発展が社会の発展につながるという思想がその根底にはあるんだろうと思います。  そういうことでございますので、お尋ねの電子政府実現につきましても、単に行政手続の電子化を進めるだけでなく、これによって、国民の利便性の向上、あるいは国民に開かれた行政、透明性といったようなことの実現に資するものでございます。  そのような一般論のもとで、こういった観点から、御指摘情報公開及び地方分権の問題でございますけれども、まず情報公開につきましては、インターネット等の閲覧技術の進展に対応して、行政情報の公開について一層充実を図る必要があると考えております。また、国、地方を通じたネットワークの構築は、国民に身近な自治体において各種手続、行政サービスの提供などを行うことを可能とするものでありまして、これを原動力として、より一層の地方分権を進めていく必要があると考えている次第であります。
  19. 中谷元

    ○中谷政務次官 地方分権の推進と情報公開につきましては、現在、各自治体でそれぞれ努力をされているところでございますが、国の体系といたしましては、本年四月から地方分権一括法が施行されまして、真の意味の地方分権を目指して進んでおりますが、残念ながら、地方税財源の確保の問題、また事務、権限移譲がまだまだ少ないという問題がありますので、これも同時並行に進めているところでございます。  そして、地方分権と言うならば、自治体の自己決定、自己責任が求められるところでございますが、そういう意味での情報公開というものが必要でありまして、さらに進めてまいりたいと思います。  委員の方からITが五年おくれたというお話もありましたけれども、しかし、iモードとかデジタルテレビとか、映像も送れる次世代の携帯電話の運用とか、これは世界に先駆けて行われるところであります。  先ほど堺屋長官からも言いましたけれども情報化のメリットは双方向であると。双方向であるなら住民と自治体の対話も進んでいくと思いますので、地方情報格差も少なくなってきておりますので、自治省としましても、このような変化を取り入れましてさらに地方分権の推進に向かって努力をしてまいりたいというふうに思っております。
  20. 大畠章宏

    大畠委員 労働省からも来ていただいていますが、だんだん時間がなくなってきました。私は、先ほど申し上げましたように、いろいろと労働省からもお話を伺っているんですが、現在のIT革命が進んだ場合の中間管理職というのがどうなるのか。一生懸命頑張れば、新入社員で入ったら、係長になって、課長になって、部長になって、取締役になったら社長になるというのがサラリーマンの一つ目標だったんですが、その中間がごそっと抜けるかもしれないという不安感が今あるんですね。そういう意味では、労働省もここら辺、従来の雇用対策だけでは私は十分できないんじゃないかと思うんです。  実は、堺屋大臣、私は今ずっとお話を伺っていて、やはり今のままでは、とにかく、各省庁頑張っていただいていますが、今の日本社会の教育や福祉や何かのさまざまな危機、あるいは地方自治体の財政赤字、あるいは、世界では情報通信社会がどんどん進んで、アメリカが地球を大体包囲するぐらいの影響力を持ち始めているという中で、非常に危機感が足らないと思うんですよ。  私は、ある人から、大畠さん、IT社会をつくるならば戦略を持てと言われたんですね。残念ながら、日本政府IT基本法には戦略が見えません。ただIT普及促進法という感じはわかるんですが、どこに向かうんだ、どんな社会ができるんだ、地方自治体ではどんな変化が起こるんだ、町の魚屋さんでは、電器屋さんではどんな変化が起こるんだ。やはりそこまで包含しながらやるとしたら、とてもとても、今回堺屋さんが担当大臣ということになりましたが、それだけで本当にやり切れるのか。  省庁再編でいろいろ指摘がありますが、そうでもない部分があるという話がありましたが、やはり日本は全体的におくれてしまったことは事実だと思うんです。韓国やあるいは中国の広州というのもかなり進んだという話も聞いていますし、このおくれを取り戻しながら、アメリカ情報戦略あるいはヨーロッパ、アジアのさまざまな変化に対応するのには、私はこの際、省庁一つつくるべきだと思うんですよ。IT担当省というものをつくって、堺屋さんが今回なられましたが、ずっとやってもらいたい。  本当は、いろいろかわったとしてもそのくらいの、初心を貫いてやるという確固たる方針が政府の方から出てきてしかるべきだと思うんですよ。今回、官房長官がかわられて、なかなか新しい官房長官で大変だろうからということで堺屋さんが担当大臣になられましたが、そんな小手先でこのIT革命というのを推進することはできないんじゃないか。私は、もしも本気でさまざまな問題を乗り越えてやろうとするのであるならば、新しくIT担当省というものをつくるべきだと思うんです。これは担当大臣にお伺いしてもなかなか答えづらいかもしれませんが、総理にかわってちょっと考えを述べていただきたいと思うんです。
  21. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 IT革命というのはあらゆる分野に波及するものでございます。そうでございますと、やはり総理大臣自身がこの旗を振って、先頭に立つべきだというように考えます。したがいまして、今内閣に、内閣総理大臣を本部長として、すべての国務大臣、それに民間有識者で構成される高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部というのを置くことにしております。  事業そのものは、民間主導ということがやはり一つ日本としての国是でございますから、それを担当の官庁が自分で行うのじゃなしに、全体を総理が主導していく、これがやはり一番正しいやり方ではないかと思っております。そして、その間の相互の調整を担当大臣が受け持っていく。いわば、総理を先頭に、内閣挙げて、民間主導のもとに日本戦略を立てていくということだと思います。  このIT戦略会議等でも、そういう戦略問題も目下検討しておりまして、重点計画もつくろうということになっております。決しておろそかにしているところではございませんで、むしろ総理を先頭に立てて、全内閣が一丸となってやっていくところが、日本の現在の民間主導という形の中で最善の選択だと思っております。
  22. 大畠章宏

    大畠委員 時間ですから終わりますが、総じて、私は、森総理を先頭にしてというのはわからないわけではないですが、総理自身がどれだけIT革命というのをわかっておられるのか。リーダーがこの問題についてきちっとした認識を持っていなければ、今堺屋さんがおっしゃいましたが、どうしても私は、この今のIT基本法のまま進むということに対しては不安を覚えるということを申し上げたいと思うのです。  後日また質問に立たせていただきます。ありがとうございました。
  23. 佐藤静雄

    佐藤委員長 荒井聰君。
  24. 荒井聰

    ○荒井(聰)委員 きょうは、堺屋担当大臣質問できることを大変光栄に思っております。私の若いころ、「油断!」という著書や、あるいは「知価革命」というような著書で大変啓発された思いもございます。  先ほども大畠委員のときに大変たくさんの省庁の方に来ていただきましたし、私もまたそうでございます。これを見てみますと、この委員会は特別委員会にするべきだったな、私たちの当初の要求が、特別委員会でじっくりと議論をしようということでございましたので、特別委員会にするべきであったな、そういう思いはいまだに持ってございます。  また、この間、担当の官房長官がかわられて、新しい官房長官が直接担当できないといったような、そんなようないわばごたごたがあったわけですけれども、それを見るならば、それなら最初から堺屋長官担当長官担当大臣になるべき、もしくは堺屋さん御自身が官房長官になられた方がずっとよかったのじゃないか。  どうもこの法案は、森政権の人気を回復するというか、そういう浮揚策としての色合いが随分濃くて、どうも大急ぎでつくったなという感じが否めないのでありまして、人気回復をするのであれば、直接堺屋大臣が官房長官になられた方がはるかに効果が高かったのじゃないかな、これは森さんの決める人事でございますから、私がとやかく言うことではございませんが。  ところで、先ほど大畠委員からもございましたけれども、私は、この法案は五年ぐらい前に出すべきだったなと。  ちょうど五年ぐらい前に自社さきがけ政権、あるいは当時の細川政権で、アメリカの動きが急速にこの分野で進展している、そういう情報が入りました。日本でも、当時は郵政省中心だったのですけれども、光ケーブルの敷設というようなことを積極的に国の政策としてやろうということがあったわけです、あるいは公共事業として位置づけようというような動きもあったわけですけれども、結果的には、そのときに法案もなければ、あるいは全体としてそういうコンセンサスもなかった。  現在、今この法案が出てきたわけですけれども、この法案を見ますと、私はIT促進法、IT普及促進法、そういう感じであって、本当の基本法になっていないのじゃないかという感じを持っているわけなんです。  ですから、五年前であるならばこの法案は持っている意味が非常に大きかったのですけれども、今、現実には、民間会社の中ではもうどんどん進んでいる、むしろ影の部分が大きくなってきている。それで、その影の部分についてもきちっとした基本的な考え方、日本社会のあり方というものを示すことこそ、この法案の本来的な意味なのではないだろうか。  その意味では、本来、基本法というのは、基本法整備促進法とか整備法とか、目標を定めて、これこれまでに、いついつまでに整備しますよということを定めて、パッケージで出すのが私は本来だったと思うのです。それがパッケージにならなかったというのは、法案をつくるということだけに物すごく一生懸命になってしまって、ここまでが精いっぱいだったのだ、そういう感がいたすのですけれども、大臣、どうでしょうか。
  25. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 委員指摘のとおり、今から五年ぐらい前にこういうような基本的といいますか総合的な政策をとれば、日本としては幸せだったかもしれません。しかし、現実のそのところを振り返ってみますと、阪神・淡路大震災がございましたり、いろいろなことがあってできなかったという事情も理解できますし、また何よりも、先ほども申しましたけれどもインターネットというものがこれほど大きな違い、大きな展開をもたらすものだという認識が日本社会に、政府も含めて、民間企業も、ジャーナリズムも、学界にもなかったのじゃないか、残念なことだと思っております。  ところで、本法案でございますけれども、本法案は、IT革命、ややおくればせと言われるかもしれませんが、これに的確に対応いたしまして、これによって生まれてまいります知識、創造的な社会にふさわしい、多様な国民生活と活力ある経済社会実現を目指すための基本的な枠組みを定めております。  具体的に申しますと、我が国の目指すべき社会高度情報通信ネットワーク社会、こう定めているわけでございまして、そこでは先生指摘のように、すべての国民情報通信技術の恵沢を享受できる社会実現をし、情報通信技術の利用機会格差がない、格差を是正していくというような社会形成することの意義を明らかにしております。  また、高度情報通信ネットワーク社会形成に向けた具体的な政策、方針といたしまして、世界で最もすぐれた、世界最高水準の高度情報通信ネットワーク形成あるいは電子政府の推進などを規定しているほか、総理を本部長といたします高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部を内閣に設置し、政府が講ずべき施策に関して、その具体的な目標及び達成の期間も盛り込んだ重点計画の作成を規定するなど、政府の推進体制について規定しております。  このような意味で、この基本法の制定によりまして、IT国家戦略の基本的方向の明確化、総理大臣のリーダーシップのもとに、優先順位をつけた政策課題の設定、遂行、すなわち重点計画に基づく政策資源の迅速かつ重点的な投入が期待できると思います。  御指摘の具体論につきましては、基本法考え方を踏まえて、今国会で民間同士の書面交付を義務づけた法律を一括して改正する法案を出すとか、あるいは次期国会にも個人情報保護の基本法案を出す、あるいは電子商取引の特質に応じた新しいルールをつくるなど、今国会、次の国会と、基本法に附属したいろいろな法案も用意することになっております。  したがいまして、御指摘のように、基本法と、そしてそれを推進する諸法案が、今国会と次の国会に分かれますけれども、そういう形で、セットで、固まりとして出させていただく、そういう方針をとっております。
  26. 荒井聰

    ○荒井(聰)委員 なるべくでしたら、この法案の趣旨説明のときにも、そういうパッケージ部分、この部分はこういう形で次期通常国会に出すとか、そういう説明があったら大変わかりやすかったんだろうな、あるいは、この国会でもこういう形の法案をこれからしていくんだ、そういう説明もまた必要だったんではないだろうかというふうに思います。  私が地元を歩いておりましたら、結構大きな中小企業の社長さんから、もう今の世の中ITITというかけ声ばかりなので、うちの会社IT化に取り組むことにしましたと。社長さん、何するんですか、東京から偉いコンサルタントを入れて、会社の経営の中にコンピューターを取り入れるんですと、意気揚々とおっしゃっているんですね。そこで私が、いや、IT化というのは中間管理職をなくするという意味ですよ、社長さんは、中間管理職の方々は皆さん大事だ、大事だといつもおっしゃっていたけれども、そういう認識はございますかと言ったら、えっ、IT化というのはそういうことなんですかというような話をされておりました。  私は、ITということがバラ色のようなことを、民間会社の中ではそういう夢を抱き過ぎてしまって、本当に何が目的なのか、どこが覚せいしていく部分なのか、あるいは影の部分がこういうところに出てくるんだということをしっかり知らせていくこと、それがIT推進には絶対不可欠だと思うんですね。その意味でも、IT審議あるいは議論、審議会などで、そういう部分について、もっともっと広く国民の中に浸透するような期間が必要だったんではないだろうか。  今、少しくITバブルというんでしょうか、ネットバブル、実際に株価が高下しまして、株式市場が大変な混乱を来しているというのも一つの現象ですけれども、経営自体の中にも、経営者の中にも、そういう十分な理解がないために混乱を来すようなことがこれからも出てくるんではないだろうかというようなことを心配しているんですけれども、大臣、いかがでしょうか。
  27. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 新しい技術が入ったときに、先生指摘のような事態が大なり小なり起こるだろうと思います。しかし、日本の経営の非常にいいところは、現にいる従業員が新しい技術を学んで、それ相応に役に立つ、これが日本の物づくりあるいは流通関係の非常にすぐれた伝統であり、今も引き継がれていると思うのです。  例えば、古い話でございますけれども、時計がフリクションからクオーツになりました。このとき、スイスあたりでは、フリクションの職人が失業いたしまして、クオーツの職人が入ってくるというようなことがあったのですが、日本の工場では、今までフリクションをやっていた人が一生懸命クオーツを学ぶ、また、会社の方もそういうような教育をする。どうしても適さない人もいたようでございますが、その人たちは別の職種に振り当てられる。そういうようなお互いの努力、これは従業員、今までなれてきた方には大変苦しいことかもしれませんが、そういう努力をしながら、どんどんと新しいものを生み出していった。  今度のIT革命におきましても、多くの企業では、中間管理職の人々がIT利用した職種に転換をされて、そしてそれ相応の働きをなさる、そういうような形になるところが多いのではないか。また、政府といたしましても、現在考えております補正予算などで、相当大勢、百五十万人ぐらいの人に、職業としてITを使って働ける程度の技能習得のプログラムをつくりたい、そういうさまざまな形での受け皿も考えております。  だから、そういう社長さんに、余り先走るのも問題でございますけれども、同時に、目の前におられる社員さんをどういうぐあいにIT社会に適応して教育していくかということもあわせて考え、あるいはその方の専門家に御相談なさって、余り大きな摩擦が起こらないようにすることも大事だと考えております。
  28. 荒井聰

    ○荒井(聰)委員 私も三年八カ月浪人をしておりましたので、若干時間がございました。自分でメールを操ってみたり、自分でホームページをつくってみたり、そういうことをやりました。  このITというのは、自分で実際にやってみるとがらっと世界が変わってくる、あるいは、雲の向こう側に、かすみの向こう側にあったようなものが、ああ実はこういうことだったのかと、肌感覚でなければわからないものというのがこのITの中には潜んでいる、人に説明してもなかなか難しい、そういうことを実感しました。  と同時に、そういうものを習得するのには、やはり時間と、それからきちっとした先生といいますか、そういう環境が非常に大事だ。私はたまたまかなり時間がございましたので、そういうものを手につけることができたのですけれども一般の、ちょうど私たち団塊の世代、今中間管理職ぐらいでしょう、その人たちが、これから会社の部長になるか、あるいは取締役になるかと、今まで一生懸命働いてきたので、その成果ということもあって、社会の中であるいは会社の中で相当な地位になるだろう、こう考えていたときに、いや、事実はそうじゃなかったというような社会が出てこないとも限らない。そういう状況が今あるんじゃないかなという気がするのですね。  私は、IT化は、もう民間部門では、これは好むと好まざるとにかかわらずどんどん進んでいます。これの流れをとめることはできないと思うんです。むしろ、IT化を一番肌身に感じてほしいのは、私は役所組織だと思います。  役所組織というのは、これは本当に中間管理職でしっかりと支えられている組織であります。しかし、今役所に行きますと、課長さんの机の上にみんなパソコンがありますよ。そのパソコンが十分使われているか。恐らく使い切れていないでしょう。そして、仕事の仕方自体も、もうどんどん変わりつつあります。私が行ってびっくりしたんですけれども局長から直接、課長補佐なり係長に仕事がおりているのですね。部長とか課長を通さない。その方が、よく知っている人のところに直接自分の意向が伝わるわけですから、まさしくITが目指している方向ですよ。この方向が今役所の中でも進もうとしている。  私は、日本社会というのは、役人の頭と政治家の頭が変われば物すごく変わるんだろうと思うんです。一番IT化がおくれているのはこの部分ではないか。きょう来ておられる皆さんは違いますよ。でも、恐らくそれが実態ではないか。  きょうは総務庁にも来ていただいていますので、このIT化がもたらす行政事務、電子政府と通常言われているのでしょうけれども、そういうものがどういう方向を持っていて、どのぐらいの時期までにどんなことをしようとしているのか、具体的な案がございましたら、あるいは見通しがありましたら、お教え願えますでしょうか。
  29. 海老原義彦

    ○海老原政務次官 先生御自身、役所の中におられた御経験から、いろいろとお話ございました。私ももともと役所におりました人間でございますので、そのころと比べて今は随分変わっておるなと。お示しのように、各課長のデスクに端末がございますけれども、彼らはそれをよく使いこなしておる、今やそういう時代になってきておるという感じでございます。  さて、お示しの御質問でございますが、今まで紙でやっていたのを電子情報によって処理することによって、行政がどういうふうに変わっていくんだろうか。これは、基本的には、いわゆる電子政府の問題になってくると思うんです。紙によって処理していたものを電子化するということによって、技術的には、大量で正確な情報が瞬時に伝達され、かつ保存、管理されるということになるわけでございます。  これは具体的には、国民との関係で申しますと、国民行政の間でインターネットを活用した行政情報の提供ができる。一方、国民からの申請手続、これもペーパーレス化、オンライン化するわけでございまして、こういったことも着々と進んでおります。今、大体、種々の申請手続が約一万件ぐらいございますが、そのうち九六%はペーパーレス化できる、オンライン化できる、平成十五年度までにそれを完成しようということを考えておるわけでございます。  それから、行政内部につきましては、おっしゃるとおり、事務処理のペーパーレス化があるわけでございまして、例えば上から下へ、あるいは部局相互間の情報伝達など、これまで紙によって回しておりましたものが、インターネットでぱっぱと入っていくというような時代になっておるわけでございます。  また、紙によらない部分でも、お示しのように、これまでだったら局長が専門の課長補佐を呼んで、あれはどうなっているのと聞くのを、これをコンピューターの端末に流して答えをもらうということで、ずっと時間の節約になるというようなこともあるわけでございます。  こういったことによりまして、国民との関係でいえば国民の利便性の向上、それから行政内部でいえば行政運営の効率化、簡素化、それから、また国民との関係に戻りますが、透明性といったようなものの向上が図られる、そういうふうに考えております。
  30. 荒井聰

    ○荒井(聰)委員 きょうはたくさんの人に来てもらっちゃったものですから、少し短い御答弁でお願いいたします。  このITというのは、アメリカなんかの場合では、ベンチャービジネスが中心になって推進していった、あるいはその技術を開発していったということがあろうかと思います。また、アメリカの場合には、ベンチャービジネスが育ちやすい環境というのも、雇用環境でありますとかあるいは技術開発の仕組みでありますとか、そういうものがあったわけでございますけれども日本の場合には、どうもそうじゃないんじゃないか。  幾つかのベンチャービジネスが育ちますけれども、またすぐ倒れていく。倒れても、アメリカの場合ですともう一回再チャンスがあるけれども日本はなかなかそういうチャンスがない。大企業が知識や資金を独占しているという形で、なかなかユニークな情報技術というものが発達していかない。そういう阻害要因というのがアメリカよりはるかにあると思うんですね。  このあたり、通産省としては、ベンチャー企業、特にIT産業関連のベンチャー企業をどういうふうに育てていこうとされているのか、それをお伺いできますでしょうか。
  31. 伊藤達也

    ○伊藤政務次官 お答えをさせていただきたいと思います。  今、荒井委員からお話がございましたように、アメリカIT革命というものを見てみますと、まず最初IT関連のベンチャーが出てきて、そしてそれがIT革命を引っ張り、その後にオールドエコノミーがIT化して、企業の収益というものを改善していく。そして、現在の段階というものは、ITのベンチャーと伝統的なオールドエコノミーが融合して新たなビジネスモデルをつくり出していく、そういう段階にあるのではないかというふうに思います。  そういう意味で、日本でのベンチャー育成に当たっても、今までいろいろな施策を展開してまいりました。今御指摘ありましたように、日本の場合には、リスクをとって挑戦をしていくことはなかなか難しい、そういうふうに言われてまいりましたので、倒産法制の改革という問題にも着手をいたしました。また、資金面からも、エンゼル税制の拡充でありますとか、あるいは、担保力に乏しい、高い成長が期待できる中小企業者に対して特別な融資を行っていく。人材面からも、ストックオプション制度の強化ということも図ってきているわけであります。  これからは、私は、日本において、オールドエコノミーというのも非常に強い潜在力があると思いますし、さまざまなベンチャー企業も出てきております。こういったものが異業種で融合化して、そしてニーズに適応した新しいベンチャービジネスというものを創出していけるような、そういう環境整備というものをしっかりやっていかなければいけないというふうに考えているところであります。
  32. 荒井聰

    ○荒井(聰)委員 ITというのは、私は極めて個人主義的な、そういうものをベースにしているものだと思うんですね。ですから、組織に帰属する、組織に依存するというような従来型の日本の企業タイプからはベンチャービジネス、ベンチャービジネスだけじゃなくて、IT関連のものというのは非常に出にくい、そういう要因があるのではないかというふうに思ってございます。  それともう一つは、アメリカのベンチャービジネスの場合には、失敗しても失敗してもチャンスが何度も来るような社会構造があるんですね。ところが、日本の場合には、中小企業の方というのは、一回倒産するともうそれでチャンスはめぐってこない、そういう厳しい社会の状況があるんです、これは文化の違いみたいなものもありますので。  しかし、そこのところを、法制度の手というものを使ってもう一度チャンスを与えていく、そういうものを温かい目で社会が見詰めていくような、そういう仕組みづくりというのがベンチャービジネスの場合には絶対必要なんだ、そんなふうに思います。これは答弁は要らないんですけれども。  ところで、先ほど私は、ITを進める上で今一番おくれているのが、役所ともう一つは政治家だ、そういう話をしました。それは、私自身も、確かに進んでおられる政治家の皆さんもたくさんいるんでしょうけれども、政治家の頭の中というのはITというのをなかなか理解もできないでしょうし、そういう側面があると思うんです。政治家がITに本当に理解を示していけば、がらっとこの日本は変わっていくと思うんですけれども、その最も典型的なのが選挙なんですね。  選挙ITをどうしてもっと開放しないのか。ホームページを使った選挙戦が法律違反だというけれども、そうでしょう、現行の法律では法律違反の疑いが、これは明確かどうかわからないですけれども、そういう点もあるんでしょう。しかし、ホームページのサイトをアメリカに置いちゃったり、あるいはだれがつくったかわからないような形にすれば、もう法の規制なんてできないんですよね。そういうものなんですね、ITというのは。  そういうものであるにもかかわらず、ホームページを使って選挙戦を展開するのは違法である、やめろ。なぜか。技術的な格差があり過ぎて不公平だから。いや、それは、たくさんお金を持っている人とお金を持っていない人と一緒になって選挙をやっているわけですから、そちらの方がはるかに不公平だと思うんですけれども、そういう改善というものを、選挙戦の中で開放していけば、私は、ITというのはもっともっと進む。  つまり、ITを進めるためには、政と財と官、この三つでそれぞれ進めないといけないんですけれども、この基本法はどちらかというと民の方、しかもどんどん進んでいるところに光を当てた、そんな法案になっていないですか、そんな疑問を持っているんですけれども、大臣、いかがでしょうか。
  33. 中谷元

    ○中谷政務次官 自治省の所管でございますが、選挙関係に活用すべきだというのにおきましては、各党内でそれぞれ議論が行われております。  我が自由民主党でも、若手を中心に、開放すべきだという意見もあれば、年長の方が、情報リテラシーというか、そんなもの私さわったことない、わけわからぬというようなことで、非常にその実現が難しい要素もございます。  しかし、おっしゃるとおり、これからの時代のツールとしては、大いに政治活動と選挙活動にも使っていきたいんですけれども委員も御指摘のとおり、成り済ましとか誹謗中傷とか選挙妨害とか情報リテラシーという、根本的な公正公平を阻害する要素があると思いますので、どうしてもルールづくりが必要になってくると思います。  そういう意味では、現在の公職選挙法改正をしなければなりませんが、これも各党の話し合いによって実現する話でございますので、今後とも各党でよく検討、研究をいたしまして、政党間で話し合いをして、法改正に向けて御検討いただく問題ではないかというふうに思っております。
  34. 荒井聰

    ○荒井(聰)委員 ルールづくりは一刻も早い方がいいと思います。これも今改正しておかないと、世界じゅうでホームページを使った選挙戦が展開できないなんという国は日本だけになっちゃっている、そういう時代になっちゃっていると思います。今まさに、政治家の中で技術のギャップがあってなかなかうまくいかないんだというのが、それがまさに、今のIT推進により中間管理職が要らなくなってくるという、それと全く同じ原理原則で、行動パターンになっているということであります。  ところで、ITというのが、ずっとバラ色の話ばかり続いているわけですけれども、私は、この技術というのは、もともとはペンタゴンが開発したアメリカ陸軍の技術の、軍事からの民間転用であった、そこに基礎があった、そういう理解をしております。  恐らく、どこかセンターが、頭脳のセンターが破壊されたときに、それでも軍事的に統一的な行動がとれるようにという、そういう発想からこのコンピューター同士のネットワーク化というものをペンタゴンが、一九六〇年ぐらいからでしょうか、研究をしていって、それを民間に開放したということなんだろうというふうに思うのです。そのために、このIT化というものの中には、どことなく、軍事産業とまでは言いませんけれども、軍事的な側面というのが影を落としているというふうに私は見ています。  例えば、暗号化でありますとかあるいはモニタリングでありますとか、そういうものが、モニタリングができる、それをさせないようにするために暗号化の技術を開発していく、そういうことにアメリカやヨーロッパは物すごく真剣に取り組んでいますね。それはまさしく、これが軍事産業から発生した技術である、そういうあかしなんだと思うんですけれども日本の場合には、そういう根幹のところを十分理解していないがために、暗号化の話でありますとかあるいはサイバーテロの話でありますとか、そういうものに非常にむとんちゃくになっているのではないだろうか。  逆に、もっと言うと、そういう一番大事な部分の技術というのは全部アメリカに握られてしまっている。アメリカの技術を転用しなければ、利用しなければ、ネットワーク自体が動かなくなってしまっている。アメリカ情報的なそういうものの中に組み込まれているのではないか。日本IT化というのは、実は、アメリカ情報産業の中に組み込まれているのではないか、その作業なのではないか、そんな指摘もあり得るのではないかというふうに私は思うのですけれども、大臣、いかがでしょうか。
  35. 安倍晋三

    ○安倍内閣官房長官 ただいま委員が御指摘をされましたように、高度情報通信ネットワーク社会においては、情報の自由な流通を確保するということが極めて大切なことであり、また基本であるわけでありますが、それと同時に、今おっしゃったように、地域、また国境を越えてそうしたテロが行われるという可能性も極めて高くなってくるわけであります。こうした認識のもとに、本法案におきましても、高度情報通信ネットワーク社会を定義づけるに当たりまして、「自由かつ安全」、このように規定をしておりますし、施策の基本方針において、ネットワークの安全性や信頼性の確保について規定をしているわけであります。  そうした点を踏まえまして、私どもが今委員指摘のサイバーテロに対して何をやっているかと言えば、これは、情報セキュリティーについて、年内を目途に政府内でサイバーテロ対策にかかわる特別行動計画を策定することとしているほか、各省庁において、情報漏えい、不正アクセス等の脅威から政府情報システムを防護するための情報セキュリティーポリシーの策定に取り組んでいるところでございます。また、既に施行されております不正アクセス行為の禁止等に関する法律等に基づきまして厳正に対処をしていきたい、こう考えているわけでございます。  今後ともこうした情報セキュリティー対策、つまり、IT社会における安全保障についてしっかりと取り組んでいきたい、こう考えております。
  36. 荒井聰

    ○荒井(聰)委員 ITが持っている非常に重要な、致命的とは言わないですけれども、極めて大きなポイントはここにあるように私には思えますので、ぜひこの点、特にヨーロッパの動きに注目をしながら、日本政府としての対応というのをとるべきだというふうに思います。  ところで、ITというのがアメリカ発だと。私たちは私たちの国として、日本型のIT社会あるいはIT技術というものをつくっていかないといけないんだと思うのです。そうでなければ、先ほどの、アメリカ情報産業の大きな戦略の中に組み込まれてしまう、そういう危険性がある。そういう意味からも、日本型のIT社会なりIT技術、それは何なのかというと、私は、国民的な理解を得るためには、日本が今抱えている最大の課題というのは少子高齢化社会ということです。この少子高齢化社会に対応していくためにITを積極的に利用していく。  例えば、今、若いお母さん方がなかなか子供さんを産まないというのは、雇用条件が、会社に行く、行かなければならない、そういう雇用条件で、あるいは子供が生まれたら、子供を預かってくれるところがないから行かなくなってしまうというような状況があるわけですね。あるいは高齢者も、高齢者同士でお互いに助け合う、そういう社会が崩壊しつつあります。結果的に、介護が必要になってくると施設に入らざるを得ない。こういう状況をITという技術を使ってかなり改善できるのではないだろうか。また、その改善を図ることによってこそ、ITというものが日本社会の中に根づいたり、日本社会の中で大きな理解を得る、そういうものではないだろうか。  私は、国民的な財産、道路をつくったり、橋をつくったりするのも国民的な財産ですけれども、それは、ただ便利だからというだけではなくて、もっと国民的に十分共感を得る、そういう状況があったときに初めて、公共事業なり、あるいはその社会の中で定着していく、そういう側面を持っているんだと思うのです。  ITがなかなか、まだまだ定着しないというのは、単に企業の経営を、リストラして、人員を減らして、合理化して収益は上がる、そのためだけのITであるならば国民の中には定着しないですよ。そうではなくて、今日本が抱えている最大のテーマにどのようにこのITが活用されていくのか、そのビジョンを打ち出すことこそ、この基本法の大きな意味なのではないかというふうに私は思うのですけれども、大臣、いかがでしょうか。
  37. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 御説のとおり、ITの発展、普及は、産業経済の面のみならず、社会生活の面でも重要な影響を与えます。それが少子高齢化社会に大きく貢献できる要素を持っていると思います。  まず、産業経済の面で考えますと、制限された勤務条件での適切な仕事探しがしやすくなる。例えば、子育てをしながら勤務したいというような条件、あるいは高齢者が一定の時間だけ勤務したいというような条件、そういったこともインターネットなら探しやすくなります。それから、テレワークとかSOHO、スモールオフィス・ホームオフィスでございますが、そういったものができることによって、通勤をすることなく勤務ができる。そうなりますと、子育てあるいは高齢者にも非常に有利だ。そういった産業構造産業形態の変化、組織形態の変化が、男女共同参画あるいは高齢者の社会参画に非常に大きく貢献すると思います。  より重要な問題は社会生活での変化でございまして、好みを同じくする者、悩みを同じくする者、共有する者が共同体を広げることによって、職場組織に埋没することなく、夢と楽しみ、安心と互助の確立を実現できる社会生活上の利点があると思います。これからの少子高齢化社会では、インターネットを通じた精神的満足と互助による安心が極めて重要だと考えております。  以上のような観点から、この法案でも、「すべての国民情報通信技術の恵沢を享受できる社会実現」、さらに「ゆとりと豊かさが実感できる国民生活実現」「利用機会等格差の是正」等を基本理念として明らかにしております。これらの基本理念にのっとりまして、高度情報通信ネットワーク形成に向け、その基盤となる制度改革を進めるとともに、施設の充実、利用技術、これをあらゆる人に普及する、そして情報の中身でありますコンテンツ、これが便利で、また楽しいものをつくっていく、この三本柱を打ち立てることによって、ITの自律的な発展をつくっていきたいと思っております。  さらに、本法案の十四条に規定しておりますように、広報活動を通じて国民の理解を深めるよう必要な措置を講ずることによりまして、インターネット国民全般への普及利用の促進等を目的としていきたいと思っております。  本年十二月から始まりますインターネット博覧会というのも、いろいろな趣味の人々がこれにアプローチしていただくことによりまして、大きな楽しみを生み、また共通の楽しみ、悩みを持った人々のネットワークをつくるきっかけになるんじゃないかと期待している次第でございます。
  38. 荒井聰

    ○荒井(聰)委員 最近おもしろいホームページを見たんですよね。立花隆という大変優秀な文芸評論家、大変優秀な方なんですけれども、その方が怒りのホームページというのをつくっていまして、私は、インターネットというのを最初に勉強したのも彼の本だったんですけれども、その彼がホームページ上で、科学朝日という五十年間ぐらい続いている科学系の小中学生向きの雑誌が廃刊になる、これに象徴されるように、日本の科学教育、理科教育というのが極めて軽視されているのではないか。小学校、中学校の理科あるいは数学の学力も物すごく落ちている。こういうことで、それこそ堺屋先生がおっしゃる知価革命という、そんなことが実現できるのか。そういう極めて怒りのホームページで、大変おもしろかったんです。  確かにそうだと思うんですね。今、小中学生の理科の学力というのは極めて低下しているのではないか。そういう状況の中で、このITというのはやはり論理的な思考が必要ですよ。そういう思考を育てる子供たちが、片一方では資質が低下している、これをどう考えたらいいのか。それは文部省、どうですか。
  39. 鈴木恒夫

    ○鈴木(恒)政務次官 お答えを申し上げます。  よく一般論的に、理科、数学の力が日本の小中学生は落ちているでないかという御議論がございます。データ的に申し上げますと、ちょっと古いデータで、平成七、八年度のころのデータでございますが、国際的な学力評価の調査がございますが、少なくともそれを見る限りにおいては、そう著しく能力が低下している数字は出てございません。  しかし一方で、これはもう荒井先生もあるいはその点を御指摘かもわかりませんが、論理的な思考ということをおっしゃいました。物を論理的に、例えば数学的な思考で論理構成をしていくというような力、あるいは応用の力、これは確かに御指摘の点があるように思います。  そこで、平成十四年度から始まります新しい学習指導要領の中で、IT革命に対応し得るような子供たちの育成のために、そうした面の力を十分つけるように、例えば体験的な学習を強化するとか、あるいは、平成十三年度中には、おおよそ九十万人に上られる先生方にも基本的なITに対する知識も持っていただこうと、予算措置もございますし、総体的に、立派な理数系の世界のトップリーダーになり得るような子供を育てるための手だてはこれから深刻に考えていきたいと考えております。
  40. 荒井聰

    ○荒井(聰)委員 IT化を進めるために、さまざまな施策がこれからも必要でしょうし、あるいは新しい分野での調整ということも大変必要なんだと思うんです。  私は、かつて北海道庁におりまして、苫東開発という、国際的なと言えるかどうか、日本的、日本でも最大のプロジェクト、そのプロジェクトの調整に当たりました。大変な赤字を抱えていて、国家プロジェクトとしては失敗だというのははっきりしているんですけれども、どうにも動かない。  なぜ動かないのか、そういうのを分析していきますと、たくさんの省庁の利害関係が絡み合っていて、その省庁を調整する主体的な行政機関が存在していないということだったのです。確かに北海道開発庁という役所はあったのですけれども、しかし、北海道開発庁は寄り合い世帯で、建設省の顔を見て、通産省の顔を見て、そこから意見が出てくると、もうにっちもさっちもいかない、そういう状況が二十年間も続いたがゆえに、だれもがこう直せばいいというのがはっきりしているにもかかわらず、できなかったのです。  今回政府が提案してございますネットワーク社会の推進本部、そういう本部づくりをこの法案の骨格に据えていますけれども、私は、この形では、ITの本格的な推進というのは、先ほど私が指摘しました苫東の二の舞になるのではないか。日本というのは、やはり組織があって、人事権があって、予算権がある、そういう組織でなければ強力な推進というのはできないのです。こういう形で総理大臣のもとにつくっても、私は、実際は動かないのではないか。本気になってやるのならば、どうして予算権もあり、組織権もあり、人事権もある、そういう組織をしっかりつくって進めていくというお考えにならないのか。質疑時間が終了いたしたと言いますので、その点を指摘いたしまして、私の質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  41. 佐藤静雄

    佐藤委員長 中田宏君。
  42. 中田宏

    ○中田委員 中田宏でございます。  きょうは、堺屋太一経企庁長官に議論をさせていただきたいというふうに思っております。  まさに、ITの重要性などということはもはや言うまでもないことでありまして、日本が開国するかしないかというような幕末のころにある意味では似ているような部分もあると私は思って、大きな革命の時期でもありますし、IT、この技術になかなかなじめないんだよなという方も今まだもちろんいるわけですが、しかし、それを否定することは、恐らくこれからを生きていく上でまず無理である。とりわけ企業活動をしていくというようなことになれば、もうグローバルな経済の中に、間違いなく、いや応なくその価値観の中に巻き込まれていくわけでありまして、そういう意味では、我が国は消極的に、受動的にこのIT革命に対する準備を整えるのではなく、むしろこれは積極的に整えていく必要があるというふうに思います。  まさに、革命革命という言葉が使われますけれども、過去の農業革命産業革命といったことに匹敵することでありましょうし、恐らくは将来、二十世紀の後半から二十一世紀にかけてIT革命というのがあって今の暮らしがあるんだ、そういう振り返る時期が来るのでありましょう。蒸気機関車、自動車、電力、無線、そういったものと同じような大発明、あるいは、むしろそれ以上の大発明というふうに言えるんだろうと思うのですね。  その上で、さて、いよいよこのIT基本法政府から出てきたわけでありますけれども、まず私が長官に御見識をお伺いしたいと思いますのは、このIT基本法を出すに当たって、我が国のポジションは今世界の中でどういうポジションにあるのかということをお伺いしたいわけです。そのポジションというものが当然のことながらしっかりと理解をされていないと、先ほど来出ているように、どういう目標を立てて戦略性を持って進めていくのかということが、ある意味でははっきりしないというふうに思います。  例えば、人口でいうならば、インターネット普及数でいうならば日本世界第二位ということになりますけれども普及率ということになると世界十三位というふうにも聞き及んでいます。そこら辺を踏まえて、まず長官に御見識をお伺いしたいのは、この分野において我が国がいかなるポジションなのか、果たしておくれているという現状認識に立つのかどうか、そのあたりをぜひ長官にまずお伺いをしたいと思います。
  43. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 日本は、明治以来、近代工業国家を目指して一生懸命やってまいりまして、特に戦後、高度成長をいたしまして、規格大量生産型の社会では世界一の生産量と生産技術を誇るようになりました。そして、その中にエレクトロニクス、テレビであるとか複写機であるとか、あるいはパソコン、ワープロというようなものもございまして、それでも非常にすぐれた成績を上げておりました。したがって、私たちも含めて国民の間に、日本はエレクトロニクスでもすぐれているからITでもトップクラスじゃないか、そんな安心感がずっとあったんだろうと思います。  ところが、八〇年代の後半になりまして、ソフトのOSが普及いたしました、基本ソフトというのが普及いたしました。そのころから、日本はどうもソフトでは弱いということになって、ハードで強いけれどもソフトで弱い、こんな形になってまいりました。  それが九三年に、アメリカから始まったインターネットというのがあらわれまして、これは、単体でテレビを使うとかパソコンを使うとか、例えば同じパソコンを使うにしても、これを計算に使うとか設計に使うとか、あるいは検索、記憶に使うのと全く違ったネット社会だったんですね。このネット社会が出てきたときに、日本は、これは大容量高速のネットだということにちょっと理解が足りなかった。そのために、電話線の上に乗っけるということをまず考えたんですね。そこが大きな格差になりまして、そして、速度が遅い、数の普及もおくれたということで、さまざまな技術の進歩も遅くなって、このインターネット分野で非常に立ちおくれている。  アメリカ、北欧諸国は既に四〇%を超えておりますし、通信白書によりますと、日本は十三位、アジア諸国のちょうど真ん中ぐらいなんですけれども、その後のシンガポールや、台湾のあるいは韓国の普及は著しくて、日本をもうかなり超えているらしいというような情報も入ってきております。そういうことを総合いたしますと、日本は、インターネット世界ではかなりおくれているんじゃないかと思っております。  一方、携帯電話、そして、それからさらに発達いたしました最近のiモードとか、こういう面では独自のまた技術、文化をつくっておりまして、そこを考えますと、日本的なIT社会といいますか新しい情報社会、これもまた期待ができる。したがって、ここで基本法をつくっていただきまして、いろいろな体制を整えて、そして日本人全部がこのITになじめるようになりますと、日本型の本当にすばらしい情報社会をつくること、世界に冠たるものをつくることも決して夢ではないと考えております。
  44. 中田宏

    ○中田委員 さすが堺屋長官でありまして、堺屋長官のように率直に議論ができますと大変物事がスムーズに進むと私は思うんですけれども、往々にしてなかなかそうはならないというのが政治家の場合のせりふのような気もいたします。  私は、単に、別に日本がおくれていることをあげつらって政府を追及しようという気もないし、自虐的に我が国のおくれを認識したいというつもりも全くありません。先ほどちらっと申し上げたように、物事をどういう現状認識に立つかということをはっきりしておかないと、具体的に対策を講じていくこと、また、それに取り組んでいく覚悟というものも決まらないし、また、私たち国民に対して協力、努力というものを求めていく側の立場でありますから、そういったところの現状認識をしっかりと把握、そしてそれを国民の前に出して、私たちは協力や努力を求めていくべきだろうというふうに思うわけです。  今の長官の御答弁にありましたように、インターネットの出現以降、日本インターネットに関しては非常に立ちおくれてしまった。しかし、一方では、携帯電話におけるインターネットなどでは日本は先端を行っているわけだし、まだまだある意味で挽回が可能だというようにお答えをいただいたんだろうというふうに思います。  十月の二十四日の本会議で、このIT基本法についての質疑がありました。そのときの質疑なんかだと、やはり、日本は立ちおくれているのかという問い、これは民主党・無所属クラブの伊藤忠治代議士がした質問であります。それに対して政府の答えはこうなるんですね。政府全体としては着実に取り組んできたんだ、ITに対して、前略しましたけれども、「しかしながら、我が国においては、インターネット利用、電子商取引等において、IT先進諸外国と比べ十分に進んでいるとは申せません。」取り組んできた、着実に、でも十分に進んでいるとは言えないという話になって、これは何か理屈になっていない。  その後で今度は、さらに続けて、「この背景として、この一、二年、欧米等においてIT化に向けて集中的な取り組みを強化していることが挙げられます。」要するに、人が先に進んだんだから我々はおくれたんだ、一、二年、欧米が先に集中的な取り組みをしてしまったんだというような、これは全然質問に答えていないわけであります。私は、こういう議論じゃだめだと思っていて、現状認識というものをしっかりする、今堺屋長官がおっしゃられたとおりだというふうに思うわけです。  私、まだ実は学生のころでありますけれども、昭和六十年の十二月、十五年前に、堺屋長官は「知価革命」という本を出されているんですね。十五年前です。私は、今でも諸先輩より若いですけれども、それこそ大学生のときに読みました。十五年前にこのことを既に指摘されておられた長官からすれば、今はもちろん政府の一員でありますから、政府が対応遅かったと批判をできる立場では、恐らく、言いたくても言えない、フラストレーションがたまっているんじゃなかろうかと思いますが、恐らくは、長官になられる前までは、いかにも取り組みが遅いというふうにお考えであったように拝察をいたします。  今長官のお答えがありましたけれども、アジア諸国のちょうど真ん中ぐらいだというふうにお答えをいただきました。これ自体がもう既に、今までの日本のある意味では国際間における競争の順番とかなり違っているわけですよね。だって、明治の時代より日本は、脱亜入欧、そして欧米に追いつけ追い越せというふうに物事を発展させてきたわけであって、繊維産業にしても化学産業にせよ、あるいは鉄鋼、自動車、電機といった分野にしても、欧米が先駆けて、その後日本が必ず追っかけていって、そして逆にリードを奪ったりする、その後ようやくアジアの諸国が日本の後についてくるというような形であったわけです。ところが、IT技術の我が国への導入といったような部分においては、明らかに出おくれているわけです。  もとより、ITというのが、決してそれ自体が目的ではありませんから、これは手段でありますから、今現状における結果が出ているわけではもちろんありません。あくまでも手段を使ってどういう国をつくっていくのかということでありますけれども、先ほど言ったように、日本インターネット普及率は二一・四%、十三位だ。その前に、実は十二位には台湾がいるわけです。普及率は二一・七%。韓国はその日本の次、十四位で、二一・三%ですから、十二、十三、十四とアジア諸国が並んでいるど真ん中に日本はいるわけでありますから、今までの産業のある意味では国際間における競争の順番とは違っちゃっているということは、これはもう明確だと思います。  そして、いわゆる電子政府に対する取り組み、日本はこれから本格化するわけですけれどもアメリカでは、政府再構築計画、これは九三年に出た。それから、シンガポールは九五年に出ている。イギリスは九七年、韓国は九八年、そして日本は、ようやく二〇〇〇年の今やっている。本格的には二〇〇一年になってからというぐあいになっているわけです。  そこで、私は、次にお伺いをしていきたいのは、これからの推進体制ということについてであります。これまではIT戦略本部、そして戦略会議という両輪で我が国のIT社会の推進をしてきたわけですよね。IT担当大臣については官房長官でありました。官房長官なんというのはただでさえ忙しい身であるにもかかわらず、ITの責任大臣だというのは、私はこういう体制じゃだめだと思うんですね。ちなみに、官房長官は別件で辞任をされて、今回から堺屋長官が経企庁の長官とまた兼務という形になっています。  先ほど来の現状認識に立ったときに、このおくれをどう挽回していくかというときに、私は、堺屋長官IT担当大臣になったことは、ずっと言い続けてきた方がやることについて、精通されておられる方が責任を持つことについて、なるほどというふうに思いますが、しかし、既に本委員会でも議論になりましたけれども、では、今まではというと、まさに適材適所ではなかった配置もあった、その責めもある意味では政府は負わなければいけないとも私は思います。  これからのことです。本基本法の中で、高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部の設置というのがある。そして、本法案が成立したとして、来年一月六日、平成十三年の一月六日以降の推進体制がこの中で決まるわけですね。まさにその一月までの残されたわずか二カ月の間で、この法案施行以降の体制を堺屋長官にフル稼働でやってもらわなければいけないわけでありますけれども、経企庁長官との兼務で大丈夫ですか、これは。
  45. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 閣僚の数も限られておりますので、最近は、文部大臣と科学技術庁長官、あるいは運輸大臣と北海道開発庁長官、建設大臣と国土庁長官等、それぞれ兼務しておられますし、官房長官もいろいろな担当大臣を兼務しておられます。  私も、微力ではございますけれども経済企画庁長官として、景気対策それから経済の新発展政策を進めるとともに、このITの問題は確実に処理していきたいと思っております。そして、優秀なスタッフ、あるいは戦略本部、戦略会議等もございまして、官民の総力を結集する体制をつくっておりますので、これらをフルに活用いたしまして、委員指摘のように、残された期間、省庁再編成までわずかでございますが、十分期待にこたえることをやらせていただきたい、そういう覚悟でおります。
  46. 中田宏

    ○中田委員 力強い御答弁をいただいてうれしい限りでありますが、十分期待にこたえる仕事というふうにおっしゃっていただいた、その十分なる期待はどこにあるかというと、私は、恐らくこの基本法案は成立するわけでありましょう、そして成立した以降の推進体制をつくってくださることが、長官が十分に期待にこたえるとおっしゃってくださった部分だというふうに思うのですね。  本法案成立後の高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部の人事体制、この中で総理大臣が本部長を務めるというふうに法案の中に書かれておるわけです。総理大臣が本部長を務めるというのは、名目上は確かに国としては最も強力な推進体制なんです。しかしそれは、名目上はそうだけれども、責任の所在としては総理大臣が本部長でも私、いいと思うのですが、しかし、実務上からいったら、総理大臣がそんなことをやっていられないわけです。本部長として引っ張っていくなんということをなかなかできないわけです。  そういう意味では、例えば副本部長の人選とかという中でしっかりと、推進体制というものを強力に引っ張っていける、ある意味ではこのIT革命の推進に命をかけるというような担当大臣を一人しっかりと中核に据えて、実務上のリーダーシップを発揮できる人をこの法案の枠組みで仮に考えるならば、例えば副本部長の中で筆頭副本部長をつくって、その人は、先ほど堺屋長官は大臣の数も限られていますがなんておっしゃっていましたけれども、そんなのは別に数を限らなくてもいいわけですよ。これは日本の命運をかけてやるのだと言っているわけなんですから、そこにIT担当大臣をしっかり置いて、それで筆頭副本部長かなんかでぐいぐい引っ張っていく。  仮に、もしも副本部長が、今までの戦略本部のように、郵政、通産、官房長官といったような人たちが充て職でやって、責任の所在だけは本部長としての総理大臣というような形のピラミッド構成でやっても、私は、本当に大丈夫なのかなというふうに思うわけです。だからこそ堺屋長官に、この法案を仮に成立させた後の体制、二カ月で大丈夫ですか、できますかとお聞きをしたのですが、そういう体制をぜひつくっていただきたい。そうでないと、私は、おくれを挽回するという基本認識に立ったときの我が国の体制として望ましくないと思いますが、いかがですか。
  47. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 確かに委員指摘のように、平成六年に前の組織をつくりまして、そのときにやはり認識がいささか甘かった。平成六年のときに高度情報通信社会推進本部というのをつくったのですね。ところが、先ほど申しましたように、ITの中核がインターネットだという認識が甘かった。そういうことは私は、歯にきぬを着せずに、やはり政府の、怠慢とは申しませんけれども、認識おくれがあった。その間に、オリンピックではございませんが、日本日本新記録をつくったけれども世界の方はもっと早く行ってしまって、予選落ちだというような格好になったのだろうという気がいたします。  それで今、これを挽回するに当たって、この法案をつくっていただくと同時に、戦略本部というものを設置いたしまして、そこには専任のスタッフも置き、十分各省から優秀な人材を専任で呼びまして、そしてまた、民間からもそういう専門家を呼びまして、官民合同でこれに当たりたい。  そして、やはり何といっても、こういう多様な情報をつくっていくものは民間が中心でなければいけない、官僚統制に陥ってはいけない。そういう意味で、民間がやりやすい条件をつくるという形からいいますと、特定の役所をつくって、余りその役所の権限意識にとらわれるよりも、こういった総合調整的な方法がいいのではないか、そう考えております。
  48. 中田宏

    ○中田委員 優秀なスタッフを集めてやるのは当然、我が国が命運をかけるわけですから、それはそのとおりでいいのですね。問題は、やはりリーダーシップを発揮して、それで引っ張っていくということをやらないとだめだ。  新しい省庁をつくれとも何も申し上げていませんし、先ほど申し上げたように、一応名前だけの本部長が総理大臣で、仮に、あと副本部長に通産、郵政、官房長官が入って充て職のようにやって、そういう形でやっても、結局は事務方の人が音頭をとって進めていくだけになる。会議の日程から結論出しまで、事務方の人が音頭をとって進めていくだけの、リーダーシップは全然ないような、そういう体制になりはしませんかということを申し上げているわけであって、省庁をつくれとかなんとかいうことではなく、この法案を受けての推進本部の次なる体制ということについてお聞きしたのです。御所見はありませんか。
  49. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 官庁ではしばしば、御指摘のように、事務方が当たりさわりがないようなやり方をすることが多いのでございますけれども、本件に関しましては、IT戦略会議というものもございますし、また私自身も、きょうの答弁もそうでございますけれども、みずから戦略本部の文書に手を入れ、時にはみずから執筆し、やっております。これはやはり私自身に課せられた使命だと考えておりますので、この任期中は確実に、そういう役所、役人任せではなしに、総理の信任を受けて任命されました以上は、みずから総理を補佐して十分な役割を果たしていきたいと考えております。
  50. 中田宏

    ○中田委員 ぜひこの任期の期間中に、新体制の新たな推進本部では、ひとつIT担当大臣だけに私を集中させてくれというふうに総理におっしゃった方がよろしいのじゃないですか。それで強力な推進体制でもお持ちになった方がおくれを挽回する上でよろしいように私は思うわけであります。  さて、時間もなくなってきましたので、もう一つお聞きをしたい。  それは、IT基本法政府が出すというふうに聞いてからというもの、私ずっと注目してきたことがあります。それは何かといいますと、理念がはっきりしているかということであります。  今の日本には、往々にして、理念がないまま惰性で物事が動いているということがあるわけであります。とりわけITということに関しては、まだ見ぬ世界を私たち創造していく、大がかりな国のプロジェクトでありますから、そういう意味において、理念を明確にしていくということは本当に重要なことだというふうに思うわけです。  そのことに関しても、実はこの間の二十四日の本会議でもやはり明確な御答弁がいただけていないのですね。私は、ちょっと後で時間の許す限り申し上げたいと思いますが、ここに書かれていることが、法案の中でも理念言葉が使われているのですが、果たしてこれが理念かなというところに実は疑いがある。長官、このIT基本法理念ということについての御認識をお願いできますか。
  51. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 法案としての理念と、それから法案をつくる歴史的観点からの理念というのとあると思うのですね。法案としての理念としては、ここに書かれている六つの基本理念ということになるでしょうが、その根底に我々が目指すべき社会、そういうような大きな理念があります。  それは、私は、規格大量生産でやってきた日本が、多様な知恵の時代にふさわしい沸き立つような情報交換、そしてそこから生まれてくる知恵の創造、それが結び合って人々の間に互助の精神と満足感が生み出される、そういった、あらゆる人々が自分の選択によって自分のポジション、自分能力好みを果たせる、そんな大きな社会をつくろうという理念がある。そのために、ここに書いてございますような高度情報通信ネットワークを構築する。これは、早く言いますと、そういう歴史的な発展から考えますと一つの手段になります。  だけれども、憲法でございませんから、法律で書くとすればこういう理念の書き方になるということで御承知いただきたいと思います。
  52. 中田宏

    ○中田委員 おっしゃるとおりだと思います。法案としての理念ということの限界は、私はある程度あると思うんですね。  ただ、私が言いたいことは、恐らく長官、もしかしたら既に御推察をいただいているんだろうと思いますけれども、例えば「すべての国民情報通信技術の恵沢を享受できる社会実現」、これはそのとおりなんですね。ただ問題は、享受した結果どういう国になるのか、またいかなる国民生活になるのかということであります、問われているのは。あるいは、同じように、「経済構造改革の推進及び産業国際競争力の強化」、これもそのとおりです。その結果いかなる国にしていくのか、国民生活があるのかということ、これがある意味では、本当の意味での我が国の理念ということになるんだろうと思うんですね。国際競争力というのはあくまでもこれは手段でありますから、別に競争ナンバーワンになることが日本の目指す道ではないわけであって、その先に何があるかということなんですね。  この間の本会議でも、ここは、でもこういう考えじゃだめだよなと思ったのは、これは中川前官房長官の答弁ですけれども、「インターネット等を通じて自由かつ安全に多様な情報知識をグローバルに入手し、共有し、発信することにより、あらゆる分野における創造的かつ活力ある発展が可能となる社会形成を目指すものであります。このような社会形成により、個人の活動、生活様式社会経済活動、行政のあり方等、広範な分野において構造的な改革がもたらされ、」ここで、インターネットを活用してこうした「構造的な改革がもたらされ」と言っているわけですね。「もたらされ」、そしてその次に、「国と地方関係、官と民との関係等も大きく変わるものと認識しております。」と。  ここは論理的に言うと逆ですね。どういう国を目指すために私たちはこのITを活用していくのかというふうに国というのは考えて、国民に説明しなきゃいけないものが、ITをとにかく、インターネットを通じて自由かつ安全に多様な情報を入手して発信する、その結果として広範な分野において構造的な改革がもたらされる、そして、その結果として国と地方の——何とかこれを進めればそうなるでしょうというような説明をしておったのでは私はだめなんだというふうに思います。とりわけこれからの時代はそれではだめなんだと思うんですね。  ですから、それは、法案をつくるという中における限界があるということは私もわかりますので、むしろ、この法案が成立をするんでしょう、そして、成立をした後、国民にそういうことをわかりやすく伝えていくことを、ぜひ大臣の、それこそ大きな力で私はやっていただきたい。例えば、経済構造改革あるいは生活様式の多様化の促進といったことは具体的に何を指しているのかとか、そういうことを国民にわかるようにしてもらいたいんですね。いかがですか。
  53. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 まことに仰せのとおりでございまして、日本が今直面している大きな改革、これは、明治以来ずっと日本人が追いかけてきた近代工業社会を越えて、新しい知恵の、多様な知恵の時代をつくろう、知恵の創造の時代をつくろうという大きな転換でございます。  そして、そういう時代になりますと、産業の組織も、従来の終身雇用一本やりではなしに、職業を選択できる選職社会と去年の国民生活白書には書かせていただいたのでございますが、そういうような職業の面でも、あるいは家庭生活の面でも、そして都市のあり方も大いに変わってくる。それが、例えば都市でいいますと、去年から始めております「歩いて暮らせる街づくり」、こういったものにあらわれておりますし、また、職業でいいますと、七十歳まで働くことを選べる社会という形であらわれております。  いろいろな面で変化を我々は想像いたしまして、それを実現するために、このITというのが非常に有効で、効果的だ。そして、それがあることによって、それぞれにばらばらになる人間情報で結び合って、互助の精神、共通の悩み、共通の好み、そういったものの好縁社会をつくっていく、そんな時代が夢見られるのではないか。そうすると、その人それぞれの長所、欠点、全部が点数で比較されるんじゃなしに、それぞれの人の好みによってそれが満たされるような社会がつくれるだろう。それにこのITというものが非常に貢献する、便利である。だから、IT社会というものをまず形成して、そして大きな知価社会といいますか、多様な知恵の時代に向かっていこう、こういうビジョンを、ずっとこの二年余り、順に各面で発揮してきているわけでございます。  こういった経済の構造、そして社会変化というものも委員指摘のとおりでございますので、私たちもできるだけ国民の方々にいろいろな形で訴えていきたいと思っております。
  54. 中田宏

    ○中田委員 もう最後にいたしますけれども、例えば、先ほどちらっと申し上げたように、法案の中に、生活様式の多様化を国が促進すると書いてあるのですね。でも、生活様式の多様化を国が促進するというのは意味がよくわからない。わからないというのは、それはある意味では、正確に言うとこうだと思うのですよ。多様化した生活様式に対して、IT技術でもって私たちは対応する、こたえられる社会をつくる。例えば、マスではない、それぞれのニーズに応じて、オンディマンド、要求に応じてこたえられるようなライフスタイルのサポートですね。行政サービスにしてもそうだ、あるいはさまざまな商品提供にしてもそうだ。そういう考え方が私は必要だと思います。  本当に最後にしますが、一言だけ、これは答弁などもちろん要りません。せっかくの機会だから長官に申し上げたいなと思っているのは、長官にしては残念ながら現実にならなかったIT講習券です。  私は、アイデアそのものを否定するものではありません。補正予算でも、およそ七百万人が講習をすることを目的として、学校や公民館、図書館などでの地方自治体によるITの基礎技能習得への予算が講じられていますよね。こういったことを私は必要だとも思いますけれども、私は、国民がある意味で総IT化するために本当に必要なのは、本人にとってのインセンティブが働くかどうかだと思うのですね。それは何か。ITを使いこなすことによって、便利だ、安くなる、自分にとってメリットがある。逆に言ったら、使わなければ高い、使わなければ不便だという状況をいろいろなケースにつくっていくことだと思うのですね。それが何よりも国民を総IT化していく上では重要なことであって、決してパソコンが扱える、扱えないのレベルではないというふうに思います。恐らく、パソコンを使わなくてもいろいろなことができる時代にもうすぐに来てしまうというふうにも思います。  そして、その上で一番重要なのは、何よりもインターネット等にかかるコストを下げることである、そのことが私は一番重要なことであるというふうに思い、これを最後に一言、堺屋長官に申し上げて、私の質疑を終わらせていただきたいと思います。  以上です。
  55. 佐藤静雄

    佐藤委員長 塩田晋君。
  56. 塩田晋

    ○塩田委員 自由党の塩田晋でございます。  堺屋長官は、日本経済また海外の経済につきまして非常に豊富な知識と御経験があり、またすぐれた洞察力を持っておられます。その長官が、このIT問題について政府担当され、意欲的にこの問題に取り組んでおられますことに対しまして、敬意を表しますとともに、大いに期待するところでございます。  以下、主として長官に対しまして御質問を申し上げたいと思います。  この法律は、情報通信技術、いわゆるITの活用によって、「世界的規模で生じている急激かつ大幅な社会経済構造の変化に適確に対応することの緊要性にかんがみ、」と法律案の「目的」に掲げております。まさに緊急を要する事態であると私も認識しておるところでございます。  そこで、基本理念を明らかにし、また、基本方針を定めて、国及び地方公共団体の責務を明らかにして、そのためにもネットワーク社会推進戦略本部を設置される。そして、ネットワーク社会形成に関する重点計画、これを定めて、その施策を迅速かつ重点的に推進するということがこの法律の目的であり、趣旨であると書かれております。  そこで、こういった世界的な状況の中で、日本ITの現在の水準というものがどのような位置にあるか、諸外国との比較において明らかにしていただきたいと思います。  日本はさほどおくれていないという説明もあれば、いや、かなり進んでおるという説明もありました。これはハード面とソフト面でかなり違うものではないかと思いますが、そういった面についてそれぞれ現況を、世界の中における日本というものを焦点にしてお聞きしたいと思います。
  57. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 日本はテレビやパソコンの生産では大変優秀な成績を上げてまいりまして、量、質ともに最大の生産国でありました。その意味で、単体のエレクトロニクスとしては日本は非常にすぐれております。ところが、基本ソフト、OSというのが登場いたしまして、これは八〇年代の中ごろからマイクロソフト等が出して、そのOSでは日本はややおくれをとりました。このことが最初たちが危機感を持ったところでございます。  それが、一九九三年にアメリカインターネットということをやり出した。これが日本人に非常に理解されるのが遅かったと思います。というのは、インターネットというのは単に通信電話線の上に乗っければいいという考え方が非常に強かったんですね。これが容量と速度の問題だというような考え方がなかったものですから、電話線の上に機械を置けばいい。そして、学校の教育を見ましても、あるいは町のパソコン教室を見ましても、ほとんど光ファイバーがつながっていない。パソコン教室なんかも、日本に数千、四千ぐらいあるそうでございますけれども、ほとんど光ファイバーは入れていないんですね。だから、パソコン操作技術だけを教えて、人と人とのつながりを教えなかった、これが今日インターネットでおくれたところでございます。  その反面、携帯電話は非常に進みまして、携帯電話の加入率では日本は非常にいいところにいっております。インターネットの加入率は、いろいろな資料がございますけれども、例えば十二年版の通信白書で見ますと、日本は二一・四%で台湾と韓国の間でございますけれども、より新しい情報を見るともっと差ができているというのもございまして、特にシンガポールや香港なんかは急速に進んだというのもございます。それから、モバイル、携帯電話普及率で見ますと、日本は四一%。まあアジアの国ではやや上の方でございますけれども、韓国、香港はもっと上にいるというところで、余り威張れた状態ではございません。  日本のこの今のインターネットの問題は、料金が高いし、それから、電話線を使っておりますので速度が遅い。そういうことから、ビジネスでは何とか使えても、楽しくない、おもしろくない、そして便利さが非常に劣る。そういうところで利用の停滞が起こっている。今度の法案は、そこを大幅に解決して、そしてハードウエアとして光ファイバーをできるだけ引く。そういう高速ネットワークをつくるというのと同時に、できるだけ大勢の人に使う技能を習得してもらう。  そういう意味で、補正予算では大体七百万人ぐらいの人にこの技術を普及したい。そういたしますと、学校その他で学ぶ人あるいは職場で学ぶ人、政府の講習会等々は別に学ぶ人が五百万人ぐらい出ますから、一年間で千二百万人ぐらいこれを使える人が増加してくる。その結果、日本も五千万人、四〇%水準に十三年度末には持っていきたい、こう考えている次第でございます。  したがって、日本は進んでいるかおくれているかと言われますと、確かに、インターネット世界では、ちょっと考え方が理解が足りないところがあっておくれてしまったというのは事実でございますが、もう取り返しがつかぬほどおくれたというわけでもない。だから、今この法案をつくって挽回したい、頑張りたい、こう考えている次第でございます。
  58. 塩田晋

    ○塩田委員 ありがとうございました。  日本は、ハード面ではかなりのところをいっているけれどもソフト面ではおくれている、特にインターネットについてはおくれておるということでございます。  森総理が、この法案をつくり、急速に盛り返して、世界の水準、最先端に追いつき、そしてそれを追い越すんだ、大体五年以内にはそういう目標を達成したい、このように言われたと思いますが、長官はいかがお考えでございますか。
  59. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 私は、五年以内に世界最高級の情報環境インターネットを含みます情報環境をつくる、そしてそのときには、アメリカのそっくりそのままのまねではなしに、モバイルなどを含めた日本の短文文化を利用した日本的な情報社会形成したいと思っています。  あわせて、国際的に見て日本がアジアの情報の中核になる。これは、今、英語が非常にインターネット世界で占めておりますけれども、自動通訳機等を進めまして、日本言葉が英語にも中国語にも韓国語にも翻訳されて、一つのアジアのネットができるようにしたいと思っています。そのために、ことしの十二月三十一日から始まりますインターネット博覧会では、主要な部分を自動通訳機等を利用いたしまして英語と中国語と韓国語に翻訳していきたい、そのことによってまた中国からも韓国からもアクセスしていただくような、そういう日本情報のコアになるものをつくっていく。  そういたしますと、量がふえます。量がふえ、そしてそれを使うことによって、おもしろい、楽しい、便利だということが出てまいりますと、利用量がふえます。利用量がふえると値段も下がります。値段が下がるとまた利用量がふえ、そしてそれだけの利用量があれば、またコンテンツをつくったら引き合うということになる、こういう自律的な善循環に持ち込める。そういう状態を来年度中にまずつくる。そして、それを基礎にしてどんどん発展させていって、二〇〇五年までには世界一流の、世界で最高級の情報環境をつくり上げていきたい、こう思っております。
  60. 塩田晋

    ○塩田委員 非常に意欲的であることは理解できるのでございますが、実のところ、本当に今の日本の水準というのは、そんなに、五年で世界のトップ、あるいはアジアのリーディングカントリーとしてこの面でやっていけるかどうかということについて、私は非常に危惧の念を持っておるものでございます。  それは、せんだっても中国へ行ったわけでございますが、そこで日本の携帯電話、千六百万台の域を中国はもう既に超えている、台数におきまして。そういう状況もありますし、これは人口が十億以上でございますから、普及率においてはそれは日本よりもずっと低いということはわかりますけれども、台数におきましてはもう既に超えた。それから、普及率の点でいいますと、韓国は日本よりも普及率が高い、こういうこともありますし、それからまた中国で使われている携帯電話は、ほとんど日本製はございません、アメリカ製もありませんけれども。そういった状況で、非常に優秀なハードの携帯電話とはいいながら、そんなに使われていないという面が今の段階であります。  それから、インターネット関係にしましても、中国は優秀な人を集中的に訓練をし、教育をしておりまして、そして目は日本に向かっていない。アメリカにそういったトップクラスの人たちが目を向け、また教育を受けに行っているという状況で、本当に五年でキャッチアップし、またリードできる状況になるかどうかということについて危惧するものでございます。  この問題につきましては、アジアの中でもインドがかなり先頭を切って行っている。日本は学ばなければならないし、また技術者も日本に来てもらわなければならぬ。こういう状況があるわけでございまして、こういった状況を勘案いたしますと、なかなか大変な状況に今日本はある。先ほどもお話がありましたように、NTTの接続料金を初めとして料金が高過ぎるという問題。これはもうアメリカの倍以上の料金でありますし、ネックになっていると思うのですね。  それから、中国あたりは、日本光ファイバー等電線でつなげる部分はかなり進んでいるけれども中国はそういったものに頼らない。むしろ、携帯電話と衛星中継でもってやっていくから、日本よりも一段、二段跳びで先へ行くのだ。こういう意欲的な状況も聞いてきたわけでございますが、これらの点につきまして、長官はいかがお考えでございますか。     〔委員長退席、大野(松)委員長代理着席〕
  61. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 いろいろな点を御指摘いただきましたが、まず第一に人、これが一番のポイントだと思うのです。いかにして優秀な技術者、それから優秀なコンテンツを創造する人たち、これを育成するかというのが大きな問題です。  御指摘のように、インド中国は大変人口の多い国でございますが、優秀な技術者が、比率はともかくとして、絶対数ではたくさん出ております。特にインドは、英語が非常にうまい人が普及しております。そこへ、数学的思考というのが古くからございまして、紀元前後にゼロを発見したという国でございますから、そういう二進法の世界に非常に対応しやすいというようなことがございまして、このインドの大勢の人の中から優秀な人々を教育いたしますと、欧米でもすぐれた技術者が生まれる。アメリカあるいはドイツあたりも最近はインドの技術者を入れようというような動きがございまして、今、ITの技術者のとり合いというようなことが起こっております。  また、中国も同様でございまして、中国も昔から暗算の上手な国で、非常に数学の素養がある、そろばんの素養があるというようなことで、優秀な人がたくさん出る。それが、御指摘のように、みんなアメリカを向いているのですね。それで、日本で非常に働きにくいという環境がございます。それから、日本の学校制度、留学してもアメリカほど簡単に博士号が取れないとか、アメリカの大学ほど中国で名が売れていないとか、いろいろな事情がございまして、やはりアメリカへ行きたいというのがたくさんございます。  それで、日本もこのIT関係労働力を外国から入れるかどうか。今、留学制度等で千人ぐらいの数は入っているようでございますけれども、もっと、何万人という数で入れるかどうかという問題がございますが、そのことと同時に、このITというのは空間を跳んで、国境を跳んで利用できる。したがって、日本の拠点とバンガロール、インドの拠点あるいは中国の拠点とを結んで開発するというようなこともできるわけでございます。そういったさまざまな制度を考えていく必要が出てくるかという気がいたします。  それで、中国などの携帯電話の発達などを見ておりますと、確かに去年までは、一年間でもう日本に追いついた、六千万台になったというような数字も上がっておりますが、この大きな普及を見ておりますと、まさに今、国際競争といいますか、みんながITを目指して大競争をやっているという感じがいたします。  したがって、日本も、ここで基本法を成立させていただきまして、政府IT化した電子政府にする。商取引の方も基盤を整備して、それをすぐ実行できるようにする。そしてもう一つ、やはりインターネット博覧会で、おもしろい、日本独特のコンテンツをつくって、みんなが楽しめるようにする。そういった三本柱、ハードとソフトとコンテンツの三本柱をきちんと定めて、計画的にやっていかなければいかぬなという気がしております。  ようやくその体制が、ことし整えていただきまして、来年から、新世紀からスタートできるのじゃないかと期待しております。
  62. 塩田晋

    ○塩田委員 確かにインドは、昔から哲学の国であり、技術の面におきましても数学の面におきましても非常に進んでおる。糸川ロケット博士も、ペンシルロケットをつくる前はインドに留学というか、インドでいろいろ研究をされて、それを持って帰ってこられて、現在の日本のロケットが生産が始まったということもあるくらいでございまして、その面ではインドは先進国である。しかも、中間層が非常に大きい規模で育ちつつあるというところでございますから、今後とも日本インドに注目しなければならない。経済的にも、あるいは安全保障面でも注意しなければならないところだと思っております。  アジアにおきましても、やはり韓国もなかなかその面では優秀でございますし、シンガポールまた台湾もどんどん進んでいく中で、日本はよほどピッチを上げ、馬力をかけないと、キャッチアップどころか、それを超えてリーダー国になるということはなかなか大変なことだと思いますので、これは本当に国を挙げて、国民すべてがこれに関心を持ち、インターネット社会実現のために頑張らなければならない問題だと思います。  続きましてお伺いしたいのでございますが、第二条にあります、高度情報通信ネットワーク社会とは、インターネットその他の高度情報通信ネットワークを通じて自由かつ安全に多様な情報または知識世界的規模で入手、共有、発信し、あらゆる分野における創造的かつ活力ある発展が可能な社会、このように定義されておるところでございますが、この自由かつ安全ということを問題にしたいと思います。  まず、自由に入ってくる、自由に発信できるという中におきまして、当然、有害な情報または知識、例えば国益を損なうような情報、プライバシーの侵害または青少年の育成にとって有害となるような情報の入手が容易になる、こういうことが可能なわけでございます。  国益を損なうということにつきましても、最近、私もびっくりしたのでございますが、どの国とは言いませんけれども日本人が憎くて仕方がない、皆殺しにしてやりたい、少なくとも男性は全部殺したい、このようなことを書いて個人的な情報発信をして送りつけてくる、こういうこともあるわけですね。そんなものに惑わされることはないと思いますけれども、そういう情報がやたらに入ってくる、自由に入ってくる。こういうことについて、やはり憂慮すべき問題だと思うのでございます。  その他、電子商取引につきましても、発注をしたけれども全然商品は送ってこないというようなことの苦情も出ておりますし、またいろいろないかがわしい関係を持ってくる、あるいはどんどん広告、商品を送りつけてくる、こういったことも問題が起こっておるわけでございます。  また、個人の秘密が本当に守られるかどうかといった問題、それから知的財産権、特許等の関係で、特許庁もお見えになっていると思いますが、そういう知的財産権の適正な保護が本当に図れるのかどうか。自由に見られるし、情報が流れていくと、それをどう追いかけていって規制するかという問題等もあるかと思います。また、国の安全保障の面におきましては、軍事的な情報、これは攪乱をさせられたり、いろいろな故障を起こしたり、破壊をしたり、そういったことによって国の軍事上の問題が起こる可能性もありますし、現に起こっていることもあるわけでございます。  そういった面、すなわち、ネットワークセキュリティーの問題でございますが、これらについてどのようにお考えになっておられますか、お伺いいたします。何らかの規制を行うという必要があると思いますが、その場合の規制の基準あるいは方法、それは技術的に可能なのかどうかといったことをお伺いいたします。そしてまた、この問題は国際的な関係がありますから国際的な協調というものも必要かと思うんですが、これらを含めまして、セキュリティーの問題についてお伺いいたします。
  63. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 高度情報通信ネットワーク社会、つまりインターネット中心とした社会の一番の利点は、自由に情報をとれる、国境を越えて情報をとれる、また発信できるということでございますから、当然、その裏側として、不正な情報あるいは不当な誹謗というようなものも入ってくる可能性は十分あるわけでございます。  委員指摘のとおりでございまして、この不正なアクセスが国境を越えて敢行されたり、あるいは違法有害情報、さらにプライバシーを侵害するような情報、現にインターネットを見ていますと、それに近いものがございます。そういったものをどうするかというのは重大な問題で、この基本法にも安全ということをつけ加えて重視しているところでございます。  このような認識で、この法律では安全を前提といたしまして、施策の基本方針にネットワークの安全性、信頼性、あるいは個人情報の保護というようなことを書いて規定しているわけでございます。  政府といたしまして、この問題に関して、既に施行されております不正アクセス行為の禁止等に関する法律等に基づく厳正な対処を行うとともに、今後、個人情報保護に関する基本法の法制の整備も行っていきたいと思っています。  また、このほか、情報通信セキュリティー技術に関する研究開発、それから情報通信関係の団体によります自主的な規制ルール等々を行っていく必要があると思います。  例えば、自主ルールの例といたしましては、電子ネットワーク協議会というところで、電子ネットワーク運営に関する倫理綱領というようなものをつくっております。あるいは、テレコムサービス協会では、インターネット接続サービス等の提供に関する事業者に対応するガイドラインというようなものもつくっております。  しかし、何といたしましても、これはイタチごっこの点がございまして、防止の技術、侵入されないようなファイアウオールというのをつくりますと、それをまた乗り越える技術をつくってくるところがございますから、国際的協力のもとに絶えざる研究をしていかなければならないと思っております。  知的所有権の件につきましては、通産省の方から。
  64. 北爪由紀夫

    ○北爪政府参考人 特許庁でございます。  今先生の方から御指摘のございましたITを進める際の知的所有権の問題でございます。特許庁としましては、例えばITを使いました特許の一例としましては、ビジネス方法の特許があるわけでございます。特許庁におきましては、従来この取り組みを先生方にも非常に御心配いただきましたので、ことし特に力を強めて進めてまいりました。  日本企業の取り組みにつきましてもかなり進んできておりますが、さらにそういった取り組みを応援するために、特許庁のビジネス方法特許に関する審査基準の案を公表いたしまして、企業の方が非常にわかりやすく特許に対応できるよう努めることができるような案を今公表しております。  現在、意見を企業からいただいておりまして、これを踏まえまして、そういった審査基準を確定いたしまして、企業が、ビジネス方法特許を含めまして知的所有権問題につきまして積極的に対応できるように図ってまいりたいと考えております。
  65. 塩田晋

    ○塩田委員 政府は、電子政府あるいは地方公共団体の行政の電子化ということも取り組んでおられるわけでございますし、また、ことしの五月には、電子署名あるいは電子認証についての法律も成立したところでございまして、着々そういう面では進んでおると思いますが、なお、非常にその面でまだ心配だという感じがいたします。これらにつきましても、引き続いて十分に御検討をお願いしたいと思います。  それから、先ほどのセキュリティーのことに関しまして、また中国関係を申し上げますと、中国では、今言われましたボーダーレスな情報の送信また受信、これが行われておる。特に、非常に優秀な、トップクラスの、また大学でも優秀な人がそれに非常に熱心に取り組み、熱中しているという情報もあるわけでございまして、私は、ボーダーレスのこういった情報が特に中国世界各国との間で行われた場合に、中国の政治経済体制自体がやはりこの面から崩れてくるというか、ソ連あるいは東欧諸国がベルリンの壁の崩壊によって崩れていったような事態が、ここ数十年と言わず、もっと近い段階で情報のボーダーレス化によって起こり得る、世界化するためにそういった問題が起こるということが十分考えられるわけでございます。  そこで、中国におきましては、インターネットにしても、有害なというか、国家国民にとって、党にとって有害と見られるものは見させない、受け付けさせないといった規制をしているように聞いたんですが、本当にそういったことが技術的に可能なのかどうか。その点について、技術的にその可能性についてお伺いしたいと思います。  北朝鮮では、テレビとかラジオ等は外国からの放送は受け付けないような受信機にしているとかいうことも聞きますけれどもインターネットその他につきまして、それが技術的に可能かどうか、その辺、これは通産省ですかね、技術的な面、お伺いいたします。
  66. 太田信一郎

    ○太田政府参考人 アメリカ等におきましても、テレビ等において見せたくない番組について技術的にチェックする仕組みができております。日本でもそういう技術は可能かと思います。  ただ、インターネット社会はまさにグローバルな社会でございますので、最低限のいろいろな規制というものは必要かと思いますが、先ほどIT担当大臣が言われたように、まさにそれを超えるいろいろな技術というのが出てくるわけでございますので、そういうことも頭の中に入れながら対応していく、すべてが技術で片づくものではないというふうに考えております。
  67. 塩田晋

    ○塩田委員 次に、法案の第三条に「すべての国民が、」「高度情報通信ネットワークを容易にかつ主体的に利用する機会を有し、」というふうに規定されておりますけれども、具体的にどのような状況を想定しておられるのか。それこそ、自由党が主張しておりますモバイル端末機を全国民に無償で配布するといったようなことを思い切ってやれば、一気に進むのではないかと思うのでございますが、これについて長官はいかがお考えか、お伺いしたいと思います。  これに関連しまして、堺屋長官がかつてどこかで言われたと思うんですが、インターネット関連の教育、研修あるいは講習を受けるための講習券といいますか、これを発行して皆さんに持ってもらえば、自由に選択をしてこれについての勉強ができる、こういう構想を発表されたように思うんですけれども、これが今どういうふうになっていっているか、お聞きしたいと思います。  それから、これは経済の面で見ると需要面の対策になっていると思うんですが、片や自治省等を中心にしまして、むしろ供給面からの対策として研修会、講習会を地方自治体が実施をする、そういったところにお金を投入するというような構想が進んでいるように聞くんですけれども、需要と供給面両方なのか、あるいはどちらに重点が行っているのか、この辺についてお伺いいたします。
  68. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 この基本法におきまして、高度情報通信ネットワーク社会を目指すべき姿として、すべての国民が低廉な料金で手軽にインターネット等のネットワークを利用できる機会を有する社会をつくろうということを規定しております。  御指摘のモバイル端末でいいのか、あるいは、モバイル端末をコンピューターにつないでインターネットを見ることもできますが、そういう段階のものを無料配布するのがいいのか。既に六千万台モバイル端末は出ておりますので、これをさらに配布するのはいかがなものかというようなことも考えます。  それで、この高度情報通信ネットワーク社会形成に当たりましては、IT社会の基盤となる制度改革を進めて、施設の充実、これは学校とか図書館とかそういう公共施設にまず光ファイバー高速通信線を入れる。それから、すべての国民利用できるように、利用技能、ソフトウエアの方を普及する。そして、どこでも利用でき、だれでも利用できるようにして、そして利用すれば楽しくて便利だというコンテンツをつくる、中身をつくるという、この三本柱を充実していこう、そういうような発想で今やっているところでございます。  このために、特に学校などの情報関連機関を施設を強化いたしまして、これに光ファイバー等を通して、そして一学級が丸々インターネットを使って授業ができるような仕掛けをする。あるいは、公衆インターネット。公衆電話というのがございますけれども、だれでも、自分機械を持っていない人、あるいは旅行中の人も使えるような公衆インターネット拠点を敷設する等のことを行いまして、インターネットを積極的に活用できるようにしたいと考えております。また、コンテンツの方では、世界最高水準の電子政府、これを二〇〇三年ぐらいには何とかつくりたいと思っておりますし、商取引の拡大もしたいと思っています。  それから、先ほどから申し上げておりますインターネット博覧会、これは二百以上の自治体あるいは企業、NPO等が参加いたしまして、非常ににぎやかな行事になってまいりまして、恐らく来年中には大きな盛り上がりを示すものだと考えております。  そういうようなさまざまな方向から盛り上げていくことを考えておりまして、今モバイル端末を無償で配布するということはちょっと考慮しておりません。  それから、講習券のことでございますけれども先生指摘のように教育、教育に限らずすべてのものがそうでございますが、供給者側、サプライサイドを振興して供給を便利にし、数をふやし、そして広めるというのと、それからディマンド側、需要側の人々に援助を与えて、それで教育を受けやすくする、利用しやすくする、この両方の政策がございますが、これまでは主として供給側。需要側を援助するというのは余りなかったわけです。  それで、そういうことも考えましたし、またIT戦略会議におきまして、学者の先生方、複数の委員の方々からそういう案も出ました。私も、これはなかなかいい案だと考えて、いろいろと計算いたしましたが、結局、それをやろうとすると自治体に配布してもらうことになるんですけれども、非常に地域的に格差がございまして、一律にそういう方法でいいかどうかというような疑問もありました。  それで、現在のところは、学校に光ファイバーを引く、あるいは公民館や図書館、郵便局等にそういう施設をつくりまして、そこで講習会を開いて、大体五百五十万人ぐらいの方々に、一年間の間にIT社会に生きる生活者として必要な技能を学んでもらう。そのほかに、百五十万人ぐらいの人々は、これは仕事として、ITのできる人として働けるような高度の教育を、これは労働省の方でございますが、受けていただいて、合計七百万人ぐらいの人に政府が提供いたします講習会で学んでもらう。そのほかに、五百万人ぐらい、学校や職場政府関係のないところで学ぶ人がふえて、合計で一年間に千二百万人ぐらい、ITを常時使えるような人々をふやしていきたい。  そういたしますと、現在、日本普及率が二十数%でございますけれども、大体一割ふえる。それを行いますと、ふるさとにいる両親も使えるようになったら、東京にいる学生さんも、今までは少々使えても使わなかった、それが交信するようになる。だんだん量がふえまして、価格も下がっていく、そしてまた新しいコンテンツもできるし、それがまた引き合うようになってくる。  そういう仕掛けで、大体来年度の末、平成十三年度の末には四〇%というIT、今の水準でいうと大体先進国並みの普及をしていきたい、そういうような計画を立てている次第でございます。
  69. 塩田晋

    ○塩田委員 ありがとうございました。  いろいろ方策を実施されまして、我が国の国民のこの問題についての関心、そしてレベルを上げていくということについて、具体的にお話をいただいたわけでございます。  ところが、この推進に当たっては民間主導が原則であるということがうたわれておりますし、国、公共団体と民間の役割分担ということもうたわれておるわけでございますが、今お話伺いますと、どうしても従来型の官主導、上からの指導が主体になるんじゃないか、このように受けとめられるわけでございます。  この辺は、むしろ民間の主導というか、民間活力というものをどう引き出していくか。その面では、サプライサイドもディマンドサイドももちろんでございますが、民間の活力をどう活用していけばいいか、これについてお伺いしたいと思うのでございます。  ベンチャー企業はこの面でも今活発ではありますが、ベンチャー企業に対するどういう指導、援助をされるのか。それから、この問題は、ベンチャーあるいは小規模の中小企業者が取り組むことは、広さの面、量の面からいっても当然必要だと思うんですけれども、やはり大企業がいま一つ踏み込んで取り組もうとしていない面があるんじゃないか、このように危惧するんですが、その大企業の取り組み方の現状、そして今後の見通しといいますか、どのようにお考えか、お伺いいたします。
  70. 太田信一郎

    ○太田政府参考人 委員おっしゃられるように、IT社会の担い手というのが民間であることは間違いないと思います。法案の七条にも、まさに民間が主導的役割を果たすことが原則というふうに記されているところでございますが、担い手を具体的に申しますと、今委員言われたように、一つは中小企業が中心となるITベンチャー企業、もう一つは本当に日本を引っ張っていく大企業ということになるかと思います。それぞれみずからの分野において頑張っていると思いますが、特にITベンチャー企業については、政府としても、そういう活動を支援するという意味から、資金面、人材面、技術面でいろいろと支援をしているところでございます。  資金面でいいますと、エンゼル税制の拡充とか投資事業組合への出資制度の拡充、あるいは、すぐれたソフトウエアを開発した場合にきちんと債務保証をしてあげるというようなことをやっております。  人材面からも、ストックオプション制度を、これは国会の御審議をいただいて、徐々にではございますが拡充をしております。また、先ほどもお話がありましたけれども、すぐれた才能を持つ研究者、個人、こういう人たちをいかに育成、発掘するかということも大事でございます。そういう面での施策もやっております。  それから、技術面では、産学を結ぶ技術研究移転機関への支援等をやっております。  さらに、いろいろな相談がございます。こういうものについては、国、都道府県、地域の各レベルで、そういうベンチャー企業等に対して、悩み事等を聞く観点からいろいろな施策あるいは制度を講じているところです。  それから、大企業でございますが、設備投資の半額以上を情報システム開発投資に回すといっているものが大体二割弱ございます。こうした企業が、さらに今後、資本提携等あるいは共同生産、共同で子会社をつくるというような形で、まさに選択と集中ということでいろいろな形での活動を活発化していると思います。我々も大いにそういうものを支援していきたいというふうに考えているところでございます。
  71. 塩田晋

    ○塩田委員 ぜひともそういう方向で、民間主導ということを念頭に置いて、中小企業並びに大企業がこぞって取り組むようにひとつ御支援をお願いします。  それから、最後に一問申し上げます。  将来、金融ビジネス、電子商取引などの分野のビジネスモデル特許が大きな問題になるのではないか、このように考えられます。ビジネスモデル特許面でのおくれによって、日本が高度情報化社会実現を進める中で、その部門でかなりの摩擦が起きるのではないか。情報先進国の企業からの訴訟等が予想されますけれども、その対策をどのように考えておられますか。日本情報通信ネットワーク高度化をすればするほど他の国の利益が生じる、肝心の我が国の利益は他の国に吸い上げられてしまう、こういった事態も生ずるのではないかと危惧されるのでありますけれども、いかがお考えでございますか、お伺いいたします。
  72. 北爪由紀夫

    ○北爪政府参考人 お答え申し上げます。  まず最初に、我が国企業のビジネス方法特許に対する取り組みでございますが、先生方にも御心配いただきましたけれども、最近はかなり急速に進んでおります。  例えば、本年七月にアメリカの特許庁が出したビジネス方法の特許取得企業の上位十社の中に、日本企業は三社入っております。また、日本国内に対する出願につきましても、昨年特許公開されたものが約二千件ほどございますが、去年の年末からことしに入りまして、これを大幅に凌駕するようなペースで日本企業からの出願が続いております。そういう意味では、かなり日本企業も、先生がおっしゃいましたように、金融ビジネスも含めてキャッチアップをしていかなきゃいけないという意識が非常に強まり、かつ具体的な取り組みが出てきたと思います。  訴訟につきましては、現在のところ、アメリカ企業同士、または一件ほど日本企業同士の訴訟がありますが、国境を越えて訴訟になっているという例はございません。  特許庁としましても、裁判所の協力を得ながら、いかに確実かつ迅速な裁判制度を運営していくかということにつきまして努力をしたいと思っておりまして、この観点から特許法等の改正をしてきました。ビジネス方法の特許につきましても、裁判所と協力をしながら、適切に迅速な訴訟ができるように努めてまいりたいと思います。  それから、ただ、ビジネス方法の特許につきましては、特許要件が不明確でありますと、成立した特許の有効性について疑義が出ましていたずらに争いを招来する可能性がございますので、先ほど御答弁申し上げましたように、ビジネス方法の特許を含むソフトウエア特許につきまして、要件の一層の明確化を図るため審査基準の改定を行うこととしまして、現在その案を公表し、企業等の意見を求めているところであります。  それから、特許料の支払いについてでございますけれども、特許制度の本来の趣旨からいいますと、特許権が適切に成立している限り、それを使おうとする方々が特許権者に特許料を払うというのは問題ではないと思っております。  したがいまして、一番問題なのは、いかにしっかりとした特許を確立するかということでございます。先ほどの審査基準のお話もございましたが、特許庁としましては、審査体制をさらに強化するとともに、銀行業界、損保業界、その他ビジネス方法特許にかかわる業界の方々が現在考えていらっしゃいます、かつ持っていらっしゃるような技術、慣行等につきまして特許庁に資料を提供していただけるように要請をしております。こういった協力を得まして、さらに内容の立派な、かつ争いの少ないような特許を確定すべく努力をしてまいりたいと思います。  通産省としましても、先ほど申しました繰り返しでございますけれども、しっかりとした審査を行うということのほかに、審査基準の明確化、的確な情報の提供等を含めまして、企業が立派に対応していけるように環境の整備に努めてまいりたいと思います。
  73. 塩田晋

    ○塩田委員 質問を終わります。ありがとうございました。
  74. 大野松茂

    ○大野(松)委員長代理 矢島恒夫君。
  75. 矢島恒夫

    矢島委員 日本共産党の矢島恒夫でございます。  質問に入る前に、委員長、お願いですが、このIT基本法という、国を挙げてどういうネットワーク社会形成するかという重要な法案にもかかわらず大分空席が目立ちますので、それなりの手当てをとっていただきたいと思います。  それでは質問に入ります。  私、今日の情報通信技術の急速な発展というものは、人類の文化、技術の進歩の歴史の中でも画期的な一段階を開きつつある、このように思います。そのことは、やはり二十一世紀へ向けて国民の生存とかあるいは生活、こういうものの基盤を守る重要課題の一つだと認識しているわけであります。  そこで、私は、この高度情報通信ネットワーク形成というものが我が国の民主主義とかあるいは文化、こういうものの発展あるいは国民生活を豊かにする、こういうことに役立つこと、そのためには、この新しい技術が国民の共有財産として、その成果を国民がひとしく、あまねく享受できるようにしていくことが必要だと考えております。その点について、担当大臣堺屋長官の御答弁をいただきたい。
  76. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 お説のとおり、インターネット等高度情報通信ネットワークの急速な普及は、これまでの技術開発あるいは産業構造変化というようなものとは異なりまして、社会人間関係や組織の構成原理あるいは人間社会全体を根本から変えるものでございます。その結果、恐らく個人の生活様式社会経済活動あるいは行政のあり方など、広範な部分が変わってくるだろうと考えております。  このITの恩恵について言えば、御指摘のとおり、国民があまねく享受すべきものと考えておりまして、この法案におきましても、高度情報通信ネットワーク社会の目指すべき姿として、「すべての国民が、インターネットその他の高度情報通信ネットワークを容易にかつ主体的に利用する機会を有し、その利用機会を通じて個々の能力を創造的かつ最大限に発揮することが可能となり、もって情報通信技術の恵沢をあまねく享受できる社会」をつくる、こう規定しております。  例えて申しますと、ITが発展、普及いたしますと、産業の面あるいは社会生活の面、両方に非常に大きな効果が上がってくると思います。例えば、男女共同参画社会形成するといたしましても、このITがございますと、テレワークあるいはSOHO等を通じて育児や介護と仕事が両立しやすい。あるいは、高齢者が仕事と暮らしの中で、就業の機会を探す、自分の健康状態あるいは通勤条件等に合った仕事を探す、さらには余暇で趣味の相手を探す、そういうようなことにも非常に寄与し、心強い状態が生まれると思います。  こうした高度情報通信ネットワーク社会形成に向けまして、第一にはやはりハードウエア、光ファイバー中心とする機器を整備していかなきゃならない。第二には、お年寄りも身体に障害のある方も、皆さんが使えるような技能の普及をしていかなければいけない。そして第三には、それを使っていただければ便利でおもしろい、楽しい、本当に仲間ができるというコンテンツをつくっていかなきゃならない。こういった三つの面を同時に、並行的に、かつ今の日本といたしましては飛躍的に発展させることが必要だと考えております。この三本の柱が相互に作用することによりましてIT社会が急速に生まれてくる、そういうようなことを目指して、IT担当大臣といたしましてぜひ一生懸命やらせていただきたいと考えております。     〔大野(松)委員長代理退席、委員長着席〕
  77. 矢島恒夫

    矢島委員 そこで、提案されております基本法案の各条文について尋ねていきたいと思います。  まず、第一条の目的ですが、これを読みますと、最後のところで「ネットワーク社会形成に関する施策を迅速かつ重点的に推進することを目的とする。」こう書いてあります。つまり、この法案はこの政策を推進する実施法である、このように考えられるわけです。  私は、高度情報技術によるインターネットなどのネットワーク網、これは豊かな国民生活を保障するための手段あるいは道具である、このように考えます。この政策を推進することによって国民生活に何をもたらすのか、どういう社会を目指すのかということをこの目的で明確にすべきだと私は考えるんです。どういう社会をつくるかという問題については、長官たくさんお述べになりたいと思いますが、私、もう最初からこの委員会で聞いておりますので、その背景などについてわかっておりますから、なぜ目的の中にそういう文言を入れないのか、その理由についてお聞かせいただきたい。
  78. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 御指摘のように、IT普及いたしますと世の中が大きゅう変わる、そしてそれがどんな社会になるか、これはIT基本法としての限界というのがあると思うんですね。  もし、これが憲法とかそういうことでございますと、本当に平和国家、民主国家、どういう社会というところをとうとうと論じるべきだと思いますが、IT基本法という概念からいいますと、やはりこの程度の、御指摘のようにIT普及させることによって高度情報社会をつくるんだ、そこでとどめる方が正当じゃないか。ここで本当に社会の先まで、あるべき社会の姿、そういったものを書いてしまいますと、これは憲法のような条文になってしまうんじゃないかという気がいたしまして、この程度にとどめたところでございます。
  79. 矢島恒夫

    矢島委員 例えば、先ほども最初に御答弁いただいたように、我が国の民主主義の発展とかあるいは文化の向上という中心的な目的、これは別に、憲法とのかかわり、あるいはIT基本法だからそういうのを入れちゃいけないという問題ではないと思うのです。  といいますのは、昭和二十二年の教育基本法から、ことしできました循環型社会形成推進基本法まで、十八本の基本法と呼ばれるものがあります。全部を言っている時間がありませんが、例えば循環型社会形成推進基本法では、「もって現在及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保に寄与すること」、科学技術基本法を見ますと、「もって我が国の経済社会の発展と国民の福祉の向上に寄与するとともに世界の科学技術の進歩と人類社会の持続的な発展に貢献すること」、いずれもその基本法の目的として書かれているわけであります。  そういう意味からして、私は、やはり基本法という以上は、どういう社会を目指し、そのことによって国民にどういう利益をもたらすのか、その視点が入っていなければ、基本法ではなくて、言うなれば推進本部の設置法だというぐらいにしか読めない内容だ、ここのところを指摘しておきたいと思うわけです。  さらに、そういう状況の中で、これは朝日新聞の社説にも出ておりましたけれども、十月二十日の社説で、IT革命の主役は消費者だと。中でも、基本法と銘打つからには、IT革命によってどんな社会をつくろうとしているのか、こういう部分が入っていないのじゃないかという指摘の社説でありました。  電気通信事業法の目的、ここにもきちんと、電気通信事業によって国民にどういう利益を保障していくのかというのが書かれているわけであります。  そういうのを見ますと、なぜこういう文案になったのか。今長官は、憲法じゃないのだからというお話ではございますけれども、この法案がつくられてきた経過を見てみますと、そのことがきちんと言えるんじゃないかと思うのですね。やはりこの基本法全体を通して国民的視点が欠如しているのではないか、政府が言うIT革命というのは消費者や国民を主役に据えていないのじゃないか、このことをその経過から私は考えてみたわけなんです。  そうしますと、ことしの五月二十九日に経団連が「IT立国に向けた提言」というのを出しました。この中ではIT革命推進のための政治的リーダーシップとして、「行政の縦割りによる弊害を超え、政府諸機関が一体となった総合的・戦略的な取り組みが不可欠である。」この方向で今戦略本部をつくろうという、あるいはつくってきたわけです。もう一つは、「副総理格の特命事項担当大臣を置くとともに、民間人が参加する恒常的スタッフ部門を整備」することを求めるとあるのですね。これもやはりそういう方向で担当大臣を決めて、さらには、戦略会議と一体となった戦略推進本部をつくっていく、こういう方向がこの法案で出されてきているわけですね。  こういうのを受けて、結局、八月三十日にIT戦略会議の第二回の会合が、これは本部も一緒ということで合同の会議が開かれました。出井議長は、超高速インターネットへの集中投資などを柱とするいわゆる四大戦略、こう呼ばれておりますが、この実行を第二回で提起されております。  これを受けてIT基本法提出するということになるわけです。つまり、この法案が、今までのいろいろな経過があろうかと思いますけれども、つい最近の状況を見ただけでも、このIT戦略会議で論議されたこと、提起されたことをほとんど丸のみという状況で、法的な受け皿としてのIT基本法としてつくっていく。  これはやはり、第二回の会合で出井議長が出しましたところの四大戦略実現という方向が打ち出されてきているのがこの基本法だと思うのです。だから、どうしても国民的視点というものがなおざりにされて、後景に国民の問題が押しやられて、ネットワーク網の形成というのが主目的になっているのと違うのか、こう思うのですが、その辺についての御意見がありましたら。
  80. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 この第一条には、目的といたしまして、「高度情報通信ネットワーク社会形成に関する施策を迅速かつ重点的に推進することを目的とする。」こう書いてございますが、三条を見ていただきますと、「もって情報通信技術の恵沢をあまねく享受できる社会実現されることを旨として、」と書いてございます。また五条を見ていただきますと、「もってゆとりと豊かさを実感できる国民生活実現に寄与するものでなければならない。」と示されております。また六条には、活力ある地域社会実現、住民福祉の向上等を書いております。  一つの条文ではございませんけれども、この推進だけを目的としたものではなくして、推進によって、もって豊かでゆとりのある国民生活、あるいは活力のある地域社会と住民福祉、そういったことを明示しておりまして、これは基本法としてその体をなしていると思っております。
  81. 矢島恒夫

    矢島委員 第三条以下、今指摘されましたけれども、これは基本理念なんですね。いわゆる目的というのは、そういう社会をつくっていこうというのが第一条に出てくるわけです。第三条以下、今御指摘されたところの第八条までありますけれども、基本理念としてこれは掲げているわけですね。この基本理念、第三条の問題についてはさらに後で詳しくお尋ねしようと思っているのですが、いずれも「寄与するものでなければならない。」という形であって、結局、これを目的としているのじゃないんですね、目標とはしているかもしれませんが。  私が言いたいのは、やはり目的のところにきちんと基本的な方向を入れるべきではないかということを指摘しておきたいと思います。  それから、言うなれば戦略会議から始まって、戦略本部との合同会議の中で今日の基本法提出という段階まで進んできたわけですけれども、そういう会議の意向が丸のみされているのではないかという指摘に対しては、今、第三条以下の問題で大臣お答えになったわけです。  九月二十日の戦略会議の第三回の会合ですけれども、その第三回の会合の議事録を読みますと、堺屋長官が、ハードとソフトとコンテンツ、きょうもお話がありましたけれども、この三本柱を同時並行的かつ飛躍的に発展させることが重要だ、こういう発言をされた会議です。その会議の中で自由討議が行われているのですが、ある委員からこういう指摘があったんですね。これに対して答弁された政府の側の、どなたかはこの議事録からはわかりませんが、文脈からいきますと、どうも堺屋長官がお答えになったんじゃないかなと私は思うのです、違ったら失礼ですが。  こういう発言をされたんですね。自由討議の中で、「この法律の原案で示されている基本方針、重点計画は、この合同会議でこれから議論しようとしている事項と全く同じものだと思う。昨日も起草委員会を開き、ほぼこういう内容で起草することになっている。今の段階でIT基本法が議題になるということは、この合同会議の結論がIT基本法の重点計画の内容として、そのまま取り入れていただけるということか。」つまり、戦略会議で私どもが起草するものは、IT基本法の重点計画の内容である、こういうふうに理解していいかと。  このIT基本法の中の重点計画というのは、具体的にはこれからなんですよね。一月六日から実際に重点計画が一つ一つ出てくる。しかし、その基本になるのは、IT戦略会議が今まで論議してきた基本計画そのままが入っていくのか、こういう質問だと思います。  それに対して、政府から出席している方が、「そのような御理解で、全く間違いないと思う。IT戦略会議政府が討議をお願い申し上げている会議であり、」以下、途中省略いたしますが、「その法的な受け皿としてIT基本法があって、本国会で成立を期し、さらにその基本法に基づく重点計画に国家戦略が乗っていくというような御理解をいただければ、整合性が付くのではないかと我々は考えている。」  結局、これも消費者が主役じゃないのですよね。やはり、経団連の提言の四大戦略、この法的な受け皿としてIT基本法をつくったんだ、こういうように答弁されていると思うのですが、違いますか。
  82. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 IT戦略会議でございますけれども、財界の方、学者の方、地方自治体の方等々御出席いただきまして議論をしておりまして、経団連というのとはちょっと違うと思いますけれども、やはり、そういう民間有識者の方々のお知恵を拝借して議論をしておりますので、それはある程度といいますか、尊重すべきところはあると思いますが、それをそのままこの基本法に写したということではございません。やはり、基本法の中ではさまざまな法的あるいは政府としての議論も行ってまいりました。  そういう問題で、この重点計画は、基本理念基本方針にのっとり、高度情報通信ネットワーク形成、人材の育成あるいは電子商取引の促進、行政情報化等について、政府が迅速かつ重点的に実施すべきだというような施策を定める方針でございますが、なお検討中ということで、まだIT戦略会議の方も結論が出ているわけではございません。そのまま丸写しということではないと思います。
  83. 矢島恒夫

    矢島委員 いや、これは第三回の会合の、堺屋長官が答弁されたかどうか、その辺ははっきりしませんけれども政府出席者から、それはそのまま、ああやって一緒にやるんだから整合性があるんだと。まるっきり全部がその基本方針に入ってくるというような話になっているので、そこのところを確認したわけなんです。結局、だから、このときの政府の答弁というのは間違っていたということでいいんですか。
  84. 平井正夫

    平井政府参考人 今、堺屋長官から御説明がございましたように、基本法に定めております重点計画は、あくまで一月六日以降に発足いたします戦略本部において決定するということになっております。
  85. 矢島恒夫

    矢島委員 いや、だから、一月六日からきちんと基本法をつくるんだ、つくるんだと言いながら、ことしじゅうに戦略会議の方では一程度の起案をするんじゃないですか。何かそういう文面もこの中にありますよ。だから、こういう答弁が第三回の戦略会議の中で出てきたんじゃないかと。  戦略会議というのが、構成が、先ほど学者とか地方自治体とか言いましたが、二十名いらっしゃるんですよね。そのうち十四名は全部財界の人ですよ。五名は大学の先生です。一人だけ地方自治体の方が入っています。  いろいろと国民の意見が、学者の皆さん方が発言する、あるいは企業を代表しているか財界を代表している方々も、それは、国民的な視点というものを全然なくしているんだとは私は思いませんが、しかし、出てきたこの基本法の中身を見ますと、国民的視点がこれだけ欠けている。もう少し、基本法という以上は、あくまでもネットワークの形成の推進をやっていくんだ、やっていくんだじゃなくて、そのことによって国民がどういうふうな豊かな生活をつくり上げていくことができるのかという視点、そういうところが非常に欠如しているのです。  というのは、十月十七日、東京新聞のインタビューに、IT戦略会議の出井議長が答えているんですね。ITは、個人の幸せを保証するものでもなければ、デジタルデバイド、いわゆる情報格差を完全に解消するものでもない。これは同じ日の朝日ですが、ITが進めば新しい格差は生まれるということも出井議長は答えているんですね。それからさらに、これは十七日の東京新聞の続きですが、アメリカにはユニバーサルサービスファンドがあるが、仕組みは別にして、まずは高速ネットワークをつくるという志が大切だ、こう述べているんです。  国民生活については、デジタルデバイドもあるよ、個人の幸せを保証するものでもないんだよ、まずは何しろ高速ネットワークをつくるということが一番なんだというのが、大体、出井さんの発言の中身なんです。結局、これだと国民生活は後回しということになるんですが、こういうことについては政府はどんなふうに考えているんですか。
  86. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 この法案の第三条を見ていただきますと、「あまねく享受できる社会実現」するということを書いてございます。  確かに、ITを発達させれば、そのままデジタルデバイドがなくなるとか、全部の人に幸せが保証できるとか、そういうものではございませんから、あえてというか、そういうことの危惧がないように、この法律の中で、すべての国民高度情報通信ネットワーク利用し、その恵沢があまねく社会に享受できるようにしよういうことを強調しておるのでございまして、出井さんのおっしゃったのは、そういう危惧があるからこういう法律でもそのことを強調するということになったのでございまして、出井さんのおっしゃっている心配をそのままほっとけというようには全く考えておりません。
  87. 矢島恒夫

    矢島委員 堺屋長官が、第三条、第三条と言われますので、私も第三条の問題の方に移っていきたいと思います。  第三条は、これは基本理念だということは先ほど申しました。この第三条には「情報通信技術の恵沢を」以下ずっとあって、「実現されることを旨として、行われなければならない。」旨として行うのですよね。結果としてそうならなかった場合、こういうこともあり得るということだろうと思うのですよ。  つまり、「すべての国民情報通信技術の恵沢を享受できる社会実現」という言葉があります。これは、この第三条はだれが実施するのか、こういう点なんですね。これは主語がありませんから、恐らく国や自治体や民間企業や国民自身、つまりオール・ジャパンでそのために努力するということの理念の表明ですよ、これをずっときちんと読んでもらいますと。  この高度情報通信ネットワーク網の形成というのは民間主導で行うということは、これが原則だと第七条で明記してあります。だれがこの理念実現を保障しているのか、努力してできなかったときにはどういうことなんだ、そういうこともあり得るのか。つまり、民間事業者の責務、国の責務、こういうものが明確になっていない。これで実効あるものにする保障がどこにあるのかという点について大臣の見解をお聞きしたい。
  88. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 第三条は、基本理念として、「すべての国民が、インターネットその他の高度情報通信ネットワークを容易にかつ主体的に利用する機会を有し、その利用機会を通じて個々の能力を創造的かつ最大限に発揮すること」、これをもって情報通信技術の恵沢をあまねく享受できる社会実現することを規定しているわけでございます。  また、「旨として、」ということは基本としてという意味でございまして、理念の表現ぶりとしては決して弱いものではないと考えております。  では、個々の具体的な問題、具体的な施策でどういうぐあいにしてやるんだということでございますが、この第三条の規定を含む本法案の規定する基本理念及び施策の基本方針を踏まえて、政府は、重点計画及び各省庁の個別施策において十分に対応していく覚悟でございます。
  89. 矢島恒夫

    矢島委員 そうしますと、「実現されることを旨として、行われなければならない。」というのは、政府がということですか。
  90. 古田肇

    古田政府参考人 お答えいたします。  第二条の定義で社会の内容が書いてあるわけでございます。それから、第三条で今大臣の方から御説明申し上げたことが書いてあるわけでございますが、あえてここに主体を書いておりませんのは、社会全体として、社会の構成員全体が一体となって、三条、四条、五条、六条に掲げるそういう理念を目指していくんだ、こういうことでございます。  それで、重点計画のお話がございましたが、重点計画は、この法律の三十四条にございますように、そのうち政府が迅速かつ重点的に実施すべき施策を定めたものが重点計画でございまして、その部分はあくまで政府がやるものだというふうに考えております。
  91. 矢島恒夫

    矢島委員 今お話がありましたけれども、主語がはっきりしていないからみんなでやるんだ、これは国全体でやるんだ、重点計画の方で国がやるべきことはこれから決めていくんだ、大体そういうことかと思うんですが、重点計画というのはまだ具体的に出ていないんですよ。これからなんですよ。やはり私は、ぜひこれは国の責務としてやるべきだという点を強調しておきたいと思うんです。  これは重点計画を作成する中でどのように御配慮いただけるかということになるかと思いますけれども、できれば私はこれは国がこういうことできちんとやるんだよというふうに入れてもらいたいところですが、重点計画の方でひとつぜひそういう具体的なものを出していただきたい。
  92. 古田肇

    古田政府参考人 ただいま御指摘の点でございますが、同じ基本法の第九条が国の責務の規定でございまして、ここにございますように、三条から八条までの基本理念にのっとって、施策を策定し、及び実施する責務を有すると。それから同様に、十条で地方自治体、十一条でその連携ということが書いてございますので、国が施策を行う場合には、当然第三条から第八条までの理念にのっとってやるんだということも明定しておるわけでございます。
  93. 矢島恒夫

    矢島委員 第九条の問題は、もちろんそれを知っての上でお尋ねしたわけであって、基本計画を作成するに当たって、このことを、つまり国民のすべてがひとしくその恩恵が受けられるという方向の施策をきちんと出してくれ、こういうことであります。  やはり私は、そういう意味からしても、もっともっと国民的視点が必要だとは思うんですけれども、ずっと読んでいきますと、どうも、この高度情報通信ネットワーク社会をどうつくるかというところに余りにも力点がある。それは、今までの経過からしてという話までしてみたわけですけれども。  そこで、郵政省にお聞きしたいんですが、日本光ファイバーの所有ではまず世界一進んでいるんじゃないかと私は思うんです。政府は、郵政省電気通信審議会答申で二〇一〇年までに日本全国光ファイバー網を完了するというのを、九七年の経済対策閣僚会議で二〇〇五年に繰り上げて完了させることというふうに決めました。  そこで、私は、既に全国のいわゆる新幹線網的な部分、ここは相当いっているんじゃないかと思うんですけれどもNTT普及率について御答弁いただきたい。     〔委員長退席、大野(松)委員長代理着席〕
  94. 天野定功

    天野政府参考人 超高速、大容量の光ファイバー網の整備につきましては、民間主導原則のもとに、政府としましても、民間事業者投資負担軽減のための支援措置、特別融資措置でございますが、措置を講じまして、その推進に努めているところでございます。  この結果としまして、光ファイバー網整備は着実に進捗しておりまして、ネットワークを中継系ネットワークと加入者系ネットワークに分けて考えますと、まず中継系ネットワークにつきましては、ほぼ一〇〇%の光化が完了しております。  次に、加入者系ネットワークにつきましては、十一年度末現在でありますが、加入者宅の近辺に設置されるポイント、いわゆる饋線点までの光ファイバー網整備率の全国平均は三六%になっております。これを地域別に見ますと、政令指定都市及び県庁所在地級都市の主要なエリアでは九三%、人口十万以上の都市などの主要なエリアでは七二%に達しております。これに対しまして、人口十万未満の都市では一四%となって、非常に低い水準になっております。
  95. 矢島恒夫

    矢島委員 そうしますと、今の答弁から、残っているのは、各家庭までの、いわゆるローカル網の光ファイバーの設置、これが少しおくれていると。  今のはNTT光ファイバー網をお聞きしたんですけれども、例えば、電力会社の持っているものだとか、あるいは鉄道、あるいは建設省も道路の関係光ファイバー網を持っています。これからそういうものが有効活用できるようになっていく。そうすると、さらに民主導で世界最高水準のネットワーク網、いわゆる光ファイバー網形成する、こういう方向なんですが、これだけ出てきていて、なぜさらにこの法律で民主導によって世界最高水準の光ファイバー網形成するというふうにこの条文に書いてあるのか。二重投資じゃないかと私は思うんですが、大臣、そうじゃないですか、これは。
  96. 平井正夫

    平井政府参考人 二重投資じゃないかということの御質問ではないかと思いますが、ネットワークにつきましては、御案内のとおり、光だけですべてが完結するのではございませんで、それ以外に無線ですとか有線の使い方、あるいはCATV回線の使い方、さまざまな組み合わせで行われることになっております。したがいまして、光の普及度だけをもって二重投資になるとかというのは申し上げられることではないのじゃないかと思っております。
  97. 矢島恒夫

    矢島委員 なかなか苦しい答弁ですよ。  実際に、光ファイバー網全国につくっていこうというのでNTTがこれだけずっとつくってきて、新幹線部分はでき上がっている。さらに、東京電力も持っているし、建設省も持っている。そういうようなネットワークをこれから使えるようにしていこうという方向で今検討していらっしゃると思うんですよ。そうなっていけば、大体幹線部分はできるんですよ。問題は、各家庭までのネットワークをどうつくるかという問題なんですよ。ですから、それは、電話線があったりCATVがあったり、いろいろありますよ。だけれども、光というものがそこまでいっている以上、問題は、各家庭にどれだけ接続できるかという、このネットワークをつくるということじゃないかなと私は思います。  さてそこで、私は、そういう世界最高水準のネットワーク網を形成するのに、どうも行政に任せておいたのではなかなか進まないというのがこの戦略会議でのいろいろな意見で、その結果、郵政省や建設省や通産省の縦割り行政では時間がかかってだめだから、トップダウン方式で、民主導で最高水準のネットワークをつくる、これがこの法律の出てきた基本的な考え方だろうと思うのですよ。それを実施、推進するために、二十四条以降、このネットワーク社会を推進するための戦略本部をつくる、こうなっているわけです。そこで、第二十九条の2の二ですが、本部員について「優れた識見を有する者のうちから、内閣総理大臣が任命する者」こういうように出てまいります。  そこで、二点について聞きます。これは国会の承認というのが入っていないのですが、そのつもりはないのか。それから、本部員のメンバーですけれども、私は、消費者代表だとかあるいは高齢者だとか障害者だとか労働界だとか、その他あるでしょう、各分野の代表を入れてつくるべきであると思うのです。戦略会議のメンバーがそのまま平行移動するなんということは考えていないのだろうと思いますけれども、その辺についてのお考えをお聞きしたい。
  98. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 民間の本部員につきましては、内閣府に設置される経済財政諮問会議の民間委員などと同様に、すぐれた見識を持つ者から内閣総理大臣が任命することにしております。この人選に当たりましては、重点計画を適切に作成し、推進する観点から、高度情報通信ネットワーク社会形成にすぐれた見識を持つ人を厳正に選考したいと考えております。  また、この高度情報通信ネットワーク社会形成に関する施策の適切、迅速かつ重点的な推進という観点から、広く国民の意見も取り入れるということは重要でございまして、この委員の選別にもそういう視点を入れていく必要があると思います。また、その他の方法、委員だけに限らず、例えば今インターネットパブリックコメントもいただいておりますが、そういうような方法でも取り入れていきたいと思っております。
  99. 矢島恒夫

    矢島委員 私、繰り返しになりますけれども、高度情報ネットワーク社会形成、これを国として進める法律、こういうものを制定するわけですから、基本的目標として、このネットワーク社会形成、どういう社会にするのか、日本の民主主義を発展させ、そして国民生活を豊かにし、文化を向上させるというような視点を入れるべきだということをさらに申し上げて、次の質問に入りたいと思います。  次は、実はこれは堺屋長官が先月の二十九日のNHKのテレビでおっしゃられていたことなんですが、IT革命の推進のためには、低廉な通信料金、低価格な機器、使える能力の三点が重大である、五千万人が参加すれば通信料金IT機器の価格も低下することになる、こういうようなお話をしていらっしゃいました。  確かに、経済規模だとかあるいは競争が促進されれば、経済原則としてそういう結果になるかもしれません。しかし、五千万人の国民が参加する、そういうネットワークの形成というものを目指すのですから、私は、それだけの国民へのアクセス権をきちんと保障するということが重要だし、これを保障することを国の責務として行うべきだと思うわけです。この法案の中にはどこにも明記されていません。つまり、権利を認めるのか、それとも経済原則のみでいくのかというのでは立場が明確に違うと思うのですね。これもやはり基本計画にいってしまうのですか。
  100. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 第三条に、基本理念として、「すべての国民が、インターネットその他の高度情報通信ネットワークを容易にかつ主体的に利用する機会を有し、その利用機会を通じて個々の能力を創造的かつ最大限に発揮」できること、こういうように書いておりまして、基本としては、やはり国民がだれでもアクセスできるということが一つ理念として考えられております。そのために、デジタルデバイドをどのように解消していくか、これまた重要な問題だと思います。それは、重点政策あるいは各省の政策として十分にやっていかなければいけないことだと思います。
  101. 矢島恒夫

    矢島委員 第三条は、先ほどから第三条で行ったり来たりして、これは、実現に向けて努力する、いわゆる理念の表明なんですよ。つまり、第三条というのは、国民にこのネットワークへのアクセスという権利を保障する、こういうものじゃないんです。  ですから、国の責務としてそのことをきちんとすべきだけれども、それは基本計画の方へいくのか。私はここに入れるべきだと思いますが、基本計画の方へいっちゃうのかなということで今質問したのですが、そういうことはまだこれからのことなのでわからないということですね。
  102. 平井正夫

    平井政府参考人 三条は、今大臣から御説明ございましたように、理念の表明でございます。したがいまして、個別の保障等を定めた条文ではございません。  先生おっしゃいますように、個別のそういう保障、保障という言葉が適当かどうかわかりませんが、施策として具体的に何をするかというのは、一つには、重点計画で定めて、それを各省庁で推進していただく、あるいは、この理念を受けて、各省庁がそれぞれの法律、既存の法律あるいは新たにつくる法律で対応していただく問題というふうに考えております。     〔大野(松)委員長代理退席、委員長着席〕
  103. 矢島恒夫

    矢島委員 だから、国民的視点が欠如していると私はさっきから言っているのですよ。  もう時間がないから少し飛ばしますが、つまり、例えばアメリカの九六年の電気通信法、これは御存じだと思いますが、二百五十四条にも二百五十五条にも、アクセスへの権利というものをきちんと保障しているのですよ。明文化されているのですよ、その文章は一々読み上げませんが。  第八条なんかは、そういう視点からいうと、とんでもないことなんですね。先ほどから長官も、第八条をいろいろ取り上げて、いわゆるデジタルデバイドというものをなくしていくんだ、ここにちゃんと理念として入っていると言いますが、これを読んでみますと、「地理的な制約、年齢、身体的な条件その他の要因に基づく情報通信技術の利用機会又は活用のための能力における格差が、」これが主語ですね、「格差が、」ですから。ずっといって、「高度情報通信ネットワーク社会の円滑かつ一体的な形成を著しく阻害するおそれがあることにかんがみ、」つまり、そういう格差があることによって阻害されるから、そういう阻害を取り除けというのでしょう。  つまり、これは、簡単に言いますと、高速道路をつくる、ついては、そこに邪魔物があるからこれは取り除かなければいけないのだという発想でしょう。この考え方というのは逆じゃないですか。どうなんですか。
  104. 天野定功

    天野政府参考人 超高速ネットワークへのアクセス権といいますと、これは電気通信分野ではいわゆるユニバーサルサービスといった概念に匹敵するわけでありまして、この関係で所管しております郵政省考え方を説明したいと思います。  今、電気通信分野のユニバーサルサービスにつきましては、先生御承知のように、NTT法におきまして、NTT三社、これは持ち株会社と東西の二社ではございますが、ここに、電話サービスのあまねく公平かつ安定的な提供の確保を義務づけているところでございます。こうしたユニバーサルサービスに対しまして、今後の地域通信市場におきます競争の発展を踏まえ、さらにインターネットや携帯電話の爆発的な普及といった環境変化の中でどのようにユニバーサルサービスを構成して確保していくのかというのは、これからの非常に重要な政策課題であろうと認識いたしております。  郵政省としましては、このため、本年七月に電気通信審議会に「IT革命を推進するための電気通信事業における競争政策の在り方」について諮問をし、その中で、今後のユニバーサルサービスの確保のあり方についても重要な課題の一つであると位置づけまして、現在、精力的な御審議をいただいております。したがいまして、この電気通信審議会における審議結果を十分踏まえまして、郵政省としましては、ユニバーサルサービスの確保のための諸施策を積極的に講じてまいる考えでございます。
  105. 矢島恒夫

    矢島委員 NTT法の第三条を言われました。第三条にはそう書いてあるのです。ですから、例えばこれを国がやっていくんだという姿勢があるのかどうか、その辺が非常に重要だということなんです。  例えば、時間が来ましたので、簡単な例として、テレビの字幕放送ですね。あれだって努力目標としてつくった。NHKはそれなりに進んでいる。しかし民放関係は全然進まないじゃないですか。やはりそれはあくまでも努力目標なんですよ。ぜひ民間もこういうふうにやってくれということなんです。しかも補助金まで出しているのですよ。だから、いろいろデジタルデバイドの問題にしても、基本的には国がやっていくんだぞという国の責務、これを明確にするということが非常に重要だと私は思うのです。  どうも、これ全体を見まして、さっきもちょっと出ましたけれども、森首相の人気取り政策で突如として出てきたというような話もありましたけれども、私もそう思いますよ。このITの問題というのは、生産、流通だけの変革ではないのですよ。人間の文化とか技術全般にかかわる一大改革であります。ですから、二十一世紀の日本国民の生存だとか生活を左右する重大な問題だということを、一番最初に私は述べたわけなんです。  ですから、目先の景気対策だとか、ましてや公共事業の方に、きょうは時間がないので行けませんでしたけれども、トンネル掘りだとか、そういう対応ではなくて、国民共有の財産としてすべての国民利用できるような方向で、基本政策ということになっておりますが、本来ならば理念だとか目的に入れるべきだ、私はこういうことを主張してきたのですが、そのことを再度主張して終わりたいと思います。
  106. 佐藤静雄

    佐藤委員長 この際、休憩いたします。     午後零時五十二分休憩      ————◇—————     午後二時二十九分開議
  107. 佐藤静雄

    佐藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。植田至紀君。
  108. 植田至紀

    ○植田委員 社会民主党・市民連合の植田至紀です。  午前中も冒頭担当大臣がおっしゃいましたように、産業革命に匹敵するようなIT革命だということなんですけれども、きょうの委員会も見ていますと非常に閑散としておりまして、傍聴席も余り姿が見えません。革命前夜というふうにはどうもこれでは言えないなという気がしておりまして、なかなか大変だなと思うのです。  さて、産業革命に匹敵するほどのIT革命、私自身も、やはり一市民としてはそうした利便性、また私自身の周辺の生活が豊かになるということは当然期待はしているのだけれども革命というのはいつもボトムアップなもので、お上が革命と言うときにはどうももう一つぱっとせぬ。いや、むしろ私たち国民の暮らしが圧迫されるような、古今東西そういう事例が多かったような気がするんですよ。それは、例えば国民革命などとみずからの帝国を名乗ったヒトラーであるとか、また中国の文化大革命、こういうふうに、お上が革命というような言葉を使ったときはどうも危ないようなことも私は危惧するわけでございます。  ただ、とはいえ、そこまでの決意を持ってやろうという意思は素直に受けとめながら、やはり革命というのは下からやるものだ。政府が旗を上げてやるとか、例えば国会の場で革命をやるとかということじゃないんですから、常に一番下々の、言ってみれば大衆、市民、民衆がこうしたITというものと向き合いながら、みずから一番、自分たちの暮らしの中にそうしたものをきちっと生活の一部分として入れ込んでいく。そうしたIT革命政府はまずフォローする、そういうふうなスタンスというのがやはり必要だろうと思います。  そうした私自身の問題意識を踏まえながら、やや抽象的ですけれども、当然ながら法案には書き込まれていないであろういわゆるIT革命の結果による未来像、社会像というものについて、時間の限りはありますけれども、後でちょっと担当大臣堺屋さんの方にもお伺いしたいのです。  実は、私は、午前中の議論でもありましたけれども、ここで例えば定義づけを、未来像をできればほかの基本法のように余り書いてほしくなかったんです。唯一、書いてないということが、私自身がこの法案で評価する一点かもしれません。というのは、御承知のように、先ほどの本会議でも私どもの議員の方が反対討論していましたように、今の森内閣に、IT高度情報通信ネットワーク社会形成基本法ということでその未来構想を法律案に書き込まれても、私は困っちゃうな、国民は困っちゃうなという意味で、書き込まれなかったことはよかったなと思っておるわけです。  さて、このIT革命というものは、少なくとも私たちが今まで予想しなかったようなさまざまな時代の変化人間の価値観を変えていくであるとか、組織と個人のそれぞれの関係さえも変革してしまう、また、ビジネスモデルや社会の仕組みを変える、言ってみれば都市であるとかコミュニティー、国家、そうしたものが、私たちが今想定しているようなありようががらっと変わってしまうということは、私自身、おぼろげながら想定はするんです。そういう意味で、IT革命という言い方をするよりは、コミュニティー革命というか、またネットワーク革命というか、そういう言い方の方が時宜にかなっているんじゃないかなと思うわけなんです。  例えば日本の場合、今までの私どもが持ってきた常識なり、また流布されてきた一般的な見解の中で、例えば戦後日本が遂げた高度成長、特にその高度成長真っ盛りの時期、例えば六〇年代から七〇年代にかけて、なぜ戦後日本がこういうふうに高度成長したんだということを、日本の文化が持つ、伝統が持つ特性に着目して日本の近代化というものを論じる、そうした見解がかなり一般的に流布されたように思います。俗に言う近代化論であるとか日本文化論だとか言われるようなものであると思います。  私自身はそうした、例えば縦社会人間関係であるとか日本人とユダヤ人であるとか、そうした中で展開されてきた見解に全くくみするものではないんだけれども、そうした一定受け入れられやすかった日本文化論、そうした伝統に着目した日本社会の発展というものが、今回IT革命というものが本当に実現するのであれば、少なくとも技術の進歩と伝統への回帰というものをセットにしながら日本文化を論じるというようなこと自体が、もう乗り越えられてしまうんじゃないか、言ってみれば止揚されてしまうんじゃないかと思うのです。  そうした意味で、堺屋担当大臣の、特にこの間の日本のそういう意味での経済発展史というものを一応踏まえた上で、堺屋長官なりのIT革命を受けた未来像なり社会像というものについてのイメージ、やや時間をとっていただいても結構でございますので、存分にちょっと展開していただけますでしょうか。
  109. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 日本が明治以来志してきたことは、近代工業社会をつくるということでありました。近代工業社会とは何かというと、人間の労働を機械に置きかえて規格大量生産をする、これを日本が完成するために約百年ほどかかりました。  この近代工業社会をどんどんと発展させてくると、人間機械に置きかえるものですから、機械人間よりも力が強くて動きが正確ですから、コストは下がり、大量生産はできる。そのかわりに、機械には動きが単純で判断力がないというところがありますから、同じ形のものをたくさんつくらなきゃいけない。それで、それを組み立てるという形で、規格大量生産になる。これが日本が目指した明治以来の道でございました。  これに、日本は戦後、大変成功をして、一九八〇年代には、恐らく世界で人類史上最も完成した規格大量生産社会、近代工業社会をつくったろうと思います。それで、どんどんと自動車や電気製品が世界じゅうに輸出をされ、日本経済が成長しただけではなしに、国際収支も黒字になりましたし、所得の格差も減りましたし、犯罪もなくなったし、寿命も延びたし、その上身長まで伸びるというような、非常に成功した社会が生まれました。  ところが、この規格大量生産社会をつくるために、あらゆるものを規格大量生産型に合わせてつくった。例えば、金融構造もそうなっておりますし、学校の教育も皆さんなるべく規格大量生産に向いた人格をつくるようになっておりますし、また、地域構造も東京一極集中で同じ情報が流れる、そういう仕組みをつくったんですね。これが成功したものですから、八〇年代、バブル時代に、大変これにこだわって、成功体験を持って変えようとしなかった。  この間に、日本の輸出でアメリカの製造業は非常な打撃を受けたんですけれどもアメリカは非常な苦労をして、この多様な知恵の時代、いわば知価社会というものをつくり出して、だから今、アメリカの繁栄を支えておりますマイクロソフトであるとかシスコシステムであるとかデルコンピューターであるとかいうような会社は、大体八〇年代に生まれておるわけです。  その間にアメリカは、規格大量生産からソフト産業、コンテンツの産業をどんどん育ててまいりました。それが、九〇年代に、ちょうどこのインターネットが軍の技術から開放されて、大量に利用されるようになった。そして、情報が交換され、その情報がまた金融業や流通業や観光業などに大いに利用されて、全く新しい社会が生まれてきた。これは、規格大量生産という、いわば資本主義といいましょうか、近代工業社会から全く違う社会に変わった展開だと思うのです。  それで、今日本は何をしなきゃいけないかといいますと、この近代工業社会をつくるために築き上げてきた諸制度を改めて、そして新しい情報社会に移らなきゃいけない。そして、その新しい情報社会というのは、それぞれの人が知恵を発揮し、自分好みを持ち、個性を持ち、地域も人も組織も非常に流動的で個性を持った時代になるだろう。だから、一方においては、それぞれの人が自分の希望、好みというものをはっきり持たなきゃいけない、そういう時代にもなってくるだろうと思います。  そういう社会に転換していくために、今いろいろなものを変えなきゃいけない。例えば、地域でいいますと、都市計画も、従来の線引き社会から歩いて暮らせる町づくりに変えなきゃいけない。あるいは勤務状態も、終身雇用が一番いいと思っておりましたけれども、本当に好みにあった社会に変えなきゃいけない。家族の形態についても、会社中心で単身赴任が多いというような社会から、本当に人間らしい家庭に変えなきゃいけない、そういったことが次々と変わってくる、その大きな転換期が今来ている。その中で、私たちは、このITというものが非常に重要な意味を持っておると。  それで、まさにこれは、家族であるとか地域であるとか職場であるとか、そういうコミュニティーが大きく変わるという意味で、先生の御指摘されるコミュニティー革命という意味合いも非常に含まれた改革だと思います。これから日本が目指す社会においては、一人一人の人間が、みずからの判断で、みずからの自立した情報を持ち、集め、また発信していく、そんな社会が生まれるだろうと思っています。
  110. 植田至紀

    ○植田委員 具体的な話に入る前に、IT革命未来構想を考える上であともう一点だけちょっとお伺いしたいのです。  特に二十世紀の、今まさに担当大臣がおっしゃいましたようにいわゆる近代工業社会、二十世紀というのは、言ってみれば、人類の豊かさ、また幸福というものが、科学技術の進歩ということとそれぞれ正比例しながら社会が進歩してくる。これは東西冷戦構造の中でも、西も東もそこは同じ発想であったように私は認識しますが、特に七〇年代から八〇年代、そして今、もう今世紀末に至る中で、そもそもそうした科学技術の進歩というものが果たして人類にそれだけの幸福をもたらすのかどうなのか、進歩というものが何なのかということ自体がそろそろかなり疑われ始めているのではないのかなというふうに私は思うわけです。  そういう意味で、仮に、いわゆる東欧が崩壊したといっても、西側がそれで勝利したというよりは、そういう重い十字架というのをむしろ西側がしょわされたというふうに私は考えるわけですけれども、少なくとも、ITというのはそういう技術の最先端でございますね。そういう意味で、このことと、言ってみれば、その進歩というものと人間の暮らしというものとの折り合いをつける基本的な視点なりなんなりというものがあれば、ちょっとそこの点について御教示いただきたいのですが。
  111. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 この十九世紀から二十世紀にかけて、近代工業社会で進歩してきた技術というのは何かと考えますと、大体が大型化、大量化、高速化、この三つだったのです。もちろん医学であるとか生物学であるとかいうような技術もありますが、いわゆる経済社会で本当に発展してきたものといいますと、どんどん大きくする、どんどん大量にする、そしてどんどん速くする、この三つこそが工業社会での技術でした。  だから、戦後五十年間を考えましても、終戦のときには二万トンのタンカーが大型タンカーだった、それがあっという間に七〇年には五十万トンタンカーになった。私が子供のころに、アメリカから空飛ぶホテルという、大きな飛行機が来たといって、当時としては非常に驚くべき大きな飛行機だと言われたのですけれども、それを今調べてみますと、七十人乗りなんですね。YSクラスだった。それがあっという間にジャンボジェット機になった。溶鉱炉の大きさにしてもビルの高さにしても、どんどん大きくなったのです。  ところが、七〇年代の末、八〇年代に入るころからもう大きくならなくなったんですね。タンカーも溶鉱炉の大きさもエチレンプラントも、あるいはジャンボジェット機より大きな飛行機も出ない。速さの方も、コンコルドより速い飛行機がとうとう出なくなった。  そういう中で、では次に何が起こったかというと、大型化、大量化、高速化とは違って、今度は、多様化、グローバル化、そしてソフト化の知識がどんどんと進み出したわけです。そのソフト化、多様化の先端に今あらわれたのが、このITといいますか情報産業だと思うのです。  だから、近代工業社会が目指した、量が多い、大型である、速く行けるという幸せから、今は多様なものから選べる幸せということに変わりつつあるのではないか。人間が多様である。昔は、人間はみんな同じだから、物が多ければ、こういう一番適切なタイプ、国民自動車、国民服、国民休暇村というようなものをできるだけ多く与えればみんな幸せだと思ったのですが、今度は、人間が多様だから、多様な情報、多様な好みに対応するような形になる。  そういう意味で、このITが本当に幸せかどうかということになりますと、もちろん影の部分もございますけれども、本当に好きなものが選べる、そして、何十人、何百人に一人の自分と同好の士が探し出せる、そして、そういう人と仲よくなり情報を交換することによって自己表現ができる、そういう意味での楽しみ、いわば人間の内面的な楽しみが非常に上がってくるだろうと思うのです。  その反面で、やはり影の部分がございますから、それはそれとして抑えていかなきゃいけませんが、そういった幸せの方向性といいますか度合いが変わる、これがまさに産業革命以来の転換だと我々が考えるところでございます。だから、幸せの尺度というものもこれから相当変わってくるのではないかと思っております。
  112. 植田至紀

    ○植田委員 貴重な御講義、ありがとうございました。お疲れのところ、やはりたまにはゆっくりと存分に話をしていただかないとあれやなと思いまして。  引き続き具体的なところをちょっと質問していきたいと思うのですが、ただ、今担当大臣がおっしゃったところで、非常におもしろい、私自身も共感する点ではあるのですけれども、やはり個人の自立ということが一点あったと思います。それと多様性、要するに、今までの同じだということではなくて、違っているからおもしろいという、言ってみれば、これは多文化共生の視点というものがITによって担保され得る可能性を持っているということだろうと思うのです。  ただ、これからやはり、一つ一つちょっと伺っていきたいのですが、その影の部分、いわゆる多様性、個人の自立というものが、今回の法案でまた今目指されている、お上が言うところのIT革命でそうした多様性、個人の自立というものがどれだけ保障され得るのかというところに対する心配が影の部分とそれなりに私としては結びついてくるわけです。  それでまず、午前中の議論でもあったと思うのですけれどもIT革命の進行というものが、人と人との関係、企業と企業の関係を確実に変えていく。例えば、それは俗に言う中抜き現象によって中間管理職が多く不要になった、特にアメリカではそういう方々の失業者がどっとふえている。そして、午前中も紹介されていましたように、俗に言うジョブレスリカバリーという現象が起こっているわけですけれども、実際、書店や自動車販売、証券業などではそういうことが顕著にあらわれているということなんですね。  実際、これも日本の場合、ではアメリカと比較してどうなのかと。こうしたアメリカ経済が、言ってみれば、そういう失業者中間管理職が失職しながらも一定の景気水準を保っていけるというのは、やはりアメリカにおける労働市場というのが流動的だからではないかと思うのですけれども日本の場合は終身雇用制でございますので、ではそれをあしたから流動的にしますよというわけにはいかないだろうと思うのです。  そういう意味では、今の日本のそうした労働市場のありようとのかかわりの中で、まず、今申し上げた問題についてどういうふうにお考えか、また、どう対処すべきなのかという点についてお教えいただけますでしょうか。
  113. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 午前中も少し申し上げたのでございますけれども、やはり、IT革命といいますか情報化が進みますと、ピラミッド型の組織が平たんな組織になってくる。課長がいて、部長がいて、取締役がいて、社長がいる、ピラミッド型になっているものが、その間が非常に小さくなりまして、平面的な形になってきて、情報が、組織のヒエラルヒーを順番に上がるのではなしに、すぐ飛び越えて社長室に入ってしまうというような形になる可能性があります。そういう意味では、中抜けと言われる現象が組織の中でも起こることは考えられるわけです。  そういう場合に、日本でございますと、やはり、現在いる従業員をできるだけ使おうということをまず各企業は考えると思います。だから、今まで紙の仕事、あるいは面と向かったフェース・ツー・フェースの仕事をしていた人たちが、ITを学んでどんどんと情報化した職場へ入っていく。  ただ、その場合に、中間管理職の数が減る。したがって、真ん中の所得が相対的に下がるということは十分あり得ることだと思います。その意味で、ITは学ばないかんし、所得の伸びは期待したほどではないという苦しいような状況も生まれてくると思います。また、そこからはみ出る人も出てくると思います。  今度の日本新生のための新発展政策におきまして、百五十万人の人々に、IT職場で、IT利用する職業として就業できる程度のかなり程度の高い技術講習をやって、ミスマッチを減らそうと考えているのもそうした対策の一つでございます。  もう一つは、ITが盛んになることによって個人サービスが非常にふえてくる。アメリカでもたくさんの新しい創業がございますけれども、ハイテクと言われるものが約三分の一、それから、個人サービスと言われるものが約三分の一、その他三分の一というような割り振りになっておりまして、例えばベビーシッターでありますとかガーデニングとかケータリングという出張料理であるとか、そういう家庭の仕事をアウトソーシングで引き受けるような産業がふえております。そういうような新しい創業がいろいろな面から出てまいりまして、一時ジョブレスリカバリーと言われたのが、今は失業率が非常に低い社会になった。  日本も必ずそういう新しい産業が生まれてくる。中小企業法でも、去年改正したときに新しい創業を重視したのはそのためでございまして、これからの日本もどんどんと創業が生まれてくる、その中に、中間管理職であった、あるいは将来なったであろう人たちが新しい創業者として日本産業に活力をつけていただければありがたいと思っております。
  114. 植田至紀

    ○植田委員 そのとおりになればいいのですけれども、引き続いて、IT革命と、特に私自身、いわゆる雇用不安へのセーフティーネットというものをやはりきっちり考えていかなきゃならぬなと思うのです。  第四条の中で、いわゆる高度情報通信ネットワーク社会形成にかかわって「新たな事業の創出並びに就業の機会の増大」をもたらすものとすることになっているわけですけれども、確かに情報技術の活用というのは日本経済の競争力には必須でありますし、新たな産業を生み出すという期待は私も十分持っていますが、ただし、情報化による雇用の創出をやはり懸念せざるを得ない部分もあるわけです。  といいますのは、実際、通産省の機械情報産業局と民間のアンダーセンコンサルティングと共同調査というのが去年の九月に出されました。  ここで述べられているのは「今後五年間で情報化により二百四十九万人の雇用が創出され、福祉サービスなど情報化以外の要因により創出される雇用百十八万人を含めると、五年間で三百六十七万人の雇用が創出される。一方主要産業においては、企業の労働生産性向上や競争力を失った産業での雇用減などにより、今後五年間で二百七十一万人の過剰雇用が削減される可能性がある。このうち八十万人は今後の情報化の進展がもたらす効率化による削減」であると。また「この他電子商取引によって職務内容が変わる雇用が八十三万人あり、これを加えた三百五十四万人が、今後五年間で削減等の可能性のある雇用」と見られると。  要は、三百六十七万人の雇用が創出されるんだけれども三百五十四万人が削減される可能性がある、この五年間でプラス十三万の雇用ということでございまして、これであると、情報化が必ずしも雇用の増加のみに働くわけではないということがはっきりすると思うのです。  そういう意味で、IT技術の導入が先行しているアメリカなんかでは、実際、好況を支えているその裏では、全産業的にリストラが進んでおるということも事実だと言われていますから、ITによって、先ほど中抜けの話をいたしましたけれども、いわゆる中間層というのはどんどん先細りしていって、富裕層とはじき出される層にどんどん二極化していくんじゃないだろうかという懸念を持つわけなんですけれども、その辺についてはどのようにお考えでしょうか。
  115. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 アメリカの例を見ますと、確かに一九九二年から九六年ぐらいまで貧富の差がかなり広がりました。八〇年代から始まったのでございますけれども、かなり貧富の差が広がったことは事実でございまして、特に中間管理職の人たちが、多くは、貧しい層といいますか、所得の低い層に繰り入れられたという経緯はございます。  日本の場合にもそのおそれはあるわけでございまして、これに対応しては、できるだけミスマッチを少なくして、より効率のいい仕事に変わっていかなければいけないと考えております。  ただ、アメリカの場合と違いまして、日本はこれから労働力がそうふえません。アメリカは、労働力の増加の中でそういうIT化といいますか、中抜き現象が進みましたので、一時失業率がはね上がるということがございましたけれども日本の場合はこれから労働力がふえません。むしろ、一人一人の労働生産性を高めることによって日本経済を維持していかなきゃいけない。  そういう意味では、できるだけ多くの人にこのIT技術を学んでいただいて、効率のいい生産、流通、あるいは情報、娯楽の提供ということをやっていただきたいと考えております。  その意味で、できるだけ政府といたしましても、先ほど申しましたIT技術の講習のようなことを行ってミスマッチをなくしていく、それから、IT自身を新しい職探し、求人、求職に利用していくということが重要なポイントだろうと思っております。そういう政策、このミスマッチをなくする政策をさまざまな点で今検討もし、着手もしているところでございます。
  116. 植田至紀

    ○植田委員 いわゆる二極化、はじき出される層、富裕化する層という二極分解にならないような手だてを具体的に講じなければならないという御認識はお持ちであろうということはわかりました。  ただ、そうしたことについて、個々具体的にいろいろと詰めていかなきゃならない。それを詰めていくためにはこの委員会の中でも十分な審議が必要だと思うわけですけれども、あくまで基本法でございますから、これは大臣に聞くわけではございませんで、ひとり言として聞いておいていただければいいんですけれども、およそ基本法が一週間や十日で上がるなんということは余り私も聞いたことがありませんので、そうした個々の問題について、やはり今回の基本法審議の中で具体的に展開するだけの時間は保証されるべきだろうなと私は思っております。  さて、続いて、それにもかかわりながら、特にデジタルデバイド、バリアフリー等についてお伺いをしたいわけです。  というのは、今も、富裕化する層とはじき出される層というのがアメリカの例を見てもやはり出るんじゃないかということを申し上げたわけですけれども、適切な制度設計がなければ、少なくともIT革命というものの果実を享受できる人々とそうでない人々との間に断絶が生まれるだろうということを私は危惧するわけです。  既にインターネットの接続環境のある者とそうでない者との格差はあるわけでございますし、またそれが、何もITに関心があるとか自分が好きでやっている、嫌いだからやらない、苦手だからやらない、得意だからやるというレベルじゃなくて、所得格差や家庭環境の差であるとか教育の格差なんというものがそういうアクセス環境の差とやはり密接に結びついているんではないかと私は思うわけです。  特にアメリカなんかでは、ITスキルと知識を活用している人とそうでない人の間には大きな収入格差があると伺っています。例えば、そういういわゆるネットビジネスを行う企業が集積しているバージニアのフェアファクスカウンティーというところでは、全米の平均年収三万ドルに対して約八万ドルの平均年収だというようなデータもあるそうです。そういう意味では、非常に所得格差もあるということでございます。  だから、こういう意味では、IT革命の進展というものがインターネットになじみやすい、言ってみれば、私も若いつもりですけれども三十五に届きそうですので、若いというのはやはり二十代でしょうから、若い世代とそうでない高齢の世代、また、そういう環境の整った国とそうでない国等々の中で、私自身は、社会がこのITを分岐点にして二極分解していくんじゃないかという懸念については、やはりぬぐい去ることはできないわけです。  その意味で、IT革命がそのことを必然化するかどうかというところまで私は申し上げませんけれども、少なくとも、IT革命によって社会的な格差や貧富の格差を拡大する役割を一方でIT革命なるものが持っているとすれば、果たしてしまうということを一方で見るとすれば、やはりそのことについての十分な対策を講じなければならないというのは当然の帰結だと思うのです。  そういう意味で、特にこの基本法第三条とのかかわりで、ここできれいに書いてあるわけです、このように書いていますからということで終わらないと思います。この三条にうたっていることを国民一人一人が権利としてちゃんと享受するために、では具体的に施策をどう講じようとするのか、そのことについて、基本法だからいずれ重点計画をまとめるんですということじゃなしに、少なくとも、おぼろなイメージでも、それに当たっての具体的な施策について何点かあればお教えいただきたいのでございますけれども、どうでしょうか。
  117. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 御指摘のように、情報機器に接する度合いと年齢あるいは地域、所得水準、非常に関係があるようです。  十二年版の通信白書を見ましても、所得の高い人、例えば二千万円以上の人では三七%ぐらいの人がインターネットをやっている、それに比べて四百万円以下の人では五・五%しかないとか、あるいは年齢別に見ますと、二十歳代の人が三四%、六十以上の人が一一%というような差があります。大都会の方は二四%、町村へ行きますと一四%というような地域的な差もあるようでございまして、これらを一つ一つ解決していく必要があると考えています。  特に、日本において重要なのは、ITインターネットあるいはパソコンに接するような職場にいる人はみんな覚えるわけですね。ところが、そういうのに接する機会の少ない職場にいる人はなかなか入ってこない。韓国や台湾で見ますと、だれにパソコンを習った、だれにインターネットを習ったというと、割とおじさんとかいとことか親類縁者が多いんですね。日本の場合は、余り親類から習うというのはない。大体職場で習った、あるいは学校で習ったというのが多い。だから、職場で接しないと、ずっと接しないということがあるわけです。  それで、今度の日本新生のための新発展政策におきましては、五百五十万人の人をまず市町村が主催しますような講習会、学校あるいは図書館等を利用した講習会の場で、そういう接する機会の少ない人に学んでもらおうと。これは一回限りでなしにこの後も行う方法もありますし、また、お互いに教えるようなボランティア組織を広げていくということも考えなければならないと思います。まずそういう技能を普及する、これが第一点だろうと思っております。  そして、できるだけ地域的な差もなくするように、広い範囲でのサービスを広げていきたい。そのために、各学校あるいは地域社会の中にそういう制度を、そういう機器を広げていく。実際自分で持てない人のためには公衆インターネット拠点というようなものもつくっていきたい。いろいろそういう施策を積み重ねることによって、このデジタルデバイドをできるだけ小さくしたいと思っています。  さらに、身体に障害のある人につきましても、それぞれに検討していく必要があると考えております。
  118. 植田至紀

    ○植田委員 次に聞こうと思っていたのが、その身体に障害を持つ方々にかかわってなんですけれども、特に、今このIT技術というものを適切に活用すれば、ハンディキャップを持っておられる方々の社会参加というのはかなり進むのじゃないか。そういう意味でのバリアフリー社会実現というものが、今回のIT革命によってその分野でも果たしていけるんじゃないかと思うんだけれども、なかなかそれが大変なんですよね。  というのは、箱物として、また機械を置くということ以前に、今の日本の中では障害者へのコミュニケーション支援という仕事がまず職業として十分確立していないということがあるんじゃないかと思うのです。こういう障害者へのコミュニケーション支援という活動は、小さいボランティア団体によって細々と担われている、そういうところで続けられているにすぎないんじゃないか。だから、そういう意味では、そういう状況の中で、健常者にとって便利になることがそのまま障害者にとって便利になるかといったら、そうじゃないということが実はたくさんあるわけですよね。例えば、マイクロソフト社のOSがウィンドウズ95になったとき、視覚的なアイコンを使った操作に変更されれば、視覚障害者が対応できへんというような話もあったわけでございます。  そういう意味で、そうした技術開発の面で、障害者の利便性を考えた開発というものをまず一つはやらなければならないということと、バリアフリー社会というものを形成していくためにも、それを使いこなしていく人材の養成。今は細々としたNPO、ボランティアによって行われているそうしたコミュニケーション支援というものをきっちりとやれる人材育成というものも当然必要になっていきますし、しかも、今のコミュニケーション支援だけでは当然困難だし、不十分なわけですから、そうした取り組みに対する充実支援というものがやはり必要だと思うのです。  そういう意味では、こうした支援を含めて基本的に政府行政が取り組むべき言ってみれば責務なわけですから、こういう点については少なくとも基本的に、やはり基本法なんですから、明記はした方がいいのではないかと思いますし、また、重点計画の中にもきちんと盛り込むべきだと私は思うんですけれども、いかがでしょうか。
  119. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 デジタルデバイドの話及びバリアフリーにつきましては、本法案においても目指すべき社会として位置づけている高度情報通信ネットワーク社会形成の上で、取り組むべき重大な課題だと考えております。この観点に立ちまして、本法案では、いわゆるデジタルデバイドの是正を高度情報通信ネットワーク社会形成していく上で重要な課題であるとして、この是正に積極的に取り組む旨を第八条の基本理念に掲げております。  具体的な例といたしましては、障害者基本法において、電気通信事業者等は、障害者の利用の便宜を図らなければならないという旨の努力規定が設けられております。具体的に言いますと、障害者情報ネットワーク、あるいは障害者等対応情報機器の研究開発、情報バリアフリー型通信情報システムの研究開発、高齢者、障害者向けの通信情報サービスの研究助成及び推進、高齢化社会における情報通信のあり方、支援に関する研究等々の研究調査及び実際活動を行っております。  また、通産省、郵政省におきましては、障害者向けの機器の利用を容易にするための指針づくり等にも取り組んでおりますが、今後はさらに、本法案ができますれば、この規定する理念に基づきまして積極的に施策を講じていきたいと考えております。
  120. 植田至紀

    ○植田委員 ここはもう少し突っ込みたいところなんですが、時間がないので、次回があれば、また次回に回させていただきます。突然、担当大臣の方が原稿を読み上げられたのでびっくりいたしました。できるだけ、私も一応自分の手持ちのメモは用意しておりますけれども。  さて、今の問題ともかかわるんですけれどもIT革命を進めていく上でNPOの育成というのは非常に重要な問題だろうと思うわけです。午前中も、たしか大畠議員の質問に対して渡海次官がそのことを紹介されていたと思うんですが、基本法の十七条に、すべての国民情報通信技術を活用することができるようにするための教育及び学習を振興するということが定められているわけですね。  特に、IT先進国のアメリカの場合、やはり七〇年代からそういう普及をしたり、社会的弱者へのパソコンを利用しての社会参加の推進ということを進めてきたのは、やはり市民運動、NPOなどの活動が、パソコン技術というのはある意味で、言い方はちょっとよくないですけれども社会のなかなかそういうところに接せられない層にまで広げていく大きな役割を果たしたということが言えると思うのです。  そういう意味で、今NPO法人に対する支援施策、税制優遇措置等も議論になっているところなんですけれども森総理も一大国民運動を展開したいとおっしゃっているわけですから、そういうNPOは幾らでもあるわけです。NPOのうち、いわゆる障害者をサポートするようなNPOというのは一番多いわけですよね。そういう意味ではまさに、一大国民運動を展開したいと森総理が言わぬでもやる部隊がいるわけです。そのやる部隊をどんどんとこの場に登場させていく、それをもっともっと、活動できるような条件をもっと豊富にしていく、そういうことがやはり緊急の課題、喫緊の課題だろうと思うのです。  そうした行政を越えたところでの新たな、いわゆる社会セクターとしてのNPOの役割をきちっと認識した上で、そこへのフォローというのもIT革命にとっての重要な役割だと思うのですが、時間がありませんので、簡単で結構ですので御所見をお伺いしたいと思います。
  121. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 NPOとITとは非常に深い関係があると思います。  一方では、ITによってNPO、こういう活動をしようという仲間を集めることが非常に容易になりました。実際、日本でも最近、インターネットを通じて仲間を集めてNPOを進めるというような形が大いに進んでいます。一方、社会が複雑になるに従いまして、行政あるいは企業の手の届かない、そういった面でNPOの必要性、効果というものも重視されております。そういう両面から、このIT革命というものは、NPO、ボランタリー活動というのを大いに発展させ、また意義あるものにすると思われております。  なお、税制の問題につきましては、年末の税制の問題、一括して来年度からの税制を検討するときに対処したいと考えております。
  122. 植田至紀

    ○植田委員 ここで、よく言われますIT革命経済効果なるものについて御所見をお伺いしたいのですけれども、私ももちろんどっちかというたらローテクの方でございまして、余りパソコンというのは使いなれてない方ですから、このIT、この間、法案提出されるというあたりからにわか勉強でハウツー本をぎょうさん読みました。ただ、どのハウツー本を読んでもバラ色のことばかりが書かれているんですけれども、やはりそうじゃないだろうなという疑問があちこちでわいてくるというのが、今、この間、一つ一つ端的に御質問したわけなんです。  ただ、そうしたハウツー本の中でも、IT革命が進めば景気がよくなりますよ、経済が活性化しますよ、そういうことばかりが書かれているんだけれども、本当に具体的にどこまでそれがどうなのかということは、やはり私自身疑問に思うわけでございます。  だから、まずその点についてお伺いしたいのでございますが、そういう意味では昨年の七月の閣議決定で、経済社会のあるべき姿と経済新生の政策方針、副題も「IT革命を起爆剤とした躍動の十年へ」と、えらいテーマになっておるわけです。  要するに、IT革命の始動というものが日本経済の新しい発展の、言ってみれば高度成長もう一度というような期待がITにあるようです。ではここで述べられているように、経済発展の大きな原動力となるIT革命戦略的に進めれば、いや、本当に戦略的に進めればですけれども、それを起爆剤として我が国経済に再びダイナミズムを取り戻し、経済発展を遂げていくことが可能になるというふうに書かれてあるわけですけれども、それは、戦略的に進めれば、幾ばくかの成果はあると思います。  ただ、私が一つだけここでまずひっかかるのは、再びダイナミズムを取り戻し経済発展を遂げていくというのが、どうもかつての高度成長を遂げたあのときの日本の姿を取り戻すというふうな、あの夢をもう一度みたいな、やはりもう二十一世紀、万博のような発想では無理やと思うんですよ。もう一つ新しい発想が必要になってくると思うのです。  そういう点でまず一点お答えいただきたいのと、もう一つは、やはり具体的な経済効果というものをどれだけ見込んでおられるのかということについてお伺いしたいと思います。
  123. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 IT革命が進むことによって個人あるいは組織の活動方針、方向が変わってくる、そういう意味で規格大量生産から多様な知恵の時代に変わってくる、そういう質的な違いが大きいと思います。もし質的な面ではなしに量的にどうかというような御質問でございますと、私どもの方で計算いたしましたら、IT革命といいますか、ITの振興によって、五年間で大体四・二%ぐらいGDPの成長率が高まるだろう、一年間にいたしますと〇・八%ぐらいでございますが、それぐらいの押し上げ効果があるのではないかと考えております。  ITは、かつての高度成長時代のような規格大量生産でどんどんつくって、山も海も埋め立ててというような性格のものではございませんから、かつてのような量をふやすよりも、質を変える方が中心でございますけれども、一応〇・八%、五年間で四・二%ぐらいの成長を押し上げる効果があるという試算は行われております。
  124. 植田至紀

    ○植田委員 あくまで試算ですから、試算どおりにいけば結構なことなんですけれども。  それと、もう時間がないから飛ばしていきますけれども、今の点も実はもっと議論せぬといかぬところなんです。ただ、この基本法にかかわる審議、やはりもっともっと充実した議論をすべき課題がたくさんあるということを、改めて担当大臣に認識しておいていただきたいと思うのです。できればこういうやりとりの中でも、担当大臣の方にもできるだけ時間をゆっくりとってしゃべってもらいたいです。こっちも言いたいことは言いたいですから。そういう意味では、五十分、小政党ですからそれだけしかもらえないんですけれども、二時間ぐらいもらえるようになりたいなとは思いつつも、五十分の中でやりくりをせないかぬというところでございます。  それで、このIT革命というのが、今までも言われているように経済活動や生活の中身が一遍に変わる、そういう意味では革命なわけですけれども、アナログ時代とは違う道徳というか哲学というか、倫理観というものがやはり必要になってくるだろうと思うのです。もちろんそのことについて基本法になんて書き込む必要はないと僕は思っています。そういうことを政府に書き込まれたら困るわけですけれども、少なくとも技術と社会が共存していく、共生していくための制度面での社会的な管理というものはやはり一定必要になってくると思うのです。  そういう意味で、IT革命をだっと進めるよりは、急がば回れという言葉もありますけれども社会が全般として適応できるスピードというものもやはり必要だと思いますし、また、そういう倫理観の確立ということを図っていくことも必要だろうと思うのですが、その件についての担当大臣の御見解をお願いします。
  125. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 確かに変化には一定の速度、限界というのがあるのでございましょうが、今、日本ITについて大変出おくれているという問題がございます。世界がどんどん進んでいく。そして、ITというのは人と人との間の関係ですから、先に大きくつくった方がどんどん有利になる。これがハードでございますと、後からつくっても最新式のものをつくればいいというわけですけれどもインターネット、このネットの社会というのは、一人だったら何もできない、二人だったらここの間でしかできない、これが四人になるとたちまち二乗できいてくる。  だから、できるだけ早くこのネットを広げて、料金も安くすれば、技術の水準も高めれば、コンテンツも多様にして、そしてそういうものをまた生み出す才能、人材をどんどんつくっていかないと、物すごい勢いで引き離される、そういう心配がございます。  したがって、確かに許容の時間というのもございますが、今急いでこのIT革命を推進し、そして、社会全体にこの恵沢を潤していくということも今は必要だと考えております。  こういう基本法を出させていただきまして、あらゆる面で重点政策を立てて、重点戦略を立てて、重点的に進めていきたいと考えているのは、まさにそういうような国際的な進歩の中で日本がおくれまいという発想があるからでございます。この点も御理解いただきたいと思います。
  126. 植田至紀

    ○植田委員 時間がございませんので、一言だけ申し上げて一回目の質疑は終えたいと思うわけですけれども、一番冒頭、この委員会室も閑散としていますね、革命前夜と言うにはえらい寂しい風景じゃございませんかということを申し上げたわけですけれども、これは森総理が一大国民運動を展開したいと。別に森総理でなくても、森総理だったから盛り上がらないというわけでもないだろうと思うのです。だれが言ってもまだ浸透していないわけでございます。まず、IT革命というものの、革命イメージというものを国民がわかる、認識するような議論をこの基本法を通じてやらなきゃならない、私はそう思います。  そういう意味で、基本法を今国会で上げるか上げないかということよりも、もっと質的な議論をすることによって、よりよい法律ができる、そしてそれによって具体的な施策が展開する、その中身を豊富化させるということをより重視した議論をやはりこれからやっていきたいというふうに思います。  そういう意味では、きょうは一回目ですから、私は法案に関してはニュートラルな立場で質疑させていただいたつもりです。  以上でございます。
  127. 佐藤静雄

  128. 平井卓也

    平井委員 大臣、お疲れのところ、本当に申しわけありません。私が最後の質問者ということになろうかと思いますが、21世紀クラブの平井であります。もうしばらくおつき合いをいただきたいと思っています。  今回のこの委員会のやりとりをいろいろ聞いていまして、国民に本当にITイメージが具体的に伝わったかどうかなというと、やはり私は不安であります。これはもう、ITという言葉を何か使い過ぎてしまって、水戸黄門さんの印籠みたいになっているところがどうもあって、ITの名のもとにはみんなひれ伏してしまうようなことがあるので、これが公共事業なのか、景気対策なのか、将来の夢物語なのか、何かわからなくなってきているというところが何となくみんな不安を持つことではないかと思っております。  それで、堺屋大臣は非常にボキャブラリーが豊富ですので、重複する質問でも、違ったボキャブラリーで、もっとわかりやすく国民に答えていただければ大変ありがたいと私は思います。  確かに、産業革命に匹敵するようなインパクトのある革命でありますけれども、しかし、このインターネット、物事には光と影というか、そういうものが必ずつきまとうのは当然でありまして、特にインターネット社会というのは、勝者と敗者、利便性と危険性、またいわば倫理的な善と悪とか、そういうものが全部含まれてくると思います。やはり多くの委員の御指摘にあったとおり、影の部分をしっかりと認識するということが何よりも必要ではないかと私は思うわけであります。  そのインターネットにかかわる諸法律問題を従来型の縦割りスタイルで検討するだけでは、インターネットのもたらすであろう本当の利益や価値、さらにはそれのもたらすであろう危険性など、総合的、横断的に分析、理解することはなかなか難しいのではないかと思っています。また、それによって、インターネットがもたらすかもしれない利益をかえって縮小させてしまったり、危険性を放置してしまう可能性もあるように思うわけであります。  私は、この基本法という形での法制化は大変有益であって、今必要なことだと思っています。あとは、これをいかにわかりやすく国民の中に浸透させていくかが問題だと思うのです。  IT化が推進しますと、本当に活動の自由度というものが飛躍的に高まってしまいまして、個人、国家、組織、すべての新しい関係が構築されることになると思います。その前には、ITのベースには、まず情報開示といいますか、情報公開というか、そういう自由な情報開示によってフラットな競争を生み出して、それでまた新しいビジネスをやってやろうというような、新しいビジネスの創造の意欲を刺激して、起業によって人的能力の活性化を図る、これが大きなすばらしい点だと私は思っています。新たな雇用を生み出すことになるわけですが、人と能力と創造性と雇用機会、この点がITの活用の真髄だと私は思っています。  そういった中で、自己責任の原則というものもついつい忘れがちになると思いますが、同時に、これは市場原理が非常に働く世界でもありますし、自己責任というものはさらに問われる、そのような社会になってしまうと思っています。  結局、ITという言葉の意味は何かと言われたときに、多分、百人が百人とは言いませんが、持つイメージが違うわけです。インフォメーションテクノロジーという言葉自身に何か特別な意味があるかどうかと言われると、これは非常に説明は難しい。私自身は、最近、人に説明しているのは、Iというのはインディビジュアル、個人だ、Tというのはチームだと。つまり、私個人とチーム、仲間づくりのやり方が変わる。まさに、堺屋大臣お話しになっているような基本的な説明をしなければ、なかなか地域の方々にも御理解をいただけないものでもあるわけであります。  そこで、社会変革の可能性などについて、いろいろな説明は今なされていますが、国民に一言で、もっとわかりやすく何か説明する方法がありましたら、大臣に御答弁をお願いしたいと思います。
  129. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 まだ見ぬ社会を説明するということは大変難しいことでございますが、一言で言いますと、あなたの好きな人が、あなたと同じ好み、同じ悩みを持った人がすぐ近くにいるようになるよということだと思うのです。  インターネットというものは、時間と空間を超えて、そして、電話のように必ずつかまらなければいかぬということもなければ、非常に便利に接することができる。しかも、高速化いたしますと画像も入れることができる。そういうことで、自分の本当に好きなことをともに話し合える心の友、あるいは自分の悩みを、共通の悩みを訴えられる友人、そういう人がたとえ遠くにいてもすぐ近くにいてくれる、そういう関係が生まれるのだろうと思うのです。  そして、そのことによって、地域とか職業とかあるいは親類縁者とか、いろいろな制限を抜きにして、人間が本当の心の友を探せる時代、そういうものがやってくれば、このインターネット世界が一番個人の生活には幸せに役立つだろうと私は期待しております。
  130. 平井卓也

    平井委員 今おっしゃっていることも私もよくわかります。インターネットを通じていろいろな方に知り合ったり話をしたりすることはあると思いますが、一方で、人に会わなくても済むということもあるわけです。ですから、例えば、登校拒否の生徒さんなんかがインターネットで心を開ける相手を探したり、そんなことをよく最近聞きます。  これはこれですばらしいことだと思いますが、人に会わないで済む——人間というのは、目を見て、コミュニケーションして、きょうは大臣と私、こうやってコミュニケーションさせていただいていますが、目を見てわかることもあるし、理解することもあるし、相手を判断することもあると思います。そういうものがやはり今までの村社会であり、地域社会をつくってきた大きな一つの安らぎだったような気がするのですが、そのことと、今回のインターネットの、個人個人がいろいろな好みでつながっていくということをどのように考えればよろしいか、御説明をお願いします。
  131. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 テレビができましたころ、マクルーハンという学者がおりまして、この人が、テレビができて、どんどんと世界じゅうのことがテレビ画面で出るようになると、町は崩壊して村になる、人間はもう集まらなくなる、こういう理論を立てました。  私は、この人と非常に因縁がありますのは、ちょうどその理論がはやったころに万国博覧会の準備をしておりまして、だから、万国博覧会などはもう古いんだ、はやらなくなるんだという理論を立てたわけです。私は、むしろ、テレビが発達し情報が盛んになると、ますます人は人を求めて会いたがるものだ、だから万博は大はやりするんだということで、随分アメリカの新聞なんかで議論をして、結局、実績が出たものですから、私が勝った形になったのでございますけれども。  人と人が心がつながると余計会うという面も出てきます。  それから、今度は逆に、そうだから、会うのは面倒くさいから心を閉ざされるという人も出てくると思うんですね。年がら年じゅう機械との対話ばかりするような人も出てくる。そういう意味では、人間の心のつながりと顔のつながりというのをどう保っていくか。  それは、やはりNPOとかそういう一つ社会運動としてみんなが集まるような、コミュニケーションで、フェース・ツー・フェースのコミュニケーションをするような機会、これもつくり出していかなきゃいけない。最近、都会が、団地なんかでもお祭りが盛んになって、おみこしなんかよく出るようになっておりますが、そういうような人の触れ合いというものもつくっていかなきゃいけない。そして、それを、触れ合いをつくるときに、この情報機関、インターネットというものが人集めにまた役に立っていく。そういう集人、人を集める方と、それから送り届け、送達と、この二つの情報がよき循環を持っていくようにする基盤づくり、文化づくりということがやはり必要だろうと思います。
  132. 平井卓也

    平井委員 私も同感でありまして、大臣がおやりになっているインパクにしても、例えば、私の地元は香川県なので、めんというテーマでやるわけですが、結局、ネット上の一つのめんの博覧会なりそういうものをつくったとしても、それと同じものを実際につくって、そして人が集うような仕掛けをつくらなければ、実際本当に人が交流したことにはならないと思いまして、私は、ネットを使って人が集まるきっかけづくりにするような政策をもっと進めていただいた方が、地域の方々には理解しやすいITになるというふうに思っております。  ちょっとその点につきましてはもう質問をやめさせていただきまして、きょう、私、日本経済新聞を読んでおりまして、郵政省のインフラ整備計画というのがあります。これは、二〇〇五年までに全家庭に光ファイバー網を整備して次世代のネットの通信手段であるIPバージョン6を実用化し、超高速ネットを低料金で利用できるようにすることを目標として明記。これは、全家庭に光ファイバー網を二〇〇五年までに敷設することを目標にするということですね。お答えいただけますか。
  133. 平井正夫

    平井政府参考人 本日の日経新聞に、電気通信審議会でそういうふうなことが、六日ですか、議論されるやという記事が出ておりました。六日に議論されるやに聞いておるということでございまして、私自身も子細にはもちろん承知しておりませんし、その場で議論されてすぐに結論が出るものでもないということでございますので、一連のIT絡みの議論をしていただいておりますけれども基本法を受けて各省の一つの施策としてやっていただいているものかなというふうに考えております。
  134. 平井卓也

    平井委員 ちょっとまだ質問のタイミングが早過ぎたのかなというふうに思いますが、これは堺屋大臣にちょっとお聞きしたいのです。  IT社会の根幹をなすものの一つ情報通信インフラの整備であることは、これはもう当然であります。新たなネットワークインフラの整備によって、電子商取引であるとか遠隔医療とか、企業や国民が実際に情報通信を活用するアプリケーションの開発とか導入というものが促進される、そこにまた新たな需要が生まれてネットワークインフラの整備を加速していく、そのように私は理解しています。  しかし、ITという名のもとに地方の隅々まで光ファイバーを張りめぐらせたとしても、実際に世界最高の速さを必要とする人は、現状ではほんの一握りだと私は思うのです。一般的に考えてみて、高速光ファイバー網が必要だというのは、映像系以外のものはないと私は思っています。  それは、一般利用者の視点から見るとどういうものがあるかというと、テレビであったり、ビデオディマンドであったり、映像カラオケであったり、さらにはテレビ電話というようなことになるのかなと思うのですが、そのことを考えたときに、費用便益分析、この考え方は企業なら皆さんあると思いますが、つまり、投資したものはどのくらい使用され便益を生んだのかを厳しく検証するということは、これは民間の考え方では当たり前のことであります。  例えば、ビデオ・オン・ディマンドにしても、今までいろいろな方が実験をされましたが、コストの面からいってどうも合わないなということでとんざしているやに聞いておりますし、テレビ電話も、今の実際の使われ方から考えると、そんなに大きな需要があるように私は思いません。今実際レンタルビデオのマーケットがどのぐらいあるかというと、約五千億あるかないか、マーケットとしては非常に小さいわけです。  そういうことを考えたときに、超高速インターネットの整備を図り、インターネットのサービスの低廉化や利便性向上を促進して、五年後には我が国を世界情報通信の最先端に仕上げると森総理は言われているわけですけれども、この世界最高水準の超高速通信網という言葉に代表されるようなものは、これはすべてインフラであります。結局、その中で考えてみますと、次の社会というものがなかなか見えてこないということもあるわけですが、私は、まず最初にはっきりさせておかなきゃいけないものは、世界最高水準の超高速通信網というものが、一般の方、国民、一体だれが何のために使うのか。  例えば、ファイバー・ツー・ザ・ホームという議論があります。しかし、ファイバー・ツー・ザ・カーブという考え方もあります。これは明らかに、どこまでつなぐかということにおいては変わってくる考え方でもありますし、結局、使うものをまずつくることの方が大事であって、国民の中には、もしかしたら、景気対策にもっとお金を使ってくれ、これは、光ファイバーは民間の方にやらせるということは私は繰り返しています。  しかしながら、津々浦々まで、私の地元を考えてみても、本当に光ファイバーが要るのかな、この議論はまだこれから後の議論になるかもわかりませんが、私の言いたいことは、超高速通信網というものは利用者側から見て一体何に使うんだということに関して、大臣、ぜひお答えをいただきたいと思います。
  135. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 仰せのように、全国津々浦々、もうすべてに光ファイバーを引くというのは、大変コストがかかって利用率が下がることになりますので、あるところは無線で、あるところは今の導線でというところも残ってくる、これはやむを得ないことだと思います。特に日本はモバイルが発達しておりますから、無線でつなぐことで補えるところもかなりあるのではないかという気がいたします。  それで、仮に一定の人口密度があるところは光ファイバーで結ばれたといたしますと、どんなものが送られるだろうか。これには、電子政府とかEコマースとか、あるいは遠隔医療とかいうようなことがいろいろ言われておりますし、個人間通信もいろいろと出てくると思いますけれども、やはりこれから大きく伸びる分野というのは楽しみの分野だと思うんですね。だから、友人と話をする、あるいは会合、チャットを開く、そういうような楽しみがたくさん出てくると思います。  その楽しみを生み出すためにはコンテンツが必要でございまして、最初にハードができたときに、これが何に使われるかというのは実はわかりにくいのです。レコードが最初にできたときは、レコードと言ったように、あれは声の記録だというので、最初に売り出されたレコードはビスマルクの演説でございました。活動写真が出たときも、あれは活動写真と言ったぐらいでございまして、やはりカイザーの閲兵式か何かが最初。それがだんだんと音楽娯楽になり、演劇娯楽になり、その演劇も、最初はシェークスピア劇をじっと映していたそうでありますが、だんだんとトリックをつくり、オプティカル装置をつくる。  インターネットも、みんなが使うようになりますと、いろいろなコンテンツが生まれてくる。私たちがことしの十二月三十一日から開くインターネット博覧会も、全国からそういう新しいコンテンツの才能があらわれることを期待しておりまして、それによっていろいろな人が本当に楽しい、好きなものをつくる。あいつがこういうのをつくったらおれはこういうのをつくってやろう、あの人がこういうのをつくったら私はこうしようというようなのがどんどん競争で生まれてきて楽しい社会が出てくる。それが一番の大きな需要だと思いますけれども、やはり効率と価格の上で考えていかないかぬというのは御指摘のとおりだと思います。
  136. 平井卓也

    平井委員 ぜひ効率のことを考えていただきまして、恐らく年内にまとめるIT国家戦略の柱とするであろう、これから打ち合わせされると思いますが、ただ光ファイバーを隅々まで張ったら全部終わりだというようなことが決してないように、これはよろしくお願いをさせていただきたいと思います。  また、そのIPバージョン6に関して言えば、これは国家戦略として、要するに、インターネット世界における日本の国際的な地位を上げる意味でも、またデジタルデバイド、後進国に対しても、これは国を挙げてやる一つの国家戦略だと思います。その意味も含めて、どうぞよろしくお願いをしたいと思います。  時間が余りなくなってきましたので、ちょっと違う質問をさせていただきたいと思いますが、課税対象に関して質問をさせていただきたいと思います。  現在、高度情報通信技術は、社会経済構造のあり方に大きなインパクトを与えておりますが、特にインターネット普及を背景とした電子商取引の進展は、まさに新しい経済活動発生の原動力であります。また、グローバルな経済取引活動の基盤として大きな影響を持っておりまして、より一層電子商取引を発展させるための環境整備を図らなければならないというふうに考えています。  その際、適正な課税制度の構築というものは、電子商取引の健全なる発展を図る上で重要な課題の一つであると思います。  具体的には、電子商取引では電子データによる取引が行われることから、取引データの改ざんまた消去が容易であるなどの一般取引と異なる点があります。その把握が非常に難しいと言われております。したがって、いつの時点で課税するのか、いかにして正確に課税対象を把握するのかといった課題が当然考えられるわけであります。また、この問題は国境にとらわれないグローバルな商取引を促進することになりますので、国境を越える取引に対する課税のあり方について、国際的な取り組みや協力体制の整備が当然急務であると思います。  そこで、お尋ねをいたしますが、ボーダーレスな電子商取引の拡大も含めて、今後急速に進展すると思われる電子商取引に対する適正な執行をどのように確保していくおつもりか、お答え願えればと思います。
  137. 村上喜堂

    村上政府参考人 お答えいたします。  電子商取引に対する課税のあり方につきましては、今御指摘のありましたように、課税上必要な取引の把握の問題とか、国境を越える取引に係る所得課税、消費課税の問題につきまして、現在OECDにおきまして専門的、技術的な見地から検討が行われております。この会合に我が国としてもその議論に積極的に参加しているところでございます。  今御指摘がございましたように、電子商取引には、匿名性あるいはデータ消去の容易性、取引のボーダーレス化などによりまして、取引状況の把握が非常に困難であるという点がございます。この点につきまして外国も同様の認識でございますので、国税庁といたしましても、OECD等の場におきまして諸外国の税務当局と意見の交換を行いまして、電子商取引に対する取り組み方であるとか調査手法の開発につきましていろいろ意見の交換をしておるところであります。  また、我が国の内部でございますが、電子商取引に対する新しい調査手法の開発であるとか、これはいろいろ税目もわたりますし、法人、個人にもわたりますので、組織横断的な取り組みが必要だということで、本年二月以降、順次各国税局に電子商取引専門調査チームというのを設置いたしまして、税務調査を行うなどにより、電子商取引に関する適正、公平な課税に努めているところでございます。  以上でございます。
  138. 平井卓也

    平井委員 この問題は非常に難しい問題だと思います。ECそしてアメリカ、その州政府、連邦政府の問題も含めて、消費税といいますか、税金をいつかけるか、どのようにして平等にしていくかということは非常に大きな問題だと思いますので、これは本当に真剣に一刻も早く対策を考えていただければと思っております。  時間がなくなってまいりましたので、最後に、政治のIT化ということに関して、私の考えていることを含めてちょっとお話をさせていただきたいと思います。  特に、選挙というものを考えてみると、ITからはまことにほど遠い状況にあるのは多くの方々が御存じのとおりだと思います。さきに行われました倫選特、政治倫理の確立と公職選挙法改正の特別委員会で、保守党の小池先生、さらには自民党の細田先生インターネットによる選挙運動に関して質問され、現在の公選法では利用できないという結論でありました。  しかし、インターネットを初めとするITは、スピードアップ、コストダウン、それよりも何よりも障害者、高齢者のハンディキャップを克服し、彼らの社会参画を促すという意味では非常に大きな意味があると思います。  他方、選挙の実情を見ると、旧態依然の人海戦術に頼っているのが実情でありまして、将来的には指紋や声紋、音声で、どうなるのかわかりませんが、確実に個人を認識できるようになることが予想されますので、インターネットによる選挙運動のみならず、投票所に赴いて投票することに負担を感じられる方々への配慮という意味からも、高度情報通信選挙システムというようなものも頭のどこかには入れておかなければならないというふうに思っています。そうでなければ、ITITと言っても、選挙制度自体が余りにもそういうものを拒絶したような形であったのでは、これはちょっとおくれているなというふうにやゆされても仕方ないことかなと私は思います。  さらに言わせていただきますと、このIT社会、国がこれだけ、いわば国民に押しつけるような形、言葉が悪いかもわかりません。本来は、国民自分の楽しみのために、自分で進んで楽しみのためにITを使うというところから始めなきゃいけないのですが、今のITのかぶさり方を見ていますと、一種国民はおびえているところもあるわけでありまして、そういうところから考えさせていただきますと、例えば議員自体で、国会議員ですよ、インターネットを自由に使いこなせないということ自体が、もう議員としての資質にかかわる時代になってきたとさえ私は思うわけであります。  その意味において、今民間では電子投票の研究が進んでおりますし、技術的にはほぼ完成の域に達していると聞いております。また、オランダ、ベルギー、アメリカの幾つかの州では、実際に電子投票が実施されておると聞いております。政治家の都合だけではなくて、投票する側に立って考えると、電子投票を実施すべきという考え方もあるわけで、そういうことによって必ず投票率も上がり、国民主権の現実的な意味の復活につながると私は思っています。  そこで、ITを単にパソコンとインターネット世界だけと考えるのではなくて、国会自身も進んでIT化すれば、政治の世界も変わると思いますし、国民が四年ないし六年に一度の選挙で議員に審判を下すのではなく、リアルタイムで議員の評価を行う。これは大変厳しい世界にはなってしまいますが、ある意味では、政策決定というものがネット上ですぐ賛否両論が提出させられて、政治家だけでなくて国民同士の政治的な議論というものが交わされる最新の民主主義がそんな形態になるのではないか。堺屋大臣お話しになっているような社会はそのような社会であると私は思いました。  そういう意味に関して言いますと、やはりこれは、電子投票にすぐ移行するということではないですが、政治家みずからインターネットというものをもっと率先して使うことが必要であり、そのことによって政治家の情報公開を行う、そのことが必要だと私は思っています。  そこで質問ですが、インターネット選挙に使うことをもう解禁してしまった方がいいのじゃないかというような議論も多くの方は言われております。その点につきましてちょっとお聞きをしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。よろしければ、大臣もそのことについて一言。
  139. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 私は、小学校の学級委員から選挙をやったことは一度もございませんので、ちょっと選挙のことはわかりませんが、情報という観点から見ますと、インターネットで公開されると、その人の政見、それから政策、人柄、そういうことが非常によくわかるし、選挙民との距離が近づいて、いい手段だと思います。  ただ、今度は逆に、誹謗とか中傷とかをやられたときに、それが本当かどうかということはわかりませんから、これは政治だけじゃなしにあらゆる人の人権にかかわることですから、私は、名誉毀損なんというのはちょっと厳しくして、本当に名誉毀損とわかったら罰を重くした方がいいんじゃないかなという感じがしております。
  140. 片木淳

    片木政府参考人 事務的観点からお答えをさせていただきます。  自治省におきましても、選挙事務への電子機器の導入は重要な課題だと考えておりまして、昨年七月に電子機器利用による選挙システム研究会を設置いたしております。ことし八月に中間報告を取りまとめていただいております。お話にありましたような諸外国を含む電子機器利用の現状や、三段階に電子機器の導入を分けまして、将来の形でございますが、三段階目は在宅でインターネットによる投票を行うという段階でございますが、それぞれの段階に応じて解決すべき課題を整理していただいたところでございます。  今後は、技術的な側面、経費的な観点等からの検討等も含めまして、選挙システムに電子機器を導入するに当たって解決すべき課題をより明確にしていく予定でございます。  電子式投票の導入につきましては、その前提として自書式投票方式を変更する必要がございます。このことにつきましては、衆議院選挙に一たん導入されました記号式投票が平成七年に議員立法で自書式に戻された経緯を踏まえる必要があるというふうに考えておるところでございます。  また、ただいまお話にありましたとおり、いろいろな問題がございます。中傷の問題あるいは機器のセキュリティー等の問題もございます。そういう問題が指摘されておりますので、各党各会派におきまして御論議をいただきたいというふうに考えておるところでございます。
  141. 平井卓也

    平井委員 わかりました。ありがとうございます。  確かに、インターネットというのは、国民が政治に関心を持ち、そして議員活動を調べる上で大変便利なものです。おまけに、今個人情報に関しては法整備が進んでおりますので、どんどんインターネットを使うという方向に行った方が、私は、政治は国民にとってもっと身近なものになると思っています。かくいう私も、日々の活動は毎日インターネットでダイヤリーとして公開しておりますし、大変苦しいですが、そのことによって自分を励ましているという面もあります。それが必ずしもいいことかどうか、私はわかりませんが、これからの時代、もしITというものを国家戦略として今後考えていくなら、まず政治みずからそのことに積極的に取り組まなければならない、そのように思っております。  長時間にわたりまして、どうもありがとうございました。     —————————————
  142. 佐藤静雄

    佐藤委員長 この際、連合審査会開会に関する件についてお諮りいたします。  ただいま審査中の本案に対し、商工委員会及び逓信委員会から連合審査会開会の申し入れがありましたので、これを受諾するに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  143. 佐藤静雄

    佐藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  なお、連合審査会は、来る六日月曜日午後一時開会の予定でありますので、御了承願います。  次回は、来る七日火曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時五十三分散会