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2000-11-22 第150回国会 衆議院 政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する特別委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十二年十一月二十二日(水曜日)     午後一時七分開議  出席委員    委員長 自見庄三郎君    理事 小林 興起君 理事 鈴木 宗男君    理事 西野あきら君 理事 細田 博之君    理事 長浜 博行君 理事 堀込 征雄君    理事 河上 覃雄君 理事 塩田  晋君       岩崎 忠夫君    小坂 憲次君       桜田 義孝君    下村 博文君       高鳥  修君    高橋 一郎君       中馬 弘毅君    野田 聖子君       林  幹雄君    平沢 勝栄君       松宮  勲君    八代 英太君       阿久津幸彦君    加藤 公一君       鹿野 道彦君    鍵田 節哉君       玄葉光一郎君    島   聡君       手塚 仁雄君    山花 郁夫君       遠藤 和良君    久保 哲司君       中井  洽君    木島日出夫君       児玉 健次君    今川 正美君       北川れん子君    平井 卓也君       小池百合子君     …………………………………    参考人    (大韓民国民団中央本部前    団長)          辛  容祥君    参考人    (東京都立大学教授)   鄭  大均君    参考人    (龍谷大学教授)     田中  宏君    衆議院調査局第二特別調査    室長           牧之内隆久君     ————————————— 委員の異動 十一月二十二日  辞任         補欠選任   林  幹雄君     平沢 勝栄君   大幡 基夫君     児玉 健次君 同日  辞任         補欠選任   平沢 勝栄君     林  幹雄君   児玉 健次君     大幡 基夫君     ————————————— 本日の会議に付した案件  永住外国人に対する地方公共団体議会議員及び長の選挙権等付与に関する法律案冬柴鐵三君外一名提出、第百四十八回国会衆法第一号)  永住外国人に対する地方公共団体議会議員及び長の選挙権等付与に関する法律案北橋健治君外六名提出、第百四十八回国会衆法第二号)     午後一時七分開議      ————◇—————
  2. 自見庄三郎

    ○自見委員長 これより会議を開きます。  第百四十八回国会冬柴鐵三君外一名提出永住外国人に対する地方公共団体議会議員及び長の選挙権等付与に関する法律案及び第百四十八回国会北橋健治君外六名提出永住外国人に対する地方公共団体議会議員及び長の選挙権等付与に関する法律案の両案を一括して議題といたします。  本日は、両案審査のため、参考人として大韓民国民団中央本部団長辛容祥君、東京都立大学教授鄭大均君及び龍谷大学教授田中宏君に御出席をいただいております。  この際、一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところを本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。本委員会での審査に資するため、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  次に、議事の順序について申し上げます。  御意見は、辛参考人鄭参考人田中参考人順序で、お一人十分程度お述べいただき、その後、委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。  念のため申し上げますが、発言する際には委員長の許可を得ることとなっております。また、参考人委員に対し質疑することはできませんので、あらかじめ御了承願いたいと存じます。  それでは、まず辛参考人にお願いをいたします。
  3. 辛容祥

    辛参考人 私は、辛容祥と申します。  私は、一九九四年四月からことしの三月まで、在日韓国民団中央本部団長を二期六年間務めました。  私は、昭和十年に日本に来て、六十五年になります。その間何もしたことはないのでありますが、二人の子供と孫が五人いる、これだけが私の実績であります。  本日は、時間の制約がありますので簡単に、私たちが何ゆえ地方参政権を必要としているのかをぜひ諸先生に御理解を賜りたいと思います。  その第一の動機は、自分の住んでいる隣近所人たちと違和感なく仲よく暮らしたいからであります。私たちは、自分の暮らしている町内では、時には町内会長として隣近所の世話をやいたり、使い走りもしております。また、幼稚園、小中学校では、PTAの会長その他役員なども引き受けて使い走りをしております。このように非常に仲よくつき合っております。  しかし、選挙のとき、特に地方選挙のときは、投票所に一緒に行こうと誘われたりするのでありますけれども、何と断ってよいのか、大変嫌な思いをいたしております。地域では、ごみ、下水道、その他身近な問題の処理等の問題が起きたときも、私たちは門外漢という立場になります。だから、日常生活では目に見えない壁ができています。これではお互いに心から助けたり助けられたりすることはできないのであります。私たちは本当に寂しい思い日常生活をしております。  私たちは、半世紀以上も日本に住んで、日本社会になれ、またここに完全に生活根拠を持っております。半世紀以上も日本の大地に根をおろしております。しかし、果たして私たち地域住民なのでありましょうか。いや、紛れもなく私たち日本地域住民であると思います。ただ、資格が与えられていないような気がいたします。  その資格を得るのにどうすればいいかということを我々は悩みました。そして、直接私たち関係のある地方自治体に訴えようということでやりました。その前に我々は日本政府にもお願いしましたけれども、九一年の韓日外相の覚書で、韓国側の要求があったという一項目だけが冷たく記入されただけでありました。それで、私たち地方自治体に直接働きかけました。結果、九三年、大阪岸和田市が全会一致で、日本政府に、定住外国人地方参政権を与えるべきであるという要望を決議したのがこの運動地方自治体における始まりであります。その後、今日まで、千五百カ所近くの地方自治体が同様の決議をいたしました。  また九五年には、最高裁の全員の判事が、その地方に特段の関係を有する定住外国人地方議員及びその長の選挙権を与えても憲法違反ではないと判決されました。全国の自治体の決議と私たち運動が合憲であるということが立証されました。  そればかりでなく、昨年、統一地方選挙の前に実施された読売新聞社の全国世論調査においては六六%、ことし十一月九日の朝日新聞社が行われた世論調査では六四%が定住外国人地方参政権付与すべきであるということでありました。  もちろん、地方議会の議決、最高裁判決日本全国世論調査等は皆、定住外国人としてであることは厳然たる事実であります。これは、日本国民の高度の民主化と寛容さを示すものであると思います。同じ地域に住む住民同士は仲よくしてともに地域の発展に協力し合おうではないかという日本国民の信号でなくて何でありましょうか。紀元七世紀ごろの日本の聖徳太子の「和を以て貴しと為す」という崇高な精神が今日になお生きていると強く感じました。日本国民に対しては全く感謝の言葉もありません。この法案が成立したときは、私たちは必ずこの寛容さに報いねばならないと思いました。  それから、納税に対して少しく誤解があるので申し上げたいと思います。  私たち納税をしているから参政権を要望しているというより、私たちは皆、例えば東京都民税区民税として請求が来ます。私たちは実際は都民区民としての扱いを受けていないことが間々あります。しかし、請求書には区民税都民税で来ます。あるいは、県にいれば県民税、市ならば市民税と言います。それを払うのは、私たちが正式に住民として認められた場合にはその義務を果たすのは当然であります。しかし、何か合理的でないような感じもしないわけではないのであります。ですから、我々が区民税都民税を払っても、義務だということでみずから進んで払うのと、何か半分強制的なそういう請求によって払うのとは、これは雲泥の差があると思います。  次に、帰化問題に関して一言申し上げます。  民主主義相手のプライバシーを尊重し個性を伸ばす制度だと思います。相手自尊心を尊重し、相手立場と長所を生かすことが大切ではないかと思います。例えば、二〇〇二年のサッカー世界競技大会韓日共同で行われます。こういうときには、私たち韓日国民に入って使い走りの役ができるのではないでしょうか。  人間は一人では生きられないものです。支え合うのが人だと思います。これには国籍の区別はありません。今グローバル化が急速に進んでおります。もう一国だけでは生きられない時代になってきています。この中で人間にとって大切なことは、自分誇りを持って生きるべきだと思います。お互い自分誇りを持てば、他人を傷つけたり弱い者をいじめたりするということは生じないことでありましょう。  ここで思い出したことを一言申し上げますと、前上智大学の学長、これはある新聞にありましたけれども、ヨゼフ・ピタウさんが日本国籍を取得しようとしたときに、「国籍を取らなければ日本に貢献できないというのはおかしい、国籍はどこであれ、友情を深められるようにした方がいいと日本の友人に言われました。」とあります。  帰化より友情の方が大切だと思います。私たちも、この大切な友情を今後も大切にしていきたいと思います。  失礼しました。(拍手
  4. 自見庄三郎

    ○自見委員長 ありがとうございました。  次に、鄭参考人にお願いいたします。
  5. 鄭大均

    鄭参考人 都立大学の鄭と申します。  先ほどの辛先生一世でありますけれども、私は日本で生まれた二世です。辛先生日本にいらっしゃったのが一九三五年ごろということですが、私の父が日本に来たのは一九二一年ごろですので、我が家の在日歴というのは八十年ぐらいになるということです。  辛先生の場合も、永住外国人の中でも特に特別永住者と言われる部分に注目してお話をされていましたが、私も、一般永住者部分特別永住者部分というのは区別して、特に参政権の問題を語る場合には、特別永住者についての議論中心にしてやりたいと思いますし、私自身がそうでありますように、特別永住者の中でも、朝鮮籍というよりは韓国籍の人の問題を中心に語りたいと思います。  私は、在日韓国人でありながら、参政権法案というものに反対している者なのですが、その理由というか根拠というのは、大まかに二点あります。  一つは、参政権付与というものが在日にとってプラスになるものではないという視点からの議論です。在日韓国人というものを語るときに重要なことというのは、在日韓国人というのは韓国籍を持つ韓国人なわけですけれども、韓国人意識というか、韓国に対する帰属意識のようなものは非常に低いというのがまず重要な点だと思います。  日本の中には、在日祖国愛だとかあるいは本国に対する忠誠心というようなことを指摘される方もいますが、それは多分誤解というか、辛先生のような一世の方にはある程度祖国愛のようなものはあると思いますけれども、一世というのは今数%でして、残りの大部分在日というのは、そういう面でいうと、文化的にも心理的にも本国から非常に切り離された存在である。客観的に言うと韓国に所属しているわけですけれども、主観的にはむしろ帰属意識に欠けるというのが第一点です。  第二点は、日本においては在日韓国人というのは外国人なわけですけれども、外国人意識が低いというのも重要なことだと思います。こういうような主観的な事項と客観的な事項というか、そういうものの間にあるずれというものを、私は、アイデンティティー帰属の間のずれというふうに表現しています。  ですから、簡単に言うと、参政権法案に反対する一つ理由というのは、在日アイデンティティー帰属の間のずれというようなものを自明化してしまう、当たり前のことにしてしまう、多分そういう効能があるだろう。むしろ、それを解消するというのが在日の課題であると思うのですが、それと逆の作用を果たしてしまうというふうに考えます。  そのアイデンティティー帰属の間のずれというのは、これは小さな問題ではありません。在日が、韓国との関係においても日本との関係においても不透明な存在になっている、自分を説明しにくい存在になっているということです。  グローバル化時代云々という形で参政権の問題を語る方がいますけれども、在日日本人とのやりとりで暮らしている限りでは、ある面では自分在日だと言うと何となく了解される、そういう状況日本社会にはあるわけです。しかし、在日が、例えば本国韓国人と出会うとか、あるいは世界のどこかに出て、フランス人に会ってもアメリカ人に会っても、自分を説明するという場合に、非常に説明しにくい存在になってしまっているということです。そういう在日立場からの理由一つです。  もう一つは、レジュメを用意してきたのですけれども、参政権付与というのが日本にとってもプラスになる、日本という国や日本社会やあるいは日本国際化プラスになるとか、あるいは参政権付与というのは開かれた日本あかしであるのだとか、成熟した日本あかしであるのだとか、あるいは国際的な人権感覚にマッチするのだ、そういう議論があるわけですけれども、私はそれもおかしいと思います。  在日の典型的な家族というのは、私のような例えば団塊の世代あたりの二世が親としていて、三世の青年期がいる、そういう家族構成になっています。二世、三世、四世の時代になっているわけですが、文化的に言いますと、日本に対する同化度というか、そういうものが非常に高い。一方では、本国との間の文化的な紐帯とか心理的な紐帯というものは切れている。にもかかわらず外国籍を維持している。このことが実は在日の問題を語るときに非常に重要なことだし、国際的な人権感覚という場合に、国際的な潮流からしても参政権付与することが当たり前である、そういう意見議論があるわけですけれども、国際的なセンスからいいますと、在日韓国人の何が不思議かというと、参政権がないことが不思議というよりは、日本国籍がないことが不思議だと思うのです。  在日定住外国人に対する議論をするときに、北欧の例であるとかEUの例であるとか、そういうものをレファレンスとして使う人がいるわけですけれども、確かに、定住外国人の中に母国の国籍を維持しながら外国人として定住しているという人が比較的先進社会の中にふえているという事実はあると思うのです。アメリカなんかにおいても、グリーンカードまでは取るが、その後アメリカ市民権は取らない、そういう集団がふえている。例えばそういうメキシコ人集団がいるというのは事実でしょう。  しかし、そういう集団の場合は、一般的に言うと、特にアメリカ大陸の場合はそうなわけですけれども、一世だと思うのですね。一世でありますし、二世、三世の場合であっても、二世ぐらいの場合はそういう形でEUの中で動き回るということは可能かもしれませんが、自分本国との間の文化的、心理的な紐帯が切れてしまっているのに本国国籍を維持するというのは、極めてまれな例だと思うのですよ。  ですから、そういう意味でいうと、今議論するべきというのは、参政権というよりは国籍の問題であるというのが、それは私の感覚というよりは、在日に一般的に共有されている感覚であるというふうに私は考えます。  在日参政権を与えることが国際社会の中での日本のイメージアップにつながるというような議論をする人もいるわけですけれども、私の考えでは、在日が三世、四世になっても外国人でい続けている限りは、それは何らかの形で政治的な権利から疎外されるというか、除外されることを意味するわけですね。その限りでは、在日韓国人の中でも、市民的な権利という名前で、これは国民的な権利と言ってもいいのですが、そういうものを要求しながら日本社会欺瞞性を暴露する、そういう運動をする人、そういう異議申し立て者のような人は多分存在すると思いますし、それに連帯する日本人もいると思います。そういう日本批判がある限りは、日本という国が差別国家である、そういう国際的な烙印というものも多分出てくると思うのですね。  ですから、この定住外国人部分外国籍のままでいるということは、在日にとってはアイデンティティー帰属というそのずれの問題を結局は解決できないという意味になりますし、日本社会にとっては、日本という国にとっては、ある種の汚点になるというか、差別国家日本、そういうラベリングを許す、そういう状況になってしまうというふうにも考えます。ですから、在日にこうやって参政権を与えて、それで国際社会の中で評価を受けるというようなことは、非常に見通しが甘いというふうに考えます。  では、どうしたらいいのかというと、基本的には、在日の場合は日本国籍を取ればいいわけです。アイデンティティーに合わせて自分帰属を変えればいいわけです。それは、私の考えるところでは、在日というのは、基本的には、さっきの辛先生お話にもありましたけれども、これからも日本に暮らさなければだめだということを知っていますし、日本で暮らす限りは日本国籍を持っている方が有利であるというふうにもみんな考えているわけですね。帰化に対する、日本国籍取得に対する評価というのは、在日は低くないわけです。にもかかわらず、今のところは帰化しない人の方が多いわけですけれども、それはそれでやはり幾つかの理由があります。  一つの問題というのは、今の日本社会というのは、帰化をしないことに対するモラルサポートのようなものをいつになく与えているというような問題もあるでしょうね。もっとわかりやすい例を言いますと、一つは、帰化タブーのようなものが在日社会にはあります。そういうものを在日の知識人なんかもサポートしますし、帰化タブーというか民族主義的な言説でもってサポートしているとか、あるいは日本の側でも、日本共生論者だとか多文化主義者というのは、ある面では在日一世のような者を尊重するという態度の延長で、国籍はそのまま維持してもらった方がいいのだというような議論をする。  幾つかそれ以外にも理由があると思いますけれども、在日の場合は、実は帰化に対しては割合肯定的な感覚を持っている。にもかかわらず、例えば、外国人意識がなくなっているために、帰化という煩雑な手続に自分が応じるのにしっくりしないという感覚があるとか、いろいろな理由があります。  私の考えでは、やはりある種の在日に対する自尊心を傷つけない方法日本国籍が取得できるような方法、つまり、申請すればほぼ自動的にその国籍が取れるような、そういう機会がオファーされれば、多分大部分在日というのはそれを受容するだろうというふうに考えるものです。  ちょっとばらばらになりましたけれども、主には在日韓国人について、在日韓国人立場から参政権法案に対する私の考えを述べました。(拍手
  6. 自見庄三郎

    ○自見委員長 ありがとうございました。  次に、田中参考人にお願いいたします。
  7. 田中宏

    田中参考人 御紹介いただきました田中です。  ちょっと欲張りまして、「意見陳述要旨」という一枚のレジュメのようなものと、あと、御参考になればというので八枚つづった資料があると思いますが、それを使いながら。  私は、今回の法案には、二つ法案が出ているようですけれども、何か中身は全く同じということのようなので、原則的には賛成立場です。ただ、原則的とあえてつけたのは、今回の法案には被選挙権が含まれておりません。それからさらに、永住者対象になっていますけれども、例えばかつてさきがけが発表した案は五年以上住んでいる外国人対象にするというようなことがあったので、範囲を拡大するというようなことが将来は望ましいと思いますけれども、そういう意味で、原則的に賛成という立場です。  次に、この法案対象になっている人は、御存じのように特別永住者、旧植民地出身者及びその子孫である五十二万、それから一般的な外国人日本永住資格を取得している十一万、たしか去年の年末の統計だと思いますけれども、この人たち対象になっているわけですけれども、実は、前者の特別永住者というのは、五年前に比べると四万人減少して五十二万になっています。一方、一般永住の方は逆に五年前に比べると五万人ふえています。委員部の方からいただいた参考資料を拝見しても、昨年一年間で二万人の人が永住資格を取得していますので、実際には、あと五年たつと、一般永住者は多分二十万とかあるいは二十五万とかというようなオーダーになるだろう。逆に特別永住は五十万を切ることは間違いない。そういう中で外国人地位の問題を考えていくということが必要ではなかろうかと思います。  特に日本の場合には、先ほどの話にもつながりますけれども、日本国籍法血統主義ですので、外国人がいつまでも再生産されるシステムをとっているわけですね。これがもし出生地主義国籍法であれば、外国人の二世は既に外国人ではありません。生まれながらにしてその国の国籍を持つわけですから。アメリカ地方参政権の問題が議論されないというのは、アメリカで生まれた子供は両親とも外国人でも自動的にアメリカ国籍になってしまいますので。日本の場合は、血統主義をとっているために外国人が再生産される構造があるので、その人たち法的地位なり権利の問題について、国籍法との関係で別途手当てをしなければいけない問題がある。その中の一つだというように私は思います。  参政権の問題というのは、何か最近急ににぎやかに議論されるようになりましたけれども、私に言わせるともう二十年以上前からいろいろな形で議論が続いているわけです。  資料として、たまたま朝日の「論壇」をちょっとぱっとめくって用意をしたのですが、七六年に柳沢さんというスウェーデン在住日本人の女性が書いた文章で、有名な、スウェーデン外国人地方参政権を開放したということを伝えた内容ですね。  スウェーデンは、かつてはやはり北欧三国の人が多かったようですが、今では、レジュメにも書きましたように、それ以外の外国人がどんどんふえてきている。しかし、両方を対象に事が進んでいる。フィンランドはかつてスウェーデンの領土だったわけで、ちょうど在日人たち日本での参政権を求めるというのと、ある意味では非常に関連している。  二枚目のところに、もう亡くなられましたけれども、金達寿さんの発言をちょっと載せておきました。これを拝見すると、スウェーデン柳沢さんの文章金達寿さんは非常に刺激を受けたようですね。自分は大切に切り抜きを持っている、こういう形で議論が次々につながってきた。  三枚目のところは、例の政治学者白鳥令先生が書かれたもので、投票できない人への配慮ということで、外国人のことに既に八三年の段階で触れている。  そして八六年には、在日の黄さんが書かれた文章で、最後のところに、途方もない空想だというかもしれないけれどもと断りながら、この問題について発言をしている。それが今日具体的に国会法案として審議されるという経過をたどったわけです。  次に、国政参政権地方参政権関係についての私の理解を申し上げます。  参政権というのはどうしても国民固有だというような認識が従来から強かったと思いますけれども、少し冷静に考えると、この前の選挙から初めて、日本もようやく外国に住む日本人国政レベル参政権が行使できるようになったわけですけれども、サミット参加国の中では最後だったようですけれども、同じ国民でもこの人たち地方参政権はありません。それは、日本住民でないからなんですね。ですから、参政権国民にかかわる国政参政権住民にかかわる地方参政権というふうに分けて考えるのが一番合理的だろう。柳沢さんの例を挙げれば、柳沢さんは、スウェーデン地方参政権を行使し、今度道が開かれた国政参政権スウェーデンにある日本の大使館に投票する。これは非常に合理的だと思うのですね。それが、最高裁判決で、地方参政権をどうするかは政治の問題だという指摘をして、憲法上禁じられているわけではないという非常に合理的な認識だというふうに思います。  それから、これはさっきからの議論に重なりますが、日本外国人権利の問題が出てくると必ずといっていいほど出てくる議論が、参政権が欲しければ帰化すればいいと。  先日私は、戦争で軍属として駆り出されて何の補償も受けられなかった人に対する法案のときにも実は国会にお邪魔したのですが、そのときの日本政府の方式も、戦後補償を受けたいのなら帰化しなさいと。実際帰化して受けた人もいます。ところが、日韓条約以降は帰化してもだめと。それでこの間の法案が必要になってきた。  帰化しない、いつまでも外国人を続けている方に問題があるという認識がどうも根強いので、むしろ日本側の問題にどう対応するかという議論をすべきじゃないか。  時間が過ぎたようですけれども、レジュメあと一、二点だけ、済みませんけれども、申し上げます。  一つ帰化の問題ですけれども、資料の七枚目のところに、帰化に関する私が集めた統計を入れておきましたけれども、実は、かつて許可、不許可の数字が公表されていたころは、三七%が不許可、許可が六二%という数字が残っているんですね。ところが、最近公開された資料によると、過去十一年間で許可された人が九八・五%、不許可が一・五%ということですから、恐らく帰化要件の緩和の余地はもうないだろう、申請すればほとんど許可されているわけですから。そうなってくると、先ほどの鄭さんの話にもあるような、届け出による国籍取得という方式を導入して問題に対応するということなら一つの大きな方法だと思います。  このことについては、最後資料に入れておきましたけれども、北海道大学の国際司法の専門家である奥田先生がそのための法案を用意されていますので、国会先生方にもぜひそういうものを御検討いただいて、冒頭で言いましたように、新しい外国人の人もどんどんふえてきていますので、特別永住者については国籍との絡みで議論をしながら、一方では一般外国人のことを考えて、今度のような法案というのを両面をにらみながら考えていくということが今では必要になっているんではないか。  レジュメ最後のところは、帰化した後、その人が日本でどういう立場に置かれるかというときに、従来の議論だと、あ、もう日本国籍を取ったからきょうからあなたたち日本人ねということになっちゃうわけですが、実は、帰化した人が民族的少数者としてきちっと生きていけるかどうかというシステムが日本にはないわけですね。ですから、日本議員をしていらっしゃる人で朴さんとか金さんとかスミスさんという人はいないわけですね。これは民族的少数者として存在する社会を我々つくり得ていないわけですから、そのことも考えていくべき時期が来ているだろう。  ちょっと時間が超過しましたけれども、以上で終わります。(拍手
  8. 自見庄三郎

    ○自見委員長 ありがとうございました。     —————————————
  9. 自見庄三郎

    ○自見委員長 これより参考人に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。平沢勝栄君。
  10. 平沢勝栄

    平沢委員 自由民主党の平沢勝栄でございます。  三人の参考人の皆さん方には、お忙しい中、大変に有益な御意見をお聞かせいただきまして、本当にありがとうございました。  時間がありませんので、早速質問に入らせていただきたいと思います。  今、辛参考人そして田中参考人は、外国人参政権をぜひ与えてほしい、こういう御意見でございましたけれども、これについては、私ども党の中はもう反対が圧倒的でございますし、例えば民主党や自由党やほかの党の中にも反対があるんです。つい先日、超党派の慎重に考え議員連盟というのをつくらせていただいたんですけれども、民主党さんそれから自由党さん、21世紀クラブ、無所属の方々、いろいろな御意見があるわけでございまして、考えれば考えるほどこの問題は慎重に検討しなければならないんじゃないかなということで考えております。  先ほど辛参考人は、自治体に賛成決議、推進決議をしたところが多いという話がございましたけれども、自治体の関係者に聞いてみますと、民団の関係者から頼まれたからよくよく中身も知らないで決議してしまった、しかし今考えてみるとやはりいろいろ問題があるなというところも随分あるわけでございまして、その後に朝鮮総連側から反対してくれというような陳情を受けて困っている自治体も随分あるわけでございまして、要するに、これは意見が分かれているわけでございます。  韓国の方々の中でも意見が分かれているわけでございまして、先ほど田中参考人は朝日の「論壇」の都合のいいところだけを随分引用されたようでございますけれども、これは反対も随分ありまして、例えば日本の雑誌に金鍾泌さん、前の国務総理ですけれども、この方が書かれた論文がございます。この中で何て書いているかというと、アメリカにいる韓国人アメリカ国籍を取ってアメリカ社会帰化して生活を送っているわけですね、日本もそうあってほしいと心から希望している、日本にいる韓国人帰化してやりなさいということを前の国務総理の金鍾泌さんはちゃんと日本の雑誌に書いておられるんです。  金大中大統領も、就任演説のときは何て言っておられたかというと、ここにありますけれども、海外の同胞たち韓国系として安定と誇りを持つことができるよう私たちは積極的に支援しますと。要するに、金大中大統領も、最近になって外国人参政権ということを言っておられますけれども、就任演説では韓国系として頑張りなさいということを言っておられるわけでございまして、就任演説で参政権のことなんかは一言も言っておられませんし、もちろん、日本よりはるかに韓国人の多いアメリカにおいては参政権なんてことは一言も言っておられないわけでございます。  そして、この外国人参政権の問題でとりわけ大事になるのは、韓国系の方それから朝鮮籍の方々が問題になるわけですけれども、では一番大事な朝鮮籍の方々は何て言っているかというと、外国人参政権はとんでもない、内政干渉だ、これは同化政策につながるんだ、民族差別に対する浅い認識からこんなのが出ているんだ、こんなものは真の国際化にも反する、人権運動でもないということをはっきり言っているんです。「NOサンキュー!」という朝鮮総連が出しているリーフレットが二冊ありますけれども、その中では、外国人参政権はとんでもないということを言っておられるわけです。  そして、この前、朝鮮総連の代表に私ども自民党の党の中に来てもらいました。朝鮮総連の代表の方は何て言っておられるかというと、日本の根幹に関すること、これは日本人が決めることで、外国が口出しすることでは全くない、そして、参政権と実生活というのは全く関係ない話だ、これを民団が推進しているのはもう本当におかしな話だということを朝鮮総連の代表の方は言っておられるわけです。  同じ与えようとする人たちの中にもいろいろな意見がある、分かれている。それについて、もしこれを与えることになったら完全な分断政策を持ち込むということになるんじゃないかと思いますけれども、これについて辛参考人はどうお考えになられますか。
  11. 辛容祥

    辛参考人 今、平沢先生お話は、大変参考になります。しかし、今、金鍾泌さんが何十年前にそういうことを言ったということを例にとられましたけれども、この前国務総理として日本に来たときには、日本の国務総理に対して、在日同胞に地方参政権をやってくれと。それから、金大中大統領も、その地域に住んでいればその地域のために貢献しなさいとはっきり言っております。それで、この前来たときも、もう何回も、日本国際化のために地方参政権在日同胞に与えてくれと。  つまり、昔の話、三年前の話、二十何年前の話を今持ち出してそれを基準にされるということは現実に合わないんじゃないか、私はそう思いまして、金鍾泌総理の話、金大中の現在の話は、今我々が進めている地方参政権獲得運動賛成しているということをはっきり申し上げます。——ちょっと待ってください。さっきほかに質問がなかったですか。(平沢委員「もういいです、時間が短いから」と呼ぶ)いやいや、いいですって、質問をしておいて私が返事できなきゃ困るんじゃないですか。(平沢委員「いや、いいです、それでいいんです」と呼ぶ)それでいいんですか。ああそうですか。
  12. 平沢勝栄

    平沢委員 今、昔の話だからということをおっしゃられましたけれども、とんでもない話でございまして、今私どものところには、民団の関係者の方から、在日韓国人の方からいっぱい来ているんです。そしてその中にも、これはおかしいですよ、民団の一部の方が推進しているんであっておかしいですよという声が随分来ているんですけれども、いずれにしましても、時間が限られていますから、これはいずれ機会があればやるとして、次へ進めさせていただきます。  この外国人参政権の問題は、要するに一言で言えば、国政は結構です、地方だから与えてもいいじゃないか、地方で私たち住民の方々と一緒に生活している、道路だ、下水道だ、ごみだ、こうした問題について、税金を納めているのになぜ発言権がないんだ、参政権がないんだ、恐らくこういう問題に帰着するだろうと思うんです。私は、それについては反対しないんです。これは全くそのとおりだろうと思います。  しかしながら、日本地方の政治というのは、道路とごみと下水道だけをやっているかどうかということなんです。国の問題とも密接に関係しているんじゃないですかということなんです。国の教育問題、警察問題、安全保障問題と密接に関係しているからこの問題が起こってくるわけでございます。  ちょっと申し上げさせていただきますと、例えば今、米軍基地、普天間の基地移転がありますでしょう。移転しますでしょう。そうすると、海面を埋め立てなきゃならない。公有水面を埋め立てる、この使用だとか許可というのは、これは県知事の権限になってくるんですよ。これは自治体の権限になってくるんです。それから、例えば自衛隊員の募集だって、これは機関委任事務で自治体がやっているわけでございます。演習場の訓練だって、これだって自治体が大きく発言権を持っているわけでございます。  それから、自衛隊員が沖縄に行ったときに、沖縄では自治体が住民登録を受け付けなかったんですよ。そういうことだってあるわけです。  ですから、私が言いたいのは、地域生活に密着した問題、これをやるだけならば別に問題ないと思うのです。しかしながら、地方政治、地方自治体というのは、三割自治とも言われていますけれども、国政と非常に密接に関係していて、その中には安全保障に関係した問題もいっぱいあるわけです。去年、ガイドライン法というのも通りましたけれども、ガイドライン法でも、地方自治、地方政治は密接に安全保障に関係しているのです。  こういう安全保障に密接に関係した問題で、在日外国人の方々はそれぞれの国に対する忠誠心があります。韓国の方だったら大韓民国の国是を守らなきゃならない、同時に日本国憲法の問題もあります。その国益が衝突した場合にはどちらをとられるのか、ちょっと辛参考人にお聞かせいただきたいと思います。
  13. 辛容祥

    辛参考人 そういうときにはどちらをとりますかというお話ですが、今、一九九八年に金大中大統領と日本の小渕総理大臣が、未来志向で過去の問題は一切問わないでこれから新しく出発しよう、未来志向型でやっていこう、そういうことでありますから、国益の問題で衝突が起きるということは、私はあり得ないことだと思っています。  それからもう一つ、今、忠誠心の話でございますけれども、我々は今ここに住んでいます。私なんか、先ほども申し上げたように、孫まで住んでいます。ここで生活を全部できています。我々が国に帰れないのは韓国生活根拠がないからです。人間というのは皆自分が大事なんです、自分をかわいがります。だから、自分家族も愛します。ですから、そのときどちらをとるかというのは、おのずからこれは明確だと思います。自分を大事にする、自分を愛する、そういうことであるということを御理解いただければありがたいと思います。
  14. 平沢勝栄

    平沢委員 国益が衝突することはあり得ないというのはおよそ考えられない御意見でございまして、いかにこの外国人参政権がむちゃくちゃな議論かということを図らずもあらわしているんじゃないかな。  田中参考人は、朝日新聞に書かれたインタビュー記事の中で、国政レベル参政権外国籍のまま持つことは、日本相手国の利害が衝突する場合がある、したがって、これは理論的に難しいだろうということをはっきり言っておられるのです。ですから、国政ではだめだ、利害が衝突する。当たり前じゃないですか、国と国があるわけですから。  国政では持っちゃだめだということを田中参考人は言われているわけです。ですから、私は、しかしながら、地方も国政に密接に関係していますよ、安全保障にも関係していますよということを言っているわけです。辛参考人は結構ですから、では田中参考人、どうですか。
  15. 田中宏

    田中参考人 もちろん関係はあると思いますけれども、地方自治にはそれなりの地方として決めていくことができるシステムが、明治憲法と違って新憲法にはあるわけですね。  ですから、今のような形で物を考えれば、県知事は全部戦前のように官選にしておかないと。普天間の基地をやるときに県知事が反対したら国に反対するということであれば、これは県知事は官選にしておかないとできないわけです。ところが、今はそうじゃないのですね。国の、中央の意見と違った知事が出ることも認めるようにシステムができているわけですから、その範囲内でどうするかということで、私は別に問題はないと。  地方自治については、当然一定の縛りが入っています。よく例に出されるように、条例で罰則をつけるときには懲役二年以上のものはつくれない。それは国法でないとできない。そういうふうにちゃんと仕切りができているわけで、その範囲内で許された自治の中に外国人が参加する、そういうように私は考えています。
  16. 平沢勝栄

    平沢委員 全くわかりませんね、今の議論は。というのは、例えば高知県とか兵庫でも、高知県港湾施設管理条例、これは高知県の場合ですけれども、あるいは神戸の場合は、条例をつくって、非核証明書を提出しなければ米海軍軍艦の寄港を許可しない、こういったことをやろうとしたわけです。  これは、明らかに国益に絡む問題を地方自治体がやろうとしたわけです。これは地方自治の方で決めることなんです。こういう問題が将来的にも起こり得るわけですけれども、これについてどうお考えになられるかということでお聞きしたわけですけれども、一言でいいですから、ちょっと簡単に田中参考人
  17. 田中宏

    田中参考人 ですから、すべては憲法の九十二条にある地方自治の本旨の中でやれることをやる、できないことはできない、そのできる範囲内に外国人が参加する、それだけのことです。
  18. 平沢勝栄

    平沢委員 私は、この議論は、今の田中参考人の御意見も、やはりその辺は全くおかしいなと。要するに、道路、下水道だけじゃない、この辺がやはり一つの大きな問題だということをぜひ主張させていただきたいと思うのです。  次に質問させていただきたいのですけれども、政治資金規正法という法律があるのです。これは、二十二条の五というところにありまして、何人も外国人等から政治活動に関する寄附を受けてはならない。要するに、地方議員も含めて、外国の方、ですから在日韓国人の方も含めて、我々はお金を受け取っちゃいけない。  それはどういう意味かというと、その趣旨はどういうことかというと、これは自治省に聞きましたら、我が国の政治や選挙外国の勢力によって影響を受けることを防止する見地からこの規定が置かれている。ですから、お金をやっちゃいけない、政治や選挙が影響を受けるからだと。  選挙権を与えるというのは、もっと影響を受けることになるはずなんです。それで、選挙で皆さん方は自分意見を何らかの形で反映させたいということで応援するということは、当然のことながら運動することもあるでしょう。資金的に応援することもあるでしょう。いろいろな形で応援する、その最終的な方法がこの選挙権のはずなんです。  だったら、この政治資金規正法の法律、外国人は寄附しちゃいけませんよという法律については、では、辛参考人はどのようにお考えになって、これを廃止されようというお気持ちはあるのかどうか、あるいは廃止されようということを今までやられたことがあるのかどうか、それについてお聞きします。この規定は直せということ、それをやられたことがあるのかどうか。
  19. 辛容祥

    辛参考人 それは、日本国会で決めた法律です。日本の国法を私たちが直せだとか直さないとか、そういうことを我々は考えるつもりはありません。  地方自治体に対する問題でも、あくまでも日本の国政に関する問題は、我々は、関与し要求し、そういう運動などはする意思は毛頭ありません。
  20. 平沢勝栄

    平沢委員 今言われたことは、外国人参政権をぜひ認めてくれと、国のこれからやろうとしていることに対する積極的な自治体、国に対する働きかけと全然矛盾していませんか。  では、なぜ外国人参政権だけは、朝鮮総連は、こんなことを言うことは内政干渉だということを言っている、朝鮮籍人たちは。では、なぜ民団の方、辛さんは——民団の方の中にもおかしいと言う方はいっぱいおられるのですよ。前の韓国在日商工会の会長の方なんというのは、とんでもないということも言っておられるのです。いろいろな方が言っておられるのです。なぜそれを言っておられるのか、それをちょっとお聞かせください。
  21. 辛容祥

    辛参考人 それは、あらゆる制度が私は完全なものはないと思うのですよ。ですから、それに対する反対意見もあるというのは、これが民主主義じゃないでしょうか。だから、私は、地方参政権運動に反対するからといって、その人が悪いとかいいとか全然言いません。ただ、多数の人が、大勢の人がこの地方参政権が必要だというので、今その運動を展開しているわけであります。  それから、外国人は金をやってはいけないと。我々は、地方参政権を得たからといって、政治家に金を渡したり、そういうつもりは毛頭ありません。
  22. 平沢勝栄

    平沢委員 時間が来たから、また次回の機会に譲らせていただきたいと思いますけれども、いろいろお聞かせいただいて、疑問はますます募るばかりでございます。  いずれにしましても、この問題は、今問題になっていますのは在日韓国人の方々でございますけれども、戦後処理みたいな形でこの問題が論じられていますけれども、そうじゃなくて、やはりこれから日本には世界じゅうから外国人がいっぱい入ってこられるのです。そうした方々と日本人との共生社会をどうつくっていくか、そういう観点から議論すべきであって、今在日韓国人の方々のポイントだけを対象にした議論が進められているというのは、私は残念だなという感じがしております。  時間が来たので、終わります。
  23. 自見庄三郎

    ○自見委員長 鍵田節哉君
  24. 鍵田節哉

    ○鍵田委員 私は、民主党の鍵田節哉でございます。  本日は、三人の参考人の皆さん、大変お忙しいところをわざわざおいでいただきまして、貴重な御意見を聞かせていただきましたことを感謝申し上げます。  私は、参考人質疑をさせていただきたいと思っておりまして、演説をするつもりはございませんが、この永住外国人参政権問題につきましては、百四十七国会とこの百五十国会、二回それぞれかなりの時間審議をしてまいっておりまして、かなりの部分がもう明らかになってきておるのではなかろうか、もうそろそろ、そろそろというよりも、一日も早く採決をしていただきたいという思いで今ここに立たせていただいておる次第でございます。  私自身が、実は大阪の出身でございますが、生野区という、特に在日の方々がおられた平野川運河の近くに成人するまで住んでおったという関係もございまして、非常にたくさんの友達もいらっしゃいますし、それから、たしか中学校の先生韓国人、その当時は日本人だったと思うんですが、その先生から教育を受けたこともございます。  したがいまして、日常、もう本当に毎日毎日が在日の皆さんと御一緒に生活をしておったということでございまして、お祭り事でありますとか日常の慶弔事なども常に御一緒にやらせていただいておるというふうなこともあって、違和感がないわけでございますけれども、中には、やはり多くの、差別をする、そういう発言をする人もありまして常々心を痛めてきておったわけでございますが、今回こういう法案ができまして、ようやくあともう採決をすればいいというような段階まで煮詰まってきておるということを大変喜んでおるところでございます。  そういう意味で、三人の参考人の方々に、若干、先ほどからもありましたけれども、いろいろ反対論を述べる人たちに対しての御意見がありましたらお聞かせをいただきたい、こういうことで、三点ほどお聞きをしたいというふうに思っております。  まず、憲法問題とかにつきましては、およそクリアをされたと思っておりますので、あえてこの場で議論をする必要はないというふうに思いますけれども、反対派の皆さんが、それぞれの党の中だとか、またマスコミなどを通じて反対の意見を述べておられる中で、特に、地方参政権を与えますと日本の主権が侵されるのではなかろうかとか、また、先ほどもありました、参政権を与えることによりまして有事の際に地方自治体の決定に対して大きな影響が出てきて、それが日本の安全保障上いろいろ問題があるというようなことをおっしゃっておられるわけでございます。それらにつきまして、特に賛成立場できょう御意見を聞かせていただいております辛参考人なり田中参考人の方から、それらについて解明できる御意見がございましたらひとつお聞かせをいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
  25. 田中宏

    田中参考人 一つは、私は、先ほど申し上げたように、地方レベルと国政をきちっと分けて物を考えようという立場ですので、この国レベルの衝突の問題は、地方に全く無関係だとはもちろん考えませんけれども、むしろ地方のレベルでは、外国人日本人もなく、同じ住民として暮らしていくシステムをつくることによって、国同士に不穏な状況が出てきても、その地域社会の中で共存しているということが、それがかえって暴走することの歯どめになる。  ですから、衝突のことばかり考えていくというのも一つの発想なんでしょうけれども、私は、片方は危険もあるけれども、一方では、共存する地域社会をつくっていくことが衝突を避ける、あるいはそれを抑止するような側面も新しくできてくるという、その両面があるので、必ずしも、必ず衝突するし、忠誠心が違うんだからという——私はずっと生まれながら日本国籍を持っていますけれども、それほど何か日本国というのに忠誠心というのは持っていないんじゃないかと思うので、こういうことだと日本国籍を持っているとまずいんじゃないかと思うことはありますけれども、それぞれのいろいろな考え方の人がいるわけで、何か人間を、忠誠心と国家、両方を結びつけて、外国人は必ず日本の敵で、日本人は全部日本のために戦う兵士だ、そういうように分けていく十九世紀考え方をやはり乗り越えて二十一世紀に向かおうというふうに私は思っています。
  26. 辛容祥

    辛参考人 大変重要なお話でございます。  有事の際、おまえたち日本の安全に対して何か危険じゃないか、そういうお話でございますけれども、今日本の人が一億二千六百万だと思うんですが、我々在日同胞は今わずか六十万人ちょっとしかないんですよ。  それは我々が直接行動がとれるならば危険性はあるでしょう。ところが我々は直接行動をとれないんですよ。皆さんにそういうことを話をして、県会議員もあるいは知事も全部日本の方ですよ、その人たちが、わずか〇・〇五%ぐらいしかない人の話を聞いてこの有事の問題の話がされるというのは、私は、ちょっと飛躍し過ぎているんじゃないかなと。  我々は実行力は何もないんですよ。意見を言うことはできても、全然その効力、あるいはその他行動に出ることは、私は不可能に近いと見ているんです。ですから、その点は余り御心配なさらなくてもいいんじゃないか、私はそういうふうに信じます。
  27. 鍵田節哉

    ○鍵田委員 ありがとうございます。  先ほど、私は、生野区で成人するまで住んでおったという経験をお話しさせていただいたんですが、もう一つの経験をお話しいたしますと、阪神・淡路大震災のときに、もう六年近くになるんですね、実は私も大阪からたくさんのボランティアの皆さんを連れて、神戸の元町まで何回も歩いて通いました。そのときに、行く先々で在日の皆さん、さらには台湾、中国の皆さん、この人たち日本人と一緒になって地域の復興のために努力をされておるし、また炊き出しなどをして、もうどこの国の人かなどというのは全く関係なしに、そういう壁も何もなしに、ともに協力をし合って立ち上がっておられたというふうな姿を見て、大変感動をしたわけでございます。  今おっしゃられましたように、本当に共生する社会をつくっていく、そういう努力をすれば、そういう有事の際の心配などというのは全く考えられない。私自身は、非常に国家主権とかそういうものを大事にしたい、大切にしたいという人間でございますけれども、しかし、外国人であるとか日本人であるとかという、国籍でもってそういう分け隔てをするようなことのない社会をつくっていく、このことが日本の安全のためにも大変重要なんではないかなというふうに思っておりますので、大変参考になる御意見を聞かせていただきました。  それで、反対の立場鄭参考人から御意見をちょうだいいたしましたけれども、私は、ほかの一般の反対をされている人の御意見とは全然違う、異質のものだというふうに受けとめさせていただいたんです。といいますのは、やはり、むしろ在日の皆さんのことを考え、そして日本在日の皆さんとの関係をより正常化をしようというお考えのもとに、むしろ、これは愛国心というよりも、在日の皆さんのことを考え、そしてそういう御意見を出されたというふうに聞かせていただきました。大変傾聴に値する御意見であるというふうに受けとめさせていただきました。  ただ、私は国籍を変えるということは、一人一人、個人にとりまして、大変重い課題だというふうに思うんです。私自身が、例えばアメリカならアメリカへ行って、日本国籍を捨ててアメリカ国籍を取るということには非常に勇気が必要であります。その後、自分の人生がどうなるのかというようなことを考えた場合に、やはり自分の祖国というのはなかなか捨てがたい、しかしもう自分はその場所に長年住んでその地域の皆さんと一緒に生活をしていく、そういう面からいたしますと、やはり国籍というものと参政権というものは分けて考えたい。そしてまた国籍も、取りたいと思ったときには、より広く門戸が開かれて、取れるような、そういう社会が必要なのじゃなかろうか。そういう意味から、私は、地方参政権もそして国籍ももっと易しく取れる、そういう要件の緩和というふうなこともあわせて考える、そういうふうにしていくことが大切なのではないかなというふうに思っておるわけでございますが、そういうことについて、鄭参考人のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  28. 鄭大均

    鄭参考人 祖国とは捨てがたいものだという指摘がありましたけれども、在日は、もう大部分は祖国を既に捨てていると私は思います。在日本国との間に持っている関係というのは形ばかりの帰属関係です。ですから、そういう形ばかりの帰属関係というものを早く清算した方がいいというふうに私は申しているつもりです。
  29. 鍵田節哉

    ○鍵田委員 実はちょっと私の言葉も足りませんでして、在日の方は確かにそうだと思うんです、一度日本国籍を持たれた経験もあるわけですから。しかし、永住外国人というのは必ずしもそういう特別居住者だけじゃないわけでありまして、一般の永住権を持った方もたくさんいらっしゃるわけでありまして、これからは恐らくその特別の居住者と逆転してその人たちがふえてくるわけでありますから、そのときのことをこの法律は、もし通過をいたしますと、この法律に基づいてこれから日本の国のあり方というものを考えていくわけでありますから、そういうことを考えた場合に、ちょっと違った観点から先生の御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  30. 鄭大均

    鄭参考人 ですから、今は、外国人という場合に、特別永住者に関してはやはりある種の特別扱いが必要だろうと私は思うんですよ。  ですから、これは、基本的には、外国人労働者と言われるような部分と一緒くたにして話すと議論が混乱するわけで、いわゆる在日と言われる部分というのは、さっき言ったように、本国との関係というのは紙切れだけの韓国人とかいう感じになっているわけですね。日本においても紙切れだけの外国人という形になっているわけですが、そういうラベルと中身の間にあるずれみたいなものを解消するというのが在日にとっても必要だし、それからそういうものをきちんと解消しない限りは日本にとっても実はいろいろな問題が起きるんだということを申します。  ですから、この部分に関しては、帰化の手続を簡便化するというような形ではなくて、私はこの参政権法案というのは一応廃案になればいいと思っているのですけれども、単純に廃案になってつぶしてしまえばいいというよりは、参政権はある面では在日にとっても必要なわけです。ただ、在日も、参政権がないというのは、国籍がないから参政権がないというふうに一般的には考えているわけですから、そういう面では、国籍をとにかく申請すれば取得できるような方法、そういう形でオファーするというのが大事だ。  そういう形でオファーした場合には、在日の中には、多分今の御質問をされた方も比較的在日というのは民団系の人であれば基本的には参政権を欲しているんだというふうにお考えのようですけれども、少なくともちょっと前までは、参政権に対しては、最も一般的な態度というのは無関心だと思うんです。今だったらば、もらえるものはもらおうというふうになってきていると思います。  しかし、在日が今本当に欲しているものがあるとすれば、それは国籍の選択権のようなものだと思うんですね、あるいは申請すれば取得できるような方法であって、そういうことを言う人は確かに少ないのですけれども、ですから、割合在日というのは帰化タブーみたいなものにある程度規定されているところもあると思います。  それから、私の場合は、ほかの在日と違った物言いができる一つ理由は、韓国に長く住んでいたということもあるかもしれませんね。韓国人との関係自分を眺めるというのをほとんど忘れるくらい在日韓国人というのは実は本国を忘れて暮らしているわけです。ですから、韓国籍を持っているということを説明するという必要もありませんし、相手日本人ですと、日本人というのは基本的には国籍の問題に余りセンシティブではありませんので、余り説明する必要もないということだと思うんですが、外に出た場合とか韓国に出た場合、そういう場合にはいろいろな説明をする必要がある。そういうときに、とにかく説明するすべがなくなっているということですね。  そういう問題は、だからもっと在日論ということを、一般的に在日論というのも、どうも日本人との間の差別、被差別とか、支配、被支配とか、そういうものに非常に関心が払われていて、もう一つは、韓国との関係在日を語るということも必要だと思うんです。ですから、私の在日論には本国との関係での議論が入ってきている。それでもって、こういう参政権お話をするときにも、ややニュアンスの違う話になっているとは思うんですが、しかし、これはある面では、在日の中でこれを明言する人は少ないわけですけれども、共有する、共感する人は実は多いというふうに考えています。
  31. 鍵田節哉

    ○鍵田委員 ありがとうございました。時間が参りましたので終わります。
  32. 自見庄三郎

    ○自見委員長 小池百合子君。
  33. 小池百合子

    ○小池委員 小池百合子でございます。  本日は、参考人の皆様方、大変お忙しいところをお出ましいただきまして、本当にありがとうございます。  御質問に入らせていただく前に、政治倫理の確立ということでこの特別委員会を設けているわけでございますが、せんだっての国会におきまして、我が党の、そしてまた今回の法案の提案者でございます議員が水をかけるという言語道断の行動に出ましたことを、各党、各議員の皆様方に大変不愉快な思いをさせたことを心からおわびを申し上げたいと思います。  さて、今回の法案でございますが、各党がほぼ、ほぼといいますか、一言一句変わらぬ文言でもって提案をさせていただいているところでございます。まさに二十一世紀まであとわずかでございますが、そこで、この永住外国人に対する参政権の議題をこうやって討議するというのは、まさに二十一世紀に向かって日本はどうあるべきか、またどうしなければいけないかを問うようなものである。ですから、これはむしろ、在日の皆様方のことを考えると同時に、日本そのものを考えるという大変大きなモメンタムであるというふうに考えているわけでございます。  参政権ということで申し上げれば、婦人参政権を獲得するまでに大変大きなうねりがあり、またそこへたどり着くまでのさまざまな苦労があったわけでございます。今既に婦人参政権の施行から五十数年がたちまして、そしてそれが定着をし、ある意味では、これからの選挙などというのは婦人の票が、女性の票が決めていくようなところも多数あろうかと思っております。     〔委員長退席、西野委員長代理着席〕  私どもは提案者でございますが、やはり国民の声の中では幾つかの問題提起もされているけでございまして、本日、参考人の皆様方におかれましては、そういった問題点をそれぞれ御専門の分野から分析、また御発言をいただいたものと考えております。  そういった不安、問題点の中に、今回は地方参政権だから、それは身近な部分で、身近な市民生活の中において、税金を払っている在日の方々がそれに対して意見を、また参政権という形で、選挙という形で意見を述べるのは、これは当然ではないかというような意見もあるわけでございます。  また、一方で、これから地方分権もある、そして、より市民に密接した地方政治を、選挙という最も民主的な方法によって将来を決めていくということでございますが、一方で、例えば兵庫県の場合、アメリカ軍に限らず、外国の船舶の核の搭載をしていないという証明を出さなければ神戸の港には着岸できないという神戸方式というものが、神戸の市議会によって決議をされて、もう既に四半世紀をたっているわけでございます。  こういったことで、地方参政権地方政治のことは国家の安全保障には余り関係のないという考え方もございますが、多くのところで問題提起がされているその一つの例といたしまして、神戸の市議会がそうやって国家の安全保障にかかわることを決議し、さらにそれが高知などに広がっていくというようなことも考えますと、地方の政治と国政とは実は非常に密接に関係してくるのだという点、この点につきまして、鄭参考人に御意見を伺いたいと思います。
  34. 鄭大均

    鄭参考人 私は、それは同感です。基本的には、世界というのは国家間のせめぎ合いの場でありますので、オリンピックのときだけじゃなくて、国と国との関係というのは競争関係、葛藤関係にある。そういう面では、ちょっと今の質問とは離れますけれども、先ほどから、在日でありながら比較的、忠誠の問題とかそういうことを問われたときに、自分は余り、例えば日本韓国が戦うというようなことを想定して物を語りたくないというような方がおりましたけれども、私は、実際はそういうところまできちんと想定して物を語るというのが当然のことで、在日一世までがそういうことを語るようになったとすると、それはどうも日本人のあしき面にその辺でも同化しているのかなというふうに考えたくらいです。
  35. 小池百合子

    ○小池委員 ありがとうございました。  こういった問題提起もされているわけでございますが、有事というのもいろいろございまして、阪神大震災でもこの神戸方式という決議が、各国、さまざまな国々、これは具体的にはアメリカでございますけれども、その支援の船の着岸ということをある意味ではおっくうがらせたということにつながってきた、こういう例もあるかと存じます。  そしてまた、きょうは民団の辛前団長にもお越しいただきました。ありがとうございます。今、大きなうねりの中で、朝鮮半島がこれまでとはかなり違った方向で動いてきているのは、東アジアの平和、また安定的な平和確保のために大きな一歩を金大中大統領は踏み出されたというふうに、大変歓迎をしているところでございます。  また、日本の国内におかれましては、民団そして総連という形で、これまである種の敵対関係で、まさにそのとおりなんでございますが、いらした皆様方が、例えば私の地元でも、ともに同じイベントを開くというような形でいろいろと融合も行われているということでございますが、まだまだ、今回のこの法案についても、民団と総連の中では意見の食い違いがあるように思うわけでございます。  この法案は、永住外国人ということでございますから、これは南も北も関係ないわけでございまして、そのあたりがまだ一本化されていないということに、提案者としても一抹の不安を覚えるわけでございます。この意見が食い違っていることについてどういう御意見がおありなのか、辛さんにお伺いしたいと思います。
  36. 辛容祥

    辛参考人 確かに、民団と総連とはいろいろの問題で衝突もしています。今度の地方参政権問題も、結局、民団がやっているから総連は自己防衛のために反対しているんじゃないか、そういうふうに私は思っています。しかし、総連も最近は少し態度が変わったようであります。それは、日朝国交が正常化されたら自分たちももらう、そういう態度に最近変わったように受け取られます。  ですから、地方参政権を、先ほど申し上げたように、我々はそういう居住に対する権利を認められていないために非常に寂しい思いをしているわけですから、それをとることに本心から反対するというのはないと思います。ですから、このために民団と総連とが今後衝突が起きるというか、そういうことはないと信じます。
  37. 小池百合子

    ○小池委員 むしろ、一たんこの参政権が確保できれば、最も投票率が高いのは総連の方々になるのではないかというふうにも思うわけでございます。  また、参政権国籍という、切り口は似たようで違うわけでございますが、きょうも、ペルーのフジモリ大統領が実は二重国籍であったということが報道されているわけでございます。まさに国籍とは何ぞやというような大変重要な論議もあるわけでございますが、やはり一つには、日本でお暮らしになって、そして日本アイデンティティーを感じておられる方、その方々が国籍を取りやすくするということも、この法案とはまた別にその選択肢も十分あるわけでございますから、そこの国籍取得をより簡便にするということ、これをまず考えなければならないのではないかというふうにも思うわけでございます。  その点について、最後、まだ伺っておりませんでした田中先生の方から伺わせていただきたいと存じます。
  38. 田中宏

    田中参考人 先ほども私は申し上げたように、日本血統主義をとっているものですから、外国人が永遠に再生産される構造になっているので、そのことから生ずる矛盾をどう解決するかということがまず一般論としてあるわけですね。  その一つ国籍の取得の、現行法では原則帰化という方式によらなければ日本国籍がとれないわけですから、そこの手順をどうするかというので、これは、私もちょっときょう資料を用意しましたけれども、実は、日本の場合、帰化の実態というのが全く不透明なんですね。私のこの汚い資料でも、七ページでわかりますように、二十年間ぐらいは不許可数の公表をされていない。私も何度か民事局の五課に聞きましたけれども、そういうものはとってないと言うんですね。そんなことはあり得ないはずなんです。これをごらんいただいてもわかるように、明らかになっていたときには、先ほども言いましたように三七%が不許可になっているのに、今では一・五%しか不許可になっていない。それはどういうことなのか。  それから、帰化要件も、例えば生計要件として「独立の生計を営むに足りる資産又は技能」と法律に書いてあるのですが、例えば、標準家庭で大体年収どれくらい、これが生計要件として法務省が考えているものだというようなものをきちっと出すべきだと思うのですね。これだけ行政の透明化が求められているわけで、その点で、日本の今の帰化行政の実態というのは、マスコミもほとんど取り上げませんし、多分、僣越ですけれども国会でもほとんど議論していないと思うのですね。日本では国籍について議論を全くしない。  ちょっと話は横へ行きますけれども、こういう機会ですから申し上げますが、例えば、北方領土の返還問題をこれだけ議論しているけれども、あそこに住んでいる住民国籍をどうするのかということはだれも何にも言わないのですね。あそこは無人島ではないわけです。  そういう意味で、日本における国籍の問題というのは、やはりきちっと議論をするということが大事で、届け出による国籍取得については先ほども申し上げましたけれども、先ほど小池先生の方から話題が出て、ちょうどタイミングがよかったなと私は思ったのですが、奥田先生法案の中に、二重国籍を保障するように日韓で協定を結ぶと同時に、日本の国内法をつくれと言っているんですね。これは、もとの国籍を失うことに対するちゅうちょ心がやはりあるだろうと。  私も、フジモリ大統領の話は今初めて聞いたんですが、フジモリさんは、現地の国籍を持つと同時に親から伝わった日本国籍も維持していたということで、二重国籍というのは実はそんなに珍しくなくなっているんですね。そうなってくると、忠誠心を軸にした参政権議論というのは根本から変わってくることになるわけで、そういう点で、国籍をきちっと議論し、帰化行政の実態をもっと透明度を高めるということはぜひ進める必要があると私は思います。
  39. 小池百合子

    ○小池委員 ありがとうございました。大変参考になりました。と同時に、この永住外国人のみならず、二十一世紀の日本はどうあるべきか、そういった視点に立って、今後、この問題そしてこの法案の結論を出してまいりたいと考えております。  ありがとうございました。
  40. 西野あきら

    ○西野委員長代理 塩田晋君。
  41. 塩田晋

    ○塩田委員 自由党の塩田晋でございます。  まず、辛参考人にお伺いをしたいと思います。  辛参考人は六十五年間在日しておられる、子供さんもお孫さんもおられるということで、その体験の中からいろいろとお話しいただき、また、今日のこういう参政権付与運動をしておられるその動機、いきさつについてもお話がございました。感銘を深く受けたところでございます。  何といいましても、世界、人類、人間が仲よくこの地球上で暮らしていくということ、これはもうだれしも望んでおることであり、世界のすべての人間がそれを希望していることだと思います。今お話ございましたように、自治体の町内においてもいろいろな活動をし、また、PTAその他の会長をやったり自治会の会長もやっている人もある、使い走りもしている、こういうふうにして、その住民として自治体の中で溶け込んで生活をしておられるということについても、私はそうだと思います。  そこで、今、辛参考人が、日常生活で目に見えない障害といいますか、何かこだわりといいますか、問題があるということを言われました。そして、本当に寂しい思いをしていることもある、こうおっしゃいました。そこで、そのような思いをなくするために、地域住民として自治体の参政権付与してもらいたいということでございますが、そういった寂しい思いが自治体の参政権付与だけで解決できるものでございましょうか、お伺いいたします。     〔西野委員長代理退席、委員長着席〕
  42. 辛容祥

    辛参考人 私は、地域住民として日々隣近所で朝晩会っていろいろつき合っているわけでありますから、地方参政権、我々が自分国籍を持っていて、そして日本の国政までやる、そういう大それた考えじゃなくて、その地域に住むから、その地域に住む最低限の我々の便宜といいますか、我々の要求を満たしてほしいということであります。今言った、国会議員選挙などは余りありませんけれども、地方自治体選挙のときは、我々が選挙権がないと思ったら来ないけれども、わからない人は一緒に行こうよなんてよく言われるんですよ。そのときに、私はないというのがなかなか言いづらいんですよね。本当にこれはつらい、何度も弁解しなきゃならないんで。  そういうことでありますから、私は、地方参政権の投票権だけでもいただければその地方に住んでいる住民権の資格は与えられている、そういうふうに認識しております。
  43. 塩田晋

    ○塩田委員 そのお気持ちはよくわかりますが、それでは、隣近所に住んでいる日本人と同じようなということは、国政選挙は別としましても、自治体の関係選挙、被選挙権ということがやはり当然出て来るんじゃないでしょうか。いかがですか。
  44. 辛容祥

    辛参考人 最初、私たち地方参政権運動をするときは、はっきり申し上げて、被選挙権運動もしました。しかし、やっているうちに、日本の国の世論、それから地方自治体考え方が、投票権だけで我慢してくれというのが今の世論の結果であります。  でありますから、仮に被選挙権をとっても、自然体で日本国民の世論が、おまえたちに投票権をやってみるとなかなか役に立つところがあるから、じゃ、この次、被選挙権でもやろう、こういう世論化された場合には、私たちはそれは被選挙権まであった方がいいと思います。ですけれども、被選挙権は、はっきり申し上げて、自分が出て運動するわけです。投票は表に余り出ないわけです。ですから、最低投票権だけは欲しい、そういうことであります。
  45. 塩田晋

    ○塩田委員 今、お話ございましたが、被選挙権までは今のところ考えていないけれども、世論あるいは関係人たちの要望が大きくなればそこまでもということが含まれていると思いますが、その延長線上に、やはり、同じく国政にも参政権あるいは被選挙権を得たいというような世論なり要望が起こってくる可能性はあるんじゃないでしょうか。
  46. 辛容祥

    辛参考人 先生お話は、私たちにとっては非常にありがたいお話なんですが、結局、我々は身分不相応な要求を、あるいは権利を主張する考えは毛頭ありません。自分に相応した、そういう意味で、日本憲法でも住民地方自治体議員及びその長を選出できるとなっているから、その憲法の範囲内ということで、あくまで自治体に対するあれを要求しているんであります。  しかし、これはあると思います。そういう、投票権だけをもらって、もうだんだん経済力もできて相当地位がついた場合には、じゃ、今度はおれはひとつ国政に出てみようという人がいたら、その人はきっと私は帰化すると思います。日本国籍を取ると思います。ですから、現状の我々は、そこまでは、それはもう全然考えておりません。
  47. 塩田晋

    ○塩田委員 この議論は、ちょっと進めるのには時間がございませんので、当然に国政へということも起こり得る、また、帰化ということであれば、自治体の選挙の場合も帰化すればということで解決できるはずでございますから、これはこの辺でおきます。  次にお伺いいたしたいと思いますのは、韓国には、韓国人国籍にある者は全部兵役の義務がございますね。あるいは志願兵も制度があると思いますが、在日永住外国人としての扱いを受けている方々については兵役の義務が除外されているというふうに聞いておりますが、これは国内法でそう決めておられるわけですね。  それはまた、状況の変化によっては、一朝事あればそういう法律を改正して兵役の義務が出てきて、在日の例えば地方参政権を持っている人たちにもそれが及ぶということはあり得るわけですね。現在のところはありませんけれども、あり得るわけですね。それについていかがお考えですか。
  48. 辛容祥

    辛参考人 今、韓国の兵役、国内法を変えて、法律を変えて、我々在日同胞をもし徴兵に引っ張るとすれば、それは皆三世以降ですね。今、我々一世はどうかわかりませんけれども、三世以降は全然韓国語はわかりません、ほとんど、もう九九%わからないのですよ、その人たちを兵隊に引っ張っていっても、韓国ではこれは大変困るのです。  それからもう一つは、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、今の大統領でも、それから先ほど金鍾泌国務総理の話も出ましたけれども、外国に住んでいる人はその地域のためにやれというのが今、本国政府の方針であります。  ですから、今後、今の法律を変えて在日同胞を徴兵に引っ張るということは、今のところ私は夢にも思っていません。そういうのはあり得ないことだと思います。現実性がないと思います。
  49. 塩田晋

    ○塩田委員 それでは次に、外交問題につきましては各国の相互主義という原則がありますが、日本地方参政権付与された際には、韓国におきましても、同じような立場にある日本人あるいは外国人に対しての参政権付与ということの法的な整備あるいは新法をつくるというようなことの動きはございますか。お伺いいたします。
  50. 辛容祥

    辛参考人 今、金大統領が在日同胞の参政権に対しては非常に強い関心を持っていられるし、それから、我々在日同胞の意思も非常に強いものがありますものですから、韓国でも相互主義というのが、最初、今までは日本韓国とは、歴史的背景その他いろいろから考えた場合に、相互主義はあり得ないというふうに考えていたのですが、韓国では、いや、もう韓国でも地方参政権を与えるべきじゃないか、韓国民主化のためにもそうすべきじゃないかということで、ちょうど韓国では地方選挙が二〇〇二年から新しく始まるのです、前の任期がちょうど二〇〇二年ですから、では任期が来た二〇〇二年に与えようというので、そういうふうに政府では準備していると伺っています。
  51. 塩田晋

    ○塩田委員 ありがとうございました。  最後になってしまいましたが、鄭参考人にお伺いいたします。  外国人でありながら外国人意識が少ないということを述べられたわけでございますが、韓国籍のままの方が何か都合がいいというか、利益がある。きずなというか帰属意識は少なくなっているとしても帰化できない、帰化タブーというお話もございましたけれども、これらの点につきまして、外国人として日本に永住しながら外国人としての意識はない、帰属意識も薄い、その中で、やはり帰化しないで、永住外国人として、今の扱い、そして参政権を得ていく、そういったことの何か参政権以外の利益、個人にとって非常にその点がいいという何かがあるのでしょうか。帰化がなかなか進まないという理由は、いかがお考えですか。
  52. 鄭大均

    鄭参考人 いいというか、日本社会というのは、やはり七〇年代ぐらいを転機にして、同化主義的な社会から、多文化主義的な社会というか、共生主義的な社会に転換して、そういう過程で、日本人の中には、特にインテリの中には、在日存在在日一世に対する関心というか、そういうものを尊重しなくてはだめだというような傾向が出てきていると思うのですよね。  ただ、実際、それが日本の多文化的な社会をつくることの意味に多分つながっていくのだと思いますけれども、私が見るところでは、それはちょっと誤解で、在日というのは、日本人と違う記憶を持っているとか体験を持っているとか、少なくとも親とか祖父母の代になると違った体験を持っているとは言えると思うのですけれども、ただ、文化的に言うと、日本で生まれたということは基本的には日本語人、日本文化人として生まれてくるわけで、ですから、在日外国人として存在し続けることが日本社会の多文化化に貢献するとは必ずしも思えないわけです。  にもかかわらず、在日に対しては、いつになく、今までよりは外国人のままでいることに対する精神的な支持みたいなものが出てきているというのも事実で、それは、在日にとっての意味ということになると、在日の中でも、確かに知識人の中にはそういうことの意味を語る人がいるのですけれども、それはしかし犠牲者としての韓国人というか、被差別者としての韓国人としての意味で、それは余り一般化していく意味ではないと思うのですよね。  一般の人というのは、そういうインテリが言っていることとはかなり違う理由で結局は韓国籍を維持しているわけですが、その維持している理由というのは、最も簡単に言えばマンネリズムですよ。我々は生まれたときから韓国人として生まれてきているのであって、韓国人であるということは、ある面では自明のことなのです。しかも、韓国人であるということの生き心地というのは、前に比べるとだんだんよくなっているというか、いろいろな支障がなくなっているという面もありますので、そういう面でも帰化しないでいる。あるいは、帰化したいのだけれども、帰化する手続が面倒くさいとか、帰化することによって親不幸をしてしまうとか、あるいは組織とのあつれきが起こるだろうとか、いろいろなそういう支障があって帰化しないということだと思うのです。  ですから、繰り返しになりますけれども、そういう微妙な立場にいますので、微妙な立場というのが、在日の中でも、実は一般永住韓国籍の人の方が特別永住者よりも帰化にちゅうちょしないという傾向もあるのです。文化的な異質性を持っているニューカマーの韓国人の方が帰化には積極的で、二世、三世になっている、日本人と文化的に変わらないオールドタイマーの在日の方がむしろ帰化に対してちゅうちょするというような問題もありまして、非常に複雑になっていますし、時間がたつとますます複雑になります。  ですから、私は、この在日国籍の問題については、なるべく早い時期に思い切ったオファーをするというか、さっき言ったような届け出制だとか申請制に基づく帰化取得のようなものができれば、今反対している人とか同化主義だという形で批判している人も、結局はそれには乗るだろうというふうに思います。かつて永住資格の申請があったときに、同じような批判があって、韓国籍の人が最初に、その後朝鮮籍の人も、結局はみんな永住資格を取ってしまっているわけですが、それと同じようなことが起こるだろう。  永住資格というのは、最初にオファーされたのが六六年ですよね。それからもう三十数年たっていますので、それからもう一世代以上またたってしまいましたね。ですから、今は、そういう面では国籍取得という時期になってきているのではないでしょうか。
  53. 塩田晋

    ○塩田委員 ありがとうございました。終わります。
  54. 自見庄三郎

    ○自見委員長 木島日出夫君。
  55. 木島日出夫

    ○木島委員 日本共産党の木島日出夫でございます。  三人の参考人の皆さんには、大変貴重な御意見、ありがとうございました。  最初に、辛参考人にお伺いをいたします。  私は、今手元に、一昨年、九八年九月三十日付の民団新聞を持ってきておるのです。ちょうど一昨年の九月二十二日に、辛参考人が民団中央本部の団長として首相官邸に野中広務官房長官を訪ねて、永住韓国人地方参政権確立への法制化を求めた陳情書を持っていかれたという記事であります。このリード記事の中に、その要請に対して野中官房長官も「「よく理解している。実現へ努力していきたい」と前向きな姿勢を示した。」こうあります。しかし、それから二年たつ今日に至るも、残念ながら、政府も、自民党もこの地方参政権付与の問題に党としての立場を確立することができない。私は大変遺憾なことだと思っておりますが、改めて、当日の政府、野中官房長官の回答はどうであったのか、そして、二年以上たっていまだに自民党が地方参政権付与について党としての態度を確立できないでいることに対して、どんな御感想をお持ちか、お聞きをしたいと思います。
  56. 辛容祥

    辛参考人 私たちとしては、この地方参政権の法律は国会議員全員が賛成して法制化してほしいという気持ちがあるので、今自民党の中で賛成、反対がいるということで私がどうこうというのは、今ちょっと言いづらいのですが、御了解願います。
  57. 木島日出夫

    ○木島委員 それでは、田中参考人にお伺いをいたします。  参考人は先ほど、今回の二つの議員立法に対して、原則的に賛成、ただし被選挙権付与の問題と居住五年以上の外国人の問題について、意見を保留されました。  実は、私ども日本共産党は、永住外国人地方参政権に対して、選挙権のみならず被選挙権付与すべきだという立場から、一昨年、九八年十二月八日に当衆議院へその旨の法案提出しております。今、残念ながら衆議院では法案提出権がなくなってしまいましたので、本年七月二十八日には参議院に、選挙権だけでなくて被選挙権付与すべきとの法案提出し、現にその法案は参議院に継続中であります。  それは前提でありますが、私はここに、田中参考人の、五月書房「外国人地方参政権Q&A」、この本を持ってきておるのですが、参考人は明確に、選挙権だけではなくて被選挙権付与すべきだということをお書きになっております。そこで、「ただ、地方自治体の首長についてはいわゆる「国の機関委任事務」を行うことがあり、それは国家の統治機構の一部をなしているため、外国人がその職に就くのは好ましくない、という考え方がありうるかと思います。機関委任事務については従来から、「見直し」が主張されており、“地方分権”推進の立場から「全廃」説も出ています。一九九五年五月「地方分権推進法」が制定され、いろいろな検討が始まっています。」こう論述をずっとして、したがって、首長に関する被選挙権付与の問題だけは、「こうした地方分権推進の推移を見守る必要があるとして、当初は除くことが考えられるかもしれません。しかし、それ以外については、すべて開放すべきでしょう。」こういうお立場が述べられております。この出版物は九六年三月八日であります。  今日、地方分権推進法はかなり具体的なものとして目の前にあるわけでありますが、今日のあの地方分権推進に関するいろいろな法律、制度を前提にしますと、地方自治体の首長に関する地方参政権付与の問題については、先生の御意見はいかがなものでしょうか。     〔委員長退席、細田委員長代理着席〕
  58. 田中宏

    田中参考人 基本的にはその本に書いたことなんですけれども、実は、その後の地方分権推進というのが、ことしの四月からでしたか、施行されて、具体的にどういう実務になってきているのかというのは、私はちょっとまだ不勉強で、十分勉強していないものですから、そこで書いた仮説のところで、新法が施行されて、現実にそれぞれの関係がどうなってきたのかというのは、まだ私もよくわかっていないのですね。  この間、地方自治の研究集会があったときに、首長の、例の三重の北川さんが来られて話をされたのを私は聞いていたのですけれども、今後は国と地方とは、今までのような垂直の関係ではなくて並列の関係になるのだというようなことをお話をされていたので、その辺の権限分担がどうなっていくのかというのをもうちょっと細かく見届けてから、そのことはきちっとはっきりさせなければいけないというのが今の現状で、私もちょっとそのことはまだ不勉強で、よくわかっていないのですね。とりあえずきょうのところはその点で御勘弁いただきたいと思います。
  59. 木島日出夫

    ○木島委員 それでは、引き続き田中参考人にお伺いしたいのですが、自民党がいまだに党の立場を確立できない、そして党内には大変な反対する議論があるということで、私、いろいろ見ていますと、反対する主な論拠は三つほどあるのじゃないか。  一つは、参政権を取得したいなら国籍を取得すべきだという論であります。その裏返しとして、外国、母国に対する帰属意識を持つ者、アイデンティティーというのでしょうか、こういう者は日本における参政権を行使すべきでないという論であります。先ほども述べられましたが、これに対してどういうお考えかということをお聞きしたい。  そして、二つ目の反対論は、先ほども同僚委員からありましたが、地方自治体参政権を与えてしまうと、地方自治体の今の権限、政治の中にも国政にかかわるものがあるじゃないかという論ですね。私が先ほど先生のこの本をお示ししたのもそれにかかわる議論だと思うのですが、これに対する態度をお聞かせ願いたい。  そして三つ目には、永住外国人への参政権付与は相互主義に基づいて行うべきだという論もあるのですが、これに対しては先生は明確に反論されておりますので、主に最初の二点について、先生のお立場をお述べいただきたい。
  60. 田中宏

    田中参考人 国籍を取るべきだという議論の背景には、私の理解では、先ほども何度か使った言葉ですが、どうも忠誠という言葉が国籍とセットになって考えられているというのが、やはり一番大きな問題だろうと思うのですね。  ただ、そういう議論をされる人にむしろ私が持つ素朴な疑問は、それじゃ、帰化外国人日本国籍を取ったら、その瞬間からその外国人にはめらめらと日本国に対する忠誠心が生まれるというようにその方々は考えているのだろうか。しかるべき年齢に達した一人の人間が、国籍は変わるけれども、そんなに人間のどこが変わるのだろうと、むしろ私は不思議に思うのですね。  ですから、そういうことだと、日本国籍を取って十年ぐらいたったら忠誠心が生まれるかどうか、帰化審査のときに忠誠心を何かはかる仕組みがあるのだろうかとか、いろいろなことをあえて言いたくなるのです。国籍忠誠心で国家と結びつけて、外国人は敵対分子で、その人が日本国籍を取ったら途端にその人たちが期待するような忠誠心が生まれるというように本当に信じていらっしゃるのだろうか。非常にやはり古典的な国籍観というか、恐らくそういう人たちには、フジモリ大統領が二つの国籍を持っているなんというのは理解できないと思いますね。そういう時代にやはり今なっているわけです。そこがやはり一つの大きなネックだろうと私は思いますね。  国籍忠誠心で国家に人間を結びつけておいて、必ず外国人というのは国にとって害になる人間だと。私は、昔留学生の仕事をやっていたのですが、ある留学生が、田中さん、日本外国人って外の国の人と書くけれども、実は内心では害になる人というように思っておるのかと言われたことがありますけれども、そういうところを非常に日本人の意識とか社会のシステムは持っていると思うのですね。大分よくなってきましたけれども、そういうものを何となく感じます。  それから、二つ目の御意見は、先ほど申し上げましたけれども、少し先ほど申し上げなかったことを申し上げるとすれば、例えば地方自治体に関しては、首長は私たちが直接選べるのですね。ところが、総理大臣は選べないのですね。これは、国会議員の方が総理大臣を選べるので。ところが地方自治は、日本のシステムでは、戦前は官選知事でしたけれども、戦後は住民が知事を選び、そして県会議員を選ぶ。二重代表制にちゃんとなっているわけで、その範囲内で地方自治の制度が保障されている。  前と繰り返しになりますが、その制度の範囲内に、外国人住民として日本人と同じように参加するということで、それが、国と関係はありますけれども、限度があるわけですね。簡単に飛び越えることはできないわけで、先ほどは何か神戸方式の話が出ていましたけれども、それとても、日本の現在の制度上許されるものであれば、それはやむを得ないのですね。どうしてもそういうことが認められないのなら、これも先ほど言いましたけれども、明治憲法のように知事は国が指名する、こうやっておけば、もうこれは問題ありませんね。  やはり私は、今の憲法は明治憲法と違うというように思っていますので、改憲論も結構にぎやかなようですから、地方自治ももう昔のように、知事は官選にしろというお考えであれば、それはしかし、憲法を変えてからやるしかないと私は思いますね。
  61. 木島日出夫

    ○木島委員 ありがとうございました。  私はここに、平成十一年、昨年八月二十二日の読売新聞の「論陣」という欄、田中参考人がお書きになっているところを持ってきているのですが、その中で、今の論議にも関係するのですが、「「排除の論理」ではなく、「いかに共生するか」を考え、未来志向的に取り組む必要がある。」と、非常に大事な指摘だと共感をしております。  先ほどの田中参考人お話の中にもそういう言葉がありましたが、外国人排外主義になってはいかぬ、永住外国人地方参政権付与の問題を共生の社会にいかにマッチさせて考えるかということがやはり大事であろうと思うわけです。  最後に、鄭参考人に一言お伺いをします。  参考人の書いた本の中に、外国人であるという意識とその地域住民である意識、これは両立可能なものじゃないかと私は考えるんです。しかし、参考人お話をお聞きしていますと、外国人であるという意識があるのなら、日本における永住外国人は投票権、参政権を要求すべきでない、参政権を要求するのなら国籍を取得すべきだというお考えのようなのですが、外国人であるという意識とその地域住民であるという意識は両立できるのではないか。ですから、朝鮮、韓国に対する母国への帰属意識をしっかり持つということと、しかし日本のある一定の地域に住んでいるわけですから、その地域住民であるという意識を両立させて、その地域参政権は堂々と行使するということは両立できるのではないかなと私は思うのですが、こういう考えに対して参考人はどんな御意見でしょうか。
  62. 鄭大均

    鄭参考人 私は、外国人意識を持ちながら町民意識だとか市民意識だとか村民意識を持つということはもちろん可能だと思うのです。  ただし、問題は、在日韓国人・朝鮮人と言われる部分は、外国人意識が希薄だということなんです。だから、そういう場合にどうしたらいいかということを言っているわけで、在日の場合は、さっきも言ったように、ある面では外国人意識が低いために帰化手続にもなじまないという感覚がある。しかも、帰化手続というのは非常に異文化性を前提にしているというか、文化的に異質な人間を前提にして帰化手続というものは行われますので、そういうこともありまして、帰化手続をやる過程でかちんときたりする在日もいたりするわけですね。  ですから、帰化手続というのは、例えば要件の中に「五年以上日本に住所を有すること」なんというような項目がありますけれども、あれは、在日のような、在日歴がもう七十年とか八十年とか、そういう人には余り的確でない項目だと思うのですね。それは、本物の外国人というか、文化的な異質性を持ったような人間、小錦だとかラモスだとか、そういう人が日本にいて帰化手続をする場合に、例えば、途中で日本から一年ぐらい離れてしまった場合は日本語を忘れてしまうという可能性もあるわけですから、そういう場合には、改めて五年間日本にいて、ある程度日本の文化になじんでもらって、それで帰化手続をする、そういう形でいいわけですけれども、在日にもそういうものを適用してしまう。  したがって、在日の中には、同化主義だという形でそれに対して批判するとか、あるいは、我々が要求される以上のものを日本帰化手続は要求しているという形で、例えば忠誠に対して言及するというような人もいるわけですけれども、先ほどの田中先生の忠誠と帰化手続をセットにするというのは、実際の帰化手続にはその忠誠を問うというようなプロセスはないように私は思います。  ですから、問題は、帰化手続というのが、在日のような日本文化人を対象にしたものとしては実際にはおかしなものになっているということです。     〔細田委員長代理退席、委員長着席〕
  63. 木島日出夫

    ○木島委員 時間ですから終わります。ありがとうございました。
  64. 自見庄三郎

    ○自見委員長 北川れん子君。
  65. 北川れん子

    ○北川委員 こんにちは。社民党・市民連合の北川れん子といいます。  きょうは、三名の参考人の皆さんに来ていただきまして、本当にありがとうございました。  私は、尼崎の市議会議員を一期四年務めたことがあるのですが、そのときに、議員バッジをテーマに議論したことがありました。議員バッジの上にあぐらをかくなということを言って市議会の中に行った人間だったので、つけるということに抵抗があって、そのいろいろな面を討論する中で、私はある保守系の議員の皆さんから、議員バッジをつけないのは非国民、非国民議員をやめろと言われた経験があるものですので、その面からしても、きょうの参政権問題というのはすべからく日本社会の問題であるというふうに思って、以下の質問をさせていただきたいと思います。  私は、きょう三人の参考人の御意見をお伺いしていて、鄭参考人の御意見が一番刺激的であったわけです。鄭参考人参政権と言っていらっしゃるのですが、今議論しているのは選挙権だけですね。参政権というのは、もっと具体的に言うと幅が広いわけなんです。先ほどちょっと被選挙権まで行きましたが、あと言えば、住民直接請求権とか地方公務員の任用とか、選挙・被選挙権を要件とする公職につけるかどうかとか、そこまで広げた意味での参政権鄭参考人参政権より国籍取得をということを書いていらっしゃって、私は、この国籍取得のことに関して、アメリカのように、二世、三世であればもう自然的に国籍出生地主義でとられていくという国に日本がなるかどうかということを言われているのだろうと思うのです。  今言っているのは選挙権のみの議論ですので、皆さん参政権というお言葉を使っていただくのですが、今回は少なくとも選挙権のみなので、こちらの方に理解を示す日本人は一定程度いると思うのですが、この国籍取得の問題に関しての抵抗感の方がどちらかといえば強いと思うのですが、その点、鄭参考人はいかが思われていらっしゃいますでしょうか。
  66. 鄭大均

    鄭参考人 一般的に言うと、それは確かにそういう印象も受けますけれども、でも、この日本社会というのはちょっと変だというか、例えば、進歩派と保守派というような言い方をしますと、進歩派の、共生論を云々するような人というのが帰化手続だとか日本国籍取得に対してはむしろシニカルというか冷笑的なところがあって、むしろ保守派の人間の方がそういうものに対してモラルサポートを与える、そういうところもあると思うのですね。  ですから、私の考えでは、日本の場合は今、参政権よりも国籍取得あるいは国籍取得の簡便化というようなことをおっしゃっているのは、政治的な立場でいうと比較的保守派の人から出てきているわけでしょう。そうしますと、その部分を超えれば、進歩派の人にはむしろそれを受容するという準備性は既にある面ではあるわけですから問題がないというふうにも考えられると思うのですが、非常に皮肉というか、日本で、進歩派で、共生主義を云々している人、人権主義を云々している人のその言い方に我々が倣いますと、日本国民というのは、永遠の日本人というか世襲の日本人でもって構成されるということになると思うのですね。しかし、本当に日本社会を多文化的な社会にする最も確実な方法というのは、国民を多様化、多元化することなわけでしょう。そういう面では、今のような形で永遠の外国人をつくり出すというのは非常に変だと思うのですね。そういうところを日本の進歩派の学者だとか政治家の人もきちんと考えていただければいいなと常々思っております。
  67. 北川れん子

    ○北川委員 鄭参考人は、日本社会の中で、アメリカのように、二世、三世になれば国籍は、二重国籍になるかどうかは別にしても、取るということに関して抵抗感はないだろう、どちらかといえば進歩的というかラジカルと言われる層がそのことを阻害しているんじゃないかという御意見のように聞いたのです。私はその中に、先ほど前段で自分の経験を出したのは、日本国民になるということがとても難しいというか、要求をされる日本国民に私自身もなることが難しいなということを思いながらの経験をしたものですから、ちょっとお伺いしたんです。  そうしましたら、次に、田中参考人辛参考人にお伺いしたいんです。  今、日本社会の中には反対意見というのがあるわけですが、代表的な意見が、百地章さんという方の在日外国人参政権付与は違憲という論、そして小林節さんの国籍住民の前提というもの、そして櫻井よし子さんの永住外国人地方参政権は亡国への第一歩というもの。この三者の御意見というのが取り上げられる回数が多いということで表立っていると思うんですが、この三件の意見に対しての御見解というか、その辺ございましたら、お聞かせいただきたいんですが、いかがでしょうか。
  68. 田中宏

    田中参考人 違憲の問題はレジュメにもちょっと書きましたけれども、憲法十五条の「国民固有権利」というのをどうも外国人に与えられない権利というふうに読むらしいんですね、そういう立場の人は。  私のレジュメにも書きましたけれども、学界の通説でも、あるいは法制局の例の有名な高辻さんの見解でも、これは国民に与えられた尊厳を持つ権利だというような意味で、国民から奪えない権利だという意味で使われているので、そのことから、外国人には与えられない権利、あるいは外国人を除外するというように国民固有という言葉を読むというのは、かなり特殊な読み方というのか、独特な読み方というように私は思いますね。  それから、違憲の問題については、これも先ほど言いましたけれども、最高裁の判決で憲法上禁止されていないという判断が出ているんですから、あとはどうするかという問題。  ただ、小林節さんのは私も読売で一緒だったので読みましたけれども、彼の場合は、憲法上禁止されていないという点は承認しているんですね。だけれども政治的にやらない方がいいというお立場なので、そこは百地さんと基本的に憲法認識がずれているというように思いますね。  それから、櫻井さんのあの週刊新潮に載った非常に刺激的なタイトルというのは、私も非常に記憶に残っておりますけれども、ただ、本にされたときは、多少ちゅうちょされたのか、ちょっと題は変えていらっしゃいましたね。  私は、亡国の第一歩と、日本という国はそんなに簡単につぶれるのかなと実は率直に思って、六十万の外国人地方参政権を行使したら日本がつぶれる方向へ向かっていく第一歩だというので、日本はそんなに情けない国と思っているのかなというのが率直な感想です。  これも先ほど来の議論と非常に重なるんですけれども、外国人というのはとにかく危険分子だと。これは指紋登録を義務づける思想と全く同じですね。何をしでかすかわからないのでいつも見張らなきゃいけない。だから、留学生が、田中さん、外国人というのは国を害する人というふうに日本人は思っている、皆さんは非常にシャイだから表現は外の国の人と書くけれどもと言うのと同じ思想だと私は思うんですね。指紋も、二十年かかって、ことしの四月一日ですよ、外国人が指紋を登録することからやっと解放されたのは。  だから、その前提の思想は、常に外国人というのは日本にとって何をしでかすかわからぬ連中だ、だから参政権を持たせたら国が滅ぶ方向に引っ張っていくかもしれないという、非常に情緒的なもので、やはり法律なり権利の問題を議論するときに、もっと冷静に議論する必要があるんじゃないかな。お気づきになったのかどうか、単行本になるときにはさすがにそのタイトルは何か別のタイトルに変えていらっしゃったので、やはり多少言い過ぎたと思われたのかなというのが私の感想です。
  69. 辛容祥

    辛参考人 お三人の考え方に対しては、今、田中先生が申し上げた内容に私は全く同感です。  それから、先ほども僕はちょっと説明申し上げたけれども、結局、私たちが今その地域において地域住民と仲よくすることがその地域の発展のためにプラスになるというのが、私たち地方参政権運動の根本的な考え方です。それだけは申し上げます。
  70. 北川れん子

    ○北川委員 ありがとうございます。  そうしましたら、鄭参考人になんですけれども、今、永住外国人というふうになっていまして、先ほど田中参考人の方からも、定住何年でとかという形での議論も含めて考えたらどうだという御意見を出してくださっているんですが、その面に関しては、鄭参考人はどういうふうにお考えになっていらっしゃるんでしょうか。
  71. 鄭大均

    鄭参考人 だから私は、この永住外国人参政権の問題というのは、やはり第一世代が日本国民であった特別永住者部分から出てきた問題、それも、民団のサイドから出てきた問題、民団という組織から出てきた問題、テーマであって、イシューであって、民団というのは、民団と民団のメンバーの間に対話的な関係というか、余りそれはないと思うんですけれども、そういう意味では、やはりこの永住外国人の問題は、ある人は九割方在日の問題だという表現をしていましたが、確かにそうであって、この九割方の問題というのをちょっと果敢に考えるという時期に今来ていると思うんですね。  その場合に、参政権という形でこれを処理するというのは、仮に参政権が通った場合でも、最初にお話ししましたように、これは余り在日のためにもならないし、それから日本の国の名誉にもならないということが重要なことではないでしょうか。  ですから、国籍の問題をきちんと考える。例えば少子化だとか高齢化という脈絡でもって、移民労働者を日本は受容しなくちゃだめだなんて、今そういう議論が出てくるくらいな時期なわけですから、その前に、これだけ文化的に同化度の高い集団がいて、いまだに外国人のままでいるというこの不思議をまず解消しないと、日本というのはやはり非常にミステリアスな国だというイメージというのをぬぐうことはできないと思うんですね。
  72. 北川れん子

    ○北川委員 私は、鄭参考人が、何か一番日本社会に対しては怒りの気持ちを持っていらっしゃるのが強いんじゃないかなと思ってお伺いするんですが、その怒りを持っていらっしゃる方の御意見と、今、日本国籍を持って議員になった皆さんの中で、この地方選挙権の問題に関しては、憲法違反だという御意見から、時期尚早から、これは地方を土台にして国政までいく問題だからだめだという御意見から、さまざまあるということを、先ほどこちら側の議員の方からも御意見が出たと思うんですが、鄭参考人御自身は、この間の集会のときには、私の聞き違いかどうかわからないんですが、帰化もされていないしという御意見を言っていらっしゃいましたね。  そこで、お伺いしたいんですが、先ほど田中参考人から出た帰化の数字に、受理件数とか相談件数が申請件数以前にあるのではないかということでちょっと聞いたんですが、その数字は出ないという行政の方からの答弁があったんですけれども、鄭参考人は、今の御意見を言うけれども、国籍の方に関しては自分アイデンティティーを持っているということで帰化されないということなんでしょうか。
  73. 鄭大均

    鄭参考人 私の言動に矛盾があるというふうに指摘する人もいるんですけれども、私は自分自身が韓国人であるということがある意味では非常に不思議なことというか、私の母親は日本人ですし、生まれる時代が生まれる時代であれば、八五年以後に生まれていれば、私の場合は、母親の日本国籍を取って日本人として多分平穏無事に暮らしたと思うんですが、とにかく、生まれる時期とかそういうことで人間の運命というのはいろいろ変わるわけですね。  私の場合は、ただそういうものだけではなくて、今帰化しないでいますのは、私は別に、私の精神的な居どころが、私の精神的な世界のキャピタルが東京じゃなくてピョンヤンにあるとかソウルにあるから韓国籍を維持しているということでは全くないんです。私は、自分はもう完全に東京を中心にして物を考えている人間で、まあ、一応日韓には関心を持っていますから、普通の日本人よりは韓国のニュースには関心を持つと思いますが、それも余り帰化しない理由とは関係ありません。  私は、韓国に長くいて、韓国人と結婚して、私の家内は本物の韓国人というか、つまり本国韓国人なわけです。私の息子も、韓国住民登録というか、日本風に言えば住民票のある韓国人なわけですね。ですから、待っていれば徴役の通知が来るような韓国人であるわけです。だから、私は二世なんですけれども、私の息子は一世なんですよね。  とにかく、そんなようなことがありまして、実は今、私は多摩のニュータウンで息子と暮らしているんですけれども、私の家内が単身赴任でソウルにいて、ソウルで教鞭をとっているわけです。ですから、息子に関しては、息子を日本に連れてくるときに、将来日本帰化しようという形で約束しまして、息子は今や見事な日本の息子になりましたけれども、ただ、やはり家族単位にして、家族でばらばらの国籍にしたくないというようなことがあります。私の家内は、ひょっとしたらばずっと定年退職まで韓国にいるという可能性もあるんですね。そうしますと、やはり私の場合、簡単に今帰化することができない。そういう事情がある人もいるわけです。  そんなこともありまして帰化しませんが、ただ、私は今、申請すれば帰化できるというような議論をしておる人間ですから、それが実際に出てきて通ったという場合は、私は、家庭の中で国籍がばらばらになっても、そのときは何が何でも帰化しようと思っていますよ。  いろいろな事情の人がいるわけで、私はですからソウルと東京の間を物すごい行ったり来たりします。そういう面でいうと、実は、私は確かに韓国籍を持っていて便利な方ですね。そういう在日というのは、しかし非常に珍しいんじゃないでしょうか。
  74. 北川れん子

    ○北川委員 済みません、最後に、時間が来たのであれなんですが、私が言いたかったのは、日本社会の中には、今、民法改正がありますが、氏さえも違えばもう一心同体が崩れるという御意見がある家族観を持った方と、今、鄭参考人がおっしゃったように、それぞれがばらばらに、どこでどう暮らして、国籍がどうであろうとかということを超えて暮らすということを母体にされていてもきずなを感じられる方との違いという意味で、私は、鄭参考人のとられている立場を矛盾だからあえて聞いたわけではないということだけは最後お話しして、きょうの御質問とかえていきたいと思います。  どうもありがとうございました。
  75. 自見庄三郎

    ○自見委員長 遠藤和良君。
  76. 遠藤和良

    ○遠藤(和)委員 公明党の遠藤和良でございます。  きょうは、三人の参考人先生方、本当に御苦労さまでございます。私が最後の質問者でございますから、あと十五分よろしくお願いします。  きょうはいろいろな御意見を拝聴いたしまして、この問題が二十一世紀のこの国の形をどうするのかというふうな大きな意味合いを持っている法案であるという認識をいたしました。あるいはまた、国籍とは何だろうか、こういう今日的問いかけをしているような気持ちもいたします。あるいは、中央と地方の政治はいかにあるべきか、こういう問題も提起しておりまして、大変多方面から議論を深めていかなければいけない問題がある、こういうふうな気持ちをしているわけでございます。  最初に田中参考人にお伺いしたいのですけれども、在外邦人の選挙制度が新しくスタートいたしまして、日本国外に居住する日本国民に対しまして、国政の投票権、これは比例代表の選挙だけですけれども、これを付与する法案をつくりました。その反面、今議論をしているのは、まさに日本国内に居住する永住外国人の皆さんに、地方住民といたしまして地方の首長並びに自治体の選挙の投票権を付与する、こういう話でございまして、中央の政治、いわゆる国政と地方の政治、これを分離いたしまして、日本国民には国政に参加していただく、そして永住外国人地方住民のお一人といたしまして地方の政治の投票権の方ですけれども参加していただく、こういうふうな明確な論理的な分離をした上で議論をしていきたいと思っているんです。  田中先生は、投票権に限らずに被選挙権付与したらいいのではないか、こういうお考えを持っているようですけれども、そういう観点から見ると、日本の国の中央政府と地方自治体のあり方、これをもう少し整理しておかないと、なかなか今すぐにというわけにはいかないのではないか、こういう認識を私は持っているわけです。国の統治機構の一環を首長が担っているし、あるいは団体委任事務というものもございますから、そういう意味では議員の皆さんも担っているわけでございまして、ここに直接被選挙権永住外国人の皆さんに持っていただくというのは、ちょっと環境が整っていないのではないか、このような認識をするんですが、先生の御意見を賜りたいと思います。
  77. 田中宏

    田中参考人 私も、新しい地方分権が動き出して現実に従来の国と地方関係が何がどう変わったのかということは、実は余りよく勉強していないものですからよくわかっていないので、その前提でお答えしますけれども、一つは、実は、被選挙権というのは、束ねて言いましたけれども、先ほどちょっと御質問のときに御紹介いただいたように、私は議員と首長というのはちょっと分けた方がいいのじゃないかという考え方を持っているんですね。ですから、できれば今回の法案でも議員のところまでは開放するということは同じ論理でできないかなということを実は考えていたんですけれども、そういうことは具体的な法案としては出てこなかったわけですね。  それで、私は、日本地方自治体の制度というのはかなり国と違った団体自治の仕組みというものが保障されていて、先ほどちらっと一部御紹介しましたけれども、例えば私たちは幾ら署名を集めても国会法案提出することはできないのですね。ところが、地方議会の場合には、御案内のように、直接請求という道が保障されていて、議会の人が全然やってくれなくても、もちろん最終的に議会でお決めいただかなきゃなりませんけれども、住民投票条例なんかに代表されるように、所定の有権者の署名を集めて条例案を直接議会に提案する、そしてそれを議決してくだされば自治体の法律ができる。ところが、永田町はそれができないんですね。やはりかなり違う。  それから、監査請求なんかも、住民の監査請求が自治体についてはできますけれども、国に対しては監査請求というのを直接やる道はない。  そういう点で、地方自治というのは、よく考えてみるとかなり違った仕組みの中で住民の自治というのが認められていて、前にも言いましたけれども、全体は大きな国家という枠の中に入っていますけれども、地域社会についてはかなり違った空間が保障されている。そこの中では、外国人日本人を問わず同じ住民として遇していく社会構造をつくっていくということが、二十一世紀という言葉を私流に考えれば、従来は上から下まで外国人日本人はもう真っ二つに割れていたけれども、地域のレベルでは同じという構造にすることが大事ではないか。  そのための条件というのは、日本の現行憲法の地方自治の本旨という例の地方自治の一章にいろいろなことが具現されている。そのことが、これも繰り返しになりますけれども、最高裁判決で、禁止されていないという判断が出たということと裏表の関係だろう、あるいはそれを証明するものだというように思います。  以上です。
  78. 遠藤和良

    ○遠藤(和)委員 国の事務と地方の事務をどういうふうに明確に分離するかというのはなかなか難しいのですけれども、例えば安全保障とか国の存在にかかわるような重要な案件は一元的に国の事務とする、産業振興だとか地域振興という事務はすべて地方に任せる、そういうふうな分離ができれば、それはかなり地方分権が進むと思うんですね。その場合には、被選挙権議論ができると思うんです。  今は、国は何か安全保障の問題が地方理解と協力がなければできないような仕組みになっているのは、ちょっと国の形としては本当はいびつじゃないかなと私は思います。それは、外交、防衛は国の専権事項である、こうした法律、国のあり方というものを、やはりこれから議論をしていくべきではないのかな。むしろ経済振興だとか地域の振興、それにかかわることはどんどん地方に委任していく、地方の固有事務にしてしまう。こういうふうな形でいくべきではないのか。  それが今は逆転していまして、経済政策というのは国が一元的にやるというふうな面があるんですけれども、こういった視点から、国の事務と地方の事務を明確に分離していく、そしてその中で地方参政権というのを議論する雰囲気ができれば、これは非常に論理的に明確になるのではないか、このように思いますが、いかがでしょう。
  79. 田中宏

    田中参考人 私も基本的には同じような考えで、今の四十七ある都道府県も、多分そのままではなくて、道州制にするとか、市町村が三千幾つあるんですか、これもやはりもう少し統合して、どういう仕組みの地方主権というのを形にしていくかというのは、恐らくこれから考えていかなきゃならない時代に直面しているのではないかなという感じを抱いてはいます。  以上です。
  80. 遠藤和良

    ○遠藤(和)委員 次に、辛参考人にお伺いしますけれども、民団はこの運動に長い間熱心に取り組んでこられたとお伺いしておるわけでございますが、国会でこの法案の審議が始まりまして、きょうは前団長みずから参考人として御出席をしていただいているわけですけれども、率直な御感想を言ってください。
  81. 辛容祥

    辛参考人 長い長い我々の運動が、この国会にまで、いよいよ法制化されようとして、公聴会を開いて参考人意見を聞く段階に来たということは、長い運動をやった者として本当に感慨深いです。この国会でぜひこの法案が通過できるよう、心からお願いいたします。
  82. 遠藤和良

    ○遠藤(和)委員 最初の十五分間の意見陳述のところでもお話があったわけですけれども、帰属意識というか、そうしたことを問われて、この国に長く住んだり、あるいは、この国に生まれて、この国に生活の基盤がある、そこの住民の皆さんと共生した社会をつくっている、すべての財産がある、すべての家族がそこにいる、このことが最大の自分根拠だ、こういうふうな説明をされたわけでございますけれども、民団の皆さんの中にはそういう方々がほとんどと言っていいのでしょうか。その辺の状況を教えてください。
  83. 辛容祥

    辛参考人 民団の今の構成員が約五十万近いです。それで、二十以上の者は地方参政権の獲得をみんな願っています。  ただ、先ほどもちょっと話がありましたけれども、何人か、私は何百人もいないと思います、その程度の意見の食い違いはあるかもしれませんけれども、私たち民団の構成員約五十万人のうち成人が四十万ぐらいいるかな、これは九九%、今これを今度の国会で通過してくださることを首を長くして待っております。
  84. 遠藤和良

    ○遠藤(和)委員 鄭参考人にお伺いしますけれども、私は帰化という言葉は余り好きじゃないんですね。帰化というよりも、むしろ、国籍取得権をすべての人は持っている、その権利に従って、日本においても希望する人には日本国籍を取っていただく。こういうことは私は賛成だし、そのことをもっと簡単な手続で、申請すればできるようにする。  ですから、私は、そうした考え方と今回の永住外国人地方選挙権を付与する法案というのは両立ができるのではないかと思うんですね。片一方しかなくて、片一方だけ押しつけるというのではなくて。それは個人の自由でございますから、国籍をどこの国籍にするかというのは、まさに人間の心の中の精神の領域の問題だと思います。  それは、日本国民国籍を持っていない人には、地域住民であるけれども、住民の大きな権利である投票権は与えないというのではないのではないかな。もちろん、自分日本国民国籍を取得したいという願望がある人は、どうぞ取ってください。これは必ず両立する話だと私は思うんですね。  それは、日本がこれから開かれた国になるという意味でも、日本の国の中にコリア系の日本人がいらっしゃる、これは、これからの日本世界の中で開かれた国として存在していくには大変重要な視点だと思うんですね。  ですから、何かこの法案に対して賛成、反対という議論ではなくて、これはどちらも選択できるのではないか。それはむしろ、永住外国人の皆さんのお好きな方を選んではどうですかというふうな議論になるのではないかと私は思うんですけれども、そうした意見についてお考えをお聞かせください。
  85. 鄭大均

    鄭参考人 矛盾しないというお話で、そういう印象はある程度持てる部分は確かにあると思います。  しかし、私は、指紋押捺以後の在日運動というのは、在日運動に対しては、さっき、辛先生お話しされたとき、私も、在日運動の中にはいろいろな苦労というか、私のような人間が見ても、いろいろな考えを持つ部分というのはあるわけです。ただ、八〇年代以後の在日運動というのは、非常に仕掛け的な性格というか、余り切実さとは無縁の運動が出てきていると思うのですね。  実際、この選挙権の問題、参政権の問題も、本当に在日生活にかかわる問題というよりも、むしろ、市民的な権利と言われる、政治的な権利の要求を通して日本社会の否定性を暴露しよう、実はそういう、ある面では在日の悪い趣味というか、悪い習慣というものが、一方にはちょっと介在しているようにも思えますし、それが日本の知識人なんかと連帯してやってきている運動で、これは実際、参政権が終わると、やはりその次は地方選挙権のレベルの被選挙権、そして国政選挙権、国政選挙権まで行ったときに国籍移動の問題を考えるという形で、結局このレベルでやりますと、運動している人間が定年退職するまで十分な仕事を保障されるということはありますけれども、それによって日本の名誉になるものでもありませんし、在日のためにプラスになるものでもないと思うのです。これはやはり両立しないのです。  今のこの時期に、やはり国籍の問題というのもきちんと解決するというくらいの意気込みでやっておいた方がいいと思いますね。ずるずるすると、これは本当に日本の名誉のためにもならない。日本に対する、例えばアジアからのいろいろな批判に口実を与える、そういう問題もあるでしょう。あるいは欧米人に対しては、欧米人というのは日本のエスニックグループに対する関心が意外と高いわけですけれども、そういう人に対しても、いろいろな悪いラベリングをする機会を与える、何回も繰り返しますが、そんなふうに思います。
  86. 遠藤和良

    ○遠藤(和)委員 時間が参りましたので、質問を終わりたいと思います。
  87. 自見庄三郎

    ○自見委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人におかれましては、貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時四十一分散会