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田中参考人 御紹介いただきました
田中です。
ちょっと欲張りまして、「
意見陳述要旨」という一枚の
レジュメのようなものと、
あと、御
参考になればというので八枚つづった
資料があると
思いますが、それを使いながら。
私は、今回の
法案には、
二つ法案が出ているようですけれども、何か中身は全く同じということのようなので、原則的には
賛成の
立場です。ただ、原則的とあえてつけたのは、今回の
法案には被
選挙権が含まれておりません。それからさらに、
永住者は
対象になっていますけれども、例えばかつてさきがけが発表した案は五年以上住んでいる
外国人を
対象にするというようなことがあったので、範囲を拡大するというようなことが将来は望ましいと
思いますけれども、そういう
意味で、原則的に
賛成という
立場です。
次に、この
法案の
対象になっている人は、御存じのように
特別永住者、旧
植民地出身者及びその子孫である五十二万、それから一般的な
外国人で
日本の
永住資格を取得している十一万、たしか去年の年末の統計だと
思いますけれども、この
人たちが
対象になっているわけですけれども、実は、前者の
特別永住者というのは、五年前に比べると四万人減少して五十二万になっています。一方、
一般永住の方は逆に五年前に比べると五万人ふえています。
委員部の方からいただいた
参考資料を拝見しても、昨年一年間で二万人の人が
永住資格を取得していますので、実際には、
あと五年たつと、
一般永住者は多分二十万とかあるいは二十五万とかというようなオーダーになるだろう。逆に
特別永住は五十万を切ることは間違いない。そういう中で
外国人の
地位の問題を
考えていくということが必要ではなかろうかと
思います。
特に
日本の場合には、先ほどの話にもつながりますけれども、
日本の
国籍法が
血統主義ですので、
外国人がいつまでも再生産されるシステムをとっているわけですね。これがもし
出生地主義の
国籍法であれば、
外国人の二世は既に
外国人ではありません。生まれながらにしてその国の
国籍を持つわけですから。
アメリカで
地方参政権の問題が
議論されないというのは、
アメリカで生まれた
子供は両親とも
外国人でも自動的に
アメリカ国籍になってしまいますので。
日本の場合は、
血統主義をとっているために
外国人が再生産される構造があるので、その
人たちの
法的地位なり
権利の問題について、
国籍法との
関係で別途手当てをしなければいけない問題がある。その中の
一つだというように私は
思います。
参政権の問題というのは、何か最近急ににぎやかに
議論されるようになりましたけれども、私に言わせるともう二十年以上前からいろいろな形で
議論が続いているわけです。
資料として、たまたま朝日の「論壇」をちょっとぱっとめくって用意をしたのですが、七六年に
柳沢さんという
スウェーデン在住の
日本人の女性が書いた
文章で、有名な、
スウェーデンが
外国人に
地方参政権を開放したということを伝えた内容ですね。
スウェーデンは、かつてはやはり
北欧三国の人が多かったようですが、今では、
レジュメにも書きましたように、それ以外の
外国人がどんどんふえてきている。しかし、両方を
対象に事が進んでいる。フィンランドはかつて
スウェーデンの領土だったわけで、ちょうど
在日の
人たちが
日本での
参政権を求めるというのと、ある
意味では非常に関連している。
二枚目のところに、もう亡くなられましたけれども、
金達寿さんの
発言をちょっと載せておきました。これを拝見すると、
スウェーデンの
柳沢さんの
文章に
金達寿さんは非常に刺激を受けたようですね。
自分は大切に切り抜きを持っている、こういう形で
議論が次々につながってきた。
三枚目のところは、例の
政治学者の
白鳥令先生が書かれたもので、投票できない人への配慮ということで、
外国人のことに既に八三年の段階で触れている。
そして八六年には、
在日の黄さんが書かれた
文章で、
最後のところに、途方もない空想だというかもしれないけれどもと断りながら、この問題について
発言をしている。それが今日具体的に
国会で
法案として審議されるという経過をたどったわけです。
次に、
国政参政権と
地方参政権の
関係についての私の
理解を申し上げます。
参政権というのはどうしても
国民固有だというような認識が従来から強かったと
思いますけれども、少し冷静に
考えると、この前の
選挙から初めて、
日本もようやく
外国に住む
日本人が
国政レベルの
参政権が行使できるようになったわけですけれども、
サミット参加国の中では
最後だったようですけれども、同じ
国民でもこの
人たちは
地方参政権はありません。それは、
日本の
住民でないからなんですね。ですから、
参政権は
国民にかかわる
国政参政権と
住民にかかわる
地方参政権というふうに分けて
考えるのが一番合理的だろう。
柳沢さんの例を挙げれば、
柳沢さんは、
スウェーデンで
地方参政権を行使し、今度道が開かれた
国政参政権は
スウェーデンにある
日本の大使館に投票する。これは非常に合理的だと思うのですね。それが、
最高裁判決で、
地方参政権をどうするかは政治の問題だという指摘をして、憲法上禁じられているわけではないという非常に合理的な認識だというふうに
思います。
それから、これはさっきからの
議論に重なりますが、
日本で
外国人の
権利の問題が出てくると必ずといっていいほど出てくる
議論が、
参政権が欲しければ
帰化すればいいと。
先日私は、戦争で軍属として駆り出されて何の補償も受けられなかった人に対する
法案のときにも実は
国会にお邪魔したのですが、そのときの
日本政府の方式も、戦後補償を受けたいのなら
帰化しなさいと。実際
帰化して受けた人もいます。ところが、日韓条約以降は
帰化してもだめと。それでこの間の
法案が必要になってきた。
帰化しない、いつまでも
外国人を続けている方に問題があるという認識がどうも根強いので、むしろ
日本側の問題にどう対応するかという
議論をすべきじゃないか。
時間が過ぎたようですけれども、
レジュメで
あと一、二点だけ、済みませんけれども、申し上げます。
一つは
帰化の問題ですけれども、
資料の七枚目のところに、
帰化に関する私が集めた統計を入れておきましたけれども、実は、かつて許可、不許可の数字が公表されていたころは、三七%が不許可、許可が六二%という数字が残っているんですね。ところが、最近公開された
資料によると、過去十一年間で許可された人が九八・五%、不許可が一・五%ということですから、恐らく
帰化要件の緩和の余地はもうないだろう、申請すればほとんど許可されているわけですから。そうなってくると、先ほどの鄭さんの話にもあるような、届け出による
国籍取得という方式を導入して問題に対応するということなら
一つの大きな
方法だと
思います。
このことについては、
最後の
資料に入れておきましたけれども、北海道大学の国際司法の専門家である奥田
先生がそのための
法案を用意されていますので、
国会の
先生方にもぜひそういうものを御検討いただいて、冒頭で言いましたように、新しい
外国人の人もどんどんふえてきていますので、
特別永住者については
国籍との絡みで
議論をしながら、一方では一般
外国人のことを
考えて、今度のような
法案というのを両面をにらみながら
考えていくということが今では必要になっているんではないか。
レジュメの
最後のところは、
帰化した後、その人が
日本でどういう
立場に置かれるかというときに、従来の
議論だと、あ、もう
日本の
国籍を取ったからきょうからあなた
たち日本人ねということになっちゃうわけですが、実は、
帰化した人が民族的少数者としてきちっと生きていけるかどうかというシステムが
日本にはないわけですね。ですから、
日本に
議員をしていらっしゃる人で朴さんとか金さんとかスミスさんという人はいないわけですね。これは民族的少数者として
存在する
社会を我々つくり得ていないわけですから、そのことも
考えていくべき時期が来ているだろう。
ちょっと時間が超過しましたけれども、以上で終わります。(
拍手)