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佐藤参考人 福島県知事の
佐藤栄佐久でございます。
本日は、この
ような場で
意見を述べる
機会を与えていただきまして、感謝を申し上げます。また、昨年、十一年の八月でございましたが、この
委員会におじゃまをして、
意見陳述をさせていただきました。十二月に審議会からの答申が出て、三つの
候補地の
一つになったわけでございます。改めて、
決議それから法律制定、そして
首都機能移転に向けて着々と
国会の方で進めていただいていることに敬意を表すると同時に、御礼を申し上げたいと
思います。
栃木県の
知事さんが選挙中でございます。私、栃木・福島
地域の取り組み
状況について御
説明を申し上げたいと
思います。次に、北東
地域五県の連携について、それから
最後に、受け入れ体制の整備
状況という三つの点について御
説明を申し上げます。
お手元の資料一ページをお開きいただきたいと
思います。なお、適宜パネルを使わせていただくことをお許しいただければありがたいと
思います。よろしく
お願いします。
まず、この
首都機能移転という取り組みにおきましては、
移転に対する県民の理解を得ることが、そして合意を形成していくことが何よりも大切でありまして、また、このことは
候補地を抱える県の
知事としての責務であろうと考えております。
そこで、栃木、福島両県とも、栃木県
国会等移転促進県民
会議並びに福島県
首都機能移転促進県民
会議を設立し、県民の総意を結集し、官民
一体となった取り組みを行うことによって、栃木・福島
地域への
首都機能の
移転促進を図るため、緊密に協力をし合いながらPR活動等の事業を展開いたしております。
また、宮城、茨城両県においても同様の協議会が設立され、
首都機能移転に関する活動を行っているところでございます。また両県とも、
候補地を
中心とした
地域において、住民とひざを交え、一人一人の声を聞くことができる
ようなミニ講座や
地域懇談会というものをそれぞれ六十回程度開催いたしております。その席上、住民の方々からは、
首都機能移転は、二十一
世紀の新しい
日本をつくるためにも極めて有効であるとともに、自分たちの
地域のよさを再認識する契機にもなるといった建設的な
意見が多く出されているところでございます。
次に、二ページの「北東
地域五県の連携」について御
説明いたします。
北東五県、すなわち宮城、山形、福島、茨城、栃木の各県は、
国会等移転審議会の答申がなされる前から連携した取り組みを行ってきた経緯がございます。県議会連絡協議会や五県
知事会議を設立し、他の広域的な団体とも連携を図りながら、この
地域のすばらしさを全国に向けて発信するため、各種活動を積極的に展開いたしておるところであります。
次に、基本
構想について御
説明いたします。
北東
地域としては、答申に先駆け、連携
構想を策定したところでありますが、今年度は、答申の内容を踏まえ、栃木・福島
地域を
移転先地とした基本
構想を策定するため、
調査事業を実施しておるところです。
この
調査は、次の三点について検討することになっております。
まず第一点目は、栃木・福島
地域における新
首都の
イメージや整備の
あり方、ライフスタイル、さらには本
地域内の
機能配置等について検討するということであります。
二点目は、
首都機能を擁する北東
地域の広域的な将来像の展望に関しまして、茨城
地域の支援、補完の
あり方、また、仙台、
東京等との連携に関する検討を行うということであります。
三点目は、北東
地域への
首都機能移転が
国土構造にもたらす影響等について検討を行うということでございます。
以上の三点について
調査を実施し、
国会の皆様方を初め、全国に向けてよりよい基本
構想を提案できればと考え、現在作業を進めておるところでございます。
続きまして、三ページからは「受け入れ体制の整備
状況」について御
説明いたします。ここでは、ハード面での受け入れ体制とソフト面での受け入れ体制について
説明をしたいと
思います。
まず、ハード面での受け入れ体制についてでございますが、栃木・福島
地域は、広大な開発可能性を有しているという点が第一に挙げられると考えております。本
地域は、栃木県那須
地域から福島県阿武隈
地域南部にかけて、三十八
市町村、総面積約四十四万ヘクタールを有しております。
用地の確保という
観点からは、特に那須
地域には、東北自動車道の西那須野塩原インターチェンジに隣接いたしまして、約四百ヘクタールに及ぶ平たんな一団の国公有地が存在しております。これに隣接して民間企業一社で所有している牧草地が存在しており、合計すると、千代田区の面積を超える約千二百ヘクタールのまとまった平たんな土地がございます。
また、本県の阿武隈
地域全体では四十二万ヘクタールを有しておりますが、これは
東京都と神奈川県を合わせた面積とほぼ同じでございます。一平方キロメートルメッシュごとに、標高五百メートル以下、傾斜度十五度未満、建物ドット数二十未満という三つの条件を満たし、かつ二千ヘクタール以上のまとまりがある適地を抽出するという作業を行った結果、この阿武隈
地域には合計一万二千ヘクタールの開発可能性の高い
地域が存在しております。審議会では新
都市の開発面積を最大ケースで八千五百ヘクタールと想定しておりますが、これを大きく上回る開発適地を確保することが可能であります。
さらに、阿武隈
地域においては過去に福島空港建設という大規模プロジェクトが行われた経緯がございます。この事業は、空港施設及び関連施設用地として約六百七十ヘクタールの用地買収を行いましたが、支障なく用地の取得が行われたところであります。
また、栃木・福島
地域においては全般的に地価の水準が低いことから、
首都機能移転に必要な土地を低価格で確保できる可能性が高いと言えます。
次に、五ページの「
災害に対する高い安全性」でございますが、私は、法律の前文にもございます
ように、
我が国の大規模
災害に対する脆弱性を克服することが
移転の
意義の中でも最も重要かつ緊急を要するものであると考えております。
国会で論議が始まったのも、伊豆群発地震、一九七八年でございましたが、その群発地震が始まったころだと記憶をいたしております。
栃木・福島
地域は、
移転先候補地の中で地震
災害に対する安全性が最も高い
地域と評価されております。中でも阿武隈
地域は、活断層がほとんど見られないことから、直下型地震に対する安全性が極めて高いものと考えられております。また、地質のほとんどが花崗岩類から構成され、極めて堅固で
構造物の支持力が高く、地震被害を受けにくい特性を有しております。
先日、地形・地質学が専門の先生と話したとき、金をかければ解決できる
ような問題は本当の
意味の問題にはならない、安定した地盤は金で買うことができない最も得がたい条件であるといった
意味の話を伺いました。
本
地域は、緊急時に
国家の司令塔としての
役割を果たすため、最適な条件を備えた
地域でもございます。
次に、六ページでございますが、本
地域は円滑な
移転の実現が可能である点について申し上げます。
新
都市の建設開始から少なくとも十年程度は、新
都市と
東京の双方に
首都機能が存在するという
状況になることが考えられます。こうした
状況を想定いたしますと、新
都市の位置は、基本的に
東京との連携が密接にとれる
距離にあることが大切ではないかと
思います。
また、本
地域は既にかなりの高速交通インフラが整備されているため、これらを新たに整備する必要はほとんどありません。新幹線はもとより、空港や高速道路網が整備されております。新幹線による本
地域への所要時間は、
東京—那須塩原間が五十四分、
東京—新白河間が六十分となっております。
さらに、本
地域は
候補地内に空港を持つ唯一の
地域であります。福島空港は現在二千五百メートルの滑走路長を持っておりますが、さらに、二〇一〇年までに三千メートル級滑走路の供用に向け、第七次空港整備七カ年計画の中に位置づけられており、当空港は新
都市を支える空港としての資質は十分備えているものと考えております。
また、六ページのルート図をごらんいただければわかります
ように、陸路については、縦軸に
東京から本
地域を経由して仙台まで東北道、常磐道が並行して整備または整備され
ようとし、横軸には太平洋と
日本海を結ぶ横断道である磐越道が整備されております。現在、北関東自動車道の建設も進められております。水戸から宇都宮を通っての道路でございます。
さらに、本
地域からは
東京圏を経由せず直接
関西方面と連絡することができる磐越—北陸—名神という利便性の高いルートが整備されております。
例えば、郡山を起点とした場合、郡山—吹田(
大阪)間で、
東京を経由する東北—東名—名神は七百八十キロメートルの
距離がございますが、
日本列島は弓なりになっておりますので、北陸道を経由する磐越—北陸—名神は七百三十キロメートル、五十キロメートルの
距離短縮になります。時間はもちろんでございますが。北陸道を経由するこのルートを利用すれば、
東京圏の渋滞をカットすることができるので、著しい時間短縮が図られております。
この
ように、
東京圏や
関西方面と複数のルートで連絡することが可能であるため、この
地域につくられた新
都市は、既に交通網のリダンダンシーが確保され、
災害時の
国土の安全性向上には大きな
役割を果たすことができます。
さらに、東北道と磐越道を結ぶ
地域高規格道路、トライアングルハイウエーの整備も進んでおり、本年度中に東北道矢吹インターチェンジから福島空港周辺までが供用開始になる予定でございます。この道路が完成すれば、西那須野塩原インターから空港まで三十分程度で結ぶことになり、
地域の
一体性はさらに増すことになります。
こうしたことから、これらの既に整っている高速交通インフラを利用することにより、最小のコストで非常に利便性の高い
都市をつくることが可能であります。
ちなみに、高速道路一キロメートル当たりの建設費用を見ますと、本県の磐越道では三十億円程度でございますが、
東京圏では、
東京外郭環状道路が三百億円、特別な例ではございますが、アクアラインが一千億円ほどかかっております。この
ように、高速道路
一つをとっても、
東京圏に比べ本
地域は十分の一から三十分の一という非常に安いコストで建設できるということでございます。
また、
東京一極集中は、生活者の視点で見た場合でも、交通渋滞やヒートアイランド現象、さらには遠
距離通勤など、多くの問題を抱えております。この
ような生活
環境のひずみは
東京圏の著しい少子化傾向からも読み取れます。例えば、合計特殊出生率の全国平均が一・三四、栃木県が一・四一、福島県が一・六三に対し、
東京都は一・〇三と非常に低い数字となっております。この
ような巨
大都市が抱えるさまざまな問題を解決するためにも、生活者の視点を大切にし、二十一
世紀にふさわしい
価値観あるいはライフスタイルを先取りした新しい
都市づくりを提案し、実現させることも
首都機能移転の大きな
意義と言えるのではないかと考えております。
次に、七ページですが、ソフト面での受け入れ体制について御
説明いたします。
本
地域は、
日本の顔にふさわしい景観を有しているとともに、豊かな自然に恵まれ、自然
環境との
共生を実現できる大きな可能性を秘めた魅力ある
地域ではないかと
思います。このことについては、審議会において非常に高い評価を得ております。先ほ
ども安定した地盤は金で買うことはできないという話をいたしましたが、景観や自然
環境も同じであると
思います。
那須
地域は、那須連山、高原山などの日光国立公園を
代表する山々を背景といたしまして、那珂川や那須疎水の清流が豊かな平地林や農地をはぐくむ広大な
地域であり、その景観は四季折々に彩りを変えながら、見る者を魅了するものであります。
那須野ケ原は、那須疎水を初めとする開拓事業によって原野に水と緑の
環境をつくり上げた
代表的な事例であり、農林業によって保全されてきた自然であります。
この那須野ケ原の本格的な開発は、明治以降、大山巌、西郷従道、松方正義、青木周蔵、山県有朋ら、そうそうたる明治の元勲たちの大農場方式による入植、開拓からであり、この開拓を支えたのが那須疎水の開削でありました。那須疎水は、明治十八年に当時の
国家的大プロジェクトとしてつくられました。その疎水も百年を経過し、今では周囲の風景に溶け込んでおります。
この
ように、那須
地域は、
日本が近代
国家に生まれ変わった明治初期の新しい
国づくりのロマンが今なお息づいている土地柄であり、那須野ケ原には人々が百年かけてはぐくんできたすぐれた自然がございます。
また、阿武隈
地域は、中小の起伏を持って連なる里山と豊かな森が織りなす
日本の原風景ともいうべき景観を持った
地域であります。
私は、新しい
都市づくりの
基本理念として「森にしずむ
都市」を提唱しておりますが、この
地域において、自然や風土を最大限に生かした
都市づくりを行い、自然との
共生を図ることによって、与える影響をごくわずかに抑え、人と自然に優しい、そして美しい空間を生み出すことができるものと考えております。「森にしずむ
都市」とは、単に物理的に森に埋没するという
意味ではなく、
都市を自然と限りなく融和、
一体化させ
ようということであります。その中でこそ、人類が持続的な成長を遂げていくことが可能になると考えております。
本県において、この「森にしずむ
都市」の理念を生かし、来年の七、八、九月の三カ月間、
移転先候補地の北部に位置する須賀川市において、うつくしま
未来博を開催することとしております。この博覧会は、「美しい空間 美しい時間」を開催テーマとして、里山の中で、森と
共生するさまざまな知恵や新しいライフスタイルの創造を芽吹かせることを目指しております。
会場の基盤整備の基本方針としては、周辺の自然
環境との調和を図り、地形や自然の記憶を残す
ような整備の仕方を心がけております。また、パビリオンの建設に当たっても省
資源型の施行に努めております。
また、「森林との
共生」を基本
コンセプトとしたフォレストパークあだたらというオートキャンプ場と森林学習施設を平成十年にオープンさせたところでございます。このフォレストパークは、「森林に遊び、森林に学び、森林に働き、森林を守り、森林に暮らす」をテーマに、森林を次
世代に残すべき人類共通の財産と位置づけ、ゆとりと潤いのある生活実現のため、積極的に森林空間を利用することを目指しております。
施設整備に当たっては、安達太良山ろくの景観を保全し、森林をより多く残すため、現地の地形に沿った施設レイアウトを行い、開発面積を最小限とすることなどを心がけました。また、森林空間の多様化を図るため、森林を面的に確保することのみならず、人の手をほどよく加えて、立体的な整備をすることに努めました。例えば、里山な
ども全くの自然に任せていると自然に荒れてきてしまいますが、少し人の手を加えることによって、豊かな里山を維持していくことが可能となります。フォレストパーク開発前の植生はアカマツのみの単層林でありましたが、間伐を適度に実施することによって、広葉樹や草本類の成長を促進させ、複層林に導くことで、多種多様な自然をつくり上げてまいりました。
この
ように、本
地域における新
都市像は、
環境共生型
都市を目指すものであり、この
地域の自然の持つ多様性を踏まえた上で、
環境への影響に配慮した最善の方策を検討していくこととしております。そして、すばらしい自然と人とが
共生した
都市づくりを行うことこそが
首都機能移転の大きな
意義の
一つではないかと考えております。
最後になりましたが、北東五県では、栃木・福島
地域こそ
首都機能移転を実現する上で最も適した
地域であり、美しい
国土の創造を目指す二十一
世紀の
国土づくりを先導していく
地域であると確信をいたしております。今後とも、北東各県と密接な連携を図りながら、本
地域への
移転実現に向け、引き続きその受け入れ体制の整備等、誠心誠意取り組んでまいりたいと考えております。
委員の皆様におかれましては、
国家百年の大計という視点から、
首都機能移転の早期実現に向け、
議論を深めていただきます
ようお願いを申し上げまして、私からの
意見陳述とさせていただきます。ありがとうございます。(
拍手)