○河野
国務大臣 私も核問題には随分と長い間関心を持ってまいりましたので、被爆による
状況がいかに悲惨なものであるか、しかも、それは人間の一世代にとどまらず、二世代、三世代とそうした不安とか恐怖というものが続いていくということを考えれば、こうしたことが二度とあってはならぬという強い気持ちを私は持っております。
山田議員も、今
お話しのとおり、御自身の御経験がおありでございますから、私がそう詳細を申し上げる必要もないと思いますけれども、例えばごく最近の例を申し上げれば、一九九五年、国連におきまして
我が国が提出をいたしました究極的核廃絶の
決議案というのを御存じだと思いますが、いずれにせよ、あれは究極的と言っているのであって、大した
意味がないとおっしゃる方もございますけれども、私はそれはそう思っていないのであって、少なくとも国連の場で核兵器国がいる中で究極的な核廃絶を主張する
決議案を提案した。
実は、
我が国が国連で
決議案を出したということはそれまでに経験のないことでございまして、
我が国が国連で
決議案を出す、しかもその
決議案が究極的核廃絶に関する
決議案だということは、今議員が
お話しの問題、大変おくればせながら、非常に象徴的な作業をしているというふうにお受け取りをいただきたいと思うんです。
この究極的核廃絶という
決議案は、大変いろいろな議論を呼びました。つまり、日本がそういう
決議案を出すということが、核保有国、つまりアメリカを初めとする核保有国との
関係においてどうなのかというような議論がございましたけれども、私どもは、核保有国に対しても、究極的な核廃絶というものは、この地球上に生きとし生けるものにとって願いはそこにあるということを申し上げて、この究極的核廃絶に積極的な賛成をお願いして、圧倒的多数でこの
決議案は通ったわけでございます。
そして、本年まで毎年この究極的核廃絶の
決議案は国連に提案をされ、どんどん共同提案国も多くなるというような
状況でございましたが、本年に至りまして、いわゆるNPTの
運用検討会議がございまして、そこで新たな核廃絶についての
合意ができてきたわけでございまして、私どもは、究極的核廃絶という
決議ではない、核兵器の全面的廃絶への道程、道のりですね、道程という
決議案を、ことしから究極的核廃絶の
決議案にかわって全面的核廃絶への道程についての
決議案を出すに至ったわけでございます。これにつきましても、核保有国を初めとする世界各国の支持を得て、たしか百四十数カ国の賛成を得て国連でこの
決議は通っております。
議員御承知のとおり、一方で、いわゆる新アジェンダ連合というのが核廃絶に大変熱心で、これはややもすると、非常に急進的な
決議案を出されます。私はいつも言うのですけれども、その新アジェンダ連合の
決議は、我々が考えている方向と、方向においては違いはない、ただ残念ながら、新アジェンダ連合の
決議案はいかにも性急であって、これでは核保有国との間の調整は全くできない。
私どもは、むしろ、核保有国を少しずつであっても
説得をして、核廃絶を実現させるための
手段、方法をとっていきたい、こう考えて、新アジェンダ連合よりはやや一歩おくれるような形でこれまでの
決議案には
対応していたわけでございますが、本年に至って、私は、自分で言うのはおかしゅうございますけれども、ことしの日本の出した
決議案は、新アジェンダ連合の出した
決議案よりもむしろ積極的な
決議案であって、もちろん、核保有国もこれに対していろいろと考えて、NPTの
運用検討会議の結果などを踏まえて、それぞれの
判断をしてくださった。全員、全部が全部賛成したわけではございませんけれども、それなりの
判断をしてくださった。
そういう
意味から、核廃絶へ向かって、国連の場では、着実に一歩進んだと言うほど大見えを切っていいかどうかという気がしないではございませんが、あえて申し上げれば、確実に一歩前進をしたというふうに私自身は考えております。国連の場を使ってこうした作業をすると同時に、私どもは、世界各国に向かって核の悲惨さを訴える、こういうことは、これからもやっていかなければならない、我々にとって大事な仕事だというふうに思っておる次第でございます。