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参考人(
速水優君) 物価といいます場合にいろいろございますので、今私どもの方でも物価の安定というのは何と何をしっかり把握すればいいかという検討をいたしております。既に適宜出たところから公表いたしておりますけれども、今おっしゃるGDPデフレーター、こういうもので見る限り、おっしゃるようにまだマイナスになっております。
しかし、先ほど私が申しましたように、
日本の消費者物価が今下がっている大部分は、需給ギャップによる需要不足ではなくて、むしろ技術革新や外からどんどん安くていいものがつくられて、それは
日本の業者が出ていってつくるのが多いようですけれども、そういうものがどんどん
日本に直接輸入されて若い人
たちに安く売られている、そういうもので物価が下がっていくと。あるいは、その他の流通
改革が行われているとか、そういったようなことが随分事実上機能しているように思うんです。
そういう意味では、物価の統計自体も価格
調査の対象とする商品の選定とか集計方法など難しい問題があります上に、最近では技術革新とか流通革命などの動きの中で新しい課題にも直面しておるわけでございます。例えば、パソコンのように質の向上とともに値段が下がり続けているケースもありますし、新興の小売店のシェア拡大といったような動きを十分に把握し切れていないのではないかといったような問題点が
指摘されております。
こうした中で、物価統計を物価の実勢を極力正確に反映するものとしていくためには、やはり経済の
実態の
変化に応じて絶えず見直していく必要があろうかと思っております。
日本銀行も、卸売物価指数や企業向けのサービス価格指数を作成している立場から、こうした観点で日々努力を続けておるわけでございます。
今、御
指摘の不動産価格等につきましては、これは物価に含まれておりませんし、今
実態がどうなのかというのは非常にわかりにくい。二極化していることは確かでございますし、その資産価格というものが庶民にとって、あるいは市民にとってばかにならない非常に大きなウエートを持っていることは確かでございますけれども、これをまだ上がっていないし、今の状態でやるのはおかしいじゃないかということだけをとらえても、これはちょっと金融政策の対象になり得ないものではないかというふうに思います。
私どもは、昨年の二月に金融システムの不安、そしてまたデフレスパイラルへの懸念といったようなものが同時に出てまいりまして、GDPはもちろん御承知のようにマイナスでございますし、これからどうなっていくのかというときに、既に過去十年金利をずっと下げてきているんです。公定歩合も一九九五年からずっと〇・五%で来ておりまして、実際の運用レート、いわゆるFFも下げてはきておったんですけれども、もう一段下げようということで思い切ってゼロまで落としていくということにしたわけでございます。それが結果としては、随分資金の供給をふやして短期、中期、長期の金利を低いところで安定させ、そしてまた株式、債券等にも資金が流れ、企業にも資金が流れていったという効果は十分出ていたと思います。
しかし一方で、やはりこの今の信用を供与しながら、信用リスクを持ちながら金利がつかないというのは、これは市場経済にとっては非常におかしなことでございます。貸す方も借りる方もおかしいし、これによって市場というものが小さくなってもいくでしょうし、金融というものが成り立たなくなってくる。そういうことを先々考えながら、やはりゼロではなくて、もう少し微調整をして、ゼロにする前のところぐらいまで金利を上げておくことは決して金融を引き締めることにはならないというふうに思います。
そういうことをやっておくのが今私どもとしては先を見て打つべき手ではないかというふうに考える次第でございますし、そのことがまた千三百六十兆円もある
日本の一般の個人の預貯金、このうち四百兆ぐらいは個人借り入れがございますけれども、そういうものがここ十年非常に低い金利で
皆さん我慢してこられておるわけでございますし、そういう
方々にも多少これからは明るくなっていくぞという兆しにもなると思いますし、こういう
方々は明るくなってくださいますが、一方で借り入れ主である企業と、そしてまた
政府だと思いますが、これはやっぱり金利が高くなるのは困るとおっしゃるのは、これまた自然の動きだと思います。
そういうものをタイムリーに両者を考えて調整していくというのが
日本銀行の役割ではないかというふうに思うわけでございますし、
日本銀行法にもはっきりそういうふうに書いてございます。そういうことを今、
議論を決定会合においていたしておるわけでございます。
そういう状態であるということをお考えいただきまして、どういう
結論が出ますかは私がここで申すわけにはいきませんので、こういうことを
議論しておるんだということを、同時に物価についてはいろいろ
調査を進めておるということを御承知いただければありがたいというふうに思います。