○田英夫君 私どもも、今申し上げたような新しい枠組みがそう簡単にできるとは思いません。各国の事情もありますし、国内の皆さんの御理解も得ていかなけりゃいけない。
私どもがこの北東アジア総合安全保障機構をつくろうというその
最初の取り組みとして実は考えているのは、核兵器の問題であります。
既に南半球は、南極大陸を含めて全部の陸地が非核地帯になっていると理解しています。一九六八年にできた中南米非核地帯条約、トラテロルコ条約を皮切りにして、アフリカ、南太平洋、そして南極は南極条約によって完全に非核化している。
残念ながら北半球にはまだありません。その北半球の
最初の非核地帯として、まさに唯一の被爆国である
日本、非核三原則を持っております。南北朝鮮は、実は対立が続いておりましたが、一九九二年にこの朝鮮半島を非核地帯にしようということで南北が合意をしております。それを先日の六月十三日、両首脳によって確認をしております。それから、モンゴルは、一九九二年に単独で非核国家宣言をして、九八年にそれを国連総会が承認している。こういうことで非核の地位というものを国連によって与えられている。四つの国がそれぞれ非核ということを形は違うけれども主張しておりますから、理屈の上ではこの四つの国はもうすぐにでも非核地帯になれるという条件をそろえている。
この場合、アメリカと中国、ロシアというのがこの地域を取り巻いているわけですから、その核保有国はこの地域に対して核を持ち込まない、それからこの地域に対して核攻撃はしないということをこの条約の附属議定書によって約束してもらうと。これは中南米以来、南半球の条約は皆そうなっております。この影響は実は極めて大きいと私どもは期待をしているのであります。
一方で、今、官房長官が言われましたように、日米基軸ということが冷戦
構造の中で、はっきり申し上げてソ連を一種の仮想敵といいますか、そういう対立する相手と考えながらできてきたことは事実であります。しかし、それが変化をしてきた。そういう中でいつまでも日米基軸という考え方でいいのかということを、外交の専門家の間では既にそうではないという意見が極めて活発に出ておりまして、あえてお名前を申し上げますが、松永信雄元駐米大使、今も
政府の外交にかかわっておられますけれども、松永さんははっきりと日米中トライアングルということを考えるべきだと、こう既に数年前から言っておられます。
日米新ガイドラインが問題になったときに、当時私どもは与党におりましたが、与党三党の議論の中でそういう意見を言っておられたのを覚えておりますが、このことは、ひとつ官房長官初め、
宮澤さんも長い、外務
大臣の御経歴もありますから、各党の皆さんもこれはぜひ視野の中に入れていただきたいと。日米中トライアングルというのを軸にして先ほど申し上げたこの地域の各国が
協力をする、そういうことを想定している、構想しているのであります。
そういう中で、実は中国との
関係が、新聞などもぎくしゃくしているとかいろいろ書いておりまして、それを今修復するために河野外務
大臣はおいでになっていると思っておりますが、きのう早速、唐家セン外務
大臣との話し合いの中でいい
方向に向かい始めていると。私どもも喜んでおりますけれども、どうもこの中国との
関係という中で心配がありますね。
日本の中で、
宮澤さんを仲間に引き入れては悪いかもしれませんが、私どもの世代はやはり戦前、中国というものを、あるいはアジアというものを視野の中に入れる、そういう中で育ってまいりました。戦後はまさに日米基軸で、多くの皆さんはアメリカを向いて育ってきたんじゃないか、アメリカの文化を吸収しながら育ってこられたんじゃないか。民主主義といえばアメリカだと、こう思っておられるんじゃないかという気がして。
私に言わせれば、教育問題もけさから出ておりますけれども、
日本の教育が今非常に危ない、これは私も同感でありますけれども、その
一つの原因は、戦後、アメリカ民主主義という名の
もとにアメリカの物差しが
日本の物差しになってしまった。アジアの伝統的な、あるいは東洋の伝統的なよき習慣あるいは道徳というようなものが軽視されたんじゃないか、家庭における教育の中でもそういう傾向が非常に強いんじゃないかと。アメリカは、私はそういう意味では決して先進国とは思いません。
それよりも、韓国や朝鮮の人とつき合うと、お父さんの前では絶対に息子さんは、成人していても先にたばこをのんだり杯に手を出すようなことはしませんよ。親に対して、あるいは目上の人に対して、目上というのは年齢の上の人に対して、あるいは
先生に対して、絶対に礼儀正しい。こういうものが
日本では失われてしまった。アメリカはヘイという調子でだれとでもつき合ってしまっている。これが
日本の教育の中に悪影響を及ぼしているんじゃないかと私は思っているんです。
話がそれましたけれども、中国との
関係ということを考えたときに最近心配なのは、中国の艦船あるいは調査船が
日本の周辺をうろうろする、けしからぬと。
先日も、この前の臨時
国会のときに、外交・防衛
委員会で自民党の方と公明党の方が相次いでこのことを批判されました。しかし、本当にそれは、確かに人の家の前を通るときに近所づき合いなのにどう
もと言って声かけないで通るのはけしからぬということは言えるかもしれない、まあ声ぐらいかけなさいよと、こういう程度のことじゃないですか。これ、国際条約的に言うと、例えば中国の軍艦が対馬海峡を通って津軽海峡を通って大隅海峡を通った、けしからぬと。これ、けしからぬと言えますか。
外務省、国際条約的に言って、
日本は五海峡を国際海峡に指定して、そこは沿岸から三海里を領海にして真ん中のところはEEZにして航行の自由を認めていると私は理解していますけれども、したがって、そこを通ることは自由だと、批判されるべきものじゃないと思いますが、いかがですか。