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鈴木(淑)
委員 結構でございます。
さあ、そうであるがゆえに、私、きのうはっきり森総理に、森内閣は、引くも地獄進むも地獄というか、進退きわまっておりますぞと申し上げたんです。
それは、私的整理で出てきた債権放棄に対して、森内閣は安易に債権放棄するわけにはいかないとおっしゃって、亀井さんが電話か何か裏からあれして自主的に取り下げさせた。これは
一つの御判断であったと思いますね。ああいう形で債権放棄をしますと、我々中小
企業は
市場経済の鉄則どおり借金が返せないときは泣く泣くつぶれていっているのに、大
企業だから救われるという不公平感とか、あるいは大
企業はこういう手を使えばうまくいくのかというモラルハザードが大
企業の経営者に出るとか、あるいは国際的な信用の失墜、
日本はちゃんとした
市場経済じゃないな、何か国が介入してきて私
企業を助けるな、こういう誤解だって生まれちゃうかもしれない。そういうさまざまな大きな社会的コストを
考えれば、あの森内閣がおやりになったことは、私はその面に関する限りは
理解できるんですね。
だけれ
ども、今度は、そういうことをやって、私的整理じゃなくて裁判所の方へ回してみたら、結論は今確認したことですよ。先送りして時間が先になるだけであって、間違いなく
国民の血税を投入して私
企業、
事業会社を救わざるを得ないという事態は起きてきます。しかも、その額は、当初のそごうについて九百七十億であったのが、少なくとも千二百億になるであろうし、まだほかにも出てくる
可能性があるのですね。そういう意味で、森内閣は進退きわまっているというふうに私はきのう申し上げたわけですね。
なぜそうなっちゃったかということなんですが、これは私、きのう、テレビが入っていましたから
国民の
皆さんに向かってはパネルを、閣僚や
委員の皆様方にはペーパーを配って申し上げましたが、私は、二年前の金融国会における当初の野党案、それと、
政府・自民党がお出しになったブリッジバンク
法案というのは、本来の目的が違っていたと思うんですね。
当初出した野党案というのは、破綻した金融機関を整理して
市場から退出させることを
原則にしているんです。もちろん、どこかに受け皿銀行がいて手を挙げれば、喜んでそっちへ回しますよ。だけれ
ども、受け皿銀行がない、そういう破綻金融機関については整理しよう、これが野党案だったわけです。民主党と公明党と我が自由党と三党で出した、共同提案、仲よくね。池田さんは民主党、自由党は私、公明党は石井さんかな、仲よく出したわけです。
そのときの仲よく出した法律は、
基本的には、破綻した金融機関は整理しましょう、どこかで受け皿銀行がうまいこと出てこない限り整理しましょう。その整理の方法に二つある。
一つは、法的な管財人を置いた整理です。もう
一つは、ちょっと信用秩序への影響が大き過ぎるというようなときは、その金融機関の株を有無を言わせず買って、公的管理の下に置いちゃって整々と整理をしていこう、この二つの案だったのですね。
それに対して、
政府・自民党はブリッジバンク
法案を出してきた。これは、整理しちゃおうじゃなくて、きれいに化粧直しをして、もう一回何が何でも受け皿銀行を見つけて
市場へ戻そうという案ですね。
三カ月もんだあげくに、くたびれ果てましたが、
政府・自民党さんが、野党案丸のみと称してこの二つの案をがちゃんこんと一緒にする、こういうことを御提案なさって、それで
議論をして、それで今の金融再生法ができたわけですが、きのうも申し上げましたように、ここででき上がった金融再生法は、当初の野党案と比べると完全に変質した。当初の野党案は整理を
原則としていた。ところが、でき上がった金融再生法は、生きたまま化粧直しをしてまた
市場へ戻す、国営ブリッジバンクを可能にする形に変質したわけですね。
ここに私は、上に今の金融再生法、下に当初の野党案を書いたペーパーを持っています。非常にもうクリティカルなところで変更が起きています。
まず、目的について、野党案というのは、金融機関の破綻の処理の
原則を定める、銀行の特別公的管理の
制度を設けること等によって信用秩序の維持と預金者等の保護を確保する、これが目的だと言っているのですね。ところが、金融再生法は、それと並んで、破綻した金融機関の業務の承継、ブリッジバンクですよ。それから、銀行の特別公的管理並びに金融機関の資産の買い取りに関する緊急措置の
制度、これはもう完全に資産を買い取る。当初の我々野党案には、資産買い取りなんというのはない。ましてや、これは先の方へ行くと出てくるのですが、受け皿銀行として手を挙げた、今の新生銀行さんみたいなところに対する資本注入とかその他の資金援助の条項まで入ってきちゃっているのですね。もう完全に変質した。
私は、当初の我ら三野党の共同提案をしたあの法律でいけば、今のように森内閣が進退きわまるような事態にはなっていないと思いますよ。それは整理を
原則にしていますから。ところが、変質しちゃった今の金融再生法では、何が何でも受け皿銀行を見つけて渡さなければいけない。そこから、さっき池田
委員が言っていたような、いろいろな無理が出てきているのですね。
一番わかりやすい無理は瑕疵担保特約だけれ
ども、もう
一つは、デューデリをやらせないでこっちでやるよと言ってみたり、時間がないんだからとか言ってみたり、さまざまなことでかなり無理をして出していったんだと思います。
さあそこで、なぜそんなことをしたんだろうかということですね。
それは、
政府・自民党さんが何が何でも旧日長銀と旧日債銀を整理したくなかったんだと思いますね。それは、格好のいいことを言えば、余りにも経済に対する影響が大き過ぎるだろう、金融パニックが起きているじゃないか、二年連続マイナス成長じゃないか、それを起こしたのは
政府・自民党さん自身の政策の失敗だと私は思っていますが、とにかくそういう
状況じゃないか、だから何が何でも生かしておきたいんだよと。
生かしておくために、野党案丸のみと称しながら、実は野党案の性格をばっと変えたものにして、それで、これを使って長期信用銀行を生かしたまま化粧直しして、瑕疵担保特約をつけるとかデューデリはこっちでやるとかいろいろなことを言いながら、とにかく八城さんのところに買ってもらった。その無理が今一斉に噴き出してきていると思うんですね。
そこで、私、
一つ質問をさらにつけ加えたいんですけれ
ども、あのときに本当に旧日長銀、旧日債銀を、これは公的管理で整理するわけですから整々と整理できるんですよ。我々野党案は、株だけ買って公的管理にしちゃって料理していくわけですね。これは時間がないよなんという話じゃない、二〇〇一年三月までかかって整々とやればいいんですからね。これをやって本当に経済が大混乱しただろうか。
三十四年間の私の
日本銀行の経験、七年間の野村総合研究所の経験、そして多くの友人との
議論もしました。私は、必ずしも、旧日長銀や旧日債銀を公的に管理して整々と整理したら大混乱が起きたとは思っていないんですよ、やれたと思っています。悪い
部分はもちろん整理回収銀行に回すんですよ。いい
部分は、ちゃんとデューデリをさせてでも、ばらして売っていくわけですよ。海外との取引が一番難物ですが、これはまとめて、きのうも言いましたけれ
ども、当時の輸出入銀行に渡すという手だってあった。そういうことを現実に、興銀さんの私と仲のいいエキスパートも言っていましたね。そういう手はあるなということは言っていました。
ですから、私の知識を総動員して判断すると、そういう手はあった。だから、当初の野党案はワーカブルだったと思いますよ。
それで、ちょっとお立場上、そんなことを聞かれても困るなと思うかもしれませんが、西村
参考人、私が今言っている意味はおわかりいただけると思うんですけれ
ども、とにかく金融再生法というのができて、それに基づいて最善の
努力をされたと思います。だけれ
ども、仮に、金融再生法じゃなくて、もうしようがない、信用秩序に影響を与えないよう、
日本経済に影響を与えないよう、国が管理して整々と旧日長銀を整理していくということになった場合に、それは可能だったという感じはありますか。というのは、僕以上に中身をよく見ていらっしゃるから聞くんです。
安齋
参考人にもお
伺いします。さっき、安齋
参考人は、そんなことをしたら
日本経済はひっくり返っちゃうというようなことを言ったけれ
ども、本当にそうかということですね。
これは個人的見解です。どうぞ安心して、西村
参考人。