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2000-08-08 第149回国会 衆議院 厚生委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十二年八月八日(火曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 遠藤 武彦君    理事 鴨下 一郎君 理事 坂井 隆憲君    理事 鈴木 俊一君 理事 山口 俊一君    理事 金田 誠一君 理事 五島 正規君    理事 桝屋 敬悟君 理事 武山百合子君       岩崎 忠夫君    岩屋  毅君       木村 義雄君    熊代 昭彦君       田村 憲久君    竹下  亘君       西川 京子君    堀之内久男君       三ッ林隆志君    宮澤 洋一君       吉川 貴盛君    吉田 幸弘君       吉野 正芳君    荒井  聰君       石毛えい子君    釘宮  磐君       土肥 隆一君    古川 元久君       三井 辨雄君    水島 広子君       山井 和則君    江田 康幸君       福島  豊君    樋高  剛君       小沢 和秋君    瀬古由起子君       阿部 知子君    中川 智子君       上川 陽子君    小池百合子君     …………………………………    厚生政務次官       福島  豊君    政府参考人    (公正取引委員会事務総局    経済取引局取引部長)   楢崎 憲安君    政府参考人    (警察庁刑事局捜査第一課    長)           井口  斉君    政府参考人    (厚生省生活衛生局長)  西本  至君    参考人    (雪印乳業株式会社代表取    締役社長)        西  紘平君    参考人    (国立感染症研究所食品衛    生微生物部長)      山本 茂貴君    参考人    (元大阪大学講師)    藤原 邦達君    参考人    (ジャーナリスト)    平澤 正夫君    厚生委員会専門員     宮武 太郎君     ————————————— 八月七日  遺伝子組換え作物食品安全性審査に関する請願鹿野道彦紹介)(第一一四号)  介護保険在宅介護利用料引き下げ等緊急改善に関する請願石井郁子紹介)(第一一五号)  同(小沢和秋紹介)(第一一六号)  同(大幡基夫紹介)(第一一七号)  同(瀬古由起子紹介)(第一一八号)  同(吉井英勝紹介)(第一一九号)  同(不破哲三紹介)(第一四五号)  同(山口富男紹介)(第一四六号)  慢性毒性を含む遺伝子組換え作物食品安全性確認に関する請願石毛えい子紹介)  (第一二〇号)  同(小沢和秋紹介)(第一四七号)  同(中川智子紹介)(第一四八号)  介護保険国民健康保険改善に関する請願小沢和秋紹介)(第一三九号)  同(中林よし子紹介)(第一四〇号)  患者負担の再引き上げ中止、安心してかかりやすい医療に関する請願瀬古由起子紹介)(第一四一号)  高齢者定率一割負担導入など医療費負担引き上げ反対に関する請願小沢和秋紹介)(第一四二号)  同(中林よし子紹介)(第一四三号)  乳幼児医療費無料制度の確立と保育所充実に関する請願木島日出夫紹介)(第一四四号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  政府参考人出頭要求に関する件  厚生関係基本施策に関する件(雪印乳業大阪工場食中毒事故等に関する問題)     午前十時開議      ————◇—————
  2. 遠藤武彦

    遠藤委員長 これより会議を開きます。  厚生関係基本施策に関する件、特に雪印乳業大阪工場食中毒事故等に関する問題について調査を進めます。  本日は、本件調査のため、参考人として雪印乳業株式会社代表取締役社長西紘平君、国立感染症研究所食品衛生微生物部長山本茂貴君、元大阪大学講師藤原邦達君、ジャーナリスト平澤正夫君、以上四名の方々に御出席をいただいております。  この際、参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中にもかかわらず御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、調査参考にいたしたいと存じます。  次に、議事の順序について申し上げます。  最初に、参考人皆様方から御意見をそれぞれ十分以内でお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。  なお、発言する際は委員長許可を受けることになっております。また、参考人委員に対して質疑すること、つまり逆質問はできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。  それでは、まず西参考人お願いを申し上げます。
  3. 西紘平

    西参考人 私は、雪印乳業の西でございます。本日は、どうぞよろしくお願い申し上げます。  このたび、大阪工場製造商品によります集団食中毒によりまして、数多くのお客様に大きな苦しみをもたらす事態を招いてしまいました。さらに、製品回収と情報の開示のおくれ、事故後の原因に関する弊社説明が二転三転したこと、記者会見時の発言の不手際等ございまして、弊社対応皆様方の信頼を大きく損なう結果となりまして、弁明の余地もございません。被害を受けられましたお客様及び御家族の皆様に対しまして、まことに申しわけなく、まずもって深くおわびを申し上げます。  さらに、弊社商品を御愛顧いただいてきましたお客様、長年にわたり弊社牛乳販売に御尽力をいただいている販売店主皆様、さらにお取引をいただいています皆様方、原料の供給を担っていただいています酪農家皆様方、株主の皆様及び御指導をいただいております関係当局皆様初め多くの方々に多大な御迷惑と御心配をおかけしておりますことを心よりおわび申し上げます。  また、食品安全性に対する不信感を蔓延させるような事態を引き起こし、食品業界全体に、ひいては広く国民皆様方に御迷惑、御心配をおかけしておりますことを深くおわびを申し上げます。  ただいまより四つ項目につきまして内容の説明に入りますが、最初に、原因究明事故の拡大というテーマでございます。  事故の直接原因究明につきましては、捜査当局に全面的に協力をいたしております。同時に、大阪工場食中毒事故調査委員会社内に設置し、現在、原因を鋭意究明中でございます。しかしながら、捜査当局立入調査を受けている最中であるため、事故原因も推測の域を脱し得ない状況でありますが、あえて可能性の強いものとして幾つか申し述べます。  一つは、各タンクをつなぐパイプラインの汚染でございます。二つは、調合過程における汚染でございます。三つは、製品利用過程での汚染。そして四つ目が、屋外での脱粉の溶解作業における汚染。以上四点を想定いたしております。さらに、工程中の複合汚染可能性を追求することも必要であるというふうに確認しております。  また、このような事態を招いた背景には、乳業界トップメーカーとしてのおごりが知らず知らずのうちに社内に蔓延していたのではないかというふうに深く反省もしております。そのことが、結果としてお客様の安全、安心を確保するための基本の不徹底を招いたものと思われます。  さらに、事故発生後の初期動作におきまして、危機管理体制の甘さがあったため、緊急時の意思決定がおくれ、告知、商品回収の遅延につながりました。そのため、本来であれば回避できたはずの多くの方々苦しみをもたらしまして、まことに痛恨のきわみでございます。  二つ目でございますが、今後の再発防止に向けてでございます。  最終的な再発防止策は、捜査当局による原因究明がなされた時点で、そのとき判明した事実をもとに再検討を要すると存じますが、現段階では、八月二日に厚生省様より御指示いただいた八つの事項を遵守するとともに、弊社としまして、以下の五つの対策により安全の確認をいたします。  その一つは、牛乳類につきまして、HACCPのプランの実効性検証するために、黄色ブドウ球菌毒素のエンテロトキシンの検査を採用いたします。二点目は、牛乳類以外の全商品につきまして黄色ブドウ球菌検査を増強いたします。三点目は、牛乳類の一たん容器詰めした商品の再利用を禁止いたします。四つ目は、商品安全監査室社長直轄で設置いたします。学識経験者など第三者参画お願いしております。五つ目は、第三者コンサルタント参画によります危機管理体制の再構築を図ります。  当面、以上の政策を実行し、「安全を提供しつづける雪印」が認められますよう、全社一丸となって努力をいたします。  大きな三つ目テーマでございますが、責任問題と厳正な処分でございます。  今回の事故に関しましては、弊社はこの責任を重く受けとめ、経営責任を明確にいたします。既に御案内のとおり、前社長石川を初め八名の取締役が退任いたしました。前社長石川から後継を託されました私以外の取締役は、全員辞意を表明しましたが、会社の運営上、必要なメンバーを十六名だけ留任とさせていただきました。また、社内事故関係者につきましては、原因究明された時点社内処罰を行います。以上により、社会的、社内的な責任を明確にいたします。  もちろん、これをもってすべての責任を果たしたとは考えておりません。新執行部として事故の真相を徹底究明し、再発防止全力を傾注することによって信が問われるものと思っております。  大きな四つ目でございますが、補償問題でございます。  現在、被害者皆様方には、すべてに優先しまして、弊社社員が一軒一軒御訪問をさせていただき、おわびとお見舞いを続けているところでございます。いまだ訪問させていただいていない被害者皆様へ一日も早くおわびとお見舞いをさせていただけるよう、全力を挙げて取り組んでいる最中でございます。また、今後、長期にわたりケアを必要とされる方々のために、大阪工場食中毒事故にかかわるお客様ケアセンターを設置しまして、会社としての責任を果たしていく所存でございます。  さらに、酪農家皆様方牛乳販売店様方、そしてお取引をいただいております皆様の補償問題につきましては、個々のケースに応じて、誠意を持って対処させていただく所存でございます。  私ども、今回の不祥事を深く反省するとともに、今後は、「全てはお客様のために」「安全を提供しつづける雪印」という言葉が決してスローガンに終わらずに、体質化するように弊社及び雪印グループとして努力していく所存でございますので、何とぞ御理解を賜りますよう伏してお願い申し上げますとともに、このたびの不祥事を重ねて深くおわび申し上げまして、意見陳述とさせていただきます。
  4. 遠藤武彦

    遠藤委員長 御苦労さまでした。  次に、山本参考人お願いを申し上げます。
  5. 山本茂貴

    山本参考人 感染症研究所山本でございます。  本日は、お手元にお配りいたしました資料に基づきまして御説明させていただきます。  今回、雪印で起こりました食中毒事件でございますけれども、この事件におきまして、HACCPハサップという食品衛生管理システムを取り入れた工場での事故であったということに関して、私ども専門家立場から、非常な驚きとともに、これからの現実との整合性といいますか、そういうものに関する考え方をしっかりと持っていかなければいけないというふうに考えております。  本日のお話は、食品製造業全般にかかわりますが、HACCPハサップシステムにつきまして簡単に御説明いたしまして、最後に、今回の食中毒事件問題点といいますか、どのようなところでこういうことが起こり得たのかというところについて若干の考察を加えてみたいと思います。  それでは、資料の二枚目をごらんいただきます。HACCPというシステムを取り入れるということになりますと、これは食品安全性、一〇〇%の安全性を求めるというシステムでございます。このシステムは、NASA、アメリカ航空宇宙局宇宙食が一〇〇%の安全性を確保しなければいけないということに基づき考え出されたシステムとされております。  これまでのHACCP以前の食品の安全ということに関しましては、危害の重篤度、高頻度に起こるかどうかという問題によって検体を検査しなければいけなかったわけですが、その頻度と重篤性が上がりますと、全数検査ということになってまいります。また、そういったロット検査ということは、食品の場合には破壊検査になりますので、危害が重篤であり高頻度に起こる場合には、その商品商品としてていをなさないという事態が起こり得ます。そこで、今回のHACCPというものは、工程管理することによってその製品が安全であるということを確保しようとしたシステムだということであります。  これは、WHOのガイドラインも出ておりますように、広域に流通する食品につきましては、これを大いに導入していくようにということになっております。そういったことから、米国、EU等では、広域流通食品、特に水産食品等ですが、これにはHACCPハサップ導入がなされております。  日本状況でございますが、日本は、平成七年、一九九五年ですが、食品衛生法の一部改正に伴いまして、総合衛生管理製造過程承認制度を創設いたしました。翌八年からの実施要領を策定いたしまして、乳・乳製品加熱食肉製品を初め、順次食品に対して導入をしておるところでございます。  次のページに参りまして、HACCP総合衛生管理製造過程という複雑な名前でございますけれども、それがどのような関係にあるかということを御説明させていただきますと、総合衛生管理製造過程といいますのは、HACCP一般的衛生管理プログラムというものを組み合わせたシステムになっております。  日本の場合には、その一般的衛生管理というものがやられていなかったのかといいますと、そうではございません。確かにやられてはいたんですが、それがきちっとしたマニュアルもしくは文書として残っていないとか、それに対しての記録検証がなされていないということがありました。  欧米諸国では、既にGMPということでそういうものが導入されておりましたので、比較的そのHACCPというものの導入が容易であると考えられました。  日本の場合は、この総合衛生管理製造過程におきまして、一気に二つのことを同時にやるということになったわけです。その概念的なものが次のページピラミッド構造になりますが、施設設備管理基準、これに一般的衛生管理プログラムを行いました上にHACCPというものが乗ってくるということになります。  では、HACCPとはどういうものかといいますと、英語のハザード・アナリシス・クリティカル・コントロール・ポイントというものの頭文字をとったものです。危害を分析して重要な管理点、これは工程上のものですが、そういった重要な管理点をコントロールするということになります。  HACCPには七つ原則がございます。これは、危害を分析する、CCPの特定をする、管理基準設定する、モニタリング方法設定をする、改善措置設定検証方法設定記録維持管理、そういった原則システムとしてございます。  さらに、それを作成するために、その次にありますHACCP作成の十二手順というものを踏みます。六番以降は先ほどの七つ原則でございますが、一番初めのHACCPチーム編成、これがかなりのウエートを占めてまいります。ここに管理責任者といいますか、経営上のトップの方がかなりそのチームリーダーとして入っておりませんと、このシステムそのものがうまく機能しないということになります。  と申しますのは、その施設設備等改善するにいたしましても、金銭的な問題を即座に解決しなければいけないというところで決断を迫られるからであります。また、このチームによってHACCPそのもの作成し、さらに運営していく上での問題点が生じた場合には、見直し等を行っていくということがあります。  乳製品の場合には、こういったHACCPチーム編成は当然行われるわけですが、大抵の場合は工場長等HACCPチームリーダーとなるようでございますが、そこに対して品質管理部門とかそれ以外に外部の機関のよくわかっている方のアドバイスとか、そういうものを経てつくり上げたわけであります。  その場合に、原材料から危害を分析していって、各工程におけるそういった危害が、つまり健康危害ですが、そういうものがどのように含まれるかということを分析していったわけですが、特に黄色ブドウ球菌等につきましては、原材料汚染、こういったものが昔はよくありました。しかしながら、最近では、農家等衛生管理が進んだ結果、ほとんど見られておりません。ただ、黄色ブドウ球菌そのものは人の体にもついておることがありますし、そういったものから牛乳汚染というものが起こり得るということであります。ですから、それがただ汚染したからといって即危害につながるわけではなく、増殖し、毒素を産生するという過程が非常に重要になってくるわけであります。  そういった微生物による汚染というものが起こり得るポイントというのをかなりきちっと特定してあったはずでありますが、それにいたしましても、その管理基準といいますか、黄色ブドウ球菌毒素そのもの検査するシステムがなければ、それは若干うまく働かなかったということになります。  ただし、今回の場合は、HACCPの問題と申しますよりは、それを運用する以前の一般的衛生管理プログラムにかなり問題があったと考えられております。  次のページ一般的衛生管理プログラムについて記載しておりますが、このようなポイントについて、次の絵を見ていただきますと、下の管理運営基準施設基準を土台にした上に十本の一般的衛生管理プログラムの柱を立て、その中で食品衛生的取り扱いCCPとして最も重要に管理するべき点ということで管理してきたわけです。この十本の柱の中にはいろいろなものがございます。従事者教育訓練従事者衛生管理といった問題、それから施設設備、器具の洗浄殺菌。そういった問題、これは一番の基本になりますが、そういったものが、今回でもある程度指摘されたように不十分ではなかったかということが考えられます。  それで、やはり施設設備保守点検衛生管理という問題は、今回の雪印食中毒事件における問題として大きく取り上げられることと考えられます。さらに、今回のHACCPそのもの変更を加えてあったといいますか、その承認後に変更があった点が問題かと考えます。これは、内部の検証及び外部検証という、HACCP原則の六番目のところで検証をするという作業がございますが、その検証作業がきちっと行われていれば、この問題もある程度は事前に察知できたのではないかと考えられます。  こういったことから、今回の食中毒事件問題点としては、基本的には一般的衛生管理プログラムの問題、洗浄殺菌等が不十分であったといいますか、マニュアルどおりに行われていなかった点、さらには、HACCPとしましては検証の部分が足りなかったのではないかと考えております。  以上で参考人陳述を終わらせていただきます。
  6. 遠藤武彦

    遠藤委員長 どうもありがとうございました。  次に、藤原参考人お願いを申し上げます。
  7. 藤原邦達

    藤原参考人 私は、長年地方の衛生研究所というところに奉職いたしておりまして、食品の安全問題に関与してまいりました。その立場から、特に公的機能必要性重要性について申し述べたいと思います。  この事件の特徴を四点に絞ることができると思います。O157事件、五千名の食中毒患者が発生した、これに続くような大規模食品中毒事故であったということ。二つ目は、日本を代表するメーカーでの、しかも最高度管理システムであるHACCP承認工場での大事故であったということ。第三点は、危機管理体制及び対応機能欠陥が明らかにされたこと。第四点は、行政の日常的な指導監視機能欠陥が明らかにされたことであったと思います。  最近号のアメリカタイムに、「粗悪なミルクが過去の恐怖を呼び覚ました。」過去というのは、恐らくかつてこのタイムが特集した堺の大食中毒事件だったと思いますが。その後に、「果たして見張り番はどこにいるのか。」ウオッチドッグという言葉が使われています。これは、恐らく世界的な、常識的な考え方であったと思います。こういった事件が起こったことにかかわっては、公的な監視指導機能の所在が問われるのは極めて当然のことであると私は考えております。  次に、予防体制あり方というのは、これは行政側食品衛生監視員企業側食品衛生管理者との協力のもとで行われる。これは日本の食の安全管理原則であるはずでございますが、HACCP取得工場ではこの食品衛生管理者を置かなくてもよいという法改正が行われた。このことは最大の問題点ではなかったかと思います。  次に、危機管理体制あり方でございますが、図にあるような関係セクションの間の連携が危機管理について十分作動しなければならなかった。HACCP現行体系の中には事故予防危機管理あり方が含まれていないということに留意すべきであると思います。  それで、食をめぐる最近の情勢でございますが、大規模食中毒事件が発生し得るような大きな変化が起こっていることを注目しなければならない。例えば、製造工程が高度化し複雑化した。流通体系広域化、多様化した。販売形態が激変した。加工、包装食品がはんらんしている。輸入食品が激増した。外食が一般化した。女性の社会参加高齢化世帯の増加という現実がある。新しい課題が続出している。大規模食中毒が発生し得る学校給食工場給食等集団給食が一般化している。規格基準国際化、ハーモニゼーション。こういった情勢変化のもとでは、もはや賢い消費者でさえも判別し選択することが困難な時代に変わっていると思います。  その意味においては、食の安全を確保するための公的な指導監視規制、表示などのシステムの形成こそが不可欠であると存じます。  それで、こういった場合の公的対応の最も核心となるのは食品衛生法でございますが、制定以来五十年を経過して制度疲労が目立つようになっています。あるいは、縦割りの法規や行政では対応し切れなくなっている。消費者権利確保が、その後につくられた消費者保護基本法あるいはPL法等、こういったものとの整合化が十分図られていない。それから、現行法反射的利益論が中心になっておりますが、これではもはや安全は確保できない。認証、規制監視指導などの公的機能情勢変化対応し切れていない。その前提の中でいかにHACCP体制導入しても、その成果が得られないのは私は当然ではなかろうか、そのように存じます。  当面、行政側対応が必要な事項とは何か。私は、法で定められた要許可施設の再点検が必要であると思います。学校給食工場給食あるいは病院給食、今大々的に広がっている介護関係給食等に関して、大規模食品取扱事業所を要許可施設に追加すべきであると思います。  第二点は、HACCP体制充実を図ることです。定期的な再審査、あるいは監視、取り消し、罰則等の規定を設けること。それから、先ほど申しました、特に承認企業での食品衛生管理者必置義務を復元させること。  それから、重要なことですが、食品衛生監視員法定監視回数が、法律で定められた回数の実行が二〇%を下回ってございます。この点に注目するべきではなかろうか。  輸入食品検疫体制、これの機能強化を図らねばならない。それから、危機管理体制法制化あるいは対応マニュアル作成に努力するべきではなかろうか。先ほども申されましたが、現行の乳及び乳等省令では毒素あるいはウイルスなどについての検査項目がない、これを追加すべきである。それから、保健所の食品衛生監視員の増員を図ることが必要であると思います。公的機能管理、維持する上では、機能低下をもたらすのはこの部分であると思います。合理化に名をかりた行政の第一線機能の縮小は認められないと思います。  企業側対応が必要である事項としては、予防体制の再点検社内責任体制の再整備、危機管理体制の強化、職員の意識向上と学習、教育の活性化に努めることが重要ではないか。大規模な食中毒が発生するという、先進国としては非常にお粗末な恥ずかしい状況をなくするためには、以上のようなことが必要ではないか。  結論といたしましては、最も日常的、反復的、長期的に営まれる食生活の意義を再確認しなければならない。憲法に定める人権あるいは消費者の権利における最も基本的な重要な事柄は、生きてあるということです。よりよく生きるためには食が重要である。その食の安全を守るための社会的な取り組みを強化するべきではなかろうか。WHOの健康の定義の中には、単に身体的、精神的なよりよき状態のみならず、社会的なよりよき状態という言葉があることを再認識するべきです。このままでは、国民消費者は予定された被害者に位置づけられる、そういったことを決して許してはならない。  今回の食中毒事件はまさに反面教師として、今の時点で、二十一世紀に向けてこれから私どもが取り組むべきさまざまな施策について非常に参考になることではなかろうかと思います。今後とも、消費者も企業も、そして行政全力を挙げて取り組むことが必要であると存じます。  以上でございます。
  8. 遠藤武彦

    遠藤委員長 どうもありがとうございました。  次に、平澤参考人お願いを申し上げます。
  9. 平澤正夫

    平澤参考人 ただいま御紹介いただきました平澤でございます。  私、ここでお話しさせていただこうと思っていることは、お手元にございます、これはつい数日前に発売された潮という雑誌に書いたこと、それともう一つ文芸春秋にも書きましたけれども、これは発行日の関係できょうこちらにお持ちして皆様に提供することができないんですが、それらに書いたことを踏まえながら少しお話しさせていただきたいと思います。  今回の問題で私が一番重要なポイントだと思ったことは、この潮の原稿の一番最初に書いてあることです。最大の問題点は、牛乳が生鮮食品であるのか、それとも工業製品なのかということにあるのだと思っております。メーカーの方は、ずっと昔からこれは工業製品として位置づけてつくっているとしか私には思えません。消費者の方はそう思っていない、牛乳は依然として生鮮食品であると思っている。ここに重大な考え方の違いがございます。  今回の問題は、単に社長対応を誤ったとか、あるいは社会に公表するのに最初時点から五十二時間もかかったとか、そういうことだけではない。それらはむしろ現象的な問題だと思います。  もう少し具体的に言いますと、雪印乳業も、つい数日前、大きな新聞広告で再利用はもうやらないと宣言しました。しかし、今までやっていたということ自体が消費者にとっては想像を絶することだったと思います。しかも、トップメーカーがやっていたということは、極めて責任が重大だと思います。  これはどういうことかと申しますと、ここに書きましたように、製品の再利用、車に例えますと、欠陥車と指摘されて、部品を取りかえてそれをまたそのまま使う。自動車の場合はそれで結構だと思いますけれども、牛乳の場合はそういうことがあってはならないと思います。これは単にモラルだとか気分だとかそういうことではなくて、牛乳食品としての性格に根差していると思います。  再利用するためには、当然もう一度熱をかけなければいけません。つまり、再加熱ということになります。生鮮食品であるとすれば、加熱するということは本当はやってはいけないことだと思いますけれども、これだけ流通システムが大きくなって、ほとんどの人が都市に住んでいると、朝搾った牛乳をそのまま買ってきて飲むというふうな社会ではありませんから、そうすると、どうしても最小限度の手を加えなきゃならない。それが、フランスの有名な化学者、一八九五年に亡くなりましたけれども、パスツールという人が編み出したパスツール方式の加熱、いわゆるパスチャリゼーションという加熱方式なんですね。  もう少し具体的に言うと、これは六十三度で三十分加熱する。もう一つやや簡便な方式として後で開発されたのが七十二度十五秒という……。何をねらったかといいますと、有害な病原菌はこれで全部死んでしまう、しかし、チーズをつくったりするときに必要な乳酸菌は一部残っている、そういう状態の加熱方式であるわけです。  ところが、現在日本でやっているのはそうではなくて、いわゆる超高温滅菌と申しまして、百二十度ないし百三十度二秒という加熱方式。これですと、病原菌だけじゃなくて乳酸菌も全部死んでしまいますから、チーズはつくれません。もちろん、雪印乳業日本で一番有力なチーズメーカーでありますから、そのための牛乳はパスチャリゼーションでやっている。消費者には、そういう六十三度三十分、七十二度十五秒のパスチャリゼーション牛乳は一滴も出しておりません。つまり、二重人格のようなことをやっているとしか私には思えません。そういうことで、消費者牛乳の加熱にそういう問題があるということも知らない。  また、今回の事故を起こしたのはカルシウム添加牛乳といわゆる低脂肪乳です。  この低脂肪乳の場合は、水とバターと脱脂粉乳があればできてしまいます。それをやはり百二十度ないし百三十度二秒で加熱してしまう。  カルシウム添加に至っては、牛乳が良質なカルシウムをたくさん含んでいるということは、メーカーはずっと昔から言い続けておりました。では、どうしてカルシウムを今入れるんですか、今まで言っていたことは何だったんですかということになると思います。実は、カルシウムを入れなければならないのは、超高温滅菌、加熱によってカルシウムがなくなるとは言いませんけれども、カルシウムが変性いたします。吸収が悪くなります。恐らくそれを補うねらいもあるのかもしれないけれども、とにかくカルシウムを入れて売っております。  もう一つ申し上げますと、ESLというタイプの牛乳があります。これは普通の牛乳より二倍日もちがするということになっています。ただし、幾らその牛乳の紙パックを見ても、ESLということは書いてありません。  現在品質保証期限というのが明示されておりますが、これは二週間ですから、ずっと先の日付が書いてある。そうすると、消費者は、ああ、これは新しいんだ、七日タイプのものよりも十四日タイプの方が品質保証期限が先にありますから、それで買ってしまう。でも、それを製造した日は同じ日なんですね。消費者は、牛乳は生鮮食品だと思っている。ごまかされて、あるいはだまされてと言うべきかもしれないけれども、ESLがいつつくられたのかということはわからないままで飲んでいる。  私、非常に断面的なことを言いましたけれども、とにかく、現在の牛乳は工業製品としてつくられている。雪印を初め日本の乳業メーカーが全部そういうふうにしてつくっております。  一番ここで私が望みたいと思っていることは、今回の事件を契機に、牛乳づくりのあり方をもとの生鮮食品に戻すということをどうしたらできるのかということを、メーカーだけではなくて消費者も含めて研究し実行していくことだ、このように思います。  以上で終わります。
  10. 遠藤武彦

    遠藤委員長 どうもありがとうございました。  以上で参考人方々の御意見の開陳は終わりました。     —————————————
  11. 遠藤武彦

    遠藤委員長 これより参考人に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。吉野正芳君。
  12. 吉野正芳

    ○吉野委員 自由民主党の吉野正芳でございます。  雪印社長西参考人にお伺いをしたいと思います。  今度の参考人質問について、雪印とはどんな会社なのかということで、御社で発行しています社史を読ませていただきました。また、最近の、これは六月に発行されたと思うのですけれども、雪印乳業会社案内というものも読ませていただきました。この社史を読んだときに、私は深い感銘を受けたのであります。  というのは、創業者宇都宮仙太郎氏、黒澤酉蔵氏、このお二人が雪印の創業者と言ってもいいのかなと思うのですけれども、雪印というのは、大正十四年、一九二五年ですからちょうど今から七十五年前に、北海道製酪販売組合、いわゆる酪農者の方々の組合という形で設立をされたわけであります。  このお二人の理念といいますか、それをこの社史の中から酌み取りますれば、特に黒澤氏は足尾銅山の鉱毒事件被害に遭われた農民の方々に対して農民救済運動という形で若いころ活躍をされた方でありますので、その方の理念といいますのは、北海道でありますから、デンマーク農業を通して、酪農を通して農地を豊かにしていく、健土健民、豊かな農地をつくり、豊かな農民をつくっていくという理念のもとでの雪印、組合の設立であったのかな、そういうふうに書かれております。  そのことで私は本当に感動をしたわけでありますけれども、そういう創業者の、大きな社会的役割を果たすんだという、北海道の地域の農家の方々、そして豊かな土地をつくるんだという大きな社会的役割を持ってつくられた組合だと思っておりますけれども、その辺について、今、創業の理念を踏まえて、食品業界トップ雪印社長として、雪印の社会的役割というものをどう認識しているのか、まずお聞かせを願いたいと思います。
  13. 西紘平

    西参考人 先生の御指摘のとおり、弊社の創業の理念といいますのは、一九二五年、今お話しいただいた組合からの発足でございまして、当時の関東大震災の後の物が余った時点で、乳価の暴落を防ぐために、酪農家みずからが、今のお話のとおり健土あるいは健人、健産、健産というのは産業でありますが、そういう理念からできた会社であります。  そして、最高の栄養食品であります牛乳乳製品というものの豊富な、しかも低廉な生産をすることを理念とした、さらに、創業以来、品質と信頼ということを基本牛乳乳製品を提供してきたわけでありますが、今御指摘がありましたとおり、近年になりまして、確かに品質と信頼という基本基本的に据えておりますけれども、市場の変化等々によりまして、今、私どもの競争優位の経営基盤であるとか、あるいはスピーディー・アンド・ステディーというキーワードにしましたローコストオペレーションであるとか、かなり原点とはかけ離れた体制になっていることについて、今さらながら、急ぎ過ぎてはいないかという観点から今回はこの点を原点に戻して反省をしております。  先生御指摘のとおり、品質と信頼というものを基本に置くため、これは原点に戻るわけでありますが、私自身も先ほど申し述べましたように、「安全を提供しつづける雪印」という、この理念に戻った会社基本的なスローガンを掲げている点も、そういう今回の反省からきている言葉でございます。
  14. 吉野正芳

    ○吉野委員 今回の食中毒事件と東海村で起きましたジェー・シー・オーの臨界事故、かなり私は共通点があるのかな、こんな思いでおります。それは、基礎基本という部分がかなり忘れられているというふうに思うのです。  「選択」の八月号で八木氏が述べておりますけれども、雪印の現場の作業員の方々が自分の取り扱う製品についていわゆる製品知識及び安全の知識が欠けているとしか思われない、ジェー・シー・オーの事故も核燃料という部分についての基礎知識が欠けているとしか思われない、こんなところでありまして、私もそうだと思うのです。  では、なぜ欠けていたのか。私でも臨界というのはどういうことかある程度わかっておりますので、臨界とか衛生や安全の知識が欠けていたとは私は思いません。  では、なぜそういうことが守られなかったのか。そこのところでありますけれども、この会社案内、これは投資家向けのパンフレットなんでしょうか、これは実は、今「「品質と信頼」を基本に」と書かれていますけれども、信頼を獲得するためにどういうことをするかというのは一つも書かれていません。ローコストオペレーション体制、いわゆるコストを安くつくってお客様の求める商品開発に全力を尽くすというのがこのパンフレットに書かれている中身であります。  そういう意味で、その基礎基本をわかっているんだけれども現実作業としてやることができないという、そこはやはり安全よりもコスト主義という体質があるのではないかと私は思うのですけれども、社長さんはいかがでしょうか。
  15. 西紘平

    西参考人 先ほど山本先生のお話もございましたが、HACCPそのものの運用以前の問題であるという御指摘がございましたとおり、今回の問題は、やはり今先生のおっしゃったような、日々の製造工程において、本来あるべき、本当に基本というところを忘れかけている、それがすべての原因だと思っております。  もちろん、それを引き起こしている、今御指摘の社内の風土、背景は何かという御質問でありますけれども、日々の管理の甘さという、実務レベルの基本の徹底ということは原点でありますが、しかし、必ずしもローコストオペレーションからくることとはまた別な観点でこの問題は私どもは整理をしております。
  16. 吉野正芳

    ○吉野委員 今回の事故を通じまして、いろいろ安全対策を、今社長さんからお話を伺いました。  実は、私どもの地元で雪印さんの協力工場がございます。この間電話をいたしましたら、こういう被害があったということは一言もおっしゃいませんでした。でも、こういう声を聞いてまいりました。自分のところの製品には自信を持っております、製品お客様に喜ばれております、雪印日本一の食品会社ですので、食品業界全体のためにも、一日も早く信頼を回復することを願っております、エールを送りますと。この、エールを送りますと最後に言葉があったので、本当に心打たれたのですけれども。  こういうことからしまして、今回の食中毒事故による教訓を踏まえて、安全対策のノウハウを食品業界全体に情報公開する意思があるかどうか。これは、自社の企業秘密の部分もあろうかと思いますけれども、これは一雪印さんの利益がどうのこうのじゃなくて、日本国全体の安全、食品業界の信頼回復という意味でも、私は現場レベルでのノウハウの公開という部分が必要かと思うのですけれども、その辺については社長さんはどのようにお考えでしょうか。
  17. 西紘平

    西参考人 今回の事件につきましては、食品全般の企業としていろいろな社会的な責任は重いと感じております。  現在、基本的な事故原因につきましてはまだ究明中であることは、先ほどお話を申し上げました。今の御質問、原因究明を含め食品業界のために情報の公開をするのかということにつきましては、私は、全面的に、時期を見まして、お役に立つことがあれば隠すことなくすべてお出しする、今後この業界の安全に関するきっかけとしてそういう立場であるべきではないかというふうに深く反省もしておりますし、先ほど藤原先生からもそういうお話がございましたので、これを機会に、この御質問に関しましてはお約束をさせていただきます。
  18. 吉野正芳

    ○吉野委員 社長さん、ありがとうございます。  ぜひ現場レベルでのノウハウの公開というところをお願い申し上げまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。
  19. 遠藤武彦

    遠藤委員長 次に、石毛えい子さん。
  20. 石毛えい子

    ○石毛委員 民主党の石毛えい子でございます。  参考人皆様におかれましては、きょうはお忙しいところをありがとうございました。よろしくお願いいたします。  私は、最初雪印乳業の西社長さんに、主として消費者のサイドからといいましょうか、そういう観点から御質問をさせていただきたいと思います。  ただいまの参考人としての御意見で、これから会社がおとりになります方策はお伺いいたしました。原因究明につきましては、ただいま捜査中ということもありましてというような内容であったわけですけれども、私は、会社としても原因は独自に検討していらっしゃることだと思いますので、明らかにしていただきたいと思います。  当然御存じの、もう報道されていることでございますけれども、私の思いの一つには、六月二十七日に食中毒の発生についてまず届け出がございまして、それから警察の関係とか保健センターがそれぞれ動き出すとかさまざまな動きがございまして、六月二十八日の夜十時五十五分に、保健所が雪印乳業に対し製造自粛、回収、社告を指示というふうに、行政としての方針を出しております。そして、このときに発症者の件数、人数で見ますと、大阪市で二件、近隣を含めても三件で、患者さんとすれば大阪市で十名、近隣を含めて十三名ということでございました。  それから、翌二十九日九時十五分に雪印乳業が自主回収を始められたわけですけれども、社告の掲載については先送りされたということでございます。そして、雪印低脂肪乳による患者の発生についてということで報道発表がなされたのがこの二十九日の十六時、四時ということになりまして、この日に大阪市で患者さんの人数が六十三人に上り、近隣を含めて百四十五名に上っているということです。  そして、翌六月三十日になりますと、大阪市の患者さんの数は千四十二人、近隣を含めまして三千五百七十二人。そしてさらに拡大をしていきまして、一万五千人に上る食中毒の患者さんが発症したということになるわけです。  この一連の経過を拝見していまして、まず二つお伺いしたいと思います。  その前に、私は、六月二十八日の夜、保健所が自粛、回収、社告を指示した段階で雪印乳業としても早急に対応をされていらっしゃれば、患者さんがこれほどにふえていくことは防げたというふうに思うわけです。  そしてもう一つ消費者として大事な観点だと思いますけれども、この回収、社告の指示は夜十一時前ということで、牛乳というのは大体朝飲むことが多いと思うんですね、食慣習にもよりますけれども、朝、パンと一緒に飲むとか。そういう食慣習上からも朝飲むことが多いというようなことも勘案しますと、なおさら、この二十八日の夜の段階できちっとした対応をされておられればこれほどの拡大にはならなかったのではないか。  そこで、戻りまして、二点でございますけれども、報道発表がおくれ、雪印としての対応がおくれた具体的な理由はどのようなところにあったというふうにとらえておられるかということが一点。それからもう一点は、雪印乳業として、牛乳というのは相性が合わない方も時にはおられますから、日常的にもいろいろな苦情も来るんだと思いますけれども、会社として、消費者からの苦情申し立てに対する対応の仕組みはどのようになっていたかということ。この二点をお教えいただければと思います。
  21. 西紘平

    西参考人 先ほども冒頭の陳述でお話を申し上げましたが、初期動作のずれというのかおくれというのが、今回、今御指摘のような非常に大きな被害につながったと思っております。  この件につきましては、現在、警察当局において捜査をいただいているところでございますけれども、社内調査によりますと、今お話ありましたように、二十八日、当時大阪工場長あてに大阪市より製造の自粛、回収、社告の要請を受けております。これは確認しております。  回収につきましては、今のお話のとおり、九日の早朝から行っております。  問題の社告ですが、これは六月二十九日の朝刊には間に合わず、また、三十日の朝刊ということですから二十九日の夕刊にも間に合わず、お客様への情報の提供が大変おくれたことについては申しわけなく……。この理由ということについては、やはり私どもの情報からくる判断の甘さだというふうに思います。それが最初の一点目です。  それから、お客様からの苦情の仕組みは、私ども全国ネットでお客様相談室というものをしいております。ただ、今回に関しましてはかなり急激な苦情の増がありましたので、初期においては大分御迷惑をおかけしてなかなかつながらないというのがございましたが、基本的には全国的にそういう体制をしいておりますので、通常の状態であれば即刻つながってお話を伺うようなことができたと思いますけれども、何分にも、今先生の御指摘のように十三名から百四十、そして三千という膨れ上がりの中ではなかなか、初期の段階では被害を受けられたお客様に大変御迷惑をおかけしていたというふうに聞いております。
  22. 石毛えい子

    ○石毛委員 もう少しそのあたり、判断の甘さと申されるのでしたら、そのとおりだった、恐らくそういうことだと思います。  この問題は、先ほど来参考人皆様のお話にございますように、HACCPの問題をどうとらえるかとかいろいろあるにしましても、事故が起こらないことはあり得ないことなんだと思います。ですから、万々が一でも起こる事故を想定して、どういう形で危機管理の一環として消費者の方に対応するかというのは、やはり危機管理の非常に重要な一分野といいますか要素になることだと思いますので、おっしゃられたことは私はそのとおりだと思いますけれども、もう少し詳しく、例えばお客様からの相談を受けたらどういうフィードバック体制になるのかとか、社告というのは、私もよく新聞で拝見しますので普通は新聞なのでしょうけれども、早急に出すためにはテレビの枠組みをお譲りいただくというようなことで緊急対応もできるというようにも思われます。  いずれにしましても、そうした非常に厳しいといいますかきちっとした方向性をも思いながら振り返っていただきますと、どういうふうにとらえられるかということをもうちょっとお伺いできればと思います。
  23. 西紘平

    西参考人 御指摘のとおり、社内マニュアルの中には同じような苦情が二件以上発生した場合にはというマニュアルがございますけれども、その判断というのは、今回は二十八日の三つのあの案件についての対応が非常に遅かったということについては重ねておわびを申し上げますが、少なくとも今回の一件を通して、当社に危機管理マニュアルというしっかりしたものはあるのですが、情報の連絡網というものはしっかりできておりますけれども、残念ながらその運用の中で事に関する意思決定をどこでだれがするということが非常に不透明なマニュアルになってございました。  したがって、今回の件につきましては、当然二十八日の保健所さんからの三点の要請につきまして私どものその事業を担当する部署で種々検討した結果なのでございますが、しかしどう見ましても、今だから言えることだと思いますが、初期の段階で危険の拡大という事の大きさを推測すれば、同時に今の生産の中止と商品回収とあわせて、今の御指摘のとおり朝刊が間に合わなくても何らかの方法で多くの方にお伝えすることができた、このことについては本当に遺憾だと私は思っております。
  24. 石毛えい子

    ○石毛委員 もう一点お教えいただきたいと思います。  先ほど平澤参考人もおっしゃられていましたけれども、消費者の一般的な感情といたしましては、牛乳は生ものだという思いがするのが普通だと思います。  そういう感覚からいいますと、大阪工場で屋外調合がされていたとか製品の再使用をされていたというようなことは、やはり日常的な感覚からいいますとそぐわない部分が全く大きいというのが実感でございまして、ただ、屋外調合は大阪工場のみというふうにも伺っておりますけれども、雪印本社といたしましては、日常的な経営管理システムの中でこの屋外調合がされていたということを把握されていらっしゃいましたのでしょうかどうか、その点の確認をさせていただきたいと思います。
  25. 西紘平

    西参考人 残念ながら、大阪工場の屋外における今の作業につきましては、本社の段階では掌握しておりませんでした。
  26. 石毛えい子

    ○石毛委員 わかりました。ありがとうございました。  時間が参りましたので、終わらせていただきます。
  27. 遠藤武彦

    遠藤委員長 次に、江田康幸君。
  28. 江田康幸

    ○江田委員 公明党の江田でございます。  今回の食中毒事件により被害に遭われた多くの方々に対して心からお見舞いを申し上げますとともに、一日も早い御回復をお祈りしておりますことを冒頭に述べさせていただきます。  今回の雪印乳業による食中毒事件は、一万五千人もの被害者を出して、乳製品、さらには食品全体に対する消費者の信頼を著しく損ねた事件として、事故原因の徹底究明と今後の再発防止、信頼回復が望まれております。  私は、再発防止の観点から、本日は、雪印の新社長、西社長に幾つかの質問をしてみたいと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。  食中毒事件の発生以来、加害者である雪印乳業には、殊のほか無責任な、そして危機管理意識の全くないずさんな対応を幾度となく見せつけられました。ただあきれるばかりでございます。記者会見におきましても、情報隠しや虚偽の報告、証拠隠滅など不誠実な言動を繰り返して、消費者の不安と不信感をさらに増幅させてしまいました。また、大阪工場における衛生管理体制のずさんさは目に余るものがございました。これら前代未聞の失態は、すべて西社長を初めとする経営者側の責任であるという確固たる自覚がありますでしょうか。  その責任を痛感した上で、西社長は、八月の三日、五項目から成る原因究明再発防止と題するコメントを発表されました。決して具体的とも精微とも言えない内容でございますが、改革の第一歩であると評価した上で、質問をさせていただきたいと思っております。  西社長は、このコメントによる対策がずさんな自主管理体制改善して再発防止に有効であると総じて考えられているのか、まず簡潔に答えていただきたいと思います。
  29. 西紘平

    西参考人 今の最初の先生の御指摘、責任を感じているかという御質問でありますが、私ども、残りました十六名も含めて、すべてこの件については会社トップ責任だというふうに感じながら日々仕事をしております。  さらに、今御指摘のありました五つ項目でございますが、もちろん、今後正式な原因究明がされた段階ではもっと多くの改善に向けて改革をすべきかと思いますけれども、現時点で、起こしたことの、毒素の問題を含めて五項目を申し上げましたが、特に毒性エンテロトキシンの確認をどうしようかということから議論しまして、十一日に二十工場全部検査機が設置できますけれども、商品工程におけるサンプリング、それから生産された製品からのサンプリングを含めまして、少なくともまずエンテロトキシンという毒性の確認ができるということは、私どもとしては、今の段階ではかなり大きな今回の事故に対する改革案の一つだと思っております。  さらに、その他の商品等々につきましてお話し申し上げましたが、もう一点だけつけ加えますと、安全監査室なるものを設けましたが、ここにおきまして先ほど来御指摘のありますHACCPの運用についての基本的な教育を含めた徹底を図りながら、あわせて全国の、三十四工場ございますが、ここで日々起きましたすべての状況が即座に入るようなシステムを含めて、今こんな体制で再生スタートしようと思っております。  御指摘のとおり、これで完全かということになりますと、今後の究明の中では不備な点があろうかと思いますが、今申し上げますこの五点の中でとりあえずスタートを切っていくという意思の確認をさせていただきます。
  30. 江田康幸

    ○江田委員 そのコメントの内容で幾つか御質問したいことがございます。  まず第一点。今申し上げられましたが、牛乳類の二十工場においてはHACCPプランの実効性検証するために黄色ブドウ球菌毒素のエンテロトキシン検査を採用する、また、商品については検査項目を増強するということでございますが、大阪工場衛生管理体制の実態を見ればわかりますとおり、食中毒を引き起こした主な原因は、そのほとんどが運営上のミス、また人為的なミス、職務上の怠慢でございます。つまり、HACCP実効性のあるものにするということは、その製造過程にかかわる人間の技能と意識にかかわっていると考えます。しかし、西社長言葉からは、検査項目の増強だけでHACCP実効性を確保しようとするような安易さはないのでしょうか。  もう一度食中毒事件原因を見詰め直した上で、お答えいただきたいと思います。このコメントの内容だけで本当に事足りることなのか、そして、製造担当者への教育訓練指導等も再発防止の一環として例えば考えられているとするならば、具体的にどのような対策を考えられているのか、答えていただきたい。
  31. 西紘平

    西参考人 今検査体制という、お話を申し上げました五項目でございますが、今の先生の御指摘のように、この五項目ですべてよくなるのかということでありますが、今回、あえて大阪工場以外の二十工場の生産をとめまして、第三者といいますが、基本的には厚生省様のいろいろな御指導のもとにすべてHACCPを中心とした検査、視察をいただきました。  その中に、数多くの工場別の指摘事項がございます。これは少なくともすぐに私どもとして改善をしなければいけないテーマでありますけれども、もう一点の、人間が仕事をしているという、ハードというものに対してこのソフトの分をどうするかということですが、これは四項目ほど、HACCPの遵守の中で決められている四項目を教育を含めて徹底してまいるつもりで、その指導機関も、先ほど申し上げました私の直轄の監査室の方に人を配置しまして、これから早急にそういう体制強化に入っていくつもりでおります。
  32. 江田康幸

    ○江田委員 わかりました。  三点目について御質問いたします。  牛乳類の一たん容器詰めした商品の再利用を禁止しますということにつきましてでございますが、ここで禁止すると明言された再利用というのは、厚生省の省令に違反する再利用のことでしょうか、あるいは省令で認めるものも含めてすべての再利用を禁止するということなのでしょうか。また、再利用禁止によるコストの増加分というのは、消費者負担として転嫁されるようなことはないのかということをお伺いしたい。
  33. 西紘平

    西参考人 再利用につきましては、製品としてつくりましたすべてを再利用せずという決定をしております。  さらに、今の、この再利用しないことによるコストのアップを消費者負担をどうするかということでありますが、この再利用にかかわる全体のロスは私どもの社内の一年間の計算をしますとちょうど〇・一%に当たります、この〇・一%は当然末端への付加をすることなく、今回の起こした責任上、社内で吸収をしながら努力をするつもりでおります。
  34. 江田康幸

    ○江田委員 四点目でございますが、商品安全監査室社長直轄で設置する、学識経験者など第三者参画も要請しますとございますが、この監査室というのは、先ほども申されましたが、具体的にはどのようなシステムになっておりますでしょうか。今、最も大事と思われているのは、HACCPの運営上の自主管理体制がきちんとしかれるかどうか、それを監査するということだと思いますが、具体的にお考えのところを教えていただきたい。  また、これは日常的に行われるはずのものでありますが、そのような監査室に第三者参画させて恒常的にそれが機能するのかということに加えまして、学識経験者とはどのような学識を示しているのかということに関して、再度お願いいたします。
  35. 西紘平

    西参考人 商品の安全監査室を設置いたしました。私がみずからその担当をしておりますけれども、今、この組織の概要は、経営職が六名でおりまして、そのほか一般職を十名を下につけて運用するつもりでございます。そして、基本的な仕事の一番目は、先ほど来お話し申し上げていますHACCPの運用に関する工場の実態とその教育でございます。  さらに、外部というお話でございましたが、あくまでも当社は、今まで当社のいわゆる衛生管理に関する常識というものが、外から見たら当然なんですけれども、その食い違いを多いに感じました。したがいまして、今回当社で、今申し上げました十六名のスタッフでこの監視体制に入りますけれども、あわせてHACCPに関します専門的な先生方のお力もかりながらこの監査室の運用を図ろうという意図から第三者というお話を申し上げております。
  36. 江田康幸

    ○江田委員 時間がなくなってまいりましたので、今、西社長がお答えになったことを本当に私も大いに要望いたします。今回、総じて雪印に必要なことは、食品衛生と消費者優先という当たり前のことに対する謙虚な意識改革が必要であって、ただ、今回五項目というものを出されましたけれども、システムだけ改革すればいいというものではないということを国民が願っているということを肝に銘じて改革を続けていただきたいと思います。  以上で終わります。
  37. 遠藤武彦

    遠藤委員長 次に、武山百合子さん。
  38. 武山百合子

    ○武山委員 自由党の武山百合子でございます。きょうは、暑い中、参考人皆様、御苦労さまでございます。  早速ですけれども、雪印社長の西さんにお伺いしたいと思います。  先日、雪印乳業のいわゆる現地調査に関する専門評価会議という結果が出ております。調査結果の概要ということでいろいろ問題点があぶり出されたわけですけれども、これを見まして国民は、食の安全という意味で、意識上は危機管理という意味で、消費者としての立場で本当にこれが安全かどうかという意識で物を買うように大分進んできたと思うのですね。しかし、その安全性という意味の企業のロイヤルティー、その辺は自信を持って企業責任を果たしていると言えるかどうか、ちょっとお聞きしたいと思います。
  39. 西紘平

    西参考人 先ほど七十五年の創業の精神を御質問もございましたしお答えしましたけれども、私自身もそういう自信を持ちながら来たつもりでありますが、今回の大阪工場事件を通しまして、非常に自分自身でも悩んでおりますし、先ほど来安全に関する今できることのお話を申し上げておりますけれども、この一月間で失った社会的な当社に対する信頼というのかそういうのは非常に大きいものだと思っておりますので、やれることからすべて改革、改善をしてまいりますが、まだまだこれから多くの課題があろうかと思っていますし、また、信頼という従来のところに達するには相当な長期間かかることだというふうに今覚悟しております。
  40. 武山百合子

    ○武山委員 先ほど皆さんの御質問の中にも、また皆さんの意見の中にも、やはりHACCPプランの問題だということで、この実効性をどう担保するかということが非常に問題だと思うんですね。  この実効性を担保するために先ほど五つのいわゆる改革案ということで話されましたけれども、この社内体制をどう担保するのか、その実効性の担保という点で西社長にお聞きしたいと思います。
  41. 西紘平

    西参考人 HACCPの運用に関しましては、従業員の教育として四つの柱を今整理しております。  一つ目は、従業員の衛生管理でありまして、服装や衛生的な習慣、あるいは食品の衛生的な取り扱いなどについて教育しております。二つ目は、食品関連法規概論であって、これは食品衛生法あるいは乳等省令の知識などについてです。三つ目は、総合衛生管理製造過程概論でして、HACCPプランの基本的な内容でございます。四つ目は、洗浄殺菌の技術についてでありまして、洗浄理論と機械装置についての教育でございますが、これらを衛生教育の計画として実施しております。  しかし、実施しながら今回のような事故が起こったわけでありますので、再度これをどう三十四工場に徹底すべきかというテーマにつきまして、これから先緊急なテーマとして、先ほどお話を申し上げました監査室のもとでこの運用強化に入っていくつもりでございます。  またあわせて、私どもの三十四工場は、必ずしも、歴史的には古い工場もございますが、お客様からそういう安全、安心の確認をいただくような姿勢を示す意味でもいつでも御訪問いただけるような、そういう指示をしておりますので、外からもそういう開かれた会社、あるいは工程を見てもということを含めて、社内の意識改革を徹底的にこの際図るつもりでその教育課程については早急に立ち上げをいたします。
  42. 武山百合子

    ○武山委員 先ほどお話の中に厚生省の御指導のもとというお話があったんですけれども、このHACCP充実というのは、最低限これを守らなきゃいけないという基準なわけですね。今のお話の中だと、こんな上にHACCPがあって、そのいわゆるマニュアルに到達するまでにまだあちらこちらの御指導も受けなきゃいけないという印象なんですね。それでは日本の国は先進諸国と言えないし、質の高い企業運営をしているとはとても言えないわけですね。  厚生省というのは、繰り返しになりますけれども、基本的なものをつくるだけであって、厚生省におんぶにだっこという体制は甘いと思います。ですから、そういう企業のモラル、企業のそういう体質、それが最も原因だと思いますので、もう本当に、二度と厚生省の御指導のもとなんという、自立した考えでやはり企業運営をしていっていただきたいと思いますので、ぜひそういう意味で頑張っていただきたいと思います。  あくまでも、この委員会雪印をいじめるわけではありませんので、頑張って企業体制を整えて、また本当に国民から信頼できるものをかち得てもらいたいというもとでこの委員会が開かれているわけですので、ぜひそういう意味で、自分たちが何をしなきゃいけないか、安全性で、この雪印製品を本当に誇りを持って安全だと心から言える製品をつくるということがまず第一条件だと思います。  それから、山本さんにお聞きしたいと思いますけれども、いわゆるHACCP取得工場では食品衛生管理者を置かなくてもよいということになっているわけですけれども、その辺のお話をちょっとお聞かせいただけますか。
  43. 山本茂貴

    山本参考人 HACCP基本的な考え方からいたしますと、自主管理がその状態でできるということになっておりまして、特段それに加えて衛生管理者を置く必要はないというシステムでございますので、食品衛生管理者を置かなくてもよいということになっております。
  44. 武山百合子

    ○武山委員 そうしますと、現実的には、それはあくまでも基準であって、実態と運用の面では非常にかけ離れていると言えると思うんですね。それで、結局今の体制の中では事故の予防と危機管理あり方というものが含まれていないということですけれども、それはそうなんでしょうか。
  45. 山本茂貴

    山本参考人 HACCPシステムそのもの考え方は、事故を未然に防ぐという考え方が入っております。ですから、それが確実に実行されれば事故は未然に防げるということに理論上はなっております。
  46. 武山百合子

    ○武山委員 そうしますと、また山本さんにお伺いしたいと思いますけれども、雪印問題点ということで先ほどお話しいただきましたけれども、食品衛生管理者をやはり置くべきだと私は今の全体的な枠の中から感じますけれども、この問題点食品衛生管理者がチェックをしなきゃいけないという点で、基準的にはそうなっていますけれども、雪印には置いた方がいいと思いますでしょうか。
  47. 山本茂貴

    山本参考人 HACCPシステムそのものをきちっと運用するということであれば、それを特に雪印に置く必要は考えられません。  と申しますのは、そのシステム自体がそれぞれの工程をみずから監視できるシステムということで、責任者はそれぞれHACCPシステムの中に存在しておりますので、それ以外に食品衛生管理者ということで置く必要はないと考えております。
  48. 武山百合子

    ○武山委員 そうしますと、西社長にお聞きしますけれども、会社としては置きたいと思っておりますか。それからもう一つHACCPチーム編成の中にトップリーダーが参加しておりますでしょうか。
  49. 西紘平

    西参考人 各工場には食品衛生の責任者は全部配置してございます。
  50. 武山百合子

    ○武山委員 それは工場長という意味ですか。やはり西社長にお聞きしますけれども、管理責任者工場長という意味でしょうか。これだけ大きくなりますと、トップがもっとたくさんいらっしゃると思うんですね。そういうトップはあくまでも現場に任せているという言葉で受け取れるんですけれども、本社のトップがこういうものに入っているのかどうか、そこをまずお聞きしたいと思います。
  51. 西紘平

    西参考人 今の、工場関係工場長並びに製造課長がその責任者として各工場に専門的にその業務としては機能上は置いておりますけれども、本社の方につきましては、私どもは、生産技術部という管轄部署がございます。
  52. 武山百合子

    ○武山委員 それでは、西社長は今まではどこの部署にいたかわかりませんけれども、工場は全部このたび視察しましたでしょうか、細かい部分も含めて。
  53. 西紘平

    西参考人 私、個人的なことで申しわけないんですが、七月の二十八日までは東日本という関東圏、東北を全部含めた営業、生産の支社長をしておりまして、今回の件に関しては、私自身が担当している十三工場はすべて回りました。これは東日本に属する工場でございます。  あわせて、事故を起こしました大阪工場には、七月の二十日に内部を見せていただきまして、いろいろな職員から今回の件に関するあるいはこれから先に対する提案を聞いてまいりました。
  54. 武山百合子

    ○武山委員 食中毒における問題点ということで先ほど国立感染症研究所山本さんからお話をいただいていますけれども、西さんは、この調査結果で日野工場やら新潟工場、それから高松工場でも実際にはいろいろと問題点が、チェック機能が十分でなかったと出ているんですけれども、御自分の目では見ましたでしょうか。そういう部署を見たかどうかということをお聞きしたいと思います。
  55. 西紘平

    西参考人 今のお話で、私自身は新潟と日野は見てございます。  ただ、私自身は、まことに申しわけありませんが、営業の出身でありまして、外から工程を見て問題が、例えば申請漏れのタンクがこれであるということは認識しておりますけれども、外から見てその原因を含めたところまでなかなか見切れないというのが実態でございます。
  56. 武山百合子

    ○武山委員 それでは最後の質問になりますけれども、先ほど厚生省の御指導のもとなんという言葉はぜひ使わないでくれと言いましたけれども、逆に厚生省に対して何か注文がありましたら、ぜひ言っていただきたいと思います。
  57. 西紘平

    西参考人 先ほどお話ししましたように、今先生の御指摘のように、今回の問題はまさに中にあります。したがって、中の確立が最優先であることは間違いありませんが、今後、工場の安全確認を、運営する段階で、定期的で結構ですから、でき得れば工場近接の保健所さんあるいはそういう公的な機関の方に当社の内部の視察をいただきまして、いろいろな御注意その他についての御意見を賜る機会はいただきたいと思っております。
  58. 武山百合子

    ○武山委員 時間でございますので、きょうはどうもありがとうございました。
  59. 遠藤武彦

    遠藤委員長 続いて、瀬古由起子さん。
  60. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 日本共産党の瀬古由起子でございます。  では、雪印の西社長にお伺いいたします。  厚生省調査では、雪印の大阪工場だけでない、すべての工場HACCP認定の際に再利用工程が記載されていないということが明らかになりました。再利用というのは業界としては当たり前だと言われていますけれども、なぜ再利用工程が記載されていなかったのか。全部記載されていなかったんですね。これは偶然とは言えないと思うんですけれども、これはある意味では申請隠しじゃないかという御意見もあります。それとも、これは厚生省に事前に御相談された上で書かなかったのか、いかがでしょうか。
  61. 西紘平

    西参考人 今の御指摘の再利用を記載されていないということにつきましては、実態でございます。(瀬古委員厚生省と相談したのかということです」と呼ぶ)いや、しておりません。当社の独自の判断でそういう処置をしておりました。
  62. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 そうすると、その一つだけじゃなくてすべての工場ですからね、何か偶然に、再利用というのは当たり前のように行われているわけですから、それを全部外したというのは、明らかに会社の方針として外したというように言えるんじゃないかと思うんですけれども、いかがですか。
  63. 西紘平

    西参考人 明らかに、今回の再利用に関しましては会社独自の判断でございます。
  64. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 明らかに会社がある意味では申請隠しをやったということは言えると思うんです。  再利用考え方という問題なんですけれども、先ほど社長がお話しになりましたように、今後、製品になった以降のものは廃棄するというように言われましたね。製品にならないものはまだ再利用されるということなんですね。再利用というのはいろいろな考え方がございます。それこそ今回の雪印の場合は、商品になったものも返品されて再利用されていた。この再利用という考え方については、厚生省と話し合ったことはございますか。こういう御指導があったことはありますか。
  65. 西紘平

    西参考人 今回の一件に関しましては、ございません。
  66. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 そうすると、独自の判断で再利用をやっていたということですね。そして、ある意味では、商品を、店に並んでいたものを戻しても再利用という考え方が大阪工場などにもあった。大阪工場だけではありませんね、ほかにもありましたけれども。そういう判断も再利用という中に入っていたということですね、会社の判断で。
  67. 西紘平

    西参考人 今の御指摘のとおりでございます。
  68. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 もう一点聞きますけれども、加工乳を原料として加工乳に使っていたという問題。これは法令の、省令の違反だと言われているんですけれども、業界の中では厚生省からこれはいいんじゃないかという御指導もあったというように聞き及んでいるんですが、これは厚生省と御相談されたのでしょうか、独自の判断でしょうか。
  69. 西紘平

    西参考人 今の加工乳から加工乳への使用についても、これは私どもの会社の判断ですべて行ってきたことでございます。
  70. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 そうしますと、これは明らかに法令違反だという認識の上で使われたんでしょうか。その点はいかがでしょうか。
  71. 西紘平

    西参考人 その点に関しましては、法令違反ということを認識しておりませんでした。
  72. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 本当に申請にわかっていながら隠している、そして、こんな大事な基本的な問題も、法令を知らないで使っていましたと。私はこれは大変責任が重いと思うんですね。  そこでお聞きしたいんですけれども、この事件被害を受けた北海道の酪農協会は、品質にまさる原料はなしの理念を胸に懸命の努力を続けてきたんだ、今回の事件はこの努力を無にするものであり怒りを禁じ得ないと、本当に苦労された方は怒ってみえるわけです。そして、そういう申し入れを雪印にされましたね。三重県の専売店にお聞きしましたけれども、四十数年続けてきたこの商売をこの先やっていけるかどうか不安だ、金利がゼロでお金は借りられるということになっても、本当にこの信頼は取り戻せないんだという切実なお声です。  ですから、補償はやりますよというものも、一方的に押しつけるんじゃなくて、販売者や生産者とよく話し合って補償問題というのは解決すべきであると考えますけれども、その点、いかがでしょうか。
  73. 西紘平

    西参考人 まさに御指摘のとおりでございまして、先ほど誠意を持ってというお話を申し上げましたが、これは当然個々の問題ではありますが、それぞれの関係者の方と御相談申し上げて、補償の問題については回答していく所存でございます。
  74. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 西参考人に最後にお伺いします。  加工乳の原料にはできるだけ生乳の使用割合を多くするという通達が昭和四十八年に出されているんですね。ところが、雪印が輸入する脱脂粉乳の量は業界全体の六三%、これは九七年度なんですけれども、他のメーカーと比べても圧倒的に脱脂粉乳の利用が大変多いわけです。そういう特別な状態です。これは、先ほど指摘されていましたけれども、低コストという発想があるのじゃないか。そして、脱脂粉乳を大量に使った加工乳を大量に生産し続ける乳製品生産のあり方そのものも今問われているのではないか。そういう点では、生乳の安定確保にとっても、加工乳の原料の安全性、品質の確保という点からも、脱脂粉乳を使い続けるという発想はもう変えるべきじゃないかと思うんですけれども、その点、いかがでしょうか。
  75. 西紘平

    西参考人 非常に御指摘のとおりで、今社内で検討中でございますが、将来にわたる消費者から見たおいしい、安全なる商品の提供という観点からも、やはり今以上に生乳の使用率を上げることにつきましては、既存商品で生乳使用率を上げること、さらに、生乳を使いました新製品の開発を焦点を絞って積極的に行うこと。もう一点は、これは今進めておりますが、いわゆるユーザーというのか大手の業務用関係も最近は缶コーヒーとかスープ等の原料に、かつては全脂粉乳あるいは脱脂粉乳を主としてお使いいただいたんですが、最近は風味その他の点もございまして、要するに液状化という流れがございます。その三点から、当然加工乳の使用も含めまして、当社としましては、限りなく生乳の使用率を上げながら今の御指摘の方向に向かっていく所存でございます。
  76. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 では、藤原参考人にお伺いします。  今回、一番安全だと言われていたHACCP工場で戦後最大クラスの食中毒の事件となりました。HACCPシステムあり方そのものが問われていると思うんですけれども、その重要な問題点というのはどういうふうにお考えでしょうか。  それから、もう一点です。今回の事故の教訓からも、食品衛生における監視充実、これは先生も指摘されたのですけれども、これは大変重要だと思っています。ところが、政令に定められた監視率というのが、全国で一四・五二%と本当に年々下がっているんですね。監視の専従者もゼロという県が十四県もございます。こういうひどい状況ですから、監視体制をどう考えてみえるのか。この二点についてお伺いしたいと思います。
  77. 藤原邦達

    藤原参考人 先ほどからHACCPシステムの問題に話が集中しておりますが、私個人としては、このシステム食品衛生学上の極めてレベルの高い管理方式であることを認めたいと思います。  ただ、食品衛生法の第十九条の十七に食品衛生管理者を置くということが決められている中で、法改正によって置かなくてもいいとした理由に、その当時からいろいろ議論があるのですが、承認時において工程管理する多重的な衛生管理が実施されるので置く必要がない、当時の担当者がそう申しております。私は、承認時点だけが問題ではなくて、実際に最終製品検査に至るまでの全過程について工程管理監督する責任者が必要であるというふうに思います。  ここで大事なのは、従事する者を監督するという、関係職員のモラルの維持向上あるいは教育、指導などを含むような当事者責任にかかわる表現が使われていることに注意するべきではないか。総括責任を預かる人の存在が大事ではなかろうか。責任を持つ人あるいは管理する人としての存在を省くというようなことが、結果的に安全性についてはそぐわない状況を生み出しているというふうに私は考えております。  アメリカのこの分野の最高権威者であるロバート・グラバニ氏が、私の図表八ページにございますけれども、ダイヤグラムを発表しております。そのダイヤグラムの一番トップのところに経営者の管理責任という項目がございます。今回の事故が発生した理由として、こういう管理責任にかかわる取り決めが大変甘かったということを私は指摘しておきたいと思います。  HACCP問題点はたくさんございます。これは私の七ページにあるのですけれども、専門家チーム編成ということがうたわれておりますけれども、専門家の水準とか資質とか、あるいは構成とか、あるいは検証の確実性、助言の信頼性、そういうものについて何ら客観的に保証されていない。各企業の自由にこういったことが許される、こういったところに問題があるのではないか。  申請書類の審査において、あるいは承認後の事務において、あるいは申請変更にかかわる点において、そして最後に、査察制度というものがないということは当初から問題にされている。第三者による客観的査察、これが私は非常に重要ではなかろうか、こう考えております。  それから、御質問の第二点でございますけれども、食品衛生に当たる行政食品衛生監視員、これは十ページ厚生省が出しております我が国の安全確保のための体系図がございますけれども、全国に七千六百名ぐらいの監視員がいらっしゃいます。この監視員が実際に指導監督する施設の数は、この一番最後の二行にございますけれども、要監視施設で二百六十万、不要監視施設で百六十二万。これを一人当たりの年間監視回数に換算しますと、要監視施設で三百四十一施設、全体で五百五十五施設監視しないといけない。こういったことは実態において非常に困難である。これは法律で決められているいわゆる法定監視回数、最高年間十二回ということですけれども、こういったことは絶対に実施できるはずがない。つまり、法令の定めを尊重するという行政の任務が果たされていないという現実があることを指摘しておきたいと思うのです。  こういう問題が指摘された場合、行政側はえてして効率化で対応しているとおっしゃいますけれども、これはまず法令を守った上での効率化でなければならない、私はそのように考えております。
  78. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 ありがとうございました。  もう時間がございませんので、山本参考人平澤参考人には質問できませんけれども、失礼いたします。ありがとうございました。
  79. 遠藤武彦

    遠藤委員長 次に、阿部知子さん。
  80. 阿部知子

    ○阿部委員 社会民主党を代表いたしまして、私、阿部知子、御質問をいたします。  まず初めに、本日の参考人お願いいたしました平澤さんに御質問をいたします。  私は、たまたまでございますが、平澤参考人とは長い間のおつき合いがございまして、三年ほど前に「日本牛乳はなぜまずいのか」という御著書をいただきました。そして、今回この雪印事件が起きましたときに、平澤さんにお電話申し上げましたところ、やはりねという言葉が返ってまいりました。  先ほどの参考人のお話でもございましたけれども、牛乳というものが、生鮮食料品としてではなくて、あたかも工場からでき上がる工業用品のように日本の日常の生活の中で取り扱われていることをやはり一番大きな問題にいたしまして、まず最初の御質問をいたします。  もちろん、それに先立ちまして、今般の事態は、雪印乳業の大変にずさんな管理、あるいはまた、HACCPという制度を過信し、その点検すら怠った厚生省行政の怠慢、あわせて食品衛生法等々の中に見られる消費者への通達の余りにも無配慮、これは先ほど民主党の石毛先生の方からも御質問がございましたので、これらについては後ほど時間があれば触れさせていただきます。  まず、日本乳等省令等々の取り扱いとも関連いたしまして、ここに言われます、超高温滅菌と言われるような手法を用いて牛乳を完全滅菌するような手法は、日本しかとは申しませんが、東南アジア等々の暑い外国ではあることと聞いておりますが、ヨーロッパ並びに欧米では採用していない殺菌方法を、日本が好んで、特にかの森永砒素ミルク事件以降の森永乳業が採用したのを初めとして、日本の乳等行政の中に取り入れられたと聞いておりますが、この日本的独自性について平澤参考人の御意見を伺います。
  81. 平澤正夫

    平澤参考人 今御指摘あったポイントですが、超高温滅菌、別名UHT、これはウルトラ・ハイ・テンパラチャーのイニシアルをとったものなんですが、それを普通の飲用牛乳としてこんなにたくさん飲んでいる国は、少なくとも先進国では日本だけだと思います。諸外国でも飲んでいると言う方がいますが、それは料理用だとか、あるいは家でクッキーなんかつくるとか、あるいは旅行のときだとか、非常に限られた用途。  それからまた、特にヨーロッパの国々では、牛乳はチーズで摂取するものが非常に多い。チーズというのは、百グラムのチーズをつくるのにその十一倍、千百グラムの牛乳を必要とします。ですから、私たちが一切れのチーズを食べているといっても、随分たくさん牛乳を体の中に入れているのと同じこと。これは、先ほど参考人としての陳述で申し上げたように、六十三度三十分、七十二度十五秒のパスチャリゼーションのミルクでなければできません。  では、日本はどうしてそうなったのかというのは、簡単に言いますと、やはり牛乳は生鮮食品だという観念がほとんどないということです。うんと温度を高くすれば長もちする、それは現在の巨大な生産機構、流通機構に大変うまくフィットするという考え方で、消費者はほとんど何も知らない。今回、私は、この事件が起きてから何人かのジャーナリスト、広く言えば私の同業者ですが、一流の新聞あるいは通信社、雑誌社の人から取材を受けましたけれども、彼らはほとんど何も知りませんでした。
  82. 阿部知子

    ○阿部委員 ただいまの平澤参考人の内容に多少関連いたしまして、次に山本参考人にお伺いをいたします。  我が国がこの特別な超高温殺菌という方法をとり、なおかつ、たくさんの加工過程を経て今般の雪印製品ができ上がっているということでございますが、逆に、低温滅菌法等々を用いました場合の品質の保持と高温滅菌を用いました場合の品質の保持、すなわち、乳製品におきましては、搾った段階でのさまざまな細菌数、それが、高温滅菌を受けましたときの細菌数の推移、低温滅菌で行いましたときの細菌数の推移等々が貴施設には数値として上がっていると思いますが、製品としてあるいは商品としての品質の比較をお願いいたします。
  83. 山本茂貴

    山本参考人 品質という味の観点で見ますと、中には変わっているものが存在するかもしれませんが、衛生管理上は、低温殺菌、高温殺菌とも同等の効力を有するものとしてやっております。
  84. 阿部知子

    ○阿部委員 ただいまのような漠然としたお答えでは、実は、食品衛生微生物部長としてのお答えではないと存じます。  何を私が伺いたかったかは、例えば、超高温殺菌いたしまして三週間たったときの細菌の増殖状況並びに低温殺菌をいたしまして三週間たったときの細菌の増殖状況は、明らかに差がございます。低温滅菌におきましては体に有益とされる乳酸菌等々が残っておりまして、他の余分な細菌の繁殖を防ぐということも言われております。今回、加工乳の使用、生成に当たりまして、再利用いたしました商品そのものにも超高温滅菌をされ、例えば三週間経た商品そのものにも問題があったやに考えられますので、この点につきましては後ほどでも結構ですので、三週間、二週間、一週間と、時間を経た場合の細菌数の増殖の実態についてお答えを準備していただきたくお願い申し上げます。  引き続きまして、西参考人にお伺いいたします。  先ほど来、HACCP等々のより精密な、緻密な改善等々のお話もございましたが、現実に起きていることは、既に雪印乳業の皆さんも御存じのように、非常に低次元の単純なミスからも生じております。その中で私が一点お聞きいたしたいのは、二十七日付の産経新聞等々でも報道されておりましたが、返品された牛乳パックを、本来は運搬に従事する作業員の方、いわゆる運転なさる方が手であけて戻された。このような運搬を本来は業とすべき運転手の方にパックを開封し戻しなさいという業務命令はどなたがなさったでしょうか。
  85. 西紘平

    西参考人 業務命令ということではございませんが、大阪工場に関しましては、庫内の一部の作業外部委託でやっております。したがいまして、その事実につきましても、当社の調査で事実そのとおりであったというふうに聞いておりますけれども、それを指示したということではなくて、下請をいただいている業者がそれを解体し、そしてタンクにという作業工程かと思いますが、運転手が云々までの指示は一切しておりません。
  86. 阿部知子

    ○阿部委員 指示がなければ、本来運転をなさるための業務を頼まれた方は牛乳のパックをあけてもとに戻すことはないわけでございます。そして、幾らHACCPの目に見える書類上の工程をしっかりなさったとしても、現場の労務管理を含めて、さまざまな孫請、下請が現実に今の乳工場を支えている中で、机上の空論にそれではなってしまいます。だれも命令しないものを、決して運転手さんはみずからパックをあけて工程の中に入れたりはいたしません。  そのことも含めて、労働現場の実態というのは、ジェー・シー・オーの事故でもさることながら、非常に精密な管理過程がつくられても、そこから乖離した現状がございます。そして、現状を見るためには、やはり食品衛生管理者等々を社長ないし工場長が兼任する形ではなくて、現実工程を、どのような労働者がどのような作業で働いておられるのかを明らかにすることを希望したいと思います。  最後にもうお一方だけお願いいたします。参考人藤原さんにお伺いいたします。  現在の食品衛生法におきましては、消費者への危険の通報、簡単に申せば危ないよということが非常におくれがちな衛生法のように思いますが、この点に関して御意見、御助言をいただければと思います。
  87. 藤原邦達

    藤原参考人 一般に情報の公開性ということがよく言われます。現在の食品衛生法において、これは昭和二十二年につくられたということもございまして、情報の公開性が不完全であると言われるのですが、ただいまおっしゃいましたように、いわゆる迅速性ということがもう一つ大事だと思います。この迅速性という意味において、もっと法律のいろいろな条項の中で例えば期限を設けるとかあるいは担当者がそれについて責任を持つとか、そういう定めを事細かに決めることがなければ実効を上げることができない、私はそういうふうに存じております。
  88. 阿部知子

    ○阿部委員 ありがとうございます。  食品衛生法等々の見直し並びに消費者の安全面から見た特別な委員会の設置等々は後にまた提案させていただきますが、最後に、私の発言といたしまして、まず、消費者は当たり前ですが、安全でおいしくて、なおかつ体によいものを摂取したいと思っております。その点から考えますと、現在の日本牛乳行政は非常に体に悪いものに傾いておると思いますので、これからの牛乳の滅菌法等々についても御検討をお願いいたします。  終わらせていただきます。
  89. 遠藤武彦

    遠藤委員長 次に、小池百合子さん。
  90. 小池百合子

    ○小池委員 保守党の小池でございます。  参考人皆様方、本日御多忙のところありがとうございます。私で最後でございますので、よろしくお願いを申し上げます。  今回の雪印集団食中毒事故被害に遭われた皆様方にまずお見舞いを申し上げたいと存じます。また、いろいろとこの一連の報道を見ておりまして、雪印側の対応を拝見させていただいて、これほどのトップ企業、大企業がこういう対応しかとれないのかというのは、本当に大企業病とはこういうものだという悪例を残されたようにも思うわけで、大変私も残念に思うところでございます。  きょうは、まず最初に、山本参考人の方に伺わせていただきたいと存じます。  HACCPでございますけれども、最初事故が起こってからの説明は、HACCP承認された範囲であるとか、どこのバルブがどうであったかというハードウエアをむしろ中心としたような説明を伺ったわけでございますが、きょうの話を伺っておりまして非常にその認識を新たにいたしましたことは、HACCPというのはまさにコンセプトというかシステム全体であって、ハードウエアというのはその一部にしかすぎない、それを運用していくソフトウエアの方がよほど大事なのだなというように私は感じさせていただいたわけでございますが、その認識でよろしいのでしょうか。
  91. 山本茂貴

    山本参考人 先生のおっしゃるとおり、HACCPそのものは実行することに意義がありまして、そのソフトウエアが非常に大事だと考えております。
  92. 小池百合子

    ○小池委員 ソフトウエアということは、すなわちそれを実際に運用していく人間ということになるわけでございますが、では、一体このHACCPを実際の現場としてどのような運営が行われてきたのか、何人かの雪印関係の方にきょうのために私もお話を伺って取材をしております。  その中で、実際に社員教育がどれぐらい行われていたかというと、ほとんどありませんでしたというような答えが返ってまいりました。HACCP承認を受けたということで、いろいろな義務づけがあるようでございます。手洗いの仕方などということがプレートで明示されて、まず水洗いをして、石けんで洗って、最後にゼリー状のアルコールで殺菌をするというようなことは書いてあるけれども、それを実行していることの確認がお互いの中でできているかというと、そうではない。忙しいときは省くことだってありますよというようなお話でございました。  そしてまた、私は大変驚いたわけでございますけれども、細菌の数などの細かい検査もございますが、一方で品質管理室というのをお持ちでいらっしゃいますね、そこで、一種の牛乳のプロの方々が、口に含まれて酸っぱいとか微妙な変化を察知される方々が働いておられると伺っておりますけれども、そこで一口口をつけて確認をするわけですけれども、その飲み残した牛乳を実は再利用されているというふうに私は現場の方から聞いておるのでございまして、品質管理室でそういうことが行われているならば、あとは推して知るべしだなというふうな感想を私は抱くわけでございます。  こういったことについて、社長、急に社長になられたわけでございますが、社長になられるためにはやはりこういうこともお知りになった上で御就任されたのでありましょうから、そういった点についてまで把握はされておられるのかどうか、伺いたいと存じます。  またもう一点、社員教育をこれから実際どのようにやっていかれるのか、その徹底の方法などについても伺わせていただきたいと存じます。
  93. 西紘平

    西参考人 今、特に驚いてお話を聞いておりましたが、品質担当の部屋の人間がサンプルを、官能テストだと思いますけれども、それを再利用ということについては甚だ……。実態として先生は調査をされているので否定はいたしませんけれども、私自身も再度そういう観点からもう一度これを機会に各工場を回りまして、早急にその実態について掌握をするつもりでおります。  それから、きょう大変貴重な御意見をいただきました中に、HACCPの運用という点につきまして、先ほど来お話ししていますように商品安全監査室でその機能を十分に果たそうと思っておりましたが、まず問題は中にありというモラルのことも含めまして、今考えている教育課程というのかこれを再度見直しをして、きょうの御意見を加味した上で、もうちょっと徹底した、早期に現場がなし得ることをきちっとやるような仕組みづくりを考えたいと思っております。これは今お話を伺った全く率直な意見でございます。
  94. 小池百合子

    ○小池委員 ぜひともそうなさることを、企業としてそれが生命線だと思いますので。当然なさるべきことがされていなかった、まさに先ほど申し上げました大企業病に陥っておられたその典型だなというふうに思うわけでございます。  そしてまた、教育の場合いろいろなマニュアルをつくりますね。マニュアルはあるけれども、それを実際に実践しなければまさに絵にかいたもちになるわけでございます。そしてまた、先ほど申し上げましたように、実際の現場での話を伺いますと、そのマニュアルの中に、私は詳しくはわかりませんが、ブリード法なる細菌検査をすべきであるというふうに明示されているけれども、実際にはそれを行うには非常に時間がかかるんだということで、面倒くさい、時間がかかるという話で、省かれているといった実態もあるんだということでございます。  ですから、マニュアルをつくっておられるのにそれを実行されていないというのは、これはもうお話以前のものでございますので、このあたりもきっちりとなさることがまさに企業としての責任、使命であろうと存じます。  これについても、御決意のほどはさっき冒頭に伺ったと思いますので、繰り返しになるので伺いませんが、ちょうど平澤参考人も文書の中にもお書きになっておられます。ちょうどあのときは、雪印の問題と前後いたしまして、たしか目薬の問題があったんですね。極めて目薬の会社の方の対応が明確かつスピーディーであったということで、それだけに、お気の毒に雪印の方の対応のまずさが際立ってしまったということもございました。ただ、広報戦略をうまくすればいいという問題ではございません。急に取り繕っても、今の消費者というのはすぐ見抜いてしまうわけでございます。  しかし、あともう一つだけ伺いたいのは、やはりローコストを追求というのは、これはある意味で、今ROEとかROAということが言われておりますので、各社はそれぞれ経営努力をなさっておられるんですが、どうなんでしょうか、乳製品というある種の保護のもとにある製品を買い入れる、そしてまた相手の酪農家などの方々との値段の交渉とか、こういったことが——保護政策のもとにある乳製品を対象にしておられる雪印として、一体これからどういう形での経営努力、企業努力、それは皆さんがお考えになればいい話でございますけれども、それが結局消費者の方に結果的に不衛生な商品を提供されるようでは困るわけでございますので、こういった中でどのようにこの企業努力について考えておられるのか、お聞かせいただきたいと存じます。
  95. 西紘平

    西参考人 確かに、私ども、売り上げの大部分が国内の原料乳に基づく生産販売をさせていただいておりますので、その原料乳の価格というのは御承知のような仕組みになってございます、そうしますと、今の流通あるいは消費者のいろいろな変化の中で、決して競争ということを軽視して事業としてやっているわけじゃないんですが、問題はそのバランスの問題でありまして、今回のこの一件を通して大いに反省をし、またそれが基本でなきゃいけないということは、先ほど来各先生がおっしゃっていただいておりますように、商品、特に食品は安全が最低の条件でありますが、これを無視したコスト競争というのはあり得ませんし、また、そういう方向性を向いた場合には当社はこれをもって消滅という方向に向かっていくように私は厳しく今の実態を把握しているつもりでございます。
  96. 小池百合子

    ○小池委員 雪印のホームページを拝見いたしまして、「今後の経営にあたり、」ということで幾つかポイントが書かれておりました。八番目に「風通しのよい、何でも率直に言える職場にするために、社内意見を反映させる仕組みづくりを行います。」という最後の行がございました。  私が伺った何人かの方が共通してこの点をおっしゃっていました。現場での危険な、これはちょっとやばいぞというときに、直接本社に電話をすると、だれの許可を得てそういう電話をしているのか、まずは上の課長さんに言いなさい、部長さんに言いなさい、そこを通してからじゃないと聞かないというようなことがあったということを複数から聞きまして、なるほどなと思ったわけでございます。  それは企業内の問題ではございますが、そういった点が消費者に与える影響が極めて大きいものになるということになりますと、繰り返しになりますけれども、私どもの不利益につながるわけでございますので、先ほど工業製品だというお話を聞いて、うん、それなら納得ということもございますけれども、食品を扱っておられるという原点に立ち戻られること、それから、拓銀ショックの後の雪印ショックというのは北海道経済にどれほどの影響を与えるのか、この辺の自覚をもう一度促させていただいて、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  97. 遠藤武彦

    遠藤委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。  この際、一言ごあいさつを申し上げます。  参考人皆様方におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。  午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時十五分休憩      ————◇—————     午後一時一分開議
  98. 遠藤武彦

    遠藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、お諮りいたします。  本件調査のため、本日、政府参考人として公正取引委員会事務総局経済取引局取引部長楢崎憲安君、警察庁刑事局捜査第一課長井口斉君、厚生省生活衛生局長西本至君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  99. 遠藤武彦

    遠藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  100. 遠藤武彦

    遠藤委員長 質疑を続行いたします。宮澤洋一君。
  101. 宮澤洋一

    ○宮澤(洋)委員 自由民主党の宮澤洋一でございます。  今回の雪印事件につきましては、被害を受けられた方が比較的軽傷だったという点が不幸中の幸いでございましたけれども、被害者が一万五千人近くに上る、また病院にいらした方が五千人を超えるといった大変社会的な大きな事件だと思っております。こうした中毒事件を再び起こさないようにするために、どうやって未然に防止するかということが大変大事な点である一方で、また起きてしまった場合であっても、被害の拡大をどれだけ素早く防止するかという点が二つ目に大事な点だと思っております。これら二点について御質問をしたいと思っております。  まず、予防という点でありますけれども、今まで参考人の方のお話も承りましたし、また大阪にも出張いたしましていろいろ話を承りました。保健所、厚生省監視検査体制をさらに充実させなければいけない、こういう点はまさにそのとおりだろうと思っております。まだまだ足りない点がたくさんある、そういう気が大変いたします。  ただ、これから恐らく小さな政府を目指していく、また行財政改革ということを考えてみますと、そういう検査監視体制充実ということにもおのずから限度がございますし、また、本気で隠すつもりの企業に、監視をして検査をして本当にそれがわかるのかという問題点も恐らくあるんだろうなという気が大変いたします。  そうしますと、政府、国家としてどうするかということになりますと、やはり行政罰なり刑事罰でこれを担保する。いろいろな事件を起こすと行政罰が下される、刑事罰の厳しい刑がおりるんだということが大変重要なことなのかなというのが私自身の考えであります。刑事罰が必ず科されるということになりますと、そうならないために企業の経営者も恐らく大変頑張って衛生管理に力を尽くす、そういう気がいたします。  もちろん、雪印の場合には、社会的に大変制裁を受けている、また経営的にも恐らくこれからいろいろな問題が起こってくる、そういった意味の制裁はありますけれども、やはり政府としては刑事罰というものの担保がどうしても必要なのかなという気がいたしております。  そこで、厚生省にお伺いしたいのですけれども、今回、雪印について、可能性で結構なんですけれども、可能性として、どのような刑事罰が科されることが考えられるのか、それを教えていただきたいと思います。
  102. 西本至

    ○西本政府参考人 本件における雪印乳業関係者に対する具体的な罰則の適用につきましては、今後の大阪府警による捜査をまたなければならないわけでございますが、一般的に申し上げますと、本件のような事案では、有害食品等の販売等を禁止しております食品衛生法第四条違反として同法第三十条の罰則が適用される可能性がございますほか、刑法第二百十一条の業務上過失致傷として罰則が適用される可能性があるものと承知いたしております。
  103. 宮澤洋一

    ○宮澤(洋)委員 大阪府警において現在捜査本部を置いて捜査中と伺いますけれども、捜査状況がどうなっているか、教えていただけますでしょうか。
  104. 井口斉

    ○井口政府参考人 本件につきましては、現在大阪府警におきまして、業務上過失傷害等の容疑で、検証の実施あるいは関係者からの事情聴取、証拠書類の分析等、所要の捜査を鋭意推進しているものと承知しております。  なお、具体的な捜査内容につきましては、現在捜査中でございますので、答弁を差し控えさせていただきます。
  105. 宮澤洋一

    ○宮澤(洋)委員 ありがとうございました。  それでは、食中毒が関係することで、過去十年間ぐらいで、捜査しまた送検した事例はどのぐらいあるか。食品衛生法上の違反については大変少ないと聞いておりますので、刑法の業務上過失傷害の関係でどの程度送検した事例があるか、教えていただけますか。
  106. 井口斉

    ○井口政府参考人 お尋ねの件につきましては、過去十年間に警察庁に報告があった食中毒事案について調査いたしました。その結果、七件を業務上過失致死傷で送致したものがございました。
  107. 宮澤洋一

    ○宮澤(洋)委員 最近では大体三千件前後、またしばらく前ですと少なくとも五百件以上の食中毒の例があるというふうに聞いておりますけれども、十年間で七件しか送検されていない。私は大変少ないなという気がいたします。また、調べましたところ、事件が起こってから送検するまで大変長い時間がかかっている。例えば平成二年のしらさぎ幼稚園の事件では、事件が起こって四年近くかかってやっと送検できたというふうに聞いております。  刑事罰を科されるケースが大変少ない、また捜査に時間がかかる、この辺の理由はどの辺にあるのか、恐らく因果関係の証明が大変難しいといった点があるのだろうと思いますけれども、警察庁、いかがですか。
  108. 井口斉

    ○井口政府参考人 一般に、食中毒を業務上過失致死傷事件として立件するに際しましては、発生源を特定し、これと発症との因果関係を証明することが不可欠でございます。この立証が困難であるかどうか、事案ごとにケース・バイ・ケースでございまして一概に言えませんが、捜査を尽くすも因果関係が立証できず、業務上過失致死傷事件としての立件を断念せざるを得なかった事例、フグ毒中毒でございますけれども、そういうものもございました。  また、立件した事件におきましても、先ほどお話のございましたしらさぎ幼稚園における井戸水によるO157等の感染事件など、立証に大変相当の期間を要しているものもあったと承知しております。
  109. 宮澤洋一

    ○宮澤(洋)委員 今のお話を承っていましても、食中毒を起こした場合に、では刑事罰で担保できているかといいますと、なかなか現実は難しい。それは恐らく、今の刑法二百十一条、業務上過失傷害ですけれども、これは、調べましたところ明治四十年の刑法が制定された当初から、途中で片仮名が平仮名になるといったようなことがあったようですけれども、当初からの規定を適用せざるを得ないというところが大変問題なのかなと私は思っております。  明治四十年から比べますと、社会というものが大きく変わった。大量生産、大量消費の時代になり、またいろいろな面で社会が複雑化してきている。その中で、一般刑法である刑法に戻って処罰をしなければいけないというのにはかなり無理があるのかなという気がいたします。例えば証券取引も、特に戦後大変大きくされるようになりましたけれども、証券取引法というものが規定されて、その中にいろいろな刑事罰が入っている。したがって、一般刑法に戻らなくても、いろいろな罰がインサイダー取引規制にしても科されるという状況があります。私は、これは食中毒だけということではないと思いますけれども、やはり、これだけ社会が複雑になったときに、まさに犯罪の予防といった意味の刑法というものを、少し特別な刑法というものをそれぞれの分野で用意していかなければいけないのかなという気が大変いたしております。  食中毒につきましても、先ほど言いましたように、大変立証が困難な事案が多いということですので、もっと立証が簡単になるような、特に大規模食中毒事件に関して立証が簡単になるような、そういう特別な刑法を長い目で見て用意していかなければいけないと私は思っておりますけれども、厚生省としてはいかがお考えでございますか。
  110. 福島豊

    福島政務次官 まず初めに、本委員会におきましては、参議院の予算委員会との関係で大臣の出席がかないませんことをお許しいただきたいと思います。  そしてまた、今般の雪印乳業食中毒事件におきましては、極めて多くの皆様被害を受けたわけでございまして、心よりお見舞いを申し上げたいと思います。  ただいま委員が御指摘ございましたように、未然防止、拡大防止ということは極めて大切な課題であるというふうに思います。そして、委員は、それに対して、刑事罰というものに関して新たなものを設けるべきではないかという御指摘でございますが、厚生省の考えを申し上げさせていただきたいと思います。  厚生省は、食品衛生行政におきましては、食品衛生法というものがございます、これに基づいて食品規格基準施設基準等を定めて、これらを遵守することによって食品安全性を確保しているところでございます。  食品衛生法違反事例につきましては、食中毒防止のために特別の罰則を設けるということよりも、むしろ、食品衛生上の危害を除去するために、有害食品等の廃棄処分や営業の禁止、停止等の行政処分により対応することを原則といたしております。  今後、今回の事件を契機に、食品監視の重点化、効率化を進めるということでその強化を図ってまいりたいと思っておりますし、そしてまた、HACCP承認審査の方法、または承認後の監視を一層充実するなど、事故再発防止に努力をしてまいりたいと考えております。
  111. 宮澤洋一

    ○宮澤(洋)委員 私の刑事罰という質問につきましては、恐らく厚生省だけではなかなか対応できない。窓口が厚生省になっても、実質は、法務省がどう検討するかという話だろうと思っておりますけれども、やはり、長期的な課題としてそういう面も今後検討していかなければいけないのかなと思っております。  それでは、拡大防止について少し質問をさせていただきます。  先般大阪に参りましたとき、大阪市から聞いた話、また雪印から聞いた話をいろいろ表にまとめてみました。最初は、六月の二十七日十時五十分に、大阪で、赤十字病院から保健所に報告があったというところで大阪市は最初の把握をしたわけですけれども、その後、大阪市だけでいえば、次の日、二十八日の九時半に北保健所、また、十一時半に兵庫県から大阪市に照会があったという三件が六月の二十八日の午前中までに起こっている、大阪市として情報が収集できた。  一方で、その時点までに、雪印の方も三件の別の苦情が来ている。二十七日に、和歌山から関西品質保証センターの方に苦情が来た。この件は、どうも和歌山の方の保健所には通報が行っていたようであります。また、二十八日の午前中にも二件、大阪とまた和歌山で苦情が来ている。こういう状況が、六月二十八日、次の日の昼までに大体起こっている。  大阪市はその午後に雪印に立入検査をしたわけですけれども、実は、雪印は、その時点でも、苦情があるということは大阪市には全然話をしていないというのがどうも経緯のようであります。  これを見ますと、まず一点は、大阪市の保健所と和歌山、兵庫の保健所、この間の連絡体制というものがもう少し早くあれば、もう少し迅速な対応ができたのかなという気がいたします。また一方で、雪印の方が何にも保健所に通告をしていない、連絡をしていないということも、これまた大変問題だな。この辺をどういうふうにこれから考えていったらいいのかと思っていましたところ、既に厚生省には食品保健情報処理システムというものがあるそうですけれども、これが今回の事件ではどのように機能したのか、効果があったのか、教えていただきたいと思います。     〔委員長退席、鈴木(俊)委員長代理着席〕
  112. 西本至

    ○西本政府参考人 食品保健総合情報処理システム、これは昨年の七月から導入を図られたところでございますが、各都道府県等がこのシステムに加入するかどうかということにつきましては任意ということになっております。今回の雪印大阪工場を管轄する大阪市は、このシステムには加入してございません。  また、そもそも本システムは食中毒であることが明確な事例ということを対象にしておりますので、今回の事例のように、初期の段階では消費者からの苦情として受理されている情報につきましては、本システムの情報として把握することが困難であったというふうに理解をいたしております。
  113. 宮澤洋一

    ○宮澤(洋)委員 せっかくいいシステムをつくったわけですが、今回は機能しなかったということのようでありますけれども、まさに情報化、IT革命の時代という現在でありますから、これを被害の拡大防止に使わない手はないんじゃないのかなという気が大変いたします。といいますのも、先ほど申し上げましたように、全部の情報、今だからわかる情報でありますけれども、全部の情報を把握していれば、先ほども御質問ございましたけれども、恐らく半日ないし一日は早く消費者に対して警報を鳴らすことができた。したがって、二十八日の夜とか、また、朝食が大事だという話がありましたけれども、二十九日の朝牛乳を飲んだ方が被害に遭わなかった可能性というのは極めて高いんじゃないかと思っております。  そうした中で、今回のシステムは動かなかったわけですから、これから各地の保健所が瞬時に情報を共有できるようなシステム導入して、そして大事なことは、赤信号を出すのでは遅過ぎるということだろうと思うんです。赤ですよと言ったときには、大体、被害に遭われた方はもう飲んでいるわけですから、やはり、危ないよという黄色の信号を、もしかしたら外れる場合もある、これは埼玉県のO157の事件が直前にあったので慎重になったという話もありますけれども、なるべく早く黄色の信号を出せるようなシステムをぜひ早期に開発していただきたい。  また同時に、先ほど、雪印の方が何の連絡もしなかった、それは、法律上、制度上それが義務にはなっていないわけで、法律を読ませていただきましたけれども、お医者さんだけに義務がかかっているというのが現在の法律ですけれども、少なくとも大手の食品メーカーに関して言いますと、少し食中毒が疑えるような、疑わしい食中毒といったような苦情があった場合には、それを速やかに、直ちに保健所に連絡をするという体制を一日も早くつくるべきだと私は思います。この点について厚生省としてのお考えをお願いいたします。
  114. 福島豊

    福島政務次官 委員御指摘のとおりだというふうに思います。大量生産、大量流通の時代でございますので、いかに適切に情報を集め、それを関係者に発信をしていくのか、この二つのことが要請されているというふうに思います。今回の事件等も踏まえまして、全国の保健所等が、食中毒だけではなくて、食中毒が強く疑われる情報についても共有をするということを進めていかなければならない、そのように思っております。  その共有に関しましては、委員御指摘ございましたように、食品保健総合情報処理システムというものを活用する、そして全国に発信をしていく。ただ、その前提としまして、適切な情報というものが迅速に保健所に集まるということが大切でございます。  その情報収集ということに関しまして何点か申し上げたいと思いますが、一つは、医師からの食中毒に関しての届け出ということがございますけれども、生産者の立場、営業者の立場からでございますけれども、消費者から大規模メーカーが製造した食品等について食中毒が強く疑われる苦情等があった場合には、都道府県等を通じまして、保健所に情報提供するように営業者に対して要請してまいりたい、そういうようにまず思っております。  そしてまた、大企業の対応ということでございますけれども、HACCP承認取得工場につきましては、その営業者が定めるところの回収マニュアルの中に食中毒が強く疑われる事例について厚生省への報告を規定できないかどうかということについて、積極的に検討を進めてまいりたいというふうに考えております。
  115. 宮澤洋一

    ○宮澤(洋)委員 いい答弁、ありがとうございました。  最後に、少しHACCPについて御質問をさせていただきたいと思っております。  この事件が起きました後、地元でいろいろな方と話をしておりました。地元では大手、もちろん全国的には中小の食品業者の方が二人いらっしゃいました。  一人はこう言っているんです。自分はHACCPを申請しようと思って準備を始めたところだったんだけれども、どうも今回の事件で、HACCPというのは取ってもしようがないのかな、HACCPを取ったからといって商品が売れるという感じでもなくなったので、今申請を準備している作業をやめようかというのがお一人いらっしゃいました。  また、もう一つ会社のオーナーは、自分は実はHACCPというものは最初から信用していなかったんだ、食品衛生というのは、まさに経営者のモラルの問題、工場がきれいだとか汚いとかいうことで決まるのではなくて、やはり経営者のモラルということが一番大事なんです、自分自身、会社では抜き打ちで検査をどんどんやっています、そういうことができる会社かどうかというのをやはりHACCPの申請時点で見きわめられないものですかねと。  ということに加えまして、私も知らなかったんですけれども、一週間に四、五通はHACCPを申請しませんかというダイレクトメールが届くんです、そのほとんどはゼネコンから来たものだったりというようなことで、HACCPというのがかなりそれだけがビジネスになって、どうも自分はうさん臭いと思っていたんです、今回の話は当然起こるべくして起こったなというのが自分自身の感想で、当分HACCPを申請するつもりはないんです、こういうことを言っておりました。  私自身、いろいろな勉強をさせていただきまして、HACCPというのは大変すばらしい制度だろうと思う一方で、これまでわかったように、やはり経営者の心というものが一番大事な要素である。ただ、今回の事件で、最初経営者のように、HACCPが取ってもしようがないというものになっては大変困ることだろうと思っております。  法律を読んでみましても、では、HACCPを取って何がいいところがあるのかなと思っても、消費者がどう判断してくれるかという点にかかっている。輸出企業であれば別ですけれども、国内でしか物を売っていない企業にとっては、そういった意味では消費者の心理だけというようなところもあって、メリットが少ない制度をどうやって広めていくのか。これから一番大事なところだろうと思うんですけれども、その辺につきまして厚生省としてのお考えを伺わせてください。
  116. 福島豊

    福島政務次官 ただいまの委員の御意見をお聞きいたしておりまして、その認識をやはり変えていただく必要があるのではないかと私は思いました。午前中の参考人の質疑でもございましたけれども、HACCPというのは単に肩書的に取ればいいという話ではないということだろうと私は思っております。むしろそれよりも、それをいかにして運営していくのか、運用していくのか、ここのところが大切だと。  企業に対してのメリットは何かということでございますけれども、対外的に信用性を高めるということもあるかもしれませんけれども、それ以上に大切なことは、企業にとって生命線となるのは、いかに安全な製品を市場に出していくかということだと思います。その原点を踏まえますと、このHACCPという制度をきちっと運営していただければ今までにない安全な製品の製造ができるわけでございまして、そこのところの御理解をしていただきたいと私は思っております。  ただ、しかしながら、今回の事件HACCPの制度というものに対しての信頼が失われたということであるのでありますれば、今後、厚生省としましても、HACCP承認あり方監視あり方というものを充実させてまいります。そのことによって信頼の回復というものを図らなきゃいけないと思っております。そしてまた、経営者のトップも含めまして、HACCPというものについてもう一度認識を新たにしていただくような機会を厚生省としてもつくってまいる決意でございます。
  117. 宮澤洋一

    ○宮澤(洋)委員 まさにこの事件HACCPというものの価値が低下するということがやはり一番怖いことだろうと思っております。  一方で、考えてみますと、今回の雪印事件で唯一のよかった点と言っては変な話ですけれども、HACCPというものについて、かなりの国民が名前を聞くようになった。ある意味では大変宣伝効果があったわけですから、その中で、まさにHACCP日本に根づかせていただくために、ぜひとも厚生省としても全力を挙げていただきたいと思っております。  これで質問を終わらせていただきます。     〔鈴木(俊)委員長代理退席、委員長着席〕
  118. 遠藤武彦

    遠藤委員長 次に、江田康幸君。
  119. 江田康幸

    ○江田委員 公明党の江田でございます。  今回の雪印乳業による食中毒事件は、一万五千人という被害を出して乳製品さらには食品全体に対する消費者の信頼を著しく損ねた事件として、事故原因の徹底究明と今後の再発防止、信頼回復が望まれております。国民の生命と健康を守るのが厚生省の使命でございます。今後二度とこのような悲惨な事故を起こさないためにも、厚生省に対して、今後の再発防止対策、とりわけHACCPを取り巻く諸問題とその改正案についてお伺いしたいと思います。  雪印大阪工場には、HACCP申請にまつわる逸脱はもとより、HACCPの前提となる一般的な衛生管理においても、また食品衛生基準に照らしても大きな不備があったことは明らかでございます。この違反行為は、仮にHACCP導入していない乳製品製造業者の場合ならば食品衛生法第七条第二項に抵触する行為であり、かつ第三十条の二に基づく罰則に値する行為であろうかと思います。  ところで、HACCPを採用せずに一般的規制に基づいて製造を行う業者にあっては、食品衛生管理を徹底するため、施設ごとに専任の食品衛生管理者の設置が義務づけられております。ところが、HACCP導入した場合、食品衛生管理者は不要であると第十九条の十七第一項のただし書きに定められております。その根拠は、HACCP承認時に適切な管理体制の確立が確認されるためということであります。  しかし、今回の雪印大阪工場の実態を見る限り、この規定は全く現実に即しておりません。つまり、大阪工場への承認前、稼働前の立入検査の際、未届けの配管やタンクを見逃すなど、適切な管理体制確認は全くなされていなかったわけでございます。そして、その管理体制の不備こそが集団食中毒の直接的原因だったわけでございます。  このような観点から、私はHACCPには食品衛生管理者は不要であるとの規定を見直すべきではないかと考えますが、いかがでしょうか。
  120. 西本至

    ○西本政府参考人 議員御指摘のように、食品衛生法第十九条の十七におきまして、製造または加工工程を衛生的に管理させるために専任の食品衛生管理者の設置というものを義務づけているところでございます。  ここで、総合衛生管理製造過程承認を受けた施設につきましては、その承認時の第一番目の項目に、各工程における責任者を設置することということがございます。それから、是正措置の明確化、サンプリング検査による検証の実施、あるいは必要事項記録というようなHACCPによる適切な衛生管理体制が確立されていることが確認されるということになっております。したがって、一般的な、十九条の十七におきます専任の食品衛生管理者は設置しなくてもよい、設置を要しない、こういうことになっているわけでございます。
  121. 江田康幸

    ○江田委員 少々重複することになるかもしれませんけれども、さらに高度な衛生管理過程であるHACCP実効性のあるものにできるか否かは、行政側監視指導体制とともに、当然のことながら、製造業者の危機管理を根底とする自主管理体制の確立が重要でございます。今回の事件も、雪印のずさんな危機管理、自主管理が引き起こしたものでございます。  私は、長らく医薬品の研究開発から製造まで従事してきた立場から、少々専門的になりますが、重要な視点と思われますので、質問させていただきます。また提案もさせていただきます。  食品より厳しい自主管理体制が要求される医薬品の製造におきましては、製造管理者のもとに製造管理責任者と品質管理責任者が設置されており、さらに、製造管理責任者のもとには工程管理責任者が設置されております。製造の全般を通して、製造管理責任者工程管理責任者によりすべての製造工程における製造記録洗浄、滅菌等を含む機器の管理、校正記録、製造者の衛生管理記録などが整備、チェックされてまいります。これらの記録類が一つでもなければ医薬品の出荷は許されません。また、製造に従事する担当者に対しては、この責任者組織の中で、定期的に製造に関する教育訓練が実施されてまいります。このように、医薬品の製造においては何重もの独立した自主管理がなされております。  医薬品ほどの厳しい自主管理体制は要求されないとしても、HACCP導入している食品製造業においては、これに似た自主管理体制がなければHACCP本来の高度な衛生管理はできないのではないかと考えます。  そこで、厚生省にお伺いします。  今回の大阪工場の製造管理体制、組織はどうなっておりましたでしょうか。また、食品衛生法やその関連省令、またHACCPの中で製造管理組織はどう規定されて、製造業者にどう指導がなされているのか。もし製造工程全般を監督する責任者の設置が定められていないのであれば、また指導されていないのであれば、新たに定め、指導するべきではないかと考えます。これらの点について、厚生省の御見解をお伺いしたいと思います。
  122. 西本至

    ○西本政府参考人 食品安全性を確保する上で、営業者による自主衛生管理が重要であることは御指摘のとおりでございます。  また、総合衛生管理製造過程承認に際しましては、申請者である企業にHACCPプランの適正な実施のためのHACCPチームを組織することを求めているわけでございます。  問題の大阪工場でございますが、ここにつきましては、総合衛生管理製造過程承認申請書には、工場長を最高責任者として構成されるHACCPチームについての記載がございました。  なお、御参考までに申し上げますと、そのほかにも、製造部門の責任者でありますとか品質管理部門責任者等々の名前が構成としてHACCP委員会という形で書かれておるわけでございます。  ただ、現実の問題といたしまして、今回の大阪工場におきましては、このHACCPチームについての機能が十分に果たされていなかったということでございます。
  123. 江田康幸

    ○江田委員 今申されましたように、記載はされている、またHACCPでもそのように規定はされているということでございますので、記載はされて、規定はされていても、守らなければどうしようもないというところをどうするのかということが今後の指導、教育というところにあるのではないかと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。  さらに質問を続けさせていただきますが、八月二日に実施されました専門評価会議の報告を受けて、雪印二十工場の操業再開が決定されました。これは事実上の安全宣言ととらえてよろしいのでしょうか。しかし、その報告書を見ると、食品衛生上の問題点HACCP上の問題点としまして、手洗浄マニュアルの不備、製品等の再利用にかかわるマニュアルの不備、未申請の再利用工程など、ほとんどの工場が指摘を受けております。特に、品質期限を過ぎた原料の使用や出荷した製品の再利用など、製品安全性に影響する問題点が存在しております。  厚生省はどのような基準をもって安全と評価されたのか、また、安全性を保証するためにどのような監視指導をなされるのか、お伺いしたい。安全宣言を出された根拠を消費者にわかるように説明しなければ、乳製品に対して失墜した消費者の信頼を取り戻すことはできないと考えます。厚生省の御答弁をお願いいたします。
  124. 西本至

    ○西本政府参考人 今回の事故の発生にかんがみ、現在、雪印乳業が自主的に操業を停止しました同社の乳処理施設二十カ所について、七月十九日から担当官による現地調査を実施してまいりまして今日に至っているわけでございます。  調査に当たりましては、一つは、大阪工場の大きな原因と言われております逆流防止弁あるいは仮設ホース等の手洗浄部分における衛生管理状況がどうであったか、それから二番目に、屋外における調合作業がどうであったか、あるいは三番目に、製品の再利用状況がどうであったか、こういうことを中心として調査をいたしたわけでございます。さらに、HACCPプランによる工場全体の衛生管理状況、あるいはまた製造工程及び設備機器等の詳細、それからHACCPチームによる衛生管理体制実効性などの確認というものを中心に行ったわけでございます。  調査結果につきましては、今お話がございましたように、私どもの専門評価会議というものを二回開催いたしまして、一つは一般衛生管理に関しましては食品衛生上の衛生基準がきちっと守られているかどうか、二つHACCPシステムに関しましては、いわゆる七原則十二手順に従っているかどうか、またシステムが機能しているかどうかということについて評価をいたしたわけでございます。  その結果、食品衛生上の問題はなかったということでございましたので、これは操業を再開していただいても結構ではないかということになりまして、御指摘のような事実上の安全宣言という形になったわけでございます。  ただ、HACCPにつきましては、幾つかの問題点が御指摘のようにございました。これらにつきましては、工場に対して指摘をいたしまして、確認書をとらせていただいた、こういう形でございます。
  125. 江田康幸

    ○江田委員 最後の質問でございますが、今回、申請資料に記載されていない工程や稼働していない工程を発見するのは非常に難しいということを厚生省は答弁されております。今回の事故は、その申請していない工程原因になって起こっておりまして、それで済む問題ではないと思っております。これらを未然に防ぐ今後の対策、改善が最も重要な課題でありますが、この点について私の考えを述べさせていただいた上で、厚生省にお伺いさせていただきます。  HACCP自体につきましては欧米でも高く評価されておりまして、食品安全性を総合的に保証する高度な衛生管理システムであります。今回の問題は、HACCPそのものではなくて、承認時の審査方法と承認後の運営に対する監視体制指導体制の不備にあったかと思います。  まず、承認時におきましては、今回のような未申請の工程も見逃さずにチェックできるようなシステムをつくり上げること。この点につきましては、最近厚生省から発表がありましたように、製造工程に関する詳細な設計図を添付させたり、現地調査は、厚生省の専門官が直接ヒアリングする立ち入り専門官も指導育成し、増員するなどの強化が考えられるかと思っておりますが、問題なのは、承認後、稼働後において、申請時どおりにきちんと運営管理されているかどうかをフォローアップする監視指導体制の早急な確立が重要であるかと考えております。  今回の事故は、申請時に未申請の工程があり、見逃したとはいえ、年間を通して厚生省または自治体の専門官が立ち入って、申請時と変わった工程はないか、管理は十分になされているか等の定期的なチェックがなされておれば未然に防げたはずでございます。結果的には、厚生省、自治体のずさんな監視指導体制が今回の事件を引き起こしたとも考えられます。  そこで、厚生省にお伺いしますが、今回事故を起こした雪印大阪工場への法定検査は年間十二回程度と義務づけられておりますが、実際は何回行われて、どのような検査をされたのか、説明をしていただきたい。さらに、これらの反省を踏まえて、今後の監視体制指導体制をどのように検討されるか、そのことを御説明していただきたいと思います。
  126. 西本至

    ○西本政府参考人 乳製品等の処理工場につきましては、現在の監視基準は年間十二回というところにランクされているわけでございまして、今回の雪印につきましては八回行われたというふうに承知をいたしております。それから、実際の立ち入りにつきましては、事前通告という形でやらせていただいたわけでございます。  御指摘の見抜けなかったという点につきましては、先ほど御指摘がございましたように、私どもの方で、今度は審査あり方につきまして、より厳格な審査体制をとるというのが第一点でございます。  第二点につきましては、今回、私どもで十二名の査察チームで現地調査をさせていただきましたが、このような形を何らかの形で継承して、雪印につきましては、向こう一年間の間に最低二回はフォローしていきたい、また、その他の処理場あるいはHACCP申請工場につきましても、問題のあるところがあれば私どもの方でやる体制を検討していきたい、このように考えております。
  127. 江田康幸

    ○江田委員 時間がなくなりました。実効性のあるものにHACCPをぜひしていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございました。
  128. 遠藤武彦

    遠藤委員長 次に、小池百合子さん。
  129. 小池百合子

    ○小池委員 保守党の小池でございます。  行政に対して質問させていただきます。  ただいまの御質問の中にもございましたけれども、HACCP承認後の監視体制のことでございますが、今の御答弁を伺っておりますと、年八回実施をされたと伺いました。そしてまた、それは事前通告であるということもお話をいただいたかと思います。  大体、行政の場合、事前の通告をした上で審査、チェックに行くというのがよくあるパターンでございます。事前の通告なしに抜き打ちというのは査察とか家宅捜索とかそういったところになるのでございましょうが、言ってみれば、事前通告することだけでもある種の抑止力であるとかチェックを進めさせるという効果もあるかとは思いますが、やはりそれでは緊張感がないというか、それに対してまずいところは隠すといったような隠ぺい体質を呼び起こすというマイナス点もあろうかと思います。  こういったことで、やはり食品の安全にかかわることでございますので、そういったやり方を改めてみてはどうかと思うのでございますが、いかがでしょうか。
  130. 福島豊

    福島政務次官 お答えさせていただきます。  HACCP承認後の監視につきまして、事前通告した上でこれを行うのか、それとも抜き打ちで行うのかということでございますけれども、その目的によって適切に判断をして選択するということで都道府県等を指導して、より効果的な監視指導が行われるように努めてまいりたいと思っております。  そしてまた、都道府県による監視指導に加えて、厚生省としても、HACCP承認審査承認後の監視指導等を強化することによって事故再発防止に努めてまいる所存でございます。
  131. 小池百合子

    ○小池委員 また、こういったHACCP承認を受けたところ、もしくはそれの承認を受けるような業界、これに対してのいろいろな監視でございますけれども、厚生省としては人員はどれぐらいの体制でやっておられるのでしょうか。
  132. 福島豊

    福島政務次官 人員につきましては、この事故とは関係ございませんけれども、体制の強化を図らなければならないということで、本年の十月からは六名に増員いたしまして、そしてまた、来年からは、地方厚生局としまして、全体で十三名の体制でこれを進めてまいるところでございます。
  133. 小池百合子

    ○小池委員 私は、人員をふやせと言っているのではございません。  例えば、このHACCPに似たものといたしましてISOというのがございますけれども、これはまたちょっと違うパターンで、法律とは関係なく、幾つかの部分で法律絡みのところも出てまいりますけれども、スイスの承認機関があって、そことの関連でやっている。また、それをチェックするコンサルタント業というのもあるわけでございます。ですから、私は何でもかんでも行政がやればいいというふうには実は思っておりません。  ということで、むしろそういったものをもう少しシステマチックに、機能すればいいわけでございますので、全部役所でやろうということよりも、私はそういうアウトソーシングのチャネルをつくるべきであるというふうに考えるわけでございますが、いかがでしょうか。
  134. 福島豊

    福島政務次官 どこまでが官でカバーをし、どこまでが民でカバーをするのかということは、この数年間さまざまな形で御議論があるところでございますし、そしてまた、委員が御指摘のようなISOについての現在のシステムというものもあるわけでございます。  私どもとしましても、厚生省としてしっかりとこの審査体制を強化していくというその基本を踏まえた上で、先生の御指摘というものも検討させていただきたいと思います。
  135. 小池百合子

    ○小池委員 さて、衛生管理の面で、まず食品衛生法というのがございますね。そこで、例えば牛乳についても、細菌数であるとか大腸菌についてどこまでが許されるかという厚生省基準といいますか、法律的な基準があるわけでございます。  例えば牛乳について言うならば、その成分規格並びに製造及び保存の方法の基準ということで申しますと、細菌数は一ミリリットル当たり五万以下というふうになっておりますが、私の知る範囲では、むしろ現場の方は、五万では不十分であるということで、生乳を買ってくる際には一万以下の数字で実際の売買をしているのが現状である。つまり、厚生省基準は甘いということをおっしゃっているわけでございます。また、アメリカなどのFDAの基準からいたしましても日本厚生省基準は甘い、そういう数値が比較できるわけでございますけれども、むしろ今の厚生省が持っておられる基準が既に現実よりも甘いというようなことについて、これを見直す方向があるのかどうか。また、私はそうすべきであるということを最後に申し上げたいと思います。いかがでしょうか。
  136. 西本至

    ○西本政府参考人 生乳では一ミリリットル中四百万、そして、今議員御指摘がございましたように、製品である牛乳につきましては一ミリリットル五万以下というふうに定められているわけでございます。これは、乳等の規格基準についての乳等省令という形で規定されているものでございます。  民間の方が実際にはこれよりは厳しい基準を設けていらっしゃるというのは、これは事実でございまして、確かに我が方との格差があるわけでございますが、現在のところは一応今の基準のままでいきたいなというふうに考えているところでございます。
  137. 小池百合子

    ○小池委員 なぜ今のままでいきたいと思われるのか、その理由について教えてください。
  138. 西本至

    ○西本政府参考人 現実問題といたしまして、今、牛乳で一ミリリットル五万以下というところで衛生法上の問題がないというのが基本的な認識でございまして、乳業メーカーさんの方におかれましては、やはりいろいろな事情から私どもよりは厳しい数値を設定されているというのは事実でございますけれども、直ちに私どもが今のこの基準を見直す必要があるかということにつきましては、いろいろ意見もございますので、当面は今のままでよろしいのかなというふうに考えているというのが実態でございます。
  139. 小池百合子

    ○小池委員 余り今のは私理解できなかったのでございますが、今回の問題でも、乳製品、乳業に関しては、黄色ブドウ球菌というのが天敵であるということは素人の私でも明確にわかるわけでございまして、であるならば、この細菌の基準を厳格にするというのが一番大きな、今回の事故の問題で再利用の問題などさまざまな問題が噴出したわけでございますけれども、やはりこういった国の基準を厳格にするというのが一番明確な対応の仕方ではないかと思うのですが、いかがでございましょうか。そんなに難しい問題があるのでしょうか。
  140. 福島豊

    福島政務次官 ただいまも発言いたしましたように、科学的な見地から現在までそのような形で定められているわけでございます。  乳製品に対しての信頼性の回復ということで、もっと厳しくしてはどうかという委員の御指摘だろうというふうに私は理解をいたしておりますけれども、ここの基準を変えるということよりも、むしろ、いかにして牛乳、加工乳等の生産のプロセスというものが適切に行われているかということについての信頼の回復を図るということをもって当たるべきではないかというふうに理解をいたしております。
  141. 小池百合子

    ○小池委員 それはそうなんでございますけれども、今回の問題は何を残したかというと、やはり乳製品に対しての不信感でございます。その問題は、原乳から、生乳から、この後の加工の段階の運用の問題等々のレベルで、さまざまな人的な問題も含めてあったということ。これを直すのは当然でございますけれども、やはり基準そのものを見直すというのは一番明確な、また消費者にとってわかりやすい改善ではないかと思いますので口を酸っぱくして言わせていただいているわけでございます。そのあたりはやはり真剣に受けとめていただく必要があろうかと思います。  それから最後に、私も、いろいろとネットで、今回の乳製品に関すること、食品衛生に関すること等々チェックをさせていただきました。国の審議会、そしてその中の分科会等々、雪印乳業というとやはりトップメーカーでございますから、その中のメンバーの方がそういった審議会に入らない方がおかしいというふうにも思っております。実際に入っておられて、食中毒発生情報の公表とかなかなかいい審議会のまとめをされておられるのですが、審議会の結論が現場で生かされていなかったということ、これは雪印の方が大いに反省をされるべきことだと思います。現状ではもう外れておられるということなので、それ以上のことは申しませんけれども、審議会でお述べになることと現場が違うというのは、企業にとって別の面で大きな、企業の品質管理、クオリティーコントロールの過ちであるなということを感じたところでございます。  いずれにいたしましても、私は、やはり口に入るものでありますから、それだけに企業側も営業にかかわることでこれは生命線である、と同時に、監視という立場に置かれている厚生行政まで不信に包まれるようなことがあってはいけないと存じますので、細菌数の標準の見直し、つまり、例えばHACCPも一言で言えばグローバルスタンダードということですね、そういうことを導入なさるのであるならば、そういった点も国際基準に合わせていくということが先進国の日本として必要なことではないかというふうに私は思います。  きょうもニュースで飲料にハエが入っていたというようなことが流れておりました。ほかの国に参りますと、時々コーラに何かいろいろなものが入っておりまして、入れると最後にぷかっと浮かんできて、あらまということはよくあるわけでございますが、それが日本で起こるということは甚だ恥ずかしい点でございますので、そういった意味で、行政の方もしっかりとチェックするべきところはチェックをしていただきたいという要望を申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  142. 遠藤武彦

    遠藤委員長 次に、金田誠一君。
  143. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 民主党の金田誠一でございます。  まず、被害に遭われた多くの方々に心からお見舞いを申し上げたいと思います。  今回の食中毒事故につきましては、その規模においても、また雪印というトップメーカーが引き起こしたということからも、考えられないような事故であったと思います。それだけに原因をきちんと解明して再発防止策を講ずる必要があると思うわけでございまして、そういう観点から質問をさせていただきたいと思います。  まず第一点目でございますが、このたびの食中毒事故におきまして、発症者数は最終的に何人になりましたでしょうか。
  144. 西本至

    ○西本政府参考人 平成十二年八月七日現在でございますが、一万四千七百八十八名という報告を受けております。これは、保健所等の行政機関に有症者として届け出があったものを大阪市が集計したものでございまして、現在も集計中でございます。  届け出のありました事例につきましては、今後、個別に喫食調査等の詳細な調査を行いまして、最終的な患者数を確定する予定でございます。
  145. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 大変な数に上っていると思うわけでございますが、この件についての情報は非常に乏しいわけでございます。原因の解明につながる情報開示が非常に乏しいという中で、大阪市は平成十二年七月十日付で中間報告を行っております。それによれば、衛生管理上の問題点として、チャッキ弁等の分解洗浄、ホースによる配管の使用、屋外における調合作業、再製品の使用、以上四項目について問題点として指摘をされているわけでございます。  しかし、七月二十七日付の朝日新聞によれば、以上の四点だけでは一万四千人以上もの発症につながる菌の大量増殖の説明がつかないという報道がされているわけでございます。チャッキ弁あるいは屋外における調合、これらの四項目だけでは一万四千人以上もの発症につながる菌の大量増殖の説明がつかない、こういう報道でございますけれども、この指摘について厚生省のお考えを聞きたいと思います。
  146. 西本至

    ○西本政府参考人 ただいまの報告は確かにございましたので、私ども直ちに大阪市あるいは大阪府警に事実関係について問い合わせをいたしました。最初は電話でいたしましたが、その後、公文書で問い合わせをいたしました。その結果、その記事に記載されているような実験は大阪市あるいは大阪府警とも行っていないという回答を得ているわけでございます。  しからば、何が原因かということになるわけでございますが、先ほど議員御指摘ございました、今まで判明しております四項目のいずれかに非常に集中的な原因があったのか、あるいはまた、それらが複合的に絡み合ってこのような一時的な非常に大きなエンテロトキシンの産生につながったのかというようなことが考えられるわけでございますけれども、これもまだ最終的な発表という形にはし得ないというのが実態でございます。
  147. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 大変ショッキングな仮説が提起をされていると思うわけでございます。大容量のタンクの中で細菌が大量増殖をしていたというメカニズムが浮かび上がったという報道でございます。黄色ブドウ球菌、三十度以上が増殖の適温とされてきたものが、大阪市と大阪府警の実験では、五度以上であれば菌は増殖することが判明した、こういう報道なんでございますけれども、局長は、今、この実験について書類で問い合わせをして、実験はしておらなかったということで、質問する前に御答弁をいただいたわけでございますけれども、そういう回答が来たのかなというふうには思います。  しからば、移動式溶解機、一回当たり百ないし二百リットルだそうでございますが、これを貯乳タンクに移すわけでございます。仮にここで細菌がまじり込んだとしても、百ないし二百リットルの量を貯乳タンクに移してしまえば、果たしてこの一万四千人以上の発症につながるような菌の大量増殖につながるものなのかどうなのか。この辺のメカニズムの解明がされなければ、単に大阪市と大阪府警が実験をしたかしないかの文書の照会だけではさしたる説得力のある話にはなってこないのではないかな、こう思うわけでございます。  仮に、大阪市と大阪府警がこのような低温で菌が増殖するという実験をしてこなかったとすれば、それでは、これは質問通告してございませんでしたけれども、この移動式溶解機なるものを使用して、これほど大量な菌の増殖につながるものなんでしょうか。こういうことをある意味では実験も現場検証もする必要があるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  148. 西本至

    ○西本政府参考人 事件の初期の段階では、バルブ、弁の洗浄不備のために、そこに黄色ブドウ球菌が繁殖し、そしてエンテロトキシンが産生したというのが非常に有力でございましたが、その後、早い段階で大阪府警に証拠を押収されてしまったということがございます。そして、先ほど申し上げたような幾つかの問題点が次から次と指摘されてきたわけでございます。  ただいまの御質問の一部は、当時の新聞に書かれた実験が本当に行われたという前提のもとに御指摘されたものだというふうに思っておりますが、私どもは、まず、そういう事実はございませんということが第一点。それから、一般的に申し上げまして、黄色ブトウ球菌は十度C以下でエンテロトキシンを産生するということは考えられない。したがいまして、温度記録から貯乳タンクの温度上昇の事実がないということが判明しております以上、そういう科学的な点からもこのような報道の現象が起こるはずはないというふうに今考えているところでございます。
  149. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 幾つかの仮説が成り立つんだと思います。大阪市が発表した四つ項目のどれかによって菌が製品に混入をしたという可能性は成り立つと思うわけでございますが、それが大量増殖につながるかどうかというところのメカニズムの解明が必要だろうと思うわけでございます。  そういう観点から見ますと、旧来、十五度C以上でなければ菌は増殖しないと言われていたけれども、本当にそうなのかというあたり。新聞報道によれば、大阪市と大阪府警が実験したということになっているのですが、実験したかしなかったかもさることながら、それでは何度で増殖するのかというのを再度確かめる必要はないんでしょうか。もう定説として覆しがたいものになっている、それが十五度だということだけでよろしいんでしょうか。
  150. 西本至

    ○西本政府参考人 私、先ほど十度C以下と申し上げたというふうに思います。今先生の方は十五度と……(金田(誠)委員「十五度と言いませんでしたか。十五度と言いました」と呼ぶ)そうですか。それでは、まことに失礼いたしました。訂正をさせていただきます。  黄色ブトウ球菌は、今の知見では十度C以下ではエンテロトキシンを産生することはないということが言われております。  ちなみに、黄色ブトウ球菌の毒素産生条件は、最低でも十度、至適温度となりますと四十度から四十五度、pH七から八という段階でございまして、四十八度を超えますと、ここが最高値になってしまうという知見がございます。
  151. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 十度以上で増殖するとなりますと、新聞報道によれば、大容量のタンクは七度から八度に保たれていたというふうに書いてございますから、かなり近い温度になるわけですね。七度から八度に保たれていて、十度以上であれば増殖をするということであるとすれば。大変暑い日が続きましたから、七度から八度なるものが、もしかして七度から八度でない状態に、多少温度差があったなどということならばこの仮説も成り立たないわけではないという気もいたします。  一方逆に、大阪市が指摘した四つ項目、これによって果たしてどれほど大量の菌が増殖してエンテロトキシンが発生するのか、この実験というのはすべきものではないんでしょうか。いわゆる大五郎などに菌を多少混入させてまぜ合わせて、これはまぜたらすぐ大容量のタンクに入れるわけですから、その中で本当に増殖する可能性があるものなのかどうなのか、あるいは屋外でやったらどうなのか、チャッキ弁でやったらどうなのか、そういうものを再現して本当にこれが原因なのかという特定をする必要があるのではないでしょうか。
  152. 西本至

    ○西本政府参考人 実験をすべきかどうかという御質問でございますが、私どもの現在の立場では、厚生省がみずからやるところまでは必要ないんじゃないかという見解に立っておるわけでございます。  ただ、大阪市におかれましては、先ほど申し上げました四点の要因と思われるものにつきまして、どれが一番可能性が高いものかということにつきましては、専門家を交えた調査委員会を設置される、そしてその中に私どもの今回の評価委員のメンバーも加えてくれという要請をいただいておりますので、それにつきましては協力をさせていただこうというふうに考えているわけでございます。
  153. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 最初の質問に戻りますが、大阪市が挙げた四つ問題点、これだけでは一万四千人以上もの発症につながる菌の大量増殖の説明がつかない、こういう新聞報道についてはどのようにお受けとめでしょうか。この四つのものからこれほどのエンテロトキシンが出てくるといいますか生産されるといいますか、そういうこともあり得るという前提なんでしょうか。それとも、それだけでは大量増殖につながるということは説明し切れない。どの辺でとらえておられますでしょうか。
  154. 西本至

    ○西本政府参考人 なかなか答えにくい御質問でございますが。先ほど申し上げましたように、四つの要因というのは、これは明らかにされて、はっきり事実関係があったということがわかっているわけでございます。さらにプラスアルファがあるのではないかという前提に立てばいろいろなことが考えられるわけでございまして、いろいろな実験をしなきゃいけないということになるわけでございましょう。  一応、今私どもが理解しておりますのは、この四つの要因のうちのどれか一つに短期間的に極めて大量の黄色ブドウ球菌が発生する条件が整ったのではないかという説が一つ。それからもう一つは、この一から四が複合的に絡み合いまして、もちろん短期的でございますが、ある時期に集中的に黄色ブドウ球菌の産生を見たということがあるのではないかというふうな観点から、大阪市の方が調査委員会を設置されたというふうに伺っているわけであります。
  155. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 それでは、この四項目、チャッキ弁、ホース、屋外における調合、再製品の使用、これらだけによって一万四千人もの発症につながるエンテロトキシンが生成されるということも特定しているわけではないんでしょう、今の段階では。そうすると、それがもし特定されれば大容量のタンク内での増殖ということは考慮に入れる必要はなくなるかもしれませんけれども、この四項目で大量のエンテロトキシンの生成ということが立証されなければ大容量のタンクということにも着目せざるを得なくなるのではないでしょうか。そういうことからすれば、本当にこの四項目でそれほどの菌の増殖があり得るものなのかどうなのか、実際どういう条件でそれが可能になるのか、これはきちっと調べておかなければ原因の特定にはならないのではないでしょうか。
  156. 西本至

    ○西本政府参考人 私どもの現在の見解は先ほど申し上げたとおりでございますが、委員のたび重なるそういう御要請もございますので、これは大阪市とも一度検討させていただきます。
  157. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 さらに、新聞報道によりますと、タンクの中での増殖ということがあり得るとすれば、数日間にわたってタンク内の原料乳が使用されたということが疑われるといいますか、その可能性があるという報道があるわけでございます。  厚生省から伺いますと、二十四時間でしたでしょうか四十八時間でしたでしょうか、貯蔵期間というものが限られていて、その間に使い切ってしまわなければならない、使い切って、さらに洗浄して次の原料乳を入れる、これが正規のマニュアルだということなんですが、そのとおり行われてきたものなのかどうなのかはわかっておりますでしょうか。
  158. 西本至

    ○西本政府参考人 現在のところは、わかっておりません。
  159. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 それでは、冒頭局長の方からは大阪市も大阪府警も低温での菌の増殖という実験はしておらなかったんだという答弁はありましたけれども、仮にそれが事実だとしても、大容量のタンク内での増殖ということ、その仮説自体が今時点で否定されているわけではないと思います。  したがって、あらゆる可能性、本当にこの四つの指摘だけでこれほどの菌の増殖、エンテロトキシンの生成がされるものなのかどうなのか、大容量のタンク内での増殖ということが全く否定されるものなのか、そうではないのか、その辺、柔軟な思考を持ってぜひ調査検討いただきたい、御要請を申し上げておきたいと思うわけでございます。  次に、一点、資料を御提出いただきたい。これは出せるかどうかということでお尋ねをいたしますが、市と大阪府警が、大阪市内の発症者のうち、飲んだ低脂肪乳の製造日がわかった千七百人のデータを分析したところ、食中毒の発症率が六月二十一日から二十五日の製造分にかけて日ごとに高くなる傾向のあることもわかったというデータがあるようでございます。これをデータを加工しないで入手したままの形で御提出いただけるかどうか、これをひとつお答えいただきたいと思います。
  160. 西本至

    ○西本政府参考人 ただいま御指摘の資料は、七月二十八日に大阪市の環境保健局生活衛生課から公表されました「雪印乳業株式会社大阪工場原因施設とする食中毒事件に係る今後の対策等について」という資料に含まれております「品質保持期限別届出者数」というものだと考えます。この資料は私どもの方にも報告をされておりますので、もちろん加工するというようなこともなく提出させていただけると思います。
  161. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 ぜひひとつ御提出をいただきたいと思います。後ほどで結構でございます。  次に、雪印大阪工場の細菌の検査についてお聞きをしたいと思うんですが、特に、今回事故を起こした加工乳の生産ラインで、細菌検査のためのサンプル採取、それはどういうポイントで採取されていたのかということでございます。恐らく原料として投入する時点では必ず調査をされるでしょうし、製品になった時点でも調査をされるのではないかなと推測をいたしますが、今日までの資料では細菌検査がどのポイントでされているかというのは出ておりません。  ついては、中間点、例えば殺菌工程に入る前の段階でサンプルが採取されていたとすれば、今回の状態ならばかなりの細菌数が検出されたと思われるわけです。殺菌工程に入ると、それが殺菌されてエンテロトキシンしか残らない。そのエンテロトキシンの検査はされておらないということですから発見はできないと思うんですが、途中、どこかの時点でサンプル採取がされていれば事故は未然に防止できたのではないのかなと思うわけでございます。  そこで、サンプルの採取はどのポイントで行われていたのか、わかっていればお聞かせをいただきたいと思いますし、その検査データ、先ほど原乳の細菌数の話などもございましたけれども、そうしたデータもあるんだと思います。六月二十一日から二十八日までぐらいが本件にかかわる重要なポイントだと思いますので、この六月二十一から二十八くらいの間の実際のポイントごとの生の細菌の個数のデータというものがありましたら、これまた御提出いただきたいと思うんです。
  162. 西本至

    ○西本政府参考人 七月一日に、私どもの担当官が大阪市とともに雪印大阪工場立入調査を実施いたしまして、当該工場におきまして、加工乳の生産ラインにおける細菌検査のためのサンプル採取を最終製品で行いました。一般細菌数、それから大腸菌群及び低温細菌、これらについて検査をしているということを確認したものでございます。  なお、これらの結果につきましては、現場で確認作業をしたということでございまして、データはございません。したがいまして、提出させていただくことはできないわけでございます。
  163. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 雪印工場で原料乳を受け入れて、今回の加工乳ラインにも生乳は混入されていると思うんですよ。脱脂粉乳とバターと水だけではなくて、生乳のラインからもそれは入っているわけですね。その原料になっている部分の細菌数が恐らく夏の期間はかなり上がるだろうと思いますし、それがどういう工程殺菌されて、恐らくゼロに近い状態になるのか、その中間でのサンプル採取もないわけでしょうか。それから、最初の採取した調査もないんでしょうか。  それらが恐らくデータとして蓄えられていると推測をして御質問しているんですが、今の話ですと、製品になったときだけチェックして、あとの部分はないみたいな話ですが、本当にそうなんでしょうか。
  164. 西本至

    ○西本政府参考人 乳処理に当たりましては、原料乳の段階から低温管理というものを徹底いたしております。製造の各段階におきましても、微生物が増殖可能な温度帯というものを最小限にするようにいたしております。  また、殺菌工程におきましても、殺菌温度及び時間というものを厳密に管理するということが非常に重要であるというふうに認識をしておりまして、これら各製造工程における製品の細菌検査は特別必要がないということで、先ほど申し上げましたように、最終製品の段階での細菌検査を行っているというのが実態でございます。
  165. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 最初の受け入れの、原料になるところの検査はあるんですね。原料乳の細菌検査、それで、あとは最終製品段階の検査。中間がないという意味なんですね。
  166. 西本至

    ○西本政府参考人 原料乳の細菌検査はもちろんやっております。
  167. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 中間がもしあれば、今回中間で菌が増殖しているわけですから、非常に効果的にチェックすることができたんだろうと思うわけでございまして、素人考えですが、殺菌工程に入る前のしかるべき段階でサンプルを抜き取って培養すれば有効ではないかなというふうに思いながらの質問でございます。  最初と最後だけしかないということですけれども、最初と最後だけのデータの、恐らくサンプルごとの細菌数をいろいろ書いた一覧表というのがあるのではないでしょうか、六月二十一から二十八。それを参考までにと思っているんですが。
  168. 西本至

    ○西本政府参考人 先ほど申し上げましたように、現場で確認をしたということでございまして、再度確認をいたしましたが、この六月二十一日から二十八日までのデータというものはございません。
  169. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 とりあえずお聞きをしておきます。どうもにわかに信じがたい気がいたしてございます。  ちょっと時間をとったものですから中を省きまして、質問通告の十一項目めまで飛びまして、屋外における調合作業とか移動式タンクの使用とか考えられないことが起こっているわけでございますけれども、これらが現場の作業員とか現場段階で独断で行われるというのはおよそ考えにくいと思うわけでございます。いわゆるやみマニュアルといいますか、そういうものがあったのではないかと思うんですが、それはもうつかんでおられますでしょうか。
  170. 西本至

    ○西本政府参考人 これも現在までの大阪市の調査でございますけれども、御指摘のような工程におきますいわゆる裏マニュアルといったようなものの存在については確認をされてございません。  大阪市におきましては、これらの点も含めまして原因究明を実施しているというのが現状でございまして、最終的には今後の結果を待ちたいというふうに思います。
  171. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 午前中の参考人質疑の中でも同じような質問が出て、だれが指示したのかということもございましたけれども、この辺はやはりはっきりさせる必要があるのではないでしょうか、どういう形でこういうことが行われたのか。さほど難しくないわけで、現場の責任者なりに聞けばすぐわかることでございますから、ぜひひとつこれは解明をしていただきたい。こういうところをきちんと解明しなければ再発防止策につながってこないと思うわけでございまして、よろしくお願いしたいと思います。  それからもう一つは、先般、大阪に出向きました。その際、大阪の助役さんの方から、プレス発表の時期について非常に苦慮をしたというお話がございました。したがって、私は、これについては法改正を含むしかるべき措置が必要ではないかなと思っております。  いつの時点でプレス発表をすべきなのか。これは、被害を最小限に食いとめるという観点から、どこまで判明した時点で公表する義務を保健所なり会社なりに負わせる、消費者保護という観点からそういう法改正が必要だと思いますが、いかがでございましょう。
  172. 西本至

    ○西本政府参考人 事故の情報開示のタイミングの問題でございますが、食中毒事故のような危害の発生時におきまして一番大事なことは、正確性と迅速性ということであろうかと思います。  大阪市におきましては、今回の場合、結果的には六月二十九日に公表ということになったわけでございますが、この段階では大阪工場の低脂肪乳が数十万本市場に出回っておった、そして大阪市が前日の二十八日で確認したのは三件の報告であったというようなこともございまして、全体としての危険性について行政側として結論が出せなかった、非常に難しいケースであったというふうに理解しているわけでございます。また、製造側におきましても、事項の製造管理に照らして迅速な対応ができなかったことも問題点として残るものと考えております。  当日、私も参りましたが、大阪市の方からも、公表のタイミングについて何か一定の基準のようなものを考えてくれないかという御要請を受けたのは事実でございます。非常に難しい問題ではございますが、今後とも適切な情報開示のあり方について検討してまいりたい、このように考えております。
  173. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 そういう御答弁ですと、何もしないということになるんじゃないかなと思うわけでございますが。やはり一定の確証が持てる時点、それをどこに置くか。食中毒であれば、細菌が検出されたときなのか、被害者が一定程度同じ症状の人が確認された時点なのか、その辺のところをきちっとする必要がある。そして、その段階では開示する義務を負わせる。義務によって、仮にもしそれが結果として違ったということであれば損害賠償をしなければなりません。その損害賠償の仕組みまで含めて、裏づけをきちっとしておかないと、怖くて発表もできないということになるのではないかと思うわけでございます。  一般的に検討しますでお茶を濁すのではなくて、消費者保護という観点から、これは食品衛生法に一番抜け落ちている観点だろうと思います。本来であれば、全面的な法の見直しが必要ということになるんでしょうが、差し当たって、最低限、消費者保護の観点からの情報開示、プレス発表、この辺についての義務を関係者に負わせるという観点での検討をお願いしたいと思うんですが、再度御答弁をお願いします。
  174. 西本至

    ○西本政府参考人 直ちに法改正というところに行くかどうかということにつきましては検討させていただきたいと思いますが、御指摘の点はごもっともな点が非常に多うございます。何らかの形で、検討という言葉を使うとまたとおっしゃられるかもしれませんが、本当にしっかり検討してまいりたいというふうに考えております。
  175. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 ぜひしっかり検討していただきたいと思います。  最後の質問でございますが、大臣の所信の中でも、厚生省内に対策本部が設置された、鋭意やりますという話でございましたけれども、行うべきことは、細菌が大量発生したメカニズムを解明すること、このことを含む原因の解明、これこれこういう状況でこういうことになりましたという原因の解明。それに基づく再発防止策については、ただいまの食品衛生法改正、あるいは先ほど来議論になっておりますHACCPについての手直し、あるいは乳等省令見直し等々あろうかと思いますが、そういうものを再発防止策として明確にして、一つ一つ改正に着手をするということが必要だと思います。  そういうことからしますと、これはもう一大阪保健所に任せる話ではなくて、厚生省責任においてきちんとした報告書をつくって公表をしていただきたい。大量発生のメカニズムを含む原因はこうであったと当時の経過も含めてきちっと整理をしていただいて、再発防止策としてはこれこれが必要であるという最終的な報告書、それに至る中間報告があってもいいと思うわけでございますが、そういうものを出していただけるのでしょうね。いかがでしょうか。
  176. 西本至

    ○西本政府参考人 七月七日に私どもの省内に対策本部を設置いたしまして以来、三回会議を行いました。  第三回目の対策本部会議におきましては、雪印乳業工場に対する査察チームによる継続的なフォローアップ、それから総合衛生管理製造過程承認に係る助言機関の設置、加工乳等の再利用に関する有識者懇談会の設置、食品監視の重点化と効率化、国と自治体との連携強化というようなことにつきまして今後検討するということを決定いたしたところでございます。  したがいまして、これらの項目を実行しつつ、先ほど申し上げましたように、大阪市の調査委員会にも私どもの専門家を派遣するということも考えておりますので、調査結果を待ちまして再発防止策に努めてまいりたい、このように考えております。
  177. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 今回の原因、メカニズムなどをきちんと整理をしていただく、その上で再発防止策を講じていただく、こういう報告書なるものは、今の御答弁ですと厚生省からは出ないというふうに聞こえるんですが、そういうことなんでしょうか。  この四項目の指摘されていることが、果たしてそれだけでメカニズムとして完結したものなのか、あるいは大型タンクまで含むような状況であったものなのか。いずれにしても、どういう状況の中でこのようなエンテロトキシンの生成が行われてきたものか。これらはかくかくしかじかでございました、ついてはこれこれこういう対策を講じますという厚生省責任における報告書というのは、出ないということはないのでしょう。
  178. 西本至

    ○西本政府参考人 対策本部は三回まで行いましたが、まだ解散するというわけではございませんで、今後も継続するわけでございます。その途中で、恐らく大阪市の方から正式な原因についても解明された報告書が出てくるものと考えます。私どもは、それをいただいた段階で、対策本部として何らかの形のやはり報告書を作成せざるを得ないというふうに考えております。
  179. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 これが、八月六日付で雪印が主要な新聞に全面広告を出した内容でございます。  もうごらんになったと思うわけでございますが、「安全性確認のご報告」ということで、その中には「厚生省・専門評価会議より食品衛生上問題がないことをご確認いただきましたので、」云々ということで、問題ないという御確認などは厚生省はするようでございますけれども、それをされるのであれば、当然のこととして、発生のメカニズム、よって来る原因、さまざまな問題点があったということも具体的にきちんと解明をしなければ。安全性確認だけするのが厚生省の仕事ではないと思うわけでございますが、きちんとしたものを出していただけるのですか。  どうも大阪保健所がやることだというふうに聞こえるわけでございますが、そうであれば、こういう御確認もそれぞれの保健所にやらせればいいわけで、厚生省が、六人掛ける二組ですか、というチームなどをわざわざつくる必要はないのではないか。今回、こういう国レベルの問題になったという以上は、原因解明についても、厚生省責任というのはあると私は思うんです。したがって、大阪保健所が出しますから、それを受けてという話ではちょっと違うのではないかな。  国としてはここに手を染めたくないということなんでしょうか。それではやはりまずいと思うんですよ。こっちはもう安全確認はされているわけでございますから、問題の確認の方もぜひしていただきたいと思うんですが、どうでしょう。
  180. 福島豊

    福島政務次官 先ほどから御説明がありますように、現在、原因究明につきまして、大阪市、大阪府警が調査をしていることは事実でございますので、その推移を見守らせていただくというのは厚生省としては当然だろうというふうに私は思いますけれども、それを踏まえた上で、今先生からの御指摘に対しまして誠実に対応してまいりたいと思います。
  181. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 これは一保健所の次元の問題ではないという観点から、日々起こっている食中毒全部について厚生省事態を把握して報告しろなんという、そんなことを言うつもりは全くございません、この問題だとか、重要なというか重大な問題が残念なことに何年かに一度起こるわけでございます、そうしたときにはきちんと国の責任で物事に対処するということで対応していただきたい。政務次官の方から御答弁ございましたから、推移を見守りたいと思いますけれども、さらに強く御要請を申し上げておきたいと思うわけでございます。  ちょっとまだ時間があるようでございますから戻らせていただきまして、さっき飛ばしました質問事項を、時間の許す範囲で質問させていただきたいと思います。  スーパーなどに納品をする、それが返品をされてくる、こういう状況の中で引き受けざるを得ない、それを再製品として使ったという状況があったと思うのですけれども、今の力関係からいいますと、それぞれの地元ではスーパーの力というのは非常に大きなものがある。日にちがたつと売れなくなってしまいますから、そこから返品だというと、断るわけにもいかないという状況もあったのかなと思うわけでございますが、その辺のところをどうとらまえておられるか。そして、返品などが頻繁に行われるとこういう事態につながるわけでございますから、一たん管理を離れたものは返品ということはあり得ないのだというしかるべき措置、これは法改正などは必要はないのかもしれませんが、何らかの措置が必要ではないかなと思うのですが、最後にその一点だけお聞かせをいただきたいと思うのです。     〔委員長退席、坂井委員長代理着席〕
  182. 西本至

    ○西本政府参考人 一般的なことを申し上げますと、流通からの返品を認めるか否かというのは、基本的には商取引上の問題であるというふうに認識をしております。  ただ、一度店頭に並ぶ、あるいはまた衛生管理状況が不明なもの、こういうものを回収して再利用するということは、事食品に関する限りその安全性確認が非常に困難でございますので、そのような再利用は厳に慎むよう、全国の自治体あるいは乳業団体を通じて指導をいたしているところでございます。
  183. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 メーカーの方とか卸業者の方はそういうことは慎みたいと思っていると思うのですが、力関係で戻されてしまうというものを何らかの方策で規制できないかというつもりでお願い申し上げたところでございます。それを申し上げて、時間ですので終わります。
  184. 坂井隆憲

    ○坂井委員長代理 次に、石毛えい子さん。
  185. 石毛えい子

    ○石毛委員 民主党の石毛えい子でございます。  今回の雪印乳業の問題は、被害に遭われた一万五千人近くに及ぶ患者さんにとってもちろん大きな憂慮すべき出来事でありましたし、それから雪印乳業という企業の企業モラルが本当に問題であるということも無論ですけれども、私は、この事件がもう少し普遍的なと申しましょうか食の安全性に関する問題の射程を持っているような思いもいたします。そうしたことも念頭に置きながら、何点か質問をさせていただきたいと思います。  質問通告をいたしましたその中身の前に、ただいまの金田議員の御質問に関連いたしまして、通告外の内容になりますけれども、教えていただけたらと思います。  このことの最後の結論を出すのは大阪市及び大阪府警の調査、捜査の結果を待ってという御回答をしばしば今伺ったところでございますけれども、期間を大体どのぐらいというふうに見ておられますのでしょうか。多くのことは、何となく時の経過とともに問題の所在がどこかに流れていくというような危険性もないとは言えないと思いますので、先ほどの対策本部のこれからの方策の決定も含めまして、政策の当事者とされまして大体どのぐらいの期間を今展望されているかというようなことを教えていただければと思います。
  186. 西本至

    ○西本政府参考人 大阪市の調査会議というのは八月の中旬というふうにお伺いをいたしておりました。したがいまして、終期がいつであるかということについては、現段階でははっきりと私どもに通知をしていただいているわけではございません。  ただ、私どもの対策本部につきましては、現在、全国の雪印以外の乳処理工場改善の最終結果が八月いっぱいに取りまとまるという予定をいたしておりますので、その段階で第四回目の対策本部を考えようかなということを今のところは予定をいたしております。したがいまして、その段階までにもし大阪市さんの方も最終結果を報告をいただければ、それとあわせてできるのかなというふうに思います。  ただ、大阪市さんの方がもう少し時間がかかるということになりますと、九月中旬ごろあるいは下旬にずれ込むかもしれない、ちょっとはっきりした予測は立ちにくいというのが正直なところでございます。
  187. 石毛えい子

    ○石毛委員 いずれにしましても、秋口には一定の総括と申しましょうか、それを踏まえてどういう取り組みが必要なのかというようなことも明らかにし得るというふうに承らせていただきました。  質問でございますけれども、これまでずっとこの中毒事件原因は大体四点だ、あるいはその複合ではないかというようなことが言われております。ただいまの金田議員の御質問もございますけれども、これまでに報道されてきておりますのはそういうところでございます。私は、消費者として牛乳を飲むという感覚からいいますと、この四つの理由の中で、屋外調合がされていたということと、一たん製品になっていたものが再利用されてまた新しい乳製品につくられていくという、このことは何としても消費者としては普通は思わないことだと思います。牛乳及び乳製品の生産についてかなりのことを知っている消費者であれば別でしょうけれども、普通、消費者としてはそういうことは思わないだろうというふうに私は考えるわけです。  そうした常識といいましょうか、それを前提にしてお尋ねしたいと思いますけれども、牛乳及び乳製品に関しまして、屋外調合するということは食品衛生法上認められていることなのでしょうか、その点を確認させてください。
  188. 西本至

    ○西本政府参考人 屋外における調合作業そのものが直ちに食品衛生法に違反するかどうかということになりますと、それは、現法におきましてはそこまでは規制しておらないわけでございます。  ただ、乳製品等につきましては、温度管理というところを食品衛生法上の非常に大きなポイントというふうにみなしておりまして、例えば、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、細菌が増殖しやすい至適温度になるような環境での屋外作業ということになりますとこれはちょっと問題でございまして、衛生管理上はっきり問題があると思われます場合には、これはやはり食品衛生法上好ましくないという考え方を持っております。
  189. 石毛えい子

    ○石毛委員 先ほどの御答弁では、およそ十度以下でエンテロトキシン毒素は発生しないというような知見があるというふうに伺いましたけれども、この件が起こりましたのはもう梅雨どきということでございますから、屋外で十度ということはあり得ないことだと思います。ですから、常識的に言えば、ここに一つ原因があるのではないかというふうに思われます。それが大量発生に至るかどうかというのはまたもう一つ別のメカニズムだと思いますけれども。  ブドウ球菌が発見されなかったということに関しまして、記録が残っていないのでわからないというようなことが言われておりますけれども、十度以下ということはあり得なかったという前提で申しますと、屋外調合をしたということは、食品衛生法上どのような罰則に問われることになるのでしょうか。ちょっとその点もお教えください。
  190. 西本至

    ○西本政府参考人 先ほど申し上げましたように、屋外で作業するということそのものが食品衛生法違反ではないという形になっております。  例えば、極端な例を挙げますが、冬寒いときに外で調合作業をするかどうかというような問題がございます。考え方といたしましては、この時期に屋外で調合作業をするということは、十度C以下の環境下でやったとは考えにくいということは言えるのではないかというふうに思います。  ただ、これは、例えば細菌が培養してプラスに出ますとか、いろいろ物的な証拠として形が出てこない限りはいずれも憶測という段階を超えないものでございますから、そのあたりは私どももはっきり歯切れよく申し上げにくいというのが正直なところでございます。
  191. 石毛えい子

    ○石毛委員 それでは、この点に関しましては、先ほど来の大阪市の調査がどういう内容で出てくるかということを待ってもう一度きちっと精査されるべきかと思いますので、ここでおさめたいと思います。  次の点でございますけれども、一度製品として工場から出て流通に入ったものを回収して、それを新しい加工乳をつくっていくために原料として再利用される、このことは食品衛生法上違反なのでしょうか、違反ではないのでしょうか。そこのところを教えてください。
  192. 西本至

    ○西本政府参考人 現在の食品衛生法に基づく乳及び乳製品の成分規格等に関する省令、俗に乳等省令と呼んでおりますが、これにおきましては、議員ただいま御指摘のように、加工乳の原料として加工乳を使用することは認められていないということになっております。
  193. 石毛えい子

    ○石毛委員 加工乳の原料として加工乳を使うことは省令違反であるということはわかりました。  ただ、今回は大阪工場では使われていたということとか、それから、午前中の西参考人陳述の中にも、使っていたというような意見陳述があったわけですけれども、例えば、生乳を回収して加工乳の原料に使っていくというようなことは認められているという解釈でよろしいわけですね。
  194. 西本至

    ○西本政府参考人 御指摘のとおりでございます。
  195. 石毛えい子

    ○石毛委員 それはどのような条件でもよろしいという解釈になるのでございましょうか、その点を確認させてください。
  196. 西本至

    ○西本政府参考人 再利用そのものにつきましては、先ほども申し上げましたが、製造者の管理下にあって、なおかつ十度C以下に保存されるという条件が満たされますれば、一応衛生管理がされている、そしてまた品質保持期限内であるという条件もつきますけれども、こういうことがそろっておりますれば直ちに食品衛生法上問題にはならないということでございます。
  197. 石毛えい子

    ○石毛委員 私、先ほど来の御答弁を伺っているとわからなくなってしまうんですけれども、エンテロトキシンという毒素が発生しない、抑制される温度というのは大体摂氏十度がライン。それで、今局長の御答弁ですと、十五度C以下で管理されていればというふうにおっしゃられましたけれども、何か十五度と十度がいろいろなところで出てきて、どっちがどっちだか混乱してしまう、今の御答弁は十五度C以下で管理されていればよろしいということで間違いないのでしょうか、確認させてください。
  198. 西本至

    ○西本政府参考人 先ほどもそういう御指摘をいただきました。私はたしか十度と申し上げているつもりですが、発音が悪いのか上がっておりますのかちょっとわかりませんが、十度でございます。(石毛委員「十度ですか」と呼ぶ)五はございませんで、十度でございます。
  199. 石毛えい子

    ○石毛委員 はい、わかりました。  ここで、どういうふうに考えるのかということをお伺いしたいと思います。  今の牛乳の製造承認基準といいますのは、摂氏六十二度から六十五度で三十分殺菌をする、それ以上であればいいというような承認基準になっているというふうに伺っておりますけれども、一般的には、今の市販の牛乳は大体百二十度で二、三秒の殺菌ですね、殺菌、滅菌どっちでしょうか、されている。  これで、例えば結核菌の死滅ですとか黄色ブドウ球菌の死滅ですとか、そうした衛生上の管理がされ安全性が確保されるということで百二十度二、三秒で製造された牛乳が、今回の雪印の大阪工場の場合は一たん工場の外へ出て流通したという問題があるかと思いますけれども、市販であるかあるいは自社の倉庫の中に保管されていたかは別にしまして、とにかく高温殺菌された牛乳が再利用されるということは、私のいわば消費者、生活者としての常識からいいますと、高温で殺菌すれば殺菌の確率といいますか正確度というのは高くなるからそれは再利用してもいいのではないか、こうした常識が思い浮かぶわけです。六十二度から六十五度で殺菌をした牛乳、つまり低温殺菌牛乳を再利用しようという考え方というのは、生活感覚からいうとなかなか生じにくいのではないか。  つまり、低温殺菌牛乳か高温殺菌牛乳かというのは、ほぼ十年前に牛乳殺菌あり方として消費者の方からは大きな論点提起がされてきたわけですけれども、ここで再び再利用に関して私はこの問題を思い浮かべてしまったわけです。つまり、低温殺菌牛乳であれば再利用という生産工程というのはなかなか思い浮かんでこないのではないかというようなことを思い浮かべたわけですけれども、こういう非常に素朴な生活者からの疑問というものに関しましては、お答えいただくとしましたらいかがなものでしょうか。
  200. 福島豊

    福島政務次官 それは、先生、殺菌のプロセスというよりも、むしろ問題になりますのは、殺菌によっては滅菌とは違いますので完全にゼロになるというわけではありませんから、その後どういう温度管理をされたのか、そしてまたどういう期間それが保存されていたのかということで、最終的に戻ってきた乳製品の中の細菌数というものが決まってくる話だと思うんですね。  ですから、先ほども局長から御説明がございましたけれども、十度以下で管理されていたかどうかというようなことと品質保持期間内のものであるかどうかということ。一たん外に出てしまいますと、温度管理がされていたかどうか全くわかりませんから、そのあたりは信用ができないということになるわけで、その二つポイントだというふうに思います。
  201. 石毛えい子

    ○石毛委員 時間もございませんので、この点に関しましてはもう少し私の方も勉強させていただきたいと思います。  今回の食中毒の事件に関しまして私が関心を持ちますのは、食品衛生法には、食中毒に対する取り扱いの仕方といいますのは、第二十七条で、例えば「中毒した患者若しくはその疑のある者を診断し、」云々で保健所長に届け出なければならないというところまでは規定がございますけれども、この規定を受けまして、消費者にはどのように知らせるべきかとか、中毒を受けたというその患者さんがどういう対応を受けるべきかというような、消費者あるいは中毒をされた患者さんの立場からの規定は食品衛生法には何もございません。そのことについて規定がないのはどうしたらいいのでしょうか。  きょうの午前中の参考人の御意見の中には、食品衛生法は、反射的利益と講学上言いますが、反射的利益に関して規定しているけれども、消費者として安全を確保される権利ですとか知らされる権利について何も規定していないのではないかというような御指摘もいただいたように思います。私は、食品衛生法の中でこうしたことを積極的に展開していくべきだというふうに考えるわけですけれども、まず局長にお尋ねいたします。  規定はないわけです。ですけれども、先ほど大阪市の保健所は公表の仕方に大変悩まれているというふうに御答弁があったわけですけれども、その法と、実際に保健所が公表するあるいは発表するというその行政的な施行との関係についてお教えいただけたらと思います。
  202. 西本至

    ○西本政府参考人 食中毒事案の処理におきましては、被害の拡大と再発防止ということを図るために、行政庁といたしまして、事案の発生を迅速に探知をし、そして発見するということが極めて重要であることでございますので、職務上、食中毒事案発生を一番早く知り得る者は医師であるということでございますので、医師から保健所長への届け出義務は法的に課されているわけでございます。  ただ、食中毒の被害拡大防止に当たりまして、原因食品の廃棄処分、あるいはまた、原因施設の営業の停止あるいは禁止、こういった行政処分等で対応することにいたしておりますが、当該事案を広く消費者一般にいつどのような形で知らせるべきかということにつきましては、当該事案の規模でございますとか原因施設の種類等によりまして個別に判断すべきものであるという考えが前提にございますものですから、医師の食中毒の届け出と同じような一律の規定は置かれていないというのが現状でございます。     〔坂井委員長代理退席、委員長着席〕
  203. 石毛えい子

    ○石毛委員 食品衛生法に規定されていないとしますと、それでは、何を根拠にして判断をされて公表等々をされているのでしょうか。
  204. 西本至

    ○西本政府参考人 まさに、その御質問が今回の発表のいろいろな問題として指摘されているわけでございます。今回は、雪印も三件の報告、通報があった段階でまだ迷っていたというようなこともございます。  先ほど申し上げましたように、法の規制がないこの部分につきましては、やはり、当該事案の規模でございますとか症状の重篤度の問題、あるいは原因施設の種類等々によって個別に判断するということになっておりますので、その場に居合わせる当事者の判断で現在は実際は決めているという形でございます。
  205. 石毛えい子

    ○石毛委員 時間終了で恐縮ですけれども、政務次官、これだけ大量生産、大量流通、大量消費の時代に入りまして、例えば個別の食堂が、そこの衛生管理の悪さでそこに来るお客さんに食中毒を起こしたというようなこととは違う事象なわけです。本当に大規模になる可能性が広がっている、こういう食品がたくさん今広がっている時代だと思いますけれども、この食の安全管理、それを消費者個人の立場からきちっと確保していくにはどうしたらいいかということで簡単に御所見を伺わせてください。
  206. 福島豊

    福島政務次官 一般の消費者に対して情報提供が大切だというのは委員のおっしゃるとおりだと思います。そしてまた、食だけにかかわらず、これは、自治体にしましても国にしましても危機管理の一環ということだろうと私は認識いたしておりまして、その立場から、国民に対して適切な情報提供というものを迅速に今後とも行ってまいりたいというふうに考えております。
  207. 石毛えい子

    ○石毛委員 ありがとうございました。
  208. 遠藤武彦

    遠藤委員長 次に、水島広子さん。
  209. 水島広子

    ○水島委員 牛乳乳製品は、私たちにとって極めて日常的なものでございますし、また、特に小さな子供たちや学校給食にとって欠かせないものでもございますので、私は、今回の事件を非常に重大なものとしてとらえております。  そして、これは雪印責任というのは免れないものではございますけれども、今回の事件が現在の厚生行政の間隙を縫って起こったことは紛れもない事実でございまして、今回の事件を単なる一企業の問題に帰することは間違っているのではないかと私は思っております。今後このような事件を再発させないために、私は、特に安全衛生管理について政務次官に質問申し上げたいと思います。  まず、今回の雪印事件を機に行われた調査では、衛生管理上の指導が行われた施設が、七百四十七施設中五百六十一施設、つまり四分の三以上。また、HACCP承認施設でも、百八十六施設中八十八施設、つまり半数近くに上っております。たとえ衛生上の安全性に即刻直結しないような問題であったとはいっても、事故というのはそのようなすきをついて起こるものであると思います。今までこのような実態を厚生省では把握されていたのか、また、もしも把握されていなかったとしたら、なぜ把握することができなかったのか、その点についてまずお伺いしたいと思います。
  210. 福島豊

    福島政務次官 お答えいたします。  今回の点検では、雪印大阪工場における食中毒の原因と思われる事項を中心に、同様な食中毒の再発防止の観点から、乳処理施設における洗浄にかかわる作業手順書及びその記録を整備するように指導したものでございます。  今回指導した内容につきましては、一般の乳処理施設に対してこれまで指導していなかったということは事実でございまして、今回の事故を踏まえて、改めて指導をしたものでございます。また、総合衛生管理製造過程承認施設の半数において何らかの指導を受けたことがあったということにつきましても、これは、軽微な内容であったとしても、厚生省としましては、HACCPを推進してきた立場から謙虚に受けとめなければならない、そのように考えております。  また、この調査に従いまして不備が指摘された施設につきましては、早急に改善を図るように指示をいたしたところでございまして、HACCP施設につきましては、約半数が指導を受けておりますけれども、全施設が七月中に改善を終了いたしております。そしてまた、それ以外の施設につきましても、八月中に改善予定というふうに聞いております。  いずれにしましても、一斉点検を行った雪印乳業乳処理施設を除く現在操業中の七百四十七施設については、衛生上重大な問題がなかったことを確認したところでございます。  先生の御指摘を踏まえまして、こうした事態があるということも踏まえて今後も衛生管理に努めてまいりたいというふうに考えております。
  211. 水島広子

    ○水島委員 ぜひそのようによろしくお願い申し上げます。  また、HACCP審査が提出された承認申請書に基づいてのみなされていたという点についてお伺いしたいと思います。  今回の一斉点検の結果、雪印の全工場において承認申請書に製品、調整乳の再利用工程の記載なしということとされているわけですけれども、承認申請書に記載されていなかったことについてはすべてチェック漏れとなっていたということが事実であったと思います。この点につきまして申請システム上の欠陥はあったと思いますけれども、その欠陥がどのようなものであって、今後どのように改められるおつもりであるか、その点についてお伺いしたいと思います。
  212. 福島豊

    福島政務次官 HACCPとは、製造者がみずから定めた製造工程を自主的に管理することによって、より高度な安全性を確保しようというシステムでございます。その承認の際にも、今まで申請者側に対して一定の信頼というものを置いて私どもは行ってまいりました。しかしながら、今回のこの雪印の事例におきましては、こうした信頼が裏切られる結果となったわけでございます。  ですから、こうした事態を踏まえまして、今後の承認審査におきましても、厚生省が直接に現地調査を行って、その審査の内容に対して誤りがないのかどうかということについて厳重にチェックをしたいというふうに考えておりますし、審査の後、承認をしたといたしましても、その後のフォローアップというものもきちっと行ってまいりたい、そのように考えております。
  213. 水島広子

    ○水島委員 ぜひそのように、承認時の審査について、現行のものよりも厳しくしていただけますように改めてお願いいたします。  そして、今回、承認申請書に記載された以外の方法をとっていたということが致命的な欠陥であったわけですけれども、今後、承認時の審査を厳しくするとしまして、承認申請書に記載された以外の方法をとったことが承認後になってから発覚した場合に、それに対してペナルティーを科すようなおつもりはありますでしょうか。
  214. 福島豊

    福島政務次官 現在の制度におきましては、虚偽の申請を行ったことに対してペナルティーがあるのかということでございますけれども、雪印大阪工場におきましても承認の取り消しを行いました。承認を取り消されること自体が、社会的に見ましても一つのペナルティーであることは間違いのないところではないかというふうに考えております。  そして、罰則を強化することが今後必要なのかどうかということでございますけれども、先ほども申しましたように、承認審査体制、そしてまた承認後の監視指導というものを強化していくということでまずもって厚生省としては対応してまいりたいというふうに考えております。
  215. 水島広子

    ○水島委員 承認を取り消された場合に、その後もう一度承認を得るということは可能にされるおつもりでしょうか。
  216. 福島豊

    福島政務次官 この点につきましては、再度承認の申請をしまして、その内容が承認に関して内容を満たしておりますれば可能でございます。
  217. 水島広子

    ○水島委員 そうしますと、承認を取り消されてから次の承認を申請するまでの間に、何らかの研修プログラムを義務づけるとか、きちんと反省をしてもう二度と虚偽の申請をしないということは、どのようにして確認されるおつもりでしょうか。
  218. 福島豊

    福島政務次官 今回の事件を踏まえまして、HACCPの運営に当たりまして、今後さまざまな形で専門家の助言を得られるようにしますとか、そしてまた、経営者の姿勢が大切であるということも午前中の参考人意見にもございました、経営者に対してのさまざまな啓発事業を行っていくことも考えております。  そういうことを踏まえまして、今後、そのような施設がありまして再承認を求めてきた場合につきましては、一にも二にもきちっと審査をするというところに尽きるのではないかというふうに思います。もちろん、その審査の内容には、適切に運営できるのかどうかということで、HACCPチームというものも定められているわけでございまして、そうした人的な体制も含めて、詳細な点検を行うことが必要であろうというふうに考えております。
  219. 水島広子

    ○水島委員 先ほど承認取り消しというのが十分な社会的ペナルティーというお話でございましたけれども、全く我々の目につかないところで承認がこっそりと取り消されるようでは社会的なペナルティーとは言えないと思いますが、その点についてはどのようにお考えでいらっしゃいますでしょうか。
  220. 福島豊

    福島政務次官 先ほどもございましたように、食中毒事件等の発生におきまして、一般の国民皆様に情報の周知を図ることが必要である、そしてまた図ってまいりたいというふうに厚生省の姿勢を示させていただきました。  ですから、おのずと、そういう事件があった場合にさまざまな情報というものが当然国民に対して発信されるわけでございまして、その中で、これは仮定の話でございますけれども、HACCP承認の取り消しというようなことも、当然これは知られるところとなるのではないかというふうに推定をいたします。
  221. 水島広子

    ○水島委員 ちょっとくどいようなんですが、食中毒が起こってからHACCP承認が取り消されて一般の知るところとなるというのはわかりやすいのですけれども、食中毒が起こらずに、定期的な立入調査によってHACCPの申請以外のことをしていることがわかった場合にも、それを広く知らしめるようなおつもりはありますでしょうか。
  222. 福島豊

    福島政務次官 雪印事件に重ね合わせて答弁をさせていただきましたが、一般的な事例としましても、HACCP承認を取り消した場合につきましては、厚生省としましてはこれを公表いたします。
  223. 水島広子

    ○水島委員 今後、業界にHACCP導入を義務づけるおつもりはございますでしょうか。
  224. 福島豊

    福島政務次官 業界というのは、要するに、すべての事業者に対してHACCP導入を義務づけてはどうかという内容でよろしいのでございましょうか。(水島委員「はい」と呼ぶ)  その御意見につきましては、何回か繰り返し御答弁をさせていただいておりますけれども、HACCP導入ということは一定のコストをもたらすものでございます。午前中の参考人の御意見にもございましたけれども、まず一般的な衛生管理食品衛生法の規定の中でさまざまなことがございますけれども、まずそれがありまして、さらに高度な衛生管理を目指すということでHACCP導入をされたわけでございます。  コストとの兼ね合い、そしてまた、今申し上げました食品衛生管理というのが二段階のものであるということを踏まえますと、それを一律に義務づけることは、現在のところ厚生省としては考えておりません。
  225. 水島広子

    ○水島委員 政務次官も御指摘のように、中小企業の場合には、コストの関係上、HACCP承認を得ることは極めて難しいと思いますけれども、今おっしゃったように、一般的な安全衛生管理があって、さらにより高度なということになりますと、明らかに大きな企業の製品の方がより高度に安全であるというようなことになってしまいまして、私は、それは中小企業にとって必ずしも喜ばしいことではないと思います。  ですから、HACCP承認外のものについても安全性をやはり同じように確保しなければいけないと思いますけれども、その点について何かお考えがあればお教えいただければと思います。
  226. 福島豊

    福島政務次官 HACCP導入するということは、先ほどの参考人の御意見陳述にもありましたように、できる限りといいますか一〇〇%の安全性を目指そうという観点から導入されたわけでございます。その導入に当たりまして、さまざまな形での仕組み、システムというものをつくらなければいかぬ、そしてまた、さまざまな記録というものもつくっていかなければいかぬとか、そういうことが現実問題としては中小企業にとりましては負担になるということはあろうかというふうに思っております。  しかしながら、このHACCPというのはシステムでございます。そして、一つ一つの重要なクリティカルポイントでございますけれども、ここのところのコントロールをきちっとする、コントロールをして、さまざまな問題があった場合にはフィードバックをかけることによってそれを見直す、そのプロセスをどれだけきちっと手順としてやっていくのかということの積み重ねがHACCPの本質だというふうに私は思っております。  そういう意味では、形式的な承認ということではなくて、中小の事業所でありましても、みずから生産いたしております食品に関しての安全を守るために、同じような考え方で事業を行うことは可能であろうというふうに私は思います。
  227. 水島広子

    ○水島委員 ぜひそのような御指導お願いしたいと思います。  そして、先ほど参考人の御意見にもたしかあったと思いますけれども、HACCP承認を受けた営業者への継続指導監視は、年十二回という努力目標が掲げられているわけですけれども、実際のところは年八回しか行われていなかったということです。  それは、当然、人員の不足ということがあると思いますけれども、年十二回というのがたとえ努力目標であるとはいっても、努力目標と現実との乖離がこれほど常態化していることがそのまま放置されているというのは、私は行政にも何らかの責任があると思いますけれども、その点についてはいかがお考えでいらっしゃいますでしょうか。
  228. 福島豊

    福島政務次官 午前中の参考人の御指摘は、私もお聞きをいたしました。  法定監視回数を下回っているのではないかということでございますけれども、この監視回数は、あくまでも努力目標として定めたものであるというふうに理解されているとお聞きをいたしております。  しかしながら、監視回数というものをきちっと確保しなければいけない、その指摘はそのとおりであろうというふうに私は思っておりますし、厚生省としましても、各自治体に対しまして、今後とも、食品等の安全性の確保に万全を期すために、監視指導内容の充実というものを指導してまいりたいというふうに考えております。
  229. 水島広子

    ○水島委員 その場合、恐らく現場の方は既に努力されているのではないかと思うのですが、やはり人員を確実にふやす必要があるのか、あるいは現在のような人員配置の中で個人の努力によって成し遂げられるものであるのか、そのあたりはどのようにお考えでしょうか。
  230. 福島豊

    福島政務次官 行政改革の時代でございまして、スリムな政府ということが言われておるわけでございます。しかしながら、単にスリムということではなくて、パフォーマンスのいい政府をつくろうということも今言われているわけでございまして、食品衛生監視にしましても重点化をしていく、そしてまた効率化を図る。そのあり方について、私ども厚生省としても、しっかりと検討し、また各自治体に対し指導してまいりたいというふうに思います。
  231. 水島広子

    ○水島委員 次に、先ほど来お話にも出ております衛生指導というものについてお伺いしたいのです。  まず、一般に厚生省が飲食物を扱う工場に対して義務づけているあるいは指導されている衛生教育というものですけれども、単に清潔にというだけではなく、細菌学の初歩くらいは教えていらっしゃるのでしょうか。つまり、例えば加熱をしてもあらゆる食中毒を防げるわけではないというようなことであるとか、屋外で作業することがなぜいけないのかとか、そのようなことについては触れられているのでしょうか。
  232. 福島豊

    福島政務次官 監視指導に当たりまして具体的にどのようなことをしているかということでございますけれども、細菌学的な見地から、必要に応じて、微生物等につきましても食品等の収去検査を行いましたり施設のふき取り検査というようなものを実施しているわけでございます。そしてまた、屋外作業につきましても、先ほど石毛委員からの御指摘もございましたけれども、食品衛生上問題がある場合にはこれを禁止させたりというような監視指導を行っております。  そういう意味では、現場におきまして、細菌学的な見地から必要なことにつきましては対応をしているわけでございまして、そしてまた監視指導を受けられました方にとりましても、その点につきましては御理解をいただいていると思います。
  233. 水島広子

    ○水島委員 今回の雪印の場合には、外で作業をしようと何をしようと、どうせ加熱してしまえばみんな菌は死ぬだろうからというような安易な感覚が現場にあったというふうに聞いておりますが、それでは、厚生省では、細菌学の、エンテロトキシンのことなんかも含めまして、指導をするようにしてはいるけれども、雪印側でそれをきちんと教えていなかったというふうに理解してよろしいでしょうか。
  234. 福島豊

    福島政務次官 大阪市が大阪工場に対しまして具体的にどのような指導を個別にしたかということにつきましてつまびらかにしているわけではございませんけれども、しかしながら、屋外におきます調合作業を行っていたということについて十分な認識がなかったのではないかというふうに私は思います。  むしろ責められるべきは、そうした細菌学的に大変問題のあるプロセスというものを、本来であれば安全管理に関しまして、業界のトップ企業でございますから当然深い理解を持っているはずでございまして、そうした点について理解をしておりながらこのような形での作業をしておったということはまことに遺憾であると私は思っております。
  235. 水島広子

    ○水島委員 今のこともまたそうなのですけれども、やはり雪印の現場では食品を扱っているという意識が抜け落ちていたということがきょうも指摘されているわけです。ただ、飲食物というのは私たちにとって命にかかわる問題でありまして、今後、飲食物を扱う業界の人たちに重い責任と自覚を持ってもらうために、厚生省としては何をされるおつもりでしょうか。
  236. 福島豊

    福島政務次官 今回の事件というものを踏まえまして、実際に食品を製造しておられる方には、いま一度原点に戻って、食品の安全というものは一体いかなるものなのかということについて理解を深めていただく必要があるというふうに考えております。  今回の事件を契機としまして、営業者による食品等の衛生的な取り扱い、また食中毒発生時の対応について、再度都道府県と連携を図りつつ、営業者に対して指導したいと思っておりますし、HACCP施設につきましても、HACCP対象業種ごとに食品衛生講習会を開催することといたしておりますけれども、さらに、午前中の参考人の御発言にもございましたけれども、経営者みずからの姿勢というものが大事であるということを踏まえて、経営者のトップに対しても指導を行いたいと考えております。
  237. 水島広子

    ○水島委員 厳しい指導とともに、やはり飲食業にかかわる人間としての誇りも必要だと私は思っております。先ほどから指摘されているような雪印の体質を考えましても、直属の上司を通さないと問題提起もできないとか、そのような閉塞感のある職場においては往々にしてモラルが低下するということが指摘されておりまして、これは飲食業のみならず、あらゆる企業が抱えている問題だと思います。  そして、もう時間なのですけれども、最後に一言だけ。  原料の再使用ということで、雪印では容器に移したものの再利用をやめるということでありますけれども、厚生省としまして、原料を再利用すること、また、それに伴う品質保持期限の再設定などについてどの程度研究されているのかということだけお伺いして、質問を終わりにしたいと思います。
  238. 福島豊

    福島政務次官 重ねての答弁になりますけれども、製品の再利用につきましては、製造者の管理下にあって、十度以下に保存される等の衛生管理がされており、かつ品質保持期限内のものであれば、食品衛生法上は問題とならないというふうに考えております。  そしてまた、現在流通している乳・乳製品の品質保持期限については、定められた方法により保管した場合に食品の安全衛生が十分確保されるように各製造者において設定がなされておるとも伺っております。  しかしながら、いずれにしましても、厚生省では、乳・乳製品の再利用の問題については、有識者から成る検討会におきまして御議論いただくことといたしております。
  239. 水島広子

    ○水島委員 ありがとうございました。
  240. 遠藤武彦

    遠藤委員長 次に、武山百合子さん。
  241. 武山百合子

    ○武山委員 武山百合子でございます。  まず冒頭に、厚生省から雪印に天下りしている役人がいるのかどうか、お聞きしたいと思います。
  242. 福島豊

    福島政務次官 そのような方がおられるとは承知いたしておりません。
  243. 武山百合子

    ○武山委員 雪印にはいないということはわかりましたけれども、では、いわゆる乳業業界関係はどうでしょうか。
  244. 福島豊

    福島政務次官 直接各社ということではなくて、団体に対して行かれている方があるということでございます。
  245. 武山百合子

    ○武山委員 これは通告しておりませんでしたので、何人くらい業界に天下っているかということは後で知らせていただきたいと思います。  それでは政務次官、平成八年度の食品衛生法改正では、HACCP取得工場では食品衛生管理者は置かなくてもよいということになっているわけですけれども、総合衛生管理製造過程HACCPといういわゆるお墨つきですね、これをきちっといただいているということは、書類上クリアされているという意味でございましょうか。
  246. 福島豊

    福島政務次官 先生の御質問の御意味は、食品衛生管理者を置かなくても、食品衛生上、HACCP体制というものがとられていれば大丈夫かということでございますか。この点につきましては、食品衛生法第十九条の十七におきまして、一般的には専任の食品衛生管理者の設置を義務づけているわけでございますけれども、HACCP承認を受けました施設におきましては、その承認時におきまして、専門知識及び技術を有する専門家チーム編成、各工程における責任者の設置、是正措置の明確化、サンプリング検査による検証の実施、必要事項記録等々のHACCPによる適切な衛生管理体制が確立されていることが確認されるため、食品衛生管理者の設置を要しないものといたしました。
  247. 武山百合子

    ○武山委員 それでは政務次官に。雪印ではたしか衛生管理者は置いていないということだったと思いますけれども、これだけ運用面で重大な欠陥が明らかにされているわけですけれども、今でも置かなくてもよいとお考えでしょうか。
  248. 福島豊

    福島政務次官 雪印大阪工場HACCPの専門家チームは、工場長が施設の最高責任者ということで充てられております。そしてまた、製造部門、品質管理部門、工務部門、物流部門等々の各部門におきましての責任者というものが定められております。  この専門家チーム考え方というのは、それぞれの部門の専門家がきちっとその役割を果たすということであれば、食品衛生管理者と同様のといいますかそれ以上の機能を果たすことによって、食品安全管理というものが確保されるという考え方になっているわけでございます。そういう意味で、食品衛生管理者というものの設置は必要ではない、専門家チームがしっかりと機能していただくことが大切であるというふうに考えております。
  249. 武山百合子

    ○武山委員 そうしますと、もう一回単純に答えていただきたいんですけれども、雪印には食品衛生管理者は置いていないわけですよね。それで、今のお話だと、チーム全体でその責任を受け持っているという意味ですね、HACCPというそのチーム。そういう意味ですか。簡潔に、すなわち置いているか置いていないかだけ答えていただきたいと思います。
  250. 福島豊

    福島政務次官 チーム全体でといいますか、そのチームの最高責任者として工場長がおるわけでございます。そして、工場長のもとにそれぞれの部門の責任者というものがおりまして、これが専門家チームということでございます。このチームがきちっと機能することによって食品衛生管理者と同様な機能を果たすものである、そのように考えております。
  251. 武山百合子

    ○武山委員 同じ国会議員の仲間として、非常に役人的答弁でわかりにくいんですけれども。  すなわち、私の質問は食品衛生管理者一人がいるのかいないのかということで、一生懸命言葉でいろいろ御苦労されていますけれども、単純なことを聞いているわけなんです。
  252. 福島豊

    福島政務次官 端的に申します。  おりません。
  253. 武山百合子

    ○武山委員 端的だったら、管理者は工場長という意味なので、すなわち食品衛生管理者を、先ほど午前中の参考人の中で、ここでは取得しているので置かなくてもよいことになっているから置いていないということだったんですよね。それなのに、政務次官は、チームだとか工場長だとか、一生懸命御苦労をされて答えているんです。一人いるかいないかだけ単純に聞いているんですけれども、これで時間が五、六分かかっているんですね。
  254. 福島豊

    福島政務次官 再度繰り返しになりますが、HACCP施設におきましては、HACCPチームというものが衛生管理の人的な部分でのコントロールを行うことから、法律上も食品衛生管理者の設置というものは義務づけられていないということでございます。
  255. 武山百合子

    ○武山委員 はっきりわかりました。チームで全体で総責任を負っているということですね。  そうしますと、午前中いろいろな皆さんの質問の中で明らかになったわけですけれども、責任問題も、先ほど罰則も出ておりましたけれども、政務次官、みんなの意見をお聞きになって、そして自分のお考えももちろんある、そういう視点において、今でもこの管理者は置かなくてもよいと思っていらっしゃいますか。一人ですよ。すなわち、チーム責任を負うんじゃなくて、一人の責任者を置くか置かないかという質問でございます。
  256. 福島豊

    福島政務次官 それは、食品衛生法改正のプロセスにおきまして、HACCP施設におきましては、先ほどから繰り返しになりますけれども、こうした専門家チームという形での対応がなされているわけでございます。ですから、食品衛生法で定められているところの食品衛生管理者を置く義務というものはないということを改めて申し上げたいと思います。
  257. 武山百合子

    ○武山委員 そういう発想では、みんなで渡れば怖くないという発想だと思います。  やはり管理者というのは一人なんですよ。一人がリーダーシップをとって責任を負うということなんですよ。そこに、みんなで渡れば怖くないという発想をチームが持っているわけですよ。これは厚生省もしっかりと考えるべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。
  258. 福島豊

    福島政務次官 チームだからすべて無責任になるということではございませんで、その中で最高責任者というものが定められているわけでございます。その最高責任者というのは、大阪工場の場合は工場長でございますけれども、そういうことで、チーム責任が分散されて、どこに帰属するのかわからないということでは決してなかろうというふうに私は思います。
  259. 武山百合子

    ○武山委員 本当に官僚的答弁でがっくりきていますけれども。そうしますと、すなわち、一人いるわけですよ。そのほかにチームがあって、その中の一人がリーダーシップをとって、責任を負っているという意味だと思う。しかし、これだけ答えるのに、本当に同じ仲間として非常にがっくりでございます。  それで、いわゆる厚生省HACCP取得工場に対するお墨つきと現実の運用面で大きな落差があるわけですけれども、これはもう午前から午後から、皆さんのこの委員会の質疑の中で明らかになっていると思いますけれども、こういう明らかな実態を見まして、厚生省はどんな思いを抱いていますでしょうか。
  260. 福島豊

    福島政務次官 私は午前中の参考人の御意見もいろいろとお聞きをしましたが、HACCPの制度は、山本参考人もおっしゃっておられましたけれども、食品衛生管理の上では極めてすぐれた制度であることは間違いがないというふうに私は思います。問題は、その制度がいかにして我が国内におきましてきちっと理解をされ、根づいていくのかという点にあるのではないかというふうに思います。  今回の雪印乳業事件というものを大変貴重な経験として、私どもはこのHACCPの制度というものの運営に遺漏がないように全力で取り組んでまいりたいというふうに考えております。
  261. 武山百合子

    ○武山委員 このシステム自体は高度な衛生管理ということでございますけれども、しかし、この高度な衛生管理の精神、趣旨をきちっと徹底しないことには、本当に何の意味もないと思うんですね。  それで、先ほど議論の中で、書類の提出、検査の厳格化とかいろいろお話しされていますけれども、厳格化というのは何を厳格にするんでしょうか。この厳格という言葉に惑わされたくありませんので、国民にはっきりと、何をどう厳格化するのか、ぜひお答え願いたいと思います。
  262. 福島豊

    福島政務次官 具体的には、承認審査に当たりまして、承認審査資料への設計図の、これは製造工場の設計図でございますけれども、原本の写しの添付ということで、隅から隅まで点検ができるようにする、そしてまた現地調査というものも必要でございますが、当面、すべての承認申請に対して、厚生省の職員を直接現地に派遣いたしまして調査を実施することとなっております。
  263. 武山百合子

    ○武山委員 書類の審査というのは以前にも議論になりましたし、それから、委員会派遣でも恐らく議論になったと思うんですけれども、非常に難しいと思うんですね。  審査する質の問題、それからその質がきちっとやはり機能していないとだめだと思うんですね。その辺が、言葉ではいろいろ並べられますけれども、それは運用の面で実際に、その書類、その目、実態、それから信頼関係、あらゆる要素の中で培われるものだと思うんですね。  それで、これは全国放映もされておりますでしょうし、議事録も残りますでしょうし、この雪印の問題だけじゃなくて多くの分野で、食品だけの分野じゃなくていろいろなところで同じような危機管理体制の甘さというものが今露呈されているわけですね。その辺で、厳格厳格と、もう国民は耳にたこができるほど聞きなれて、飽きているわけですね。ですから、その辺の国民に対する厚生省の信頼というものはどのようにとろうと思っていますでしょうか。
  264. 福島豊

    福島政務次官 信頼というものは一日にしてできるものではないかもしれませんが、一日一日の着実な取り組みによってしかかち取れないものであろうというふうに思います。  さまざまな事件が我が国内でも多発しているわけでございますけれども、それは、非常に単純なことに対して手抜きといいますか惰性といいますか、そういうものの積み重ねというものも恐らくあるんだろうと思います。ですから、言葉で厳格厳格と言ってもという御指摘は、まさにそのとおりで、行動によってそれは示すしかないんだろうというふうに思っておりますし、厚生省としても今後全力で取り組んでまいりたいというふうに思います。
  265. 武山百合子

    ○武山委員 時間がもうなくなってしまいました。  いわゆる情報の提供、それから原因究明のためのスピーディーな調査、これも非常に時間がかかっていると思うんですね。情報をきちっと提供されるのに物すごく時間がかかって、本当に国民はいらいらしている。原因究明もなかなか進まない。これは、何が原因でこのように進まないんでしょうか。
  266. 福島豊

    福島政務次官 情報の提供につきましては、二十九日に公表されており、これは大阪市が主体でございますけれども、適切に対応をしてこられたのではないかというふうに私どもは考えております。  原因究明につきましては、先ほどからもるるこの委員会でも議論がございましたように、大阪市、大阪府警が調査中でございますけれども、四つの指摘されるポイントがあるにしましても、それがどのような関係でこれだけ大量のエンテロトキシンというものを産生させたのかというプロセスの問題については、その究明に時日を要するような要素があるのではないかというふうに私は推定をいたしております。
  267. 武山百合子

    ○武山委員 被害の拡大を防止するためには、迅速にこのたび情報提供があったとは言えないと思います。それで、国の情報提供のあり方に対して基準がありますか。
  268. 福島豊

    福島政務次官 これも先ほどから御議論があるところでございますけれども、今回の雪印事件におきまして、これは行政が承知をしておりましたところですけれども、二十七日に一人、二十八日に二人、その当時数十万本の製品が出荷されていたということを考えますと、どのような判断をなすべきかということは、客観的に言って非常に難しいところがあったのだろうというふうに私は思います。  そしてまた、原因とされるところのエンテロトキシンが検出されましたのは、月が越えまして七月二日のことでございます。しかし、そこまで待つわけにはいかないということもございまして、二十九日の公表ということに至ったのではないかと思います。  このように、今回の事件というものを踏まえましても、どのタイミングで公表するのかということはケース・バイ・ケースで非常に難しいところがあるというふうに思います。したがって、一律に規定をするということではなくて、その場その場で適切な対応をとることが必要ではないかというふうに考えております。
  269. 武山百合子

    ○武山委員 被害の拡大を防止するという意味では、その場その場の対応が最も大事で、それでスピードが最も大事だと思うのですね、そして正確であるということだと思いますので、ぜひそのように対応していただきたいと思います。  時間が終了してしまいました。ありがとうございます。
  270. 遠藤武彦

    遠藤委員長 続いて、瀬古由起子さん。
  271. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 日本共産党の瀬古由起子でございます。  多くの被害者を出しました今回の雪印食中毒事件は、食品の安全の観点から大変多くの問題点、課題を明らかにしています。中でも、大阪雪印のような信じがたいほどのずさんな管理運営が行われていた工場が、なぜHACCP工場の大臣承認が行われたのか。再発防止のためには、食品の安全に対する厚生行政あり方HACCPシステムの徹底した点検が重要だと私は思っております。  そこで御質問いたしますけれども、厚生省は、七月の十四日付で、大阪雪印工場の加工乳及び乳飲料の二つの製造ラインについて、食品衛生法第七条の三第五項第二号の「承認に係る総合衛生管理製造過程の一部を前項の承認を受けずに変更したとき。」に該当するとして承認を取り消したわけですね。つまり、申請外の補助タンクで、加工乳及び乳飲料の返品された回収乳などを原料の一部として再利用していた、このラインがHACCPの申請時に書き込まれていなかったわけです。  先ほど次官からお話ありましたように、虚偽の申請によってHACCP取り消しのペナルティーを受けた、こういうふうに理解してよろしいでしょうか。
  272. 西本至

    ○西本政府参考人 バルブあるいは仮設ホースを含む戻し乳ライン、それから温度管理がなされていない屋外における調合作業、これらが今回雪印大阪工場で起きました食中毒発生の非常に大きな要因であるというふうに考えております。この二つ総合衛生管理製造過程の申請書の中に記載されていなかった。そしてまた、現地で調査をいたしました折にも、申請者から適切な説明がなかったということは非常に重要な問題だというふうに考えまして、七月十四日に厚生大臣の承認を取り消したというのが実態でございます。  なお、当時の申請時点で申請者に虚偽の意思があったかどうか、こういうことにつきましては定かではございませんが、承認の取り消しは、あくまでも事実関係として変更していなかったということのために行ったものでございます。
  273. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 それは、午前中の参考人の中で、社長が社の方針としてやったということをはっきり述べられておりますから、事実関係は明らかです。  そこで、ではこの問題は大阪だけの問題か。先ほど、社の方針でこういう虚偽の申請をやったということで、実際にはどういう状況だったのか。  厚生省の生活衛生局が八月二日に公表した報告書によりますと、すべての工場で再利用が行われて、その上、全工場で手洗浄にかかわる標準作業手順書の不備があり、殺菌、充てん時の余った乳等の再利用の標準作業の手順書が不備であり、パック詰めした製品も再利用していながらその手順書も不備。しかも、すべての工場HACCP申請時にこれらの再利用工程を記載していない。明らかに全部の工場ですからね。これは雪印会社の方針としてやったとはっきり述べられておりますので、私は本当に悪質だと思うのですよ。そういう点では、食品衛生法の七条の三第五項二号に違反する重大な問題だと私は思うのです。  そして、さらにびっくりするのは、京都、神戸、都城、高松は、品質保持期限が切れた原料まで利用しているわけですよ。明確な省令違反ですね。これらの工場については当然HACCP承認をやり直すべきだと考えるわけですけれども、いかがでしょうか。
  274. 福島豊

    福島政務次官 二十工場調査、そしてまた雪印大阪工場調査等々を行いました。その調査の中で、回収工程の申請書への記載不備等の事実はございましたけれども、大阪工場と比較してですけれども、大阪工場のような重大な衛生上の問題点は見つからなかったというふうに考えております。その点から承認の取り消しまでには至っていない。  しかしながら、承認事項と異なるところがあるわけでございますから、この二十工場に対しましては、専門評価会議における指示事項に基づいて、早急に変更届け出を提出するように指導をいたしたところでございます。
  275. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 会社が方針上明らかにうその申請をやる、こういうやり方や、先ほど私が述べました四つ工場においては品質保持期限も切れた原料まで利用している。それは大阪はひどいですよ。しかし、そのほかのところはましかというと、これだって大変重要な問題があるわけです。それを、先ほど出ましたね、雪印の安全確認厚生省がやった。お墨つきで、わざわざ食品衛生上の特に重要な問題はないなどと言って。雪印は助かった。それで問題ないといって宣伝しているわけですよ。こんなひどいことを厚生省は認めていいのかという問題があると私は思うのです。  こんなことなら、大阪のようにたまたま事件を起こしたので問題になったけれども、いろいろなことをやっても、事件が起きなければ、後で修正申告すればHACCPはそのままでいいなんということになれば、一体HACCPシステムというのは何だろうということが問われるのじゃないでしょうか。政務次官、いかがですか。
  276. 福島豊

    福島政務次官 これは委員がおっしゃられますように、決して軽微の問題であるということで済ましたということではなくて、きちっとそれを修正して改善をするという確約をとりました。そしてまた、その後テスト的な生産というものもしてきちっと確認をして、そういう手続を踏んだ上でのことでございます。ですから、単に言葉だけのことでは決してございません。
  277. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 確認するといったって、虚偽の申請をやっているのですから、もうそれだけで取り消しの条件は十分そろっていますよ。それを、いろいろな問題があっても、食品衛生法上じゃなくて食品衛生上とわざわざ言って、問題ありませんよなんて。こんなお墨つきを出すというのは、私はちゃんとやり直してほしいと思います。  雪印がどうなってもいいというわけじゃないのです。きちんと姿勢を正すという点でも、私は、厚生省はもっと厳しく対応すべきだと思うんですね。  この間、厚生省は全国の乳処理施設の一斉点検を行っていますけれども、うちHACCP施設三百七施設、七百三十八件のうち、余った乳及び乳製品の再利用を行っている施設、件数は一体何件ありますか。また、再利用工程を記載してその作業手順書が完備している施設、件数というのはどのようにつかんでおられますか、厚生省
  278. 西本至

    ○西本政府参考人 HACCP承認施設百八十六施設のうちで再利用を行っております施設は現在のところ把握いたしておりませんが、承認を受けているものに対しましては、申請資料に再利用工程を記載していない場合には、標準作業手順書の整備を含め、早急に変更届けをするように現在指導しているところでございます。
  279. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 今回起きた事件一つの大きな問題点は、再利用という問題だってあるわけですよ。そうしたら、全国の乳処理の施設点検をやっていて、一体どこが再利用をやっているのかというのは真っ先につかまなきゃいかぬと思うんですね。これをつかんでいないというわけでしょう。大阪の事件はありましたけれども、また第二、第三と起きる可能性だってあるわけでしょう。直ちにこれはつかむべきだと思うんですね。その点、調査して報告していただきたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。
  280. 西本至

    ○西本政府参考人 大阪で問題になりました件につきましては、全工場につきまして既に確認をしているということでございます。  再利用ということを盛んに御指摘でございますが、再利用そのものは、先ほどから申し上げておりますように、食品衛生法上の違反でなかったという事実がございまして、もちろん期限切れの問題でございますとかそういうものは問題でございますが、そういうことでありましたのでこのような形になったということでございます。
  281. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 私の質問に答えていないですよ。ちゃんと調べなさいと言っているんです。再利用について申請していないというところが問題になっている。そこがひょっとして原因かもわからないわけでしょう。次官、いかがですか。
  282. 福島豊

    福島政務次官 再利用に関しましては、有識者会議を設置いたしまして検討を進めるということになっておりますけれども、その検討のプロセスの中で、今委員御指摘のありましたように、再利用の実態について把握をしたいと思います。
  283. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 大体、業界では再利用なんというのは当たり前なんですね。ある意味では、余ったのをどうするかという問題はあるわけですよ。どこから再利用するかというのは、それはいろいろ問題があると思うんですね。当然厚生省は、その申請があったときに再利用のパイプがない場合は、これはおかしいなと気がつくのは当たり前なんですね。それが実際には再利用工程が記載されていない。これを平気で、記載されていないから承認するなんという。もし再利用が本当に業界でやられているかどうか知らなかったと言われるなら、HACCP申請の承認をする資格だってないですよ。  その点、何で再利用工程が記載されていないものを大臣は承認したということになっているんですか。政務次官、いかがですか。
  284. 福島豊

    福島政務次官 委員は、再利用するというのが常識的な実態であるということでございますけれども、私どもの認識ではそのように承知をいたしておりません。
  285. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 そういう常識的なものをつかんでいないで乳処理施設承認をする資格なんてないですよ。本当に私はこの点は反省していただきたいと思うんです。  では、厚生省が再利用について知らなかったのかというと、実際にはそんなことはないんです。  例えば、今、加工乳の余りを加工乳の原料として使用するのは違法だ、このように乳等省令厚生省は定めていますよね。一方で法律で決めておきながら、日本乳業協会への指導は、実は違う指導をしているんです。  その資料がちょっと手に入ったんです、これは乳業協会が出している「加工乳を加工乳の原料の一部として使用した製品について」。この問題について「改めて厚生省に照会したところ、以下の見解を得た」、これは厚生省の見解だと書いているわけですね。こういう内容なんです。  「加工乳は、指定した乳・乳製品のみを原料とし、水以外の他物を含まないものとして省令に規定されたものである。加工乳そのものは、指定した乳・乳製品に含まれるものではないが、加工乳の原料として指定した乳・乳製品のみからなるものであり、実質的には指定した乳・乳製品と同様のものといえる。したがって、適正な製造条件のもとで製造された現在販売中の表記製品の販売については、何ら支障ないものである。」  加工乳を使った製品については、これは違法につくられた製品じゃないかといろいろ意見が出たときに、問題ないと厚生省はわざわざこの問い合わせに答えてきちっと見解を言って、今乳業協会は全部配っているわけですね。一方では省令違反と言いながら、一方では……。委員長、これは次官に差し上げてよろしいですか。
  286. 遠藤武彦

    遠藤委員長 私にまず持ってきて。
  287. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 見ていただいたらいいと思うんですけれどもね。  ですから、こういう違法行為がまかり通って、一方ではいかぬと言いながら、一方では業界にはいいですよみたいなやり方をしている。これが今問題になっているわけですね。  加工乳の余りを加工乳の原料として使用してよい、そういうようにそれは読めるんじゃないかというように思うんですけれども、政務次官はその文書を御存じでしょうか。
  288. 福島豊

    福島政務次官 ただいま私の手元にも参りましたけれども、日本乳業協会は既にこの見解は撤回しておるというふうに伺っております。
  289. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 撤回しているんですか。そうすると、この厚生省に問い合わせしたというのもでたらめなんですか。厚生省の見解ですよ、それは。どちらですか。
  290. 福島豊

    福島政務次官 この点について、この文書では「厚生省に照会したところ、」となっておりますけれども、照会をいただいておりません。
  291. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 事実でないものを乳業協会が勝手に厚生省の見解を持ち出して全業界に流したというなら、これは大問題です。きちっと調べて報告いただきたいと思います。  もう時間がございませんので最後ですけれども、実は私、もっと時間があったら言いたいことがあったんですけれども、これは乳業協会がつくった「乳業工場におけるHACCPシステム導入ガイドブック」なんですね。これは表紙だけですけれども、これは厚生省の監修になっているんですよ。業界がつくったんだけれども厚生省が監修していると。  この中に、例えばフローチャートが載っていまして、要するに再利用工程がないわけです。わざわざ欠落しているんです。これは、業界が、再利用のラインをあえて申請のときに抜けてもいい、そういうフローチャートに読める。こういう内容も出ております。  それから、残念ながら取り上げられないんですけれども、私の地元の名古屋工場に私参りました。そうしたら、今、HACCPの申請のときには、それぞれ都道府県がチェック体制、かなり専門的なものが要るというお話がありますでしょう。ところが、名古屋市は二つHACCP工場がございますけれども、厚生省が直接入っているんです、直接監査をやっているんですね。それで、全く問題ないとフリーパスなんですね、通っているわけです。  ところが、見てみましたら、この名古屋統括工場もやはり再利用ラインが欠落しているわけです。要するに、厚生省のプロが出かけていって欠落させている。私は、これはもう単なるミスだったと言えない、意図的なものじゃないか。厚生省と業界の癒着という点ではこれは徹底した解明が必要だと思います。  以上、それを述べ、政務次官、答弁をどうぞお願いします。
  292. 福島豊

    福島政務次官 確かに、名古屋統括工場におきまして厚生省の職員が現地調査を行ったということは事実でございます。しかしながら、このHACCPの申請書にはこの再利用工程につきましての記載は全くございませんでしたし、現地の調査におきましても、申請者から適切な説明というものはございませんでした。したがって、これは調査が不十分ではないかという御指摘があるかもしれませんけれども、発見することができなかったというふうに承知をいたしております。  そしてまた、名古屋統括工場におきましての乳の再利用工程については、専門評価会議における指示事項に基づいて早急に変更届け出を出すように指導いたしたところでございます。
  293. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 時間がございません。本当に延びまして申しわけございませんが、ともかく、プロと言われている厚生省の方が出かけていって見抜けないなんというのは、本当にHACCP承認をする資格なんてないですよ。もう一回きちっと見直すべきです。  以上、質問を終わります。ありがとうございました。
  294. 遠藤武彦

    遠藤委員長 阿部知子さん。
  295. 阿部知子

    ○阿部委員 社会民主党、阿部知子、今般の食品の安全衛生行政における厚生省責任を主に質問させていただきます。  本来、厚生大臣津島さんにお願いいたしましたが、他に会議が入っておられるということで、福島政務次官に主にお伺いいたします。  ただいま瀬古委員の御質問にもございましたが、HACCPの問題をめぐりましては、申請、承認、ともに大変に問題があったとの御指摘がございました。そして、それらに今の質問がほとんど時間を集中してくださいましたので、私は、その後の点検ということについて、まず質問をさせていただきます。  どういうことかと申しますと、この雪印事故後一カ月以上を経過して、なお真の原因究明には至っていないわけです。安全宣言は出されましたが、本当にどの工程で問題があり、かように大量の食中毒が発生したか、一カ月を経てわかっていないということこそ大変に問題でございます。  そして、その中で、現在司直の手並びに大阪市にゆだねられたさまざまな調査の内容は、本来、厚生省食品の安全行政という点から、ともに明らかにしていくべき内容のことと思います。どこで汚染が拡大したか。先ほどの貯蔵タンクやもしれません。それらすべての調査を大阪市や大阪府警に任せて、その結果を見て厚生省が考えるというあり方では、食べ物について大変に不安が広がります今般の社会事情にかんがみますに、厚生省としての主体的責任がない。ひいては、HACCPとして承認しまして、事故が起きたら人任せということにもなりかねません。  この点に関して、厚生省行政としての独自性、見識をお伺い申し上げます。
  296. 福島豊

    福島政務次官 私ども厚生省としましても、事件が発生をしましてから、直後に担当者を派遣いたしまして、直接の担当でございます大阪市と連携をとりながら、この食中毒事件に対しての対応を進めてきたところでございます。  そしてまた、原因究明ということにつきましては、大阪市また大阪府警が調査中でございますけれども、適宜大阪市と連携をとりつつアドバイスをしておるところでございます。決して人ごとというようなことではございません。  そして、一カ月たって原因が明らかではないではないかということにつきましては、私も細菌学または食品衛生学の専門ではございませんけれども、発生要因として挙げられていることが四つございますけれども、それがどのように関連をして大量のエンテロトキシンを発生させたかということはなかなか簡単に割り切れないところがあるのではないかというように私は推定をいたしております。
  297. 阿部知子

    ○阿部委員 推定はいろいろにできるのでございます。ただし、現在厚生省がやらなくてはいけないことは、いろいろな追加実験も含めまして、先ほども金田議員の御質問にもございました、貯蔵タンクの温度による細菌増殖の現状とか、そういうことも行っていく能力と役割を持ったところが厚生省でございます。  何度も申しますが、一つの都道府県、大阪市ないしは府警、何も刑事事件だけではございませんから、警察の関与することでは本来ないわけでございます。そうしたことにおいて、やはり今般の事態にかんがみて、厚生省が主導権のもとに各事故過程検証していくシステムをつくり上げることが、少なくとも同時進行的に行うことが大切ではないかという指摘を私はいたしました。この件に関して、もう一度福島政務次官の御意見を伺います。
  298. 福島豊

    福島政務次官 大阪市また大阪府警におきましても、調査原因究明について十分な能力を有しておられるだろうというふうに私は思います。そしてまた、今回の原因究明ということで、専門家会議を設置してその要因について特定をするというふうに伺っておりまして、その過程の中で厚生省としても適切にアドバイスをさせていただきたい、そういうふうに考えております。
  299. 阿部知子

    ○阿部委員 水かけ論になりますので、私は逆に厚生行政というものにそこまで期待しての意見でございますから、そのように前向きに受けとめていただければと思います。  続いて、先ほど午前中の参考人のいろいろな御教示の中にもございましたが、HACCPと言われます総合衛生管理製造過程に関しまして、今回、厚生省はすぐれた衛生管理方式であるからこれからもこれを進めていくという見解かと思われますが、午前中に示されました資料の中に、HACCPプラス一般的衛生管理プログラムの両方があって初めて総合的な管理が成り立つと。そして、この一般的衛生管理プログラムないし施設基準というところの二つが、いわゆる屋上屋を重ねるごとくに、問題にしておりますHACCP、帽子の部分ではなくて、それを載せている本体の部分が今揺らいでいるのだと思います。  例えば、申請にはないホースがつけられたり、だれが命令したかわからない作業工程、そして必ずしも正規の職員ではない。これは正規の職員であればよしあしではなくて、命令系統が違ってまいりますから申しますけれども、いろいろな方たちがそこに参加している働き方の中で、その上にちょこんとHACCPを載せましてもうまく機能するはずがございません。  そこで、最初の点に戻りますが、厚生省が行うべきこととは、全般の食品衛生安全に責任を持つわけです。このHACCPのところがどう申請された、これも問題ですが、何もこれだけではなくて、物がつくられている全体に責任を持つ厚生省として、下の二つの部分、特に私が問題にしたいのは、一般的衛生管理プログラム、人の管理ということに関しまして、今般の事態にかんがみてどのような見解をお持ちか、これも福島政務次官にお願いいたします。
  300. 福島豊

    福島政務次官 午前中の参考人の御意見にもございましたように、HACCPそのものは、一般的な衛生管理というものがまずありまして、その上でシステムとしての危機管理をするということから、より高度な衛生管理を可能とするものである、そのように理解をいたしております。  そういう意味で、今回のこの雪印大阪工場におきます食中毒事件というのはHACCP以前の問題であるという指摘も私は聞いたことがございますけれども、そういう一般的な衛生管理が極めてずさんに行われていたという事態に関しては、トップ企業であるところの雪印責任というものは極めて重たいと思いますし、そしてまた、実際の食品監視というものにつきましても今後その体制というものを強化していく必要がある、そういうふうに考えております。
  301. 阿部知子

    ○阿部委員 私は、あえて言えば労務管理という問題もございますでしょうし、職員への衛生教育もございましたでしょうが、その点については午前中に多少指摘いたしましたので、次の質問に移らせていただきます。  次に、食品衛生法についてのお伺いですが、今般の事態国民への通知がおくれました大もとには、ここには、二十八日、大阪市が雪印大阪工場立入調査をして、その日のうちにも、やはり問題があるので周知徹底してほしいというふうな要請をした苦悩の跡が見られますが、現実には、国民に知らしめられたのは二十九日ないし三十日以降となっております。  そして、このような事態は、もちろん大阪市と雪印乳業との間のやりとりに問題がある以上に、食品衛生法の中にどのような形で消費者に危険を知らしめていくかという観点が現在から見ればやはり大きく欠落している点にあると思います。  公衆衛生上のいわゆる汚染管理という意味では食品衛生法は一定の機能を持っておりますが、これからはユーザーにどう伝えるか、情報開示の時代でございます、この点にかんがみて、食品衛生法変更改正、並びにそのようなお考えがありや否や、お伺いいたします。福島政務次官にお願いいたします。
  302. 福島豊

    福島政務次官 私どもが把握しております時間経過でございますけれども、先ほど申しましたが、二十七日の段階では、行政が把握しておりましたのが一人、そして二十八日が二人というふうに伺っておりますが、その後、二十九日、二十八日の夜遅くなりましてから、雪印に対しての回収等が連絡されたようでございます。そして二十九日、厚生省に対しまして大阪市からファクスでの連絡がありまして、私どもは、朝の段階で、雪印に対して公表並びに回収ということを指示をいたしております。その後、夕方、そしてまた雪印の新聞発表は夜になったわけでございますが、ここのところは確かにもっと早くできなかったのかという思いは私どもはいたしております。  そして、一般論としましては、食品衛生法の中でこの情報公開というもの、情報の伝達というものをどう考えるかということでございますけれども、今回の事件におきましても、数十万本の製品が出回っている中でどの時点で判断をすべきかということはなかなか難しい判断であったということは、これは間違いがないというふうに思います。  ですから、一律に規定をするということではなくて、私どもは、ケース・バイ・ケースといいますか、その場での最も適切な判断というものを行っていく必要があるんだろうというふうに考えております。
  303. 阿部知子

    ○阿部委員 物事には、疑わしい段階であっても通知しなければ危険が防げないものもあるわけです。毎日のように地震が震度幾つ幾つと報告されておりますのはその一例ですが、食品の安全行政も同じような点を持つと思いますので、その点を考慮の上、今後の食品衛生法改善に努力していただきたいと思います。  引き続いて、西本生活衛生局長にお伺いいたします。  午前中の参考人平澤氏をお願いいたしましたが、現在、我が国における牛乳ないし牛から搾り取られたお乳の滅菌方法は、超高温滅菌と低温滅菌、パスチャライズド滅菌の双方がございます。そして、この双方の滅菌方法を比較いたしました場合に、製品が滅菌されましてから一週間、二週間、三週間後のおのおのの増殖する細菌数についてのデータの提示をお願いいたします。
  304. 西本至

    ○西本政府参考人 牛乳殺菌の問題でございまして、低温殺菌という方法が現在世界の大勢を占めている。我が国におきましては、しかし、高温殺菌における殺菌法というのが主流であるというのは御指摘のとおりでございます。  ただ、今御指摘のような、一定期間置いた後に細菌数がどうなるかという実験につきましては、私ども現在データを持っておりません。したがいまして、率直にそうお答えするしかないわけでございます。  ただ、高温殺菌牛乳に比べて低温殺菌牛乳が例えば腸内フローラによいというような科学的な根拠等も承知をしていないわけでございまして、いずれも、殺菌方法といたしまして、いわゆる病原微生物殺菌にとっては有効な方法であるという認識は持っているわけでございます。
  305. 阿部知子

    ○阿部委員 もし再利用という工程がなければこのようなことはお伺いしないわけですが、現実には再利用がなされているわけです。そうした観点からも、ぜひ、食品衛生管理上、一週間放置し、二週間放置したらどのような細菌の状態になるかについてきちんとしたデータを提出すべく、採取していただきたいと思います。  それからあわせて、日本乳等省令におきましては四百万パー一ccの細菌数も許可されておりますが、これは欧米にはないデータだと思いますので、このような甘い基準についても再度見直しをお願いいたします。  最後に、公正取引委員会関連のことでお伺いいたします。  今般の事態は、いわゆる牛乳として表示されておりますものが、脱脂粉乳と水とバターをぐちゃまぜにして、そこにパックから戻したものを攪拌しても牛乳であるという恐ろしい表示を可としているということを私どもに示しました。そして、このような表示は公正ではなくて、やはり国民牛乳という感触をくすぐるような不当表示ではなかったかと思いますが、実は、この表示の変更がございましてから一年経たことにはまだなっておりません。平成十一年十二月二十日ですか、表示変更がございましたが、今もってこのような加工乳、まがい乳を牛乳として表示することについて公正取引委員会の御見解を伺いたいと思います。
  306. 楢崎憲安

    ○楢崎政府参考人 加工乳を牛乳として表示できる場合は、生乳を五〇%超使用しているということが条件になっておりますし、それがまさに、先生御指摘のあったように、昨年十二月に改正を行ったものでございます。  ただ、それだけでいいかと申しますと、消費者に対する適切な情報提供という観点からはもう少し考えてみた方がいいんじゃないか。あるいは、加工乳に生乳をどれぐらい使用しているのか、生乳の使用割合等も含めましてより一層の表示の明確化というものを求めていく必要があると思っておりますし、また、牛乳に関する公正取引協議会というところでそういった基準設定しているところでございますけれども、協議会に対しまして、より適切な表示のあり方というものを検討するように申し入れ、促しているところでございます。
  307. 阿部知子

    ○阿部委員 時間が参りましたので、やはり国民を惑わすことのない、そして不安におとしめることのないきちんとした厚生行政を重ねてお願い申し上げまして、私の発言を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  308. 遠藤武彦

    遠藤委員長 次回は、明九日水曜日午後零時十五分理事会、午後零時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時六分散会