○長谷川清君 今は大きな意味で、今もお答えの中にありましたように、確かに今グローバル化して、それでリストラが起こっていますが、具体的な市場で見れば、これは
労働市場、それから金融の市場もあるでしょうね。それからサービス分野の市場もあるでしょう。
いずれにしても、この市場という中では、
労働は、ほかのお金とは違って人がかかわっていますから、これは並べて見るべきものではない、比較するべきではないと私は思いますが、今逆にEUの方では、ちょうど一九六〇年から七〇年ころのあの第一次オイルショックや構造不況が起こったとき、あのころの日本を参考にして今はこの雇用に対する法律をきちっと持っていますね。事前協議も確立しています。
あの当時我が国は、例えば鉄に不況が起これば八幡製鉄や神戸製鋼はどうしたか。まず人を減らすんじゃなくて、その人材に先ほど言ったようにいろいろ教育をし、みんなで集まって、一番難しい鉄橋から始まりましたね、それまで存在しなかった鉄橋をつくる。人は、今までの社員はみんなそっちへ向かっている。厚い鉄板を薄くする。韓国が追いついてくるから、すぐにそれに模様を入れる
技術を開発する。あるいは、水上の石油基地を。今までやっていなかったような事業へと、新たな
技術を身につけながら、
従業員と一緒になってやっている。
これは単に鉄ばかりではないと思います。例えば第二精工の時計、我々が子供のころはもう何十万の宝物でしたよ。それが今や何千円の時計になりますから、第二精工は。これもまた、一人も首を切ることなく、みんなで創意工夫して、何をつくって生き延びるかということで、今やもう時計は二〇%しかつくっていませんね。コンピューターがついている大きなおもちゃや何か、赤子から大人までが楽しめるそういったようなものへと、八〇%はほかのものへ転身しているわけですね。西川布団店もそうですね。布団だけつくっているわけじゃなくて、今や寝具産業として、みんなこれは。
当時のリストラというのは、言うならば企業の体質を
自分たちで自力でどう変えていくかという、それをEUはちゃんと見ていて、一回向こうは失敗したんですよ、それでブレアになってから、法律を変えていこうと。日本の今の国としてのとらえ方は、どんどんとアメリカナイズされていくこのグローバルな、余りにもアメリカ的になり過ぎてもいけないし、さりとて今までのような我が国の年功序列的なそういうものに甘んじ過ぎてもいけない。というところから、いろいろの知恵を働かせて、今や逆転していますね。
そういう意味において、我が国におけるここ数年を翻って見ますると、独禁法が二回
改正されました。そのことによって、子会社の団体交渉、これは親会社が子会社をどんどんつくれることになりましたから、すると親会社は子会社の労使
関係で何も口が出せない、応諾の義務をなくしていますから。今までは、親会社が十の力を持っているとすれば、そこで交渉してやっていたことが、子会社になると半分以下ですから、あらゆる意味においてそれだけ条件が下がってしまいます。そういうケースがずっと一九九七年、九八年と続きました。それから一九九九年の七月になって商法の
改正が行われて、株式交換制度の法制化がされて、持ち株会社がさらにこれの移行を促進していったわけですから、そういうところがどんどん逆にふえていったわけです。一九九九年の八月には、これは産業活力再生法というのが新法でできましたね。これもリストラ促進策です。
こういうことの結果、そして今回、本年度の商
法改正で企業分割が出てこようとしておりますね。それでこれは、今回のはこれから法審議するんですけれども、
労働者の保護という点についてはほとんどない。ましてや、従来の営業譲渡については従来の判例どおりの範囲内でやるんだと、こういうふうになっているわけです。ここら辺のところについて、ずっと
流れはどんどん首を切る、また切りやすくしている。
これは、ついこの間やめられた
大臣が講演会の中で言っていることです。これは金融企業を全部集めたところでの講演会ですよ。
営業譲渡をとるか、合併をとるかといいますと、最近はもう
皆さん、生き残りが苦しいものですから、里親になる方も営業譲渡しか受けないんですよ。営業譲渡と合併はどこが違うかというと、合併は支店まで受け取るんです。人まで受け取るんです。営業譲渡というのは預金と債権しか受け取らないから、あとは残った行員をどうするんだと、こういう話になりまして、そこだけは僕のところへ持ち込まれても、人のあっせんまでは、やりようがないものですよ。そこで、そこの二百名をどこかへ入れろと言われても、やりようがなくて、そのことは
労働省の話だよということになるんです。
ついこの間まで
大臣をされていた方の生の、私は、これは越智さんがだめだと言っているわけじゃないんです。越智さん個人がおかしいと言っているんではなくて、営業譲渡という法律は、だれが
考えてもこうなんです。お金の譲渡はするけれども、人の譲渡はしないよということです。ですから、どういうことが法律上できるのか。あの人は首を切りたいと思う人は全部そこに集め込んで、これは譲渡しない、それで終わりにしちゃう。つまり、最後にまとめて首を切ってしまう。これは経営者の
皆さんを集めて
大臣がこう言っているんです。恐らく
皆さんもそう言って、いわゆる一番いい方法は何なんだろうと、企業組織を改編する場合、いろいろ相談、知恵を働かせて
皆さんにあっせんしている。
でございますから、そういう視点について、同じ営業譲渡でもヨーロッパはどういうふうになっているか。第四条の第一項で、企業譲渡はそれ自体では譲渡人または譲受人による解雇の根拠にはならないと規定している。つまり、企業譲渡を理由とする解雇は禁止されているわけです。
加えまして、第四条の第二項では、企業譲渡に伴う
労働条件の不利益変更のために雇用
関係が終了する場合には、実質的に解雇とみなすとしている。これは、企業譲渡に伴う
労働条件の不利益変更までが実質的には禁止をされている、第四条第二項で。
第五条では、被用者代表、これはつまり組合代表です、の地位と機能がそのまま移転される、それが保障されているわけです。
委員長であれば
委員長で行く、名前も機能もそのまま。
第六条、これは二つあります。企業譲渡について、譲渡が実施される前の適当な時期に被用者代表、いわゆる組合の代表に情報提供をしなければならない。これは事前協議のことを言っています。また、被用者との
関係の
措置については被用者代表と合意に達する目的を持って協議しなければならない。つまり、合意することを目的で協議の義務を負わせているわけです。つまり、抜き打ちの発表なんということはもう当然、それどころか事前協議をしなさいということをここで規定づけています。
しかも、今回第六条に四項が追加をされまして、第六条四項では、その企業譲渡が親会社の決定で行われた場合でも適用され、その場合、親会社が子会社に情報を提供してくれなかったからその子会社の被用者代表に情報提供や協議ができなかったという言いわけは認められない。つまりこれは、事前協議について会社は親と子を使い分けてはいけません、親と子の間にいろいろと連絡の不備があったからといったことは理由になりませんよと。そういう言いわけは認められない、そこまで追加されております。
これほど明確に、つまり国という単位によって、今ヨーロッパ全体でこれが普及している。
我が国は一体どうなのか。これでいわゆる十カ年計画を私も読みましたが、一番大事なところが抜けてしまっている。国が今やらなきゃいけないことは、国は法律の分野できちっと、このとおりじゃなくてもいいから雇用というものがいかに大事であるかという前提に立った法律をまず国がやる。その上に立って四の五のあらゆるものは全部労使に任せていく。そうすれば、先ほど例に挙げたように、我が国の労使、それぞれの知恵を持っているし、実績もあります。EUが見習ったぐらいですから。今はそれがまるで逆転をしちゃっている。
こういう点について、いろいろ言いましたけれども、ひとつ意のあるところを
大臣の口から簡単に
お願いしたいと思います。