○岡崎トミ子君 私は、
民主党・新緑風会を代表して、ただいま
議題となりました
児童手当法の一部を改正する
法律案について、反対の
立場から討論を行います。
まず、
政府提出の
児童手当法改正案には、
基本的な欠陥があることを指摘いたします。
児童手当
制度の目的は、法の第一条の目的によれば、児童を養育する家庭における
生活の安定に寄与するということであります。ところが、今回の
政府案では、新たに三百万人に児童手当を支給する一方で、そのために、
教育費などの負担の重い千六百万人の義務
教育就学児童を抱える家庭にとっては増税を強いるものです。大多数の家庭にとっては負担がかえって大きくなり、子育て支援に逆行する
内容となっています。
なぜ、このような信じがたい改正案が提出されたのでしょうか。
理由は二つあると思います。
まず第一に、
政府・自民党には、児童手当
制度をどうしていくのかについて全く見識がなく、その
政策にも一貫性が見られません。そもそも、この児童手当
制度については、
制度が発足した一九七一年以来、どうやって
制度を発展させていくかという
方向性が示されず、支離滅裂の
制度改正が繰り返されてきました。今回の改正に当たっても、何のために改正するのだという納得のいく改正
理由が全く示されておりません。
日本の児童手当
制度が発足してから三十年が経過しましたが、このような
政府の無
責任な
取り組みの結果、諸外国の
制度と比べても全く貧弱なものとなっています。
反対
理由の第二として、支給額についてであります。
今回の改正案では、支給額は現行
制度のまま、第一子及び第二子五千円、第三子以降一万円ということになっています。こういう額では、三歳未満の保険料の平均徴収額、例えば一九九六年度で三万五千円程度といった数字と比較しても、子育て家庭に対する
経済的支援として不十分だということが明らかです。
貴重な財源を使ってこの児童手当
制度を運営するのに、支給額の額をどう決めたのかの根拠についてさえまともな
説明が一切できないのです。児童の置かれている
経済状況についての
基本的な
調査も行わずに、その場しのぎのための策としてこの改正案を
策定したことが明らかです。
反対
理由の第三は、サラリーマン世帯と自営業者世帯との間に設けられている所得
制限額の格差が公平を欠くものとなっていることです。
なぜ、他の
社会保障、
社会福祉
制度ではサラリーマン世帯でも自営業者世帯でも同一の所得
制限であるのに、児童手当にだけ、サラリーマン世帯に対しては年収六百七十万円、自営業者世帯に対しては年収四百三十二万五千円と所得
制限に二百三十七万五千円もの格差をつけるのか、この点についても全く
説明がありません。
また、三歳児未満児に対する給付は公費と事業主拠出金で賄われるのに対して三歳児以上で就学前の児童については全額公費で賄われることになっており、ここにも国の行う子育て支援としての一貫した哲学のない
制度となっていることがあらわれていることを指摘しておきます。
さらに、冒頭指摘したとおり、今回の改正は支給対象年齢を拡大することに固執する余り、扶養控除と児童手当の
関係を明確にしないまま、昨年鳴り物入りで創設したばかりの年少扶養控除の特例
措置を廃止するなど、朝令暮改の
対応です。子育て支援のために
経済的負担を軽減するどころか、小中学校に通う児童のいる家庭では増税になるという、
国民に混乱を与える拙速で理念なき改正案となっています。
児童手当の拡充は子育てを支援する
施策の、当然重要ではあるけれども、その一つにすぎないということを忘れてはなりません。労働時間の短縮、育児休業
制度の拡充、育児サービスの充実などを通して、女性も男性も仕事の上で存分に能力を発揮しながら家族の一員としての役割を果たすことができる、そういった労働
環境の整備、子育てを安心してすることができる住
環境の創出など、もっと広い豊かな視点で子育て支援を考えなくてはなりませんが、今回の
政府案からはそうした
認識をうかがうことはできません。
以下、個別項目について反対の
理由を述べます。
第一に、支給対象年齢についてであります。
今回の改正案では、支給年齢を小学校の入学前の児童に範囲を拡大しております。しかし、児童手当が子育てに伴う
経済的負担を軽減するものであるならば、
教育費などの負担のある学校に通っている子供を持つ家庭に子育て支援のための支給をする必要があるのではないかと考えます。
ヨーロッパの各国でも十六歳未満、十八歳未満が多くなっています。仮に、財源の制約から対象を絞らざるを得ないのだとすれば、学校に通っている
教育費などの負担の重い六歳以上の児童を養育している家庭にこそ優先的に児童手当を支給するべきであります。
政府案は改正の重点、
方向が間違っています。
第二に、連立与党を構成している各党の間で、児童手当、ひいては
社会保障についての
基本的な
考え方が共有されておりません。児童手当や
社会保障に関する理念、
方向性、
費用負担の方式、何を重視するかという重点の置き方と、どれをとっても各党の間に共通点がありません。
今回の改正案は、単に児童手当を支給するための財源が不十分になってきたことに対して、わずか一年前に子育て減税と銘打って華々しく行ったばかりの年少扶養控除の特例
措置をやめてしまって財源を捻出し、捻出された規模に児童手当
制度を合わせてしまったという安易な改革であります。
児童手当
制度のあるべき姿という根本、
制度の骨格をきちんと議論することなく行おうとしている今回の改革は、すべての重要
課題に対して抜本改革先送り、小手先の
見直しを繰り返す自公連立与党の無
責任さを改めて浮き彫りにしたものです。
その実態は委員会での
法案審議を通しても明らかになりました。改正案の
基本的な
考え方をただす委員の
質問に対して厚生大臣は、今回の改正案は経過
措置である、あるいは与党協議の結果と繰り返すのみであり、何ら
責任ある
答弁を示すことができませんでした。何のために、だれのために児童手当を支給するのかという児童手当の
社会保障
制度としての位置づけを明確にすることなく、小手先の拙速な改正を行うべきではありません。ましてや選挙目当てのばらまきということであるならば、これは
国民を愚弄するものであります。
本来は、まず児童養育費の実態を初めとする子供
たちを取り巻く
経済環境、
生活環境等の総合的な
調査を早急に行い、児童手当の具体的な
あり方について、雇用、賃金、税制等との関連に留意しながら児童手当
制度、子育て支援策として
社会保障
政策全体の中に明確に位置づけるとともに、広く
国民の合意を得るべきであります。
なお、委員長の報告にもありましたが、
国民福祉委員会においての賛否は同数で、委員長の裁定によってこの
法案が賛成となった経緯があります。こうしたあるべき姿から全くかけ離れたプロセスから生まれたまやかしの児童手当
制度改正案には到底賛成することはできません。
以上、
政府案の
問題点を指摘して、私の反対討論を終わります。(
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