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国務大臣(二階俊博君) 清水
議員にお答え申し上げます。
視覚・聴覚障害者や知的・精神障害者も含め、あらゆる
人々を
対象とすべきではないかとの
お尋ねでございました。
本
法案の直接の
対象は、「日常
生活又は
社会生活に身体の機能上の制限を受ける者」としており、具体的には、
高齢者や車いす使用者、視覚障害者、聴覚障害者等の身体障害者のほか、妊産婦やけが人などを想定しているものであります。知的障害者や精神障害者の方々につきましては、本
法案により推進しようとしている施設
整備について、これらの皆さんが円滑に移動するためには何が効果的か現時点では必ずしも明らかになっておりません。したがって、本
法案の
対象とはなっていないものであります。
新しい人権としての交通権を直接保障すべきだとの
お尋ねでございますが、交通権といった
権利については、憲法上明示されているものではなく、学説、判例におきましても確定されたものではないと承知をいたしております。仮に交通権に関する新たな
立法措置を講ずるとしましても、その
内容を明確化する必要があると
考えます。
しかしながら、いかなる交通
サービス水準の提供を受けることが交通権であるかについて
社会的合意は形成されておらず、その
内容について明確になっていないことから、交通権を本
法案に
規定することは適当ではないと
考えております。
既存の施設の
整備について積極的な
努力が必要ではないかとの御意見でございました。
すべての既存施設について
整備を行うことが望ましいのは当然のことであります。しかし、国及び地方公共団体の予算、交通
事業者の投資余力にはおのずから限りがあることでありますから、すべての既存施設についてその
整備を義務化することは困難であると
考えております。
したがいまして、既存の旅客施設のバリアフリー化について
努力義務としております。しかしながら、既存の旅客施設であっても、地域のバリアフリー化に関する基本構想を
関係者が合意した場合は、それに即して交通
事業者はバリアフリー化事業を実施しなければならないことといたしております。
次に、自宅と駅や施設を結ぶための交通手段の
整備についての
お尋ねでありますが、本
法案に基づき市町村が策定する基本構想等により、低床バスの導入やパーク・アンド・ライドに必要な施設の
整備を進めるとともに、福祉タクシー等の活用についても今後積極的に推進していく所存であります。
市町村の基本構想作成に当たっては、当事者参画についてでありますが、基本構想については、作成主体である市町村が、住民の福祉を実現する主体として、当然、
高齢者、
身体障害者等の意見を十分聴取するものと
考えております。したがいまして、
法律上にはあえて
規定していないところであります。必要があれば、
高齢者、
身体障害者等の意見を把握する
仕組みを設けるように、国が定める基本方針の中で基本構想の指針として記載することを
考えております。
バリアフリー化は経済活性化の起爆剤ではないかとの御意見でありますが、従来、バリアフリー化施設
整備に関する投資に関して、それに見合う需要増をもたらすものではないと
考えるのが主流であったと
考えております。しかしながら、
経済企画庁とバリアフリー化の効果について研究したところ、次のような経済的な効果が
考えられます。
一つ、
高齢者、
身体障害者等による移動の活発化に伴う消費支出の増加であります。また、
高齢者、
身体障害者等による旅行等の観光活動の増加であります。さらに、
高齢者、
身体障害者等の就業機会の拡大であります。
このように、バリアフリー化は、経済活性化の起爆剤か否かは別といたしまして、かなりの経済効果があるものと
考えております。
また、
高齢者、
身体障害者等の方々の
行動範囲の拡大は、その他の需要を喚起することにもつながることが
考えられます。御
指摘のとおり、バリアフリー化の推進がローカル線の活性化につながる可能性はあるものと
考えております。
次に、公共交通予算、バリアフリー予算の抜本的
拡充に取り組むべきだという御意見でございます。
公共交通機関のバリアフリー化の効果は、間接的な効果も含めれば広範囲に及ぶものであり、その
社会的便益は極めて大きいものと
考えております。このため、十二年度当初予算においては、十一年度当初予算の約二十億円に比べ大幅な増額となる約百億円の補助金を計上し、補助制度の
内容も手厚いものとしております。引き続き、交通のバリアフリー化の推進や公共交通予算の確保に積極的に努めてまいる決意であります。
次に、公費負担制度の創設など運賃等の
施策についてでありますが、現在の
高齢者、
身体障害者等に対する運賃割引は、交通
事業者の自主的な判断に基づき、基本的には
一般的な割引による減収を他の利用者の負担によって賄うことにより実施されているものであります。
御
指摘の英国のように、
我が国においても地方公共団体によっては運賃割引に対し公費負担している
ケースがあることは承知をいたしておりますが、現在の厳しい財政
状況のもとではこのような公費負担の制度を新たに設けることは極めて困難なものと
考えております。
次に、英語表記や絵文字による表記についてでありますが、絵文字は、外国人を初め、
高齢者、身体障害者、障害を持たない方々にとっても、その表現
内容を一見して理解できる
意味で英語表記よりもすぐれた
情報伝達手段であります。さらに、知的障害者にとっても有効な場合があるとの意見もあります。
この絵文字は、各交通
事業者がばらばらに
整備を進めており、利用者にとってややわかりづらいという問題があります。このため、運輸省では、その標準化を図るべく、昨年四月、
検討委員会を設置し勉強を進めておるところでありますが、今後、絵文字の
整備を推進してまいる
考えであります。
次に、駅職員の配置を充実すべきだとの
お尋ねであります。
駅員等の職員が
高齢者等のニーズを理解し、的確な援助をするといったソフト面の対応は極めて重要であります。本
法案におきましても、鉄道
事業者に対し職員の教育訓練を実施するようにと定めているところであります。また、去る三月三十日、運輸省におきまして、緊急鉄道・軌道主任技術者
会議におきましても、鉄道
事業者に対しその旨指導をしたところであります。
駅職員の配置の充実につきましては、基本的には鉄道
事業者が適切な対応をすべきものとは思いますが、運輸省としても、鉄道
事業者による個々の対応を補完する
意味で、広報等を通じ、広く
国民の皆さんの理解を深め、利用者全体の協力を呼びかけることにより、駅構内における人的なサポートの強化等に努めてまいる所存であります。
次に、転落防
止対策としてのホームドア、ホームさくの設置についての御意見であります。
いわゆる固定式ホームさくにつきましては、
一定の転落防止効果は期待できるものでありますが、列車発車時の車掌による安全確認への影響などの課題が
指摘されております。可動式ホームさくやホームドアは、新交通
システムや地下鉄の一部で採用された例がありますが、扉の開閉に
一定の時間を要するため、通勤客の多い混雑した路線には不適切であるとの課題があります。
いずれにしましても、今後、これらの転落防止策につきましては、駅の構造、路線の利用
状況等を個別に勘案して
検討していくべき課題だと
認識をいたしております。
次に、鉄道における車両とホームの段差の
解消についてでありますが、現在、鉄道
事業者においては、たわみ量の少ない空気ばねを使用して、床面をホームの高さに近づけた車両の導入に努めているところでありますが、駅ホームにおける車両との段差
解消のためのスロープの設置等の試みも始められております。
運輸省としましては、こうした動向を踏まえ、少しでも段差を小さくできるように適切に対応してまいりたいと
考えております。
次に、鉄道とバスの異なる
事業者間の乗りかえの
円滑化について
お尋ねがありました。
鉄道とバスの乗りかえについても、移動の
円滑化を図ることが重要であると
考えております。
本
法案におきましては、地域の
実情に最も詳しい市町村が、鉄道とバスとの乗りかえ部分も含め、鉄道駅、その周辺道路等の一体的施設
整備を推進するための基本構想を作成することができることとしております。基本構想が
関係者の合意を得て作成された場合には、当然、交通
事業者、道路管理者及び都道府県公安委員会は、この構想に即してバリアフリー事業を実施しなければならないことになっております。
最後に、バリアフリー化の
目標についてでありますが、現時点で確定したことは申し上げる
段階ではありませんが、旅客施設については、例えば二〇一〇年までに、一日当たりの乗降客数が五千人以上である旅客施設や、周辺に病院や福祉施設などの
高齢者、
身体障害者等の利用が多い施設がある旅客施設についてはバリアフリー化を実現することを
目標と
考えております。また、バス車両につきましてはおおむね十年から十五年で低床化されたバスに代替できると
考えております。
これらにより、二十一世紀初頭までに陸上交通の重要な部分のバリアフリー化が実現できるものと
考えております。(
拍手)
〔
国務大臣中山正暉君
登壇、
拍手〕