○山下芳生君 私は、
日本共産党を代表して、二〇〇〇年度
政府予算案に
反対の
討論を行います。
討論に先立ち、私は、小渕首相がわずか三日間、従来の三分の一にも満たない日数しか
予算委員会に出席しなかったことに強く抗議するものであります。
言うまでもなく、
予算編成の最高
責任者は首相です。加えて、首相自身にかかわるNTTドコモ株
疑惑が
政治問題となっているのであります。首相出席は
国会が決めることなどと逃げるのではなく、みずから進んで
国民に対する説明
責任を果たすことこそ最高
責任者のとるべき態度であります。
こうした首相の
責任回避とも言える姿勢が今や
内閣全体に蔓延していることを端的に示したのが、
新潟県警の腐敗事件に関する
保利国家公安委員長の
一連の
対応であります。
そもそも
国家公安委員会は、戦前の
政治権力と結びつき
国民を弾圧する側に立ってきた
警察体制を厳しく反省し、
国民の良識を代表し
警察を民主的に管理するために設けられた組織であります。それが、雪見酒にマージャンの空監察をやった
警察幹部に対し
会議も開かず
持ち回りの空論議で
処分を決めるなど、本来の
役割と
責任を放棄してきました。
保利国家公安委員長の
責任は、
警察庁の言うままに
持ち回り決裁を指示し違法な運営を行ったことにとどまりません。世論の
批判が高まる中改めて開いた
会議で何も
発言しなかった
責任、実際は
持ち回りだったのに論議したなどと
国会で虚偽の
答弁をした
責任など、挙げれば切りがありません。
国家公安委員会を
総理するという重大な職責があるにもかかわらず、何の問題
意識も見識もなく、ただ
警察庁の言いなり、
警察庁にお任せ、このような人に引き続き
国家公安委員会を任せるわけにいかないのは当然ではありませんか。
警察刷新というのなら、首相はまず
国家公安委員長の罷免から事を始めるべきであります。それを拒否するというのであれば、
警察刷新よりも
政権延命を優先させているとの
批判は免れないと言わざるを得ません。
さらに、
警察問題に続き、
幹部自衛官らの
違法射撃を組織ぐるみで隠ぺいした疑い、
農水省構造改善局汚職など、
政治の全般にわたって不正、腐敗が相次いで吹き出してきています。首相は、これら問題の真相を解明し、
責任の所在を徹底して糾明すべきであります。
今、
日本の
財政と
経済は重大な事態に陥っており、
国民の将来に対する不安はかつてなく高まっています。このようなときに求められるのは、むだと浪費に思い切ってメスを入れ、
国民の暮らしや福祉を守ることですが、
政府予算案はそれに逆行しております。
第一は、
財政再建の展望を一切示さず、借金を急増させて
財政危機を一層深刻にする
予算となっていることであります。
二〇〇〇年度
政府予算案は、史上最高の三十二・六兆円の
国債を
発行、歳入の四割近くを借金に頼るという異常なものとなりました。その結果、二〇〇〇年度末の国と
地方の長期債務残高は六百四十五兆円、
国民一人当たり五百十万円にもなります。債務残高がGDPの一・三倍にも上る国は
世界の主要国の中ではほかに例がなく、
日本の
歴史の上でも戦費調達のために大量の
国債を
発行した一九四三年の
財政状況に匹敵します。このままでは、近い将来深刻な
財政破綻を来し、大増税か悪性インフレという
国民にとって重大な事態となることは必至であります。
小渕首相は、
二兎を追う者は一兎をも得ずと言って
二兎とも取り逃がし、
景気回復が優先と言って
財政再建を後回しにしていますが、
審議の中で、たとえ
経済成長が達成されたとしても、税収の伸びが
国債費の伸びに追いつかず、債務残高は今後ともふえ続け、七、八年後には国、
地方合わせて一千兆円を超える大変な規模になることも明らかになりました。こうした
財政状況を前に、
危機感を全く持たず、
財政再建の見通しさえ示せない
内閣に今
政権を担う資格はありません。
第二は、
財政危機の最大の原因である
公共事業の浪費をそのまま継続するなど、相変わらずの
ばらまき放漫
予算となっていることであります。
総額六百三十兆円もの公共投資基本
計画と、繰り返されたゼネコン救済の
景気対策によって、八〇年代前半に国、
地方合わせて年間二十数兆円だった
公共事業は、九〇年代には約五十兆円へと急速に
拡大しました。
政府は、
公共事業への
批判をそらすため、
効率化、重点化を図るなどと弁解していますが、その
実態はむだと浪費の重点化にほかなりません。例えば、離発着に十分な余裕があり、採算もとれていない関西国際空港に新たな滑走路をふやす二期工事などは、どこから見ても緊急性も必要性もないことは明白であります。
しかも、
公共事業の大型化によって、幾ら
予算をふやしても雇用はふえず、中小企業への発注率も減っており、
景気回復に全く役に立っていないということも明らかになりました。
さらに、愛知万博や吉野川可動堰、川辺川ダム
計画など、
環境破壊と開発至上主義の
公共事業に、
世界からも住民からも厳しい
批判が突きつけられております。
今こそ、
景気対策にも逆行し、
財政危機と
環境破壊をもたらすむだと浪費のゼネコン型
公共事業にメスを入れるべきであります。
公共事業の
総額を減らしても、中身を巨大開発型から
生活、福祉中心の
事業に切りかえれば、
国民の暮らしに役に立ち、同時に雇用と中小企業の受注を
拡大することができるのであります。
もう一つの浪費である銀行への公的資金投入も重大であります。二年前大蔵省は、銀行の債務超過の穴埋めのため七兆円で十分としながら、来年度
予算案では、さらに六兆円を上乗せし、銀行支援枠を
総額七十兆円としました。日債銀など銀行の乱脈経営のツケを
国民に押しつけるためであります。しかも、銀行の支援策が政官財の癒着の温床であったことが、
辞任した越智前金融再生
委員長の利益誘導まがいの露骨な集票活動で明らかになりました。銀行の破綻処理は銀行業界の自己負担で行うべきであり、公的資金の投入は直ちに中止すべきであります。
第三は、
年金制度の改悪、
医療費自己負担の増額、
介護保険の
実施などによって二兆円もの負担増、給付減を
国民に押しつけようとしていることであります。
年金改悪は、今二十歳の夫婦で一千二百万円、七十歳の夫婦でも三百万円、生涯給付を
削減するものであります。
医療費については、七十歳以上の患者に三割から五割の負担増を押しつけ、高額
医療の負担の上限を引き上げるものです。四月から
実施される
介護保険制度は、国の負担割合を現行よりも減らし、基盤整備も低
所得者
対策も不十分なままであります。
このような
社会保障制度の改悪は、将来不安を増大させ、
消費をますます落ち込ませ、
景気悪化に拍車をかけることになるのは明白であります。
また、児童手当拡充は当然のことですが、その
財源を十六歳未満の子供を持つ家庭への増税で捻出することは重大であります。増税になる子供千九百万人、新たに児童手当が支給される子供三百九万人、差し引き一千六百万人が増税となります。年少扶養控除の廃止が、子供の数が多ければ多いほど増税になる子育て増税であり、
少子化対策に逆行するものであることは大蔵、厚生両
大臣も認めざるを得ませんでした。まさに自自公
政権の無
責任ぶりを示す典型と言わなければなりません。
第四は、
憲法違反の戦争法に
対応した装備や、本来、安保条約上、義務のない在日米軍への思いやり
予算など、巨額の軍事費が含まれていることであります。
とりわけ、思いやり
予算は、米国の
財政事情が好転し、
日本が深刻な
財政危機に陥るなど、日米の
財政事情が激変している現在、これをこのまま続ける根拠は、従来の
政府の
立場からしても失われたはずであります。このような屈辱的で負担義務もない思いやり
予算はきっぱり廃止すべきであります。
今こそ、以上のような歳出面での浪費の
削減と歳入における不公平税制の是正によって、
財政再建の
計画と展望を
国民の前に示すのが
政府の
責任であります。その意思も能力もない
小渕内閣に二十一
世紀の
政治のかじ取りを任せるわけにはいきません。速やかに解散し、
国民に信を問うことこそ
憲政の常道であることを
指摘し、
反対討論を終わります。(
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