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参考人(
山本忠国君) 自分は今静岡に住んでいます。それで、今回この席に
出席させていただきましてありがとうございます。
自分の息子は今から三年半ほど前、平成八年九月十五日、九人のグループに
関係のないことで殴るけるの暴行を受けて、当時、意識不明、そのまま病院に運ばれて、それで今三年半になってやっと辛うじて右手が少し動き出しました。それまでのいろんな体験というか思ったことをこの場で述べさせていただきたいと思います。
まず、今この場でお話しする息子の経過なんですけれ
ども、当時、静岡の日赤病院に急性硬膜下血腫ということで、すぐに手術をしないと命の危険があるということでその場ですぐに手術に入りました。それで、当初、容体も悪化したりして集中治療室に一カ月ほど入ったきりで、それからやっと一カ月を超えるころに個室に移されたときも、こちらからの呼びかけにも何も応答ができず、ただ人工呼吸器をつけたままで個室に移されました。
それで、日赤病院で三カ月ほどしてから外科的治療法はもうないからということで、あとは家に連れて帰るか、またはリハビリ的な病院を探すようにというふうに担当の医師から言われました。自分
たちはそういったことは一切今まで
考えてもいなかったものですから、どうやっていいのかわからないし、そういった寝たきりの息子を、意識もこちらからの呼びかけにも応答がない
状態で家に連れて帰ってもどうやっていいのかわからずに、当初、日赤病院の紹介で伊豆の病院を紹介されて、そちらの方をお願いに行ったんですけれ
ども、そちらの方では、息子の
状態から、そちらのリハビリ的な治療はできないとのことで断られて、さんざん困り果てたあげく、会社の方の病院が同じ伊豆にあるものですから、そちらの方に何とか条件つきでということで入れてもらうことができました。
その条件というのが、どうしても息子の
状態、寝たきりでつききりの介添えが必要ということで、妻が日赤の個室に移るころから休職、当然無給で一年半までは休職ができるということで、会社の
配慮から一応何とかその一年半の間にということで休職をとるような形でいたんですけれ
ども、伊豆の病院でもそのまま付き添い、二十四時間の付き添いを条件に何とか入れてもらうことができました。
それから、伊豆の病院に半年ですか、
事件当初から一年ぐらい、やっとそのぐらいのころに、息子の、こちらの呼びかけに対して反応が出るようになりました。それで今は、静岡のリハビリ病院を一年少し、今の病院に一年、もうすぐ一年半になります。そこでやっと何とかパソコンを使ってキーボードをたたけるような形にまでなってきました。
これが今までの息子の経過なんですけれ
ども、その中で、まず第一に自分が感じたこと。
事件当初、警察、検察の方の連絡より先に、
犯人が捕まったというのを自分の息子の友達だとか新聞の記事の方から先に知りました。今は
制度も変わったようでそういったものはなくなっているようですけれ
ども、当時は、最初の裁判が行われる日、その日を知ったのも息子の友達からでした。自分
たちはそういったことを知りたいというのにもかかわらず、自分
たちから言っていかなければだめだという、教えてもらえない、そんな形のものであってはならないと思います。
あと、受け入れる施設についてなんですけれ
ども、息子は寝たきり
状態で、何とか今三年半かかってやっと右手だけが辛うじて動くような
状態にまで持ってきています。息子はやっとことしで二十になりました。それをもう少し延ばしてやりたいものですから、何とかリハビリを続けていけるような病院を探すんですけれ
ども、今の病院も当初半年または一年半ぐらいまではということで受け入れてもらえたんですけれ
ども、その期限もそろそろ、また別の病院をという問題も抱えているものですから、そういった問題。
いつも次の病院、次の受け入れ先、市の方にも施設として養護施設があるものですからそういったものもお願いしてあるんですけれ
ども、当初お願いしたときに、県内で百二十五人中百二十五番目に当たると。それでその後、再度、今どのぐらいですかとお
伺いしたところ、百四十何名中百三十五。その順番というのが、自分
たち二人は共稼ぎで収入的にはありますし、そういったものもあわせると順位がどんどん下がっていく。長期にわたるそういった施設についてはほとんど受け入れられない
状態であるというのが現状なものですから、そういったことも、もっと簡単に受け入れられるところができるのであれば、そういったものが自分
たちには今欲しいと思っています。施設的にはそういう形になります。
あと、今回、
犯罪被害者給付金ということで支給の
対象になりました。その支給
対象額が三百三十五万円。裁判の途中で、相手三人が裁判の
対象になったんですけれ
ども、その三人の
家族から二百万円ずつ、合計六百万。確かに二百万というのは自分
たちにとっても大きな額で、合計すると一千万円近くになります。ただ、それもこの三年半で医療費としてかかっているのが一千万円を超えています。
そういった
状況の中で、今もずっと続いているんですけれ
ども、日々大体一万円、月に三十万円前後医療費としてかかっています。二人とも今共稼ぎで働いていますので、それで妻の働き分を医療に、そちらの方に向けるということで生活は自分一人でやるような形。当然、自分
たちは家のローンも払っていかなきゃならないし、次男が今高二です、これからの次男のことも
考えなきゃならないものですから、そういったことを
考えると正直言ってとても不安で、経済的にも不安ですし、先のことを
考えるととてもやりきれない気持ちでいっぱいです。そういった中で、何とか今息子はここまで
回復してきているものですから、できればこの
状態を続けていけるような
状況、そんな
状況をずっとつくっていっていただければありがたいと思います。
あと、自分
たちが本当に今
考えていることなんですけれ
ども、
加害者に対しての気持ち、これは自分だけかもしれません。
正直なところ、
加害者二人は三年半、一人が二年半、もう刑期も済んで出てきていると思います。うわさでは、出所祝いをしているといううわさも聞いたことがあります。そういった中で、刑期を終えればそれで終わり、その間に息子に何のあいさつもなし、謝りもなし、電話の一本もなし。当然二十を過ぎていますので、相手の親はもう親としての義務はないと、そんなことまで言われているんですけれ
ども、
加害者にも
人権があるのであれば、人としての権利があるのであれば義務も、それなりの義務を果たしてこその
人権だと思うんですよ。そういったものがない人間に対して、自分はとても
人権をというような言葉は正直なところ今の気持ちでは出せません。
加害者にも
人権をという言葉をよく聞くんですけれ
ども、確かに
人権を認めるべき人間と、認められないそういった人間が実際にいるということを知っていただきたい。通常であれば、せめて電話の一本、手紙の一通、それをくれてもいいと思うのに、いまだかつて何の音さたもない。自分
たちの
状況が伝えられない。せめて自分
たちがこうなっていることを知らせたいというのが今の気持ちです。
それで、最後になんですけれ
ども、今こうやってこの場に来させていただいているのは、当初自分
たちは刑事、
民事、一切わかりませんでした。
刑事裁判、
民事裁判が何なのかもわかりませんでした。それで、警察が入ってくれればすべて解決するだろうと思っていました。それが実際、
刑事裁判は警察が調べて検事さんがそれを下す、そんな形のもので、
民事とは別だということを初めて知って、その時点で自分
たちはどうしていいのかわからなくて、息子の
状況もそういった
状況下で、時間もない中で、どうにか会社の方の
法律相談というのがあるということで
弁護士さんに相談したところ、その
弁護士さんは、当然裁判を起こして勝てるだろうけれ
ども、勝てたとしても一銭も戻ってこないだろう、恐らく一銭も取れないだろう、ただの白紙の紙をもらうよりは二百万それぞれ合わせて六百万、それだけもらえただけいいんじゃないかと言う。
そういった形で裁判を起こすためには、当然息子の
状態からすると何億という賠償金になると思うんです。だから、その裁判を起こす費用、印紙だけでも何十万かかる。そういったものにあえて費やすよりは、せめてその金をもとに生活の安定をとりあえずとった方がいいと言われたんですけれ
ども、自分
たちとしては、そのままほうっておけば息子は何のために、今そのまま、今の
状態、息子は多分これから二十年、三十年、自分
たちが先に逝くと思いますけれ
ども、息子はもっと生きていくと思います。それも、相手は三年半でそれで終わっちゃう。それが息子は一生、二十年、三十年、ほぼこのままの
状態を続けるかと思うと、とてもつらくてやるせない思いでいっぱいです。
そういったことを
考えた中で、たまたま
弁護士さん、今回、
犯罪被害の支援の方で静岡の白井
弁護士という方に妻の知り合いから相談をすることになりまして、その方が、費用等は
考えなくていいよということで、自分
たちは安心してその人に任せておくことができました。そういった形の支援。
当然、自分
たちは何とか、そのままならないにしても、例えばその六百万を全部使ってでも裁判を起こしたい。起こすのは何でかというと、息子がこうなっているのに、相手は社会的責任をとった形の三年半の刑でそれで終わり、そのあいさつも一切なしという、そういった形のものではとてもやりきれない気持ちでいっぱいだったものですから、たまたま今回、相談ができる
弁護士さんにめぐり会えたことを非常にうれしく、それと心強く思っている次第です。
つたない陳述というか自分
たちの今の気持ちというか、そういったものをお伝えするだけになりましたけれ
ども、これが自分の今の気持ちです。
どうも失礼しました。