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竹村泰子君
委員派遣につきまして、御
報告申し上げます。
去る一月十二日から十四日までの三日間、
司法行政及び
法務行政等に関する実情
調査のため、島根県及び広島県を訪れました。
派遣委員は、
風間委員長、
塩崎理事、
北岡理事、魚住理事、
橋本委員、
福島委員及び私、
竹村の計七名でございます。
まず、島根県では、松江地方
裁判所において、現地の法曹三者の代表者に
司法書士会の代表者を加えた四者と、
司法の実情及び
司法制度改革に関し意見交換を行い、松江刑務所においては、概況
説明を聴取するとともに、刑務作業の実情等を視察いたしました。
意見交換会では、松江地裁所長から、首都圏と松江のような小規模な町では事情に違いがあるとの意見が述べられた後、管内では本人訴訟が多いこと、県外の弁護士に依頼する場合には期日調整が難しいこと、破産管財人が不足していること、集団密入国
事件急増の
影響で通訳
事件の占める割合が全国平均を大きく上回り、通訳人の
確保に苦労していること、西部の支部では国選弁護人の選任に苦労する場合があること等の実情が述べられました。
次に、松江地検
検事正から、島根県は東西に長く、交通に時間を要し、職務の連絡に不便であるとの実情が述べられ、このため
検事正及び次席
検事は、ファクシミリ等により
事件の
報告を受け、月に一回、決済のためみずから各支部に出向いていること、集団密航
事件、大量の覚せい剤密輸
事件など
外国人犯罪がふえていること等の
説明がありました。
次に、島根県弁護士会会長から、弁護士の偏在、地理的
状況により弁護士に対するアクセスがかなり困難な
状況にあること、所属の二十一名全員が当番弁護士、各種
委員等の公益
活動を行っていること、日弁連、中国弁護士会、島根県弁護士会で
法律相談を行っており、本年四月には県西部の浜田市に公設事務所を発足させる予定であること等の実情が述べられ、五十年間に全国の弁護士数は約三倍になったものの県内の弁護士数はふえておらず、弁護士の
増加が直ちに過疎地の弁護士増にはつながらないとの意見が述べられました。
最後に、島根県
司法書士会会長からは、弁護士は数が少なく、報酬も高く、少額訴訟をほとんど扱っていないこと、
裁判官の後見的訴訟指揮には限界があり、
司法書士が書類を作成するだけでは十分な
支援ができないこと、島根県でも本年三月に成年後見リーガルサポートセンターを設置する予定であること等の実情が述べられ、弁護士を大幅にふやしても島根県の弁護士人口の
増加は考えにくく、
司法書士に簡易
裁判所の訴訟代理権を認めるなど、
司法書士の機能の
充実が必要であるとの意見が述べられました。
派遣委員との意見交換では、松江地裁所長から、弁護士会とは新
民事訴訟法施行前から勉強会を行ってきていること、松江地検
検事正からは、通訳人は言語によっては遠方から来てもらわねばならず、仕事を抱えている人に何日にもわたって泊まり込んで通訳をしてもらうのは困難であること等の実情が示されたほか、弁護士会会長からは、クレジット、サラ金
事件で
司法書士に簡易
裁判所の代理権を認めても経済的にペイせず、抜本的対応が必要である、
司法書士会会長からは、過疎県では弁護士会と連携をうまくとり合って総合力で市民にアクセスをしているとの見解が示されました。
松江刑務所は、主に年齢二十七歳以上の
犯罪傾向の進んでいる刑期八年未満の受刑者を収容しています。刑務作業は、その大半が作業着等の縫製及び額縁の組み立てで、松江刑務所独自の製品としては、ケヤキの座卓、テーブルがあります。近年、不況の
影響で契約の解除等が多く、作業の受注に苦労しているとのことであります。
広島県では、広島
法務局、広島地方
海難審判庁、第六管区海上保安本部及び広島入国管理局からそれぞれ管内概況について
説明を伺い、実情を視察いたしました。
不動産
登記事務の
コンピューター化は、全国的には
平成十六年度末完了を目標にしているものの、手数料収入
減少に伴いその遅延が懸念されておりますが、広島
法務局管内では二十二庁のうち十三庁、
事件数では約八割が既に
コンピューター化しており、もう少し早く完了するであろうとのことであります。概況
説明の後、実際に登記申請受け付け後の仕事の流れを視察いたしました。
広島地方
海難審判庁では、瀬戸内海は海岸線が複雑で、狭い航路に船舶が集中するほか、漁船も多数漁労に従事していること等から、管内では衝突、乗り上げなどの
海難事件の
発生率が高いこと、他の
地域と比べて多種多様で慎重な判断を要する
事件が多いこと等の
説明の後、
審判官三人の
合議体により行われる
海難審判を実際に傍聴いたしました。
なお、
海難審判の場合は、
海難原因の究明が特に困難な
事件には学識経験者二名を参審員として
合議体に加えることができることになっており、各地方
海難審判庁にはあらかじめ十二名以内の参審員が任命されているそうであります。
第六管区海上保安本部では、
海上交通安全法に定める全国十一航路のうち七航路が管内にあるため、情報提供と航行管制を行う
海上交通センターを二カ所に設置していること、全国で唯一外洋を有していない同管区でも密航船が入り込み、銃器、麻薬の密輸が行われていること、海上保安官は、海上における
司法警察
職員としての権限を有し、密輸、不法入国などのすべての海上
犯罪に関して、犯人の指名手配、逮捕など
刑事訴訟法に基づく捜査を行うことができること等の
説明を受けた後、実際に巡視船で瀬戸内海を視察いたしました。
広島入国管理局では、
平成九年から船舶を
利用した集団密航事案が頻発していること、在留
審査関係書類を、秘密厳守の契約を結んだ上で外部委託によりコンピューター入力し、手続の
迅速化を図っていること等の
概要説明の後、収容
施設、
収容者の
運動場、
外国人在留総合インフォメーションセンターを視察いたしました。
なお、本
委員会の直接の所管ではありませんが、派遣初日の一月十二日に、米子空港から松江市に向かう途中にある中海干拓事業も視察いたしました。
最後になりましたが、今回の
調査に当たり、現地
関係機関から御
協力をいただきましたこと並びに最高
裁判所、
法務省当局から便宜をお図りいただきましたことにこの席をおかりして厚く御礼を申し上げます。
以上でございます。