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参考人(
三輪定宣君) 先ほど申しましたように、OECD加盟国の中でも
日本の
教育予算の割合は最低でございます。
これらのデータはいろんなところで
報告されておりますのでよく御存じのことと思いますが、例えば一九八〇年度から九七年度の
大学予算、といいましても、この
予算というのは私立
大学の助成費とか国立学校特別会計への繰り入れとか育英奨学金とかと合計でございますが、この
大学予算は、やや大ざっぱな数字ですが、一・三兆円から一・九兆円にふえておりますが、GNPが二百四十兆円から五百十三兆円というように二倍以上にふえているわけですね。また、学生数はこの間二百二十一万人から三百八万人というように、これも一・五倍程度にふえている。というふうに考えますと、この間の
予算が余り伸びない中でそういう全体のGNPや学生数がふえるということは、言いかえれば、学生一人当たりの
大学予算という指数に直しますと、これは五十九万円から六十四万円ですから、ほとんど横ばいである。ということは、
実質的には五一%くらいに減っているということになりますね。ですから、この一九八〇年から九七年度の約二十年間に
実質的には五〇%くらい減っているというのが
大学予算の実態でございます。
イギリスのサッチャー政権、保守政権のもとで
大学予算が四割減ったということで、その増額のために
イギリスも今苦労しているわけですけれども、
日本の行政
改革のもとで
大学予算がそのような扱いを受けてきたということがありますから、これを取り返して、さらに二十一
世紀に向かって財政的な
基盤を築く必要があるというように思います。
教育条件で一番効果的な係数というのは、何といいましても
大学教員一人当たりの学生数でございますが、これが一九七〇年には十八人でしたけれども、今十九人に、先生に対して学生数がふえております。職員について言いますと、この間に八人から十一人にふえているわけですね。つまり、
大学の先生に対する学生数も職員に対する数もふえているという
状況でございまして、
イギリスの九人とかドイツの十一人とかそういうレベルに比べると、
日本の先生は
教育の面でも非常に忙しくなっているということがおわかりだと思います。また、専任
教員一人当たりに対する非常勤講師の割合もこの間に〇・七から一・〇というように、非常勤講師がどんどんふえて専任の
教員がその分だけ減っているというように、財政のしわ寄せがいろんなところに及んでいるわけでございます。
また、学生の授業料もこの間ウナギ登りに上っておりまして、そのことが、学費を切り詰めたりあるいはアルバイトをおやりになったりということで学生自身の学習
活動に非常に支障を来すということもございまして、
教育評価もよろしいのですが、そういう劣悪な
条件の中で学ばざるを得ない学生の問題というのは、これは
基本的にやっぱり解決しなくてはなりません。
そういうことで私が、私立
大学、
国立大学全体を通して学校納付金全体を無償化すればどれくらいかかるかということを推計したことがございますけれども、約二兆七千億円でございます。これが大きいかどうかということはまたいろいろ
評価の分かれるところでございましょうが、国の
予算としてそれだけを投入すればすべての学生は経済負担から解放されて勉学に没頭できるし、また、低所得の人も
大学に行けるという希望が生まれますので、
社会的なロスもなくなって、みんなの学習意欲が喚起されるわけですね。こういうことがやはり大きな効果を生み出す要因ではないかというように思いますので、ぜひこのような
文教政策については特に財政面の
改善をお願いしたいというように存じます。