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2000-05-16 第147回国会 参議院 財政・金融委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十二年五月十六日(火曜日)    午前十時開会     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         平田 健二君     理 事                 岩井 國臣君                 中島 眞人君                 寺崎 昭久君                 海野 義孝君                 池田 幹幸君     委 員                 河本 英典君                 世耕 弘成君                 中島 啓雄君                 林  芳正君                 日出 英輔君                 星野 朋市君                 伊藤 基隆君                 久保  亘君                 櫻井  充君                 浜田卓二郎君                 笠井  亮君                 三重野栄子君                 椎名 素夫君    国務大臣        大蔵大臣     宮澤 喜一君        郵政大臣     八代 英太君    政務次官        大蔵政務次官   林  芳正君        郵政政務次官   前田  正君    事務局側        常任委員会専門        員        吉田 成宣君    政府参考人        総務庁行政管理        局長       瀧上 信光君        総務庁行政監察        局長       塚本 壽雄君        大蔵省理財局長  中川 雅治君        郵政省貯金局長  團  宏明君        郵政省簡易保険        局長       足立盛二郎君    参考人        住宅金融公庫理        事        五十嵐健之君        本州四国連絡橋        公団理事     縣  保佑君        日本銀行総裁   速水  優君        日本政策投資銀        行総裁      小粥 正巳君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○政府参考人出席要求に関する件 ○参考人出席要求に関する件 ○資金運用部資金法等の一部を改正する法律案(  内閣提出衆議院送付) ○郵便貯金法等の一部を改正する法律案内閣提  出、衆議院送付)     ─────────────
  2. 平田健二

    委員長平田健二君) ただいまから財政金融委員会を開会いたします。  この際、八代郵政大臣から発言を求められておりますので、これを許します。八代郵政大臣
  3. 八代英太

    国務大臣八代英太君) さきの当委員会における私の「月月火水木金金」の発言についての三重野委員の御指摘を踏まえまして、この場をおかりいたしまして取り消しをさせていただきたいと存じます。  よろしくお願い申し上げます。     ─────────────
  4. 平田健二

    委員長平田健二君) 政府参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  資金運用部資金法等の一部を改正する法律案及び郵便貯金法等の一部を改正する法律案審査のため、本日の委員会総務庁行政管理局長瀧信光君、総務庁行政監察局長塚本壽雄君、大蔵省理財局長中川雅治君、郵政省貯金局長團宏明君及び郵政省簡易保険局長足立盛二郎君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 平田健二

    委員長平田健二君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  6. 平田健二

    委員長平田健二君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  資金運用部資金法等の一部を改正する法律案及び郵便貯金法等の一部を改正する法律案審査のため、本日の委員会参考人として住宅金融公庫理事五十嵐健之君、本州四国連絡橋公団理事縣保佑君、日本銀行総裁速水優君及び日本政策投資銀行総裁小粥正巳君の出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 平田健二

    委員長平田健二君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  8. 平田健二

    委員長平田健二君) 資金運用部資金法等の一部を改正する法律案及び郵便貯金法等の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。  両案の趣旨説明は既に聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  9. 中島啓雄

    中島啓雄君 おはようございます。  自由民主党の中島啓雄でございます。  まずもって、小渕総理の御逝去に哀悼の意を表し、心からお悔やみを申し上げたいと思います。  小渕総理が手がけられました中央省庁等改革一環として今般の財政投融資改革というのもあるわけでございますので、御遺志を継いで、財政投融資改革を実のあるものにしていくという立場から若干の御質問をさせていただきたいと思います。  まず、大蔵大臣にお伺いさせていただきますが、財投全般の理念といいますか目的についてお伺いしたいと思います。  法律上は、提案理由説明などでは郵便貯金及び年金積立金預託義務廃止、それから財政融資資金への名称変更と比較的簡単な手続規定のような形で盛られておりますけれども、中身としては大変重要な法案だと思います。これの眼目は、預託義務廃止というよりはむしろ財投機関をどう改革していくかということに主眼があるのではないかと思いますが、その辺のポイントをお聞かせいただければと思います。
  10. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) まさにただいま中島委員が御指摘されましたように、平成十年六月に中央省庁等改革基本法が成立いたしました。その二十条等を踏まえまして、片方で、郵便貯金あるいは年金積立金に従来預託義務を課しておったわけでございますけれども、これは自由化をすべきであるという主張、それから他方で、いわばそういう預託に均てんしておった財投というもの、その多くの預託金がいわば財投機関に流れて、そして財投機関仕事をしていること自身について、そういう特殊法人資金に恵まれているがゆえに十分に厳しい運営をしていない、もっと市場財投機関仕事をさらすことによって厳しくすべきであるというもう一つ目的、その両方を達するためにこのたびの改革が行われるということになったように理解をいたしております。
  11. 中島啓雄

    中島啓雄君 次に、財投機関存在意義といったものについて大臣にお伺いしたいと思いますが、財投機関特殊法人と言い直してもよろしいわけでございますけれども、特殊法人存在について今までいろいろな批判がございますし、今、大臣がおっしゃったように、入り口の資金を配分するということで十分厳しい運営がなされていたかというような反省もあるわけですけれども、こういういわば公と民のちょうど中間にある、言ってみれば公共財私的財中間である準公共財を供給する仕組みというのは、これはこれで非常に大事な意義を持っているのではないかと思っております。  そういうことで、例えばPFIというふうなことが今言われておりますけれども、そういう準公共財を供給する仕組みで伸ばすべきところはむしろもっと伸ばしていったらいいということだと思いますが、その辺の財投機関存在意義なり今後果たすべき機能といったことについてお伺いできればと思います。
  12. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) まさにそのあたりが問題の難しいところだと思いますが、一般に、我が国ばかりではございませんが、納税者の金でなく有償の金をもって政府機関あるいは特殊法人仕事をする、各国ともそういう例はたくさんございますし、また我が国でもたくさんの機関がそういう目的に奉仕して仕事をしておるわけでございます。  おっしゃいますように、税金でする仕事国プロパー仕事でございますけれども、それと民間経済活動との間に広いエリアがありまして、それはそういう機関が担うことが望ましいということで長い経験の中からそういう機関がたくさんに生まれて、現に仕事をしておるということでございます。したがって、その仕事をやめればいいということで問題が片づくものではもとよりありません。  ただ、そうでありますと、資金的には比較的競争にさらされずにいわば楽をして仕事ができるということから、とかく公的な立場もあるがゆえに緩みが生まれるということはあり得ることである、それはそのとおりであると思いますので、もっと厳しく資金調達を自分の責任でさせることによってもっとしっかりコストベネフィット原則に立ち返るべきである、そういう批判は恐らく否定し得ないところである、こう考えられます。このたびの改革は、特殊法人が無用であるというのではなくて、特殊法人がもっと厳しい運営をすることによって、民間企業ではありませんけれども、その精神をもう少し実行すべきである、このような考え方と申し上げても差し支えないのだろうと思います。  したがいまして、御質問の先のところは非常に難しい部分がございまして、そういう機関が今度財投機関債を発行することが期待されるわけでございますけれども、その財投機関債国債に比べればより有利だということは考えられませんので、それだけの負担になる、恐らくコストの増加になる。それを消化していかなければなりませんし、実はそれより前に、国債より有利な条件であっても市中でそういう財投機関債をどこもかしこもみんな受け入れるかというと、そう考えるのは極めて楽観的であろうと思われます。したがって、どこどこの財投機関債市中ではどうも消化できないといったようなことになりかねない、そういう危険はかなりあると思います。  しかし、片一方で、そこへほうり込むのがある意味で合理化を強いる一つ方法だという哲学がございますから、その辺のところでどこらあたり最後決着点になるのか。金が調達できないのならもう店じまいしなさいといったような話になりますと、これはおのおのが長い歴史を持ち、いろいろな仕事をしておりますから、そう簡単に申すわけにもいかない。さりとて、それならひとつ今度財投機関債でなくてもう少し甘い国債並み財投債を回そうかということになれば、これはまた甘い話になるわけでございます。  衆議院でもその辺の御質問がありまして、私としては、特殊法人に対してとことん合理化をやって財投機関債でやれるように努力をしてもらいたい。その状況予算編成時に十分聴取することができますが、その行き着くところで財投機関債が売れないのならもう店じまいしなさいとばかりはそう簡単には言えないだろうと思いますが、初めからいいよいいよというわけにも当然いかないわけでございますから、そこは財政当局としては極力厳しく問題を追求していきまして、そして最後にどういうところで合意するかということは実はこれからの問題でございます。  特殊法人がたくさんございますので、それを見ておりまして、私自身財投機関債というものがそう簡単に売れるとは実は楽観できにくいなと。機関によりましては難しいところもあるんではないか、先々のことを想像いたしますとこれはなかなか容易ならざる問題である、そういうことを御示唆しておられると思いますが、そういう種類の問題でございます。
  13. 中島啓雄

    中島啓雄君 なかなか現実的な事情を踏まえての御答弁、ありがとうございました。  今、財投機関債が必ずしも簡単に売れるわけではないだろうというお話がございました。やってみるとなかなか大変だろうと思います。ただ、その場合に、日本特殊法人存在というのが、一体どこまで政府財政的な支援なり政府保証が及ぶのか、あるいはどこまで自立してやっていくのかという境目がどうもはっきりしないといううらみがあるのではないか。  今、単年度予算主義というもとで政府出資金とか補助金とか補給金とか、そういった額は年々決まるということで、何かあらかじめルールを決めてということにはなかなかなっていない。それでも、今まではかなり厳しい財政状態にある特殊法人についても、暗黙に最後政府保証してくれるのではないかというような了解があって、それなり市場評価を受けていたと。現に政府保証以外にも縁故債などを出している機関が多々ございますので、それなり機能をしていたと思うんです。  しかし、今後の問題としては、そういう市中における評価がある程度客観的に定まるように、政府財投機関との関係を、長期の成果目標とか財政支援の限度とか、ある程度ルール化をしていくような方向に持っていくべきではないか。フランスの場合など、特殊法人政府の間で計画契約というのを何年かに一遍に結ぶというようなシステムがございますが、その辺についてはいかがでございましょうか。
  14. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 中央省庁等改革基本法で述べられました、冒頭に御説明申し上げましたような思想は基本論としては十分理屈がありますし、多くの方が考え方そのものはそれに間違いないと御賛同をいただいているのだと思いますけれども、現実の問題として、ある特殊法人経営が困難である、したがって法律を用いる必要がある場合が多いと思いますけれども、それなら廃止するかということになりましたら、これは国会におかれましても非常な御議論を呼ぶことは必至と思われます。抽象的には、たくさんあるんだから幾つかぐらいは整理してもいいんだろうというようなところから、現実にどこということになればそれは簡単なことではないし、恐らく立法事項である場合が多いように思います。  したがいまして、これはこれからかなり長い毎年毎年の予算編成の経緯を経まして、片方合理化をしていく、他方でいささかでも整理統合といえばこれはもう直ちに、面倒な話でございますが、そういう可能性というものがあるのだろうかとか、少なくとも統合とか、そういう長い長い問題がこれからまさに展開をする、その出発点に立っておるというふうな認識をしております。
  15. 中島啓雄

    中島啓雄君 ありがとうございました。  次に、政策評価の問題について総務庁にお伺いをいたしたいと思います。  当然、特殊法人等効率なり成果について評価をしていくということが必要になってくると思いますが、中央省庁等改革一環として、各省庁がそれぞれ政策評価に取り組むということになっております。その辺について総務省が総括をして、いよいよ来年から始まる省庁改革一環として実施をするということで準備中と聞いておりますが、その辺の状況についてお答えいただければと思います。
  16. 塚本壽雄

    政府参考人塚本壽雄君) 御指摘政策評価でございますが、平成十三年一月から円滑に実施できるようということで、現在、具体的な手法につきまして研究会を開催して研究を進めておりますと同時に、各府省によります政策やこの実施についての指針となります標準的ガイドライン立案を進めているところでございます。  政策評価手法の方でございますが、これにつきましては造詣の深い有識者をメンバーといたします手法等に関する研究会を開催いたしまして、基本的な考え方あるいは評価方法等について精力的に研究を進めておるところでございます。二月に意見・論点の中間整理を行いましたので、今後は六月を目途研究会等中間まとめを行いたいと考えております。  一方、実施方法等に関します標準的ガイドラインでございますが、これは四月に総務庁におきまして試案を作成いたしました。ただいま申し上げました研究会での成果参考にしつつ、各省庁との連携のもとに、七月を目途政策評価に関する標準的ガイドラインの案を策定いたしまして、その後、関係各方面の御意見をいただきまして十二月までには最終案を取りまとめる、こういう予定で運ばせていただいております。
  17. 中島啓雄

    中島啓雄君 ぜひ着実な準備を進めていただければと思います。  大蔵省にお伺いしたいと思いますが、今回の財投改革法一環として政策コスト分析というのを幾つかの機関について、試算ということでございましょうが、お示しをしていただいております。これそのものも今までの慣習からいいますと大変な進歩でございまして、評価をしたいと思っておりますけれども、今後の政策コストが幾らかかるというだけで特殊法人等評価がなかなか定まるわけではないと。  例えば本四公団については、今、繰越損失がかなり出ているというようなことで大変苦労をしておりますが、昨年開通しましたいわゆるしまなみ海道、これは六十キロの間が全通をいたしますと六千八百円というような、普通車の場合でございますが、使用料になると。これを仮に日本道路公団の通常の高速道路並みということで計算をいたしますと千七百円で済むということになりまして、やはり一つ法人がやっているがゆえにそこのコストを賄うために通行料がかなり高くなっているというような状況がございます。  仮に日本道路公団高速道路並みにしたとすれば、財政状況は悪くなるわけですけれども、むしろ自動車の交通量としてはふえてベネフィットが増すかもしれないということでございますので、やはり公共事業についてはなるべくコスト・ベネフィット・アナリシスをするというようなことで、相互に比較をしながらプロジェクトごと優先順位をつけてやっていくというようなことが必要ではないかと思いますが、その辺についてお考えを聞かせていただければと思います。
  18. 林芳正

    政務次官林芳正君) 政策コスト分析ということで委員から今御指摘がありまして、お褒めにあずかって大変恐縮だったわけでございますが、財投機関におきましても、住宅金融公庫国民金融公庫等、今回五つほどやっております。コストの方は数字で出しておるわけでございますけれども、委員がおっしゃるようなベネフィットの方はこの表を見ましても定性的に、例えば住宅金融公庫でありますと住宅取得能力の拡大ですとか、居住水準住宅水準の向上の牽引、こういうように定量的ではなくて定性的にやっておるわけでございます。  委員が御指摘のように、コストの方は数字幾らお金がかかったかということで出ておるわけでございますけれども、便益の方は、では一体どれぐらい住宅がよくなったのかとか、住んでいる人はどれぐらい満足したのか、いわゆるカスタマーサティスファクションみたいなものを数字でやっていくというのはなかなか難しいところがございまして、昨年の八月に初めてこれは出させていただきました。今回はコストの方を数字でやって、便益の方はいわば定性的な表現にとどまっておるわけでございますが、まさに先生おっしゃったように、今後はこの便益の方もなるべく数値化をしていくということをやってまいらなければならない、大変重要な御指摘だと考えておるところでございます。  これを定量的にきちっと数字でやるというのはいろんな仮置きをしてやっていかなければならないことでございますが、一応皆さんの議論のたたき台といいますか、こういう仮置きでこういう数字になりましたというようなことを含めまして、いろんな角度で勉強してまいりまして、なるべく先生の今おっしゃったような方向で頑張ってまいりたいと思っておるところでございます。
  19. 中島啓雄

    中島啓雄君 ありがとうございました。  今、コスト・ベネフィット・アナリシスなどについて話題にいたしましたけれども、特殊法人を客観的にどう評価していくかというのは、手法もいろいろございますし、なかなか難しい問題なんですけれども、やはり客観的な評価監視仕組みが必要だろうと思います。  そこで、総務庁にお伺いしたいと思いますが、いろいろな検討の中で、外部監査を導入するとか独立行政法人評価委員会を拡大するということだと思いますけれども、政策評価もそういった委員会でやるというような構想が検討されておりましたが、現在その辺の検討状況がどうなっているか。  それからもう一つ、客観的な評価という観点からいいますと、経理基準についても、なるべく発生主義のもとに企業会計原則にのっとった処理をしていくべきであると。例えば道路公団損益計算を見ますと、道路事業資産については減価償却費が計上されていない。そのかわりに償還準備金の繰り入れというようなことで、今までの借入金の償還分がその年の事情に応じて繰り入れられる、こういう仕組みになっておりますので、一般企業会計処理とはかなり異なっておる。ディスクロージャーという面ではわかりにくいというようなこともございますので、その辺は企業会計原則に合わせていくという方向で行くべきではないかと思いますが、その辺の御検討状況を聞かせていただければと思います。
  20. 瀧上信光

    政府参考人瀧上信光君) お答えいたします。  財投機関改革推進のための特殊法人評価監視ルール化の問題でございますが、総務庁におきましては、昨年四月の中央省庁等改革一環として決定をされました行政組織等減量効率化等に関する基本的計画、いわゆる減量化計画を踏まえまして、平成九年の三次にわたる整理合理化閣議決定等を踏まえつつ、統廃合関連法案審査や、ただいま御指摘特殊法人財務公開、それから評価等に係る実施状況の点検といったことを実施してきているところでございます。  まず、特殊法人財務会計関係でございますが、特殊法人につきましては、監事が内部監査実施主務大臣の承認を受けることとなっておりますほか、大部分法人会計検査院による会計検査対象ともされておるところでございます。あわせまして、御指摘外部監査につきましては、特殊会社がいわゆる商法特例法に基づきまして実施をしているほかに、政府系金融機関などに導入法人が見られつつあるという状況にございます。  また、特殊法人会計処理につきましては、昭和六十二年に財政制度審議会公企業会計小委員会において取りまとめられました特殊法人等会計処理基準に従いまして、それぞれの法人におきまして基本的には企業会計基準に従った会計処理が行われております。こういった状況を踏まえまして、平成九年十二月二十六日の閣議決定におきましても、「特殊法人等財務公開に当たっては、可能な限り民間企業に適用されている会計基準に基づく会計処理を行うものとする。」ということを決定いたしておるところでございます。  お尋ねのありました特殊法人ディスクロージャーの問題につきましては、従来も財務諸表等官報等への掲載等による公表あるいはそのための関係法令の改正などの改善措置を講じてきております。  今後、特殊法人につきましては、独立行政法人化等の可否を含め、ふさわしい組織形態及び業務内容となるよう検討していくということを先ほどの減量化計画の中で閣議決定しているわけでございますが、そういった検討の際には、ただいま先生指摘外部監査問題等透明性の確保といったような観点につきましても十分留意をして進めてまいりたいというふうに考えております。
  21. 塚本壽雄

    政府参考人塚本壽雄君) 御指摘がございました政策評価独立行政法人評価委員会におきまして、特殊法人につきましても政策評価を取り上げるべきではないかということでございます。  この委員会は、中央省庁等改革推進に関する方針に基づきまして、現在、所要の政令の立案等準備を進めているところでございます。この委員会は、総務省が行います府省の枠を超えた政策評価について、その実施計画実施状況、主要な勧告等を審議するということが任務とされておりますので、その準備作業をこれに沿って進めておるところでございます。  これまで私ども総務庁も、特殊法人につきましては、財務内容から見ました経営上の課題等を明らかにするなどの取り組みを進めてまいりましたけれども、今後、総務省として行います政策評価におきましても、その調査対象として引き続き特殊法人等を取り上げるべきだ、こう考えておる次第でございます。その際、御指摘政策評価独立行政法人評価委員会の御意見も伺いながら的確な取り組みを進めてまいりたい、こう今考えている次第でございます。
  22. 中島啓雄

    中島啓雄君 ありがとうございました。  次に、大蔵省にお伺いをいたしますが、これから特殊法人に対する融資の仕組みというのが大きく変わるわけでございますけれども、問題機関への融資といいますか、例えば本四公団とか国有林野特別会計とか赤字の財投対象機関がある。それから、住宅金融公庫などについても、例を挙げては申しわけないのですけれども、欠損が続いて、自己資本比率というのを単純計算いたしますと〇・三%程度であって、BIS基準の八%とか四%とかいう基準からいうと問題にならないような状況である。しかし、これを単純に廃止すればいいというようなことではないというのは先ほど大臣からお話がありましたとおりだと思いますので、なかなかこういった問題機関への融資をとめるわけにもいかない。  それではどうするんだという検討が非常に長くかかっておりまして、私、国鉄出身だから言うわけではないんですが、国鉄の場合は昭和三十九年に損益上の赤字になりまして、四十八年には債務超過の状態になりましたが、結局、民営化ということで抜本的に解決されたのが六十二年ということで、債務超過から民営化まで十四年かかっておると。さらに、債務処理が最終的にというか一応御処理をいただいたのが平成十年というようなことで、これまた十数年かかっておるというような状況で、その間に債務はふえ続けたというような実績もございますので、もう少し早目に会社更生といいますか倒産処理といいますか、そういったことを考えていくようなルールづくりをしていくべきではないかというふうな感じもございます。  これは将来の内閣府の課題かと思いますが、大蔵省から今のお考えなどを聞かせていただければありがたいと思います。
  23. 林芳正

    政務次官林芳正君) お答え申し上げます。  大変重要な問題の御指摘だというふうに思っております。この改革前も財投の計画に新しく入ってきたりまた外れたりということが実はあったわけでございまして、例えば平成三年度におきましては鉄道整備基金というのが、委員もよく御承知でございましょうけれども、対象となっておりまして、逆に新幹線鉄道保有機構というのは外れております。平成四年にも、これは民営化もあるのでございましょうけれども、東日本旅客鉄道ですとか一連の株式会社、それから中小企業信用保険公庫なども外れておりまして、いろんな理由でこの中に入ったり外れたりというのことで不断の見直しをやってきてまいったわけでございまして、その際に変わらずある原則というのは、民業補完、償還確実性という観点をきちっと当てはめてやってまいったわけでございます。  今回こういう改革をいたしますと、先ほど大臣から御答弁があったとおりでございまして、財投機関債財投債ということで市場からチェックを受ける。今までのように預託で、お金がまずありきということではなくて、必要な額を能動的に調達をしないとお金はやってこないということになりますので、そういうときに審査をそういう目で見ますと、より一層今までの観点をきちっともう少し厳しく見ていくということになる、こういうふうに思いますので、今、委員がおっしゃいました、なるべく早期にそういう決断をするということにもこういうことをやることによって資するのではないかというふうに考えておるところでございます。
  24. 中島啓雄

    中島啓雄君 ありがとうございました。  次に、財投機関資金調達について大臣にお伺いしたいと思いますが、今回の改革財投機関債政府保証債と財投債と三つの発行区分があるわけでございますが、どういう原理原則でその辺の発行区分をしていくのか。市場原理重視という観点からいえば、先ほどからもいろいろお話がございましたけれども、やはり原則財投機関債ということで、各特殊法人がみずからの力で調達をするということが主眼だろうと思いますが、その辺の基本的なお考えを伺わせていただければと思います。
  25. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 考え方の順序といたしまして、特殊法人につきましては入り用な資金財投機関債の発行で自己調達する、そのための最大限の努力をしてもらう、これがまず基本でございます。  しかし、それがなかなか簡単でないということになりました場合に、幾つかの検討をしなければなりませんが、一つは、そのやっております業務が民業補完という観点から見てどうしても必要なものか、あるいは将来の国民負担についてどのようなコストになるか、それから債券の償還がどのぐらい確実であるか等々、言ってみればその特殊法人のやっております仕事を全部ゼロベースから洗い直してみて、そしてぎりぎり必要とされるものについて、それでは財投債を分けましょう、こういうような方式になろうかと思います。  しかし、財投債そのものにつきましても、郵貯、年金がこういうことになってまいりましたから、いろいろ支援は結果的に受けることになっておりますものの、財投債なら何でも売れるというわけにはまたまいらないということがございますので、これはもとより国会の議決を受けた範囲内でございますけれども、それにも制約があるということでございましょう。  なお、政府保証債は、従来のいろんないきさつがありましたり、あるいは外国で起債をするといったような場合に必要なケースがあるようでございますから、それは例外的なものとして考えていくと。  私としては、そういうことを考えておるわけでございますけれども、法案が成立いたしましたら、まず予算編成に際しまして、所管各省庁あるいは各機関にそういう考え方を徹底しまして、八月末の財投要求までに十分に検討していただこうと思っております。  ただいまのスタンスとしてはそういうことでございますが、御存じのように、財投機関債がおいそれと売れるかどうかというようなことは、今から余り楽観を許さない大変に困難な作業になると思いますけれども、考えてみればそれがこのたびの法律改正の一つのねらいであるというふうに思いますので、そこのところは各省庁、各機関にも十分理解をしていただいて努力をお願いしたいと思っております。
  26. 中島啓雄

    中島啓雄君 それでは、一つ政府系金融機関の貸し付け条件の問題ですが、例えば日本政策投資銀行が民間に社会資本充実のために貸し出す際の条件というのは、大体二十年とか三十年とか長期間でかつ条件が固定されている場合が多いわけでございまして、現在でも十年前、二十年前の貸し出しの物件についてはかなり利率が高い。六%以上というようなものもございます。  十年ごとに金利を見直す選択ができるようにするというような御検討もあるように聞いておりますが、民間の常識で言うと、五年程度で見直しているというような例も多いですし、繰り上げ償還等もございます。これはもろ刃の剣といいますか、今、金利が下降している面では借り入れる側の方は条件を直してもらった方がいい、逆に金利が上がる局面になってくると逆のことが言えるわけでございますけれども、しかしもう少し弾力的に貸し付け条件というのは考えていただいてもいいのではないかという気がいたしますが、その辺、大蔵省からお願いいたします。
  27. 林芳正

    政務次官林芳正君) お答え申し上げます。  まず、今、委員がまさに御指摘になりましたように、今回の改革に伴いまして、貸付金利については十年ごとの金利見直し制も選択可能だというようなことも検討しておりまして、いろんな多様化を図っておるところでございます。各政府系金融機関におきまして、こういう改革をするので資金調達のあり方というのを今検討しております。  入り口の方がそういうふうに多様化をしてまいりますと今度出口の方もいろんな検討をしなければならない。逆に言えば、出口を考えますと入り口の方はこういうふうなことをしなければならないということも逆に出てまいるわけでございまして、いわゆるALM管理ということを通じましていろんな検討が今回の改革によって進められていくというふうに承知をしておるところでございます。  それで、今、固定金利と繰り上げ償還というお話がありましたが、そもそも政府系金融機関というのは民業補完でございますので、民間ではなかなかできない長期の固定で安定的な資金を供給するというそもそもの性格がございまして、これは貸し出しをするときにお客様にも御説明をして御理解いただいてやっておるというのが原則でございます。  そういう原則に立ちますと、その約定どおりに弁済をいただくというのが原則でございますが、ただ委員が御指摘になったように取り巻く環境がいろいろございますし、金利が大きく動いておるということもございますので、こういう原則を踏まえながら一定のルール、これは期限の利益の分を一応とった上で任意繰り上げ償還をできるようにしてあるわけでございますが、こういうルールをつくりまして対応してきておるところでございます。  いずれにしましても、今度この入りと出ということがいろいろ自由な組み合わせができるように逆に言えばなるわけでございますから、それぞれのところでいろんな工夫をしてもらうということを期待いたしておりますし、我が方もそれに対応してまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  28. 中島啓雄

    中島啓雄君 ありがとうございました。  次に、郵便貯金、簡易保険の問題について郵政大臣にお伺いさせていただきたいと思います。  郵便貯金等の預託義務廃止し、運用を自由化するということでございますけれども、一般の国民の立場からいうと、国営事業である郵貯・簡保資金の運用が自由化されるということはどういうメリットがあるのかな、なぜなのかなというのがやや理解しにくいところもあると思いますので、国民に対してわかりやすく説明をするとどういう意義目的があるのか、その辺をお聞かせいただければと思います。
  29. 八代英太

    国務大臣八代英太君) お答えしたいと思いますが、財投改革によりまして、財投資金調達につきましては、必要な資金市場において財投債財投機関債によりまして能動的に調達する仕組みに改めることとなっております。あわせまして、郵貯資金につきましては、資金運用部への預託義務廃止されまして全額自主運用することとなるわけでございます。  いずれにいたしましても、国民の皆様から小口預金をしていただいている郵便貯金でございますので、まさにそれが地域のいろんなことに使われるということも含めて、一体私のお金はどんなふうに使われているんだろうという思いを持ちますと、私たちは入り口の分野だけでございましたが、いよいよこれから出口まで責任を持つということになってまいりますので、先ほど来、林政務次官の方からもいろいろお話がありましたように、まさにこれは安全確実な、そしてそれがまた小口預金者にもいいことに使われているんだと納得いただくような、そういう自主運用ということに心がけていかなければならないというふうに思っております。
  30. 中島啓雄

    中島啓雄君 ありがとうございました。  今回の運用の根本的な考え方として、確実、有利でかつ公共の利益の確保にも配慮しつつ行うということが郵貯法、簡保法に書かれておりますけれども、やはり重点は確実性というのをどう担保するかということにあるのではないかというような気がいたしますが、その辺のお考えはいかがでございますか。
  31. 前田正

    政務次官(前田正君) お答えいたします。  郵貯・簡保資金の運用は、確実で有利な方法により、かつ公共の利益の確保にも配意しつつ行うとの運用原則法律上設けておるところでございます。  まず、郵貯・簡保資金は国民からお預かりをした大切な資金であることから、何よりも確実に運用することを重視することとし、その中で事業経営を支えていくために極力有利に運用することといたしております。さらに、郵貯・簡保資金は公的な性格の資金でございますから、確実、有利な運用を前提としつつ、地方公共団体への貸し付け等、公共の利益にも配意した運用を行うこととするものでございます。  以上の三つの運用原則の調和を図りつつ、できるだけ適切な運用に取り組みたいと考えております。  具体的には、安全確実な債券への市場の運用を基本としつつ、郵貯・簡保資金の地域への還元等の観点から地方公共団体への貸し付け等を行ってまいる決意でございます。
  32. 中島啓雄

    中島啓雄君 今おっしゃった原則のバランスが重要だと思いますが、確実性をどう担保していくかという観点で若干お伺いしたいと思います。  二百六十兆円を超す郵貯資金、百十兆円を超す簡保資金というようなものが一遍に市場に出ていくわけではないですけれども、こういう国民から預かった膨大な資金が目減りをするとか、あるいは利子がつかなくなったというような状態になっては大変なことでございますので、今後その辺の運用については具体的にどういうような管理手法を考えておられるのか。  アセット・ライアビリティー・マネジメントというようなことも取り入れられると聞いておりますが、その前段としてポートフォリオマネジメントといいますか、個々の運用主体、リスク資産と安全資産にどういうような割合で運用していくか。法律の中には金融債等への運用は二〇%以下ということが書かれております。法律上余り運用の細かいことを縛るのはいかがかと思いますけれども、当面、安全性を重視するという観点で、具体的な運用についてどんなお考えなのか。研究会中間報告の中に準備金制度の導入というようなことも取り上げられておりましたが、そういったこともあわせてお聞かせいただければと思います。
  33. 前田正

    政務次官(前田正君) 運用の確実性をどのように担保するかということでございますが、私どもの考え方といたしましては、郵便貯金事業については、適切な資金運用を行いまして、預金者への元利金の支払いを確実に行っていくことがまず求められているものでございます。このために、御指摘の運用の確実性を図るために、法律上、運用上の仕組みや方策を講じております。  すなわち、法律上の措置といたしましては、郵便貯金法等の一部を改正する法律案におきまして次のような措置を講じております。  第一には、運用対象につきましては元本保証のある債券を中心として法定、法で定めることといたしております。さらに、社債等リスクのある債券につきましては、それぞれの運用限度、先ほど申されましたとおり、資産総額の約百分の二十以下を設けております。  第二に、運用計画につきましては、郵政審議会におきまして運用の専門家のチェックを受けるなど、適切な運用手続を設けることといたしております。  さらにまた、実際の運用に当たりましては、安全で確実な債券を中心とした市場運用を行うことを基本とするとともに、運用手法につきましても、特定の銘柄に偏った運用とならないようにできるだけ分散投資を行うとともに、しかも短期間の値ざや稼ぎを目的とし頻繁に売買を繰り返すことのリスクを避けるために、長期的また安定的な運用手法、いわゆるバイ・アンド・ホールド手法をとるなどしてさらにリスクの低減を図ることといたしております。  なおまた、準備金につきましては法律上の制度というものはございませんが、郵貯資金が債券を中心とした市場運用に移行することに伴いまして、運用に伴う損失が結果として国民負担につながることのないように、現在の積立金に加えまして保有資産の価格変動のリスクに備えるための準備金制度を設けることといたしております。  これらによりまして運用の確実性を確保してまいりたいと考えております。
  34. 中島啓雄

    中島啓雄君 ありがとうございました。  終わります。
  35. 伊藤基隆

    ○伊藤基隆君 民主党・新緑風会の伊藤でございます。  冒頭、宮澤大蔵大臣にお尋ねいたします。  私は報道によってその状況を知ったわけでございますけれども、ゼネコン汚職で埼玉土曜会の談合告発を見送るよう公正取引委員会への働きかけを依頼され、わいろを受け取ったとして、あっせん収賄罪に問われた元建設相の衆議院議員中村喜四郎被告らの控訴審公判が昨日東京高裁で開かれたわけです。  中村被告は、弁護側の被告人質問で、宮澤喜一首相から官邸に呼ばれ現金三百万円が入った紙袋を受け取った、独禁法の罰金引き上げへの協力依頼などの意味だと思ったと述べたようでございます。中村被告によると、宮澤氏から三百万円を受け取ったのは告発見送りを公取委員長に迫ったとされる約一カ月前の一九九一年十二月二十六日であって、宮澤氏は現金の趣旨などを説明しなかったが、罰金引き上げなどの件で呼ばれたというふうに言っているようでございます。さらに、中村被告は、総理から直接渡され断ることができなかったと言いまして、その際、宮澤氏と二人だけだったが、帰りに当時の加藤紘一官房長官の部屋に寄ってこのことを報告、加藤氏は、知っている、もらっておけばいいと言ったと供述しております。  これが報道の内容でございます。  そこで、大蔵大臣にお伺いしますけれども、一九九一年十二月二十六日に首相官邸で中村喜四郎衆議院議員と面会したことが事実としてあるのか、お聞きしたいと思います。
  36. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 昨日、そういう陳述があったということで報道機関から聞かれましたので、私の事務所からは、これは公判中の事件でございますので私としては何もコメントをしないことが適当だと考えまして、そういうお返事をいたしました。ただいままたお尋ねでございますが、平成三年と言われましたか、どうもそういう記憶がございません。  当時、おっしゃいますように、独禁法の改正という問題が日米間の懸案であったことは記憶をいたしておりますが、それも公取委員長がいろいろに各方面と連絡をしながら妥結を図っておられた、そのことは間接的ですが報告も一遍ぐらい受けたことがありまして知っておりますが、建設業者の汚職というようなことは私は全く存じませんでした。別段、総理大臣のところまで来るような出来事でなかったからであろうと思いますが、その点は存じません。  なお、中村喜四郎氏は国会対策委員会の有力なメンバーでございましたから、時々、国会の模様について総理官邸に見えております。それがただいまおっしゃった日であったかどうかはわかりませんけれども、調べてみればわかるかと思いますが、来られていることは時々ございました。そのとおりです。
  37. 伊藤基隆

    ○伊藤基隆君 当時の「官邸日々」というのがありまして、総理のことが常に報道されておりますが、一九九一年十二月二十七日の毎日新聞で、二十六日の午前十一時三十一分に中村喜四郎衆議院議員が総理をお訪ねしているという記録がございます。ですから、おっしゃったように行き会っていると。ただ、公判中の案件であってコメントしないということでございますから、お会いになったことはお会いになったけれどもその他のことについてはノーコメントということだろうと思います。  したがって、現金を渡したとか、またそうでないとかということも述べられておらないわけですけれども、私は、一国の首相が執務室においてこのようなことをやったということになれば、大変例のないというか、ゆゆしきこと以上の問題でありまして、政府の権威、政権の権威とか、そういうものにかかわる問題になってくると思うんです。  さまざまな手法はあるのかと思いますけれども、そのことに今言及するわけにはいきませんけれども、そういう問題が公判の中で述べられたことは、いかに公判中の事案であったにしても、当時の総理大蔵大臣が名誉を著しく傷つけられているということはあろうかと。そういうことについてどのように処すつもりか、またはどのようにお考えになっておられるか、そのことについてお伺いしたいと思います。
  38. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それが公判中であるということの意味にも関連をいたしますが、実は私自身がそういうことの記憶が全くございませんので、ございませんとむしろ申し上げた方がいいかもしれませんが、それは公判中の事件でございますからそのように申し上げました。  それで、総理執務室で現金をということは実は余りないことと思います。たまたま私の場合もそうですが総裁を兼務しておりますから、なかなか党に行けない。そして、たまに公認料のようなことがございますが、たくさんの公認があるような大きな選挙でしたら党へ行きまして時間をつくっていたしますが、補欠選挙とかなんとか、そういうごくごく一人とか二人とかという場合に、党の方から言われまして公認料をお渡しする、どうも一々官邸から本部に参れませんから。そういうことはごく例外的にあるということはございましたが、総理の執務室に金を持っておってそれを渡すというようなことは普通いたしません。  したがいまして、ここでまあ私の名誉の問題と申して申せないことはありませんけれども、自分の記憶にないことであるし、片っ方は公判廷で述べておられることでございますから、公判中のことでもあると言って、そう返事をしておるわけでございます。
  39. 伊藤基隆

    ○伊藤基隆君 この質問はこれだけにしておきます。  さて、本題に入りますけれども、実はきょう九十分間私が質問するわけですが、最後の段階で聞きたいと思っていたことを冒頭お聞きしたいというふうに思います。  まず、郵政省貯金局長政府参考人でお呼びしておりますけれども、その郵政省の見解を冒頭お聞きします。  イギリスでは、ビッグバンと証券市場改革で個人の高度で多様なニーズに対応する新しい金融商品が開発された。日本でも、ビッグバンによる自由化によって我が国の個人の資産運用に変化が起きることが十分に予測されるというふうに考えております。同時に、高齢化社会を目前に控えて、千二百兆円と言われる個人金融資産のより有利な運用を実現することが社会的に求められているのではないかというふうに思っています。  厚生省の人口推計、一九九七年の一月によれば、二〇二五年には六十五歳以上の高齢者が人口の四人に一人を占めると言われておりまして、我が国は世界に例のないスピードで高齢化社会を迎えようとしております。これに備えまして、公的年金、医療制度の改革、公的介護保険の導入など諸課題が政治課題として今重要な扱いを受けているところでございます。  こういった社会保険制度などの見直しは、急速な高齢化によって人口構成にゆがみが生じ、後世代に負担がかかるのを防ぐために行われているという社会的な要請であろうかと思います。この後世代の負担を和らげるためには、もう一つ、高齢者にも自助努力を求めることが必要となってくるのも当然かというふうに思っております。  そこで、高齢者の自助努力を可能にする意味でも、千二百兆円まで蓄積された個人金融資産を有利に運用することが必要となるんじゃないか。個人金融資産が巨額化した社会では運用の巧拙によって影響が大きくなりますから、分散投資をねらってポートフォリオ運用へのニーズが高まって、そのためにも運用商品の多様化が図られる必要があろうかと思います。  一方、その不安、リスクを補う方法としての個人の資産運用の条件を見たときに、幾ら金融ビッグバンが進み市場化が進んでリスク分散の金融技術が進んだとしても、最適なリスク配分が成立するような完備市場が出現することはあり得ないだろう。単純に考えただけでも、逆選択やモラルハザードの問題や市場の欠如ないし市場への不参加などが挙げられるわけでございます。市場化が進み負担すべきリスクが増大する一方で、しかも不完全市場ではそのリスクを十分に分散できない可能性が残ります。  例えば、今のアメリカで何らかのショックで不況になって、あるいは個別産業の衰退等で失業すると同時に、株価の暴落で年金基金が巨額の損失をこうむるようなリスクがあったとします。こうしたリスクこそヘッジされる必要がありますけれども、不完備な市場で対処することは困難だろうと思います。  このようなマクロリスクの発生を可能な限り抑えると同時に、これらのリスクを分散化する手段や枠組み、安全確実な貯蓄手段といいましょうか、またこうした枠組みなしに高齢化と市場化だけが進むことは社会的な安定を損なうことにもなろうかというふうに考えております。  このような中で、郵便貯金の役割はどのように変化すると予測しているのか、郵政省の考え方をお聞きいたします。
  40. 八代英太

    国務大臣八代英太君) 金融ビッグバンによる自由化は、業態を超えた活発な競争を促すとともに、利用者の幅広いニーズにこたえる多様な商品あるいはサービスの提供が期待される一方で、個人の資産運用にありましても自己責任原則が求められる時代となってまいりました。リスクを伴う金融商品につきまして、金融機関説明責任を果たすことの必要性がますます高まってくるだろう、このように思います。  ただし、依然として千二百兆あるいは千三百兆円を超えたと言われる個人金融資産の中心が安全確実な預貯金であるように、高齢者を含む小口個人というのは高度化、複雑化する金融商品に対する知識とか情報が十分ではないことも多くて、必ずしもリスクを積極的にとることが難しい場合も多いものと思われます。  金融ビッグバンになって、例えば今低金利の時代でございますが、郵貯なども利息の低いところから高いところへ流れるという懸念も私たちは持たないわけではありませんでしたが、日本人の国民性と申しますか、身近なそうした高齢者を含めた小口預金者は非常に郵便貯金というものに信頼を高く置いておりますだけに、これから自主運用をするにつけましても、こうした人たちの心を大切にしながら私たちはいろんな意味での取り組みをしていかなければならないというふうに思っております。  このような中にあって、簡易で確実な貯蓄手段を全国あまねく公平に提供するというのが郵便貯金でございます。特に小口個人の御利用者にとっては引き続き重要な役割を果たしていくものと思っております。  今、委員指摘のように、アメリカなどでは、例えば身近なところの銀行が経営不振で畳んでしまった、預けるところがないわいというようなことで、小口預金も含めたユーザーの方々の不安というものが今いろんな国にあるというようなことも仄聞いたしますと、日本のまさに全国津々浦々に二万四千七百、山間地域であれ離島であれ、こうした窓口がしっかりあるということの信頼性はこれからも育てることが必要であると思いますし、まさに私たちもそこに預け入れられた皆さんの手となり足となって、知能となっていろいろこれから確実な運用を図りながら皆さんへの還元策ということも考えていくことが責任を果たすことだと、このように思っているところでございます。
  41. 伊藤基隆

    ○伊藤基隆君 せっかく大臣がお答えくださったので、では今の問題を少し発展させてお聞きしたいと思います。  日本の場合、個人の金融市場を見てみると、公的な金融が今日まで大きな役割を果たして、今日も果たしています。公的な年金でも今資金が百三十兆円ある。さらに郵便貯金という非常に大きな役割を持ったものが存在し続けてきた。  これらが今回自主運用ということになったときには、今まで預貯金というふうに個人の金融資産の保有形態はとらえられていたけれども、市場において、それも安全確実な市場という制限下で行われるにしても、市場化するわけでありまして、まさに巨大なファンドの登場ということになろうかと思います。性格が変わってくるんじゃないかと。預貯金というものが大蔵省に一括預託されて国の管理のもとに財投で運用されてきたのが、実現するかどうかわかりませんが、財投機関債というものが出てくるというような状況もありましょうし、市場との連携が非常に強くなってくる。もはや郵便貯金という性格だけでは成り立ち得なくなってくるんじゃないか。  私は前の委員会でも質問して大蔵大臣からもお聞きしておりますけれども、市場全体の中で預貯金という形態から投資信託への道が強くなってくる。個人の資産を運用する場合の変化というものが状況の変化の中で生まれてくるわけですから、それは公的セクターの金融市場の変化が各個人の資産運用に対する認識の変化になっていくのか、個々人の自己の資産運用に対する変化が公的セクターの市場に変化を与えるのか、それはわかりませんけれども、今、大臣がおっしゃったような認識で郵便貯金が存続するとは私は思っていません。そういう単純なことでは行き切れない、川を渡ったんだというふうに思うんです。  だから、郵政省にはぜひその辺の認識はどうなっておるのか聞きたいわけです。そのために貯金局長を呼んであります。貯金局長からその話を聞きたい。
  42. 團宏明

    政府参考人(團宏明君) お答え申し上げます。  これまで郵便貯金につきましては預託義務ということで資金運用部での預託利子が収入となってきたわけでございますが、昭和六十二年以降、一部自主運用ということでやってまいりました。これが全額自主運用となるわけでございますので、責任の主体としまして、これまでいわゆる運用の部分につきましては運用部にお願いしていたといいますか委託していたものが自分で責任を負わなくちゃいけないということで、大きく責任という観点での変化が生ずることになるというふうに考えております。  その場合に、運用の対象につきまして、公的な金融でございますので、運用範囲を定め、運用計画等、国会のコントロールも受けてやっていくというふうになるわけでございまして、完全に民間と同じスタイルではない公的な一つのユニークなスタイルになってくるというふうに考える次第でございます。  そうした場合に、金融自由化対策資金といいますものも、昭和六十二年以降でございますが、資金運用部も含めまして公的金融を市場化しようというふうな動きでやってきたわけでございますが、今回これが完全に市場化していくと。これは財政融資資金もそうでございますし、郵便貯金市場化していくということになりますので、これはかなり仕組みとして質的な変化が進んでいくということは委員指摘のとおりではないかというふうに考えております。  ただし、公的な金融ということで申しますと、先ほど申しました運用範囲の制限というふうなものもございますし、いろんな仕組みにつきましても公的な規制がございます。そういう中で、完全に民間とは違った一つの役割、制約の中で運用と郵貯のサービスを提供していくという役割につきまして、一つ仕組みとして新しい変化をしていくということになるのではないかというふうに考えておる次第でございます。
  43. 伊藤基隆

    ○伊藤基隆君 今、突然聞いたわけでありますから、大変これは難しい質問だったかと思います。認識があったからといって冒険的に答えるわけにいかないかと思いますが、これは将来非常に重要な問題になってくるというふうに思いますから、引き続き私もそのことについては考えますけれども、郵便貯金を統轄する立場からは十分な研究をしていっていただきたいというふうに思います。  さて、大蔵大臣郵政大臣、御両所にお伺いしたいわけでありますが、公的金融の変化ということを今取り上げたわけでございますけれども、出口に目を転じますと、金融自由化の進展によって間接金融から直接金融に比重が移って、より市場性の高まる中で各プロジェクトごとに各期間ごとの短期的な利益が重要視される傾向が進むのじゃないかというふうに思います。  したがって、巨額な資金を要する、短期的には利益を生まないが長期的には利益を生むような長期プロジェクトは敬遠される傾向が強まるというふうに思います。短期的に利益を得る取引機会があれば、一般に高い不確実性を持つと考えられる長期取引を行うインセンティブは低下するからであります。また、そうした長期プロジェクトのリスクを再配分するような市場、あるいはそうしたリスクを負担する民間経済主体が存在しないかもしれません。  公的金融は、量だけでなく、政府系金融機関及び期間に関する規模の経済を基盤にして、資金仲介コスト及びリスクの低減を可能にしておって、こうしたプロジェクトの資金仲介に適していると私は考えます。また、郵貯が自主運用ということになると、先ほど申しましたように、これまた郵便貯金が一種の巨大なファンドの出現となるわけで、その具体的な資金配分の姿は我が国の社会経済にも影響を及ぼすものというふうに見なければなりません。  今後、金融の自由化日本版ビッグバン、金融の情報化、巨大化、グローバル化などの大きな変化の中で、公的金融システムは従来と違う新たな局面の中でより大切な社会的役割を持つ可能性あるいは必然性が生まれるのではないかと考えますが、この点に対する御認識を両大臣にお伺いしたいと思います。
  44. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいま御指摘の問題は、これから我が国のみならず市場経済社会での金融、それからいろいろな意味での社会開発のあり方に深く関係する問題であろうと私も思っております。  御承知のように、アメリカの経済におきまして企業経営者の交代が非常に早いということはお互いが知っておるところでございますが、その一つの原因が、経営者としてできるだけ早く株主のために利益を上げる、どれだけの実績があったかという評価をかなり厳しくされてきたことはもう昨今のことではございません。かなりアメリカの市場経済、企業の特色でありました。  我が国経営者が比較的、いわば一つ企業に育って企業の将来というものを長く考え得る状況にあるのに比較して、一種のタレントがある企業からできるだけ早い期間に利益を上げる、このことがアメリカの経営者だとすら言われるようなところがございまして、このことのメリット、デメリットは随分長く議論されてまいりました。殊に、企業の株式がいわゆる機関投資家によって大量に保有されて、そして機関投資家の経営者がまた早く利益を上げなければならないという立場にありますと、機関投資家が企業に対してクイックなリターンをいわば慫慂するというよりはせっつく傾向がございまして、その場合、極端に申しますと、企業経営者は、この施設設備は少し長く置いておいた方が長期の利益に奉仕すると考えましても、施設設備を一遍全部売ってしまえばそのときには非常に大きな利益が出ますから、どうしてもそういう誘惑に駆られやすいというのが従来言われていたことでございます。  今お話しのことはそのことに関係がありまして、昨今のようにマネーというものがいわばすべてのようになり、しかもクイックにそれが行われるということは、そもそも長期の投資家の立場というものを危うくするものでございます。それはもう明らかにそうだと私は思います。したがって、おっしゃるように、企業が長い将来を考えて投資をするということはどうしても難しくなっていかざるを得ないだろう。そういうときに、そういう長い目で国民経済に奉仕するような投資、あるいはインフラストラクチャーというものをだれがやるのかという問題はどうしても出てこざるを得ない、そういう今の趨勢だと私も思っております。  それが、今、伊藤委員の言われるように、私的な利益を必ずしも追求するのでない、しかし国の税金で国がする仕事でもない、そういう分野をだれが受け持っていくのかという問題につながっているだろう。そこまでは、御質問の趣旨は、私はどうもそうならざるを得ないかなと。  ただ、それがどういう機関によって行われていくかということはやっぱりこれからの問題であろう。あるいはおっしゃるようなことが答えであるかもしれない。しかし、いわば市場経済でない機関がそれをどのように的確にやっていくかということにつきましては、私も今見通しを申し上げるほどの知識を持っておりませんというお答えになろうかと思います。
  45. 八代英太

    国務大臣八代英太君) 株であれ為替であれ、昨今はマネーゲーム的な様相も呈しているグローバル化された中にありまして、私ども、こうした状況の中でどのように運用していくかということも大変責任が伴うわけでございますが、これまで財投につきましては郵貯資金等を主要な原資として社会資本整備などに活用されてまいりましたし、我が国の経済発展に貢献してきたという思いは強うございます。  しかし、近年、財投効率性について問題点がいろいろ指摘されたことなどを踏まえて、郵貯資金等の資金運用部への預託義務廃止されて、財投資金調達について、市場原理にのっとって、そういうものにするんだということでこの財投改革が行われることになったわけでございますが、こうした改革によって財投効率化が果たされていくとは思われますけれども、有償資金を用いて国の各般の施策を効率的あるいは効果的に実施するという財投そのものの役割というのは私は引き続き重要なものであるというふうに考えております。  なお、郵貯資金につきましては、財投改革に伴いまして市場において安全確実な債券を中心とした市場運用を行うことが基本となりますが、この中で一般国債、地方債等のほかに財投債財投機関債等への運用によりまして市場を通じて間接的に公的部門に資金を供給していくことになると思っております。また、市場運用の例外として、財投計画の中で郵貯資金を地域に還元するという観点からは、これからは地方分権の時代でもございますから、地方公共団体貸し付けを行うことといたしておるわけでございます。  このような改革によって、郵貯等の公的資金がこれまでより効率化された形で我が国経済、そしてまた社会各般の施策のためにその資金がより有効に活用されて、そして運用の面においても社会的な役割を果たすことができるのではないかというふうに考えておる次第でございます。
  46. 伊藤基隆

    ○伊藤基隆君 これは質問ではないんですが、質問しようと思ったんですが、ちょっと整理がつきかねていることでありまして、問題提起といいましょうか、感想的に申し上げておきたいと思うのでございます。  私は、先ほど質問の中で情報化、巨大化、グローバル化ということをあえて申し上げました。これは並び言葉で申し上げたのではございません。金融というものが実物経済を補完する立場から自己増殖して、その金融自体が増殖しながら活動するという時代になってきている。しかも、先ほど大蔵大臣も非常にスピーディーにと、それは情報化の問題でございますが。  そもそも生産と消費というのは、多少のさまざまなミスマッチがありながらも神の御手によって結局は修正されつつ経済が動いてきた。そこに金融が入り込んできて、消費は消費そのものの質的、量的な変化というものがその金融によって触発されて動いて、経済が動き始めて、巨大な消費、巨大な生産ということになってきた。しかし、その後はさらに金融が自己増殖したという時代になっておる、今なってきたと思うんです。  それでは、グローバル化の中で、大蔵大臣の答弁にありました日本のインフラストラクチャーについてどうやっていくかというようなことについて、この巨大化した、グローバル化した金融は力をかしてくれないんじゃないか。それはもう別世界の出来事になって、国籍はないんじゃないか。そうなったときに、では長期的なプロジェクトというのをどうしていくかということは、非常に国策的といいましょうか、国の基盤を守っていくときの非常な重要性がある。  私は、EUとかアメリカというのは基軸通貨ないしは基軸通貨になり得る通貨を持っていて、将来ともそのことは市場原理の中で長期的プロジェクトも遂行されるという自信があるんじゃないかと思っていますが、日本にはそういうものがないんじゃないか。というときに、日本国内における国益をどうするかという視点での長期プロジェクトを遂行していく公的金融セクターというのをどうしても存続させていかなかったら、世界の中の一極と言われる日本は一極の立場を瓦解させるんじゃないかというふうに思っております。  そういう意味で、国益というのはさまざまな視点があるでしょうが、社会的なインフラストラクチャー、そういうものを確立していく、社会の安定をつくっていく、そこに住む国民の個人的金融資産の保全を図る、通貨の安定も図るというようなものはさまざまな国益としてあるわけですが、私は国益の視点から公的セクターの仕組みというものを、システムの仕組みというものを確立し続けていく責任が政府というか国にはあるんじゃないかというふうに思っています。  もう一つは、従来、個人部門からできるだけ低利で資金を集めて法人企業部門へ資金を供給する、そういう仲介機能を銀行が担ってきました。郵便局に集まった資金財政投融資によって民間金融機関を補完する形で法人企業部門へ供給されました。こうした金融システムでは、個人部門を低コスト資金調達対象とみなしてきたのではないかと思います。ただ、企業資金需要が変化して、また資金調達も間接金融から直接金融に変化してきまして、こうした状況に対して個人金融資産の新しい活用を考えなければならないという時代ともなったのではないかというふうに思います。  調べますと、低成長時代に入って企業の実物投資意欲は鈍化し、これまで恒常的に資金不足部門であった法人企業部門も一九九四年に資金余剰部門に転じて黒字の状況にあるそうでございますが、低利の金を、低利が当然のような戦後の政策でございましたけれども、そのことが続いて日本の復興があって、経済発展があって、今日は苦しんでおりますけれども、そういう経過が今日まであった。これの変化が起こっている。  これは企業における資金の蓄積と同時に、個人がそのことを知っているということ、金融市場に対する直接的なつながりを持ってくるんじゃないかということで、私は、グローバル金融の中での国内的な国益をどう守るか、そういう変化の中で個人資産をどう守るかの両面で、ある意味では公的金融システムというのを変化させながらどう存続させるかということが重要な政治課題になってくるんじゃないかというふうに思っているところでございます。  さて、最終的にお聞きしたいことを冒頭質問したわけでございますけれども、これから少し個別の問題について質問してみたいというふうに思います。  財投、公的金融システムは長期の資金を供給することでこれまで我が国の社会資本整備に大きく貢献してきました。例えば平成十年度末において日本道路公団の整備した高速道路、有料道路は七千キロ以上、住宅金融公庫の融資を受けた住宅戸数は千七百万戸でございます。仮にこれらに必要な資金をすべて租税収入で賄っていたとしたら、社会資本整備はここまで進んだだろうかという疑問は当然にしてございます。また、一昨年ごろ、民間金融機関のいわゆる貸し渋り問題が出てまいりましたが、これに対して政府系金融機関が一定の役割を果たしたことも重要な問題でございました。  私は、財投があったからこそ社会資本が整備され、国民生活の質が向上したと思っておりますし、市場が不完全で失敗があるような場合には公的金融システムが必要となるというふうに考えております。そうした意味で、財投、公的金融システムやこれを支えてきた原資である郵貯、簡保、年金は日本経済に大きく貢献してきたと思います。  しかし、一方で、ここ数年、財投に対する批判、不満の声も高まってきておりまして、新聞記事をずっと時系列的に見ておりますと、住宅・都市整備公団、現在は都市基盤整備公団でございますが、日本道路公団、年金福祉事業団、雇用促進事業団、現在は雇用・能力開発機構、商工組合中央金庫、北海道東北開発公庫、現在は日本政策投資銀行に統合されておりますが、本州四国連絡橋公団、石油公団など具体的に新聞紙上でも取り上げられてきまして、特に財投機関である特殊法人などの経営問題が注目を集めております。  だからこそ今回の財投改革が行われることになったと私は思いますが、ここで大蔵省財投改革の問題点というのはどこだったんだろうか、入り口とか出口とかという話もありますけれども、その点について大蔵省の見解をお聞きしたいと思います。
  47. 林芳正

    政務次官林芳正君) 今、伊藤先生から御指摘があったような経過をずっとたどってまいったわけでございまして、今、一定の評価をいただいたわけでございますが、税金のかわりに有償資金を用いるところで国の各般の施策を効率的、効果的にやってきたわけでございます。また、今回の累次の経済対策におきましても、例えば貸し渋り対策等その時々に必要な施策をやってまいったときの重要なツールであったわけでございます。また、先ほど大臣からも御答弁がありましたように、英米独仏、諸外国でもこれに似たような制度があるわけでございます。  他方、問題点もいろいろ指摘されてまいったところでございまして、まず一つ目には、この出口と入り口、今、委員から御指摘がありましたけれども、入り口の方の郵便貯金年金積立金等が預託義務ということになっておりますので、幾ら要るかということと関係なく、要するに出口の所要資金量とは関係なく入り口の資金量が決まってくるということがございまして、市場原理や財政規律というものが十分に機能しなかったという問題があります。要するに巨額の資金が自動的に入ってくるということで、財政投融資自体が肥大化をしたのではないかというような指摘でございます。  それからもう一つは、先ほど中島先生の御質問にもありましたけれども、将来どういうふうな負担に実際にはなるのかということを余りきちっと分析いたしませんで、融資ということですから返ってくるからというようなことで、当面の財政よりはそちらの方でということで、結果としては後年度にいろんな補給等を通じまして財政の負担となっていったというような御指摘があったわけでございます。  そういうような指摘を踏まえまして、今回の改革を、これはもう成立しておりますけれども、中央省庁等改革基本法二十条にその根拠規定がございますが、これに基づきまして、今御提案をしておるような財投改革法案を出したということでございます。
  48. 伊藤基隆

    ○伊藤基隆君 引き続きこのテーマで質問したいわけですが、今、日銀総裁がおいでになりました。十一時半からお聞きしたいということで、日程があるようですので、ここでいきなり日銀じゃないんですけれども、日銀関係について聞きたいと思います。  まず、郵便貯金についてお聞きしますが、財投改革に伴って資金運用面において大きな変化を迎えようとしております。きょうの委員会のテーマでございます。一方、資金を調達する商品面においても大きな転換点に来ていると思います。  郵貯の二〇〇〇年問題とも言われた大量の満期貯金でありますが、その額はこの二年間で百兆円を上回ると言われております。これにより郵貯から大量の資金民間金融機関や海外へ流出すると予想する者もございます。  資金運用部は郵貯から流出する資金を償還しなければなりませんが、もし償還資金が不足すれば、資金運用部が保有する国債市場で売却して賄うことになるだろう。大量の国債市場で売りに出されれば、債券市場の需給関係を崩し、国債価格が下落する可能性があり、これが長期金利の上昇に結びつき、金利の上昇が景気回復の足を引っ張るのではないかと懸念されております。これがいわゆる郵貯二〇〇〇年問題の最悪のストーリーでございます。  十年前の高金利時代に預けられた定額貯金の集中満期がいよいよこの四月から始まりましたが、郵政省では郵貯からの流出による影響を少なくするために、全国の郵便局で郵貯の再預入の働きかけを行っていると聞いておりますけれども、満期貯金の流出見込みはどうなっているのか、またそれにより郵貯の経営資金繰りに問題を生じないのか、また四月からの集中満期の再預入の状況はどうか、今後の見通しについてお聞きしたいと思います。
  49. 八代英太

    国務大臣八代英太君) 平成十二年度から平成十三年度にかけまして満期となる定額貯金の元利合計金額は、もういろんなところで報じられておりますが、平成十二年度は約五十八兆円でございまして、平成十三年度は約四十八兆円ということで、百六兆円、両年合わせてそういう額になるわけでございます。  このうち、両年度で約五十七兆円を再びお預け入れいただけるものと私たちは見込んでおりまして、そのためにも各郵便局に頑張っていただいておるところでございますが、このとおり推移すれば、利子課税金額が約八兆五千億でございますから、それを含めて約四十九兆円が流出するということになるわけでございます。  満期の到来による経営への一つの影響でありますが、満期の到来によって高金利の貯金が払い戻されまして支払い利子の負担が大幅に減少することになりまして、当面、経営的にはプラス要因になるというふうに思っております。収支見通しとしては、平成十二年度は約一兆二千億円の赤字を見込んでおりますけれども、来年度、十三年度にはほぼ同額の黒字が生ずるものと考えております。  次に、支払い資金関係でありますけれども、これには資金運用部の預託満期金で対応することになりますが、その額は両年度合わせて約六十二兆円となっておりまして、満期貯金以外の貯金等での増加も約十八兆円見込まれますので、支払いについては十分手当てができておるわけでございます。  この四月期の実績で、再預入の運動も含めてお願いをして回っているところでございますが、満期を迎えた定額貯金の払い戻しは約六兆六千億円ございました。郵便局においてはかなりの局で土曜、日曜も業務処理を行うなどの努力をいたしまして、またお客様への周知活動なども行いました結果、通常貯金も含めて約四兆四千億円がそのまま預けておいていいというような形になりまして、流出額は利子課税分約五千億円を含めて約二兆二千億円と、予想の範囲内におさまっているという状況でございます。  今後の見通しにつきましては、金利動向等によって変化もあろうかと思っておりますが、満期を迎えるお客様はとにかく十年間という長い間郵便貯金を御利用いただいたお客様でございますので、それなりに再度御利用いただけるのではないかと考えておりまして、郵便局側でも引き続き努力をしてまいりたいと考えておるような次第でございます。全体の七割から八割ぐらいは何とか再預入の目安をつけたい、こんなふうにも思っている次第でございます。
  50. 伊藤基隆

    ○伊藤基隆君 私も郵便貯金仕事に直接携わってきた時期がありまして、現場のたたずまいというか、お客さんとの関係とかはよく知っておりますから、かなりの部分は再預入で確保できるだろうというふうには思っておりまして、大変健闘しているというふうには思います。ぜひ頑張っていただきたいと思います。  さて、今後この資金状況は金利の動向など市場実勢に影響される面もあって現段階で予測することは困難でございますが、大蔵省では資金運用部の資金が不足し財投資金繰りに支障が生じることを懸念しているのではないかと思います。そこで、大蔵省は日銀との間で売り現先取引、現物先物取引を行うことで合意されたと伝えられております。  大蔵省にお聞きしますけれども、大蔵省と日銀との間の国債の現先取引についてどのような話し合いがなされたのか、またその実施の条件、期間、量的な上限などについてお伺いしたいと思います。
  51. 林芳正

    政務次官林芳正君) お答えを申し上げます。  今、八代郵政大臣から状況の御答弁があったところでございますが、懸念と申しますか、万が一の場合に備えまして、資金運用部の資金繰り方策につきましては、先生から御指摘がありましたように、日本銀行ともいろいろとお話し合いをさせていただきまして、昨年の十一月にその対応について公表させていただいているところでございます。  中身でございますが、今、大臣からもお話がありましたように、平成十二年度と十三年度、両年度ではいろんな形での資金が入り用になる場合もあるということを見通しまして、委員がおっしゃいましたように、売り現先、まず売りまして、将来買い戻すということを約した上で資金を調達するという方法でございますが、これをやろうということでございます。  これは今までもそういう方法をやっておったわけでございますが、今回、日本銀行と話をしましたのは、今まで市中に対してこれをやっておったわけでございますが、量がふえますと入札が未達になるような可能性が出てくる場合があり得る、そういう場合には日本銀行にもいろいろとやっていただこうということでございます。また、もう一つの場合は、資金運用部の要調達額が、その時点の一回の平準的な量がございまして、これを上回る場合ということでございますが、こういう場合には、三カ月以内ということに限っておりますが、三カ月以内で資金運用部の売り現先の相手方に日銀になっていただく、要するに買っていただくということになっております。  これには特定の量的な上限は設けておりませんが、この上で、今三カ月と申しましたけれども、だんだんと調達額をふやしてまいらなければならないわけでございまして、その過程におきまして、日銀の方で必要と認めた場合には、これは七兆八千億円が上限でございますけれども、三カ月を超えて、一応三カ月の売り現先の継続、いわゆるロールオーバーでございますが、これは額を決めまして、その範囲内でロールオーバーにも応じていただくということになっております。  そこで、対市中、最初に申し上げました原則の、市中に対してやる売り現先でございますが、これは四月二十四日に三千億円ほどの入札を実施しておりまして、これは日銀さんの御援助をいただく必要がなかった、要するに市中できちっと消化できたという状況でございますこともあわせて御答弁させていただきたいと思います。
  52. 伊藤基隆

    ○伊藤基隆君 そのロールオーバーが形を変えた日銀の国債引き受けというふうになるのではないか。市中で消化が行われたというのは大変いいことだと思いますけれども、いつまでもそのことが続くのかということは市場関係で出てくるんじゃないかというふうに思いますから、批判として財政規律が緩むのではないかということが出てきておると思います。  大蔵省の話はお聞きしましたので、もう一方の当事者の日銀にお聞きしたいと思うんですけれども、資金運用部との売り現先取引は将来的に日銀の国債引き受けにつながるのではないかという懸念を持っておりますが、この点はどうなんでしょう。
  53. 速水優

    参考人速水優君) 資金運用部との日銀売り現先取引につきましてただいま林大蔵政務次官から御説明がございましたが、今回の措置の基本的な考え方をちょっと説明させていただきます。  資金運用部が必要といたします資金につきまして資金運用部みずからが市場から調達する、四月は既に三千億おやりになったわけですが、これが原則だと思います。ただ、日本銀行としてもこれを補完しなければならないことが起こってくるかもしれないということで一時的な流動性を供給する、そういう考え方でお話し合いをした結果、条件を決めてお受けした次第でございます。  あるべき姿としては、もちろん資金運用部、政府資金繰りが中央銀行資金に依存するということは本来望ましいことではないと思います。ただし、今回の場合は郵貯資金資金流出の規模が非常に大きいということ、またそのペースなどについてもなかなか見きわめがつかないというようなこと、資金運用部の資金繰りに対する金融市場資金過不足の振れ、そういうものを考えますと、先行き何が起こってくるかという懸念はあるわけでございまして、それが金融市場資金過不足の振れといったようなものを揺るがすようなことになっても困りますので、この点を踏まえまして、日本銀行としては円滑な金融調節の実施という観点から協力を行うことにしたわけでございます。  本件に関しまして改めて御理解いただきたいと思いますのは、今回の日本銀行の対応は政府に対して長期、固定的に資金を供給しようということではございません。今回の対応はまず郵便貯金集中満期という二年間に限っております。極めて例外的な措置だというふうに考えております。また、あくまでも資金運用部みずからが市場から資金調達することを原則にして、日本銀行は必要と認める場合に一時的な流動性を運用部に供給するという考え方でございます。したがいまして、日本銀行による国債の引き受けといったこととは全く性格を異にするものだというふうに考えております。  日本銀行といたしましては、日本銀行による国債の引き受けを禁止しております財政法の精神につきましては今後とも厳に守ってまいりたいというふうに思っております。
  54. 伊藤基隆

    ○伊藤基隆君 二年間の限定的措置ということについて私もきちんととらえておきたいと思っております。  さて、ゼロ金利問題についてここでお尋ねします。  私はゼロ金利問題についてずっと長い間質問し続けてきまして、その都度、日銀は、低金利による景気下支え効果、金利が低ければ設備投資がふえて、それにより企業収益が伸びて、所得の増大、消費の拡大を通じて景気が回復すると、五年間一貫してそういうことを言っております。設備投資の若干の好転は出てきたようでございますけれども、前任の松下総裁以来同じことを言っているということは大変問題ではないだろうか。政策委員会の中でもそういうことに対して批判をする意見が、極めて少数といいましょうか、一名から出ているようでございますけれども、金融政策の選択幅がなくなってしまっているということの方が大きいのではないかというふうに思っております。  ゼロ金利で年金に頼っているお年寄りなど金利生活者にとってはもはや耐えがたいものになっているというのは今のことじゃなくて、ずっとそうなっている。預貯金の取り崩しにより生活を守っている、だんだん預貯金の額が減ってくるという現象があって、それが将来に対するさらなる不安ということから消費を控えることにつながってきているんだというふうに思っています。金融政策と国民生活の面で何とかしなきゃならない時期に来ているんじゃないか。このことについて日銀はどのように考えておられるか、ぜひお聞かせいただきたいと思います。
  55. 速水優

    参考人速水優君) 五年間とおっしゃいましたけれども、ゼロ金利にいたしましたのは昨年の二月でございます。ゼロまで持っていったのは、あの時期に金融システムの不安でこれからどうなるか、大銀行の破綻が起こってきていましたし、それからデフレスパイラルに陥っていく懸念が非常に見えたということで、これは異常な措置だと思いますけれども、緊急の対策としてとった措置でございます。  このゼロ金利政策を解除するということにつきましては、先般来、デフレ懸念の払拭が展望できるような情勢になることであるというふうに申しております。そのためには、設備投資や個人消費といった民間需要の自律的な回復への道筋がある程度見えてくるということが必要であると思っております。  このうち、設備投資の方は御承知のように関連する指標から見ましても緩やかながらも増加に転じてきていると判断いたしております。一方、個人消費につきましては、引き続き回復感に乏しい状態が続いております。雇用・所得環境は、雇用や賃金の下げどまりの動きが見られますけれども、いま一つ明るい兆しがはっきり出てきているというところまでは行っていないように思います。したがいまして、今後、個人消費の基盤となる所得環境などがこれ以上悪化しないであろうというようなことがもう少しはっきりしてまいりますれば、自律的回復、つまりデフレ懸念の払拭の展望が見えてきたというふうに判断したいと思っております。  御指摘のように、年金生活者等が非常にお困りになっていることは私どもも本当にお気の毒なことだと思っておりますが、物価の面で元本が目減りしているというようなことはございませんので、いずれ条件が整って私どもが大丈夫だと思いましたら、ゼロ金利は解除してまいりたいというふうに思っております。  あすも金融政策決定会合が開催されますけれども、ただいま申しましたような点を中心にしまして金融経済情勢を注意深く点検して、適切な政策判断を決めてまいりたいというふうに考えております。  どうぞよろしくお願いいたします。
  56. 伊藤基隆

    ○伊藤基隆君 先ほどゼロ金利政策五年間と言ったのは超低金利政策五年間のことで、一口にゼロ金利と言ったわけでございます。  では、日銀に対する質問はこれで終わりましたから、委員長、よろしくお願いします。
  57. 平田健二

    委員長平田健二君) どうぞ御退席ください。
  58. 伊藤基隆

    ○伊藤基隆君 さて、先ほど大蔵省から財投改革の理由と原因ということについてお伺いしました。私は、日本経済がいつまでも右肩上がりの成長を続けるのではない、財投を取り巻く環境の変化が大きな要因の一つなんだというふうにこの財投改革をとらえているわけですが、とかく日本の社会を毒している風潮というのが、前例を踏襲する、惰性で物事をやっていく、ないしは事なかれ主義、上にへつらい下に厳しい役人、そういうものが蔓延していて、実際問題は、さまざまなことを言うけれども、そういう個人の責任回避みたいな、恐れて決断しないというような風潮が蔓延したがゆえに日本経済に対する少なからぬ影響を与えた要素があるのではないかというふうに思っています。  財投機関についても、いつまでも従来の業務を従来の方法で行ってきたのが多いのではないか、そして行ってきた事業に対する評価が変わってきたことに目を向けないで、時代おくれになっても必要な対策が講ぜられてこなかったのではないかというふうに思います。  例を挙げれば枚挙にいとまがないわけですが、国有林野事業特別会計の債務が三兆円を超したと。木材価格の変動を考慮に入れなかったためで、有償資金の返済にも行き詰まっていると。これは財投のような高利の資金を借りているから悪くなったんだということを私に言った当事者がいます。私は、ならば借りなければよかったではないか、世の中貸した方が悪いという言い方は江戸時代の時代物のテレビでも余りないよ、借りざるを得なかったんじゃないか、それを利息が高いということの言い分を言うのはおかしいんじゃないかと、半分冗談、半分本気で言ったことがございます。  国鉄の長期債務に関しては、当時の政府が問題の先送りをしてしまったために国民に与えた損害は何倍にも大きくなってしまった。例えば不動産の売却等について手控えたということがあって、そのことが後々大きな影響を出してきたと言われております。  また、年金福祉事業団のグリーンピアは巨大な施設を全国に建築して、ただでさえ破綻しかけている年金財政に大きな穴をあけ、官僚の天下りのための事業ではないかという批判を受けていたわけでございます。  いずれにしても、右肩上がりの経済を前提にどうにかなるという発想だったようでございますが、ここでは一例として本州四国連絡橋公団の決算についてお聞きしたいと思います。  本四架橋というのは、御承知のとおりでございますが、昨年のしまなみ海道の開通によって本州と四国の間の三ルートが完成するところまで来ました。本州と四国を連絡橋で結ぼうという構想はまさに四国住民の夢で、過去に連絡船の遭難で犠牲者を出したという悲惨な経験を考えれば、まさに悲願が実現したことになろうかと思います。  しかし、昨年四月に総務庁行政監察局が本四公団の財務調査、いわゆる行政監察を行いましたが、この結果によると、本四架橋の場合、通行料で建設費を返済することは不可能と思われます。毎年支払わなきゃならない金利にも通行料金では足りないという実情のようでございます。  そこで、総務庁にお聞きしますが、本四公団に対する行政監察の結果を簡単に御説明いただきたい。また、本四公団にもおいでいただいておりますが、最近の決算についての説明をお伺いしたいと思います。
  59. 塚本壽雄

    政府参考人塚本壽雄君) 御指摘の財務調査の結果でございますけれども、平成八年度末の決算の財務データを用いまして経営分析的な観点から評価をするという目的で行われたものでございます。  当時の公団の財務状況を見ますと、七千億円を超える債務超過となっていたということでございました。ただ、これは通行料収入を得るに先立ちまして多額の建設資金を投入する必要があったということで、いわゆる創業赤字によるところも大きかったという認識でございます。  一方、こうした中で八年度の事業の収支率は二一一ということでございまして、収入の二倍以上の費用を要するということで、債務の償還を取り巻く状況は厳しいという状況にございました。公団の方の九年十二月認可の償還計画がございますけれども、これは国と地元からの追加出資を前提といたしまして、平成十八年度から収支差がプラスに転ずる、平成五十七年度には投下資金の償還が完了する見通しということでございましたけれども、私どもはその前提となっております交通量の見通しが実際どのように推移していくかという点を長期的に見守る必要がある状況と考えたわけでございます。  こうしたことから、私どもは、債務超過からの脱却がまず必要である、さらに償還計画の基礎となっております交通量見通しの不確実性がございますので、これを踏まえまして、償還が確実なものとなるよう計画と実績の不断の見直しが必要であるという旨の指摘をさせていただいた次第でございます。
  60. 縣保佑

    参考人(縣保佑君) 本四道路事業の決算状況についてお答え申し上げます。  この事業は一般道路事業として整備するにはなかなか難しいということもありまして、整備を促進し早く活用していただくために有料道路事業として整備を実施しているところでありますが、建設に要する費用を主に借入金により賄い、これを料金収入によって長期にわたって償還していくものでございます。  平成十年度の決算で申し上げますと、道路資産総額で約三兆五千九百億円、これに対しまして負債及び資本は財投資金約二兆二千億円を含めまして借入金として約三兆八千五十億円、また国及び地方自治体からの出資金が約五千八百五十億円ありまして、これらを合わせた要償還総額は約四兆三千九百億円でございます。  また、供用中道路の損益計算で見ますと、収益は八百五十六億円で、うち料金収入が八百十五億円でございます。費用は千五百四十五億円でございますが、うち支払い利息等が千三百五十三億円となっておりまして、当期損失金が六百八十九億円生じております。  なお、先ほど申し上げました平成十年度の要償還総額につきましては、低金利による支払い利息の軽減や管理費の削減などによりまして償還計画よりも約七百億円少なくなっておりますが、一方で景気低迷の影響などから利用交通量も計画を下回っておりますので、今後の経営的には厳しい状況と認識しております。  私どもといたしましては、常に償還計画の達成状況を把握いたしまして、さらに一層の経費節減や利用の促進に努めますとともに、国や地方公共団体からの助成を継続していただきまして、計画的な償還が図れますように努力してまいりたいと思っております。
  61. 伊藤基隆

    ○伊藤基隆君 建設費三兆五千億円のうち財投から二兆二千億円。支払い利息一年間千三百五十三億円に対して、収入は八百十五億円。地域の地方公共団体などから公的助成を受けたとしても、健全な姿とはとても言えません。三ルートの完成により建設事業は終了して、景気の動向の影響は受けるとはいうものの、近い時期には現実的な交通量の見通しが立つことになるんだろうか。なるべく早く抜本的な経営の見直しを実施しなければならないとだれでも考えるところだと思います。  本四架橋が現在の形となったのには過去のいきさつがあったこととは思います。神戸—鳴門ルートでは、淡路島を挟んで二本の橋のうち、鳴門海峡には新幹線規格の鉄道併用橋が建設されて、明石海峡には後から自動車専用橋がかけられた。この計画変更に端的に時代の変化が読み取れるわけですが、結果としては見通しが甘かったことになってしまいます。果たして三ルートが必要だったかということを反省してみてももう遅い話で、今となっては後の世代に過剰な負担を強いることがないよう借入金償還計画の抜本的な改革を行うよう決断を求めるところでございます。  それではどのようにやるかということでございます。今までどおりのことを続けていれば何とかなる、国有林野もなったんだし、国鉄もなったじゃないかというようなことで行ったのでは、もはや財投そのものの大転換が起こってきているわけですから、解決できないわけですよね。ではおまえやれと言われても、私ができるわけじゃないかもしれませんが、その立場になって考えれば何か出てくるかもしれませんけれども、相当の決断というか、政治的な決断も含めて必要になってくることだと思って、そのことだけ申し上げておきます。  以前、こういう出口の財投機関の問題があろうことか入り口の郵貯、簡保の民営化問題にすりかえられたような議論が多く聞かれました。財投改革の原因として、入り口の郵貯や年金の資金が豊富だったために財投貸し付けが甘くなったというような指摘もございますし、政務次官の答弁の中にもややそれらしき状況だったという話も出てまいりました。財投の出口については、政策的必要性をきちんと判断する仕組みが整備されていなかったのだと思います。出口機関運営や監督官庁のチェックが働かず、放漫な運営が行われてきたことが本質としてあるんじゃないかと思います。総務庁の行政監察の結果、短時間で答えたからああいう答えになったんだと思いますけれども、状況を見てきて言っただけの話です、あれでは。そういうことが全体を網羅していたんじゃないかというふうに思います。  私は、今回の財投改革が出口機関の見直しにつながらなければ意味がないし、財投をめぐる市場とのかかわり、状況変化が大きく起こってくるんだということの認識を持って出口の財投機関の役割、必要性について改めて考え直すことが重要なんではないかというふうに思います。  もちろん私は財投制度が完全に時代にそぐわなくなってすべて不必要ということを言うのは余りにも早計だと考えております。要は、環境の変化にもかかわらず漫然として財投資金政策として不必要な分野や有償資金にふさわしくない分野に使われて、その結果、政府部門の拡大、非効率をもたらしたのではないか、将来の租税負担を増加させるのではないかということを懸念するわけであります。  むしろ、私は、財投、公的金融システムというものは高齢化や高度情報化社会に対応した社会資本整備など今後とも社会的に必要とされていくと考えています。そのために、今ここで徹底した財投制度改革を行うことが前提になるのではないかというふうに思いますが、大蔵大臣の認識をお伺いしたいと思います。
  62. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 先ほどから承っておりまして、いわば財投制度の功罪とでも申しますか、そういうことについては、具体的にいろいろ御分析の上で、こういう制度が今後なくなることが望ましいとはお考えになっておられないということ、しかし今までこういうことになったことについてはそれだけの原因もあったことであろうから、それについてこのたびのこういう改革そのものは恐らくやむを得ないというお考えかと思いますが、しかしそれで財投というものがいわば役割を果たし終えたとは考えないと、こういうお立場と思います。  それは非常に根本のところまで議論をしていきますといろいろ問題があるかもしれませんけれども、私どもも、やはり税金でなく、こういう借入金によって準国家機関、公的な機関が担わなければならない分野はまだたくさんあると考える点では伊藤委員と同じように思っております。  そこで、そこまでは総論でございますけれども、これからこの法律が成立いたしまして、ことしの夏から実施をするということになります。従来の財投機関に対していわば反省をしてもらう、将来に向かっての新しいスタートをしてもらう、どの程度にそれを厳しい環境の中でやっていけるかという、そういう問題に尽きるわけでございます。  正直申して、このままの状況でみんなが財投機関債を発行できるというふうにも見えません。そうかといって、財投債を分けてやるということがたっぷりできるわけでもない。そういう中で、新しい財投機関というものがどういうふうに生きていけるかというのは、これは正直申しまして、私どもも一生懸命やりますし、各省庁にも財投機関にもそのつもりでやってもらわなければなりません。  とにかく功罪という点ではいろいろ問題はあっても、今後してもらわなきゃならない仕事がたくさんあるという立場から、しかしこの改革を、厳しい改革を乗り切らなければならないといういわば二律背反の中でやっていくよりほかはないと、さように考えております。これは余りいいたっぷりしたお答えではありませんけれども、どうもそれしかないというような気持ちで申し上げております。
  63. 伊藤基隆

    ○伊藤基隆君 大蔵大臣財投債発行については厳しく限定するということを衆議院の大蔵委員会の答弁、資金運用審議会懇談会等で述べておられます。  私は、この財投改革の経過の中で財投機関債というアイデア、考え方が出てきたときに、これは財投改革でなくて、財投廃止というか質的転換というか、違うものにする考えだなと。財投機関債というのは市場原理にのっとってということになれば、市場原理にのっとれないもの、長期プロジェクト、リスクも大きいものを財投機関がやっているわけで、そもそも市場原理になじむとかなじまぬ以前の問題で、そういうもののらち外にある。これを長期化することによって何とか立ち行くようにするという事業をいきなり財投機関債を導入してというと、前提そのものが崩れて否定していることになるので、何で財投機関債という考えが出てきたかわかりません。財投機関債などというものが適用されるような状況ではないので苦労してきたわけです。  財投機関債を中心にという大蔵大臣のお答えは、それは当然にして言うべき答えかと思いますが、私は、財投機関債の発行量などはたかが知れていて、財投債が中心となるという世間一般の見方があって、そっちの方が私はそうだろうなと思っております。  ここで、実際に財投機関債について、発行する側の財投機関意見をお伺いしたいと思います。財投機関の中でも最大規模の住宅金融公庫についてお聞きいたします。  住宅金融公庫は、平成十年度末の財投からの借入残高が七十一兆八千五百二十七億円、平成十二年度の新規借り入れが十兆三千八百七十一億円に上っています。住宅金融公庫では、先日の住宅金融公庫法改正でABS、資産担保証券も発行できるようになったわけで、財投機関債の発行には前向きではないかと思います。  財投改革の趣旨を踏まえれば、住宅金融公庫でも資金の大半を財投機関債で調達する必要が生じますが、住宅金融公庫としては実際にどのぐらいまで財投機関債を発行できると考えるか。例えば調達額の大半を財投機関債で充当することが可能なのかどうか、このことについてお伺いしたいと思います。
  64. 五十嵐健之

    参考人五十嵐健之君) お答え申し上げます。  今、先生指摘のように、今回、住宅金融公庫法の改正がございまして、それから平成十二年度の予算をお認めいただいたということから、五百億円の財投機関債、資産担保証券の格好でありますけれども、を発行するということになったわけでございます。  基本的な考え方といたしましては、財投改革の趣旨を踏まえるということと、あと、私どもの内部的な問題からまいりますと繰り上げ償還がかなり多く出てまいりましたので、この資金調達とローンによります運用の期間のミスマッチと俗に言っておるわけでありますが、この解消に資したいという考え方から発行することとなったものでございます。  ただ、住宅金融公庫につきましては、お貸しする期間が三十五年ということで、しかも固定の金利でお貸しするということに原則的になります。現在の民間の金融機関では、三十五年、固定の金利でローンを供給するというのは大変難しいわけでございまして、今のやり方でまいりますと財投関係の制度を使わせていただいているということになります。  今回のこの財投機関債、資産担保証券の格好でこういうことが可能かどうかということで今回発行の準備に入ったということになるわけでございます。  今後につきましては、正直、この資産担保証券の市場が実はまだ歴史が大変浅うございまして、平成十一年度でも国内の公募市場だけで見てまいりますと七千億円余という程度でございます。それから、まだ十年を超える債券の発行が行われていないというような状況があります。  私どもとしましては、基本的にはお客様に長期、固定、低利の住宅ローンを供給させていただきたい、そのために見合った調達をさせていただきたい。そのためにこの財投機関債を発行させていただいて、市場がそれにどうこたえていただけるかということになるわけでありますが、今後、毎年毎年、予算の段階でどのぐらい可能かということも、そして当然のことでございますけれども、調達コストとしては一番低いものを私どもはいただきたいと思っておりますので、そういう中で、今後、毎年検討をさせていただきたいと思っております。
  65. 伊藤基隆

    ○伊藤基隆君 現実はかなり厳しいことで、全体の枠から見れば非常に微々たるところで、そろりと出ているということかもしれませんけれども、それが大きく財投機関債に依存するというか、それを中心にしていくというようなことはとてもうかがい知れません。  住宅金融公庫が持っている重要度というのはいささかも揺るぐものではなくて、これが社会全体に対する安定性を与える影響としては非常に大きいわけでありますから、政治的な目標としては重要ではないかと思います。ただ、住宅に対する政策住宅金融公庫方式だけでいいのかどうか、さらには債券を市場に証券化して出してさまざまな資金を調達していくということの可能性というのは、私はきょう質問の予定がなかったので調べてこなかったのですが、アメリカか何かでかなりインセンティブを働かせている方法があるように思いますけれども、もう少し研究していく必要があるんじゃないかというふうに思います。  さて、大蔵省はどう考えているかでございます。  大蔵大臣の政治的姿勢についてはいろんな場面で大蔵大臣が述べられておって、そのことは方針としてきちんと出されているわけですが、大蔵省が技術的レベルといいましょうか事務レベルといいましょうか、考えたときに、実際に財投機関債を発行できる財投機関はどのぐらいあると考えているのか。実際には財投機関債がほとんど発行されないのではないか。そういうことになった場合には財投改革と言えないんじゃないかというふうに言わざるを得ません。  大蔵大臣が表明された財投機関債発行についての基本的な考え方を実際にどのように適用していくのか具体的に示していただいて、時間が来ましたので、そのお答えをいただいて、私の質問を終わりにします。
  66. 林芳正

    政務次官林芳正君) 今、委員から御指摘があった件に関しては大臣からもたびたび御答弁があったところでございますが、なかなか具体的にこれとこれとこれで大体幾つぐらいでございますと申し上げる状況にないことは御理解いただきたいと思います。  今、業務が民業補完であるかどうか、また政策コスト分析、償還確実性等、精査をしていって、必要と判断される場合にのみ財投債によってやっていく、原則財投機関債であるということをずっと御議論いただいておったわけでございます。  具体的には、財投機関債については、例えば帝都高速度交通営団というのがございますが、ここではもう既に発行しておりますし、住宅金融公庫については委員からの御質問に今御答弁があったところでございます。このほか、日本政策投資銀行、旧開銀等を中心にしたものでございますとか、国際協力銀行、旧輸銀等のものでございますが、こういうものを初めといたしまして、各機関、またそれを所管しております官庁におきまして、今申し上げましたような趣旨にのっとって発行方法について鋭意努力をしていただいておるところでございます。  実際に、ではどういう条件でどれぐらいということになりますと、これは我々がやれと言っても市場で受け付けてもらえないとなかなかうまくいかないわけでございますから、現段階におきまして定量的また具体的にお示しするのはなかなか難しいわけでございます。  今、委員からもいろいろ御指摘がありましたし、我々もそういう基本的な考え方につきまして、法案を成立させていただきますれば速やかに関係者の皆様に通知をいたしまして、周知徹底して、本年八月末の十三年度の財投要求までに一生懸命やってくれということを叱咤激励してまいりたいと思っているところでございます。
  67. 伊藤基隆

    ○伊藤基隆君 どうもありがとうございました。
  68. 平田健二

    委員長平田健二君) 午後一時に再開することとし、休憩いたします。    午後零時二十分休憩      ─────・─────    午後一時開会
  69. 平田健二

    委員長平田健二君) ただいまから財政金融委員会を再開いたします。  資金運用部資金法等の一部を改正する法律案及び郵便貯金法等の一部を改正する法律案の両案を一括して議題とし、休憩前に引き続き、質疑を行います。  質疑のある方は御発言願います。
  70. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 郵便貯金法並びに資金運用部資金法の改正案につきまして、若干の質疑を申し上げたいと思います。  小渕総理の葬儀が二時半からということでございます。御出席の皆様もおられると思いますので、できるだけ速やかに質疑を切り上げたいと思っております。おつき合いをよろしくお願い申し上げます。  この問題というよりも財政投融資制度のあり方について、既に何度かこの委員会で主として宮澤大蔵大臣にお相手をいただいて質疑をしてまいりました。いよいよ法案がかかるわけでありまして、私はほとんど申し上げたいことは申し上げてきたという気持ちでありますけれども、やはりこの法案の審議でありますので、重なりますけれども、もう一度同じ問題意識を展開させていただきたいと思っております。  午前中の伊藤委員質疑の中で巨大ファンドという言葉が使われておりました。まさに預託義務廃止によって巨大ファンドが出現をするわけであります。日本の金融マーケットのスケールはどういうふうにはかるのかよくわかりませんが、個人金融資産だけをとりますと千二百兆、千三百兆と言われている中であります。現在、二百五十兆を超え、簡保資金まで入れますと三百兆を優に超えている文字どおり巨大ファンドでありまして、この行方というのは十分見きわめていかなければ、今度のこの制度改革の意味というのは私は明確にできないというふうに思っております。  まず最初に、郵政省の皆さんにお伺いをしたいわけですが、主として制度的な側面がどういうふうになっているかについて明らかにしていただきたいと思います。  具体的に、それでは自主運用、これは法律によりますと総務大臣が審議会をつくって運用計画をそこに諮りながら、しかも全体の考え方としては、午前中も説明がありましたが、できるだけ安全に中立的にとか言葉はたくさんあるわけでありますけれども、では具体的にどういう金融資産をどういう形で購入していかれるのか、簡単に御説明をいただきたいと思います。
  71. 八代英太

    国務大臣八代英太君) 浜田委員にお答えしたいと思います。  郵貯・簡保資金の運用範囲は法律において定めることとしておりまして、国債、地方債等の債券のほかに、地方公共団体や預金者、契約者等に対する貸し付け、あるいは簡保事業団への指定単等々、こういうことになっておるわけでございます。郵貯資金について申しますと、これまでの金融自由化対策資金の運用範囲に地方公共団体等への貸し付けが加わりますし、それから預金者貸し付けを追加するという形になるだろうと思います。  これらの運用については、リスクを軽減するために分散して運用することは当然のことだと思いますが、負債としての郵便貯金の支払いとの対応をとることを基本といたしまして、全体としてまず、再三申し上げておりますように確実性を重視して行うことといたしております。このような考え方に基づきまして毎年度運用に関する基本方針を定めまして、そして中長期的な資産構成割合あるいは当該年度の資金配分計画等を内容とする運用計画を策定いたしまして、これに従って運用を行うことといたしております。この運用計画をあらかじめ審議会に諮問の上、決定して、そしてディスクロージャーの時代でございますから、これを公表する、こういう形になっていることを御理解いただきたいと思っております。
  72. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 そこはよくわかっているわけですが、それでは国債を幾ら買うとか、どの地方債をどのぐらいいつ買うとか、あるいは各種のその他の債券や株式も含めた金融債、これを具体的にどのぐらいの量をどういうふうな形で買うかというのはだれが決めるんですか。
  73. 團宏明

    政府参考人(團宏明君) お尋ねは具体的な運用の割合ということかと存じますが、この改正の貯金法六十八条の四に運用計画を定めるとしておりまして、その内容の中で当該年度の資金の運用に関する事項ということもこれに盛り込もうというふうに考えております。その中で資産ごとの運用予定額というものを書かせていただきまして、諮問し、決定していくという手続にしたいというふうに考えているところでございます。
  74. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 おっしゃることは、そうすると運用計画に定めて購入をするということですか。そうすると、具体的にどういう運用計画になるんでしょうか、審議会におかけになる運用計画というのは。  例えば、地方自治体でもたくさんあります。どの地方債を幾ら買うのか、あるいはどういう金融債を幾ら買うのか。金融債でも、これは法律によりますと総資金の二〇%までは買えるわけでしょう。総資金というのは、例えば今二百五十兆ですから、二〇%というと五十兆ですか。極論すれば一つの金融債を五十兆まで買える。しかも、用心深くとおっしゃっているから、分散してとおっしゃっているから、一つの金融機関の金融債は発行額の二分の一までは買っちゃいかぬと書いてあります。しかし、逆に言えば二分の一まで買えるわけですね。そういう具体的な計画をあらかじめ運用計画で定められるんですか。
  75. 團宏明

    政府参考人(團宏明君) 運用計画で何を決めていくかという全体のところから申し上げたいと思いますが、まず運用の基本方針というものを定めていく、それから運用資産の構成に関する事項ということで中長期的なポートフォリオというのをどう考えていくかということを書いていく、それから三番目に、だんだん具体的になってまいりますが、では当該年度に運用の原資がどれほど見込めるかというのが出てまいります。その中で、資産ごとに運用予定額ということで、類別にどれほどの金額を運用していくかということを書いていくということを考えてございます。  今御指摘がございましたように、それでは具体的にどの債券を買うのかということにつきましては、その時々の債券の出ぐあいとか条件にもよりますので、そこまで年間決めてしまうのはちょっと無理ではないかというふうに考えておりまして、あくまで資産ごとの予定額というところをここで決めていくことにしたいというふうに考えておるわけでございます。
  76. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 そうすると、運用計画に入ってくるのは、大まかな債券種類ごとの割合とかそんなものでしょうか。
  77. 團宏明

    政府参考人(團宏明君) イメージで申しますと、例えば国債にどれほどである、地方債にどれほどであると、大体その程度の区分けをしました資産ごとの予定額を決めていくというふうにしたいと考えております。
  78. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 では、その運用予定額と実際の運用が違った場合にはどういう対応があるんですか。
  79. 團宏明

    政府参考人(團宏明君) これはあくまで市場で運用してまいりますので、確かに先生指摘のとおり、きっちりとその金額でおさまらないことはあると思います。大幅な変更をする場合にはやはり諮問のし直しということになろうかと思いますが、多少の誤差につきましては事後の報告ということになろうかと思います。
  80. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 そうすると、債券の中で具体的に大体の大まかな方針は運用計画で決めたと。  では、具体的に何の債券を幾ら買うか、これはだれが決めるんですか。
  81. 團宏明

    政府参考人(團宏明君) お答えいたします。  これは運用計画の中で方針を決めてまいりまして、具体的な運用につきましては運用の担当者がこれを購入していくということになる次第でございます。
  82. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 そうすると、担当者というのは総務大臣の部下になるわけですから、総務大臣が具体的にはお決めになる。だから、大まかなアウトラインだけは審議会におかけになるけれども、具体的にどの銘柄をいつ、どれぐらい買うか、これは総務大臣がお決めになるということですね。  次の質問に移りますが、それではその審議会は何審議会ですか。
  83. 團宏明

    政府参考人(團宏明君) 総務省になりまして、審議会は郵政審議会というのがございます。この郵政審議会は郵政事業全般についての諮問事項について審議するという審議会でございまして、もちろん資金運用のみならず、郵便、貯金、保険、この三事業についての諮問を受ける審議会、そこで御審議をいただくということを考えております。
  84. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 その審議会の委員はだれが任命するんですか。
  85. 團宏明

    政府参考人(團宏明君) 総務大臣が任命いたします。
  86. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 そうすると、総務大臣が任命された郵政審議会で大まかな計画の承認をもらう、それに基づいて総務大臣が具体的にどの銘柄をいつ、幾ら買うかを決める、そういうことですね。  では、その中で株式の購入はどうなりますか。
  87. 足立盛二郎

    政府参考人足立盛二郎君) 株式につきましては、いわゆる郵貯、簡保の本体での運用はできませんので、現在、簡保事業団に対しまして資金を寄託いたしまして、そこで簡保事業団がいわゆる指定単という形で信託銀行に運用を任せるという形で株式を運用しているものでございます。
  88. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 簡保資金はその簡保何とか事業団に預託をする、それは手続ですよね。郵便貯金も同じ手続をとるわけですね。わかりました。  そうすると、どのぐらいの資金を回すかというのは、これは運用計画で大まかに決めて、具体的には総務大臣決定をすると、その手続になるわけですね。
  89. 足立盛二郎

    政府参考人足立盛二郎君) 先ほど貯金局長の方から運用計画全般につきましての手続を御説明したところでありますが、具体的には、簡保事業団に郵貯、簡保から幾らお金を貸し付けるかということにつきましては、先ほど申し上げました郵政審議会に諮るほか、いわゆる長期運用の特例法がございまして、国会にも五年以上のものについてはかけるということになります。  済みません、訂正します。  そういう審議会等に諮りまして簡保事業団に対して貸し付けるわけでありますが、簡保事業団は貸し付けられたお金を信託銀行に対して貸し付けるわけでありますけれども、具体的にどの銘柄を買うかといったことは簡保事業団が指図することではございませんで、あくまで信託銀行がみずからの投資判断に基づきまして具体的な銘柄は決定するということになるわけでございます。
  90. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 国会への報告というのは、これは間違いですか。
  91. 八代英太

    国務大臣八代英太君) 今それぞれ局長がお答えしておるわけでございますが、いずれにしましても審議会へ諮問して運用計画を立てて、そして当該年度の資金配分計画については特別会計の歳入歳出予算に添付いたしまして国会に提出する、こういう形はとるようになっております。
  92. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 それはあくまで参考資料で添付をするということですね。議決を経るわけじゃありませんね。
  93. 八代英太

    国務大臣八代英太君) 基本的にはそういうことです。
  94. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 指定単というのは、わからない人も多分おられると思うんですけれども、これは何かもっともらしいふうに聞こえますが、要するに信託銀行の商品なんでしょう。だから、信託銀行がどういう株式を買うかというのは確かに信託銀行が決めるんでしょうけれども、では、指定単というのは丸投げなんですか。つまり、その中で株式を幾ら買え、債券を幾ら買えという話はなさらないんですか。
  95. 足立盛二郎

    政府参考人足立盛二郎君) 指定単は金銭信託の一種でありまして、私どもの側、すなわち簡保事業団の側からいたしますと、運用資産の種類や割合などは指定いたしますけれども、例えば国債等は上限として一〇〇%以下であるとか、あるいは外国債は何%以下であるとか、そういった大まかな資産の種類の割合などは指定いたしますけれども、個々の銘柄につきましては、これは先ほど申し上げましたとおり信託銀行の判断でございます。
  96. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 いや、銘柄まで申し上げていないんですがね。  そうしますと、その指定単の中で、株式を例えば一〇〇%と言わなくても、半分は株式にしなさいという指定はできるんですね。
  97. 足立盛二郎

    政府参考人足立盛二郎君) 株式の割合につきまして何%にしなさい、上限といたしまして何%にしなさいと言うことはできますし、現在も指定しているところでございます。
  98. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 私は制度として伺っているわけですが、今までのをずっとまとめていきますと、総務大臣が大まかな運用計画をつくる、それを御自分が指名なすった、任命なすった審議会に一応は付する、それで審議会の決定になるんですか、計画がつくられる、その計画に基づいて運用されるわけでありますけれども、その計画の中で指定単という方式による投資割合というのは総務大臣がお決めになる、その指定単の中の例えば株式を何%買いなさいという指示も総務大臣がおやりになる。ならして言えばそういうことですね。
  99. 足立盛二郎

    政府参考人足立盛二郎君) 株式を何%買いなさいというより、先ほど申し上げましたとおり、渡したお金を上限として何%以内ということでありまして、具体的にはその渡されたお金の中で信託銀行がそのときの投資判断によりまして株式を何%買い国債を何%買う、国内債をどうするというのはあくまで信託銀行の判断でございます。
  100. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 指定単でやっているから安全で安定で公平ですというふうな説明に聞こえるものですから。指定単というのは、しかしそれほど大げさなものではないでしょう。信託銀行の金融資産の運用方法の一形態であり、その中で投資者がかなりの範囲で指定できるわけですから、ですから指定単なんだろうと思うんです。  そこで、よく自民党の政調会などから出てくる議論でPKOというのがありますね、私も本当にあるのかないのか知りませんけれども。この前も何か連れ安で株が暴落を始めた、暴落とは言いませんけれども、下落を始めたときに周章ろうばいしてPKOという言葉を思わず口走られた、そういう間近な記憶がございます。  プライス・キーピング・オペレーションというんでしょうけれども、PKOという場合に、だれがどう言っているという話ではなくて、一般的に理解されている範囲で結構なんですけれども、この財源は何だと御理解になっていますか。これはだれの御答弁でも結構です。
  101. 八代英太

    国務大臣八代英太君) 郵貯・簡保資金について申し上げますと、この運用というのは確実で有利な方法で行うことによりまして、郵便貯金事業、簡易保険事業の経営を健全ならしめ、そして預金者、加入者の利益の向上を図ることを目的としておるわけでございますから、ターゲットは別に我々のところであったとは、あのときの発言ではそう思っておりません。簡保事業団の指定単運用もこうした運用の一環として行っておるわけでございますから、その中で信託銀行が行う株式の運用についても株価維持のために行うということは私どもは全く考えておらぬ、これが基本的な考え方です。
  102. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 私は郵政大臣がそういう運用をなさろうと思っているとは全然思っておりませんで、今の郵政大臣なら大丈夫だろうと思っております。  ただ、問題は制度なんですね。つまり、PKOという言葉が不用意に出てくるのは、そういう財源が政府部内にあるよという基本認識から出てくるんですよ。それはやっぱり今の郵貯の自主運用資金五十兆が頭にあるんでしょう。簡保資金の自主運用が頭にあるんでしょう。今、仕組みを明らかにしてもらいましたけれども、指定単という方法を使えば株式は買えるんですよ。郵政大臣が買うとは申し上げていませんよ。買える制度だということなんですね。  そこで、きょうは日銀総裁にお越しいただきまして今の制度論を聞いていただいたわけですが、私どもが今審議しております法律案、これが成立しますと、伊藤委員が先ほど指摘されたようにまさに巨大ファンドが出現するんです。そういう制度ができ上がるわけですね。だから、今それがどういう運用をされるか。それは今の大臣のお考えあるいは今のお役人さんのお考えだけでは決められないわけで、制度として誕生するということをひとつ日銀総裁に御理解いただきたいと思うんです。  私がこういうことを考えておりましたら、ちょうどいい例がアメリカにございまして、クリントン政権で我が国と違って大変な自然増収があったんですね。自然増収があって、その税金の余裕をどう使うかという議論があった、まことにうらやましい、ぜいたくなことでありますが。そこで、クリントンさんは、一九九九年一月の一般教書において、この財政黒字の使い道として、全部じゃなくて一部は減税に回そう、一部は今後原資不足が見込まれている社会保障信託基金、公的年金に充当することを提案された。そして、さらにその中で同基金の収益率を向上させる観点から株式への運用を行うことを提案された。これは一九九九年一月の一般教書です。  日銀総裁、これは御承知でいらっしゃいますか。
  103. 速水優

    参考人速水優君) 浜田委員の今御指摘の、アメリカでグリーンスパン議長がクリントンの提案に対して意見を述べたことは承知いたしております。
  104. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 その一般教書が出ましたら向こうのグリーンスパンさんが大騒ぎをされまして、一九九九年一月二十八日の米国上院予算委員会で証言をしておられます。幾つかあるわけですが、私の関心のあるところだけをちょっと御紹介させていただきます。グリーンスパンさんの証言の中の一部です。  「政府等の提案のように、社会保障信託基金の資金を株式に運用することは、わが国資本市場、ひいては、わが国経済の効率性を危険に晒すことになるだろう。ヘラクレスの努力をもってしても、長期にわたって、社会保障信託基金を政治的圧力──直接的であれ間接的であれ──から隔離することが現実的であるかどうか疑わしい。」、こういう趣旨の証言をしておられます。  さらに、「社会保障信託基金の資金を株式に運用することは、──私は、そのような巨大な資金政府の影響から隔離することは政治的に出来そうにないと考えているので──我々の資本の効率的な配分を損なうことに繋がることになる。」、こういうことを含めた証言をしておられます。  それから、さらに九九年一月二十日の米国下院歳入委員会でも発言をしておられまして、「近年の米国経済の好調が、市場を通ずる資本配分が極めて効率的であることに依拠していることを忘れてはならない。政府による株式運用・資本配分への関与は、マクロ的な効率の低下を招くことで、年金の運用利回り低下という、一見金融・会計上の問題をもたらすだけでなく、実物経済・生活水準へのマイナス要因足り得るのである。」と。  ほかの委員会でもこの種の発言を繰り返しておられまして、その結果、この一般教書で提案されたクリントン提案の自主運用案というのはとりあえずは葬り去られたわけであります。もちろん、もちろんといいますか、クリントン政権はそれでもあきらめておりませんで、二〇〇〇年一月の一般教書にも同様な提案が盛り込まれている。ですから、まだ議論は続いているわけであります。  この米国の例というのは、アメリカがいいからどうかという意味ではありませんが、極めて示唆に富んでいる例であるというふうに私には思えるわけであります。  もう日銀総裁には釈迦に説法でありますけれども、日本経済がこれだけ大きくなってきている、そして日本の金融市場、資本市場の世界経済に及ぼす影響というのもまことに大きなものになっている。金融破綻というのが日本発の世界恐慌につながらないようにというのはまだ忘れもしない言い方でございました。今、我が国はその危機を乗り越えつつあるわけでありますけれども、それぐらい大きな存在であるということは、私は市場関係者は十分に認識をして事に当たっていかなければならないことだろうと思っております。  日本のマーケットについては、長い間、不透明性ということが言われてまいりました。私の外国の友人たちも、日本のマーケットには投資しない、日本の株式相場というのは操られた相場である、管理された相場である、政府が介入しやすい相場である、そういう言い方というのはずっとございました。今でもその指摘は続いているわけであります。  ですから、今回この法律改正によってこういう制度をつくろうということは本当にいいのかということをもっと経済全体、マーケット全体から考えて判断する必要があるというふうに私は思っているわけでありまして、実は宮澤大蔵大臣にもかつてそれについての所見を求めましたけれども、余りはっきりした御意見はちょうだいできなかった。日本のグリーンスパンはだれかということをあえて申し上げるつもりはありませんけれども、やはり日本の金融マーケット、資本市場というものを全体的に見る立場から私は厳しい見方があってしかるべきである、そう思えてならないものですから、きょうはあえて日銀総裁にお出ましをいただいたわけであります。  今回の制度改正、これはこの制度が出現をするということが大きな意味であります。これが今すぐどう使われるか。それは多分大丈夫でしょう、皆良識のある人たちだという前提でありますから。でも、そうでないかもしれない。マーケットにこういうものが出現をする、それがどういう危険性をはらんだことかというのは、このグリーンスパンの言をまつまでもないことであろうと思います。  さらに、外部から日本のマーケットを見た場合に、さらに不信感が強まりますよ。今の自主運用資金だけであっても、すぐ与党の政策担当者はPKOなどと口走るわけでありますから、日本は信用されておりません。さらに信用できない要素をこれだけつけ加えて、これで財投改革でございますと言うのは私はいささかどうかというふうに思うわけであります。  ちょっと申し上げ過ぎましたけれども、速水総裁の率直な御所見を賜りたいと思います。
  105. 速水優

    参考人速水優君) 浜田委員指摘のとおり、アメリカではこのところ財政収支が黒字で推移しておりますので、クリントン政権からは、財政黒字の使途の一つとして、今後、黒字額の一定割合を社会保障信託基金に繰り入れるということ、またその一部を株式市場に運用するといった提案がなされておるわけでございます。  お尋ねのグリーンスパン議長の議会証言はこの問題に関連してなされたものでございます。グリーンスパン議長は私も時折お目にかかってお話を承る機会が多いんですが、私の感じでも議長は徹底した市場主義者でいらっしゃいます。教えられるところの大変多い議長だと思っております。  御指摘のポイントは、社会保障信託基金の資金を株式市場で運用することとした場合に政治的な圧力を回避することが非常に難しくなるんではないかという点が一つと、もう一つは、そうなれば資本市場や経済の効率性がかえって阻害されることになるんではないか、この二つの点を踏まえてこういう御証言をなさったんだと思います。  アメリカでの財政黒字に関連した議論に対しまして私どもの立場からコメントするのは差し控えたいと思いますけれども、市場における相場の形成がその時々の政治的な利害などによって左右されるというふうなことはあってはならないことだと私は思います。市場に対する内外の信認を確保するという点でもその点は重要なポイントであるというふうに私は思っております。
  106. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 日銀総裁、ありがとうございました。総裁としておっしゃれるのはそのぐらいだろうと私も見当をつけておりましたので、大変ありがとうございました。  それでは、最後といいますか、財投改革との関連でもう一つ二つ伺わせていただきたいと思いますが、午前中の質疑の中で、大蔵大臣は余り答えやすそうではなかったんですが、財投機関債についていろいろおっしゃっておられました。  私は、今度の制度改革財投改革なるものを冷静に考えてみたときに、非常に矛盾をはらんだ面があると思うんです。つまり、マーケットで整理をしていこうというのが基本発想だったようですけれども、ではマーケットでやれるものをなぜ政府がやるんだというもっと基本的な問題については実は答えを出していないわけであります。つまり、それが財投機関債でありまして、政府民間の事業にあえて介入して財政資金を使って事業をやらなければいけない、それはマーケットで処理できないからという、だから政策金融であり、国策的事業であるということだろうと私は思うんです。だから、財投機関債が発行できないということは、言ってみれば当たり前なんであって、財投機関債で悠々とやれるのなら、それこそ大喜びで民間に移譲しましょうよということじゃないかと思うんです。  ですから、私は、財投機関債を出して市場とのリンクを持ってきて何だか意味のある改革であるかのように言うのは無理がある、これは真っ当な財投改革議論のやり方ではなかろうという気がするわけですが、お答えをよろしくお願いします。
  107. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 全体のお考えのお立場はよくわかっております。しかし、財投機関というものは政府から出資を仰ぐこともあるし、補助金をもらうこともあります。したがって、そういうものとしては純粋な民間の株式会社ではない、そこが発行する財投機関債というものは純粋の民間会社が発行する社債あるいは債券とは違っておるということは、私も、せっかくおっしゃっていることがわかっているものですから、こんなことを余り言いたくて言うんではないんですけれども、しかしやっぱり民間とは違います。それだけ財投機関債を買う人の立場というのは民間の債券を買う立場とは違います。それだけの違ったところが財投機関にはあるということは申し上げることができると思うんです。
  108. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 これ以上申し上げませんが、私は、資金運用部預託廃止して財源を切り離した、郵便貯金、簡保資金から切り離したというところまでは、そういう方法もあるのかなと。つまり、集まったから使っちゃう、それは確かに問題があるかもしれません。今までの財投の運用というのは、私自身も携わってまいりましたけれども、大蔵省でいえば二階で処理できないのを三階の理財局に上げるというような安易な発想があったことも事実であります。  ですから、財源を切り離すのはいい。だけれども、切り離したから財投改革は終わりですという認識は、私は、もちろん皆さん持っていらっしゃらないと思いますけれども、そこはあくまではっきりさせておく必要がある。私は、自分で提案申し上げて、今行政監視委員会財投機関の総点検というのをやらせていただいております。  これはマーケットの原理から離れて政府がやらなければいけない本当の事業なのかどうか、それは吟味する必要があるわけです。そこから財投改革は入ってほしいというふうに思うんです。本当に政府がやる必要があるのならば財投機関債じゃないですよ、それは。それは財政資金でやるべきであります。だから、方向がよかったように思えて、市場で選択してくださいという言い方、これは基本的な制度的な矛盾をはらんだ方法じゃないか、そこをどうしても言わざるを得ないと思うんです。  それから、私はこれは郵政省にとってもというよりも郵便貯金にとっても幸せなことじゃないと思います。いきさつはいろいろあったでしょう。でも、郵便局長さんが一生懸命郵便貯金を集めて、それを傾斜生産方式を初めとする国策的な事業に注入してきた、それによって日本経済が発展してきた、そういう歴史もあるわけです。やはり財政資金として集めて財政資金として使うところに私は今日的な郵便貯金の意味というのを求めなければならない。零細預金の保護だとおっしゃるけれども、ペイオフを実施したって一千万円まではちゃんと保護されるんですよ。庶民の金融は保護されております。  ですから、私は、それだけでこの何百兆というお金を自主運用にゆだねる理由にはならない、そういう制度はおかしいということをあえて申し上げなければいけない。そのためには、郵便貯金にとっても財政資金として使う道というものをきちんと考えておかなければ私は郵便貯金は立ち枯れになると思います。三百兆を超える資金を本当に一大臣が責任を持って運用できますか、長期間にわたって。制度としておかしいし、現実問題としておかしい、私はそう思わざるを得ないわけであります。  これで質問をやめるつもりでありますけれども、切り離したまではいい、切り離したけれども財政投融資制度というのが国策事業として必要だというふうに考えるのであれば、やはりもう一度翻って、その資金はどこに求めるべきであるか。私は、郵便貯金がある以上、やはり郵便貯金だと思います。だから、集まったから使うということを断ち切るために外したんだけれども、しかし財政投融資制度をこれからもやっていく、吟味しつつやっていくとすれば、その吟味した事業に使うべき財政資金はほかにありますか。これだけ国債を発行しておいて、また国債を発行する。私はこのままでは解決になっていないということを申し上げたい。  郵便貯金を否定するものでもありません。財政投融資を否定するものでもありません。もっとお互いにいい解決方法を探すべきである、私はそうでなければこの改正案というのはまことに中途半端な容認できないものになってしまうということを申し上げて、もし御発言があれば御発言をいただいて、なければこれで終わります。
  109. 八代英太

    国務大臣八代英太君) いろいろといいお話を伺いまして、勉強になりました。  いずれにしましても、私たちは小口個人を対象とした簡易で確実な貯蓄サービスというのが基本の魂でございますから、必ずしも財投資金の調達を目的として制度が設けられるということではなくて、そのようなこともまた考えておりません。  しかし、今度は自主運用ということになりますから、これはいろんな意味で海外からの信用問題もこれあるでしょう。いろいろなことを考えると、それゆえにしっかり審議会で議論をして、国会にも御報告して、ディスクロージャーをして、そして運用計画を立ててというそういう形において、その利用者の皆さん方にも納得がいただけるような、またそれによって地方公共団体も含めて財投がいろんな意味で日本のインフラ整備を含めた発展に寄与することができれば、これはまた預金者の一つの心でもあると、そういう思いでこれから責任を持ってやらなければならない、こういう思いであることを申し添えておきます。
  110. 平田健二

    委員長平田健二君) 午後四時に再開することとし、休憩いたします。    午後一時四十二分休憩      ─────・─────    午後四時開会
  111. 平田健二

    委員長平田健二君) ただいまから財政金融委員会を再開いたします。  資金運用部資金法等の一部を改正する法律案及び郵便貯金法等の一部を改正する法律案の両案を一括して議題とし、休憩前に引き続き、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  112. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 日本共産党の池田幹幸でございます。  資金運用部資金法改正案についての質疑に入る前に、どうしても二点ほど質問しなければならない事態が起こりました。  一つは、午前中もありましたが、昨日の東京高裁で中村被告が当時の宮澤首相から三百万円受け取ったと供述した問題についてであります。午前中の質疑で、宮澤大蔵大臣は、そういう記憶はございません、私の名誉の問題と申して申せないことはありませんけれども、自分の記憶にないことであるし、片っ方は公判廷で述べておられることですから、公判中のことでもあると言って返事をしていると御答弁されました。  事は、この問題は、公正取引委員会に対する、特に独禁法の運営に対する総理の介入という問題にかかわってくるわけです。非常に大きな問題だと思います。特に、最近余り耳にしませんけれども、独禁法は経済の憲法だと言われるぐらい重要な法律です。その運用は非常に大事な問題です。  記憶にないとおっしゃるわけですけれども、国政の根幹にもかかわる重大な問題ですから、記憶にないということでは、国民はそうおっしゃるだけでは納得いかないと思うんです。やっぱりそれに対して真摯にお答えになるべきじゃないか、少なくとも何らかの事実調査をお約束されるべきじゃないか、記憶を喚起するに足る調査をするぐらいのお約束はなさるべきじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。
  113. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 独禁法の問題はございまして、それは独禁法の罰則が我が国で甘過ぎるということがかねてアメリカから指摘されておりまして、そのことが日米間の懸案であったわけです。この点についてはいろいろ外交交渉もございましたが、私としても総理大臣として関心を持たざるを得ませんで、また公取委員長からも報告を受けております。この点につきましては私は関心を持っておりました。  私が事実上知りませんでしたのは、それと全く無関係な出来事でございましたけれども、たしか埼玉県だったと思うんですが、そこの土建業界が、複数か、複数だと思います、何か談合をしたという出来事がありまして、これは何と申しますか、国家の大事というようなことではもちろんございませんでしたが、それについて公取委員会が告発をする、しないという問題があったということを私は事実上後に知るわけですけれども、そのことについては私のところに報告もなかったし、また現実にはそれは公取委員長の権限の問題であって総理大臣が口を入れる話ではありませんので、その点については私は事実上存じませんでした、そういうことがあったということを後に知りましたけれども。そういうことでございますので、今さら別に調べるという問題はございません。
  114. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 独禁法のことについては鮮明に御記憶だということなんですが、当時アメリカの要求は、もっと独禁法の運用を強化しろという要求だったわけですね。今この問題で起こっておる疑惑は、埼玉の土曜会という談合に公取委員長が告発するのをやめさせるというか、手心を加えようというようなことを総理がやったんじゃないかという疑惑なんです。この点でいえば、むしろ諸外国から日本は独禁法に関して総理が手心を加えるようなことをやる国かという疑惑を持たれかねない、そういった重大な問題でもあるわけです。  ともかく私の聞きたいのは、中村被告の供述は極めて具体的なんです。紙袋に入っていたとか、場所についても総理執務室だったとか、それから三百万円だったとかという形で非常に具体的です。私たちが思うのは、三百万円というのは極めて大金です。こういった問題について記憶がないで片づけられては、これは国民は何としても納得できません。  今、改めて調査することはしないとおっしゃいましたけれども、記憶にないわけですから、それを喚起するに足る調査は十分できると思うんです。特に当時総理大臣でおられたわけですから、事細かな記録が残っているはずですし、そういう努力はなさるべきじゃありませんか。
  115. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 今、談合の疑惑について、私が公取委員長に何か言ったという、そういう疑惑があるとおっしゃいましたが、そんな疑惑はありません。当時から伝えられたこともない、きょうもない、あなたが勝手におっしゃっているので、それは間違いです。お取り消しを本当はいただきたい。
  116. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 報道によるとということを抜きましたので、それについては訂正したいと思いますが、きょうの報道では一斉にそういう疑惑があるんだという形で報道されているし、そういう点でいえば、こういう報道がなされれば諸外国からそういう疑惑が持たれるじゃありませんか。当然でしょう。  要するに、大臣は別途また私の名誉の問題だとおっしゃっている。そのとおりだと思うんです。名誉回復の問題というのは非常に大切な問題ですけれども、それをどういう形で回復するかというのは個人の問題だと思います。しかし、この問題は個人の問題で片づけられる問題ではなしに、国会議員としてもこの疑惑を解明することが義務づけられているんだということを私は申し上げたいんです。  一九八五年に国会議員で決めた政治倫理綱領があります。その政治倫理綱領の五つのうちの四番目にこう書いてあります。「われわれは、政治倫理に反する事実があるとの疑惑をもたれた場合にはみずから真摯な態度をもつて疑惑を解明し、その責任を明らかにするよう努めなければならない。」という形で言われておるわけです。  これは一議員だけでなしに、総理大臣をなさっていた当時のことでもあります。国会議員としても、当時の総理としても真摯な態度で疑惑を解明し、その事実を国民の前に明らかにする義務があると私は思うんですが、いかがですか。
  117. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) どこにそういう報道があるか読んでみてください。
  118. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 きょうの報道です。これは一々私が読む必要はないと思いますけれども、「ゼネコン汚職で、埼玉土曜会の談合告発を見送るよう公正取引委員会への働き掛けを鹿島側から依頼され、わいろを受け取ったとして、あっせん収賄罪に問われ」ている云々かんぬんの中村被告が弁護団の被告人質問で、「(当時の)宮沢喜一首相から官邸に呼ばれ、現金三百万円が入った紙袋を受け取った。独禁法の罰金引き上げへの協力依頼などの意味だと思った」と、こういうふうに発言したというふうに報道されております。これは高裁での被告の発言です。
  119. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 独禁法の関係だということをおっしゃっていますか。
  120. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 独禁法の関係じゃないですか、これは。ゼネコン疑惑ですよ。
  121. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 違いますよ。罰則ですよ。
  122. 平田健二

    委員長平田健二君) 委員長の指名を受けてから発言してください。
  123. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 いや、これはまさに独禁法の関係じゃないですか。土曜会の談合、これに対して手心を加える云々の問題があったと。まさに独禁法の運用問題ですよ。
  124. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ですから、談合の話ではないんで、独禁法の話というのは罰則をどうするかという話です。  私は赤旗以外の新聞は大抵読んでいますから。そういう報道は読んでいません。
  125. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 私が読み上げたのは東京新聞です、けさの。  それで、今おっしゃったのは、独禁法の問題について鮮明に記憶があるというのは日米の問題だとおっしゃった。談合のことについては知らなかったとおっしゃったんです。しかし、この問題は日米間の協議の問題ではなしに、談合をめぐる問題で起きている事件なんです。そのときに金を受け取ったというふうに中村被告が言っていることなんですよ。  そういう論議があった中で、片一方では独禁法の運用をねじ曲げるような総理の介入があったとしたらとんでもないことじゃありませんか。国内問題にしても大変だし、海外から見ても日本はそんな国かと思われても仕方ないじゃありませんか。これがもし事実であるとすれば大変なことですよ。そういう疑惑が起きているわけです。倫理綱領でもやろうと我々自身が決めたことです。  とするならば、私には記憶がないんだから調査はしないという態度は私はいかがなものかというふうに思います。また、公判中だということもおっしゃったけれども、これは中村被告自身が言っていることなんですから、今、当時のことについて調査をし、宮澤大蔵大臣がこれを国民の前に報告したとしても、何ら裁判に影響を与えるということにはならないんじゃないかと私は思うんです。  そういった点でも、申し上げたように、個人の名誉という問題であれ、政治倫理綱領の問題であれ、そしてまた公判中ということの問題であれ、いずれをとってみても何も調査しないというのは私は納得がいかない。何としてもこれは国民の前に明らかにする義務があると私は思います。そのことを申し上げておきたいと思うんです、これ以上あれしてももう同じ御答弁でしょうから。  御答弁なさいますか。
  126. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) もう一遍申し上げておきますけれども、当時ありました独禁法問題、公取委員長が私に相談をしてきた問題は、独禁法の罰則を強化する、しないという日米間の我が国法律の改正の問題であったわけであります。そのことには私は当然関心を持ちましたから、公取委員長にも意見を申しました。  他方で、何か埼玉県における談合の問題というのは、私にはだれももとより報告をしていませんし、それは公取委員長が自分の権限で解決をすべき問題であって、私は、何もそれは調査をするもしないも、総理大臣としては当然公取委員長処理をすべき問題だと思いましたから、何も指示もしませんし、公取委員長については何も話しておりません。それは公取委員長が公判で述べておると承知をしております。ですから、私は何もそこで調べる問題はない。
  127. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 記憶にないとおっしゃったのは、金を渡したかどうかは記憶にないと、こういうことですね。それで、そのことについて中村被告はこう言っているが、当時の談合については知らなかったんだから、知らない以上は記憶にないと、このことをおっしゃりたいんだと思うんですね。しかし、現実の問題として、この被告たる中村氏本人がこういう証言をしたということで報道されている中で、そういう態度をおとり続けになるのは私は正しくないというふうに思うんです。  やっぱりこの問題は非常に重大な問題です。私は国政の基本にかかわる問題だと認識しています。そういった点で、私たちはしかるべき場所で集中審議等を行っていくよう要求していく考えでおります。そのことを申し上げて、次の問題に移りたいと思います。  もう一つは、先週、読売新聞で報道されました消費税問題です。  これは、読売新聞では、政府税調が六月末をめどに消費税の複数税率ですか、そういったものを検討しておると。少子高齢化の進展に伴う社会保障費の増大に対応するためということで、将来の消費税の引き上げの必要性に言及しているというふうに報道されております。非常に重大な問題なんですが、これは一社のスクープかもしれません。  大蔵大臣に伺いたいんですが、大蔵省ではこういった方向で消費税増税を検討しているんでしょうか。
  128. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) そのことにつきまして私の承知しておる限りでは、今の税調の委員の方々がそろそろ任期満了されますので、毎回の前例によって今の委員の方々で税務問題全体についての中期答申の取りまとめというのを先般からやっていらっしゃると聞いております。  それは中期答申でございますので、すぐに何をせよということよりは、今の税制全体の中で所得課税あるいは消費課税、資産課税等々、どういうふうにあるべきかという問題をやや中期的な観点から取り上げられるのが例でございますので、恐らくそういう作業をしておられる、税制全般についての議論を続けてやっておられる、そういう段階と承知しております。また、そういう性格の答申が検討されつつあるということでありますので、したがって消費税について全く議論がないということは恐らくないはずで、当然、消費税についても、所得課税、資産課税同様に御議論があるんだろうと思っています。  この間報道されました印象は、何か消費税の税率を二けたにでもした場合には、一本の税率では無理であるし非課税品目も考えなければならないとかいう、そういうよく言われる種類の問題をあたかもすぐ来年でもという問題として取り上げているような報道でございましたけれども、実際にはそういう目先の問題であるよりは、やや中長期的に所得課税、資産課税、消費課税というものはいかにあるべきかという、そういう考え方をまとめようとしておられたものと、私はそのように理解をしております。
  129. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 私は、これを読んだときに大変だなと思いましたのは、実は昨年十月、自自公三党で三党連立政権合意書というのを取り交わされました。その中に、大蔵大臣も覚えておられると思うんですが、消費税の福祉目的税化を進めるという項目がありました。そこではこう言っています。「基礎的社会保障の財政基盤を強化するとともに、負担の公平化を図るため、消費税を福祉目的税に改め、その金額を基礎年金・高齢者医療・介護を始めとする社会保障経費の財源に充てる。」、そういう合意がなされております。  昨年十月になされた合意があるわけですから、政府税調のこの討議もまさに与党の中で計画されておるそれを実現する方向検討しているんじゃないかと私は考えたわけですが、それは根拠のないことではないと思うんですよ。この三党合意でやられて、やろうとしておられるわけですから、それとの関連は否定できないじゃないですか。
  130. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 同じ税のことでありますし、また福祉政策というのは非常に大きな歳入が必要でございますから、両方のことが全く無関係であればむしろ不思議かもしれません。ただ、現実にそういう二つの問題との関連において消費税のこれからを議論している、そういうことではないように私は理解をいたしております。  したがって、池田委員の言うことは、いずれにしてもそれは大きな歳出と大きな歳入との関連でございますから、全く関連がないということを私は申しているのではありませんが、当面、何か関連づけて議論されているということではないように承知しております。
  131. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 報道では、この同じ報道の中でいろいろあるものですから。例えば加藤寛税調会長が質問されて答えておるんですけれども、経済の自律的回復が軌道に乗った時点でということを言っているということも同時に報道されておるんですね。そうしますと、いつまでも経済の自律的回復はないというふうなことはだれも考えていないでしょうし、できるだけ早くということも考えているわけですから、そうするとこれは近い将来のことだというふうに当然考えざるを得ない面というのはあるんですね。  昨日の本会議で、堺屋経企庁長官は、景気は緩やかな改善を続けているとか、景気がよくなると信じているというふうにおっしゃっているんですけれども、完全失業率が四・九%という最悪の状態が続いているし、同じように総務庁が九日に発表した九九年度全世帯家計調査を見ますと、消費支出は四年連続で減少したというふうになっております。これは経企庁長官の判断とは大きくかけ離れているというふうに思うんです。また一方、総理府が先月の二十九日に発表した国民生活に関する世論調査を見ますと、日常生活の中で悩みや不安を感じている人が六二・四%にふえた、これはもう一九五八年の調査開始以来最悪だというふうに伝えられております。  そういった中で消費税を増税したらどうなるのか。これはもう一九九七年の教訓で明らかです。私は、今の時点は、このような消費税の増税といったことを考えるどころか、今の実態を見れば消費税の減税を、私たちはこの国会にまた三%に戻せという法案を提出しておりますけれども、そういったことこそ検討しなければならない時期じゃないかというふうに考えるわけですが、見解を伺いたいと思います。
  132. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 今の経済状況は、やはり一番問題は雇用と消費でございますから、例えば目先の問題として来年に消費税の増税を考えるかと、そういうお尋ねであれば、もうそんなことは全く考えておりません、減税も考えておりませんけれども。
  133. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 一つ紹介しておきたいんですけれども、これは全国商工団体連合会がまとめたアンケート調査なんです。全国商工団体連合会というのは全国の中小企業三十五万人が加盟しておる中小企業団体なんですが、中小零細企業団体といいましょうか、そこで九七年五月から五回にわたって営業動向調査をやっております。大体同じ対象の人を千百人ほど抽出してやっているわけですけれども、この五回目に当たります今回は四月上旬に行ったものであります。  これによりますと、売り上げが下げどまりを示したという特徴もあります。下げどまった、売り上げがどんどん下がっていくのがとまったと、これはあるんですが、経営は依然として厳しいという状況にあります。中小業者の営業と暮らしの改善に何が必要かという質問が五回ずっと続けてあるんですけれども、それを見ますと、増税の中止、消費税廃止の要求が毎回七割近い高率で断然トップをずっと占めてきたんですが、今回は、消費税五%への対応では、転嫁できない、三%も非転嫁を合わせますと三五・九%という数字が出ていますし、特に料理飲食業では六一・八%が転嫁できないというふうに言っているんですね。三千万円以上だと身銭を切って消費税を払うと。これは笑えない話なんですけれども、消費税を払うために商工ローンから借金したというふうな中小業者もあるんです。  こういった実態を考えますと、私はやはり消費税の減税が今非常に強く求められているんだということを改めて申し上げておきたいと思います。  さて、本題に入ります。  資金運用部資金法の改正案ですけれども、まず最も基本的な問題なんですが、資金運用部を廃止するというのは、これは行革だ何だと言われておるわけですけれども、行革だということではなしに、その理由、なぜ廃止するんだという理由について改めて伺いたいと思います。
  134. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) まさに行革の答申に基づいているわけですが、片方で郵貯あるいは年金の預託という制度そのものがもう今の世の中に適していないのではないかというお考えだと思います。  他方で、そういう金があるものですから資金運用部が財投機関というものを面倒を見ている、金があるものですからどうしてもそういう財投機関というものは経営がルーズになりやすいということは事実である。したがって、この制度を廃止することによって、郵貯あるいは年金、簡保等はそういう政府機関預託という方法をとらずにいわば自己運営をすべきものであるし、また財投機関は、多少の猶予期間はいろいろありますけれども、本来は自分で金を調達する努力をすることによって市場経済により受け入れやすいようなものになるべきである、そういう思想が基本だと思います。
  135. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 入り口で資金がどんどん入ってくる、受動的といいますか、そういった資金が膨れ上がる、だから財投機関に回すのももうどんどん肥大化していくんだと、こういうことのようです。  しかし、そういった論理は検証されたものではないと思うんです。金がたくさんあるからいいかげんに使うということなわけですけれども、例えば毎年の郵便貯金の伸びと一般財投の規模を比較してみますと、そこにはそういった因果関係は認められないと思います。  例えば、これは大蔵省にも調べていただいたんですけれども、九一年度に郵貯は前年比で十倍以上ふえています。物すごいふえ方をしています。ところが、そのとき、九一年度の一般財投の伸びは五・四%でした。他方、最近ですけれども、九九年度、今度は逆に郵貯が前年比三六%減りました。減少しました。これに対して一般財投は七・三%増加しています。これは一番特徴的なところですけれども、ずっとこれを八九年から出してみたんですが、全然そういった因果関係は見られません。  ですから、おっしゃったことについては、俗論といいますか、何となしにそうかなという気はするけれども、これは何も検証されたものではないと思うんです。御感想を伺いたいんですが。
  136. 林芳正

    政務次官林芳正君) 今、委員が御指摘になったように、数字はうちで調べてお差し上げしたものですから委員がおっしゃるとおりでございますが、その年に入ってくるものとその年に出ていくものというその真ん中にお財布というか資金運用部がございまして、そういう意味では、出入りのフローだけをとらえるということではなくて、むだになるということではなくて、どれぐらい資金が要るから、ではこれぐらい調達しようという仕組みになっておらないで、全額預託の義務があるので、それは一応お財布には全部入ってくるという意味で申し上げておるわけでございまして、じゃぶじゃぶと入ってくるから何となくルーズに使っているという意味ではなくて、まず入り用のお金があって、それを前提に調達してくるという仕組みになっておらなかったというのが考え方の基本であるというふうに考えております。
  137. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 そこで、一つ確認しておいていただきたいのは、私が今申し上げたのは、資金運用審議会懇談会で「財政投融資の抜本的改革について」というのを取りまとめておられるんですけれども、そこでもはっきり書いているんです。財政投融資の規模の肥大化については、「各年度の財政投融資計画の出口の伸びと郵便貯金等の原資の伸びとの間には、必ずしも直接の関係はなかったことは跡付けられている」というふうに明確に言っておるということについては確認しておきたいと思うんです。だから、どうも金があるから使う、なければ使わないじゃないかというと何か説得力があるように聞こえるんですけれども、これは余りにも乱暴だということを申し上げたいと思うんです。  要は、財投がむだ遣いなり極めて問題の多い財投機関を含めて金の使い方をしているんだ、問題があるんだということについてはそのとおりだと思うんですけれども、しかしそれは予算編成時の審査の問題だと思うんです。政策的な優先度に応じて厳しく審査する、それで資金を必要に応じて配分するということがきちんとなされておれば問題がないわけですが、この点では一般会計であろうと特別会計であろうと財投であろうと同じだと思うんです。問題は、こういうことをしてこなかった政府に問題があるんじゃないですか。
  138. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 金がたっぷりあるのでむだ遣いする、そんな話はあっていい話じゃない、制度を改めるよりそういうむだ遣いを許したことに間違いがあるじゃないかと、その理屈には抗弁する方法はありません。そのとおりと思います。
  139. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 私は、お金の使い方がこういうような形になったその最大の原因は、景気対策のために財投を安易に活用してきたことに一番大きな原因があるんじゃないかというふうに考えております。  大蔵省が本法案説明のために提出された「財政投融資制度の改革について」という資料をいただいておるんですけれども、その中に「財政投融資計画の推移」というのがあります。これを見ますと、九二年以来、一般財政投融資は急増しております。九二年といいますと、宮澤大蔵大臣総理のときに初めて、九〇年代不況の第一回目の緊急経済対策でしたか、総合経済対策でしたか、それを組まれた年です。その九二年以来、九次にわたって緊急経済対策、総合経済対策という名前でいろいろやられたんですけれども、公共事業がどんどん積み増された、そのことがこのいただいた資料でくっきり出ているんです、当初予算でも。そして、当初予算でもふやし、かつまた補正を組んでさらにふやしたという形で、緊急経済対策をやっていますからそうなっているわけですけれども、そういうことがくっきりと出ております。  ここが最大の原因だったということについて反省する必要があるんじゃないかというふうに思うんですが、いかがでしょうか。
  140. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 一言でむだ遣いとおっしゃること、そのとおりだと申し上げているのではありませんけれども、いわゆるバブルがはじけましたとき、財政を挙げてこれに対応する、その中にはもとより財投も入っておりますが、すべてを挙げてこれに対応したということは事実でありますが、そういう政府の経済政策が思ったとおりすぐに効果を発揮しなかった。のみならず、ごらんになりようによっては幾つかの弊害も生んだということ、私は全部それは間違っておるとは決して申し上げるつもりはありませんけれども、ただ一般会計も財投も総力を挙げて不況に対応しようとしたということは、これは事実でございます。
  141. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 結局、こういった景気対策の利用に加えて、また一般会計のツケ回し、国鉄とか国有林野とか、こういったこともありました。こんなことをやめる、きちっと審査をして、検査をしてやめさせるということがない限り、つまり出口でのきちっとしたチェック、こういうことをやらない限り、今度の法改正をしても、入り口のところで絞ったとしても、また財投債を発行すればいいわけですから、そういう点では同じことになるんじゃないか。改正案によっても、この肥大化ということは今のままでは防げないんじゃないか。そこに対する対策が今非常に大事なんだというふうに思うんですが、いかがでしょうか。
  142. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 私の心配しておりますことは、財投機関債を出すということは御承知のとおりでございまして、それをまずやろうということでございますけれども、特殊法人によっては、市場と話し合いがついて、いわばクレジットスタンディングももらって出せるところもあると思いますが、初めてのことであるせいもあるかもしれませんけれども、財投機関債というのはそうおいそれと市場で引き受けてくれないという状況がかなりあるんではないだろうか。さりとて、こういう資金運用部というものがなくなりますので、財投債が幾らでも出せるわけでもない。さあそこでどうするかという、実際かなり厳しい状況特殊法人のかなりの数に生まれるのではないか、そういうことを心配しておるぐらいでございますので、そこから来る合理化への刺激、合理化への効果というのはかなり期待できる。期待できるばかりでなく、それならさあどうやってその上で財源をつけるかということにいろいろ心配が出てくるかもしれないというぐあいに今私としては思っております。
  143. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 財投機関債のことをおっしゃったわけですけれども、財投機関債がほとんど出せないだろうという意味で、そういう心配というよりも、現実の問題として起きていると思うんです。大体、財投債にシフトしていくだろうと。財投債にシフトしても、今度は郵貯もなければ、要するに自主運用になっちゃったからと、いろいろな御説明があったんですけれども。  順次伺っていきたいんですが、この財投機関債について宮澤大蔵大臣衆議院でもるる御答弁なさっております。ここで言っておられることは、どの財投機関もすべて一律に財投機関債の発行を検討させると、すべてに。そして、まず市場評価、洗礼を受けさせるんだと。そして、市場評価にさらさせてやるということを何度も御答弁なさっているんです。  この市場評価にさらすという場合、一体その市場は何を評価できるのか。その事業体がもうけを上げることができるのかどうか、投資していいのかどうか、そういうことを評価できるだけじゃないのか。そうですよね。本当にこの財投機関が国民にとってどれだけ必要なものなのかどうか、そういったことについては一切評価できないはずです。  もう最初から特殊法人をつくった時点で、これはもうけのためにやっているんじゃないんだということがはっきりしている特殊法人財投機関を含めて、一斉に市場評価にさらすというのは何の必要性がそこにあるんでしょうか。
  144. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それはいわゆるスタンダード・アンド・プアーズとかムーディーズとかがやる仕事でございますので、私は詳しいことがわかるわけじゃありませんが、少なくとも評価する側から言いますと、そのやっている事業の採算性、将来性、及びもう一つ政府とどのぐらいの関係にあるか。つまり、補助金というものをもらったりもいたします。そういうことがございますから、全くの市中企業と違いまして、政府との関連というものも恐らく評価する側からはいろいろに見るのではないか。私は知りませんけれども、普通に評価というものを考えると、多分そういうことであろうかなと思います。
  145. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 市場評価ということで財投機関債評価されて、財投機関債はこの事業体はとても出せないというふうに判断されると、その時点からゼロベースで考え直して、その財投機関が本当に必要な機関なのかどうかというところからもう一回やり直すんだ、こういう答弁もありました。  しかし、それはおかしいのじゃないかと思うんですね。財投機関というのは政策実施機関なんです。そうしますと、政策の必要性、優先度、これは市場には評価できないことですよね。政府自身が、国が政策観点から決めるべきもので、何でそういうものを最初に金目ではかるということをまずやらなければいけないのか。
  146. 林芳正

    政務次官林芳正君) ちょっと言葉の問題かもしれませんが、まず最初にやるのは、これは大臣から何度も御答弁を衆議院の方でもいただいておることだと思いますが、認可法人も含めて特殊法人等については、その財投機関債の発行により自己調達をするため最大限の努力をして検討してもらうということになっております。  この努力、検討というのはその機関がやるわけでございます。そのときにはまだ市場評価というのはもちろん、その内部の検討でどういう評価を受けるだろうかという検討はされるでしょうけれども、実際に市場評価にさらすというわけではないわけでございます。その次に、今、委員がまさに御指摘になられましたように、どうもこれは難しそうだということになった場合に、民業補完のために必要なのか、また政策コスト分析、償還確実性等を精査しまして、ゼロベースでということになるわけでございまして、まずそこで政策として本当に必要かという判断を行うことになるという順番になろうかというふうに考えるわけでございます。
  147. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 しかし、先ほどの大蔵大臣の御答弁では、何か格付会社がやることだというふうな話がありましたでしょう。
  148. 林芳正

    政務次官林芳正君) それはその後です。
  149. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 だから、既にもう一回掘り出すということじゃないですか。まず自分たちで検討して、財投機関債を出したってだめだよと思えば、これはやめて、はい、財投債お願いしますと、こういうのはだめなんだというふうに何度も大蔵大臣も答えておられたと思うんですよ。そういうことでしょう。最初からまずやらせるんじゃないですか。
  150. 林芳正

    政務次官林芳正君) 今、大臣が御答弁になりましたように、財投機関債の発行に当たっては、各財投機関からいろいろ聞いたところによりますと、格付の取得など投資家に適切な投資判断材料を提供することがその円滑な発行を行っていく上で重要であるというふうにヒアリングの結果も出ておるわけでございますから、発行に当たってそういう検討をもちろんするわけでございますが、その検討というのは、市場評価先生がおっしゃったものですから、実際に全部出してみてだめだったら引っ込むということではなくて、検討するときにもちろんそういうことも判断の材料になるという趣旨で御理解いただければと思います。
  151. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 そうだと思うんですよね。実際にもう頭からこんなのはだれが見てもできないというのがわかっているところがそれをやるはずがないし、衆議院の論議を聞いても、財投機関債だけでやれるなんてことを答えた財投機関一つもないし、当然だと思うんです。  確認しておきたいんですけれども、ではまず市場評価にさらす、まず財投機関債検討をしてもらうというのは、格付会社に頼んで格付してもらって市場にまず財投機関債を送り出そう、オファーする、こういうことをやらぬでもいいんだと。検討して、もうとてもだめということになれば財投債で面倒を見ると、そういうことなんですね。
  152. 林芳正

    政務次官林芳正君) 簡単に言ってしまえばそういうことになるわけでございますが、まさにそこの最大限の努力、検討というところがみそでございまして、それが原則であると。  法律論で例え話をするのもなんでございましょうが、挙証責任がその機関の方にあって、財投機関債は無理だけれどもこれはどうしても要ることだというのをみずから財投機関がちゃんと説明をして、先ほど三つ条件を挙げましたけれども、そういうことをやった上できちっとして財投債の中へ入ってくるというのを認めるというのが今回の改革の趣旨であるということでございます。
  153. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 今おっしゃったのは、財投機関債を出すときにいろいろ考えて、政府保証債も考えてもらって、それでもだめなら財投債と、こういう順序になるというふうに理解していいんですか。
  154. 林芳正

    政務次官林芳正君) いや、政府保証については今ちょっと申し上げるつもりはなかったんですが、財投債の枠組みに入ってくるときはきちっとそういう精査をした上で、これは必要であり、政策コスト分析上も問題がなくて、償還確実性もあるということ等を精査して、それならばということで例外的に財投債の枠組みに入ってくることを認めるということを申し上げたわけでございます。
  155. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 いろいろ衆議院の論議も読ませていただいておるんですけれども、あちらで大野政務次官は、結局、これは市場評価云々ということで論議がある中で、仕事の方のチェックを怠っていたということは言えるかもしれないということで反省しておられるわけですよ。こういうことになったというのは財投機関仕事についてチェックを怠ってきたと。チェックを怠ってきたというのは、これは財投機関自身がやることではなしに、政府が怠ってきたという意味ですよね。  これは大野さんの答弁なんですが、改めて政府側の姿勢として確認しておきたいんですけれども、政府がそのチェックを怠ってきたということだと思うんですが、そういうふうに理解していいですね。
  156. 林芳正

    政務次官林芳正君) 今、手元に大野次官の答弁がございませんので後ほどきちっと整理をいたしますが、多分おっしゃっているような趣旨で答弁があったと思いますし、それから政府の方といいますか、それぞれ特殊法人は所管の官庁というのがございますから、一義的にはそこということでございましょうけれども、その中でやはり機関の方ももしそういうことがあったとすれば責任が全くなかったというわけではなくて、双方いろいろな甘えというべきものがあったのかもしれないと、そういう御趣旨ではないかと今お聞きして思っておりました。
  157. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 そうだと思うんですね。  それで、ちょっと時間が短くなってしまったんですが、そういうこともあって、反省もあり、政策コスト分析をやっていますということで話が進んでいっているわけなんですけれども、この政策コスト分析なんですが、それをやって市場評価にゆだねることになるんだということも説明としてありました。  そうすると、政策コスト分析をやり、市場評価を受けるに当たって格付会社に格付を依頼する、その際の条件なんですけれども、これはどの程度ディスクローズされているかということが非常に問題になると思うんですね。補給金は幾ら、補助金は幾ら、この程度は当然わかっているでしょうけれども、今後、政策的に今までと同じように金がつぎ込まれるということの保証は何もないので、今後、政策的にこういうところには補助金を厚くしますよとか薄くしますよとか、そういったものが当然入って初めて格付会社の格付というのはなされるんだろうと思うんですね。  そういったところまでディスクローズするということについてはこの法律では何もないんですけれども、その辺はどうなるのか、お答え願いたいと思います。
  158. 林芳正

    政務次官林芳正君) 大変大事なポイントだと思っておりますが、まさに委員が御指摘になったように、この格付機関がいろいろ判断するときの条件、またディスクロージャーについては一層徹底していくということが今回いろんな説明資料にも出ております。  そこで、いろんな格付機関がやることについては、我々からこうしろああしろと言う立場ではないので、これは格付機関からいろんなところでヒアリングをしたときに格付機関がおっしゃっていたことでございますが、一般的なディスクロージャーされている資料をもとに具体的な格付を行うわけでございます。債券発行者、これは財投機関債の場合は財投機関でございますけれども、ヒアリングも併用して、まさに委員がおっしゃったように、中央政府との関係、具体的には政府から与えられた支援の内容、それから設立目的、例えば設立根拠法の内容ですとか、それから業務に関する規制、その他事業、財務及び資産の詳しい内容、これは一般の会社も一緒だと思いますけれども、等の点も格付に際し考慮をするというふうに聞いておるところでございます。  したがって、例えば補助金が出ておる場合に、多ければ格付がいいのかとか、逆にたくさんもらっているから弱いのではないかとか、これは両方いろいろなことがあるわけでございまして、単純にたくさんもらっているからいいんだということにはなりません。そういう意味では、そういういろんなことを判断して格付機関が格付を行っていくということになるのではないかなというふうに考えております。
  159. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 時間がもうなくなってきましたので、一つの提起だけしておきたいと思うんです。  補助金とか補給金をそういう形で今おっしゃったように明らかにして、これからの政策も明らかにして、格付もちゃんとできたと仮定します。そのときになって、そういうことをしたから市場評価もちゃんと出してもらったとするけれども、しかしそこで評価されるのは結局営利事業たり得るかどうかということの評価、出資しても大丈夫かどうかということの評価であって、先ほど申しましたように、国民にとってこれが有用な機関なのかどうかということの評価がなされるわけではないわけですね。たとえ、これはもう完全に償還できるぞという判断があったとしても、あるいはこれはもうとてもじゃないけれども償還できないなという判断が下されたとしても、その後者の方が国民にとって必要ないような機関だというふうなことではないわけです。  そういった評価をするのは国民なわけです。つまり国会ですね。ディスクロージャーを徹底させて、政策判断ができるような資料を国会に出す、出させる、こういう仕組みをつくることが今ずっと討議してきたその結びになるんじゃないかと思うんですけれども、今までのやり方をやるとするとそういった保証はないですよね、今度の法改正でも。そこのところに十分な手を入れなければならないんじゃないかというふうに考えております。  時間になったんですけれども、御答弁があればお願いしたいと思います。
  160. 林芳正

    政務次官林芳正君) ディスクロージャーについては一層徹底をしていくということをやってまいりたいと思います。  それから、一点だけ、ちょっと理屈を申し上げるようでございますが、委員もおっしゃったように、償還の確実性ということでございまして、会社に例えますとこれは株式ではなくて社債ということでございますから、あらかじめ決まった利率を乗せて確実に償還してもらえるかというのをマーケットは見るということでございまして、株のように利益が上がったからどんどん上がっていって配当やキャピタルゲインがあるというところとはちょっと違う、委員も御承知の上でお聞きになっているんだと思いますが、そこだけつけ加えさせていただきます。
  161. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 終わります。
  162. 三重野栄子

    三重野栄子君 社民党の三重野栄子でございます。  二法案に関連して質問をいたします。  なお、その前に一言申し上げさせていただきたいと思います。  前回、五月九日の本委員会におきまして、宮本委員質問に対する郵政大臣の御答弁の中で、一部私がお取り消しをお願いいたしましたところ、本委員会早々に取り消しをいただきまして、敬意を表します。  それでは質問させていただきますが、まず大蔵大臣にお願いいたします。  財政投融資が肥大化に至りました要因につきまして伺いたいのでございますけれども、財政投融資の残高が平成十年度に四百兆円を超えるなど、まさに肥大化をしておる。そういう財政投融資が肥大化に至った要因として、一般会計で賄い切れない財政需要を財政投融資が肩がわりしてきたためという主張を展開する学者も少なくないようでございますが、特に高度経済成長から安定成長、低成長に移行し、税収が伸び悩む中、そうした傾向は顕著になったという指摘が多く見受けられるわけでございます。  こうした点も含めまして大蔵大臣はどのような御見解か、お伺いしたいと思います。
  163. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) その見方は事実、真実に遠からざる御見解ではないかと、残念ですがそう思います。
  164. 三重野栄子

    三重野栄子君 もう少し一端を伺いたかったのでございますけれども、それでは次の問題につきまして政務次官にお尋ねしたいと思います。  今回の改革財政投融資のスリム化を目指すものと理解しておりますが、例えば平成九年十一月に自民党の行革推進本部が出しました「財政投融資の改革について」の中では、財政投融資の規模について、十年後に半減することが明記されているのでございますが、財政投融資の規模は将来どの程度まで縮小できるのでしょうか、その点についてお伺いいたします。
  165. 林芳正

    政務次官林芳正君) お答え申し上げます。  今、委員が御引用なさっていただきました自民党の方の推進本部に私も末席でいろいろとやっておったものですから、そのときのことを今思い出しておったわけでございますが、そこに書きましたのは、この改革を行わなかった場合に比べて半減することを目指してスリム化をする、たしかこういう文章だったと思うわけでございます。  こういうことをやらないと、我々のその当時の問題意識としては、どんどんますます肥大化するだろう、私を見ていただければわかるわけでございますが、どんどん太っちゃうわけでございまして、何か改革をしなきゃいかぬというようなことでございまして、そういう意味では、そのときは、そういう大きくなる、そこから半分というような目標みたいなものを、心意気みたいなものを書いてあったのかな、こういうふうに思います。  今回はそういうことで、先ほど来ずっと御議論がありますように、預託義務廃止したりいろんなことをやりまして効率化をやる、それから出口の方も政策コスト分析等をやりまして見直しをしていくということであります。それから、一般財投につきましては、先ほど来議論がありまして、ふえたり減ったりはございますけれども、この改革があるということも視野に入れまして、重点化、効率化ということをもう既に進めておりまして、一般財投平成十二年度の計画におきましては既にマイナス四・八%になっております。それから、自主運用分を含めました全体では既に一七・四%減ということで、これを視野に入れてやっておりますが、今、先生から御質問がありましたように、大体どれぐらいになるかというのは、今の立場でお答えいたしますと、数字を挙げてこれぐらいになると言うのはなかなか難しいわけでございます。  我々がこれを党でスタートした後に、例えばいろんな状況で景気がまた悪化しまして信用保証をやらなきゃいけなくなった等、そういうように新しく需要が出てくるということが今後も財投の中であり得るわけでございまして、そういうことも踏まえながら、できるだけ最後は国民の皆さんのコストをなるべく少なくするように、この改革をきちっと実現していきたいというふうに考えておるところでございます。
  166. 三重野栄子

    三重野栄子君 そこで、大蔵大臣に、先ほどの肥大化については歴史的に振り返ってお話しいただきたいと思いましたけれども、それをお答えいただけなかったのでございますが、今、政務次官がお話しくださいました見方につきましてはどのようにお考えでしょうか。
  167. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) こういう制度を非常に長いことやってまいりましたし、先ほど三重野委員幾つかお挙げになりました具体例でございますが、一般会計が苦しいから財投へ持っていくとか、そういうことは実際にございました。いわば第二の予算なんて言いまして、そういう役割も果たしてきたことは積極的に評価すべき面もございますけれども、何分にも金が自然に入ってくるというシステムはどっちかといえば金に非常に苦しいという経営よりは楽に流れやすい経営でございますから、この辺でひとつここはきちんとして、決して財投機関仕事が要らないと言っておるわけではございませんので、締めてかからなければならないという、政務次官が答えられましたそういう効果は確かに期待をいたしております。
  168. 三重野栄子

    三重野栄子君 直接、法案とは関係しないのでございますけれども、今回の改革一つとして政策コスト分析を挙げることができると思うのでございます。  先ほどもいろいろ出ておりましたけれども、平成十一年八月に住宅金融公庫あるいは日本道路公団など五つの機関に関して試算結果が公表されております。このこと自体はかなりの前進であると前向きの評価ができると思うのでございますけれども、しかし平成十一年八月の公表のレベルでは試算の前提となる条件に対して説明が不十分であると思うのでございます。結果に対する検証が可能な水準であるとは言いがたいと思うわけです。  したがいまして、こうした問題点の解消につきましてどのような取り組みをされておりましょうか。理財局長にお願いしたいと思います。
  169. 中川雅治

    政府参考人中川雅治君) 政策コスト分析につきましては、先生今御指摘になりましたように、昨年八月に初めて十一年度の財政投融資の計数をもとに五機関の分析結果を試算という形で公表したところでございます。  現在、十二年度の計数に基づく政策コスト分析につきまして、関係省庁、各機関と協力して鋭意所要の作業及び技術的問題点の検討を進めているところでございます。したがいまして、昨年八月にお出しいたしました五機関の分析結果につきましても、またさらに改良すべき点があれば改良を加えていくと、こういう姿勢で今臨んでいるところでございます。  この技術的問題点の検討状況について具体的に申し上げますと、政策コスト分析というのは将来にわたる長期推計でございまして、一定の前提に基づく仮定計算を行うため、前提の置き方によってその結果は相当程度変化することとなるわけでございまして、さまざまな前提条件に関する検討というのが大変重要になってくるわけでございます。  例えば、試算の重要な前提条件でございます将来の財投金利につきましては、これは既に昨年八月の試算の公表のときにもそういった形で統一的に扱ったわけでございますけれども、市中国債市場流通利回りをもとに機械的に求めましたインプライド・フォワード・レートという方式があるわけでございますが、それを使いまして試算をしたわけでございます。この手法につきましては、学者等の専門家から成るコスト分析・評価検討会におきましても賛同が得られたということでございまして、一番重要な前提条件であります将来の財投金利につきましては、この方法を使ってまた十二年度におきましても今作業を進めているところでございます。  また、個別の機関ごとの前提条件につきましても、一つ一つただいま検討を行っているところでございます。  一例を申し上げますと、政策融資を行っている機関につきましては、将来の貸し倒れや繰り上げ償還をどう見込むかということにつきまして、個々の機関ごとに過去の実績を用いるケース、あるいは民間金融機関でも広く利用されております外部格付会社の統計データを用いて信用リスク量を機械的に算出するケース、それからローンの経過年数と借りかえ対象となる民間ローンとの金利差により繰り上げ償還率を算出する計量モデルを用いているケースなど、それぞれの機関が持つ特性に応じて適切な前提となるよう工夫をしているところでございまして、今こうした検討状況を学者等の専門家に参加いただいておりますコスト分析・評価検討会にもお諮りし議論をいただいている、こういう状況でございます。
  170. 三重野栄子

    三重野栄子君 大変細々と御説明をいただきました。  十二年度もそのような努力が続けられると思うんですけれども、今五機関は明らかになっておりまして、四十八ぐらいあるんでしょうか、そうしますと、全体がそのような状況になるという見通しはどのようにお考えでしょうか。もう少し説明をお願いします。
  171. 中川雅治

    政府参考人中川雅治君) この政策コスト分析は、財政投融資を受けております特に特殊法人等につきましてはいずれはすべての機関についてこれを公表していきたい、財政投融資を受けるかどうかの判断の材料という意味でこれをお示ししていきたいと思っております。  ただ、今申しましたように、個々の機関ごとにいろいろな前提条件をどうするのかということについて一つ一つ順番に今詰めているところでございますので、一挙にすべての特殊法人等についてお示しするところまで行きませんけれども、ことしにおきましては、昨年五機関でございましたので、それより何とかふやして、少しでも早い時期にお示しできるように今鋭意作業をしているところでございます。また、さらに引き続いて、いずれは全機関というふうに考えておるところでございます。
  172. 三重野栄子

    三重野栄子君 なかなか御努力いただいているのに難しいようでございますけれども、頑張っていただきたいと思います。こうした発想はこれまでにない有益なものでありまして、ぜひとも意義あるものを完成させていただくというか、努力をお願いしたいと思うわけでございます。  そこで、政策コスト分析の将来の位置づけにつきまして大蔵大臣一つ私は御提案したいのでございますけれども、それは政策コスト分析の分析結果を財政投融資計画の添付書類として国会に提出していただくという提案でございます。  こうした資料をもとにして国会で財政投融資に関する議論が深まるとすれば、財政民主主義という観点からも非常にプラスであると思うのでございますが、近い将来、政策コスト分析が有用な水準にまで高められる、そういう段階でぜひとも実現してほしいと思うのでございますけれども、この私の提案につきましての御見解をいただきたいと思います。
  173. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) おっしゃいますように、御検討を仰ぐのにふさわしいような立派なものをつくることが先決でございますが、そういうものができるようになってまいりましたら、何かの形で御審議の御参考にさせていただきたいと考えております。
  174. 三重野栄子

    三重野栄子君 ぜひよろしくお願いいたします。  日本政策投資銀行総裁においでいただいております。大変お忙しいのにどうもありがとうございます。  日本政策投資銀行は財投機関の中ではかなり優良な機関であり、そういうことで申し上げて大変恐縮でございますけれども、財投機関債の発行については先陣を切るべき機関ではないかと思うわけでございます。三月十五日の本委員会で私はその点を指摘させていただきました。  その後、二カ月が経過しているわけでございますが、財投機関債の発行につきましてその後どのような検討をなさっておられるか、現在の状況をお知らせいただきたいと存じます。
  175. 小粥正巳

    参考人(小粥正巳君) お答え申し上げます。  ただいまのお尋ねでございますが、財投機関債発行について日本政策投資銀行としてどのように考え検討しているかということでございますが、私どもといたしましては、財投機関効率運営、これへのインセンティブを高めるために各機関機関債の発行に向けて最大限の努力を行うべしと、このような現在御審議をいただいております財投改革法案の趣旨を踏まえまして、財投機関債の発行を前提といたしまして、これを実現すべく、現在、問題点のさらなる検討を含めまして諸準備を進めている、そういう段階でございます。  お尋ねでございますので、あわせて若干それに関して申し上げさせていただきます。  これまで私どもは、財投機関債、ここで申し上げておりますのは政府保証なしという趣旨と承知しておりますが、これを発行した経験はございません。したがいまして、政府保証のない債券発行という意味では初めて市場に入っていくということでございますので、どのような期間あるいはコスト、ロットの債券発行が可能であるか、これは市場がどういうふうに受け入れるだろうかといういわば市場との折り合いをつけるために、今、関係者の意見を聞き、また私どもも勉強を深めている、そういうことでございます。  現在の市場について私どもの見方をごく簡単に申し上げますと、このような財投機関債市場は現在まだほとんど形成されておりません。特に問題は、第二次市場と申しますか、その流通市場が育成されていない。この育成がどうしても必要であろうという、これが一つでございます。  それから、私どもの業務でございますが、委員も御案内のように、社会的に有用で政策的に支援が必要なプロジェクトに対しまして長期で安定した低利資金を供給する、これが私どもの業務と心得ております。しかし、現在の債券市場における長期債のマーケットは国債あるいは政保債を除きますと極めて限られているというのが現状でございます。  それから、もう一つ重要な点は、先ほど市場の受け入れいかんと申し上げましたが、金融経済情勢いかんによりまして、申すまでもなく市場の受け入れ方がその時々によって大変大きく変わるという問題がございます。このような市場の現状等も踏まえながら、現在申し上げましたように市場関係者の意向を十分に踏まえること、それから当然でございますが当局とも十分御相談をしながら、しかし冒頭に申し上げましたように財投機関債の発行を前提としての準備を進めておりますということをお答えさせていただきます。  あわせまして、そのためには市場から評価をされる必要がございます。したがいまして、できるだけ有利な条件で機関債を発行するためにも、財務内容の一層の改善充実、それからこれについての適切なディスクロージャーに努める必要がある、こういうことを当然のことながら私どもも十分に意識をしているところでございます。  なお、先ほども申し上げましたように、あくまで市場の受け入れいかんということでございますが、私どもの業務遂行のための安定的な資金調達市場状況いかんにかかわらず調達せざるを得ない、こういうことがございますので、常に財投機関債だけに頼っていくということには限界がございます。したがいまして、あえて申し上げさせていただきますが、財投機関債以外の資金調達手段につきましても幅広く検討させていただく必要がある、このように考えております。  以上でございます。
  176. 三重野栄子

    三重野栄子君 ありがとうございました。  やはり財投機関債を発行するというのは大変難しいようでございますが、非常に積極的な御様子を伺いました。ますます御健闘いただきたいと思います。  私としては、現行どおりの政府保証つきの債券発行にとどまられるのではないかと大変心配をしております。もしそうだと今回の改革というのは非常に薄れるんじゃないかと思いまして、そのような点を大蔵大臣にお伺いしようと思いましたら、そういう必要はないようでございます。ますます御健闘いただきたいと存じます。  もう一点、総裁にお伺いしたいのでございますが、平成十一年十月に開銀と北東公庫が統合されまして、日本政策投資銀行が誕生いたしました。統合以来半年以上が経過しておりますけれども、総裁からごらんになりまして、統合のメリットあるいはデメリットというのがあるのではないかと思うんです。まあ早々にしてデメリットをお伺いするのは大変ひどいことでございますけれども、特に開銀と北東公庫では給与体系が少し異なっていたようでございますので、統合後の人事給与面では難しい点があるのではないかと思いますけれども、どのような調整をなさっておられますか、お伺いを申し上げます。
  177. 小粥正巳

    参考人(小粥正巳君) お答えを申し上げます。  お尋ねをいただきましたが、昨年十月に旧日本開発銀行及び旧北海道東北開発公庫を統合いたしまして、日本政策投資銀行として発足をいたしました。あわせまして、これも御存じのとおりでございますが、地域振興整備公団及び環境事業団の融資業務の移管を受けまして、新しい時代に即した総合政策金融機関として改めてスタートを切ったところでございます。  そこで、今お尋ねの統合のメリットでございます。  統合後半年余経過をしたところでございますが、これはまず旧開銀が持っておりました全国ベースの幅広い業種にわたる政策金融上のノウハウがございました。それから、一方、北東公庫につきましては、大変きめの細かい地域開発に係る政策金融上のノウハウがございました。この融合が図られまして、組織といたしましても大変効果的な政策支援のための体制が確立されたものと考えております。  また、特に従来、両機関がいわばダブって業務を展開しておりました。具体的には、一つ企業が開銀と公庫の両方と取引をしていたという現状がございまして、実はその取引先だけでも百十社ということでございましたが、これが当然のことながら統合によりまして窓口が一つに集約をされました。事務手続の簡素化が相互に図られたわけでございます。  それから、大変関連の深い地方自治体あるいは地方経済団体におかれましても、私どもが統合したことによりまして、全国的、さらには国際的な視野に立った地域開発の動向等に関する幅広い情報、ノウハウ、これを私どもが提供できるということで、これもメリットと考えております。  それから、当然のことでございますが、両機関統合によりまして、総務・管理部門が重複しておりましたところを一本化いたしました。一方、それによりまして若干その人員をほかに振り向けるパワーができましたので、地域支援部門の充実を図る、限られた経営資源をより有効に活用する、こういう体制が何とか整備できつつあると、こんなふうに考えております。  一方、デメリットはどうかと。確かに公庫と銀行は同じ政府機関でもいろいろ違ったところもございましたので、その点のお尋ねでございますが、特にお尋ねの給与体系でございます。  これは確かに若干の差異があったわけでございますが、簡潔に申し上げますと、何より大切なことはこの両組織の融合であるということで、そのために人事給与制度はすべて統一的なものにいたしました。したがいまして、現在、旧公庫出身者である、旧開銀出身者であるということによる人事給与上の差別というものは一切ない、こういうふうにお考えいただいて結構でございます。したがいまして、この統一的な人事給与制度のもとで、文字どおり個々の職員の能力、職務、勤務成績に応じて個別に給与を決定する、こういうことでございまして、この点は組合ともよく話し合いをした上でございます。  さらに、人事面でございますけれども、統合に当たっての人事、さらに半年を経過しておりますが、その間に具体的な人事もございました。これは私が申し上げては手前みそかもしれませんが、やや案ずるより産むがやすしというのが実感でございまして、おかげさまで新銀行の内外あるいは取引先その他関係の皆様のお話を伺いましても、大変スムーズにいっているではないかという積極的な御評価をいただいているように思っておりますので、ただいまの御指摘、メリットをできるだけ大きく、デメリットをできるだけ少なくという、もう全くそのとおりでございまして、今後ともその方向で努めさせていただきたいと思っております。
  178. 三重野栄子

    三重野栄子君 大変難しい情勢の中に夢があるようなお話をたくさん伺いまして、期待を持っています。今、もう四・九%の失業率だとかリストラとか、そういう話ばかりでございますけれども、統合して人事面で非常にうまく労働組合とも協議をしてなさっていることについては大変うれしく思います。  ますます御健闘をお願いいたしまして、きょうはお忙しいところをありがとうございました。  あとは郵政省の方に時間いっぱいお尋ねしたいと思います。  郵便貯金の全額自主運用の問題でございますが、まず全額自主運用後の郵貯の具体的なポートフォリオにつきまして貯金局長にお伺いいたします。  この問題につきましては、平成十一年六月に公表されました郵貯・簡保資金運用研究会中間報告では今後の検討課題とされておりまして、結論が先送りされております。これは非常に重要な問題であり、本来は法案が提出される前の中間報告で示されて、それをもとにして法案審議がなされるべきではないかと、私としては少し残念に思います。  最終報告の公表が一カ月後ということでございますけれども、研究会での検討状況も含めまして、できるだけ具体的な方針をお伺いいたします。
  179. 團宏明

    政府参考人(團宏明君) お答え申し上げます。  全額自主運用後の具体的なポートフォリオでございますが、先生指摘のとおり、一昨年九月から開催しております金融、経済の専門の皆様方の研究会で現在検討していただいております。  昨年六月の中間報告におきましては、今回の法案の骨子になりますような運用の基本につきまして答申をいただきまして、法案を出させていただいておるところでございますが、この法案の中でポートフォリオの考え方、これは運用計画という中でお示ししていくことになるわけでございますけれども、今研究会の中でポートフォリオをどう組んだらいいかということを検討してもらっているわけでございます。  その考え方でございますけれども、これは何よりも郵便貯金の元利金の支払いをどうやって確保していくかという観点から、この法律の中で幾つかの運用範囲がございますけれども、それぞれの運用の対象につきまして、そのリスク、リターンというものをいろいろ技術的に検討しておりまして、どういう組み合わせが郵貯の中長期的な支払いに最も適しているかということにつきまして、いろんなシミュレーション等を含めまして今やっていただいているところでございます。  来月になりましたら、どういうポートフォリオをつくったらいいかというポイントにつきまして御報告をいただけるというふうに考えておる次第でございます。
  180. 三重野栄子

    三重野栄子君 次に、運用職員の問題につきましてお尋ねしようと思っておりました。  大きな金額を動かすわけでございますから、今までの人員ではまだ不足するだろうと思いますし、今までの方々もますます頑張っていただかなくちゃいけないと思うので、運用職員の質、量ともにどのように充実させていらっしゃるかということをお伺いする予定にいたしておりましたけれども、時間が参りましたので、よろしくお願いしたいと思います。  終わります。
  181. 平田健二

    委員長平田健二君) 両案に対する本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後五時十九分散会