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伊藤基隆君
アメリカでは
投資信託取引をめぐるさまざまな事案が裁判になっている経過の中で多くの判例が積み重なって、
アメリカにおける商慣習といいましょうか、かなり厳格な
規制といいましょうか、忠実義務といいましょうか、プルーデントマン・ルールというのが
アメリカの中に定着している。そういう信頼があって
アメリカの
投資信託の
発展というのがあるんじゃないかと思いますけれ
ども、
日本においてはなかなかそうはなり切れないというようなところがあって、そこに危惧がいっぱいあるわけです。
そこで、
商品先物関連の不祥事件というのが幾つかありまして、それを少し取り上げていきたいと思います。
たくさんございますけれ
ども、
一つは、一九九八年五月、冷凍食品最大手ニチレイが全額出資する子会社の食品卸売業ユキワの財務担当者が総額九十二億五千万円の業務上横領の疑いで警視庁に逮捕されています。大豆などの穀物の
商品先物
取引を行っていましたけれ
ども、損失を賄い切れなくなって同社の
資金に手を出した。読売新聞の一九九八年五月十七日と六月二十七日に報道されました。
二つ目に、一九九九年五月、詐欺罪などで起訴されている元高知県海洋局次長が大豆の
商品先物
取引で巨額の損失を出し、県の監督下にある高知市の信用組合高知商銀の専務から約五億二千五百万円の不正融資を受けていたとして、高知県警、高知地検は背任容疑で県庁などを家宅捜索した。同被告は、当時、高知商銀を直接監督する立場の県商工政策課長を務めていた。融資を担当していた高知商銀専務は、四月、自宅で自殺している。同被告は三月十六日付で懲戒免職。県議会は、最高責任者としての知事の責任は大きいとして、橋本知事に対する問責決議案を可決いたしました。朝日新聞の一九九九年五月十六日号であります。
三に、本年一月には、大分県において、集金に訪れた熊本市の先物
取引会社の社員を殺し遺体を捨てたとして、大分県警は二十四日未明、造船会社社員二十六歳を殺人と死体遺棄の疑いで逮捕した。同容疑者は被害者の勤める先物
取引会社と数百万円の生糸などの
商品先物
取引をしておって、県警は
取引をめぐるトラブルが原因と見ている。毎日新聞の二〇〇〇年一月二十四日号であります。
次に、殺人事件は一九九四年にも起きています。
福岡県警は、
商品先物
取引で大損した腹いせに先物
取引会社の営業マンを殺害したとして、測量会社社長六十三歳を殺人容疑で逮捕した。自宅を訪ねてきた
商品先物
取引会社社員三十五歳を刺して殺した疑いである。調べに対して、同容疑者は、
商品先物
取引で五千万から六千万円の損をし恨みを持っていた上、追加証拠金の支出を求められたことからかっとなって殺したと供述している。産経新聞、九四年十月十二日。
こうしてみますと、全国津々浦々で発生している
商品先物
取引をめぐるトラブルがいかに深刻であるかということが浮き上がってくるわけであります。
データベース検索によってこの五年間の
商品先物
取引をめぐる事件、トラブルの新聞記事掲載件数を調べてみますと、九五年が四件、九六年が六件、九七年が八件、九八年が十四件、九九年が十三件で、ことしは既に八件と、増加傾向にあることは間違いないと思われます。
横領行為者等に重大な責任があることは事実でございますけれ
ども、勧誘されるまでは先物
取引に何の関心も知識もなかった者が先物
取引の泥沼に落ち、苦悩の果てに横領等の行為に及んでいる姿が容易に想像されるところでございます。解雇されて生活の道が閉ざされ、被害弁償等で親族までもが多額の資産を失う。多くの場合、横領等について当然に実刑判決を受ける。家族や親族の苦悩ははかり知れないものがございます。自殺や家庭崩壊など、極めて多数の不祥事、犠牲を生み出しているのが実態ではないでしょうか。
わずか八十社にすぎない先物業界では伝統的にこのような不祥事を発生させております。業界への
規制の緩和が被害を増加させ、深刻化させているというふうに聞きます。億を超える横領事件に関連して、業界側が顧客の不正に気づかないようなことがあるのでしょうか。この不正により調達された
資金の中から多額の
手数料収入を得ているのが業界であって、構造的な問題体質があると言っても過言ではございません。
さて、ここで大蔵省にお伺いします。この
商品先物
取引を今回の
法案の対象から外したということはどうしても納得のいかないところでございます。新聞報道では所管官庁の強い意向が働いたというふうに伝えられていますけれ
ども、大蔵省の
考え方をお聞きしたいと思います。