運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

2000-03-14 第147回国会 参議院 財政・金融委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十二年三月十四日(火曜日)    午前十時開会     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         平田 健二君     理 事                 中島 眞人君                 平田 耕一君                 寺崎 昭久君                 海野 義孝君                 池田 幹幸君     委 員                 岩井 國臣君                 河本 英典君                 世耕 弘成君                 中島 啓雄君                 日出 英輔君                 伊藤 基隆君                 櫻井  充君                 浜田卓二郎君                 笠井  亮君                 三重野栄子君                 星野 朋市君                 椎名 素夫君    国務大臣        大蔵大臣     宮澤 喜一君        国務大臣        (金融再生委員        会委員長)    谷垣 禎一君    政務次官        郵政政務次官   前田  正君        金融再生政務次        官        村井  仁君        経済企画政務次        官        小池百合子君    事務局側        常任委員会専門        員        吉田 成宣君    政府参考人        金融再生委員会        事務局長     森  昭治君        金融監督庁監督        部長       乾  文男君        経済企画庁総合        計画局長     牛嶋俊一郎君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○政府参考人出席要求に関する件 ○財政及び金融等に関する調査  (財政及び金融等基本施策に関する件) ○平成十二年度における公債発行の特例に関す  る法律案内閣提出衆議院送付) ○租税特別措置法等の一部を改正する法律案(内  閣提出、衆議院送付) ○法人税法の一部を改正する法律案内閣提出、  衆議院送付)     ─────────────
  2. 平田健二

    委員長平田健二君) ただいまから財政金融委員会開会いたします。  政府参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  財政及び金融等に関する調査のため、本日の委員会金融再生委員会事務局長森昭治君、金融監督庁監督部長乾文男君及び経済企画庁総合計画局長牛嶋俊一郎君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 平田健二

    委員長平田健二君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  4. 平田健二

    委員長平田健二君) 財政及び金融等に関する調査を議題とし、財政及び金融等基本施策に関する件について質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  5. 日出英輔

    日出英輔君 自民党の日出でございます。  きょうは予定が二十分でございますので、尊敬する谷垣委員長にはちょっと申しわけございませんけれども別な機会ということにさせていただきまして、当代随一財政通宮澤大蔵大臣に、大変素朴な質問でございますけれども、現下の国民関心を持っている事項につきまして伺いたいと思っておるわけでございます。  今、国民の最大の関心事は、平成十二年度予算で予定しております公債発行額三十二兆六千億によります年度末の公債残高三百六十四兆円、あるいは国、地方長期債務残高六百四十五兆円の処理の問題だと思っております。なかなかに大変な話だと思っております。また、大蔵省財政中期展望も見せていただきましたけれども、一般歳出伸びを相当抑えても、かつまた名目経済成長率が三・五%でも公債残高はふえ続けるという試算が一応あるようでございます。  この点につきまして、平成十二年度予算一般に大方の方々が関心を持っているというところはこの辺に一番あるのではないだろうかと思いますので、今まで衆参の予算委員会あるいは本会議で出ている問題のように思いますけれども、きょうはぜひとも伺いたいと思っておる次第でございます。  大蔵大臣は過般の財政演説あるいは所信表明で、財政危機的状況にある、あるいは財政構造改革が避けて通れない課題であることは言うまでもないけれども、経済民需中心回復軌道に乗ることを確認することが必要で、その上で抜本的な措置を講じたいというふうにお話しになっているようでございます。  そこで伺うわけでございますが、まず最初に、私は日本経済は明らかに回復軌道に乗り始めているのではないかというふうに思っている一人でございます。昨日、企画庁から九九年十—十二月のGDPにつきまして発表がございました。これによりますと、前期比一・四%減で二期連続マイナス成長ということではありますけれども、民間設備投資前期比四・六%増だということで、きょうの新聞にはいろいろと解説が出ているわけでございます。  経済回復基調に乗り始めているかどうか、いろんな議論をされているようでございますが、一つは、通常の不況といいましょうか、今まで我々日本経済が経験してきた不況、あるいは金融システムの破綻といいますか、そういう問題が出てきました不況、あるいは家計からの問題等々あると思いますが、大蔵大臣はこの経企庁の発表をどういうふうに見ておられるのか、景気は着実に回復基調に乗り始めているというふうに見ておられるのかどうか、その点からまず先に伺いたいと思っております。
  6. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 基本的に、今、日出委員の言われました御見解、私もそのように感じております。ただいま御審議中の平成十二年度予算におきまして、財政演説でも申し上げましたとおり、公共事業不況対策あるいは金融システムの安定に関する施策等々、私としては打つべき手はこの平成十二年度予算に将来を展望いたしましてすべて盛り込んだつもりだということを申し上げております。そういう意味では、我が国経済がことしの秋に再度大きな補正予算を必要としないような展開をするという期待を込めていたしたことでございます。財政再建ということはすぐにできませんけれども、しかし、これでこういう一種の景気刺激的な予算は打ちどめにすることができるということを実証いたしますならば、それ以後の財政再建についての一つ展望が開ける、こう考えておるからでございます。  そこで、昨日出ましたQEでございますが、十—十二月期におきまして消費伸びが非常に悪いということは、統計局家計調査等々からもう既に十、十一、十二と数字がわかっておりまして、これは基本的にはリストラが進行し始めたということ、それからボーナス関係もあったと思いますけれども、十—十二の収入、したがって消費かなり悪いと考えておりましたので、その点は昨日の発表はそのとおりと受け取っております。  むしろ、設備投資が四・六プラスになりましたことは、私にとりましてはもう一期ずれるかと正直思っておりました。機械受注等が相当しばらく前からいいので、先行指標でありますが、もう次の期ではないかと思っておりましたが、設備投資と、あと法人企業統計が出まして、思ったよりもそこがプラスでございましたので、私は、消費は十—十二よりは一—三、四—六、回復していくとは思いますものの、設備投資は一度表へ出ますとそう行ったり来たりしませんで、なおプラスが続いて出る性格のものでございますから、これで期待された二つ民需のうち一つが確実にプラスになり始めたということ。所得、消費は行ったり来たりはしますけれども、リストラというようなものもある程度軌道に乗ってくる、企業利益も少しずつ当期利益がふえておる、私は春闘のことを申すべきではないのでございますけれども、そういった中で労使のある意味での理解も出てくる。  あれこれ考えますと、日本経済は昨日の発表によって明らかに成長軌道に乗ったと判断をいたしております。
  7. 日出英輔

    日出英輔君 私は、けさ数紙新聞に目を通したのでございますが、いろいろ書き分けてはいるようでありますけれども、やはり各紙ともに、見出しにつけるかどうかは別としまして、民需自律的回復の兆しありであるとか、あるいは企業部門の明るさがいずれは家計に及んでいくであろうとか、あるいは残業時間が昨年秋から増加傾向にあるし、また有効求人数もふえてきているというようなことで、個人消費の方もいずれ回復してくるであろうという基調はうかがえるわけでございます。  私は、財政構造改革の話は大変政治的にも難しい問題であるし、また今総選挙などという話もありますので、なかなかに冷静な議論ができにくいとは思いますが、こういった景気回復基調が確認できてきている以上、ぼちぼち財政構造改革議論に着手するということを言った方がむしろ景気の本格的な回復プラスなのではないかというふうに考える一人でございます。  こういうことは学者が言っているかどうかはわかりませんしエコノミストが言っているかどうかはわかりませんが、何か本格的な回復が見られるまではこの議論をしないというのもいささか景気動向に対して自信がないかのような受け取られ方をするような気がいたします。この点については全くの素人談義でございますが、大蔵大臣はいかにお考えでございましょうか。
  8. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 行政の御経験のある日出委員でございますからおわかりいただけると思うんですが、財政改革考えますときに、すぐに中央と地方関係、あるいは社会保障の水準の問題、恐らく二十一世紀当初の十年か二十年にわたる日本経済社会の問題が全部象徴的に出てこざるを得ないということになりますと、これは私ただ一人の思いでございますけれども、日本経済がこんなにごちゃごちゃいたします前は、マクロモデルをつくりまして、十年ぐらいの国の経済全体を見るという手法、どうも今でもそういう手法をとるのが本来であろうと思いますと、そうしますと、財政再建というのもただそろばんだけでできないと申しますか、そういうものであってはならないんだろうと思う気持ちがございます。ですから、軌道に乗ったということが確認できたら恐らくそういう作業をしなければならないのではないかと思っておりますものですから、簡単にすぐ始めてそろばんでできますというものと違うのではないかと思っております。そういうことで確認をということを申し上げておるわけです。  大蔵省だけで申しますと、平成十二年度の歳入、殊に税収でございますが、これが歳入欠陥を生まない、もうずっと毎年税収はとれないまま終わっておるわけでございますから、今度はちゃんととれるという、まずそのぐらいのことは確かめる必要がございますけれども、これはまだかなり後までわからないことでございますので、私も焦った気持ちはございますし、軌道に乗ってくるなというところは大変に期待をしておりますが、そうかといってすぐ財政再建というところに飛んでいけないところがある、こう思っておるわけでございます。
  9. 日出英輔

    日出英輔君 素人の意見を申し上げれば、私も、宮澤大蔵大臣が今おっしゃったように、何か財政構造改革という議論で、一般歳出削減幅をどうするかとか、あるいは消費税引き上げをどうするかとか、こういった話をすぐするのではなくて、やはりきちんとした税収をとれるためにはそれなりの経済構造をつくらなきゃいけませんし、あるいは金融問題、社会保障問題等々、当然それに至る議論をしなければいけないだろうというふうに思います。  私もいろいろなところで勉強会に顔を出させていただいておるんですが、例えば経済構造改革で必要な規制緩和なんていう議論をしますが、ところが規制緩和議論しているところに行きますと、一生懸命お酒の小売業者の免許をどうするかなどというのが規制緩和の象徴みたいな議論をされておりまして、実際は経済構造改革のための規制緩和あり方から大きく外れている議論だろうという、実はそういう規制緩和についての見直しをすること自体の批判について言っているわけでありますが、私は本当規制緩和議論をその前提としてしていくべきじゃないかというふうに思います。  それから、今の話に関連するわけでございますけれども、今これだけ積み上がりました公的債務残高というものについて、これをどういうふうに見るかということをちょっと伺いたいのでございますが、国債というのは一方で国の借金であるけれども一方で資産でもある。日本の場合には日本国民国債を所有しているんだ、アメリカの場合は違うんだという議論がありましたり、あるいはこの議論につきまして、地方と国と一緒に合わせて、負債残高、何と言うんでしょうか、総債務残高と言っているんでしょうか、国が運用しております金融資産なんかも全部入れるか入れないか、総債務残高なのか純債務残高なのかということで国の比較をするのかとか、何かいろいろ国債問題についてわかりにくいところがあるように思います。  その中で、特に国債の累増は確かに次の世代借金になるんだけれども、次の世代資産でもあるんではないかということで、余り心配しなくてもいいと言うとちょっと語弊がありますが、そういうような声も若干聞こえるのでございますけれども、これについては大蔵大臣はいかにお考えでございましょうか。
  10. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 以前、私もそういう議論をしていたことがございまして、財政当局借金をすると子孫にこれだけの負債を残すと、これは当然財政当局は言うわけですが、私がおやじから国債を二億円もらいましたら、決しておやじを恨みません。ということをしかし余り言うといけない。このごろ申さずにおるんですが、お尋ねがありましたから。  ただ、今度狭い立場で、大蔵大臣として申しますと、当然国債発行いたしますと、国債費かなり大きくなってまいりましたし、償還を含めまして金利がもう少し高くなりますと、発行国債資金収入国債費に足りないとなりましては、これはどうも財政はいけないわけでございますから、そこらあたりのところは必死に何とか守らなきゃならないなと、大体このごろそういうことを申し上げておるわけでございます。
  11. 日出英輔

    日出英輔君 済みません。そういうことを伺いまして失礼しました。  先般、大蔵省は初めて五年物の利付国債の入札を行ったという新聞記事がございました。昨年の二次補正のときに七兆五千億の国債発行するということで、全額を中期債にする、あるいは今の五年物を発行するという話をされたことを実は記憶しているわけでございます。  いずれにしましても、国債大量発行によります需給悪化といいますか、今お話しのようなことも含めて、長期金利が上昇するというのは避けなければいけないわけでございますが、この一方で、例えば銀行の国債保有が四十兆ぐらいに上っているんだとか、あるいは金利が上がったら大変だろうかとかという議論もございますし、やっぱりこういった国債発行につきまして、リスクを広く薄く伸ばすといいますか、そういうことをしていかないといけないだろうというふうな気がいたします。  そういう意味で、発行国債を短期化するとか、あるいは保有構造を変えていくとかということをしていかなきゃいけないだろうと思いますし、ひいては個人投資家が容易に国債を購入できるような仕組みを整備していかなきゃいけないというふうに思いますが、この辺につきましては、これから先について、今大蔵省がやっていることを含めまして、大蔵大臣のお考えを伺っておきたいと思っております。
  12. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 確かに国債がこうやって漸増をいたしてまいりますと、その消化というのには細心の注意を払わなければなりませんで、殊に今非常に低金利でございますからかなり低いクーポンレート発行ができますけれども、民間資金需要も出てくる、出てこなければならないわけでございますから、そういうことも考えますと、期間、いわゆる長期債中期債短期債といういろいろなミックスを考える必要が出てまいりまして、一つは、今言われましたように、なるべく個人にも買っていただきたい。そうしますと、三年とか割引債あたりが一番買いやすいとか、いろいろそういうことも考えなきゃなりませんし、十年国債中心ではありますけれども、長いもの、短いもの、いろいろ出して市場の金利が上がらないようにということを考えております。  ただ、今御質問の裏側にありましたように、短いものを出しますと償還期限が早くまいりますので、次の償還期限は今のような金利ではなかなか難しいだろうというものもございます。そこをあれこれある意味かなり苦しい調整をしているというのが本当のところだろうと思いますが、おかげでただいまのところは金利は十年物で一・七とか一・八とかその辺でとまっておりますのでやりますが、これから民間資金需要が出るということも考えておかなければなりませんので、国債発行についてはいろいろな配慮が要るというふうに思っております。
  13. 日出英輔

    日出英輔君 大臣、なかなか大変な時期でございますが、日本国財政運営のかじ取りをよろしくお願い申し上げます。  ありがとうございました。  質問を終わります。
  14. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 まず、大蔵大臣お尋ねいたします。  先ほど大蔵大臣は、日本経済成長軌道に乗ったという御認識を示されました。また、三月九日の所信表明の際には、最悪期を脱し緩やかな改善が続いている、しかし民需が依然として弱い、したがって財政面からの下支えが必要であり、それをやることによって本格的な景気回復を実現したいんだという趣旨の御発言がございました。  これはさらっと聞いておりますと大変滑らかでのみ込みやすいのでありますけれども、よく考えてみますと、大臣がおっしゃっている例えば本格的な景気回復というのはどういう状態をおっしゃっているのか、どういう指標がどのように変化したときにそう御判断されるのかというお話は伺ったことがないように思います。  また、きのうの経済企画庁発表の後、例の公共事業等予備費の五千億円を前倒しして執行してはどうかというような論も浮上しているやに聞いております。この点について大蔵大臣の御所見を伺いたいと思います。
  15. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 景気回復した経済の姿というものはどういうものを考えているのかというお尋ねは難しいお尋ねでございますので、仮に一つの方面から申し上げますならば、今の我が国の局面で申せば、ただいま御審議いただいておりますようなこういう景気刺激的な予算を国が提出しないで済むような状況と申し上げることができるかもしれないと思います。  それはすなわち民需消費企業投資が正常な高まりを見せて、それによって経済が動いていくということでございますが、私としては、さしずめこの御審議いただいております平成十二年度まではどうしてもやむを得ないと思って御審議をいただいておりますが、さらにこういうことを重ねたくはない。また、そうでないようにいろんなことをこの中に盛り込んで御審議いただいておるわけですが、ならば平成十三年度ではなくて十二年度の秋に大きな補正を、過去二年やってまいりましたが、そういうこともしないで済むとなれば経済回復基調に乗り始めたと申し上げられるのではないかとさしずめ思っております。  今、五千億円の公共事業等予備費お尋ねがございましたが、予備費でございますから、将来そういうことが必要になった場合にのみ使えるわけでございますし、国会開会中にそういう予備費を崩すということも、災害ならともかく、普通ないことでございますので、このルールは守らなければならない。  おっしゃいますように、私どもの党内にもこの予備費を早く、少なくともその一部を使いたいという議論があることは承知しておりますけれども、全体の問題として、私は今、殊に本予算を御審議中にそういうことを言うべきではないし、考えるべきではないと思っております。
  16. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 景気回復を数値でお示しいただくのはなかなか難しいことだと思いますのでこの問題については深入りしませんけれども、それでは、民需が弱いということをおっしゃるわけでありますが、なぜ民需がもう少し強含みに変化しないのか、その辺についてのお考えお尋ねします。
  17. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) まず、GDPで六〇%を超える消費でございますが、政府景気回復を目指しましたときに、当然、企業におけるリストラクチャリングというものが行われませんと二十一世紀に十分生きていけないと考えておりましたから、リストラがあることは予想いたしておりましたし、それについての失業対策等々も昨年の補正あたりから非常にお願いをいたしておるわけであります。そのリストラの行方というものが、確かにアメリカ型と即同じような形はとりませんで、やはり常雇用からは落とすがパートタイムには置いておくというような我が国らしいリストラが進行しているように思います。  その結果として、失業率は五%を幸いにして超えずにおりますけれども、収入はやはり減ることは免れない。そのことが十—十二月期の収入減ボーナス減、これは統計局家計調査に一番端的に出てまいりますが、そういう形をとっておると思います。  それで、これがいつまで続くかということは実はなかなかわからない問題でございますけれども、これが回復しませんと、GDPの六〇%があそこにございますから、成長というものは非常に難しゅうございます。  今、労使いろいろお話があって、そのことに政府は何も申すべきではないんですが、そういう中からリストラあり方みたいなことについてのいろんなお話し合いがあって一つ軌道に入るといいますか、そういうことになってくれば、そしてたまたま企業期間利益かなり黒になっているところが多いということから、リストラについての動きは長く何年もかかることですが、しかしそれが一つ軌道に乗るということになれば、給与の面でも、したがって消費の面でも十—十二月が最悪であったのではないかということで期待を、これは本当期待と申し上げるしかないわけですが、そういうふうに思っております。  そうすると、それで消費の問題でまず足を引っ張ることはなくなるとしまして、しかしこれを永続的にするのは、設備投資がなければいつまでも収入が上がるというわけにいきませんが、その設備投資が意外に十—十二で見えましたので、そういたしますと、この二つ消費が六〇、設備投資は多いとき少ないときがございますけれども、一八とか二〇ぐらいなものがございますので、それで景気のサイクルにプラス成長が乗っていくのではないか、こういうふうに思っております。その中で、設備投資の方は動き出しますと急に上がったり下がったりいたしません。恐らくやや継続してプラスが出ていくのではないかと思いますので、後はもう消費動向ということになると思います。
  18. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 昨年二月に経済戦略会議というところが答申を出しまして、その中で、潜在成長力あるいは潜在成長率について二%強という答申を出しております。もちろんこれはリストラ労働力と資本の適正再配分が進んだという前提を置いてのことでございますけれども、我が国経済潜在成長率の推移を見てみますと、七〇年代から八〇年代にかけてはおよそ四%前後の成長率だったのが、九〇年になってから平均で二%というような成長率になっているわけであります。  そういうことを踏まえて二%強の潜在成長率は持っているんだというレポートを出されているわけでありますが、例えば先ほど来話題になっております景気回復軌道に乗ったとか本格的な回復に近づいているというようなお話潜在成長率との関係でどうなのか、潜在成長率に回帰することが景気がよくなったあるいは成長軌道に乗ったということと同じ意味なのか違うのか、その辺について御所見を伺いたいと思います。
  19. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) かつて我が国経済は平気で五%とか六%とかございまして、そういう意味で優等生でございましたが、今、寺崎委員のおっしゃいますように、九〇年代に入って二%なんということになりましたので、私は、せっかく優等生だったが、こんなことになると及第できるかなと、しかし長く続くとそういう意識になっちゃうがなと心配しましたが、明らかになりまして、今はもう落第生でございますから、この意識が全く落第生をつくったとも申せます。  今九〇年代とおっしゃいましたが、アメリカ経済を見ていますと、明らかに二十一世紀に向けての経済ができ上がって、もう全く遠くを走っているわけですが、我々も苦労した十年間にそういうふうに日本経済が変形をしているんではないかと、多少希望的でもありますが思っております。  したがいまして、今までと同じ形の経済成長率とこれからの成長率を一緒に議論できるかどうかという疑問はございます。ございますが、いずれにしても二%ぐらいの成長がございませんと正常な経済をやっていけませんし、本当にうまく二十一世紀のそういう、ITとばかりは申し上げませんけれども、そういうものに乗っていくならばもう少し高い成長というのはあり得る。しかし、それに日本経済がうまく労使ともに乗っていけるのかどうかというのがまだもう一つ十分にはわかりませんけれども、そう思っております。
  20. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 おっしゃいますように、成長率というのはいろんな前提だとか取り巻く環境の中から決まってくる部分もございますでしょうから、二%と言っていいのか、もっと期待していいと言っていいのかというのは見方によると思いますが、一般論からいうと、日本の少子高齢化あるいは長期的には人口が減るであろう、世界経済の枠組みが変わってきているというようなことを考えますと、なかなかかつてのような高い成長率期待するのは難しい環境にあるのかなという気がいたします。  話を単純化する意味で、例えばこれから先の潜在成長率というのを二%ぐらいだとしますと、かつてに比べてそのギャップというのが二%あるわけですから、何かで埋めなければいけないというのが今の経済対策あるいは景気対策というものなのであろうと思うんです。  私も商店街の人やら中小企業の方にお会いすることがございますが、そういうときに聞かれて返事に窮するのが、いつになったら景気回復するかということなんです。恐らくそういう方々も皆さんいわゆるリストラをされていると思いますけれども、ただ言葉の裏には、かつての高度成長時代ないしはバブル崩壊前の状態がどうしても頭にこびりついていて、そこへ戻ってくるのはいつかという期待が込められているのだろうと思うんです。  私は正直に言った方がいいと思うから、もうそういう時代は過ぎたと思った方がいいんじゃないでしょうか、まず体質改善が必要ですよ、いつまでも膨らみっ放しの胃袋にたくさん物が入ると思ったら間違いだと思いますよというようなことを申し上げているわけでございます。公共投資を続ければ潜在成長率がもとの高い水準に、二十年前、三十年前の水準に戻るという期待は恐らく難しいんではなかろうかと思っているわけであります。  そういう中で、先ほどもちょっと大臣からお話がございましたが、十三年度予算、十四年度予算は中立的な予算になるであろうというような表現もこれまでされておりますけれども、その中立的な予算というのは、これまでの過去の例で言うと補正も含めた予算規模を念頭に置かれているのかどうか、その辺をちょっと伺いたいんです。
  21. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 前段の問題でございますが、あるいは寺崎委員の言われることであるかもしれません。私の申し上げることが少し空想に近いことを申し上げているかもしれません。  アメリカの九〇年代以来の経済の動きを見ていますと、アメリカの生産性向上は大体二%ぐらい、かなり好調で二%ぐらいだと思っておりまして、御存じのアラン・グリーンスパンは私とよくそういう話をしておりますが、昨年の秋ごろでございますか、今経済成長率は四%になっている、自分はそのうち一ポイントはITで稼いでもらっている、一ポイントは労働の生産性で稼いでもらっていると思う、それで労働の生産性というのは君の国では難しいんだよなと、レイオフのことなんかを言っておるわけです。そういうことを言っておりましたけれども、最近の四半期でアメリカの労働生産性は五%を超えたということを聞いております、それは長続きするとは思いませんけれども。  そういうことがそのままでなくても日本経済に入ってくるということは、これだけ苦しんで国内でリストラクチャーが行われていますと不可能ではないのではないか、またそうでなければ日本経済は二十一世紀に雄飛できないのじゃないか、私は未来をこう思っておるものでございますから。確かにいろんなことはございます。いろいろしょっておりますけれども、ポジティブな何%かの成長は可能なのではないか、そのために我々はこれだけ苦しんだのだという思いがいたします。  それで、後段のお尋ねは、十二年度の予算を今御審議いただいておりますが、景気刺激型の予算はこれでおしまいでございまして、もう十三年度にはこういうことをお願いしなくていいようないろんなものをこの十二年度の中に含めておりますので、それで経済がうまく動いていきましたら、十三年度はもとよりですが、十二年度は昨年、一昨年いたしましたような大きな補正もあるいはしなくて済むのではないか、こういう希望を持っておるということでございます。
  22. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 後ほども触れたいと思いますけれども、この数年の予算編成の経過を見ておりますと、当初予算はそこそこは組まれているんですが、補正のときにどんと建設国債発行されて景気対策を行うというパターンが繰り返されてきているわけです。私が申し上げているのはその懸念なわけでございますが、災害とかそういうのは別にして、十三年度、十四年度というのは当初予算を念頭に置いた規模が大臣の頭にあるということで受けとめてよろしいんでしょうか。
  23. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) さようでございます。  補正予算を昨年も一昨年もやむを得ずいたしましたが、また別の意味でシーリングというものを当初予算にかけるものでございますから、補正でそのシーリングをすり抜けるという、そういうちょっとよくない習慣も生まれ始めたこともございます。いずれにしても、民需経済が動き始めまして、当初予算がそもそも景気刺激的でなく、それをまた補正補正するという必要もなくと、そういう経済運営ができましたらと思っております。
  24. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 余り時間がないものですから次の質問をさせていただきますが、この三月八日に日本銀行の政策委員会は、依然としてデフレ懸念の払拭が展望できるような情勢になっていないので、そういう判断のもとにゼロ金利政策を続けますということを発表されておりました。デフレ懸念が去ったのか、まだ依然としてあるのかというのは人によって見方が違うと思いますが、大蔵大臣はこの点についてどう御認識されていましょうか。
  25. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 卸売物価を見ましても消費者物価を見ましてもその懸念はまだ去っているというふうには私には思えません。
  26. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 これは判断の問題でございますから、私もまだデフレ懸念というのはあるのかなと思いますし、そういう中で低金利政策というのも理由があるのだろうと思います。  それとあわせて、最近、例えばインフレターゲティング論とかインフレ調整論とか量的金融緩和論とか、いろんなことを言う方がふえてきていると思います。その点について大蔵大臣の認識をお伺いしたいわけであります。  私自身は、例えばインフレターゲティングについては、インフレを抑制するためにある目標を掲げてそれに近づけるよう努力するというのは一つ意味のある方法だと思いますし、期待形成の安定化に資するという限りでは悪い方法ではないと思いますが、現状のような日本経済のもとに、例えばCPI上昇率を目標に掲げてそれに向かっていろんなことをやる、何でもやるというようなことが万一起こりかねない、いわゆる調整インフレと混同されがちだと思いますので避けた方がいいのかなと思っております。また、与党の中にもインフレ調整論などを唱えていらっしゃる方もおられるので、大変気になっているわけであります。  まず最初に、インフレターゲット論の是非について、あるいは政策として導入することのよしあしについて大臣の御認識を伺いたいと思います。
  27. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 実は私も、インフレターゲティングというのは、非常なインフレがございますときにそれを政策としてどのぐらいまで下げるかと、現実の政策課題としてはそういうものとしてしか考えておりませんでしたので、デフレからどのぐらいまでインフレに上げるかという議論としては、私はまことに勉強が足りないのでよくわかっておりません、正直申しますと。  ただ、日本銀行のように非常に低い金利政策をやっておられる場合に、世の中からいろいろな批判もあるし、また預金生活者等々からは非常に利子が低い、困るというコンプレインツもあるわけですから、そういう意味でひとつそれをいろいろ検討しようというお立場であればそれは理解できることでございますけれども、どうも若い学者さんがマクロの経済学で大きな経済を右へ行かせたり左へ行かせたりできるように思っているのは多分錯覚であろうと思いますので、理論は理論として、政策論で手段が伴わない話は私には余り興味がないということでございます。
  28. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 二月十八日の閣議後の記者会見で、大蔵大臣はこのインフレターゲティングについてタンジブルということをおっしゃっているんですが、このタンジブルというのはどういう意味で使われたのかなと大変疑問に思っていたんですけれども、いかがでしょうか。
  29. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) あくまで高いインフレを抑えてくるということを頭に申したのですけれども、このごろさしもの物価も少し穏やかになりましたねといったように消費者が感じる、そういう意味でタンジブルと申しましたので、寒暖計のように何度になったというようなことはどっちみち言えない話ではないかと言おうとしたのではないかと思います。
  30. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 またこれは学者の論をお尋ねするようなことになるのかもしれませんけれども、このインフレターゲティングと並んで、量的金融緩和というのが時々浮上しております。おっしゃる方は、例えば外為市場でドル買い円売りをやりベースマネーをふやすんだというようなことをおっしゃったり、あるいは中期的なインフレ目標を掲げながら中長期の国債を買いオペでふやすんだとかということで、要するにマネーサプライをふやそうということが念頭にあっての御発言のようでございます。  それが果たして有効な方法なのかどうかという問題もあるわけでありますが、この金融緩和論について大臣の御認識を伺いたいと思います。
  31. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 政府、日銀が為替市場に介入いたしましたときに、ドルを買えば円が放出されるわけでございます。その円を当然のことながら中央銀行としては必要なときには回収をしていくということでございますが、それを回収しないでほうっておけという議論がおっしゃいますようにございます。  日本銀行のお立場は、私はもっともだと思いますのは、今こういう金融政策の中で恐らく一兆円ぐらいの遊びの金を市場に出しておるわけでございます。それは必ずしも需要がないに近い状況もございますが、そうしておられる。そういうときに、介入して出た円だけ残しておけというのは余り意味がない。どっちみちマネーマーケットはもうたっぷりなんで、それをあの金この金と言ってみる必要はないではないかと。私は日銀総裁がそう言われるのは無理もないと思っておりますから、そういう意味で、いわゆる介入資金を回収しないでおけという議論はどうも私には十分のみ込めないのでございます。  それで、今基本的に日本銀行がとっておられる低金利は、昨年の二月だったと思いますからもう一年過ぎましたが、かなり有効に働いているというふうに私は思っております。
  32. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 前にもお尋ねいたしましたが、日銀による買いオペではなくて国債引き受けについては、私はやってはいけない禁じ手だろうと思うわけでありますが、雑誌の論文などを見ておりますと、与党の中には、デフレを防止するためには、あるいはこれから国債大量発行されるということを考えれば、日銀の国債引き受けというのも視野に入れなければならないのではないかというようなことをおっしゃる方がいるようです。大臣はどんな御認識でしょうか。
  33. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 例えばポール・クルーグマンなんという人の言っていることがそういうところへ行き着くかと思いますし、我が国にもそういう議論をされる方があります。  確かに政府の出します国債を右から左へ日銀が引き受けてくれたらそれだけ金がふえるだろうと思いますが、そういうことを言う人はいつそれをやめるかということを一緒に考えてもらいませんと、歴史に学んでいないということに私はなると思います。インフレターゲット論を言う方々の方法論にはきっとそういうことがあるのだろうと思いますけれども、例えば私ども財政当局からして、とにかくこれでも各省の予算要求というものをできるだけミニマムにしようとしているときに金は幾らでも出せるでしょうと言われたら、そういう財政の努力というのは実際なまってしまいます。そういうことでは私はいけないのだろうというふうに思います。
  34. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 この辺でそろそろ財政再建の話をしたいのでありますけれども、ちょっと時間も中途半端でございますので、きょうは金融再生委員長にも御出席いただいておりますので、若干そちらのお話をさせていただきたいと思います。  まず、九七年の春にいわゆる奉加帳増資というのが日債銀を対象にしてございました。ところが、日債銀の奉加帳増資に応じた銀行あるいは保険会社が日銀も含めて三十四社と思いますが、その中で、先日、第一火災海上保険が出資全額の六十五億円返済を受けたという報道がなされております。  そこで委員長お尋ねするわけでありますが、これが事実かどうか、ほかの出資会社にも返済を受けたところがあるのかどうか、また第一火災だけ返済を受けたとすればどういう根拠に基づくものなのか、お尋ねいたします。
  35. 谷垣禎一

    国務大臣谷垣禎一君) 今、寺崎委員お尋ねの日債銀と第一火災との関係でございますが、報道がございました。  まず、契約内容から申し上げますと、日債銀から受けております報告ですが、平成九年の六月十九日に、第一火災と、日債銀の関連親密先である株式会社長浜地所というのがあるわけですが、この第一火災と長浜地所との間で貸し株契約が締結されまして、その契約において、株価が一定金額を下回った場合には長浜地所が第一火災にその差額を支払う、それから株価が一定金額を上回った場合には逆に第一火災が長浜地所にその差額を支払うという特約がなされていた、そして日債銀が長浜地所の債務を保証したと、こういう契約が平成九年の六月十九日に結ばれていたという報告を受けております。  それで、経緯をたどりますと、その後、御承知のように株価算定委員会で日債銀の株についての評価がなされまして、また長浜地所が倒産をした、破産宣告を受けたというようなことがございまして、さて日債銀がその保証債務を履行するかどうかということになったわけでございます。日債銀とされましても、この保証契約あるいは長浜地所と第一火災との関係が法的に有効なものであるかどうか、これは三つほど弁護士事務所にも意見書といいますか鑑定書をとりまして検討した結果、これは法的に有効である、こういう結論を得て、そして法的に有効であるならば債務を履行する、こういうことで六十五億円を支払った、こういう経過であるという報告を受けております。  それから、ほかにそういうところがあったのかというお尋ねがございましたけれども、日債銀から受けております報告は、ほかに日債銀の債務内容を減らすようなこういう契約はない、こう聞いております。
  36. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 今ちょっと聞き漏らしたかもしれませんが、この六十五億円というのは日債銀が支払ったということではないんですか。
  37. 谷垣禎一

    国務大臣谷垣禎一君) 日債銀が保証債務の履行として支払った、こういうことでございます。
  38. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 日債銀はほかにも債務があったと思うんですが、他に優先してこの六十五億というのは支払われたということでしょうか。
  39. 谷垣禎一

    国務大臣谷垣禎一君) 他に優先してという意味合いではございませんで、日債銀が破綻をいたしまして特別公的管理に移りましたときに、単なる預金のみならず債権債務関係を全部保護する、こういう方向で処理をいたしまして、その一環としてこの六十五億が支払われている、こういうことでございます。
  40. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 第一火災の場合にはこういうような特約があったから日債銀から債務というか出資分を返還してもらったということは、日債銀に損をかけたという認識があったということになりませんか。  と申し上げているのは、ほかの三十三社についてはこういう措置をしていなかったのかもしれません。もともと奉加帳を回されたときには日債銀の経営について大変危惧を持たれていた時期なんだと思います。ですから、当時の大蔵省審議官と例えば日本生命でしたかの間で確認書が取り交わされたというようなこともあったんだと思います。だとすると、こういう特約のような契約をしていなかったほかの経営者は手抜かりがあった、経営判断にミスがあったということになりませんでしょうか。
  41. 谷垣禎一

    国務大臣谷垣禎一君) 大変難しい問題でございますが、このような第一火災と日債銀との契約が有効であるということは、これは弁護士の判断でございますが、そのほかの企業がこのようなものを結ばなかったのが経営者のミスであるかどうかということにつきましては、これはそのときの経済情勢の中でそれぞれの経営者が判断を下された。当時の経済事情でどこまで予見可能であったかということもあろうかと思いますが、それぞれの御判断であったろうと思います。
  42. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 もちろん出資する側の判断で特約をつける、つけないという選択があったんだと思いますから、委員長にここでそれはおかしいと思いませんかと聞いて御返事をちょうだいするのは無理だと思います。  ただ、そういう特約をつけざるを得なかった金融機関に対して奉加帳を回したという責任は大蔵省には残るんだろうと思いますし、そういう危ないところに出資するに当たって抵抗されたのか、しないのかわかりませんが、出資に応じたというのは、第一火災の例があるだけに、例えば株主代表訴訟の対象になり得るなということを思ったから申し上げたわけであります。  もう一つ言いますと、この奉加帳増資問題をめぐって民主党の有志が詐欺罪で告発をいたしました。その結果が昨年の暮れからことしの初めにかけまして不起訴処分ということになったと聞いております。それで、その理由は何かということを法務省に尋ねましたら、不起訴処分の場合には通常ペーパー等で回答しない、ただ告発した人には口頭で理由を言っているという話だったので、私は告発した一人に聞きましたら、幾つかの理由を言っておりましたけれども、今この増資を要請されて増資に応じなかったら日債銀の経営が危うくなってこれまで貸し出しをしていたお金も回収できない懸念があるので出資に応じたのだということが一つ、それから損害をこうむったという告訴がないので不起訴処分にいたしましたという説明だったようでございます。そんなことから考えますと、この第一火災の返還というのは私はいろいろな意味で大きな問題を含んでいるんではないかと思います。時間がないので、これについての回答は結構でございます。  大蔵大臣お尋ねします。  当時は大蔵省でございますが、事前に損があったときには返還しますよという特約があったことは御存じだったんでしょうか、大蔵省は。
  43. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 当時関係した者に聞きますと、知っておらなかったそうでございます。
  44. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 今回の金融をめぐるいろんな対策というのは、一口に言えば決済システムの崩壊を防止するという観点から行われてきたものだと思います。そういうことがあるものですから公的資金を投入するということも正当化された、やむを得ないことだとされたんだと思います。  しかしながら、今回のように特定の第三者を対象にして第三者割り当てをする、しかも、気がついたところだけかもしれませんけれども、万一のときにはそれが返還されるような特約措置をつけておくというのは、どうも考えようによっては損失保証に近いやり方ではないか、少なくとも株式市場の公開性とか株価形成をゆがめることになりはしないかというような懸念を持っているわけでございます、これが大量に行われたらということですが。それと、金融機関のいわゆる公共性、社会性ということにかんがみていえば、そういう第三者割り当てというのをやっていいんだろうかという疑問があります。  そこで、大蔵大臣お尋ねするんですが、増資に当たって、この第三者割り当てというのは金融機関に限って規制する必要があるんではないか、それからもう一つは銀行同士の株式の持ち合いについても一定の歯どめを設ける必要があるんではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  45. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 前段のお尋ねでございますが、あのときに日債銀の救済について、当時の大蔵大臣がその必要を認められて大蔵省の管理、もちろんそうでございますが、何とか救済をしたいといろいろ努力をしたそのことの善意は疑いません。また、当時、今日のようなセーフティーネットのいろいろな法制がなかったということも事実でございましょうけれども、やはり奉加帳をつくって出資を勧誘するというようなことはそもそも極めて奇怪なことでございまして、法以前の問題でございましょうと思いますので、その中で今のような自己防衛策をとった人がいる。これはいよいよその前の、法以前の問題だという感じがいたしますから、どうもこれ以上今の段階で論評はできないという思いがします。  後段のお話は、確かにこうやっていろんな制度も変わってまいりました。また、旧制度から生まれたいろいろな弊害もお互いにわかってまいりましたから、今、寺崎委員の言われるような方向で考えていくことが恐らく方向としては適当であろうと思います。
  46. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 今後の御検討をぜひ進めていただくよう期待いたしております。  それから、先ほども大蔵省の幹部に対して民主党の有志が告発したということを申し上げましたけれども、私の周囲にいる人は、銀行が損をこうむったのに、あるいは日債銀の破綻が懸念されているような状況の中で増資したのに、実際にその普通株なり優先株なりが紙くずになってしまって、銀行とか保険会社とか出資したところは大蔵省に対して、大蔵省は保証したじゃないかと。でも、この大蔵省の保証といいましょうか、大蔵省が確認書を入れたということは、民間で言うと債務保証をしたと同じぐらいの重さで受けとめているわけです。それだけに、大蔵省に対して、例えば詐欺罪で訴えるというのが当たり前だろう、にもかかわらず被害をこうむった人が何も言わないのはおかしい、大蔵省はいろんな意味で圧力をかけているんではないだろうなということを言う人がいます。最後にその件について御所見を伺います。
  47. 村井仁

    政務次官(村井仁君) 当時の大蔵省がいろいろいたしましたことにつきましての見解、私どもの方で引き継いでいるという立場で申し上げさせていただきたいと存じますが、私どもからいたしますと、平成九年四月当時、日債銀の経営再建に当たりまして、当時の大蔵省関係者と寺崎委員が今御指摘の奉加帳方式というような形でいろいろやりましたこと、これは当時のセーフティーネットの整備状況などを考えますと、その当時においては大蔵省として最善を尽くしたということではあったと。しかしながら、結果として日債銀の再建は実現できず、また結果的にいろいろ負担をおかけした、その点は大変遺憾なことだと私どもは思っているわけでございまして、今後こういうことのないように私どもとしましても透明なルールのもとできちんとした金融行政をやっていきたい、そんなふうに思っている次第でございます。
  48. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 ありがとうございました。  終わります。
  49. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 改革クラブの浜田卓二郎です。公明党・改革クラブを代表して質疑をさせていただきます。  私の持ち時間は二十分しかございません。テーマを景気と金融とそれから財投とちょっと欲張っておりますので、少し早口で質問をいたしますが、簡潔なお答えを期待したいと思います。  第一番目に、大蔵大臣の御見解をお伺いしたいと思いますが、今、日出委員あるいは寺崎委員から景気についての御議論がございました。私はこういう見地から申し上げてみたいんですけれども、今の大蔵大臣のお気持ちをそんたくいたしますと、片目で国債の累積の状況をにらみながら、もう限界かなという思いがおありだろうと思います。そしてまた、もう一方の片目で企業家計の財布のひもの緩みぐあいをかたずをのんで見ている、早く緩めばいい、消費が出ればいい、投資が出ればいいと。言ってみれば我慢比べの胸突き八丁だという気がいたします。  私の考えでは、もう一息で財布のひもは緩む、そう思っているわけであります。設備投資が若干出てきたという報道がございまして、大臣も大変喜んでおられるようでありますけれども、ここが胸突き八丁で一番大事なときである。ですから、今一番求められるのは冷静なる情勢分析と、そしていろいろ議論が出てきておりまして、ひるむ気持ちもたくさん出てきているんだろうと思いますけれども、ここは必要な政策を果敢に打ち続けていく勇気が今必要なんじゃないか、私は個人的にはそう思っているわけであります。  昨年の補正による十八兆の景気対策、それから一昨年は二十三兆九千億の景気対策、これはよく言われるわけでありますけれども、いわゆる一昨年の景気対策が息切れをする、そして二〇〇〇年度の予算がスタートをするまでのすき間ができる、そこをこの十八兆の景気対策で何とか持続させて成長率プラスに持っていこうというのが十八兆の意味であって、つまり二〇〇〇年全体のGDPを押し上げる意味合いというのは、この景気対策にはなかったと言うとあれですけれども、そこが眼目ではなかった、そういうふうに私は受けとめております。  大臣は、二〇〇〇年度の予算でけりをつけたい、それが私の希望だというふうにおっしゃっておりますが、しかし同時に、先ほどの寺崎委員への質問のお答えとして、デフレ懸念が去ったとはまだ言い切れないというふうにもおっしゃっているわけであります。ですから、私は、今の時点でもうこれで景気対策は打ちどめです、財政の役割は終わりですとおっしゃるのは早計ではないかというふうに思っているわけであります。  もっと率直に言えば、ここで政策転換だというような感じがマーケットに出る、あるいは日本経済全体に出るということは果たしていいのだろうか。橋本さんのときのあの失敗も、私はあのときは現場におりませんでしたけれども、もうよくなり始めているという認識が余りにも楽観的に持たれ過ぎたことが大きな原因だったというふうに思います。  ですから、私はあえて、今、本予算審議の途中でありますから大臣に踏み込んだお答えを期待はできないとは思っておりますけれども、今申し上げた認識というのは大事だというふうに思うものですから、大臣の御見解を簡潔に承らせていただきたいと思います。
  50. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) そこは非常に難しいところでございますから、よく気をつけて物を考え、物を申さなければなりません。  少なくとも今御審議いただいております予算は、やがて可決をしていただければ執行されますので、これはこれから走るわけでございます。これはこれから走るわけでございますから、かなり期間は走ってくれます。そこまでは間違いありません、これをとめるとかいうことはもとよりどなたもお考えになっていないわけですから。これが二〇〇〇年をこれから走っていく、その走っている中で民需への経済の移行がどれだけ行われるか、そういうことでございますから、ここでこれをやめてしまうというようなことを申し上げているのではない。これはもうおわかりいただいておると思います。  それから先の、仮に九月とか十月とか、そういうところのことについてはうっかり物を言って逆の効果を与えてはならぬよと、そういう御助言は十分注意いたします。
  51. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 もう一つですが、金融がシステムとして安定に向かいつつある、そして財政大蔵大臣になられてからなりふり構わず拡大策をとってこられている。日本経済が、本格的回復は何ぞやという問答が今ございましたけれども、私もかなり回復に向かっているであろうというふうに思っております。  その場合に、私は、株価に期待するところが非常に大きいわけでありまして、一昨年秋の金融三法の成立以来、あとは株だぞと言い続けてまいりました。やっとことしの大発会で一万九千円台につけ、一時的には二万円台ということもあり、一万九千円台、きのう少し下がりましたけれども、定着してくれればいいなと思っておりますが、これが一つ先行指標になって企業あるいはまた個人家計が財布を緩めていく一つの手がかりになるだろう、そう思っております。  その場合に気になりますのは、アメリカの株価との関係でありまして、アメリカの株価は明らかに調整局面に入っているわけであります。グリーンスパンの御発言というものが非常に巧妙に調整を促しているという論評も読ませていただいております。ただ、私はアメリカの株価が下がるから日本の株価も下がらなければいけない、そういう心理的な呪縛といいますか、つながりというのがどうも断ち切れていないような気がするわけでありまして、一喜一憂が日本のマーケットの一つの上げを抑える要因になっているような気がいたします。  しかし、よく考えてみると、日米の資金の流れということで考えれば、むしろアメリカの株が下がるというのは日本では日本の株の買い要因だと言ってもいい面もあるわけであります。要するに、円高の要因と一緒でありまして、向こうでドルを売って円を買ってくる動きと同じ資金の流れのはずでありますから、私はそういう東京のマーケット関係者の心理的な米国株価への連動関係を断ち切る役割を政府が啓蒙的にやってもいいんじゃないか、そういう意見を持っておりまして、私自身は機会があればそういう言い方を随所でしてきているわけでありますが、大蔵大臣、そういうことを啓蒙的におやりになっていただくお気持ちはありませんでしょうか。
  52. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) あの島の方々は皆さん経験が深いし命がけですから、政府がちょっとやそっと言うことは私はしない方がいいと思っております。  ただ、アメリカの株価との関係は、恐らく私も浜田委員のおっしゃるような因果関係というのはきっとあるんだと思います。ただ、ウォールストリートが下げたときに、恐らくああいう方々はいずれのときにかアメリカにガラが来るだろうと、何となくそういう連想を持たれて、こっちもこうというんじゃないんでしょうか。しかし、このごろはどうもナスダックの方に関心を余計に持っておられるように思いますが。  ともかく戻りまして、株価に影響を受けるようなことは私はもう一切しないつもりでございますし、またとてもそんなこんなで動く社会ではなさそうに思っております。
  53. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 これは私がそう申し上げるのが目的の質問でありますから、お答えはそれで結構でございます。  次に、谷垣金融再生委員長に頑張っていただきたい、そういう気持ちから一問御質問をさせていただきます。  私は、昨年暮れのペイオフ凍結の延期、これは当時、大反対していたんです。それで、とうとう非常に暴力的な手段で決まっちゃったような気がしたわけですけれども、決まった後ちょっとがっくりして、そのせいか、どうも柳沢委員長のときは非常に緊張感を持って金融再生が進んでおったような気がするわけですが、何か心なしかがくっと緩んでしまったような気がして実は残念なんです。  そこで、谷垣さんにお聞きいたしますけれども、あのときペイオフ凍結にいろんな懸念がありました、内外に。いろんな懸念があって、私はそれはそれなりに正しい議論だったというふうに思うんですけれども、それを乗り越えて、あえて何で延期をしなければならなかったのか。本当の理由は何なのか。信用組合の話とか越智委員長の発言とかいろいろありましたけれども、そこは本当はどう考えているのか。そこに本当に延ばさざるを得ない理由があるんだとすれば、それは本当に一年で解決するのかどうか、そこの認識をはっきりとお示しいただきたい。  そして、やっぱり再生するんだという決意のもとに来ているわけでありますし、それをやらなかったら、今の日本経済の立ち直りというのも非常に危うい基盤の上に立つことになるわけですから、私は谷垣委員長期待するところ大であり、その決意も含めて今の点についてお答えをいただきたいと思います。
  54. 谷垣禎一

    国務大臣谷垣禎一君) 今、浜田委員からの御質問でございますが、昔、浜田さんと一緒にいろいろ議論をしたころを思い出しますと、逆に私の方が、浜田さん、あなただったらどうするんだということを聞きたいような気持ちでございます。  今、ペイオフ一年延期の本当の理由は何か、こういうお尋ねでございますが、こういうことを国会で答弁していいのかどうかわかりませんが、私も去年の暮れは浜田さんが今おっしゃったのと同じような議論をしておりまして、また違うことを答弁するのはなかなか正直言うとつらいところがあるわけでございます。  しかし、いろいろな議論の中で、今までは都道府県の監督下にある信用組合等、これはこの四月から国の管轄になるわけでありますから、そのもとで実態把握をしっかりしないといけないねという御議論がございまして、私はそれは確かに首肯すべきところがあるなと思っております。  そして、今までの法の仕組みも、こういう協同組合の組織に対しては、優先出資法にしてもあるいは早期健全化法にしても使い勝手が悪いところがあったのも事実でございますから、やはりそういう法改正もして、これから一年間きちっと検査監督もして、たえられるような体質につくっていこう、こういうことだろうと私は思っております。  そしてまた、では一年間にできるのかということでございますが、これはずるずるとしり抜けになるようなことであっては私は絶対いけないと思っております。それで、先ほど申しましたような法改正もこの国会にお願いをしておりますから、御審議をいただいてこれも早く通していただいて、そういう仕組みとあわせてこの一年間に必ずきちっとしたものに仕上げていきたいと思っております。  そして、どうもこのごろ金融再生委員会は少し緩んでいるのではないか、こういうお話でございますが、私が就任いたしましたときに職員に申しましたのは、この十年ぐらい、口の悪い方は失われた十年というようなことをおっしゃる方があるけれども、やはりその背後に金融システムの不安というものがあったわけだから、金融再生委員会あるいは金融監督庁がどれだけ頑張るかということがそういったことを乗り越えていく要するにかなめの問題なんだというようなことを職員に申し上げ、そして頑張ろうということを言ったわけでございます。  大変非力でございますが、いろいろ教えていただいて目的を達成するように頑張りたい、このように思っております。
  55. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 凍結期間というのは一つの特別な期間、それを一年延期して二年の特別な期間、時間ができたといえばそういうことでありますが、この間に思い切って日本金融システムの体質改善をやり、不退転の決意で金融再生をしていただくように、谷垣委員長の奮闘を祈ります。  最後に、財政投融資について、これから議論が始まるわけでありますから、これはもう私はしつこく何度も同じことを申し上げてまいりましたけれども、これから法案の審議も始まりますから、もう一度確認的に問題意識を申し上げて、御答弁いただければいただきたいと思うわけであります。  郵便貯金を財投原資から切り離した理由は何かということですが、それは財投諸機関が資金調達をする、そして事業を行う、そこにマーケットメカニズムを機能させよう、そしてマーケットを通じた資金調達面からの、逆選別と言うと妙な言い方ですけれども、それによって財投の事業が本当に必要な事業かどうかということを確認していこうというようなねらいだろうと、そういうふうに御説明もいただいております。そういう面もある、全くないとは私は申し上げませんけれども。  ただ、よく考えてみると、財投債を発行すればこれは国債です。それから、財投機関債だって結局発行できなかったらどうしようもないわけですから、私は政府保証がつくんだろうと思いますよ、結論は。そうすれば国債ですよね。だから、国債発行をして資金調達して、これがマーケットメカニズムでございますと言うのにはいささか説明として迫力を欠くというふうに思うんです。だから、むしろ出口、つまり財投機関が国策として金融をやり、各事業をやることが今の時代に本当に必要かどうかというのは、やはり事業そのものを、金融そのものを点検することが先ではないか、そういうふうに思います。  岩井委員もおられますけれども、我々は行政監視委員会で、そういう観点から長期テーマとして財投機関の総点検というのを今やり始めておりまして、この間は年金福祉事業団がなぜ赤字を出したかという解明の質疑をやらせていただきました、株価が戻ってきて大分改善をしたようでありますけれども。  ですから、私は、本当に国の施策としてやる必要があるかどうかということの吟味を財投改革で徹底的にやらなければ財投改革という名に十分値しないことになるのではないか、いまだにそういう疑問を持っております。  そして、もし本当に国の施策として必要なことである、国策事業として必要であるということであれば、私は見回してみて一番使うべき資金というのは郵便貯金だと思うんです。国債はもういっぱい発行し過ぎるぐらいしているんですから、これから財投債をまたいっぱい発行するということもどうも屋上屋みたいな気がいたしますし、税金以外にほかに国が使える資金というのはないわけですから、やっぱり郵便貯金が一番そのためにあるんじゃないか。この点についてどう思われるかが一つです。もう時間がありませんから簡単にお答えいただきたい。  もう一点は、そういう観点からすれば郵便貯金とは何かということです。私は、国策として資金を集める、それは国策としてやる事業があるからそれに必要な資金を集めるというのが発端ではなかったかと思うんです。ですから、郵便局長さんたちもお役人、準公務員であります。そういう国の機関を使って資金を集めて、ではその資金で何をやるんですか。私はそれが財政投融資だったと思うんです。だから、輝かしい郵便貯金の歴史が築かれてきたと思うんです。  ところが、財政投融資は郵便貯金ではやりませんと切り離しちゃったんですから、それでは郵便貯金の目的は喪失されたということですよ、逆に言えば。だから、財政投融資にかわる新しい国の事業でも何かつくるのであれば郵便貯金は必要ですよ。しかし、自主運用というのは新しい国の事業ではあり得ないんですよ。  悪口を言えば、目的のない巨大資金が量的に限りのある日本の金融マーケットをさまようようなものだと。私はそんな目的のために郵便局長さんたちに貯金を集めさせるのはむしろ失礼だというふうにすら思うわけでありまして、郵便貯金を大事にするのであれば、それは何のための資金であり、我が国の広い意味の金融の仕組みの中で、あるいは国の制度の中でどう位置づけるかというのをしっかり見きわめた議論をしておいてもらわないと、切り離したから財投改革ですという話は極めて不十分であるし、説得力を欠くというふうに思うんです。  もう時間が過ぎていますから一言ずつ、前田さんと大蔵大臣に。
  56. 前田正

    政務次官(前田正君) それでは、先生御指摘の点につきましてお答えをいたしたいと思います。  先生御指摘のように、郵便貯金事業のあり方につきましてはこれまでもさまざまな御意見が出ておるものと承知をいたしております。郵便貯金は専ら小口個人を対象にした貯蓄手段として国民、利用者の支持を受け今日まで発展してきたものと認識をいたしております。  今回の財投改革に関連をいたしまして、郵便貯金資金につきましては、資金運用部への預託を廃止し、その全額を市場において自主運用することとしております。これは財投に必要な資金だけを市場から調達する仕組みへと抜本的に転換するという趣旨でもございます。  郵便貯金事業はこれまで財投に資金を供給してまいりましたけれども、郵便貯金法第一条に規定されているとおり、郵便貯金事業は「簡易で確実な貯蓄の手段としてあまねく公平に利用させることによつて、国民経済生活の安定を図り、その福祉を増進することを目的」としているものでございまして、必ずしも財投資金の調達を目的として設置されたものではないというふうに考えておるところでございます。  したがいまして、郵便貯金事業の目的は全額自主運用となっても変わることはなく、特に昨今、金融ビッグバンが進展して、欧米に見られるような金融サービスが地域間格差や顧客間の格差を生む懸念が指摘されている中、小口個人利益の確保を目的として基礎的金融サービスを全国あまねく公平に提供する郵便貯金の役割がむしろ重要になっておるというふうに思われます。  また、郵便貯金資金の自主運用につきましては、市場において安全で確実な債券を中心に運用を行っていくことを基本といたしておりますので、御理解のほどをよろしくお願いいたします。
  57. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 今までのシステムは、何十年、功罪半ばするというよりは、私はなかなか功の方が多かったと思いますが、いわゆる財投機関というものがいろいろに言われて、これはやっぱり金がちゃんと間違いなく行くからだろうと言われるようなことになりましたし、変えるのも一案だなと。いろいろございますよね、功も罪も。まあしかし、いいんじゃございませんかね。  それで、財投債は国債でございますけれども、財投機関債と言われたら、それは政府保証をつけるのはおかしいと思いますね。
  58. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 時間ですから終わります。
  59. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 日本共産党の池田幹幸でございます。  先ほど来、景気論議がなされておるんですが、私はどうしても大蔵大臣のおっしゃることは納得がいかないといいますか、成長軌道に乗ったという判断をされたわけですけれども、その論拠となさるところは設備投資、これが四・六%増と三期ぶりにプラスになったということなんですね。しかし、GDPは二期連続でマイナスになったわけですし、そして先ほど来お話にあった個人消費GDPの六割を占める個人消費について見ますと一・六%のマイナスということで、これは二期連続のマイナスなんです。結局、GDPの一五%を占める設備投資で少し上向きが見えたというだけのことで、何でこれが成長軌道に乗ったとまで判断できるのか。  私は何も景気が悪いことがいいと言っているわけじゃないので、景気回復を望んでいることは変わりないんですけれども、しかしその判断が、私としては、その軌道にも戻っていないのに戻ったといった形で判断するとすれば、それはまたまた大きな害悪を流すというふうに考えざるを得ないんです。  その消費不況と言われる現実について見れば、今申し上げましたように、結局一層深刻化しているんじゃないかと私は考えます。今の企業の増益にしましても、減収増益という形で、むしろリストラ、人減らしによるところが大きいわけでしょう。こういった中で見ますと、サラリーマンの実質所得という点で見れば七期連続マイナスになっております。そこへもってきて、リストラは計画段階、始まってまだまだこれから実施されていく段階なんですから、そういう点では雇用不安というものもより一層増大してきている。  それこれ考えますと、今の段階で景気成長軌道に乗ったとか自律的回復に向かい始めたとか到底言えないんじゃないか。昨年来、景気最悪期は脱したといって、政府は緩やかな回復期にあるとずっと言い続けてこられた。結局、今の状態というのは私はそんなに変わっていないと思うし、今の指標で見ればむしろ悪くなっていると見るのが自然じゃないかと思うんです。  そういう点では、けさの報道でも、エコノミストの中ではそういった政府の判断には違和感を覚えるというコメントも何人かありましたけれども、私は国民から見ればある意味では政府の判断というものに対してむしろ不信感が生まれてくるんじゃないかというふうに考えるわけです。  そういう点で、大蔵大臣、いま一度その判断について御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  60. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 昨日発表されましたQEで、私が、設備投資が久しぶりにプラスになった、ここは評価していいと申しましたし、これが我が国民需主導の経済回復の主力になる、一遍回復しましたら、そう簡単にまたマイナスになるということは恐らくないように思いますと、こう申し上げているわけですが、他方で、消費の方は、先ほども申し上げましたが、十—十二が悪かった、これはもうリストラ等々でいろいろな理由があって、当然予測していましたから、一—三になり四—六になれば回復するんじゃないかと。これは確かにおっしゃいますように希望的な見方でございます。はっきりそうなると申し上げられるわけではないが、しかし私はそうなる公算の方が大きいと。それほど十—十二は悪かったというふうに私は思っていますけれども、それは池田委員のおっしゃるように違うかもしれないということは、全く違う、そんなことはございませんとも別に申しません。  恐らく民間のけさあたりの一つの批評は、平成十一年度、年度で〇・六%の成長政府は言っている、そのことについての疑問を呈しておられる向きはあったと思うんです。計算しますと、六・三、三・九、マイナス三・九、マイナス五・五で、最初をとりますと、あと残っております一四半期は二%入り用でございますから、二%というのはなかなか大変だなと。私はそういう疑問を呈せられる向きはあると思いますけれども、それでも平成十一年度がマイナス成長になるとは私はやっぱり思えません。プラス成長になるということには変わりはないと思っていますが、その〇・六そのものというお話なら、それはなるほど二%はちょっときついかもしれないという感じはいたしますけれども、ここでもう明らかに経済民需主導に変わりつつあるという判断は、これはそれこそ半年もすればわかることでございますけれども、私はそう思っております。
  61. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 不信感と私が申しましたのは、昨年秋に最悪期を脱したということで成長率〇・六%というように上方修正をなさった、それをまた今になると、もう二、三カ月で〇・六はやっぱり危ないぞという形になってくるというところにあるんだと思うんです。  日本共産党がもう昨年来ずっと訴えてきましたのは、消費不況を脱するためには個人消費に対する直接的なてこ入れが必要だということで、私もこの場で何度も消費税の減税ということを訴えてきたわけなんですけれども、そういった点では依然として個人消費回復していないと言えると思うんです。片一方、私たちは財政再建が今景気対策としても重要になっているということも訴えてきました。そういう点で、きょうは、しつこいようですけれども、財政再建の問題についていま一度論議してみたいというふうに思います。  先ほど日出委員質問への御答弁にもあったんですけれども、直ちに財政再建に着手するとか再建方向を出すという方向にできる段階にはないというお答えでした。私は三日の予算委員会宮澤大蔵大臣の答弁をちょっと読ませていただいたんですけれども、ここでは財政再建問題につきまして、二〇〇一年一月の中央省庁再編後直ちに財政再建路線へ転じる準備に着手するというふうにおっしゃっているんです。準備に着手するという意味は、再建策をすぐ出すということじゃなくて、財政再建路線に復帰する時期に関しては、二〇〇一年は問題外、二〇〇二年か二〇〇三年あたりからそういう考え方が起こってくると言っておられるわけです。そうしますと、もうことしじゅうは財政再建の方向は出せないということを言っておられるんだと思うんですが、これは確認ですけれども、国民にはことしは期待できないよと、こういう方向に財政再建していくんだということすらことしはお出しにならないということなんでしょうか。
  62. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 今、速記録をお読みになりましたときに、これは私の私見でございますがということを申し上げていることをつけ加えさせていただきます。  まず、ことしの経済のこれからの動きにつきましては、私は、いずれにしても再建ということを考えるときには、日本経済がはっきり回復軌道に乗ったということを確認しなければならないと考えております。池田委員がことしの経済回復に向かうということは実は疑わしいよと先ほどおっしゃっているわけですから、疑わしいときにできるわけはないわけです。私はもう少し疑わしくないと思いますが、しかしそれはまさにことしだけちょっと見てというわけにはいかないと思います。  しかし、私見でございますがと申し上げましたのは、財政再建考えますと、私は二十一世紀の初頭における諸問題が全部絡んでくるんだと思っております。中央、地方関係だとか、税制はもちろんですが、あと社会保障の水準であるとか、恐らく日本経済社会というのは、アメリカがそうであるように、うまくいけば随分変わるのは二十一世紀の初めではないかと思いますから、そういうことを考えますと、財政だけをそろばんはじいてプラス、マイナスを合わせるというようなことはできないのじゃないか。  全部のことをやるとすれば、やっぱり国全体としてのマクロモデルをつくって、つくったから当たるというわけじゃありませんけれども、今のこの社会でそろばんだけでやれということは恐らく私は通らないと思うので、マクロモデルをつくって整合的なモデルの中で財政あり方議論するしかないと思いますものですから、そのことは半年やなんかではできないと思います。従来の経験でしたら一年はかかると思わなければなりませんし、いわんや先のコースがよく読めませんから余計そうだろうと思いますので、それでその作業はなるべく早く始めた方がいい。  しかし、結果が出ますのにはやはりそれなりの時間がかかるということを申し上げようとしたのでございまして、これは私見でございますから、そのときの内閣がそういう方針をとられるかどうかわかりませんけれども、しかし少なくともここに提起されている問題は財政だけの範囲で片づけられることではないという思いはしておるわけでございます。
  63. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 景気回復軌道に乗らなければつくれないというお考えは、これはもう前々から伺っているのでそのとおりだと思うんです。ただ、私たちは景気対策としても財政再建の方向を今示さなければならないという主張をしているわけです。そういう違いがあるということをまず申し上げておきたいんです。  さて、日本財政が破裂寸前の時限爆弾を抱えた状態だというふうに言われたのは九五年の財政審報告です。今から四年ちょっと前なんですが、そのときの財政事情より今もっと悪くなっているわけなんです。大蔵大臣、今の状態、二〇〇〇年度末で国と地方を合わせて六百四十五兆円、それが対GDP比一二九%になろうとしている、こういう状況を言葉ではどう表現なさいますか。財政審は五年前には破裂寸前の時限爆弾を抱えた状態と言っておったんですが、大蔵大臣は今の状態をどう言葉であらわされますか。
  64. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 現実の事態が非常に深刻でございますから、言葉であらわすなんという程度では済みませんで、やっぱり少しでも翌年の国債を減らしていきたいというようなせっぱ詰まった事態という感じがしております。
  65. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 ともかく私はもう破裂までの秒読み段階に入ったとしか言いようがないんじゃないかというふうに感じておるんです。今おっしゃった意味で、少しでも国債発行額を減らす、それから国債の利払いも下がる方向に持っていきたいと思っておられるんだと思うんですが、それはそれで結構なんですけれども、それでは少なくとも、昨年の二月、小渕総理の諮問機関であります経済戦略会議、ここで言っておられたことを思い起こしていただきたいんですけれども、「日本経済が本格的な経済改革を遅らせ経済の再生が実現できない場合には、財政はもはやサステイナブルではなくなる。」と。持続可能ではなくなるということなんですが、私も既にそうなっているんじゃないかと思うんですけれども、続けてこう言っているんです。「中長期的に財政バランスが改善に向かう道筋を今のうちに明確に示しておくことが、萎縮した消費マインドの改善や市場の金利上昇懸念を払拭するためにも極めて重要である。」ということで、まさに先の話ではなしに今の問題として財政再建の道筋を示す必要があるというふうに昨年二月言っておられたわけです。これは小渕内閣の共通の認識ではなかったんでしょうか。
  66. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それはごもっともで、それに反対はありませんけれども、しかし計数的に申さない限り、恐らく信憑力は乏しいと思いますね。
  67. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 計数的に示すとすると今おっしゃったように少なくとも一年はかかるというふうなことになるわけだし、そしてまた景気回復軌道に乗らなければできないとおっしゃるわけだから、とてもじゃないけれども政府にそれは期待できないということになってしまうわけですが、しかしここで言っているのは、景気対策としてもそれが重要なんだ、道筋を示すことが大事なんだと。戦略会議で言っているのも、計数まで示せと言っているんではないだろうと私は思うんです。私たちは、何といいましても一番の原因を追求して、それを変えていく方向というのを国民の前に示すことが大事なんじゃないかなというふうに考えているんです。  そういう点で、きょうちょっと資料を用意させていただいたんですが、これは大蔵省が出された財政中期展望に基づいて二〇一〇年まで少し引き伸ばしてみたんです。これは大蔵省が設定された条件をそのまま受け継いでやったものなんです。大蔵省にお願いしたけれども、そんなものはつくれないという話だったので私の方で準備したんです。  これでいきますと、結局ここであらわれている数字は、今の財政構造、経済政策をこのまま続けていけばとても展望の見えない状態に日本経済は陥ってしまう。もう二〇〇七年か二〇〇八年には、一般歳出伸びをゼロ%に抑える、名目成長率を三・五%に想定するとしても国と地方債務残高は一千兆円を超えていくというとんでもない状況になる。  これは否定できない状況だというふうに思うんですが、大蔵大臣、この試算はどうごらんになりますか。
  68. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) いわゆる中期展望予算委員会に御提出いたしましたときに、そのころの議論は池田委員も当然御存じでいらっしゃいますけれども、非常に簡単に申しましてこれはプロジェクションでございますから、プロジェクションで考えている限り、なかなかこの問題についての解決策はないということでございます。したがいまして、いろんな政策努力が、これは政策努力を前提といたしておりませんから、それを考えない限りこの問題についての解決はないと。いろんなことを言っておりますが、一番中心はそういうことを申しておると思います。
  69. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 私もそうだと思うんです。だから政策努力をしなければいかぬ。少なくとも今の経済構造経済政策をこのまま続けておる限りこうなるんだということはここではっきりあらわれていると思うんですね。  では、どういう方向に変えていかなければいかぬのかということに話がなると思うんですけれども、私はそれを考える前にまず一つアンケートを紹介しておきたいと思うんです。  これは二月十五日付の日経新聞のアンケートなんですが、ここでは、財政景気刺激策の関連で、「財政支出を拡大し国民負担が増えても景気回復をはかるべきだ」、それともう一つは「景気が停滞しても財政支出を抑制し国民負担が増えるのを避けるべきだ」と二つ並べまして、どちらですかと聞いているんですね。それを見ますと、「国民負担が増えても景気回復をはかるべきだ」というのが二二・八%で、「景気が停滞しても財政支出を抑制し国民負担が増えるのを避けるべきだ」が六八・八%なんです。六八・八。圧倒的に財政再建を求める声が強いんだということをまず一つ御紹介しておきたいと思うんです。私はこれが国民の声だというふうに考えるわけなんです。  そこで、昨年末のOECDの対日経済審査報告書、これを見ましても、そこに書いてある内容は私たちはほとんど賛成できない内容が多いんですけれども、一つ、少なくとも今の日本財政政策について書いているところについてはやっぱり考えざるを得ないものがここにあるんじゃないかというふうに思います。  大蔵大臣もお読みかもわかりませんけれども、そのさわりの部分を見ますと、二〇〇〇年以内に債務が対GDP比で一一四%に達する状況というふうに見ているんですが、これは少し甘いと思うんです、現在ではもう一二〇%になるということですからね。それにしてもこれはイタリアとほとんど同じでひどい状況だと。軌道修正がない場合、急速に債務が大きくなると書いてあります。当たり前です。「したがって、長期債務残高の対GDP比率の収束点が過重にならないように十年以内に予算改革期を終了するのが妥当である、したがってこの議論は二〇一〇年にいかなる状態が必要とされるのかという評価が基準になる」、こう言っているんです。  私は、プライマリーバランスを十年以内に達成するというのはちょっと、それがいいかどうか、そういう目標を設定するのがいいかどうかというのはありますけれども、しかし債務残高GDP比の増加がストップする時点を一定程度きちっと定めて、そしてそれに向かって財政構造を変えていくという点では非常に意味あるものだというふうに考えるんです。しかも、それを今着手しなきゃいかぬということをOECDも言っているんですが、大蔵大臣、いかがお考えでしょうか。
  70. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 景気がどうなってもいいから財政が大事だと、五十何%ですか。日本じゅうにそんなに大蔵大臣がおられると幸せでございますが、そういう問題の出し方をすればどうしてもそういう答えになる、それはわかります。  それで、今おっしゃいますように、どっちみちこの債務の増加というのをどこかでとめなきゃならないわけですから、今おっしゃったようなプライマリーバランスを目標にするのは一つの行き方だと思うんですが、プライマリーバランスというものを国民にわかってもらうための全体のフレームということにやっぱりならざるを得ない。何でそうなのか。それは社会保障であるとか税制であるとかいろんなものからそういうことになるんですと。それでも、マクロモデルでそれをつくっても、今度はそうなったら、それ自身、国民のうんという御承認を得るというのは、その中には歳出の削減もあるし歳入の増加もございますから、最初のスローガンだけはいいんですが、いいですか、歳出はここを減らします、あそこを減らします、歳入はここをふやします、あそこをふやしますと、そうなったときに、やむを得ないんだなというだけのフレームの中でそれを提示しなければならないというふうに思っておるわけでございます。
  71. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 さっきのものは、景気がどうなってもというのじゃなくて、景気回復がおくれてもということですから、その辺は、そんなむちゃくちゃなことは言っていない。これは日経のアンケートですから。  それで、今おっしゃったことは非常に大事だと思うんです。財政再建には歳出の削減もあるし増税もある、国民負担増というのがあるということなんですが、どうも私は最近、新聞報道あるいは委員会の答弁等を伺っていますと、大蔵大臣は歳出削減の方は余り言われないで、こう言っているんです、経済回復すると国民の皆さんにいろいろ負担をしてもらわざるを得ない事態になると。国民に負担を求める方を先に言っておられるように、かなり気になる御発言があるんですが、私は今の財政をここまで悪くした最大の原因はまず歳出構造にあるというふうに考えるんです。  そのことを今から論議したいんですけれども、OECDの先ほどの報告書の中でも、いろいろ言っておりまして、国民負担増の話もあるんです。あるんですけれども、しかし可能な、一番大事な対策は歳出削減だと。しかも、それが公共事業にあるというところまで書いているんですね。  そういったところで、私は、歳出構造の削減、公共事業の削減に焦点を絞った対策を立てるべきだというふうに考えておるわけなんですが、その点で、きょう経済企画庁に来ていただいておるので、一つだけ確認しておきたいんですけれども、昨年末のミニ経済白書、ここでは、今の財政赤字の主な原因は構造的要因にあるんだ、これが九割方だというふうにたしか言っておるんです。その構造的要因というのは、もちろん先ほど言いましたように公共事業もあるし増税もあると思うんですけれども、主に公共事業にあるということじゃないかと思うんですが、ひとつ御答弁願います。
  72. 牛嶋俊一郎

    政府参考人牛嶋俊一郎君) 御指摘の構造赤字の話は恐らく平成十二年版「日本経済の現況」という経済企画庁の方で出しております「経済の回顧と課題」の方の分析だというふうに存じております。  その中で、九一年以降、九一年度から九六年度の間に財政赤字が拡大したもので、構造的な財政収支が六・九%赤字拡大で寄与していると。一般政府財政赤字の七・六%の大半を構造的な赤字の拡大が占めておるという指摘をしているところでございます。この中には、財政政策として景気を下支えするような支出も含まれているというふうに承知をしております。
  73. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 結局、公共事業が大半を占めているというふうに思うんです。というのは、その表現の中に「九〇年代に行われた累次の経済対策は景気の下支えに一定の役割を果たしてきたが、同時に、これは構造的財政赤字を代償とする成果でもある。」という言い方で書いております。  何といっても、今の日本公共事業、私たちは公共事業に五十兆円、社会保障に二十兆円という表現をしてきておりますけれども、もちろん五十兆円が全部税金でということではございません、これは財投もありますし。しかし、九〇年代の、特に九二年の宮澤内閣の総合経済対策以来のそれを見てみますと、トータルで百九兆円になるんですか、九回で。そのうち七十兆円近くは公共事業ということになっておりますから、それがまさに景気回復の代償として、構造的財政赤字の代償としてやられたということなんですから、このやり方を変えていかなければならないというふうに思うんです。  諸外国と比べても、日本公共事業は断トツなんてものじゃない、二倍、三倍ですから。こういった構造を変えていけば本当に歳出削減に大きな効果を果たせる、これはもう間違いない。しかも、公共事業景気対策としてそんなに役立たなくなっているという現実もあるわけです。それどころか、建設国債をどんどん増発してやっていく、これでもって赤字をどんどんふやす、債務残高をどんどんふやす。そのことが逆に景気を悪くする要因になってきているということなんですから、もうこういうやり方はやめなければいかぬ。  少なくともそういう方向を今出す必要があるんじゃないかというふうに私は思うんですが、どうですか。
  74. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 公共事業が旧態依然たるものであるという御批判は長いことありまして、私どももそれは随分反省をいたしております。  昨年の秋から、いわゆる経済新生対策ということで、構造的なもの、少子化対策、環境対策、そして情報通信と、この四つの柱に整理いたしまして、今、全部の公共事業の大体二割二分ぐらい、そういう分類でございますので、随分それは直してまいっておるつもりでございます。そして、工事を中止したものもありますし、これはいろいろ反省しなきゃならぬということは正直思っておりまして、それは進んでおりますし、ミレニアムのような仕事も出ております。  それを申し上げました上で、しかし日本公共事業が西欧の先進国に比べて多いというのはやはり日本のインフラストラクチャーが十分でない、率直に言って私はそうだというふうに先ほどの反省を申し上げました上で思っております。それは、大部分の国会議員の皆様が地方からお頼まれになることはやっぱり公共事業に関連したことでありますし、実際、例えば下水道の普及率なんというのは陳腐な例ですけれども、それ一つとったって、また洪水があったり山崩れがあったり、確かにインフラストラクチャーは我が国はまだ極めて不十分だというのは私は事実だと思うのでございます。  ですから、先ほどの反省は申し上げました上で、公共事業はなるべくやめた方がいいというふうに共産党の方々がずっと従来御主張ですが、国民一般の、殊に地方公共事業についての要望は依然として大きいという事実、その間に不正があるとかむだ遣いがあるとかいうことはこれはもう反省いたさなければなりませんが、公共事業というものを国民の多くが、殊に地方の人々は一番大事に考えているということはどうも私は事実ではないんだろうかと。  こだわって申し上げているつもりではないので、それならこんなふうに申し上げませんけれども、どうも私はそこのところが十分納得できておりません。
  75. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 私たちは公共事業をなくせばいいなんて一度も言ったことがないので、余りにもむだ遣いが多過ぎるということと、むだ遣いがなされるのは公共事業のやり方、まず総額を決めてやるというやり方にあるんだということをずっと申し上げてきたんです。そういう総額先にありき方式をやめれば大幅な削減が可能だということも訴えてまいりました。  しかも、その総額先にありきが、残念ながら日本の場合は九〇年代に入ってからの日米構造協議以来、公共投資基本計画がつくられるわけですけれども、この公共投資基本計画が日米構造協議での対米約束に基づいてやられたと。九〇年と九四年にまたさらに改正されて、今、十三年間の公共投資基本計画をつくっておりますね、九五年以来の。それを見ましても、結局、年間五十兆円レベルの公共事業をやらなければいかぬことになるんです、二〇〇七年まで。これはずっと続けなければいかぬということになってしまいます。  るる見てみますと、九〇年以来、九一年の公的資本形成三十一兆円から始まって、九八年の三十九兆円もあるんですけれども、用地費が加わってきますから大体トータルで五十兆円レベルがずっと続いているんです。これをやらなければ対米約束を実現できないんですね。  こういう対米約束や公共投資基本計画はもうやめて、もう一度本当国民に何が必要なのかということを積み上げていくやり方、そういう方向に公共投資のあり方というのは変えていかなければならないんじゃないかというふうに考えております。  時間が参りましたのでこれで終わらせていただきますけれども、引き続きこの問題については 論議していきたいと考えております。  終わります。
  76. 三重野栄子

    三重野栄子君 社民党の三重野栄子です。  財政投融資関係と日賦貸金業関係、二点につきましてお尋ねいたします。  まず、財政投融資関係につきましては大蔵大臣お尋ね申し上げます。  平成十二年度の財政投融資計画は、郵貯の集中満期という特殊要因もありまして、全体としては対前年度比一七・四%減となっております。けれども、いわゆる一般財投についてはわずか四・八%の減と、それほど大きな切り込みはなされていないように思うわけでございます。この程度の切り込みでは郵貯の集中満期により原資が不足する中で大丈夫なのかと心配していましたけれども、案の定、本年一月十四日の日経新聞によりますと、大蔵省は財投機関に使い残しを出すよう促す方針であるとの報道がなされています。  そこで、大蔵大臣お尋ねするわけでございますが、大蔵省が財投機関に使い残しを出すよう促すということは本当でしょうか、事実でしょうか。もし事実であるならば、計画段階から一般財投に対しより大胆な切り込みをすべきではなかったのかと思うのですけれども、その点に関しまして大臣の御所見をお伺いいたします。
  77. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 一般的に、財投でも、これは一般予算でもそうでございますが、使い残しをなるべく出してほしい、これは使わないでいいのならばちゃんと残してほしいということは言っておりますから、財投でも同じことを言っておると思います。  それからもう一つは、財投の場合、多少特殊でございましたけれども、住宅関連で、住宅金融公庫が多いと思いますが、繰り上げ償還がございまして、有利なものですから、それで金が余ってきたという問題はございますけれども、しかし一般的に残してくれ、要らぬものは残してくれということは申しております。
  78. 三重野栄子

    三重野栄子君 そういう特別なことがございましたですね。  平成十三年四月からスタートする財政投融資改革におきまして、大蔵省政府短期証券を短期の財投債として発行する方針であると承知しております。  そこで、昨年十二月の本委員会で、こうしたものが発行されれば日銀に対して引き受け要請が高まるのではないかという質問を日銀総裁にさせていただきました。日銀総裁の答弁は、できることなら市場で売買が行われていくのが望ましく、日銀の引き受けは視野にないという趣旨のものでございました。  政府短期証券の引き受けをめぐって、大蔵省と日銀の認識にギャップがあるということはございませんでしょうか、お尋ねいたします。
  79. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 財投債は国債でございますから、そういう意味国債に対して持っております私どもの方針は財投債にも適用されますので、日銀にそういう意味で御迷惑をかけるつもりはございません。
  80. 三重野栄子

    三重野栄子君 次に、財政投融資の規模の問題についてお伺いいたします。  財政投融資計画の残高は平成十年度末で四百兆円を突破するなど、まさに肥大化しております。平成九年十一月に自民党の行革推進本部が出した「財政投融資の改革について」では、十年後に財政投融資残高の半減を目指すと大胆な目標を掲げられております。  平成十三年四月にスタートする財政投融資改革がうまくいくとするならばどの程度の規模のスリム化が図れると大臣はお考えでしょうか。自民党の行革推進本部が掲げました十年後の半減という目標は可能だと考えますか。具体的な目標をお聞かせいただきたいと存じます。
  81. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) そういう作業をひょっとしたら内部でしておるかもしれませんけれども、それを今申し上げることは非常に難しいと思います。できれば、いわゆる財投機関というものは、御存じのようにこれからは財投から金をもらうのではなくて、機関債を出して自前でやれと言っておりますのは、自前でできないものはもう退場しろと、物によりますけれども。そういうふうな考え方でございますから、そういう意味で退場するものも出てくる。全部がそうなったらいいとまでは申しませんけれども、経済法則で生きられないものはというところへなるべく考えていくのがいいですから、そういう意味で少なくなっていくことは歓迎でございますけれども、市場がどういうふうに考えるかにもよりますので、ちょっと今その数字を申し上げる準備はございません。
  82. 三重野栄子

    三重野栄子君 では、日賦貸金業の関係につきまして一、二お伺いいたします。  日賦貸金業者に関する問題でございますが、近時、日賦貸金業者にまつわる被害が目立っております。地方財務局や都道府県に寄せられる日賦貸金業者に関する苦情件数、内容の傾向はどのようになっていますでしょうか。以前から問題が多かったのですけれども、内容に変化があるのでしょうか。その点をお願いいたします。
  83. 乾文男

    政府参考人(乾文男君) 日賦貸金業者につきましては、そのほとんどを都道府県が所管しているわけでございますけれども、現在、都道府県と大蔵省の財務局に依頼をいたしまして、その実態の把握に努めているところでございます。  ただ、苦情でございますけれども、内容的に深刻なものもありますし軽微なものもございます。それから、苦情の申し立ての内容だけから見ますと、日賦貸金業者のものであるのか、あるいは普通の貸金業者のものであるのかわからないということもございまして、実態把握に努めておられる都道府県におきましても、数量的に把握することはなかなか難しいというふうに感じておられると承っているところでございます。  現在のところ、都道府県や財務局に寄せられました苦情につきまして、そういうことから定性的に見ますと、出資法上貸し付けの対象にならないサラリーマンや主婦の方に対しまして融資の勧誘、貸し付けを行っている事例がある、また出資法上百分の七十以上の日数にわたりまして取り立てなければならないということになっておりますのに、債務者に口座振り込みをさせたりとか月払い契約をしているといった事例があるという苦情、また取り立てや貸し付けの利率をめぐるトラブルがあるという苦情が寄せられているというふうに承知をしているところでございます。
  84. 三重野栄子

    三重野栄子君 その点に関して、部長の方としては、なぜそうなのか、原因はどこにあるのかということの御検討はございましたでしょうか。
  85. 乾文男

    政府参考人(乾文男君) 先般の国会での議員立法で一般の貸金業者の貸し出しの出資法の上限金利が引き下げられたことからそういうことになっているのではないかとか、そういう御指摘をよくいただくわけでございますけれども、金融監督庁は、この貸金業法につきましては、行為規制、借り手の保護の観点からの行為規制がこの法律の趣旨でございまして、貸金業者の経営の内容とか動機とかということに対して知る法体系になっておりませんので、その点につきましては承知しておらないというお答えにならざるを得ないことを御了解いただきたいと思います。
  86. 三重野栄子

    三重野栄子君 どうもこの件がいろいろ起こっているのは九州の方が多うございますものですから、何度もしつこく伺いまして恐縮でございます。  そうしますと、それはそういう規則というか規定とか、そういうのがないことに問題があるんじゃないでしょうか。いかがですか。
  87. 乾文男

    政府参考人(乾文男君) まず、承知しております実態の方から申し上げますと、今、先生御指摘になりましたように、九州・沖縄地区の貸金業者が多うございまして、全国で約二千二百件弱日賦貸金業者がおりますうち、四割強が九州・沖縄地区ということになっているわけでございます。  私どもは、都道府県等を通じまして、そうした数でございますとか、それから苦情の実態につきましてできる限り把握するように努めておりますけれども、現在の法体系のもとでなぜふえているとか、そういうことについては知る手段がなかなかないということは御理解いただきたいと思うわけでございます。
  88. 三重野栄子

    三重野栄子君 いろいろと御説明いただきましたけれども、ここ数年、貸金業者全体の登録件数が減少しているにもかかわらず日賦貸金業者は増加しているということも考えられる。今も二千二百件ということでございましたけれども、トラブルを起こす業者の多くは他の貸金業からの転業組を含めて近年登録を行った業者であるという実態も聞いておりますが、そこらあたりはいかがでしょうか。
  89. 乾文男

    政府参考人(乾文男君) 今、先生の御指摘にありましたように、貸金業者の数は全体としては減少しておるということで、ちなみに申し上げますと、平成九年三月末、十年三月末、十一年三月末で申しますと、貸金業者の数は三万一千六百六十八、三万一千四百十四、三万二百九十というふうに減少してきておりますけれども、他方、日賦貸金業者の数は、その間、千八百四十七、二千三十五、二千百八十一というふうに増加をしてきておるわけでございます。また、その二千百八十一、十一年三月末のうち、その九七%に当たる二千百十が都道府県の所管業者ということになるわけでございます。  先ほどの実態把握の中で都道府県にいろいろ尋ねておりまして、都道府県の方でもいろいろなことをやっていただいているようでございますが、今まで尋ねました限りでは、都道府県の方でもなかなか数がふえている要因というのはわからないというふうなお返事をいただいているところでございます。
  90. 三重野栄子

    三重野栄子君 商工ローンの問題ではいろいろと伺った後でございまして、今度は日賦貸金業の関係で問題が出てくるかと思いますけれども、就任早々の谷垣再生委員長そこらあたりにつきまして、今後のことを含めてお話しいただきたいと思います。
  91. 谷垣禎一

    国務大臣谷垣禎一君) 日賦貸金業者につきましては、委員の御出身である九州方面で、しょうけつをきわめているという言葉を使っていいのかわかりませんが、大変問題があると聞いております。  先ほども監督部長の方から御答弁申し上げましたように、今、鋭意実態把握に努力をいたしておりまして、まず都道府県と財務局と連絡を密にしなければならないということでやっております。そして、ことしの二月に各財務局の担当者を集めて会議を開催して、そしてこの問題について意見交換を行いました。  こういったことを踏まえまして、各都道府県や財務局に対しまして、貸金業規制法に基づいて適切な対応がとられるよう幾つか指示を出しました。まず第一には、監督態勢を強化してほしいということであります。それから第二に、日賦貸金業者に関する情報の把握をもっと徹底してやろう。それから第三点として、出資法違反を含め、債務者等からの法令違反や苦情等の申し出に対する的確な取り扱いを徹底していこう。それから四番目に、出資法の規定が順守されていないと疑われる場合における警察当局への情報提供というものでございます。それから五番目に、財務局、都道府県、それから警察当局、この連携を一層図る観点から協議の機会を速やかに設けてほしい。こういったような指示を出したところでございまして、引き続き、今持っている、武器という言葉を使っていいのかどうかわかりませんが、道具だてを使いまして、できる限り努めてまいりたいと思っております。
  92. 三重野栄子

    三重野栄子君 細かくありがとうございました。  それらの政策が成功いたしまして、いろんな課題の深刻な問題等々が起こらないように、御検討をお願いいたします。  なお、乾部長に申し上げて恐縮ですが、先ほど九州・沖縄とおっしゃいましたが、九州・沖縄と別にすると沖縄が別のような感じになりまして、強調されたということはわかりますけれども、ちょっと九州の者といたしましては沖縄の方に申しわけない、九州各県の中の一つでございますので、ひとつよろしくお願いいたします。  最後に、出資法の問題で伺いますが、上限金利が二九・二%に引き下げられまして、残る一〇九・五%の金利に目をつけて、他の貸金業から日賦貸金業への転業が増加しているのではないか。今後さらに被害がふえることも危惧されているところでございます。  こうした中におきまして、日掛け金融対策全国弁護団が組織されまして、今月の二日に大蔵省や金融監督庁に対しまして特例金利の廃止とか行政指導の強化を申し入れたと伺っております。  やはりこの低金利の中で一〇九・五%という金利はいかにも高過ぎると感じます。被害を防止するためにも、金利の引き下げという見直しがされていいのではないかと思うんですけれども、この点、大蔵大臣の御認識をいただきたいと存じます。
  93. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) その点はさきの国会でいわゆる商工ローン等の御議論がございましたときにもいろいろに御議論になったわけでございましたけれども、結局のところこの部分は、普通のお金を貸す、回収するというのと違いまして、人が実際出かけていって相当の手間がかかる、またそれを受ける方も、どうもやむを得ない事情があってそういう金を借りるという、いかにもそういう関係が大変に切実であって、商工ローンのような一種の社会悪が前へせり出しているということでもないという御認識だったと思いますが、国会ではそのままにされました。いわば需要があるのでそれについての供給、この供給はかなりコストがかかるという御判断であったと思います。  政府は、この国会の御議論は、そのときは議員立法でございますからある意味で受け身で拝聴しておりまして、それはもっともだというふうに考えておりましたが、今またそういうことになりますと、再度そういう御議論がある現実の需給というものを、社会悪は除去しなければなりませんけれども、にも相当考慮すべき点があるのかもしれないと、十分きちっとした判断を持っておりませんけれども、あのときの国会の御議論ではどうやらそういうことで決着したのではないかと思っております。
  94. 村井仁

    政務次官(村井仁君) 一言補足させていただきますと、私どもは執行官庁という立場でございまして、制度論につきましていろいろコメントする立場ではございませんが、私どもといたしましては、いわゆる金融監督当局としての資金需要者の利益を図る、こういう観点から、事務ガイドラインというものを持っておりますが、そこで、出資法に定められた上限金利にもかかわらず、みずからの経営努力により金融業者が可能な限り金利を引き下げて資金需要者の負担の軽減を図るように努めよと、こういうようなことを言っておりますので、業界に対して機会あるごとにできるだけ安い金利で貸すようにと、こういう指導をしておりますことをつけ加えさせていただきます。
  95. 三重野栄子

    三重野栄子君 終わります。  ありがとうございました。
  96. 星野朋市

    ○星野朋市君 まず最初に、私は大蔵大臣に中期財政展望の件についてお伺いをいたしたいと思います。  中期財政展望につきましては、ことしも名目成長率の三・五と一・七五の二通りの試算がなされました。この問題は、結局のところ今ゼロ金利政策を続けておりまして、今の状態であると歳出歳入ともしかじかこれだけであって、成長率が上がっても実は国債費に占める金利の割合が高くなる、したがって、成長率が上がっても同じぐらい新規の国債発行しなくちゃならないというところにポイントがあると思います。  それで、変数である成長率金利の数字の置き方にそもそも問題があるといえば問題があります。名目成長率三・五%のときに金利四・五と置くことが問題であるという指摘もございますけれども、要は今のような状態を続けていくと年々国債の新規発行高は約三十兆になるということでございまして、去年の予算総則にも財政再建が必要であるという文言が挟まれたわけですけれども、ことしも同じことが言えるということだと思います。  それで、去年私は同じような質問をいたしまして、ちょうど一年ぐらい前になりますが、大蔵大臣はそのときにこう答えております。   成長率が三%になればうまくいくはずですが、金利が上がってという、これはマクロモデルがいかにも言いそうなことでございます。そんなものじゃないだろう、人間の努力がいろいろあってと、こう私なんか思いますけれども、おっしゃっていることは、今こういう異常なことを我々やっておりますが、ちゃんと正常に返りましたらもう一遍このようなことをきちんと勉強することは大変意味があるだろう。この計画は五十年代の初めから国会にお出ししておりまして、そのころはまだこんな時代じゃございませんから、ごらんをいただいて、いろいろお使いもいただけたんですが、ここのところはちょっといろんなことが浮世離れしておりますので、しばらくお許しを願うとして、しかしやがてこういうことをまじめにしなきゃならないことになってまいると思います。 こういうふうにお答えになっているわけです。  さて、そうしますと、二年続けてこういうような問題が起こりまして、財政の問題がいよいよ深刻になるというようなことで、大蔵大臣はいかにことしは御感想をお持ちか、お聞かせ願いたい。
  97. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) その中でも申し上げておりますけれども、これは昭和五十何年かに衆議院の予算委員会の資料として提出したことがございまして、その後今日まで毎年同じ、一種のプロジェクションでございますが、資料として差し上げてございますものですから、財政がこういう難しいことになりますと、この資料が御審議の参考になるのかならないのか、なるようにするにはどうしたらいいのだろう、しかし今までの方式を変えることも誠実でないようであるしということで、今年も資料として提出いたしました。  しかし、衆議院の大蔵委員会におきましては、ある委員はこういうものは百害あって一利ないからやめろともおっしゃっておられまして、実は名目成長率三・五%、これは経済審議会の「経済社会のあるべき姿と経済新生の政策方針」でございますか、そのバックデータに二〇一〇年ごろまでの中期的な名目成長率は三%台半ばとありますものですから、それを使っておるわけでございます。  あとは、ごらんのようにプロジェクションでございまして、結局言っておりますことは、政府が何か新しい政策を考えない限り、景気回復して成長率が高くなれば金利が上がるから国債の負担というものは決して減らない。そして、社会保障等の政策が新しく打ち立てられない限り一般歳出は必ずふえていく。したがって、どういうことを考えても国債というものは減らない。税収がふえるといっても、それは一・一ぐらいの弾性値であるから大してふえない。こういうことを言っておりまして、結局、何か新しいことをしない限りこういう因果関係というものが打破できないということを言っておるわけです。それをプロジェクションで言うものですから、非常にはっきり大きな数字になってきますが、逆に何か新しい政策をしなければこういう事態というのはモデルとしてもう避けられないということを申しておると思います。  いかにも成長率金利からいいますと今に合いませんけれども、そういうことを言っているわけですから、政府としては、殊に財政再建というときに、新しい考え方を出していかなければなかなか財政再建というものはできませんと、こういうことを私どもに言っているというふうに思いますので、したがいまして、財政再建というのは根本的な新しい、先ほども申し上げましたが、日本全体の経済社会の変化ということの中で考えざるを得ないだろうというふうに思っております。
  98. 星野朋市

    ○星野朋市君 前に、大蔵大臣が総理をなさっておったときに、ちょうど生活大国五カ年計画ということをうたわれておりました。私は、そのときに、現実の姿がいかにも生活大国五カ年計画と合わなくなってきておる、それで一つ指標というものを金科玉条的に持つのではなくて、国民に対しては二通りか三通りの案を示して、こういう成長率のときにはこれだけの問題が起こってくるけれども国民はそれに耐えられるのか、それから、もう少しゆとりを持って、成長率が多少低くても国民全体としてのかえって時間的なゆとりであるとかそういうものが出てくるのが望ましいのか、これからはそういう選択の時代であろうということを質問したことがございます。  総理はそのとき何とおっしゃったかというと、これは今審議会にそういうものをかけて検討しておるんだということでございました。その後、いわゆる構造改革を伴う経済政策というのが出て、構造改革ができれば経済成長率は三・五%程度になるであろう、もしそうでないならば一・七五ぐらいにしかならないというのが後で出たわけですね。  この数字が今も使われておって、その後これも現実にはなかなか合わないということで、私は経済企画庁長官が御就任になった時期にそのことを申し上げた。目的はなかなかすぐには変更できないからということでございましたけれども、間もなくこれも変更されて、あるべき経済の姿、大蔵大臣が今おっしゃったその末尾に、成長率の問題に関しては附則的に、実質的に二%、名目では三%半ばぐらいというようなことを出されたわけですが、将来どうなるかという問題に関しては依然としてその辺の数字を使ってこういう計算をなさっておる。一たん数字というものが出てしまいますとなかなか修正できないのが通例でございまして、今までもそういうことのためにしばしば問題を起こしている。  最近では、例えばエネルギーの需給計画なんというのは二〇一〇年までの問題で、新エネルギー、原子力、それから石油の三つの問題についてかなり大幅な狂いを生じている。だけれども、それが訂正されない間はその数字が生きてしまう。  こういうようなことがございますので、この中期展望も私はそう簡単にはなかなか直せないと思うし、これが一たん出た以上、我々に植えつけられたのは、しばらくの間は景気対策というものを含めても三十兆ぐらいずつ国債費が積み重なっていく、こういう印象を受けるわけでございますけれども、大蔵大臣、いかがお考えでしょうか。
  99. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 今、総括政務次官がいらっしゃいますのでお願いした方がいいかもしれませんが、今の平成十一年七月のあるべき姿を経済企画庁がつくられるときに議論いたしましたのは、こういう揺れている経済状況の中で、数字を使って、モデルを使ってのいわゆる経済見通し、経済計画というものはどうしても無理だと。それはどなたもそう思われましたから、数字はバックデータにしようと。普通、経済計画をいたしますと数字が表へ出てまいりますが、今回はバックデータにしようということで、それで今のような三%台半ばというのが出てまいりました。  ですから、当事者としては、これが現実の経済目標だというふうには、作業としてはちょっとそこまでは難しいなということは知っておりましたわけですから、今の中期見通しが三・五%を使いましたのは、そういう説明をしてございますけれども、何かによりどころを求めればそれでしょうと申し上げている程度のものであって、片方はその半分ということでございますから。  星野委員の今おっしゃったようなことは実際起こりますし、今もその一例かもしれませんが、経済軌道に乗りましたら、どっちみち経済企画庁は、官庁の組織が変わるかもしれませんが、やはり五年とかなんとかの経済見通しを計数をもってつくらなければならない。今これがないのは、我が国の戦後、五十年とは申しませんが、三十年ぐらいの歴史の中でないのは非常に変則でございます。つくれないという状況でございますから、もう少し落ちつきましたらそれをまたマクロモデルでつくってもらわなければならないと思っております。
  100. 星野朋市

    ○星野朋市君 いずれ財投改革の法案が出てまいりますけれども、そのときにまた詳しく御議論したいと思うんですが、財投改革に関して、先ほども三重野委員がちょっとお触れになりましたけれども、これは来年度の問題であるにしても、各官庁ともことしの夏ごろに来年度の予算関連でいろいろ試算をなさるときに、もう今年度に及ぶ問題だと思っておるのでございます。  それで、郵貯の大量の満期償還、郵政省は約七割を留保する努力をすると申しておりますけれども、何しろ六%の金利のときに駆け込み的に預金されたものが〇・二%という金利でもう一回預け直されるとはとても思えない。  もう一つ、今度のGDP発表の中で設備投資回復というのがございまして、先ほどから問題になっておりますけれども、我々は、その前に、機械受注の回復というのがここのところ続いておって、恐らく約半年後にこの実需が相当出てくるであろうということを考え、そうしてなおかつ今年度の新発債、それから借換債、それから郵貯の解約による新たな資金問題というのがちょうど折あしくことしの秋ごろに重なるんではないか、そのときに長期金利が上がるんではないかという考えを持っておるんですが、その点に関してはいかがお考えでございましょうか。
  101. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) そうなればいいと申しますか、順調にいけばそうなるんではないかと思います。
  102. 星野朋市

    ○星野朋市君 この問題についてはきょうは深い議論は進めようとは思いませんのでこれで終わりますけれども、もう一つ、金融監督庁にお伺いをいたします。  ちょうど一年前に公的資金の注入ということで各行は健全化計画というものをお出しになっているわけですけれども、これのチェックはどうなっておるのか。  実は銀行というのは今までも、いわゆる不良債権、私は問題債権と言っているんですが、こういうことの発表に関しても、それからその他約束したことをなかなか守ろうとしない体質がありますので、実際にはこの三月が終わって一年たったときの状況を聞きたいんですけれども、今までの状況で半年のチェックは済まされていると思いますから、どうなっておるのか、そこら辺をお伺いしたい。
  103. 谷垣禎一

    国務大臣谷垣禎一君) 早期健全化法では今おっしゃった経営健全化計画の履行状況の報告を金融再生委員会から求めるということになっておりまして、これを公表する、こういう仕組みになっております。  それで、健全化計画は年度を通じたものとなっておりまして、中間期における計画値というのは記載されていないんですが、十一年三月に資本増強を行いました十五行について、これは十二年三月期の計画値の実現に向けた中間時点である十一年九月期の履行状況の報告を求めておりまして、これはことしの一月十一日に公表してございます。  その具体的内容を申し上げますと、収益の状況につきましては、業務純益、経常利益、それから当期利益、いずれも十五行合計額で計画値の五割を超えている、順調に消化をしているということだろうと思います。もう少し細かく申し上げますと、業務純益につきましてはこの半期で目標の五四・二%、経常利益については五九・六%、それから当期利益については五五・一%という進捗率でございます。  それから、リストラの進捗状況につきましては、中間時点としておおむね経営健全化計画どおりのものとなっているということでございますが、役員数等で申しますと、去年の三月末、注入時が四百九十六人、十二年の三月末の計画値が三百九十五でございますが、現在三百六十七になっております。  それから、従業員は、十一年三月末十四万二千人、それで計画値が十三万七千人でございますが、これは十四万一千人ということになっております。しかし、これは若干季節的な要因がございまして、上期に採用が行われて下期にかけて人員が減っていくということで、中間時点としてはおおむね計画どおりではないかと見ております。  それから、海外支店等につきましては、昨年の三月末が百五十三店舗でございまして、目標が百十一でございますが、現在百二十八というところに来ている。  おおむね計画どおり進んでいるのではないかなと思っておりますが、こういう経営状況発表して、余り圧力圧力と言ってもいけませんが、パブリックプレッシャーと横文字で言うとちょっとマイルドになるかもしれませんが、金融機関の自己規正を求めて的確な履行の確保を図ってまいりたいと思っております。
  104. 星野朋市

    ○星野朋市君 これは三月期が終わりまして、後でまた最終的な御報告をお聞きしたいと思います。  最後に一つ経済企画庁の小池次官がおいででございますのでちょっとお伺いしたいんですが、きのう十—十二月のGDP発表されましていろいろ論議を呼んでいるところですけれども、私は一つだけどうしてもお聞きしたいところがあります。それというのは、この十—十二月では民間最終消費マイナス一・六と、こう出ております。ところが、毎月の月例報告というのには、消費に関してのデータというのは、例えばデパートの売上高、チェーンストア、コンビニエンスストア、それから自動車だとか、そういうことなんですよ。  それで、今問題になっているのは、例えばディスカウントストア、あれは協会がございませんから、これの統計がどうなっているのか。それからもう一つは、非常にこのところ内容も充実して品質的にもかなり高度化した通販のあれがどうなっているのか。ここら辺について統計的にはどういう入れ方をしているのか。それから、住宅が年間百二十五万戸ペースなんかで建っておるにもかかわらずなかなかそういう面の需要がふえていないというのは、過去と違ってきたのかどうか、そこら辺をお伺いしたいと思います。
  105. 小池百合子

    政務次官小池百合子君) 委員御指摘のとおり、昨日発表いたしましたQEでは、個人消費前期比でマイナス一・六という数字が出たわけでございますが、個人消費、一月の実質の消費支出を家計調査で見ますと、前月比で一・六というふうに若干回復の兆しは見られているところでございます。  それから、御指摘のディスカウントストア、そして通信販売などの数字でございますが、おっしゃるとおり、他のこれまでの伝統的な産業と比べますと、業界団体ができていなかったり、もしくは数字としてでき上がってくるのが毎年一回であったりということで、ある意味でスピーディーな確保には至っていないというのは事実でございます。  しかし、御存じだと思いますけれども、一月から景気ウオッチャーという制度を始めさせていただきまして、いわゆる個人消費の現場に立ち会っておられる方々から定期的にその感触を聞き出すという制度を一月から立ち上げ、さらには今後、地域、そしてそのウオッチャーの要員などの拡充、そして厚みを持たせていこうということで、今さまざまな工夫をしておるところでございます。  今後もまた新しい通信手段なども活用いたしまして、既存の統計では十分カバーされていない企業、先ほどからの御指摘の産業でございますけれども、こういったところへのヒアリングを拡充するというような準備も行っているところでございます。  まさに企業も産業自体も、それから個人消費性向も今は本当にさま変わりをしているところでございますので、そういったアップ・ツー・デートな数字をとらえていくということを今後大いに検討してやってまいりたいと思っております。
  106. 星野朋市

    ○星野朋市君 終わります。
  107. 椎名素夫

    ○椎名素夫君 昼休みもつぶしてやっておりますし、少し時間が延びているようですから、なるべく簡単にしたいと思います。  きょうは朝から同僚議員の方々がいろいろな角度から質問をされて、私の感じでは、何もかもいろんな要素を全部わかっていらっしゃる大臣がやっておられるので余り聞くこともないんですが、実は前にちょっとまとまったお話をしたのはいつかなと思ってひっくり返してみましたら、総理をなさっているとき、平成五年に決算委員会の最終総括ということでちょっといろいろお話をしたことがありました。  そのときは平成二年度の決算をやっておりまして、当時は随分前のをやっていたわけですが、平成二年度は十五年ぶりに赤字公債がなくなったという年であって、その決算を審議していたんです。せっかくだというので、プラザ合意あたりからいろんなことがありましたねという話をいたしまして、それはそれとして、長くなりますからやめますが、そのときに総理が、  プラザ合意の後の円高、それがある程度落ちつきましたところから大変に経済が好調になりまして、自然増収が何兆円という単位で入ってまいりました。その結果としてと申しますか、簡単に申しますとそういうこともありまして、赤字国債というものを打ち切ることができた。これはそういう特殊な環境ではありましたけれども、やはり経済運営というものでかなり国の歳入というものは変わってくるということをも意味しておるように思います。ですから、今後に向かってなるべくそういうできる範囲でのいわば順調な経済運営をやっていくことが財政のためにも大事だということを私は経験したように思うわけでございます。 こう言われました。  平成二年度に赤字公債がなくなって、二、三、四、五とずっと赤字公債がない時代だったその最後の年でありますけれども、それから後、私も今読みました御答弁のような感じかなと思っていたんですが、その後は決してうまくいっておりませんね。六年になるとまた赤字公債を出さなきゃいけなくなって、金融のシステムのおかしさというのが頭を出してきて、それから赤字公債発行もどんどんふえてきた。幾つか内閣ができてはつぶれできてはつぶれして、橋本内閣が平成八年から始まった。大変野心的になられて、六つの改革の中の財政改革ですか、あれで財革法をお出しになって、そしてとにかく通ってしまったわけですね。  しかし、あのときに私は財革法をやった委員会で橋本さんに言ったんですが、確かに子供や孫に借金を残すというのもいけないけれども、財政というのは時としては緊急出動しなきゃいかぬようなことがあり得る、時々は消防自動車みたいなことをやらなきゃいけないと。今おやりになろうとしていることは、消防自動車をガレージに入れてすっかりオーバーホールで三年間使えないようにしちゃうということで、もし火事が出たらどうなさるか、そう法律までなさらなくてもいいんじゃないかと言ったんですが、いや、そのぐらいの覚悟でやらなきゃこういうことはできぬとおっしゃって法律が通った。  それから、皆さん失敗失敗とおっしゃるけれども、一概に失敗と言ってしまうと橋本さんにはちょっとかわいそうなような気もしますが、そういうことがずっとありまして、その間、大臣大臣のことですからずっと観察をしておられたと思うんですが、小渕内閣にかわって三顧の礼で大蔵大臣をやってくれということでお受けになりましたね。  これは大変聞きにくい質問なんですが、一度伺いたいと思っていたのであえてお聞きしますけれども、お引き受けになったときに、抱負というか、何をやろうとお思いになってお受けになったか、もしお聞きできたらと思いますので、よろしくお願いします。
  108. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 最後の部分でしたらお答えは比較的簡単でありまして、これだけ不況が続いて、各四半期ごとの経済成長はずっとマイナスになっている、この不況をとにかく脱却してプラス成長のサイクルに戻すことが大事で、そのためには何といっても財政が総力を挙げて出動して、いわば誘い水を出して、それは主として公共事業とか減税とか金融の手当てとかいうことでございますが、それによって民間経済力、消費設備投資経済を主導するところまで持っていくのが自分の仕事である。そのために、財政再建というようなことはいいことであるが、当面、これは一遍棚上げをさせてもらって財政をフルに総動員するしかないと、こういう気持ちでございました。
  109. 椎名素夫

    ○椎名素夫君 それで、先ほどの消防車の例を言いますと、橋本さんは出さないといってもうガレージに入れちゃう。しかし、そうしたらうまくいかなくて、やっぱりそういうこともやらなきゃということなんでしょうが、それから後、言う人に言わせれば、もうよそからまで消防自動車を借りてきてそこら中にぼやまで出しているというようなことを申しますね。  しかし、先ほどからのお話、それから最近のいろいろの御発言などを伺っておりまして、大変にいろんなことをのみ込んでおられると。特に私はそうだなと思いましたのは、グリーンスパンとのお話アメリカ経済の例を引かれて、そういうことは来ると、近いうちに日本経済にも。それは全くそのとおりのように思うんです。  しかし、これは非常に難しい話で、言ってみれば、大きな言葉を使うとパラダイムが変わっていくわけですから、そこで新しいモデルをつくるというのは大変難しいということはよくわかりますけれども、そこらあたりが見えないと、ただただいつ景気がよくなるんだろうなという気分ばかりが今蔓延していて、お役所のモラルハザードというのがよく言われますが、それと同時に非常に広い範囲でモラールハザードというのも起こりつつある、それがまた消費などに響いてきているという感じがするんです。  大変難しいことかもしれませんが、ほかの方が大蔵大臣になったときとは違ってよくわかっておられるので、そのあたりの新しいパラダイムに転換していく経済というものについて、はあなるほどそうなると問題は相当いろんなことがほぐれてくるなということを少し説明していただくといいと思うんですね。それがないものですから、みんな元気がなくなっちゃっている。  それから、もう一つ気になりますのは、大蔵省の諸君が今非常にいい大臣を持って快適だという感じを持っておられると私は思っております。というのはどうしてかというと、みんなわかっちゃっている、この大臣は。その上で、世間がいろいろ悪口を言っても、やるべきことはやるんだということでやっている、わかっているよと言う、しかし時には何でもありということもあるなと言ってくださる大臣というのは非常にいいものでして、恐らくそれで快適なんだろうと思うのですが、それを余り全部抱きかかえてしまうと、大蔵省の諸君が安心してその揺りかごに入ったような感じで物を考えなくなるんじゃないかと思うんですね。それがとても怖い。  いろんなことでお話を伺ったりしたときに、例えばいろんな問題が出ました、今までも。中期試算ですか、ああいうものは一体どうなんだこうなんだと。二%や三%成長しても財政は全然よくならないじゃないかというようなことを聞かれると、いや、いろいろ考えておりますと言うんですが、余り考えているという感じがしないんですね。ですから、そういう意味ではそれはモラールハザードであって、これについても大臣が余りわかっていて、わかった上でやっているんだという安心感を余りお与えになると皆さん物を考えなくなるおそれがあると思いますので、その点はぜひお気をつけいただきたい。  それから、もう一つのモラールハザードの方は、大変難しいことでしょうけれども、御自身でおっしゃらなくても結構ですから、確かに新しい、何というか経済の形というものが変わっていくということは私もそう思っておりますし、またそうならないと二十一世紀はうまくいかないだろうと思うので、ぜひその点もお願いしたいと思うんです。  これをやりませんと、どうしても古いセクターに引っ張られることになりがちであると。これは各国の政治家に聞いてみてもそうなんですが、政治に駆け込むのはみんな古いセクターなんですね。新しいセクターは忙しくて永田町や霞が関なんかに来ないんです。その人たちが伸びて新しいGDPを創出し、雇用をふやし、そして株価の平均も上げているというあたりが余り顔を出さないと見えない。もう伸びがとまった、あるいは少し落ちかけている人たちは何とか工業会とかいうのをつくって、専務理事か何かをお役所から雇って、その人たちがこのあたりを徘回するというのが大体の姿でありまして、その姿が余り大きく見えるとどうしても新しいパラダイムの変換というのが難しくなる。ここはやっぱり我々政治家は忙しくてなかなかかぎ回るわけにもいきませんけれども、お役所の方々もよくよくそこらあたり考えていただきたい。  ただ、何か飯食ってもコーヒー飲んでもいけないというようなことをこのごろ言いますから、皆さんおつき合いが悪くなっちゃうとそのあたりがまたおかしくなるというような変なこともあって、大変でしょうけれどもその点をぜひお願いしたいということを申し上げて、御感想を伺います。
  110. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 久しぶりにお話を伺いましてありがとうございました。  確かに最近の事の起こりはプラザ合意だと思っておりますが、その後ちょっと成功し、後えらいことになってきょうに及びました。どうやらこの苦境から脱出できるかもしれないと思っていますが、この間えらい成功したこともあります、国債がなくなったりしたこともありますし。いろいろありまして、日本の銀行は世界の十をみんな占めたなんということもありましたけれども、結局今考えてみて、この苦しみ、殊に最近の苦しみというのは、おっしゃるそのパラダイムが変わる、その変わる中で日本人がかつては世界の一位、二位にいたわけですが、苦しんでいる姿であると思っております。  そして、どうかと思いましたが、日本日本なりにこのパラダイムの変化に対応して二十一世紀にやっていけるだろうと。これは前のようにうかうかしていたんではできなかったかもしれないという思いがありますので、まことにつらかったけれども、我々はそれを多分薬にすることができるだろうということを希望しております。私が思ったよりはその点は大丈夫ではないか。  ただ、殊にその社会の変わりの中で我々起こしてほしくないし、あってほしくない、例えばアメリカのレイオフのようなことはやはり日本で起こっていないように思いますし、起こってほしくないわけですから、そういう意味ではグリーンスパンの言うようにレーバーモビリティーはないかもしれないが、しかし多少時間がかかっても、また日本なりの方向で新しいパラダイムに対応していけるのではないかというふうに思っております。  それから、お役人さんとの関係は、御忠言はよくわかっています。実はその際におけるモラールハザードの問題は、こういうふうにリベラルな財政をやりますと、国債を出せばやれるんだということを長くやっていますと、経費に対する感覚はどうしてもなまります。これは大蔵省の諸君、大蔵省ばかりを今私は申し上げているのではないんですが、役人の諸君はそういうことを長く教わっているわけなんですけれども、もうこれ以上金がない、ここでどうしたって節約しなきゃという場合と、まあ国債を出せば多少のことは何とかなるという場合とは、どうしてもそこに心の緩みが出るということは否定できないことでございますので、これも大事なこととして考えていかなければならないと思っております。  この苦境打開のために相当大きな国債を出しまして、もうおわかりのとおり、これはなかなか簡単に片づく問題ではありませんけれども、考えてみれば二十一世紀に対応するために非常に苦労をしている、そのためのコストだと考えまして、どっちみち新しいパラダイムが生まれるわけですから、その中で財政財政の役割を新たに見つけて、その中で負債というものを払っていく道を考えなければならないというふうに思っています。  日本が新しいパラダイムに入れるか入れないかということは、今、椎名議員が言われましたけれども、明らかにそれは団体の専務理事がうろうろするような話ではなくて、そうでない人がそうでない形で始めております。危なっかしいと思うのは年寄りのプレジュディスかもしれません。がしかし、確かにその人たちは新しい仕事を始めたから我々はそれを邪魔しないように、やはりなるべくこの際干渉をしないこと、規制しないことが考え方としては一番役に立ちそうに思いますので、そういうふうにしていったらきっとその人たちは二十一世紀の最初の十年か十五年の間に新しい日本を築いてくれるんではないかということを期待いたしております。  ありがとうございました。
  111. 椎名素夫

    ○椎名素夫君 終わります。
  112. 平田健二

    委員長平田健二君) 本件に対する質疑はこの程度といたします。     ─────────────
  113. 平田健二

    委員長平田健二君) 平成十二年度における公債発行の特例に関する法律案租税特別措置法等の一部を改正する法律案及び法人税法の一部を改正する法律案の三案を一括して議題といたします。  政府から順次趣旨説明を聴取いたします。宮澤大蔵大臣
  114. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいま議題となりました平成十二年度における公債発行の特例に関する法律案租税特別措置法等の一部を改正する法律案及び法人税法の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由及びその内容を御説明申し上げます。  まず、平成十二年度における公債発行の特例に関する法律案につきまして御説明申し上げます。  平成十二年度予算につきましては、我が国経済が厳しい状況をなお脱していないものの緩やかな改善を続けている中にあって、これを本格的な回復軌道につなげていくため、経済運営に万全を期すとの観点に立って編成したところであります。この結果、一般歳出の規模は前年度当初予算に対して二・六%増の四十八兆九百十四億円となり、一般会計予算規模では八十四兆九千八百七十一億円、前年度当初予算に対して三・八%の増加となっております。  こうした中で、公債につきましては、財政法の規定により発行する公債のほか、二十三兆四千六百億円に上る多額の特例公債発行せざるを得ない状況にあります。  本法律案は、こうした厳しい財政事情のもと、平成十二年度の財政運営を適切に行うため、同年度における公債発行の特例に関する措置を定めるものであります。  以下、この法律案につきまして御説明申し上げます。  第一に、平成十二年度の一般会計の歳出の財源に充てるため、財政法第四条第一項ただし書きの規定による公債のほか、予算をもって国会の議決を経た金額の範囲内で公債発行することができることとしております。  第二に、租税収入等の実績に応じて特例公債発行額をできる限り縮減するため、平成十三年六月三十日まで特例公債発行を行うことができることとし、あわせて同年四月一日以後発行される特例公債に係る収入平成十二年度所属の歳入とすること等としております。  次に、租税特別措置法等の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。  政府は、最近の経済情勢等を踏まえ、本格的な景気回復に資する等の観点から、民間投資等の促進及び中小企業、ベンチャー企業の振興を図るための措置を講ずるとともに、社会経済情勢の変化等に対応するため所要の措置を講ずることとし、本法律案を提出した次第であります。  以下、この法律案の内容につきまして御説明申し上げます。  第一に、民間投資等の促進を図るため、住宅ローン税額控除制度、特定情報通信機器の即時償却制度の適用期限の延長等を行うこととしております。  第二に、中小企業、ベンチャー企業の振興を図るため、エンジェル税制の対象株式に係る譲渡益課税の特例及び同族会社の留保金課税の特例の創設等を行うこととしております。  第三に、社会経済情勢の変化に対応するため、年齢十六歳未満の扶養親族に係る扶養控除の加算措置の廃止、相続税の延納の利子税の軽減等の措置を講ずることとしております。  その他、特別国際金融取引勘定に係る利子の非課税制度、土地の登記に係る登録免許税の課税標準の特例、被災代替資産等の特別償却制度などについての期限延長、既存の特別措置の整理合理化等を行うこととしております。  次に、法人税法の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。  政府は、商法及び企業会計における金融商品の評価に係る時価法の導入を踏まえ、法人税における有価証券の評価方法について、売買目的の有価証券については時価により事業年度末の評価を行うこととする等の改正を行うほか、所要の整備を行うこととし、本法律案を提出した次第であります。  以上が平成十二年度における公債発行の特例に関する法律案租税特別措置法等の一部を改正する法律案及び法人税法の一部を改正する法律案の提案の理由及びその内容であります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  115. 平田健二

    委員長平田健二君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。  三案に対する質疑は後日に譲ることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時二十分散会