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公述人(
公文昭夫君) 御紹介いただきました
公文でございます。
最初にお話し申し上げたいのは、今回出されている
年金改革関連三
法案初め公務員関係の共済組合の一部
改正案、すべて基本的に
反対であるという
立場で
意見を若干申し上げてみたいと思います。
私、中央公聴会の
公述人ということで出席させていただいているわけですけれ
ども、この公聴会でこれから
意見をとにかく十分間お話し申し上げるわけですが、数日前から、本日は公聴会が終わったらこの
法案、一気呵成に可決、
成立というふうな話がもう既にマスコミを通じて流れています。出口が決まっているのにここに来てしゃべるなんということは全くピエロのようなものじゃないかなというふうに思っておりますけれ
ども、しかし、ピエロにならないように、ぜひこれからの審議、徹底して行っていただきたいということを初めに
お願いしておきたいと思います。
特に
国民の声を聞くということを具体的に実施しようと思うならば、中央公聴会だけではなくて、きめの細かい地方の公聴会等も開いて、十分に
国民の声を聞くという姿勢を貫いていただくことを最初に
お願いしたいと思います。
そこで、私今度の三
法案について、いずれも、
国民生活、
国民生活の実態や
国民生活感情からいっても到底
賛成できるものではないということを申し上げましたが、特にその中でも、今回の
法案の中で最も重大な問題が欠落しているのではないか、そのことを中心的にお話を申し上げてみたいと思います。
委員の専門家の皆さん方はもう十分御承知のことで、お目通しをいただいているかと思いましたけれ
ども、改めてここに
幾つかの資料を差し上げておりますので、ぜひ御参考に供していただければというふうに思います。
大変重要な問題というのは何かということなんですけれ
ども、これはもう皆さん御承知のとおり、
年金制度の空洞化の問題です。特に、御承知のとおり、
国民年金、
基礎年金、特に被
保険者でいうと第一号被
保険者が中心になると思いますけれ
ども、これらの
方々の中から極めて深刻な、そして重大な
制度の空洞化が発生をしている。これはもう既にマスコミな
ども十数年前から指摘をしていることなんですけれ
ども、この
年金制度の
国民年金の
部分というのは、もう御承知のとおり、
日本の公的
年金制度の土台であって、家でいうならばもう一階建ての
部分ですから、この一階建ての
部分が崩壊をするということになれば、二階建ての
部分を幾らいじくろうと
年金制度の将来はないということはもうわかり切った話だと思います。
ここに、ごく最近、一月二十一日ですけれ
ども、政府の主要官庁である社会保険庁が発表をした
平成十年度社会保険事業概要というのがあります。この事業概要の中で大変重大な問題が
幾つか指摘をされていると思います。
特にこの
年金制度の空洞化の問題に絞って申し上げるならば、皆さんも御承知のとおり、年々、
保険料が高くて払えない、
生活が苦しいという状態が進行しているということが、一つ具体的な数字としては
免除率の上昇ということにあらわれていると思います。このペラ一枚の資料でも書いておりますように、
免除率は、
平成六年度の一六・八から、十年度の新しい数字によりますと一九・九というふうに、既にこの五年間で三ポイントも上昇をしています。
特に重大なことは、
免除者の中で、
生活が苦しくてぜひ
免除をしてもらわなければならないということで申請
免除を受けておる
方々の数がふえているということが大変重要じゃないかというふうに思います。人数で見ましても、既に三百九十九万八千人という大変な数に上っております。前年度に比較しますと四十万人もふえている。前回
改正時の九四年度が三百九万人ということですから、五年間で九十万人この
免除者がふえているということは極めて深刻な事態ではないかというふうに思います。
次に問題になってくるのは、未納者、滞納者と言われている人たちの増加です。未納者の現状を示しているのがこの図でもおわかりいただけるように検認率なんですけれ
ども、九八年度は七六・六、前年度から三ポイント下がっている。つまり、検認率の七六・六は御承知のとおり
保険料を払った人の率でございますから、したがって払えなかった人あるいは払わなかった人は二三・四%ということになります。そうしますと、
国民年金の一号被
保険者が九八年度で二千四十三万人ということになっておりますから、その二三・四%ということになりますと、実に四百七十八万人という方が払っていないあるいは払えないという状態に置かれているということが明らかです。同様の計算で前年度の未納者数を計算してみますと約三百九十二万人ということになりますから、一年間で約八十万人近く未納者、滞納者がふえている。
この事業概要では、未納者の増加について、「当該年度において未納となった
保険料は、その後時効にかかるまでの二年間に
徴収されることとなる。」なんということを言っていますけれ
ども、こんな保証は全くないんであって、全くとぼけたコメントではないかというふうに思っております。
ここに、東京土建という左官屋さんあるいは大工さんたちの、建設産業で働いている人たちの
公的年金加入の実態を明らかにした調査がございます。これはぜひ
国民の
生活実態の一つとしてごらんいただきたいと思います。
この
生活実態調査は、約五千人の方、五千五百七十四人の方に配付をして四千八百六十三人の方からお答えが返ってきておりますけれ
ども、これを見ますと、全体として、
国民年金にも
厚生年金にも
加入していないという
方々が三〇%を占めているという実態があります。三人に一人は
国民年金にも
厚生年金にも入っていないということです。
この理由について、右側に未
加入の理由あるいは、これは未
加入の中には未納者、滞納者も含まれているというふうに思われますけれ
ども、この
方々の理由を聞きますと、掛金が高くて払えないという
経済的な理由を挙げた
方々が三七%、これは複数回答で、単純に平均してみますと五〇%を超えるという実態があるわけなんですが、
公的年金に対する
不信感から、もうこんなものに入っていても仕方がないということで
加入をしない、あるいは
保険料を滞納しているという方が六三%にも達しているということになっております。
言うまでもないことなんですが、このまま推移をすれば大量の無
年金者が発生するということは間違いありません。こうした深刻な現実を放置したまま、
雇用実態からかけ離れた
支給開始年齢を延ばすだとか、あるいは
賃金スライドを
凍結するとか、
報酬比例部分の
年金額を下げるなどといった
制度の後退を強要することは、ますます
国民の不安を広げ、こういった現実の矛盾を拡大する結果にしかならないというふうに思います。
その結論として申し上げますと、
国民の負託を受けた国会がまずやらなければならないことは、この重大な
制度の空洞化にストップをかけることだと思います。既に全与野党が一致して決めている
基礎年金の
国庫負担割合三分の一を二分の一にすること、それを今すぐやるということが私は重要だと思います。
この
状況を見てみますと、これから五年後にやる、でも、その五年後になって政権がかわっていたらやらないかもしれないなどということでは、今現実にぶつかっている
制度空洞化に歯どめをかけるなどということはできないと思っております。この点はぜひこれからの議論の中で徹底的な審議をしていただいて、正しい一定の
方向をお出しいただければ幸いだと思います。
最後に一言申し上げておきたいと思いますが、
財源の問題は常に問題になっております。私は、
財源はあると思います。問題は使い方だと思っております。
現に、今の
年金には、この資料の中にもありますように、黒字の累積とも言える積立金が二百十七兆円というふうに出されております。資金運用部を通して財投に使われている積立金は百八十兆円とも言われていますけれ
ども、
年金総支出額の五・五年分というのは御承知のとおりの実態です。欧米諸国と比べて異常に高いということはマスコミの多くも指摘しています。
財政方式を欧米並みに改めて、
凍結した積立金を
段階的、計画的に
年金財源に振り向けるということは十分に可能なことだと思っております。
こうした本質的な議論も含めて、ぜひこれからも十分な御議論が交わされることを期待するものです。会期末までにまだ二、三カ月あるわけですから、十分に議論をして、
国民の声を聞いて、納得のいく法
改正をしていただくことを最後に
お願いいたしまして、公述を終わります。