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参考人(
猿渡由紀子君)
連合の
猿渡でございます。本日は、
少子化問題に関して
意見を述べる
機会を与えていただきまして大変ありがとうございました。
少子化問題につきましては、九八年十二月の
少子化への
対応を
考える
有識者会議の
提言を実行するために、
政府においては
少子化対策推進関係閣僚会議、
民間では
少子化への
対応を
推進する
国民会議で取り組みを
推進しております。
連合は、
有識者会議及び
国民会議に積極的に参加してきております。また、四月二十日には、
日経連と
少子化問題についての
共同アピールを発表したところでございます。
少子化の要因については、既にさまざまな
統計数値によって分析されていますが、本日の
意見陳述に当たっては、
男女が
仕事と
家庭を
両立させる
環境整備について、
労働組合の
立場から、
女性がいかに働きにくく、
子育てに悩んでいるのかなどを中心に述べさせていただきます。
まず、今の
社会状況について申し上げます。
一点目は、
固定的役割分業意識と行動が根強い
社会であること。したがって、
家事、
育児の
負担は
女性に重くのしかかっています。男は
仕事、女は
家庭というシステムは、
高度経済成長から七〇年代前半までは
企業にとって効率的、合理的であったことは否定しません。しかし、
企業への
従属意識が、
欧米諸国にはまれな
単身赴任を容認し、極端には
過労死までするような
働き方によって
ストレス社会、
家庭、
地域の
機能低下を招いたこと。
家庭を捨てなければならない
企業論理はもはや通用しないのではないでしょうか。
二点目は、婚外子に対し差別と偏見が根強く、婚外子を認めない
社会であること。
三点目は、少子
社会であるのに
子供への虐待が増加していること。また、学校でのいじめ、暴力が深刻になっています。さらに
経済不況のもとで、
労働者の首切りを実行するために
職場でいじめが蔓延しており、自殺する中高年が急増しています。
子供社会は大人
社会の縮図であります。
四点目は、いつまでも親に寄生している大人の
子供、それを容認する親など、自立できない親子の問題があります。
五点目は、離婚が増加傾向にあり、
子供がいる
家庭の離婚もふえています。
六点目は、
女性に対する暴力が顕在化してきています。このことは、
男女平等参画
社会の実現を阻害する重大な問題ととらえています。
このような
社会にあって、
子供を産もうと思うのでしょうか。
子供が健やかに育つのでしょうか。大人として反省しなければならない問題が多いのではないでしょうか。
では、
少子化への
対応とはどのようなことでしょうか。
今日の問題は、
出生率が短期間に大幅に低下していることに大きな特徴があります。このように急速であることに対し、従来の
社会構造が
対応し切れなくなっており、結果として産み育てたいと願う人が産めないこと、また
少子化社会でありながら
子供が大切にされていないこと、児童虐待が増加の一途をたどっていることは、その典型ではないでしょうか。
したがって、
少子化への
対応策としては、産み育てたいと願う人が安心して産むことができ、ゆとりを持って
子育てができる
環境整備を図ることであります。同時に、
子供が大切にされ、健やかに伸び伸びと育つような
社会をつくるために、
子育てを
社会全体で
支援する
国民的合意を確立していく必要があります。また、性別
役割分業を前提とした
社会システムを変える必要があります。
次に、
少子化に対する
連合の
基本的
考え方について述べたいと思います。
連合では、現在、
少子化問題への
対応策を
検討しています。
検討に当たり確認すべき事項を二点提起しています。一点目として、
結婚や
出産は当事者の選択であり、国や行政が介入すべきではないことを
基本にする。二点目として、子の
育児、養育の責任は第一義的には保護者にあり、その保護者が安心して育てられる条件や
子供が健やかに育つ環境の
整備が
社会の責任であることです。したがって、
少子化への
対応は、保護者の
子育てへの
環境整備、
子供が健やかに育つ
社会づくりであります。このことを再度強調しておきたいと思います。
レジュメの五では、
女性雇用労働者の現状を挙げています。
ことし二月に発表された
労働省の
雇用均等政策研究会
報告及び九九年度の
労働力
調査等による
女性雇用労働者の実情について申し上げます。
雇用労働者に占める
女性の割合は約四割となっています。そのうち四五%はパートタイム
労働など非正規
労働者となっています。
我が国の
女性の
労働力率は、
欧米諸国とは異なり、M字カーブを描いています。このM字型の谷は、七五年には二十五から二十九歳であったのが、晩婚化を背景に三十から三十四歳に移動しています。カーブ全体も上方にシフトをしてきています。
女性雇用労働者の六割弱は有配偶者であり、
子供のいる世帯においても母親のうち半数以上が就業者であります。
また、勤続年数は延びてきており、高学歴化が進んでいます。
賃金格差については、九八年の賃金構造
基本統計調査による所定内賃金の比較では、
男性一〇〇対
女性六三・九となっています。しかし、この数字は労務コストの比較であり、これをもってして格差とは言えません。
また、
結婚、
出産または
育児を理由とした退職は
減少傾向にあります。ただし、
出産または
育児を理由とした退職はそれほど変化してはいません。
一方、
仕事と
家事関連時間の合計を見ると、共働きであっても絶対的に妻が長くなっています。
連合の
女性の
労働・
生活時間
調査によると、共働きで平日の
家事・
育児・介護時間は、妻三時間十分、夫三十四分となっており、当時、夫の時間は他の
調査と比較しても長いと言われています。総理府の
社会生活基本調査では、夫二十三分、妻四時間四十五分となっており、このような実態は現在も大きく変化していません。
男性の
家事、
育児等の
負担が少ない背景には、
労働時間の長さや
職場優先の
企業風土や、長く
職場にいることが評価されるような
職場の雰囲気、
働き方の問題があると思われます。
次に、最近の
連合調査について簡単に御
報告いたします。お
手元に資料を配付させていただきましたので、御参照ください。
まず、このピンクの改正均等法施行に関する
調査ですが、昨年四月に施行された改正均等法への
労働組合の
対応と、
雇用における
男女の均等取り扱いの進展
状況などを把握することを目的に昨年十月に実施いたしました。
男女の均等取り扱いについては、全体としては「問題がない」との回答が大多数であるものの、「補助的業務への配置は
女性のみ対象」、「役職への昇進は
女性には
機会がない」、「一定の
職場への配置は
男性のみ対象」などの問題点が
指摘されています。
調査の中で、
仕事と
家庭生活の
両立にかかわる課題については、五十八
ページを御参照いただきますと、「
結婚・
出産後も働き続ける
女性」は三分の二の組合が「増える」と回答しており、
連合が改正を求めている家族的責任を持つ
男女労働者への
両立支援法に盛り込むべき
項目を見ますと、約六割が「転勤命令発令は
家庭事情を配慮する」となっています。また、「要介護者の申出で時間外
労働を免除」は四七%、「介護のための短時間勤務の請求権を設ける」は四五・四%、「深夜業免除対象を小
学生までに延長」が四四・五%と上位を占めています。
育児関連では、「深夜業の免除対象者について、未就学の子から小
学生までの子を持つ
労働者に範囲を広げる」が四四・五%、「
育児のための短時間勤務の請求権を設ける」は四三・一%、「短時間勤務取得期間を子の一歳到達までを一歳以上に延長する」が三八%となっています。
次に、
子供の看護休暇に関する
調査について申し上げます。冊子は五月初旬にでき上がりますので、本日はファクスでお送りをさせていただいております。
連合はこれまでの
育児休業法制定運動の中で、
子供が病気になったり予防注射や乳幼児健診などを受ける日について、
子供看護休暇として年に一定の日数を与える
制度を要求してきましたが、
育児・介護休業法にはその
制度が盛り込まれずに今日に至っています。この
調査は、
保育所へ預けている
子供が年に何日病気し、その結果その両親が
子供を看護するために何日就労できなかったかの実態を把握し、
育児・介護休業法の改正を実現させる上での基礎資料とするために実施をしました。
調査結果からわかったことは、病気、けが、予防注射、定期健診で
保育園を休園する日数は平均で十六・三日でした。ただし、ゼロ歳児、一歳児の休園日数がそれぞれ二十・四日あるいは二十四・三日というふうに書かれていますが、入園当初の各年齢クラスの休園日数、総計で二十六・九日となっています。これをもカバーできる日数としてはおよそ二十日
程度であること。また、
子供の看護等のために母親、父親の二人合わせた年休取得と欠勤日数は年十四・九日であることから、現実には
子供の病気等の際には祖父母等他の助けをかりてしのいでいること。これらは本来、年休や祖父母の助けによることなく、ILO百五十六号条約、百六十五号勧告での規定にのっとり休暇として
労働者に付与されるべきと言えるのではないでしょうか。
連合は、現在
検討中ですが、
子供看護休暇については、「小学校卒業までの子を養育する
男女労働者が請求した場合、子ども一人について年十日を取得できる」としていますが、このことについて回答者の大半が賛成し、何らかの
所得保障が必要と
考えていることがこの
調査結果からわかりました。
自由記入欄を見ますと、「子どもが病気で
保育園に預けられないとき通常、誰が看護してたか」の問いには、「長期の場合は離れている親に飛行機で来てもらい看護を頼んで出勤した」、「鹿児島の母に来てもらい旅費などを出していた」など、祖父母の協力なしでは無理な実態が出ています。「子どもの看護のために休めますか」に対する記入は、「お休みをもらうのに十分以上の説得が必要です」との声があり、また、「子どもの看護のために休めない理由」に対する記入は、「夫は
単身赴任で不在のため休むのは無理」、「
仕事の予定に変更がきかない」、「
仕事の量が多く休める余裕がない」、「代わってもらうわけにはいかない」などが書かれていました。
「その他書き込み」を見ますと、休みづらい雰囲気の
職場状況や、
制度ができても周囲の理解が得られるのかや、必要な人がとれる
環境づくりが大事であるなどの声がありました。また、有期
雇用者もとれるようにするなど、百九十五件の書き込みがありました。
その中には信じられないような書き込みもありました。それは、「二歳頃までは、本当によく病気をし
職場の上司の理解もなく「
仕事を辞めてしまえ」とか「
子供を殺してしまえ」と何度いわれたことか。二番目の子を思うとき、あの時のことを思い出すとしんどくて、とても次の子を生む気になれません」、「肩身の狭い思いをせずに、休暇のとれる
職場環境が欲しい。そのようになったら、第二子が欲しい」など、切実な訴えが多く書かれていました。
以上の
調査からもわかるように、働く
女性が増加しており、今後も増加が見込まれているにもかかわらず、
職場は
子育てをしながら働き続ける
女性には優しくありません。今後、
労働力
人口が
減少し、
経済社会に大きな影響を及ぼすことが懸念されるとするならば、
企業も
子供を持つ
労働者が働きやすい
環境整備に
努力すべきではないでしょうか。
レジュメの六でございます。
男女が
仕事と
家庭を
両立させるための
環境整備について、
職場及び
社会的な
環境整備について申し上げます。
まず、
職場での
環境づくりとして一点目に求められることは、年休の完全取得、残業削減を通して年間千八百時間の実現を図ること、とりわけ
子育てをするためには一日の
労働時間を重視すること。
東京都王子労政事務所の
育児・
子育てと就労に関する
意識・実態
調査を見ると、「
子育てと
労働時間等との関係で困っていること」として、①自分や配偶者や家族が休暇をとれないこと、②配偶者、家族、自分の勤務時間が長いこと、③配偶者の残業が多いことを挙げています。
二点目は、
育児休業
制度を取得しやすい
職場の雰囲気づくりです。
制度はあってもとりにくい
状況があることはさまざまな
調査でも
指摘されています。先ほどの王子労政事務所の
調査によれば、勤務先に望むこととして、第一位が
職場の仲間の理解と
支援、第二位が上司の理解を挙げています。
三点目は、
男性の
育児休業取得促進です。休業を取得したことによる昇進、昇格での不利益の禁止や、
所得保障として休業前賃金の六〇%を保障することです。
四点目として、短時間勤務
制度の義務化です。
育児については小学校卒業までとすること。
五点目は、小学校卒業までの子がいる
労働者に深夜業、時間外・休日
労働を免除すること。
六点目は、
子供看護休暇を
制度化すること。
七点目は、転勤命令は
家庭事情を配慮すること。
八点目は、
企業人、管理職の
意識改革を図ることです。
男女平等参画
社会を展望するとき、
男性中心の
雇用管理を変えていかなければならないとともに、
性別役割分業意識と行動を変えていくことが重要です。
続いて、
社会的な条件
整備として、一点目に、多様な
保育ニーズにこたえる飛躍的な
拡充が喫緊の課題となっています。
男女労働者が
子供を持って
仕事と
家庭を
両立させるためには、
保育所を中心とする
子育て支援策の
充実は欠かすことはできません。
厚生省は、
保育所への待機児童数が九九年四月時点で、都市部を中心に三万二千二百二十五人となっていることを発表しました。また、緊急
保育対策五カ年事業は九九年で計画が終了したが、
乳児保育や一時
保育、
延長保育など目標に達しておりません。
こうした
状況の中で、九九年度の
保育所関連予算とは別に、
雇用対策を中心とする五千四百二十九億円の第一次補正予算で、
少子化対策臨時特例交付金として二千億円が決定されました。この交付金の目的は、
少子化の呼び水として、
地域における
少子化対策の一層の普及促進を図るとともに、
雇用就業機会の創出に資することとし、待機児の解消を一番に掲げています。事業費の内容としては、
保育所に対する
施設・設備
整備など
保育関連が六三%を占めています。厚生省への第一回申請分では、チャイルドシートの購入が三百市町村あり、この業界は特需景気に沸いていると言えます。
本日、黄色のこの冊子をお配りさせていただいております。
連合は、この
少子化対策臨時特例交付金の使途に関する地方自治体
調査を実施いたしました。
連合は、この交付金が多様な
保育ニーズに沿った
保育所等の事業の
拡充に向けて有効に使われるべきと
考え、何に使用されるかについての
調査をし、各
地域における
保育所、学童
保育所拡充の今後の取り組みに
活用していくことを目的として
調査をしました。
保育関連が七七・六%を占めていました。
その内容を見ますと、乳幼児や
保育室の増改築も含まれていましたが、待機児の解消や低年齢児の受け入れ枠をふやすことなどのための
整備などには余り使われていませんでした。また、待機児の解消が最大の目的とするなら、全国的なばらまきではなく、待機児の多い自治体に集中的に交付金を投入すべきではないかと思います。
使途内容を見ますと、雨漏りやドアの修理、トイレの改修、シャワーの設置、チャイルドシート、プール、エアコン、すのこ、草刈り機等々、さまざまな備品の購入がありました。また、家族の肖像画展や写真展、作文コンクールや
結婚対策お見合いツアーなど、
少子化と名がつけば何でもありきでした。目的の一つであった
雇用の創出では、アンケートに記載されていたものを足し上げたところ、千百四十八人でありました。
二点目は、新
エンゼルプランの確実な実行です。九九年度終了の
エンゼルプランの未達成事業を確実に達成させることです。達成率は、新聞報道によりますと、低年齢児受け入れ枠の
拡大では九七%、一時
保育、
地域子育て支援センターが各五〇%、乳幼児健康
支援一時預かり九〇%、
延長保育がおよそ七一%などとなっておりました。
三点目は、
保育料の
軽減です。
保育料と家賃でおよそ一人分の賃金が消えていく
状況があります。
連合の職員三人に
保育料を聞きましたところ、全員三歳未満児でしたが、六万一千円、四万五千円、五万五千円となっていました。
四点目は、学童
保育の
拡充です。働く親にとって学童
保育は小
学生の放課後
延長保育であり、学童
保育に入れるかどうかは安心して働けるかどうかを左右しかねません。低学年の
子供たちが安全で
充実した
生活を送れるように、放課後と学校休業日の
生活を守る学童
保育は働く親にとって必要不可欠のものです。
連合は、児童館や学校の空き教室等を利用して、
地域の実情に応じて工夫をし、時間の延長、対象年齢を小学校六年生までにすることを求めています。全国学童
保育連絡協議会
調査によると、公立小学校に対する学童
保育の設置率は四二・一%となっています。
五点目に、
児童手当法改正の問題点です。今回の改正は、支給年齢を現行三歳未満から義務
教育就学前までに延長しましたが、この財源を、昨年実施した恒久的減税の年少扶養控除を廃止することによって賄われます。ゼロ歳から三歳児未満の
子供のいる世帯は現在手当が支給されていますので、年少扶養控除を廃止すれば
負担増となり、三歳児から義務
教育就学前は新たに支給されますが、
子供の数、支給金額により異なりますので増減はわかりません。小
学生から十六歳未満は
負担増となります。
少子化対策の柱と位置づけた
児童手当ですが、小中
学生を扶養する中・低
所得層の税
負担をふやすことは
少子化対策に逆行するものです。
拡充についても不十分です。今後、支給年齢、支給額、財源構成、
所得制限、税制等他
制度との関連など
基本論議を行う必要があります。
六点目は、妊娠初期から産後までの
支援策の
拡充として、健康診査、保健指導の公費
負担と
育児一時金を四十万円に引き上げることです。
七点目は、税制や
社会保障制度の
改革です。昨年六月施行の
男女共同参画社会基本法四条では、「
社会における
制度又は
慣行についての配慮」を
基本理念の一つとして掲げています。国会審議では、税制や年金について
基本法の理念に照らして
検討すべきものであれば、個別法も
男女共同参画社会の視点を入れて
検討されていくものだと
答弁しています。
最後に、今まで申し述べてきましたように、
男女が
仕事と
家庭の
両立を図るためにはさまざまな施策の
拡充と
環境整備の
充実、とりわけ総実
労働時間の短縮とニーズに沿った
保育所等の
拡充が急がれます。また、
女性と
男性の固定的な
役割分業を前提とした
制度、
慣行を
男女平等の視点に立った
社会に変えていくことが
少子化への
対応として重要と
考えています。
男女平等参画
社会の実現を目指し、
連合は一層の取り組みを強めることを申し述べて、終わりといたします。
ありがとうございました。