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参考人(
野村歡君)
日本大学の
野村でございます。
お手元に
参考人意見表明としてA4の二枚つづりがあろうかと思います。これをごらんいただきたいと思います。
発言趣旨からまいります。
私は、東京オリンピックのころから、実は建築学をバックにいたしまして、
高齢者、
障害者の生活環境の
整備という問題にかかわってまいりました。この中で、
高齢者や
障害者の
交通問題というのは、施設
整備、
車両整備、
法律制度、
職員研修の四点が大変大きな問題であり、お互いにこれがかかわり合っているということを指摘してまいりました。
実は、二番に書いてございます
交通問題というのは、私の知るところ昭和四十七年だったと思いますが、川崎市内で
バスの乗車拒否問題というのがございました。これに端を発しまして大変社会問題化したことがございます。しかし、施設
整備の改良は遅々として進みませんでした。一方で、昭和五十二年に現在の八代英太先生が参議院の社会労働
委員会で環境
整備に関する質問を行いましたが、それの回答といいますか
整備の内容は、わら半紙一枚半の本当のわずかなメモにすぎなかったというふうに記憶しております。
その後、
駅舎の
整備が進められましたが、
高齢者や
障害者の利便性、安全性は向上しましたけれども、一方で
エレベーターを設置したにもかかわらず、
秋山先生からもお話がありましたように、管理面での
制約が大きかったことから、必ずしもこれが十分に効果を発揮し得なかったといった点もございます。そういう
意味から申しますと、今回の
法律は大変画期的であり、この
法案制定を高く評価したいというふうに思います。
三番目に、
法案制定を高く評価することは、もう少し細かく申し上げますと、
移動が確保されることにより、
高齢者や
障害者の生活が大きく変えられるのではないかという点でございます。
その後にはちょっと余計なことが書いてありますが、要するに、外国では乗り物といったような面でとらえますと、これはもう生活の保障ということではなくて趣味の世界に入ってきて、グライダーであるとかあるいは小型の飛行機だとか、こういうものも操縦できるような状況になっている。そういう
意味では、私どもは第一歩として生活の保障を確保する、安定する、そしてこれが生活の質、私どもはクオリティー・オブ・ライフと言いますが、そういうものにだんだん高めていく可能性が秘められているのではないかということで評価をいたします。
二ページ目に参ります。
もう既にお話がございましたように、四省庁の連携による
法案提案がされていること、また、ハートビル法では実は
駅舎のことについては入っておりませんけれども、ここではそれをうまく補完をしているということ、さらにその次に、
公共交通事業者云々ということは、先ほどのお話にもありましたように、それぞれの
人たちが
役割を持って、そして大変幅広くこの問題をとらえているということで、私は大いに評価をしたいと思います。
そういう
意味で、大きくとらえますと、国は精神規定、あるいは
自治体は実体規定の中でこれを進めていく。そして、
自治体はほとんどの
都道府県で
福祉の
町づくり条例というのがあります。この条例の中で最低限の
整備が決められるということですから、
鉄道事業者はその
自治体を超えた中である
意味での共通的な
整備マニュアルがつくられていくのではないかというふうに
期待をしております。
しかし、希望として、私はさらに次の点に留意をして政策を推進してほしいと思います。
まず、一番大事なことは、ハードの
バリアフリー化ではなくて、すなわち
アクセスということではなくて、私どもの目的は
高齢者や
障害者が社会に参加できるということ、ここに実は目的があるのでありまして、ハードを
整備するということは目的ではないというふうにとらえたいと思います。
その実現のために、一つは、冒頭に申し上げましたハードと
ソフト、すなわち
職員研修といったような人的な対応も含めてこれを進めてほしいということ。そして、最も身近である
バス、これをさらに
整備をして進めてほしいということ。そして、車いす対応のエスカレーターもさることながら、もちろんこれは
交通事業者としてはエスカレーターで大量の人を短時間で輸送するということですが、実は車いすを使っている
皆さん方からはエスカレーターよりも
エレベーターの方が大変便利であるというような
意見もございます。その辺のバランスといいますか、
整備をひとつ充実していただきたいというふうに思っております。
また、この分野は大変技術の革新が行われておりまして、非常に今速く進んでいるわけです。そういう
意味では、
法律が保守的になることなく、常に新しい
情報の把握に努めて対応できるような体制づくりというものもお考えいただけたらというふうに思います。
それから、ここにはちょっと書いておりませんが、実は連続性ということで、これをできるだけ担保するような実効性のある
整備をしてほしいということ。
一例を申し上げますと、私はきょうは千代田線の地下鉄から出口一番というので乗ってまいりました。霞ケ関駅のエスカレーターはほとんど地上まで出てくるんですが、実はあちこちのエスカレーターというのは地上まではないんです。それのちょっと下までで、あとは必ず階段を上らなくちゃいけないということなんです。そういう
意味で、ここはほとんどできているんですが、エスカレーターとエスカレーターの間に四、五段の段があるんです。そうすると、エスカレーターを使って車いすが通ろうと思っても通れないという問題。
そういう
意味で、
整備というものはだれがどのように使うかということを常に意識して
計画を練らないと、せっかくつくったものが実は何にも使えないというような状況があちこちで現実に起こっているわけです。そういう
意味で、さらにきめの細かい
整備をしていただきたいということでございます。
今後の
課題として、今までのお話にもございましたように
事業に対する予算の裏づけ、もちろんその
事業者自身の責務というものもございます、あるいは
自治体の責務というものもございますが、一方でやはりそういうものがうまくいくような予算的な裏づけというものをお考えいただけたらというふうに思います。
これは、私の知るところでは、平成十二年度から建設省の、そこに書いてございますように
交通結節点改善
事業の補助というものがあります。このことを見ますと、例えば昭和四十八年に
厚生省が
身体障害者福祉モデル都市制度
事業というものをやりました。これは三年度にかかった
事業でございますが、最終的には
全国すべての
都道府県にそのモデル都市が一つできたということでございます。そういう
意味で、ここの
重点整備地区におきましてもぜひ
全国展開を図るような施策をお考えいただけたらというふうに思っております。
その後に、これに合わせた関連
事業の効率的運用ということでいろいろな
事業が総合的に
計画をされると。そうしたときに、そのそれぞれの
事業のある
意味ではラップをした
部分、あるいは欠落した
部分、そういうところをうまく精査いたしまして、むだのない
計画を進めていただけたらというふうに思っております。
さらに、これも
事業に対する予算のことですが、新規
車両の導入に対する補助ということで、やはりいろいろな
整備をすることによって
障害者、
高齢者配慮をする
車両というものは多少コストアップにつながるのではないかというふうに私は感じておりまして、そういうものに対する
配慮をして、ある
意味では思い切った
配慮をしたものに対してより効率的な
車両の購入ができるような政策誘導ということを考えていただきたいと思います。
それから、
附帯決議の重さということで、この間見せていただいたものについてはいろいろな
附帯決議がされておりますが、この
附帯決議というのはえてして看過されがちなんですが、実はここに大変大きな問題がある。これは前お二人の
参考人からもお話がございましたが、すぐにこれを実行するような社会的情勢にないということは私は十分認識しておりますが、今後この問題について
委員会や
研究会を通じて継続的な
研究、
検討を行っていただきたいというふうに思います。
例えばということで、ちょっと書き損じて恐縮ですが、
障害者基本法というのは
障害者を大変幅広くとらえていますが、この
法律では
身体障害者というふうに限られているということ、そして、この二十二条というものは、住宅であるとか
公共構築物であるとかあるいは
交通関係であるとか、こういうものの国と
地方公共団体の責務というものが書かれておりますが、これをばねにしてさらに発展をしていただけたらというふうに思います。
それからもう一点としては、いろいろ今までありますが、
スペシャル・トランスポーテーション・システムというものの
整備ということ。
それから、下から二番目にございますが、
事業者の
職員に対する研修ということで、冒頭に申し上げました四つのポイントのうち三つは今回の
法律で十分にカバーができているというふうに思いますが、この
職員研修をどういうふうに進めていくか、これが実はこの
法律の成否にかかっているのではないかというふうに私は思っております。
そして一番
最後には、この
法律が制定された後、いわゆるアセスメントですね、前と後の環境
整備がどのように行われて成果が出てきたか、そして
高齢者、
障害者の生活がどのように変わったかというような
意味で評価を行ってほしい。その成果によっては、さらに新たな展開あるいは見直しをしていただきたいというのが私の
意見でございます。
どうもありがとうございました。