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2000-03-23 第147回国会 参議院 外交・防衛委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十二年三月二十三日(木曜日)    午前十時一分開会     ─────────────    委員異動  三月二十一日     辞任         補欠選任         松崎 俊久君     浅尾慶一郎君  三月二十二日     辞任         補欠選任         吉村剛太郎君     岸  宏一君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         矢野 哲朗君     理 事                 鈴木 正孝君                 武見 敬三君                 小山 峰男君                 益田 洋介君                 小泉 親司君     委 員                 岸  宏一君                 佐々木知子君                 村上 正邦君                 森山  裕君                 山崎  力君                 山本 一太君                 依田 智治君                 浅尾慶一郎君                 海野  徹君                 松前 達郎君                 荒木 清寛君                 立木  洋君                 田  英夫君                 田村 秀昭君                 佐藤 道夫君    国務大臣        外務大臣     河野 洋平君    政務次官        外務政務次官   東  祥三君        外務政務次官   山本 一太君    事務局側        常任委員会専門        員        櫻川 明巧君    政府参考人        防衛庁装備局長  及川 耕造君        外務省条約局審        議官       小松 一郎君        文化庁次長    近藤 信司君    参考人        東京外国語大学        外国語学部教授  井尻 秀憲君        慶應義塾大学法        学部教授     国分 良成君        防衛研究所第二        研究部長     高木誠一郎君     ─────────────   本日の会議に付した案件 〇参考人出席要求に関する件 ○外交防衛等に関する調査  (中国台湾問題をめぐるアジア情勢に関する  件) ○政府参考人出席要求に関する件 〇著作権に関する世界知的所有権機関条約締結  について承認を求めるの件(内閣提出) 〇万国郵便連合憲章の第六追加議定書万国郵便  連合一般規則及び万国郵便条約締結について  承認を求めるの件(内閣提出) 〇郵便送金業務に関する約定の締結について承認  を求めるの件(内閣提出)     ─────────────
  2. 矢野哲朗

    委員長矢野哲朗君) ただいまから外交防衛委員会を開会いたします。  速記をとめて。    〔速記中止
  3. 矢野哲朗

    委員長矢野哲朗君) 速記を起こして。  委員異動について御報告いたします。  去る二十一日、松崎俊久君が委員辞任され、その補欠として浅尾慶一郎君が選任されました。  また、昨日、吉村剛太郎君が委員辞任され、その補欠として岸宏一君が選任されました。     ─────────────
  4. 矢野哲朗

    委員長矢野哲朗君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  外交防衛等に関する調査のうち、中国台湾問題をめぐるアジア情勢に関する件について、本日の委員会東京外国語大学外国語学部教授井尻秀憲君、慶應義塾大学法学部教授国分良成君及び防衛研究所第二研究部長高木誠一郎君を参考人として出席を求め、その意見を聴取したいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 矢野哲朗

    委員長矢野哲朗君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  6. 矢野哲朗

    委員長矢野哲朗君) 外交防衛等に関する調査のうち、本日、中国台湾問題をめぐるアジア情勢に関する件を議題といたします。  この際、参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、大変お忙しいところ委員会に御出席をいただきまして、ありがとうございました。  参考人方々から忌憚のない御意見をお述べいただき、調査参考にしたいと存じますので、何とぞよろしくお願いを申し上げます。  議事の進め方でありますけれども、まず、参考人方々からそれぞれ二十分程度意見を述べていただきます。その後、委員からの質疑にお答えいただく方法で進めたいと存じます。なお、参考人方々発言は着席のままで結構でございます。  加えまして、なるべく多くの先生方発言をいただきたいということで、お一人の発言に際しまして三分程度ぐらいの発言でひとつやりとりをしていただきたいと、こう思います。御協力を願います。  それでは、まず、井尻参考人からお願いを申し上げます。井尻参考人
  7. 井尻秀憲

    参考人井尻秀憲君) 私、井尻でございます。  私のレジュメに関しましての表現上の問題に関しては、私のつたないところがございますので、どうぞ御容赦いただきたいと思います。今の私のレジュメの、お配りした中で、私の表現上の問題で不手際な点がございます点に関してはおわび申し上げます。  お時間いただきました時間の中で、私なりの今回における台湾総統選挙、そこでの陳水扁氏勝利と今後の行方という形で少しお話をさせていただきたいと思います。  既に御案内のような結果になっておりますので、時間の関係上ございまして、恐らく、今回の選挙結果それから今後の問題を考えます場合に、一つは、むしろ国民党かなり大敗と言ってもいい、そういう状況になったわけですが、そちらの敗因の方から御説明あるいはお話を申し上げた方がわかりやすいかもしれないという気がいたしまして、その点に関して少しお話をしたいと思います。  それから、もう一点に関しましては、元来、国民党の中枢にいた宋楚瑜候補が今回かなり陳水扁候補に肉薄する形で票の獲得がなされた、その理由は一体どこにあったのかという点をもう一点お話をさせていただいて、それから陳水扁候補の、新しい総統の誕生ということになりますが、この勝利の原因といいますか、そこらあたりお話しさせていただくというような形で、基本的には三つぐらい、主として台湾内政面、特に選挙結果を見た上での、直後での内政面に関してお話を少し絞らせていただきまして、私の報告としたいと思っております。  それから、両岸関係、つまり中台岸関係云々に関しましても、その結果として新しい総統に選ばれました陳水扁さんの今後の政治あり方という、そういう点に関しましては、最後の段階で少し簡単に触れさせていただくというような形でお話を進めさせていただきたいというふうに思います。  まず、李登輝国民党中央のいわば今回の選挙戦、あるいは李登輝総統のいわば退陣ということがきょうの新聞でも、党中央常務委員会レベルであすあさってぐらいに辞意の表明ということがなされるというところまで新聞ではもう書かれておりますけれども、いわば国民党サイドから見ますと、あるいは国民党サイドの現状、状況というものを見ますと、特に李登輝総統を中心にしました国民党の今回の選挙戦でのあり方、戦い方あるいはそれ以前の李登輝総統時代台湾政治がどのように展開してきたかということを踏まえて考えますと、やはり台湾の全体的な利益台湾の全体的な国益と言えるような、そういうものを重視する。つまり、台湾民主化あるいは台湾台湾人意識台湾内部における台湾人意識のいわば定着、そして民主化を逆戻りさせない、それから同時に台湾国際社会における地位の向上、そういったものを確立していくという、そういう非常に大きな、大局的な李登輝路線といいますか考え方があったんだろうと思います。  したがって、アジア哲人政治家と言われるような、そういう強い李登輝総統リーダーシップのもとでそういったことを進めてきたわけですけれども、その段階国民党そのものが従来から持っていた古い体質、これが温存された形で、そこにいろんな矛盾があってもそれを強いリーダーシップでもってふたをして抑え込んでいたという、そういう状況だったんではないか。それがポスト李登輝というようなこういう事態になったときに、ぐっとその問題が、ふたがあいて噴出してきた。  そして、改革という国民党そのもの改革あるいは台湾政治改革というものが国民党自身にできる状況にあったのかというようなことが実はございまして、それに対して民衆、選挙有権者意識というものが、むしろ国民党ではないほかの政党から出てきた、あるいは無所属の候補者、つまり陳水扁宋楚瑜、この両氏に期待をかける、特に勝ちました陳水扁氏期待をかけるという選択になったように思います。  そういった意味で、国民党のいわば改造、五十年以上続いてきた党国家体制改革というものが、先ほど申し上げた、台湾のより大きな大局的な利益ということを先行させて政治のかじ取りがなされてきたがゆえに、逆にそこに、特に地方政治改革に手がつけられなかったというようなふうに私は理解しております。  ところが、そこで出てきた、実は無職在野に置かれた二人の政治家が登場してくることになったわけでありまして、その在野に置かれた無職政治家の中で、一人は国民党から除名されましたけれども、国民党から離党して選挙に出た宋楚瑜氏。そしてこの宋楚瑜氏が、実はここにも書いておりますが、ある意味で、台湾人外省人、つまり大陸的な外省人として初めてと言っていいぐらいの、まさに台湾人の票をとれるというところまで力を伸ばしていたと。  その端的な例が、彼が省政府省長であった時代に、相当の地方への公共事業という形で予算かなりばらまいた。それが一方で、国民党の主流、党中央主流の連戦蕭万長といった、特に蕭万長さんあたりは余り地方に行かない中央集権主義であって、同時に国民党は、台湾民進党が、つまり野党が県、市レベルの首長なりそういうところを握っているというところには余り予算配分をしていないんです。ところが、そういう国民党が余りケアを、よく面倒を見ていないところへ実は逆に、民進党とはまた違った角度からこの宋楚瑜氏が入っていった。そして極めて強い地方への公共事業を与えるという、そういうことによって利益誘導型の政治を行い、まさに宋楚瑜という、国民党とか何党とかいう、そういうことではなくて宋楚瑜個人に対する支持というものをかなり集めたという、そういう点があったように考えております。  同時に、それはちょっと若干人種的な問題になりますけれども、台湾台湾人、いわゆる福老系ミン南語を話す台湾人と言われている人たちと、それから客家人たちに、同じ本省人ですけれども分かれますけれども、民族的に少し違うそういう人たちのところにも宋楚瑜さんがかなり食い込んだというように私は理解しております。  その結果として、本来二大政党制であって、それをかじ取りしてくるということで来た台湾政局が、ここへ来ていわば三つどもえになってしまった。そうしますと、当然そこから今度は逆に、もう一人の若いホープとして民進党が育ててきた陳水扁さんの方に有利な状況があらわれたというふうに考えられるわけであります。特にいろいろと報道等で御案内の点以外に、この台湾選挙戦最終段階に入りまして、一つ連戦陣営に対してある意味ではかなりマイナスといいますか、打撃になった点がございます。  それは、陳水扁さんが単に漁夫の利を占めるとかそういったことではなくて、台湾のいわばノーベル賞受賞者として非常に名誉のある人材だと言われてきた李遠哲さんという中央研究院、つまり総統府直属の研究院の院長であった李遠哲さんほか、もともと李登輝総統とも関係が深いと言われていたような財界の人たち、そういった人たちを含めて陳水扁さんの顧問団になるというような形で陳水扁さんの方の支持に移っていったわけであります。これが実は投票の本当にもう数日前でございまして、したがって、そのことによって国民党支持者にはかなりの心理的なパニックといいますか、そういう状況が出たように思います。  ただ、そのときに、実は見方によっては李登輝総統一種の権謀術数というような見方で、もしかしたら李登輝総統がそういうことに関してもいわばある程度わかっていて、それもまた一つ政治の手段として、権謀術数的な形で行ったのではないかという、そういう非常に一番我々がある意味では今回の選挙を見る際に関心を持つところがあるわけです。実際に、報道にもありますように、中国はそういった理解をし始めたという報道もございますが、この点に関しては、私が少なくとも感触を得た状況でお答えする、御説明申し上げることで言えば、まずそれはなかったのではないかというのが、これは私個人の得ている感触でございます。確実にこうだという点は言えませんけれども、そういった状況ではなかったかというのが私の得ている感触でございます。  それからもう一つは、国民党サイド選挙戦を戦う上で、この辺は新聞等々では余り書かれておりませんけれども、やはり国民党連戦さんを支持してきたいわば国民党選挙対策本部、ここと李登輝総統以下国民党中央人たちとの間にちょっと意見の違いがあったのではなかろうかと。  そこらあたりを考えますと、それは台湾のテレビ等々を見ていても非常にある意味では象徴的でもあったわけですが、国民党のどちらかといいますと古い、旧来の保守的な立場あるいはかつて李登輝総統と九六年の選挙戦で戦ったそういう人たち連戦支持に回ったわけです。そして、選挙対策本部に訪れたりして連戦支持を表明する。そうなってきますと、これは逆に一般住民からしますと、つまりそういった一種国民党のいわば古い方向への逆戻りではないかという意識、そういうふうに見えなくないわけです。ですから、そういった点もむしろ陳水扁さんの方に有利に働くという、そういう選挙の中でのイメージ戦略といいますか、そういう点を考えますと、あったのではなかろうかというふうに思っております。  それから、プラス中国という存在がありますが、やはり朱鎔基さんの中国全国人民代表大会での記者会見でなされた台湾あるいはアメリカ、そういったところに向けた言葉と言ってもいいわけですが、あるいは直接的には台湾に向けた言葉と見てもいいんですが、つまり台湾独立ということがあった場合はそれを座視しないというような、ある意味で非常に恫喝的な、威嚇とも思える言葉だったわけですが、これに対していわば台湾住民はむしろそれに対してやっぱり反発を示した。  つまり、そこでソフトなやわらかい路線になってしまっていたら、逆に中国はそういうふうに言うことでもって効果があるんだということになりますから、それはそうではなくて、むしろ台湾人たちにとってみればかなり強いそれは反発になったし、それから同時に、反発できる環境にあったというのはやはりアメリカが軍事的にも安全保障という、そういう側面で背後にいたという、そういう全体の構図を考えますと、まさにアメリカ議会安全保障台湾海峡安全保障強化案というものをいわば可決していたわけですから、そういう面を含めて総合的に考えていきますと、最終的に選挙民投票行動というものが、だれにいわば積極的に投票するかというよりもだれになってほしくないというような、つまり極めていろんな情報が攪乱しておりまして、はっきりとしたそういったものが出てきていない。しかも、規定によりまして投票日の十日前から世論調査等の公表ができないという、そういう状況にあったわけでして、ですから有権者にとってみればだれに投票、だれが一位で走っているのかわからないわけですね。  そういう意味で、最終的には自分がこの人になってほしいということではなくて、この人になってほしくないというような形での投票をした可能性が高いというように私は思っております。つまり、だれかを捨ててだれかを守るというような、そういうふうな投票行動、こういうふうな形で投票行動に行った可能性があるというのが、現地で最終段階での状況を見た限りにおける、また私の得ている感触とそれから考えでございます。  時間の関係上、これ以上の時間を多くはとれませんけれども、基本的には中台関係に関して、そしてまた陳水扁、新しい総統が生まれるわけですけれども、まずやっぱり内政面かなり国民党、二百二十五議席立法院で持っている。日本の国会に当たる国会でもって二百二十五議席の中のいわば民進党は七十席しかない、そういうふうな七十議席状況の中でねじれ現象が起きるわけですから、当然国民党との間の調整が必要になる。  それから、野党民進党候補としていわば当選したわけですけれども、しかし野党民進党、これから政権党になるということになりますが、その民進党からも恐らくそんなに、距離を少し置き始めるだろうと。ですから、そして、陳水扁さんは全人民政治というようなことを言っておりますけれども、しかしそれはどうも言葉としては余りにもきれい過ぎる。ある意味で、それをその辺のところのこれから五月二十日まで、あるいはそれ以降、総統就任式までの動きとか、その後の陳水扁さんの経験、これまでの執務経験台北市長を一期やっただけですから、そういった経験というものを考えますとそう簡単に物事がきれいに動くとも思えない。かなりいろんな動きがあって、不安定な状況が続く可能性も否めないというふうに思っております。  それから、中国との関係に関しては、これもまた基本的には李遠哲さんというこの方が北京に行ってトウ小平さんとも会ったことがある。つまり、北京とのチャンネルも持っているというようなことが言われております。  それから同時に、国民党が準備していた。国民党は今回対話に応じるということはかなり実は準備していたんです。連戦さんが勝てばもうすぐ対話に応じる状況かなりできていたんです。それは汪道涵訪台という形で始まるだろうという、そういう予測が私としては得ておりました。ところが、政権が変わるということになる。そうなれば、陳水扁さんは勝利記者会見で、江沢民さんとかそういう中国のリーダーの方に台湾に来てもらう、自分も行くというふうに言っておりますけれども、しかしそれはそう簡単にそれが実現するわけではない。やはりこれは言葉がきれい過ぎる。  ですから、そういう意味で、まずはやっぱり段階を踏まなければならないだろうと。ですから、現在の台湾の対中国政策を担当する大陸委員会あるいは交渉の窓口にある海峡交流基金会、こういうところとの話し合いも詰めていかなければならないし、簡単に行けばいいということではない。  むしろ、中国台湾との間の関係において今一番重要な意見の違いというのは、一つ中国というこの原則をどうするかという問題なんです。ですから、その点に関して、恐らくこれは台湾サイドからすれば協議して構わない、当然違いを協議しましょう、対等な立場で違いを協議しましょうということの模索になると思います。ですから、統一という問題にしろ何であれ、意見の違いを、違いがあっても構わないので、それでもって対話しましょう、そういう形に恐らくなるだろうと。私、ただし結論がすぐ出るとはもちろん思いません。  ですから、それは違いが決定的に、やはり一つ中国という中国側が主張する原則と、それから台湾李登輝総統の二国論以後のいわば特殊な国と国の関係、あるいは陳水扁さんは国と国の特殊な関係というふうに言葉を少しひっくり返して言っておりますけれども、つまり国と国の方に力点があるのでなかろうかというようなそういう気もしますが、いずれにせよ、そういう違いがまだまだある。  かなりギャップはあります。ですから、そのギャップを埋める、そういう対話をすること自体は恐らく始まると思うんです、すぐかどうかはもちろんわかりませんが。ただし、その結論は必ずしもすぐ出るとは思えないです。かなり意見の違いはあるというふうに私は理解しております。  一応そういうことで私の報告を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
  8. 矢野哲朗

    委員長矢野哲朗君) ありがとうございました。  続きまして、国分参考人お願いいたします。国分参考人
  9. 国分良成

    参考人国分良成君) ありがとうございます。  ただいま御紹介をいただきました慶応大学の国分でございます。本日は、このような貴重な機会をお与えくださいまして厚く感謝を申し上げたいというふうに思います。  現在、東アジアは非常にさまざまな問題で大きく揺れているわけであります。特に、中国台湾をめぐる問題というのは、これは我が国にとっても非常に重大な問題であり、どのような分析をするのか、そしてどのような政策をとるのかというのがやはり決定的に重要なそういう状況段階に来ているというふうにまず申し上げたいと思います。  そこで、まず私なりの台湾の今回の総統選挙についての評価を申し上げたいというふうに思いますが、次の三点に簡単にまとめてございます。  まず第一点目は、今回のこの民進党への政権交代というのがやはり民主化一つ台湾における到達点であるということだろうと思います。約八三%近くの投票率というまさに選挙に燃えた台湾でございましたけれども、結果としては政権交代が起こったという、恐らくこれは李登輝総統が一貫して追求されてきたある種の民主化一つ到達点でもあるということが言えるのだろうと思いますが。  その結果でもありますが、第二番目には、これはやや言い方が強いかもしれませんが、国民党時代一つの終えんを迎えたということだろうと思います。  第三番目に、その結果でまさに言えるわけでありますけれども、従来、中台関係というものは、これは共産党と国民党関係として中国自身かなり強く認識をしてきたわけでありますが、この政権交代が起こったことによってまさに文字どおり中国台湾関係になってきたということが言えるのではないかというふうに思うわけであります。  そこで、第二番目の点といたしまして、それでは私自身が現在の台湾状況をどういうふうに理解しているのか、そして今後どういうふうにこれが推移していくのかということについて簡単に御意見を申し上げたいというふうに思います。  まず第一に申し上げたいのは、今回陳水扁、新たな総統という形で当選をしたわけでありますけれども、実はまだかなりの困難を抱えていることは間違いないということであります。  まず第一には、立法院という議会でございますけれども、ここで依然として民進党少数派であるということ、そして多数は国民党であるということ、その中での議会運営をどうするのかという問題。  それから第二には、依然として官僚あるいは軍、そうした指導部を見てみますと国民党系の人々がほとんどであります。そうした人たちをどういうふうにこれから説得していくのか、動かしていくのか、これが大きな問題であります。  それから第三には、宋楚瑜氏が非常に得票を伸ばしたという事実があるわけであります。同時に、この新しい政党を結成するということになってまいりますと、この対抗勢力としてかなり強くこれから出てくる可能性があるわけであります。それから第五番目には、陳水扁氏そのもの国際経験に乏しいという問題があるわけであります。それから、もう一つつけ加えて申し上げますと、これからも中国の強い警戒心と強い主張というものが出てくると思います。これもやはり陳水扁新総統にとっては一つの困難であろうかと思います。  それを踏まえて、一体陳水扁総統はどういう形で政局を運営していくんだろうかということを考えてみますと、まず第一に考えられるのは、今お話にございました李遠哲氏、つまりノーベル化学賞として非常に著名な方でございますが、国政顧問団の最高の地位につかれるということが決まっていますが、非常に台湾の中で人気のあるこの李遠哲氏を恐らくかなり活用するだろうということは間違いない。  それから、第二に考えられるのは、やはり李登輝総統への接近といいますか、恐らく依然として李登輝総統の影響力というのは退任後もかなり強く維持されるということになるわけでありますから、そういう意味ではこれをやはり陳水扁氏も活用したいということにならざるを得ない。その意味では、国民党との連立というような形もあるいは部分的な連立ということも恐らく射程に入れて考えていくだろうというふうに思うわけであります。  同時に、陳水扁氏中国からの強い主張がございますので、現在台湾の中で住民の不安というのもかなりあるわけでありますから、その意味ではやはり台湾中国対話を行っていくという、この点についての前向きの姿勢も示していくだろうと。  それでは、一体李登輝総統そのものは退任後どういう影響力を持ち得るのかということでありますが、選挙結果そのものは、李登輝総統にとっては私はセカンドベストであったというふうに考えております。私は、李登輝総統のこれまでの発言その他を考慮してまいりますと、最終的には政権交代というのが民主化の完成であるというふうにやはり考えていたのではないかというふうに思うわけで、そういう点では予定より若干早過ぎたというところは李登輝総統にはあったかもしれませんが、恐らく第二の選択肢としては陳水扁氏であったろうというふうに思うわけであります。  ただ、選挙結果、連戦氏がこれほど票をとれなかったというところから見て、影響力が相対的に低下していくことはやはり否めない面があるかもしれないということであります。現に、現在国民党主席の責任論というものが浮上しております。そして、今回早目に辞任されるということがもう本日の新聞等で報道されております。  ただ、私は、多分そのことによって影響力をどういう形で保持するかというのは恐らく考えておられるんだと思いますが、その点では多分民間人に下った方が逆に影響力をとりやすいという側面も考えているのかもしれない。よく民間外交であるとかNGO外交であるということが台湾でも強調されています。それは台湾自体が国際的な外交関係を多く持っていないという現実から来るわけでありますが、そういう形で影響力を保持するんだろうというふうに思います。  同時に、李登輝総統は恐らく宋楚瑜氏が国民党に復活、あるいは国民党の中で影響力を持ち得る、そういうことをとにかく阻止したいということは今後もさまざまな形で行動をとるだろうと思われます。  以上のことを踏まえて、それでは中国側は一体どういうふうに今回の事態を考え、そして対応しているのかということを客観的に申し上げたいというふうに思います。  まず第一に申し上げたいのは、いわゆる台湾白書、同時に朱鎔基首相が非常に強硬な発言を行いました。つまり、統一交渉を引き延ばすような行為をした場合は武力行使を辞さないというような発言をもこの台湾白書の中で中国は明らかにし、そして朱鎔基首相もこれに合わせるかのように非常に強硬な発言をいたしました。  中国原則はやはり武力行使を絶対に放棄できないということであろうかと思います。それはなぜかと言えば、放棄をすれば台湾が恐らく中国からますます離れて独自の行動をとるということ、そういう判断に基づいているわけでありますが、同時に、もう一つ重要なことは、中国共産党にとってこの五十年間の政権の正統性そのものに関係しているということであります。みずからの政権の正統性として台湾の統一ということを五十年間繰り返し言ってきたということになりますと、国内的な正統性の裏づけという点からも、今後も恐らく台湾問題については断固たる姿勢を最後までとるというふうに思うわけであります。  ただ、私は今回の台湾総統選挙に関しては、武力での威嚇は実はなかなかしにくい状況中国は落ちついていたということも事実であります。それは、前回九六年の総統選挙の際にかなり強い国際非難を浴びたという経験があるからでございますし、同時にその結果が李登輝総統勝利ということをもたらしてしまったということがございます。つまり、前回の経験ということもございますし、それからもう一つは、やはり中国の今置かれている状況というものが非常に厳しい状況であるということはやはり認識しているかと思います。  最も大きな問題は、国内の経済状況であります。これはWTOの加盟の問題もございますし、同時に日本を含めた西側諸国からの直接投資もかなり激減してきているという状況があるわけで、中国の経済的な活性というのが政権の安定性の基礎になりますから、そういう点ではやはり国際的な協調路線をとらざるを得ないという側面はあるわけであります。  そういう点では、今回もし武力を使って威嚇するということをやれば、それがたちまち国際非難を浴びるということはほぼわかっているわけでありますから、そういう意味で国内のさまざまな軍の反発もあるというところから今回は文書という形で強硬な発言を提示したということになろうかと思います。  私は、今回の事態の推移を見てまいりますと、台湾問題というのが中国の中では、ある意味ではこれまで中国の中でかなり凝集力を欠いてきた状況があるわけでありますが、そういう点では民族主義を喚起する一つのよい材料にも確かになったということでありまして、つまり不況であるとか、あるいは失業である、あるいは政治不安というようなことが中国の中で非常によく言われていた、そういう状況の中で、共産党の信頼感というものが低下している中でこれだけ凝集力を持ったというのもある意味では珍しいわけでありまして、そういう意味では国内に凝集力を持たせる、こういう形で中国が使ったということも言えるんだろうと思います。  同時に、江沢民主席にとってやはり自分の将来的な成果、業績という点もあろうかと思いますが、それは毛沢東氏あるいは故トウ小平氏に比べてみると一体自分が何をするかということもあるかと思いますが、そういう点ではやはり台湾問題というのをどうにかしたいというのがかなり強いんだろうというふうに思います。  今回のこの強い行動によってマイナスと実はプラスの効果があったというふうに私は判断しております。マイナスの効果は何かと申しますと、白書が出る前は台湾における総統選挙の争点は、これはただ一つ金権政治の打破ということでありました。つまりは、台湾内部のお金にまつわる金権支配ということ、ここに焦点が集中していた。ところが、白書が出たことによって中台関係に焦点が移行したということであります。  同時に、台湾人かあるいは中国人かといういわゆる省籍矛盾というものも焦点になったということが実は陳水扁氏に票が集まった一つの背景になっているということだろうと思いますし、それからもう一つは、この白書の発表というのは、恐らくやはり陳水扁氏を崩す、陳水扁氏を落とすということが目標だったと思いますけれども、結果としてはこれは失敗したということになるわけであります。  これが中国にとっての誤算であったかというふうに思いますけれども、実はマイナス効果だけでもなかったかもしれないというのが少し出てきているということであります。それはどういうことかと申しますと、陳水扁氏が当選するという場合も十分に想定できたわけであります。これは特に最後の段階においてはそのようなことが想像できた。その段階ではできるだけ強硬な立場陳水扁氏を牽制するということであったんだろうと思います。  それで、一体陳水扁氏がどうなったかといいますと、現実に彼の発言が非常に穏健化していったという事実があるわけであります。総統になれば民進党という党の立場から離れるであるとか、独立宣言はしないとか、あるいは国名の変更はないとか、対話を推進したいとか、あるいは訪中希望があるとか、あるいは最近では民進党の独立という綱領を放棄したいということが動きとしてあるわけであります。  そういう点で見てまいりますと、中国としては、やや言葉が、余りいい言葉ではありませんけれども、李登輝総統よりも陳水扁氏の方が若干御しやすいという側面はあるかもしれないという感覚を持っても不思議ではないという感じがこれまでのところはするわけであります。  そこで、中国のこれからの対応ということでありますけれども、やはり中国は今後も徹底的に独立という傾向をとにかく阻止したいということで強硬に訴え続けるだろうと思います。これが国内的な実はコンセンサスをある意味では持っているわけでありますし、同時にそれをやらない限りはみずからの正当性も危ない。同時に柔軟な策として、陳水扁氏に対して対話の促進をこれから促していくだろう。つまり接近策をも説くだろうということであります。  そういうことによって何をねらうかというと、恐らく最大の目標は、ずっと総統選以前からの中国の対応を見てまいりますと、やはり李登輝総統の影響力の低下、これをねらうということだろうと思います。やはり李登輝総統に対する物すごい中国の内部での警戒心というものがあるわけでありますから、これを今後できるだけ排除したいというのが恐らく中国側のねらいだろうというふうに思います。その意味では、中国側宋楚瑜氏にどういう形で接近できるかということを模索するでしょうし、陳水扁氏李登輝総統の間をどうにか離間できないだろうかというようなことも恐らく考えるんだろうと思います。  訪日の問題が出てきております。李登輝総統の訪日の問題、退任後でありますけれども、これに対して物すごい中国は反対を示しておりますけれども、これもやはり影響力がそういう形で保持されていくということに対する懸念であるということが考えられるわけであります。  同時に、アメリカに対しても、中国は、独立の傾向をとにかく阻止してほしいということと、それから対話の促進をとにかく仲介してほしいということを積極的に依頼するんだろうと思います。  いずれにいたしましても、五月の正式の総統就任までパイプをいろんな形で模索して、そして新たな陳水扁政権に対していろんな形の接触攻勢に出ていくだろうというふうに思うわけであります。  最後に、日台関係ということ、日本と台湾関係ということでありますが、実はこれ自身、私自身がまだ考え方がまとまっておりませんで、最後までこの部分は消すか消さないか迷ったのでありますが、やはりこのような機会でございますので、私自身の考えもまだ未熟でございますけれども、私なりの考えを申し上げたいと思います。  これまでの日本と台湾のパイプというのは、これはもちろん国家関係はないわけでございますから民間を中心としたものであった。しかし、民間を中心としたものであるけれども、やはり国民党中心であり、同時に李登輝総統を中心としたものであった。これは別の言い方をすれば、日本語世代というものを中心に交流してきたということになろうかと思います。その意味では、民進党あるいは陳水扁氏とのつながりというものはまだ新しいし、同時に限定的なものであろうかと思います。  台湾の世代交代ということの中で、台湾は恐らくこれから日本語世代にかわって英語世代というのが圧倒的な多数を占めていくということになろうかと思いますので、そういう意味では台湾アメリカ関係というのはますます今後太くなっていくだろうということが予想されるわけであります。  その点からいいますと、日本との関係というものが、民間を中心としてでありますが、若干弱まることもあり得るわけでありますが、ただ、台湾の中にある日本ブーム、また日本を受け入れるということの社会的な基盤はもうかなりでき上がっておりますので、そういう点での日本と台湾の民間の交流というのは今後もかなり強く続くだろうというふうに思います。  問題は、李登輝総統の退任後の訪日の問題であります。これは現在でも非常に論争を巻き起こしておりますし、既に中国側から強い反発を呼んでいるわけであります。ただ、論理的に考えてみますと、それから、ある意味では感情的あるいは道義的に考えてみても、李登輝総統の退任後、同時に党主席もやめられるということでございますので、そういう点では訪日は可能であるという条件は整ってきたということだろうと思います。  ただ、問題はそれをどういう形で行うのかという問題であります。一つ状況の問題、二つ目はタイミングの問題、それから第三番目は方法の問題であります。つまり、中国にも中国のメンツと原則というのがあるわけでありますし、やはり我が国としては中国との外交関係ということが前提でございます。  そういう点を考えてまいりますと、状況としては、余り問題を公にし過ぎる、あるいはこの問題について大きく取り上げ過ぎるという状況の中では中国反発せざるを得ないというのが当然の中国政策になろうかと思いますし、タイミングという点で考えますと、例えば日本は間もなくサミットを迎えようとしておりますけれども、その直前であるとか、つまり日中間というものをできるだけ険悪にさせたくないという状況下、また関係がある程度安定しているという判断の中でこうしたことが行われないとだめでしょうし、それから第三番目には、方法という点では、もちろん公人として訪日いただくということにはいかないでしょうし、それは民間の関係しかないわけでありますから、私人、民間人という形。  それから同時に、どういう場所に、あるいはどういう人と交流するかという、そうした点も含めてこれはいろんな形でセットできちんと話を詰めていかないとかなりお互いにしこりを残すということになりかねないということで、私自身もまだ煮え切らない結論でございますけれども、やはりこれは十分に水面下で議論していく話ではないかというふうに考えております。  いずれにしても、日本と台湾関係、あるいは同時に、外交関係を持っております中国との関係というのは、どちらもやはりこれはある意味では重要な関係であります。その均衡点がどこにあるのかという点を考えてみますと、これはやはり中台の平和的な統一であるという以外にあり得ないだろうと思います。そのための対話の推進ということも、我が国としては基本的に前向きに推進することを主張すべきだろうというふうに思います。  同時に、独立と統一ということの間には、実はこの二つの選択肢だけではない無限の恐らくシナリオというのがあり得るんだろうというふうに思います。そうした柔軟な思考というものが我々にも求められているということだろうと思います。東アジアの安定のためにも我が国にとってこの問題はやはり今後も積極的に議論していく、そうした重要な課題であるというふうに考えております。  以上で発言を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  10. 矢野哲朗

    委員長矢野哲朗君) ありがとうございました。  次に、高木参考人お願いをします。高木参考人
  11. 高木誠一郎

    参考人高木誠一郎君) どうもありがとうございます。  日本の対外政策に重要な責務を負っていらっしゃる先生方の前で私の見解を発表する機会を与えていただいたことを大変光栄に存じております。  冒頭にひとつおわびと釈明を申し上げたいんですが、私は前のお二人の参考人のように皆様にレジュメをお配りしておりません。実は私はお配りするつもりできのうの夜遅くまで準備をしておったんですが、私は現在防衛庁の防衛研究所というところに所属しております関係で、内局の方から、レジュメを出すならばまずこちらに見せろと言われまして、まだやっている最中だったんですが、昨晩遅くやっとできると思うと言ったら、それならレジュメなしでやってほしいというふうに言われたわけであります。レジュメがないことを大変申しわけないと思っておりますが、決して私の議会軽視ではありませんので、御理解いただきたいと思います。  私に対する発言の内容の御指示は、アメリカ立場から見た台湾問題を論ずるようにということでございました。何をお話ししようかいろいろ考えたんですが、時間も限られておりますので、二点に絞ってお話ししたいと思います。  一点は、アメリカが、一九七二年の米中接近以降、台湾問題に対してどのような態度をとってきたかということを大まかに回顧するということ、それから第二点は、最近の状況についてどのような対応をしているかという二点でございます。  まず最初の、アメリカ台湾問題に対する立場の変遷ということですが、ここまで初歩的なことを申し上げてはかえって失礼かもしれませんが、一九七二年二月の上海コミュニケを振り返ってみますと、このコミュニケはアメリカ中国が国交正常化の交渉を開始するということをうたったコミュニケであるわけなんですが、このコミュニケの中で、台湾問題は国交正常化の交渉を左右するかぎとなる重要な問題であるということが述べられております。  この中で、言うまでもなく中国は、台湾中国の一部であるという立場を明確に述べておりますが、これに対するアメリカ表現というのは非常にあいまいなものでありました。その文書を引用しますと、アメリカは、台湾海峡の両側のすべての中国人は中国はただ一つであり、台湾中国の一部であると主張しているという、そういう事実を認識するというふうに述べているにすぎません。この認識という言葉は、英語ではアクノリッジという言葉を使っております。中国語は認識到るという基本的に日本語と同じ意味なんですが、そういう漢字で訳しております。そして、この台湾問題の平和的な解決に関心を明確に表明いたしました。  このコミュニケで始まった米中の国交正常化の交渉というのは、その後、米中両国の国内政治の激動のためになかなか順調に進みませんで、一九七八年十二月にやっと決着いたしまして、十二月十五日に国交正常化のコミュニケが発表されます。  この国交正常化のコミュニケの中で、やはり中国は従来の立場を繰り返して述べ、アメリカはこれに対して、台湾中国の一部であるという中国立場を認識するというふうに微妙に表現中国寄りに変えております。これを英語で読みますと、アクノリッジ・ザ・チャイニーズ・ポジションという表現になっておりまして、そして非常に興味深いことは、この部分の中国語訳が承認という字になっております。上海コミュニケにおけるアクノリッジという言葉は認識と訳されていたんですが、正常化のコミュニケのアクノリッジという言葉中国承認しているというふうに訳しておりまして、以後、事あるごとにアメリカに対して、アメリカ台湾中国の一部であるということをあのときに承認したではないかという形で、このコミュニケを引用しております。  このような中国かなり接近した立場をとったことへの反発も加わりまして、この国交正常化のコミュニケの承認と相前後して、アメリカ議会台湾関係法というのを通過させました。これはアメリカ台湾に対する安全保障上のコミットメントを、台湾との防衛条約を破棄せざるを得なかったということがありますので、アメリカの国内的な立法で保障しようとしたものであります。  この台湾関係法では、台湾の自衛に必要な兵器を供給するということを明確にうたっておりまして、そして台湾に供給する兵器の種類あるいは量の決定に当たっては、台湾の防衛上の必要以外の配慮をしてはならないということも述べております。また、この台湾関係法は、平和的な手段以外の方法で台湾の将来を決定しようとする行動はすべてアメリカの重大な関心事であるということを述べておりまして、その例示としてボイコット、封鎖も含むということを言っております。ある意味ではこの台湾関係法によるアメリカ台湾安全保障に対するコミットメントというのは安全保障条約よりも強いものだと言ってもいいかもしれません。  このようなコミュニケによって正常化が達成された後、一九八一年にレーガン政権が発足するわけですが、レーガン大統領は、一九八〇年の選挙戦を通じて、台湾との関係を正常な外交関係にするあるいはすべきであるというようなことを述べておりまして、そのような人が当選したということもあって、台湾側からアメリカ台湾に対する兵器供与の質の向上について非常に強い要求が出てまいりました。  この状況中国は非常に危機感を抱きまして、台湾に対する兵器供与を制限する何らかの取り決めを結ぼうということを働きかけます。非常に複雑な交渉を経まして、一九八二年八月十七日に台湾向け兵器輸出に関する米中の共同コミュニケが調印されます。このコミュニケと正常化のコミュニケと上海コミュニケをあわせて米中ではしばしば三つのコミュニケというふうに言われております。この兵器輸出のコミュニケの中で、アメリカはさらに中国に微妙な歩み寄りを見せておりまして、ここでアメリカ側は二つの中国、あるいは一つ中国一つ台湾政策をとらないということを明言しております。  このように上海コミュニケから兵器輸出に関するコミュニケまでアメリカはじわじわとその立場中国寄りにしてきたわけであります。もちろん、この間にありましても台湾問題の平和的解決に対する強い関心の表明というのは繰り返して行われておりますが、微妙ではあっても中国側立場に接近していったことは否定できないと思います。  このような事態を背景に、一九八〇年代の末から冷戦の終えん、それから八九年六月の天安門事件という時代を受けてアメリカの対中政策は大きく動揺いたします。また、特に台湾に関しては、七〇年代から八〇年代にかけての台湾の急速な経済成長、それから八〇年代後半以降の民主化の進展ということによって台湾の国際的なステータスが上がってきたということも事態をさらに複雑にしております。  このような事態を受けて、一九九四年、アメリカ台湾政策の見直しを行いまして、これによって技術経済関係の官庁の高官が台湾を訪問することを認めるという方向にかじを切りました。そして九五年には李登輝総統の訪米を認める、もちろんこれは私的訪米という形をとるわけですが、認めると。そして九六年には、総統選挙に際して中国が軍事演習による威嚇を行ったということに対して空母を、機動部隊を二個台湾近海に派遣して、中国側ににらみをきかせるという行動をとります。  もちろんこの間における台湾問題に関するアメリカの基本的な立場は、いわゆる戦略的あいまい性ということでありまして、アメリカは、中国台湾に対する武力攻撃をした場合にこれを黙視するとは限らないということを一方で言いながら、他方台湾に対しては、台湾が非常に挑発的な行動をとった場合には必ずしも台湾を防衛するとは限らないという一見相矛盾した、いわば玉虫色のメッセージを米中双方に送ることによって、この海峡における武力衝突を阻止しようと図ってきたわけであります。しかし、一九九六年の空母派遣というのはこの戦略的あいまい性を少し低下させたかなというふうに受け取られる面もございます。  さらに一九九八年、クリントン大統領が中国を訪問した折にいわゆる三つのノーという態度表明を行いました。これは、台湾の独立に対する支持はしない、それから二つの中国一つ中国一つ台湾支持しない、それから国家を構成メンバーとする国際機関への台湾の参加も支持しないというわけであります。  この三つのノーというのは中国側が非常に喧伝しておることでありますが、ただ、このときにクリントン大統領は、台湾問題の平和的解決ということも明確に言っておるわけでありまして、アメリカとしては四つのノー、つまり武力不行使というのを加えて、自分たちの言いたいのは四つのノーだと言うべきであったのではないかと私は思うわけですが、どうやら中国側の宣伝能力の方がアメリカを上回っている、少なくともこの面についてはそういうことが言えるのではないかと思います。  このように、アメリカ台湾問題に対する立場が展開してきたことを受けて現在の状況があるわけですが、最近の状況、特に昨年以降の状況を見てみますと、アメリカではやはり中台の武力衝突に対する懸念が非常に高まっているということが指摘できると思います。  昨年二月、アメリカ議会は、台湾海峡における軍事バランスに関する報告を公表いたしまして、二〇〇五年までは台湾中国に対して優勢を維持するということを言っているわけです。といいますのは、二〇〇五年以降はむしろ中国の方が優勢に立つだろうという予測をしております。  このような予測を一方でしながら、他方コックス報告というものを出しまして、中国が長年にわたってアメリカの諸機関から原子力兵器作製に関する機密を窃取していたという指摘をするという背景もありまして、中国に対するアメリカ警戒心というのは非常に高まっております。  このような中で、さらに昨年はユーゴの中国大使館における誤爆事件があって米中関係が非常に悪化したわけですが、中国側としては当然爆撃された立場としてアメリカに対する我慢ならない気持ちもあったと思いますが、それに対する対応がアメリカの中で非常にまた反発を呼ぶということもありまして、極めて険悪な雰囲気になった時期がございます。  そのような事態を背景に、昨年の後半、アメリカ議会では台湾安全保障強化法案というのが提出されまして、昨年十月、下院の国際関係委員会を通過し、ことしの二月に下院の本会議で圧倒的な多数をもってこれが通過しております。  上院は、これを一つのてこに使おうという計算だと思いますが、台湾総統選挙後までこの法案の審議を延期するという措置をとっておりまして、現在もまだ投票は行われておりませんが、中台関係の展開によっては、やはり上院も圧倒的多数で、少なくとも大統領の拒否権を覆すに足るだけの多数で成立させるという可能性が依然として消えていないという状況であろうと思います。  こういう状況に対して、行政府は事あるごとに中国台湾双方に自制を求めておりますが、特に中国に対しましては二月の中旬にタルボット国務副長官、それからスローコム国防次官を派遣しまして、中国側の自制を求めて、何とか武力衝突の勃発を抑止しようとしております。  しかし、これに対してアメリカ側としては非常にショックだったのは、このタルボット、スローコムの使節団が中国を離れたその直後に先ほど来お話のありました台湾白書というのが出まして、交渉を無期限に延期する場合は武力行使も辞さないというような態度表明を行ったということであります。  また、このような状況を受けてクリントンも、三つのノーの発言を微妙に修正する発言をしております。と申しますのは、三つのノー自体あるいは一つ中国政策というものは否定しないのですが、台湾あり方の変更は台湾の人々の同意を必要とするということを述べるようになっております。  一般に、アメリカ外交安全保障問題あるいはアジア問題の専門家たちの意見新聞等から推察してみますと、近い将来に中台間で武力衝突が起こる、あるいはそれによってアメリカが関与せざるを得なくなるという事態はないにしても、三年から五年という中期の見通しを考えた場合、かなりその危険は高いという意見を持つ人が多いようであります。  最後に、選挙の結果についてのアメリカの反応について私の感知し得たことをお話し申し上げますと、まず陳水扁の当選は、先ほどの国分先生のお話で、最後の段階中台関係が争点になったというふうにお話がありましたけれども、アメリカの支配的な見方は、基本的にこれは反腐敗のキャンペーンの成功であるということで対中関係が中心となった選挙ではないということ。それから、中国側かなりその言行を陳水扁の当選以降自制しているということで、幾分安心しているということが見てとれます。  また、アメリカの議論の中にはおもしろいものがございまして、かつて反共の闘士であったニクソンが中国との関係改善を実現したように、陳水扁はもしかしたら中国台湾関係を根本的に解決し、この両者間のデッドロックを打開するような働きをするのではないか。いわゆる陳水扁・ニクソン論というのが出ているようであります。  いずれにしましても、アメリカの基本的な立場は、先ほど国分先生が日本の立場としてお話しになったことと同じと思いますが、何とか武力衝突を回避して両者を交渉のテーブルに着かせるということに尽きると思います。  ただ、この交渉がどのような形でうまくいき得るかということについては、私の知る限り確たる展望はないというふうに見受けられます。したがって、いざとなった場合に対する備えも怠りないというのがアメリカの対応ではないかと思います。  以上でございます。どうもありがとうございました。
  12. 矢野哲朗

    委員長矢野哲朗君) ありがとうございました。  以上で参考人方々からの意見の聴取は終わりました。  それでは、これより質疑を行います。  本日は、あらかじめ質疑者を定めず、委員各位に自由に質疑を行っていただきます。質疑を希望される方は挙手の上、私の指名を待って御発言いただきたいと思います。  それでは、質疑のある方は挙手を願います。
  13. 武見敬三

    ○武見敬三君 大変喫緊の課題について詳細な御報告をいただき、三名の参考人方々に対し心から御礼を申し上げる次第であります。  最初に、まず井尻参考人にお尋ねをしたいわけでありますけれども、確かに国民党政権が交代を余儀なくされたという状態になったわけでありますけれども、実際にこの後の台湾政治の動向の中で国民党というのが一体どのような形に変質していくのであろうか。その過程で新たにどのような、日本流で言えば政界の再編という状況が展開されていくのかという点についてお伺いしたいと思います。  特に、国民党政権というのは、先ほど国分参考人の方からも指摘されておりましたように、軍及び政府の官僚、幹部、これは全部国民党員と言っても過言ではない。そうした状況の中で、もしそういう国民党が分裂するということになった場合に、同じく政府及び軍の要所を占める官僚グループというのも分裂をしていくのかどうか。そしてまた同時に、そうした過程で陳水扁新総統という新たな指導者がどこまで台湾政局全体を安定的に管理し得るのであろうか、この点についての御所見を伺いたいと思うわけであります。  それから、高木参考人にお尋ねしたいのは、実は台湾安全保障強化法案の今後の動向であります。  特に、台湾白書というのが厳しい反発を米国議会内に引き起こして、結果として、むしろ当初は採択されないのではないかと言われていた上院における審議も逆に順調に進みそうだというようなことも言われました。そしてさらに、今回の陳水扁新総統の誕生という事態がこうした上院における審議の状況にいかなる影響を及ぼすことになるんでしょうか。そして、それに対する行政府側の対応というものはいかなるものになるのか、この点についての御所見を伺いたいと思うわけであります。  そして、国分参考人に関しましては、中国の今後の対応の問題であります。  実際に陳水扁陣営の最終的な支持に回ったエバーグリーンの張栄発氏であるとか、かなりのこうした陳水扁陣営に加わった人たちというのは大陸側とも実は緊密な関係を持っている人たちがおるわけであります。その人たちを通じたやはり従来の三通というものに対する条件の緩和という、そういう環境が台湾側に確実に整い始めたように思います。  政治的な一つ中国論にかかわる議論というものは、これは入り口論でなかなか難しいというふうに考えるわけでありますけれども、こういう三通の条件緩和などを通じた実質的な中台の経済的な関係の拡大というものが逆に今後実現していくのではないか。それがまた間接的に中台政治的な緊張の緩和、そして新たな交渉の条件整備ということにつながらないかというような、そういう若干希望的な観測をも持っているわけでありますけれども、国分参考人はいかにごらんになっているでしょうか。  以上です。
  14. 井尻秀憲

    参考人井尻秀憲君) 簡単にお答えしたいと思います。  まず、国民党の今後のいわば変質といいますか改革の問題、それからどのような政界再編成に向かうのかという問題でございますが、やはりかなり今の段階で明快な形で今後の展望を記すといいますか示すということは難しいわけですが、いずれにせよ、かなり国民党から、一つ宋楚瑜、新しい第三勢力を結集する新党の方に移る人が出てくるだろう。そういった意味で、国民党はますますより台湾国民党としての立場をまた明確にしていかなければいけないということと、それから、先ほどちょっと申し上げましたが、国民党の中での意見の違い。  それから、李登輝総統がおやめになるのも本来九月の臨時党大会ということだったのが、あすの党中央常務委員会での表明というような報道に変わってきておりますけれども、今一番国民党に関連する問題で大きな問題はやっぱり党資産の問題であります。  この党資産をどうするかという問題がございますので、一般に二百億米ドルと言われたり、あるいは日本円で二兆円を超える、これは非常に複雑に登録されている、登記されたりしているものもあったり、非主流、つまりかつての反李登輝総統の勢力と言われている国民党内部に残っている人たち、そういう人たちもこの問題に関してかなり強い関心を示すわけです。ですから、その問題が、連戦さんが選挙期間中に言われた信託化という、民営化という形ですんなりいくのかどうか、ここらあたりに私は非常に関心を持っております。  しかしながら、それがどのように進むかという点に関しても、民営化という方向に進む、あるいは台湾全体の利益に使われるような形でこれがうまくいわば配分されたり使用されていくのかどうか、ちょっとよくわかりませんけれども、この問題と絡めて、政界の再編成、そういった問題も見ていかなければならない。  宋楚瑜、新しい政党の結成ということを表明している彼にとっても、そちらの方に流れていく国民党の党員の方々にとっても、やはりかなり彼らの頭の中に、視野の中にこの国民党の党資産というものをどうするかというのがあるだろうと。李登輝総統国民党の党資産に関して余りタッチしてこなかった。これはほとんど党営事業本部長の劉大貝さんに任せていたというような経緯がございますので、今後そういう問題がまたクローズアップされてくるというふうに思います。ですから、まだ明快な形で政界の再編成ということのお答えができないんです。  それから、軍の動き云々に関しては国防法ができましたのである程度は、かなりシビリアンコントロールはきくと思います。  ですから、そういう意味では、新たに陳水扁さんになってもある程度その辺は、そこから大きな変化が生じるとかいうような、あるいは揺り戻しが生じるとかいうことは見通しがしづらいというふうに私は考えております。  どうもありがとうございました。
  15. 国分良成

    参考人国分良成君) ありがとうございます。  武見理事の御質問というよりは御意見かなり含まれておりまして、私は基本的に賛成でございますけれども、中台対話ということについて、先ほど高木参考人の方から進展がないかもしれないということでございましたけれども、恐らく対話の場を持っているということ自体の意味がやはり一つの信頼醸成になるだろうというふうに思っておりますので、そこから先の話はまたいろいろございますけれども、そうした場の設定というのがやはり一つ重要なポイントである。  それから二つ目は、武見理事のお話にございましたように、陳水扁陣営をこれからサポートしていく人々がかなり中国との関係を持っているということ、同時にこの人たち李登輝総統とのパイプもかなり太いという事実もあるのだろうかと思いますけれども、そうした点で陳水扁氏はこれからその両面をとらざるを得ないと。先ほど申し上げたように、内部的な政局運営という点では李登輝総統の力をかりざるを得ない側面があろうかと思いますが、同時に中台間の関係の安定というこの重要な問題からいきますと、もう既に陳水扁氏が公にしているとおり、三通と先ほどお話がございましたが、基本的な関係、通商を中心としておりますけれども、そうした接触をこれからも行っていくと。  私は、結論として申し上げたいのは、こうした経済の交流というものは、これは国境を越えた交流でございますので、もう必然的にこれからもふえていくであろうと。現在のようにグローバリズムが支配的な状況の中で相互依存体制は今後も進むわけであります。  中台関係といいますと、どうも安全保障の面ばかりが強調され、また対立の側面ばかりが強調されるわけでありますけれども、私の知り得る限りでは、例えば香港やあるいは東南アジア等々で中国台湾の両方の学者あるいは民間人が接触する機会というのは非常に多くございます。同時に、日本とアメリカではなかなかそのような機会は少ないんですが、また中国も非常にそれについては警戒心を持ちますけれども、その他の世界の中では中国台湾の接触というのは、民間人の形ではありますけれども、かなり広範囲に行われているということがあるわけでございます。  そうした点を考えてみますと、つまり我々はこの地域の安定状況というものをどのようにつくり出すかというときに、直接的な安保の問題もございますけれども、そこだけですとお互いの原則というものがどうしても強調されがちでありますから、武見理事のまさにお話のありましたとおり、経済交流というものがやはりこの地域の緊張をほぐしていく一つの大きな要因になるだろうというふうに思うわけであります。  その際、私は日本企業もやはり重要な意味を持っているというふうに思っておりまして、つまり日本企業が現実に台湾に直接的にさまざまな形で経済協力あるいは技術移転を行う、それが台湾から大陸へと技術移転がされていくというような現実の構図があるわけでありますから、そういう点では実は日本と中国台湾が経済的にゼロサムでないプラスサムの関係を持っているということもあるわけであります。遠回りではあるかもしれないけれども、そうした関係をつくっていくということが重要ではないかというふうに思っております。それがやがて安全保障上の緊張関係をほぐしていくということにもなろうかと思いますが、いずれにしても、余り短期的に物を考えるべきではないというふうに思います。
  16. 高木誠一郎

    参考人高木誠一郎君) ありがとうございます。  武見理事の御質問は、台湾安全保障強化法案の上院審議の展望ということでございましたが、当然のことだと思いますけれども中台関係の今後の展開によって大きく左右されるだろうと思います。緊張が高まるようになれば賛成票がふえるということは明らかだろうと思います。問題は、これが通過するかどうかというよりも、大統領の拒否権を覆せる三分の二以上の票を得て通過するかどうかということだろうと思うのですが、下院は既に三分の二をはるかに超える圧倒的多数で通過しておりますが、上院においてはその三分の二の壁が越えられるかどうかというのはまだ微妙なところだろうと思います。  いずれにせよ、この台湾安全保障強化法案というのは、実は今回お話をいただいてからきょうまでに情報収集が間に合いませんで、一番最初に出てきたものとの比較が正確にはできていないんですが、聞いたところによりますと、最初に提案されたものよりもかなり内容を薄めたものになっている、現在審議されている、あるいは下院を通過して今上院にかかっているのはそういうものだそうであります。  このテキストを読んでみますと、確かにこれは台湾関係法の実効性を確保するという側面が非常に強く、それ以上のものは比較的象徴的な面が強いものだろうと思います。実質的な意義としては、国防大学等に台湾からの留学生のための席を確保すると。台湾の軍と米軍とのコミュニケーションをよくして、いざとなったら、共同作戦まで行くかどうかわかりませんが、少なくとも協調的な作戦行動がとれるようにする基盤をつくっておくということ。それから、台湾への兵器供給に当たっては、台湾関係法に既に述べられていることですが、台湾の防衛上の必要以外の考慮を絶対にしないということをさらに強調しているというのが主な内容であろうと思います。  ただ、それでも中国からすると我慢がならないだろうと思われますのは、この法案の至るところで、一九八二年の台湾向け兵器輸出に関する共同コミュニケの内容にもかかわらず、台湾関係法が重視されるべきであるとかあるいは台湾関係法の方が法的に上位に立つということを明確に述べているところでありまして、中国側からすれば一九八二年のコミュニケの否定にもつながりかねないというふうに読めるだろうと思います。  この内容を薄めただけに通りやすくなっているということもありまして、今後の中台関係の展開いかんによっては、上院を通過、さらにはその三分の二以上の多数でもって通過するという可能性も否定できないのではないかと思います。  これに対して行政府側がどう対応するかということなんですが、既に言われておりますことは大統領が拒否権を発動するということなんですが、ただここで一つ状況を複雑にしているのは、現在大統領選挙が進行中であるということでありまして、中国の無法な行動に対して甘いという非難を受けるということはどの候補にとっても非常に大きな痛手になることでありまして、中台関係が緊張している段階でこれが通って大統領がこういう拒否権を発動すると、当然それはゴア大統領候補に対する激しい非難としてはね返ってくるということが予想できますので、かなりそれに対するちゅうちょも出てくるだろうと思います。  将来のことですので、これ以上のことはちょっと現在申し上げられませんけれども。
  17. 荒木清寛

    ○荒木清寛君 まず、井尻参考人にお尋ねをいたしますが、先ほどの高木先生のお話もあわせますと、今回陳水扁氏が勝ちましたのは何も彼の台湾独立政策支持されたというわけではないというお話であったかと思います。ただ、私もニュースで見ておりましたら、たしか国民党のテレビキャンペーンだと思いますが、陳水扁が当選をすればこの台湾独立政策の中で中国との戦争になるというのを繰り返しやっておったようで、大変あれはネガティブキャンペーンとしては効果的なのではないかというふうに私も思いながら見ておったんですね。にもかかわらず、この陳水扁が当選をしたということは、やはり一定の範囲でそういう独立路線支持をされたというふうに見ることはできないのかということをお尋ねしたいと思います。  次に、国分先生には、先ほど中国台湾白書の発表は、これは陳水扁を落とすためにやったんだと。ただ、四年前の総統選のことを考えればこれはもう逆効果ではないかということは当然予想できることで、にもかかわらず、なぜあえてそのようなものを発表したのかということと、先ほど中国の国内の軍の反発もあった手前というようなこともありましたけれども、相当中国の国内においてこの台湾政策についての強硬路線と柔軟路線の対立といいますか、抗争があるのかどうか、その辺をお尋ねしたいのと、最後に、日本にとりましてもこの中台関係というのは安全保障上非常に大事な問題なんですが、我々日本として中国政府に対してこの問題についてどういう働きかけといいますか、対応をしていけるのか教えていただきたいと思います。
  18. 井尻秀憲

    参考人井尻秀憲君) 民進党の党の綱領に確かに台湾共和国という名前が入っておりますし、従来から民進党は台独、台湾独立政党だというふうに言われてきたわけですが、実は必ずしもそうではなくて、既に台湾という中華民国が一つの独立した主権国家であるという表現、これはもう国民党がずっと言ってきたことですね。それから民進党もいわば台湾中国の統治権が及んでいないという、そういう現実がある以上は、もう既に台湾は事実上独立していると。だから、あえてもう一回台湾独立を宣言するという必要は毛頭ないというような形で、そのトーンというものはどんどん緩くなってきております。  したがいまして、従来から立法院選挙とかいろんなところで、かつては台湾独立とか新しい国家とかそういうことを言うと刺激的過ぎるということがあったんですが、そういうことを民進党かなり学んで、そしてもう政権が少しずつ近くなってくる段階に入ってきますと、ますます独立という言葉は言わなくなってきたんですね。同時に、じゃ言わなければどうかということなんですが、そうしたらそれはもう全然台湾独立を言う必要もないと。  ですから、ある意味でそういう独立という言葉を使いますとまた話が若干違ってきますが、むしろやっぱり台湾人意識のある種のコンセンサスといいますか、そういうものがこの李登輝体制の中でかなり定着してきた、つまり土着化という、そういう方向に向かってきたということですね。台湾人の国家としてのアイデンティティー、それもかなり育ってきたと。その上に陳水扁さんの今回の勝利は乗っているというふうに考えて構わないと思います。  したがって、独立路線支持されたと言うとちょっと表現上語弊があるかと思いますが、台湾人意識台湾人台湾を統治しているんだという、そういう意識のもとにいわば民進党の公認候補である陳水扁さんの勝利があったということは、これは言って構わない、そういう理解でいいんではなかろうかというふうに私は思っております。  したがって、中国との関係で言えば台湾独立をあえて宣言するということはまずあり得ないと。それから同時に、その台湾独立をするかしないか、そういうことを表明するかしないか、あるいはそういう非常に極めて敏感なものを国民のいわば住民投票にかけるというような、そういうことで決着をつけるか、つまり住民自決という形で、それも当面考えられないんですね。ですから、それよりもむしろ対話に向かうという形になるだろうというふうに思います。  ただ、おっしゃった意味の点での勝利のいわば背景、原因の一つとしてやはり台湾人意識というものが陳水扁さんを強烈に推す熱狂的なそういうものがあったということは否定しがたい事実だろうというふうに理解しております。
  19. 国分良成

    参考人国分良成君) ありがとうございます。  ただいまの荒木委員の御質問でございますが、三つに分かれるかと思います。  まず第一点目は、いわゆる台湾白書ということについての中国の意図をもう一度御説明いただきたいということだと思いますが、私は二つの意味が込められていたということを御報告の中で申し上げたつもりであります。  つまり、一つは、やはり陳水扁氏をどうにか落としたいということはあったんだろうと思います。もう一つは、そうはいっても陳水扁氏が当選する可能性かなり高くなったということをやはり想定して、できるだけ強硬な態度に出ておくと。  それはどういうことかと申しますと、住民の不安というのが台湾の中にございますので、やはりそこに訴えるという形で陳水扁氏立場の柔軟化を求める、そうしたことではなかったかというふうに思います。そういう点では、これは陳水扁氏もある程度柔軟な態度をとらざるを得ない状況がありましたし、また中国からとってみますと、これまでのところは比較的陳水扁氏が穏当な立場をとっておりますので、この点については中国自身はやや安心したのではないかという感じがいたします。  ただ、台湾白書そのものが武力の威嚇にかわるものとして行われたものでありますので、恐らく中国のその後の反応から見ますと海外の、特にアメリカの反応に逆にびっくりしたという側面の方が大きいかと思います。つまり、中国はこれまで確かに平和的な交渉を無期限に延ばした場合、武力を使うということについて公には、文書にはまだ書いていなかったんですけれども、そのような発言は至るところで繰り返してきたわけでありますし、独立は戦争を意味するのか、非常に厳しい発言を繰り返してきていた。そういう意味では恐らくこの発言がそれほど厳しいものであるという理解が中国の中にはその後の反応からしますとなかったのかもしれないという印象を私は持っております。  それから、第二点目の、国内の対立が中国の中であるのかと申しますと、これはやはり存在をするというふうに考えた方がよろしかろうと思います。ただ、全体として台湾問題についてはかなりコンセンサスがとれているということも間違いがないということであります。つまり、台湾について独立を認めるという人はもちろん中にはいないでしょうし、それから、台湾が何らかの形で切り離されるということについても中国は、これは党内でもコンセンサスが非常に懸念としてとれているだろうというふうに思うわけであります。  そう考えてまいりますと、基本的な部分では、やはりこれは近代以来の歴史の中で中国は物事を考えているでしょうから、その点はかなり強い認識だと思いますが、ただ、その方法あるいは実際のこれからの関係あり方という点については温度差が存在するということは事実だと思います。  それは、特に軍あるいは党内の一部の人々の中からかなり強硬な意見が出てきているのは、今回の中国発言をいろんな角度から見てみますと、かなりいろんな意見が存在したということも理解できます。それは、中国のメディアの報道だけを見ていてもそれはわかるわけであります。そういう点では、その対応の方法そのものについてはかなりの温度差が存在するということだと思います。  それから、第三番目に、日本の対応としてはどういうことかということでございますけれども、私は、一つはやはり日本の対中国に対する台湾問題についての政策というのは基本的に変わらない。それはつまり、中国を正統政府として認めるという部分については日本は尊重しているわけでありますから、その点では中国の内政に干渉しないということ。  それから、第二点目は、その冷静な対応を中国に求めるということ、これは東アジアの安定ということのために非常に重要であると。それはやはり先ほど申し上げた平和的な解決ということを大前提にするということをやはり一貫して求めるということが重要でありましょうし、ただ、私は先ほど中国の内政に干渉しないという点を申し上げましたけれども、台湾問題はそれほど簡単な問題ではないというふうに私は申し上げておきたいと思います。  それはどういうことかと申しますと、現在台湾問題をどう考えるか。それはやはり国際関係をどう考えるかという問題にかかわってくるわけでありまして、現代の国際関係というのは何も国と国の関係だけですべての関係が構成されているわけではないわけでありまして、民間の関係を含めた形で国際関係というものが現在は構成されているというのが、これはもう国際政治学のABCのAの部分でありまして、だれでもわかっていることであります。  つまり、そうした点でいきますと、台湾と現在日本の持っている民間のレベルでの交流というのはかなり厚いものがありますし、経済的な利害ということからいたしましても日本の利益かなり大きいわけであります。そういう点から考えますと、私は台湾問題というのは中国のもちろん内政問題としての延長線上にあるという部分はあるけれども、同時にやはり現在は、もう中国自体がアメリカとの関係の中で台湾問題を処理しなければいけないということをもう明確にこれも言っているわけでありますから、そういう点では、もう一つは今申し上げたような、つまり国関係の枠組みの変化あるいは国際関係そのものの理解の変化という点から考えて、台湾問題は既に国際問題になってきているというふうに私は考えております。
  20. 矢野哲朗

    委員長矢野哲朗君) ありがとうございました。  何人かの委員から挙手をいただきました。早い順から指名をさせていただこうと思います。田英夫君が一番早かったようでありまして、その次に立木先生、浅尾先生、海野先生と、こう続きますのでどうぞよろしく。
  21. 田英夫

    ○田英夫君 三人の参考人の皆さん、ありがとうございました。大変勉強になりました。  特に国分参考人が言われました中台関係に、中国共産党と国民党との関係という状況が今度ので中台関係になったという表現をされましたけれども、全く同感であります。今度、三分裂という形になるんでしょうか、この候補者も三人になったわけですから。  それで、宋楚瑜氏が新党をつくるだろうということになってきますと、国民党と、これはまあ依然として強大な力を持っているでしょう、それから民進党と新党と。しかも、その民進党陳水扁氏総統ということになると、いずれにしても参考人も言われましたように単独ではできないのでどう組むかと。連戦という人が惨敗しましたから。しかし、李登輝さんの力は依然として残っているとなれば、大変この選択が難しいんじゃないかと。宋楚瑜という人が新党をつくると、私の知っている限り、北京側からすると一番好ましかったのではないか。  というのは、北京が非常に信頼をしている陳明忠という人を御存じかと思いますが、かつて国民党に投獄をされて二十年ぐらい獄中にいた人ですが、今労働党というのを台湾でつくっていますが、小さな勢力ですけれども、その人たち宋楚瑜氏をやったというふうに聞いております。  そんなことで、どなたにお答えいただいてもいいんですが、国分さんがさっきそういう言い方をされましたからお答えいただければと思うんですが、どういう組み合わせをするんだろうかと。  若干私見を加えますと、私の経験を申し上げると、一九八一年に北京を訪問しましたときに廖承志さん、周恩来総理の右腕と言われた人ですが、その人が私に台湾に行ってくれませんかと言い出しましたので驚いたんですが、あなたは台湾と無関係ではないですから、ぜひ国民党人たちに会ってくださいと。実はかつて国共合作をやったりして共通の日本という敵がいたから意思疎通はありましたけれども、率直に言って今、世代交代が進んで国民党が何を考えているかよくわからないところがあります、ぜひそれを聞いてくださいと。  私にできるとは思いませんでしたけれども、しかし、翌年台湾国民党の幹部に会いましたけれども、そのとき印象に残っているのは、国民党の幹部は三民主義が北京、大陸との接点になるんじゃないかという言い方をしておりました。これも大変いまだによくわかりませんけれども、そういう経験があります。  私ごとで恐縮ですが、無関係じゃないと廖承志さんが言ったのは、私の祖父が、田健治郎といいますが、台湾総督をかつて一九二〇年前後、五年ほどやっておりました。最初の文民総督であったことで印象がきっと台湾の人には強かったんだろうと思います。  大変わき道にそれましたけれども、そういうことからすると、現在国民党との間も共産党側からするとかつてのような意思疎通はないと。いわんや今度陳水扁氏総統になるということになると、その組み合わせという、最初の質問をしたところに戻って、大変これは北京側からしても重要な視点ではないかというふうに思いますのでお聞きをしたわけで、長くなりましたけれども、よろしくお願いします。
  22. 国分良成

    参考人国分良成君) 非常に難しい質問でございまして、田委員の、政界再編の可能性というのは、これはどこの国でもそうでありましょうけれども、なかなか予測不可能な面がございますけれども、国民党が支配した中華民国、これはやはり国是は三民主義であったわけでありますが、既に民進党ということになりますと、三民主義とは離れる、そうしたことにならざるを得なくなるわけであります。  そうすると、中国との統一交渉の前提が三民主義というのは恐らく難しくなってくる可能性がますます強くなるだろうというふうに思います。これがまず第一の前提ということになろうかと思いますが、中国にとってみますと、先ほど申し上げたように強硬路線と柔軟路線の二つの使い分けの中で、同時に宋楚瑜氏の新しい党と、それから陳水扁氏の方と両方にやはりいろんな形のパイプを模索していく。これはもう当然のことだろうというふうに思います。  中国のこれまでの一つの誤解といいますか、ある種の問題というのは、かつて李登輝総統と江沢民主席とはかなりいろんな形でのパイプは存在したわけですが、九五年に李登輝総統アメリカを私的に訪問したというところからこのパイプが完全に切れたわけであります。その後中国側が模索したのは、いわゆる新党あるいは外省人、こうしたところを伝って、特にアメリカのパイプを伝って台湾に接近してきた。  ところが、李登輝氏の当時の政局からすれば、とてもとてもそうした人々と話ができない状況にあったというところから、中国のパイプが全くその李登輝総統につながらないという状況が出てきたわけであります。それがずっと今日に至ってきたということだと思います。これが中国一つの誤解だろうと思います。つまり、中国自身台湾の変化、同時に台湾住民が何を考えているかという部分について十分に理解をできなかったという部分に一つ限界があったんだろうというふうに思います。  そういう点でいきますと、今後は中国の最大の方向性は、台湾の民心をいかにつかむかという、そこに焦点を絞らざるを得なくなってくるということだと思います。その場合に、やはり台湾の中に起こってきているアイデンティティーの問題という点からしますと、恐らくどういう政界再編があろうと、社会の側はますます台湾の中の個別の意識というものを強めていくだろうということが予想されるわけであります。その場合に、やはりそれを政治的な形にあらわしたような独立とか、そういうことについてはどういう形でも台湾としてはできないといいますか、その辺の二つの微妙なバランスがあろうかと思いますけれども。  したがいまして、結論として申し上げたいのは、台湾における政界の再編というのは、これは恐らく李登輝総統の今後、それをどういうふうに陳水扁氏が使うか、あるいは接近するか。それに対して恐らく中国は、かなり警戒心を示すでしょうから、同時に宋楚瑜氏とのパイプもこれから模索するでしょう。そういう点でいくと、中国はいろんな形の多角経営をすると思いますけれども、やはりさっき私の御報告の中で申し上げたように、李登輝氏の影響力という点に、一つ中国はこれからどういうふうにそれをそぐかというところに絞ってくるというふうに私は今の段階では中国政策としてはとるだろうと。  非常にあいまいな結論で非常に申しわけないんですが、私自身状況については今このように分析しております。
  23. 矢野哲朗

    委員長矢野哲朗君) ありがとうございました。  続きまして立木洋君。
  24. 立木洋

    ○立木洋君 具体的な御意見どうもありがとうございました。  最初に井尻参考人にお尋ねしたいんですが、参考人は、今度の台湾総統選挙の結果、さらにそれによって始まろうとしている状況について、台湾内政の第二の段階に入ったという表現を使われてお述べになっておられる。この台湾内政の第二の段階というふうな状況から、これが対中政策の上ではどういうふうにあらわれるのか。これは参考人が第四の「陳水扁の対中政策」というところで述べられている内容の問題になるわけなんですが、確かに陳水扁は当選した十八日の宣言で、台湾海峡の平和と安全を双方の人民の共同の期待というふうに述べられ、さらにもろもろの問題についても国家の安全と人民利益を確保する前提で各議題について話し合いをしたいということで、中国の指導者を招待し、また我々も中国を訪問したいというふうに述べた。もちろん記者の質問に答えて、一国二制度というのは受け入れませんよというふうなことも述べていますし、台湾の主権が永久に確立されるということについても、彼の見解の、限界という言葉が適切かどうかは別として、考えていることも述べている点があると思いますね。  その点に参考人もお触れになった上で、この民進党の党綱領にある独立条項についての見直しが始まっているわけで、これを独立宣言するということはないだろうというふうな指摘もされ、また金門、馬祖などの離島との直接交流についても条例として可決されるというふうな動きも出てきて、これがさらに大きく広がっていく流れになる可能性も含まれているんではないかという指摘もあるわけですね。  だから、そういうふうに見るとさまざまな動きが想定される。だけれども、まだそれが完全に収れんされた形にはなってきていない。しかし、陳水扁氏は結局四割足らずの得票で当選したわけで、六割の基盤というのについてはやっぱり未解明という問題が残されている。今後の動きの中でそれはどういうふうに動いていくのか。この第二の段階をどういうふうに、規定されるといったら何か難しいことになるかもしれませんけれども、この第二の段階の対中政策がどういうふうに推移していくというふうに参考人はお考えになっているのか。推測が入るかもしれませんけれども、その参考人のお考えをお聞かせいただければありがたい。  次に、国分参考人の御意見をお伺いしたい点については、中国台湾との問題、この点についても参考人もお触れになっておられます。  確かに、中国は「一つ中国原則台湾問題」という白書を発表しました。これはもう詳しく述べられていることですから内容は触れませんけれども、新たな条件を、武力行使を行うことも含めた条件として追加されました。それで、あの選挙期間中にはなかなか朱首相の厳しい指摘等々もあったと。これは選挙が終わった後ほとんどそういう厳しい批判というのが公式の文書からはなくなりました。一応マスコミなんかの情報では、陳水扁氏の今後の言動を見守るというふうなところに焦点が当てられてきているんではないかというふうな指摘も出されております。  ただ、中国共産党の中央の台湾工作弁公室あるいは国務院台湾事務弁公室の声明等でも一つ中国という点は厳しく出していますね、明確にこの点は譲れないと。そして、平和統一の前提とした人々との協力を呼びかけるというふうな方向が声明の唯一のものとしては見られることができます。  それで、中国社会科学院の王逸舟氏の、人民日報のインターネットのホームページでは、陳氏の最近の発言は従来の台湾独立路線と多くの点で違うというふうな指摘も問題にされております。こういうふうな状況の中で、いわゆる中台あり方というのが今度の選挙でどういう形の方向に変化していくというふうにお考えになるのか。  それから、これは四年前ですが、この参議院の外務委員会で、当時の中国台湾状況について六、七回議論がありまして、そしてこの参議院の外務委員会で、すべてのそのときの党派が一致してこの問題に対する決議を採択しているわけなんです。  そのときの問題では、当時の状況にあった「今回の軍事的諸行動には関心を持たざるをえない。」という憂慮の念を示して、「我々は、一九七二年の日中共同声明、一九七八年の日中平和友好条約に基づき、日中両国民の更なる善隣友好関係の増進を願う」という態度を踏まえて、「台湾問題は、中台双方による自主的、平和的な話し合いによって解決されるべきであり、これが妨げられるようなことがあってはならない。」ということを第一項目として、五項目の内容を持つ決議をしました。  こういう見地から、これからの中台あり方をお考えになった場合にどういうふうなことが考えられるのか、参考人の御意見をお聞かせいただきたいと思います。  最後になりましたが、高木参考人には、先ほど来詳しく米中関係について説明がありました……
  25. 矢野哲朗

    委員長矢野哲朗君) 立木洋君、時間が限られておりますので、よろしく御協力のほどを。
  26. 立木洋

    ○立木洋君 はい。そこで、最近の状況を見てみますと、バーガー米大統領補佐官なんかの発言を見てみますと、いわゆるアメリカの出した台湾安全保障強化法案に対しては、これはバランスを崩すものだというふうな厳しい指摘があります。あるいは一方では、ブッシュ・テキサス州知事は、いわゆる括弧づきの自由台湾を守らなければならないということさえ言われている。この強化法案と関連して、武器の輸出の問題がどうなっていくのかということは極めて注目される点なんですね。  そういうことで、もちろん先ほど参考人がおっしゃったように、大統領選挙があるからどう動くかということは、問題を今からはっきり述べることは難しいかと思いますが、こういう現在の意見の異なる状況が出されている問題で、アメリカの今後の対中政策というのはどういうふうになっていくというふうにお考えになるのか、その点についてお聞かせいただきたいと思います。
  27. 井尻秀憲

    参考人井尻秀憲君) 時間の関係でできるだけ簡単に申し上げますが、まず第二段階台湾経験といいますか、私が書いております点に関しては、まず内政の方の考慮から、九六年の李登輝総統の直接選挙による勝利と、これから第二段階台湾経験に入った。ただ、しかしながら、憲政改革でいわばもう一回やるということだけではなくて、実はその第二段階というふうに私が申し上げてきたことは国民党党国家体制、党と政府、そういったものが癒着して、もともと国民党、共産党、建党の段階ではほとんどもうルーツは一緒なものですから、そういうふうなところを含めて、特に地方のいわば政治改革、これを意図していたわけであります。  ただ、御質問の内容は、そこから派生して、実は対中政策に関するものがどういうふうにこれが展開されてくるかということなんですが、これは連戦候補がキャンペーン期間中に十項目のいわば政策を出しました。それで、彼は、その上で国家統一綱領という、台湾政策の中の第二段階に入ることができる、つまり高官の交流とか交渉、対話、これができる状態に入ることになるだろうということをキャンペーン期間中に言いました。  そういったことで、実はキャンペーン期間中に、先ほど私、国民党かなり準備をしていたというふうに申し上げましたが、キャンペーン期間中に連戦さんとか、そういう国民党サイドから対中政策の新しい考え方が出てくる。すると、それに対して陳水扁さんなりあるいは宋楚瑜さんの側から、それに対応する形でカウンタープロポーザルが出るというのが事実上の状況だったわけです。ですから、今回、民進党陳水扁さんの大陸政策に絡むであろうと思われるような人たちにも少しお会いした限りにおいては、余り具体的にはっきりしたものがないんですね。  それから、大陸に関する、つまり中国に関する認識もそんなに深いものではない。ですから、やはり陳水扁さんの今後の動向というものは、政策というものは、よりいろんな、国民党が残している、あるいは現在持っているそういう制度、つまり大陸委員会海峡交流基金会という窓口、それから今言った、先ほどのかなり準備していた問題とか、そういうものも含めてやはりいろいろ対話をしていく、調整しながら聞いていく、協力を願う、そういう形で進めていかざるを得ないだろうと。  それから、国分先生の方から李登輝総統の影響力云々ということがかなり言われておりますが、陳水扁さんと李登輝総統は話のできる関係です。それはあります。  それから、中国かなり今冷静に見ているだろうというふうに思います。かなり黙視しているように見えますが、言葉の上でどうこうではなくて、江沢民さんに昨年の十二月の段階台湾政策のブレーンが、民進党に反対ばかりではだめだと、もう少し民進党勝利を予想するような政策も考えておかなければならないというのが江沢民さんを中心とする党の非公式の政策決定機関に上がっております。  そういった情報も、インフォメーションもございまして、やはり中台関係、これから動くと思いますが、しかし先ほど来申し上げましたように、そうすぐ具体的に何か大きなものが出るというふうに、結論が云々ということはちょっと考えられないというのが私の回答でございます。  どうもありがとうございました。
  28. 国分良成

    参考人国分良成君) ありがとうございます。  全体として、きょうは中国の行動をどう考えるかというテーマではございませんけれども、中国の全体的な行動というのは、表面的には非常に積極攻勢のように見えますが、私は行動の源泉は極めて防御的であると、そして現状維持的であるというふうに理解しております。つまり、現状の大幅な変更をあらゆる問題について求めているわけではなくて、それは中国自身が今国内で抱えている、私も先ほど申し上げましたけれども、問題から考えて、やはり極めてその防御的な側面が強かろうと思います。  同時に、やはり中国言葉のゲームといいますか、そういう点についても、余りそれに惑わされない方がいいというところもあると思います。つまり、中国発言というのは、その後に効果を見出すための布石としての発言の場合もございますので、つまり、強硬な発言をすることによって、その後、柔軟対応するということの効果ということも考えているかと思いますので、そういう点では陳氏の発言を見守るということでもって、先ほど申し上げたように、陳氏はこのところ極めて柔軟な発言をしているということでありますし、最も大事なことは、対話を進めたい、みずから訪中までしたいというような発言があったわけでございます。そういう点では中国の意図というところに基本的に合致してきている、最もふさわしくない候補ではあったけれども、しかし方向としてはその方向になってきている。  問題は、どういうふうに対話を行うかというのが次のステップになろうかと思います。  従来は、汪道涵氏とそれから辜振甫氏のパイプがあったわけでありますが、辜振甫氏はこれは李登輝総統とのパイプでございましたけれども、ひょっとしたらば李遠哲氏にかわってくる可能性もあるわけであります。そういう形のパイプ、新たな恐らく設定をいずれにせよせざるを得なくなるという感じがいたします。  したがいまして、全体の方向としては、対話の模索という方向へと戻るわけでありますから、それは正直申し上げますと、九五年までの状態にある意味では戻ってくるということでありますけれども。その意味ではそれほどの大きな全体としては進歩ではないかもしれないけれども、これまで起こってきた中台間の摩擦という状況から考えますと、それは前向きの方向に少しずつ動いていく可能性があるというふうに申し上げたいと思います。  ただ、もちろん、陳水扁氏の内部状況によっては、発言が揺れたりしますと、それが中国の対応にまた変わってくる場合があり得ると。ただ、方向としては対話というのが次に出てくると思いますので、その方向においては全体的な状況そのものは緩和されてくる可能性が高いというふうに思っております。
  29. 高木誠一郎

    参考人高木誠一郎君) ありがとうございます。  台湾向けの兵器輸出のことですが、先ほど時間の関係で申しませんでしたけれども、現在考慮の対象になっておりますのは改良型パトリオット、いわゆるPAC3と言われるものと、それからイージス艦の売却の問題であります。  まだアメリカ政府はこれについての最終的なアクションをとっておりませんけれども、当然のことですが、この売却を決定することによって台湾海峡の緊張を高めるというような事態はなるべく避けたいだろうと思います。  ですから、逆に申しますと、特に中国側の自制を欠いた行動によって台湾海峡の緊張が既に高まるという状況ができていれば、当然これは行われることになるだろうと思います。特に、先ほどもちらっと申しましたけれども、アメリカ議会では、この台湾海峡のバランスは既に崩れつつあるという見方が非常に強いわけでありますから、その見方がさらに強まるような事態が発生すれば、当然これらの高度の兵器の売却も行われることになるだろうと思います。  アメリカ政策ですが、より一般的な政策ですが、当然のことですが、やはり台湾の現状を武力あるいは武力行使のおどしによって変更することは許さないという姿勢は崩せないだろうと思います。これを崩してしまうと、やはりアメリカの国家としてのアイデンティティーさえ問われかねないということになると思いますので、特にことしのように大統領選挙が進行中の段階でそのようなアクションをとれば、当然反対勢力の説得力を強めてしまうわけで、それはないだろうと思います。  ただ、そのためにアメリカが兵力を投入してアメリカの兵士の人命が失われるというような事態になることはできるだけ避けたい、これもまた否定しがたいことだろうと思います。  この両者をあわせますと、やはりなかなかこの戦略的あいまい性を脱却することは難しいのかなというふうにも思いますが、そのあいまい性の中で何とか中台の交渉を継続させて、そして緊張の激化を防ぐということでとりあえず現状を処理していくというのがアメリカの対応であろうと思います。そして、この緊張の激化を防止した状況の中で、さまざまな中間的な、つまり独立と統一の中間的な何らかの方式の模索が行われるのではないかと思います。  一九九八年の後半から九九年の初めにかけては、クリントン政権でかつて高官であった人たち、例えばペリー前国防長官とかアンソニー・レーク前国家安全保障担当特別補佐官というような人が台湾を次々と訪問しまして、何か中間的な形態はできないかということを模索しておりますので、このような模索は今後とも続けられていくだろうと思います。  以上です。
  30. 矢野哲朗

    委員長矢野哲朗君) ありがとうございました。  定刻は既に過ぎておるのでありますけれども、あと二名の委員のエントリーがありますので、質疑を許したいと存じます。浅尾慶一郎君。
  31. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 民主党の浅尾です。定刻を過ぎていますので、簡単に質問させていただきます。  国分先生に一点だけ。台湾で、多分経済界の方を念頭に置いておられると思いますが、英語世代が台頭しておるということを先ほどおっしゃっておられました。私も、まさにいわゆる二世の方あるいはIT関係の方は英語世代に属するのかなというふうに思いますが、経済界の方はステータスクオが恐らく一番望ましいわけでありまして、自分が持てる影響力が発揮できるとするならば、アメリカ関係者とその中台の均衡のために、ステータスクオのために努力をするのかなというふうに思うわけでありますけれども、時間が過ぎていますから簡単に、何か英語世代の方がアメリカ人たちと交流を持っている具体的な事例を御存じであれば教えていただきたいと思います。
  32. 国分良成

    参考人国分良成君) ありがとうございます。  これは、アジア全体に、ある種普遍的な現象でありますけれども、中国でもそうでありますけれども、やはり世代の交代とともに英語世代というものが非常に台頭してきているということであります。  台湾の場合は、もう既にこれまでも閣僚クラスがほとんどアメリカの博士号を持っているというようなことがございましたけれども、やはりこの傾向というのは、台湾の下の世代を見ても非常にその傾向が強いというふうに思います。それは、台湾が非常に危機的な状況あるいは孤立している状況の中で、多くがアメリカに留学したわけであります。それは、将来的にはアメリカに住むという可能性も考えていたわけでしょうけれども、その後の台湾の安定化あるいは民主化によってかなりの人々が戻ってきたわけであります。  この人たちは、多くはアメリカで博士号なりを取り、そして台湾の中で現在職を得ている。このパイプというのは非常に太いものが私はあるというふうに思っております。現に、今回三人の候補者の中でも、宋楚瑜氏とそれから連戦氏はアメリカかなり太いパイプがございますし、その英語もかなり上手でございますけれども、政権の直接担当者にもかなりパイプがあったようでありますが、陳水扁氏は海外の留学経験がございませんので英語はできませんけれども、ただ、陳水扁氏を支える人たちはもうほとんどが、李遠哲氏も含めてアメリカ生活が非常に長いということであります。  そういう点では、これからやはり、先ほど申し上げたようにアメリカとの関係というのを恐らく最もやはり重視していくでしょうし、同時に中国側も、先ほど申し上げたように今英語世代が台頭してきております。文化大革命というのがございましたので、中国では世代交代が一挙に進んでまいります。その世代がやはりアメリカとのパイプを持つ。だからといって、簡単にこの問題がすべて、中台関係がうまくいくというわけではありませんけれども、ただ、アメリカというその両方のパイプを持った軸がやはりどういう対応をとるのかというのは今後も注視していかなければならないし、同時に、恐らくアメリカの全体的なその政策利益としては、基本的には現状の維持というのと、今御指摘ございました、それとやはり平和的な解決を前提にした対話というようなその方向だと思いますので、恐らく両方のパイプからするとその方向性が今後出てくることが強いだろうというふうに思います。
  33. 矢野哲朗

    委員長矢野哲朗君) ありがとうございました。  最後になりますけれども、海野徹君どうぞ。
  34. 海野徹

    ○海野徹君 民主党の海野であります。  国分参考人一つだけ御質問させていただきます。  中台の経済関係なんですが、李遠哲氏が中心になって組閣されるというような話を聞きます。彼が、グローバルコミュニティー・ワンチャイナというような発言をしておりますし、あるいは国家の生存空間を拡大するにはITとNGOだというような話もされております。  こういう発言をされていらっしゃる、大変注目すべき発言なんですが、李遠哲さんを中心にこれから組閣されていくとなると、中台関係の経済というのはかなり速度を増すのか、それとも経済の安全保障面である程度ガイドラインを設定していくのか、どちらになっていくんでしょうか。
  35. 国分良成

    参考人国分良成君) ありがとうございます。  経済に関しては、これは李登輝総統時代から、中台の余りに密接な一体化ということに対する懸念からかなり歯どめを上からかけようとしたわけでありますけれども、現実の経済の動きはなかなかそうはいかなかったという現実があるわけであります。  李遠哲氏を初めとした人々が、例えばグローバルコミュニティーと、それがNGO外交とか、これは何も李遠哲氏だけではなくて、その下のいろんなブレーンの方々あるいは李登輝総統そのものも、民間外交であるとかあるいはNGO外交ということを積極的に言っているわけでありますが、ただこれは、恐らく台湾自体のステータスを上げるための、中国との関係そのものの問題よりも、恐らく自分自身の国際的な地位の問題だろうと思いますので、そちらに関係してきますので、恐らく中国との関係においてはもちろん民間の関係を中心にすると思いますけれども、そういう点ではちょっと意図が違うような気もしますが、ただ全体としては、中国との経済的な一体化ということについて、やはり李遠哲氏あるいは陳水扁氏は一定の懸念を持って、どういう歯どめをするかということを恐らく政策的には持つだろうと思います。  ただ、問題は、その政策がどれぐらいの現実の効果を持つかというと、それはかなり限定的にならざるを得ないという意味では、現実の経済的な結びつきはふえる。ただ、問題は、中国の経済的な今後の推移にもよりますけれども、いずれにしてもその傾向は進むだろうというふうに思います。
  36. 矢野哲朗

    委員長矢野哲朗君) ありがとうございました。各委員の積極的な取り組み、御苦労さまでございました。他にもまだまだ意見があろうとは思いますけれども、予定の時間も参りましたので、本件に対する質疑はこの程度にとどめたいと存じます。  参考人方々に一言御礼を申し上げます。  本日は、長時間にわたり大変貴重な御意見をお述べいただきまして、ありがとうございました。大変参考になりましたことを言い添えさせていただきたいと存じます。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。  ありがとうございました。(拍手)  午後一時に再開することとし、休憩いたします。    午後零時十一分休憩      ─────・─────    午後一時開会
  37. 矢野哲朗

    委員長矢野哲朗君) ただいまから外交防衛委員会を再開いたします。  政府参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  著作権に関する世界知的所有権機関条約締結について承認を求めるの件の審査のため、本日の委員会外務省条約局審議官小松一郎君、防衛庁装備局長及川耕造君、文化庁次長近藤信司君、それぞれを政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  38. 矢野哲朗

    委員長矢野哲朗君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  39. 矢野哲朗

    委員長矢野哲朗君) 著作権に関する世界知的所有権機関条約締結について承認を求めるの件を議題といたします。  本件の趣旨説明は既に聴取しておりますので、これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  40. 小山峰男

    ○小山峰男君 著作権条約につきまして、四点ほどお聞きしたいと思います。  まず一点目でございますが、この条約の作成の背景には、世の中がデジタル化だとか、あるいはネットワーク化というようなものがかなり急速に進んできたというのが背景だというふうに思うわけでございますが、具体的にはどのような事例が発生したことがこの条約作成に影響したか。この点についてお聞きしたいと思います。
  41. 小松一郎

    政府参考人(小松一郎君) お答え申し上げます。  委員御指摘のデジタル化、ネットワーク化の進展の影響でございますが、最近のデジタル化、ネットワーク化の進展が、例えば著作物のデジタル化によりまして高品質の違法複製物がだれでも容易に作成できるようになってきたという事情が挙げられると思います。  それから、二番目といたしましては、インターネットの発展に伴いまして、著作物などがネットワークを通じまして国境を越えて容易に送受信されるようになったというような事態があると思います。  それから、三番目でございますが、コンピューター社会の到来によりまして、コンピュータープログラムの著作権法による保護の必要性が飛躍的に高まってきたということもございます。  また、先ほど申しました違法複製物が大量に流通するという点に加えまして、ネットワーク、インターネットの発達等によりましてだれもが情報発信者等になり得るという事態もございます。従来でございますと、例えば書物の著作者でございますと、出版社ですとか、それから放送局などの限られた情報発信者を相手にしていれば著作権自分の権利の保護がかなりできたという点があると思いますけれども、今申しましたような技術の進展に伴いましてだれもが情報発信者になり得ると。  こういったような事態を踏まえまして、御提案を申し上げている条約が必要になった、そういう事態になったというふうに考えてございます。
  42. 小山峰男

    ○小山峰男君 この条約、作成から現在まで三年が経過しているというような状況でございますが、この間、大変すさまじい勢いで情報関連技術が高度化しているというふうに思っているわけですが、このような点で、最近の著作権の侵害の状況、あるいは対応、そういうものがどんな状況になっているのか、説明いただきたい。  また、ネット上での違反行為の捕捉は極めて困難だというふうに思うわけでございますが、政府として、こういう問題にどのように対応しておられるのか、お聞きしたいと思います。
  43. 近藤信司

    政府参考人(近藤信司君) お答えをいたします。  近年の情報関連技術の高度化に伴いまして、例えばネットワーク上での音楽配信等、著作物の利用形態の多様化が進み、著作物の無断利用の危険性が増大をしてきているわけでございます。  社団法人日本音楽著作権協会などの調べによりますと、例えば平成十年秋から平成十一年秋までの一年間に一般から寄せられました音楽の違法配信についての情報は千二百六十四件ございまして、被害曲総数について申し上げますと五千百三十九曲に上っている、こういうふうに承知をいたしております。  文部省といたしましては、こういった状況に適切に対応するよう著作権制度の整備を図ることが重要である、このように認識をしておりまして、平成八年に作成をされました、今御審議をいただいております著作権に関する世界知的所有権機関条約を踏まえながら平成九年に著作権法を改正いたしまして、著作物等のインターネット等による送信に関する規定の整備を図ったわけでございます。  また、昨年平成十一年には、無断利用を防止するために施された技術的保護手段の回避の防止でありますとか、違法行為の捕捉など、著作権等の管理に用いられる権利管理情報の改ざん防止のために必要な措置の導入を図った。このようにいたしまして、権利者が安心して著作物をネットワーク上に提供できるような、そういう著作権制度の整備を逐次進めてきたところでございます。  さらに、今国会におきまして御審議をいただいております著作権法の改正法案では、十分な損害賠償がなされるよう措置をいたしますとともに、法人による侵害行為に対する抑止力を高める、こんな観点から、法人に対する罰金額の大幅な引き上げを図る、こういうことを考えておりまして、こういったことを通じまして権利保護の実効性のさらなる確保が図られるんではなかろうか、かように考えております。
  44. 小山峰男

    ○小山峰男君 大臣にお聞きしますが、著作権に関する国際条約というのはいろいろあろうというふうに思っておりますが、一番の親条約とも言えるWIPOのベルヌ条約ですか、ユネスコの万国著作権条約、WTOのTRIPs協定、それぞれ同じようなものでございますが、管理機関が異なる条約が併存しているという状況でございます。  このような状況のもとで著作権全体が国際的な調和としてうまく図られるのかどうか、この点をお聞きしたいと思いますし、今後さらに技術の進化等によりまして著作権に対する条約等が検討されるというふうに思うわけですが、そういう今後の国際条約づくりというのはどのような機関でどのようなテーマで行われるか、この辺についてお聞きしたいと思います。
  45. 河野洋平

    ○国務大臣(河野洋平君) 御質問でございますが、著作権に関する国際条約を管理する機関といたしましては、世界知的所有権機関が知的所有権の全世界にわたる保護の観点から、ユネスコが国際文化交流促進の観点から、またWTOは国際貿易の観点からそれぞれ著作権に関する国際条約を管理しているわけでございます。  これらの機関は、例えばWTOと世界知的所有権機関との間に協力協定を締結するなど連携を図りつつ著作権にかかわる施策の国際的な調和などのための協力を進めているわけでございます。  また現在、例えば世界知的所有権機関におきましては、技術的な発展や社会状況の変化などを踏まえた適切な著作権保護のため条約策定につきさまざまな検討を行っているところであり、我が国としても、今後ともこれらの検討過程に積極的に参画をしてまいりたい、こう考えております。
  46. 小山峰男

    ○小山峰男君 最後、もう一点ですが、現在十三カ国がこの条約を締結しているということでございますが、この条約の発効のためには三十カ国の締結が必要だというふうに言われておるわけですが、この点で、この条約の発効の見通し、そういうものについてお伺いしたいと思います。
  47. 小松一郎

    政府参考人(小松一郎君) お答え申し上げます。  昨年九月にWIPO事務局がWIPOに提案をいたしまして第三十四回WIPO一般総会で多数の加盟国から支持を得て採択されましたWIPOデジタル・アジェンダと申しますものがございます。  この中で、来年十二月までにこの条約の発効を目指すということが書かれてございます。この目標でございますが、これはEC及びその構成国の締結の見通しを踏まえて策定されたものだというふうに理解をしてございます。  より具体的に申しますと、ECの構成国十五でございます。それから、この条約の十七条(3)に、欧州共同体も、欧州共同体としてこの条約の締約主体となることができるということが書かれてございます。そういたしますと、今十三カ国締結しておりまして、これにEC各加盟国の十五、それにEC自体の一、それに我が国が加わりますとこれで三十ということに相なろうかと思います。そういうことで、我が国といたしましては、今後ともこの条約の早期発効を目指してこの条約の締結を働きかけていきたいと考えてございます。
  48. 小山峰男

    ○小山峰男君 終わります。
  49. 益田洋介

    ○益田洋介君 まず、条約の第八条についてお尋ねしたいと思いますが、八条は括弧書きが後段の二行ございます。それは公衆への伝達に関する説明事項のようにして、「公衆のそれぞれが選択する場所及び時期において」、以下「置くことを含む。」というふうになっていますが、これは原文ではむしろ括弧書きの扱いというよりは主体的な表現として、四行目に、「インクルーディング・ザ・メーキング・アベイラブル」と、こうありますので、ちょっとこれは主客転倒しているという印象を受けるんですが、特にこの部分を括弧書きにした理由についてお述べ願えますか。
  50. 小松一郎

    政府参考人(小松一郎君) 条約の八条の定めております公衆への伝達でございますが、この中核をなしますのは著作物を放送または有線放送以外の放送によって公衆に伝達されることというふうに考えられておりまして、具体的には従来の放送や有線放送の概念ではとらえ切れない送信手段であるいわゆるインタラクティブ送信というものを指しております。  このインタラクティブ送信の具体例といたしましては、ネットワークの中のサーバーと通常呼ばれておりますコンピューターに入力されております情報をインターネットを通じまして国境や地域、時間の制約を超えて個々のコンピューター端末からの要請に応じて自動的に送信する行為のことでございます。  今、委員の御質問にございました括弧書きの部分でございますが、「公衆のそれぞれが選択する場所及び時期において著作物の使用が可能となるような状態に当該著作物を置くこと」と申しますのは、このインタラクティブ送信の準備段階でございますサーバーへの情報入力行為、いわゆるアップロードという行為を想定して設けられた規定でございまして、これを規定することによりまして、著作権者が、現実に著作物がインタラクティブ送信されたか否かを問うことなく著作物のアップロードの段階で許諾にかかわることができるというところがこの規定の眼目でございます。  なぜわざわざここにつけ加えているかといいますと、この点が非常に新たな点でございますので、そこを強調する意味で、日本語では、和文では括弧書きでわかりやすく訳出したものでございます。
  51. 益田洋介

    ○益田洋介君 ありがとうございました。  きょうは政務次官には特にお尋ねすることはないので申しわけございません。  大臣、この条約が定める権利義務の関係、これは新たなものですが、これについては国内法で既に措置がとられているというふうに認識をしております。さらには、アメリカ以外の主要先進国におきましては条約を締結していない、さらには発効の見通しが立っていないというふうにも承っております。であるならば、なぜ我が国が条約の締結を急ぐ必要があるのか、その辺についてのお考えを伺いたいと思います。
  52. 河野洋平

    ○国務大臣(河野洋平君) 議員が御指摘になりましたように、近隣諸国がこの条約に対してどういう対応をしているか、さらにまた、仮に対応がおくれているとすると、我が国の権利が近隣諸国においてどうやって守られるかという視点に立って申し上げれば、アジア諸国におきまして、御承知のとおり、ゲームソフトでございますとかアニメーションでございますとか音楽など、我が国の著作物に対します関心が非常に高うございます。  そうした著作物が、いわゆる海賊版と申しますか、大量に流通してしまっているということなどの現状にかんがみまして、その適切な保護が確保されるようにこの条約の締結を近隣諸国に特に働きかけなければいけない。近隣諸国にその促進を要請しなければならない。これは非常に重要なポイントだというふうに私も感じておるところでございます。  そのような観点から、我が国は世界知的所有権機関とも協力をしつつ、アジアなどの途上国を対象としてこのためのさまざまな手当てをしなければいかぬというふうに思っておるわけでございます。
  53. 益田洋介

    ○益田洋介君 ありがとうございました。  それでは、せっかく防衛庁装備局長においでいただいていますので、一問だけ質問させていただきます。  十五日、当委員会におきまして、私は、ミサイル艇二隻の入札について、その日程の確認をいたしましたところ、委員会の席上でははっきりおっしゃらなかった。当委員会で警備艦やその他の輸送艦等の入札をめぐっての談合の疑惑が取り上げられておりました関係上、若干、ミサイル艇につきましては入札の日程調整をされていると伺って、翌日局長は私のところにお見えいただいて、明十七日に入札を行いますという報告をいただいておりましたところ、実際は十七日に四回の入札を行ったと伺っていますが、きのうも入札をして落札に至ったという経緯だったそうですが、価格の再調整を含めて、この二隻のミサイル艇、約七十億八千百六十万円という落札価格だったと聞いておりますが、一連のきのうに至るまでの経緯を御報告願いたいと思います。
  54. 及川耕造

    政府参考人(及川耕造君) まず、日程でございますけれども、当初、入札日を三月二十一日と設定をいたしました。しかしながら、御案内のとおり、輸送艦等の手続において、艦艇の入札というのは初めてでございますので、どのような日程を組んでいいかなかなか見きわめがつかなかったわけでございますけれども、輸送艦等の入札が一週間以上要したということも考えますと、それなりの余裕を持たねばならぬということで、一度十六日に前倒しをいたしまして、そこでやろうという日程を決めたところでございます。しかしながら、残念ながら予定価格の算定等、事務的手続が間に合いませんでしたので、三月十七日に繰り下げて最終的に実施すべく十六日に通知をいたしたということでございます。  先生御指摘のとおり、御報告をということでございましたので、十六日夕刻に決まりましたので、急遽先生の方には御連絡を申し上げたと、こういうことでございます。  なお、経緯でございますけれども、三月十七日に行われました入札におきましては、三回まで行いましたけれども落札者がございませんでした。四回目の入札におきまして、これは日立造船、三井造船、三菱重工の三社が応札をいたしておりますけれども、日立造船と三井造船が辞退をいたしました。その後三菱重工と、予決令の九十九条の二によりましていわゆる商議を行ったわけでございますが、同日の段階では不調に終わったわけでございます。  これを踏まえまして、予定価格を再度算定いたしまして、三月二十二日、昨日でございますけれども、改めて三社による入札を行いました。一回目の入札では落札者がございませんでした。二回目の入札において日立並びに三井造船が辞退をされました。その後、三菱重工業と商議を行ったところ、先ほど先生がおっしゃいましたような価格、七十億八千百二十万円で商議が成立いたしましたため、同社を契約相手方として決定した、かような経緯でございます。
  55. 益田洋介

    ○益田洋介君 今、伺いましたように、やはり商議が行われて価格の再調整がなされている。  昨二十二日、私が一番疑問に思っている点は、やはり三社が第一回目の入札をしながら同じ価格に近いものを入れたというふうに伺っていますが、それは細かい個別具体的な数値になりますので今この場ではあえてお聞きいたしませんが、一回目の入札で日立と三井が入札からおりてしまうということで、結局、もともと予定されたとされる三菱重工が新たな再評価された入札価格で落札した。この辺の経緯が実に不明瞭であるという印象だけは今申しておきたいと思いますが、説明がもしありましたならば、特に三井と日立が一回目の入札に応じていながら、その価格がわかり次第二回目から入札しなかったという、その経緯というのはどういうものがあったのか伺っておきたいと思います。
  56. 及川耕造

    政府参考人(及川耕造君) 先生のおっしゃるのが十七日のではなくて昨日のであるといたしますれば、かなりの価格、当初の入札価格から下がっておりまして、通常、これは一般論でございますけれども、辞退をする場合には、各社が持っております価格に達しなかった、それよりも低い価格をつけた会社がある場合には辞退することが一般的にはございます。  ただ、本件につきましてどのような問題があるのかどうか、報道等で疑惑が言われておりますので、御指摘の談合情報対応マニュアルにのっとりまして所要の手続を進めたところでございます。
  57. 益田洋介

    ○益田洋介君 ありがとうございました。
  58. 立木洋

    ○立木洋君 WIPOの著作権条約の問題に関連してお尋ねしますが、近年の情報関連技術の著しい発達に対応して著作権の保護の拡大、強化をするものとして非常に重要なものだというふうに考えております。  この条約に関連して、最近の状況とあわせてお聞きしたいんですが、最近、フロッピーだとかCD—ROMあるいはビデオ等々がコピーされないようにさまざまな技術的な手段でかぎがかけられているということは御承知だと思うんですが、こうした保護があるにもかかわらず、これを回避、削除するいわゆる装置やプログラムは市販されているわけです。それが自由に行われるというふうな問題が問題になっております。また、権利管理情報を取り外したり改変してしまう事例なども広がっているということも報道で問題にされております。  この問題については既に国際条約で新しい措置が盛り込まれており、去年の通常国会で日本においても国内の著作権法が改正されてこれを取り締まる実施が取り決められていますが、この技術的な手段等の回避や権利管理情報の改変等について、実際にはどういう運営がなされ、その後どういう効果をもたらしているのか、その実施状況についてお尋ねしたいと思います。
  59. 近藤信司

    政府参考人(近藤信司君) お答えをいたします。  委員御指摘のように、昨年の著作権法の改正に盛り込まれました著作物の無断複製等を防止するコピープロテクション等の技術的保護手段を回避する装置の製造でありますとか頒布等に係る規制につきましては、昨年十月一日から法が施行されておりまして、いわゆるキャンセラーの販売などは行えないことになったわけでございます。  この改正を受けまして、例えば昨年の十二月一日と本年の一月二十六日には、神奈川県警はビデオソフトに用いられている技術的保護手段を回避する装置を販売していました業者三名を著作権法違反の疑いで逮捕したと、このように承知をいたしております。  法施行後、間もなくこういった規制の効果があらわれましたことは、私どもといたしましても喜ばしいことでもあると考えておりまして、今後もこういった法改正の趣旨に沿って取り締まりの実が上がることを期待しているところでございます。
  60. 立木洋

    ○立木洋君 そういう効果が実際に起こってきているということはよいことだと思うんですけれども、この議論が行われた中では、やはり取り締まりに当たっては慎重にというふうな意見も出されておりますし、そういう調査に関する透明性の確保なども注意していっていただきたいということもあわせて述べておきたいと思うんです。  次に、ことしの四月にWIPOの著作権等の常設委員会が開かれます。ここでは視聴覚的実演の保護についても検討されるというふうに聞いております。  きょうは特に、視聴覚的実演にかかわる実演者の人格権の確立の問題について政府がどういう態度で臨まれるのか、その点についてお尋ねしたいと思うんです。  御承知のように、一九九六年の十二月の外交会議で、隣接著作権に関するWIPO実演・レコード条約等が採択されております。この条約においては、御承知のように、生の聴覚的実演及びレコードに固定された実演については実演家の人格権が認められるようになりました。しかし、映画俳優等の視聴覚的実演にかかわる実演家の人格権は認められていません。この問題が、国際的な条約がないこともあって、我が国の著作権法上でも音にかかわる実演と視聴覚にかかわる実演では格差が生まれているというふうな状況で、いわゆる我が国の実演家の皆さんの中では、実演家の人格権が確立されないということは非常に問題であるという意見が少なくなく出されています。  この問題では、文化庁の著作権の現職の課長をされている吉田課長さんが「著作権が明解になる10章」という本を書いております。その十章の本を読ませてもらっているんですが、その一文を引用しますと、「映画がビデオ化されたり、放送に利用されたり、さらにはマルチメディア・ソフトにも利用されたりするなど、多様な利用方法が出現するにつれて「ワンチャンス主義」は公平の見地からも問題があり、もっと実演家にも権利を認めてよいのではないかという主張も大きくなっており、現在国内でも、国際的にも活発な議論が行われている」というふうに現職の著作権課長吉田さんが述べておられます、本の中で。  そういうことを考えてみると、今度の四月に行われるWIPOの著作権常設委員会で検討される場合、日本政府としてはどういう立場でこの問題について提起をされていかれるのか。
  61. 小松一郎

    政府参考人(小松一郎君) お答えを申し上げます。  委員の御指摘のとおり、一九九六年に本日御提案を申し上げております条約とともに採択されましたWIPO実演・レコード条約におきましては、保護される実演者の権利が……
  62. 立木洋

    ○立木洋君 小松さん、時間がないから後ろの結論部分だけでいいです。
  63. 小松一郎

    政府参考人(小松一郎君) はい。御指摘の視聴覚的実演を対象とした新たな議定書の策定に向けた検討がWIPOにおいて進められておりまして、御指摘のとおり、本年四月に常設委員会及び一般総会が開催される予定となっております。  我が国といたしましては、映画俳優の方々等、実演家の人格権の保護が重要な課題であるという認識に立ちまして、権利の具体的範囲等についてさらに検討を行っていくとの前提で、昨年十一月に人格権に関する具体的提案をこのWIPOに対して行っているわけでございます。  本議定書は、そもそも平成十年中に採択するということを目標としていたものでございまして、若干おくれてございますが、我が国としては、この人格権の付与の問題を含めて残された論点を整理の上、この議定書を早期に採択されることが重要であると考えておりまして、今後とも議定書採択に向けて各国とともに協力していきたいと考えております。
  64. 立木洋

    ○立木洋君 昨年、こういう状況を提案されたと、人格権の問題についてはですね。それは非常に結構なことだと思うんですが、六条に関する実演家の人格権の問題については追加内容がありまして、そこではいわゆる人格権の適用の範囲、及び方法に関してさらなる検討が必要だというふうに指摘されてあるわけです。  だから、この問題についてはさらに検討しなければならない大変な含みを残している問題の提起になっているわけです。しかし、少なくとも実演家の人格権の問題については、日本政府としても、ほかの多くの国と同様に、提起されたわけですから、今度の会議ではこれを積極的にやっぱり進めていく方向で努力をしていただきたい。特に映画俳優の権利の擁護の視点に立ってしっかりしていくということは、日本の文化の今後の広がり、あり方にも非常に大きな影響をもたらすものですから。  これは国際的に言えば、いわゆる隣接著作権というものを認めていないアメリカなんかの強い反対がありますけれども、この点については多くの国々が同調しているわけですから、積極的に具体的な提起をしていただきたいというふうに思いますが、この人格権の問題について、どういうふうな視点でより強力に述べていかれるのか、内容がはっきりしていたら若干その点も説明いただきたいと思います。
  65. 小松一郎

    政府参考人(小松一郎君) 昨年十一月に行われました我が国の提案でございますが、WIPO実演・レコード条約で音の実演家に付与するものとして規定されました氏名表示権及び同一性保持権の規定を準用しつつ、映像分野に特有の通常の利用等の観点から、人格権の適用の範囲についてはさらなる検討が必要だ、こういう考え方に立った内容の提案を行っているわけでございます。  WIPOにおける検討におきましても、映像実演家の人格権自体を認めるということについては各国の意見、大体の一致を見ておりまして、ただその具体的な権利の適用の範囲及び方法については、映像分野に特有の通常の利用を確保するという観点から、何らかの工夫、配慮が必要であろう、こういうことであろうと思うわけでございます。  我が国といたしましても、このような国際的な検討の動向及び国内の検討状況等を踏まえながら、今後とも実演家の皆様の人格権に関し十分な検討がなされるように各国とともに協力してまいりたいと思っております。
  66. 立木洋

    ○立木洋君 最後に大臣、お聞きいただきたいんですけれども、いわゆる俳優の未来を考える会というのがあるんですが、日本に、日本俳優連合ですか。御承知のように、そこでは、今、前撮った映画がNHKだとか民放なんかで再放映されているのはもう三分の二を超えているんです。ところが、それに対しては俳優の方々は何らもう権利がないんです、それは全部。だから、いわゆるデジタル化されていきますと、いろいろフィルムを切り張りしていろいろな映画につくり変えても、それに対して意見を述べる権利ももうないんです、俳優本人の方には。  こういう問題というのは、やっぱり非常に文化の繁栄に、発達に対して、いろいろとそういう権利のない状態に置かれているということは好ましくないわけですし、今後のあり方等々を考えて、より積極的に前向きに進めていって、日本の文化をさらに発展させていくという方向でも努力をお願いしたいということで、外務大臣の御所見を最後にお伺いしておきたいと思います。
  67. 河野洋平

    ○国務大臣(河野洋平君) 恐らく隣接権にかかわる問題について御指摘なんだろうと思いますが、私も極めて重要なポイントだと思っております。今の御意見をよく承って取り組みたいと思います。
  68. 田英夫

    ○田英夫君 この条約は、いわば科学技術の進歩によって今までの国際的な条約あるいは法的秩序では間に合わなくなってきたということで、こういうことは今後さまざまな分野で起こり得るんだろうというふうに思っているんですが、もう既に同僚委員がいろいろ聞かれたことで一つだけ私がこの問題について伺いたいのは、この条約の締約国が既に十三カ国ある。国名を見ますと、むしろ発展途上国が多いんです、ほとんど、アメリカを除いて。我が国も今度加わることを考えますと、さっき外務大臣ちょっと触れられたけれども、近隣諸国、その中には今まで音楽著作権などでいろいろ日本にとって不都合なことがあった国もありますから、そこが応じて加わってくれないといけないのではないかという気がしますが、今後の十三カ国が拡大していく方向、見通しというのはどういうことでしょうか。
  69. 小松一郎

    政府参考人(小松一郎君) 御指摘のとおり現在の締約国の数は十三カ国でございます。この条約が発効するためには三十カ国が締結することが発効の要件となっているわけでございます。  この見通しにつきましては、昨年九月にWIPO事務局長がWIPOの一般総会にWIPOデジタル・アジェンダというものを提案して、これが加盟国から大多数の支持を受けまして採択をされております。このデジタル・アジェンダの中に、来年十二月までにこの条約の発効を目指すということが書いてあるわけでございます。この目標はEC及びその構成国の締結見通しを踏まえて設定されたものであると理解してございます。  先ほど申しましたけれども、EC十五カ国でございまして、それからEC自体がこの条約に入ることができる仕組みになってございますので、十三にECプラス十五カ国、これで二十九でございまして、日本がこれを締結いたしますと三十ということで発効要件を満たすわけでございます。  他方、今、委員の御指摘のとおり、やはりこの条約が実効性を持って特に日本にとって必要な機能を発揮するためには、とかく問題が指摘されております近隣諸国がこの条約を締結することがぜひとも必要だと考えております。先ほど大臣から御答弁申し上げましたように、我が国といたしましては、まずこの条約を率先締結をいたしまして、近隣諸国に締結を働きかけてまいりたいと考えております。
  70. 田英夫

    ○田英夫君 この問題はこの程度にして、別のことに触れたいんですけれども、四月二十四日から五月十九日までという予定で核兵器不拡散条約、いわゆるNPTの再検討会議がニューヨークで開かれるということですけれども、私は、これは我が国にとっても非常に重要な会議だと思っております。  今回のこの再検討会議、無期限延長ということが決まった後、再検討会議をやるということが予定されていたわけですけれども、今回この会議でいわゆるCTBTの問題の次に出てくるカットオフ条約とかあるいは非核地帯の問題とかいうような核軍縮を進める上で前進できるようなそういうことになるのかどうか、この会議の見通しについて外務大臣から伺いたいと思います。
  71. 河野洋平

    ○国務大臣(河野洋平君) NPTの再検討会議が行われる、これは無期限延長になって最初の五年目ということで再検討会議と、こういうんですが、正直申し上げて、国際的にも国内的にも少し熱が下がっているんじゃないかという感じがしないでもないんです。その理由の一つには、どうも再検討会議というネーミングそれ自体が、これは別にNPTを再検討するという意味では、そういう会議じゃないわけですけれども、どうも核兵器不拡散条約再検討会議というと、核兵器不拡散条約そのものをレビューするというような感じにとれて、そのこと自体もどうも余りよくない。私は、このネーミングといいますか、この会議の持つ意味が正確にもっとみんなに伝わるということがまず大事ではないかというふうに思っているわけです。  この最初の会議がどういう性格を持ち、どういう熱気を持つかによって次につながっていくことになるわけですから、私は、この会議をかなり重要視して、できることなら日本は積極的にこの会議に参加をしてさらにこの問題を前進させる、そういう必要があるというふうに考えています。  今後どうなるかということでございますが、我々はCTBTに非常に強い関心を持っているわけですが、アメリカ議会がCTBTを通さなかったということもありまして、少しこれまたちょっと段取りが狂ったなと、正直そういう感じがいたします。アメリカ政府自身は、CTBTを議会が通さなくても政府としてはその精神は守ると、その約束は守ると言っておられますけれども、アメリカはやっぱり国際社会に対して説得力が低下したということは否めないと思います。  こういう状況の中で、今アメリカの大統領がバングラデシュ、インド、パキスタン、南アジア訪問に出かけておりますが、この成果が一体どういうふうになるか。私は、この成果がどうなるかはやっぱり数カ月のスパンで見ないとならぬと思っておりますが、日本としてもこの作業をこれから先も強化したいというふうに考えております。ぜひこの会議の成功のためにも、委員の皆さんの御支援をお願いしたい。できますれば、私自身出席したいぐらいの気持ちは持っておりますが、まだ国会開会中でございますから、どういうことになるか、正直自分自身決めかねておりますが、皆様方の御理解もいただきたいというふうに思っております。
  72. 田英夫

    ○田英夫君 本当にこの会議の状況いかんで今後、今本当に冷え込んでいる核軍縮、核廃絶という問題について再び雰囲気を盛り上げていくという分かれ道になっているような気がいたします。  ぜひ、できれば河野外務大臣国会があることは事実ですけれども、野党の中からこういう声をあえて出しますけれども、優秀な政務次官がお二人おられる、こういうことのためにも政務次官お二人という体制をつくられたんだと思いますので、外務大臣自身が行かれて、その雰囲気を醸成するために力を尽くしていただきたいということを申し上げて、答弁は要りませんから、終わります。
  73. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 私は、条約の関係でお尋ねいたします。  歴史上の話になりますけれども、日本と韓国、中国台湾、これは昔から同一文化圏にある、こう言ってもいいわけで、あの国あるいは地域の人々の中に日本語を理解する人が非常に多いと思います。その結果として、当然ながら日本の出版物が大量に輸出されておる、これも既定の事実であります。そして、これまた必然的にそれらの国々や地域でこれらの出版物の海賊版が出回る、これも大量に出回っておってどうしようもないんだという話も耳にいたします。  実は、自慢するわけじゃないんですけれども、私の書いた二、三の本がやっぱり韓国と台湾で海賊版が出回りまして、私、それにつきまして、あの国や台湾の人にも法律家の知り合いがいるものですから、その話をして、ちょっと実態を調べてほしい、それからどういうふうにすれば規制できるのかそれも教えてほしいと、こういう話をしましたところが、両国の法律家ともに、現下の、先生むだなことはおよしなさい、我が国には日本の出版物の海賊版がどれだけ出回っているのかもうだれもわからないくらいなんですよ、それを一々調べ上げるなんてとてもできないことです、規制なんてする気はもう我が国のあるいは我が地域の司法当局には最初からないんですよという話を聞きまして、なるほどなと。そして最後に、それは先生大変名誉なことだと思ってあきらめてくださいと言われましたので私もあきらめていたと、こういうことなんですが。  今回、こういう条約ができ上がると、出版物について、さらに今度はコンピュータープログラムについて、それから映画について、レコードについて、こういうことになっていきますと、やっぱり海賊版ということについての神経を払う必要もあるんだろうと思うんです。日本対韓国、日本対中国関係あるいは日本対台湾関係で、海賊版の取り締まり、規制をどうすべきかということを、できたら取り締まってほしいということを外務省としても真剣に向こうの国々、地域に申し入れるべきではないかと、こう思うんですけれども、外務大臣いかがでしょうか。
  74. 河野洋平

    ○国務大臣(河野洋平君) 議員御指摘のとおりだと思います。  先ほども申し上げましたように、我々に興味のあるものはやっぱり我々の周辺国には興味があるわけでございまして、どうしてもそれは同一文化圏ということもございますし、同じような関心を持つということになる、近隣諸国で評判のものはやっぱりすぐその近隣諸国は取り上げるということになるわけでございます。  ただ問題は、今、議員お話しのとおり、我々の近隣諸国の中で著作権制度というものがどの程度理解されているかという問題もあると思うんです。著作権違反だということを知りながらやっている人もいるでしょうけれども、著作権なんというものは余り関心を持たずに買っている人は恐らくたくさんいるんだろうと思いますので、我々としては、こうした国々を対象として著作権制度に関する広報といいますか、その広報のためにシンポジウムをやるとか研修プログラムをつくるとか、そういったことを考えていかなければならない。そしてこの条約あるいはこの権利というものがいかに重要なものであるかということを知ってもらう、そういう努力が必要だと思います。  政府としても関係省庁と相談をして、そうした努力をするつもりでおります。
  75. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 この問題に関する限りはやっぱり我が国が一方的に被害者であるという認識に立って、関係諸国に対して厳重に申し入れをしていただきたい、こういうふうに思います。  特に台湾が問題でして、これは国じゃないものですから、条約には加盟していないということなんですね。台湾で海賊版が流行したらどういうことになるのか。これは、これに関連して大変おもしろい話を最近私は耳にいたしました。台風情報、気象情報の交流なんですけれども、日本と台湾の間ではそういう情報の交換は行われていないというんです。これは運輸省のさる幹部と話しているときに彼が言ったことでありまして、台湾は何しろ国ではない、国対国の情報交換はできない。気象庁というのは政府機関ですから、政府機関である気象庁が向こうの機関と交渉するわけにはいかない、台風情報、気象情報が入ってこない、これはこれで仕方がないんですねというようなのんきな答え方でしたけれどもね。  しかし、台風情報などは互いに交換し合って、それを分析して、もし危険ありとすれば、直ちに関係船舶に通報する、出航は見合わせよという、それは当たり前のことで、むしろ人道上の問題と、こう言ってもいいわけなんですけれども、日本と台湾の間ではそういうことがないと。  台風は南から来るわけですから、台湾の方が早くキャッチできるはずなんですけれども、それが日本の情報には入ってこない、大変これは問題ではないかという気もするわけですよ。一体どうすればいいのかということも深刻な問題だろうと思うんです。  一つの例なんですけれども、アメリカの場合はアメリカ台湾の民間企業同士が一つの協定を結ぶ、その協定を政府機関がそれぞれ追認する、そして政府間協定のような格上げした扱いをしているということを聞いたこともありますので、この気象情報、台風情報、それから同じように海賊版の取り締まり、これは中国本土の問題だとか、台湾は国か地域か、どちらを支持するか、そんな思想の問題、イデオロギーの問題とは全く関係のないことですから、こういう問題については積極的に我が方がイニシアチブをとって、台湾あるいは中国政府、あるいは韓国に対して申し入れをして一歩一歩前進していく、こういうことはどうなんだろうかと思いまして、こういう問題についての外務大臣の御所見も承れればと思います。
  76. 河野洋平

    ○国務大臣(河野洋平君) 議員御指摘の前段のお話については、大変申しわけありませんが、私も知識がございませんでした。一度研究をさせていただきたいと思います。  著作権につきましては、これは議員も御承知のとおり、台湾著作権について定めた国際条約に加入していないわけでございまして、この条約に加入していないということになると、これはまことに扱いが困るわけでございます。  これは一つの考え方でございますが、台湾が早期にWTOに加入するということが現実のものになりますと、WTOの一部を構成する知的所有権の貿易関連の側面に関する協定、いわゆるTRIPs協定というものがございますが、その適用を通じて著作権保護が、一定の保護ができるということはあるというふうに考えております。
  77. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 前回も、前々回か何か当委員会で、中国政府政府保証をしているノンバンクが倒産した、そして日本の銀行は輸出をあきらめざるを得ない、それが総額四千億か何かに達しているという問題なんですけれども、これも前回も申し上げましたけれども、中国政府は保証しておきながら払わないということを言っているわけなので、とても法治国家としては黙認できない話ですから、こういうことを厳しくやっぱり申し入れをする。政府保証をした以上は払いなさいよと、こういう厳然たる態度をとることが本当の意味での国際間の友好だと思うんですよ。  何か相手の体面もあるからそんなことは申し入れることはできないなんという遠慮する問題では一切ないのでありまして、アメリカ人なんかは毅然たる態度で臨む国は尊敬するけれども、今までの日本かどうかわかりませんけれども、何かこびへつらう国は軽べつするんですね。ですから、本当の日米の友好ということを考えれば言うべきことは言う。  これは当たり前のことですから、保証した以上は払いなさいよと言うこと、しつこく何遍でも、私はそんなにしつこくないんですけれども、言うことが大切ではないか、こう思いまして、最後にちょっとあわせて御所見を承ればと思います。
  78. 河野洋平

    ○国務大臣(河野洋平君) 御指摘のように、我が方から中国に対して指摘すべきものだというふうに考えます。適切な時期に中国側に指摘したいと思います。
  79. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 終わります。
  80. 矢野哲朗

    委員長矢野哲朗君) 他に御発言もないようでありますから、本件の質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。──別に御意見もないようでありますから、これより直ちに採決に入ります。  著作権に関する世界知的所有権機関条約締結について承認を求めるの件の採決を行います。  本件を承認することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  81. 矢野哲朗

    委員長矢野哲朗君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  なお、本件の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  82. 矢野哲朗

    委員長矢野哲朗君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  83. 矢野哲朗

    委員長矢野哲朗君) 次に、万国郵便連合憲章の第六追加議定書万国郵便連合一般規則及び万国郵便条約締結について承認を求めるの件及び郵便送金業務に関する約定の締結について承認を求めるの件の両件を便宜一括して議題といたします。  政府から順次趣旨説明を聴取いたします。河野外務大臣
  84. 河野洋平

    ○国務大臣(河野洋平君) ただいま議題となりました万国郵便連合憲章の第六追加議定書万国郵便連合一般規則及び万国郵便条約締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  この追加議定書並びにこれに関連する一般規則及び万国郵便条約は、平成十一年九月十五日に北京で開催された万国郵便連合の大会議において作成されたものであります。  この追加議定書及び関連文書は、万国郵便連合の加盟国が締結する文書の構成、同連合の運営及び国際郵便業務に関する事項について所要の変更を加えるため、万国郵便連合憲章を改正し、現行の万国郵便連合一般規則及び万国郵便条約を更新するものであります。  我が国がこの追加議定書及び関連文書を締結することは、引き続き万国郵便連合の加盟国として活動する上で、また、我が国の国際郵便業務の円滑な運営のために必要であると考えられます。  よって、ここに、この追加議定書及び関連文書の締結について御承認を求める次第であります。  次に、郵便送金業務に関する約定の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  この約定は、平成十一年九月十五日に北京で開催された万国郵便連合の大会議において作成されたものであります。  この約定は、国際郵便送金業務における最近の事情にかんがみ、現行の郵便為替に関する約定、郵便小切手業務に関する約定及び代金引換郵便物に関する約定を統合し、郵便送金業務に関する事項について所要の変更を加えた上で、更新するものであります。  我が国がこの約定を締結することは、我が国と他の締約国との間の郵便送金業務の円滑な運営のために必要であると考えられます。  よって、ここに、この約定の締結について御承認を求める次第であります。  以上二件につき、何とぞ御審議の上、速やかに御承認いただきますようお願いを申し上げます。
  85. 矢野哲朗

    委員長矢野哲朗君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。  両件に対する質疑は後日に譲ることといたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後一時五十五分散会