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糸瀬公述人 おはようございます。きょうは、
意見陳述の機会を与えていただきましてありがとうございます。
予算委員会ですので、今回の
予算、八十五兆円の
歳出規模なんですけれども、
税収が一方で五十兆をちょっと超える
程度、この
意味合いを少しゆっくり考えてみたいと思います。
お
手元に二ページのレジュメをつくっておりますので、それを御参照いただきたいと思うのです。
とりあえず
数字の
意味合いですけれども、先ほど
吉野先生からもお話がありましたが、
国債の
発行残高が、今九九年度末で三百三十五兆円という
数字があります。それで、今回の
予算の
歳出規模が八十五兆円、
うち国債費、
国債費というのは、既に発行している先ほどの三百三十五兆円の
国債の毎年の利払い、それから
当該年度に
償還が訪れる分の
元本償還、これに充てる
お金が二十一兆円です。それで、
税収、済みません、四十九兆というのは昨年の
予算で、今回五十一兆ですけれども、今減って五十兆前後の
税収しかありません。
この結果どうなるかといいますと、二〇〇〇年度末、来年度末の
国債の
発行残高が三百六十四兆円で、今年度末よりも二十九兆円ふえるということになります。よく言われております六百兆という
数字は、これは国と
地方の合計ですけれども、この
数字でいうと、二〇〇〇年度末には六百四十七兆円という
数字になります。
関連する指標でよく取りざたされております
数字を下に三つほど拾ってきましたけれども、まず
国債依存度ですね。歳入のどれぐらいを
国債発行に頼るか。これが三八%で異常に高い水準になっております。
それから、今申し上げた国と
地方の対GDP比ですけれども、これが一二三%。これも先進国中トップクラスの
数字に上がってきております。二〇〇〇年度でイタリアを抜いて先進国中最悪の
数字になります。
よく
アメリカは
景気回復を通じて
財政赤字の問題を削減したということが比喩として使われるんですけれども、それは、
アメリカの最悪期のこの
比率が実は六三%でして、
日本の半分の
数字なんですね。ですから、そこからは
景気回復を通じて可能だったという言い方はできると思うんですけれども、
日本の今の一二三%という水準から
景気回復だけで本当に
財政赤字の問題は片づけられるのか、これはクエスチョンマークをつけておく必要があると思います。
それから、大蔵省の試算がこの間から出ておりまして、これもマスコミをにぎわせておりますけれども、今からちょうど十年、二〇一〇年の
国債発行残高、さっきの三百三十五兆とか三百六十四兆の
数字が幾らになるかというと、大体その倍近い水準、六百二十六兆円という
数字になります。利払い費だけで年間二十四兆円。仮に今の
税収の水準だとすると、
税収の半分が借金の利払いに持っていかれる、そういったことになります。
これをちょっと家計に例えてみたいと思います。
国の
赤字をしゃべるときに家計に例えるのはけしからぬとよくしかられるんですけれども、確かに、国は借金
残高をゼロにする必要はありません。戦争とか天変地異が起きない限り国は未来永劫存続するわけですから、適正水準の、コントロールできる、つまりマネジャブルな水準の
財政赤字を抱えていることは健全なんですが、一方で家計は、まともな親であれば子供の代に借金を残したくないはずですから、死ぬまでには借金を全部完済して幾ばくかの遺産を残そう、これがまともな親ですから、単純に比較するわけにはいかないんですけれども、ただ、国といえどもコントロールできないペースで膨らんでいくと、これは国であっても
破綻します。既に
アメリカ等では
地方自治体の破産という経験もありますし、国も破産しないわけではありません。
それで、先ほどの
数字をちょっと単位を変えれば家計に非常に例えやすくなるんですけれども、三百三十五兆円という
数字を三千三百五十万円という
数字に置きかえてみます。
普通の、一家三人でも四人でもいいんですが、一般的な家計を御想像いただきたいんです。このうちは既に住宅ローンとか車のローンとか教育ローン、もろもろで借金の合計額が三千三百五十万円あります。このおうちの御主人の年収ですけれども、四百九十万円、今年度の
予算では五百十万円ですけれども、そういった収入です。
日本の平均的な世帯よりはちょっといいぐらいですね。このおうちが幾ら年間に使っているかというと、八百五十万円という
お金を使っています。そのうちの二百十万円をこの借金三千三百五十万円に対する利払いとか返済に毎年充てているわけです。
ですから、八百五十万から二百十万を引いて、正味の家計の支出は六百四十万なわけですね。それでもこの六百四十万円、あるいは金利の分を含めた八百五十万は、年収の四百九十万を大きく上回っている
数字です。その結果どうなるかというと、文字どおりの
意味で雪だるま式に借金がふえていくわけですね。来年の借金が三千六百四十万円。これが今
日本が置かれている構図そのものです。
ですから、これはやはりどこかで本格的に解決の糸口を探っていかなきゃいけない、そういう時期に来ているんだと思います。
それで、先ほど
吉野先生からもお話がありましたが、先週、ムーディーズ、
アメリカの格付
機関ですけれども、まだ
国債の格下げを決めたわけではないんですけれども、格下げの方向で見直すという発表をしました。正式な決断は向こう二カ月以内に行われるわけですけれども、このムーディーズの格下げの背景にあったのがこの
日本の
財政赤字の問題で、
日本は向こう数年以内に非常に痛みを伴う決断をしなければならないであろう、そういったことが言われております。
その結果何が起きるかといいますと、ここに三つ書いてありますが、まず、円安が起きます。これは既に起きております。きのう百十一円台まで乗りました。ことしの当初、エコノミストのほとんどは円高を見ておったんですが、打って変わって、今円安方向に為替の
流れは来ております。恐らく百十三円、四円にちょっと節目がありますが、これを超えると百二十円を目指すような展開になってもおかしくない
状況です。
次に、金利の上昇なんですが、これを後ほど詳しくお話をいたします。
三つ目ですけれども、国の格付が下がってしまいますと、その国の
企業の格付はその国の格付を超えることはできないことになっておりますので、もしムーディーズが予定どおり、今ダブルA1という格付なんですが、これを例えばダブルA2というワンノッチ下の段階まで落としますと、
日本の
企業、トヨタといえどもソニーといえども、このダブルA2を超えることができないわけですね。ですから、本来は例えばトリプルAクラスの非常に低いファンディングができる
企業であっても、国に足を引っ張られてしまって調達コストが上がってしまう。これは非常に大きな
経済的な損失につながる可能性があります。
先ほどお話しした金利の上昇のところについて少し詳しく見てみたいんですけれども、金利上昇が避けられないと私は思っております。その理由としてここに七つ挙げてきたんですけれども、確かにここ一、二カ月、
国債の市場は非常に微妙な安定感を保っておりまして、マスコミ等では
国債管理相場という言い方をされております。これが崩れるのが時間の問題ではないか、そういった危惧を持っております。
その理由七つ、逐一お話をしていきたいんですが、まず第一に、空前の
規模の大量発行ということですね。新規で三十二兆円、借換債で五十三兆円で八十五兆円という
国債が市中に出回ることになります。
債券の値段と金利の関係ですけれども、釈迦に説法は
承知の上でもう一度復習させていただきますと、
債券といえどもすべての
商品と同じで、供給があふれると値段が下がります。
債券の値段が下がるということはどういうことかというと、金利が上がるという、これはちょうど正反対の関係になります。八十五兆円の
国債が出てきて、これをみんながそれなりの需要があって消化してくれれば値段も下がりません。したがって、金利も上がらないわけですけれども、それが本当に消化できるのか、これが非常に大きな問題です。
予算ベースでは市中消化額で七十九兆円をこなさなきゃいけないことになっておりますが、この七十九兆円という
数字ですけれども、九九年度の当初の消化額六十一兆円とか、それから補正
予算ベースの消化額六十八兆円、これに比べても大体十兆円近く大きいわけですから、これが順調に買い手がつくのかどうか、
一つ心配事です。
それから、
景気が自律
回復軌道に乗ることを今我々すべて祈っているわけですけれども、もし
景気が自律
回復軌道に乗ってくるとすると、これは必然的に金利上昇につながってきます。
先ほど
国債管理相場と申し上げましたが、今
国債を買い支えてくれているのは、特に
銀行を
中心とした法人なわけです。なぜ彼らが
国債を買ってくれるかというと、
お金が余っているからなんですね。本当に膨大な
お金が余っています。それを安心して持っていけるところがないんで、消去法で
国債に行っているわけですけれども、
景気が
回復してくると、この可能性は結構高いと思うんですが、
企業は余った
お金を当然
設備投資に回していきます。既に、コンピューターソフトなんかの方だけを統計で見ると非常に大きな伸びを示しておりますが、そうすると、
国債にプールしているんではなくて、本当に
銀行にとって前向きな
投資の方に持っていく、そういったことになりますから、
国債の今大きな買い手である
銀行が崩れてしまう可能性が
一つあります。
それから、大量発行の
国債をもし
個人がきちんと買ってくれれば、これは
一つ問題の解決になるんですけれども、ちなみに、
日本の
個人による
国債消化率は一・一%ぐらいしかありません。これは多いときは八%とか九%というときもありましたし、今の
アメリカの水準が八%ぐらいあります。もしそこまでいってくれればかなり問題解決に寄与してくれるんですが、
個人が
国債を買ってくれるかどうか、これは非常に大きなと言うとちょっと語弊がありますけれども、
個人的には若干疑問視しております。
そもそも、
国債に
投資するような
個人というのはある
程度金融のことがわかっている方で、
国債の時価というのは金利が上がっていけば途中売却のときに値段が下がりますので、そういうことを知っていらっしゃるある
程度の富裕層の人たちが、金利上昇局面であるかもしれないこのときに
国債に順調に
投資してくれるかどうか、これは非常に大きな疑問があります。
それから、もっとミクロな例でいいますと、証券会社で
国債を買うときに、本当にまとまった金額の
お金で
投資する人にとっては新聞に出ている値段で取引ができるんですけれども、一千万
程度であれば、大金ですけれども、証券会社の感覚でいう一千万
程度の
お金であったら、新聞に出ている
お金よりも一円ぐらい下とか、そういった値段の売買ですから、なかなかこれは元が取れる
投資ではない、そういったことが言えると思います。
それから、金利上昇が避けられない理由の四つ目ですけれども、これが、実はムーディーズの格下げの
一つの理由としてうわさをされておるんですけれども、
地方交付税交付金の財源不足があります。
二十一兆円を
地方交付税交付金に回さなきゃいけないんですけれども、
税収で確保できるのが十三兆円しかありません。そこで、残る八兆円を
民間の
金融機関から借り入れる、そういった発表を、二週間ほど前だったと思いますが、しました。これが
日本の新聞とは非常に違う大きなトーンで
海外では報じられまして、これが
海外が
日本の
財政危機がそんなに深刻なのかという問題意識を持つきっかけになったわけですけれども、この八兆円、
銀行から調達するわけですね。この
銀行というのは
国債を買ってくれていた
銀行なんですけれども、そこが今度、別途八兆円、交付税交付金の財源の補てんのために出さなきゃいけない。クラウディングアウトという言葉がありますが、限られた
お金がそこに行ってしまう。
それから五番目。きょう時間の関係で詳しくお話しできないと思いますが、財投債とか財投
機関債、今まで
資金運用部からちょうど
銀行貸し出しみたいな格好で自治体とか財投
機関に回っていた部分が、今度受け皿である出口の方が
債券を発行して、これを市中調達するということになります。これが
国債とほぼ同様の格付の
債券として新たに出回ってくるわけですけれども、
国債の八十五兆円に加えた新たな供給増になりますので、これが本当に消化できるのかどうか、これも大きな心配事です。
次のページに移りますが、六つ目の理由、これがゼロ金利
政策の解除ですね。
これは、日銀の速水さんも既にゼロ金利
政策の解除に向けた発言をしておられますけれども、大方のエコノミスト等の予測では、早ければ七月ごろ、G7の
影響でもう少し延びるかもしれませんが、今、ゼロ金利
政策のおかげで辛うじて、ちょうどたこの糸がつながっているみたいで中長期の金利が上がらずに済んでいるわけですけれども、これが上がってくると、当然これは非常に大きな金利上昇要因に差しかかってきます。
それから七つ目。これが実は非常に大きな問題だと思うのですが、時価主義の会計の導入の
影響があります。
金融商品については、二〇〇一年の三月期から、ですから、来るべき四月以降の会計年度からこれが適用されるわけですけれども、これは端的に申しますと、
国債を含む
債券を決算時点の時価で評価しなきゃいけないということですね。それで、金利が上昇していくと、くどいようですけれども、
債券の時価は下がっていきます。そうすると含み損が出てくるわけですね。かつては簿価主義でしたから含み損でよかったわけですけれども、これをバランスシートにきちんと開示しなきゃいけない。そういったある
意味で非常に恐ろしい会計、私、これはやるべきだと思いますので、言葉はちょっと語弊がありましたけれども、これが来るわけですね。
先ほど、
個人の
国債消化率は一・一%と申し上げましたが、逆に申し上げると、九八・九%は法人が
国債を所有しております。この法人はこの時価主義の会計の適用を受けるわけですね。そうすると、金利上昇によって時価ベースで評価すると含み損を実現しなければいけない、
国債に対する
投資意欲、インセンティブが
減少してくる、こういったことも言えると思います。
どう考えても金利が上がっていきそうだなというのが私の考えなんですけれども、本当に金利が上がっていくとどうなるかというところで、考えられる
影響を六つほど書いておいたんです。
単純に、今の
国債、三百三十五兆あるわけですけれども、一%金利が上がるとどれぐらいの含み損が出るかというと、二十兆円の含み損が出ます。莫大な金額です。しかも、時価主義の会計を導入し適用を免れない
企業は、これを実現していかなきゃいけないわけですね。
この間、トーメンという商社が倒産しましたけれども、このきっかけが、時価主義を甘く見過ぎたという言葉がありました。時価主義の会計が入るとこういった
影響が出てきます。
それから、特に
国債の大量保有は、先ほど繰り返し申し上げておりますが、
銀行ですけれども、これはたしか
日本興業
銀行だったか興銀証券だったかが一カ月ほど前に試算をしておりましたが、大体一・四%金利が上がると業務純益がほぼ丸ごと吹っ飛ぶ、そういった形になっております。石原知事の
外形標準課税で全銀協が業務純益云々と騒いでおりますけれども、それどころの問題じゃないわけですね。それぐらい、今
日本の
銀行の金利
リスクというのは非常に危機的な
状況まで来ております。
それから、もう少し連想していくと何が起きるか。当然
企業の倒産が起きてきます。非常に多くのゼネコンとか不動産とか流通等が、
銀行による債務免除で今辛うじて生き延びていますけれども、金利が上がってしまうと残された体力だけでは生き残れない、そういった
状況になります。既に、従来だったら新聞のトップを飾ってもおかしくないような大型倒産、長崎屋とエルカクエイというのが先週起きましたけれども、このクラスの
規模の倒産が金利上昇によって誘発される可能性が非常に高いと言えます。
それから、当然、大
企業だけではなくて、
日本の
企業の社数でいうと九九%は中小
企業ですけれども、中小
企業は、先ほど
吉野さんのお話にもありましたけれども、
銀行からの
間接金融に依存しています。金利が上がると非常に苦しくなります。これの受ける
影響、これも当然倒産につながってくると思います。幸か不幸か、
信用保証協会の特別保証枠で倒産すべき
企業が今生き延びている、そういった
状況なのですけれども、これが、最後の息の根をとめるのがもしかすると金利上昇かもしれない、そういったことが言えると思います。
それから、忘れてはならないのは、先ほど、二十一兆円を既に発行している
国債の金利に充当していると申し上げましたけれども、
国債費、特に利払い費が金利上昇に伴ってふえていきます。
今大蔵省は、
国債の短期化といいまして、金利の上昇の
影響を受けないように、二年債とか三年債とか、期間が短ければ金利上昇の
影響は確かに受ける
程度が少ないので、そこにシフトしておるのですが、これが裏目に出る可能性があるわけですね。二年後にいざ借りかえようと思うと、金利が上がってしまって、もともと十年で借りていれば一・八%で借りていたのが、二年後に借りかえると、例えば二%で借りなければいけないとか。
そうすると、
国債費の膨張、さっき二〇一〇年にはどうなるかというお話をしましたけれども、そのペースを上回るペースで、非常に危機的な
状況、
財政危機の極大化を招きかねない。そうなると何が起きるかというと、また格下げですね。本当の悪循環が起こりかねない。そういった
状況がシナリオとしては考えられます。当然、
景気の本当の
意味での底割れにつながりかねないということです。
では何をなすべきかといいますと、やはり来年度の
予算からでも、できるところから、別に小渕総理の言葉をあげつらうわけではないのですが、やはり二兎を追う、この必要が出てきているのだと思われます。
財政再建は
景気回復を待ってからで済むのではないのだと思います。先ほど申し上げましたが、
アメリカは対GDPの
比率が六三%だったから
景気回復による増収で間に合ったのですけれども、一二三%である場合には、やはり二兎を追うということが必要なときに来ているのではないかと思います。
それと、今
景気回復がなかなか
民間につながらない理由が、
個人消費が伸びないということですね。
個人消費が伸びない理由は何だろうかというと、別に、いいものがないとかそういったことだけではなくて、いろいろな不安があるわけですね。雇用不安もそうですし、一番大きなのが、やはり将来不安だと思います。この将来不安の根幹をなすのが、これだけの借金を返せるんだろうか、年金は大丈夫なんだろうか、医療は大丈夫なんだろうか、そういったものが財布のひもをやはり締めさせているんだと思います。そうすると、
財政赤字、
財政構造をどうやって解決する方向に持っていくのか、少なくともそういった青写真を示さなければならない時期に来ているんだと思います。
財政赤字の問題を解決するにはどういった方法があるか。これは、だれがどう考えても方法は三つしかありません。
一つは増税です。これは東海総合研究所の水谷さんがこの間、「エコノミスト」という雑誌で試算をしておりましたが、もし
消費税だけでやると、何と二八%の
消費税だそうです。では、普通の増税でやるとどうなるか。
景気回復は確かに
税収増につながります。では、四十九兆円がバブルピークの九一年の六十一兆に戻るか。あのバブル
景気に戻るとは考えづらいですね。仮に戻って六十一兆円まで
税収がふえたとしても、八十五兆円使っているわけですから、それでも全然減らなくて、
財政赤字はふえる一方なんです。そうすると、増税でやる前にやらなければいけないことは、公平、中立、簡素な税制を確立するということなんですが、これもちょっと問題が広がりますので、ちょっとここで打ち切ります。
二つ目の方策が
インフレです。私、
個人的には、これは悪魔のシナリオと呼んでいるのですけれども、調整
インフレを起こして借金の価値を少なくしてしまおう、そういったことですね。
これは調整
インフレ、先ほどポール・クルーグマンのお話が
吉野さんからもありましたけれども、支持派の理論づけというのは、このシナリオAのところなんですが、日銀券を日銀が発行して、つまり日銀自身が
国債を買ってしまえば、確かに、出てくる供給をある
程度消化することができるわけですね。そうすると金利上昇あるいは価格の下落は起きないだろうということなんですけれども、これは名目金利の上昇が抑えられることという、そういった主張を展開している
先生方がおられます。その一方で、調整
インフレですから、期待
インフレ率が上がるので実質金利が低下する、いいことじゃないか、こういった論法ですが、これはマーケットの出身者にとっては非常に理解しづらい詭弁にすぎないと思います。
具体的に起きそうなことは、名目金利が先に上がってしまって実質金利の上昇も起こる、そういった問題が起きると思います。
それから、
インフレ率をコントロールできるのか。先ほどのお話にもありましたけれども、上がっている非常に高い
インフレを下に下げるために
目標値を設定したケースはあるんですが、下から上の設定値というケースはなかなかございません。これが本当にできるのかどうか。それと、
構造改革の先送りにつながりかねない。
三つ目の方策は歳出カットですね。むだな橋はつくらない、むだな道路はつくらない。このむだなという
意味は、持続的な
経済成長には寄与しない、あるいは採算性のとれない、そういった先ほどの中身のお話です。
この三つのどれをとるのか。組み合わせでもいいわけですけれども、ここに
予算委員会の
先生方の識見を問わせていただきたい。そういう点で非常に大きな期待をしておりますので、よろしくお願いしたいと思います。
ありがとうございました。(拍手)