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2000-02-24 第147回国会 衆議院 予算委員会公聴会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十二年二月二十四日(木曜日)     午前九時開議  出席委員    委員長 島村 宜伸君    理事 久間 章生君 理事 自見庄三郎君    理事 高橋 一郎君 理事 萩山 教嚴君    理事 町村 信孝君 理事 池田 元久君    理事 海江田万里君 理事 太田 昭宏君    理事 西田  猛君       甘利  明君    伊藤 公介君       飯島 忠義君    石川 要三君       稲垣 実男君    小澤  潔君       大原 一三君    栗原 博久君       杉浦 正健君    高鳥  修君       津島 雄二君    戸井田 徹君       中川 秀直君    葉梨 信行君       萩野 浩基君    村田 吉隆君       村山 達雄君    森山 眞弓君       山口 俊一君    山口 泰明君       岩國 哲人君    生方 幸夫君       古賀 一成君    五島 正規君       原口 一博君    日野 市朗君       肥田美代子君    横路 孝弘君       青山 二三君    石田 勝之君       佐藤 茂樹君    東  順治君       桝屋 敬悟君    青山  丘君       加藤 六月君    鈴木 淑夫君       木島日出夫君    春名 直章君       平賀 高成君    矢島 恒夫君       濱田 健一君    保坂 展人君     …………………………………    公述人    (慶應義塾大学経済学部教    授)           吉野 直行君    公述人    (宮城大学事業構想学部教    授)           糸瀬  茂君    公述人    (日本経済研究センター顧    問)           金森 久雄君    公述人    (東京大学経済学部教授) 神野 直彦君    公述人    (日本労働組合連合会副    会長)          草野 忠義君    公述人    (一橋大学法学部教授)  水野 忠恒君    公述人    (税制経営研究所所長)  谷山 治雄君    公述人    (野村総合研究所顧問)  水口 弘一君    公述人    (上智大学国際関係研究所    教授)          八代 尚弘君    公述人    (法政大学法学部教授)  五十嵐敬喜君    公述人    (北海道大学経済学部教授    )            濱田 康行君    公述人    (東洋大学経済学部教授) 中北  徹君    内閣官房副長官      額賀福志郎君    総理府政務次官      長峯  基君    金融再生政務次官     村井  仁君    総務政務次官       持永 和見君    北海道開発政務次官    米田 建三君    経済企画政務次官     小池百合子君    環境政務次官       柳本 卓治君    沖縄開発政務次官     白保 台一君    国土政務次官       増田 敏男君    外務政務次官       東  祥三君    外務政務次官       山本 一太君    運輸政務次官       鈴木 政二君    予算委員会専門員     大西  勉君     ————————————— 委員の異動 二月二十四日  辞任         補欠選任   高鳥  修君     戸井田 徹君   中川 秀直君     飯島 忠義君   桝屋 敬悟君     東  順治君   志位 和夫君     矢島 恒夫君 同日  辞任         補欠選任   飯島 忠義君     中川 秀直君   戸井田 徹君     山口 泰明君   東  順治君     桝屋 敬悟君   矢島 恒夫君     平賀 高成君 同日  辞任         補欠選任   山口 泰明君     高鳥  修君   平賀 高成君     志位 和夫君     ————————————— 本日の公聴会意見を聞いた案件  平成十二年度一般会計予算  平成十二年度特別会計予算  平成十二年度政府関係機関予算     午前九時開議      ————◇—————
  2. 島村宜伸

    島村委員長 これより会議を開きます。  平成十二年度一般会計予算平成十二年度特別会計予算平成十二年度政府関係機関予算、以上三案について公聴会を開きます。  この際、公述人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  公述人各位におかれましては、御多用中にもかかわらず御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。平成十二年度総予算に対する御意見を拝聴し、予算審議の参考にいたしたいと存じますので、どうか忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願い申し上げます。  御意見を承る順序といたしましては、まず吉野公述人、次に糸瀬公述人、次に金森公述人、次に神野公述人順序で、お一人二十分程度ずつ一通り御意見をお述べいただきまして、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。  それでは、吉野公述人にお願いいたします。
  3. 吉野直行

    吉野公述人 おはようございます。  私は、きょうお手元に、少し厚めの資料でございますが、七ページの資料で、一番上に「一九九〇年代の金融日本経済」と書きました資料をお配りしてございます。これを使いながら、一九九〇年代の日本金融と現在の経済状況に関して、いろいろ意見を述べさせていただきたいと思います。  それでは、まず一ページをごらんいただきたいと思います。  一ページの一番最初に書いてございますが、一九九〇年代の日本というのは、よく失われた十年というふうに言われております。八〇年代の非常に高い成長率から、最近ではアメリカイギリスよりも大分劣ってきた。特に、アジアなどでも急速に新しい金融市場が出てきておりまして、何とか今後二〇〇〇年はこれを回復する日本経済でなくてはいけないと思います。  それで、上の方の一というところでございますが、まず最初に一番重要なことは、経済構造改革流れを変える、一番必要なことは、やはり構造改革あるいは規制緩和ということでございます。  その二行目を見ていただきたいのですが、アメリカが今非常にいい景気でありますのは、一つトラック産業自由化、それから二番目が航空機産業自由化、それから、三行目でございますが、情報通信産業自由化、こういうことを八〇年代にいたしました。つまり、物流を安くする、それから航空機で人の流れを安くする、そして情報通信のコストを安くする、こういう規制緩和がやはり今のアメリカの非常にスピードのある情報通信革命につながっているんだと思います。  ですから、日本でも、今続けられておりますいろいろな構造改革をぜひ推進していただきたいというふうに思います。  それから、一の三番目のパラグラフでございますが、金融の問題に参りますと、我が国経済は、ドイツとかフランスに非常に似た金融構造を持っていたわけでございます。それは、その次の行に書いてあります追いつけ追い越せ型、こういう金融システムであったわけでありますが、これが、リスクをとる、あるいはベンチャーとか新しい企業資金流れ体制にとってはよくないシステムであります。  それで、日本金融システムは悪かったというわけではございませんで、追いつけ追い越せ型の日本経済のときには日本型の金融システムはよかったわけですが、マーケットに根差した金融というためには、こういう制度を変えていかなくちゃいけないということだと思います。それに関しましては、また後で御説明させていただきます。  一ページ目の下の方の二というところに行きたいと思います。銀行不良債権金融機関破綻の問題でございます。  御承知のように、日本では、一番下のパラグラフ、下から六行目でございますが、設備投資資金銀行から余りうまく流れておりません。その理由としましては、二行目のところ、下から五行目でございますが、やはり不良債権を抱えてしまっているということが一番でございます。それから、下から四行目の二番目といたしましては、一九九七年の暮れに山一証券とか北海道拓殖銀行などの大型金融機関破綻がございまして、それによりまして多くの金融機関リスクをなかなかとれなくなっているという状況がございます。それから、下から二行目の三番目でございますが、一九九八年の春から、早期是正措置ということで、金融機関健全性を重視する指標がとられました。そのためになかなかリスクをとれないという状況になっているわけでございます。  二ページ目に行っていただきたいと思います。  二ページ目の三行目でございますが、このようなことと同時に、銀行情報通信に対する投資がなかなかできない状況になっております。欧米の金融機関に伍して技術進歩をしなくてはいけないんですが、不良債権を抱えることによってそれができない状況でございます。  二ページ目の三に参ります。  それでは、どういう金融制度をつくっていったらいいんだろうかということでございますが、新たな金融仲介として、いわゆる市場型間接金融というようなものをやはり日本ではもっと進めなくてはいけないように思います。  二ページ目のちょうど真ん中に、見にくいかもしれませんが、図がございます。一番下に直接金融、それから真ん中間接金融、一番上に市場型間接金融、こういうふうに三つに書いてございますが、真ん中間接金融というのが、我々が一番親しんでおります、預金者あるいは投資家預金銀行にいたしまして、それを貸し出すあるいは有価証券運用する、これが従来の日本やり方でございます。日本では、この間接金融が六割以上、保険まで含めますと約八割がこういう間接金融になっております。  そして一番下が、直接我々が債券とか株を買う、これが直接金融でございますが、アメリカなどでは大体個人資産の三分の一程度、あるいはそれ以上が直接金融になっております。  では、日本型としてはどういうやり方があるかといいますと、その図の一番上の市場型間接金融、これは、投資信託のような形で、専門家がいろいろな債券、株、国債、こういうものをミックスしまして、そのミックスした商品個人投資家に売る、こういうことでございます。  ですから、市場型間接金融の場合には、元本は必ずしも保証されません。しかし、非常に収益が上がればもうけが上がる、そういう意味ではリスクをとれる形になります。しかし、真ん中銀行の場合には、元本が二〇〇二年三月まで全額保護されておりますので、やはりリスクをなかなかとれない。  でございますので、日本の場合には、やはり間接金融というところをある程度縮小しながら上の市場型間接金融を強化する、こういうようにすることによりましてリスクのとれたいろいろな資金運用ができるというようにある程度する必要があると思います。  しかし、それでいきますと、リスクばかりがふえて困るじゃないかということがあると思います。そこで、二ページ目の一番下でございますが、それが預金保険制度でございます。下から三行目でございますが、このたび二〇〇二年の三月まで全額保護ということになったわけでございますが、これに関しまして、三ページの方にちょっと私なりの考え方を述べさせていただきたいと思います。  預金保険制度は、日本では今後一千万円、アメリカでも大体十万ドル、日本のほぼ一千万円の形で保護されております。それから、イギリスではもう少し低くて三百万か四百万程度だけ預金保険保護しております。  この預金保険意味といたしましては、やはり小口の、余りプロフェッショナルでない方の預金を守るということでは、一定額、例えば一千万円までの預金保護ということは非常に必要であると思います。ところが、全額保護を余りにも長く続けますと、預金者が安心していろいろな銀行に預けることになります。ところが、そこの銀行審査能力がなく、不良債権を抱えますと、結局、その不良債権税金で見る、こういうことになってしまいます。  そういたしますと、例えば二千万、三千万が保護されたと自分は思っているわけですが、その不良債権の処理のための税金が非常にふえますと、実は自分は二百万円税金として銀行に払っていたかもしれない。そういたしますと、表面上は二千万保護されても、実際には千八百万であるかもしれないわけです。そういたしますと、それであるよりは、やはり、ある程度少額の一千万という小口預金保護し、それ以上は個人が、前のページで申し上げました、リスクを考えながら運用するというやり方がいいように思います。  そのようにした場合に、三ページの下の方の五というところでございますが、では、いろいろな金融商品が出てくるではないか、今までは預金貯金を安心して預けられていた、ところが、そういうふうにいろいろなリスクのある商品が出た場合には、消費者販売者の間でトラブルが発生するではないかということでございます。  これが、恐らく今後必要なことは、金融商品販売をする場合に、五のタイトルに書いてございますが、日本版信用サービス法あるいは金融サービス法、こういうものをしっかり決めていく。つまり、販売ルール、勧誘のルール、それから商品の説明、こういうものを販売業者がきちんと消費者にするというような体制にすること、そしてまた、何かトラブルが発生した場合には、それを迅速に処理できる、そういう制度をつくっていくことが今後日本にとって必要ではないかと思います。  次に、四ページ目を見ていただきたいと思います。  現在、日本景気は非常に低迷いたしておりまして、まだなかなか先が見えていないという状況でございます。この中で、公共投資中心といたします経済対策がこれまで随分なされてきておりますが、まだまだそれでも景気回復というものが少しおくれております。  私のコンピューターを使いました分析ですと、日本景気回復に対して一番重要なことは、民間設備投資あるいは民間経済活動を活性化させるような、そういう公共投資あるいは公共事業をしなくてはいけないということであります。公共事業自身雇用対策としてだけ使われているのでは、なかなか日本景気回復にはなりません。  その意味で、四ページの六でございますが、やはり、それぞれの先生方が、今後公共投資をやる場合には、その中身、そして特に、それがそれぞれの地域の民間経済活動を活発化させるか、そこに設備投資を呼ぶか、こういうことを中心に考えていただく必要があると思います。  それから、同じ四ページのちょうど真ん中ぐらいでございますが、このような公共投資増大によりまして財政赤字が今後ふえることが、事実ふえておりますが、非常に予想されております。  では、その財政赤字増大というのはどんな影響があるかというので、ちょうど四ページの真ん中からちょっと下のパラグラフでございますが、私なりに財政赤字増大影響をまとめさせていただきました。  第一番目といたしましては、国債発行がふえますために国債の価格が下落いたします。つまりそれは、利子率が上昇するということになります。このように、財政赤字がふえますと日本利子率全体が上がってまいりますので、それが民間設備投資減少につながるということがございます。  それから二番目は、将来の財政赤字がどんどんふえてまいりますと、それはひいては税金として徴収されることになるだろう、現在の国債は、いつかはだれか、我々国民が負担しなくてはいけないわけですから、それは将来の増税になるだろう、こういうふうに国民が行動いたしますと、せっかく現在やられております景気対策も、将来の所得まで含めた所得減少につながり、消費を冷やしてしまうということになります。  それから三番目は、我が国では、日本銀行が割合リスクをとらない資産を購入する方向に進んでおります。ということは、国債銀行が今後も購入するということになりますと、銀行に預けられた預金の多くの部分が国債に回りまして、それが民間企業活動に対する貸し出しに回りません。ですから、そういう意味では、日本銀行国債をたくさん買うことによるいわゆる貸し渋り、あるいはクレジット、信用の収縮、こういうことが起こると思います。  それから四番目でございますが、財政赤字増大いたしますと日本に対する国際的な信認が薄れてまいります。事実、先週日本国債のレーティングが少し落ちたというようなことも言われております。このことは、日本国債海外市場における信頼性を失わせる、つまり日本国債利子が高くなくてはいけない、こういうことになります。これになりますと、民間企業さんも、海外からお金を借りようとする場合にやはり高い金利で借りなくてはいけない、こういうことがあると思います。  ですから、今後の景気対策といたしましては、財政赤字はふやさない、しかし、その中で公共投資なり景気対策がいかに効率的に民間経済活動を活発化させるか、こういうことを中心にしながら限られた予算の中でなるべく効率的な運用をしていただきたい、そういうところに支出をしていただきたいというふうに思います。  四ページの下の七でございますが、金融政策の問題に少し触れさせていただきたいと思います。  七というところの五行目でございますが、一部のアメリカの学者がインフレターゲットということを最近申しております。これは何かと申しますと、今、日本景気が悪い、そこである程度、二%とか、インフレ目標をつくりまして、その目標に合うように金融政策をもっと緩和するべきではないか、こういう議論がございます。しかし、私はこのインフレターゲット論には賛成しかねるところがございます。  このインフレターゲットと申しますのは、インフレのある目標を達成しよう、これは主に下げる場合のインフレ目標でありまして、低い国のインフレ率を上げよう、こういうようなインフレターゲットというのは余りこれまでに見たことがございません。そういう意味では、金融政策目標といたしましてインフレを上げるということに関しては私は余り賛成しかねるわけであります。  それよりも、やはり日本金融をより競争させることによりまして、いろいろな資金提供者貸し出し、あるいはリスクをとった資金を提供できる、そして一番下に書いてございますが、それが民間設備投資活動を誘発させる、こういうことが必要ではないかと思います。  次に、五ページ目にめくっていただきたいと思います。  これは、先週、先々週から、外形標準課税という、東京都が日本銀行に対して税金を課すという、これに対して少しコメントを述べさせていただきたいと思います。  これは御承知のように、企業経済活動に対して、特に銀行という企業に対しまして税金をかけるというものでございます。1で書いてございますが、これが、資金量残高が五兆円以上、こういう銀行に対して三%の税金をかける、こういうものでございます。  五ページの一番上を見ていただきたいと思いますが、このように、ある特定規模、五兆円でやりますとどういうことが起こるかと申しますと、九九年三月末のデータで申しますと、例えばでございますが、八十二銀行とか北陸銀行、足利銀行、このあたりは税金を払わなくてはいけない、ところが、広島銀行とか北洋銀行、群馬銀行、中国銀行、こういうところは税金を払わなくていい、こういうことになります。ですから、ある特定規模でこれを、それ以上、五兆円以上とすることは、ある銀行は払わなくてはいけない、それ以下は払わなくてよい、こういう意味中立性から少し欠けるようになります。  また、外国銀行の場合にはどの銀行も五兆円以上の資金量を持っているところはございません。そういたしますと、外国銀行は一切払わなくていい、しかし日本銀行大手は払わなくてはいけない、ここでもやはり競争の不公平が発生いたします。また、郵便貯金も、当然でございますが、国家の機関でございますので税金を払わない。  このように、まず一番目としましては、こういうやり方中立性が保たれるかということが一つ私としては疑問に思います。  それから二番目は、このような税金銀行損金算入扱いをされることになります。そういたしますと、事業税東京以外のところで少なくなりますので、地方交付税がほかの県に回る分が減少いたします。  それから三番目といたしまして、こういうように、ある特定の都道府県がこういう税のいろいろな変更をいたしますと、3のところに、よくタックスコンペティションと言われまして、租税を下げることによって例えば自分の県に企業を誘致しよう、こういう競争が起こってしまいます。それは国際的に、いわゆるタックスヘーブンと言われまして、金融で既に起こっているわけであります。こういうことを各県がやり始めますと収拾がつかないことになってしまうように思います。  それから四番目でございますが、日本銀行がせっかく今回復しようとしているところでこういう大手に対して特別の税をかけるということは、やはり金融システム安定化という政府のもう一つ対策に反することになりますし、あるいは自己資本比率八%あるいは四%を維持しなくてはいけない、こういう政策に対してもマイナスの効果を与えるように感じます。  それから最後に、五番目でございますが、こういうことをすることがやはり国際的な整合性に欠けるのではないかということがございます。例えば、よく法人の所得税比率あるいは個人所得税のいろいろな税率に関して国際的な比較がされることがございます。日本所得税率は現在四〇・八七%でございますし、アメリカが約四〇%、イギリスが三〇、フランスが三六%でございます。ですから、そういう意味では、国際的な整合性という意味でも、このように特別にかけるということはそれに反することでありますし、それから、やはり東京市場を活性化させて日本金融市場を世界のロンドン、ニューヨーク並みに持っていかなくてはいけない、こういうところで東京だけがこういう税金をかけますと、海外金融機関がますます香港、シンガポールに本店なり営業活動を移してしまう。これはやはり、東京が今後ビッグバンによって活性化しようとしている金融市場マイナス影響を与えるのではないかと思います。  大体時間でございますので、私の陳述を終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。(拍手)
  4. 島村宜伸

    島村委員長 ありがとうございました。  次に、糸瀬公述人にお願いいたします。
  5. 糸瀬茂

    糸瀬公述人 おはようございます。きょうは、意見陳述の機会を与えていただきましてありがとうございます。  予算委員会ですので、今回の予算、八十五兆円の歳出規模なんですけれども、税収が一方で五十兆をちょっと超える程度、この意味合いを少しゆっくり考えてみたいと思います。  お手元に二ページのレジュメをつくっておりますので、それを御参照いただきたいと思うのです。  とりあえず数字意味合いですけれども、先ほど吉野先生からもお話がありましたが、国債発行残高が、今九九年度末で三百三十五兆円という数字があります。それで、今回の予算歳出規模が八十五兆円、うち国債費国債費というのは、既に発行している先ほどの三百三十五兆円の国債の毎年の利払い、それから当該年度償還が訪れる分の元本償還、これに充てるお金が二十一兆円です。それで、税収、済みません、四十九兆というのは昨年の予算で、今回五十一兆ですけれども、今減って五十兆前後の税収しかありません。  この結果どうなるかといいますと、二〇〇〇年度末、来年度末の国債発行残高が三百六十四兆円で、今年度末よりも二十九兆円ふえるということになります。よく言われております六百兆という数字は、これは国と地方の合計ですけれども、この数字でいうと、二〇〇〇年度末には六百四十七兆円という数字になります。  関連する指標でよく取りざたされております数字を下に三つほど拾ってきましたけれども、まず国債依存度ですね。歳入のどれぐらいを国債発行に頼るか。これが三八%で異常に高い水準になっております。  それから、今申し上げた国と地方の対GDP比ですけれども、これが一二三%。これも先進国中トップクラスの数字に上がってきております。二〇〇〇年度でイタリアを抜いて先進国中最悪の数字になります。  よくアメリカ景気回復を通じて財政赤字の問題を削減したということが比喩として使われるんですけれども、それは、アメリカの最悪期のこの比率が実は六三%でして、日本の半分の数字なんですね。ですから、そこからは景気回復を通じて可能だったという言い方はできると思うんですけれども、日本の今の一二三%という水準から景気回復だけで本当に財政赤字の問題は片づけられるのか、これはクエスチョンマークをつけておく必要があると思います。  それから、大蔵省の試算がこの間から出ておりまして、これもマスコミをにぎわせておりますけれども、今からちょうど十年、二〇一〇年の国債発行残高、さっきの三百三十五兆とか三百六十四兆の数字が幾らになるかというと、大体その倍近い水準、六百二十六兆円という数字になります。利払い費だけで年間二十四兆円。仮に今の税収の水準だとすると、税収の半分が借金の利払いに持っていかれる、そういったことになります。  これをちょっと家計に例えてみたいと思います。  国の赤字をしゃべるときに家計に例えるのはけしからぬとよくしかられるんですけれども、確かに、国は借金残高をゼロにする必要はありません。戦争とか天変地異が起きない限り国は未来永劫存続するわけですから、適正水準の、コントロールできる、つまりマネジャブルな水準の財政赤字を抱えていることは健全なんですが、一方で家計は、まともな親であれば子供の代に借金を残したくないはずですから、死ぬまでには借金を全部完済して幾ばくかの遺産を残そう、これがまともな親ですから、単純に比較するわけにはいかないんですけれども、ただ、国といえどもコントロールできないペースで膨らんでいくと、これは国であっても破綻します。既にアメリカ等では地方自治体の破産という経験もありますし、国も破産しないわけではありません。  それで、先ほどの数字をちょっと単位を変えれば家計に非常に例えやすくなるんですけれども、三百三十五兆円という数字を三千三百五十万円という数字に置きかえてみます。  普通の、一家三人でも四人でもいいんですが、一般的な家計を御想像いただきたいんです。このうちは既に住宅ローンとか車のローンとか教育ローン、もろもろで借金の合計額が三千三百五十万円あります。このおうちの御主人の年収ですけれども、四百九十万円、今年度の予算では五百十万円ですけれども、そういった収入です。日本の平均的な世帯よりはちょっといいぐらいですね。このおうちが幾ら年間に使っているかというと、八百五十万円というお金を使っています。そのうちの二百十万円をこの借金三千三百五十万円に対する利払いとか返済に毎年充てているわけです。  ですから、八百五十万から二百十万を引いて、正味の家計の支出は六百四十万なわけですね。それでもこの六百四十万円、あるいは金利の分を含めた八百五十万は、年収の四百九十万を大きく上回っている数字です。その結果どうなるかというと、文字どおりの意味で雪だるま式に借金がふえていくわけですね。来年の借金が三千六百四十万円。これが今日本が置かれている構図そのものです。  ですから、これはやはりどこかで本格的に解決の糸口を探っていかなきゃいけない、そういう時期に来ているんだと思います。  それで、先ほど吉野先生からもお話がありましたが、先週、ムーディーズ、アメリカの格付機関ですけれども、まだ国債の格下げを決めたわけではないんですけれども、格下げの方向で見直すという発表をしました。正式な決断は向こう二カ月以内に行われるわけですけれども、このムーディーズの格下げの背景にあったのがこの日本財政赤字の問題で、日本は向こう数年以内に非常に痛みを伴う決断をしなければならないであろう、そういったことが言われております。  その結果何が起きるかといいますと、ここに三つ書いてありますが、まず、円安が起きます。これは既に起きております。きのう百十一円台まで乗りました。ことしの当初、エコノミストのほとんどは円高を見ておったんですが、打って変わって、今円安方向に為替の流れは来ております。恐らく百十三円、四円にちょっと節目がありますが、これを超えると百二十円を目指すような展開になってもおかしくない状況です。  次に、金利の上昇なんですが、これを後ほど詳しくお話をいたします。  三つ目ですけれども、国の格付が下がってしまいますと、その国の企業の格付はその国の格付を超えることはできないことになっておりますので、もしムーディーズが予定どおり、今ダブルA1という格付なんですが、これを例えばダブルA2というワンノッチ下の段階まで落としますと、日本企業、トヨタといえどもソニーといえども、このダブルA2を超えることができないわけですね。ですから、本来は例えばトリプルAクラスの非常に低いファンディングができる企業であっても、国に足を引っ張られてしまって調達コストが上がってしまう。これは非常に大きな経済的な損失につながる可能性があります。  先ほどお話しした金利の上昇のところについて少し詳しく見てみたいんですけれども、金利上昇が避けられないと私は思っております。その理由としてここに七つ挙げてきたんですけれども、確かにここ一、二カ月、国債の市場は非常に微妙な安定感を保っておりまして、マスコミ等では国債管理相場という言い方をされております。これが崩れるのが時間の問題ではないか、そういった危惧を持っております。  その理由七つ、逐一お話をしていきたいんですが、まず第一に、空前の規模の大量発行ということですね。新規で三十二兆円、借換債で五十三兆円で八十五兆円という国債が市中に出回ることになります。  債券の値段と金利の関係ですけれども、釈迦に説法は承知の上でもう一度復習させていただきますと、債券といえどもすべての商品と同じで、供給があふれると値段が下がります。債券の値段が下がるということはどういうことかというと、金利が上がるという、これはちょうど正反対の関係になります。八十五兆円の国債が出てきて、これをみんながそれなりの需要があって消化してくれれば値段も下がりません。したがって、金利も上がらないわけですけれども、それが本当に消化できるのか、これが非常に大きな問題です。  予算ベースでは市中消化額で七十九兆円をこなさなきゃいけないことになっておりますが、この七十九兆円という数字ですけれども、九九年度の当初の消化額六十一兆円とか、それから補正予算ベースの消化額六十八兆円、これに比べても大体十兆円近く大きいわけですから、これが順調に買い手がつくのかどうか、一つ心配事です。  それから、景気が自律回復軌道に乗ることを今我々すべて祈っているわけですけれども、もし景気が自律回復軌道に乗ってくるとすると、これは必然的に金利上昇につながってきます。  先ほど国債管理相場と申し上げましたが、今国債を買い支えてくれているのは、特に銀行中心とした法人なわけです。なぜ彼らが国債を買ってくれるかというと、お金が余っているからなんですね。本当に膨大なお金が余っています。それを安心して持っていけるところがないんで、消去法で国債に行っているわけですけれども、景気回復してくると、この可能性は結構高いと思うんですが、企業は余ったお金を当然設備投資に回していきます。既に、コンピューターソフトなんかの方だけを統計で見ると非常に大きな伸びを示しておりますが、そうすると、国債にプールしているんではなくて、本当に銀行にとって前向きな投資の方に持っていく、そういったことになりますから、国債の今大きな買い手である銀行が崩れてしまう可能性が一つあります。  それから、大量発行の国債をもし個人がきちんと買ってくれれば、これは一つ問題の解決になるんですけれども、ちなみに、日本個人による国債消化率は一・一%ぐらいしかありません。これは多いときは八%とか九%というときもありましたし、今のアメリカの水準が八%ぐらいあります。もしそこまでいってくれればかなり問題解決に寄与してくれるんですが、個人国債を買ってくれるかどうか、これは非常に大きなと言うとちょっと語弊がありますけれども、個人的には若干疑問視しております。  そもそも、国債投資するような個人というのはある程度金融のことがわかっている方で、国債の時価というのは金利が上がっていけば途中売却のときに値段が下がりますので、そういうことを知っていらっしゃるある程度の富裕層の人たちが、金利上昇局面であるかもしれないこのときに国債に順調に投資してくれるかどうか、これは非常に大きな疑問があります。  それから、もっとミクロな例でいいますと、証券会社で国債を買うときに、本当にまとまった金額のお金投資する人にとっては新聞に出ている値段で取引ができるんですけれども、一千万程度であれば、大金ですけれども、証券会社の感覚でいう一千万程度お金であったら、新聞に出ているお金よりも一円ぐらい下とか、そういった値段の売買ですから、なかなかこれは元が取れる投資ではない、そういったことが言えると思います。  それから、金利上昇が避けられない理由の四つ目ですけれども、これが、実はムーディーズの格下げの一つの理由としてうわさをされておるんですけれども、地方交付税交付金の財源不足があります。  二十一兆円を地方交付税交付金に回さなきゃいけないんですけれども、税収で確保できるのが十三兆円しかありません。そこで、残る八兆円を民間金融機関から借り入れる、そういった発表を、二週間ほど前だったと思いますが、しました。これが日本の新聞とは非常に違う大きなトーンで海外では報じられまして、これが海外日本財政危機がそんなに深刻なのかという問題意識を持つきっかけになったわけですけれども、この八兆円、銀行から調達するわけですね。この銀行というのは国債を買ってくれていた銀行なんですけれども、そこが今度、別途八兆円、交付税交付金の財源の補てんのために出さなきゃいけない。クラウディングアウトという言葉がありますが、限られたお金がそこに行ってしまう。  それから五番目。きょう時間の関係で詳しくお話しできないと思いますが、財投債とか財投機関債、今まで資金運用部からちょうど銀行貸し出しみたいな格好で自治体とか財投機関に回っていた部分が、今度受け皿である出口の方が債券を発行して、これを市中調達するということになります。これが国債とほぼ同様の格付の債券として新たに出回ってくるわけですけれども、国債の八十五兆円に加えた新たな供給増になりますので、これが本当に消化できるのかどうか、これも大きな心配事です。  次のページに移りますが、六つ目の理由、これがゼロ金利政策の解除ですね。  これは、日銀の速水さんも既にゼロ金利政策の解除に向けた発言をしておられますけれども、大方のエコノミスト等の予測では、早ければ七月ごろ、G7の影響でもう少し延びるかもしれませんが、今、ゼロ金利政策のおかげで辛うじて、ちょうどたこの糸がつながっているみたいで中長期の金利が上がらずに済んでいるわけですけれども、これが上がってくると、当然これは非常に大きな金利上昇要因に差しかかってきます。  それから七つ目。これが実は非常に大きな問題だと思うのですが、時価主義の会計の導入の影響があります。  金融商品については、二〇〇一年の三月期から、ですから、来るべき四月以降の会計年度からこれが適用されるわけですけれども、これは端的に申しますと、国債を含む債券を決算時点の時価で評価しなきゃいけないということですね。それで、金利が上昇していくと、くどいようですけれども、債券の時価は下がっていきます。そうすると含み損が出てくるわけですね。かつては簿価主義でしたから含み損でよかったわけですけれども、これをバランスシートにきちんと開示しなきゃいけない。そういったある意味で非常に恐ろしい会計、私、これはやるべきだと思いますので、言葉はちょっと語弊がありましたけれども、これが来るわけですね。  先ほど、個人国債消化率は一・一%と申し上げましたが、逆に申し上げると、九八・九%は法人が国債を所有しております。この法人はこの時価主義の会計の適用を受けるわけですね。そうすると、金利上昇によって時価ベースで評価すると含み損を実現しなければいけない、国債に対する投資意欲、インセンティブが減少してくる、こういったことも言えると思います。  どう考えても金利が上がっていきそうだなというのが私の考えなんですけれども、本当に金利が上がっていくとどうなるかというところで、考えられる影響を六つほど書いておいたんです。  単純に、今の国債、三百三十五兆あるわけですけれども、一%金利が上がるとどれぐらいの含み損が出るかというと、二十兆円の含み損が出ます。莫大な金額です。しかも、時価主義の会計を導入し適用を免れない企業は、これを実現していかなきゃいけないわけですね。  この間、トーメンという商社が倒産しましたけれども、このきっかけが、時価主義を甘く見過ぎたという言葉がありました。時価主義の会計が入るとこういった影響が出てきます。  それから、特に国債の大量保有は、先ほど繰り返し申し上げておりますが、銀行ですけれども、これはたしか日本興業銀行だったか興銀証券だったかが一カ月ほど前に試算をしておりましたが、大体一・四%金利が上がると業務純益がほぼ丸ごと吹っ飛ぶ、そういった形になっております。石原知事の外形標準課税で全銀協が業務純益云々と騒いでおりますけれども、それどころの問題じゃないわけですね。それぐらい、今日本銀行の金利リスクというのは非常に危機的な状況まで来ております。  それから、もう少し連想していくと何が起きるか。当然企業の倒産が起きてきます。非常に多くのゼネコンとか不動産とか流通等が、銀行による債務免除で今辛うじて生き延びていますけれども、金利が上がってしまうと残された体力だけでは生き残れない、そういった状況になります。既に、従来だったら新聞のトップを飾ってもおかしくないような大型倒産、長崎屋とエルカクエイというのが先週起きましたけれども、このクラスの規模の倒産が金利上昇によって誘発される可能性が非常に高いと言えます。  それから、当然、大企業だけではなくて、日本企業の社数でいうと九九%は中小企業ですけれども、中小企業は、先ほど吉野さんのお話にもありましたけれども、銀行からの間接金融に依存しています。金利が上がると非常に苦しくなります。これの受ける影響、これも当然倒産につながってくると思います。幸か不幸か、信用保証協会の特別保証枠で倒産すべき企業が今生き延びている、そういった状況なのですけれども、これが、最後の息の根をとめるのがもしかすると金利上昇かもしれない、そういったことが言えると思います。  それから、忘れてはならないのは、先ほど、二十一兆円を既に発行している国債の金利に充当していると申し上げましたけれども、国債費、特に利払い費が金利上昇に伴ってふえていきます。  今大蔵省は、国債の短期化といいまして、金利の上昇の影響を受けないように、二年債とか三年債とか、期間が短ければ金利上昇の影響は確かに受ける程度が少ないので、そこにシフトしておるのですが、これが裏目に出る可能性があるわけですね。二年後にいざ借りかえようと思うと、金利が上がってしまって、もともと十年で借りていれば一・八%で借りていたのが、二年後に借りかえると、例えば二%で借りなければいけないとか。  そうすると、国債費の膨張、さっき二〇一〇年にはどうなるかというお話をしましたけれども、そのペースを上回るペースで、非常に危機的な状況財政危機の極大化を招きかねない。そうなると何が起きるかというと、また格下げですね。本当の悪循環が起こりかねない。そういった状況がシナリオとしては考えられます。当然、景気の本当の意味での底割れにつながりかねないということです。  では何をなすべきかといいますと、やはり来年度の予算からでも、できるところから、別に小渕総理の言葉をあげつらうわけではないのですが、やはり二兎を追う、この必要が出てきているのだと思われます。財政再建は景気回復を待ってからで済むのではないのだと思います。先ほど申し上げましたが、アメリカは対GDPの比率が六三%だったから景気回復による増収で間に合ったのですけれども、一二三%である場合には、やはり二兎を追うということが必要なときに来ているのではないかと思います。  それと、今景気回復がなかなか民間につながらない理由が、個人消費が伸びないということですね。  個人消費が伸びない理由は何だろうかというと、別に、いいものがないとかそういったことだけではなくて、いろいろな不安があるわけですね。雇用不安もそうですし、一番大きなのが、やはり将来不安だと思います。この将来不安の根幹をなすのが、これだけの借金を返せるんだろうか、年金は大丈夫なんだろうか、医療は大丈夫なんだろうか、そういったものが財布のひもをやはり締めさせているんだと思います。そうすると、財政赤字財政構造をどうやって解決する方向に持っていくのか、少なくともそういった青写真を示さなければならない時期に来ているんだと思います。  財政赤字の問題を解決するにはどういった方法があるか。これは、だれがどう考えても方法は三つしかありません。  一つは増税です。これは東海総合研究所の水谷さんがこの間、「エコノミスト」という雑誌で試算をしておりましたが、もし消費税だけでやると、何と二八%の消費税だそうです。では、普通の増税でやるとどうなるか。景気回復は確かに税収増につながります。では、四十九兆円がバブルピークの九一年の六十一兆に戻るか。あのバブル景気に戻るとは考えづらいですね。仮に戻って六十一兆円まで税収がふえたとしても、八十五兆円使っているわけですから、それでも全然減らなくて、財政赤字はふえる一方なんです。そうすると、増税でやる前にやらなければいけないことは、公平、中立、簡素な税制を確立するということなんですが、これもちょっと問題が広がりますので、ちょっとここで打ち切ります。  二つ目の方策がインフレです。私、個人的には、これは悪魔のシナリオと呼んでいるのですけれども、調整インフレを起こして借金の価値を少なくしてしまおう、そういったことですね。  これは調整インフレ、先ほどポール・クルーグマンのお話が吉野さんからもありましたけれども、支持派の理論づけというのは、このシナリオAのところなんですが、日銀券を日銀が発行して、つまり日銀自身が国債を買ってしまえば、確かに、出てくる供給をある程度消化することができるわけですね。そうすると金利上昇あるいは価格の下落は起きないだろうということなんですけれども、これは名目金利の上昇が抑えられることという、そういった主張を展開している先生方がおられます。その一方で、調整インフレですから、期待インフレ率が上がるので実質金利が低下する、いいことじゃないか、こういった論法ですが、これはマーケットの出身者にとっては非常に理解しづらい詭弁にすぎないと思います。  具体的に起きそうなことは、名目金利が先に上がってしまって実質金利の上昇も起こる、そういった問題が起きると思います。  それから、インフレ率をコントロールできるのか。先ほどのお話にもありましたけれども、上がっている非常に高いインフレを下に下げるために目標値を設定したケースはあるんですが、下から上の設定値というケースはなかなかございません。これが本当にできるのかどうか。それと、構造改革の先送りにつながりかねない。  三つ目の方策は歳出カットですね。むだな橋はつくらない、むだな道路はつくらない。このむだなという意味は、持続的な経済成長には寄与しない、あるいは採算性のとれない、そういった先ほどの中身のお話です。  この三つのどれをとるのか。組み合わせでもいいわけですけれども、ここに予算委員会先生方の識見を問わせていただきたい。そういう点で非常に大きな期待をしておりますので、よろしくお願いしたいと思います。  ありがとうございました。(拍手)
  6. 島村宜伸

    島村委員長 ありがとうございました。  次に、金森公述人にお願いいたします。
  7. 金森久雄

    金森公述人 金森でございます。  平成十二年度の予算につきまして私の考えを述べさせていただくのを、大変光栄に思っております。  私のレジュメといいますか、お話ししたいことはこの一枚紙に書いてございますが、二〇〇〇年度の予算、八十四兆九千八百七十一億円ということでありまして、九九年度の当初予算に比較して三・八%の増加となっているわけであります。しかし、九九年末に第二次補正予算が組まれておりまして、それと一体として見ないと経済的な評価ができませんので、これを合わせました評価ということで申し上げたいと思います。  私がお話をしたいと思います論点は三つございます。  第一番目は、その規模景気回復させるのに十分であるかどうかということであります。それから第二は、その内容が適当であるかどうかということでございます。それから第三番目は、財政赤字増大をどう考えるかという点であります。  まず、景気との関連では、私はこの予算規模は小さ過ぎるというように考えます。  日本景気は、幸いに回復に向かってきたというように思います。これは、九八年に入りましてからの政府支出の増加、減税、金融緩和という政府景気対策の効果によるところが大きいと思うわけであります。景気対策の結果、生産の増大投資回復ということが昨年の後半からあらわれてきております。  生産は、九九年の七月—九月に前期比三・九%増、十—十二月に〇・八%増と、二期連続をして増加しております。そして、予測指数を見ましても、二〇〇〇年の一月が三・六%増、二月〇・六%増ということで、着実な回復をしております。また、設備投資も、その先行指標であります機械受注が、七—九月に三・一%増、十—十二月は九・九%増と、かなり顕著な回復をしているわけであります。  こういうことで、私は、九九年度の経済成長率というものは、政府の見通しであります〇・六%のプラスというのは達成できると思います。  そこで、二〇〇〇年度についてでありますが、公共事業費は九兆四千三百七億円、九九年度と同額であります。また、公共事業等の予備費が五千億ございますが、これも九九年度と同額ということですから、需要の下支えを継続するという意味はあるかもしれませんけれども、積極的に財政によって景気回復を促進するという意気込みは見られないと思います。特に、九九年度にかなり補正をしておりますから、補正後と比較をいたしますと、実質は減少になっているというように思います。それから、財政投融資もまた減少をしているということでありまして、決して十分なものとは言えないと思います。  もっとも、昨年末も十五カ月予算ということが組まれておりますので、それがどれだけ二〇〇〇年度にずれ込むかということは不明でありますけれども、政府の見通しによりますと、二〇〇〇年度の政府の固定資本形成の増加というのはわずか〇・九%にすぎないのですね。これは明らかに低過ぎると思います。  二〇〇〇年度のGDPは一%の増加ということでありますが、これも低過ぎると思います。この程度の成長では失業率の改善も望めません。労働生産性は上がっているわけでありますから、一%程度では失業率は下がらない。失業率を下げるには、私は三%程度の成長が必要ではないかというように考えるわけであります。したがって、政府は、三%程度の成長を目指して公共投資の増加率も三%程度にすべきではないかというように私は考えております。  日本経済は、現在、非常に大きな需給ギャップの存在に苦しんでいるわけですね。この需給ギャップがどれほどあるかということにつきましては、いろいろな計算方法があり、いろいろな見方がございます。  経済企画庁では六、七%と見ているようでありますが、いろいろな数字がございまして、OECDが昨年末に発表しました数字では、二〇〇〇年のGDPギャップは三・四%であります。すなわち、これは、潜在的に成長できる部分に比べまして、三・四%、実質のGDPが低いということであります。これは、OECDの二十一カ国中最大であります。OECD全体では、むしろ〇・二%の需要超過となっているわけですね。  これだけ需給ギャップがあるというのは、日本が持っております貴重な労働力、資本、資源というものをむだにしているということにほかなりません。したがって、日本は、この需給ギャップの縮小を目指して成長を図るべきであるというように思います。こうした需給ギャップが減少して、それから設備投資の本格的な増加が始まるわけであります。こういう意味で、そのギャップを埋めるためにもっと積極的な公共投資が必要であるというように思います。  それから、本来であれば、やはり私は減税も必要ではないかというように思います。  減税は、昨年の減税がございまして、またここで減税をするかというような反対がありまして、余り議論に上っていないようでありますけれども、昨年は九兆円の減税を行っているわけであります。今年も、本来は減税が欲しい。今、設備投資回復してまいりましたけれども、消費回復がおくれております。消費は、今度の春闘の見方にもよるわけでありますが、せいぜい二%ぐらいの増加ということで、決して消費を伸ばすほどの高い賃金の上昇というものは行われませんので、やはり減税によりまして消費の増加を助けてやるというのが私は望ましいことであると思います。  それから、地方財政の問題がございます。  政府の見方、地方財政につきましてある程度の配慮はされているようでありますけれども、現実の地方財政の深刻な状況というのを見ますと、これでは不十分であるというように考えられるわけでありまして、公共投資、減税、地方財政等をあわせまして積極的な対策を行って需給ギャップを減らす、そして三%程度の成長に持っていくということが望ましいように思うわけであります。  それから第二番目に、支出の内容ということでありますが、これにつきましてはいろいろな議論がございます。  現在の財政というのは単に規模の拡大だけにすぎない、このようなやり方をやっていれば日本の国家の財政が破産をしてしまうというような説もございますけれども、構造的な変化といいましても、そう自由になるというわけではありません。社会保障その他、いろいろな義務的な支出もあり、おのずからそこに限界というのがございます。今回の予算では、公共事業につきましても、物流の効率化による構造改革、それから環境対策、少子高齢化対策、高度情報通信対策というような四部門に重点的に配分をするということになっておりますが、これは妥当なことと考えられます。  また、費用効果分析を一層進めていくということもうたわれておりまして、まだ緒についたばかりでありますが、そういう方向に進んでいる。  例えば新幹線でありますが、これも三百五十二億円というものがついているわけでありますけれども、これにつきましても、収支の採算性等いろいろな条件がついておりますが、こうしたものも積極的に拡大をしていくということが望ましいと思います。その採算性につきましても、直接的な効果でなしに、間接的な新幹線の効果というのを考えれば、これはかなり収支が見合うものが多いということが言えると思います。  それから第三番目に、赤字が拡大をしていくという問題がございます。今回も国債の発行が非常に大きいために赤字比率というものはどんどん増加をしているわけであります。  OECDが昨年の暮れに出しました評価によりますと、日本の国と地方を合わせましての負債残高というのは、二〇〇〇年でGDPの一一四%、また公債依存度は一〇・一%ということであります。日本財政当局の数字とは少し違いますけれども、それほど大きな違いではありません。いろいろな計算の方法がございますので、大体この程度のことではないかと思います。  この財政赤字というのは、確かに非常に大きいんですね。OECDの諸国の平均でありますと、負債残高は六九・九%、それから公債依存度は一・一%ということになっております。日本比率が著しく高いことは否定できない事実でありまして、長期的にはこの依存度を引き下げるということは必要な条件であります。  しかし、やはり現在のような状況のもとでは、これを直ちに引き下げるということはできません。債務比率国債依存度を引き下げるということには、それを可能にするような経済条件が必要であります。現在のところは、日本では民間の貯蓄が大きくて、国債を十分これによって消化するということが可能な状況にございます。  目先、税率を引き上げたり歳出をカットするということによって財政赤字を減らしたい、こういう誘惑に駆られるわけでありますが、こういう方法によっては財政赤字を減らすことはできません。このようなことをやれば、不況が激しくなって税収が減って、公債依存度はますます高まってしまうということになります。  これは、一九九七年度の橋本内閣における緊縮政策の際に実証されたことでありまして、このときには消費税の増税や歳出カットという厳しい政策が打ち出され、結果的には大幅な赤字拡大をもたらしたわけであります。これを繰り返してはなりません。  財政赤字を減らす道というのは、一見矛盾するようでありますけれども、一時的には減税や支出増大によって赤字を拡大して、そして景気をよくし、その次に税収をふやすという迂回的な方法によるほかはありません。歳出の拡大によって需給ギャップが埋まってきた場合には当然歳出をカットしなければなりませんが、それまでは赤字の拡大を恐れるべきではありません。  どれほどの財政支出の増加が必要かということにつきましては、いろいろな計算がございますけれども、余り確たる答えはないようであります。  私の友人であります国際大学の元学長の宍戸駿太郎氏がエコノメトリックスを用いまして試算をしておりますが、これによりますと、公共投資は年に一〇%ふやす。そうしますと、次第に経済成長率が四、五%になりまして、そして二〇〇五年になりますと債務の残高というのが減ってくるというような形になっております。  これは、インフレーションの率でありますとか財政の乗数効果、いろいろなものによるわけでありますから、それほど信頼すべきものかどうかという点は疑問でありますけれども、やはり私は、赤字の縮小ということにはかなり時間がかかると考えております。そして、時間をかけて赤字の縮小を図っていくということが大事であるというように思うわけであります。  以上、まとめて申し上げますと、平成十二年度の予算というのはおおむね妥当でありますが、やはり規模としてはやや小さ過ぎるのではないかと思います。大蔵大臣は、五千億円の予備費を使えば今年度は補正がなくてもいけるじゃないかというような御意見を述べておられるようでありますが、私はやはり規模として小さ過ぎて、恐らく今年も補正予算で積み増しを必要とするということになるのではないだろうかと考えております。  以上でございます。どうもありがとうございました。(拍手)
  8. 島村宜伸

    島村委員長 ありがとうございました。  次に、神野公述人にお願いいたします。
  9. 神野直彦

    神野公述人 東京大学の神野でございます。  きょうは、お招きをいただきましてどうもありがとうございます。  最初にお断りしておきたいのですが、私、専門家の皆様方を前にお話をさせていただくことは数少ないのでございます。私は、お三人の公述人の方と違いまして理論家ではなくて、財政学を専攻いたしております。財政学というのは、十九世紀末に、新古典派と言われている市場を重視する考え方の反対側で、リストの思想を受け継ぎながら、市場よりもむしろ政府の役割、国家の役割を重視するという考え方から生まれてきた学問でございます。それからもう一つ、私は、そういう意味で事実の観察屋でございますので、事実の観察からしか物が言えません。きょうは、皆様と一緒に事実を観察しながら、来年度の予算案を相対化して見てみたいというふうに考えております。  先ほど来お話がありましたように、来年度の予算は、二兎を追う者は一兎を得ずということわざに基づいて一兎に絞った予算だ、こういうふうに言われております。私、神主の家柄であることもございまして、どうもグローバルスタンダードというのは苦手でございますので、二兎を追う者は一兎を得ずといういにしえのローマのことわざでなく、日本のことわざで表現させていただければ、アブハチ取らず、こういうふうに申します。  アブハチ取らずというのは、御案内のとおりに、クモが自分のネットにかかったアブとハチをとろうとして、両方とろうとしたらネットが破れてとれなかった、こういうお話でございます。  きょうの私のお話は、ネットさえきちっとしていればアブもハチもとれる、むしろ、ネットがきちっとしていなければ、ハチだけに焦点を当ててとろうとしても、ネットは破れてしまってアブもハチもとれない、こういうお話をさせていただこうというふうに考えております。  お手元にグラフを三つ用意させていただきました。一番最初の「一般政府財政収支の対GDP比」、これは、国、地方それから社会保障基金、この三つを合わせた政府財政収支の赤字をあらわしているものでございますけれども、この財政収支の赤字の推移を見てみますと、どうも、世界的にこの不況でいろいろな国々が財政赤字に苦しんでいるわけですけれども、その中で三つのパターンが財政政策としてとられたのではないかというふうに思います。  一つは、ハチだけに重点を置いて、とにかくハチをとろう、アブはいい、こういう意思決定をした国でありまして、それはドイツとフランスがそうだと思います。  つまり、ドイツやフランスはマーストリヒト条約で、一九九七年度に対GDP比で三・〇%以内に財政赤字を抑えなさい、こういうふうな約束事をいたしておりますので、一九九七年には財政収支をGDP比でどうしても三・〇%に抑えざるを得なかった。そこで、財政再建は重視するけれども、国民経済の方の再建はとりあえず無視しよう、こういうふうに意思決定をした国だというふうにお考えいただければいいと思います。  これらの国はどういうことになったのかと申しますと、バブルがはじけた一九九三年を見ていただきますと、一九九三年でドイツは三・二、それからフランスは五・七の財政赤字でしたので、一九九七年までには財政を緊縮させて社会保障などを緊縮させることをやりまして財政を再建いたしました。そして、一九九七年を見ていただきますと、フランスの場合には三・〇、ドイツの場合には二・七ということで、マーストリヒト条約をようやくクリアしたわけでございます。  ところが、この過程で御案内のとおりに社会保障の抑制的な改革を行いましたし、それから公務員、特に公企業関係で大分人員削減などをいたしましたから、一九九六年に公企業体のゼネスト、それから一九九七年には公務員のゼネスト、それに民間労組が呼応するというようなことがございまして、フランスでも社会党政権が一九九七年に成立をいたしまして、政策を変更せざるを得なかった。それからドイツの場合でも、一九九八年にシュレーダー政権が成立いたしまして、政策を変更せざるを得なかったという推移をたどるわけでございます。  それは、次の「失業率」を見ていただければと思います。  失業率を見ていただきますと、ドイツの場合には、一九九三年には八・八でございましたけれども、それが一一・四にまで一九九七年にはこの緊縮財政のおかげで増大してしまう。それからフランスの場合には、一一・六でございましたけれども、一二・五まで失業率が悪化して、先ほど申し上げましたような政権交代が行われてしまって、雇用対策を打たざるを得なくなってくる、こういうふうに追い込まれた国でございます。  さて、それに対して、日本のように、アブとハチはどちらでもいいんですが、とにかくアブをとろう、ハチの方はあきらめよう、つまり国民経済の再建こそが重要なのであって、財政再建はとにかく二の次にしよう、こういう意思決定をした国でございます。  この国を見てみますと、まず財政収支の方で見ていただきましょうか。一ページ目の財政収支の方で見ていただきますと、一九九三年には一・六%の赤字でございましたけれども、一九九九年、これは予測でございますけれども、昨年でいきますと七・八にまで財政赤字が落ち込みますので、非常に多くの赤字を出さざるを得なくなってしまった、こういうことですね。  ただ、こちらの方はもともと景気回復してからということでやっているわけですのでやむを得ないといたしますと、失業率の方はどうかということで、次の「失業率」のページをめくっていただきますと、失業率の方は一九九三年には二・五%でした。ただ、これはやや統計のとり方が他国と違いますので、二倍にして見ろとかというような説もございますが、仮に二倍にして見たとしても、一九九三年は日本は失業率は決して高くはなかった、低かった、こういうふうに言っていいだろうと思います。ところが現在では、これは予測でございますけれども、四・三、この間のあれでは四・七まで上がったということでございますので、失業率も上がってしまったということですね。  つまり日本の場合には、二兎を追わずに一兎を追う、アブ、ハチでいきますと、とにかくアブを犠牲にしてハチをとるということに専念したわけですけれども、アブもハチもとれなかった、こういうふうに言わざるを得ないのではないかと思います。  さてそこで、今度はもう一つ、欲張った国がございまして、アブもハチもとろうという国でございます。これはスウェーデンと、ちょっと今ここでは除外しておりますが、アメリカがそうでありまして、アメリカは、両方ともとろう、こういうふうに言った国だろうと思います。  アブもハチもとろう、こういう意思決定をしたスウェーデンをちょっと今例にとらせていただきます。というのは、アメリカの場合には、覇権国でございますので、基軸通貨を発行できますのでいろいろな制約が変わってまいりますので、スウェーデンをちょっと例にとらせていただきますと、スウェーデンをまず財政収支の方で見ていただきましょうか。  スウェーデンは、御案内のとおり日本よりもバブルに踊ってしまいましたので、一九九三年には一二・三%という絶望的な赤字でございまして、これはブリッジバンクとかといってどうにかして不良債権を再建しなくちゃいかぬ、こういうふうに思ったときでございます。  ところがスウェーデンは、一九九七年にマーストリヒト条約には参加はしないけれども、しかし我々の国は輸出国なので、輸出依存度が日本は一〇%ちょっとでございますけれども、スウェーデンは三〇%を超えておりますので、いつ何どきでもユーロに加盟できるようにポジションだけは確保しておこうということで、一九九七年にはマーストリヒト条約の三%をクリアする、そしてその後一九九八年からは二・〇%で黒字を続けていく、そして債務を償還してしまおう、こういう計画を立てたわけでございます。  見ていただきますと、一九九七年には一・一%の、いわば赤字の削減に成功した後、一九九八年には予定をオーバーいたしまして二・二%の黒字になってしまいました。これは二%で黒字を続けるということですから、今年度は落として一・八%、年平均二%にする、こういうことをしたわけでございます。  では、失業率の方はどうだったのかということでございますけれども、「失業率」の方で見ていただきますと、一九九三年を見ていただくと八・二という失業率でございますが、これが現在では五・八。これは、私、この日曜日にスウェーデンから戻ってきたばかりでございますが、まだよくなっておりまして、失業率は徐々に下がり続ける。  こういうことで、二兎を追った者は二兎を得た。つまり、アブもハチもとろうとした者はアブもハチもとれたということが言えるのではないか。これは、アメリカをとっていただいても同じことでございます。  では、一体どうしてアブもハチもとれたのかということでございますが、これは先ほどから申し上げておるように、ネットがしっかりしていた、つまり、ちゃんと丈夫なネットが張ってあったからアブもハチも暴れたところでとれたということでございます。  私どもが今立ち至っている極めて深刻な不況、この不況と全く同じ不況がいつ起きているのか、私は歴史の観察屋でございますので、見てみますと、十九世紀末に起きているというふうに言っていいだろうと思います。これは、軽工業から重化学工業に移る転換期に起きた不況で、一八七三年から一八九六年まで世界的に物価が下がり続ける、二十何年間にわたって下がり続ける。  この不況を最終的に脱出するのには、つまり、世の中の人々は重化学工業の時代になるということがわかっていて、鉄鋼業なんかは出てきているのですけれども、重化学工業を引っ張っていく戦略産業、自動車と家庭電化製品というのはまだ出てきていなかったわけですね。これが出てこないとこの不況を脱出できなかった、こういう不況でございます。  そういう産業構造を転換させなければならない時期に、政府がこの不況を脱出するためにやるべき仕事というのは二つあります。  一つは、ビスマルクがやったように、社会的セーフティーネットというネットを張ることですね。社会保険をつくって、安心して冒険してください、市場の方で失敗したらば、市場の外側でちゃんと現金を給付してあなたの賃金を保障いたしますから、こういうようなきちっとしたネットを張るということが一つであります。  もう一つは、インフラネット。つまり、新しい時代、重化学工業が出てくるわけですから、重化学工業を支えるインフラネットをつくる。最初は鉄道から始まりましたけれども、鉄道、港湾、道路、こういうようなインフラを整備しながら新産業が出てくるのを待って、チャレンジしやすいようにしておく、こういうことだろうと思います。  現在の不況は、これはもう皆さんおわかりいただけますように、重化学工業の需要が頭打ちになって、知識とか情報とか、次の時代はそういうふうな時代になるということはもうわかっているのですね。知識や情報というのはすべてお金に乗っかりますから、鉄鋼業に当たるような基軸産業は金融業だ、これもわかっている。しかし、戦略産業が出てきていない。戦略産業が出てきていない限り、十九世紀末に鉄鋼業が戦略産業が出てこないで過剰設備を抱えて不況に苦しんでいたように、どうしても金融業は不良債権を抱えざるを得ない、こういうことになるわけであります。  そこで、やるべき政策でございますけれども、これは二つあります。また同じことをやればいいわけで、社会的なインフラ、社会的なセーフティーネットを整備すること。  これは、金融の時代になってくると、金銭的な、現金を給付して人々の生活を守ろうということは不可能になりますので、地方政府が、サービス給付、具体的に医療とか教育とかそれから福祉とかという現物給付でもって、人々が冒険しても大丈夫ですよという安心できるネットを張りかえること。金融の時代になると、どうしても金銭給付による所得再分配というのは、資本が自由に動くようになってくると不可能になりますので、張りかえること、これが第一でございます。  第二は、これは言うまでもありませんが、新しいインフラのネット。重工業の時代ではなくて、新しい知識とか情報の時代のインフラをつくらなくちゃいけないわけですから、当然中心はITインフラ、情報技術インフラになりますし、もっと重要なのは教育になります。  さてそこで、先ほど、スウェーデンが両方やったという、二兎を得たという成功の秘密でございますが、スウェーデンは国民にこう訴えたわけですね。  今我が国はまず財政を再建しなければならない。そのためには経費の削減をしなければならない。ところが、経費を削減すると、どうしても弱い人々にしわ寄せが行く。だから、強い人々は税で痛みを分かち合ってほしい。国民は協力して痛みを分かち合ってこの共同の困難を乗り切ろう。つまり、恵まれない人々は経費で、そして恵まれた人は税でということで所得税税率を引き上げて、増収をして財政再建に乗り出したわけであります。  同時に、経費を削減いたしますが、その経費の削減する中身を変えました。これからは情報の時代だということで変えました。  財政再建をする目標国民にしっかり提示しております。なぜ強い財政を築かなければならないのか。なぜストロングファイナンスを築かなければならないのか。それは、ストロングウエルフェアを確保するためだ。つまり、強い福祉を実現するために強い財政を実現しよう、これを国民に訴えて今のような協力を求めたわけでございます。  かつ、今言いましたように、福祉をなるべく落とさないように努力をすると同時に、これからはITの時代なんだから、スウェーデンは世界最強のIT国家を目指す、つまり世界最強の情報技術国家を目指すという方針を立てて、ITインフラ、情報技術のインフラを整備すると同時に、一番力を入れたのは教育です。人的投資です。  これはアメリカも、景気回復した秘密はITインフラを充実したことにある、こういうふうに言われておりますが、しかし、それだけをやると所得間格差が広がるのですね。つまり、IT、情報技術にアクセスできる潜在的な能力のある人と潜在的な能力のない人との格差が広がりますから、全体に公教育で、教育といいますか、潜在的な能力を高めてITインフラにアクセスできるようにしようということで、学校教育は言うに及ばず、再教育、リカレント教育、我々の知識というのは、タイムコンプレッションで、大学を出てから三十年もった知識というのは今や十年ぐらいしかもちませんので、常にリカレントして知識を新たにするというような教育を徹底してやりました。  それと同時に、中小企業中心とする企業に大学や高等教育機関で開発した新たな技術を移転するということをやって、情報技術に対応する企業を強めたということでございます。  そういう教育投資、スウェーデンの考え方では、経済成長と雇用の確保と社会的正義、この三つを両立させようとすると、教育しかないんだ。全体として教育水準を高めていけば、そうすると社会的な正義、つまり、所得の不平等も解消できるし、経済成長も、雇用も確保できるだろうということを考えてそういう政策を打ち出したわけでございます。  言いかえますと、日本の場合には、景気政策のときに、ともすると利潤のシェアを確保する。つまり、リストラをしてなるべく労務コストを少なくしましょう、それから税負担も少なくしましょう、そういうことで利潤のシェアを確保することによって経済的なパフォーマンスを引き上げようとしますが、スウェーデンの場合にはそうではなくて、生産性を強めるということによって、つまり、生産性を強めるのは人的能力なんだから、特に知識や情報の時代になってくると、人間の知識や情報というものが生産性を高めるキーポイントになるので、そこを教育すれば生産性を上げることによって国民経済は発展できるのだということを行ったということです。  来年度予算を見てみますと、政府はやるべきことというのはもう気がついていると思うんです。ミレニアムプロジェクトを見ても、やるべきことというのは、新しい情報とか知識とかというようなことに対応した政策を打つべきだということはもう気がついておりますが、いかんせん額がわずか過ぎます。そして、教育も重要だということもわかって、打ち出されているんですね。しかし、いかんせんこれも予算にあらわれていない。ここを予算の過程で明らかにしていただいて、やるべきことはわかっていらっしゃるわけでございますので、やるべきことを実現していく。  旧来型の公共事業だけでは旧来型の産業構造をいわばサバイバルさせるだけなんですから、新たな産業構造をつくり出すということが最も重要なことだということを訴えて、ちょっと時間をオーバーいたしまして申しわけありません。(拍手)
  10. 島村宜伸

    島村委員長 ありがとうございました。     —————————————
  11. 島村宜伸

    島村委員長 これより公述人に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。甘利明君。
  12. 甘利明

    ○甘利委員 自由民主党の甘利明でございます。  きょうは、公述人先生方には本当にありがとうございます。大変有益なお話を聞かせていただきまして大変参考になりました。  私の持ち時間は十分しかありませんので、二問お伺いいたします。最初金森公述人、そしてその後に吉野公述人に伺いたいと思っております。  今審議をしております来年度予算というのは、最後の大盤振る舞い予算なんというふうにやゆされているわけでありますけれども、事実、歳入の公債依存度というのが三八%。こんな姿をいつまでも続けていいわけがないわけでありまして、一刻も早くいわゆる民需主導型自律経済軌道に乗せて、その後に我々は財政再建と直面をしなければならないわけであります。  ただ、いつそういう民需主導型自律経済軌道に乗ったかという判断は慎重の上にも慎重を期した方がいいというのが私の思いでありまして、この予算、かなり景気を意識している予算でありますけれども、これの効果をしっかり見きわめて、万が万一まだ不安があったらさらに追加するというくらいのことを考えた方がいいと私は個人的には思っているわけであります。  と申しますのは、私は、平成九年の九月に財政構造改革のための特別委員会の理事を務めました。つまり、財政再建路線にスイッチをしたときの理事でありました。ところが、そのたしか二カ月後ぐらいに国内の金融不安が起きまして、それから、前から火種はありましたけれども、アジアの通貨危機がドミノ連鎖をしてきまして、いよいよ日本に降りかかってきたわけでありまして、そういう不幸はあったにせよ、完全に自律軌道に入ったという判断を読み誤ったことはあるんじゃないかというふうに思っております。  もう一回あの轍は踏めない。私はその八カ月後に、今度は構造改革を凍結する特別委員会の、事もあろうに筆頭理事をやらせられたわけでありまして、じくじたる思いがありまして、今度は失敗できない。  要は、適正な巡航速度に景気が入ったということをどうやって確認するかということだと思うんですね。前回は、言ってみれば、不況という山を乗り越えて、頂上を越えればあとは惰力で走ってくれますけれども、もう頂上を越えたんだなという判断をしてアクセルを緩めたら、実はまだ九合目ぐらいで、そのままずうっとふもとまで下がってきちゃったわけですね。今度は、この判断を誤ってふもとまで落ちてきちゃったら、もう一回登り上げるだけのガソリンというのはないわけでありますから、今まで登ってきたガソリンをむだにしないために、山を越えたということはしっかり確認をしなきゃいけないというふうに思っているわけであります。  そこで、よく言われるんでありますけれども、民需主導型の自律経済軌道に入ったというのは、一体どういう経済指標がどう変わったら判断していいのかというところが一番大事なところになってくると思うんですけれども、金森公述人はその点についてどうお考えになられますか。
  13. 金森久雄

    金森公述人 お答え申し上げます。  前回の不況への転換というのは、九五年度、九六年度にかなり景気回復をしてきたわけですね。そのときは設備投資も二けたの上昇になりました。そこで、それをとらえて財政構造改革に出たわけでありますが、これが早過ぎた。本来もっと拡大を続けてやるべきだというところで抑えて、不況にしてしまったわけであります。今回はそれを繰り返してはならないというのは、私も御指摘のとおりだと思います。  そこで、私はやはり、設備投資が二けたの上昇になってくる、経済成長率が三%になってくるという時期が、財政政策を転換して、今度は財政の改善に踏み切る時期ではないかというように思います。  財政構造はなぜ悪化するかというと、反面、貯蓄の方から見ると、民間の貯蓄が多過ぎるわけですね。民間貯蓄が多いから政府赤字になる。国全体としては黒字と赤字は相殺されてゼロになるはずでありますから、財政赤字が大変だ、大変だと言っておりますけれども、見方を変えれば民間の貯蓄超過が大きいということによるわけでありまして、貯蓄超過が減ってこないとぐあい悪い。  その貯蓄超過はどうして減るかといいますと、やはり、民間設備投資が活発化をしまして、今企業部門にあります貯蓄超過が、今度は逆に企業部門が貯蓄を減らす、企業部門で金を借りるというような状況にならないと、経済の民需主導の回復というのは起こらないと思うわけであります。それには、やはり、民間投資が二けたの増加に転じることが必要ではないかというように私は思っております。
  14. 甘利明

    ○甘利委員 前回を振り返ると、アジアの通貨危機というのがかなりの影響を占めていることも事実でありまして、これは短期資金がいきなりわっと行って、それでわっと引き揚げてしまった。これは、市場がそれほど立派なものでなくて、実は暴走しやすいということを我々は経験的に思い知らされたんですけれども、この短期資本の規制について、いろいろとG7でも言われているようでありますけれども、吉野先生はこれについてどうお考えになられますか。
  15. 吉野直行

    吉野公述人 今、アジアの金融危機のことで御質問ございましたけれども、おっしゃいましたように、日本景気の低下の二つの要因というのは、やはり国内での金融の危機とアジアの金融の危機があったと思います。  それで、アジアの経済を見てみますと、危機が起こった後、現在の回復は非常に早くなっております。ほとんどの国で回復いたしております。それと比べまして、日本はいまだに景気が悪い。今先生おっしゃいましたように、短期の資金が急にその国に流れ、その国からまた資金が出ていった、これが大きな金融危機の一つであります。  短期金融の規制に関しましては、国によって大きな違いがございます。例えばマレーシアでは、資金をとめる、外に出ていったり中に入るのをとめるという形の対応をいたしました。  それに対しまして、それよりはむしろ為替の管理の仕方を変える。バスケットと申しますが、為替を、今までは非常にドルを重視しながら見ていたんですが、日本との貿易が非常に大きいのになぜドルだけと為替を見ながらやるのか。それであれば、貿易の多い日本の円、あるいはドル、そしてユーロ、こういうものも組み合わせながら為替を見ていった方がいいのではないか。これはシンガポールなどが現にとっておりまして、うまくいっているところでございます。  ですから、そういう意味では、短期資金を規制するのが本当にいいのかというのは国によって答えが違っておりますし、やはり私は、為替制度のあり方、こういうものも重要ではないかと思います。
  16. 甘利明

    ○甘利委員 ありがとうございました。
  17. 島村宜伸

    島村委員長 次に、青山二三君。
  18. 青山二三

    青山(二)委員 公明党・改革クラブの青山二三でございます。  本日は、公述人の皆様には、大変お忙しい中をお出かけいただきましていろいろと貴重な御意見をお聞かせいただきまして、本当にありがとうございます。  私の与えられました時間も十分という短い時間でございますので、金森先生に限って質問をさせていただきたいと思います。  金森先生には、これまでに、「経済成長の話」とか「日本経済をどう見るか」「経済を見る目」など、数多くの経済関係の本をお書きになっておられまして、日本経済が抱える諸問題を明確に論じておられます。  平成八年に先生のお書きになりました「新入門日本経済」という本の中では、日本経済の課題の章で、財政については国債の活用を考えるべきである、このように述べられております。また、政府が今国債を発行して借金をすれば子孫に返済の重荷を負わせることになるという議論があるが、それは誤りである、借金ではなく、国債という金融資産を相続するのだとも述べられているわけでございます。  このときから既に四年が経過いたしておりまして、現在では、国と地方を合わせまして長期債務の残高が六百四十五兆円という額に達しているわけでございますが、国民がこのことに対しまして大変な不安を抱えておりますので、金森先生におかれましては、この御認識は今もお変わりないのかどうか、お伺いしたいと思います。
  19. 金森久雄

    金森公述人 青山先生の御指摘に対しまして私の考えを申し上げますが、まず、国全体として需要と供給とがバランスをして拡大をしなければ経済成長はできないわけであります。  ところが、時によりまして需要が超過したり供給が超過したりして、いろいろな経済の変動が起きるわけですね。現在は、民間の需要が足りなくて、そして供給力の方が余っている、これが不況の原因であります。  民間の需要が足りないわけでありますから、民間消費投資をふやすのも大事でありますけれども、差し当たってはその不足分というのを国が補給してやるということは、当然のことではないかというように思うわけですね。  その場合に、税金によってその歳入をしたのでは国民所得の方が減ってしまいますから、これは役に立たない。むしろ、国は国債を発行して、そして資金を調達して需要をふやす、それで国全体としての需要、供給のアンバランスを是正するというのが私は正しいことではないかと思うわけです。したがって、国債がふえても、国全体が供給過剰である場合には少しも差し支えないのではないかというように思うわけであります。  そこで、その場合に、子孫に負担が残るのではないかという議論がございます。  これは、経済学者の間でも非常に意見が分かれているところでありますが、私はこれを、国では六百四十五兆円という借金はあるわけでありますが、それをだれが貸しているかといえば、国民が貸しているわけですね。ですから、国民の代表であります国が借りているけれども、貸す方は国民が貸しているわけでありますから、国全体としては別に問題はないと思うわけであります。  これが、国の中で調達できなくて外国から借りるというようなことになりますと、これは国民の負担になります。アメリカの場合は、非常に今経済の調子がいいようでありますけれども、しかし、三千数百億ドルという国際収支の赤字があるわけですね。それだけ外国から借金をしてカバーをしているわけでありますから、決して健全とは言えない。日本は、六百数十兆円という債務がございましても、みんな国内でもってカバーをしているわけですね。ですから、これは本来は差し支えないことであると思うわけであります。  そして、これを返すときに税金で返さなきゃいけないということでありますが、税金で取ったものはまた国民に戻るわけでありますから、結局中立になっているわけですね。  したがって、国債が非常にふえるということは、国債のマネジメントという面ではいろいろ難しい問題が発生すると思いますけれども、原理的には私は問題がないことではないかというように思うわけです。
  20. 青山二三

    青山(二)委員 大変ありがとうございました。  先ほどの意見陳述の中で、金森先生は、十二年度予算は小さ過ぎる、一%程度の成長では失業率も下がらないと言われました。また、三%程度経済成長が必要だとも述べられておりますけれども、今の日本の実質経済は、一年半ぐらいですか、ずっとマイナス成長を続けているわけでございまして、明るい兆しが見えたとは申しましても、まだまだ一進一退が続いているような現状でございます。  先生は、景気に対する一般の見方は悲観的過ぎるのではないかということで、主要企業経営者とエコノミスト二十人による二〇〇〇年の日本の成長はどうなるかという予測の中で、最も高い、三%成長は可能である、このようにおっしゃっておりますけれども、その根拠についてお伺いしたいと思います。
  21. 金森久雄

    金森公述人 今年度の世界経済を見ますと、アメリカは大体三%半ぐらいというように言われております。それから、ヨーロッパもやはり三%から三%半、アジアは五%から六%ぐらいの成長ができるというように言われておるわけですね。  だから、世界じゅうで皆三%以上の成長ができるのに、日本が〇%とか一%とかいう成長しかできないというのは、いかにも実体を弱く見過ぎているのではないかというように思うわけであります。それはやはり、九八年度のマイナス成長の影響を受けて、少し国民は弱気になり過ぎているのではないかというように思います。  先ほど言いましたように、既に民間設備投資というのは、機械受注等で見ますと前年比で一〇%近くふえてきているわけであります。したがって、政府がこれを促進してやるというような政策をとれば、私は三%できるのではないかと思うんですね。  ところが、今の経済見通しでは、政府は〇・九%の増加ということで、日本経済全体の成長の足を引っ張っているような形になっておりますので、私は甚だ遺憾なことであるというように思うわけです。
  22. 青山二三

    青山(二)委員 大変ありがとうございました。
  23. 島村宜伸

    島村委員長 次に、西田猛君。
  24. 西田猛

    ○西田(猛)委員 自由党の西田猛でございます。  きょうは、公述人におかれましては、お忙しい中をわざわざおいでいただき、ありがとうございました。心から敬意を表し、御礼を申し上げたいと存じます。  まず、吉野先生がおっしゃられました中で、私は全く同感だなと思いましたのは、今我が国がゼロ金利政策の中で、しかしながら景気回復に至っていないというのは、いわばクルーグマン教授が言うような流動性のわなに陥っているのではなくして、IS曲線が垂直であるがゆえにゼロ金利政策が効果を発揮していないのではないかということは、私は全く同感でございます。それがゆえに、その次に先生がおっしゃっておられますのは、望ましい政策として、景気対策としての社会資本整備を、限定して、そしていわば傾斜配分をするべきではないかというふうに言っておられます。  特に、公共投資の供給サイドで見れば、北関東から関西の地域にかけて公共投資を行う方が、他の地域よりも生産拡大効果は大きいし、産業別に申し上げれば第二次産業、第三次産業の効果が相対的には高くなるというふうに、きょうお述べになられたわけでございます。  私も、せっかくの公共投資ですから、そういう地域的なあるいは産業別の傾斜配分が行われてもよいのではないかなと思うのですけれども、公共投資のそういう地域的なあるいは産業別の傾斜配分を政策目標としていかに有権者の方に納得していただくかということが、やはり我々、国民の代表としては考えなければいけないことだと思うのですが、その点について、簡単にお述べいただけますでしょうか。
  25. 吉野直行

    吉野公述人 どうも御意見ありがとうございます。  西田先生のおっしゃいましたように、日本全体のマクロの配分をいかにするか、こういうことが私は重要ではないかと思います。  特に、乗数効果というのがよく経済学者の間で計算されますが、昔はこれが二・五とか三ぐらいございました。つまり、一兆円公共事業をすれば、三兆円あるいは二・五兆円GDPがふえる。ところが、私の計算で、それがほとんど一兆円ぐらい。一兆円出したところで、たかが一兆円ぐらいしかふえない。これくらい乗数効果が日本全体では減ってきております。その中で地域を考えますと、北関東から関西のあたり、このあたりは第二次産業、第三次産業では高くなっております。  しかし、その場合に、どういうふうに国民の方に納得していただくかと申し上げますと、それぞれ行われました公共投資がどの程度その地域の民間経済活動を活性化させたか、あるいはそこの民間投資がふえたか、そして民間消費がふえたか、こういうことをやはり国民の前にお示しすることではないかと思います。これまでは景気対策としていろいろな公共事業が行われてきておりましたが、その効果は本当にあったのかどうか。  そして、私は、北関東から関西だけをやれと言っているわけではございません。そのほかの地域をやる場合にも、やはり、それぞれの先生が地元でごらんになって、どういう社会資本が本当に民間経済活動を活性化させ、そこに民間消費なり投資を出すか、こういうことが重要ではないかと思います。  だから、そういう意味では、それぞれの地域の投資そして消費といった民間経済活動の増分、増加率、こういうものを見ることではないかと思います。
  26. 西田猛

    ○西田(猛)委員 ありがとうございました。  それから、同じような御意見金森先生もISバランスに言及されて、国内において中央政府地方公共団体が借金をしている分については、その問題点についてもう少し積極的な意味合いを持っていっていいのではないかというふうな御意見を開陳されまして、私も非常に傾聴に値する御意見だなというふうに思いました。  それで、続きまして、糸瀬教授神野教授が、社会的なセーフティーネットの話をされたのでございます。私もその点については大賛成でございます。したがいまして、それがゆえに我々自由党としてはこのように考えております。何も福祉の問題はこの四月一日からできる介護だけが問題なのではなくして、特に高齢者医療、それから基礎年金、それから介護、この三つの社会保障のネットがそろって初めて社会的なセーフティーネットができたのではないかなと。  したがって、六十五歳以上あるいは七十歳以上になればこのような社会的なセーフティーネットがあるから、働けるうちはいろいろなことをやってくれ、何度失敗しても何度でも挑戦して、そういうことが日本の活力を生み出すのではないかなというふうに私も考えておりますし、糸瀬教授神野教授もそのようにおっしゃったのではないかなと思っております。  そこで、両先生にお伺いしたいのでございますが、基礎年金、それから高齢者の医療、介護については、人間だれしも年をとるのでございますから、人間だれしもが受けるサービスでございます。してみれば、保険というのは、大手保険会社の宣伝ではございませんが、入った人だけ守ってあげるというのが原則でございますけれども、だれしもが受けるサービスは財政支出で行うというのが財政の基本ではないかなと私は思っております。したがって、この基礎的な社会保障の三つのアイテムについては財政支出で行う。  そうしたら財源はどうなんだとくれば、やはり消費税をもってこれに充てるしかないのではないか。この点については、糸瀬教授がレジュメの中で指摘しておられます。財政赤字問題を解決するための三つの方策の一つとして、外形標準課税の導入による課税ベースの拡大というふうなことが行われていいのではないかと。私もこれは賛成でございます。  ただし、では、その外形標準課税の課税標準をどうするのかというところが非常に問題でございまして、店舗数にするのか従業員数にするのか、あるいは売上高にするのか。それぞれに不公平がございましょう。私は、一番公平性を担保できる課税標準としては付加価値ではないかなというふうに考えるんですね。そうすると、付加価値に着目した外形標準課税であれば消費税とどこが違うんだという議論に当然なってまいります。  したがって、我々は、やはり消費税を拡大して、そうしますと、ここで誤解を解かなければいけないのですが、例えば、事業主が負担しておられる社会保険料、これが解消されるわけでございます。消費税で基礎年金や介護や医療を賄えば、事業主のそういうものに対する社会保険負担がなくなる、その分を外形標準課税で課税対象にさせていただければいいではないかなということを我々は考えているのでございます。  この税制構造の改革の点について、それとネットの点について、糸瀬教授神野教授から御意見を伺いたいと思っております。
  27. 島村宜伸

    島村委員長 まず、糸瀬公述人。  恐縮ですが、お二人で二分しかございません。
  28. 糸瀬茂

    糸瀬公述人 基本的には西田先生のお考えと軌を一にするところが多うございます。  ネットの部分については、今まで日本の考え方というのは、企業を倒産させないとか失業者を出さないとか、そういったところに重点が置かれていたんですが、倒産しても再復活ができるとか、仮に失業しても再挑戦ができるとか、そういった理念に基づいたセーフティーネットの構築が必要だと思います。  それから、消費税、外形標準課税、これはどちらがいいと今すぐ言えるものではないんですけれども、年金等の保険について消費税化するという方向については、私も賛成です。それから、外形標準課税でやるのであれば付加価値、これも賛成です。そうすると、消費税との関連でどちらがいいか。実質的に差がなくなることも事実で、既に外形標準課税を導入した国々においてその見直しが始まっていることも事実ですし、この辺はこれから十分検討するべき点ではないかと思います。
  29. 神野直彦

    神野公述人 委員長のお話で、時間がないようですので、ちょっとおわかりにくいかもしれません、私は抜本的なことを考えておりますので。  税方式とか保険方式というのは、実は私はよくわからないんですね、どういうことで言われているのかというのが。世間でです。先生がおっしゃったという意味ではありません。  それで、普通の場合には、地方政府に納めれば地方税、中央政府に納めれば国税、社会保障基金という政府、これは普通独立しているんですね、この独立した政府に納めれば社会保障負担、コントリビューション、こういうふうに言われているものですので、そこの関係を言っているのか。  多分、先生はそうではなくて、むしろ、保険方式だと保険を払わない人間が排除されてしまうから、そういったことを排除しない方式を税方式というふうにおっしゃっているのかなという気がいたします。  私の考え方では、この三つの役割をきちっと整理した上で、社会保険というのは、これは最低限を保障しなくていい。言いかえれば、年金でいえばすべて所得比例でもって構わない。拠出差は自分所得比例でやって、すべて所得比例で構わない。そのかわり、ミニマムペイション、これは生活保護に合わせて人間の最低生活を保障するミニマムペイションをつくって、それを線を引くとちょうど三角形のところが出てきますね。ここを中央政府が国税で補てんしてやればいい。社会保障負担の方は、相互に協力してお互いの賃金を保障し合いましょうね、老齢という正当な理由で賃金ないしは事業での所得を失ったときに保障し合いましょうねと言っているわけですから、比例で構わない。その何%を比例でやるか、つまり、六〇%まで保障するか七〇%まで保障するかというのは参加者が決めればいい。最低限度は、国民が全体でミニマムをどこに保障するかというのを決めればいい。この二つを組み合わせればこの問題は一挙に解決するんだというのが私の考え方でございます。
  30. 西田猛

    ○西田(猛)委員 ありがとうございました。
  31. 島村宜伸

    島村委員長 次に、原口一博君。
  32. 原口一博

    ○原口委員 民主党の原口一博でございます。  四人の先生には、きょうは大変貴重な御意見をいただきまして、本当にありがとうございます。  私は、大きく分けて二点について御質問をさせていただきます。  一つは、あるべき金融の姿ということでございます。  糸瀬先生にまずお伺いをいたしますが、この間の金融制度改革、このことが一体どういう状況をもたらしたのか。私は、金融再編のやり方が逆であったのではないかというふうに思っています。  委員長のお許しを得て、資料とパネルを使わせていただきます。
  33. 島村宜伸

    島村委員長 どうぞ。
  34. 原口一博

    ○原口委員 きょう、簡単なパネルを持ってまいりましたが、本来であれば、問題銀行特定して、経営権を掌握して、経営責任を追及して、それから、それでも足りなければ公的資金を導入する、こういうやり方をやるべきであったはずですが、我が国の場合は残念ながらこうなりませんでした。むしろ、公的資金の導入が先にあって、経営責任の追及や経営権の掌握は非常に後ろに来てしまいました。このことが国民全体に対して、銀行に対する不信やあるいは政策運営に対する不満をつくってしまった。私は、これを早期に解消することが日本経済あるいは財政の再建にとっても大変大きなポイントだというふうに思います。  今回、ペイオフが延期をされました。その政策目的は一体何だと先生は思われるのか。そして、きょう御陳述いただきましたように、八兆円問題、私も二回にわたってこの場で取り上げさせていただきました。日本のマーケットというのは非常に特殊なんだ、競争していても、だれかが出てきて、政府が出てきて助けてもらうんだ、こういうメッセージが送られるとすると、これは大変不幸なことであります。このことについてどのようにお考えなのか。  そして三点目は、預金保険法の改正を今政府は考えておられますが、実質、システミックリスクが起こる場合については、一定の制限を設けて、また政府の裁量でもって救済ができる、そういう法律の内容になっています。これは、実質、まだこれから審議がされますけれども、ペイオフを無限延期したこと、大きな銀行であれば、システミックリスクがあったら必ず政府は助けてくれるから、そこに資金が流入するのではないか、こういうことを考えておりますが、三点について、糸瀬先生の御見解をお伺いしたいと思います。
  35. 糸瀬茂

    糸瀬公述人 金融の話でございますので専門分野なのですけれども、基本的に原口先生の御指摘に賛成する部分が多うございまして、金融システム克服のためのプロセスがどこかでボタンのかけ違えがあったのじゃないかという気はしております。  私も個人的な立場で、九六年、七年ぐらいから、まず検査があるべきで、それで問題銀行を峻別して、本当に再生の見込みがある重要な銀行については救うけれども、そうじゃないところは市場から淘汰してもらう、そういった意見を展開しておったのですが、結果的には公的資金の導入が先になりました。  これはある意味でやむを得なかった事情もあると思います。当時は、野党三会派は民主、自由それから新党平和だったと思いますけれども、ここの共通認識、それから自民党の共通認識も、ここまで危機的な状況である以上は公的資金導入を先にやっても仕方がない、これはその意味で仕方がなかったんだと思います。  ところが、その時点で二つ約束事があったのがほごにされておりますのが、十分に存続できる強い銀行に公的資金を導入するというはずだったのですけれども、結果的にほとんど横並びの状況で、本来ですと市場から退出してしかるべき銀行を含めて横並びの注入がされたというのが事実だと思います。この辺の峻別がなされなかったことは、反省点として残すべきだと思います。  それからもう一つ、長銀もそうですし日債銀もそうですけれども、国有化した後にどういった借り手を保護するかというところについても、健全な借り手については保護するということだったのですが、これも現実問題としてそこの峻別が行われておりませんで、ほとんどの借り手をそのまま保護しております。  今般、長銀のリップルウッド・ホールディングス社への譲渡において三兆六千億円の公的資金が投入されたということが国民的関心事になっておりますけれども、その一つの言われ方は、例えば東京都知事の石原慎太郎さんなんかは、三兆六千億円も公的資金をつぎ込んで長銀みたいな銀行を救って、あげくの果てにアメリカのわけわからぬ会社に持っていかれていいのか、そういった言い方をしておりますが、この三兆六千億円がなぜ必要だったかというと、長銀を救うためではなくて、長銀の借り手を保護するために必要だったわけですね。しかも、リップルウッドへの譲渡においては、リップルウッド社が今後の二次損失を負担しなくて済むように預金保険機構がその補てんをする、そういった特約までついております。  一事が万事、日本金融システムの危機対策というのは、実は銀行を救っているようで借り手を救っているというのが現実だと思うのです。ここにこれから何らかの基準を持っていく必要があるというのが、まず第一の問題意識です。  それから、モラルハザードの問題があります。  この間の石原都知事の問題提起、個人的に問題提起として私は高く評価しておるのですけれども、非常に一市民として驚いたのが、一般国民銀行に対する批判が非常に根強いということですね。これだけ銀行が悪者扱いされて、銀行を悪者扱いすれば東京都知事がリーダーシップを発揮したように見える、これは非常にいびつなことだと思うのです。  その一つの理由が、やはり銀行側の努力が非常に乏しいというのがあると思います。本来、公的資金を投入されるのであれば、現経営陣は少なくとも全員退いて責任をとるべきなのですが、そういった経営責任を明確にしている役員陣はおりません。この辺が非常に大きなモラルハザードになっております。  それと、あえて付言させていただきますと、最近合併報道が相次いでおります。みずほ銀行もそうですし、それからさくら、住友もそうなんですが、合併の計画さえ発表すれば何とか危機を乗り越えられるだろうというところで玉石混交の合併が行われて、実はその後の具体的な合併に向けたプロセスがほとんど滞っている。この間の中央信託と三井信託の合併が破談になりかけた、そういった報道もありましたけれども、この辺でも銀行の経営者の現実に対する認識は非常に甘いのじゃないかと思います。  それから、預金保険法の改正が十八日の閣議で通ったと思うのですけれども、これはあらゆる問題を含んでいるという認識が正式だと思うのです。金融危機対応会議というのが、今度首相を議長に、それから監督庁長官とか日銀総裁とか大蔵大臣で構成されるのですけれども、運用が、ここに客観性、透明性がもし担保されないとすると、システミックリスク発生という大義名分のもとにありとあらゆる銀行を救いかねない、そういった危険性はやはりあると思います。  そこで、アメリカでも確かに、大き過ぎてつぶせない、ツービッグ、ツーフェールという原則はあったのですが、これは過去形で、かつてはあったのですけれども、その後否定されております。これをやるとモラルハザードが蔓延するということで、九一年度の預金保険公社改革法で一たんこれを否定して、原則禁止にして、例外的に大統領が財務省の提案に基づいて救うということがあるわけですけれども、この例外部分の適用にどれだけ客観性、透明性を与えていくかというのが今後の課題です。それがないと本当に安易なペイオフの無限延期につながりかねない、そういった認識を持っております。
  36. 原口一博

    ○原口委員 全く同じ認識を持っています。国民の中に不満がたまり、そして不公平感がたまるときに、そこに起こってくる結論は非常にわかりやすい結論に飛びついてしまう。これは民主主義の一つの危機だというふうに思います。政治の側も、銀行やさまざまなものとの癒着を指摘されることのないような襟を正した姿勢が、モラルハザードを正す私たちの大きな自覚につながるものだというふうに思います。  次に、財政構造改革財政の問題に入っていきたいと思います。  財構法が制定されて一番痛んだ、一番不利益を得た人たちはだれなのか。そしてその中で、財構法が凍結されても、医療やあるいはさまざまなセーフティーネットの部分は、結果的には、国の財政としてはもとに復活していません。そして、今の低金利の中で最も痛んでいるところはどこなのか、また、今度の年金改悪で最も不安に駆られているところはどこなのか、そこを明らかにしなければならないというふうに思います。  そこで私は、金森先生がおっしゃるように、ストップ・アンド・ゴーの財政政策をいつまでも続けるべきではないというふうに思います。しかし、先ほど糸瀬先生がお話しになりましたように、今お手元委員長のお許しをいただいて資料をお配りしていますが、これが平成十二年度予算案です。実際に公債発行額が三十二兆円に上り、政府がいわゆる公債を発行しないとすると、実際に使えるお金はもう二十三・四兆円ということでございます。一年間で借りるお金を百年で返しても返し切れない。税収の弾性値の資料がその次の資料2でございます。この昭和から平成にかけての税収の弾性値、つまり財政の規律や財政の計画を持とうと思っても、なかなかアップ・アンド・ダウンが激し過ぎて厳しいというのがここに出ています。  そこで、私は、お二人の公述人がお話しになりましたように、もう財政再建のターゲットを示すべきだというふうに思います。単なる赤字の削減を財政再建と間違えているから、そこにはやはり、金森先生がおっしゃったように、また不況のどん底に落ちてしまうという恐怖があるわけでありますが、例えば、冒頭、これは吉野先生がお話しになりましたように、インフラの整備をするためにも空港の使用料を安くしたい、そう思ってみても、そこに予算をつぎ込む手だてはないわけでございます。  実際に日本経済を再建させるためには、財政構造の改革にしっかりと踏み込むべきだというふうに思うわけでございますが、糸瀬先生と吉野先生の御意見をお伺いしたいというふうに思います。
  37. 糸瀬茂

    糸瀬公述人 実は、吉野先生資料の五ページに、人様の資料をお借りするわけではないのですが、これまでの政府景気対策の一覧表がございます。既に九次にわたる経済対策を打ってきまして、それに打ち出した金額が百二十兆を超えているというのが今の現実なわけですね。この間の、一時細川政権もございましたけれども、政府の考え方の基本にあるのは、公共事業中心とした業界にてこ入れすることによって、そこで経済の波及効果をねらって景気を何とかよくしよう、そういった願いがあったわけです。  これを九回にわたって繰り返して、その結果我々の手元に何が残ったかというと、二つの事実が残りました。その一つが、二〇〇〇年度末ベースで六百四十七兆という公債発行残高ですね。それから、もう一つの何が残ったかの事実ですけれども、景気がよくならなかったという事実が一つ残ったわけです。そうすると、今までのやり方でよかったのかどうかというのは、やはりどうしても考えざるを得ない時期にもう来ているんだと思います。  それを考えていく上では、六百四十七兆をほうっておけば、多分二〇〇六年ぐらいには国と地方合わせると一千兆円という数字になるわけですけれども、これをどう解決の道筋を示すのかは、やはり示さなければいけない時期になると思います。  先ほどの陳述のときと繰り返しのコメントになって恐縮なんですが、確かにアメリカは、百七カ月に及ぶ景気回復によって財政の危機的な状況を脱することができましたけれども、それは、アメリカ財政赤字規模がGDPのたかだか六三%という水準だったから可能なことであって、既に対GDP比で一二〇%を超えている水準から、景気回復だけでやるのは非常に難しいと思います。  これも繰り返しになりますが、バブルのピークで税収が六十一兆です。それに対して、今、八十五兆使っているわけです。今、税収が五十兆を切っている。これを景気回復だけで六十兆に持っていくことだけでも非常に至難のわざで、そこだけに依存することはできないわけですね。  それと、国民が実はこのことに気づき出したというのが、政治家の立場にとっては非常に重く受けとめていただきたいことだと思うんです。  私ごとで恐縮ですが、特に地方に講演に行く場合に、つい一、二年ほど前までは公共事業を懇請するような空気が強かったんですが、明らかに公共事業依存度が高いような地域においても、市民の関心がここに移ってきております。我々が消費お金を使えないのは、国がどうやってこの問題を解決するかが見えないからだという声が実際聞こえてきます。  そうすると、私は決して、今すぐ緊縮財政に持っていくべきとか今すぐ増税をとるべきとは言っているわけではなくて、使うお金の中身をきちんと考えた上で、それで財政再建についてももう少し具体的な道筋を示すことが必要だと思います。
  38. 吉野直行

    吉野公述人 今原口先生の御指摘のように、やはり日本で必要なことは構造改革、特にいかにフレキシブルに予算を配分できるかということであると思います。  アメリカとかイギリス、先ほども申し上げましたけれども、いろいろなところで規制緩和をいたしておりまして、それがやはり、規模の問題ではなくその中身、そしてそれがいかにフレキシブルに行われるかということが重要ではないかと思います。
  39. 原口一博

    ○原口委員 お二人の公述人からお話しになりましたように、私たち、政策はやはり構想力だと思います。そして、そのタイミングと説得力だというふうに思います。  財政構造改革をやったときには、まさに世界の経済の歩みを、あるいは日本経済状況を見誤りました。それは、金森先生初め皆さんがお話しになったとおりであります。そして、糸瀬先生がおっしゃるように、あのときの状況と今の国債比率、これも大きく違います。とすれば、新しいフェーズでもって議論をしていかなければならない。  私は、二兎を追うというお話をされましたけれども、やはり、この二つの命題を相反する命題だと思ってとらえてきたところに日本の混迷の大きな原因があるというふうに思います。私たちは一刻も早く財政構造改革のプログラムを出すべきだ。しかもそれは、少しロングレンジの、長いレンジでもって財政構造改革のプログラムを出すべきだ。  今中心にやられています景気対策は、吉野先生がお話しになりましたように、従来型のものが非常に多い。それに対して私たちは、例えば競争が今倍になっています。企業の寿命も短くなっている。そうすると、好むと好まざるとにかかわらず、働く人たちはその間を移動しなければいけない。  日本において離職者のリスクというのは、大変、そのリスクも高いし、コストも高い状況であります。私たちは、住宅や年金や賃金の問題、さまざまなそういう問題に投資をすべきである。さらに、金森先生がおっしゃったように追加が必要だとするのであれば、そこにこそ投資をすべきだ、セーフティーネットを張ることにこそ投資をすべきだというふうに思います。  そこで、神野参考人にお伺いをいたしますが、スウェーデンのモデルをお話しになりました。スウェーデンに私もこの間行ってまいりました。私は、人が大切にされているなというふうに思いました。  サムハルというスウェーデンの企業に参りましたら、人口九百万人のスウェーデンで三万人の雇用がされている。三万人のうちの二万八千人は障害を持った人たち。チャレンジドと私は申します。神様から挑戦する課題をもらった人たち。その方々がお互いに協力をし合って、精神障害、身体障害、知能障害の方々が協力をし合ってお仕事をされていました。一般のスウェーデン人の所得の約九割の所得を得ておられました。ですから、五千億補助金をつぎ込んでいますが、六千億売り上げがある。一千億のリターンが来ている。この形に日本政府支出も変えていかなければいけない。  日本の場合は、今、各企業に行くと、この基準に来ない人はどうぞ帰ってください、もうやめてください、そこに多くの不安があります。私ごとで恐縮でありますが、私の師匠である松下幸之助は、どんなに厳しいときでもただ一人の離職者も出さない、解雇者も出さない、そういうことを宣言いたしました。そこに安心が生まれ、そこに次なる躍動が生まれる。これは先生のおっしゃるとおりだというふうに思います。  そこで、質問でありますが、世界の中でこれほどパラダイムチェンジが行われているときに、教育の予算をかくも削減し、そして教育について確たるビジョンがなく、むしろ逆に、公的な教育はエージェンシーという形で揺らしている。これは教育の基本を少し誤っているのではないか、スコラというものの基本を誤っているのではないか。むしろ、先生がお話しになるように、今ある人材をどうやってリカレントしていくのか。  私は、橋本内閣のときに、金森先生と同じ議論を橋本さんとやりました。つまり、右のポケットと左のポケットが違うだけだ、だから余り心配する必要はないんだと。これは、私はひとつ検証すべき必要があると思います。  ただ、左のポケットに入っている政府が持っているお金が、やはりその中で劣化していることも事実でありますし、世界経済がグローバル化し、金融がグローバル化していくと、国内だけの移動で済まなくなる。先ほどお話しになりましたように、国債が大量発行されると、いつまでも日本にそのお金がとどまるという保証はありません。  ですから、質問に入りますが、教育に投資をする、セーフティーネットに投資をする、そのことについて神野先生がどのようにお考えなのか、お話を伺いたいというふうに思います。
  40. 神野直彦

    神野公述人 私がこれから申し上げたいことは、先生と同じようなことだと思いますが、パットナムというハーバード大学の教授が、イタリアの南部と北部を研究して、南部よりも北部の方が人間の協力関係がきちっとしていて、今お話しのような、スウェーデンでごらんになったような、助け合いのメカニズムがきちっと働いているから繁栄をもたらすんだということを実証しております。つまり、協力こそ繁栄をもたらすということを実証いたしておりますので、私も、先生がおっしゃるとおりだと思います。  教育も、教育を完全に市場に任せますと、どうしても所得間格差が広がります。重要なことは、だれもが今起こっているIT革命にアクセスできるような能力をつけさせることだと思います。先ほど来の繰り返しになりますが、学校教育だけではなくて、再教育がかなり重要になってくるだろうというふうに考えています。  それから、日本はともすれば職業教育というのは見忘れがちですけれども、もちろんこれも重要になってまいります。それから、そういった教育や研究開発の成果、例えば、スウェーデンは世界で一番GDP比で研究開発費が高いわけで、三・九%だと思いましたが、日本は、私の記憶に間違いなければGDP比で二・八にしかすぎません。こういう研究開発から、できる限り中小企業中心とした企業にシフトしてあげて新しい産業構造に乗れるようにしてあげる。重要なことは、新しい産業構造に乗り外れると結局景気回復というのはあり得ないということだろうと思います。  そのキーポイントというのは、人間が活力を出すこと。ごらんいただいたと思いますけれども、スウェーデンでは、経済力を強めるために環境をよくすれば、結局病気もせずに人間が一生懸命働けるんだということで打っておりますので、重要なことは、人間がやる気を出し、活性化しないと経済というのは活性化しないんだという本質を見忘れないで政策を打つことだろうというふうに考えています。
  41. 原口一博

    ○原口委員 アメリカの大統領選挙においても、公約の第一に来るのは、どういう人材をどのようにしてつくるかということであります。私は、そこにこそ、今先生がお話しになりましたように、政策の重点があるべきだというふうに思います。  さて、やはり新しい産業は情報と知識を中心としたものだというふうに思います。この産業を育成するためにボトルネックとなっているものは一体何なのか、そしてそれをブレークスルーするための政策は何なのか、これを吉野先生、そして糸瀬先生、お二人にお伺いしたいというふうに思います。
  42. 吉野直行

    吉野公述人 昔の産業政策の場合には、政府がこういう産業を興そう、追いつけ追い越せ型でやってきたと思うんですが、今後の産業政策は、やはり市場の中から強いものが生き延びていく、そういう形の産業政策であるべきだと思います。  そのためには、金融の構造が、陳述の中で申し上げさせていただきましたけれども、銀行から流れるということばかりでなく、リスクをとりながらそこにお金を流せるような市場型間接金融、そういうものをつくっていくという資金流れで、やはり情報通信産業そのほか、市場から成長しそうな産業にお金流れる、中小企業にも流れる、こういうシステムが必要ではないかと思います。  そのためには、まず一つは、金融制度を今までの銀行中心から、やはりもう少しマーケットに密接した投資信託そのほかの商品日本人の手元で買うことができる。我々は今まで、多くの場合には近くに店舗があるところで預金あるいは貯金をしておりました。ですから、そういう我々の身近な店舗でいろいろな金融商品を売ることによって、個人がそこから選択し、それのお金リスクテークとしての産業に流れる、こういうことがまず一つ必要ではないかと思います。  それから二番目は、今原口先生が二番目に御指摘された人材も関係すると思います。それは、アメリカのような国ですと、非常にいい大学を出ても自分企業を起こす。日本ですと、大学を出るとやはり大企業に就職する、こういう形でそれぞれが今までの仕切られた中でやっていたわけでありますが、アメリカ情報通信産業を見てみますと、有能な方が自分で会社を起こす、企業を起こしながら新しい産業をつくっているわけです。ですから、人材の育成と同時に、そういう人にお金流れるような金融システムにするということではないかと思います。     〔委員長退席、町村委員長代理着席〕
  43. 糸瀬茂

    糸瀬公述人 情報産業を日本において育成していくIT革命を推進するためには何が必要かという御質問と理解いたしましたが、三つ必要だと思います。  一つは情報教育の部分で、これは繰り返しになりますので簡単に申し上げますが、今この分野をきちんと教育できる教員は、大学においても高校においても非常に少ない状況でございますので、この分野において現役のこの世界の人たちをさらに活用する方法が一つ必要だと思います。  二つ目は、今吉野さんの話と重なりますが、ファンディング、資金調達の話ですね。これは、幸いマザーズもできましたし、それからナスダック・ジャパンもできておりますので、かなり道筋はついてきたと思います。ただ、マザーズについてはいろいろな問題がありますので、この辺は各論になりますけれども、ここの上場基準等についてはきちんと見直す必要があることも事実です。  三つ目が、情報コストを劇的に下げる必要がやはりあるということです。NTTがかなり下げてきてはいますけれども、日本情報通信のコストがアメリカに比べて大体四分の一と言われていますけれども、同じ時間に伝達できる情報量を掛け算すると、まだ四十倍ぐらいアメリカに比べて開きがあるわけですね。これを劇的に下げないと、ビジネスの世界においても、それから個人でやるインターネットの世界においても、ショッピングの世界においてもできないわけです。  なぜ下げられないか。これも釈迦に説法ですけれども、NTTの雇用の関係があるわけです。かつて三十万人いた職員が今十三万人台まで減っていますけれども、その減った十七万人というのはNTTの関連会社できちんと雇用されているわけですね。ここに、メスを入れるという言葉は適切ではないと思いますが、トレードオフになっているのは、NTTにおける雇用と情報通信革命の進展が両てんびんにかかっているという事実は、やはり認識を持つべきであります。  NTTの株主はだれかというと、五三%は国なわけですね。国が株主なんです。過半数の株を持っている国が、日本の将来にとって本当に必要な政策は何かということを考えていくと、もしかすると、国も、郵政省とNTTに対して、もっと劇的に下げる方向に議論を持っていって、そのかわり雇用は別の角度で支援しましょうという方向に切りかえていく必要があるんじゃないかと思います。  以上です。
  44. 原口一博

    ○原口委員 お二人に、ITに向けての隘路とブレークスルーの方法を教えていただき、本当にありがとうございます。  私は、雇用という問題は、やはりセーフティーネットがあってこそ雇用の流動化というものが行われるべきであって、先に雇用の流動化が来て、そしてセーフティーネットがなければ、日本のような均質な社会においては大変な社会混乱をもたらすというふうに思っています。一円教育費を削ると七円分、社会不安としてそれが七倍分の悪い効果を出す。私は、日本の社会の本質を見きわめながら構造改革をやっていくべきだというふうに思います。  時間が限られていますので、財政健全化に向けてのプログラム、きょう糸瀬先生出していただきましたが、私は、単なる赤字削減を目標にすべきではないというふうに思います。単なる赤字削減が目標になってしまうと、そこには将来の大増税が来てしまいます。そうではなくて、私たちは、五年間ぐらいはむしろ増税をやらずに、歳出構造、歳入構造の改革、規制の緩和、これでもって経済を立ち直らせる、このことが必要であるというふうに思います。  アブハチ取らずという日本のことわざを引いていただいて、大変勇気をいただきました。神野先生に、最後、あるべき健全化のプログラムについてお話をいただきたいというふうに思います。
  45. 神野直彦

    神野公述人 私は、また繰り返しになりますけれども、あえて増税をしても構わないというぐらいの気持ちで臨んでいいんだろうというふうに思います。  ただし、その場合には、支出をどういうふうに打つかということが一つ重要になりますし、どういう税金で増税をしていくのかということが問題になってくるだろうというふうに思います。現在ですと、消費を萎縮させてしまうような形で増税をすべきではないということですね。  それからもう一つ。現在の税構造でいきますと、これは、高橋是清が昭和恐慌のときに一番苦労したことでありますけれども、その当時は、法人税とか所得税のウエートが小さかったものですので、景気回復したときに自然増収で税が上がってこないのですね。そうすると、どうしてもそれぞれのことに増税に打って出ざるを得ない。これはかなり至難のわざになります。  ですから、今の場合に、残念ながら日本は既に法人税と所得税を減税しておりますので、景気回復したときに、税制の所得弾性値が低くなっておりますから、自然増収に頼って財政再建ができるかというと、これは甚だ疑問なんですね。  そこで出てくるのは、どうしても消費税に頼るということになるわけですが、これは多分至難のわざでしょう。というのは、私の調査では、国民は、一番増税すべきではないという税金消費税だと考えているわけで、これを説得するというのはかなり難しくなるだろう。そこで、どういうふうな構造を考えながら歳入を考えていくのかということが一つだと思います。  それから、おっしゃるとおり、重要なのは歳出でして、お手元のスウェーデンの産業構造を見ていただければわかりますが、明らかに知識集約的な産業は伸びているのですね。そういうところが伸びるような政策を打って歳出構造をがらっと変えるということが重要だと思います。
  46. 原口一博

    ○原口委員 ありがとうございます。終わります。
  47. 町村信孝

    ○町村委員長代理 次に、矢島恒夫君。
  48. 矢島恒夫

    矢島委員 日本共産党の矢島恒夫でございます。きょうは、公述人の皆さん、大変貴重な御意見ありがとうございました。  まず最初吉野先生にお聞きしたいのですけれども、今の景気の低迷の非常に重要な一つとして設備投資が非常に伸び悩んでいるということがあることは、私もそのとおりだと思います。財政支出の拡大にもかかわらずなかなか民間設備投資が伸びないという事態が進んでいるわけですが、そういう中で、いわゆる公共投資の効率化という面でお話をいただいて、特に地域配分の問題というあたりを先生にお話しいただきました。  私は、これは同じ地域配分の問題がより詳しく出ていた先生の論文が日本経済新聞に出ましたので、それを読ませていただいて、なるほどなという部分もありますし、同時に、その中で、生活関連などのストックに力点を移すべきだという小見出しがあります。この辺についての先生の御意見を。
  49. 吉野直行

    吉野公述人 矢島先生、どうもありがとうございます。  現在の景気の大きな要因は、やはり設備投資が非常に低下しているということが一つの原因だと思います。ですから、景気回復させるためには、先ほどから申し上げていますが、民間経済活動を活性化させるような、そういう内容のものでなくてはいけないと思います。  それから、公共投資の中身それから地域でございますが、地域では、大体関東から関西のあたりが大きいということを申し上げました。  それから、第二次産業と第三次産業、第三次産業はサービス産業関連あるいは生活関連と申し上げて結構だと思いますが、こういうものの効果は割合高くなっております。  なぜ第三次産業のようなところの効果が、ハードのものをつくるのではないのに乗数効果が大きいのだろうかというふうに申し上げますと、例えば、街路が整備される、そういたしますと金融機関なりサービス産業がそこに立地することができます。そういたしますと、人の往来がその地域に激しくなります。そこで、やはり皆さんが消費活動を行い、そしてそこの街路ができたことによって企業設備投資をする、こういうようなことではないかと思います。  ですから、そういう意味で、第二次産業、第三次産業、そして生活関連サービス産業の公共投資も大都市ではきくというようなことでございます。
  50. 矢島恒夫

    矢島委員 糸瀬先生にお伺いしたいと思います。  先生、先ほどのお話の中で、レジュメの方でいきますと二ページ目になりますが、五の、何をなすべきか、緊急課題は二兎を追う、こういう表題でお話しいただきました。米印の二番目に、景気回復個人消費の喚起、これはいろいろな不安の解消が必要だ、こういうお話がございました。  もちろん、現在の財政赤字の問題に対する将来不安とか、あるいは老後の不安だとか医療の不安だとか、いろいろあろうかと思います。その中で、一つの大きな現実的な不安として雇用不安というのがあると思うのです。先生が「東洋経済」の中でお書きになっている企業のレイオフの問題、いろいろ取り上げていらっしゃいました。とりわけ、アメリカ企業あるいは政府やり方というものがいろいろと例として挙げられておりました。  確かに今リストラがどんどん吹き荒れる、失業者がふえるというような状況の中で、日本におけるこの問題に対する企業のとるべき問題、これらについてお考えがありましたらお話しいただきたいと思います。
  51. 糸瀬茂

    糸瀬公述人 私は時々レイオフ推進派と勘違いされることが多いのですけれども、決してそうではございませんで、最近非常に印象に残った言葉が、ソニーの出井さんが経営者の責任とは何だということで、成長、熟成した分野で雇用が吸収できなくなるのであれば、新たな成長分野をつくってそこに労働力を移転することだということを書いてございました。経営者の第一の責務というのは、可能な限り雇用を維持するように常に成長分野をつくっていくことが重要な点だと思います。  ただ、アメリカについて一言付言させていただきますと、雇用の流動性がすぐにある世界ですから、リストラができるのですね。ところが、日本はそれがないのです。そのない理由が、非常に逆説的になりますけれども、日本の労働法制とか解雇に関する法制が、理念として、今いる従業員を可能な限り失業させないという観点で法体系が整備されておりますから、最後の最後まで守ろうとしているわけですね。  そこを、例えば整理解雇の四要件というのがありますけれども、リストラをするに当たっては、可能な限りそれを回避した努力を示さなきゃいけないわけです。可能な限りリストラを回避した努力が何になるかというと、例えば新卒を採らないことがその努力として証明されるわけですね。ですから、既にいる従業員をリストラしたければ、それを回避した努力を示す、その努力として新卒を採らないとか、非常に悪循環が起きています。  この辺を変えていくとか、それから、これも逆説的ですけれども、契約社員を一年ではなくて複数年契約を認めていくとか、流動性を担保していく方向に考え方を変えていく必要もあるのじゃないかと思います。  以上です。
  52. 矢島恒夫

    矢島委員 続いて糸瀬先生にお聞きしたいのですが、先生の先ほどのお話の中で、最後の部分だったので、時間がなくなってあるいははしょられたのかもしれませんが、二ページの一番最後の歳出カットの問題です。三つの方策の中の一つとして歳出カットの問題が挙げられております。  私もこれは全く同感なのですけれども、むだなの意味とはというので、下に、持続的な経済成長に寄与しないとか、採算のとれないと。もしこの具体的な例でもございましたら、お挙げいただければありがたいと思います。
  53. 糸瀬茂

    糸瀬公述人 例えば、本州と四国の間に四つ目の橋は要らなかったのじゃないかとか、それからアクアラインはあれだけ通行料を取っても赤字になるのだったらつくらなくてよかったのじゃないかとか、そういったようなのが具体例なんですが、事前に費用効果の分析をした上で中身を検証すべきというところが申し上げたかった点でございます。
  54. 矢島恒夫

    矢島委員 神野先生にお聞きしたいのですが、私、先生が書かれた「システム改革の政治経済学」、なかなか私の不十分な知識では十分に理解できるわけではありませんが、読ませていただきました。  この中で、最初の「「システム改革」の悲劇」という序文がございまして、とりわけ市場の競争原理というものを絶対的なものとすることが、アンドリュー・デウィットの言葉を借りればというので、グローバルスタンダードではなくアメリカン・バイアスだ、こういうような記述がございます。  言うなれば、今日本に吹き荒れている、簡単に言えば弱肉強食的ないろいろな場面、金融あるいは税制そのほかの部分でこういうものを見ますと、こういう観点から、いわゆる競争至上主義的な経済システムというものについてどのように先生はお考えか、お聞かせいただければと思います。
  55. 神野直彦

    神野公述人 私は、社会というのは人間が共同生活する場ですので、当然協力して肌を温め合って生きていかなくてはいけない仕組みが盛り込まれていなければならないと思っております。競争の領域も必要なのですが、その競争の領域は民主的なコントロールのもとに置かれるべきであって、競争の領域を否定しているわけではなくて、競争の領域はむしろ逆にますます競争じゃなくなっているのが現状ですので、競争の領域というものではない協力の領域をきちっとつくらないと競争の領域は機能しないのだということを申し上げたかったということでございます。
  56. 矢島恒夫

    矢島委員 続いてまた神野先生にお聞きしたいのですけれども、二月の八日号の「エコノミスト」、きょうもお話しのセーフティーネットの問題で、とりわけ社会保障の問題で論文を書かれていらっしゃいます。  確かに、将来不安を一層深化させるような状況を何とかなくしていかなければならないわけですけれども、先生はその中で、現在、社会保障制度あるいは広く社会的セーフティーネットを強化するということの必要性、重要性を述べられていると思います。  そういう点で三つの政府体系などをお示しになっていらっしゃるんですが、今の日本状況の中で政治がとるべき最重点課題、具体的にお教えいただければありがたいと思います。
  57. 神野直彦

    神野公述人 繰り返しになりますが、まず、さまざまな課題を一挙に解決しようとすると、新しい産業が出てくること、そのためにはどうしても人々が安心できる社会的な安全ネットをつくって、それからもう一つは、新しい産業が出てくるようなインフラストラクチャー、人的な投資を含めたITのインフラ、この整備、これをきちっと一刻も早く充実すること、これが重要だと思います。  それで、忘れてはならないことは、繰り返しになりますが、人間がとにかく中心になる社会、これをつくっていくということを考えながら政策を打っていくことだろうと思います。
  58. 矢島恒夫

    矢島委員 恐縮ですが、また神野先生にお尋ねするんですが、「「絶望の島」に大借金でバベルの塔を築く危うさ」ということで、これも「エコノミスト」の中に書かれておる先生の文章ですけれども、この中で、最後の方ですけれども、今の二〇〇〇年度予算というものを見ると、どうもますます社会的混乱が深まるんじゃないか、バベルの塔の建設に神が怒り、言葉を混乱させたようにということをお書きになっていらっしゃると思うんです。  そこで、具体的にお聞きしたいんですが、先ほども、御意見の中にはミレニアムプロジェクトなどのお話が出ました。来年度の予算について、この部分で先生がお感じになっていらっしゃる具体的な問題、ございましたら。
  59. 神野直彦

    神野公述人 絶望の海に浮かぶ希望の島、絶望の島というのは、大恐慌のときにスウェーデンだけが大恐慌に陥らなかったものですので、ロンドン・エコノミストが、絶望の海に浮かぶ希望の島だというふうにスウェーデンをたたえた。それを今度は、今もまたスウェーデンは好況の中でよくなっているのに日本は悪くなっているという意味で使わせていただいたものでございます。  ミレニアムプロジェクトいうのは、私は、今回の予算の中で大変的を得た施策だろうと思いますが、いかんせん、ちょっと正確な数字は忘れましたが、二千数億だったと思います。これではいかに何でも新しい世の中はちょっとつくれないので、こういうところをきちっと出していただければということでございます。
  60. 矢島恒夫

    矢島委員 終わります。
  61. 町村信孝

    ○町村委員長代理 次に、保坂展人君
  62. 保坂展人

    ○保坂委員 公述人先生方、どうもありがとうございます。社民党の保坂展人です。  神野先生に伺っていきたいと思うんですが、スウェーデンの話、大変興味深く伺わせていただきました。私も、イギリス労働党が、トニー・ブレアのニューレーバーが総選挙で大きく勝った日に、その前後にたまたまロンドンにいて、教育問題の調査に行っていたものですから、多くの人たちが、今回の選挙の争点は教育だよということをおっしゃっているのを聞いて、日本にもそういう時代が早く来ればいいのになというふうに思ったところなんです。  昨年は、スウェーデンの教育大臣、トーマス・エストロスさん、当時三十四歳、今でも三十五歳ぐらいだと思うんですが、大変若い大臣でありまして、興味深いことをおっしゃっていました。  つまり、先生が詰め込む時代というか、先生が知識を伝授しますよという時代はもう終わりで、生徒たちが必要な知識を探す、そこによい刺激を、教師がむしろ生徒の横から刺激を与えてあげる、そんな転換が必要なんじゃないか。特に、IT革命、こういう時代の中にあっては、例えばインターネットやEメールなどについては、先生よりもずっと生徒の方がうまいよということもあって、ここはもう柔軟に、従来の教育の枠を変えていかなきゃいけない。そういうところで大変同感をしたわけです。  先ほど、予算がいかにも少ないというお話をされました。情報、コンピューター教育というふうに言われる分野でも、文部省の予算を見ても、全体で三十二億程度ですね、初等中等教育の中で。その中に先生を育てる研修の費用なども入っていますね。学校に行ってみますと、やはり従来型の概念にとらわれていて、教室に狭くパソコンが並べてあって、先生のパソコンが黒板の位置にある、こういうコンピューター教室が多いんですが、大体、型が古くなったパソコンがずらっと並んでいる、こういう状態でその限られた予算すらもなかなか生きていないんじゃないかという気がいたします。  そこで、スウェーデンの教育、こういうことに大胆に力を入れて、特にこの情報通信の分野で子供たちが最新の技術や知識に触れるようなどんな工夫があったのか、その点を伺いたいと思います。
  63. 神野直彦

    神野公述人 先ほどもお話がありましたように、ブレア政権も、教育を重視し、文化産業を戦略的産業にしながら進もうという政策を立てております。  スウェーデンは今教育に力を入れているわけですが、御指摘のように、私も教育に携わる者として非常に危機を感じているのは、今の子供たちは、どうしてこうなるんだろうということをますます考えなくなっているんですね。変化のときにはなぜこうなるのかと考えなくちゃいけないのに、このボタンを押すとこう反応ができるということさえ覚えていればいいということになってしまって、非常に不安を感じています。  子供たちには、どうして物事はこういう理屈で動くんだろうということを考えていく教育、今御指摘のスウェーデンの教育のようなことが重要だと思います。  スウェーデンはいろいろなことをやっております。学校教育も非常に重視しておりますが、先ほど言いましたリカレント教育では、社会人を年間二十万人引っこ抜いて教育をやっております。人口がわずか八百万人の国でございますので、いかに人員が大きいか。  それと、先ほど糸瀬先生からもお話がありましたけれども、世界的にいうと、ITの教育をする人数が、スタッフが不足しているんですね。そこで、スウェーデンは、六万人の教育者、教育スタッフ雇用計画というのを立てて、六万人雇用するという計画を立てております。この六万人という数字も、人口が八百万人であるということをお考えいただければ、いかに大きな量であるかということはおわかりいただけるだろうと思います。     〔町村委員長代理退席、委員長着席〕
  64. 保坂展人

    ○保坂委員 では、もう一問だけ続けてお願いしますが、今、例えば私ども議員の中でも、本当にベテランの方は墨をすって筆で書く、それが習慣になっておられる方もいれば、万年筆の方もいれば、若い世代だったらノートパソコンで、こういうふうに変わってきているわけですけれども、やはり世代差というのはどうしてもあると思うんですね。  今、小学校の現場へ行ってみますと、二十代の先生なんというのは二人か三人いればいい方という感じですね、ほとんど採用しませんから。言ってみれば、団塊の世代が大きな固まりになって、ずうっと若い世代がいない、こういう状況ですね。  それから、教員に対するコンピューター研修なんといっても、額に汗垂らしながら一生懸命パソコンを勉強するというような、年配の先生がやるよりも、やはり、日常的にコンピューターを使って、もう若いころからいろいろなことを試してきたという人が子供にダイレクトに入っていった方がいいと思うんですけれども、そのあたり、御意見を伺いたいと思います。
  65. 神野直彦

    神野公述人 ちょっと趣旨を取り違えて私が理解しているかもしれませんが、今重要なことは、教育スタッフそのものにもかなり能力のある人を集めていくということだと思います。この点は日本はかなり失敗をしていて、私のような者も教育者になっていることを見てもわかりますが、余り教育者に人材が集まらなくなっているのではないか。昔は、たとえ給料が貧しくても、使命感に燃えて集まったものですし、まだヨーロッパでは、オックスフォードとかケンブリッジを出ても、人を教えるということは非常にとうといことだということが浸透しておりますので、いい人材が集まってくる。  こういう点で、日本は、先ほど言いました私の議論で言えば、競争原理が入っちゃいけない領域まで入り過ぎていて、どうも人材の育成、養成がうまくいかなくなっているのじゃないかというふうに考えています。  ちょっと先生の質問を取り違えているかもしれませんが、差し当たりそういうことでお答えさせていただければと思います。
  66. 保坂展人

    ○保坂委員 私の先ほどの質問は、いわゆるスウェーデンの中でそれだけの人材を充てられているということに対応して、日本でもそういうふうにやるべきじゃないかということだったんですけれども。  では、最後にもう一点だけ伺いますが、財政構造改革の議論の中で、これは、予算に聖域なしということでどの分野も削るんだという、日本の場合は、前に行く場合も後ろに引く場合もみんな横並びで、こういう習慣がありますよね。  そうすると、こういう時代に、我々大変厳しい中で財政再建を目指していくためには、未来の子供たちや若者たちにむしろ投資をしていくんだということで手厚くしなければいけないんだと思うんですけれども、その辺について、スウェーデンの大胆な政策的な重心がそこにあったのかどうか。あったんだと思うんですが、そのあたりをお願いします。
  67. 神野直彦

    神野公述人 おっしゃるとおりでありまして、総枠はシーリングをかけておりますけれども、中身は、先ほど言いました強い福祉をつくるためにこの改革をやるんだと言っておりますので、人的教育、人的投資、環境、それから福祉、それからITのインフラの整備、この三つに重点的に配分をいたしました。
  68. 保坂展人

    ○保坂委員 それでは次に、糸瀬先生にお話を伺いたいんですが、これは、構造的な改革がもうどこから見ても必要だということ、ここは大体常識になってきていると思うんです。公共事業の分野で、橋、むだな道路、驚くような予算をかけて、ちゃんと通れる橋があるのに五十億とか四十億かけて橋がばんばかできる、こういうようなことも改革しなければいけない。もうむだなものはつくらないということは大事だと思うんですけれども、一方でまた、地方経済あるいはそこの地域構造そのものが、そういう公共事業という蛇口からどんどん仕事が流れてくることを前提に増殖してきたということがありますね。このあたりをどういうふうにいわば劇的に転換する方策があるのか。そこをしなければいけないと思うんですが、お考えをお聞かせいただきたいと思います。
  69. 糸瀬茂

    糸瀬公述人 先生がおっしゃる意味は、恐らく地方自治体あるいは地方の住民における自立意識のことだと思うんですけれども、その意味で、お答えになるかどうか、石原東京都知事の問題提起は非常に効果的な問題提起であったと思うんです。  もちろん、銀行からだけ取ることについては公平性等の面で問題があるんですけれども、彼の提案のおかげで、今の地方交付税交付金制度でいいのかどうかということを初めて国民は知ったわけですね。何と、外形標準課税という非常に難しい単語ですら一般の主婦の耳元に届いて、実は日本の自治というのは、東京都の税金中心に、九四%の地方自治体が交付を受けている、そういったことに気づいたわけです。  そうすると、翻って、地方公共事業依存意識から自立意識に脱却するためには、やはり税源の移譲を含めた地方の本来的な分権まで話を進めていく必要があると思うんです。そこをこれから議論していただきたいと思います。道州制とか市町村合併とか、そういったことも見据えた上で税財源をどうやって移譲していくのか、それから消費税についても地方の取り分をもっと厚くしていくのか、そういったところからスタートしていかないと、地方の中央依存意識というのはなかなか解消していかないんじゃないかという気がしております。
  70. 保坂展人

    ○保坂委員 今の点について続けてお尋ねをしたいんですけれども、確かに、自立意識の点でこれから大きく、地方自治体も、また地方に住んでおられる方も意識改革をしていかなければならないということ、無論だと思うんです。  一方で、公共事業依存体質といいますか、まさに公共事業が年間まとまって必ず落とされてくることを前提に、大小の工務店がありゼネコンがあり、そこに依存して生きている方々がたくさんいる。ベンチャー企業といっても、東京や大阪とか、大都会でないと存立の基盤が、地方でやっている方もいらっしゃると思いますけれども、まだまだそういう基盤整備が進んでいない。しかし、こういうむだなものは切っていかなきゃいけないというときに、どういう知恵が構造転換の際に必要なのかというあたりに御意見があったら、お聞かせいただきたいと思います。
  71. 糸瀬茂

    糸瀬公述人 公共事業関連の不動産、ゼネコン、中小企業含めてですけれども、そういったところで本来あるべき淘汰が進まなかった最大の理由は、日本金融危機対策のあり方だと思います。  日本金融危機対策、先ほど違う先生の御質問に対する答えで申し上げたんですけれども、結局は、銀行保護することではなく、銀行の裏側の借り手を保護することに終始してきたわけです。それと、公的な部門でも、信用保証協会の特別保証枠で五千万円まで無担保というところがありまして、こういった、一見して金融システム安定化させるようなシステムが、実は意図しているところというのが倒産企業をふやさない、失業者をふやさないということで、本来淘汰が進むべき業界における淘汰のプロセスを遅くしていたんじゃないかと思います。  そういった意味で、ペイオフの延期は実はするべきではなかったと思いますし、今回の預金保険法の改正にしても、もう少し厳しい観点から臨むべきであったという気がしております。  以上です。
  72. 保坂展人

    ○保坂委員 では、もう一点。  それでは、明らかに産業構造の転換期なわけで、新しい創業を支援していくような、そういう政策に力を入れるべきなのかどうか、この点についてはいかがでしょうか。
  73. 糸瀬茂

    糸瀬公述人 それは御指摘のとおり、そういった分野にもっと重点的に取り組むべきだと思います。エンゼル税制にしても、今回の予算では非常に少ないと思いますし、個人リスクマネーをそういった分野に提供しやすいような環境を整備していく必要はあると思います。
  74. 保坂展人

    ○保坂委員 では、もう一度神野先生に最後に伺いますが、今回の予算案で、基本的な姿勢なり方向性なりあるいは着想は大いに評価できる、しかしその金額がいかにも少ないとおっしゃいました。ずばり、そういう新しいIT革命に即応するような体制予算の中でどのぐらい組んだらいいかというお考えがあったらお聞かせいただきたいと思います。
  75. 神野直彦

    神野公述人 額そのものではなくて、予算の歳出全体を、先ほど言いましたように、人的投資とか環境とか、そういった今取り組まなければいけない構造に大きく切りかえることだと思うんです。その切りかえる度合いが、どうも新しい芽というのが少なかったのではないか。二千五百数億だといかにも少な過ぎるということを申し上げたということでございます。
  76. 保坂展人

    ○保坂委員 終わります。
  77. 島村宜伸

    島村委員長 これにて公述人に対する質疑は終了いたしました。  公述人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。(拍手)  午後一時から公聴会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時四十九分休憩      ————◇—————     午後一時一分開議
  78. 島村宜伸

    島村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  平成十二年度総予算についての公聴会を続行いたします。  この際、公述人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  公述人各位におかれましては、御多用中にもかかわらず御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。平成十二年度総予算に対する御意見を拝聴し、予算審議の参考にいたしたいと存じますので、どうか忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願い申し上げます。  御意見を承る順序といたしましては、まず草野公述人、次に水野公述人、次に谷山公述人、次に水口公述人順序で、お一人二十分程度ずつ一通り御意見をお述べいただきまして、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。  それでは、草野公述人にお願いいたします。
  79. 草野忠義

    ○草野公述人 ただいま御紹介をいただきました日本労働組合連合会、連合の副会長をしております草野と申します。どうぞよろしくお願いをしたいと思います。  働く者の実感と生活実態から、二〇〇〇年度の政府予算案に対する意見を申し述べさせていただきたいと存じます。大きくは四点について申し上げたいと思います。  まず、大きな第一の論点は、二〇〇〇年度の政府予算の編成につきましては、従来型公共事業による景気対策ではなく、積極的な雇用創出事業や社会保障制度の改善策により景気回復を目指すべきであるということを指摘させていただきたいと思います。  その中で、まず第一点は、政府の新年度の予算案は、歳入歳出額が前年度当初予算より三・八%増でありまして、景気対策を目指した積極型予算とされております。しかしながら、その内容を見ますと、従来型の公共投資を重視した景気対策中心でございまして、国民が直面をしております雇用不安あるいは先行き不安への対策が全く不十分にしか組み込まれていないのではないか、このように考えるところでございます。  二つ目に、現在、三年にわたりまして景気が低迷し続けているわけでありますが、その大きな要因は、雇用と生活の不安によって消費回復のめどが立っていないことが大きいわけでございます。今回の政府予算では公共事業によって需要の拡大が目指されているわけでありますが、これでは現在の消費不況を打開することは難しく、景気対策の基本は、消費回復と今後の経済社会の基盤をつくる事業の振興策、すなわち雇用不安や生活の不安を解消する対策中心に据えるべきだ、このように考えております。  三つ目に、特に雇用対策では、戦後の労働統計開始以来の最悪の失業状況、失業率が四%台後半、約三百万人の失業者を積極的に減らそうとする対策が見当たらないと考える次第でございます。  雇用対策としては、経済新生対策雇用対策として、特別会計を含みまして七千二百十五億円の事業が計上されていることは承知をしております。しかし、その内容は雇用保険制度の維持による失業対策費や雇用の安定、継続策が中心であり、雇用をつくり出す対策としては、中小企業労働力確保法による支援対策八百八十三億円、介護分野での採用に対する賃金助成で六十七億円など、千二百億円強にとどまっております。これでは、三百万人の失業者と新規求職の高卒、短大、大学卒業者約八十万人に職を提供して、失業率を三%台に引き下げることはなかなか難しいのではないか、このように考えております。  新規卒業者の就職内定率は昨年十二月時点でいまだ七割にとどまると伝えられておりまして、このままでは新卒の求職者の約二十万人が未就職にとどまるおそれがあるのではないかと考えるわけでございます。  第四点として、この深刻な雇用失業問題を解決するためには、政府と自治体は百万人以上の新たな雇用をつくり出す対策を抜本的に強化していく必要がある、このように考えております。  私どもの検討によりますと、今後社会が必要としている新規の雇用、職業を考えるならば、二〇〇〇年度には、一つ、介護・福祉分野で介護ヘルパーを中心に四十五万人、二つ、教育関係では三十人学級化などにより教員など三十五万人、三つとして保育所関係の五万人、四つとして森林整備など環境関連で二十万人など約百四十万人の雇用の創出が可能であると考えているところであります。  大きな二つ目の論点といたしましては、今回の予算では、少子高齢社会への対応及び国民の社会保障制度への不安を解消するために、年金、医療、介護の社会保障基盤の抜本強化策を計上する必要があるのではないか、こういうことでございます。  そのうちの一つといたしまして、年金制度の改革では、少子高齢社会を見据えて、全国民が参加する基礎年金、国民年金の基盤を再構築することが喫緊の課題である、このように考えるわけであります。  すなわち、年金制度につきましては、厚生年金、共済年金に加入している人以外の人々、自営業や従業員五人未満の小企業、無業者、学生が加入する国民年金制度におきましては、その制度への不安や欠陥から、対象者の四割を超える人が保険料未払いという空洞化の事態に落ち込み、未払い者はますますふえているというふうに聞いております。そして、この空洞化が公的年金への不信感をさらに高める悪循環に落ち込むに至っており、もはや国民年金の改革は先送りできない局面を迎えているのではないかと考えます。  しかし、本年度の政府の年金改革は、この国民年金の改革を二〇〇四年度までに先送りし、一方で厚生年金等の報酬比例部分の給付の切り下げを強調して、老後の先行き不安をかえって高めていることは極めて問題であると強く批判せざるを得ないと考えます。国民の先行き不安を解消するためには、年金制度への信頼感を回復し、国民の安心感を回復させ、正常な消費生活を取り戻すべきであると考えるわけであります。  したがって、本年度の予算におきまして、一つ、基礎年金への国庫負担分を二分の一に引き上げる予算を計上すべきであること、そして二つとして、厚生年金の改革では公的年金への信頼性の確立を最大の課題とし、国民の老後生活実態を無視した報酬比例部分の給付切り下げや賃金スライドの廃止、また報酬比例部分の六十五歳支給への段階的繰り延べについての改正は絶対に行うべきではない、このように考えるわけであります。  二つとして、医療、医療保険制度の改革では、九七年度の医療保険料引き上げ時に、政府は医療制度、医療保険制度の改革を約束されたというふうに聞いております。しかし、今回の予算及び関連法案には医療改革の政策を見出すことができません。  かわりまして、医療の診療報酬を一・九%引き上げることが予算計上されております。しかし、これは、これまでの中央社会保険医療協議会の審議と従来の引き上げ算定方式を無視し、日本医師会と自民党の間での政治決着により予算計上されたものにほかならないと考えます。  一方、薬価改定として一・七%引き下げを行うといたしておりますが、この財源を診療報酬引き上げに回すとの措置は、保険料を支払う国民を無視したものであり認められない、このように考えるわけであります。薬価引き下げ分は国民に還元すべき、このように考える次第でございます。  さらに、医療につきましては、健康保険法等の改正が上程されております。その内容は、老人の自己負担額について、定額から上限額を付した一割定率負担の導入、高額療養費の自己負担額について、医療費に比例した限度額の引き上げと上位所得者には新たに約二倍の自己負担限度額の設定、さらに、保険料率の上限について、その適用から介護保険料を除外して医療保険料のみとし、介護保険料は別途とするなどの患者負担増が提案をされております。これらの新たな負担増は、改革なき負担増であり、改革の公約をほごにする措置であると考える次第であります。  また、本予算案には、児童手当制度の見直しが計上されております。その内容は、九九年度に決定されました恒久的減税により十万円加算されました年少扶養控除の加算分十万円を廃止し、その財源により、児童手当を義務教育就学前まで延長するというものであります。  しかし、この措置では、小学生から十六歳未満の家計及びゼロから三歳未満児のいる家計では扶養控除の減額分が増税となり、支給家計においても所得制限以上の所得層では増税となるなど、児童手当の拡充により給付を受ける家計よりも増税となる家計が多いなど、不公平を高める措置であると考えます。  このように、年金、医療など社会保障にかかわる今回の予算予算関連法案の内容は、改革の対策を先送りしたり、改革を行わずに負担増を行うなど、国民の年金、医療、医療保険制度への信頼感を損なうものであると考えます。今必要なことは、国民の先行き不安を解消するために、安心と信頼の年金、医療制度に抜本的改革を行うことであると強く指摘させていただきたいと存じます。  大きな第三の論点は、公共事業関連予算を見直し、雇用創出、医療・福祉事業など生活と雇用関連の公共事業に再編すべきことであります。  その一は、二〇〇〇年度予算案の公共事業関連費は九兆四千三百七億円と、前年度当初予算と同額であり、物流効率化、環境・情報通信・町づくり等経済新生特別枠二千五百億円、生活関連等公共事業重点枠三千億円が計上されております。しかし、事業別のシェアは、過去五年間と比較すると、道路整備が一ポイント増加したほかはほとんど変わっておらず、重点化枠の趣旨が生きているかどうかは疑問であります。また、生活関連等公共事業重点枠の規模は全く不十分である、このように考えます。  二つとして、特に問題なのは、各公共事業の相互調整が十分に行われていないということであります。本年度の公共事業は、景気回復に大きな役割を担うとされております。そうであれば、公共事業による地域経済への効果や雇用の創出量を明示すべきであると考えます。予算に計上された公共事業について、その事業によって創出される雇用者数を明示し、これら雇用創出量も含めた公共事業の評価を行い、その優先順位を明らかにすべきであると考えます。そして、公共事業の遂行による、その雇用創出の達成結果につきましても公表すべきである、このように考える次第でございます。  最後に、第四の論点といたしまして、財政構造改革について申し上げたいと存じます。  二〇〇〇年度の予算では、景気回復と雇用の安定、創出が課題とされなければなりませんが、同時に、財政については、政策評価を明らかにして、優先順位を明確にした予算とするなどの歳出の改善を進め、財政改革への努力も並行して進めなければならない、このように考えるわけであります。  財政の改革としては、一つには、公共投資の総合的評価制度を確立して、優先順位を明確にして予算編成を行うこと、二つとして、地方財政の危機を解決していくために、地方分権を積極的に進めるとともに、地方への財源移譲を早急に検討すること、三つとして、社会保障制度の基盤を強めるために、少子高齢社会における年金、医療、介護などの社会保障の相互分担と雇用の関連を含む総合的な制度を早急に検討するなどの作業を急ぐこと、四つとして、これらの改革の検討を進める中で、国民生活に責任を持った国の健全な財政バランスのあり方を明らかにするとともに、その目標達成の計画を早急に国民に示すべきである、このように考えるところでございます。  以上、大きく四点の論点について申し上げさせていただきまして、ぜひ御参考にしていただきたいと思います。どうもありがとうございました。(拍手)
  80. 島村宜伸

    島村委員長 ありがとうございました。  次に、水野公述人にお願いいたします。
  81. 水野忠恒

    ○水野公述人 一橋大学法学部の水野でございます。  本日は、平成十二年度予算案に関連しまして、若干私の意見を述べさせていただきます。よろしくお願いいたします。  初めに、平成十二年度予算案につきまして、全般的な印象でございますが、この予算案におきましては、歳出面におきまして、現下の経済情勢にかんがみて、景気回復のために万全の措置をとる、具体的には、公共事業それから金融システム安定化のための配慮が重視されていることに注目されているわけであります。また、将来の方向を見据えたものとしましては、社会保障関係費や科学技術振興費、さらにはミレニアムプロジェクトとして、情報化、高齢化、環境対応として、重点的な配分がなされているわけであります。  このように、景気回復のための歳出構造、さらに二十一世紀に向かっての重点的な配分というこの予算案作成には、私は積極的な評価をしたいと思っております。特に、このような予算措置によりまして、景気回復ができるだけ早く軌道に乗ることを期待しております。  私は、もともと税制の専門家でありますので、予算案におきましても歳入の面が気になるところでございますが、平成十年の国、地方合わせて四兆円の特別減税以来、平成十一年、さらに平成十二年度と恒久的減税が行われてきているところであります。このことは、平成十二年度予算案に示されている三十二兆円を超える公債発行ということによって補われているわけでございます。具体的には、公債依存度は三八・四%に上昇しているということになるわけです。このような状況、これはだれもが懸念するところでございますが、四〇%に近い公債依存度に支えられた財政運営につきましては、これはいち早く経済不況からの脱却ということ、小渕首相の言葉で言えば、二兎を追う者は一兎を得ずということでなされているわけですが、景気回復につきまして軌道に乗り次第、この点については財政再建ということでお考えいただきたいところでございます。  ちなみに、アメリカ合衆国ですが、古い話になりますが、レーガン大統領になりまして、一九八一年に大幅な投資減税政策を行ったわけでございます。この点につきまして、双子の赤字というものが非常に増大をしたということで、一九八六年にはアメリカ合衆国では大幅な税制改革を行ったわけでございます。  いずれにいたしましても、我が国の数次にわたる減税政策、これが景気回復させることを望むとともに、税制面におきましても改めて再検討をしていただきたいと思うわけであります。  その点につきまして、今後の財政運営と税制ということで次にお話をさせていただきます。  このような相次ぐ減税によりまして、基本的に所得税の構造そのものがゆがんだものとなってしまっていることは否定できないわけでございます。古くは消費税の採用にさかのぼるわけですけれども、所得税の負担、税率構造を簡素化していく、それに対応させて消費税の充実ということが行われてきているわけですが、それに加えて、給与所得控除といったような控除面での措置もとられてきているわけであります。その結果、我が国では課税最低限が非常に上昇してきている。平成十一年度の税制改正、これは昨年のものになりますが、それによりますと、三百八十万円余りの人的控除、課税最低限ということになっております。  このように、税負担の引き下げ、特に税率に示された最高税率の引き下げによりまして減税が図られているわけですけれども、本来、それに対応した課税ベースの見直しというものがなされるべきでありますが、これは将来の課題ということで、先送りされているわけであります。  先ほども申しましたが、公債依存度三八・四%という財政運営は、いわば緊急的な財政措置でございます。安定的な税制、これは増税かあるいはそれ以外の選択か、またそれは別の問題でございますけれども、税制のゆがみそのものにつきましては、できるだけ早く安定的な税制ということを議論していただきたいと思っております。  ちなみに一つ例を挙げますと、税率構造について若干注目してみたいと思っております。  これは昨年度の税制改正ですが、それによりまして、所得税税率区分が一〇%、二〇%、三〇%、三七%の四段階となりまして、最高税率が大幅に引き下げられるとともに、税率の段階も縮小されたわけです。税率の議論につきまして重要なことは、必ずしもその税率所得に適用されているというものではなくて、これは一種の税負担の指標でありまして、現実にはかなりいろいろな動きというものがあるわけであります。  例えば給与所得を例にとりますと、これは、従来の終身雇用制が、外資系の企業の進出などによりまして揺らぎつつある。そのようなことになりますと、いわゆる課税の先送り、課税繰り延べというものが生ずるわけであります。具体的には、年俸制のもとで、年俸は抑えて退職所得という形で受け取る、あるいは年金といった形で受け取る、こういうような影響を持つものでございます。ですから、税率の構造そのものだけでは税制を見ることはできないという点には注目しておきたいと思います。  それからもう一点ですけれども、税率構造は、いわばすべての所得に一律に適用される、つまり総合的な課税、総合課税が前提とされている場合にはそれなりの比較の基準となるわけでありますが、我が国の税制のように、周知のとおりのことでございますけれども、他方で利子所得、配当所得有価証券の譲渡益、こういったものに対して源泉分離課税が認められているわけであります。このようなもとで税率のみを議論するということは、決して十分なものではないわけであります。今回、有価証券の譲渡益につきまして申告分離に移行するということになったわけでございますが、我が国所得税の構造は、依然として、総合課税というよりも分離課税と併用したような税制になっているということであります。この点にも留意したいと思っております。  このことはどういうことかと申しますと、いわゆる利子所得金融関係の所得というものは、最近言われていることは、いわゆる足の速い所得である、高い税率をかけますと簡単に国外に逃避してしまう。そういうことがございまして、一つには、税率を区分せざるを得ない、分離課税を行わざるを得ないということになっているわけであります。このことは、将来的に、所得税の最高税率、現在は三七%になっておりますけれども、これをどう見るのか、いわゆるそれとの関連性にかかっているわけでございます。こういった点に留意したいと思います。その他、課税最低限の問題、課税ベースの見直し、こういう問題もございますが、時間の関係もございますので、省略させていただきます。  ただ、一つ最後に、税制につきまして、法人課税につきまして一点だけ触れさせていただきたいと思っております。  法人課税につきましても、昨年度は三〇%に大幅に税率を引き下げたわけです。現在も、持ち株会社の課税の特例を設け、さらには連結納税、会社分割税制といった形で、いわゆる企業の組織の変更、企業のストラクチャーの変更に対応するような税制の検討がなされているところでございます。  これは私の認識するところでございますが、基本的には、このようないわゆる連結納税さらには会社分割税制というのは、結局のところ、アメリカ合衆国に見られますように、法人課税への依存が少ない、いわゆる法人税の比重の少ない国で活発に行われているということであります。我が国のように法人税への依存のなお高い国でこのようなシステムを導入するということには、それなりの留意が必要であろうということでございます。  というのは、どういうことかと申しますと、これは一言で言えば、コーポレートガバナンスと言われておりますけれども、いわゆる合衆国のような制度では、会社の利益は株主に配当されて、株主の段階で所得税として徴収される仕組みになっているわけです。我が国は、この点、依然として配当政策というものはかなり硬直的な状況になっておりますので、いわゆる法人の段階で課税をするということはやむを得ない面を持っているわけです。この点に御配慮いただきたいと思います。  それで、最後に若干つけ加えさせていただきますけれども、これは本日の国会の予算委員会とは直接関係ない問題ではございますけれども、いわゆる東京都の銀行に対する事業税の特例の問題でございます。関係ないと申しましても、都の事業税が増収になるということは、それは損金に算入されるという形で法人税の減収を招き、また地方交付税の財源を減らすということになりますので、必ずしも予算委員会に関係しない問題ではないわけでございます。  幾つか論点を申し上げさせていただきますが、一つは、事業税は、よく言われておりますが、本来、公共サービスの受益に対して課税されるものでございます。いわゆる応益課税が妥当しているものであります。確かに、銀行業といえども、これは法人所得がたとえ赤字となったといたしましても、地方団体のサービスに対する受益を受けているわけでございますので、課税がなされてもやむを得ない性格を持つものであります。しかしながら、このような受益というものは銀行に限ったものではなく、まして特定の、五兆円以上の大手銀行に限るというものではないわけでございます。課税の普遍性、一般性という観点から見た場合に、東京都の特例には問題があると私は考えております。  具体的に、ちょっと技術的な論点になりますけれども、申し上げさせていただきますと、地方税法七十二条の十九が今回の東京都のよりどころになっているところでございますが、ここでは、事業の状況によって、所得にかえて他の課税標準を用いることを認めているわけであります。しかしながら、この規定を根拠に、例えば極端な例を考えまして、銀行業につきましては粗利益を標準とする、これに対して、デパートについては売り場面積に応じて課税する、さらにパチンコ店につきましては従業員数によって課税する、このような不統一な課税を行うということは、明らかにこれは課税の公平を著しく損ねるものでございます。  問題は、論点といたしまして、いわゆる事業の状況ということでございますが、なぜこのような大企業に限定して粗利益に課税するのか、これの合理性が示されなければいけないということでございます。いわゆる事業の状況というものが、今までの議論の中では明らかにされてきていないのではないか。なぜその他の業種にはこのような課税が必要でなく、また大手銀行だけがこのような課税を受けるのか、このような点が合理性が証明されない限りは、私は、場合によっては、これは憲法十四条の法のもとの平等の原則に違反することにもなり得るのではないかと思っております。  それから、これも既に指摘されていることでございますが、地方税法七十二条の二十二の九項によりますと、負担の均衡を失してはならないという規定が出ております。これは、実際に課税が行われて、どういう状況になったかを見なければ言えないことでございますけれども、場合によってはこの規定との抵触の問題も出てくるのではないかと思っております。  さらに論点を幾つか指摘させていただきますと、地方税の論点というものは、大事な原則でございますが、税源の普遍性、いわゆるできるだけ偏在しない税源が望まれているわけでございます。政府の税制調査会におきましても、このような観点から、偏在性が少なく課税対象の広い税目を検討してきたところであるわけです。東京都の大手銀行業に限定した課税というものは、まさしくこのような普遍性の原則に反するものであります。  具体的に申し上げますと、一般の道府県の一人当たりの税負担というものは大体百万円前後でありますが、東京都では二百五十万円に上っているわけです。言い方を変えれば、東京都民の負担が多いということにはなりますけれども、このことは、いかに東京都に税源が集中しているかということを意味しているわけでございます。いわゆる地方税法というものは、このようなことを考えた上で税源の偏在を調整する、そのような機能も期待されているわけであります。  ですから、地方自治の本旨といいましても、直ちに地方税が条例によって規定されるのではなくて、地方税法という一つの枠組みが置かれた上で地方税が課される、こういう仕組みになっているわけであります。ですから、地方自治を根拠に東京都が独自に税源を選択する、いわゆる、ありていに言えば断トツの税収源を持っているような東京都が地方自治をよりどころに税源を選択するということは、非常に他府県への影響が大きいということになるわけでございます。  具体的に申し上げますとどういうことであるかといいますと、先ほど申しましたが、事業税はいわゆる損金性を持っております。これは所得から必要経費として控除されるということでありますので、東京都が新たに銀行業につきまして事業税を設けるということは、国の法人税を減少させるのみならず、他府県の事業税並びに他府県それから市町村の住民税を減少させる、さらには地方交付税まで減少させるということになるわけでございます。いわば東京都の特例によって東京都が増税を図るということは、これが、国それから都道府県、さらには市町村の減収を招く、こういったような雪崩現象を起こすということに注意していただきたいわけでございます。  ですから、東京都の特例、私としては非常に懸念しております。また、一般の世論では、大手銀行への課税ということで賛成する向きがあるわけでございますが、現実には、これは法律の制度上、納税義務者が銀行となっているということでございまして、現実問題としまして、大手銀行ですとこの負担はどこへ行くのか、いわゆる租税の転嫁ということでございますが、仕入れ業者に転嫁する、あるいは貸し金庫等のサービス料に上乗せをする、さらには貸出金利、預貯金の金利といったところに影響を及ぼす、こういうような予測は十分にできるところでございます。ですから、これは多少混同されていることでございますが、実際の担税者と納税義務者との乖離ということは十分予想されることでありますので、この点も議論する必要があると考えております。  ですから、東京都がこのような事業税を一方的に採用するということは、非常に問題が多いのではないかと私は考えております。政府の税制調査会では、いわゆる課税の一般性、課税の普遍性という観点から、事業税の外形標準として幾つかのモデルを示してきたわけですけれども、このようないわゆる新しい事業税外形標準課税を行おうとした場合に、東京都が独自の税制を持ってしまうということは、これは他の道府県に一般的に適用していくということを非常に難しくするわけでございます。こういったような問題点もございますので、事業税といった、いわば半分に近いような都道府県の税収項目でございますので、このような基幹税につきましては全都道府県で調整をするのが本来の筋ではないかと思っております。  以上のように、東京都の特例には非常に論ずべき点が多いと考えているわけであります。東京都では、この点につきましては都議会を開いてこれから検討するということでありますけれども、本日は予算委員会の場でございますが、東京都の銀行税というものが国の予算にも影響を及ぼすということで、若干コメントをさせていただいたわけでございます。  以上で、平成十二年度予算案につきまして、私の思うところを述べさせていただきました。  どうもありがとうございました。(拍手)
  82. 島村宜伸

    島村委員長 ありがとうございました。  次に、谷山公述人にお願いいたします。
  83. 谷山治雄

    ○谷山公述人 税制経営研究所の谷山でございます。ミレニアムのしょっぱなの予算委員会公述人として意見を述べさせていただきますことを大変光栄に存じています。  実は、三年前の一九九七年の予算のときにもお招きいただきまして公述をさせていただいたんですが、そのときはちょうど財政構造改革法が問題になっているときでございまして、私のそのときの意見では、不況のときに緊縮予算を組むとはいかがなものか、そういう意見を申し上げたつもりでございますけれども、果たせるかなと言うと大変おこがましいのでございますが、これは凍結になりまして、大変結構なことだと私は思っております。ところが、今回の予算に関していいますと、それが逆に全然論議されませんで、これまたどうかなという感じがいたします。  本日の新聞を拝見しますと、ウサギ論争という言葉が出ておりますけれども、私もちょっとこれにこだわって言わせていただきますと、まず、今回追わないウサギというのは、実は赤字公債という栄養をたっぷり飲み込んで、まさにウサゴンともいうべき怪獣にだんだんなりつつあるのではないか。これは、退治するどころか逆に襲いかかってくる、そういうことになるおそれがあるので、現にその兆候は、先生方御存じのように、国際信用の問題、金利の上昇の問題、クラウディングアウトの問題、貸し渋りの問題、それからさらに、一般国民に、これだけ赤字増大すると将来増税や社会保障の削減やインフレが来るのではないか、そういう不安を与えている問題、現にそういう追っていないウサギが実は怪獣化いたしまして、むしろ今襲いかかろうとしている、これが一つ私は問題ではないかと思いますので、ぜひこれはやはり御審議を願わないといけないんじゃないかと考えておる次第でございます。  それから次に、追っているウサギでございますが、私は、どうもこれはウサギの中身をちょっと取り違えているという疑問がございます。と申しますのは、追っている景気回復というウサギでございますが、いずれにしろ公共投資に重点を置かれている。実は、先生方のところに表を九枚お配りしてございますが、時間の関係上一々御説明申し上げる余裕がございませんので、ひとつ私の論理の一つの補完としてごらんいただきたいと思います。いろいろな経済指標がいっぱいございますけれども、ほとんどの指標が消費の不振ということを物語っているわけでありまして、乗用車と住宅事情は若干明るい兆候がございますけれども、全般として消費及び雇用が大変不安定な状況にございます。  これは先生方も十分御承知のように、過去日本は何回となく不況を体験いたしましたけれども、いずれも中心設備投資の不振が中心でございまして、消費というのは割合に堅調と申しますか、かたかったわけなんで、これが不況を割合に短期間に終わらせ得た原因ではないかと思いますが、今回、延べ九年になりますか、特に一九九七年以降の問題でございますが、不況が依然として深刻である、なかなか景気回復しない。それは、私は、消費の不振ということが大きな問題で、追っているウサギは、実は消費回復というところにターゲットを定めるべきではないか、かように考えている次第でございます。  経済企画庁の資料によりますと、国民の生活に対する不安がだんだん増大をしてまいりまして、特に失業の不安、老後の不安というものが、画期的と言うとおかしいんですが、今増大をしているわけで、その不安をいかに取り除くかということも私は国の一種の責任であると存じますので、景気回復目標、ターゲットをどこに定めるか、これが今大変重要な問題ではないかというふうに考えておる次第でございます。  ちなみに、現在、財政状況は、アメリカは御承知のように黒字に転換しておりますし、ユーロ圏の国もだんだんに財政状態が改善をしておるわけでございますが、これも表に書いてございましたけれども、アメリカにしましてもユーロ圏にしましても、これらの財政事情が好転している国の特徴的なことは、消費支出の増大が続いていることでありまして、これが日本と大変違っている点でございます。もちろん、アメリカ、EUについて問題はいろいろございますけれども、とにかく消費が順調に増大をしている、これが一つの特徴的な点でありまして、これが日本と大きな違いをあらわしている、かように考えている次第でございます。  そういうふうに考えますと、今度の平成十二年度の予算でございますけれども、残念ながら今申し上げたターゲットから外れている、あるいはまた不安を増大させる、そういう要素がいろいろございまして、列挙的に若干申し上げますと、まず年金の圧縮の問題がございます。これは特に若年者の不安をかき立てる要素でございまして、四〇一Kという確定拠出型年金でカバーできるのかどうか、これ自体問題もございますので、大きな問題がございます。  時間の関係上、詳しい改善策というのは申し上げられませんけれども、ごく簡単に申しますと、結局、厚生年金の原資になります賃金の上昇がほとんどないということが大きな問題でございまして、やはり厚生年金にしましても健康保険にしましても、土台は賃金でございますから、これがリストラその他でもって圧縮をされている。これが一つの問題なんで、予算政策としましても、消費、雇用についてどのような対策を講ずるかというのが非常に大きな問題であろうと考えております。  その次に、医療についても、特に高齢者の負担が増大をする。これは、介護保険との関係で、介護保険で利用者が一割負担するんだから老人保健でも一割負担しろ、そういうバランス論かどうかよくわかりませんけれども、とにかく老人の医療費が増大をするということでございます。  その次に、介護保険も、保険あって介護なしという体制がどこまで改善されるのかまだはっきりわからない点でございまして、これが一つの不安材料になる。  その次に、いわゆる小学生、中学生を持ちます家庭の扶養控除の引き下げという問題もございまして、これは、宮澤大蔵大臣が課税最低限引き下げを考えているという御発言がございましたけれども、課税最低限引き下げに道を開く一つのステップではないか、そういう危惧も抱いているわけなんで、一つの問題でございます。  もう一つは、まだ具体化してはございませんけれども、消費税を福祉目的税にする、そういう名前で実は税率の引き上げが半ば公然と語られる、そういう問題もございまして、新聞等でございますけれども、消費税の税率の一〇%説、一四%説、中には二八%説というのもございまして、これも非常に大きな不安をかき立てる、そういう問題になっている。  したがって、私は一つの問題の提起としましては、消費回復と雇用の確保、これがやはりこの予算の最重点課題にならなければいけないのじゃないか。全体としては、私は、これから申し上げますけれども、やはりまず追うべきウサギのターゲットをしっかり定めていただきたい、それから、追わないウサギが怪獣に化しますので、今から対策を考える必要がある、ここが私の中間的な一つの問題提起でございます。  さて、公共投資の問題でございますけれども、これはいろいろ批判がございまして、この景気浮揚効果につきましてはいろいろ議論がございます。例えば経済企画庁の「日本経済の現況」という本その他によりますと、景気を下支えしている、こういう表現でございますけれども、実は景気回復のための下支えではちょっと困るのでありまして、いわば推進力になっていかなければならない、かように考えるわけでございます。  そこで、また経済企画庁の数字を見ますと、公共投資はなるほど増加はしておりますけれども、周辺の指標が実に問題でございまして、公共投資はふえていても民間の建設工事は逆にどんどんマイナスになってきている、これは一体いかがなものかという問題になるわけでございますし、その次に、設備投資もさっぱり上向かない、こういう問題もございますので、公共投資がイコール民間の建設工事や設備投資とどう結びつくかという問題はございますけれども、やはりこれは一つの問題点であって、公共投資の浮揚効果について問題がある。  そこで、問題は、改善策も含めての問題でございますけれども、御承知のように、公共事業費はいわゆる財政法第四条の解釈で建設公債でいいということになっておりまして、言うなれば、公共事業費イコール建設公債という方程式がいわば聖域化しているのが一つの問題でございます。  そうしますと、例えば赤字対策に臨むにしましても、下手をすると特例公債だけが問題になる。建設公債はいいんだとなりますと、特例公債だけが問題になりまして、その対象は社会保障費や教育費や、あるいは防衛費も含むかもしれませんが、そういう公共事業費以外の支出が問題になる。これはやはり非常に予算財政のあり方をゆがめる問題になるわけでございまして、私は、財政法第四条の解釈も問題でありますし、財政法を改正すべきかどうか、これは検討しなければならない問題でございますけれども、公共投資を建設公債で賄うということが方程式になっている、これはまた一つの問題で、やはり公債問題というのは全体として管理する必要がある。  これはもう一種の現実離れした話ではございますけれども、一つの極端なお話としますと、税収が五十兆しかないわけですから、五十兆でどのような歳出が組めるかをまず最初に考えていただく。しかし、それはもちろん無理な話ですから、そこで赤字公債を発行せざるを得ない。そこには建設公債も特例も区別はない、それは公債なんだということでもってお考えいただく。これは、私は、財政構造改革一つの大前提になる問題ではないかというふうに考えているわけでございます。  なお、公共事業につきましては、公述人の名簿を拝見しますと、夕方、法政大学の五十嵐さんがお出になるということなので、この方は公共投資専門家、エキスパートでございますので、私はこれ以上詳しくお話しすることを省略したいと思いますけれども、ここで先生方にぜひお考え願いたいことは、そもそも公共投資のあり方とは何かという、実はそもそも論でございます。  言うまでもございませんけれども、公共投資というのは、民間企業ではできない、そういうものをやるということで、本来は一般会計でやるべきものであります。なぜかといいますと、一般会計というのは、税金を財源にすれば返済も必要ないし利息も必要ないわけでありますから、そういうもので公共投資をやるべきである。ところが、公債を発行しますと当然利払いと返済が出てまいりますので、公共投資といっても、効率はもちろん必要ですが、収益性を持たなければならなくなってくる。これが果たして公共投資と言えるのかどうか、大変問題が出てくるわけでございますので、私は、この機会に、財政のあり方、財政構造改革のあり方を考えます場合に、そもそも公共投資とはいかなるものなのか、その財源は本来は税金でやるべきではないのか、その辺がひとつ御検討していただきたい課題であると存じます。  したがいまして、私の申し上げたいことは、税と公債と総合的に見る、そういう必要があるわけでございまして、特にその中で、建設公債はいいんだ、一種の聖域である、これは大変大問題であって、公債全体を考えるべきではないか、かように考えております。  さらに、つけ加えますと、消費税の福祉目的税化というのも一つの税の使途を拘束してしまうわけでありますから、例えがいいかどうかわかりませんが、地方道路財源というのは一種の拘束的な税源になっているわけで、この二の舞を踏むことになるのかどうか、この辺もひとついろいろ御検討していただきたい問題であると存じます。  さて、そこで、その次の問題でございますけれども、今、財政赤字が非常に大きい理由の一つは、もちろん歳出の問題が大きいわけでございますが、歳入も大きな問題がございます。  何度も減税ということが行われておりましたけれども、経済企画庁の「日本経済の現況」という本によりますと、これも下支えだという表現を使っているわけでありまして、やらないよりはやった方がいいということだろうと思いますけれども、これも本当は景気回復としてはおかしいので、やはり減税をやれば可処分所得が増加して消費投資増大をする、そして経済が成長するというのが一つの公式でございますから、単なる下支えでは困るということでございます。  しかも、下支えだけではなくて、表にしてあるのでございますけれども、時間の関係上簡単に申し上げますが、実は、一九九〇年、これは税負担率及び税収が最高になった年度でございますけれども、それと一九九七年度、一九九九年度を比べてみますと、一九九〇年から九七年にかけて国民所得は実は一三・四%ふえているわけでございます。その限りでは不況ではなかったとも言えるのでありますが、一三・四%ふえている。ところが、税収は逆に四・七ほど減少をしております。つまり、ここでは税金の収入の弾力性を全く失っている。  もちろん、これにはいろいろ原因がございまして、特に大きいのはキャピタルゲインに対する課税が大幅に減少したことでございますけれども、とにかく、国民所得がふえているのに、本来いわゆるビルトインスタビライザーという機能を持っているはずの税収がなぜ落ち込んでしまうのか。これは、私は一口に言いますと、言うなれば行き過ぎた減税ということもあるのではないか、かように考えている次第でございます。  その次に、一九九七年と九九年を比べますと、国民所得は今度三・七%減少をしております。ところが、税収は何と一〇%減少しているわけで、ここでも全く弾性値がマイナスになっている。これは、財政構造改革財政再建ということを考えます場合に、そういう収入弾力性の低下ということが一つ問題になって、その原因は一体那辺にあるのか。この辺、私の意見では、一つは、今申し上げたように、減税のやり過ぎという表現はどうかあれですが、とにかく税率の引き下げが中心になって、要するに収入の弾力性を失っている、これが私は一つ問題になるのではないか、かように考えている次第でございます。  さて、最後の問題でございますけれども、今度は、予算と関係があり、またないような問題でございますが、表にございますが、実は、税と社会保障の持つ機能は、これも先生方を前に置いて大変おこがましい言い方でございますが、所得再分配機能というのが大きな機能であることはもう言うまでもございません。  ところが、日本の場合は、たび重なる税率引き下げを中心とする減税や、あるいはまた消費税率の引き上げや、あるいは社会保障の総体的な削減とでも申しますか、そういった問題で、所得再分配効果が諸外国に比べまして大変低下をしているということが問題になっていて、私は、これは言うなれば福祉国家の危機、危機と言うと言い過ぎかもしれませんが、一つの福祉国家についての問題であるというふうに考えております。  数字は、ごく簡単に申し上げますけれども、所得再分配の度合い、これはOECDの統計からとっている数字でございます。第九表でございますが、日本は、所得の第一次分配におきましては欧米諸国より割に平等度が高い、つまり不平等性が少ないという数字になっております。これは、私は本当かどうか、いろいろ疑問もございますけれども、一応確かなものとして考えます。ところが、税及び社会保障によります是正度というのは、ここに表に七カ国の数字を挙げてございますけれども、七カ国中では是正度というのは最低でございまして、つまり、税及び社会保障による所得再分配機能が著しく低下をしているという問題でございます。その結果として、税などによる所得の再分配の結果として、アメリカやイタリアよりはいいようでありますけれども、オランダ、デンマーク、スウェーデン等のいわゆる福祉国家に比べますと相当の違いが出てくる。  これは、今後、国会、先生方においてお考えになっていただきたいことは、つまり、景気回復ももちろん重大問題でございます。今ではまさに第一級の価値があると言ってもよろしいでしょうし、また同時に、財政再建、財政構造改革、これまた同じように第一級の価値を持った問題でございます。しかし、財政の役割は、今申し上げましたように所得の再分配ということが重要な機能でありまして、これがいわゆる福祉国家を形成して、それで国民生活の安定と向上に役立っている、そういう問題でございますので、これは私の知り得る限りでは余り国会でも議論されたことがないように、不勉強でございますが、思いますので、この機会に、予算の審議と関連してぜひ御検討をお願いしたい、かように考えております。  ちょうど時間になりましたので、以上で私の話を終わらせていただきます。どうも長い間ありがとうございました。(拍手)
  84. 島村宜伸

    島村委員長 ありがとうございました。  次に、水口公述人にお願いいたします。
  85. 水口弘一

    ○水口公述人 野村総合研究所の水口でございます。本日、この予算委員会において意見を述べさせていただく機会を与えられまして、まことにありがとうございます。  予算委員会とは申しながら、私は、本日は、十二年度予算については余り触れずに、ここに至ったプロセスあるいは今後の方向ということについて私見を述べさせていただきたいと思います。  したがいまして、平成十二年度予算につきましては、結論を先に申し上げれば、いろいろな意見はあるけれどもやむを得ない、こう考えております。むしろ、今申し上げましたように、そこに至った背景及び今後どうなるかという問題につきまして、歴史的、中期的な流れの中で意見を申し上げてみたい、こう思います。  お手元に簡単なレジュメと四、五枚の資料をお持ちしておりますのでごらんいただきたいと思います。  まず、日本経済の現状でございますが、この九〇年代を総括した場合、資料の一でございますが、よく、失われた十年あるいは何でもありの十年、先送りの十年、こう言われております。これは極めてジャーナリスティックな言葉でありますが、私は、むしろ鍛錬期の十年であった、こういう考え方をとっております。  ごらんのとおり、これは東証の日経平均株価指数を出しておりますが、一九八九年末に天井を打って以来、九二年の八月、宮澤内閣における経済対策以来、株価が下がると必ず対策を行ってきた。右に株式市場動向を書いてございますが、その都度日経平均は大体五割くらいは上がって、それが薬が切れるとまた下がるというのを繰り返しまして、最後は結局九八年十月九日に一万二千八百七十九円という暴落になりまして、そのときに小渕内閣における緊急経済対策、そのためにこの二月には二万円台を回復して五五・三%という上昇率を上げた。  問題は、これからどうなるかということでございますが、私が鍛錬期の十年と申しますのは、九〇年代前半は試行錯誤であった、後半はあらゆるものが表へ出て、いわば、私流に言わせれば、これはもう日本経済はハードランディングに入った、こういう見方をしております。  事実、経済の現状におきましても、例えば株式市場の状況から見ましても、いわゆるダイナミックジャパンと言われている明るい業種、それからスローグロースジャパンと言われている暗い業種、両方を見てみますと、九八年の十月からこの二月までで株が約五五%上がった中で、それ以上の値上がりをしているのは、通信その他九業種であります。中には八九年の高値以上になっているものが数多くあるわけであります、ソニーを代表としまして。ところが、五五%以下のパフォーマンスのものは、造船等を加えまして十四業種ある。ここに日本経済の構造的な問題が含まれているというような認識を持っております。  そこで、そういうような経済の中で経済運営をどうしていくかということにつきましては、平成十二年度の経済運営の考え方につきまして政府が出されております、民需中心景気回復へまず力を入れる、同時に構造改革に力を入れる、それから三番目に、ミレニアムプロジェクトに見られますように、情報通信、科学技術、環境等経済新生特別枠をつくられたということは、私は、金額的には非常に不満でありますけれども、高く評価して、これを今後さらに伸ばしていくということが必要であろうと思います。  したがいまして、十二年度予算につきましては、もちろんその内容について、効率化であるとか重点化というものが十分にできていない、特に公共事業についてはそういう点が不足でありますけれども、もろもろの制約あるいは枠組みの中で財政当局も精いっぱいの努力をした結果ということ、これは現在の日本状況そのものでありますので、ある程度やむを得ないという評価をしております。したがいまして、いろいろな意見はございますが、今後さらに効率化、重点化ということをやっていただきたい、こういうように考えております。  そこで、今言われていますのは、構造改革についての考え方が近ごろ非常に後退しているのではないかという懸念を持っております。私は、シンクタンクと同時に経済同友会の副代表幹事もやっておりますので、昨年の十月、「小渕改造内閣に望む」というときに、二十一世紀への国づくりに向けたリーダーシップを発揮していただきたい、構造改革につながる総合経済対策、また、ことしの正月には、「明るい二十一世紀につなげるために」ということで、責任を持って構造改革を推進していただきたいという意見を発表しているわけでありますが、その中で、構造改革の中で目下非常に重要な問題であります財政構造改革、レジュメの三になりますが、これについて申し上げてみたいと思います。  景気回復財政構造改革について、先ほどもお話がありましたが、よく二兎を追う者は一兎も得ずというような意見があり、あるいは、エコノミストの中にも、これは車の両輪であるという意見もありますが、私は、両方とも、この意見はとらない。むしろ、強いて言えば、比喩的に言えば、車の前輪、後輪であり、どちらにそのときの経済情勢によってウエートを置くかということだろうと思っております。目標は、豊かな経済社会をつくることであり、豊かな国民生活をつくる、こういうことでありますから、その手段として、景気回復のために公共事業中心にやるのか、あるいは、ここまで来てしまったら財政構造改革に手をつけるかということは、そのときの政治的判断が非常に重要な問題でありまして、二者択一という考え方は非常に間違っている、やはり追うものは一つである、こういうふうに考えております。  それでは、財政状況はどうかということになりますと、これはもう今さら申し上げるまでもございませんが、お手元資料二の一に、これは国及び地方、一般政府のフローの収支状況、それからストックの収支状況、これはOECDが出しましたエコノミック・アウトルック、昨年の十二月のものでありますが、ごらんのとおり、九三、四年以来、日本は物すごく悪化してきている、こういう状況になっております。  一つの例として、公債依存度一つとりましても、十年度は四〇・三%でありますが、十一年度は、第二次補正を加えれば四三・四%という公債依存度になっているわけでありまして、十二年度が、当初予算においては三八・四%でありますけれども、果たしてこのまま済むのかどうかというような問題もあり、また、国、地方の長期債務残高が六百四十五兆円という状況になってきているわけであります。  したがいまして、その辺をどう見るかということでありますが、これにはエコノミストの間でもいろいろの意見があり、あるいは経済界でもいろいろな意見がございますけれども、一つのマーケットサイドからこの問題を見てみたいと思います。  お手元資料の三の一と二がございますが、資料の三の一は、二〇〇二年五月償還日本政府保証をつけました輸銀債、現在は表示はJBICとなっております。これは国際協力銀行になっておりますので、こういう名前に変わっておりますが、これと同年限の償還期が来るアメリカのトレジャリーボンドとの利回り比較をした表であります。上の表で、ラインの上にありますのが、黒線がアメリカのトレジャリーボンド、それから、上が日本政府保証債、輸出入銀行債、国際協力銀行債であります。その線の下に両方のスプレッドの差、利回りの差が出ておりますが、平均的にほぼ六〇ベーシスポイントということは、〇・六%、日本政府保証債の方がアメリカ国債よりも利回りが高い、こういう状況になっているわけであります。  それから、資料の三の二、これはつい最近発行されました公営企業金融公庫債、これはもちろんユーロ・マーケットであります。年限が二〇〇九年五月でありますが、同年限のアメリカのトレジャリーボンドと比べてみますと、やはり輸銀と同じように、下の表で見ますと、これは年限が長いだけ、下の一番右の方を見ますと、直近でありますが大体九〇ベーシスポイント、約〇・九%近い利回り格差ができてきているという状況でありまして、私自身は、これだけの個人金融資産を持ち、かつ経常的な黒字を出し、対外金融資産の純債権国が、それに相当する赤字を持っているアメリカ国債よりも利回りがこれだけ高いということは非常に割り切れないものがありますけれども、事実、マーケットはそういう見方をしているということでありますので、レジュメの方に「市場の警告」ということを書いてございますけれども、やはりマーケットの数字というものはばかにしてはいけないというふうに思います。  したがいまして、国内的には十分今消化できます。しかも低金利で消化できますけれども、マーケットサイドから見た場合は、私に言わせれば、ぼつぼつ日本財政状況につきましては黄信号が点滅し始めているのではないか、そういうような感じがいたしております。  マーケットの警告ということは、これはもう申すまでもなく、資料の一にございますように、九七年から九八年にかけまして株式市場が暴落したとき、そのときには当然、金融機関、山一証券あるいは長銀、日債銀等々に代表されますように、マーケットによって、結局、マーケットから退場せざるを得なくなったというような状況があったわけでございます。ある高名なエコノミストは、マーケットの警告、マーケットというものは、ワーシップ、崇拝してはいけないけれども、リスペクト、やはり敬意を払わなきゃならない、こういうことを言っておりますが、私もむべなるかなと思うわけでございます。それだけに、ここへ来て、これからの財政構造改革をきちっとやっていくということは非常に重要なテーマになってきたのではないかと考えております。  そこで、三番目でございますが、「財政構造改革の段階的アプローチ」、こういうことを書いてございますが、私は、いつの時点が、ことしがいいのか、ことしは宮澤大蔵大臣も、あるいは総理も、景気サポートということを最重点に置いて予算を組んだ、私もやむを得ない、こう考えておりますが、その後どうするかということであります。  大体、エコノミストの意見では、恐らくこれから、私も景気は底入れしたと思います。株式市場も底を打ったでしょう。恐らく、民間設備投資はこれからはふえていくと思います。特に、機械受注、これが一番信用の置ける先行指標でありますが、まず間違いなかろう、消費もどうやら底を打ってくるんじゃないかというような状況がありますので、循環的には恐らく経済はプラスになる。ただ、対外的には、アジアの景気がどうなるか、アメリカがどうなるかというような不確定要素がかなりございますので、それらを踏まえて、いつから踏み出すかということは非常に重要な時期でありますが、私自身は、来年あるいは再来年において経済運営の中心景気回復重視あるいは優先型から構造改革重視型へ、その中には当然財政構造改革も入るわけでありますが、それらを中心にしてやって、アメリカの例を見てもそうでありますが、十年くらいの計画を立てて、また国民にもよく理解を求めて、アカウンタビリティーということを言われますけれども、やっていくということがぜひ必要であり、またこれは日本の政治の責任ではないか。また海外でも、先ほどのマーケットに見られましたように、日本に対する問題点はいろいろとよくわかってきておりますので、はっきりとそういう姿勢を出していくということが重要であろうと思います。  本日は、平成十二年度の予算に絡みまして、ここに至るプロセス、あるいは今後どうするかという問題につきまして、時間の関係で意は尽くせなかった点がございますけれども、私の意見を申し上げておきたいと思います。  また、レジュメに補論としてありますジェラルド・カーチスのザ・ロジック・オブ・ジャパニーズ・ポリティックスとか、あるいは財政審の問題。  この辺については、一言だけ申し上げますと、昨年の十一月の十一日に、ちょうど経済再生計画が出た日でありますけれども、私は、たまたま財政制度審議会で地方懇談会をやって、福岡におりまして、そのときは、全部オープンでございますので、二、三百人の方が聴衆におりまして、我々財政制度審議会の委員と、それから地元から公募で出てこられた二名の方と、あるいは年齢、職業に応じて選抜された五人の方が出て、いろいろな財政問題の意見交換をしたわけでありますけれども、私どもがびっくりしたのは、我々委員とは別に、地元から出られた方々が、今のままの財政の膨張をしていったら日本は大変なことになっちゃうんじゃないか、我々はもうちょっときちんとした受益と負担といいますか、その問題をきちっとやっていくから、節度を持ってもらいたい、こういう意見がございまして、私はその後の記者会見のときに、きょうのをどう思うかと言ったら、やはり新聞記者の諸君から、きょうのはやらせではないか、こういう意見がございました。僕は、一緒にいた大蔵省の方にそうかと言ったら、そんなことはない、ちゃんと公募でやっているし、きちっとやっています、こういうことでございまして、もちろん福岡という地域が公共事業の依存度が非常に低い、七%ぐらいと聞いておりますが、だんだんとその辺の問題が国民の間には浸透しつつあるのではないかというふうに思いますので、その辺を政治的にどういうふうに判断して運営されていくかということが今後の非常に重要な問題であると思いますし、また、それをぜひ期待しておきたいと思います。  時間になりましたので、これで終わらせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。(拍手)
  86. 島村宜伸

    島村委員長 ありがとうございました。     —————————————
  87. 島村宜伸

    島村委員長 これより公述人に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。村田吉隆君。
  88. 村田吉隆

    ○村田(吉)委員 自由民主党の村田吉隆でございます。  本日は、四公述人先生方には、お忙しいところをまことに御苦労さまでございました。質問時間が十分しかありませんので、私の方も簡潔に申し上げたいと思います。  谷山公述人のウサギ論については、大変おもしろく聞かせていただきました。追うべきウサギというのは消費の振興であって、しかし、うっかりすると追っていないウサギが大きくなって、ウサゴンになって、大変な目に遭うよという警告をちょうだいいたしたわけです。  とはいえ、追うべきウサギは消費の振興でございますけれども、なぜその消費が振興しないかという前提は、いろいろ先行きに対しての不安がある、いろいろな不安があるよということを公述人はこのレジュメにもお書きになっておられます。この点は草野公述人も、年金等あるいは雇用の問題についても不安をなくせという御指摘があったわけです。  しかし、これを見ると、一方において、この負担をなくすためにもやはりお金が要りそうだ。一つは、医療費なんかでいいますと、サービスの提供のあり方の効率化を図る一方で、それができなければ負担を上げなければいけない、そういうトレードオフの関係にあるかもしれないということでありますし、いずれにしましても、将来不安を解消していく上でもお金が要って、ウサゴンを大きくしてしまうかもしれないおそれがある。  しかしながら、我々が、政府が目指しているところは、景気回復して、雇用不安をなくして、それで消費を振興していこう、そういう目的をやはり追っているんだということであると思います。そういう中で、今度は、景気の振興策としてとっている施策が効率的であるかどうかというのが問題にされてくる、こういうふうに思います。  そういう中で、公述人は、公共投資の問題について幾つか問題点を御指摘になられました。私もそのとおりだと思う点があります。特に、最後の点で公述人から、利子と返済を伴うという事業の問題があるよという御指摘がありました。私も常々この問題については考えております。  財投改革が予定されておりまして、その中で、一般会計が出す国債それから財投債、あるいは財投機関債なるものも出てくるかもしれないという状況の中で、我々は、その事業の対象が果たして公共目的からして的確かどうかという洗い直しをしなければいけない。財投改革のときに、道路公団がやっている仕事、道路公団自体がキックアウトされるかどうかというのは財投債がどれぐらいの条件で発行できるかということで決まってくるよということでございましたけれども、しかし、道路公団だって、名神だけやっていればうちは十分いくよ、しかし政治の力あるいは要請によりまして、山陰の方でも、あるいは大変採算性の悪いところで高速道路をつくらなければいけないということでもございます。  そういう意味で、今やっている事業が財投機関、あるいは特別会計、あるいは一般会計、その中でどういうふうに配賦され、あるいはそれを直していかなければいけないかということが、今、公共性の概念からいって検討されなければいけない。これは費用対効果という検討だけじゃなくてそういう面があるなと思いますが、公述人意見を簡潔にお願いいたしたいと思います。
  89. 谷山治雄

    ○谷山公述人 では、簡単にお答えを申し上げます。  今の先生の御指摘の財投債、財投機関債、まだ本決まりと申しますか、はっきりしていない問題なのでお答えしにくいのですが、先ほど申しましたように、原則論から申しますと、要するに財投というのは、結局は郵便貯金なんかを預かって、利息もつくお金運用しているわけでございます。まして、債券を発行しますと当然利息がつくわけなので、利息のつくものはどういうふうにやるか、そういうことがやはり財投債、財投機関債の場合には一つの問題になってきます。そうしますと、いわゆる全く公共的なもので、収益性を無視したものはどうなるかという問題で、これはある意味では、財投ではできないので一般会計でやらざるを得ないのじゃないか、その辺の配分をどういうふうに政治的、財政的に判断をするか、そういうことが今後私は問題になると思うのであります。  さらに問題と申しますか、先ほど申しましたように、財投債といい財投機関債といい、もちろん公債であることには変わりございませんから、先ほど申しましたように公債の総合管理、そういう観点からこれを考えていく、そういうことがよろしいので、私は非常にうがった言い方をしますと、財投債、財投機関債というものが、公債がいろいろ問題があるので、そういう何か一種の逃げ道として出されると大変困る、こういうふうに考えておりますので、あくまでも総合管理、そういう観点から検討すべきである。  お答えになるかどうかわかりませんが、かように考えます。
  90. 村田吉隆

    ○村田(吉)委員 それでは、水野先生にお聞きしたいと思います。  時間が少ないものですからはしょって言いますが、外形標準課税の話。これは、その内容は、問題点については先生がいろいろ御指摘になられました。政治家としては、私は、こういう問題についてかなり秘密裏にといいますか、あるいは議論の時間が大変短くて、とにかく実施をするんだという形で持ってきたというのは、政治の手法としてやはり多少問題があるのではないかということでありまして、この点は先生も御指摘のとおりであります。そこに、政治の手法としてやや強権過ぎて、私は不愉快な思いをしているということであります。  ところで、私の選挙区のような田舎では税源が非常に不足しているということでありまして、地方自治との関係あるいは税金の性格の普遍性という観点から、税源が足りないときに、あるいは地方経済力が非常にアンバランスを来しているときに、全国の税源をどうやって調整をしていくのかということは、今国では地方交付税ということでやっているわけですが、地方税の中でどういうことが予想されるのか、先生の御意見がありましたらお伺いをいたしたいと思います。
  91. 水野忠恒

    ○水野公述人 お答えさせていただきます。  今の先生の御質問、非常に難しい点ですが、確かに、地方公共団体の間で非常に財政力格差がございます。それで、地方交付税でやっているわけですけれども、さて、自主財源、自主税源といった場合に何が選ばれるのかというと、どうしても偏在というものを無視することができないということになるわけです。  そこで、いわゆる今回の地方分権の話でありますけれども、できるだけ法定外普通税あるいは法定外目的税というものを設けて、その地域に独自性のある税目を探していく、こういったような地道な努力は必要であろうかと思われます。  それからもう一つは、これは全くの私の考えでありますけれども、国からの交付税というのは上から降ってくるお金ですけれども、場合によっては、地方公共団体相互間である程度の調整をする。一定水準を超える税収のある都道府県から吸い上げて、それを一定の基準によって割り振る、こういうような考え方も新しく採用してよろしいのではないか、全く私の個人の考えでございますけれども、そんなようなことも考えております。
  92. 島村宜伸

    島村委員長 次に、石田勝之君。
  93. 石田勝之

    ○石田(勝)委員 きょうは、四人の公述人先生方、大変御苦労さまでございます。  今も税制の話で御質問が出たわけでありますが、まず水野公述人にお尋ねいたします。  我が国の税制は、経済のグローバル化に対応するために、近年さまざまな改革を行ってきたと思います。そういう中で、外為法の改正とか所得税の累進課税のフラット化とか法人税率の軽減とかあるいはストックオプション制の導入とか行ってきたわけでありますが、二十一世紀を迎えるに当たって、今後、我が国の税制、特に経済のグローバル化に対応した今の我が国に求められていることは何かということを、御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  94. 水野忠恒

    ○水野公述人 お答えさせていただきます。  今の先生の御質問も非常に難しい問題でございますが、経済のグローバル化というのは、先ほど私も申し上げましたが、いわゆる金融関係の所得に対する課税が非常に難しくなる、税率の低いところへ所得が逃げてしまうということです。先生がおっしゃいましたように、外為法改正によりまして、所得は簡単に移転することができるようになったわけであります。  そこで、二十一世紀の税制はどうあるかと申しますと、これは常々言われていることでありますけれども、いわゆる高齢化社会を前にして、消費課税への移行というものが一つ考えられるということであります。消費課税というものは広く薄く、世代間の公平といった税制でありますので、こういった税制によりまして、金融関係の所得についても代替することができるのではないかと思っております。  ただ、それだけですと、所得課税はどうなるかといいますと、やはり所得課税の重要性、先ほどもちょっとお話しいたしましたけれども、特に我が国は法人課税への依存が高い国でありますので、その点は無視できないであろう。そうなりますと、今現在、持ち株会社を中心に、リストラクチャーといいますか、いわゆる企業組織の変更のための税制などを取り入れておりますけれども、このような形で、いわゆる企業の国際的な進出あるいは企業の構造変革というものを可能にするような税制、こういう仕組みは整えておく必要があるのではないかと思っております。  簡単でございますが、これで失礼させていただきたいと思います。
  95. 石田勝之

    ○石田(勝)委員 ありがとうございます。  続いて、水口公述人にお尋ねしたいと思います。  先ごろ発表されました経済企画庁の平成十一年度国民生活選好度調査によりますと、失業の不安を感じているという人が九〇年には二〇%台であったわけでありますが、昨年は四九・八%という、半分の人が不安を感じている、こういう結果が出ておるわけであります。  先ほど草野公述人からるるお話がございましたように、将来の不安、特に雇用の不安をなくさなければ景気がよくならない、そして政府、自治体で百万人の雇用の創出を図るべきだ、こういう御意見が草野公述人から出されたわけであります。  そういう中において、水口公述人は経団連にもおられたわけでありまして、その著書の中でもヒューマンキャピタリズムということを提言されておられるわけであります。これは、私なりにあれしますと、人間の顔を持った資本主義というふうに訳されるのでありましょうか、そういうお立場から、現在の雇用失業情勢また企業のリストラ等をどう見ていらっしゃるか、また政府雇用対策について何か御提言でもお聞きできればと思いますが、御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  96. 水口弘一

    ○水口公述人 お答えいたします。  ヒューマンキャピタリズムという、随分古いのを読んでいただきましてありがとうございます。  私は、一般論から申し上げますと、先ほど二兎を追う者はということがありましたけれども、今日本ではどこでも全部極論ばかりやるという悪い傾向になって、我々が市場主義経済論を言うと、すぐ反対者は、市場万能主義はだめだ、こう言うわけですね。あるいは、会社が利益を第一に考えなければならないと言うと、では従業員とか地域とか環境のことはいいのか、それを全部包含しないと利益が出ないという状況になっているということを反対論者はよくわかっていないというようなことがありますので、私は、余り極論で意見をするということは極めて生産的ではないというのは一つの前提として申し上げます。  それから、雇用問題につきましては、私は、そう大きな問題ではないと若干楽観視をしております。恐らく失業率のピークは過ぎたのではないかというふうに考えております。これには恐らく異論のある方が多いかと思いますけれども。  ただ、問題は、最近のを見ていますと、その中身が、三十人以上の大企業の失業率は高くなってきて、三人から十人というような小企業の就業率が非常に高い、しかも、九八年の十月以降、信用保証協会の特別枠というものができてからそれが顕著になってきているということは、見方によっては、それによって日本経済構造改革が進むのか進まないのかという大きな問題は提起されておりますけれども、現実においては必ずしも、現象面ではそういう状況になっている。  それからあと、大企業のリストラという場合は、これからの商法改正その他の、会社の分社化とかいろいろなことによりまして、私は、それぞれ企業はみんな雇用は守っていくということに恐らく努力していると思います。だから、例えば日産自動車のようにドライな外人経営者が来た場合は別でありますけれども、日本人の経営者でいる限りは、日経連は、奥田さんは、顔の見える市場主義、こういうことを言っておりますけれども、そういう方向に行くであろう。  問題はむしろ、少子高齢化という中で、あるいは女子就業率が非常に低いという中で、こういう人たちをどうやっていくか。それから高齢者、特に団塊の世代以前の人たちは、本当にこのIT社会の中で、従来の経験、キャリア、それに新しいものを加えて、新しい労働力として入っていける環境をどうしてつくっていくかということに政府としては十分意を尽くしてやっていくべきだ、このように考えております。
  97. 石田勝之

    ○石田(勝)委員 水口公述人にもう一点お聞かせいただきたいと思います。  与党三党派の合意の中で、デノミネーションの実施の検討、デノミも含めて協議を開始するというのがあるわけでありますが、水口さんはデノミには大変積極的な御意見をお持ちだというふうに伺っておりますが、今デノミを実施することのメリットをお聞かせいただきたいと思います。
  98. 水口弘一

    ○水口公述人 私は、かつては、デノミは単なる名目の変更だけだから意味がない、こういう意見でありましたけれども、意見を変えましたのは、やはりユーロの誕生という問題が一つ。それからもう一つは、ドルに対してあるいはユーロに対しても百円そこそこまで来たというような時期。それからもう一つは、歴史的な過程の中で、いよいよ二十一世紀に入るということで、一九九〇年代の清算も含めまして、このときに一気にやる。もちろんこれは、ただ最終的には、僕は、経済学の問題ではなくて政治の問題であろうと思いますので、政治がいかにそれを判断してやっていくかということであろうと思います。  また、先進国ではそういうことをやったことがないという意見がありますけれども、フランスは現に数年間の期間を経て十分やってきたということもありますし、また反対論の中には、技術的に無理だという話をする方がいますけれども、僕は、これだけのハイテクの時代に、技術的に無理だというのは全くナンセンスであるというような考え方をしております。  今申し上げたような三点から、政治的な決断をいつされるかということであろうか、そのように考えております。
  99. 石田勝之

    ○石田(勝)委員 時間になりました。終わります。
  100. 島村宜伸

    島村委員長 次に、鈴木淑夫君。
  101. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 自由党の鈴木淑夫でございます。  きょうは、四人の公述人の方、お忙しい中を大変ありがとうございます。また、それぞれ陳述されました意見、示唆に富む点も多く、大変興味深く拝聴いたしました。  時間が限られておりますので、最初に四人の公述人それぞれに質問を先にばあっと申し上げますので、順番にお答えいただければありがたいと思います。  まず最初に、草野公述人でございますが、連合さんの御意見、非常に広範にわかりやすくお述べいただきまして、ありがとうございました。  その中から、一点だけ選んで質問させていただきます。それは、基礎年金についてでございます。  おっしゃいますように、公費負担を現在の三分の一から二分の一に上げる、逆に言えば保険料負担を三分の二から二分の一に下げる、これは早急に実施すべきだ、私も全くそう思っております。ただ、これは全く対症療法みたいな話で、全然改革になっていない、とりあえず手を打っただけだと思うんですね。保険料で負担する部分と公費で負担する部分とあるわけですが、公費負担の中身は一体何だというところを突っ込んでいかないといけない。どの税目なんだ、あるいは、ひょっとして赤字国債を発行して将来世代にツケを回しているのか、そこまで突っ込んでいかなきゃいけないと思うんですね。  私ども自由党は、御承知のとおり、公費負担側よりも先に保険料の方を見ておりまして、基礎年金について、社会保険制度を維持するのは無理だと考えております。それは申すまでもなく、少子高齢化が進みまして、保険料を払う現役世代の数が相対的に減り、受給を受ける方の高齢者がふえるのでございますから、これは保険制度を維持しようと思ったら、保険料を引き上げるか、受給水準を下げるか、赤字国債を出して将来世代にツケを回すか、三つに一つしかない。それを少しずつやってみても、問題の解決にならない。だから、公費負担を二分の一に上げるというのは、とりあえずはいいんですが、これは問題の解決にならない。  そこで、質問は、私どもが言っておりますように、基礎年金のところは少なくとも保険制度をやめちゃって、保険料をゼロにする。そのかわり、消費税を目的税化して使う。この方が、実際は現役世代の負担はずっと小さくなるわけでございますし、公平になると思いますが、それについて御意見を伺いたいと思います。  次は、水野公述人で……
  102. 島村宜伸

    島村委員長 ちょっと申し上げますが、これは、四人の方に質問だけで時間が経過しますが、少しお絞り込みください。
  103. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 それでは、お一人に一分ずつで申します。  大変広範な、いろいろな税制について御意見をおっしゃいました。  一つだけ伺いますが、私は、所得課税について、非常にたくさんある所得控除制度を取っ払っちゃって、やめちゃって、その結果、最低課税所得は下がりますね。そうしておいて、税率を下げてフラット化しちゃう。それができれば総合課税に移行できるなと思っておりますが、それについてどうお思いでしょうか。  それから、谷山公述人でございますが、公共投資重点じゃなくて、消費にターゲットをとおっしゃいましたが、大体、日本景気回復を調べてみて、消費主導型の回復というのはほとんどないわけで、民間主導という場合は設備でございます。  私どもは、公共投資もさることながら、九・四兆円の減税をやっております。いわばサプライサイドにねらいをつけた。これは本年度やっております、そして来年度にもそのまま継続していきます。そういう、税制の方から設備投資を引っ張り出し、ある程度消費を引っ張り出して、やる気を起こさせてという、サプライサイド政策にもかなり重点を置いた財政政策をやっているつもりでございますが、それについてどうお思いでしょうか。  最後に、水口公述人。水口公述人の、株価の回復、何か財政の手を打つたびに回復するが、麻薬が切れるように息切れをして落ちている、それはそのとおりだと思うんです、過去三回は。ところが、今度はちょっと違うところがあると思うんです。  一つは、今までは不良債権問題を先送りにしたままでした。今度は六十兆円の枠組みで抜本的な手を打っております。  それから二番目に、今言いましたが、サプライサイドをねらって、所得課税が四兆円、法人税が二・三兆円、それから情報投資促進などの減税もさらに二・三兆円やって、九・四兆円の大幅減税をやった。それも、ことしも続けてずっといくわけですね。  それから、水口さん自身もおっしゃいましたが、ミレニアムプロジェクト、量は小さいかもしれないが、IT革命とか遺伝子の解明とか、そういうところにもねらいをつけている。少なくとも三点で、ちょっと今までとは違う手を打ったつもりでおります。  これは、いわば経済構造改革に相当ウエートをかけているのであって、単なる景気対策ではないつもりなのでございますね。その点についてどう御認識かを、お一人ずつお答えいただければありがたいと思います。
  104. 島村宜伸

    島村委員長 では、四名の方、一分ずつでお願い申し上げます。
  105. 草野忠義

    ○草野公述人 時間がありませんので、簡単に申し上げたいと思います。  連合といたしましては、今回の年金改正については、ここにございますように、かなり詳細な試算をしてございますので、また先生の方にお話を申し上げる機会があればと思っております。  一つには、我々は二段階方式を考えておりまして、当面は基礎年金の二分の一を公費負担、その場合には一般財源を充てていく。将来的には、基礎年金については全額税負担という方式を考えておりますが、その場合に、税を何をもって充てるかということについては、まだ検討の余地があろうかと思います。  それは、一つには、消費税が今、益税その他十分なシステムになっていない、ここをまず基本的に変えていく必要があるのではないかということと、先ほどからも議論になっておりますように、いわゆる直間比率も含めまして税体系全体をどう見直していくかということとの絡みがある、このように理解をいたしております。  以上でございます。
  106. 水野忠恒

    ○水野公述人 では、簡単にお答えいたします。  今先生おっしゃいましたように、私も、たくさんある所得控除、特に人的控除の問題など、大幅に削るということには賛成でございます。それによって、課税ベースを広げまして税率を下げるということです。  問題は、世帯が違う場合、いわゆる夫婦世帯、家族四人世帯、あるいは単身世帯といろいろありますので、このような場合に複数の税率を用いる必要があるかどうか、この辺はどうも検討課題として残りますので、その辺はまた考えさせていただきたいと思っております。  失礼いたします。
  107. 谷山治雄

    ○谷山公述人 先生の御質問は、お答えするだけで十分以上かかりそうなんですが、簡単に言いますと、設備投資の増強が景気回復に必要なことは十分わかっておりますけれども、これは税制でやりますといろいろな特別措置を講じなきゃならない、そういう問題がございますので、それを税制上どういうふうに考えるか、こういう問題があると思います。  それからもう一つは、今の、どちらかといえばいわゆる高額所得者優遇の税制というのは、一般論でありますが、貯蓄に回るということで、消費に回らない、そういう問題がございますので、むしろ消費に回るような減税をやるべきである。  ですから、設備投資増強ならば特別措置が必要ではないか。それから、消費の増強ならば、消費を促進するそういう減税が必要である、かように考えております。
  108. 水口弘一

    ○水口公述人 基本的に、先生の御意見と私は同一でありまして、需要サイドだけの刺激ではもうだめになってきた、やはりサプライサイドを強化しなければだめだ、そういうことだと思います。  今回は違うというのはおっしゃるとおりで、私も、先ほども申し上げましたけれども、九八年十月の株式市場、恐らくあれが大底だろうと思いますし、恐らく経済の実勢は、統計的に見ますと、去年の何月かに恐らく大底を打っているのではないかと思いますので、これから構造改革はますます続けていただきたい。  特に今、国際的には、日本構造改革はちょっとストップをし始めたんじゃないかという評価が割合と出始めておりますので、今年度の経済運営方針にもありましたけれども、間断なき、揺るぎない構造改革の推進、促進ということを言っておりますので、これはぜひ続けてやっていただきたい、このように考えております。
  109. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 どうも十分におさめていただきまして、ありがとうございました。  これをもって終わります。
  110. 島村宜伸

    島村委員長 次に、生方幸夫君。
  111. 生方幸夫

    ○生方委員 民主党の生方幸夫でございます。  公述人先生方には、お忙しいところ貴重な御意見を聞かせていただきまして、大変ありがとうございました。私は、持ち時間が三十分ございますので、ゆっくり質問させていただきたいと思います。  まず、草野公述人にお伺いしたいんですが、今、国民の間にはいろいろな不安が渦巻いている。とりわけ、今、年金の改革法案が出ておりますので、年金に対しての関心は皆さん非常に強い。それから、これから高齢化社会を迎えるということでございますので、医療保険に対する関心も非常に深い。それから、現実の問題としては、雇用の不安というのも非常に大きいというふうに思っております。  したがって、こういう不安が渦巻いている中で消費をしようというふうに言っても、消費はなかなか躍っていかないというふうに思うんですね。今もお話ございましたように、なかなか個人消費主導で景気回復するということはないのかもしれませんけれども、さはさりながら、GDPの六割を占める個人消費回復しない限り本格的な景気回復というのもあり得ないというふうに思っておるわけでございます。  そういう観点から見ますと、今度の予算は、その国民のもろもろの不安に対して、十分にそれを解消するものになっているのかどうか、まずその点からお伺いしたいと思います。
  112. 草野忠義

    ○草野公述人 先ほども申し上げましたように、現状、将来に対する社会保障の不安というものがやはり極めて大きな課題だろうというふうに思っております。と同時に、先ほども御指摘になりましたように、雇用問題の将来に対する不安、このことがやはり個人消費を手控えさせるという一番大きな要因になっているんではないか、このように認識をいたしております。
  113. 生方幸夫

    ○生方委員 一時失業率が下がったんですけれども、また四・七%に上がってきてしまっているということがあるわけです。政府ももちろん、百万人雇用創設というような形でいろいろな対策を打っているんですけれども、なかなかそれが動いてこないというのが現実でございます。  個々の企業にとってみれば、現下、この厳しい状況を何とか脱出しようということであれば、やはりリストラをして人を減らすというのが一番手っ取り早い方法であるというふうに考えるのですけれども、これを大企業がみんなやってしまいますと、それを吸収する新しい企業が起こってきたり、新しいサービスが起こってきたりすればこれは吸収できるんですけれども、残念ながら、今それがない段階でリストラの方が先行してしまっているから、こういう数値が出てくるんだというふうに思います。  先ほど、公述人のお話の中で、介護・福祉分野を中心に四十五万人、教育関係で三十五万人、保育所関係で五万人、それから環境などで二十万人の、トータル百四十万人の雇用を創出しなければいけないというような御指摘がございました。  私は、もちろんこれぐらいの人数の雇用をつくり出していかなければいけないというふうに思いますが、政府が具体的に予算措置としてどういう政策をとればこれだけの雇用が確保できるというふうにお考えになっているのか、教えていただければありがたいのですが。
  114. 草野忠義

    ○草野公述人 簡単に申し上げたいと思いますが、まず、基本的には、今の状況の中でいかに雇用を守っていくかというのは、個別の企業の、ある意味では労使の最大の責務だろうというふうに思っております。そういう意味で、日本の経営の一つの理念であります人間尊重、人間を大事にしていく、雇用を大事にしていくという経営者の一つの考え方をぜひ貫いていただきたいというのがまず第一点であります。  第二点といたしましては、そうはいいましても、現実にリストラ等で人員減というのが起きておりますので、これをカバーしていくためには、新しい産業あるいは新しい仕事というのを起こしていく、いわゆる雇用創出の政策をぜひとっていただく必要があるだろう、このように考えておるところであります。  そして、私ども連合といたしましては、当面の雇用創出目標の内訳といたしまして、先ほど申し上げましたように、また先生も御指摘になりましたように、百四十万人の雇用創出計画ということを出しておりますし、特に、政労使雇用対策会議の中でも私どもはこの点を主張し、一方では、労使協力をいたしまして、日経連との間でもこのことについては話し合いをし、一定の合意に達して、その主張を労使で政府の方にも申し上げておるというようなことで、既に何回か会合をやってきたというふうに理解をいたしております。
  115. 生方幸夫

    ○生方委員 私ども、今度の予算公共投資が相変わらず非常に多い。私は、公共投資を全面的に否定をするものではございませんが、やはり公共投資の中身というものを見直していかなければいけないというふうに考えております。  前回私が質問に立ったときも、公共投資の乗数効果というのが非常に落ちてきている、それから、公共投資の雇用創出効果というのもかなり落ちてきているんではないかというふうに言われております。これは統計があるわけではございませんが、ある地方公共団体によりますと、公共投資による雇用創出効果よりも、むしろ福祉や社会保障に対する投資をした方が雇用創出が大きいというようなことも言われております。したがって、私どもとしては、予算全体のあり方を見直して、やはり重点を置くべきところを、不安を解消するという意味からも、福祉や社会保障に対して重点的に予算を配分するべきだというふうに考えておるのですけれども、それについてはいかがでございましょうか。
  116. 草野忠義

    ○草野公述人 御指摘のように、また先ほど私申し上げましたように、公共投資について全体をコントロールするという意味の施策が必要だと思いますし、公共投資の中身をやはり見直していくということをまず第一義的にやるべきであろうというふうに考えております。  そして、福祉関係、特に介護の問題等につきましては、まだまだ現状ではとても対応できる状況にはなっていない、こういうふうに理解をしておりますし、今後高齢化社会が進むに当たって、今先生御指摘のように、その部分での雇用創出の効果というのは極めて大きなものがある、潜在能力がある、こういうふうに理解しておりますので、特に予算編成に当たりましては、そういう面での雇用対策効果を十分踏まえた上での予算編成をぜひお願いをしたい、このように考えております。
  117. 生方幸夫

    ○生方委員 最後にもう一点伺いたいのです。  もう何回も出ております、二兎を追うのか、一兎を追うべきかというような論議がございますけれども、連合さんの考え方としては、今景気財政改革と両方あったとすると、どちらもか、どちらにか、どういうお考えを持っているのか、お聞かせください。
  118. 草野忠義

    ○草野公述人 今御指摘のように、基本的には、当面の現状を考えますと、やはり景気対策を優先して考えるべきだということは、これは否定はできないだろうと思います。  しかしながら、将来に対する不安の一つとして、先ほども他の公述人からお話ございましたように、かなりの国民の方が日本の将来の財政についての不安感を持っておるということは事実でございますので、その不安を解消していくためにも、将来の財政再建、あるいは財政のあり方、あるいはどうしていくべきかというビジョンというものはきっちりと見据えていく必要があるし、それがやはり政府、行政の責任の一つということが言えるのではないか、このように考えております。
  119. 生方幸夫

    ○生方委員 次に、水口公述人にお伺いしたいのですが、先ほどの説明にもございましたが、二兎を追う者は一兎も得ずということではなく、二兎を追うべきであるというふうに多分おっしゃったんだと私は思うんです。そのときに、車の前後輪であるというようなことをおっしゃったのですが、中身がちょっとわからなかったもので、もう少し御説明をいただきたいと思います。
  120. 水口弘一

    ○水口公述人 お答えいたします。  私の表現が早口で、非常に時間に追われていたので誤解を与えたかもしれませんけれども、私は、二兎を追うということは間違いである、こう申し上げたのです。二兎というのはいないんだ、ウサギは一つである。やはり、国民生活を豊かにする、日本国の競争力を強くする、そのために手段として公共事業中心とする財政を出す、あるいはそれが限度になったときに財政構造改革をしていく、あるいは構造改革として規制の緩和とか、あらゆるものをやって民間の活力を出すようにするということをすべきである、そういうことを申し上げたわけでございます。  したがって、目標一つである。例えば、これは大蔵大臣にも申し上げたことがあるのですけれども、景気が本当に本格回復軌道に乗ったら、すぐ財政構造改革に手をつける、本当にそんなことはできるのか。例えば、もう完全に景気が底を打って上昇軌道に乗りましたというときは、何かいつも経済企画庁は学者を大勢集めて、そこで判定会みたいなことをやって、もう物すごくおくれちゃっているわけですね。世の中のスピードは速いわけですから、そんなことはしていられない。  もう一つ申し上げれば、スピードということで、今度の東京都の石原銀行特別税は、やはり政府の税制調査会のスピードのなさが、ある意味では間隙をつかれた。よく言うのです。例えば、かつては法制審議会があるためになかなか商法改正ができないと言っていたのが、議員立法でやったらば、さっといった。やはりそういう時代になっているという認識が非常に重要であろうと考えておりますので、私どもは先生方に期待するところ大であります。  以上でございます。
  121. 生方幸夫

    ○生方委員 今の話とちょっと関連するのですけれども、私、運輸審議会が答申を出すのが十五年に一遍だという話をきょう運輸省の方に聞きまして、十五年後に鉄道がどう通るかといって、それでだれか喜ぶのかなということを聞いていて思いまして、審議会に答申を出していただくのも結構なんですけれども、もっと早く機動的に出す、それで政策を変えるということが必要だと思うのですね。  そういう意味で、今度の予算措置を見ましても、公共事業の中身、先ほど御評価なさっていましたけれども、我々から見ると言葉ほどに、経済新生政策で何かこうとりましたよと言っても、その額から見ると、八十五兆の予算から見たらほんの小さい額にしかすぎないわけで、構造全体としては、例えば省庁別の比率なんかを見てもほとんど変わらないわけですね。  私は、これは水口公述人にお伺いしたいのですけれども、もっと抜本的に予算編成のあり方そのものを変えないと、これだけ財政も悪化しているわけですから、そう簡単に、景気回復したからといって財政がこのままよくなるということは、試算でも三・五%成長したってどんどん財政赤字が膨らんでいくということになっているわけですから、抜本的な見直しが必要だと思うのですけれども、それについていかがでございますかということと、抜本的な見直しについてのアイデアがあったら教えていただきたいと思います。
  122. 水口弘一

    ○水口公述人 おっしゃるとおりだろうと思います。  私は、いろいろな制約と枠組みの中で財政当局は一生懸命努力した、したがってやむを得ないと申し上げたのですけれども、その制約の中には恐らく、国会における公共事業中心とする、あるいは社会福祉を中心とするいろいろの議員の方々の御意見もあり、あるいは制約の中には縦割りということがあるということであろうと思います。したがいまして、例えば、かなり中身は弾力的にしたと財政当局はおっしゃいますけれども、我々民間から見てみますと、〇・一%動いて、それで大きく動いたということは全く考えられないわけでありまして、最低でも一〇%ぐらいは動かないとだめだというふうに思います。したがいまして、この枠組みを全部変えていくということが必要だと思います。  それから、さらに言えば財投という問題、これは、ここまで触れたら切りがなくなりますけれども。あるいは郵貯のあり方であるとか、あるいは国の予算のバランスシートのつくり方であるとか、そのような問題を十分に検討して、この一年の間に次に備えてきちっとやっていくということが必要だろうと思います。  それで、私は、財政再建というよりもむしろ財政構造改革というものはやはり現実的な面も必要でございますので、例えばアメリカの一九九〇年OBRAのように、十年計画ぐらいでもって、きちっとした段階的なアプローチをしていく。もちろん中身は、税収はふやす。今我々の方でも直間比率の是正というところまでは合意はできておりますけれども、具体論になると全く意見が分かれるということでございますので、最終的には簡素、中立、公平というような観点からの消費税のアップ、そのかわり、どこをどうするかということを真剣に考えてやっていただきたい、このように考えております。
  123. 生方幸夫

    ○生方委員 最後にもう一点だけお伺いしたいのですが、さっきもお話をしたのですけれども、大企業の再建ということになるとやはりリストラというのが手っ取り早いということで、どの企業もリストラに一生懸命になっているわけでございます。  私、アメリカ企業を研究したときに、リストラと同時に、単に減量するだけではなくて体質を改善しなければいけない、むしろ体質改善の方を学ぶべきですよ、それがまさに日本の言葉で言えば構造改革ということになると思うのですけれども、残念ながらまだまだ、一部の体質改善は進んでいるのでしょうけれども、やはり減量の方にばかり目がいってしまって、本当の意味の体質改善はなかなか進んでいないんじゃないか。  そうしますと、問題が二つ出てくるわけでございます。体質改善をしないと競争力が強くなっていかないということが一点。それともう一点は、リストラによって出ていった方たちの行き場所がきっちりとないということは、社会的コストがそれだけ膨らむということでございますから、企業はよくなったとしても、一部の大企業はよくなったとしても、社会全体から見ると、やはり今、二極化しているわけです。指標は、一極化している方の指標によって数字はよくなっているのですけれども、この間、タクシーの運転手さんや何かのアンケートを経済企画庁が行ったら、みんな悪く思っているというこの二極分化。国民はみんな余りよくなっていないというふうに思っていながら、数値だけはよくなって、本当にごく一部の企業だけが引っ張っているという構造は余り、もちろんこれは過渡期ですから、いつまでもこれでいったら困るわけで、過渡期ですからしようがないとは思うのですけれども、その辺、雇用の問題と絡めて大企業のリストラの進め方について、お考えがございましたらちょっと教えていただきたいのです。
  124. 水口弘一

    ○水口公述人 一つ、世論調査という場合は大体、もうかっている人とか非常にハッピーな人は、おれはハッピーであるとか、おれはもうかっているとは言わないものなんです。株の場合でも、もうかった人はもうかったとは言わないのです。損をした人だけが言うということはある程度割り引かなければいかぬとは思うのです。  ただ、大企業のリストラという場合、例えばこの間日経連はワークシェアリングということを打ち出しましたけれども、このワークシェアリングに対する考え方が欧米、特にヨーロッパあたりと大分違っているというような考え方も聞きます。ですから、事実、産業界自身としても、今話題になっておりますオランダ、チューリップモデルであるとかいろいろ言われておりますけれども、オランダのやり方についてもう一度真剣な勉強をしようということを考えておるようでございます。これはむしろ連合さんの話ですけれども、やはり労使両方でもってどうするかということは考えていくということだろうと思います。  それからもう一つは、労働市場の弾力化という場合、例えば官庁、労働省中心でやっていくということはやはり問題ではないかというふうに私は考えております。かつては、数年前、三年ぐらい前までは、労働法規は全部社会的法規だから規制緩和の必要はないというのが労働省の言い分だったわけでございまして、職業紹介を国家独占にしている国は、その当時先進国で日本しかなかった。これは徐々に民間で自主的にやっていくという方向に今移りつつありますので、そういう方向をさらに伸ばしていくということになれば、問題は徐々に解決されていくというふうに考えております。  また大企業においても、ばっと首を切ってやるなんということは実態問題としてできませんね。やはり分社化をして、そして能力に合わせた所得を払うという格好にこれからどんどん動いていくと思います。そういう点では、法律改正というのは非常に力になり得る、こんなふうに考えております。     〔委員長退席、町村委員長代理着席〕
  125. 生方幸夫

    ○生方委員 最後にと言っておいてまことに申しわけないのですけれども、もう一点だけお伺いしたいのです。  株価が最近は回復をしておる、それを引っ張っているのはIT産業だというふうに思うのですけれども、IT産業の中には、時価発行総額なんかを見ても、我々から見てちょっとこれはおかしいのじゃないかなというようなものがなきにしもあらずで、その部分をバブルというふうに呼ぶ方もいらっしゃるわけですね。そういう企業を見ますと、浮動株が非常に今少なくて株価が上がりやすい構造になっているので、その株価が上がることによって株式市場全体が上がっていったのを見て株価が回復したというふうに見るのは、私は、ややバブルの部分を差し引いて見ないといけないのではないかなというふうに思うのですが、その点いかがでございましょうか。
  126. 水口弘一

    ○水口公述人 株式市場の問題は常に結果論でございますので、非常に難しいわけでございます。  先ほども申し上げましたが、現実に現在でも、九八年十月からこの二月、二万円に回復するまでに五五%平均株価では上がったわけでありますけれども、その中で、それ以上に上がっている、あるいは八九年の高値以上になっているというのが通信を初めとして数業種ある。そのかわり、それ以上のパフォーマンスになっていない、上がっていない、逆に下がっているというものが十四業種あるということを申し上げました。  したがいまして、今アメリカでもそうです、特に日本の場合は、新しいマザーズであるとかナスダック・ジャパンとかいうものが出始めておりますけれども、この辺はきちんとしたディスクロージャーと、それから途中における流通開示という問題をきちっとしてやらないと、特に、みんなそれぞれ浮動株、流通する株が非常に少ないわけですから、買えば上がる、売ろうと思えば下がるということになりますので、私自身も金融・資本市場の関係者の一人といたしまして、今ゼロ金利下でございますので、個人お金がいろいろな投資信託や何かに入ってきて、ある証券会社は一月もしないうちに、ある投資信託は一兆円近く集まった、こういうようなところもありますので、そのパフォーマンスについては非常に慎重にやっていくということが重要な時期に来ていると思います。
  127. 生方幸夫

    ○生方委員 続いて、谷山公述人にお伺いしたいと思います。  公共投資に関して、イコール建設公債という方程式を打ち破っていかなければいけないと。私たちも、赤字国債と建設国債というのはもう分けるのはナンセンスなんじゃないか、世界的に見ても余り分けている国はないのではないかというようなこともかつてから指摘をさせていただいておるのですけれども、その点について、公債の見直しというのですか、一くくりにくくった方がいいのじゃないかというふうに思うのですが、いかがでございましょうか。
  128. 谷山治雄

    ○谷山公述人 お答えいたします。  御説のとおりでございまして、建設国債、そういう言葉はもともとないわけなんですが、要するに建設公債と特例公債とを分けること自体が問題なので、公債、あるいはもっと言えば政府債務全体と言ってもいいのですが、そういう角度から問題にすべきである、かように考えております。  御指摘のように、諸外国で建設国債と特例とを分けている国というのは私も寡聞にして知りませんので、これは財政法の解釈からくるそういう言葉だと思いますので、これはやはり、公債は公債で、税収が足りないから発行するわけでございますから、そういう角度から総合的に見るべきだ、かように考えております。
  129. 生方幸夫

    ○生方委員 私はこれは宮澤大蔵大臣にこの間質問をしたのですけれども、大蔵大臣のお答えは、やはり赤字国債赤字なんだというのがあるのが発行に対する一定の歯どめになるのだから、やはりそれは残しておいた方がいいというようなお返事だったのですが、それについてはいかがでございましょうか。
  130. 谷山治雄

    ○谷山公述人 今申し上げましたように、税収が足りないから発行しているわけでございますから、建設国債であろうと何であろうと、赤字であることには変わりないということだと思うのですね。  ただ、問題は、私は別に公共投資を無条件に弁護するつもりはございませんが、公共投資というのは固定資産の形成になるわけなので、そこが企業で言うなれば運転資金に使われるものとは違うという意味では、私は意義は一応わかりますけれども、財政運営全体としましては、やはり今申し上げたように、そういう赤字国債と区別することが歯どめになるなんということはあり得ない話でございまして、総合的に判断すべきだと私は考えるわけでございます。
  131. 生方幸夫

    ○生方委員 現在、我が国財政事情というのは極めて厳しい状況にあって、これまでの予算委員会での議論をずっと聞いておりましても、なかなかこの国と地方合わせて六百四十五兆円ある負債をなくしていくという妙手は考えられないと思うのですね。景気が極端によくなって、一〇%成長でもするというのであればともかくとして、そのときはもちろん金利も上がるでしょうから、そう簡単な問題ではない。  そこで、私は私なりにいろいろ考えまして、やはりこれは、一億二千五百万人という人口規模で考えると、なかなか改革もしようがないのではないか。午前中にスウェーデンの改革の話が出たのですが、スウェーデンは八百万人という人口でございますから、その中では何かしらの方法を打てるのではないか。私なんかもちょっと考えれば、あそこは一千万も人口がないんだから、日本でいえば一地方自治体と同じようなものなんだから、改革は簡単だよなんということを軽く思ったりしているわけでございます。  そうなりますと、何を言いたいかというと、日本もやはり道州制という、呼び方は何でもいいのですけれども、ある程度の、一千万人ぐらいのまとまった単位をつくって、そこの中で改革をしていくというふうに考えれば、発想を全く転換して考えれば、六百四十五兆円も何とか解決できる道筋が見えてくるのではないかというふうに勝手に考えたりしておるのですけれども、いかがでございましょうか。
  132. 谷山治雄

    ○谷山公述人 私も、六百四十五兆円の政府債務がそう簡単になくなるとは思っておりません。そこで、どうやってこれをやっていくか、そういうことになってくるわけでございますけれども、簡単に言えば、歳出を削減する、それから歳入を増加するということになってしまうのですが、これはなかなか至難のわざでございまして、どういうふうにやっていくか、そういうことになるわけなので、私は、この機会に、かつての財政構造改革法のようにキャップで抑えてしまうというのじゃなくて、言うなればアメリカのペイ・アズ・ユー・ゴー政策みたいに、そういう管理をしていく必要があると考えております。  今お尋ねの地方分権、人口との問題でございますけれども、スウェーデンも人口は少なくても一つの国でございますので、それなりの苦労があるわけなので、小さいなら小さいなりに器も小さいので苦労があるわけなので、スウェーデンは人口が少ないから簡単だ、そんなことは決してないと私は思います。  そこで、ただいま御指摘のようなことで、一つの単位を小さくしていくということが大事なことなので、それで今、地方分権ということが言われているわけでございます。東京都の例の税金も、東京都という一つの交付税をもらっていないそういう単位でできる話なんでありまして、そういう意味では、やはり単位ごとに区切っていく。これは、日本で言えば一種の地方分権、そういうことになるので、この機会に地方の税財政を根本的に改革いたしまして、地方にもっと独自性を与える、こういうことが大事なんです。  今先生御指摘のスウェーデンの場合も非常に地方分権が発達した国でございますので、そういったところは、医療とかいろいろな改革を地方が進めていってかなり成功している、そういうのがございますので、今の御質問は、私から言わせますと、地方分権をもっと徹底し、強化していく、こういうことが財政改革の道筋の一つになる、かように考えております。
  133. 生方幸夫

    ○生方委員 最後に水野公述人にお伺いしたいのですが、私も財政構造改革特別委員会に入っておりまして、ここで当時、財革法の論議をしたのですが、そのときは我々は、攻守ところ変えたということでもないのでしょうけれども、ブレーキとアクセルを両方踏むことはできないんだから、今はもう景気対策をやるべきだというふうに主張したわけです。そのときにいわばアクセルの財政構造改革法にのっとった予算をつくってしまって、補正、補正、補正で来たのが財政を悪化させてしまったのではないか。  結局、あのときは我々はツーレート・ツーリトルだというような言い方をして、やはり早目に手を打てば大きく傷は広がらない。その早目にということが、これは企業でも今非常に大事なことだと思うのです。さっき東京都の例を出されましたが、早目にやるということに関して言うと、今の日本のずうたいが中央政府は少し大き過ぎるのじゃないか、やはりこれを何とか効率的に、早目に決断が下せるような形に変えていかなければいけないのじゃないかというふうに私は思うのですけれども、公述人のお考えをお伺いしたいと思います。
  134. 水野忠恒

    ○水野公述人 今先生お話しになりましたように、やはり政策というのはなるべく決断は早い方がよろしいと思っております。ですから、いわゆる二兎を追うか一兎にするか、この辺の判断は、先生おっしゃったように、もっと早ければ違った結論が出るかな、こういうように考えております。  ただ、税制の場合ですと、私ちょっと違った感触を持っておりまして、都知事などにしかられるかもしれませんが、やはり納税者の方の協力というのは、これは大変負担があるものですので、今回の場合のように、銀行は表向きの納税義務者ですけれども、結局のところはいわゆる住民全体ですので、やはりそれなりに時間をかける必要はあると思うのですね。税制をつくる側にしても、また取られる側にしても、いわゆる議論を重ねていくうちに新しい発想あるいは思いも寄らなかったような問題点が出てきたりいたしますので、税制についてはちょっと違った配慮は必要かと思いますが、財政構造改革あるいは金融システムの安定、こういった問題についてはやはり素早く決断をして実施に移す、こういうことには大賛成でございます。
  135. 生方幸夫

    ○生方委員 どうもありがとうございました。
  136. 町村信孝

    ○町村委員長代理 次に、木島日出夫君。
  137. 木島日出夫

    ○木島委員 日本共産党の木島日出夫でございます。  四人の公述人先生方には、大変貴重な御意見をありがとうございました。二〇〇〇年度予算の目的をどこに据えるかという、大変充実したお話をお聞きできたと思うのです。  私は、今の日本経済財政状況を見れば、この深刻な不況をどう打開するかという問題と、この深刻な財政をどう打開するか、この二つはやはりきっちりターゲットを絞って追い求めていかなければならぬと思いますし、日本の歳入構造、歳出構造全体を見直せば可能だと考えてはいるわけでございます。  谷山公述人にお聞きをしたいと思います。  ターゲットを景気回復に絞る、そこの中でも、国民消費回復、これこそが一番大事なターゲットだ、私も本当にそのとおりだと思うわけであります。そういう立場から、公述人から社会保障の問題や公共事業の問題が指摘をされましたが、先ほど村田委員からも、それにも財源が必要ではないかという御指摘がありました。確かに財源が必要かと思います。それに対して、谷山公述人から、歳出歳入、社会保障基金、地方財政、総合しての財政再建が必要だという御指摘もありましたが、先生は税制の専門家でもございますので、ひとつ歳入論、税制論についてお聞きしたいと思うんです。  先ほど、税の空洞化についてお話がありました。国民所得税収の関係が、九〇年と九七年を比較しますと、国民所得が一三・四%伸びておるのに税収が四・七%減っている、税の空洞化が見られるという御指摘がありました。  そこで、ちょっと詳しく、どこにその原因があるのか、どうすべきなのか、お話をお聞かせ願いたいと思います。先ほど、水野参考人から税制の話がありまして、中低所得者の減税がかなりやられたという指摘もありました。そんなことも踏まえながら、先生の税制論をお聞かせ願いたいと思うんです。
  138. 谷山治雄

    ○谷山公述人 お答えいたします。  現在、不況でございますので、まだ回復しておりませんので、増税の話というのは余りよくないわけでございますが、しかし私は、先ほど減税のやり過ぎという言葉をちょこっと使ったんですけれども、やはり最高税率の引き下げが税収減少の大きな原因になっていると考えております。  私の手元にあります財政金融統計月報なんかを見ますと、一九八八年、つまり消費税導入前ですけれども、そのときに、所得税、法人税の大きな減税が行われまして、その後、数回にわたって減税が行われておりますけれども、この所得税、法人税の平年度減税額というのを単純に合計しますと九兆円近くになります。まだ二〇〇〇年度の歳入は十分検討していないのでございますが、昨年、一九九九年度と比較してみますと、税収のピークはそれぞれ所得税、法人税、違いますが、一九九〇年度にそのピークであったわけですが、そのときに比べますと十九兆円税収減少になっております。今申し上げたような減税額は、平年度の単純合計でございますから正確な数字ではございませんけれども、要するにそのうちの約半分はそういう税率引き下げの減税によるもので税制の空洞化というものが行われている。あとの十兆円が、景気後退に基づくキャピタルゲインの減少等の減収だろう、かように考えております。  今すぐ所得税、法人税についてどういう増税をするかはなかなか難しい問題ではございますけれども、幾つかのヒントのようなことを申し述べさせていただきますと、一つのヒントは、実は今度の予算で、昨年三十八万から四十八万にふやしました子育て減税をやめちゃいますね。大変勇断のあることだと私は思うのです、一年たつとすぐやめちゃうわけなので。そういう意味で、私は、増税ということも不景気の中でタブーとは言えない、こういうふうに考えておりますので、ことしの予算とは言えませんが、全体としては、累進税率といいますか、そういう角度から増収ということも図っていくことが、今後、財政再建の大きなめどになるであろうと。  そうしますと、すぐ話が消費税に行くわけでございますけれども、諸外国の例を見ますと、もちろん消費税、付加価値税も問題ではございますけれども、例えばフランスなんかは、社会保障の目的で、法人税について一〇%ないし二〇%の超過課税をやっておりますし、それからドイツでも、東西ドイツ統一に際しまして、統一のための法人税の付加税を実行しているので、全体としての所得税、法人税の税率引き下げが必ずしも世界の大勢ではない。また、クリントン政権の場合も、所得税の最高税率は二八%から三九・六にまで上げているわけでありますから、私は、そういう意味でも、今すぐとは申しませんけれども、財政再建という長期な視点に立って、そういうような歳入の増加策を考えるべきではないか、かように考えております。  もう一つだけ、時間の関係もございますでしょうから申し上げますと、社会保険料の負担、これもなかなか負担でございまして、企業と両方負担しておるわけでございますが、一つの問題は、健康保険も厚生年金も全部頭打ちになっておりまして、一定の収入以上はどんどん負担率が減ってくるわけでございます。  私どもの計算によりますと、年収八百万円ぐらいのクラスですと、企業負担も含めまして、大体二五%ぐらいの社会保障の負担率になりますが、これが年収五千万円という上場会社の社長ぐらいになりますと、社会保障費の負担が四%に減ってしまいます。こういうことを改めれば、やはり社会保障の負担額といいますか、収入もふえる。そういう、景気回復と同時に財政再建も総合的に考えるべきだ、私はかように考えております。
  139. 木島日出夫

    ○木島委員 ありがとうございました。  実は日本共産党も、歳出にまずはメスを入れる。日本の、国の歳出、地方の歳出合わせますと、約五十兆というお金公共事業に使われている。社会保障全体には約二十兆なんですね。これは、欧米から見ると逆転現象が起きているというので、むだな公共事業に思い切ってメスを入れるということでむだ遣いをやめる。  そして一方で、私どもは歳入にもメスを入れなきゃいかぬと考えています。二〇〇〇年度の、新年度の予算で一般会計税収は四十八兆円ですから、最高時から十二兆円も減少しているんですね。これは、不況による減収もありますけれども、法人税率の引き下げ、所得税、住民税の最高税率引き下げ、地価税、有価証券取引税の廃止など、基本的には大企業、金持ち減税が繰り返された結果、こういう状況が生まれている。やはりここにもきちっと、こういうときですから、メスを入れることが求められているとは思っております。  次に、時間もありませんが、水口公述人にお聞きいたします。  ターゲットは一つだ、構造改革につながる総合経済対策をとおっしゃられました。恐らく、これはいわゆる規制緩和等を想定されておるのかなとは思うんですが、今の日本経済を見ますと、全体を一〇〇%としますと、やはり国民家計消費が六〇%を超えていますよね。設備投資が二〇%か、割っているんじゃないでしょうか。公共事業が約二割。こんな構造で、先日、宮澤大蔵大臣も、設備投資が伸びるということはなかなか期待はできない、そうすると、やはりいかにして国民消費が伸びてくるかだということが答弁の一部に出てきたんですが、率直に言って、今、国民消費はずっと低下したままですね。  それでお聞きしたいんですが、公述人の、この経済構造改革の柱の一つに、いかにして国民消費を伸ばすかということを入れなきゃいかぬというお考えはありませんでしょうか。特に、二〇〇〇年度予算のあり方にかかわってお聞きしたいと思うんです。     〔町村委員長代理退席、委員長着席〕
  140. 水口弘一

    ○水口公述人 お答えいたします。  私は、構造改革の重要性ということは常に主張しているわけでございますけれども、ただ、GDPの中に占める比率が六〇%だから、したがってということではなくて、やはり、従来的に言えば、キーは民間設備投資がどれだけふえてくるか、それがめぐりめぐって個人所得にどれだけ反映されるかということが一つだろうと思います。したがって、サプライサイドの考え方というのは非常に重要だろうと思います。  それからもう一つは、やはり金を持っている方々に聞くと、買う物がない、こういうのが一つあるわけですね。したがって、商品供給サイドの開発努力というのが非常に欠けているということはあると思います。  例えば、消費の統計を見ていましても、まず一番初めに百貨店がだめになった、それから、今スーパーマーケットが落ち込んできている。そうすると、やはり専門店が非常に今伸びてきているということは、そこに行けば安い価格で幾らでも物があるというような状況がございますので、供給サイドも十分に商品開発をしていく。これは何も一般消費財だけではなくて、金融商品でもあらゆる意味でもそうでございますけれども、その努力が非常に必要であろうと思います。そういう意味では、日本はこれからのIT革命の中でどうやっていくかという非常に重要な時期に来ている、このように考えております。  それからあと、今度の予算の問題について、では消費促進に何があるかということでございますけれども、私は、消費は結果として出てくるものであって、幾ら減税をしてもそれがすぐ消費に行くかどうかわからない。やはり経済の先の展望がなかなか立ちにくいという場合には、これは貯蓄に回る。  これは笑い話でございますけれども、きんさん、ぎんさんが御健在なころ、テレビや何かに出て非常に所得もふえたというときに、これはNHKの研究所の人に聞いたから僕は間違いないと思いますが、どうするんですかと言ったら、老後に備えて貯蓄をすると。こういう状況があるときには、幾ら政策的にどうのこうの、減税してもこれはだめでございますから、やはり環境を整えてやっていくということが非常に重要だろう、こう考えております。
  141. 木島日出夫

    ○木島委員 供給サイドを大変重要視する、私も重要視したいと思うのです。  ただ、今の日本の供給サイドを考える場合は、やはり空洞化の問題、設備投資が伸びない一つの大きな背景に、日本経済構造が海外進出等、電機もそうです、その他いろいろな分野がそうだと思うのですが、この空洞化の問題は避けられないんじゃないかと思うのですが、その辺は、公述人、どんなお考えですか。
  142. 水口弘一

    ○水口公述人 日本経済空洞化論、日本産業空洞化論は、一九九五年、為替レートが百円を切って大幅な円高になったときに、全部アジアへ出ていくということで空洞化論が言われたわけでございますけれども、今の問題は、明るい面を持っている国際貿易財といいますか、ダイナミックジャパンという表現をビジネス・ウイークがしましたけれども、ここが大体GDPの三割ぐらい、七割が、まだまだ規制に守られている流通であるとか建設であるとか不動産であるとかいう部門はかなり多い。  したがって、現在は、ここをどうにかしないと、先端的な、あるいはソニーにしろトヨタにしろ、コストとして非常にはね返ってくる、こういう土壇場に来ていると思いますので、構造改革をどんどん進めていく、規制を緩和する。これはアメリカイギリスの例もあるわけでございますから。  また、これにはそう金はかからない。もちろん、それによって利益が下がるとか、あるいは非常に失業が出るというようなマイナス面もありますけれども、これは産業構造の転換でございますから、それは、かつて日本においては農業から工業からあるいは繊維産業からそれぞれみんな転換をしてきたわけでございますから、そういう問題を早く片づけていくという土壇場に来ている、そういう考え方を持っておりますので、構造改革というのをどんどん進めていくということが基本であろうかと考えております。
  143. 木島日出夫

    ○木島委員 時間も迫っておりますが、草野公述人の、国民生活を向上させるということが今の不況打開の道にもつながるということで、私も本当に共鳴をしているわけでありますが、公述人の歳入論、税制論を一言簡潔に述べていただけませんか。
  144. 島村宜伸

    島村委員長 時間が既に経過していますが、一言だけ。
  145. 草野忠義

    ○草野公述人 歳入よりも、私どもは、やはり歳出をどう改革していくかということがまず先に考えられなければいけないのではないか。その中で、社会保障も含めまして、将来のビジョンを描いた段階で、歳入問題については、我々としては決してそれを避けて通るということはしたくないというふうに思っております。
  146. 木島日出夫

    ○木島委員 ありがとうございました。終わります。
  147. 島村宜伸

    島村委員長 次に、濱田健一君。
  148. 濱田健一

    濱田(健)委員 四人の公述人の皆さん、本当に長時間御苦労さまでございます。私でおしまいでございますので。  二点、端的にそれぞれにお伺いしたいと思います。  八十四兆九千億という大型予算景気、雇用に明るさを求める、光を求めるという予算だというふうに言っておられますけれども、細かいところはそれぞれございますが、全体を見たときに、従来型の公共事業中心、ある人に言わせると、ゼネコン、選挙対策予算ではないかというような言い方をしておられる方もおられますが、公述人の皆さん方、今の日本経済、雇用、景気回復、雇用創出というだれもがつぶやくこの言葉に、きちんとこの大型予算と称される二〇〇〇年度予算はインパクトありや否や、それぞれにお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  149. 草野忠義

    ○草野公述人 全体というのは私も承知しておりませんが、私の関係しております産業で申し上げますと、昨年来、補正も含めまして、かなり大型の予算が組まれておりますが、結果として公共投資の効果がほとんどあらわれていないというのが正直なところでございまして、そういう意味では、景気対策、雇用創出等言われておりますが、先ほどから言っておりますように、問題はやはり中身がどうかということに尽きるのではないかというふうに思っております。
  150. 水野忠恒

    ○水野公述人 簡単にお答えいたしますと、このような大型の予算を組んだということですので、それに対してそれなりの効果があらわれることを私は期待しております。  ただ、問題は、予算を組んだプロジェクトと具体的な執行の場面とのずれというのはどうしても出てまいりますので、それがどういう形で執行されているか、これに依存するところが多いのではないか。執行の場面ですが、それが当初予想したプロジェクトとかなりかけ離れた形になりますと、大分その効果は落ちるかな、こういうような懸念は持っております。
  151. 谷山治雄

    ○谷山公述人 お答え申し上げます。  私は、一九九七年度予算のような緊縮型ではないということはいいと思うのですが、しかし、インパクトという点から申しますと、先ほど申しましたように、消費回復が一番重要なのに、医療でも年金でもその他でも、むしろ不安材料を多くしている、そういう面がございますので、そういう意味では、言うなればマイナスのインパクトである。  それから、公共事業については、これもいわゆる金額を維持しておりますけれども、中身については問題でございますし、産業構造からして、今の公共投資やり方がいわゆるサプライサイドからいっても適応するのかどうか、こういう問題もございますので、私はそういう意味では大変疑問がある。  最後に、インパクトの一番マイナスの問題は言うまでもなく財政赤字の累増でございまして、これが、先ほど申しましたように、いわゆる国民消費、あるいは企業のビヘービアといいますか、これに非常によくない影響を与える。  そういう問題が出てまいりますので、私としましては、冒頭に申しましたように、緊縮型よりはいいかもしれないけれども、国民生活の向上や国民経済の安定や景気回復にとってはいかがなものか、そういうふうに考えております。
  152. 水口弘一

    ○水口公述人 簡単に申し上げます。  よくばらまき型であるとかいろいろなことが言われますけれども、私は、今まで続けてきた景気対策として最後の予算であるということは言えると思います。したがいまして、その効果については、非常に高い期待を持てばこれは裏切られる。ただ、そこそこということであれば、それなりのものにはなるというふうに考えております。  それから、これはまた業態によってかなり違いまして、先ほど申し上げた信用保証協会の問題なんかもこれあり、昨年あたりからずっとふえているのは建設業の労働者ですね。六百万人以上、常にふえてきているという状況があるというのが一つ。  それからもう一つは、大幅なハードランディングをしてしまった金融・証券市場、ここの会社については、もう人が足りなくなってきたということで、今物すごく新しく人を雇用し始めているというような動きが出ておりますので、やはり今は構造調整の一つのプロセスであると考えておりますので、先ほど来申し上げております財政構造改革という問題がこれから大きくのしかかってまいりますので、大蔵大臣言われるように、これが最後の予算で、これからはむしろ財政再建を考えながらやっていくという方向への転換ができない場合は、この予算の評価というものはそのときにもう一度し直さなきゃいかぬ、このように考えております。
  153. 濱田健一

    濱田(健)委員 私たちが選挙区その他で本当に生活場面の、一般の住民の皆さん方とお話をすると典型的に出てくる言葉は、このままでいくと高齢化社会、生き続けるための年金はどうなっていくんだというような話ですね。介護保険が導入されるんですが、未認定、認定外になったときに、認定されなかったけれども、実際これまでのデイサービスなりなんなり、老後の生きがいかれこれ、今厚生省や自治省はいろいろな手だてを講じていますけれども、そういうサービスが受けられるのかどうか。医療制度についても負担増だけがあるんじゃないかというような話。子供たちも保護者も何か未来に期待の持てないような子育ての中身や教育の中身かれこれ。いろいろな声が国民の本当に生活場面の素直な声として僕らに投げつけられる。  政治家ですので、ここはこうちょっときついけれども我慢してもらって痛みをみんなで分けて、こういうふうに構造的なものを変えていったときに、十年、二十年後、日本という国の中で、世界との協力の中できちんと生きていけるんですよというようなことなども、きつくても僕らも言わなくちゃならない場面がいっぱいあるとは思うんです。例えば、今申し上げた話と逆に、老後をきちんと生きていくことのできる年金制度をつくらぬとならぬ、認定外の皆さん方も必要に応じて生きがいのある介護ないしサービスを受ける中身をつくろう、患者の納得いくような医療制度にしようじゃないですか、子供たちも保護者も未来に希望の持てる子育てや教育をやっていきましょうよ、消費税の欠陥も、消費税が要らないとは言わない、消費税の持っている欠陥も直していこうよ。  そういうイメージ的な、国民に対する、予算そのものもそうですし、今持っている自分たちが生きていく上での安心と安全のネットワークではない、逆なインセンティブが働いているそのものを今申し上げたような形で変えていくことこそ、個人消費の拡大による景気のより一層の回復やソフト面からの雇用創出、介護なら介護から、例えば日本の人口とスウェーデンの人口を比べてみると、十七万人のホームヘルパーさんじゃなくて百万人必要だとも数字的に言われておりまして、そういうところからの雇用創出等々、やはりしっかり生み出していくという予算の中身でありたいなと私や社会民主党は思うんですが、今申し上げるそういう方向性というものについて、それぞれ、本当に簡単で結構です、お一人ずつ、いやそう言ってもまだまだ厳しいよということや、その他の御意見をいただけたらと思います。
  154. 島村宜伸

    島村委員長 草野公述人。お四方で五分しかありません。恐縮です。
  155. 草野忠義

    ○草野公述人 基本的には今先生がおっしゃったとおりだろうというふうに思っておりまして、やはり今不安なのは、将来の絵が本当に見えてこないというところが一番大きなところで、その中で、どちらかというと負担増だけが取り上げられている。  したがって、個々にやるのはなかなか難しい部分がありますが、個々の問題についてのグランドデザインと同時に社会保障全体についてのビジョンというものをしっかり立てて国民に訴えていけば、かなり国民の安心感と理解を得られるんではないかというふうに私は思っております。
  156. 水野忠恒

    ○水野公述人 先生言われましたように、非常に悲観的な状況が続くわけです。二〇二〇年には、高齢化が進む一方で少子化も進んで、勤労者が二人で老人一人を抱えなければいけない、こんなようなことが言われております。そこへもってきて、今日の経済情勢はもうマイナス成長すれすれのような状況が続いて、こうなりますとなぜ悪くなったかという原因の追及ばかり進みますので、ますます国民的な感情としてはだんだん暗くなるわけですが、そういうところへもってきまして、やはり何かてこ入れという形で明るい材料を見つけてそれを広めていく、こういう努力が必要ではないかと思います。  抽象的ではありますけれども、そのような形で来年度の財政が運営されることを望んでおります。
  157. 谷山治雄

    ○谷山公述人 私は、国の公的な責任というものをどうやって確保、維持していくか、これが一番基本問題でございまして、介護の問題につきましても、介護保険問題というのは介護問題の一部である、重要な部分であるけれども一部だ、つまり、国や行政の公的責任があれで回避されたことはない、かように考えておりまして、現に自立と認定された者に対しては地方自治体がいろいろな措置を講じているわけなんで、こういうことは非常に大事なことでありまして、そういう国の公的な責任と申しますか、これを明確にすることが非常に大事なんです。  私は、根本としまして、これはマスメディアの方にも言いたいんですけれども、高齢化社会というものは実はすばらしいいい社会だという認識が非常に足りない。やはり人間が不老長寿というのは理想でございますから、そういうような社会にだんだんなりつつあるんで、これをどうやって本当に豊かなものにしていくかということが国全体の目標なんで、そういう目標を掲げていただければもっと世の中は明るくなりますし、今、何か暗い話ばかりなんで、やはりちょっときんさん、ぎんさんみたいに、ああいう明るく楽しくというものがたくさん出てくるような、そういうことが必要じゃないんでしょうか。  ちょっと文学的になりましたが、そういうふうに私は考えております。
  158. 水口弘一

    ○水口公述人 私は、民間、特に企業国民も厳しさを認識して耐えるという心構え、それから政府も政治もやはり正しいことを実際をディスクロージャーして、よくディスクロージャーとアカウンタビリティーということを言われますけれども、正しい説明をしていくということが非常に重要であろうと思います。  これは欧米諸国を見ても、あるいは日本の国内のだめになった業界を見ても、結局その結果がそういうことになった、これを早くやるということが必要だろう、こう考えております。
  159. 濱田健一

    濱田(健)委員 ありがとうございました。終わります。
  160. 島村宜伸

    島村委員長 これにて公述人に対する質疑は終了いたしました。  公述人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。(拍手)  午後四時十分から公聴会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後三時三十八分休憩      ————◇—————     午後四時十分開議
  161. 島村宜伸

    島村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  平成十二年度総予算についての公聴会を続行いたします。  この際、公述人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  公述人各位におかれましては、御多用中にもかかわらず御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。平成十二年度総予算に対する御意見を拝聴し、予算審議の参考にいたしたいと存じますので、どうか忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願い申し上げます。  御意見を承る順序といたしましては、まず八代公述人、次に五十嵐公述人、次に濱田公述人、次に中北公述人順序で、お一人二十分程度ずつ一通り御意見をお述べいただきまして、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。  それでは、八代公述人にお願いいたします。
  162. 八代尚弘

    ○八代公述人 それでは、社会保障制度改革についてお話しさせていただきます。  二十一世紀の日本の最大の課題は少子高齢化社会への対応でございます。少子高齢化社会というのは、マスコミ等でも非常に大きく取り上げられておりますが、しばしばそれが、何か天災のようなもの、非常に日本にとって厄介なものというような形で語られる場合がございます。  しかし、これは天災ではなくて、むしろ過去の日本経済発展の成果であるというふうに評価できるのではないかと思います。すなわち、少子化の一つの原因は幼児死亡率の低下で、それほど子供をたくさん産まなくても済んでいるということ、それから、長寿化というのは疑いもなくよいことでございます。そういう子供の数が減ってきたり高齢者の寿命が延びてきたということによって生じる少子高齢化社会というのは、ある程度まで、日本経済がこれまで高い成長と平等な所得配分及び平等な医療サービスの供給といいますか、そういうものの一つの成果であるというふうに考えられます。  また、少子高齢化問題というのは先進国共通の問題であるわけでありますが、過去の経済発展のスピードが速い日本では、諸外国よりも一層急速な人口の高齢化が進んでいるわけでございます。  ただ、問題は、過去の高い経済成長、ピラミッド型の人口構造を前提としました制度を、今後の低成長、人口高齢化社会に適応したものへと変えていかなければ大変なことになるわけでありますが、スムーズな制度変更ができれば、将来の高齢化社会は決して暗くないものと思われます。  ただ、日本の少子化問題と申しますのは、単に出生率の水準が低いだけではなくて、それが今後どこまで下がるかわからないという不確実性にあると思われます。  資料をお配りしておりますので、一枚見ていただきたいと思いますが、図一と申しますのは、過去の人口推計における出生率の見直しの比較をしております。  日本の出生率というのは、一九六〇年代というのは極めて安定した水準に維持されておりました。大体一人の女性が一生に産む子供の数が二人強という形で、ほぼ人口が再生産される状況を二十年以上にわたって続けてきました。ところが、一九七〇年代後半からこれが急速に低下し、現在は、一・三八という非常に低い水準まで落ち込んでおります。このままでは日本の人口は急速に今後低下にいくわけでありまして、また、高齢者比率も、ピーク時の二〇五〇年には三〇%をはるかに超えるところまで到達するわけであります。  過去の人口推計を見ますと、ことごとく予想を上回る出生率の低下を示しているわけであります。これは、人口推計というのは極めて難しい作業でありまして、確かに将来を予測することは非常に難しいわけでありますが、ここから得られる教訓というのは、現在の人口推計がそのまま成立する、具体的に言いますと、ことしを底に出生率が回復して、いずれは一・六の水準まで回復するという、この出生率の予測を前提に、現在審議されています年金改革等があるわけであります。したがって、過去と同じように、さらに出生率が低下しますと一層深刻な状況になるわけであります。  したがって、長期的な社会保障制度というのは、将来の人口の予想外の変動にも耐えられるようなものである、出生率の変動に中立的な社会保障制度の設立というものが非常に重要なものではないかと思います。  そうした少子化のリスクにも耐えられるような社会保障制度とはどういう原則に基づかなければならないかと申しますと、以下の三つがあるかと思います。  第一は、年齢不詳の原則、英語ではエージフリーと申します。  六十五歳以上の人口が全体の四分の一に達するのが二〇二五年でありまして、それが三分の一に達するのが二〇五〇年であります。このように、高齢者が人口の三分の一を占めるような時代では、過去のそれがわずか十分の一以下の時代にできたような制度をそのまま持ち越すことは到底できないわけであります。いわば、高齢者を特別の存在とみなすような社会制度というのは維持可能ではないわけでありまして、個人の年齢ではなくて、その能力に注目した制度への転換が必要ではないかと思います。  過去の高齢者は確かに貧しくて保護すべき存在であったと言えますが、現在の高齢者は、平均的には勤労者の所得水準に匹敵している所得を持っておるわけでして、子供もいないわけですから、一人当たりではさらに上回っております。また、将来の団塊の世代が高齢者になる時代には、より多様な高齢者像を前提としたような制度が必要であるわけでして、年齢差よりも同一年齢間での個人の能力差、所得差というものを重視しなければいけないのではないかと思います。  いわば、機械的な高齢者保護ではなくて、年齢にかかわらず弱者を保護するという考え方が必要ではないかと思います。いわば、働ける高齢者は高齢者というよりも勤労世代であるわけで、寿命が延びる時代では、生涯現役の原則といいますか、それに当てはまらない方は弱者として守るというか、そういう年齢にこだわらない仕組みというのが重要ではないかと思います。これが第一点でございます。  第二点は、社会保障制度における世代間格差の問題であります。  社会保障というのは、社会全体での助け合いというものをルール化したものであります。ただ、そこで大事なのは、公正な助け合いの原則であります。いわば、助け合いという名目で弱い人たちに負担をしわ寄せするのは、当然ながら、社会的公正さに欠けるものでありますが、現在の政治的な決定の中で、とかく弱い者というのは若年者であり、まだ選挙権を持っていない人であり、さらに、まだ生まれていない将来の世代であります。そういう弱い将来の世代に負担をしわ寄せする仕組みというのは、社会的な公正さに欠けるだけではなくて、制度としてより不安定なものと言えるのではないかと思います。過去の高い経済成長期には、豊かな勤労者が貧しい高齢者世代を扶養するというのは当然のことでありました。しかし、今後の低成長期には必ずしもこの論理は成り立たないと思います。  二枚目の図表には、厚生年金を通じた世代間の生涯の負担と給付の格差というものが示してありますが、これは三十歳以上では明らかな持ち出しになっているわけであります。これは、将来、若年層に偏った人口減少によって世代間の人口比率は大幅に変化しております。少なくなる一方の若年世代が増加する一方の高齢者世代を扶養する制度というのは、社会的に不公平であるだけではなく、長期的に極めて危険なものであります。  ただ、戦前生まれの例えば七十歳以上の方は非常に昔苦労したわけでありまして、社会保障制度で恩恵をこうむるのは当然だという意見があります。確かにそれはそうだと思いますが、戦後生まれの団塊の世代、私もその一部でありますが、五十歳代の人までもが生涯に負担する額よりも五割も多い給付をもらうという制度はいかがなものかと思われます。  やはり、社会保障制度における世代間格差というのはできる限り、少なくとも戦後生まれの世代からは平等でなければいけないのではないかと思います。結局、そうでなければその社会保障制度の不安定性というリスクは将来の高齢者世代にはね返るわけでありまして、その意味で、世代間格差をなくすということは、社会保障制度の安定性を確保するという意味で非常に大きなメリットを持っているかと思います。  むしろ、異なる世代間の所得移転よりも、同一世代内の所得資産格差の配分ということが重要ではないかと思います。高齢者世代というのは、当然ながら、若年者世代よりも同一年齢間の所得資産格差は非常に大きいわけであります。これをもっと所得再配分することによって、世代間の所得移転をそれだけ減らすことができるのではないか。豊かな高齢者が貧しい高齢者を助けるような仕組みが大事なわけだと思います。介護保険の高齢者が負担するという仕組みはこれへの第一歩であるわけでして、将来はこれを医療保険制度にも適用する必要があろうかと思います。  三番目は、家族の就業形態への中立性ということでございます。  現在の社会保険制度は、税制も一部そうでありますが、世帯単位になっております。サラリーマンについては、夫が働いて妻子を養うという仕組みが原則になっております。  これは、今から考えれば、過去の夢のような高度成長期に普及した男女間の固定的な役割分業であるわけでして、自営業が労働者の大部分であった過去の日本では、共働きが原則でありました。また、現在の米国を初めとする先進国でも、やはり共働きが原則であります。日本の将来の高齢化社会も、これからは女性も働き、一人一賃金、一人一年金の時代が原則となるのではないかと思います。  夫が年功賃金で妻を養い、引退後は夫の年金で妻を養うという仕組みは、労働市場でも社会保障制度でも、今後の超高齢化社会では長期的に維持可能ではないのではないかと思われます。  夫婦がどのように働くか。夫が働き妻も働くか、妻は家庭にいて家事、子育てに専念するかというのは、純粋に家族内の問題でありまして、政府が関与すべきことではないと思います。一方の働き方、つまり女性が働かないことを選択した場合に、税制や社会保険制度上で優遇措置を行うというのは、いわば逆進的な所得再配分になるかと思います。これは、統計上を見ましても、共働き世帯の方が平均すれば所得水準は低く、片稼ぎの方が高いという結果からもくるわけであります。  自営業は基本的に共働きでありますから、今後の社会では、サラリーマンも自営業と同じような個人単位の社会制度が必要ではないかと思います。  労働力が長期的に減少する高齢化社会では、被扶養者が働くと損になるような制度の社会的なコストというものは非常に大きなものになるわけです。公平性の観点からだけではなくて、効率性の観点からも、こうした家族の就業形態への中立的な社会保障制度というものが必要になるかと思います。  以上の三つの原則を、時間の制約もありますので、専ら公的年金制度の改革だけについてお話ししたいと思います。  公的年金制度は、言うまでもなく、世代間の助け合いの仕組みと言われておりますが、先ほど申し上げましたように、これは世代間の公平な助け合いでなければならないかと思います。後代世代がどんどんふえている時代、あるいは経済成長が高い時代では、賦課方式の年金制度も社会的な公平性にかなったものであったと思われます。しかし、今後の少子高齢化社会、若年世代がどんどん減っていって高齢者世代がふえていく時代には、後代世代に依存しないような積立方式がより世代間の公平な助け合いにそぐうのではないかと思われます。  積立方式の年金制度は、インフレに弱いという欠陥がございます。また、適切な運用がなされなければ将来の給付を賄うだけの積立金が十分活用できないという問題がございます。しかし、他方で、賦課方式というのは、人口の変動リスクとか経済成長の低下のリスクが非常に大きいわけであります。いわばどちらもメリットがあり、デメリットがあるわけであります。  どちらかといいますと、過去の高い経済成長で出生率が安定していた時代では積立方式のリスクの方が大きかったわけでありますが、今後の低成長で、金融市場自由化され、金利がかなりの程度までインフレをカバーできるような時代でありますと、むしろ少子化の進展という賦課方式のリスクの方が大きくなってまいります。そういう意味では、今後の高齢化社会では、やはり積立方式への復帰ということが不可避になろうかと思われます。  ただ、そうなりますと、賦課方式から積立方式に移る場合には、移行期に二重の負担が生じるという問題がございます。  この二重の負担論議は確かに大きな問題でありますが、誤解があると思われるのは、賦課方式のままではこの二重の負担はないというのは間違いであろうかと思われます。つまり、二重の負担というのはいずれにしても存在しているわけでありまして、いつの時期にだれが負担するかの問題にすぎないわけであります。賦課方式のままでは、この負担というのはどんどん後のより人口が少なくなってくる世代にしわ寄せされるだけであるわけでして、現役世代が仮にこれを負担しようとすると、いわゆる二重の負担になるわけであります。  そういう意味では、この問題は、積立方式、賦課方式を問わず共通にあるわけであるので、特に積立方式になったときだけ生じるわけではないということが大事ではないかと思います。  また、積立方式では、巨額の積立金が必要ですので、だれが長期に運用するのか、果たして今のように財政投融資で運用するだけで十分なのかどうかという問題が生じております。これが、逆に言えば、公的年金の民営化問題であるわけでして、すべてのパイを政府だけが運用するのじゃなくて、半分半分にして、半分は民間運用する方がよりリスクを分散できるのではないかというような考え方であります。  また、もう一つは、財源として社会保険料と税との優劣が言われております。  ただ、この税方式というのは、どういう税かによって評価が違うわけでありまして、所得税を財源とするいわゆる一般財源から補てんする場合と、年金のためだけに目的税を使うという場合では、かなり意味が違うわけであります。後者のいわば福祉目的税的な税方式であれば、現行の社会保険料との実質的な差は少ないわけでありまして、徴収上の問題とかいろいろなベネフィットはあるわけなんですが、基本は、年金制度の場合、給付と負担の均衡を回復するというのが最大の課題であるわけで、いわば徴収方法というのは私は二次的な差ではないかと思われます。  以上のようなさまざまな年金制度改革案に対して、私は、現行の年金制度を基本的に維持したままで、いわば小さな積立方式というのを提唱しております。  これは、経済企画庁の研究所で九七年に私どもがやった報告書が出ておりますが、そこでの考え方は、非常に端的に申しますと、厚生省が以前に出しました五つの選択肢のD案に近い考え方でありまして、保険料はほぼ現在の水準を維持する、若干高まるわけですが、二割弱の水準を維持する、そのかわり将来の給付水準は、制度改革なき場合に比べて、現行の四割ぐらいカットするというかなりドラスチックな考え方でございます。  そんなに年金給付が削減されたら、では高齢者はどうやって生活するのかという問題が起こるわけでございます。また、そういう年金制度の削減案を提唱すれば、非常に不安感をあおって、かえって今の消費不況を悪化させるのじゃないか、そういう御批判があろうかと思います。  ただ、私は、今の年金に対する不信感と申しますのは、給付の水準よりはその維持可能性ではないかと思います。したがって、年金給付は削減されても、それによって世代間の不均衡がほぼ是正されれば、これは現在の人口推計をベースにしておりますけれども、少なくとも安定した年金制度が約束されるわけであります。国民の大きな不安というのは、給付水準それ自体よりも、それが本当にもつかどうかということにあるわけでして、これだけカットすればもつのだということを政府が明確に示せば、私は今の年金不安はむしろ改善するのじゃないかと思っております。  また、積立金を現状維持のままで保険料をこれ以上上げないということは、少子化リスクへの頑強性を強めることになります。我々の試算ですと、今のような給付水準のカット、保険料の現状維持を前提としますと、たとえ人口の推計が狂っても、中位推計から低位推計に狂ったとしても、たかだかピーク時の保険料を一%程度上げるだけで済むわけでありまして、さもなければ五%ぐらいの引き上げが必要になってくる。したがって、少子化リスクへの頑強性の強さという意味でも、給付水準の削減というのは非常に有効であろうかと思います。  また、保険料は現状維持のために、それだけの給付では不十分だと思われる個人は、現行方式と比べれば引き上げにならない保険料の分で自主的に民間の年金を買うことで賄うことができるかと思われます。四〇一K型の拠出型の年金というものがもし整備されれば、個人自分の自発的な選択でそれを購入することで、給付水準の下がった公的年金を補完することができるのではないか。  私はこの方法をなし崩しの民営化方式と呼んでおりまして、現状の公的年金制度を維持したまま、その水準を、その規模を小さくすることによって、追加的な部分は個人が自発的に購入することで、いわば自主的な民営化を一部加えるということになろうかと思います。  時間が参りましたので、とりあえずここでやめさせていただきまして、医療とか介護とか福祉、雇用保険の問題について御質問があれば、後でお答えしたいと思います。ありがとうございました。
  163. 島村宜伸

    島村委員長 ありがとうございました。  次に、五十嵐公述人にお願いいたします。
  164. 五十嵐敬喜

    ○五十嵐公述人 五十嵐です。  私は、来年度予算について、公共事業の観点から意見を述べさせていただきたいと思います。  御承知のように、今国会は、公共事業という視点から見ますと非常に画期的な国会だったと私は思っております。  その第一は、国の財政が非常に危機的状況になって、その元凶が公共事業にあるということが国会議員の先生方及び国民の一般的な共通認識になったということが第一点です。  第二点は、仮に、小渕政権は景気回復の後に財政構造改革と言っておりますけれども、景気回復しても、なお財政構造改革ができないということがはっきりしたということが第二点であります。  まず、その点から、少し数字を確認させていただきまして、私の意見を述べさせていただきたいと思います。  御承知のとおり、現在の国と自治体の借金は合わせて六百四十五兆円と言われています。しかし、正確に言いますと、例えば特別会計の隠れ借金とか、あるいは道路公団等の、いまだ顕在化しないけれども多分持っているだろう借金などを推計しますと、現時点で、私どもの計算では八百兆円から九百兆円に近い借金になっていて、これを放置すると、間もなく一千兆を超えるような借金地獄になるのではないかというふうにまず思っております。  二番目は、そうでなくても、隠れ借金やいわば陰の借金というものを外しましても、なお、政府の計算でも千兆円を超える事態が間もなく出てくるということであります。  図表一で、大蔵省が本年二月に発表しました「国債整理基金の資金繰り状況等についての仮定計算」というのを出しておりますけれども、これを見ますと、年度末公債残高を見ていただくとわかりますけれども、十二年度の公債残高は三百六十四兆でありますけれども、以降、平成二十五年度までずっと三十兆円ずつ増加しておりまして、平成二十五年度には七百三十二兆円になるという推計が大蔵省から出ております。  この計算は実は、成長率三・五%とかあるいは補正予算を入れないとか、あるいは一般会計をこれ以上膨らませないという前提、非常にあり得ないような好条件で計算しても、なお今後十年の間に三百兆もふえるということを出している数字でありまして、多分これはもう絶望的な数字であります。  なお、今国会で宮澤大蔵大臣が発言した答弁によりますと、仮に一%景気回復しても五千億円ぐらい、二%回復しましても一兆円ぐらい、仮に三%回復しましても一兆数千億円ということでありますから、この八十兆円会計を前提にいたしますと、永遠に三十兆円のマイナスが出てまいりまして、日本財政では返り切らないということがはっきりしたということです。したがって、これについては抜本的に改革を加えなければいけないというのが第一点であります。  第二点は、なぜこんなに借金が膨らんだかといいますと、小渕政権以降本当に顕著になったわけですけども、景気回復が第一番だということをいって、いわばばらまき公共事業をやってきたわけです。  そこで、図表第二を見ていただくとわかりますけれども、公共事業成長率の関係を見てまいりました。これによりますと、平成四年から十一回、経済対策約百二十五兆円程度が投入されておりますけれども、景気回復はほとんど望み薄であります。つまり、いろいろな理由がありますけれども、公共事業を市場に投入したところで景気回復はほとんど絶望的だということが明らかになったということです。したがって、この点からも公共事業の改革が求められるということです。  このことは、早速いろいろな世論にあらわれてまいりました。一つは、一九九九年、つまり昨年の十二月二十八日の読売新聞が行ったアンケートがありまして、財政規律を求めるか、公共事業による景気回復を求めるかという質問がありました。国民の六〇%は、財政規律を求める、公共事業は要らないということを答えておりまして、このようなアンケートが最近はあちこちに見られるようになりました。  次に、アンケートだけではなくて、御承知のとおり、吉野川の河口堰をめぐる問題や、あるいは愛知万博を見ますと、これも圧倒的に国民の大多数が公共事業にノーを言っておりますし、国際世論も、日本のような開発主導型の公共事業については転換を求め始めたということでありまして、この歴史の流れは不可逆だというふうに私は感じております。  したがって、これを受けまして早速改革をしなければいけないと思いますけれども、幾つかの改革の論点があり得ると思います。  第一番目には、この膨張した財政を削減していくためには、六〇%ないし七〇%を占めると言われる公共事業を削減していく以外にはありません。多分、私の感じでいきますと、十年間で半分にする、五〇%にする、毎年五%ぐらいを削っていくという、まず量的な削減が必要だということであります。  第二番目には、公共事業の質的転換があります。  最近行われている公共事業を見ますと、ほとんど永遠に赤字が予想される公共事業が圧倒的に多いということであります。既に御承知のとおり、中国と四国を結ぶ橋あるいはアクアラインあるいは整備新幹線等はすべて赤字を生み出す元凶でありまして、こういう巨大な公共事業について反省を加えなければいけません。むしろ必要なのは生活関連公共事業でありまして、幾つか具体的に要望されている公共事業が山ほどあると私は思っています。  一つは、公共事業の定義でございますけれども、少なくとも公費で事業を行うという枠組みでいきますと、先ほどの参考人からも意見がありましたけれども、社会保障関係の資金は非常に足りないという状態であります。特に施設がまだ足りませんで、本年四月一日から公的介護が実施されますけれども、あちこちでショートステイの施設や特養ホームがまだまだ足りない状態になっておりまして、こちらの方に公共事業資金を回すべきであるというのが第一点でございます。  第二点は、保育待機児童などがおりまして、これなど、学校の空き教室を利用して待機児童に対する保育室をつくる必要がある。あるいは、都市が荒廃しておりまして、あちこちに商店街が今シャッターがおりている状態がありますけれども、これなどについては、新しい都市空間を考えるために、例えば全世界的に今導入されている路面電車を走らせるというような改革案にもお金が必要だろうというふうに思います。  あるいは道路についても、ただ拡幅するというよりは生活道路にいたしまして、一方は緑道にする、一方はサイクリング道路にするなどの、従来のようないわば経済成長型の道路ではなくて、生活密着型の道路にするというような費用も必要だろうというふうに思っております。あるいは、先ほど言いました、商店街の荒廃、シャッターがおりたままの商店街が多いわけですけれども、これに対して資金を投入して新しい商店街をつくるというようなことも必要だろう。  そういう大型のいわば永遠に赤字を抱え込まなければいけないような公共事業から、身の回りの空間で高齢化社会にふさわしい、必要で不可欠な公共事業に転換すべきであるというふうに思います。  もっと、少し大きく枠をとりますと、最近は農山村、農業、漁業、林業が非常に荒廃しておりまして、これについて、例えば直接所得補償するというようなことについても、今は中山間地域の農業に限定して所得補償を実施しようとしておりますけれども、林業あるいは漁業などについても直接所得補償をしていくというようなお金の使い方をしていって、第一番目には公共事業の量の縮減、第二番目には質の転換をすべきであるというふうに私は思っています。  三番目は、大きく言いまして、公共事業と社会保障関係のトレードオフをやるべきであるというのが私の意見であります。  公的介護や年金や医療保険等についていろいろな試案が出されておりますけれども、決定的にお金が足りません。むしろ公共事業で削減した費用を社会保障の方に回した方がいいというのが私の意見であります。  そうやった上で、先ほどの冒頭の問題に戻ります。  それでは、そうすると膨大な借金が消えるかというと、実はこれはかなり困難であります。あらゆる経済学者の意見等を聞きますと、日本経済については近いうちに大きな局面が生まれてくるだろうというふうに言われております。  一つは、増税がなければこの借金地獄は乗り切れないということですね、増税路線というものです。政府関係者の間からも、最近では、消費税を中心としたかなり高い率の増税がなければこの借金地獄から逃れられないのではないかという声が聞こえてくるようになりました。消費税に至りますと、一四%とか一五%、あるいは二〇%近くというような声が出てまいっております。  もう一つインフレでありまして、これもちょっとしたインフレではなく、調整インフレを超えたハイパーインフレ、高い率のインフレを起こさないとこの借金地獄から逃れられない。  この二つの選択肢しかないだろう。これをやらない限り、最近もムーディーズの格付がありましたけれども、日本の国際信用力は落ちて国債信用力が非常に落ちるということが起こり得るんじゃないか。これに対処するためには二つの選択肢しか残されていないだろうというふうに言われています。  これは、数字の上では確かにそういう方法しか残されておりません。しかし、現実の生活が連続しているこの社会で、増税なりあるいはハイパーインフレーションなりをやれる、政府が本当につくれるかどうかといいますと、これは非常に大変なことであります。  どちらかをとりますと必ず痛みが出てまいりまして、仮に消費税が二〇%になったら、消費はほとんど進まなくなりますし、インフレーションになったら、年金等で過ごしている人たちの生活を直撃いたしまして、ほとんど日本が混乱のきわみになるという感じがいたします。  そこで、私が最近感じておるのは、今国会はどうも私どもの発想に大きな転換を強制しているんじゃないかというふうに思っているわけです。  なぜかといいますと、要するに、一般会計を見ますと、八十数兆円の一般会計がありまして、税収が四十八とか四十九兆です。その差額が公債発行になっておりまして、これがどんどん高まっていくわけですけれども、こういうふうに税収と使う金が物すごく大きな乖離のまま進んでいくような政府といいますか、そういう日本を今後いつまで想定できるんだろうかというのが私のそもそもの議論であります。  この状態を想定しますと、絶えず三十兆円ずつ毎回国債を発行しますと、永遠に無間地獄になりますけれども、発想を転換して、私たちはそもそもそういう政府を持つことはできない、むしろ税収に見合った身の丈の政府をつくり直すのが早いというふうに考えたらどうだろうかというふうに思います。  こういうことを考えたのは、政府だけではなくて、最近は、御承知のとおり、自治体の方でも非常に大きな財政危機がありまして、みんな必死で努力をしております。私ども大学院で調査いたしまして、多くの自治体が困難になっているのです。三千数百の自治体のうち二千ぐらいの自治体は非常に絶望的な状況になっているのですけれども、残りの千ぐらいの中で非常に健全財政を行っている自治体というものを調べました。現地に行って調べましたところ、それなりにみんな工夫をしているわけです。  一言でどこを工夫しているかと言いますと、議会が非常に膨張財政をチェックしているということと、自分たちでできない予算は組まないということについて、さまざまなチェック機能が働いているということです。要するに、身の丈のお金しか使わないということについて、非常に徹底したシステムをつくっているところ、あるいは住民を教育しているところ、あるいはそういうふうに議会が動いているところが比較的健全財政になっているということであります。  自治体と比べますと、いわば自治体には公債費負担比率だとかその他倒産指標というのがありますものですから、ある種の努力目標ができるのですけれども、政府になりますと、どこからどこが危険状態かというのは、国民に少なくとも合意がないものですから、いつまでもずっと国債を、無限大にお金が発行できるというような状態でありますけれども、客観的には、明らかに国家の財政にも限界がありまして、これは身の丈以上のことはできないという前提に戻るべきではないかというふうに私は思っております。  つまり、税収がしばらく五十兆円程度しか日本社会は望めないわけですから、もう一度五十兆円の政府につくり直すということを考える方が先決ではないかというふうに私は思っております。  ただ、そうはいいましても、今八十数兆円の予算のところを五十兆円にするわけですから、急激な縮小財政になるわけですけれども、これを政府の方は、年度を区切って、十年ないし十五年で身の丈に合った政府にするということをいたしますと、毎年度でいきますと、例えば、先ほど言いましたように、公共事業については五%削減しますと十年間で半減するわけです。それと同じように、全体の政府の支出について五%削減するということを考えますと、十年後には半分になる、ちょうど五十兆円政府になるということですから、着地論はいろいろ考えていると思いますけれども、物事の発想の原点を、新しい政府論、つまり身の丈に合った政府を考えなければこの財政危機は乗り切れないんじゃないか。逆に言いますと、そういうアナウンスメントをすること、あるいはそれを政策化することによって初めて日本信用力が増すんじゃないかというふうに思っております。  そのためにどうしたらいいかといいますと、一般的に言えば、当然のことながら、あらゆる予算について五%ずつ削減していきませんと、先ほど言ったように五十兆政府には到達いたしません。ただ、世の中の推移がありまして、多分社会保障関係は伸びますし、公共事業はもっと減らしてもいいだろうというふうになりまして、これは政策的な若干の数字の違いはあってもよろしいというふうに私は思っております。  しかし、それ以上に重要なこととしてもう一点提起したいのは、今日までやってきました行革や地方分権や規制緩和というものを改めてもう一度見直したいということであります。  御承知のとおり、日本では、二〇〇一年一月から新しい行政改革基本法に基づく省庁体制がスタートいたします。それなりに新しい行政の質への転換の兆しがあるわけですけれども、正直言いまして、財政という観点から見ますと、こういう小さな政府をつくるということに関しましては、必ずしも今回の行革は十分な体制になっていない。むしろ、一つ予算も削らなかったし、一人の人間も削らなかったし、法律はそのままにしていわば大同合併をしただけというような感じであります。それをもう一度、新行革の元年と考え直しまして、新しい五十兆円政府に到達するような行革をもう一度考えたらどうだろうかというのが第一であります。  第二番目に、お金が減りますともちろん小さな政府になりますものですから、その小さくなった分をどこかに転嫁しなければいけません。その一つは自治体でありまして、これも前国会で相当数の法律を改正いたしまして、本年の四月一日から地方分権をするわけですけれども、これも財源の関係でいきますとほとんど不十分でありました。むしろ、財源についても地方分権をすることによりまして、自治体の方に自主性を持たすことによって小さな政府を実現していくということが必要じゃないかというふうに思っております。  三番目は規制緩和でありまして、これについても、徐々に規制緩和を行っておりますけれども、例えば、事公共事業に関していいますと、いわゆる名高き特殊法人や公益法人についてはほとんど改革が着手できないという状態であります。これなどは思い切って民営化するというような形にいたしますと、政府の支出あるいは政府の人件費を含めました経費は非常に削減できるというふうに思います。  改めて、二〇〇〇年、ミレニアムで五十兆円政府をつくるために、新行革、新地方分権、新規制緩和をもう一度国会の方で取り組むということを宣言なさっていただければありがたいし、そうでなければ日本財政危機から逃れる方法はないのではないかというふうに思っております。  これは、私の意見がどうというよりも、世界じゅうの世論や市場が日本の借金について注目しておりまして、早急に取り組まないと、むしろ世論や市場の方から急激な改革を求める声が出てきまして、ほうっておくと、多分近いうちにクラッシュすることもあるのかもしれないなというのが私の感じです。  以上です。(拍手)
  165. 島村宜伸

    島村委員長 ありがとうございました。  次に、濱田公述人にお願いいたします。
  166. 濱田康行

    濱田公述人 北海道大学の濱田でございます。  私は、予算案のうち、中小企業支援、特にベンチャー企業支援と言われている部分について意見を述べたいと思います。  それで、短時間でございますので、有効に使いますために発言要旨というものを用意してまいりましたので、四枚物のものがお手元にございますけれども、これに沿ってお話をさせていただきたいというふうに思っております。  まず最初に、現状認識であります。  日本経済を全体としてどういうふうに見るかということでございますけれども、私はこれを一つの言葉であらわしております。それは、そこの発言要旨の最初にございますけれども、やり直し資本主義、「し」を詰めて「やりなおしほんしゅぎ」と言っております。  これはどういうことか。しゃれなんでありますけれども、私たちの経済社会というのは、当分の間、企業中心として、企業中心としてということは利潤原理の上に乗っかって存続するより仕方がない。  なぜそういうことになったかといえば、理念はともかくとして、社会主義の実践が失敗した。それから、この世の中には利潤原理以外の部分ももちろんございます。協同組合原理、最近ではNPO、NGOというのがございますけれども、そういう組織はまだまだ力不足でありまして、利潤原理の世界に取ってかわるというようなことは多分できないだろう、当分はという話であります。ですから、利潤原理の上で資本主義をもう一回やり直す、そういうことが今求められているのだ。  なぜそういうことになるかということでございますけれども、恐らく、資本主義というものが当初持っていたよい点を取り戻そうというのが現在の戦略なんであろう。よい要素を復元しよう。その一つが起業家精神とかいわゆるベンチャー精神とかそういうふうに言われているものだろうというふうに私は考えております。  さて、そういうベンチャー精神とか、私の言葉で言う「やりなおしほんしゅぎ」ですけれども、そういうツールを持って課題に対応していくわけですが、課題はたくさんございます。  レジュメの一ページ目の真ん中にありますように、環境問題でありますとか、それから家族、コミュニティー、そういうものが分解していって、人の心というふうにそこに書いてございますけれども、やはり孤独な人間が多くなっているということは、最近のさまざまな世相を見ていると私が痛感するところでございます。  それから、この十年、これは統計的に明らかでございますけれども、地方は衰退した。別に、中央が発展すれば帳面になっているのだからいいのではないかというふうな意見もあるかもしれませんけれども、私はこれは大変な問題である。住み場所、人間の住む場所、日本人の住む場所が喪失しているのだというふうに私は考えております。これに先ほど八代先生が言及なさいました高齢化問題等々も加わっているのだろうというふうに考えております。  さらに、当面の経済状況をどう見るかであります。私はそこに三つの不安というふうに書きましたけれども、現在の状況は複合不安不況である。宮崎義一先生が「複合不況」という有名な本を書かれてからしばらくたちますけれども、私の認識では複合不安不況だ。  その三つの不安というのは、雇用の不安、いつ首になるかわからない。所得が減る、これはもう統計上明らかに出ております。所得の減っている人は大勢おります。それから、そこに蓄財不安と書きましたけれども、これは将来不安。先ほど年金の話等々もございましたけれども、安心して夫婦二人で老後を生活するには一体幾ら貯金していたらいいのか、それがわからない。今みたいな低金利の時代ではなおさらわからない。人々はがむしゃらに貯金をするという形にならざるを得ません。それが、矢印に示してございますけれども、消費の全般的な低迷をもたらすということになるんだろう。長崎屋の事件がございましたけれども、それは決して偶然ではない、こういう全体状況の中でそれは起きているのだというふうに思います。  さて、「やりなおしほんしゅぎ」というツールを使ってこれらの課題にどういうふうに立ち向かうかということになります。  そこに正解と私は書いておきましたけれども、正解のところを読ませていただきますと、環境と人にやさしい地方に立脚する成長力、これは雇用能力ではかろうというふうに私は思っていますけれども、それのある企業の発生と成長だ、そういうものをベンチャー企業と私は呼んでおります。  もしそういう企業が、既存の産業分野でベンチャー企業というものが起きれば、その分野に新たな競争が起こるということになって活性化するであろう。全く今までないような新規分野にベンチャー企業が起きれば、産業界の幅をつくり、産業連関の作用を拡大し、やはり人々の豊かさにつながるのだというふうに考えます。  発言要旨の二枚目に行きます。  そういうわけで、そういう正解を導くにはベンチャー企業の支援策というものが必要なのであるということになります。  しかし、ここで一つ問題を片づけておかなければなりません。それは、ベンチャー企業というのは元気な企業、そういうイメージですから、そういう元気な企業をなぜ政策があえて応援するのか、そういう問題があります。これは学界等々でも長く議論されている点でございます。  しかし、私の見るところ、ベンチャー企業支援というのは今は必要な時期に入っている、そういう認識を持っております。なぜか。その三行目でございますけれども、開業率の低下ということが日本ではここ十数年にわたって続いております。それから生産性伸び率、それが低下している。高度成長のころは日本の生産性成長率というのは世界一だというふうに思っていたんですけれども、最近の統計では、OECD諸国の中でほとんど最低水準にまで落ち込んでいるわけであります。そういうことが目の前にありますので、ベンチャー企業支援というものをやはりやらざるを得ないだろう、そういう特別な事態が今生じているのだというふうに認識しております。  そこに米印に書いておきましたけれども、実は、さまざまなベンチャー支援というのは今既に行われているんですけれども、ここでぜひ皆様に申し上げておきたいのは、ベンチャー企業支援というのは費用対効果というものが非常に高いものである。そこに十億円で一千億円と書きました。これは正確に測定したわけではありませんけれども、そういう倍率をもって政策的効果があらわれる分野であるということを私は常日ごろ考えております。  さて、問題点というところに移ります。  二枚目のレジュメの上からちょっと下ですけれども、そこで、米印がやはりつけてございますけれども、ベンチャー企業は中小企業の一部、定性的には定義できないと。ベンチャー企業というのは何かということは定義できません。したがって、ベンチャー支援策というものは中小企業政策の一部の中に組み込まれて展開せざるを得ないというふうに書きました。  これは何を申し上げているかということでございますけれども、しっかり定義できるものであればそれをねらい撃ちにすることができます。この企業とこの企業はベンチャー企業であるからこれに支援をするというふうにしてねらい撃ちができます。しかし、そういうことはできませんということを申し上げているんです。  中小企業というのはいわゆる星雲状態、星がいっぱい集まって雲のように見える、そういう状態で存在しているものであります。その中に確実にベンチャー企業というのはあるんでしょう。将来なるものもあるんでしょうけれども、現時点ではねらい撃つことはできないのであります。そうすると、そこに対してどういうふうな支援策を打つかということに一つの工夫が要るわけであります。私は、それは星雲全体に散弾を撃ち込むような形しか方法としてはないのだというふうに思っております。  そうなりますと、弾によっては当たらない弾も出てくるわけですね。しかし、それを恐れているとベンチャー企業支援というのはできません。言ったとおりにこういう政策を打ったのに効果がないじゃないかということもあるかもしれない、そういうことを申し上げているわけです。しかし、それを恐れていては支援策は打てないということであります。  ちょっとしゃれた言い方をすれば、ベンチャー企業支援策というもの自体がベンチャーなのであります。当たりもあれば外れもあります、それを覚悟でやらなければ当たらないという当たり前の話でありますけれども、これは、この種の政策を実行するときにぜひ念頭に置いておかなければいけないところだというふうに私は思っております。  さて、提案というところに移りますけれども、その前に、ちょっと法案について、日本に今ベンチャー支援に関係する法律がどのぐらいあるかというのは、この四枚つづりの一番最後に表をつくっておきましたので、それをちょっとごらんいただきたいと思います。一九九五年から実に多くの法律ができています。私も、すべての条文、条項を把握しているわけではございません。これに基づいて実にたくさんの政策ができているというのがもう既に現状でございます。  そこに線を引いてございますけれども、この予算案がもし無事に通過すれば、その次に、そこに書かれていますような産業技術力強化法とか中小企業支援法、これは中小企業指導法という法律を、指導というのはおこがましいということで支援というふうに名前を変える、私は大変賛成でありますけれども、そういう法律も出てくるというわけで、法制的には非常に整備された状態が今やってこようとしています。  しかし、そこで幾つか問題がございます。それは、こういう政策的な枠組み、制度ができても、それを実際に運用する人はいるのだろうかという問題であります。露骨な言い方をすれば、お役人という方々がベンチャー企業を支援するというのは、それ自体やや矛盾した話でありますので、そういうことができるのかどうかということは一つの問題になろうかというふうに思います。  時間の関係がありますので、提案というところに移りたいと思います。  私は、予算案に関しては、それこそとんでもない金額でございますから、いろいろな議論があると思います。とにかく国民の一人として願っているのは、予算は有効、効率的に使ってほしい、少ない予算で大きな効果を上げてほしいというふうに思います。  私が関係している経済企画庁の景気ウオッチャー制度というのがあるのです。つい先日発表されましたけれども、結構注目されましたし、なかなかおもしろい結果が出ました。しかし、使った予算はわずか七千万円であります。来年度に向けてもわずか一億円であります。ですから、小粒でもきくものはあるのでありまして、そういうものをぜひ皆さんの力で並べていただきたいというふうに思っております。  ベンチャー支援に関して言えば、先ほど表をお見せしましたけれども、大変いっぱいある。使う方はもうどうしていいかわからないというほどの分量に多分なっているのだろうと思います。そこで、レジュメの真ん中ぐらいに米印を打っておきましたけれども、ベンチャー企業支援基本法のような法律に一本化してほしい、主務官庁も一本化してほしいというふうに思います。  最後に、ベンチャー企業と言われている企業が本当に望んでいることは何かというお話をちょっとしたいと思います。  私は、いろいろつき合いがあっていろいろな人から意見を聞いておりますけれども、一つはやはり税制であります。エンゼル税制というものが提出されていまして、税制改革の中でありまして、日本でも前向きのエンゼル税制が実現されるという方向になっているということでございます。私は、これは歓迎すべきことだというふうに思っております。  それから二番目は、ベンチャー企業が立ち上がって一番困っているのは、買い手がいない、製品をつくってもなかなかそれが売れないというのが最大の悩みであります。製品が悪ければ売れないというのは当然でありますけれども、よくても売れない。例えば、役所に持っていってこういうものができましたからといっても、登録企業になっていないから買ってあげないとか、そういうことがよくあるということを地方ではよく耳にするわけでございます。  昨年、新事業創出促進法という法律ができまして、その中にSBIRという、これはアメリカのある制度をまねてつくったものでありますけれども、政府や自治体が提案をして、こういう研究をしてこういう製品をつくるという方向でしたら研究開発段階からお金を出しますよという制度であります。  このSBIRが実は日本でも動き出したのですけれども、実は非常に大手の調達官庁がこれに参加していません。そういうわけで、ベンチャー企業支援というのだけれども、肝心の政府がベンチャー企業から物を買わないというようなことでは、やはりこれは問題があるだろうというふうに思っております。  それから、三番目でございますけれども、せっかく人々の支援、努力でベンチャー企業ができても、それが大手企業にいろいろな意味で邪魔されてだめになってしまうというケースがいっぱいございます。そこでは、航空産業への参入の話を書きましたけれども、これなどもそういう例になりはしないかというふうに私は心配しております。  つい先日、公正取引委員会が二月十五日付で、ある報告書を出していますけれども、新規参入を守るべきである、それは企業を守っているのではなくて競争環境を守っているのだというふうにこの報告書でも書いてあるということです。特許をとっていないばかりに大企業に大量に製品をつくられてしまった例とか、それから突然受注をとめられて企業が参ってしまった例とか、そういう例というのはいっぱいあります。適当な言葉が思い浮かばないのですが、いわゆる横取りということがないように、時限的に守るというようなことがあってもよろしいのではないかというふうに私は思っております。  最後に、私のメッセージをこのレジュメの下に四角に囲っておきました。二〇〇〇年ですけれども、恐らく二〇〇〇年というのは、このままでは日本経済はだめになる、そういうふうに天の神様が見ていて私たちに与えてくれた最後の一年だろう、二十一世紀の準備のための最後の一年だろうというふうに認識しております。  以上でございます。(拍手)
  167. 島村宜伸

    島村委員長 ありがとうございました。  次に、中北公述人にお願いいたします。
  168. 中北徹

    ○中北公述人 私、東洋大学から参りました中北でございます。  現在審議されております予算案に関しまして、特に金融あるいは金融システムに関連した角度から若干私見を述べさせていただきまして、提言とさせていただきたいと思います。  最初に申し上げたいというふうに思いますのは、昨年の十二月末だったと思いますが、いわゆるペイオフ解禁の延長についてでございます。  私は、ペイオフの実施というものは、これは橋本前内閣以来の政府の国際公約である、そして、ビッグバンの進展、それに絡む法整備に伴って、当然ペイオフはもう不可欠のものとして実施されるべきものであるというふうに理解しております。  そもそも、ペイオフを実施する、解禁するということは、その緊張感、そしてそれに伴い、みずからの生存をかけて金融機関の再編、リストラというもの、それが同時に進行していく、そういうシナリオを想定していったというふうに考えます。  殊に、都銀と大規模金融機関に関しましては、既に再編、特に資産の軽減というプロセスが進行しておりますが、それに比べまして、再編成、リストラがおくれております地域の金融機関にとっては、こうしたペイオフの実施という強いインセンティブがあってこそ、金融の再編の機運が高まっていくということが想定されていたというふうに理解します。  再編とは、そもそも地域金融機関にとっては財務体質の強化であり、そして経営基盤の強化につながるものである。経営のモラルを高め、改革を早め、基盤の強化につながる再編、これを促しますことは、国、特に政府にとって緊急の課題であったはずだと理解します。  しかしながら、地域金融機関の検査体制のおくれ、財務内容を把握していないという理由、あるいは理由にならない理由をもってペイオフを延期してしまったというのが事実であると承知しております。むしろ私は、検査と絡めながら、同時進行で弱体化した金融機関に再編成を迫っていく、これが望まれた措置ではなかったのかというふうに考えます。  預金者の選別、チェックによって預金が流出し、この選別のメカニズムが確実に働くことによって振り分けが行われなければ、みずから進んで吸収されたいという金融機関は恐らくないと思われます。このペイオフの解禁、預金の流出という顧客からの、預金者からの金融機関の選別、こういったプロセスがなければ、恐らく再編など進むはずがないというふうに理解するわけであります。  行政府、特に金融監督庁といえども、現在ビッグバンが進行中でありますから、無理やりに合併させたり吸収させたりするということは、これは望ましいことではありません。むしろ、民間の当事者が、市場メカニズムによって切磋琢磨を行い、そしてその中で選別されることを通じておのずとその道を決めていくというのが望ましい選択だと思います。決定的な破局というものを将来避ける意味でも、私は、ここでこそペイオフ解禁という緊張感を導入するということが必要であったというふうに考えます。  このペイオフを延長したということによる緊張感の喪失、処理の先送りは、結果として財政による処理額を一層膨らますことにほかならないというふうに危惧するものであります。これまでの都長銀、都銀あるいは長信銀の経過を見れば、その点はもう今や明らかであるというふうに思います。  しかも、世界に向けて発信せられた国際公約、総理の国際公約を延期したことに対する正式の説明責任が果たされていないのではないかというふうな疑問を持っております。それは、今回の決定は果たして行政の決定だったのか、立法府の決定であったのか、一国の総理が宣明したことに対して決定を変えたことをどう説明するのか、甚だ疑問に思うわけであります。  ところで、格付会社のムーディーズがございますが、このムーディーズは、今申し上げたペイオフの解禁延長によっても、都銀の信用度の格付ということは行いませんでした。大方の見方によれば、都銀の信用度の低下はないものということで、恐らく多くの方々は胸をなでおろしたのではないかというふうに思います。  しかし、私の理解するところ、ムーディーズの格下げの真意は必ずしもそこにはないというふうに思います。むしろ、相も変わらず民間銀行の不始末のツケを財政に回す、それを容認するという我が国やり方に対して、国債信用度を格下げする方向で検討を始めているというふうにも仄聞しております。  現状では、国は、景気回復のためになりふり構わず財政を出動させ、金融政策はゼロ金利という未曾有の緩和を続けることで合意を見ているようであります。そして、この流れに比例するように、行政改革、財政改革、経済改革の理念は遠のくように思われます。民間企業に経営の風土を変える真の構造改革、リストラを迫らず、現状を維持し、雇用を守ることを暗に命じている、そのような政府というのは、もしそうであるとするとまことに面妖であるというふうに思います。  不景気は、資本にとっては、企業経営にとっては必ずしも悪いことばかりではないというふうに、長期の観点から私は思います。経営者にとって、それまでの経営を見直す機会を与え、必死のリストラや構造転換を迫る機会を提供するからであります。時間外労働のカットのみでは足らず、賃下げや雇用に手をつけるリストラもあるかもしれません。  この点で、雇用不安は社会不安につながると、リストラそのものを否定する空気が、財界、特に経団連等を初めとする関係者から出ているようでありますが、私の見るところ、この議論は本末転倒ではないかというふうに思います。民間企業は血の出るリストラ努力を断行する、だから、そうした犠牲に対して政府やその他諸施策による援助をお願いしたいというのが本来の民間の経営者のあるべき姿ではないかと思います。  そもそも、資本のむだ遣いというものを容認し、既得権というもの、その上にあぐらをかく経営者がもしいたとするならば、これは、日本は雇用を守ることをもって経営者の本分とするというお題目を内外に宣明しているように感じられるわけであります。  しかし、そうはいっても、私も、穴を掘って埋めるだけでも雇用対策景気対策とされる従来の考え方を全く否定するわけではありません。しかし、アジアを初めとする中進国からの追い上げを受けながら、我が国財政等構造転換を迫られ、さらなる産業の高度化、高付加価値化を目標として改革を進めなければならないこのときに、国は、景気対策と称する公共事業をすべからく経済構造に組み込んでしまっているかのように思われるわけであります。  と申しますのは、この十年間、建設土木業の業者の数を見ますと、十年前の平成元年三月末では五十一万三千社、それが五年前の平成六年三月末には五十四万三千社、そして昨年三月末には五十八万六千社へと、一貫して右肩上がりで増加を続けているという事実がございます。  民間に自助努力を求めつつ、財政構造の転換を可能ならしめる有効な施策、法律の制定を期することこそ、政府、国会に求められる使命ではないかと私は思うわけであります。  つい先ごろ、日経新聞によりますと、二年連続して減少してきた製造業の設備投資が底打ちへという報道がなされました。私が恐れますことは、構造改革なき景気回復がこのまま進行していったとき、景気回復してしまえば、改革などに汗を流す気風が失われはしないかということであります。  また、ゼロ金利という金融政策を反映して、現在、市中に滞留する余剰資金が株式市場に大量に流れ込んでおり、特に情報技術投資関連、いわゆるIT投資に絡む銘柄は、まさしくミニバブルとも言える様相を呈しているわけであります。いつか来た道だと、当局は、国は肝に銘じて、金融政策のかじ取りに一層関心を寄せるべきではないかというふうに私は思っております。  では、このまま我が国景気回復から拡大へと直進するのかといえば、二つの潮流が現在せめぎ合っている、そしてなお先行きは不透明であるというふうに認識しています。  二つの考え方が対立しているというふうに思います。一つは、このまま政府の積極財政の堅持を強調し、市場原理の導入に極力慎重な姿勢で臨むべきだとする考え方であります。もう一つは、グローバルスタンダーズ、世界標準を意識した構造改革抜きでは、真の安定と自律的成長は期待しがたく、金融ビッグバンの完遂も到底望めないとする考え方であります。両者はまさしくペイオフの解禁をめぐって意見を分けたわけであります。  金融界では、昨年夏ごろを契機にメガバンク構想が浮上いたしましたが、これが全く新しい経営改革なのか、それとも、単に巨大な規模の利益を当てにした既存の金融機関の寄せ集め、統合にすぎないのか、これはまだ評価が分かれているわけであります。  少なくとも、メガバンク化に見る金融再編は、旧来のメーンバンク制の終えんを意味し、同時に、企業もさらなる淘汰へと進む可能性が強くなっています。こうした淘汰に備え、商法の改正、民事再生法の成立、資本市場の整備に支えられながら、企業を生かすためのMアンドA案件の急増、中には、最近ですと、敵対的なTOBも成功する事例が出ているわけであります。  問題の核心は、日本金融システムが信頼を回復したのかといえば、現状では不良債権の開示は依然不十分であり、現在も増加している可能性があるという点であります。そして、他方において、収益力の向上に絡んで、情報通信技術、IT投資などにかける企業戦略の中身がまだ不十分であり、十分詰まっていないという点であります。  そして、その背後において、日本財政状況は悪化をじりじり続けて、OECD諸国の間で現在最悪のランクに位置しているというわけであります。もし金利が上昇したとき、長期金利は一気に騰貴して、景気の腰折れをもたらす可能性が排除できない。また、アメリカ経済が調整局面を迎えているということも、多くの識者の指摘するところであります。  日本経済社会が未曾有のスピードで少子化、高齢化をしている中にあって、確定拠出型年金、いわゆる四〇一Kプランなど、自助努力による老後の備えとしてこの確定拠出型年金制度の導入、それに伴う金融サービス法の早期制定など、グローバルスタンダーズに則した金融企業組織の改革を着実に進めるべき必要性はむしろ高まっていると考えます。  今は、日本が国内基準に先祖返りするのか、グローバルスタンダーズを意識した政策発動を堅持するのか、重要な分かれ道に差しかかっているというふうに私は考える次第であります。  以上、官と民の役割分担、そのような中にあって、企業が、民間セクターが一層この構造改革を加速するような一連のインフラ整備に多くの課題を残しているという点を強調いたしまして、そして、財政規律を通じて、さらに悪化するのを避けるため歯どめをかけるべき必要性が高まっている、そのような意味でも、金融及び金融システムの強化というものの重要性を強調させていただきました。  最後に、お手元に一枚の資料をお配りいたしましたが、今申し上げました文脈の中で、金融システムの強化による安定成長の実現のための提案ということを書かせていただきました。詳しいお話は割愛させていただきますが、もし御質問等がございましたらお答えさせていただきたいというふうに思います。(拍手)
  169. 島村宜伸

    島村委員長 ありがとうございました。     —————————————
  170. 島村宜伸

    島村委員長 これより公述人に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。萩野浩基君。
  171. 萩野浩基

    ○萩野委員 自由民主党の萩野浩基でございます。  八代先生、五十嵐先生、濱田先生、中北先生、それぞれの先生方におかれましては、大変示唆に富んだ専門性のある御意見を拝聴させていただきまして、本当にありがとうございました。  各先生に質問したいことは、私、メモをとったのですけれども、私の持ち時間は十分でございますし、時間も大分長くなっておりますので、ちょっと絞って質問することをお許しいただきたいと思います。  八代先生は、高齢社会というのは日本のすばらしい業績、そういうことをおっしゃいまして、私も機会あるごとにそのように言っております。何か老人とかこういう言葉はよくないように言われておりますけれども、中国の中では、御存じかとも思いますが、竜骨座の最高の星であって、これはまさに人生のロマンの星なんですね。だから、そういう意味で、私は、老とか高齢ということを、先生のおっしゃるように、ますます我々は前向きに、プラス思考をしていかなければならないと思っております。  しかし、老後の不安ということは、きょうも午前中から話題になっております。その代表が年金であり、医療であり、いよいよ四月から導入します介護、こうした問題があるだろうと思います。  日本は、最初にドイツをモデルにスタートしながら研究してきたのですが、きょう先生のお話を聞いておりましても、世代間の格差だとか、また公正な助け合いとか、そういう点からいろいろ我々も工夫いたしまして、また、先生も審議会の方の委員もなさってくださっておられますけれども、第一号被保険者、それから第二号という、これは余り世界に例はないと思いますが、特に第二の方は、四十歳というような、こういう特色を持たせました。  それから、最も特徴は、やはり今までのお任せ、お仕着せの措置ではなくて、自立的個人のウイル、意思を大事にし、そのサービスの選択権があるということ、ここに政策転換というような形で我々責任政党として頑張ってきたわけでございます。そういうことで、今回、この予算の中には、こういうことに関する予算が大きく盛られております。  先ほど、残念ながら八代先生お時間がなくて、もし質問があればその辺は補足いたしたいということをおっしゃいましたので、ぜひお願いいたします。
  172. 八代尚弘

    ○八代公述人 お答えさせていただきます。  公的介護保険は、おっしゃるとおり、間もなく一カ月後にスタートする予定でございますが、私は、これは日本の社会保障制度改革の中で画期的なものではないかと思います。確かに山のような問題は残っておりますが、何といっても、戦争直後にできた上からの公的福祉体制というものを個人が選択可能な介護サービスというものに置きかえるということでは、画期的なものではないかと思います。  それから、本来の趣旨であれば、家族の要介護者を抱えるリスクというものを社会全体で広く負担するということ、それによって高齢化社会のもとで著しい家族の負担というものを少しでも軽減するということが大きなねらいではなかったかと思います。  それから、供給面では、これまでのように公的部門一本やりではなくて、企業を含む多様な事業者が参入するということが認められた。残念ながら、これは在宅の分野に限られておるわけですが、長期的には、より大きな部分であります施設介護についても、こうした多様な事業者の参入ということが、競争を促進し、介護サービスの質を向上するために必要ではないかと思っております。  それから、何といっても介護保険の画期的なところというのは、国が決めたことを一律に各国民に強制することではなくて、地方自治体のイニシアチブというものを重視していることではないかと思います。  介護サービスというのは、何といっても地域格差が非常に大きいわけでありますから、やはりそれぞれの地域で自主的に考えなければいけない。それから、要介護認定という問題が介護保険では新たに出てきたわけでありますが、この要介護認定の仕方もいろいろな問題があるわけであります。政府が決めましたやり方は、あくまでもそのモデルにすぎないわけでありまして、それをどのように各自治体がうまく生かしていくかは、今後の大きな課題ではないかと思います。  日本では、これまでとかく国がすべてを決めて、それに地方自治体が従うということが当たり前とされてきたわけですが、例えばアメリカでは、大きな社会制度改革をするときは、あらかじめ社会的な実験をするということがよく行われております。  私は、この介護保険というのは、社会保障制度では珍しくこの社会的実験ができる仕組みでありまして、各自治体がいろいろな創意工夫をもとにして、要介護認定の仕方、あるいは介護サービスの仕方、あるいは介護サービスを通じた所得再配分というものをいろいろな工夫をしてやっていく。よいことをした自治体をほかの自治体がまねし、間違ったことをした場合にはその失敗から学ぶという形で、お互いが競争を通じてよりよい介護サービスをつくっていくという、いわば地方自治体間の競争メカニズムが働くという意味で、非常に画期的なものではないかと思います。  今後の高齢化社会というのは、まさしくこういうトライ・アンド・エラーでいろいろな工夫をしていかなければ、過去に前例がないわけでありますから、そういう形でやっていかなければいけない。そういう意味では、介護保険というのは極めて大きな意義があるかと思います。  山のような問題は残っておりますけれども、五年後の見直しというものがございます。私は、これは四月からスタートして五年後に見直すという考え方ではなくて、五年後に本来の介護保険がスタートするので、それまでは試行期間で、いろいろな社会的実験を繰り返しつつ、よりよい介護サービスを供給するような仕組みを五年間かけてつくっていくのだ、そういう考え方でやっていくべきではないかと思います。  ですから、今の介護保険にはいろいろな欠陥がある、だからやめてしまえ、あるいは昔の公的福祉に戻せという考え方は間違っているわけで、国だけが一方的に決めるのではなくて、それぞれの創意工夫のもとでよりよい介護保険を五年後につくっていくのだ、そういう考え方でやることが必要ではないかと思います。
  173. 萩野浩基

    ○萩野委員 大変自信を持ちましたが、今先生の御指摘のとおり、いろいろな不備の点もあるかと思います。濱田先生が言われた、神が与えた最後の準備の期間、そういう意味でこの介護保険をしっかりやっていきたいと思います。どうもありがとうございました。
  174. 島村宜伸

    島村委員長 次に、佐藤茂樹君。
  175. 佐藤茂樹

    ○佐藤(茂)委員 公明党・改革クラブの佐藤茂樹でございます。  四人の公述人先生方、きょうは貴重な御意見を、なおまた、こんなに遅くまで国会の場におつき合いいただきましてお述べいただきまして、心より御礼申し上げます。ありがとうございました。  十分でございますので、きょうはお一人だけ、ここに町村先生がいらっしゃいますが、北海道から雪の中をお越しいただいた濱田先生を中心に何点かお聞きをしたいと思うのです。  私ども自自公三党の考えといたしまして大体共通しているかと思うのは、景気は、少し薄日が差してきたとはいえ、まだまだまだら模様である、特に民需が弱い、そのためにもまず、今いろいろ批判はあるかもわからないけれども、積極的財政を組んで民需につなげていきたい、そういう発想があるわけですが、その経済再生の、民需の伸びていくかぎを握るのが、先ほど濱田先生がおっしゃった、ベンチャー企業をどう伸ばすのかということが一つ大きなかぎになってくるのであろう、そのように思うわけでございます。  そこで、お話しになった内容とちょっとそれるかもわからないのですが、昨年の経済白書を読ませていただきますと、第三章に、「新しいリスク秩序の構築に向けて」という章立てがわざわざしてありまして、要するに個人個人リスクをきちっととっていく時代なんだ、特に金融面については、間接金融から直接金融へ、そういう流れが強く求められてきて、そういうシステムの展開の必要性ということについて触れてあるわけです。  そうした中で、昨年の夏以降の動きとして、新興企業向けの新市場といいますか、具体的に言いますと、きょうの新聞、日経なんかにも出ておりましたけれども、ナスダック・ジャパンであるとか、また東京証券取引所のマザーズとか、そういう中小企業向けの債券市場構築への動きも見られますし、さらに、きのうの新聞なんかではまた、東京都がそういう新しい債券市場構想を打ち出したところ、申し込んだ企業が見込みの六倍も来たというような、そういう中小・ベンチャーにおける直接金融への期待が強いということがどんどん報道されているわけでございます。  そこで、濱田先生にぜひお伺いしたいのは、こういう新しい債券市場の流れ濱田先生自身がどう見ておられるのかということ。特に、ベンチャー企業また企業家発掘という点から、こういう新しい債券市場というのは起爆剤となり得るのかどうか、また、なり得るためにはこの辺も一応考慮しないといけないとか条件があるというものがあれば、まずお伺いをしたいと思うのです。
  176. 濱田康行

    濱田公述人 佐藤議員にお答えします。  景気が薄日であるという認識はさておきまして、とにかく決定的なのは、官公需が民需で引き継がれるかどうかというのが二〇〇〇年の最大の焦点であります。おっしゃるように、そういうところに新しい、元気のいい企業が出てくるということが期待されているわけであります。  御質問のありました新興市場でございますけれども、これは起爆剤になるのか、好ましいことなのかという御質問でございましたけれども、私は、ベンチャー企業を育てるときの当然の装置がようやくでき上がってきたのだ、そういう認識を持っております。  御承知のように、企業が新しく起きるというときには非常なリスクがございます。例えば私が企業を始める。うまくいくかどうかわからないのが企業ですから、銀行というものはそれにお金を貸すことはできません。これは、貸さないのが悪いというよりも、そういうことはできないのが間接金融システムであります。人のお金預金として預かっている以上、リスクのあるところにはなかなか出られない、そういう宿命を持っているわけであります。  そこで、どういうものが必要かということになると、リスクを覚悟して投資する、そういう機構がまずなければなりません。しかし、一九七〇年代から日本ではぼつぼつ、そういう企業の始まりのステージにお金を投じる、そういう機構というのはできてきたのですけれども、一番問題なのは、出口がないのですね。投資するということは、もう運命共同体、あなたと一緒にいつまでもずっといますよということ以外になかったのです。それがようやく、新興市場、今佐藤議員が御指摘になりましたナスダック・ジャパンであるとかマザーズでありますとか、それから日本の場合には店頭市場、それから最近では未公開市場というのもございますけれども、そういうものがようやくできてきて、初期にそういう投資をした人に出口を与える。  やはり、私が例えばどこかの企業投資しても、永久にそこから資金を回収できないというのでは、これはなかなか投資できないわけでありますから、そういうことがようやくできてきた。これは大変好ましいことであるというのが基本認識でございます。しかし、やや過熱ぎみである、そういう認識も私は持っております。  以上でございます。
  177. 佐藤茂樹

    ○佐藤(茂)委員 あと一問で終わらせていただきたいと思うのですが、先ほど濱田先生のお話の中で、いろいろ幾つかのキーワードをお話しされたのですが、ベンチャー支援策そのものがベンチャーである、当たりもあれば外れもあるのだ。ただ、その前の話のところで、ただ、当たれば非常に費用対効果が高いのだという話をされたと思うのですね。それが例示としては十億円で一千億円なんだ、百倍の効果を発揮する、そういうことを言われた。そういう政策的効果が当たればあらわれる分野であるというお話をされました。  ぜひこの際に、よければお聞かせ願いたいのですが、今までいろいろなベンチャーに関する法案を政府側としても出しました。ことし、例えば平成十二年度予算案とか税制改正でも、さらに先ほどお話ありましたけれども、エンゼル税制の拡充であるとか、またストックオプション発行の要件緩和であるとか、そういうものも入れているのですが、さらに、もしこういうところをやればそういう政策的効果がもっとあらわれるのだというところがあればお聞かせ願いたいというのと、御記憶の範囲で、過去にこの制度があったがゆえにこういう部分で非常に政策的効果があったのだというようなものも、もしあればあわせてお話をいただければありがたいというふうに思います。
  178. 濱田康行

    濱田公述人 佐藤議員にお答えします。  さまざまなベンチャー政策というのがあって、それを私は表にまとめてまいりましたけれども、それは、一九九五年からでもこんなにいっぱいあるという話であります。  それで、その中で効果があったのかということでございますけれども、私は、相当な効果があって、先ほど開業率の話をしましたけれども、当期ベースでは企業の数は最近やや上向いているというふうに聞いております。それから、国民生活金融公庫の開業資金融資というのがございますけれども、申込件数もふえてきているということで、若干雰囲気は違ってきたのかなというふうに思っております。  さまざまあるんだけれども何が必要かという御質問だったと思いますけれども、私は、もうそろそろハードウエアはいっぱいだ、これで十分だろう、問題は動かす人、動かすソフトであろうというふうに思っております。中小企業支援法という法律で全国にベンチャー企業の支援センターができると、そういうところをどなたが運用するのかというところが焦点であろうというふうに思っております。  以上でございます。
  179. 佐藤茂樹

    ○佐藤(茂)委員 ありがとうございました。  以上で終わります。
  180. 島村宜伸

    島村委員長 次に、青山丘君。
  181. 青山丘

    青山(丘)委員 四人の公述人の皆様には、大変有意義なお話を聞きました。勉強になりました。ありがとうございます。  幾つか新しく教えていただいたことがありますし、一つだけは私は納得できなかったところがありまして、時間もありませんから何人にお聞きすることができるかわかりませんが、まず八代先生にお尋ねしたいのであります。  なるほど日本は四十九兆円の税収の国でございまして、その国が八十五兆円の歳出規模であるということには無理があります。本当に無理がある。したがって、先ほど濱田先生から、二〇〇〇年という年は神様が与えてくださった最後の準備の年であると。実は私も同じような認識でございまして、小渕総理が、二兎を追う者一兎をも得ずと言われましたが、このことは実は全く矛盾することを言っておられるのではなくて、私自身の理解は、まず第一に財政再建よりも景気回復が先であろうという認識については私も同じでございます。  ただ、今私どもが議論していきたいのは、どれぐらいマイナスがあるかということ、ゼロの座標軸からマイナスの問題ばかりを議論しないで、できればプラスの部分も議論していかないと、本当の最後の財政再建に結びついていかないという意味で、私は、第一に景気回復が必要であり、そのために社会保障制度の拡充は極めて重要だ。  それで、実は、先ほど萩野先生が聞かれましたので、お聞きするのをよそうかなと思ったのですが、一点だけ、介護の問題です。  少子高齢化の時代に入ってきますと、やはりどこか保険制度には無理が出てくるという気持ちが私はいたします。したがって、公的介護保険制度がぜひ四月一日からきちっとソフトランディングして、いい形でスタートを切ってほしい。そのときに懸念される問題が今お気づきであったら、一、二教えていただきたい。  もう一点は、先生はこれは専門でなかったら答弁いただかなくて結構なんですけれども、一般の公共事業よりも、経済拡大効果といいますか生産拡大効果は医療福祉への投資の方が大きいという考え方が出てきております。私も、実は、これが本当であったらよろしいなと思って幾つか資料を集めて勉強してきました。そのような気が実は私もしております。  ただ、私は一般の公共事業は要らないと言っておりません。私は、やはり生活関連の社会資本は日本は先進国の中では極めて劣っている、だからまだ公共投資は必要であるという考え方をとっております。しかし、雇用拡大効果も医療であるとか福祉であるとかが大きいという考え方が出てきておるようでございますが、もし御存じでありましたらお話しいただきたいと思います。
  182. 八代尚弘

    ○八代公述人 青山議員の御質問にお答えさせていただきたいと思います。  第一に、公的介護保険が実際に動き出すために懸念されるところは何かという御質問だと思います。  私は幾つもあると思いますが、一つはやはり要介護認定の仕方だと思います。今非常に各自治体も苦労しておられますが、仮にこれが余りにも厳し過ぎると、かつての公的福祉の時代とそんなに変わらなくなってしまう。しかし他方で、甘過ぎるとこれは事実上第二の年金になってしまうわけでありまして、その意味で、いかに人々が納得する合理的な要介護認定をつくるかというのが公的介護保険信頼性を揺るがす大きなかぎになるのじゃないかと思っております。  それから第二に、今、内需拡大のために、景気回復のために社会保障も重要な役割を果たすわけでありますが、そのときに、従来型の社会資本だけじゃなくて医療福祉関係のシステムが重要ではないかという御指摘は、そのとおりであると思います。これは既に五十嵐先生もおっしゃった点でありまして、例えば老人ホームであるとか医療福祉施設というのは非常に労働集約的でありますから、そこにお金を投入するということは、直ちにそれが雇用なり賃金なりという形で消費に結びつくわけでありますから、ある意味で即効性があるということが一つであります。  それから、何といっても、社会資本というのは需要面の効果とそれから供給面の効果が両方必要なわけであります。単に需要を拡大するだけじゃなくて、それが人々にとって役に立つものである、同時にそれが民間企業とか労働者の活動にとってプラスになるものであるという、供給面の効果が重要ではないかと思います。  私は、社会資本というのはいずれも必要なものでありますが、特に大事なのは不足している社会資本でありまして、別の言い方をすれば、今、待ち行列ができている保育所であるとか老人ホームであるとか、そういうものについては公共投資の効率性が高いのではないか。逆に言うと、空気を運んでいる道路とかお客を乗せていない新幹線というのは非常に、どっちかといえば社会的な公共性の優先順位が低いのではないか、そういうふうに考えておりますので、ぜひ福祉関連の公共投資に配分のウエートを高めるということが重要ではないかと思います。  以上でございます。
  183. 青山丘

    青山(丘)委員 ありがとうございます。  五十嵐公述人に、お話を聞いておりまして、ほとんどのところで私は納得しておりました。ところが、愛知万博の話だけは絶対に納得できません。地元の選挙の結果を各種御存じでおっしゃられたとすれば、例えば圧倒的多数が反対しておるというような考え方は事実誤認でございます。このことだけはきちっと申し上げておかないと、終わるわけにはいきません。  終わります。
  184. 島村宜伸

    島村委員長 次に、岩國哲人君。
  185. 岩國哲人

    ○岩國委員 公述人の四人の先生方、大変御苦労さまでございます。  民主党を代表して質問させていただきます。  まず最初に、八代公述人に、高齢化社会について大変前向きな御意見を伺いまして、私も大変うれしく思っております。規制緩和という概念について、それが重要になっているということについては五十嵐先生もお話しになりましたけれども、私は、年齢の規制緩和というのが大事じゃないかと思っておるんです。  表現は違いますけれども、先生と私は同じことを申し上げていると思います。世界一長寿の日本が、よその短命国と同じように六十五歳で高齢者とか老人という言葉を使っているのがおかしいんであって、グローバルスタンダードの時代ですから、何も長寿国の日本が短命国と同じように、六十五歳で老人医療費だとか高齢者だとか、そんなことをやっているから間違い。六十五歳を、日本は七十歳以上をもって高齢者とする、老人扱いにするというふうに読みかえしなきゃならぬと思います。  そういうシミュレーションをされたことはおありかどうか。そうすれば、厚生省の予算もどんと下がる、行政コストも下がる、あるいは高齢者介護、そういった公的負担も下がっていく。それを、無理やりよその国と同じ物差しで六十五歳以上は高齢者扱いしているから、余計なお金がかかっていると思います。  簡潔にお願いしたいと思います。
  186. 八代尚弘

    ○八代公述人 お答えいたします。  まさしく今岩國議員がおっしゃったように、年齢の規制緩和というのは、我々のことではエージフリーということでありますが、これがまさに高齢化社会への大きな対応ではないかと思います。  確かに、高齢者を、六十五歳を七十歳というふうに読みかえれば、それは逆に言うと年金の支給開始年齢を引き上げるということと同じことでありますので、これは非常に大きなポイントだと思います。ただ、そのためには高齢者の雇用機会が確保されなければいけないので、労働市場の改革とあわせて社会保障の改革が必要だと思われます。  以上でございます。
  187. 岩國哲人

    ○岩國委員 そうした雇用の機会についても、あるいは年金支給の時期についても、いろいろなものの物差しを変えていかなきゃいかぬと思いますね。年齢がもうこれだけよその国と格差がついていて、それで、依然として同じような物差しで、スウェーデンへ見学に行ったりカナダへ見学に行って、よその短命国の例を持って帰ってきては長寿国の日本に無理やり当てはめようとするのが私は間違いだと思うんです。  同じように、政治の世界でも、肉体的年齢をもって制限しようという考えの政党があるようですが、私はこれも間違いだと思うんです。エージフリーということを言いながら、隗より始めるのが本当であって、間違いの例を自分たちで最初にやっているようでは説得力がないと私は思うんです。  出雲市の場合には、六十五歳で老人会に入る、その規則を撤廃しました。六十五歳で入ってはならない。年は八掛け、気持ちは七掛け、それがこれからの出雲市のルール。  そうしたら、老人会長、副会長さんが私のところへおいでになりました。市長さん、それなら老人会青年部をつくりましょうか、どげでしょうかと。どげでしょうか、こげでしょうかと言われても、びっくりしましたけれども、私は大変うれしくなった。平成三年、出雲市で日本最初の老人会青年部が誕生したんです。六十歳から七十歳は青年部、七十歳になって本会員。  それまでは、六十七歳、七十歳になっても、老人クラブ、老人会に入れと言っても入らない人がいたんです、入っただけで年寄りになったような気がすると。そういう偏屈、頑固、意地っ張りがたくさんいたんです。しかし、そういう人が、青年部ができた途端に、何、青年部、それならわしも入らなければとどんどん入って、千人で結成されたのが、今二千人を突破している。今出雲市の町づくりの中心は老人会青年部が完全に握っているんです、このNPOが。  青年会議所なんか青くなっています。青年会議所は百人ぐらいいますけれども、自分たちより二十歳年上のお父さん、お母さん、六十年間蓄えた知識、経験、判断、人格、人脈、ゆとり、全部を持った人が二千人もいるんですから、かなうはずがないのです。  私は、こういうエージフリー社会というものは積極的に制度の中に、行政に取り込んで、行政コストの削減、気持ちの若返りを図るべきだと思いますが、先生、御所見ありましたら教えてください。
  188. 八代尚弘

    ○八代公述人 私も岩國議員の意見に全く賛成でございます。肉体的年齢だけで何かを決めるというのは間違いだと思いますが、ただ、それは、逆に言うと、アメリカの年齢差別禁止法の考え方であります。  ただ、誤解されていることがあるんですが、年齢差別禁止法というのは、同時に能力主義の徹底でもあるわけでして、同じ能力を持っている人が高齢者であるがゆえに排除されるということは許さない、しかし、能力がなければ何歳でも排除することを認める、これがなければ全く公務員と同じような形になってしまう。それはまずいわけで、やはりこのエージフリーという考え方、年齢の規制緩和は、能力主義の徹底と一緒になってやらなければいけないんじゃないかと思います。
  189. 岩國哲人

    ○岩國委員 昨日の例ですけれども、宮澤大蔵大臣、相当高齢にもかかわらず、朝早くからずっと座っておられて、夜はまた大蔵委員会で十時過ぎまで。大変な体力と知力。そういう宮澤大蔵大臣、ここにいらっしゃいませんけれども、その一つの例を見るだけで、もうエージフリーの社会はまず永田町から始まっていると私は思います。  次に、五十嵐先生にお伺いしたいと思いますけれども、五十嵐先生のお話の中で、借金が、楽観的なシナリオでさえも十三年後には倍増する、いろいろな条件を、楽観的な条件を全部重ね合わせても、ベストケースでも十三年後には倍増する。大変恐ろしいことだと思います。  確かに、日曜日が来るごとに一兆円ずつ国の借金がふえている。小渕内閣になってから八十三回日曜日が来て、八十三兆円借金がふえている。日曜日が来るたびに一兆円ずつ。それは、二兎を追うごとに一兆円ずつお金が出ていく。二兎を追う者が一兆円借りる。日曜日の朝になると、一兆円持って、そしてウサギを追うためにかの山へ行って、帰ってくるときは手ぶら、これが八十三回続いて八十三兆円、こういう状態になっておるわけです。  先生は、戦前は軍事費で破綻した、五十年たって日本公共事業費で予算破綻するんではないか、そのように理解いたしましたけれども、間違いありませんか。
  190. 五十嵐敬喜

    ○五十嵐公述人 数字は冷厳でありまして、全く間違いありません。
  191. 岩國哲人

    ○岩國委員 これは日本経済新聞に、私の地元と言ってはおかしいですけれども、島根大学の保母教授も同じようなことを、地方の目から見て、そして公共事業を一番必要とする島根のような地から見て、同じような警告を発しておられるんです。  そして、今から四年前、総選挙が行われるちょっと前ですけれども、OECDが重大な警告を日本財政に対して発せられたこと、これは先生も御存じだと思いますけれども、OECDは、今のままでは日本財政の面で破綻するんではないか、そういう九六年六月の警告がなされております。人口高齢化による財政負担の増加を考慮すると、赤字削減の引き延ばし、あるいはおくらせるということ、それは維持不可能な状況を急速につくり出すおそれがあると。これはOECDのエコノミック・アウトルックの中に載っておりますけれども、四年前のそうした予言、警告は、まさにきょう五十嵐先生のおっしゃった現状につながってきたんではないかと、我々政治家の端くれとして大変反省しております。  五十嵐先生のおっしゃった中で、増税かインフレか、この二つの選択しかない、こういうことをはっきりとおっしゃいましたけれども、私は、その二つだけではないと思うんです。増税かインフレか、その組み合わせか。税金も上げる、インフレも持っていく、そういう組み合わせというケースも私は非常にあり得ると思うんですね、政策の選択としては。  結局、二つの選択ではなくて、三番目のその組み合わせというケースも大いに考えておかなければならない。物価は上がる、利子は下がる、税金は上がる、年金は下がる、借金はふえる、仕事は減る、自殺はふえる、子供は減る、こういうふうな社会がこれから日本で始まるかと思うと、大変そら恐ろしいわけです。  先生は、毎年五%ずつ減らしていって公共事業予算が半分になれば、五十兆円体制、五十兆円政府ができるんだと。もちろん、それ以外の努力もたくさんしなきゃいかぬだろうと思いますけれども、この五十兆円政府というものは、先生自身がいろいろなシミュレーションをされて、どの程度政治家の決断があればできるというふうに思っておられますか。
  192. 五十嵐敬喜

    ○五十嵐公述人 あらゆる予算について、外から見ておりますと、今のところ国会の先生方はまだそれをふやすことが使命だと考えているように見受けられます。このマインドを持っている限り、それは実現できません。多分、総選挙でそれが一番問われまして、削減するということを言った方が勝つ社会になるんじゃないかということがアンケートでそろそろあらわれてきたというふうに思っております。  なお、もう一度、一点だけ関連してお話しさせていただきたいんですけれども、要するに、今までの政策マインドというのは、八十数兆円の予算に対して四十九兆円しかない、この差額をどうやって埋めるかということにずっと頭を使ってきました。増税もあるいはインフレもあるいはそのミックスも、その埋めるということをずっとやってきたんですけれども、これは大蔵省の推計でもほぼ不可能です。大蔵省が不可能なだけじゃない、世界的な角度から見ても不可能です。だから、私たちは発想を切りかえて、小さな政府をつくることに頭を切りかえない限り日本の将来はないというふうに申し上げたわけです。
  193. 岩國哲人

    ○岩國委員 五十兆、五十兆と、五十嵐先生のお名前もちょうど五十ですけれども、そういう五十を目指す、そして税金の身の丈に合わせた政府をつくっていく。しかし、それに十年、十五年かかるよりも、むしろ私は、先生が考えていらっしゃる中には、今までいろいろな講演も聞かせていただきましたけれども、もう今の国会議員、我々じゃとてもそれはやってくれそうにないということを思っておられる、今もそうおっしゃったと思います。  しかし、五十兆円政府をいつか税金の身の丈に合わせてつくらなきゃならないとすると、今の政府は六百兆円の借金を抱えたままで清算法人に衣がえして、新しい五十兆円政府をつくった方が早いんじゃないかと思うのです。金融の世界ではもう始まっているんですから、公的資金投入して。長銀みたいにアメリカに売ってしまうわけにいきませんけれども、新しい政府をつくって、古い政府よさようなら、古い政府は借金と一緒に清算法人となってもらう、そして新しい五十兆円政府をつくるぐらいの方が早いんじゃないかと思いますけれども、いかがでしょうか。
  194. 五十嵐敬喜

    ○五十嵐公述人 最近、いろいろ官僚さんとお話ししますと、行き着くところまで行かないと日本はだめになるのではないかという意見が非常に強まっているように思います。行き着くところに行ったらそういう事態になると私は思っています。つまり、やはり国は破産するんだろう。そのときには、清算会社にして新しい政府をつくるしかない。そういう事態もシナリオの中には入ってきている時代に入ったというふうに思っております。
  195. 岩國哲人

    ○岩國委員 北海道からおいでいただいた濱田先生に私も質問させていただきたいと思います。  ベンチャー社会について、ベンチャーに対して非常に力説いただいたわけですけれども、私も、ベンチャーという形でもって次々と新しい企業が起きていくアメリカのような社会に住んでもおりましたし、またそれを大変うらやましくも今でも思っております。  しかし、どうでしょうか、今のような不景気。最近、経済企画庁の方で景気ウオッチャー調査というのをやりました。タクシーの運転手さん、すすきのの方もいらっしゃったかもしれませんけれども、そういう人がお金の使い方を見て庶民の目線で発表した。  統計を見ますと、北海道も少し景気がよくなっているようなことをおっしゃいましたけれども、庶民の目線は、北海道、東北は、地域の中で現況でもよくなったと思っている人はゼロ、ゼロ。ほかの地域には、五%、八%います。それから、これからよくなるだろうということに対してゼロ回答があるのも北海道と東北なんです。それぐらい私は厳しい地域なんだなと御同情申し上げておりました。  こうしたベンチャーに関する制度や法律をどんどんつくっても、私は景気の悪いときにはやる人はまず少ないだろうと思うんです。法律がベンチャーをつくるわけでもないし、制度がベンチャーをつくってくれるわけでもない。結局、先生もおっしゃったように、やる気のある個人がいるかどうか。  アメリカは、不景気はなくて先行き景気はよくなる。税金はもっと減るかもしれない、金利はもっと下がるかもしれない、景気はこれからよくなるかもしれない、それがベンチャーを引っ張り出したんです。アメリカの高校でも大学でも、途中退学者が今ふえています。なぜふえたか。仕事の方がおもしろい、就職の機会があるから学校なんかにぼやぼやいつまでも残っているわけにいかないというので途中退学者がふえているんです。  日本でも、高校、大学で中途退学者がふえています。就職があるから、会社をつくっておもしろいからじゃなくて、大学に残っていて卒業しても就職の機会がないからという全く別の理由で同じような現象が起きているんです。  そこでお伺いいたしますけれども、このベンチャーについて、先ほど三つの不安ということを先生はおっしゃいました、雇用と所得と蓄財について。これは一般的に個人消費を対象にして、こういう三つの不安があるから消費が低迷し、そして現在の不況がなかなか終わらないんだというふうに理解してよろしいですか。これはベンチャーということではなくて、一般的におっしゃったわけですね。
  196. 濱田康行

    濱田公述人 岩國委員にお答えします。  私の発言要旨に書きました三つの不安というのは、一般的に申し上げたことでございます。  ベンチャーに関する質問に関してお答えいたします。  まず、景気ウオッチャー制度について岩國委員言及されましたけれども、これは実は経済企画庁の早期化委員会というところで私も提案して始めた制度でございまして、委員御指摘のように北海道で状況がよくないというところは十分承知しております。  それで、景気の悪いときにベンチャーなんといったってだめじゃないか、こういう御指摘だったと思いますけれども、私はむしろ逆で、不景気が長続きして、何とかしなければいけない、そういう雰囲気というのは醸成されてきていて、それから、大企業に長いこと勤めてという日本の雇用パターンというものがおかしくなってきて、ある意味ではベンチャーが生まれるそういう条件は出てきているんではないか。ですから、制度的なものを今用意しておくということは決して私はむだではないというふうに思っております。先ほど申し上げましたけれども、ベンチャー支援策というのはそんなにお金のかかる制度ではございません。
  197. 岩國哲人

    ○岩國委員 私は、アメリカという社会にいて、ベンチャーがどんどん出ていったのは、結局、もうかりそうだから、環境がいいから。政府や市役所がしりをたたいたからというんじゃなくて、もうけたい人は、もうかりそうなときには政府や国会議員が何も言わなくたってどんどんやるんです。日本でもバブルのときには随分いろいろな会社ができ上がりましたね。バブルが崩壊してから、私の住んでいる世田谷でも、店を閉めるところはあっても新しくやろうという、この制度ができましたよ、こういうゼロ金利みたいなものができますよといったって、それはベンチャーをやる人たちにとって三つの不安があるからなんです。  その三つの不安というのは、一つ景気の先行きに対する不安、これがある限りどんなにいい制度があってもなかなかふえないと思いますね。二番目は、金利が上がるんじゃないか、少しいい調子になり出したら金利がこれから上がりそうだ、そういう不安を敏感に感じ取っています。三番目、最後ですけれども、増税です。これから税金が上がっていくんじゃないか、今は安いとか無税だとか言われているけれども、もうかるようになったらしっかりと上げていくんじゃないか。現に政府赤字赤字、そして借金をしているわけですから。  ですから、景気と金利と増税、この三つの不安があると、どんなにいい制度をつくっても、だからやらなくていいということじゃないんです、不景気なときだから、数少なくてもやらなきゃいけませんけれども、実績は必ずしも私は楽観できないというのは、この三つの不安があるから、やれ、やれと言ってもやる気を起こす人がなかなか出てこない。景気と金利と増税。増税、増税といったって、どこに増税があるか。きのう、いよいよ増税レースのスタートのピストルが西新宿で鳴りましたでしょう、いよいよこれから増税の時代に入ったという。号砲一発、ついに増税の時代の開幕を告げるあれだと私は思うんです。  そういう環境の中でベンチャーをやりなさいといっても、ベンチャーにまでどうせ税金をかけられる時期が来るだろう、そういう不安があるとなかなかやらないんじゃないか。私の所感ですけれども、先生はそれでもまだかなり期待していらっしゃいますか。
  198. 濱田康行

    濱田公述人 岩國議員にお答えします。  景気が不安である、それから金利が上がるのではないか、増税があるのではないかというのは、これは別にベンチャー企業をやろうという人間に限ったことではなくて、極めて一般的な不安だろうというふうに思います。  ただし、一つ反論をさせていただければ、金利に関しては、上げた方がいいのかこのままがいいのかというのはかなり議論のあるところだというふうに私は思っております。低金利で苦しんでいる人も相当おりますので、しかも、四年以上にわたって超低金利というのは異常な状態だというふうに私は認識しております。  増税に関しては、エンゼル税制というものが実施されるやに聞いておりますので、ベンチャーをやる人にはむしろ朗報がある、その点では刺激があるということでございます。  それと、ちょっと戻りますけれども、岩國委員最初の方でいわゆる六十五歳以上の問題に言及されましたので、そのことについて一言申し上げますと、私たちの世界というかベンチャーの世界にはシニアベンチャーという言葉がありまして、かなり年がいってから企業を始める、しかも定年はなし、そういう企業というのも考えられるわけでございます。ですから、ベンチャーというと何か若々しいものを想像するのですけれども、年齢的には決してそんなことはない、むしろ年齢のないフリーな、そういう企業というのを私は念頭に置いているということでございます。  以上です。
  199. 岩國哲人

    ○岩國委員 最近、ベンチャーの数がふえるのは、いろいろな要素がありますけれども、株価が上がっているときというのは大体ベンチャーがふえやすい環境、一番わかりやすいのですね。株価がどんどん下がっているときというのは余り飛び出そうという人は少ないわけですよ。そういう点、株価に関しては追い風は吹いていると私は思います。  しかし、この三つの不安のほかに、政治の先行き不安というのが、最近の世論調査を見ていますとあるのです。株式市場が上がっているときには大体内閣の支持率は上がるものなんです。ところが、株価は上がっても内閣の支持率は逆に下がっている。これは世界の先進国にちょっと珍しい例なんですね。株価が間違っているのか、内閣によっぽど人気がないのか、そういうばらばらの動きが今日本に出てきている。したがって、一般の人たちの、企業家の本当の心理は株価の方にあるのか、内閣の支持率の低下の方に正直にあらわれているのか、私自身もなかなか分析はできないところであります。  最後に、残った時間、限られておりますけれども、中北先生に金融システムのことについてお伺いしたいと思います。  金融システム安定のための提言として、五つ御提言いただいたわけですけれども、私は、この中に一つ抜けているものがあるのじゃないかと思うのです。  それは、金融行政に対する信頼が本当に回復されたことになっているか。日銀、大蔵によるああいう癒着、手抜き検査、あるいは何とかしゃぶしゃぶ、ああいったことでかなり官僚は責任をとってやめていったのですね。こういう金融行政に対する信頼感は回復しているという判断で金融行政というのがこの五項目の中に入っていないのかどうか、簡潔に先生のお考えをお聞かせいただきたい。
  200. 中北徹

    ○中北公述人 私は、国会にこれまで数回お呼びいただいたときに特に議論させていただきましたのが、いわゆる財政金融の分離の議論でありました。  これに関しまして、私は、まず明確に、お金を扱う活動ではあるけれども、金融というのは貸借関係、将来返済するものだ、それに対して、財政も見かけ上は同じようにお金を回す活動ではあるけれども、これは払いっきりである、あるいは取りっきりであるという意味で本質的に違うのだということで、財政金融分離のことはかなり口が酸っぱいぐらい申し上げた。その結果、今般、金融監督庁が金融ビッグバンの流れの中で発足し、二年ぐらい経過したわけであります。  金融インフラの整備という点では幾つか問題を残しました。つまり、ペイオフの解禁の延長、それから今は、保険会社等若干の金融機関の再編の問題を残しております。しかし、それ以外の問題についてはかなりインフラの整備は進んでいるかとは思います。しかし、根本的なところは先生がおっしゃるようにまだまだ不透明なところがあって、つまり、説明責任がまだ不十分であるという点が一番欠けている点ではないかというように私は思います。  したがって、グローバルスタンダーズということで、かけ声、スローガンは声高に聞こえるわけですが、実際にどういう形で、だれが責任を持って、どんなプロセスを経て決定に至ったのか、これが私ども外から見ていて常々気になるところであり、もどかしさを感じるところであるというふうに思っております。大変不徹底だと思います。
  201. 岩國哲人

    ○岩國委員 金融行政に対する不信、信頼感の回復というのはまだ十分でない、私はそのように思っております。  先生はその点はもう既に解決したかのごとくおっしゃったわけでありませんけれども、こうした五つの提言一つ一つはごもっともなことばかりで大切なことだと思いますけれども、金融行政というのは、例えばそういう高級官僚が、大蔵省が、日銀が不正なことをやっている。  つい一週間前の土曜日にも、金融再生委員会の委員長がある地方で、検査が厳し過ぎるようだったら自分のところへ言ってきなさい、日銀とか大蔵の検査がきついようだったら、しかも、公的資金を投入されている足利銀行、その地元へ行って、信用組合、信用金庫の人たちを集めてそのようなことを、利益誘導のような、行政の姿勢を乱すようなことが依然として行われておる。以前は大蔵省の官僚がやったことを、今は内閣の一員がそういうところへ出かけていって、自分のところへ来なさい、あるいは蓮実代議士のところへでも言ってきてください、こんな発言をして、きょうの午後の大蔵委員会でもそれが大変な問題として取り上げられております。  中北先生、金融システムの安定強化にとって一番必要なことは、だれが正しい公平なフェアな行政をやるか、その一点が一番大切なことではないかと私は思うのです。御意見を伺いながら自説を申し上げて恐縮ですけれども、ぜひこの五つの提言の上に、それをまたいろいろな学校での講義でも、いろいろなところで先生は講演されることが多いと思いますから、今日本にとって一番必要なのは、金融行政の姿勢、それがきちっとしていないということだと私は思います。  時間が来ましたので、この辺で終わらせていただきます。ありがとうございました。
  202. 島村宜伸

    島村委員長 次に、平賀高成君。
  203. 平賀高成

    平賀委員 日本共産党の平賀高成でございます。  公述人の皆さんについては、大変遅くまで御苦労さまでございます。  私は、日本財政の問題について、特に公共事業の問題について少し伺いたいと思います。  日本公共事業の問題について聞きますと、今では財政的には赤字の債務残高が六百四十五兆円で、国内総生産の一・三倍だ、この一番大きな問題の根底には、五十嵐先生がお話しになった公共事業の問題があると私は思うのです。  なぜ公共事業がこれほど膨らんでいくのか。きのうも私、この予算委員会の中で質問をしたのですが、特に、九〇年の六月の日米構造協議の中で、公共事業の問題では、十年間で四百三十兆円の公共事業を行う、これが国際公約だということが言われまして、さらに、九五年の段階になりますと、これが六百三十兆円に引き上がっていく、こういうことが決められて、それを達成するために目標を持っていろいろな長期計画をつくっていく、こういうことになっているわけです。  私はこういうふうなやり方は非常に問題だと思うのですが、この点での五十嵐公述人の御意見を伺いたいと思います。
  204. 五十嵐敬喜

    ○五十嵐公述人 私の考えもまさに同じでありまして、要するに、十六本の公共事業に関する中長期計画がありますけれども、あれを見ますと、道路を除きまして、ほぼ三〇%ないし四〇%台の高い伸び率で五カ年計画が定められているわけです。つまり、何かが国民にとって必要だから、それが公共性があるからつくるというよりも、要するに、そういう目標を達成するために無理にでもやるというのが今の公共事業システムになっているんだろうと思います。  もっと大きいのは、そういう中長期計画を含めた無理にでもやる公共事業に対して国会がチェックできない、この制度的仕組みが一番大きいのではないかというふうに思っています。御承知のとおり、中長期計画については閣議決定がファイナル決定者でありまして、国会が関与できないということになっておりまして、これをぜひ改めていただければと思います。
  205. 平賀高成

    平賀委員 公共事業の問題について言いますと、先ほど、今の日本財政状況を考えてみて、やはり公共事業の問題で、長期的には公共事業の半減というふうなことをお話しされましたけれども、どういう計画といいますか、長期的にどの分野を削るのかとか、具体的な内容についてちょっとお話しいただきたいと思います。
  206. 五十嵐敬喜

    ○五十嵐公述人 政治も絡みますので、私の考え方を申し上げますと、ショッキングで鮮やかな例を示したらよいと思うんです。私自身は、まず諫早湾のゲートと長良川のゲートをあけるべきことだというふうに思っています。二番目は、先ほど反論がありましたけれども、吉野川については工事を中止すること、愛知万博についても中止することだというふうに思います。  そうすると、世の中に何が必要か必要でないかについて自分たちで考えるということが出てくると思うんですね。それで、何が必要か必要でないかを当該地域の住民に真意を問うということをやったらいいというふうに思います。そうすれば、受益と負担の関係が見えてくれば、住民たちも、どの事業を選ぶか、大きく言えば公共事業の中で橋を選ぶか下水道を選ぶか、あるいは社会福祉を選ぶか公共事業を選ぶか自分たちで考える、そのシステムをつくれば自然に下がってくるというふうに私は思っています。
  207. 平賀高成

    平賀委員 今、どの分野を削っていくか、特に量の分野をお話しになりましたけれども、さらに先ほどの中で、同時に質の問題も検討するべきだと言われました。  私もこの質の問題について言いますと、いろいろな議論をやりました。これは先ほども、水害があったらどうするかとか、いろいろありますけれども、しかし、今の公共事業というのは、本当に住民が求めているようなものではなくて、やはり大手のゼネコンなどが参加をしていろいろ長期的なプログラムに沿ってやっていくということが多いと私は思うんです。そういう分野を社会保障や福祉の方向に切りかえていくのでしたら、今のいろいろな財政問題についてもなかなかいい方向に切りかえていくことができていくと私は思うんですが、その点、質の問題で具体的に、先ほどもお話がありましたけれども、さらにもうちょっと突っ込んでお話しいただけたらと思います。
  208. 五十嵐敬喜

    ○五十嵐公述人 来年度予算における公共事業予算のポイントというのがいろいろ出ております。今回は、物流あるいは環境、あるいは少子高齢化社会への対応、それから高度情報通信社会への対応というのが公共事業の中でいえば目玉商品になっています。  しかし、実態を見ますと、例えば物流効率にいきますと、拠点空港などについて莫大な予算がついております。環境については、ダイオキシン対策にも若干見られますけれども、これは全体の額は非常に少ないということです。それから、少子高齢化への対応にいたしましても、これも全体の額について言いますと下水道を除いては非常に少ないということです。情報社会対応についてだってほとんど見られないということでありまして、言葉では現代社会を投影しているとなっていますけれども、具体的な事業の中身を見ますと、ほとんどこれについては実現できません。要するに、従来型の大型公共事業を踏襲するというシステムになっております。  それを社会保障の方に切りかえなきゃいけないのですけれども、先ほど申し上げましたように、少なくとも高齢化社会に対応する物的施設がほとんどまだ足りません。東京都に至りましたら、公的介護で予想される対応の三割しか実現できていない。それから、いわんや人的な問題も非常に不足でありまして、そこに公共事業で削減した費用を回せば、経済効果も確実に上がりますし、雇用効果も上がるということです。  ただ、問題は、これを全国一律にやるのではなくて、北海道のある町ではこういう選択をする、東京都ではこういう選択をする、分権化社会で、そのこと自体、どれを選ぶかを住民に問う仕組みを一緒に入れてやった方がいいというのが私の意見です。  逆に言いますと、水害対策でまだダムの必要なところもないわけではないかもしれない。しかし、そういうことを全部終わって、圧倒的にもう公共事業は要らない、福祉に全部したいという地域もあるわけでありまして、それを全国一律にやらないで、情報公開をしながらその市民に選択させるという仕組みを導入すれば、質的転換も進むということです。
  209. 平賀高成

    平賀委員 先ほどお話しの中で、そういう公共事業の問題について、議会の中でもいろいろチェックをやっているという地方自治体が全国的にはいろいろあるというお話をされました。先ほど言われた、チェック機構を持つというふうなこともありますけれども、さらにどういうふうなことを具体的にやられているのか、どういうふうな特徴があるのか、その辺について伺いたいと思います。
  210. 五十嵐敬喜

    ○五十嵐公述人 例えば神奈川県に真鶴町という、一万人の小さな町でありますけれども、ここでの実験を紹介いたしますと、住民たち及び議会及び町長さんが一緒になりまして、そもそもどういう町に住みたいかということをマスタープランに書き込みます。真鶴町では、いろいろありますけれども、夜光虫が再生できるような町に住みたいのだということを唯一のビジョンにしまして、それを中心として予算と計画を組みます。マスタープランの中に、夜光虫を再生させるための事業を全部、こういう事業を行うと書き込みます。  さらに重要なことは、その事業について、だれが担当し、何年まで幾ら金を使って、何年ごとにどういう仕事が進むかということが全部住民に公開されています。不況になりますともちろん税収が減るわけですけれども、そのときに、このマスタープランに即しまして、どの事業をおくらせるか、あるいはやめるか、あるいはどの事業を強化するかを、住民自身がその点検調書を見ながら、マスタープランと照らし合わせながら考えていって、それを議会に反映していくという構造になっておりまして、そこは非常に健全財政になっているということです。例えばそういうのが一つの例です。  その他、福岡県にも宗像町というのがありますし、秋田県にも鷹巣町というのがありますけれども、いろいろな特色ある実験をやっております。
  211. 平賀高成

    平賀委員 私は、今の公共事業の問題について、政府の方は、公共事業をやっていきますと雇用の拡大にもなっていくんだということになるんですが、ただ、私は、そもそも今問題になっているのは大型の公共事業であって、特にゼネコン奉仕型というふうに私たちは思っておりますけれども、とにかく、そういうふうな公共事業をやればやるほど、これは本当に景気回復に、また雇用の拡大になっていくのかどうなのか。私はなかなかそうは思えないのですが、この点について、五十嵐公述人の御見解を伺いたいと思います。
  212. 五十嵐敬喜

    ○五十嵐公述人 幾つかの現場を私も調査に行きました。雇用はふえておりません。理由は、大型公共事業になればなるほど、大手ゼネコンの非常に優秀な機械に頼る部分が多くなりまして、雇用はふえていないと思います。  それから、経済波及効果も、下の方に仕事が回りませんので、要するに大手町と霞が関の間でほとんど決済が済んでおりまして、地元の零細・中小企業に波及するということもどんどん減っているように思います。
  213. 平賀高成

    平賀委員 私もこの問題では、いろいろゼネコンの有価証券報告書などを見ましたら、やはり実態としてもそういう方向になっているわけです。大体、長期計画にゼネコンなどが参入をしますと、これはもう何年先までの仕事も確保することができる。ところが、今の状況について言いますと、大体、利益があっても、この利益がバブルのときのいろいろな債務処理に消えてしまっていっている。ですから、こういうふうなやり方をやっている限り、今お話しになったような状況だと思うんです。  具体的に、こういう状況の中で、先ほどもお話しになった、公共事業といいましても社会保障や福祉の方向に切りかえていったら、これはもっと雇用の面でもよくなるし、いろいろ将来の不安もなくなっていくわけでありますので、私たちはそういうふうな方向に行くべきだと思うんですが、この点について、もうちょっと五十嵐公述人意見を伺いたいと思います。
  214. 五十嵐敬喜

    ○五十嵐公述人 大型公共事業をやりますと、要するに決済が大手企業で済むわけです。大手企業はそのまま今のところ金融機関へ行くものですから、お金が下に回らないということです。しかし、私は言いました。例えば特養ホームの建設を考えますと、これは大手企業でなくても、地元企業でできますし、そこで働く人たちの給料にそのお金が配分されるわけですね。そうすると一人一人の個人のところに所得がふえる、したがって消費がふえるという構造になると思います。  問題は、大きく国の公共事業予算と国の社会保障の予算をちゃんとトレードオフできるようになっているかどうかです。これは本当は国会の役割だと思うのですけれども、現在の予算編成の仕方を見ますと、全部下の方からボトムアップになりまして、縦割り行政になっていますから、予算審議するときはほとんどトレードオフがきかないということがありまして、これをどうやってやるかというのが非常に大きな国会の宿題だと私は思っています。  ことしは間に合いませんでしたけれども、来年は財政諮問会議、内閣府の中に予算編成権を政治が行うシステムが出てまいります。そこに若干期待しております。要するに、国会で公共事業の半減計画を立てて、それを財政諮問会議が受けて、その半減した分を社会保障に回す。要するに、官庁の縦割りを超えた予算編成と同時にすれば公共事業と社会福祉のトレードオフということが可能になるだろう。だから、その減少面を幾らやっても予算編成の方法論を変えなければだめで、今のところ縦割り行政で非常に難しい。しかし、来年からはそれができるようなシステムができるということで、私はそこに期待しております。
  215. 平賀高成

    平賀委員 大体時間的にも詰まってきましたから、私は最後に、今の公共事業のあり方として、先ほどもお話しになりました吉野川の可動堰の問題とか愛知万博の問題などもあるのですが、やはり本当に、今の世界の流れからいいましても、巨大開発などをやるよりも、大切な自然環境を生かしながらいろいろな事業を進めていくということが主流だと思うのです。  特に、住民投票という形でいろいろ全国でも運動が広がっているわけですが、ところが、住民投票でノーだという審判が出ても、一切計画変更しないままでいくんだというふうなやり方がまだまだ横行していると思います。特に、愛知万博でも国際的な問題にもなりましたけれども、もう住宅開発を環境博の名によってやることはだめだということが、国際的にも批判の的になっているわけですが、公共事業のあり方の問題として、やはり基本的な原則的なあり方の点について御意見を伺いたいと思います。
  216. 五十嵐敬喜

    ○五十嵐公述人 私も、世界のNGOとお話ししたことがありますし、世界の公共事業の現場を見てきたこともあります。  今回の吉野川の河口堰に対する建設大臣以下の政府首脳の答弁や、愛知万博をめぐる通産省の人たちの答弁を見ておりまして、非常に驚きました。あれをそのまま世界じゅうに翻訳してコピーで配りましたら、もう一周おくれといいますか、そのぐらいばかにされてしまうぐらいのひどい状況が永田町で続いていると率直に思います。私も教師の端くれでありますから、大学でもこういう授業を教えるわけですけれども、多分、大学に行っても、政府の見解について支持する人はほとんどいないと私は思っておりますし、吉野川で工事することも事実上不可能だと私は思っております。
  217. 平賀高成

    平賀委員 以上で終わらせていただきます。ありがとうございました。
  218. 島村宜伸

    島村委員長 次に、濱田健一君。
  219. 濱田健一

    濱田(健)委員 社会民主党の濱田健一でございます。  五十嵐先生にまずお尋ねしたいのですが、身の丈政府という言葉が出てまいりました。これは、多分自治体も含めて言っておられることだろうというふうに思います。普通のノーマルな生活をしている人間から見ると、家庭生活も、借金があってどういうふうに切り盛りしていくかというときに、背伸びはしないということが当然だというふうに思っておりまして、このことはまさに先生がおっしゃるとおりだと思うのです。  国も地方自治体も含めて二〇〇〇年末には六百四十五兆円借金がある。先生のお話では八百も九百も一千兆もというお話でございますが、どう見ても税収景気回復してもそう多くは望めない中で、つくられてきた借金はどういうふうにして返していくのか。まあ自分たちが死んだ後の話だからそれでいいよ、よく言われる後は野となれ山となれという言葉ではいけないと思うのです。  そうなると、私もお尋ねしたのですけれども、増税ということしか考えられない、こう申し上げますと、すぐにはそういうことはしないと総理も大蔵大臣もおっしゃる。しかし、それしかないと私は思うのですけれども、先生、別な方法はありますか。
  220. 五十嵐敬喜

    ○五十嵐公述人 数字上、設計図を書ける人はもう日本じゅうにいない、世界じゅうもいないと思います。要するに、私の言う隠れ借金や陰の借金や、あるいは将来の国債の増発傾向を見ますと、あっという間に千兆を超える事態、GDPの二倍になる事態がやってまいります。そのときに、五十兆しか税収はないわけですから、そんなものは絶対に返せないと思います。やる方はただ一つ、だから自分税収で政治を行う、日本国家を運営するということ、基本をそこに据えなければもうとてもだめだと思うのですね。  先ほど申し上げましたように、今のところ、八十何兆も使いながら五十兆しか収入がない。この差額をずっと赤字を続けていくからどんどん切りがなくなるわけで、思い切って五十兆の政府をつくり直すしかない、それが出発点だということです。そのためには、極端に言えば、歳出が半分になるわけですから、国家公務員の数も半分になりますし、いろいろな事業も半分になるというぐらいのことを覚悟しなければスタートラインがつくれないというのが私の意見です。  もっとも、増税やインフレや、昔は戦争ということがあったらしいのですけれども、そういうことがあれば事態が変わることがありますけれども、多分、今この数字回復できるような増税も、今この数字回復できるようなインフレも、もちろん戦争もあり得ないということですので、全く別な国の形を考えなければ回復不可能じゃないかと私は思っています。  なお、子細に宮澤大蔵大臣のこの間の予算委員会での質問と答弁を見ましたら、宮澤大蔵大臣すら、非常に長期にかかって政府と自治体の関係やら税収の関係を根本的に考えなければもう直せないということを言っているのは、将来ビジョンは違いますけれども、事態の認識については同じだというふうに私は思っています。
  221. 濱田健一

    濱田(健)委員 先生は戦争はないとおっしゃいましたけれども、本当にそうかなと、いろいろな法律ができてきますので、心配しているわけでございます。  そういう中で、濱田先生、先生がきょうのレジュメの一番最後に、二〇〇〇年は、このままでは日本経済がだめになると心配した神様が与えてくれた最後の準備の一年というふうに言われています。神頼みということもよくありますが、最後の一年ですので、来年以降は神様は絶対に猶予はくれないというふうに先生がおっしゃっておられると思うのです。  八十四兆九千億というこの大きな景気対策雇用対策と称することしの予算について、もし、先生がおっしゃっているような与えてくれた最後の一年でなくて、どうしようもなくなった場合に、来年以降、先生だったら、日本国というのはどういうふうにしたらいいのでしょうか。もう破産宣告、お手上げです、ギブアップですというふうに言ってしまってどうにかすれば、どうにかなる方法があるのでしょうか。
  222. 濱田康行

    濱田公述人 濱田議員にお答えしますと言いたいところですけれども、ちょっと難しい質問ですので。  二〇〇〇年が二十一世紀までの最後の一年だということは、これはもう物理的な事実であります。財政赤字の問題を深刻に受けとめていないのかというふうに聞かれれば、私も深刻に受けとめているというふうに答えざるを得ません。  それから、先ほど来公共投資の問題もありましたけれども、それに全然問題がないのかというふうに聞かれれば、それは多少なりとも硬直化しているし、改善の点はあるだろうというふうに私は思います。  一体どうするんだという話でしたけれども、これは学者の話として聞いていただきたいのですが、莫大な借金をしたときには、私は三つしか方法がないのだというふうに思っています。  一つは、地道に返すという方法であります。国の収入の七・五倍という借金ですから、国の収入の五分の一を充てても三十五年ぐらいかかる、こういう計算になるだろうと思います。しかし、そういう選択が一番賢明ですけれども、そうならなかった歴史的な事例もあるのであります。  一つは、五十嵐先生おっしゃいましたように、インフレという問題であります。インフレで解決してしまうというのは非常に簡単な方法であります。もう一つは、これはこういう席で申し上げることではないのかもしれませんけれども、歴史的には借金を踏み倒した例というのはいっぱいあるんであります。しかし、そういうインフレだとか踏み倒すだとかということを選ばないということが賢明な方法であって、何とかして返していく方法を私も考えなければいけないというふうに思っております。  そのためには、やはり景気がよくなって増収になる、税率が上がるのは困りますけれども、税金の額が全体としてふえるという方法を追求せざるを得ないわけでありまして、そのために当面とれる方法というのは、元気な企業を育てることなんだろうというふうに申し上げたというのが私のロジックでございます。
  223. 濱田健一

    濱田(健)委員 中北先生、済みません、お願いいたします。  ペイオフ延期について、当然中央の銀行も地域の金融機関も、簡単に言うと政府に甘える期間が一年延びたというふうに考えていいと思うんですね。  このことは、二〇〇一年の四月からは一千万という一つの区切り、ずっと僕らは言ってきた。自己責任原則というのをきちんと持つ、そういう自覚が必要ですよというふうに訴えてきたんですが、預金者にとっても自己責任原則をあいまいにするような形になってしまうというふうに思って、両方に都合のいいことじゃなくて、両方に不都合な延期だというふうに思います。その辺、いかがということが一つ。  それと、リストラ、リストラといって、首切りイコールリストラという形での企業の体質改善というのがどんどん日本では進んでいっております。それも最後の手段としてはあり得るんだけれども、最初の手段としている企業が多過ぎるような気がするんですが、先生は、この企業の体質改善を何に求めるのがどんな時代でも大事なのかということがございましたら、お聞かせいただきたいというふうに思います。
  224. 中北徹

    ○中北公述人 ペイオフの解禁の延長ですけれども、私は、消費者預金者にとって、おっしゃるとおりメリットはないというふうに思います。  これは、財政負担をいやが上にもふやします。プラス、今ビッグバンということで、さまざまな金融商品が既に準備されていて世に出ているわけであります。つまり、預金対抗商品を、このペイオフが実施されるという前提があればこそ、さまざまな金融機関が強い動機を持って新商品を世に出そうと思っていたものをいわばくじいたという意味で、それは逆に言うと、消費者が将来リターンの高い多様性のある商品を選ぶ機会を失ったんだということになるわけです。そして、不良銀行の延命にいわば手をかすような効果もなくもないということで、私はおっしゃるとおり二重の負担がここで重なったというふうに思っています。  それから、企業に関しましては、きょうベンチャーのお話大分出ておりますが、今のITブーム、ベンチャーというのを私はまんざら否定するわけではありません。ただ、ベンチャー投資というのは、おっしゃったように、当たれば百倍になりますが、大体百分の一ぐらいしか当たりません。しかし、ではこれを今やらないのかというと、それは私は否定しませんが、恐らくこれは少ししか残らない状況だというふうに思います。  つまり、アメリカでやっているから日本もやるんだというのは、これはきっかけとしてはいいわけですが、本当に日本の産業社会に根づいて日本経済が再生するためには、日本の基盤、つまり組み立て加工型の産業に本当の意味のベンチャーとかハイテク、コンテンツの高い産業というものが浸透していって、足腰の強い産業、つまり、もっと実体経済に足腰を置いた産業に反映されてきてこそ日本経済の再生があり得るというふうに思っています。  誤解なきように申し上げたいのは、今のITブームを否定しておりませんが、これがそのまま回復になるとは私は思っておりません。これがきっかけになって、起爆剤になって、本当の柱である電機、機械とか自動車とか精密加工とかそういうところに転化していってこそ本当のサステーナブルな景気回復につながるんだというふうに思います。  したがって、企業家の方々は、そういう面でもう少し中期的な視点、ビジョンを持って日本経済のあり方、経営のあり方を考えていくことが重要ではないか、そんなふうに思っています。
  225. 濱田健一

    濱田(健)委員 終わります。ありがとうございました。
  226. 島村宜伸

    島村委員長 これにて公述人に対する質疑は終了いたしました。  公述人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  以上をもちまして公聴会は終了いたしました。  次回は、明二十五日午前九時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時四十六分散会