○佐々木陸海君 私は、日本共産党を代表して、いわゆる
会社分割法案並びに
労働契約承継法案について質問をいたします。
まず最初に、本日、森首相が出席しないまま、
労働者の雇用と
国民生活にとって極めて重要な影響を及ぼす法案、いわゆる重要広範議案であるこの二法案の審議が強行されることは極めて遺憾であり、厳しく抗議をするものであります。(
拍手)
政府が発表した二月度の完全失業率は四・九%、完全失業者数は三百二十七万人と、雇用失業情勢は戦後の混乱期を除けば最悪の状況になっています。学卒未就職者が失業者としてカウントされる四月度以降さらに悪化すると経済企画庁長官も認めざるを得ない状況であります。
このような深刻な雇用失業情勢は、自民党
政権並びに自民党、公明党などの連立
政権の相次ぐ失政によってもたらされたものであると同時に、今、独占大企業がリストラの名目のもとに大規模な雇用破壊を進めていることから生じているものであります。大企業の合併、営業譲渡は、毎日の新聞やテレビの報道に見られるように、枚挙にいとまがありません。
このような大企業のリストラの強行に対して、
政府は一切の規制を行わず、それどころか、財界のトップを集めた産業競争力
会議を設けて、そこで出された要求を無条件に受け入れ、産業活力再生法の制定や、株式の交換、移転のための商
法改正、
労働者派遣法と職安法の骨抜き改悪などを次々と行ってきました。今回の商法の
改正案と
労働契約承継法案は、大企業のリストラ促進法制の総仕上げとして
提出されたものであります。
まず、法務大臣に、いわゆる
会社分割法案について聞きます。
本法案は、
会社法制に新たに分割
制度を創設することを柱としているものであります。従来、商法には
会社分割についての規定はなく、そのため、分割部門の営業譲渡、現物出資、財産引き受けなどの手法がとられてきました。これらの手法については、裁判所が選任した検査役による調査や、債務引き受けについての債権者の個別同意など、慎重な手続と
審査が求められていました。これらの規定を必要とした
理由は何だったのでしょうか、まずこのことについて答弁を求めます。
今回の
会社分割法においては、
会社分割を行う場合、株主総会の決議がありさえすれば、今述べたような今まで必要とされた手続を一切不要だとしています。それはなぜですか、その具体的な根拠の
説明を求めます。
この法案では、
会社の営業の全部または一部を新しく設立する
会社に承継させる新設分割と、
会社の営業の全部または一部を既存の他の
会社に承継させる吸収分割を認めています。どちらの分割にしても、分割計画書、分割契約書に記載された権利義務に関する
事項しか承継されない仕組みになっている上、記載される権利義務に関する
事項については分割する
会社が自由に取捨選択することができるようになっています。
そこで聞きます。分割する
会社が
労働契約、労働協約について分割計画書、分割契約書に記載をしなければ、
労働者の権利義務は承継されない事態となるのではありませんか。
会社の判断だけで自由自在に権利義務関係が切断できるとなると、雇用の保障はどうなるのですか。
会社と有機的に一体の関係にある
労働者の権利は非常に不安定なものになってしまうのであり、断じて認めるわけにはいきません。その上、分割計画策定に際して、労働組合との協議を義務づけていないのは重大であります。これでは
会社の思うようにリストラが強行されることになるのではありませんか、そうではないと言えるのですか、明確な答弁を求めます。
また、
労働者の雇用だけでなく、下請企業に対しても、承継する記載がなければ権利関係の切断が有無を言わさずになされることになるため、本法案は、下請企業の切り捨て、単価買いたたきの道具として利用されることになるのではありませんか。分割
会社が下請中小企業との取引契約を
解消する場合または不利益変更をする場合は、営業に対する一定の
保護を行うなどの配慮義務を明確にすべきではありませんか。なぜ本法案で分割計画書、分割契約書の権利義務の承継の記載
事項について何らの規定も設けなかったのか、明確な答弁を求めます。
また、法案では、分割する
会社が分割計画書、分割契約書に記載しさえすれば、営業や事業などを構成する
労働者を含む個々の財産を、
会社が自由に別法人に承継させることが可能となります。これは、
労働者の同意なき移籍の
禁止を定めた基本法である民法の六百二十五条の大原則を骨抜きにし、同意なき移籍を合法化する道を開くものであります。なぜ
会社分割法制で
労働者の本人同意による移籍の規定の適用を除外するのか、その
理由と根拠は何ですか、納得できる答弁を求めます。(
拍手)
さらに、分割によって設立される
会社の資産が分割をする
会社の資産の二十分の一を超えないときは、株主総会の決議を必要としない簡易な分割の手続が可能となるため、安易な
会社分割が行われる危険があります。分割する規模が大きかろうと小さかろうと
会社分割には変わりがないにもかかわらず、小さい場合はなぜ株主総会の決議を経ずに分割することを認めたのか、答弁を求めます。
重要なことは、法案では、生身の人間である
労働者が一切考慮されていないことであります。この簡易分割
制度を使えば、仮に、分割をする
会社の大半の
労働者が働いている事業部門であっても、資産額が二十分の一以下であることを
理由に、株主総会の議決もなく分割が決定されてしまうことになります。簡易な
会社分割で不採算部門を分割することによって、大量の
労働者との雇用関係の切断、労働条件の切り下げを行うことが可能となるのではありませんか。このような危険を規制する規定はあるのですか、また、何ら規定がないのであれば、なぜないのか、明確な答弁を求めます。
不採算部門の切り捨てを認めないというのであれば、分割後も一定期間事業を継続することを
会社分割の要件として規制すべきではありませんか。明確な答弁を求めます。
会社分割法案は、一個の有機的結合体である
会社を事業部門ごとに自由自在に分割することを可能にするため、そこで働く
労働者の地位に重大な変更を与えることになります。本法案は、
会社分割の手続に最初から
最後まで一貫して
労働者が関与することを排除しています。労働組合または
労働者代表と、
会社の分割計画書、分割契約書の作成時に話し合うなどの規定も全くなく、労働組合の存在自体を否定する立法だと言わなければなりません。分割計画書、分割契約書の作成に当たっては労働組合との協議を義務づけるべきではありませんか。
また、本法案では、
会社の有機的構成
部分であり、憲法二十七条の人間らしく働く権利を持つ
労働者に対しての
説明や協議をなぜ義務づけていないのか、明確な答弁を求めます。(
拍手)
次に、
労働契約承継法案について、労働大臣にお聞きします。
最初に、端的に聞きます。
なぜ、この法案を必要としたのですか。
労働者を
保護するためにですか。それとも、
会社分割を遅滞なく進めるためにですか。本法案でわざわざ、民法六百二十五条の移籍は本人同意の原則を空洞化させるのは、
会社分割を促進させるため以外には考えられないのではありませんか。答弁を求めます。
現在、大企業のリストラは、合併、営業譲渡などの形で進められています。
金融業界では、
政府の政策によって大々的に合併や譲渡が進められています。大阪の不動信用金庫の例では、支店ごとに別々の
金融機関に営業譲渡が行われ、お得意先つきで
会社の資産が売却されましたが、従業員は全員解雇され、譲渡先の
会社には一人も
採用されていません。
このようなことが横行する状況のもとで、今求められているのは、分割の場合だけでなく、合併や営業譲渡の場合を含む総合的な
労働者保護法ではないのですか。答弁を求めます。
次に、具体的にお聞きします。
まず、今回の立法過程についてであります。
労働者の雇用上の身分や労働条件に大きくかかわる法案でありながら、
労働者、労働組合の代表が参加する審議会の
意見すら全く求めていません。一体なぜなのか。この点について納得できる答弁を求めます。
次に、分割に当たっての問題です。
第一に、
労働者への通知は、分割計画書を
承認する株主総会の二週間前までとなっています。
労働者が人生と
生活の全体にかかわる決断を求められる、そういう問題であります。最低でも一カ月以上前の通知が必要だと思いますが、二週間でなぜ十分と考えるのか、その
理由を
説明していただきたいと思います。
また、分割
会社に承継される
労働者だけに通知することになっており、それ以外の
労働者への通知義務はありません。
労働者全員への通知は必要ではないという、その
理由を伺いたいと思います。
第二に、労働組合への通知義務も、労働協約を
締結している場合だけであり、その通知も二週間前までとなっています。労働協約を結んでいない労働組合の場合は通知さえされないのであります。このような労働組合への扱いは、これまでの労働関係法にはなかったのではありませんか。答弁を求めます。
労働協約のあるなしにかかわらず、労働組合への一カ月前の通知義務を設ける、労使間に存在することが明らかな労使慣行についても労働協約とみなし、承継の対象とする、このようにすべきと考えますが、いかがですか。明確な答弁を求めます。(
拍手)
第三に、今度の法案では、分割で設立される
会社に承継されるべき主たる営業に従事する
労働者が承継されない場合と、従たる営業に従事している
労働者が転籍される場合だけ異議申し立て権を認めていますが、すべての
労働者の同意を求めることは当然ではありませんか。なぜ、それをやろうとしていないのか、その
理由の
説明を求めたいと思います。
労働大臣、御承知のように、既にヨーロッパ各国では、一九七七年のEU指令によって、
会社組織の
再編に当たっては、一つ、
労働契約並びに
労働契約に基づく権利義務は原則としてすべて承継する、ただし、本人の同意が得られない場合は原則としてそれまでの契約を継続する。二つ、
企業組織の
再編を
理由とする解雇は
禁止する。三つ、賃金、労働条件は原則として承継する。四つ、労働協約は従前の水準を維持するなどが義務づけられております。その他にも、労働組合との事前協議義務など、
労働者の既得権を
保護する規定が定められております。
私たち日本共産党は、このような外国の立法も参考にしながら、日本の現実に照らして、去る三月二十八日、
企業組織の
再編を行う事業主に雇用される
労働者の
保護に関する
法律案並びに新解雇規制法案、サービス残業根絶法案の三法案を衆議院に
提出いたしました。これらは労働省にも届けてあります。
日本共産党が
提出した、この企業
再編に伴う
労働者保護法案への見解を
最後に求めて、質問を終わります。(
拍手)
〔国務大臣臼井日出男君
登壇〕