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国務大臣(臼井日出男君) 倉田議員にお答えを申し上げます。
刑罰権を国家が独占する理由及び法秩序の維持の
目的に関し、被害者の権利等についての
お尋ねがございました。
刑罰権につきましては、
社会の秩序の維持の観点から、私的報復を許容せず、
国民の共同体である国家がこれを独占することとされているものと理解をいたしております。
また、
刑事手続は、刑罰権の行使によって法秩序の維持という
目的を達成しようとするものでございますけれども、その過程におきまして、被害者の立場が尊重される必要があると考えております。
我が国刑事訴訟が被害者の立場を無視してきたのではないかとの
お尋ねがございました。
刑事訴訟
手続に関しましては、これまでも、例えば昭和三十三年に、刑法及び刑事訴訟法の一部
改正におきまして、証人等威迫罪の新設、権利保釈除外事由の拡張等、証人尋問中の被告人退席、退廷規定の新設など、被害者保護のための
改正が盛り込まれております。
また、
平成十一年八月、いわゆる組織犯罪対策三法が公布されまして、刑事訴訟法の一部を
改正する
法律案によりまして、証人等に対して威迫等が行われることを防ぐため、証人の住居等につきましてその尋問の制限等の
制度を導入してきたところでございまして、また、既存の
制度の
運用によって被害者の立場を尊重し、その保護に努めてきたところでございます。
次に、全国被害者支援ネットワークによって採択された七つの権利の主張についての
お尋ねがございました。
御指摘の主張に含まれている事項は、いずれも被害者の立場から見て重要なものでございます。しかし、その具体的な
施策につきましては、被疑者、被告人の防御権、その他の関係者の利益の保護や刑事訴訟の基本構造との関係など、関連する諸
制度におけるさまざまな要請との調和を図りつつ検討していくことが必要と考えます。
今、
国会に
提出しております犯罪被害者の保護のための
法案におきましては、被害者の立場に配慮する個別具体的な
制度を導入しているところでございます。また、今回の
法案に盛り込まれていない点につきましても、今後とも検討を行い、
議論が熟したものから適切に対応してまいりたいと考えております。
次に、本
法案第二条の公判
手続の傍聴の
対象者の範囲を拡大すべきではないかとの
お尋ねがございました。
法律で傍聴への配慮義務を明定する
対象者の範囲は、被告人が
原則として法定に出頭することとの均衡上、犯罪の一方の当事者である被害者またはこれにかわるべき者、すなわち被害者の法定代理人を
原則とし、被害者が死亡した場合またはその心身に重大な故障がある場合につきましてはその配偶者等の近親者とするのが適当であると考えられます。
御指摘のように、その範囲を拡大することといたしますと、一般の傍聴希望者が実際に傍聴できる数に影響を及ぼすことや、被告人の家族の傍聴に対する配慮との均衡などの問題がある上、
法律上、裁判長に配慮義務が課せられる範囲を合理的かつ明確に規定することは困難になるおそれがあると考えられます。
なお、御指摘のような方につきましても、個別の事情に応じて、従来どおり、実際上の配慮が払われるものと考えます。
公判記録につきまして、その
公開が
原則であるべきではないかとの
お尋ねがございました。
刑事の裁判資料は、本来、
刑事手続を適正に実施するために、裁判所または捜査
機関の権限の行使として収集され、その吟味に服するものでございますので、これを刑事訴訟の
目的以外に用いることにつきましては慎重な配慮が必要であると考えられます。
この点、被害者は
刑事手続における訴訟当事者でなく、本
制度におきましても、被害者の立場を考慮して、損害賠償請求権の行使などの正当な理由が認められる場合におきましてはその利用を認めるものであること、係属中の事件の公判記録を
対象としていることから、閲覧、謄写を認めれば当該事件の公判等への支障や関係者の名誉、プライバシーへの侵害等のおそれがあり、そのような支障のない相当な範囲でのみこれを認めることとするのが適当でありますことから、裁判が
公開されていることをもって、直ちに、
原則として公判記録を閲覧、謄写できるものとすることは相当でないと考えます。
刑事訴訟法及び検察審査会法の一部を
改正する
法律案に盛り込まれている、意見陳述ができる者の範囲等について
お尋ねがございました。
意見陳述における被害者等の範囲につきましては、被害者またはその法定代理人とし、被害者が死亡した場合におきましては、被害者の配偶者、直系の親族または兄弟姉妹といたしております。
被害者本人が心身の故障により公判廷で意見陳述ができない場合のうち、被害者の身体に重大な故障がある場合には、
法案上、書面により意見を表明することは可能とされております。
また、その精神に重大な故障がある場合には、法定代理人によることが可能でありますが、そのような場合には、むしろそのような状況に陥ったことにつきまして、被害者の配偶者等に証人として証言していただくことが相当であると考えます。
公判
手続の傍聴や意見陳述の際に、被害者の家族の付き添いは保障されるかとの点につきまして
お尋ねがございました。
まず、公判
手続の傍聴につきましては、その心身に重大な故障がある場合には、被害者本人とともにその配偶者なども傍聴の配慮義務の
対象者としておりますので、被害者の家族の付き添いは法的にも配慮されることになるのでございます。それ以外の場合につきましても、個別の事情に応じまして、従来どおり、実際上の配慮による対応が可能でございます。
また、意見陳述につきましては、証人への付き添いの規定を準用しておりまして、証人への付き添いと同様、家族などの適当な者の付き添いが可能でございます。
刑の執行及び保釈と終了につきまして、希望する被害者等に通知できないかとの
お尋ねがございました。
まず、保釈につきましては、検察庁の被害者等通知
制度におきまして、被害者等が通知を希望するときは、保釈を含む身柄の状況を通知することができることとされております。また、刑の執行につきましては、同通知
制度におきまして、裁判の主文、裁判年月日、裁判の確定等を通知することとしておりますので、これによって被害者等は刑の執行等を知り得るところでございまして、さらに、特に被害者等から照会があれば、相当と認められる限り、検察官から被害者等に刑の執行開始等をお知らせすることも可能であろうと考えております。
他方、刑の終了につきましては、犯罪者の改善更生、プライバシーの保護の要請をも考慮し、
犯罪被害者等に対し、どのような場合にどのような範囲の情報を提供することが適当かについて、鋭意検討を行っているところでございます。
被害者弁護人
制度及び保護者の賠償
責任に関する
お尋ねがございました。
御指摘のように、被害者の保護の
あり方につきましては、それぞれの事件の性質や
手続の
目的等を十分に踏まえた上で、これを検討すべきものであると考えております。
犯罪被害者に対して国費により弁護士を付する
制度につきましては、その弁護活動の範囲、内容をどのようなものとするかということを、さまざまな観点から、その必要性などについて慎重に検討する必要があると考えております。
また、犯罪による被害について、民法上の不法行為
責任以外に、国を含めた保護者としての賠償
責任を認めることにつきましては、その根拠等について慎重な検討を要するものと考えております。
以上でございます。(
拍手)
〔
国務大臣保利耕輔君
登壇〕