○大森猛君 私は、日本共産党を代表して、
雇用保険法等の一部を
改正する
法律案及び高
年齢者等の
雇用の
安定等に関する
法律の一部を
改正する
法律案に関して、総理並びに労働大臣に質問をします。
去る十三日に発表された十—十二月期の
国民所得統計速報で、国内総生産が前期比一・四%減、年率換算では五・五%減となり、過去三番目の大きなマイナスとなりました。小渕
内閣の経済
運営の行き詰まりは、もはや明らかであります。
最大の要因は、言うまでもなく個人消費の冷え込みであり、その原因が、大企業のリストラ、総人件費抑制の動きや
社会保障の
負担増等新たな
社会不安の拡大にあることは、広く指摘をされているところであります。
現に、ことし一月の完全
失業者数は前月比二十一万人増の三百九万人に達し、
失業率は四・七%と三カ月ぶりに逆戻りする
状況です。中でも、世帯主
失業者、中高年
失業者の増大、
失業期間の増大がさらに進行し、今ほど
雇用保険の
失業給付期間延長など
制度の拡充が求められているときはありません。
ところが、今回の
改正案は、
失業給付の大幅削減、
失業理由による
給付差別、
保険料の
引き上げ等の改悪をしようというものであり、
雇用不安に追い打ちをかけ、将来不安を拡大し、消費の低迷の新たな要因となるものであります。
以下、こうした立場から質問をいたします。
第一は、
失業給付期間の大幅削減についてであります。
今回の
改正案の最大の問題は、
失業手当
給付日数を大幅に切り下げ、労働者の生活と求職活動を困難に追い込むことであります。
現行の
給付期間は、
失業の理由のいかんを問わず最長
給付日数は三百日ですが、本
改正案は、
失業の理由によって
給付日数を差別し、解雇など特別の理由以外の
失業については、最も長い場合でも百八十日しか支給しないこととし、百二十日、実に四カ月分も削減しようとするものであります。
そもそも
雇用保険法は、その第一条で、労働者が
失業した場合に、必要な
給付を行うことにより、労働者の生活の安定を図るとともに、求職活動を容易にすることを目的としているのであります。
にもかかわらず、
給付日数をこのように大幅に削減することは、
失業者の生活の安定を大きく脅かすことになるのではありませんか。それとも、
失業手当の
給付期間を切り縮めれば再
就職できる条件が大幅に拡大することになるとでも言われるのか。総理の納得のいく
説明をしていただきたいものであります。(
拍手)
総務庁の昨年八月の労働力特別
調査報告によれば、五十五歳から六十四歳までの
年齢層では、
失業期間が六カ月を超える人が全体のほぼ五割にも達しているのであります。このような厳しい
状況のもとで、三百日の
給付日数を、百八十日、六カ月に削減することは、約半分の高齢者が
就職できないまま
給付を打ち切られることとなるのであります。
失業手当が打ち切られた
失業者は一体どのように生活せよというのでしょうか。総理の明快なる答弁を求めるものであります。
昨年十一月十一日の日経連タイムスは、
失業給付の受給で生活の心配がなければ真剣に求職活動をせず、
給付をもらい切ってしまうというモラルハザードを発生させないようにする必要があるとして、
就職難に苦しむ多くの
失業者を敵視し、
給付日数の削減を要求しています。
政府も今回、
給付日数の削減を
提案していますが、総理も、日経連の主張と同様に、
失業給付を法定期間いっぱい受給している人はモラルハザードだとお考えなのでしょうか。お聞かせいただきたい。
今日の厳しい
雇用情勢のもとで、
給付日数の短縮は、結局、生活のために、本人の希望や意思に反し、低賃金、長時間労働の仕事につくことを事実上強制することになり、より条件の悪い仕事への再
就職、いわゆる労働条件の下降移動をさらに広範に引き起こすことになります。これは、憲法二十二条、職業選択の自由を侵害し、職業安定法第十九条、求職者に対してはその
雇用条件に適合する職業を紹介するという
原則をゆがめ、労働者の生きがい、働きがいを奪うことにさえなるのであります。総理の見解を求めるものであります。
第二は、
失業理由によって
給付期間を差別する問題であります。
本
改正案では、
失業者のうち、解雇など特別の理由による
失業者を特定受給
資格者、それ以外を一般受給
資格者として、
失業者を
失業の理由によって二つに区分けを行って、
給付を特定受給
資格者に
重点化しようとしています。
本来、
失業というのは、労働省も
説明してきたように、個々の使用者や労働者の責任の
範囲を超えた政治的、経済的、
社会的諸要因により発生するものであり、高度な国家的な
課題として考慮されるべきものであります。したがって、
失業者に対し生活権、勤労権を保障することは、国の当然の責務であります。
雇用保険制度は、こうした
原則から、
失業中の労働者の再
就職までの生活保障を保険の方式で行うものであります。
今日の極めて厳しい
雇用失業情勢のもとでも、人は、少しでもましな生活をしたい、そのため、賃金を初めとする労働条件、将来性、自己の能力の発揮いかんなどなどを追求し、新たな仕事を決めて転職する、これは憲法十三条の幸福追求権からいっても当然過ぎるほどの権利ではないでしょうか。
ところが、今回の改定のような、
失業理由によって
給付期間に差別を持ち込むことには、何ら合理的な根拠はなく、それは憲法の幸福追求権を否定し、
雇用保険の基本的性格を根本から変更しようというものであり、到底容認できないものであります。総理の見解を求めるものであります。
大体、総理、自己都合で退職したからといって、特別に早く再
就職できる保証など何もないではありませんか。
失業の理由と再
就職の難易度、困難さと、一体どのような相互関係があるというのでしょうか。全く別次元の問題であります。だからこそ、
失業保険
制度が発足以来半世紀以上たった今日まで、
失業理由による
給付日数の区別は全く行われなかったのであります。
ところが
政府は、
現行雇用保険制度の中でも、自発的
離職者をいわゆる自己都合退職者として三カ月の
給付据え置きというペナルティーを科していることに加えて、今回の
改正で大幅な
給付日数の削減という、さらに新たな制裁を科そうとしているのであります。
今日、自己都合退職者は、本人のわがままや気まぐれによる
失業者では決してありません。みずから収入の道を断ち、
失業という厳しい選択をせざるを得ない、今日の厳しい現実があるわけであります。
総理は、自己都合退職者は本人のわがままであり、このような二重の経済的制裁が必要とお考えなのか、明快な答弁を求めるものであります。
第三は、
雇用保険財政についてであります。
今日の
雇用保険財政の悪化の最大の原因が、経済失政による不況の長期化と
失業者の爆発的増加及び
国庫負担の大幅削減にあることは明らかであります。
国庫負担について言えば、
失業保険
制度発足以来五十年間、三分の一あるいは四分の一であった
国庫負担率を、一九九二年、九三年と相次いで引き下げ、
失業者の増加が激しいさなかだった九八年には、あの悪名高い
財政構造改革法の名のもとに、実に一四%にまで引き下げ、
財政悪化に拍車をかけたのであります。
こうした
政府の責任を全く棚上げにしたまま、
保険料を
引き上げるだけではなく、みずからの責任による
財政悪化を理由に、憲法
原則をもゆがめる、
制度の根本的な改変まで行おうとすることは、絶対に認めるわけにはいかないのであります。
日本共産党は、このような
雇用保険改正案は撤回するよう求めるものであります。そして、本法本則にあるように、
国庫負担率を直ちに無条件で二五%に戻すよう、強く要求をするものであります。総理の見解を求めるものであります。
最後に、今緊急に求められている
雇用対策について質問いたします。
今日、
我が国の
雇用失業問題で最も重大なことは、リストラ至上主義ともいうべき風潮が日本列島を席巻し、そのもとで一方的な解雇や
雇用の不安定化が大々的に進められていることであります。
小渕首相は、去る二月の衆議院本
会議での代表質問で、我が党の不破
委員長の質問に対し、リストラは企業の経営にかかわるものであり、法的な規制を設けることは適当ではないと答弁をしました。しかし、今
政府は、産業再生法にしろ一連の
雇用対策にしろその多くが、企業の経営にかかわるリストラへの法的支援、あるいはその受け皿づくり、
環境整備となっているのであります。
雇用失業問題の根本
対策として、解雇、リストラを規制するヨーロッパ並みのルールを確立するよう重ねて求めるものであります。総理の見解を求めます。
雇用保険の原点に立ち返り、
失業者の生活保障、安心できる再
就職活動のために今必要なことは、
給付の延長であります。とりわけ、有効求人倍率が低い四十五から五十五歳、さらには五十五歳以上の
失業者、また、特に
失業率の高い
地域での延長
給付を行うべきと考えます。労働大臣の見解をお示しください。
サービス残業根絶も、
失業者を大幅に減らす上で重要であります。総理は、昨年の予算
委員会での私の質問に、サービス残業が重大な犯罪であることを認め、サービス残業をなくすために全力を挙げると答弁をされました。その後どのような取り組みをされたのか、また、今後どのような取り組みをされるのか、お聞かせください。労働大臣の見解を求めるものであります。
労働大臣、高校、大学の新卒者の
就職難がこれまで以上に深刻となっています。新卒者は
雇用保険未加入でありますが、これらの人たちのうち、
就職の意思があって職業訓練を受けようと希望する人に、最低限の生活を維持しながら職業訓練を受けられるような手当を支給する
制度を創設すべきと考えますが、労働大臣の見解を求めて、私の質問を終わるものであります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣小渕恵三君
登壇〕