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木島小
委員 少年問題を考えるときに、視野の広さが必要だと
委員から
指摘されましたが、そのとおりだと思うんです。
それに加えて、私は、
少年法のあるべき姿を論じるときにも広い視野が必要だということを考えているわけで、これまで全く論点に出てきませんでしたから、やはり国際法規範に照らして考えるということが大事だということで
指摘しておきたいと思います。
日本も九四年五月二十二日に発効しております児童の
権利に関する条約、いわゆる子
どもの
権利条約の問題であります。こういう国際的に到達した水準、そして
日本も批准しているわけですから、やはりこの
原則に照らして
少年法を見直していくということが大変大事じゃないかと思います。
非行少年の処遇に関してこの条約で直接に規定しているのは条約三十七条と四十条でありますが、刑事法学者の
指摘にもありますように、この児童の
権利に関する条約は、すべての
子供に普遍的に認められる
権利を宣言したものである、だから、この条約のすべての条項が
非行少年の処遇に際しても考慮されなければならない、こういう
指摘であります。私は当然だと思うんです。
そして、この条約を貫く基本的考え方は何かということで、学者の
皆さん方は三点挙げています。
一つは、
子供にかかわるすべての活動において、
子供にとって最善の利益を考慮すること。
二つは、
子供の生存と発達を可能な限り確保するという
子供の成長発達権を保障するということ。そして三つ目には、その
子供の成長発達権を保障する第一義的な責任を負うのは親でありますが、国はそのために必要な援助とサービスの発展に努める。これが子
どもの
権利条約を貫く三つの柱だと言われているわけであります。
さらに、先ほど
指摘しました、直接に
非行少年の処遇について規定している条約三十七条と四十条であります。これは、八五年に国連総会で採択された
少年司法運営に関する国連最低基準規則、いわゆる北京規則と言われているようでありますが、これを基礎にして、子
どもの
権利条約三十七条と四十条が規定されたようであります。それらの基本的な考え方として、やはり三つにまとめられると
指摘されているわけです。
一つ、
対象が
子供でも、適正
手続の保障が完全に確立されるべきこと。
二つ、すべての面において人道
主義に立脚した処遇が実施されるべきこと。三つ、司法
手続によらない取り扱い措置の確立、これは、何が何でも
子供の
非行問題を全部司法
手続にほうり込むんじゃなくて、保護措置といいますか、福祉の措置の取り扱いを確立、拡大していくべきだ。この三つだと言われているわけであります。
これらの国際準則を精査いたしますと、
保護主義の徹底と適正
手続の強化ということがうたわれているわけでありまして、先ほど私も
発言しましたが、まさにそれが両立し得るものかどうか。今の
日本の
少年法の
審判手続が、まさに一人の
裁判官で
二つの審理
対象、
非行事実の
認定という重大な行為と、要
保護性の
判断という、これはなかなか幅広い、
教育学から心理学からあらゆるものを入れた上で
判断するべき要
保護性の
判断、この
二つのいずれも重大なことを一人の
裁判官が
一つの
審判手続の中でやっているということがあるわけでありまして、
保護主義の徹底と適正
手続の強化、これが果たしてうまく両立するかどうか、それがまさに検証されなきゃならぬと思うんです。
いずれにしろ、国際的な準則は、これは両立するものなんだという
前提で
組み立てられている。これはやはり
日本の
現行少年法の
基本理念になっていると私は思うんです、
保護主義の徹底と適正
手続の強化。
そうしますと、こういう
観点から、改めて我が国の
少年法でメスを入れなくちゃいかぬ、光を当てなければいかぬ
分野として、私は三つ
指摘しておきたいと思うんです。
一つは、
捜査過程における
少年の
権利保障が一体どうなっているんだという根本問題。これは間違ったら
冤罪の温床になるわけです、
冤罪の出発点になってしまうわけですから、
捜査過程における
少年の
権利保障の問題にメスを入れる。
二つ目として、先ほど来再三論議されております
審判手続における公正かつ適正な審理の保障の問題。
そして三つ目には、上訴や再審に関する
制度、これは全く不備でありまして、先ほど来
指摘された幾つかの具体的な問題を通じて、
最高裁判例で再審ができるというようなことにはなっておりますが、法の
制度はないわけであります。
そういう問題などについても、やはり広い視野で詳細な
検討が必要じゃないか、拙速はだめだということを
指摘して、
発言を終わります。