○松浦
参考人 御紹介をいただきました
日本労働組合総連合会の松浦でございます。
本日は、産業、
企業基盤の
整備と当該
企業に働く
労働者の雇用や
労働条件などに大きなかかわりを持つ、
企業分割についての
商法改正を審議されていますこの法務
委員会で発言をする機会を得ましたことにつきまして、まず御礼を申し上げる次第でございます。
そして、以下二点にわたって、この
企業分割によって影響を受ける従業員、
労働者の
立場に立って
意見を述べたいと思います。
まず第一点は、産業、
企業の基盤
整備にかかわる各種の支援施策に対する連合の
考え方についてであります。
経済社会のグローバル化、あるいは東南アジアを
中心とする新工業国の台頭などによりまして、
日本の産業、
企業は、品質あるいは価格競争が激化しているということから、今、それぞれの
企業におけるリストラクチャリングを積極的に進めていますし、同時に、バブル経済の崩壊によって
企業が背負いました
負債等の解消を含めた
企業基盤の
整備や競争力強化施策が必要であり、また、これを積極的に実施しているということについても承知をいたしておりますし、
労働組合の
立場でこうした
企業基盤の強化のための施策につきまして積極的に協力をしているということについても、御報告を申し上げておきたいと思います。
連合といたしましても、九七年に
改正、
施行されました独占禁止法による
純粋持ち株会社の自由化、そして九九年に制定されました産業活力再生特別
措置法、さらに民事再生法、いずれも
企業のリストラを促進し、従業員の雇用や
労働条件などに影響を及ぼすということが懸念されたものでございますけれども、私ども、従業員、働く者の
立場で、
企業基盤の
整備を支援するこれらの施策は必要という判断から、これらの制定について反対をしなかったわけであります。むしろ、積極的に支持をする、そういう
立場をとってきたわけでございます。
ただし、
前提条件があるわけでございまして、これら
企業基盤の
整備を促進するという施策につきましては、そこに働く従業員の雇用や
労働条件に大きな影響を与えるということから、こうした
企業基盤の
整備に関連をする
労働者の雇用と
労働条件の安定を規定をする
法律を制定すべきであるという主張をしてきたわけでございます。
今回、
企業のリストラ促進法の総仕上げとも言われる
商法の
改正による
企業分割に際しまして、政府から
労働契約の
承継法なるものが提案されているわけでございますけれども、こうしたものとあわせまして、この
商法の中に
企業基盤の
整備にかかわる
労働者の取り扱い、保護についてもう少しきっちりと
整備をしていただきたいということをまず私ど
もとしては期待をしているわけでございます。特に、九七年の独禁法
改正以来進められてきました一連の施策とあわせまして、従来から認められておりますし、既に具体的な施策
もとられています
企業の
合併、
営業譲渡を含めた
企業組織の再編にかかわる
労働者の雇用や
労働条件保護に対するセーフティーネットとしての
法制化をしていただきたいということが私どもの
基本的な
考え方でございます。
もちろん、これまでの
日本では、繊維革命と言われました化繊、いわゆる化学繊維の大量生産
システムが、木綿、絹から
変化をしたということ、それから石炭から石油にかわったエネルギー革命、あるいは製造業における生産設備の大型化、オートメーション化など、これまでも
日本の産業、
企業におきましては幾度かにわたって大きないわゆる
企業革命というものが、あるいは
企業の構造改善というものが行われたわけでございまして、これまでのところ、そうした
企業の構造
改革あるいは生産構造の改善等に伴うリストラクチャリングの
関係につきましては、あるいはリストラクチャリングにおける雇用問題につきましては、新たな受け皿があったということと、そしてそれぞれの
企業が新しい受け皿への職務
対応力を、
企業が雇用を保障しながらこれを実施する、そういうゆとりがあったということから、これらの産業革命、
企業革命における大きな雇用問題というのは具体的に問題視されるということが少なかったわけでございます。
しかしながら、御案内のとおり、現在の
日本の産業、
企業は、
経済社会のグローバル化によって、品質、価格両面で激しい競争
条件に置かれているということから、こうした従業員、
労働者に新しい職場への再配置のための教育を行うとか、あるいは再配置のための、あるいは再就職のための具体的な支援を行うということが非常に難しくなっているという
状況だけに、こうした施策を
労働者保護法なしに実施することについて大きな危惧を持っているということであります。
二つ目は、
商法等の一部を
改正する
法律案並びに与野党五党から共同提案されました
修正案についてであります。
改正法律案には、
分割をするには
分割計画書を作成すること、そしてその
分割計画書の中に「
承継スル
権利義務ニ関スル
事項」が挿入をされたことによりまして、
企業の
分割に伴って直ちにといいますか、ストレートに雇用不安が生じるということは回避できたというふうに判断をするわけでございますし、
評価できるというふうに考えております。
また、「各
会社ノ負担スベキ
債務ノ
履行ノ見込アルコト及其ノ
理由ヲ
記載シタル
書面」などを備え置くということについても具備
条件というふうになっております。
これにつきましても、それぞれの
企業におきまして、これから展望の開ける部門についてはさらに拡大
発展のために独立化をしていく、そして陳腐化をした設備や事業所を
中心にして清算
会社としてこれを取り残していく、そういった、
企業の再生のために一部をジャンプさせ、一部を切り捨てるというような
措置については許さない、今回の
企業分割法はそういった手だてがつけられているということについても私たちは大きく
評価をしているわけでございます。このことは、
企業の清算処理
会社づくりを防止する、そしてそれが雇用の不安定化を助長しない、そういう意味で
評価をしているということを申し上げておきたいと思います。
一方、この
商法にはなじまないという判断から全く規定がされていなかった労使協議についてであります。
これにつきましては、私どもは、
労働組合と協議をするということを明記していただきたいというお願いをたびたびにわたって
法制審議会の小
委員会の
段階からしてきたわけでございますけれども、これについて入れてもらえないということで、今回五党で提案をされました
修正案の中に「
労働者と協議をする」ということが明記されたことにつきまして一定の
評価をしたいというふうに考えておりますけれども、この機会に、
労働組合の役員をさせていただいておりますので、
日本の多くの民間
企業において、この種の経営方針にかかわる施策を行う場合に労使がどういうような取り組みをしているかということについて、少し具体的に報告をすることによって
参考にしていただければ、このように思うわけでございます。
日本の
労働組合というのは、アメリカ、ヨーロッパと特に違う点は、
企業内
労働組合でございます。
企業内
労働組合の持つ長所も欠点もあるわけでございますが、特に
日本の場合には、ドイツ、ヨーロッパなどにおける従業員代表制と
労働組合とを兼ね備えた
機能を持っているわけでございまして、多くの民間
企業では、ほとんどのと言った方がいいと思いますが、
企業経営にかかわる方針、いわゆる設備の
新設であるとか休止であるとか廃棄であるとか、そういうような計画を立てたときには、その計画の
段階で
労働組合にこれを説明をする。
労働組合はその説明を受けて、職場の組合員にきめ細かく報告、説明をします。職場の組合員からその施策にかかわってどんな問題、課題があるのかということを
労働組合が集めて、それをもって経営と再度交渉をするわけであります。そして、それらの問題、課題について幾つか解消策、改善策を打って、またさらに職場にその対策をもって報告し、職場討議をやって、そして新たに出てきた職場からの問題や課題などについてまた経営と交渉する。
こういうふうに、経営との交渉を職場に報告し、職場討議を行って、職場で提起された具体的な問題や課題などを解決する
手段を労使で折衝、交渉して、問題、課題を可能な限り少なくする。そして、従業員の積極的な協力もありますし、やむなしという協力も
状況によってはあるわけでございますけれども、労使が一定の方向を明確に定めた上で協力して力を合わせるということが、そうした
会社の経営施策、方針を転換する、改善するということの成功に結びついているわけでございます。
私ど
もとしては、
商法の中には労使協議という言葉がなじまないということであったとしても、これに関連します
労働契約の
承継法の中にはぜひ労使協議を具体的に挿入して、しかも
労働組合が結成されておらずに従業員代表制を持っているところなどについても、これを報告して、その従業員の代表の方が職場に説明することによって、問題、課題を
事前に解決、解消して、そして経営の方針が極めてスムーズに、あるいは
効果的に
施行されるということにならなければならないというふうに考えていますし、そうなることを期待しているわけでございます。
いずれにいたしましても、今回の
商法改正につきましては、独占禁止法の
改正による
持ち株会社の自由化という問題、幾つかの金融、損保
関係では、既に
持ち株会社を頭につくって、この経営基盤を統一、強化する、そういった方針が具体的に提案をされているわけでございますし、また、産業活力再生特別
措置法を使った、あるいは民事再生法を使った
企業の基盤の強化という問題も具体的に出てきております。
そうした問題は、労使の
事前協議、そして
労働者の雇用の安定なしには考えられないということでございます。私どもは、これらの
企業基盤を強化するという施策に対して反対をするのではなしに、それが
労働者の一方的な犠牲の上になされるということについて、不安と危惧を持つものでございます。
ぜひひとつ、この
商法改正がそうした点に十分留意をされて、
労働者の保護についての視点が大きく見開かれるといいますか、開花されるように取り扱いをお願い申し上げまして、
意見開陳を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)