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2000-04-18 第147回国会 衆議院 法務委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十二年四月十八日(火曜日)     午前十時一分開議  出席委員    委員長 武部  勤君    理事 笹川  堯君 理事 杉浦 正健君    理事 与謝野 馨君 理事 横内 正明君    理事 北村 哲男君 理事 日野 市朗君    理事 倉田 栄喜君 理事 木島日出夫君       太田 誠一君    加藤 紘一君       熊谷 市雄君    小林 多門君       左藤  恵君    菅  義偉君       園田 博之君    藤井 孝男君       保岡 興治君    山本 有二君       渡辺 喜美君    枝野 幸男君       漆原 良夫君    安倍 基雄君       青木 宏之君    西村 眞悟君       保坂 展人君     …………………………………    議員           北村 哲男君    議員           佐々木秀典君    法務大臣         臼井日出男君    法務政務次官       山本 有二君    最高裁判所事務総局刑事局    長            白木  勇君    政府参考人    (内閣法制局第一部長)  阪田 雅裕君    政府参考人    (警察庁長官官房総務審議    官)           吉村 博人君    政府参考人    (警察庁生活安全局長)  黒澤 正和君    政府参考人    (警察庁刑事局長)    林  則清君    政府参考人    (法務省民事局長)    細川  清君    政府参考人    (法務省刑事局長)    古田 佑紀君    参考人    (常磐大学学長)     諸澤 英道君    参考人    (弁護士)    (日本弁護士連合会犯罪被    害者対策委員会委員長)  児玉 公男君    法務委員会専門員     井上 隆久君     ————————————— 委員の異動 四月十八日  辞任         補欠選任   加藤 紘一君     小林 多門君 同日  辞任         補欠選任   小林 多門君     加藤 紘一君     ————————————— 四月十八日  子供の視点からの少年法論議に関する請願中川智子紹介)(第一四三九号)  同(中西績介紹介)(第一四四〇号)  同(矢島恒夫紹介)(第一四六五号)  民法改正における選択的夫婦別制度の導入に関する請願草川昭三紹介)(第一四六四号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  政府参考人出頭要求に関する件  刑事訴訟法及び検察審査会法の一部を改正する法律案内閣提出第七二号)  犯罪被害者等保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律案内閣提出第七三号)  犯罪被害者基本法案北村哲男君外三名提出衆法第一九号)     午前十時一分開議      ————◇—————
  2. 武部勤

    武部委員長 これより会議を開きます。  内閣提出刑事訴訟法及び検察審査会法の一部を改正する法律案犯罪被害者等保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律案及び北村哲男君外三名提出犯罪被害者基本法案の各案を議題といたします。  本日は、各案審査のため、参考人として常磐大学学長澤英道君、弁護士日本弁護士連合会犯罪被害者対策委員会委員長児玉公男君の御両名の方々に御出席をいただいております。  この際、参考人各位委員会を代表して一言ごあいさつを申し上げます。  両参考人には、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお聞かせいただき、審査参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。  次に、議事の順序について申し上げます。  まず、諸澤参考人児玉参考人の順に、各二十分程度意見をお述べいただき、その後、委員質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。  なお、念のため申し上げますが、発言の際は委員長の許可を得ることになっております。また、参考人委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきいただきたいと存じます。  それでは、まず諸澤参考人にお願いいたします。
  3. 諸澤英道

    ○諸澤参考人 ただいま御紹介いただきました常磐大学の諸澤でございます。  被害者保護に関する法律改正及び制定の審議にかかわる法務委員会において発言機会を与えられましたことを大変光栄と存じております。  といいますのは、実は私は、長年被害者権利に取り組んでおりまして、一九七五年に初めて被害者権利に関する論文を書き、以来四半世紀にわたってこの問題に取り組んでまいりました。しかし、その間、まことに残念ながら、この被害者権利ということについては、特に日本国内では強い反論を受けてまいりました。その間、諸外国ではかなり被害者権利についての確立が進み、もはや諸外国で常識であることが我が国においては非常識であるという事態がつい最近までございました。そういう中での御審議でございますので、大変期待をして本日参っております。  御承知のとおり、欧米では一九六〇年代から、既に被害者運動が起こって補償制度をつくったという歴史がございますし、七〇年代には、民間被害者支援が始まっております。そして、八〇年代になりますと、国連における取り組みと、それから各国被害者関連法整備を進めております。そして、一九九〇年代、すなわちこの十年間の様子でありますが、ほとんどの国が被害者関連法案整備を終え、実績を得て、その実績に基づいた点検評価を行っているということと、それからさらに、グローバルスタンダードづくりが行われているということがございます。  ところで、国連におきましては、一九八〇年に被害者問題に取り組むということを決めまして、次の会議であります一九八五年の会議のテーマとして、この被害者人権を取り上げました。その間五年間、各地域のいわゆるディビジョンレベルでの会議を重ねていったわけであります。そして、本日お配りいたしました、要約だけではございますが、一九八五年のミラノの第七回国連犯罪防止会議において、犯罪及びパワー濫用被害者のための司法基本原則宣言、これを通称国連被害者人権宣言と称しておりますが、これが決議され、十一月の国連総会で採択されたという経緯でございます。  八五年のこの宣言以来、実は現在に至るまでさまざまな形で国連を中心として取り組みが行われているわけであります。特に、一九九〇年の第八回の国連犯罪防止会議においては、各国政府被害者保護のための法整備を促進するということを促す決議をしております。さらに、一九九三年のスペインのオニャティにおけるワークショップでは、それを実施するためのマニュアル及びガイドづくりを行うということを決議し、その後、被害者問題専門家会議というものを組織いたしました。  実は、この被害者問題専門家会議は、一九九五年の十二月から九八年の四月までの間に世界各国から八十二名の専門家が集まり、数度の会議を経てハンドブック及びガイドづくりを行ったわけでありますが、私は、その議論を煮詰め、ハンドブック原稿案を作成する数名の幹事の一人として選ばれ、この数年間この問題に取り組んでまいりました。その成果につきましては、昨年こういう形でもって、日本語版を印刷し、全訳をつくりまして、警察庁で印刷をしていただいたという経緯がございます。  これを見ていただくと、詳細についてはかなりわかるわけでございますけれども、八五年の基準現時点ではもはや古いものであるということをひとつ十分御認識いただきたいと思うわけであります。しかし、今回の上程もそうでございますが、現在我が国被害者関係議論の中では、八五年の国連宣言一つ目標値といいますか、理想像だという形で理解されていて、それはすぐにそういう状態はできない、しかし、将来的にはそれを目指すべきだというようなかなり腰を引いた議論になっているという点が非常に重大な問題だと私は認識しております。  八〇年という時代は、実は、世界的にもやはり犯罪者人権についての配慮が非常に強く求められた時代でありまして、つまり犯罪者人権被害者人権という非常に厳しい議論の中でたどり着いた結論がこの八五年でございますけれども、現時点におきましては、実は、これよりかなり踏み込んだ、すなわち被害者権利性を明確にうたったそういうものが各国法律化されており、また、国連会議あるいは世界被害者学会等においてもそれを前提とした議論がかなり活発に行われているということでございますので、この機会に、ややニュアンス的なことではございますけれども、その背景というものをぜひ御理解いただきたいと考えております。  そういうことで、昨今、被害者権利につきましては、せめて被害者権利加害者側権利と同等にというニュアンスで語られることが多いわけでございますけれども、これは正確に言いますと、加害者権利をせめて被害者権利に近づけることはできないかといったような形で近い将来語られるべきでありますし、既に諸外国においてはもうそういう状態ができているということでございます。  こういうことで、我が国は約二十年のおくれをつくったわけでございますので、今回が被害者保護に向けての第一弾というふうに私は理解しておりますけれども、今後引き続いてこういう検討が十分になされ、法整備が行われることを期待しております。  次に、国連被害者人権宣言の概要でございますが、時間がございませんので、要約ということで資料で配付させていただきました。もし御質問がございましたら、後ほどお答えしたいと思いますが、詳しくは避けたいと思っております。  ただ、この国連被害者人権宣言の中で三つの大きなポイントがございます。それは、被害者権利については、知る権利司法制度に参加する権利被害から回復する権利という、この三つ権利があるというふうに一般的には言われております。  今回の法案の中にもその一部が反映しているように理解しておりますが、まず知る権利でありますけれども、知る権利については、実は、知る権利があるということを知らせてもらえる権利があるという部分が非常に大事かと思っております。すなわち、これは入り口の権利あるいは発端の権利と言われておりますが、一つの例で言いますと、被疑者等が逮捕され、取り調べを受ける段において、黙秘権があるということが告げられずに行われた場合には、そのことの違法性が問題になるという程度に非常に大事なことでございますが、それと同じように、被害者もやはり被害者権利についての説明を受ける権利がある。したがって、その説明を行政が責任を持って行わなければいけないという部分がございまして、これは近い将来の問題ではなかろうかと考えております。  それから、知る権利につきましては、既に警察における連絡、それから検察における被害者等通知制度までこぎつけたわけでございますが、今後の問題として、裁判レベルでの情報開示、そして刑の執行段階での開示、すなわち、捜査から出所に至るまでの一連情報について知る権利を持っており、しかも、その知る権利リレー式につながっていく。このリレー式という点も、国連専門家会議で繰り返し確認し合われている点でございます。すなわち、被害者の側がそれぞれの機関連絡をとりながら情報をたどっていくということであってはいけない、刑事司法機関責任を持ってリレー式情報を提供するという流れができなければいけないということであります。  それから三番目としては、優先傍聴権でございますが、これは今回入っておりまして、大変うれしく存じております。  それから四番目といたしましては、少年事件精神障害者事件も例外ではないということでございます。この際、ぜひ強調しておきたいこととして、公開ということと開示ということをはっきり使い分けるべきであろう。例えば、少年事件非公開である、したがって被害者傍聴できないという論理は、やはり私から見ますとおかしいと思います。非公開であるということは、一般社会に向かって非公開でありますが、被害者は、当事者として当然情報を得る権利がありますので、傍聴する権利がある。少年事件において被害者傍聴できないというのは、世界的にも極めて珍しい法体系だと認識しております。  二番目に、司法制度に参加する権利でございますけれども、これも非常に大きな議論がありますので、今後の一連議論の中で実現していただければと思っておりますけれども、大事なこととしまして、被害者の参加の仕方はその国の司法制度によりますから、世界の統一した、スタンダードといいますか基準というものはございません。幾つかの、五つ、六つぐらいの標準的なものはございますけれども、我が国がどういう制度をとるかということは我が国が決めることで当然いいのだろうと思いますが、ただ、一つだけ言えることは、起訴とか求刑とか執行猶予、仮釈放といったようなそれぞれの段階において、被害者の気持ちを反映できるような制度になっていなければいけないということは最低限言われるだろうと思っております。  三番目の、被害から回復する権利でございますけれども、これも既に法務省でも取り組まれていることでございますが、損害賠償が機能していないということがございます。それを機能させるためには、やはり裁判制度に何らかの手をつける必要があるだろうと思います。  今回は和解について手がけたわけでございますけれども、でき得れば、その損害賠償刑事裁判の中で実現するといった、例えば附帯私訴を制度化する、あるいは、最近世界的には、レスティチューションといいまして、被害弁償と訳しますが、刑事裁判に関連して弁償についての命令を言い渡すという形、そしてさらには、命令でございますので、弁償が確実に行われたかどうかを国が責任を持って追跡するということがございます。しかし、そうはいいましても、加害者側が十分に弁償できるということは余り期待できないわけでありまして、その間を補償制度によって埋めざるを得ない。したがいまして、その補償制度を充実するということもございます。  それからもう一つは、民間の活力を利用する。これは、政府ができないのでやるということよりも、むしろ、被害者支援とか被害者権利確立というのは、国と民間がいわば車の両輪のような形でもって相補いながら行われるということが言われております。そういう意味で、民間の活動が行われるような環境をつくる、法制度をつくる、あるいは補助金制度を充実するなどが期待されるところでございます。  さて、時間が限られておりますので、今回の法案に関連いたしまして若干申し上げたいと思っております。  今回のものについては、これだけの限られた期間の中でこのような案がまとめられたということにつきまして、私も、それに当たりました事務局に敬意を表したいと思っております。そして、できるだけ、一日も早くこの法案を成立させていただきたいと考えております。しかし、そうはいいましても、若干気になる点がありますので、でき得ればということで触れさせていただきます。  その一は、傍聴に関する件でございます。  被害者等優先傍聴権の中に、心身に重大な故障がある場合の親族等が入っているという点は高く評価したいと思います。しかし、裁判長は何々に配慮しなければならないという形になっております。これは一見権利をうたっているようでありますけれども、私どもの目から通しますと、必ずしも権利になっていないような気がいたすわけでございます。それは、傍聴席とか傍聴を希望する者の数その他の事情を考慮してということが、当然ではございますけれども条件がついてまいります。したがって、かなえられないことがあるということがあります。  その際、どうしても気になることは、被害者傍聴と、一般の人、あるいはマスコミ関係者傍聴といいますか取材との間に明らかな差をつける必要があるだろうと考えております。特にマスコミ関係者については、共同取材を検討してもらうべき時期に来ているのではなかろうかと思っております。有名な事件においては、傍聴席マスコミ関係者が占めてしまうという非常に嘆かわしい事態がございます。取材というのは非常に重要なことでございますが、それは共同取材ででき得るのではなかろうかと考えております。  次に、二番目でございますが、刑事訴訟法の一部改正法の第一条関係でございます。  刑事訴訟法の第百五十七条の二に関連して、裁判所は証人に付添人を認めております。しかし、この付添人につきましては、付添人優先傍聴といいますか、被害者傍聴する際にその付添人があわせて優先的に傍聴できる制度になっておりません。これは非常に重大な問題だと考えております。  実際に、日々被害者、遺族の方と接しておりまして、初公判においてぜひ傍聴したいと思っている、しかし、事件が騒がれていれば騒がれているほど傍聴がしにくいという現実がございます。そういうときに付添人を強く求めている。私も、水戸の被害者援助センターで法廷の付き添いサービスを昨年から実施しておりますけれども、現実にはまだ付添人傍聴席に入れないという事態は出ておりませんけれども、取材が多数ある事件においては既にいろいろ出ておりまして、そういう意味で、付添人被害者傍聴にあわせて一緒に入れる、優先的に入れるということがぜひとも必要だと考えております。  次に、今回新設されることになりました被害者のための条文の中に、裁判官が訴訟関係人意見を聞いて認めることになっている部分がございます。これもやや気になるところではございます。  ただ、百五十七条の三のつい立てとか百五十七条の四のビデオリンクあるいは百五十七条の二の付き添いなどにつきましては、これは被害者保護のための制度でありますのでやむを得ないかなと考えておりますけれども、刑訴二百九十二条の二のいわゆる意見陳述心情等陳述の件と、それから保護法関係の三条の公判記録閲覧謄写について訴訟関係人意見を聞くという部分については、果たしてどうなんだろうかと大いに疑問に感じております。  ただ、もしこのまま法案が成立するという場合であっても、この審議の過程において実務上そこに十分な配慮をするということの確認がなされ、運用上、被害者に不利な運用がなされないような制度になることを期待しております。  最後に、今後これを踏まえてのぜひお願いしたいことを幾つか申し上げて、終わりたいと思います。  まずは、今国会中に、被害者保護についての国の取り組みについて国会決議をぜひともお願いしたいと考えております。  今、ようやく日本はこの意識が非常に高まってまいりました。しかし、これからやるべき問題は非常に多数ございます。やや乱暴な言い方をしますと、やるべきことを一〇とした場合には、今回の法改正で一程度しか実現しないのだろうと思っております。そうしますと、これから五年、十年という取り組みが少なくとも必要となるわけでございまして、そういう意味で、国会決議をし、被害者保護に国が真剣になって取り組むんだという意思表示をぜひともお願いしたいと思っております。  今後の問題としては、憲法の中に被害者に関する条文を新設すること。  それから、今回民主党から提案されているようでございますけれども、被害者に関する基本法をできるだけ早い時期に成立させること。  欧米はすべてでございますけれども、それ以外の国をとらえましても、この基本法に相当する被害者憲章被害者権利章典犯罪被害者権利法犯罪被害者法のような基本法を持っていない国はございません。したがって、できるだけ近い将来に基本法に当たるものをぜひとも制定していただきたいと考えております。  それから、そのほか、国を挙げて取り組んでいただくという意味で、それに当たる審議会のようなものをぜひともお願いしたいと思います。  関係省庁連絡会議出席して、ワークショップだったかと思いますが、意見を述べさせていただく機会がございましたけれども、現在では、残念ながら、法務省警察庁は非常によく取り組んでおりますけれども、それ以外の省庁に対してはまことに失望をいたしました。そういう意味で、国を挙げた態勢をぜひともとっていただきたいと考えております。  それから、被害者支援につきましては、地方公共団体のそれなりの責任というものはありますので、それについても明確にしていただきたいと思います。  さらには、経済的な支援を考えた場合に、アメリカそのほかの国がやっておりますように、犯罪被害者に関する基金を設置して、罰金、科料、過料、交通反則金刑務作業の収益、没収された保釈金などといったものを財源として、被害者支援に使えるような制度をつくるべきではなかろうかと考えております。  さらには、学校教育の中における被害者教育がぜひとも必要でありまして、いじめが大変大きな問題になっておりますけれども、私の長年の研究の中では、いじめ対策で最も効果的なのは被害者教育を行うことであるというふうに考えております。  そのほか、犯給制度改正をする必要がありますけれども、特に少年事件精神障害者事件については、いろいろな制約があることは承知しております。しかし、それであるからこそ、補償金を含めるところのその他の手厚い保護を、一般被害者よりもより手厚い保護をぜひともお願いしたいと考えております。  最後に、公務員を初めとしていろいろな方々被害者にかかわる部門に携わるわけでありますけれども、それらの採用試験とか昇格試験昇任試験その他においても被害者の理解のための教育試験を実施する、これも国連専門会議で確認し合ったことでございます。  そういう形で、いろいろな形、いろいろなシステムをつくることによって国全体としてのレベルアップをし、最終的には我が国被害者に優しい国の一つになれるようになることを期待して、陳述を終わりたいと思います。(拍手)
  4. 武部勤

    武部委員長 ありがとうございました。  次に、児玉参考人にお願いいたします。
  5. 児玉公男

    児玉参考人 日弁連の犯罪被害者対策委員会委員長をしております児玉公男でございます。当委員会意見を述べさせていただくことを大変光栄に存じております。  当委員会が御審議をされております三法案について、私の意見を述べさせていただきます。  結論としては、関係法案に賛成でございます。  まず、刑事訴訟法及び検察審査会法の一部改正案と、犯罪被害者等保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律案、もう少しこれが短くできないかなといつも思っておるのでございますが、この二つについてでございますが、改正案はいずれも、犯罪被害者方々支援するための措置として各方面から指摘されたところに手当てをされているところであり、また、法制審議会審議経過マスコミ論調等から見ても、各方面、すなわち裁判所法務省弁護士会学識経験者マスコミ等のコンセンサスを得たものであると考えるわけでございます。  ただ一つ、先ほど申し上げました付随措置に関する法律案につきまして、公判記録閲覧謄写について少し意見を申したいと思います。同法第三条の問題でございます。これは、現に係属中の刑事裁判記録謄写閲覧を許すということでございます。  現状では、犯罪被害者損害賠償請求等により被害回復を図ろうといたしましても、原則として確定記録閲覧しか許されていない状況でございます。事件確定まで長時間を要する場合が少なくないということでございまして、今般、現に進行中の公判記録閲覧が認められるということは、その意味で一歩前進したものと評価すべきでございます。  しかしながら、犯罪被害者の特殊な地位を考えれば、犯罪被害者被害回復のためには、刑事手続等の記録は可能な限り早期に、必要な範囲で犯罪被害者方々開示されるべきであると思います。犯罪被害者方々には、確定記録それから今度の公判記録だけでなく、起訴前の記録、確定記録以外の記録、公判提出記録でございますが、あるいは不起訴記録の閲覧謄写も認めるべきであると考えております。もちろん、起訴前の記録、不起訴記録については相当な制約があるとは思います。具体的な制度化に当たっては、情報の乱用防止等の措置をとることが必要であろうと考えております。  なお、現に損害賠償の民事訴訟が提起された場合には、この閲覧にあわせまして、刑事記録については民事訴訟法上の文書提出命令の対象とされるべきであると考えております。刑事記録であることから一律に適用除外という理由はなく、関係者のプライバシーの関係等から非開示とするか否かは具体的に決められるべきであると思います。  この点について付言させていただきました。  次に、御提出犯罪被害者基本法について意見を申し上げます。  私は、犯罪被害者基本法がぜひとも必要であると考えております。  第一に、犯罪被害者はその権利が十分保障されず、極めて不十分な状況にあるということは諸澤参考人が先ほど述べられたとおりでございます。同先生が言われた、いわゆる国連被害者人権宣言というものを国連は一九八五年に採択いたしまして、犯罪被害者保護について詳細かつ包括的な基本原則を明らかにし、あわせて各国政府において必要な措置を検討すべきことを明らかにしておるわけでございます。諸澤先生が言われましたように、既に、欧米を中心とする諸外国では、被害者補償制度支援制度確立に向けた立法が進められているわけでございます。  国連被害者人権宣言の主なものとして、個人として尊重されること、物質的、精神的、心理的、社会的支援を受ける権利被害回復を求める権利加害者刑事手続等に関与し知る権利などを挙げておるわけでございます。  我が国におきましても、犯罪被害者権利を保障することは、国連被害者人権宣言のみならず、憲法十三条、二十五条の要請であると考えております。御承知のように、憲法十三条というのは、個人の尊重、生命、自由、幸福追求の尊重を規定したものであります。また、二十五条は生存権、あわせて国が生存権を保障する義務があることを定めたものでございます。  犯罪被害者支援は、統一的な基本方針に基づきまして、経済的側面、精神的側面、あるいは刑事司法的側面の各方面から総合的、統一的に行われなければその実効を期しがたく、そのために犯罪被害者基本法を制定し、社会における犯罪被害者の地位を明確にするとともに、その施行の基本を定めることが必要であると考えております。  具体的に申し上げますと、現に御審議中の刑訴法改正、また付随する措置に関する法律案は、刑事裁判手続に関するものでございます。総合対策と言われるものの一部にすぎないわけでございます。そして、それは法務省の管轄されている法律でございます。先ほども出ましたように、犯罪被害者等給付金支給法、我々は犯給法と略称しておりますが、これは昭和五十五年に制定された法律でありますが、警察庁の管轄する法律であります。警察庁がこの改正を検討中であることも承知しておりますけれども、これは法務省は直接関係されておらないわけでございます。  このように、犯罪被害者に対する支援のあれは、行政では各省庁に分かれております。いわゆる縦割り行政の問題でございます。例えば、被害者の押収物をどうするかというようなことは最高裁、法務省関係しております。また被害者の方の雇用という面になると労働省が、また民間団体については経済企画庁が、心の健康、ストレスについては厚生省が、また児童生徒の心のケアとなりますと文部省が、地方自治団体の理解の促進ということになれば自治省が、また交通事故の被害、交通事故損害賠償の件は運輸省が、また驚くべきことに、海上保安庁まで通知制度について関係されているようでございます。  このため、内閣におかれましては、省庁連絡会議というものを設置されまして、官房副長官が議長となられて、関係省庁間の密接な連係を確保し、政府として必要な対応を検討するということで被害者問題について取り組まれていることはまことに評価すべきでございます。ただ、同連絡会議の三月三十日の申し合わせを拝見いたしますと、いろいろな犯罪被害者対策を関係省庁においてできるだけ推進するということになっております。これは、読み方によりましては、各省庁において各対策をばらばらに推進しろ、こう読めるわけでございまして、私としても多少不安を持っております。  犯罪被害者方々被害というのは極めて多様でございます。また、被害者方々のニーズもそれに応じて極めて多様であるということは、多くの方が指摘されているところでございます。総合的、統一的対策を推進するための基本法の制定が急がれると考えております。  できることから早くやるということも必要でございます。しかし、犯罪被害者に対する基本理念を確立して、総合的、統一的対策が必要であろうと思います。各施策をやるについて一番問題なのは、やはりお金の問題であろうと思っております。基本理念が確立して、国や地方公共団体の義務が明確になり、かつ総合的、統一的な対策が樹立されませんと、なかなか金銭の裏づけのある政策がとれないのではないか。そういう意味でも、基本法の制定が急がれるところと考えております。  また、諸澤先生も御指摘になりましたように、行政のみに任せるのではなく、国民各層の努力が必要でありますが、日弁連の提案しております犯罪被害者支援会議、また、法案にございます犯罪被害者等支援対策審議会というものを内閣または総理府に設け、国会にも随時報告をして国会の御討議、御批判をいただく制度が必要であると考えております。  最後に、日弁連は、ことし三月、少年事件被害者少年事件手続への関与等に関する規定を提案いたしました。御高承のとおり、少年事件被害者支援対策も極めて重要でございます。この点についても早急に対応すべきであると考えるものでございます。  以上でございます。御清聴まことにありがとうございました。(拍手)
  6. 武部勤

    武部委員長 ありがとうございました。  以上で参考人意見の開陳は終わりました。     —————————————
  7. 武部勤

    武部委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。倉田栄喜君。
  8. 倉田栄喜

    ○倉田委員 公明党の倉田でございます。  両参考人の先生方には、きょうは大変ありがとうございます。  今お話を聞きながら、改めて我が国犯罪被害者に対する対策がおくれているということを痛感いたしました。また、諸澤参考人がお話しになりました一九八五年の国連被害者人権宣言がもう既に古くなっているというお話は、改めてまた我が国が随分おくれてきたものだな、こういう思いを強く持ちます。私も、先日の本会議で、犯罪被害者方々保護の対象者とするのではなくて、権利の主体者として位置づけられていかなくてはならないのではないのか、そのためには今回の法案はまだ一歩だな、こういう主張をさせていただいたわけであります。  しかし、諸澤先生が、いわゆる犯罪被害者権利についての論文を御発表になった、そのときに強い反論があった、こういうことをお聞きしたわけであります。犯罪被害者人権について、国連被害者人権宣言も、そして権利の主体者にしなくてはならないということも含めて、我が国ではそれがかつては非常識なのではないのか、そういうふうな御認識のようにお聞きをいたしました。どういう点からそういう強い反論があったのでしょうか。また、どういう点からそれは非常識なのではないのかという主張があったわけでしょうか、この点についてお伺いできればと思います。
  9. 諸澤英道

    ○諸澤参考人 お答えいたします。  一九六〇年代、七〇年代というのは、既に御承知のとおり、国家権力対犯罪者人権という構図ですべてが語られておりました。特に刑法学においては、国家権力に対して犯罪者を守るというのが刑事法の役割だということをかたく信じている学者が多数ございました。  そういう中で、私は、それはそうかもしれないけれども、同時に、被害者というものが刑事司法制度の中で完全に取り残されている。いわゆるフォゴットンパーソンという言葉がよく使われますけれども、忘れられた人々なので、被害者司法制度の中に取り戻すべきではなかろうかというようなことを七四、五年に考えたわけでございます。  しかし、その考え方は、被害者権利犯罪者権利が、言うなれば反比例といいますか、バランスシートにのせたときに、片方に重みをかけるというと片方が軽くなってしまう形になるという極めて硬直した考え方しか当時存在していなかったということだろうと思います。したがって、被害者権利を主張する者は犯罪者権利を無視するという烙印を押されるということが一つございます。  ただ、関連して申し上げますと、その後、既に御承知だと思いますが、リストラティブジャスティスという、回復的司法あるいは修復的司法ということが強く主張されて、両者の権利は反比例ではない、もちろん相対立する部分はないわけではございませんけれども、多くの部分については両者の権利が両立し得るんだという、当時私が主張したことが現在では一般的に受け入れられるようになったかなという気がしております。
  10. 倉田栄喜

    ○倉田委員 私も、刑罰権を国家が何のために独占をしているのか、最近の少年事件等も含めて、その刑罰権のあり方、使い方、そういう意味でリストラティブジャスティス、回復的正義、そういうことは本当に考えなければいけないな、検討すべきだな、こういうふうに思っております。  ただ、我が国のいわゆる刑事司法システム、刑事訴訟法に代表されるそのシステムが、被害者が当事者として参加できる立場になっていない。先ほど司法に参加をする権利というふうに言われましたけれども、被害者が当事者としていわゆる刑事訴訟の世界に参加をするということでは本当にまだこれからだな、こういう思いをしております。  例えば今回の改正でも、いわゆる公判傍聴あるいは訴訟記録の閲覧謄写ということについては、与党の中で議論をする中で「心身に重大な故障がある場合」は含めさせていただきました。しかし、意見陳述については、「心身に重大な故障がある場合」はまだまだ含むのは難しいねというのが当局の答え方であります。なぜ難しいのかというと、いわゆる司法システムの中で当事者として参加するということと、いわゆるシステムの外にあって傍聴、記録の閲覧をするということはやはり違うんだというのがまだまだ我が国の今の刑事訴訟の考え方なのかな、こう思いますけれども、ここに一つあらわれているなという思いがしたわけであります。  そこで、児玉参考人に、弁護士の立場から、刑事訴訟に被害者がどういうかかわり方で当事者として参加できるのか、そのためには刑事訴訟法をどういうふうに考えていかなければならないのかということについて、何か御所見がいただけたらと思います。
  11. 児玉公男

    児玉参考人 諸澤先生も言われましたように、私も、被疑者、被告人の権利被害者方々権利というものは、一見対立するような面もあるとは思いますが、矛盾するものではない、両立するものではないかと考えております。  今度の法律で、やはり裁判ということの見地から見ますと画期的なことは、犯罪被害者の方が証人としてでなく、証人というのは今までの刑事裁判の枠組みの中にあった一つの地位がある人でございますが、犯罪被害者として意見を述べるという問題がございました。これは実を申し上げますと、法務省弁護士会でかなり議論をしたところでございまして、今までの訴訟構造、三者構造を変更する一つの、被害者という人が証人ではなくて意見が述べられるという進んだ考え方でございます。  日弁連も議論がございましたが、昨年の執行部におきましては、これへ踏み切って、法務省が提案された案について法制審議会でも賛成する。法務省弁護士会は、とかく意見が対立するのでございますが、この問題については珍しく一致して、意見が調整できたということであろうと思います。  先ほどもお話しになりましたように、被害者関係的訴訟、回復的訴訟ということが非常に問題になっております。日弁連としてここに踏み切るかどうかまで、私は執行部ではございませんのであれでございますが、そういう訴訟を目指すべきかどうかという議論がございます。先日の土曜日もシンポジウムを行いまして、被害者関係的訴訟さらに回復的訴訟についての議論をいただいたわけでございます。  この議論をいたしますと、ちょっと難しい話で理屈っぽくなるわけですが、大ざっぱに言えば、裁判の構造が、単なる被害者支援ではなくて、裁判自体が変わってくる。だれのための裁判か。今、最高裁判例では、被害者のために裁判しているんじゃありません、国家秩序維持のためにという立場でございますけれども、被害者のために裁判をするというのが一つの大きな目的に変わるとなれば、裁判構造も変わりますし、さらには検察官自体の権限といいますか、機能というものまで変わってくる、そのように考えております。  ただ、それは将来の課題でございまして、我々としても諸澤先生なんかのお力を得て、なお勉強して、いろいろ意見を述べていきたいと思っております。  以上でございます。
  12. 倉田栄喜

    ○倉田委員 私も、いわゆる回復的正義という意味での、そういう視点から、司法のあり方と刑事裁判のあり方は本当にもう一度考えてみていいな、そういうことを強く思っております。  この議論をまだ深めたいわけでありますけれども、少し時間がありませんので、先ほど、被害回復をする権利ということで、少年犯罪事件被害者あるいは精神障害者による事案の被害者方々は、一般犯罪被害者方々に比べて、なお一層抑制された立場にある。少年法の理念あるいは犯罪の成否ということでの人権保障という観点から、通常の犯罪被害者方々も随分今まで保護のらち外、権利の主体者どころでなかったわけでありますけれども、それ以上に、少年犯罪被害者方々、精神障害者による事件被害者方々は、まだ我慢を強いられているわけですね。  そこで、例えば少年法の理念という目的のために、そして、そのことによって社会の秩序と安全を守るということで、その犯罪被害者方々が一歩我慢しておられるとすれば、先ほど先生もお話しになったように、この方々にとっては、もっと手厚い対策を講じてこそ初めてバランスがとれるのではないのか、私も先日の本会議でそのような主張をさせていただきました。  そこで、その一つは、例えば少年事件犯罪被害者については、もう一般に被疑者の国選ということも議論をしている最中でございますけれども、この方々に対する支援の弁護人制度ということを考えるべきではないのかということが一点。  それから、先ほど附帯私訴のお話もありましたけれども、なかなか被害回復、実際に金銭的賠償を得るのが最終的な結論として難しい。手続も難しいし、いわゆる能力という面からも現実には難しいわけですね。実際に、そういう少年による犯罪というのは、社会環境であったり家庭であったり、ある意味では社会全体がつくり上げている。しかし、そこで受けた被害者方々損害賠償すらも受けられていないという現実があるとすれば、これは国連被害者人権宣言にもあるわけでありますけれども、やはり国が補償的にきちんと補充をするという制度をつくるべきである、こういうふうに思います。その点についてどうか。  それからもう一つは、いわゆる保護監督責任。今、保護者の責任というのは民法の不法行為理論で考えられるわけでありますけれども、その少年が犯罪を起こすについて予見可能性があればその保護監督責任があるということで、ある意味では、個人責任を問うという意味で非常に限定的になっているわけですね。しかし、今の社会の状況を考えれば、やはり保護者の責任というのは、ある程度もう少し明確になる必要があるのではないのかという気がいたしてなりません。  この三点を、最後の一点は弁護士である児玉先生に、民法の不法行為理論との関係ですからお答えいただいて、最初の二点の方を諸澤先生にお答えいただければと思います。
  13. 諸澤英道

    ○諸澤参考人 お答えいたします。  少年事件についてはいろいろ問題がございまして、保護主義ということも改めて、保護主義は非常に大事な原則ですけれども、その保護主義の定義といいますか、内容を考える必要があると考えております。  しかし、その議論ではございませんで、今御質問の件は、少年事件支援の弁護人のお話と、それから、少年事件については、特に少年自身が賠償できないケースも多いだろうというようなケースで何らかの支援が必要だろうという御質問でございましたけれども、全面的に私もそうだと考えております。  なお、御質問ではございませんでしたけれども、第三の監督責任についても、アメリカなどでは既にそういう立法化が確実に進んでいるわけでございます。  そういう意味で、少年事件について、ただ加害者被害者の対立構造で見るということではございません。少年の将来というものも非常に大事な問題でございますけれども、やはり一番大事なのは、事実を事実として少年審判において確認する、そして少年がそのことを認めた上で、それから立ち直っていく。それにおいては、少年も立ち直るし、被害者も立ち直らなければいけない。それを支援するような、例えば弁護人の制度だとか、あるいは補償制度というようなものを十分用意しなければいけないだろうというふうに考えております。
  14. 児玉公男

    児玉参考人 少年とその保護者との関係、不法行為の関係で御質問がございましたので、お答えいたします。  やはり日本の現行法ではどうも不十分であるという点は、私もあるように思います。諸外国の法制を見ましてもこの点をはっきりさせているということで、保護義務の第三者に対する義務、責任という点については、大変重要な御指摘でございまして、なお検討する必要があろうと思います。  ただ同時に、日弁連の方は、諸澤先生も言われましたように、単に被害者加害者を対立関係にするというのではなくて、仮称でございますが、少年事件協議という提案をいたしております。これは全部のケースにできるわけじゃございません。被害者の方は、もう加害者と会うのも嫌だという方もいっぱいいらっしゃいます。しかし、被害者の方の同意が得られれば、被害者と少年、それぞれの保護者等の協議を通じて、被害者が当該非行による損害を回復する、俗に言えば損害賠償を話し合いでします。また、少年の被害者に対する責任の自覚を含めて、これを自立させる、このような少年事件協議、現在なかなか難しいんですが、弁護士会とか家庭裁判所機関でやろうという意味でも保護者の方に関与をしていただく、こんなことを考えている次第でございます。  以上でございます。
  15. 倉田栄喜

    ○倉田委員 以上で終わります。大変ありがとうございました。
  16. 武部勤

  17. 北村哲男

    北村(哲)委員 民主党の北村でございます。両先生、きょうはどうもありがとうございます。  最初に諸澤参考人にお伺いしたいと思いますが、私どもは、先生方の御意見もお聞きしまして、犯罪被害者基本法案というものをつくり、今、この国会提出し、そして各党の御賛同を得たいと思って審議に臨んでおるところでございます。  ただいま児玉先生の方から賛成という力強い御意見をいただき、特にまた、この問題は一法務省だけではなくてすべての省庁にわたる問題であるから、法務省だけで処理できないんだ、そういう意味では、それこそ先生のおっしゃった国会宣言であるとか、あるいはもっと憲法に近い基本法というものをつくる必要があると私どもも感じ、本当に苦労して、本当に貴重な御意見を聞きながら、やっとつくりました。お読みいただけたと思いますけれども、御感想というか御意見、それからまた足りない点等がございましたら、ぜひお願いしたいと思います。
  18. 諸澤英道

    ○諸澤参考人 私は、日弁連における被害回復制度等検討協議会の起草グループでしょうか、犯罪被害者基本法の案づくりにかかわらせていただきまして、そのときにできた案がやがて協議会で決定され、そして日弁連として機関決定されたのだろうと思っておりますが、その段階では、正直言いまして、いささか後退したかなという気がしておりました。  しかし、今回民主党から提案されております案は、それに似てはいるわけですけれども、しかし、非常によくできているというふうに私は何度も繰り返し読ませていただきました。もちろん、欲を言えばもう少し入れたいこともないわけではございませんけれども、現時点での我が国での立法化ということになれば、かなりできのいい案ではなかろうかというふうに理解しております。
  19. 北村哲男

    北村(哲)委員 ありがとうございました。お褒めいただきまして、心を強くしました。  と申しますのは、私は諸澤先生にぜひこの場に来ていただきたいと思ったのは、前回、学者の先生をお呼びしました。何人かのうち、法制審議会委員をしておられてこの問題に携わっておられる方にお聞きしましたら、基本法の制定は時期尚早だ、いろいろまだ検討すべきことがたくさんあるんだと言われました。  私どもは、基本法というのはこれからつくるものの指針を定めるものであるから、これでいい、これが悪いという問題じゃなくて、教育をやりましょう、啓発をしましょう、地方公共団体の協力を得ましょうと、どの方面でという指針を示せばいいわけですから、反対の理由はないと思うんですが、どうも雲行きが怪しいわけです。  法務省案は、私どもは反対するわけにいきません。ただ、一つの部面にすぎない、その具体化なわけですね。それは賛成しますけれども、もうちょっと上のものも必要だと思っております。恐らく、きょうの御意見で自民党あるいは与党も賛成に回っていただけると思いますけれども。  それはそれとしまして、先生から、これはもう憲法の問題なんだ、憲法を変えても犯罪被害者の問題は国の指針として定めるべきであるというお話がありました。その点はさらっと触れられただけですが、具体的に憲法をどのように、どこをどういうふうに変えればいいのかということをお教えいただきたいと思います。今、憲法問題も議論されているところでございますので、ぜひ、そのあたりも考えていきたいと思っておるところでございます。
  20. 諸澤英道

    ○諸澤参考人 ちょっと全く予想しておりませんでしたが、一応手元にメモがございまして、私のいわゆる試案、個人的な案ということで考えて、いろいろな研究者等に示してきた案がございます。  憲法の中に明記すべき被害者権利に関する条文でございますが、現在、第十三条に「すべて国民は、個人として尊重される。」云々という条文がございますが、これに第二項を追加して、「すべて国民は、犯罪その他の違法行為によって、生命、身体、自由、財産などの権利を侵害されることはない。すべて国民は、生活上の安全と安心について最大の保障を与えられる。」という条文が必要かと考えております。  アメリカでは多くの州が、そして今連邦が検討してございます。ドイツでもそうでございますが、憲法レベルで、国家の被害者といいますか国民を保護する義務、保護義務というものを明記する傾向が出てきております。それに相当するものとして、この種の条文一つ必要かと考えております。  それから、そのほかに、三十一条の法定手続がございますけれども、その前にこのような二カ条が必要だというふうに考えております。  その一つは、「犯罪およびパワー濫用により、」ただ、パワー濫用というのは権力の濫用とした方が比較的日本語かと思いますが、権力濫用では問題があるということもございますが、とりあえず「犯罪およびパワー濫用により、身体的、精神的、経済的に被害を受けた者もしくは基本的人権の重大な侵害を受けた者(以下、単に「被害者」と言う)は、加害者に対して、法の定めるところにより被害を回復させることができる。国は、被害者救済のための施策を講ずる。」という条文。  もう一つは、「被害者は、自らの事件の真実を明らかにし、かつ司法機関によって明らかにされた事実を知ることができる。被害者は、司法手続のすべての段階において、自らの事件の処理と結果について説明を受け、意見を述べることができる。」ということでございまして、今回の上程されている案をもう少し徹底したような表現になってございます。
  21. 北村哲男

    北村(哲)委員 大変目の覚めると申しますか、私どもの憲法観から、違った面からの御指摘だと思って、非常に傾聴するところでございます。  私どももこれを議論していく中で、例えば今の、いわゆる犯給法ですか、犯罪被害者等給付金制度の問題でも、まだまだ単にお見舞金みたいな形。でも、そうじゃなくて、今おっしゃったように、権利性を認めるならば、国が払うものについてもこれはまさに、また請求する場合も権利として請求できるという形になる。国家賠償的な性格に変わってくるとまた大きな進展だと思うので、これは基本法でも必要な問題であるし、また憲法であればさらに強いものになると私も思っております。  それでは次に児玉先生に、この権利性の問題で、個人として尊重される、そして精神的、経済的、社会的支援を受ける権利があるというお話をされました。精神的なケア、いろいろなものを国がするということもわかります。経済的なものは支給法の問題を徹底すると思うので、社会的支援というふうにおっしゃいましたが、これをもう少し具体的に、私どもは被害者方々にどういう社会的支援を差し伸べることができるのか。抽象的にはわかりますが、突き詰めていくと、精神的なもの、経済的なものは具体的にわかるのですけれども、どういうものをお考えなのか、教えていただきたいと思います。
  22. 児玉公男

    児玉参考人 確かに先ほどの説明で、物質的、精神的というよりも社会的支援、これは国連被害者人権宣言の言葉だったわけでございまして、社会的支援という意味でございますけれども、まず、犯罪被害者支援する義務があるのは国であり、地方公共団体であると思います。しかしながら、やはりすべての国民といいますか、弁護士もそうですし、裁判官もそうですし、ボランティアの方々もそうです、あるいはノンポリの方もそうでございますが、やはりすべての国民が、犯罪被害というのは他人事ではない、自分もあしたなるかもしれない、だれがいつ被害者になるかもわからないという問題であろうと思います。  したがいまして、やはり基本法に民主党さんがお書きになっているように、国民の支援、全体の支援、こういうことが非常に、諸澤先生の言う被害者に優しい日本国になればすごく被害者のことを励ますのではないか、社会的支援というのは、ちょっと物質的、神経的の被害とはまた違いますけれども、支援でございまして、私としてはこの国連人権宣言をそのように理解しておりまして、政府や地方団体だけでなくて、全国民が犯罪被害者支援していくという支援であると御理解いただければよろしいのではないかと思っております。
  23. 北村哲男

    北村(哲)委員 どうもありがとうございました。  現状では、被害回復に関しては犯給法というのは非常に機能していない。特に、ある公安委員会委員の方が、北村さん、実際はこうなのだよという話をされました。犯給法の八条に求償権というのがある。犯給法によって見舞いを受けた、それに対して国が、恐らく警察庁になるのかもしれませんが、求償権がある。そうすると加害者に請求できるわけですけれども、現実に、民事裁判なんかを被害者が起こしている場合は、その起こしたお金を取るときに求償して返してしまうことがあるのだけれども、そうではない場合は警察は全然やってないのだよ、いまだかつて求償をみずからの力でやったことがないのだよというふうな言い方を実際受けました。本当かどうかは省庁に確かめなくてはわからないのですけれども、そういうサボりが犯給法の機能を、せっかくつくった唯一と言える犯罪被害者の救援対策法が機能していないという感じがあるのです。  私たちはこれをもっともっと大きくしていかなくてはいけない。それが先ほどから議論された、せめて加害者に保障をやっているぐらいのことはしなくてはいかぬ、これもまた理屈は違う話だけれども一般受けとしては、一般受けというのは、余りにも不公平ではないか。こちらにお見えになった岡村先生なんかも、国選弁護とか加害者が勾留されている食事代とかなんとかいったら百億円を超えているのに、被害者にはたった五億円しか国のお金は使っていないのだというふうに言っておられます。  話が飛びましたけれども、犯給法について、その運用とかあるいはそういうことについて、お考えあるいは御感想をお持ちでありましたらひとつお願いしたいと思います。児玉先生、ひとつ。
  24. 児玉公男

    児玉参考人 御指摘のように、犯給法、犯罪被害者等給付金支給法という昭和五十五年に制定された法律でございますが、やはりこの改正が焦眉の急ではないかと思っております。警察庁がこの点を検討されていること、また内閣におきまして省庁連絡会議一つの重要な議題になっていることも承知しておりますが、この改正がどうしても必要でございます。  それで、対象が死亡者及び重傷者、死亡者に準ずるような重傷者であるという、限られた対象が問題であろうかと思います。まず、対象をもう少し広げるべきである。それと同時に、金額面が非常に少ない。しかも、警察庁でやっておられますので、どういうぐあいに査定をされているのかなという問題がございまして、初め、御本人の方が申請したら、加害者の方から見舞金をもらっていたからだめだと言われて、一銭も出ませんと警察に言われた。しかし、弁護士がついて、この問題が社会問題化したせいもありますが、そうすると、再度申請したらお金が出たというような事例もございます。やはり手続の明確化、公正化というものが必要ではないか、そのように考えております。  日弁連でも、この改正が一番大事だということで、連休明けには抜本的な法律案をつくる予定で作業をしているということでございまして、ぜひとも全政党の御支持が得られるように考えますし、基本法につきましても、委員御指摘のように、私がお話を聞いた範囲では、与野党を問わずこれに反対ではない、総論では賛成であるという問題でございますので、犯罪被害者問題は急ぎますので、犯給法も含めまして、全政党が、御検討した上御支持をいただけたらありがたい、このように思っている次第でございます。
  25. 北村哲男

    北村(哲)委員 時間が来ましたので終わりたいと思います。両先生、どうもありがとうございました。
  26. 武部勤

  27. 木島日出夫

    ○木島委員 日本共産党の木島日出夫です。  両先生、大変貴重なる御意見、ありがとうございました。  私も、被害者権利というものをしっかり位置づけて、日本の刑事司法制度を全面的に見直すということが求められているのではないかと思っております。そんな立場から、最初に児玉参考人にお聞きしたいのです。  先ほど諸澤参考人から、加害者権利をせめて被害者権利に近づけられないかと。基本的に私も、被害者権利を徹底的に擁護することと加害者人権をきちっと保障することとは、それはもう相反するものではない、被害者権利人権を本当に全うされてこそ初めて、被告人、被疑者の人権擁護ということにも視野が広がると思うのです。  しかし、一つだけ、証人尋問の場面では、やはりシビアな、難しい問題がある。証人としての被害者の地位、立場と、無罪や無実を主張する被告人との地位、立場は、やはりぎりぎりのところでは対立する場面があることは避けて通れないのではないか。特に、殺人未遂の事件、強盗事件、強姦事件、争っている被告人の権利を本当に保障することと被害者の立場を尊重することとは、やはりぎりぎりぶつかり合うことは避けて通れない。それで、政府閣法は、刑事訴訟法の証人尋問のあり方について、遮へい措置とかビデオリンク措置を導入しているのです。  そこで、憲法三十七条の、刑事被告人はすべての証人に対して審問する機会を十分に与えられなければならないという、この憲法上の要請というのは無視するわけにはいかない。刑事裁判の命の一つがやはり真実の発見にある。無実無辜の者を罰してはならないとあるわけですね。  そうすると、そういう本当にシビアな最後のぎりぎりの段階では、弁護人も被告人も、証人たる被害者の供述、目の動き、手の震え、体全体の動き、本当にそれを見なければ、最後のぎりぎりのところの真相追求のための法廷活動というのは制約されるのじゃないかと思えるのです。しかし、被害者の立場に立つと、それだけは御免こうむるということですから、これは一番難しい場面なんですが、一番のぎりぎりの段階でどういう調整ができるのか、児玉参考人の率直なその辺の御意見を賜りたいと思います。
  28. 児玉公男

    児玉参考人 さすがにいろいろ御検討いただいておりまして、一番極端なといいますか、シビアなケースを御指摘になられました。やはり否認事件の場合には、刑事弁護人、すなわち被告人の弁護人は徹底した弁護をせざるを得ない、すべきではないかと思っております。  刑事のリーガルエシックス、刑事の弁護士倫理というのがございまして、ちょっと古いですけれども、古い本をいろいろ読んでみますと、例えば、イギリスの弁護士は女王の利益を害しても被告人を守るべきだ、ユニオンジャックを侮辱することも刑事弁護人には許されるというような、刑事弁護人はただ被告人のみのためにと我々は教えられてきたわけでございます。  したがいまして、その場合には微に入り細にわたり、あるいは厳しい反対尋問を被害者たる証人の方にするというケースもあろうかと思います。しかし、その質問につきましても、被害者のことを侮辱したり、やはり頭の中に、精神的な二次被害を与えないというような措置、また、委員御指摘のような、弁護人との対面尋問は必要でございますが、遮へいとかビデオリンクとかそういうような工夫を凝らして何とかその点を最小限度に、被害者の方が二次被害に遭わないようにすることが必要なのではないかと思います。極限の場合には両者の利害が対立することがある、少ないかもしれませんけれども、そのように私としては考えております。
  29. 木島日出夫

    ○木島委員 一点だけお伺いしておきたいのですが、この法案ですと、ビデオリンク方式が導入される、その方式がアメリカ方式じゃなくてイギリス方式だというのですね。  何が違うかというと、証人たる被害者が供述するその部屋にアメリカ方式ですと弁護人と検察官だけは入れる。もちろん裁判官その他、被告人は当然のことですが、訴訟関係者、傍聴人は絶対入れないわけですから、それは結構なんです。弁護人と検察官だけは、証人たる被害者の部屋の中に同席して目の前で尋問できる。証人の一挙手一投足というか、もっと目の細かい動きとか証言の唇の震えとかほおの引きつりぐあいとかを見ながら尋問をやっていくことができるのです。しかし、イギリス方式ですと弁護人と検察官も全部排除ですから、その部屋には被害者たる証人しか入っておりませんし、ビデオですからやはり制約があると思うのです。  私は、絶対的にアメリカ方式がいいとか絶対的にイギリス方式がいいというのじゃなくて、裁判官の裁量でどっちをとれるようにもしておいて、本当にぎりぎりの、この事件のこの部分の尋問についてはアメリカ方式を導入して、弁護人と検察官を被害者の部屋の中に入れる。しかし被害者の立場というのは重要ですから、それは乱用しない、そういう柔軟な法案にした方がよかったのじゃないかと思うのですが、今回出された政府法案は、完全にアメリカ方式排除ですね。どうでしょうか、その辺。私は、柔軟にしておいて、アメリカ方式が採用できるような余地を法律に残しておくというのは大事だったのじゃないかと思えてならないのです。これは、決して被害者人権を無視するというのじゃなくて、真実発見のためにのみですけれども、どうでしょうか。
  30. 児玉公男

    児玉参考人 ただいまのアメリカ方式かヨーロッパの方式かという議論は、弁護士会法務省との協議中にも重要課題でございました。また、法制審議会の中でも議論があったわけでございます。弁護人の反対尋問権の中には、いわゆる対面権、目の前でやる、テレビやビデオを通じてやるのではない権利が含まれるという意見もかなり有力でございます。  したがいまして、委員御指摘のような柔軟性のある考え方の方がいいかなとも思うわけでございますが、また同時に、御指摘のように、やはり裁判官が訴訟当事者の意見をよく聞きまして、その上で裁判所がどの方式をとるか決める。もちろん、先ほどの御指摘では一方の方式しかないわけでございます。そういう面で法制審議会のいろいろな議論がございましたけれども、法案になった。あとは現実の裁判官の運用というものに期待しまして、反対尋問権が不当に侵されないような配慮が必要ではないか。運用がまずければまた改めて考えるという面もあろうかと思いますが、私としては、今のところそのように考えております。
  31. 木島日出夫

    ○木島委員 ありがとうございました。  続いて、諸澤参考人にお伺いいたします。  日本欧米先進国に比べて二十年おくれたという、私もそのとおりだと思うのです。先日、その問題で法務省に質問もいたしました。そうしたら、法務省は、八五年に国連被害者宣言が採択されたときに、日本政府は一生懸命採択のために骨折ったのだという答弁をしたのです。それなら、なぜおくれたのかという質問をしたのですが、改めて、そこまで一九八五年に日本政府がしておきながら、なぜ二十年おくれをとったのか、どんな点に問題点があったのか、率直なポイントをお教えいただけませんか。やはりそこを変えていかないと前進しないと思うからなんです。
  32. 諸澤英道

    ○諸澤参考人 お答えいたします。  率直に申し上げまして、大変難しい質問でございます。八五年の国連犯罪防止会議に私も行っておりまして、日本の代表団と一週間行動をともにいたしました。これを成立させるためのロビー外交をひたすら引き受けまして、特に、先進国の間の合意を得る作業に私もかかわったわけでございますけれども、法務省が答弁されたとおり、日本政府も成立させるために一役買ったということは確かかなと理解しております。  ただ、その後、私も日本に帰国して、八五年のこの宣言が全く報道されていなかったということに非常にショックを受けました。日本マスコミは何をしているのだろうかという気もするわけであります。当然国連会議では、各国からたくさんの、それこそ何千人というマスコミ関係者が来て取材をして、外電で流しているわけですけれども、日本国内にそれが報道されていないということであります。そして、戻ってきまして、当然政府取り組みをするかと期待しておりましたが、待てど暮らせど全く取り組みはなかったということでございます。  そのことは、先ほど来出ております犯給制度が昭和五五年、一九八〇年に制定されて、八一年一月一日に施行された。一九八〇年代というのは、我が国にとっては被害者の魔の十年間であるわけで、全く動きがなかったわけです。そのことと何か共通するものがあるのだろうか。犯給制度を成立させて、すべて終わった、事足れりというふうに思っている人たちが多かったのかという気がしているわけであります。  したがって、国連会議に参加して賛成の意思表示をしていながら国内で動かなかったというのは、ただそれだけの問題ではなくて、日本全体が被害者問題に対して八〇年代は全く関心が起こらなかったということであります。  なお、八〇年、昭和五十五年の犯給法の制定も、よく知られていますように、一九七四年の三菱重工ビルの爆破事件が発端だと一般には言われているわけでございます。そのほかの事件もございますけれども、被害者の置かれている状況が広く認識されるようになって犯給制度ができたということでありまして、その犯給制度制定に向けての議論の中でやはりいろいろ問題があったように考えております。  先ほど、私は質問されなかったわけですけれども、犯給制度は見舞金型でございます。当時の議事録に繰り返し見舞金という言葉が使われています。現在、世界的に見舞金型をとっている国は、先進国では日本だけでございます。見舞金型から補償型に変えるべきでございますけれども、この犯給法をつくった段階で、既に意識は非常に低かったのではなかろうかという気もしております。
  33. 木島日出夫

    ○木島委員 日本社会の中にこういう国際的な状況が知らされなかったという問題点を指摘されました。私もそのとおりだと思うのです。  ただ、その背景に、やはり政府の基本的姿勢が根本問題じゃないか、被害者権利人権として位置づけていないという政府の姿勢こそ、私は問われるんじゃないか。それが、参考人がおっしゃったように、今回の政府閣法の中にも、例えば傍聴についても権利ではない。閲覧謄写も、これは午後の質問で私は政府に詰めますけれども、被害者権利じゃないのですね。だから閲覧謄写が認められなかったときに抗告できないと法務省は言っているのですよ、不服申し立てできない。それは権利じゃないのですね。それから犯給法もそうですね。そういう日本政府の、犯罪被害者の諸要求を権利として位置づけない、そこの根本的なところが変わらなければ前進しないのじゃないかと思えてならないのですが、諸澤参考人、いかがでしょうか。
  34. 諸澤英道

    ○諸澤参考人 全く同感でございます。今回の立法化は非常に巧妙に権利という言葉を外しているなという気がしております。ただ、内容的にはそれに近いものであるので賛成という意思表示をしたわけでございますが、本来であれば権利という言葉が何カ所かに登場していいはずだというふうに考えております。
  35. 木島日出夫

    ○木島委員 ありがとうございます。終わります。
  36. 武部勤

    武部委員長 西村眞悟君。
  37. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 自由党の西村でございます。  素朴な質問になってしまわざるを得ないのですが、私のイメージとしては、刑事訴訟が糾問的訴訟から当事者的訴訟になった。被告人は糾問的では客体であって権利性はなかった。しかし、実体的真実の発見の点から見ても、当事者訴訟にして被告人は訴訟の権利一つの主体である。  そこで、被害者の問題です。一人の国民として被害を受け、憲法二十五条がある以上、その回復を国が責務を持つということはわかります。ただ、この当事者訴訟の構造の中に、被害者権利性権利主体性を入れていくということは、罪体立証の段階、量刑の段階でどのような実体的真実の発見、それから、被告人にとっては最も関心の的である、極端な例は死刑になるのか懲役刑になるのか、この一点の分かれ道において、被害者が刑事訴訟の中のいかなる権利性を獲得していかなる役割を果たすのであろうか、このイメージを諸澤先生また児玉先生、どうかそれぞれのお立場からちょっとお教えいただきたいと存じます。
  38. 諸澤英道

    ○諸澤参考人 お答え申し上げます。  長いこと我が国では、被告・弁護側対検察側という二極構造、対立構造で見ることが当然になっておりました。しかし、被害者問題が登場してきたことによって、三極構造で見るという考え方が学問的にはかなり支持されつつございます。あるいは、二極であっても、検察被害者側を両方同じ側に置いて、被告・弁護側対検察被害者側、こういう二極構造で理解するといういずれか、二極の場合であってもこの場合、あるいは三極という形で理論的にはこれを整理する方向に動いてございます。  それからもう一つ被害者保護を考えたときに、先ほど来出ておりますけれども、実は刑事司法については、やや乱暴に言いますと、二つの土俵があるということかと思います。といいますのは、被告が無罪を主張しているケースと事実を認めている場合では土俵を異にしているわけでございます。  当然、無罪を主張している場合においては、従来の考え方を若干修正するという程度になろうかと思います。すなわち、被告側の権利にかなり配慮した司法手続を進めていくということでございますが、被害者の方で強く指摘される、しかも具体的に指摘される例は、圧倒的に加害者側が事実を認めている、有罪を前提としたケースの中で議論されているわけであります。  その場合においては、回復的司法という考え方が非常によく通るわけです。したがって、無罪を主張している場合に回復的司法を取り入れるという考えは、まだ世界的にも極めて少数派でございまして、その二つの土俵があるというところが若干まだ整理し切れていないというところかと理解しております。
  39. 児玉公男

    児玉参考人 諸澤参考人とほとんど同意見でございますけれども、やはり事案によって、有罪か無罪か、あるいは否認事件、さらには有罪であるけれども、大きい情状のことについても極めて重要な意見の食い違いがあるというのがございますね。委員御指摘のように、死刑か無期かというケースにおいては、そういう問題があるわけでございます。  したがいまして、公訴事実のみならず、情状に関する事件につきましても、もし重大な対立がある場合には、被害者の方はやはり証人として検察官、弁護人の尋問を受けて、それについて厳格な刑事手続においてやられるということになろうと思います。  しかし、公判最後段階、証拠調べが大体最後になるというときに予想されておりますのが意見陳述権ですね。だから、前半では証人としてお出になるけれども、最後段階被害に関する心情その他被告事件に関する意見を述べる、こういうことができることになるのではないか、このように考えております。
  40. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 刑事訴訟の目的は、言うまでもなく糾問的また被害者の応報感情を満足させる場ではない。世間的な言葉で言うならば、被害者のガス抜きの場ではないわけでございます。  今両先生が御指摘になったこの被害者の当事者性を訴訟に入れるということは、罪体立証の段階と量刑の段階を明確に分けるというふうな訴訟上の構造を抜きにしては考えられないと私は思います。  さて、弁護士の立場から、弁護士の任務から、この被害者権利性といかに弁護士が関与していくのだろうか、先ほども木島委員が御質問した問題意識ですね。例えば、被告人が、私はやりましたと言っている。弁護士の立場からは、違法収集証拠は排除しなければならない。被害者もこの人がやったと思っておる。しかし、例えば被害者と全く関係のない、検察官の、また警察官の取り調べに違法これあり、毒の木の果実の理論で証拠能力を剥奪する。この観点から見たら被告人は無罪である。検察の出した証拠を弁護士が点検したら、この証拠は使えず、被告人は無罪の弁論をする。この場合に、被害者保護というものと弁護士の任務はどうかかわるんだろうか。  それから、児玉先生が言われたように、最後陳述があります。これは量刑に関係するわけですね。しかし反対尋問はないわけです。これを弁護人が認められるのかということです。  つまり、被害者というものは、例えば、右のほおを打たれれば左のほおを出すという心情の方もある。しかし復讐の鬼のような心情を持っている方もある。これがすべて法廷にあらわれるわけですね。そして、それは最後陳述ということで、弁護人の点検なくして直接量刑にかかわっていく。そして量刑、これは現実に我が法定刑にあるわけですが、死刑か無期か、この一点に被告人の関心が集まっているときに弁護人の任務として何をすべきなのか。例えば中庸なるものを求めて、具体的な被害者の応報感情、またキリストのような被害者の心情を我々の現世のこの法廷に反映させるのではなくて、今の社会の状況、心理から見て、この犯罪、この被害に対してはこれが中庸な量刑であろうということを求めるのが刑事訴訟の本義とするならば、量刑の段階で、弁護士、弁護人は被害者権利といかにかかわるのかと思います。  木島委員が言われたように、私も刑事弁護のときは、この被害者の言っていることに大げさはないのかと点検します。そして、当事者訴訟ですから弁護士の任務はただ一点、検察官が持ってきたことに対して被告人に、この被告人も人の子である、有利なことは法廷にすべて出すのが我が任務である、国選であると私選であるとを問わずこの方向でやっている。  弁護士として非常に悩む。位置づけられない。被害者権利性を、言うのは易しいです、現実に、死刑になるか無期になるかの被告人の依頼を受けた人間が弁護士の職務の正当性においてどのようにかかわるのか、これについて御意見をお伺いしたいと存じます。
  41. 児玉公男

    児玉参考人 先ほども申し上げましたように、委員の御指摘、いろいろなケースが考えられると思いますが、有罪か無罪かを争っている場合につきましては刑事弁護人は被告人のみのために、ただただ被告人のために全力を尽くすべきであると考えます。それは個人としての意見、個人の、弁護士としての意見でございます。  しかしながら、被害者に対して執拗な、また心を傷つけるような質問をやるということについては、弁護人としては自制をすべきであると考えております。  ただ、先ほど申しましたように、被害者等の心情その他の陳述権に基づく陳述につきましても、やはり刑事弁護の有罪、無罪ということにも関係する場合もございますので、その趣旨を明確にするためには弁護人も質問をすることができるという法案になっておりまして、その限度で、これで十分かどうか、反対尋問権ではないので十分かどうかわかりませんが、被害者の方の心情その他の被告事件に関する意見陳述については、その趣旨を明確にする質問が許されることになっております。  以上でございます。
  42. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 被害者保護というその大前提をもって刑事被告人の弁護人がいかに関与するのかというのは、弁護士会においてやはりマニュアル等々の研修が必要だと思いますので、どうかよろしくお願いします。  諸澤先生の先ほどのお話の中に、被害者教育というものは今の学校等のいじめの問題にも非常に有効であるというふうに一言おっしゃいましたので、もう少し、あと五分以内でございますが、ちょっとお教えいただけませんでしょうか。
  43. 諸澤英道

    ○諸澤参考人 お答え申し上げます。  被害者教育といいますのは、いろいろな理論とか仕組みをお話しするわけでございませんで、被害者の立場になって物事を見るという目を育てるということでございます。  これは先ほど児玉参考人に対する別の委員からの御質問にもございましたが、社会的意味は何だというところにも関連いたしますけれども、そして私が冒頭申し上げたことにも関連いたしますが、この被害者問題というのはいわゆる国民挙げてといいますか、人々の意識を変えなければいけない、あるいは変わることが大事だという大前提がございます。  世の中には被害者に対する予断と偏見が非常に大きく渦巻いております。私もこの偏見の問題について二十年間取り組んで、いろいろデータを得ておりますけれども、特に我が国被害者に対する偏見が強いと理解しております。被害者に対して、何かしたからやられたのではなかろうかという発想でございます。そういう発想を変えていく必要がある。そのために、政府みずからが世論を起こしていくような取り組みをしなければいけない。  ということから、いろいろ具体例が考えられると思いますけれども、その最も初期の段階として小学校、中学校の教育段階で、例えば何かをしたときに、された側の立場に立って考えたらこれはどうなんだということを考える機会を与えるということでございます。  これは、もちろん理論的にはいろいろなことを言われますけれども、現場で急にできるかという話があるわけですけれども、そうではございませんで、被害者支援がボランティアベースで着実に広がっていく、我が国でも広がり始めた。その基本は、自分がもし被害者の立場になったら何を求めているのだろうか、そしてどういうことをしたら喜んでもらえるのだろうかというようなことを考えることから始まっておりまして、そういう被害者の立場になって物事を考えるという思考方法を小さいうちから身につけていく。そのことは社会性を身につける上で非常に大事だと考えられております。  実は、いじめというのは、自分のことだけを考えていじめられている人間のことを全く考えていない、そういう人間の間で行われているわけでありまして、そういう意味で、初等教育あるいは幼児教育段階でそういう意識を育てるようなことをぜひお願いしたいと考えております。
  44. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 ありがとうございました。これで質問を終えさせていただきます。
  45. 武部勤

  46. 保坂展人

    ○保坂委員 社会民主党の保坂展人です。  まず、両参考人に伺いたいのですが、私も裁判における優先傍聴、これは画期的なことだと思います。  やや私の体験を話させていただきたいのですけれども、これは刑事裁判ではありません、内申書裁判という民事裁判です。これは十六歳のときから三十二歳のときまで、最高裁の最後最後まで行ったわけですけれども、その際に非常に大きな壁となったのは、最後の判決をやはり当事者は直接その法廷で聞きたい、これは当然あるわけですが、最高裁の従前の扱いでは、大法廷以外の小法廷判決も当事者に告知の必要なし、なぜか新聞社やマスコミはこれを知っているというおかしな扱いだったんですね。  これは私、国会初質問、一回目で質問しまして、前日の最高裁の裁判官会議で最高裁の規則が変更されて、現在は民事裁判の小法廷判決も告知がされるようにもうなっているはずなので、これは喜ばしいことなんですが、しかし、民事の場合に、判決の場合は告知されるのですが、決定はされないということであります。  その際に随分裁判所とやりとりをしたのですが、刑事裁判でも多くの事件が決定として処理されているはずです。この場合、犯罪被害者の方が最終的に最高裁まで争われて、どうなんだというときに、決定は現行の扱いでも告知していないはずなんですね。  こうなると、優先傍聴といっても、被害者公判があること自体を知らないわけですから、最高裁判所の論理は、毎日来て札を見てくれれば公表している、こういうふざけた議論でありまして、今回の法改正で、裁判長が、公判手続の傍聴の申し出があるときに、傍聴席などその他の事情を勘案しつつ傍聴できるように配慮しなければならないということをきちっと読めば、これは決定であろうが何であろうがちゃんと最高裁も知らせるんだというふうに改革してもらわなければ困るというふうに思うのですが、両参考人の御意見を伺いたいと思います。
  47. 諸澤英道

    ○諸澤参考人 今御質問の件でございますけれども、基本的にはそうだと考えております。ただ、最高裁判所のレベルで告知ということがどうなのかというのはにわかに判断できない要素を持っているのかなという気がしているわけでございますけれども、基本的には、冒頭申し上げましたように、裁判の段階での情報開示の問題は、裁判所に出向けば、これは判事である必要はございませんが、書記官でも事務官でもいいわけですけれども、担当者が説明をしてくれるという状態をつくるべきだというふうに言われております。  したがって、その考え方で、最高裁判所段階でも当然、判決を傍聴するとかいうことは制度上無理だとか、あるいは告知が出されているか出されていないかという問題があるかと存じますけれども、少なくとも、最高裁レベルであっても、出向けばその場で担当者がちゃんと決定についてあるいは判決について説明をしてくれるという状態を保障すべきであろうと考えております。
  48. 児玉公男

    児玉参考人 諸澤参考人と同一の意見でございますが、いわゆる最終判断が決定でなされるという場面については、委員御指摘のように、十分被害者の方が知る必要がある事案だろうと思います。  それと同時に、この法律にはございませんが、警察及び検察の通知連絡制度が私の予想よりも進んできている。被害者の方に、警察段階ではこうなっています、検察段階ではこうなっています、裁判所段階ではこうなっていますという通知連絡制度がしっかりすれば、委員御指摘のようなことも相当改善されるのではないかと考えております。  ただ、先ほど諸澤先生が御指摘になりましたように、警察、検察、裁判がばらばらにやっていてはいけないので、やはり牽連性といいますか連続性といいますか、そういうものが非常に大事で、それぞれの役所がばらばら別々にやるのではなくて、警察から検察に移った場合、検察が起訴して裁判になった場合という連続性がスムーズにいくように努めれば、少なくとも最終決定判断である、手続上の決定や命令以外の最終決定になる決定というものについてはぴしっと被害者の方にお知らせができるし、裁判所の広報活動、尋ねに来れば親切にお答えをするという運用上の制度確立が望まれるところであろうと考えております。  以上でございます。
  49. 保坂展人

    ○保坂委員 ありがとうございました。  私は、民事裁判でどうしても判決の日が知りたい、そこにいたいと思いまして、最高裁の事務当局とその当時随分やり合いまして、答えは週に二回見に来いということだったのですね。九時半に札を出す、それで十時半から法廷を開くのですね。電話連絡網で何人来られるかとやって、三年か四年やったでしょうか。そういう思いがあるものですから、そして、ついに判決の日にコートに入ったわけですけれども、入ったときに、だれも来たことがないのですね。ですから、上告人と被上告人の席を間違えてしまって反対の方に座らされて、裁判長が気づいて、そこは違いますよと言って中断するなんという一幕もあったのですけれども、実に、犯罪被害者は、民事裁判で最終判断で最高裁判決を待つということもその当時もあったでしょうし、そういうことについてはこれからもぜひ熱心な議論をお願いをしたいと思います。  次に、検察審査会法改正問題なんですが、これは、片山隼君という小学生がトラックにひかれて亡くなった。御両親がさまざまな努力をして、検察審査会の議決を得たわけですけれども、その議決書をいただいたときに私も一緒に見させていただいて、その被害をこうむった者の規定が、これは片山隼くんという亡くなった少年自身なんだ、あなたはその資格者じゃないですよと書いてあるわけですね、だから却下するんだと。それで、審査会では審査を職権によって開始したからいいのですけれども、犯罪被害者あるいは交通事故でお子さんを失ったという痛ましい体験をした方が、議決書の頭書きのところで、要するに申し立て権はなくて、申し立て権は亡くなった子ですよなんというようなことがどうして放置されてきたのかなという思い。  そしてもう一つは、どうせ変えるんであれば、当然、請求権者を拡大したわけですけれども、資料を出すことができるというところに広がったわけですが、書面や資料を説明したり意見陳述したりする部分も加えてはどうなのかな、あるいは不起訴相当などの議決が出て、その議決に対して告知とともに不服申し立てができるような制度確立するなど、もう少し工夫が必要だったのではないかという思いがありますが、両参考人に御意見を伺いたいと思います。
  50. 諸澤英道

    ○諸澤参考人 不服申し立てというのはあるいは一つのいい方法かなと思いますが、私の個人的な考え方としては、むしろ検察審査会の結論に何らかの拘束力を持たせるべきだというふうに考えております。  それからもう一つは、検察審査会の場に被害者等が出向いて聞き取りをしてもらえる、そういう場を保障すべきだろうというふうに考えております。
  51. 児玉公男

    児玉参考人 検察審査会法、遺族等申し立て者を広げたのは一歩前進だと思いますけれども、諸澤先生御指摘のように、権限を強化するかどうか、審査会の決定にある程度拘束力を持たせるかどうかというのは大変大問題でございまして、現在はいわゆる公訴権はすべて検察官が握っておる、起訴、不起訴、握っておるということを制約するということになります。  そのためには、個人的意見でございますが、やはり審査会自体の機能が現行ではちょっと弱体ではないかなと。もちろん、国民の広い層がいらっしゃると同時に、事案によってはお医者さんであろうし、法律問題なら弁護士とかカウンセラーの方とか、やはり参審のように専門的知識のある方も入り相当内容を充実させませんと、なかなか改正に踏み切れないかなと。日弁連の中では、そういうきちっとした審議をして決定をしたような決定について検察庁が応じないというのはいかぬ、拘束力を持たせようという議論もございますけれども、いろいろ広く実態を調べていきますとまだまだ問題点が多いものですから、なお今後、研究、討議をさせていただきたい、このように考えております。
  52. 保坂展人

    ○保坂委員 諸澤参考人に伺いますが、私も法的拘束力を持たせるべきだと思っております。特に、交通事故が多発しております。そして、死亡事故でも捜査が途中でとまってしまったり、あるいは捜査自体に前提となる事実誤認があったりというケースが多々ございます。それを、遺族が丹念な努力で証拠収集をして、例えば鑑定をお医者さんに頼んだりとか有力な証拠を所持している場合でも、審査会の議決がどんな捜査資料によってなされたのか、だれの参考意見、調査されたのか、全然明らかにされない。したがって、遺族の側のいわば自己調査というか自己捜査というか、お子さんを亡くされた御両親が必死の思いで調べられる、そういう声がなかなか届かないということもあります。そのあたりの情報開示の点もあわせてもう一度御意見を伺います。
  53. 諸澤英道

    ○諸澤参考人 お答え申し上げます。  私は、そもそも公訴権というものが見直されるべき時期にあるのではなかろうかということも考えております。  といいますのは、これは公訴権だけではなくて、むしろ、ある意味では刑事司法全体の中で裁量権が余りにも多過ぎるのではなかろうかというふうに考えております。昨今問題になっております警察をめぐる問題も、実はこの裁量の中で従来取り扱われている部分がかなりございます。そして、被害者がそれに対していろいろクレームといいますか、意見を言い出した。その中からいろいろな事実が明るみに出て、あるいは場合によっては違法とか服務違反が出てきて、そしてこういう問題になっているんだろうというふうに思いますけれども、警察、検察、それに限りませんけれども、このレベルにおけるいわゆる刑事司法のキャスチングボートを握っている方々の裁量権が余りにも大き過ぎるというふうに私は考えております。  むしろそうではなくて、欧米並みに、自由裁量ではなくて法規裁量、法律である程度条件を決めて、その条件を満たしたものについては必ずしかるべき処置をしなければいけないという程度に改めるべきだというふうに考えております。  そういうものの中の一環として、検察審査会というものも公訴権をチェックする機能が本来は期待されるべきにもかかわらず、公訴権がうたわれているために、そこがかなり大幅に制限されているというふうに考えます。  さらに、もう一つ御指摘の情報開示部分についてでございますけれども、この部分については、私も長年相当数の、千人を超える被害者、遺族の方とのつき合いがございまして、その中で、今委員がおっしゃったようなケースをかなり知っているわけですけれども、これはやはり、情報開示されなければそういう事実もなかなか出てこないということだと感じております。
  54. 保坂展人

    ○保坂委員 大変貴重な御意見、ありがとうございました。  以上で質問を終わります。
  55. 武部勤

    武部委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  この際、両参考人に一言御礼を申し上げます。  両参考人には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  この際、暫時休憩いたします。     午前十一時五十二分休憩      ————◇—————     午後二時四十六分開議
  56. 武部勤

    武部委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  内閣提出刑事訴訟法及び検察審査会法の一部を改正する法律案犯罪被害者等保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律案及び北村哲男君外三名提出犯罪被害者基本法案の各案を議題とし、審査を続行いたします。  この際、お諮りいたします。  各案審査のため、本日、政府参考人として内閣法制局第一部長阪田雅裕君、警察庁長官官房総務審議官吉村博人君、警察庁生活安全局長黒澤正和君、警察庁刑事局長林則清君、法務省民事局長細川清君、法務省刑事局長古田佑紀君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  57. 武部勤

    武部委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  58. 武部勤

    武部委員長 次に、お諮りいたします。  本日、最高裁判所白木刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  59. 武部勤

    武部委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  60. 武部勤

    武部委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。枝野幸男君。
  61. 枝野幸男

    ○枝野委員 民主党の枝野でございます。  本題から入っていって一番最後に付随的に聞くのが筋なんだと思うんですが、法制局にわざわざおいでいただいて、三十分以上お待ちいただくのはなんですので、ちょっと本題ではない方から先に聞かせていただきたいと思います。いろいろ言いわけいたしますが、余り個人的には趣味ではないんですが、党の中の役目柄、ちょっとこれを聞いておかないといけないものですから。  内閣法九条に、総理大臣に事故あるときというのと、欠けたときという二つの文言があります。それぞれの、法制局としての定義をお願いいたします。
  62. 阪田雅裕

    ○阪田政府参考人 内閣法九条は、今先生御指摘のように、「欠けたとき」と「事故のあるとき」とを併記しておりまして、そして、いずれもこれは内閣総理大臣の臨時代理が職務を開始する要件ということでありますので、その区別にそれほど意味があるわけではないとは思いますけれども、一応考え方を申し上げますと、まず、「欠けたとき」でありますけれども、典型的には内閣総理大臣が死亡した場合、あるいは国会議員たる地位を失ったときなどのように、将来にわたって内閣総理大臣としての職務を執行することができない状態になったときをいうというふうに考えております。  それに対しまして、「事故のあるとき」につきましては、内閣総理大臣が総理としての職務を全般的に行うことができないような状態が一時的に生じたときを指すということで、例えば海外出張、病気入院などがその典型的な例であるというふうに考えております。
  63. 枝野幸男

    ○枝野委員 内閣法九条に「欠けたとき」とある規定と、憲法にも「内閣総理大臣が欠けたとき」という規定があります。憲法の「欠けたとき」と内閣法の「欠けたとき」は、違いがあるんでしょうか、ないんでしょうか。
  64. 阪田雅裕

    ○阪田政府参考人 同じ意味で使われているというふうに考えております。
  65. 枝野幸男

    ○枝野委員 内閣法九条は、事故あるとき、欠けたときは、そのあらかじめ指定する国務大臣が臨時代理ということを規定しておりますが、あらかじめの指定がない状態で事故が生じたとき、または欠けた場合にはどういうふうになるというのが内閣法九条の解釈でしょうか。
  66. 阪田雅裕

    ○阪田政府参考人 御指摘の点につきましては、これまでも何回か御議論があり、歴代の内閣法制局長官等が国会においても御答弁申し上げてきたところでありますけれども、万が一そのような事態が生じた場合には、総理大臣以外の閣僚が協議した上で臨時代理を決めるというほかに方法がないし、また、そのような方法で決めることが、これは条理上許されるというふうにお答えしてきているところであります。
  67. 枝野幸男

    ○枝野委員 ごめんなさい。そこまで通告していなかったんですが、今、協議という言い方をしましたが、総理大臣が事故あったり欠けているわけですから閣議そのものにはならないけれども、総理大臣を除く閣議構成メンバーで協議をする、こういう理解でよろしいですね。
  68. 阪田雅裕

    ○阪田政府参考人 お説のとおりであります。
  69. 枝野幸男

    ○枝野委員 では、逆に、あらかじめの指定についてお尋ねをしたいのですが、このあらかじめの指定というのは何の行為なんでしょうか。つまり、広い意味での行政行為なんだろうと思いますが、人事の発令なんでしょうか、それとも、何なんでしょうか、説明をするとすれば。例えば、大学の行政法の学生に説明をするとすれば、どういう行為だということになるんでしょうか。
  70. 阪田雅裕

    ○阪田政府参考人 今の御指摘の指定でありますけれども、事柄としては、特定の国務大臣を、一定の場合に内閣総理大臣にかわってその職務を行うという立場、いわゆる法定代理ということでありますけれども、法定代理の代理者の地位に置くという行為であります。少し古いのかもしれないのですけれども、講学上、あえて申し上げますと、形成的な行政行為、形成的な行為というふうに考えることができるかと思います。
  71. 枝野幸男

    ○枝野委員 通告していなかったので、もしお答えになれなければいいのですが、今、指定が形成的行政行為とおっしゃいました。この場合、臨時に総理大臣の職務を行うという立場につくのは、事故があったときや欠けたときに自動的になるんでしょうか。あるいは、何かの手続が必要なんでしょうか、内閣法九条の解釈としては。
  72. 阪田雅裕

    ○阪田政府参考人 指定はあらかじめなされる必要があるわけでありますけれども、内閣法九条の規定によって内閣総理大臣の職務を臨時に行うことになるのは、事故の発生あるいは欠けたことという状態の発生をもって自動的に始まるというふうに理解されております。
  73. 枝野幸男

    ○枝野委員 ということは、青木官房長官はどの段階から臨時代理だったのかというのは、これは後でまた青木官房長官と別の場でやろうと思っているのです。それから、先ほどのお話ですと、今回の件も閣議にかわる協議を行えばよかったのかなというふうに思っているのですが、ここから先は別の場でやりたいと思いますので、法制局の方、御質問は以上でございますので、もし次の御予定があれば、結構でございます。ありがとうございます。  さて、犯罪被害者の本体の話に入りたいというふうに思うのでありますが、犯罪被害者の立場を守るということでは、非常に幅広く、いろいろな意味、問題が含まれていると思います。  個人的には、犯罪被害者という視点、桶川というのは私のもとの中選挙区ですし、今住んでいるところの隣の隣の町なものですから、私にとっては大変大きく受けとめざるを得ない事件であります。この事件でも、告訴をしていたんだけれども、きちんと受け取ってくれていたのか、くれていなかったのか、よくわからないような状況でもあります。  それから、私自身、弁護士をやっておりますときに、東京地検の特捜部に、二件ほどだったと思いますが、刑事告訴の代理を行ったことがありますが、何度も事前折衝した上で受理をしていただいたというプロセスを持っております。  この告訴の受理というのは、どの段階で、どういう条件で効力が発生するのかということについて、これはどうなんでしょう、両方にお尋ねした方がいいのでしょうか、警察にお尋ねをすればいいのでしょうか。     〔委員長退席、杉浦委員長代理着席〕
  74. 林則清

    ○林政府参考人 告訴の受理でございますけれども、御案内のとおり、告訴というのは検察官、司法警察員に対してなすものであります。  警察の場合でありますと、司法巡査は除きます、司法警察員に対して、犯罪事実を申告して犯人の処罰を求める意思を表示するという行為がなされた場合に、司法警察員がその要件を確認して受理をする、その段階が理論的には受理ということになります。  告訴は、これも御案内のとおり、口頭でなされることも可能でありますけれども、通常の場合には告訴状という書面でなされる。この場合について、今先生東京地検の例を挙げられましたけれども、警察も同じでありまして、告訴状が、書面が出ただけでは、今申し上げました告訴の要件が整っておるかどうか。  具体的に言えば、本当の処罰意思というものがあるのかどうなのか、それから犯罪事実というのが十分に認められるのかどうなのか、構成されているのかどうなのかということが確認がなかなかできない場合も多いわけでありまして、そのために、付随して、疎明資料の提供でありますとか口頭の説明を求めて、そういった場合には、その上で告訴を有効なものと認めて正規に受理する、この段階がいわゆる告訴の受理ということであろうというふうに思っております。
  75. 山本有二

    山本(有)政務次官 一般論として申し上げれば、告訴と言えるためには、特定した犯罪事実を申告して、その犯人の処罰を求める意思表示をすることが必要でございます。理論的には、そのような告訴が捜査機関に到達したときに告訴の効力が生じるものと考えられます。  しかしながら、実際上は、犯罪事実の特定性や犯人に対する処罰意思の明確でない告訴がなされることがあるため、告訴状が提出された後、捜査機関において告訴の要件を点検する必要がございます。そのため、告訴の要件を満たしていることを確認したときに当該告訴状を受理する手続を行うこととしておりまして、実務上、そのときに告訴の効力が生じたものとして取り扱っているところでございます。
  76. 枝野幸男

    ○枝野委員 今のお答えで、幾つかあれというところがあるのです。  まず一点、警察の方にお尋ねしますが、疎明資料云々という話が途中で入ってきましたが、疎明することは告訴受理の要件ではありませんね。一応、念のために御確認を。
  77. 林則清

    ○林政府参考人 全くおっしゃるとおりであります。その有効要件を確認するための補助手段みたいなものでございます。
  78. 枝野幸男

    ○枝野委員 それで、要件がそろっている告訴状を受理しても、いろいろ説明を聞いたり疎明資料をもらったりしなければ実際に捜査が前に進みませんので意味がないんだということはよくわかるのです。  まず、法律論としての話なんですが、法律論とすれば、犯罪事実、構成要件などがしっかりと書かれて、処罰の意思があればいいわけですから、内容証明郵便で検察官か司法警察員に送達をすれば告訴は有効に受理された、こういう理解でよろしいですね。
  79. 林則清

    ○林政府参考人 内容証明つき郵便で云々ということでございますけれども、内容証明つき郵便でありますれば、理論的には先生の言われるような点は認められると思いますけれども、先ほど言いました、本当に処罰意思があるんだろうか、あるいは、中には本人に確かめてみませんと犯罪事実の構成にも不十分なところがあるというようなことで、実務の扱いといたしましては、直接に判例はございませんけれども、真正に作成されたものであるのか、要件が整っているものであるのかということを確認するために、現実には、郵送された場合には、その郵送した方に警察署であれば署へ来ていただいて、直接にお話を伺って受理しておるというのが現状でございます。
  80. 山本有二

    山本(有)政務次官 理論的には、到達したときに告訴の効力が生ずるもの、こう考えております。
  81. 枝野幸男

    ○枝野委員 法務省のお答えはいいんですが、理論的には、着いたものが、もしかしたら別の人が勝手に書いているのかもしれないとかいろいろなことがありますけれども、真正なものであれば、しかも弁護士なんかが代理人としてきちんと書いていれば効力は生じますとおっしゃっていただかないと、内容証明郵便がついたことで、例えば民事上の解約とかなんとかの効力も全部生じているわけですから、みんなごちゃごちゃになっちゃうんですが、実務的な話についてはこれからしますが、法理論上は、内容証明郵便で、きちんと要件が書かれていて、本人が書いたもので、出したもので、処罰の意思があれば効力は生じるということで、法務省の見解でよろしいですね。
  82. 林則清

    ○林政府参考人 理論的には先生のおっしゃるとおりだと思います。
  83. 枝野幸男

    ○枝野委員 さて、ここからが実態的にどうしたらいいかという話なんですけれども、確かに、単に告訴状、特に内容証明なんかで送りつけても、それだけでは実際に捜査が有効に機能をして犯人逮捕にまで結びつけてもらえるわけはないというのは一方であるわけですから、多くのケースについて今のような実態的な実務が行われてきていることについて私は否定をするつもりはありません。ありませんが、現実に、この桶川の事件のケースなどというようなことを考えると、被害者の側からすれば、告訴の意思も明確だし、具体的な告訴の犯罪事実も明確なのだけれども、受けとめても動いてくれないということについて、残念ながら、今、そういうことがたくさんあるようだという不信感が国民の間でたくさんあるわけですね。どうせ警察に言いに行ったって桶川みたいなことになってしまったのではということで、ある意味では、これは順序はどちらか、いろいろあるようですが、名古屋の五千万円の話だなんというのは似たような話でありますね、つまり警察に言ったってどうせ動いてくれないのだからということでは。  その被害者や潜在的被害者被害に遭った場合にどう動くかという国民の感情ということを一方で考え、なおかつ警察の側においても、つまり正式な告訴が届いていたら、それはそれで、事件として犯人逮捕までいくかどうかは、被害者と会っていろいろしなければ犯人逮捕までいくかどうかは当然いかないわけですけれども、少なくとも、あ、これは正式の告訴なのだ、警察署に駆け込んできて、大変なんです、助けてくださいという話とは違うし、実は我々のところなんかも時々来るのですけれども、こんな被害に遭っていて困っているのですと犯罪事実がよくわからないような文書が警察に来ているという話とは違って、少なくとも形式上犯罪事実が明示をされ処罰の意思が示されている適式な告訴状が来たら、警察としても、これはちゃんと処理しないと後で大変なことになるぞというインセンティブを与えていくという意味では、それは実際には受理をしてから、実は受理前にするべきいろいろな打ち合わせをしなければならないことにはなるのでしょうが、一般的に、まずは内容証明郵便で、あるいは内容証明郵便と厳格にすることはないです、極端な例を言ったので。  例えば、代理人でもついていたら、弁護士にきちんと法律要件、最低限の要件だけはまず出してくださいと。まず出してもらったら、そこから御相談をして捜査に入っていきますということを先にやるという例をかなり取り込んでいった方が、今までのようにいろいろ御相談をして、これは事件になるならないということを実は受理の前の段階でスクリーニングをかけてしまっているという現実もわからないじゃないです、全然わけのわからない、告訴にならない案件を持ち込まれたらということはよくわかるのですが、桶川の反省を踏まえて、今の警察に対する信頼を回復する、警察に対してもインセンティブを与えるという意味では、もっと柔軟に、まずは告訴状、形式的だけだけれども告訴状を出してもらって、告訴としての受理をした上で、そこから、では、具体的にどう捜査していきましょうかねという御相談をする、こういう対応をもっとやるべきじゃないでしょうか、どうですか。
  84. 林則清

    ○林政府参考人 ただいま先生おっしゃったとおりであります。  告訴があろうがなかろうが、捜査すべきものを認知した場合には、これは迅速に捜査するのが本来のあり方であります。したがいまして、親告罪の場合には、これは告訴は要件になりますけれども、普通の告訴権の行使としてされるものについては、その告訴があろうとなかろうと、要するに犯罪が成立しておれば、それについて迅速に捜査するというのはおっしゃるとおりでありますし、また私ども長い捜査の経験では、現実の問題として、捜査を非常に進めて、それから告訴をいただいておるというケースも多々あるわけでございます。  したがいまして、告訴事件に限らず、おっしゃるように、捜査すべきものはその告訴のあるなしにかかわらず捜査する。あるいは、告訴が必要なものでありましても、例えば名誉毀損の親告罪でありましたら、その起訴の段階で必要にはなりましょうけれども、それ以前でも、強制捜査は親告罪であるから慎重でなければならないにしても、捜査は一刻も早くやるというのは当然あるべき姿であろうと思っております。
  85. 枝野幸男

    ○枝野委員 私の説明がよくなかったのか、それとも意図的にずらしていらっしゃるのかわからないのですが、私が申し上げているのは、まさにそういうことでやってこられたのですが、そして大部分の場合は、きちんと申告があったら正式の告訴じゃなくても捜査をして、そしてある段階で正式な告訴として受けるという手順を今までずっとなさってこられたわけですね。  それはそれで原則として結構なんですが、今の桶川事件や、あるいは名古屋でしたか、五千万円の恐喝事件とか、警察に言っても動いてくれないじゃないかという不信感が現に残念ながら生じているという状況を前提にして考えると、では、本当に処罰の意思が強いのでしたらば、まずは告訴状をきちんと出してもらえば、それは正式の告訴ですから、これはたしか捜査の結果を通知するとかという義務が生じますね。つまり、被害届とは違う責任と義務が法的に生じる。  今まででも、法的義務が生じなくても九九%のケースはちゃんとなさっていたのでしょうが、こういう信頼を失っている状態だから、では、わかりました、ちゃんとやります、ちゃんとやるに当たっては、信頼していただくために、と警察から言っていただくかどうかは別として、では、まずは告訴状をばんと出しちゃいます、その上で、具体的にどこをどう捜査していいのかということは、被害者の方、相談してくださいという扱いをもっともっと使っていくということを、少なくとも当面はされた方が、動いてくれないという不安に対して、不信に対して、一つの対応になるのじゃないかということを申し上げているのです。
  86. 林則清

    ○林政府参考人 私が先ほど答えたのも先生のその趣旨を十分理解した上のつもりでございます。  基本的には、そういった告訴事案でありましても、これは一種の捜査のセンスの問題でありまして、早く動かなければちゃんと捜査を全うできないというセンスを持って、もっと俗な言葉で言えば、本当に被害者のためにやる気を持って捜査をするかどうかという問題であります。形式上、告訴があるからないからという問題ではないということで、先生の今御指摘があったことをもうちょっと全国の第一線の警察官に徹底してまいりたいというふうに思っております。
  87. 枝野幸男

    ○枝野委員 わかります。それは徹底していただきたいのですが、多分ちょっとずれているのは、実質的にしっかりと対応していただくということ、要するにきちんと動くということと、きちんと動いているように外から見えるということは別のことですので、きちんと九九%動いていても、そして桶川の事件の反省とか五千万円の恐喝事件の反省とかでますますきちんとされるという実態は実態として徹底していただくとしても、実態がきちんとしていることと、外からきちんと見えるということはまた別問題ですね。  行政機関、ましてや警察のような機関というのは、実際にしっかりやっているということと同時に、同じくらい外からしっかりやっていると見えることも大事なことだと思うんです。今私が取り上げているのは、実際にしっかりやっているかどうかという問題以上に、むしろ外からしっかり見えるかということについて問題として取り上げているのです。告訴があろうがなかろうがちゃんと動きます、そのことで徹底します、これは中身がしっかりしているかどうかの話です。外からしっかりしているように見えるようになるための一つの手段としては、それは中身がしっかりしていることは前提なんですが、いわゆる法的な処理の必要のない被害の申告とか被害届だけではなくて、法的処理を要する告訴ということであれば、これは告訴件数などというのは多分統計上も出てきたりするのでしょうから、告訴されているのに全然動いていないじゃないかとかということになったりすると問題になるから、それは外圧としてもやらざるを得ないですね。あるいは、最終的に被害者に通知をするのですから、そういう意味でもちゃんとやらなきゃいけないですねということです。  やる、やらないという中身のことじゃなくて、外から信頼されるかどうかという意味で、最初に告訴を受理しちゃえ、告訴という形式を最初に踏んじゃえと、全部が全部と言っていませんよ、場合によってはそういうケースももっときちんと柔軟にやった方がいいのじゃないかということなんです。
  88. 林則清

    ○林政府参考人 先生のおっしゃる意味はよくわかりました。  ただ、告訴として正規に受理するからには、先生がおっしゃいましたように、通常の被害届その他と違いまして法的な捜査義務というものが生ずるわけであります。  それで、告訴はそういう一つ被害者あるいは国民の公権でありますから、これを受理してその義務を負うためには、先ほど言いました処罰意思と犯罪事実というものが整っておるかというものは最低の要件として、これが整っておるものについて、はっきり言えば、俗な言葉で言えば、ああだこうだ言わないで、そういうものが整っておると認められたら迅速に受理をして、そして捜査を進める。  このことについては、お説のようなことにつきましては、過去も通達等を発しておりましたけれども、今回厳重にその趣旨を通達を発しまして、要件の整った告訴については積極的に受理して迅速に処理するようにということを徹底させてまいりたいというふうに思っております。
  89. 枝野幸男

    ○枝野委員 ありがとうございます。そういうお答えが欲しかったのです。  そして、告訴状と称して来るものの中には、多分告訴の要件を満たしていないものの方がむしろ圧倒的多数なんだろうということは想像にかたくありません。そういった意味では、犯罪被害者をそういう視点から守るためには、これはここで言ってもしようがないのですけれども、弁護士などの役割が物すごく重要なんだろう。  つまり、犯罪の容疑者で逮捕されたり起訴されたりした人に対しては、法律扶助の部分もありますし国選弁護などの部分もありますが、きちんと犯罪事実を法律的に構成をして、処罰意思を整理して、警察なり検察なりにしっかりと形式の整った告訴状を出すということを、例えば弁護士がバックアップして出してあげれば、警察なり検察なりも法的な責任として捜査義務が生じます。だから、ここまで受理をさせたのだから、後はちゃんと警察に協力をしてうまくやれば、それは動いてくれますよ、大丈夫ですよ、桶川みたいなケースは本当にレアケースですよという話で、まず被害者のスタートの段階での信頼を取り戻せるし、そこの部分での被害者の救済というか一歩が進むのじゃないかなということだと思います。  さて、それでは先へ進みたいと思うのですが、今回の法律の中でも、犯罪被害者刑事手続への参加が大きな争点になっております。それから、従来の制度の中にも犯罪被害者への情報提供という制度はあります。  そこで、その現状と運用についてお尋ねをさせていただきたいのですが、犯罪被害者に対する情報提供の制度の現状とその運用の実態について、これは捜査段階と起訴段階と両方あると思いますので、まず警察庁そして法務省ということでお答えをいただければと思います。
  90. 林則清

    ○林政府参考人 まず、犯罪被害者に対する通知ということでございますけれども、従来から警察におきましては被害者への連絡ということを実施してきたところでありますが、犯人を逮捕したときでありますとか検察庁へ送致したときなどに、被害者への連絡をより確実にする、また被害者からの照会にも適切に対応できるようにするために、平成八年に警察庁被害者連絡実施要領というものを定めまして、各都道府県警察において被害者連絡というものが実施されております。  この被害者連絡制度は、被害者から事情聴取を行った捜査員等のその事件の担当捜査員が、被害者やその御遺族に捜査状況や検挙状況を連絡するというものでありますけれども、被害者や御遺族の意向に反するという場合もありますし、捜査に支障を及ぼすおそれがあるというようなときには、例外的に行っておりません。  連絡の時期につきましては、検挙の場合には検挙後速やかに、また検挙に至っていない場合には原則として被害申告後おおむね二カ月を経過した時点で、捜査状況の連絡を行っております。  各都道府県警察から警察庁に報告のありました被害者連絡を実施した被害者数は、平成十一年で、刑事事件が約三万一千人、それから交通事件が約二万八千人というふうになっておる現状でございます。
  91. 山本有二

    山本(有)政務次官 検察庁の被害者等通知制度におきましては、犯罪の種類にかかわらず、検察官が被害者の取り調べなどを実施したとき通知の希望の有無を確認し、希望する方に対し事件の処理結果などを通知することとしております。  また、取り調べなどをしなかった場合にも、被害者が死亡した事件またはこれに準ずる重大事件につきましては、検察官から被害者の方などに連絡をとって通知の希望の有無を確認し、希望があれば同様の通知を行うこととしております。  このほか、被害者の方や弁護士であるその代理人から事件の処理結果などの照会があったときは、これらの方に対し通知を行うこととしているところでございます。  次に、通知の方法といたしましては、口頭または文書その他適宜の方法により行うこととしており、実際には文書によって通知する例が多く、その際は通知者の連絡先も記載しているものと承知しております。  また、通知内容といたしましては、起訴、不起訴などの事件の処理結果、公判期日、刑事裁判の結果などを通知するほか、公訴事実の要旨、不起訴裁定の主文や理由の骨子、勾留及び保釈等の身柄の状況、公判経過なども被害者の方などの希望に応じ通知することができるものとしております。  運用の面についてのお尋ねでございますが、検察庁における被害者等通知制度の実施状況についてでございます。  一年間の通知状況でございますが、現在集計作業中でございます。平成十一年四月から昨年末までに全国の検察庁において通知した通知件数は、三万人を超えております。被害者から同制度を評価するコメント等も寄せられておりまして、今のところ順調に実施されているものと承知しております。
  92. 枝野幸男

    ○枝野委員 今の話で、ちょっとわかったようなわからないようなところがあるのです。つまり、通知をするべき犯罪というか範囲が、警察までは通知されていたのだけれども、起訴されたら通知されないとかということがあったり、あるいは逆のことがあっても何かおかしな話になるのだと思うのです。  警察としての通知制度検察としての通知制度との整合性といいますか、範囲についての整理というか、これはどういうふうになっておるのでしょうか。
  93. 林則清

    ○林政府参考人 お答えいたします。  警察庁の定めております被害者連絡実施要領におきましては、必ずしなければいけないというふうに定めておりますのが、殺人や傷害、強姦といった身体犯、それから交通死亡事故及びひき逃げ事件、これを、必要的といいますか、必ずやらなければならない被害者連絡の対象事件ということで全国一律に定めております。  実際の運用におきましては、これら以外の事件につきましても、それぞれの都道府県の実情に応じて、放火でありますとか窃盗、こういったものも対象事件にして定めており、その情報提供を行っておる。  先ほど山本次官から法務省の方の説明がありましたが、私ども承知しておりますのは、検察の方では、希望される者とその他一定の者ということになっておりますので、ある意味では罪種について今先生御指摘のように若干そごがあるかもしれません。それは、やはり警察は第一次的な捜査機関としての段階、それから公訴を維持される段階というそれぞれの役割において少し違うのかなというふうに考えております。
  94. 山本有二

    山本(有)政務次官 警察の被害者連絡制度の対象者の範囲と検察被害者等通知制度の対象者の範囲とが異なっていることは、御指摘のとおりでございます。警察においても、各都道府県警察の実情に応じ、可能な限り対象者の範囲を拡大することに御努力されておるものと承知しております。  ここで食い違いが、何か問題があるかというような点につきましては、刑事事件の起訴、不起訴につきまして、すべて最終処分は検察官が行うわけでありまして、その意味からして検察庁の通知制度の方が広い範囲で情報を提供するというような、広い狭いでいえば広くなっているということになりますので、特に問題は生じないものと考えております。
  95. 枝野幸男

    ○枝野委員 ケース・バイ・ケースの部分は必ずあると思います。それから、完全に一致をしなきゃいけないという話ではなくて、きちんと整理がついていないといけないという趣旨ですので、今のような実態を踏まえて、警察と検察との間で、特に現場での地検と県警本部とかとの連携ということになるんだろうと思いますが、そこのところはしっかりするようにお願いをしたいというふうに思うんです。  これは主に警察の方かと思うんですが、警察の場合は、犯罪被害者情報提供するに当たって、まさに捜査をしている過程と重なってきますので、直接会ったり、あるいは電話をしたりということのケースの方が多分今のところ圧倒的多数かなというふうにお話を伺っておるんですが、原則原則でそれでいいんだというふうに思うんですが、やはり、これまた、しっかりやっているのと、しっかりやっているというふうに外から見てもらえるかどうかということの問題が一つある。  それからもう一つは、被害者といっても被害者本人と家族とおりますし、あるいは、亡くなられたケースの場合ですと、遺族といっても、例えばお子さんを亡くした場合、お父さんとお母さんといるわけでありまして、お父さんとお母さんと両方に会って、あるいは両方に電話をしてだなんということはなかなか実際的には難しいし、そこまで税金を使ってできるのかということになったら、なかなかできないケースも多いだろうと思います。  そうした意味では、まさに運用上の実態としては、会ったり電話をしたりということが中身的には軸になるんだと思いますけれども、常に、電話では話すんだけれども、同時に文書でもこうなりましたと、節目節目でいいんですけれども、丁寧に御説明をした文書、ほとんどは定型化できますからそんなに作業にはならないと僕は思うんです。必ず文書と電話とかというのがセットになって、例えば家族みんなで、きょう警察の人は話してくれたけれども、手紙も来ていて、あるいは手紙を持ってきてくれていて、こういうことだよと。例えば、お子さんを亡くしたお母さんがお巡りさんから昼間説明を受けた場合に、お父さんと夜、紙を持ってきてこういうふうに説明を受けましたよとか。あるいは電話の場合だったら、手紙もこういうふうに来ていて、あわせて電話でこういう説明を受けたんだよということがあって、家族あるいは遺族の中で共通認識が持てる。それこそ電話だったりとかすると、家族の中で、ある家族は聞いていたけれどもある家族は聞いていなくて、警察は不親切だとかなんという話がやはり出てきかねないと思うんですね。  そういうことを考えると、警察がそういう誤解に基づく不信を持たれないためにも、そして被害者の家族の共通認識という意味でも、若干手間はかかるかもしれませんが、これは対象犯罪を相当絞ってもいいと思うんですが、口頭と文書というものの二重でやるというようなことはいかがでしょうか。
  96. 林則清

    ○林政府参考人 御質問の趣旨で、警察の行っております被害者への通知等の趣旨を先生の方が私よりも十分御理解いただいておるということを感じたわけであります。  ただ、一つ感じましたのは、現在そういうことで口頭とか面接、電話なんかでやっておるわけでありますが、被害者の中には家族や関係者に被害を受けたことを知られたくないという方も結構おられまして、そういうこともあるので、現在一番いい方法は何だろうということでやっておるわけでありますが、一面、先生が御指摘された一部の者にしか伝わっていないということもあるという問題もあるわけであります。  現在の実情では、先生の御指摘のように、ちゃんと連絡しておるかどうかは外部には見えませんが、内部では連絡状況というのを被害者連絡経過票というものできちっと管理をしておるわけであります。  それからもう一つは、現在でも、先生御指摘のような特定の事件の捜査状況とか犯人の検挙状況を文書で被害者連絡している県警も一部にはございます。  そういうことでありますので、現状と議員のただいまの御指摘というものを十分踏まえて、さらにこの被害者連絡制度というものが実質的に内においても外においても充実するというために、連絡方法についてぜひ検討を進めたいというふうに考えます。
  97. 枝野幸男

    ○枝野委員 今のようなことで、特に応用動作の世界がありますので、確かにおっしゃるとおり家族全員に知られちゃ逆に困るケースもあるでしょうが、そこは運用の中でできると思いますので、ぜひいろいろな工夫をしていただければというふうに思います。  時間が足りなくなって、予定した質問を少し飛ばさなきゃいけないんですが、ちょっと法務省検察の方にお尋ねをさせていただきたいんです。  起訴されて、いろいろなことを通知されたりしておるわけなんですけれども、例えば、裁判が一回一回行われても、通知をすることが特に求められるような事件というのは争いがあったりとかするような犯罪でしょうから、公判期日は何度も繰り返されます。でも、裁判の手続の流れだなんというのは、仮に最初の段階で文書でこういう流れですだなんということを素人の方が説明を受けたとしても、きょうの法廷は何だったんだ、これしかやらないでとか、もし見ていたとしても大部分の方はそういうことになるんだと思うんですね。  そうすると、本来は一回一回、裁判期日があった、公判期日があったら、きょうの裁判期日ではこういうことの手続の段階でこういうふうにやりました、弁護側からこういうふうになりましたと。例えば民事裁判ですと、弁護士によって違うんでしょうが、私の場合、二年間弁護士をやらせていただいているときは、一件一件、期日が入れば、裁判所に行けば、民事の場合ほとんど来ていないですから余計そうなんですが、きょうはこういう段階で、こちらからこういう資料を出してこういう裁判をやりました、相手方からこうなりましたと、A4一枚ぐらいでも必ず手紙を書いてお送りをするというのがクライアントに対する最低限の弁護士としての責任だと思うんですね。  やはり検察官というのは、被害者の側からすれば、法的なことをここで論争しませんが、事実上は被害者の側に立って裁判を動かしてくれる弁護士みたいなものだと思うんですよ。という意味では、単に通知をすればいいとかということだけではなく、あるいは、最初の段階で流れを説明しました、そういう文書を送りましたとかということではなくて、期日一回一回とか、あるいは捜査段階でも、送検をされた段階と起訴の段階とか、かなり丁寧に担当検事が、あるいは事務官が被害者の方にいろいろなことを文書なり電話なりで通知をするということをもっとやる必要があるんじゃないか。検察官に被害者弁護士なんだという意識を徹底する必要があるのではないか。もちろん、すべての案件をやったら検事さんはパンクしちゃいますから、命を失っているとかという重要犯罪に限られますが。こういう考え方はいかがだと思いますか。     〔杉浦委員長代理退席、委員長着席〕
  98. 山本有二

    山本(有)政務次官 先生のおっしゃるとおりだというように思います。特に、被害者等通知制度運用するに当たりましては、単に所定の事項を通知するだけではなくて、法律知識の十分でない被害者の方に御理解をいただくという精神が肝要であろうと考えております。  したがいまして、電話等で直接被害者の方などに所定の事項を通知する場合には現在も適宜内容を説明しておりますし、文書等で通知した場合でも、被害者の方などからの問い合わせに積極的に応じ、その内容を説明するなどして、御理解をいただくよう努めているものと承知しておるところでございます。
  99. 枝野幸男

    ○枝野委員 半分以上は運用の問題だと思いますので、これ以上詰めようがないんですけれども、せっかくこういう法律をつくるわけですから、検察庁も、検察庁の入り口あたりに垂れ幕か何かつくるならつくって、検察官は被害者の弁護人ですとか、そういうふうなキャンペーンを張るぐらいのことがあってもいいのではないのかな。そういう視点でいろいろなことの内部の徹底をしていただければなというふうに思います。  もう一点、犯罪被害者という立場から考えたときに、死刑と無期懲役の話について、ちょっと言いっ放し的に質問させていただきたいと思います。お答えをいただければと思うのですが。  一つは、無期懲役に対する誤解があるのではないだろうか。これは山口県の光市だったでしょうか、お子さんと奥さんを亡くされた事件について、死刑ではなくて無期懲役が出た。マスコミその他で、何か七年だか八年で出てきてしまうのが決まっているかのような報道のされ方をしております。  しかし、無期懲役というのは、基本は無期懲役で、中で物すごくしっかりまじめにやって更生をしていた場合であれば七年で出てくるかもしれないというだけにすぎないんだと思います。あのケースは少年だから七年なのかな。いずれにしても、無期懲役ということで、無期でずっと入っている人もいるわけでしょうし、本当に改悛をして悔い改めたら短い人もいるかもしれないけれどもということなんだと思うのですね。  ここのところの情報が、私も実はよくわからない。無期懲役の判決を受けて仮出獄で出てくる人の比率がどれぐらいいるのか。そういう人たちは平均何年ぐらいで出てくるのか。こういったことについて情報があれば、ぜひお聞かせいただきたいというふうに思います。  そして、今の日本の法定刑について、死刑制度云々の賛否についてはいろいろな意見があります。ただ、いずれにしても、仮出獄の可能性がある無期懲役と死刑との間には非常に大きな幅があり過ぎるのは間違いない。それは、多くの場合が無期は本当に無期で入っていますよと言ったとしても、出てくる可能性があるということでは、被害感情として納得できないケースはたくさんあるでしょう。  こういうことを考えると、死刑と今の仮出獄のあり得る無期との間に、いわゆる終身刑というものを、死刑の議論は別問題として、まずはそこのところをつくるということは早急に検討していかないと、今度のケースの場合も、死刑なのか無期なのか、光市の場合もいろいろな議論がありそうですけれども、間があればもうちょっと議論が整理しやすいんじゃないかと思うのですけれども、いかがでしょうか。
  100. 山本有二

    山本(有)政務次官 無期懲役刑についての誤解があることは、そのとおりであろうと思います。  仮出獄になった無期刑受刑者の服役期間は、事案によって異なりまして一様ではございませんが、平成十年中に仮出獄を許された無期刑受刑者十五人の平均服役期間というのは約二十年十カ月でございまして、決して七年で出てくるというようなことではございません。  そして、先生の最後の御指摘の、いわゆる無期懲役刑であるならば終身施設内処遇をしたらという御提案でございますが、仮釈放を認めない終身刑につきましては、死刑を緩慢に執行するようなものでございまして、長期間の服役により受刑者の人格が完全に破壊されてしまうなど、死刑よりもむしろ残虐であるとの意見もございまして、そのような終身刑を創設することにつきましては慎重な検討が必要であるというように今のところ考えておるところでございます。
  101. 枝野幸男

    ○枝野委員 いろいろありますが、時間ですので終わります。
  102. 武部勤

    武部委員長 日野市朗君。
  103. 日野市朗

    ○日野委員 前回に引き続き、質問をさせていただきます。  きょうでそれが終わるかどうか、私も自信ございません。きょうは、最高裁の方からまず伺ってまいりたいというふうに思います。  刑訴法及び検察審査会法の一部改正法案、ここで随分、証拠調べについての手続、証拠調べのやり方について変化がございます。刑訴法の第百五十七条の二、三、四、こういう改正点がございまして、それぞれに問題点をはらんでいるように私には思われるわけであります。  そこで、まず百五十七条の二についてでありますが、ここで、証人に付き添わせる人、これは実務上何と呼ぶことにいたしますか。これは付添人でよろしいのですか。
  104. 古田佑紀

    ○古田政府参考人 御指摘のように、付添人というふうな呼び方が適当であろうかと思います。
  105. 日野市朗

    ○日野委員 そこで、この付添人が付き添った場合に、証人となる犯罪被害者は、やはり心強いと思うことは間違いないのでございましょう。私もそう思うのですよ。  ただ、実体的な真実発見のための証拠調べとして、この付添人は、証人の供述中、「裁判官若しくは訴訟関係人の尋問若しくは証人の供述を妨げ、又はその供述の内容に不当な影響を与えるような言動をしてはならない。」こうなっています。  ということになると、この付添人現実犯罪被害者に対してしてやれることは何なんだろうというふうに思うのですが、これは、付添人によってはアドバイスなんかをしたいと思うことはよくあるだろうと思いますね。どういうことができて、どういうことはできないかということは大分問題だろうと思うのですが、例えば、このアドバイスをするようなことなんかはできるのでしょうか。どうなんでしょう、何ができるのかということです。
  106. 古田佑紀

    ○古田政府参考人 付添人をつけますいわば目的と申しますのは、そういう方がそばにいるということによって、いろいろな精神的な不安でありますとか緊張感が緩和されるということが最大の眼目ということになるわけでございます。  したがいまして、特に証言内容にわたるようなことについていろいろアドバイスをしたりするというふうなことは、これはおっしゃるとおりいろいろ問題がありますので、それはこの場合考えていないわけでございます。  ただ、証人がかなり緊張もいたしますので、体調が悪くなるとか、あるいは精神的にかなりパニック状態になってしまって、どうも見ていていろいろ問題がある、そういうふうなときに、証人に対して体のぐあいはどうなんだとか、そういうことを尋ねて、あるいは自分の見た様子などを裁判所連絡して何らかの対応をお願いする、そういうふうなことは許されると考えております。
  107. 日野市朗

    ○日野委員 やはり事件の内容についてのアドバイスなどは絶対にさせないということは必要なことなんでございましょうね。そこのところはきちんとしておかなくちゃいけないんだろうと思うのですが、いかがですか。
  108. 古田佑紀

    ○古田政府参考人 おっしゃるとおり、証言の内容のようなことについてのアドバイス等、これは厳に避けていただく必要があると思っております。
  109. 日野市朗

    ○日野委員 では、この付添人をつけるというケース、それと、百五十七条の三において「被告人とその証人との間で、一方から又は相互に相手の状態を認識することができないようにするための措置を採る」という場合、または、百五十七条の四において、映像と音声の送受信によってその尋問等を行う場合、これとの関係はどうなりますか。両方とも付添人もつけるし、それからビデオ等を使って別室でやるとか遮へい物を置くとか、そういうことは代替性があるのか、両方、一緒にやってもいいのか、こういうことについてはどういうふうにお考えになりますか。
  110. 古田佑紀

    ○古田政府参考人 付き添いをつけること、あるいは遮へい措置をとること、それからいわゆるビデオリンクをとること、これはそれぞれ別個な措置でございます。したがいまして、これは個別の状況、事案によることではございますが、そのうちのどれか一つをとる、あるいは併用するということも、両方可能であると考えております。
  111. 日野市朗

    ○日野委員 この間、大阪府の元知事さん、有名な方がおられまして、あの方の証人尋問、あの方の場合、既にこういうことはやったようですね。現行法でももうそれはできるのだということなんでしょうかね。あれはどういう根拠に基づいてやられたのか。これは講学上でありますが、非常に興味があるので、ちょっと教えてください。
  112. 古田佑紀

    ○古田政府参考人 現行法で遮へいの措置がとれるかということでございますけれども、これは、証人尋問をやる場合の一種の裁判長の訴訟指揮に属するようなことでございまして、現行法上も解釈上こういう措置をとることはできる、現にやった例も、ただいま御指摘の件も含めて幾つかあると承知しております。  ただ、やはりこういう問題は法律に明文の規定があった方が適当であろうということで、今回明示することにしたわけでございます。
  113. 日野市朗

    ○日野委員 現にやってしまった、幾つかもうやったのがあるということだと、裁判所の方でもある程度、具体的にどのようにおやりになるかということはもう経験もおありなんですな。  では、遮へいするとしても、何かつい立てのようなものを置いたって、向こう側に証人がいる、または向こう側に被告人がいるということは相互に認識し合いながらやるわけですね。そういうことで、しかも証言の内容が影響されないようにする。人によっては、そこに相手がいる、こういう非常に影響力の強いやつがいると考えただけで、いわゆる畏怖の念にとらわれるみたいなこともあるのではないかと思うのですが、具体的にはどういうものを裁判所は想定しておられるのでしょう。  この間新聞に載ったのは見ました。こんなふうにやりましたよという図面がちょっと載っておりました。法廷を上から見た平面図みたいなのがあって、見たのですが、具体的にはどんなものを裁判所は想定しておられますか。
  114. 白木勇

    ○白木最高裁判所長官代理者 委員御指摘のケースは、現行法のもとにおいて運用でやったようでございますが、これは検察官、弁護人、いずれも異議がないといいますか、むしろ積極的に同意されたという形がございましたので、できたのだろうと思います。現行法のもとで、当事者の方がそれは反対であるというふうにおっしゃった場合に、裁判所があえてできるかということは一つの問題でございます。そこで、先ほど法務省の方が御答弁されたように、法律に今回定めるということにされたのではないかと思います。  実際、先日の件につきましては、私どもも実は報道を通じて承知しているだけでございまして、実際に見たわけでもございませんので確たることは申し上げられませんが、普通のつい立てをお使いになったというふうに報道上、承知をいたしております。
  115. 日野市朗

    ○日野委員 百五十七条の四の方は、映像と音声の送受信によって相手の状態を相互に認識しながらということになりますね。ただ、証人はこの場合は別室にいるわけですな。想定されているのはそうでしょう。別棟であってはいけないのでありましょうね。「同一の構内に限る。」こう書いてありますから、恐らく別室でテレビ撮影、それからテレビの放送、そういった技術を使うのだろうと思うのですが、それをちょっと明確なイメージがわかるような説明をお願いできますか。
  116. 古田佑紀

    ○古田政府参考人 まず、別室という範囲ですけれども、これは、同一の構内と認められる限りは、そこの別な部屋ということで差し支えないわけです。  具体的にどういうふうなイメージになるかと申しますと、これはまず裁判官、それから検察官、弁護人、あるいは被告人、場合によっては傍聴人、こういう方に対しても証人の様子が見えるということにする必要がありまして、そのためにテレビモニターを必要な数配置するということになるわけです。それから、逆に証人の側からは、裁判所、法廷の様子ですね、発問している者とか裁判所の様子とか、そういうのがわからないとまたまずいものですから、証人の側にそういうことが把握できるようなテレビモニターを置く。それが、相互に認識ができる方法でということになるわけです。  では、このテレビモニターをどういう数でどういうふうに配置するかとか、そういう問題につきましては、これは実際の法廷の状況に応じて必要なものを決めていく、配置を決めていくということになると考えております。
  117. 日野市朗

    ○日野委員 イメージがつかめないというのは、この場合、発問者、問いを発する人物は法廷の中にいるのですか。それとも、証人と一緒の部屋にいて、それが法廷に実況中継をされるということなのか、そこが法律がよくわからぬのです。
  118. 古田佑紀

    ○古田政府参考人 発問をする人、つまり検察官、弁護人等は法廷にいるということで、証人だけが別室にいるということを想定しております。
  119. 日野市朗

    ○日野委員 そうすると、私が証人尋問をするということになった場合、私が目の前で見ているのはテレビのブラウン管なわけですね。そのブラウン管はどういうふうな位置に置いてあるかということによってえらく違うのだろうというふうに思うのですね。そうすると、大体、ブラウン管はどこに置いてあるのでしょうね。
  120. 古田佑紀

    ○古田政府参考人 先ほども申し上げましたとおり、裁判官、あるいは検察官、弁護人等が証人の状態を把握できるということが必要なわけでございますので、そういうことが可能なように配置は今後検討されることとなりますが、例えばイギリスなどで行われている例について私の承知していることを申し上げますと、裁判官用にモニター、検察官用にモニター、弁護人用にモニター、被告人用にモニターと、それぞれ必要な台数を配置して運用しているというやり方を承知しております。
  121. 日野市朗

    ○日野委員 実は、私がこの三つ条文について細かく伺ったのは、果たしてそのような状況できちんとした尋問ができるのかどうかということについての疑問を感じているものでありますから、少し事細かに、そんなのは実務に任せればいいじゃないか、弁護人の意見も聞くことになっているのだし、被告人の意見も当然聞くことになるんだしということはありますけれども、しかし、反対尋問権をきちんと行使するということは意外と難しいことなんですね。  恐らく、検察官で反対尋問をやったことがある方でも、彼らは調書に基づいて、調書に合った答えをとろうとする。それから、裁判官の皆さんは、普通は補充尋問だけですから、恐らくその難しさというのはお感じになっていないだろうと思う。しかし、弁護人の方は反対尋問の難しさというのはよく知っているだろうと思うのですね。私も実は反対尋問をやったことがありまして、非常に神経を鋭敏にしながら反対尋問というのは行うものなんです。生きている者が目の前にいるのと、それから、一つの仕切りがあって声だけを聞いている、または送られてきた映像を通して尋問をするということが、反対尋問権を十分に保障することになるのかどうかという点について、私は非常に強い危惧を持つのです。  こういうことが一面で必要なんだ、今度の改正にのっているように、証人が威迫を受けるような状態で、また、いろいろな影響を受けるような状態で証言するというようなことは好ましくないので、できるだけそういう影響がないような状態で自由に証人に証言をさせるということの必要性、これも私は認めます。しかし一方、実体的な真実の発見ということの必要性というものも非常に強い要請があると思いますので、この点非常に心配なんです。  それについては、できるだけ反対尋問権の保障がきちんとできるような実務同士のきちんとした話し合いがこれから行われなければならないと思いますので、それを裁判所なんかがきちんとやっていく、そういうお互いの相談をきちんとやって、そして的確な方法を探っていくということが必要だというふうに私は思います。  私のこの発言に対して、御感想はいかがですか。
  122. 古田佑紀

    ○古田政府参考人 御指摘のとおり、反対尋問権は大変重要な権利で、これを尊重することは当然のことだと考えている次第です。  確かに、テレビモニターを通じてということになりますと、多少何がしかの差はあるであろうと思われますが、しかしながら、実際には、テレビモニターに証人の表情とかというものは鮮明に映るわけでございまして、そういうのを子細に観察しながら尋問をするということは十分可能であろうと考えているわけでございます。  また、遮へいの措置につきましては、これは、弁護人との間の遮へいというのはもちろん認められないわけで、しかも、この遮へいの措置をとることができるのは弁護人がいらっしゃるときに限ることとしております。  したがいまして、弁護人による反対尋問権というのは十分保障されておりますし、また、被告人も当然声は直接聞いている、そういうことになりますと、証人がいろいろな意味で精神的な緊張などを強度に覚える場合に、それを緩和する措置として、この程度措置が被告人の反対尋問権を実質的に阻害するということにはならないと考えております。
  123. 日野市朗

    ○日野委員 いや、裁判所検察官、弁護士、この三者できちんとした話し合いをして、そして一番いい方法というものはどういうものかということを探っていくことも必要だろうと思うので、そういうことについてのお考えはいかがですかと今伺ったわけです。いかがでしょうか。
  124. 古田佑紀

    ○古田政府参考人 これらの措置をとるときには、弁護人の意見ももちろん聞かなければいけないわけでございますし、その中で、どういう措置がこういう場合に一番ふさわしいかということも、おのずと三者の間で話し合われるということになると考えております。
  125. 日野市朗

    ○日野委員 私、きょうは裁判所の方から伺いました。私からの裁判所に対する質問としてはこれで終わりでございますから、裁判所の方、もしお忙しければ、お引き取りをいただいても結構でございます。  次に、犯罪被害者について、その被害の回復とか社会復帰を支援するといったことについては、この間の質問でもそうですが、法務省それから警察庁の長官もこういう措置をとることの必要性ということを述べておられて、そして、犯罪が行われた場合、その被害者に一番最初に接触するのは警察官なのであって、その警察官がどのような態度をとるかということはそれ以降の犯罪被害者に大きな影響を与えるということについて、非常にすばらしい認識を持っておられて、きちんとした対応をしなくちゃいかぬ、こう言っておられました。私も全く同感でありまして、敬意を表する次第であります。  それで、では、犯罪被害者が発生をしたという場合、どのようにそういった被害者に対する措置がとられていくかということについては、前回の参考人陳述質疑、きょうの参考人の話、それから質問、こういったものを通して、やはりみんな同じような認識を持っているなという感じがいたします。  そこで、民主党の犯罪被害者基本法案は非常に褒められたのですね。それで、その内容について少しただしてまいりたいと思いますが、それと同時に、今こういう問題について国としてはどういうふうな施策を持っておりますよ、対応しておりますよということを、これは特に警察の対応というのは大事なんですから、一つ一つちょっとただしていきたいというふうに思います。  まず、犯罪被害者基本法案では、基本的な施策として、国の施策、それから地方公共団体の施策と書いてあります。それで、まず国の施策として、「相談、指導、医療の提供、給付金の支給、被害に係る損害賠償の請求についての援助等を受けられるような必要な施策を講ずる」、こう書いてあるわけですが、現在国では、今ここで挙げられた事項について何らか施策をとっているかどうか、とっているとすればどんな施策か。  では、まず最初に警察庁の方から伺いましょう。
  126. 吉村博人

    ○吉村政府参考人 警察では、御承知のとおり、平成八年に被害者対策要綱を制定いたしまして、被害者への情報提供、あるいは捜査過程における二次的被害防止のための施策の推進を図っているところでございます。  ただいま先生からお話のございました相談、指導、医療の提供、給付金の支給、損害賠償請求についての援助ということでございますが、まず、被害者等からの各種の要望あるいは相談に対応いたしますために、全国の警察本部に統一の相談専用電話を設けておりまして、これは、シャープを押して九一一〇と押しますと、執務時間中でございますが対応できるということでございまして、この専用電話で、性犯罪の相談でありますとか少年相談など、個別の相談体制の整備充実を図っているところであります。  それから、いざ事件が発生したというときには、いわば当該事件の捜査に従事する者とは別に、被害者支援要員というものを指定いたしまして、この者たちが、事件の種類によって違うかとは思いますが、例えば被害者にまず付き添う、あるいは事情聴取の立ち会いを行う、あるいはまた家族への連絡を行う、被害者からの相談に対応する。病院に連れていく手配をするということもありましょうし、ケースによっては、民間のボランティア等支援機関紹介するというような各種の支援活動を行っております。  それから、大きな精神的ダメージを受けた被害者もいらっしゃるわけでありますので、専門的な知識を有するカウンセラーを部内的に採用いたしましたり、あるいは部外のそういう人方を委嘱するというようなこともやっておりまして、被害者支援に役立てているということでございます。  それから、警察で対応できない医療の提供あるいは損害賠償請求についての援助につきましては、全国ベースで被害者支援連絡協議会というものをつくっておりまして、この中には、弁護士会あるいは医師会の方も構成員となっているケースが多うございますし、あるいは、被害者支援センターと称しまして民間被害者援助団体が入っているケースもございます。こういうところを通じまして専門家紹介するなど、適切な医療、相談が受けられるよう指導を行っているところでございます。  それから、経済的支援につきましては、御承知のとおり、犯罪被害者等給付金支給法がございます。この犯罪被害給付制度の周知を図りまして、その適切な運用に努めているということもございます。  以上でございます。
  127. 日野市朗

    ○日野委員 今はかなり警察庁の方でもいろいろやっていますよということを、いいPRになって、私も、はあ、こんなことまでやっているのと思う点もあったりするのです。  今これだけやっているわけですが、民主党提出者として、今、警察庁の方からずっと挙げられましたが、それについて何か考えるところはございますか。
  128. 北村哲男

    北村(哲)議員 いろいろ言われました。しかし、例えば給付金支給制度にしても、ここで先回岡村勲弁護士が御紹介されたように、刑事被告人に対して処遇する、国選弁護人とか、留置所に入っているときの食料とかなんとかは百億円を超える。しかし、犯罪被害者にはたった五億円しか国は支給していないではないかと。  また、午前中に私も指摘しましたけれども、その支給金制度についてもいっぱい欠陥があって、本来は警察庁責任を持って加害人からお金を取り返して、そのお金をプールしながらまたバックするようなことができるはずなのに、それをサボっている。そういうことで、今、支給金制度というのはもう抜本的な改正をしなくちゃいけないということを強く言われたことがあります。そういう面。  あるいは、カウンセリングサービス。いろいろな窓口、さまざまな支援組織があると言われましたけれども、私どもの知っているところでは、イギリスでは全国に三百七十もの組織があるというふうに言われております。全国津々浦々にまで組織が張りめぐらされている。そして財政的にも豊かである。それに対して、私は、日本状態は本当に寂しい状態だと思っております。  そういう面ではまだまだ、確かに試みは初めであって、試みは歓迎するところでありますけれども、これをもっと国が指導する。そして、基本法という大きなものをつくって、はっきり国の政策としてやるんだというふうになると、また警察の皆さんも、あるいは民間組織の方々もやりやすくなると思います。そういう面で、私どもはあえて、こういう「相談、指導等」を基本的施策に掲げた次第であります。
  129. 日野市朗

    ○日野委員 伺っておりますと、一応警察庁の方でこうやってやっておられることに対しては評価をする、こういうことでございますな。  しかし、これを基本法のようなものをつくって強力に支援することになれば、もっと質の高いものをもっと量的にもというか範囲も広げてやれるではないか、こういう思いだというふうに聞いてよろしゅうございますか、どうですか。
  130. 北村哲男

    北村(哲)議員 委員のおっしゃるとおりでございます。  実はよく聞いてなかったのですけれども、そういうことだと思いますので、おっしゃるとおりでございまして、もっと立派なものができるであろうと思います。
  131. 日野市朗

    ○日野委員 そうすると、国でやっている、警察庁でやっている、これをもっと強力にやるためにぜひこれを進めたいんだ、こういうお話ですね。  それから、やはり国の施策の中で、犯罪被害者の安全及び生活の平穏を図るために一時保護だとか情報の提供を受けられるような必要な施策を講ずる、こうなっていますな。特にこの点で留意してやっておられることは、警察庁の方、ございますか。
  132. 林則清

    ○林政府参考人 特に、今冒頭出ました犯罪被害者の安全確保ということでございますけれども、被害者加害者にもう一度被害を受けるといいますか、危害を加えられるという事態を防止するということは、これは被害者の基本的な要望であるとともに、こういうことがしっかりしておりますと被害の申告というものも非常にスムーズに来るということで、これは絶対必要なことであるということで、従来どちらかというと暴力団犯罪被害者なんかの保護で、これは非常に努力してきたところであります。  具体的には、被害者の不安感の解消でありますとか再被害の防止のために、被害者の要望に応じまして、地域警察官による被害者への訪問活動、パトロール、こういうものを行っておりますほか、暴力団犯罪でありますとか性犯罪等、犯罪態様に応じまして、相談窓口を設置して被害者に助言を行うなど、被害者の不安感の解消というものに努めておるところであります。  もう一つは、平成九年には、被害者が、刑務所から出所した加害者、前に加害された者にもう一度被害を受け殺害されるという再被害事件が発生いたしました。こういうことも踏まえまして、全国警察において再被害防止のための取り組みを図った。  具体的には、殺人未遂、性犯罪等の凶悪犯罪とか粗暴犯が発生した場合には、被害者が過去に何らかの被害を受けたり、将来この被害者に対する再犯のおそれがあるというときには、こういうものに対しては事件の経過を継続的に把握する、情勢に応じて被害者への連絡とかパトロール、あるいは緊急通報装置、こういうものを設置するというようなことで、必要な警戒措置を講ずるというようなことを現在やっておるところでございます。
  133. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)議員 警察の方でもいろいろと対応しておることについては、私どもも敬意を表するわけです。  ただ、この間の例の新潟の少女監禁事件など、私どもが考えると、また普通の人が考えると、ああいう状態で、犯人が常に一緒に二十四時間ずっといるのを続けているわけでもないんだろうに、たとえ子供であっても、この間十九歳にまでなっているわけですから、なぜ外への連絡ができなかったのだろうかという疑問を持つわけですけれども、ただ、犯罪被害者の方やその御家族の方に私どもいろいろ御意見を聞きましたけれども、やはり心理的に抑圧されると、とてもそれが、そういうことをやったらまた被害を受ける、新たな被害を受けるという心理状態というのは非常に強いものだそうですね。あの新潟の事件だけに限らない。  例えば家庭内暴力、暴力行為を働く御主人、だんなさん、これが非常に暴力者で、奥さんがそれから暴力を受けるというような場合でも、やはり同じような状況になっているケースが非常に多いというのですね。  そういうことを考えますと、やはり警察のパトロールの強化ということもあろうかとは思いますけれども、いきなりそういう被害者が警察に飛び込むことがなかなかできないということもある。そういうことに対して、民間の団体が、シェルターというようなものをつくって気軽にその相談に応じられるような体制を整えている。かつては駆け込み寺運動なんというのもあったようですけれども、最近はシェルターという名称が使われているようです。こういうようないわゆるボランティア活動をやっていることも出てきておりますので、自治体とこういう民間NGOとが連絡をとり、そして、そこと警察が密接な連携をとりながら、できるだけそういうような救済というか助けを求めるのに応じていく体制をつくる必要があるんじゃなかろうか。  これは自治体の協力もぜひ必要だと思いますけれども、私どもとしては、今度の私どもが出している基本法も、自治体としての責任だとかあるいは国民としての協力義務だとか、こういうことを言っているのも、実はそういうことを眼目に置いてのことでございますので、どうかそれをひとつ深めていただくような対策を国としてもとっていただきたいものだと思っております。
  134. 日野市朗

    ○日野委員 だんだん時間がなくなってまいりまして、少し包括的に伺うようにしたいと思いますが、警察庁の方で、犯罪被害者等支援するということについて、職務上それに関係しているという人たちに対して、被害者人権だとか、今ちょっと佐々木提案者の方からも出ました心身の状況、そういったものに対する理解を深めるための訓練であるとか教育であるとか、そういうこともなすっておいでなんでしょうか。
  135. 吉村博人

    ○吉村政府参考人 お答えを申し上げます。  警察が通例は被害者に最も早く接する立場にありますし、また数も多いわけでありますので、現場の警察官と被害者との接点のありよういかんがその後の被害者の立ち直りなり対応ぶりに大きく影響があるということは、これは言うをまたないところであります。  ただ、いろいろ先ほど来御説明しておりますように、つくった仕組みがどう機能するのかということにつきましては、まさにソフト面での積極的な取り組みがないといかぬわけでありまして、そのためには、現場で被害者に接する警察官一人一人の心持ちなり能力がないとうまく機能しないというのは、これは言うをまたないところだろうと思います。  したがいまして、従前は必ずしも十分ではなかったと思われますが、ここ平成八年ぐらいを境にいたしまして、現在は、被害者支援に係る教育、教養を体系的な形で学校教養あるいは職場教養の中に取り入れております。あるいは、有識者による講演会を開催をいたしまして、ここで被害者学あるいはカウンセリングの専門家をお招きをしたり精神科医の人たちのお話を伺ったりというようなことも通じまして、幅広く、いわば現場における警察の扱いがいかに大きく被害者のその後を左右するのかということの重要性を認識させるということで始めておるところでございまして、これはこれからも引き続き進めてまいりたいと考えております。
  136. 日野市朗

    ○日野委員 それから、もう一つ警察庁の方に伺っておきますが、実は、こういうことをやるのはお金がかかるということで、この基本法のような法律が通れば国の予算というのは随分とりやすくなるんだろうと私は思うんですが、その前に、お金を準備するという意味からは、何か基金のようなものを準備することも可能だろうと思うんです。  きょう、諸澤さんですか、あの人も基金の必要なんということを言っていました。私も、この間も、基金が必要じゃないかというような話もしたんですが、こんな基金めいたものといいますか、そんなものを警察庁でお持ちになっておられますか。
  137. 吉村博人

    ○吉村政府参考人 現在ございますのは、財団法人の犯罪被害救援基金がございます。これは、御承知のとおり、先ほどの法律に基づいての給付金以外に、奨学金あるいは重度の障害に遭われた方の障害見舞金を出しているというものでございます。  今、同基金の基本財産は、平成十年度決算で約三十八億円と承知をしているところであります。  以上でございます。
  138. 日野市朗

    ○日野委員 提案者、今そういった心理的な問題、基金の話なんかが出たわけでありますが、これに対してお考えはいかがですか。国の方でも一応こういう仕事はやっていますよということのお話がありましたね、警察庁の方でもやっています。これに対してどういうお考えですか。
  139. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)議員 警察庁としては、今のところ、警察予算と今の基金の運用で賄っているということのようだと思いますが、私はやはり足りないんだろうと思うんです。  参考人方々のお話を聞き、被害者方々連絡協議会をつくったり、それからさっきのシェルターの話じゃないですけれども、ボランティアの活動をやっている人もいるんだけれども、みんなやはり何か事をしようとするとお金がかかるわけですね。  ですから、私は、せっかく今度も犯罪被害者のことを考えて政府はこういう法案を出しておられるわけですけれども、さらに突っ込んで、私たちが提案したような基本法というもの、犯罪被害者救済の基本法というものをつくっていただければ、それに基づいた諸施策のための予算手当てができるわけですから、ぜひやはり抜本的に、そして少し大きく事を構えてやっていかないと、本当の意味での被害者救済というのは完遂できないんじゃないかと考えておりますので、そういう意味でもぜひ私どもの提案したこの基本法、皆さんにも御理解いただいて、成立をさせていただけるようにお願いしたいと思っております。  以上です。
  140. 日野市朗

    ○日野委員 私も実は警察庁が非常にきめ細かく被害者対策をやっておられるということ、この法案審議を通していろいろ説明を伺って、ほう、こんなところまでやっているのというふうに思いました。本当はもっと国民に、警察というのはこんなことまでやっているんだよということを知られていて、そして、本当は愛される警察でなくちゃいけないんですよ。愛され、信頼され、本当に頼られる警察であっていいはずなのに、何かこのごろは変なことになっちゃっているわけで、非常に私はその点、警察のために泣きたい思いだ。警察はそこの点をこれからしっかりしてくださいよ、これはみんなの思いだと思いますから。  そこで、法務大臣、この間からずっとこの法案審議をして、私もこの出された法案について賛成しますよ。法務省から出ているものについては賛成はするんだが、何でもう一歩突っ込んで、基本的なところ、核心に迫っていこうとしないのか。ひとつ迫ってくださいよ。どうですか。ちゃんと、民主党の基本法、いい法案じゃないの。
  141. 臼井日出男

    ○臼井国務大臣 先ほど来から話を伺わせていただいておりまして、こうした問題につきましては、非常に犯罪被害者に対する幅広い対策というのは必要である、こういうふうに考えておりまして、私どもといたしましては、今委員いろいろ御指摘いただきましたことも念頭に入れながら、一つ一つ着実に対処してまいりたい、このように考えております。
  142. 日野市朗

    ○日野委員 終わります。
  143. 武部勤

  144. 木島日出夫

    ○木島委員 日本共産党の木島日出夫です。  政府提出の刑訴法一部改正法案それから犯罪被害者保護法について質問をいたします。  最初に、証人の被告人や傍聴人との遮へい、それからビデオリンクの方式による証人尋問の問題についてお伺いします。  最初に、最高裁判所を呼んでおります。事前に、現行法で実際の刑事訴訟手続において被害者である証人に対してどんな配慮をしているのか、調べてきてほしいとお願いをしておきました。先ほど同僚委員から、大阪の前府知事にかかわる裁判についても一部実行されているとお話を承りましたが、どんなやり方が例としてあるのか、まずお述べいただきたいと思います。
  145. 白木勇

    ○白木最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。  現状でございますが、各裁判体では、法律の規定を最大限に活用したり、あるいは法律の規定はなくても、運用におきましていろいろと証人の保護を図っているところでございます。  例えば、法律の規定に基づくものといたしまして、性犯罪被害者でありますとか、あるいは年少者が証人の場合には、なるべくそういった方が証言しやすい状況のもとで尋問が行えますように、裁判所外で非公開で尋問するという方法が広く用いられております。  また、公判廷で尋問を行う場合でも、必要に応じて、公開停止の措置をとったり、被告人の退廷でありますとか、あるいは特定の傍聴人の退廷の規定を活用した措置がとられております。  さらに、法律の規定にはございませんが、運用上のものといたしまして、証人が法廷内で被告人と顔を合わせないで済むように、両者の間をつい立てで遮断いたしましたり、被害者等が法廷に出頭する際に事前に被告人と顔を合わせないで済むように、出頭する場所を直接法廷としないで書記官室に来ていただくようにしたり、証言までの待機場所も一般の控室とは別の場所とする、さらには具体的な尋問につきましても、被害者の住所ですとか氏名を省略したり仮名にしたりするなどの配慮がなされているようでございます。  ただ、裁判所といたしましては、被告人に認められております憲法上、訴訟法上の諸権利にも十分な配慮をしなければならないことは当然のことでございまして、そのあたりは弁護人の理解と協力も欠かせないところであるわけでございます。
  146. 木島日出夫

    ○木島委員 やれることはいろいろやっているという答弁ですが、最近、私は平凡社新書で朝日新聞記者の河原理子さんという記者が書いた「犯罪被害者」というものを読んでおりましたら、イギリスなんかでは、裁判所の建物そのものが、もう入り口からして、被害者の入る入り口と被告人や一般市民の入る入り口を全然別な方向にして、廊下で顔は合わないというような建物の構造なんかにして、非常に配慮が行き届いているとお聞きしました。これは一つのインフラの問題でありますが、これから裁判所なんかを新築されようとする場合には、そんなことまで、本当にきめ細かい配慮などができるようにしていただきたいと思いますので、それは指摘だけしておきたいと思います。  先ほども、大阪前府知事にかかわる事件で、現に遮へいしたと新聞報道に出ておりましたが、現行法上、最大の問題はやはり憲法三十七条二項の証人審問権とのかかわりだというふうに思うんです。先ほどの答弁ですと、最高裁当局もマスコミを通じてしか事実を知らないと言っておりますが、あれは被告人や弁護人が拒絶をすると、現行法では憲法三十七条二項の要請から遮へいできない、こう伺ってよろしいですか。これは裁判所に伺ったらいいのかな。
  147. 白木勇

    ○白木最高裁判所長官代理者 これは、個々具体的な事件におきまして、当該裁判体がそれに反するかどうかということを判断してなさるべき事柄であろうというふうに考えます。
  148. 古田佑紀

    ○古田政府参考人 憲法三十七条と直接かかわりがあるかどうかということについてはいろいろな議論があり得ることであろうとは思いますが、少なくとも証人尋問の方式として刑事訴訟法上明示されていないやり方をとる場合には、現行法上、そこにはおのずと制約がかかっているものと考えるべきであろうと思われるわけです。  先ほども最高裁刑事局長から御説明がありましたとおり、現実問題としては、これは関係者の同意がある場合に限ってこれまで行っているということでございます。
  149. 木島日出夫

    ○木島委員 私は、この問題の最大の課題は、憲法三十七条第二項との関係だと思うんです。「刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を充分に与へられ、又、公費で自己のために強制的手続により証人を求める権利を有する。」いわゆる被告人の証人審問権というものであります。  講学上、大体三つの具体的な対応が保障されなければならぬと言われているようです。一つは、直接被告人が証人に質問すること、二つ目は、被告人が、当然弁護人も一緒ですが、証言態度を直接観察できること、三つ目は、面前で証言するよう求めることができること、こう言われているのですが、大体そういう解釈でよろしいでしょうか、法務省
  150. 古田佑紀

    ○古田政府参考人 憲法三十七条の証人尋問権の範囲が、憲法上直接に保障されるというのはどこまでかということについてはいろいろな考え方があるというふうに承知をしておりますが、一般的な考え方としては、要するに反対尋問の機会を確保するということが憲法三十七条の趣旨であるというふうに理解されていると考えております。
  151. 木島日出夫

    ○木島委員 憲法から直接権利が出てこないというのであれば、だからこそ刑事訴訟法百五十七条が規定されているわけです。当事者の立ち会い権、尋問権です。第一項は「検察官、被告人又は弁護人は、証人の尋問に立ち会うことができる。」第三項は「第一項に規定する者は、証人の尋問に立ち会つたときは、裁判長に告げて、その証人を尋問することができる。」この憲法三十七条二項と刑事訴訟法百五十七条一項、三項をあわせ読みますと、先ほど私が言ったように、一つ、証人に質問すること、二つ、証言態度を直接観察できること、これは立ち会いという意味ですね、三つ、面前で証言するよう求めることができる、理論は必然的にこうなってくると思うんですが、どうですか。
  152. 古田佑紀

    ○古田政府参考人 先ほどのお尋ねは憲法上のことと思いましたので、そういうふうにお答え申し上げたわけですが、刑事訴訟法の各規定まで含めて理解いたしますれば、原則は今おっしゃるとおりだと理解しております。
  153. 木島日出夫

    ○木島委員 そこで、非常に問題なのは、被害者たる証人の保護現実に法廷でどうするか、被害者たる証人の利益と被告人の利益あるいは刑事裁判で一番大事な真実の発見、この関係をどうぎりぎり調整するかということが本当に大事な問題であろうと思います。  ずばり聞きますが、遮へい措置をとることやビデオリンクを導入すること、このことが今私が述べた憲法三十七条二項、これから導き出される刑訴法百五十七条の被告人、弁護人側の証人審問権に反しないか、一言で、まず総論からお聞きします。
  154. 古田佑紀

    ○古田政府参考人 まず、被告人からの遮へい措置につきましては、先ほども御説明申し上げましたとおり、被告人はその法廷内にはいるわけでございますし、また、弁護人との関係では、必ず証人の態度が見えるように、そこに遮へいをすることはできないというふうにしているわけでございます。  したがいまして、そういう点で、被告人としては確かに直接証人の動静というのを観察することはできないという場面が生ずることは事実でございますものの、当然弁護人がついておられる、弁護人が反対尋問をされるときに十分証人のいろいろな動静というのは観察できるということは担保されているわけでございまして、こういうふうな措置というのは、証人が非常に精神的な負担を覚えるような場合の緩和措置として、原則に若干の例外を認めることも法律上可能であるというふうに考えております。  実際、これまでも、被告人を退廷させた場合には、被告人は証人を見ることはもちろん、その供述内容を聞くこともできないわけで、被告人を退廷させた上での証人尋問というのも一定の場合許されるということとなっておりまして、そういうこととの対比におきましても特段の問題はないと考えている次第でございます。  次に、ビデオリンクでございますが、これは確かに、法廷の中に証人がいないという意味では、直接目で見てその動静を観察するというわけではなく、テレビモニターに映っているものを見て観察することになるわけです。そこで多少の違いというのが出てくることは事実だろうと思いますが、テレビモニターに映る画像というものは表情その他も鮮明に観察ができるわけでございまして、そういう点からいたしまして、証人の動静を見ながら反対尋問をする、そういうことで、実質的に反対尋問権の趣旨を害することにはならないと考えております。
  155. 木島日出夫

    ○木島委員 ビデオリンク方式による証人尋問についてちょっと具体的にお聞きしますが、午前中、参考人にも私は具体的なことを聞いたのですが、例えば殺人未遂の否認事件、特に故意を争っている事件とか、強姦などの事件で故意を争っている事件、あるいは被害者の意思を抑圧したかどうか、そういう態様も争っている事件、そういう非常にぎりぎりとした難しい否認事件を想定した場合に、被告人、弁護人の証人審問権、いわゆる直接面前で尋問できる、そして尋問態度を見られる、本当に被害者である証人が真実を述べているかどうか観察しながら、弁護人は尋問をするわけですね。  尋問を発して答弁が出てくるときに、顔色、目の動き、あごの引きつりの状況、手の震え、足の震え、全体的な体の震え、非常に最後ぎりぎりと、有罪、無罪の事実認定をするというのは、そういう厳しい尋問、反対尋問を経てやはり証拠採用されてくるんだろうと思うのです。裁判官もそういうのをしっかり見て、自由心証ですが、最後に有罪、無罪、被害者たる証人が真実を述べているのか、過大なのか、うそをついているのか、そういう本当に微妙な認定をするのだろう。それが刑事裁判最後の命のところですね。そこがきちっとやられなければ、事実認定という一番大事な作業に対する根本的な信頼が失われてしまう、そういう性格の問題だと思うのですね。そういう問題を、果たしてビデオでうまく撮れるだろうか。  私は、被害者人権を徹底して擁護する立場に当然やぶさかではないわけです。そういう立場に立って今質問をしているのですが、そういう片方の、刑事裁判が要請される根本的な問題について、やはりぎりぎりの調整をどこに置くかというのは、本当に真剣に論議しなければ刑事裁判が崩れてしまうと思うわけなんで、そういう大変な問題なんだという、安易に証人審問権が制限されていいものではないと思うのですが、それはどうですか。
  156. 古田佑紀

    ○古田政府参考人 もとより委員御指摘のとおり、証人尋問の方式は、やはり先ほどから御指摘のあったことが原則でございまして、これが例外でございます。そういう意味からは、これを安易に用いるということは適当ではないわけでございまして、やはりその証人のいろいろな緊張その他を、不安の状況などをよく見きわめた上で運用はすべきことになるものと考えております。
  157. 木島日出夫

    ○木島委員 そこで、私、刑事訴訟法の一部を改正する法律条文のつくり方を見てみましたら、遮へいとビデオリンクとは要件が大きく違うのですね。二つの点で違うように、私はこの条文を読みました。  一つは、対象犯罪を違えている。遮へい措置、遮へいができる要件には対象犯罪はありません。絞りはありません。しかし、ビデオリンク方式を導入するときは、対象犯罪の縛りがかかっているわけです。強姦等ですね、児童福祉法違反とか。  もう一つの大きな違いは、裁判所がこういう方式を導入することができる、その条件ですね。相当と認めるときにこれがやれるんだという点は遮へいもビデオリンクも同じなんですが、遮へい措置の方がむしろその面では厳しくて、「証人が被告人の面前において供述するときは圧迫を受け精神の平穏を著しく害されるおそれがあると認める場合であつて、」こういう要件がくっついているのですね。ビデオリンクの方は、この要件を外しているのですね。だから私、変な法律のつくり方だなと。  対象犯罪についてはビデオリンクの方の要件を絞っておきながら、どういう場合に裁判所がそういう遮へいなりビデオリンクの採用ができるかという、そっちの方の要件では、遮へいの方が非常に絞りが強烈である、こういう読み方でいいのでしょうか。そして、なぜ遮へいとビデオリンクでこんなに要件を、二つの点で、大きなところでたがえたのか、その立法の趣旨というのを御説明願えますか。
  158. 古田佑紀

    ○古田政府参考人 まず、遮へい措置とそれからビデオリンクについての、それぞれの場合の考え方について御説明申し上げます。  この遮へいの措置につきましては、これは被告人あるいは傍聴人という、特定の人間あるいは傍聴人という関係で、そのために受ける精神的な圧迫、不安、そこから解放する、あるいはそれを緩和するということが目的でございます。  一方、それに対しまして、ビデオリンクの方式をとる場合は、これは特定のだれかというようなことではなくて、裁判所検察官、弁護人、被告人、傍聴人、こういう中で、法廷という場で証言をすることに対して非常に不安感を覚える、あるいは緊張感を覚える、言ってみれば場所からの圧迫を受けるということを緩和することが目的でございます。  そこで、要件の違いにそれがあらわれておりまして、遮へいについては、法廷全体からの圧迫感ということではなくて、被告人あるいは傍聴人ということとの関係での圧迫感があるということで、これができるようにするということでございます。  一方、対象犯罪につきましては、ビデオリンク方式の方は、これはやはり法廷の中で証人尋問をするということが大原則でございます。その例外を認めるということでございますので、特にその必要性が高いと認められる犯罪類型の被害者を例示的にまず列挙するということが適当であると考えたものでございます。  一方、遮へい措置につきましては、証人が法廷に在廷するという大原則は崩さない措置でございますので、ビデオリンク方式と比較いたしまして、必ずしも特定の罪名まで挙げる必要性はなく、一般的な要件を掲げてこれに該当するか否かを判断すれば足りると考えたものでございます。
  159. 木島日出夫

    ○木島委員 説明を伺って大分わかってきましたが、そういうことを法律には書いていないですよね。ビデオリンクというのは、場所からの圧迫から解放するんだ。遮へいというのは、専ら被告人と傍聴人からの圧迫から証人である被害者を解放してやるんだ。全然読み取れませんよ、この条文を幾ら読んでも。そういうことなんでしょうか。  午前中の参考人に私この問題で詰めましたら、全体的な考え方の流れとして、否認事件と被告人が犯罪事実を認めている事件はやはり画然と区別して物を考えるべきだという意見も出てきたんです。それは参考人の意図するところは、否認事件に対しては安易に証人審問権を制約するなということだと思うんです。  私もそうだと思うんですよ。本当に、有罪、無罪、場合によっては死刑になるかどうなるかという、死刑になるか無罪になるか、天と地の差が出てくるような、殺人事件、殺人未遂、強盗、強姦致傷、そうなり得るわけですからね。犯意があるかないか、犯行の態様、非常に微妙な事実を認定しなくちゃいかぬわけです。証人たる被害者がうそをついているのか、真実を述べているのか、過大に証言しているのか、決定的に違ってくるわけですから、そういう否認事件については、安易にこれを使うとちょっとやはり間違うんじゃないかなと私も思うんですが、この法律のつくり方は残念ながらそういう区分けをしていないんですね。  これはどうしてそういう区分けをしなかったんでしょうか。否認事件については安易に使わないんだということ、運用でそういうことをやらせようという趣旨なんでしょうか。非常に大事なところだと思うので、答弁願いたい。
  160. 古田佑紀

    ○古田政府参考人 ただいまのお尋ねにお答えする前に、先ほどビデオリンクの場合は場所的な圧迫が問題になるということを申し上げましたが、これは、百五十七条の四の三号に一般的な要件が記載されておりまして、ここで「裁判官及び訴訟関係人が証人を尋問するために在席する場所において」ということを記載しておりまして、ここから御理解いただければと考えます。  それから、ただいまの御質問の件ですが、これは、いろいろおっしゃるように、非常にシビアなケースにおいてどこまでとるのかということは、やはり実際の事件の審理の状況を勘案して十分慎重に判断されるべきことであろうと考えております。  ただ、逆に申し上げますと、被告人が犯罪事実を争っていないというふうな場合には、こういう被害者の方の証人尋問をするということも、またこれは必要性が乏しい場合も大変多いわけでございまして、被告人が犯罪事実を争っているときに証人尋問が行われるという場合は、これは非常に多いわけでございます。したがって、そういうことを勘案いたしますと、おっしゃるような振り分けをするというのはいささか実態に合わないことになるのではないかと思われますとともに、要は証人尋問をする場合の問題でございますので、このような規定ぶりとしたわけでございます。  ただ、繰り返しになりますけれども、非常にシビアに争われている否認事件などで、証人のいろいろな動静等を直接観察しなければならないとか、そういうふうな要請が非常に強い場合、こういうような措置をとるということについては、いろいろその状況に応じて判断をされるべきことになるだろうと考えております。
  161. 木島日出夫

    ○木島委員 それで、この法律が通った後、現に執行されたときに、ビデオリンクのビデオの撮影者は裁判所職員になるんでしょうか。そして、固定カメラなんでしょうか、それとも、顔を大写しするとか手のあたりの震えを写すとか、そういうビデオを写す人の主観が入るような運用になるんでしょうか。もう一つ、そういうビデオを操作する人に対する裁判官の指揮権というのは現実に可能なんでしょうか。ちょっと立ち入ったことを聞きますが。
  162. 白木勇

    ○白木最高裁判所長官代理者 これは全く新しい制度でございまして、私どもも諸外国の例を参考にしながら現在検討いたしているところでございます。
  163. 木島日出夫

    ○木島委員 その辺、重ねて私から、憲法上の要請ですし、単なる憲法上の要請なんというよりも、刑事裁判の命ですね、真実発見、真実の上に判決が下されるということは。ということで、私もこの法案全体には賛成ですが、これからよく詰めて執行していただきたいと思うんです。  重ねて、では法務省に。  今回、法案は、ビデオリンク方式による尋問については、弁護人や検察官を在席させないイギリス方式をとっています。これら弁護人、検察官を在席させるアメリカ方式がとられていません。これはなぜでしょうか。  私は、せめてアメリカ方式をとって、被害者たる証人のいる部屋に弁護人と検察官だけは入って直接尋問する、そして直接証言態度を観察しながら尋問できる、これだけは、特にシビアな否認事件なんかはやった方がよかったんじゃないかと。  なぜアメリカ方式を今回あえてとらなかったか、その理由を教えてください。
  164. 古田佑紀

    ○古田政府参考人 いわゆるアメリカ方式を採用しなかった理由と申しますのは、先ほど申し上げましたとおり、これは裁判官、それから検察官、弁護人など訴訟関係人傍聴人を含む、そういう場所的な圧迫からくる精神的な負担を緩和するということが目的であったわけでございまして、そういう観点からすると、まず検察官及び弁護人が別室に在席する、証人と同じ部屋にいるということは、その場所的な圧迫からの緩和としてはやや証人保護の趣旨に欠ける部分もあるのではないか。  それから、法廷には裁判官だけがいわば残っていることになるわけですけれども、これがテレビモニターを通じて検察官や弁護人に訴訟指揮をするのは、なかなかうまく働かないという問題が起こり得る可能性がある。  さらに、裁判官のいない場所で検察官、弁護人の間で異議等の激しい応酬が証人の直接の眼前でなされるというふうなことが起こると、これは証人がそのことによる圧迫を受け、心理的、精神的負担となる、そういうふうな問題も起こる。そういうことをあれこれ考えますと、別室には証人のみが在室するという方式が適当であるという判断に至ったものでございます。  ただ、実質的に申し上げますと、検察官あるいは弁護人が直接見て尋問をする、そういう措置をとる必要がどうも高いということでありますれば、基本的には、証人と被告人との間であるいは傍聴人との間での遮へい措置をとる、そして法廷で尋問するということでこれはおおむね対応し得るのではないかと考えている次第です。
  165. 木島日出夫

    ○木島委員 いろいろおっしゃいましたが、アメリカなんかでは現にやっているんですね、裁判官と弁護人、検察官が別室になってしまって尋問をやっているわけです。訴訟指揮がそれでまずくなってしまったなんという話は聞かないわけです。被害者たる証人の人権をどう守り抜くかということと真実をどう発見するかという本当にぎりぎりのところでの問題ですから、私は、今の区分けは大ざっぱ過ぎる、場所的な圧迫から排除するのがビデオリンクなんだから、ビデオリンク方式には被害者たる証人しか入れないんだというのは余りにも大ざっぱ過ぎる。  被害者たる証人の心情の中には、被告人の顔を見るのも嫌だというのはあるでしょう、傍聴人なんかいたんじゃ困るというのはあるでしょう、裁判関係者にたくさんいられたんじゃ困る、それもあるでしょう。しかし、弁護人と検察官二人だけならいいという場合だって幾らでもあり得ると思うのですよ。  そして、弁護人と検察官、それこそそれは法律家として、なぜそういうビデオリンク方式をとるかよくわかる法律家ですから、被害者のいたいけな少女の前で大げんかするとか激しいののしり合いをするとか、そういうことは控えるわけですよ、法律家であれば。そして、被害者たる証人の人権に、気持ちに配慮しながらきちっと尋問を重ねていく、そのぐらいの技術は今の日本検察官と弁護人なら持っているわけですね。ですから、そういうのをなぜこの法律で殊さらに排除してしまったのか。  私は、そういうアメリカ方式のビデオリンクがやれるんだという余地を残しておいて、そして、どの方式をとるかはいろいろな事件によって違うでしょうし、被害者の状況によって違うだろうし、弁護人と検察官にはどういう人物がなっているかは全部裁判官はわかるわけですから、最後は裁判官の訴訟指揮に任せてもよかったのじゃないか、そういう柔軟なやり方を残しておいたらよかったのじゃないかと思うのですが、なぜそういう法案にしなかったのか。  これからでも修正で、遅くはありませんから、どういう方式をとるか裁判長の訴訟指揮に任せる、場面場面全然違うわけですから、一件一件全然違うわけですから、どんな事件がどこで争われているのかも違うわけですから、せめてそういう余地を残した方がよかったのじゃないかなと思うのですが、これは法務省
  166. 古田佑紀

    ○古田政府参考人 繰り返しのお答えになってしまってまことに恐縮でございますが、委員御指摘の件については、これは立案過程でもいろいろな方面からいろいろな御議論があったところでございまして、そのいろいろな御議論の結果、やはりこのビデオリンクという方式までとってやる証人尋問については、証人のみを別室に置くという形にすることが適当だという結論に至ったものでございます。
  167. 木島日出夫

    ○木島委員 立法過程で裁判所意見を聞くのは禁句かもしれませんが、いろいろな形を残しておいて、この事件はこういうやり方が被害者たる少女、被害者たる証人の利益を守り、かつ真実発見にベストだという、いろいろな選択肢を残しておいた方が裁判所としてはいいんじゃないか。本法案はイギリス型の方式のビデオリンクか遮へいか二つに一つしかないので、非常に硬直的で運用しにくいと私は率直に思うのですが、これに裁判所は答えていただけますか。
  168. 白木勇

    ○白木最高裁判所長官代理者 証人だけが別室にいて尋問者は法廷にいるという英国式のスタイル自体は法案に明確にされているところでございます。それで反対尋問権が十全であるかどうかということにつきましては、法案の解釈あるいは是非の問題ともなりますので、私どもからお答え申し上げることは差し控えさせていただきますが、法律が成立いたしました際には、この方式を前提として訴訟関係人の反対尋問権が十分に行使できるような運用がなされるべきことは御指摘のとおりであると考えております。
  169. 木島日出夫

    ○木島委員 私は、いろいろな案はあると思うのです。裁判官だけが入るというのだってあるのですよ。弁護人と検察官は別室でビデオを見ながら尋問をやる、本当に心証をとる裁判官だけが証人の面前で目の動きとか手の震えなんかも見る、そういうのだってあり得るのですね、柔軟に法律をつくっておけば。私はそういう方がいいと思っておりますが、このぐらいにして、次の質問に移ります。  ほとんどもう時間がなくなってしまいました。被害者意見陳述について法務省にお伺いします。  現行刑事訴訟法被害者たる証人への証人尋問と、本法で言う意見陳述とは何がどう違うのでしょうか。
  170. 古田佑紀

    ○古田政府参考人 委員御案内のとおり、証人尋問は、証人が認識した事実など、いわゆる事実に関して証人の認識したことを証言するということでございます。一方、今回の意見陳述と申しますのは、被害者が当該事件についてどういう心情を持っているか、その自分の心情を述べるということでございまして、自分が見聞した事実について述べるということとは若干性格が違う面があるわけでございます。
  171. 木島日出夫

    ○木島委員 大体概念としては違いがわかるのですが、では、本法で初めて認められる被害者意見陳述権が発動されて心情や意見が述べられたときに、犯罪事実に関することは一切しゃべれないのですか。そういうことをしゃべり始めたら制止されるのですか。実際上、私は混然一体となっているのだろうと思うのですね、意見陳述とはいえ、真情の吐露とはいえ。こんなひどいことをされた、こんなひどい形で強姦された、だから許せないのだ、そういうことになると思うのですよ。犯罪事実の陳述と混然一体だと思うのです。それはどうですか。
  172. 古田佑紀

    ○古田政府参考人 御指摘のとおり、ある心情を持つに至るその前提となるような事実、これはある程度の範囲で触れるということはあり得ることだと考えておりますが、これはしかし、基本的には、既に取り調べ済みの他の証拠によって明らかにされた事実に関しまして、意見の趣旨を明らかにする限度で、必要な範囲でその概要に触れるということが許されるということだと理解しております。  したがいまして、犯罪事実の詳細についての陳述というのは、これは認められない。もしそういうことが実際に起こるとすれば、裁判長による制止等の対象になるということになるわけでございます。
  173. 木島日出夫

    ○木島委員 もう時間が来たから、もう一回、次回質問できそうですから終わりますが、関連して一点だけ聞いておきます。  この法案の二百九十二条の二の第九項で「第一項の規定による陳述又は第七項の規定による書面は、犯罪事実の認定のための証拠とすることができない。」とありますね。これは意味はわかるのですが、被害者が非常に激情的な意見陳述した、そして犯罪事実にも触れた、しかし、裁判官が、余りにも激高する意見陳述態度を見て、これは本当に真実を述べているのか、この被告人に対する犯罪としての意見じゃないんじゃないかなというような逆の心証を持っちゃった場合に、これは有罪の認定のために証拠とすることはできないというふうに九項を読むのならわかるんですが、逆に、意見陳述の結果から、とてもこれは有罪にはできないなと、無罪のための、犯罪事実がないという認定のための証拠とすることはこの九項で排除されてしまうのでしょうか。
  174. 古田佑紀

    ○古田政府参考人 お尋ねのような場合が現実に起こり得るかどうかということについては、いささか想定しがたいところもあるわけでございますが、いずれにいたしましても、意見陳述の過程で何らかの犯罪事実に関する証拠調べが必要であるというような事態が生じますれば、それは改めてその証拠調べを行う、その中には、当然、当該被害者に対する証人尋問等も含まれることになるわけでございますが、そういう措置をとることとなると考えております。
  175. 木島日出夫

    ○木島委員 もう終わりますが、意見陳述というのがなかなか難しいのは、意見陳述をした、具体的に述べた事実の内容と、別途、既に行われた証人尋問として、証人としてしゃべった内容が仮に食い違っちゃった場合に、裁判所としてはどうするんだというような、そういう問題がある。  それから、やはり裁判官の心証形成に、事実は述べちゃいかぬ、原則意見を述べるんだとはいっても事実が述べられてくるわけで、やはり心証に物すごく大きな影響を与えるのは事実だと思うんです。それをこの法律で排除するといったって、実際は排除できないんじゃないかという難しさが意見陳述権にはあるということだけ指摘して、警察庁、お呼びいたしまして、別の質問も予定していたのですが、時間切れとなりましたので、きょうのところはお許しいただいて、終わらせていただきます。
  176. 武部勤

    武部委員長 西村眞悟君。
  177. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 自由党の西村でございます。  まず、この質問をさせていただく前提として、我が国刑事裁判の現状が被害者の感情を無視した裁判であるのか否かについて、私は、我が国刑事裁判は真の意味での被害者の感情を考慮しておるという思いを持っております。  と申しますのは、被害者には、右のほおを打たれれば左のほおを向けるというキリストのような心情の方が片一方におると思えば、また復讐の鬼のような方もあるわけですね。この生の声を量刑に反映させないという点では被害者の心情を直接には聞かないわけでございますが、しかし、一定の、長年の量刑の積み重ねの中でそのことは十分図られてきておるのではないか、このように思っておりました。  さて、午前中、参考人質疑がありまして、学者の諸澤先生と弁護士児玉さん、お二人の話を聞いて、その中に印象に残ることはおのおの一点ございました。  諸澤先生が、被害者の心情、被害者が主体として訴訟の中にあるべきだとおっしゃられた背景に、被害者は社会的な偏見の中におっていやされない、ああいう被害者になったんだから何か逆に加害者の方にしたのではないかなという偏見がこの社会に牢固としてあると。  また、弁護士児玉先生に、被害者意見陳述、また被害者の証人尋問における遮へい、ビデオリンク付き添い等のものを弁護士の任務の中でいかにこなしていくのかという点について実はお聞きしたんです。  ホームズ判事の時代のことで読んだ記憶を先ほどたぐっていたんですが、黒人が白人を強姦して村全体がその黒人のリンチを求めた場合に、白人の身でありながら、その黒人の弁護を引き受けた一人の弁護士の話。それは、徹底的に反対尋問を行使して、敢然としてリンチを拒否して、合理的な事実認定と合理的な量刑を導いた弁護士の墓碑銘は、彼は任務に忠実であったということを読んだことがある。  そういう意味でお聞きしましたら、これはお答えがなかったと私は思わざるを得ない。弁護士として、死刑か無期か、この紙一重の一線において、被害者陳述を、被害感情の裁判に対する吐露を許してしまうということは弁護士として許せるのか許せないのか、なかなかお答えがなかったわけです。  すべては被害者の問題を刑事訴訟の中でいかに確保するのか。それは、社会感情の中で傷ついた被害者をいやす場所としての刑事法廷というふうに流し込まれてはたまったものではありません、糾問訴訟に戻ってしまいますから。したがって、すべては裁判所の訴訟指揮、そして検察官、弁護人のそれに対する理解にかかっていると思う。したがって、これは詳細なマニュアル化、つまり刑事訴訟規則の充実が必要だと思うんですね。  意見陳述のときに、前回お聞きしましたら、証人尋問に切りかえる場合もこれありと言われましたね。だから、証人尋問に切りかえるということはいかなる質問、いかなることを陳述し始めたときにするのか等々の判断は今も白紙なわけですね。あるのは、先ほども、犯罪事実の認定のための証拠とすることができないものとするということはあります。しかし、反対に読めば、量刑に対するこれを考えてもいいんだと。しかし、量刑というのは被告人の最大の関心事であるということですね。だから、否認事件であろうが、犯罪事実を認めた事件であろうが、決定的な利害にかかわることである。  法廷で起こることはすべてそうでありますから、その点について前回質問してお答えをいただいておりますので、刑事訴訟規則またマニュアル化の充実、被害者陳述に関していかなる体制、いかなる考えを持っておられるかということについて御答弁いただきたいと存じます。
  178. 古田佑紀

    ○古田政府参考人 刑事訴訟規則におきまして何らかの規定が必要か、あるいは、必要だとすればそれはどのようなものであるかという点につきましては、これは最高裁判所御当局で御検討なさることでございますので、この場で私から申し上げることは差し控えたいと存じます。  ただ、委員御指摘の、証人尋問にすべき場合とか、そういうのはおのずと、例えば犯罪事実の認定に関する事実については反対尋問権を保障しなければならないというふうな、当然の刑事訴訟法の大原則がございますので、それに従って判断されることになると思います。
  179. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 私の危惧は、先ほど糾問的な訴訟に逆戻りする可能性ありと。なぜなら、参考人が認められたように、我が国の社会が被害者をいやさないんだ、被害者というのは何か原因があるからああいうことをされたんだというふうな目で見る。そういうふうな被害感情をいやすために医療、教育、社会保障等の充実が必要である、これはもう当然でございますが、いやすための刑事訴訟であってはならない。合理的な刑罰、そして真実を発見するための事実認定能力がそこで付与されるような形の中で、被害者の法廷にあるという問題を処理していかねばならないんだろう、このように思います。  私の危惧は、また言いますが、死刑か無期かの紙一重において、被害者の心情を語らすことによって、決定を下す裁判官が、その決定の緊張から逃避する手段として被害者陳述に流された場合に、これは、ある意味では日本裁判制度一つの形が変容していくということを危惧しております。  被害者陳述に関してはこの程度にとどめまして、次に、いろいろ聞きたいことがございますが、私の問題意識はこういう点ですので、それに沿ったあと一点だけ聞かせていただきます。  公判記録閲覧謄写被害者に認めるということがございます。しかし、訴訟は、否認事件から始まってもめにもめ続けている。これは要件は、第一回公判期日が終われば謄写閲覧が可能なわけですが、例えば、否認事件で信用性が争われている被告人の供述調書、または員面調書、検面調書等が閲覧謄写されることによって、重大なプライバシーにわたるものが流出し、流布し、ひいては裁判の公正を害する危険性がありはしないか。また、当然そのような現実に真実かどうか争われているものが、裁判所の外でひとり歩きして乱用される可能性はありやなしや、それをいかにして防止するであろうかという点について御答弁いただきたいと存じます。
  180. 古田佑紀

    ○古田政府参考人 ただいまお尋ねの点は大変重要な問題だと考えておりますが、今回の法案で、刑事裁判所が公判記録閲覧謄写を認める場合には、検察官及び被告人または弁護人の意見をまず聞かなければならないわけでございまして、当該事件の審理の状況や訴訟記録の内容などに照らしまして、閲覧謄写を必要とする理由の正当性や関係者の名誉、プライバシー等への侵害、捜査、公判への支障のおそれ、こういうような問題を慎重に検討した上で、相当と認めるときに閲覧謄写をしていただく、こういう仕組みにしているわけでございます。  ところで、御指摘のような場合に、確かに、信用性が激しく争われている段階での調書などは、その閲覧謄写を認めますと審理の状況から審理に支障を生じたり、あるいは一方で被告人や関係者の名誉、プライバシーが侵害されるおそれがあると認められる、そういうふうな場合には、被害者の方であっても、やはりその記録の閲覧謄写をさせるというのは相当でないというのが通常であろうと考えるわけでございます。  このような場合、いずれにいたしましても、検察官及び弁護人は、閲覧謄写については慎重な態度で臨むこととなると考えられまして、裁判所におきましてもそのような意見が尊重されると思っております。  なお、一言つけ加えますと、この訴訟記録の中で特に閲覧謄写の必要性が高いものは、例えば実況見分調書でありますとか、そういう客観的な、かつ変わりのないようなものが中心になっていくものと考えております。
  181. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 ありがとうございました。  すべてが本法案で始まるわけでございますね。被害者の視点と、もう一つの視点は被告人の納得性の問題であります。思い返してみれば、あの裁判で納得せざるを得ない、小生は今刑に服するが、それは納得せざるを得ないんだ、単なる被告人個人のことではなくて、被告人から相談を受けた、また被告人の周りにいる人々がそう思うような裁判でなければならない。  被害者が、かような第一歩としての裁判所での対応が開始されるわけです。これは、被害者人権が確保された、バラ色になるという面もありますが、今御答弁なさったような非常に慎重な配慮が、反対に刑事司法に携わる者に出てくる問題である、このように存じまして、今後この法案の通過後には実務的な詰めを十分やっていただきたい、このように思う次第でございます。  これで私の質問は終わります。
  182. 武部勤

  183. 保坂展人

    ○保坂委員 社会民主党の保坂展人です。  先日、週末の金曜日ですが、緊急にフォンターナ事件という事件について、この扱いをお尋ねしました。日本国籍を持つデルフォ・ゾルジというイタリア人が、三十一年前の銀行爆破事件で、先月末、三月三十日の段階で引き渡し要求がイタリア政府から日本政府にあったということが明らかになり、また、下院議長が総理との会談で、国内で大変関心が高い、このように伝えられたということも答弁で明らかになりました。  法務大臣に伺いますが、その調査を慎重にされて検討するというお答えをいただいたんですが、その後に調査の結果判明した事実等ありましたら、伺いたいと思います。
  184. 細川清

    ○細川政府参考人 先日大臣から御答弁申し上げましたとおり、この方に対する犯罪人引き渡し請求については、法務省としては、四月六日に、外務省からイタリア政府の請求書の送付を受けたところでございます。現在、引き渡し請求の理由となっているテロ事件の内容や証拠関係現時点において入手した資料等に基づいて慎重に検討する一方、さらに、帰化許可の見直しに必要と思われる所要の調査及び資料の収集を行おうとしているところでございます。
  185. 保坂展人

    ○保坂委員 法務大臣に伺いますけれども、前回民事局長は、一般論として、日本国籍を有する者であっても、爆弾テロ事件の真犯人と認められるような者が帰化していて処罰のために引き渡し要求がされたような場合には、帰化の取り消しの可能性ということについても検討する可能性があるというふうに答弁をされているんですが、同様の問いを投げかけたいと思いますが、大臣としていかがでしょうか。
  186. 臼井日出男

    ○臼井国務大臣 先般お答えをいたしたわけですが、テロという最も不特定多数の方々に対して被害を与えるようなそういう事件については、私ども日本政府としても、当然のことながら、これはしっかりと対応すべきであるということが一点言えるわけでございます。  現在、局長が御答弁を申し上げましたとおり、イタリア政府に対してそれらのいろいろな証拠関係の資料、そういうものを請求いたしまして慎重に検討をいたしているところでございまして、それらの調査の結果、いろいろなことについて判断をすべきと考えておるのでございます。
  187. 保坂展人

    ○保坂委員 法案に入る前に、もう一点だけ質問を、警察庁刑事局長に来ていただいていますので、お答え願いたいと思うんです。  まず一点、十五日付の東京新聞に、神奈川県警のカジノとか賭博ゲーム店などの摘発情報を捜査官に提供してもらう見返りに月五百万円謝礼を渡していたという業者側の証言が紹介をされているわけなんです。ちょっと紹介しますと、この業者が、複数の現職警察官に定期的に多額の現金を渡したと証言をした。そして、例えば、今月は風俗の取り締まり月間で、何日に一斉取り締まりがあるなどと携帯電話に連絡があったり、あるいはポケベルに事前に取り決めた暗号が入ったり、そうすると店を休業にするなどして家宅捜索を免れていたなどの記述があるわけですね。また別の業者は、十年間で横浜市内の警察署の捜査員約十人とつき合い、逮捕されたときにも警察署の中でもともと知り合っていた捜査員が多かった、保釈後にはあちらからお誘いもあったなど。  この点に関してのみ、一体どういう実態なのか、答弁いただきたいと思います。
  188. 林則清

    ○林政府参考人 ただいま御指摘ありました新聞記事について神奈川県警の方で調査をいたしました結果、そのような事実はないという報告を受けております。
  189. 保坂展人

    ○保坂委員 神奈川県警の方の調査がどのような実態かということをさらに注目しているわけなんです。  これはきのう出た週刊誌の報道で、九五年の十一月十六日に、現職の神奈川県警の巡査部長が銃撃をされた、そして幸い致命傷にはならずに、負傷された。この件で、後に四人の暴力団員が逮捕された。そして、そのうち三人は処分保留で釈放された。一人は起訴されたものの、この事実について捜査は尽くされたのか。この点について、つまりこのバックグラウンドに、今指摘をした業者と捜査官との癒着の問題があるのではないかという指摘もこの記事の中にあるので、その点も踏まえてお願いします。
  190. 林則清

    ○林政府参考人 今御指摘の事件につきましては、神奈川県警において捜査本部を設置するなど強力な捜査を推進した結果、同年の十二月六日までに、けん銃を発砲した一人については殺人未遂、銃刀法、火取法違反で、また残る共犯被疑者三名につきましては殺人未遂で通常逮捕したものというふうに承知しております。  捜査の結果、発砲した被疑者については銃刀法と火取法違反で起訴をされ、殺人未遂については今お話ありましたように処分保留になったものでありますが、その後、傷害で追起訴がされ、平成八年九月二十四日の控訴審判決で、懲役五年十カ月の刑が確定しておるというふうに承知しております。残る共犯被疑者三名も、殺人未遂については処分保留になったわけでありますが、その後、暴力行為等処罰ニ関スル法律違反で起訴をされ、罰金三十万円の刑が確定したものというふうに承知しております。  したがいまして、神奈川県警察としては、当時可能な限りの捜査を尽くしたものというふうに承知しておるところでございます。
  191. 保坂展人

    ○保坂委員 法務省刑事局長に伺いますが、この委員会でも、神奈川県警の特に証拠隠滅事件の際に、やはり末端の警察官だけが逮捕されて、そして幹部は逮捕されない、こういう状況について、やはり検察当局として厳しく望むべきではないかという指摘をしたのですが、今、警察庁刑事局長の答弁によると、四人の暴力団員が現職警察官を襲って、発砲して、かすって負傷しているわけですから、こういう件で、追起訴はされたと言うのですけれども、殺人未遂が適用されずに銃刀法や麻取法違反ということだけで、これは捜査を尽くしたというふうに言えるのかどうか、ちょっと振り返っていただきたいのですけれども、いかがでしょうか。
  192. 古田佑紀

    ○古田政府参考人 ただいまお尋ねの事案につきましては、神奈川県警から被疑者四名の逮捕及び送致を受けて、所要の捜査を遂げたわけでございます。  そのうち一名につきましては、ただいま警察庁刑事局長から御説明を申し上げたとおり、銃砲刀剣類所持等取締法違反それから実包の所持による火薬類取締法違反、これとともに、安全装置を解除したけん銃を被害者の頭部めがけて振りおろした際に実包一発を発射させて、その前額部に被弾をさせた、傷害を負わせたという傷害罪によって公判請求をしたわけでございます。  この点につきましては、当時、横浜地検におきまして、犯行の実情等については十分慎重な捜査を遂げて、一たん処分保留で釈放した後も引き続き所要の捜査をしたわけでございまして、その結果として、証拠関係から、やはり傷害にとどまるという認定で処理をしたというふうに承知しているわけでございます。  したがいまして、この事件につきましては、当時検察庁におきましてもいろいろな角度から十分必要な捜査は尽くしたものと考えております。
  193. 保坂展人

    ○保坂委員 最後に、では警察庁刑事局長に伺います。  神奈川県警の一連事態の中で、我々、去年から指摘してきた、組織の病理なる言葉が警察刷新会議などでも出てきていますよね、保利大臣の発言の中でも。先ほど、冒頭に指摘した点は大変重大です。これは大阪でもかつて同様の事件があったと思いますが、調査をさらに尽くして、問題があればやはり再捜査をするということも射程に入れて、きちっとこれはやっていただきたいと思いますが、この点、いかがでしょうか。
  194. 林則清

    ○林政府参考人 冒頭御指摘いただきました点も含めて、神奈川県警における現在までの捜査と調査の結果、その余の、報道されておる部分も含めて、そういった事実は認められない、今回の報道されたことをもって改めて調査を行う事項はないというふうに報告を受けておるところでございます。  もちろん、今後新たな事実が判明すれば、それは厳正に対処するという方針であるということに変わりないということでございます。
  195. 保坂展人

    ○保坂委員 時間がなくなりますので、これはもう本当に外部からチェックを入れて調査をしなければ、真実は見えてこないと思います。しかし、今外部のチェックの制度がありませんので、きちっとやっていただきたいということを言って、では刑事局長、もうお帰りになって結構です。  犯罪被害者の知る権利について質問をしたいと思います。  本日午前中の参考人質疑でも話題にしたのですけれども、最高裁の刑事事件の判決は公開をされますが、多くの事件は決定として処理をされていきます。決定ですから、当然公判は開かれないわけで、この場合、犯罪被害者は決定の告知をだれから受け取るのか、何を証拠として、どのような合議のもとにその決定がなされたのかということを知るシステムはあるのか。当然、犯罪被害者優先傍聴、こういったことをうたう法案、これは二条の中で、最高裁における犯罪被害者の立場についても想起をされて立案されたと思いますが、刑事局長、いかがでしょうか。
  196. 古田佑紀

    ○古田政府参考人 ただいま委員からもお話のあったとおり、決定によって終了する場合は、これは口頭弁論が開かれない、したがって公判期日がないので、傍聴ということはないことになるわけでございます。  この決定につきましては、検察官におきましてもその決定の謄本が送達されて初めて知ることになるわけでございまして、こういうふうな場面で、検察庁の被害者等通知制度によりますと、控訴あるいは上告などの上訴があった場合の裁判結果も御通知をすることになっておりますので、基本的にはそれによって御通知をするということになると考えております。
  197. 保坂展人

    ○保坂委員 大臣にお聞きしますが、裁判長は、直接の被害者あるいはその親族並びにその関係者、遺族の場合もありますけれども、こういう犯罪被害者の方たちに、特にこの傍聴について配慮するというこの法案の意図は、つまり、なるべく当事者の方に情報を、判決の瞬間あるいはその公判の推移を見守っていただくという趣旨だろうと思うんですね。今刑事局長から答弁があったように、その決定については、これはないわけですから、これについての経過、どんな証拠に基づいてどうなったのかということをやはり知りたいという思いはあるだろうと思います。この点についてお考えを聞かせていただきたいと思います。
  198. 臼井日出男

    ○臼井国務大臣 ただいま刑事局長からお答えを申し上げましたとおり、現行法の取り扱いについては合理的な理由があると私どもは考えておりまして、この点につきまして特に手当ての必要があるというふうには考えておらないところであります。
  199. 保坂展人

    ○保坂委員 いや、大臣、これは立法の意図自体が、犯罪被害者の立場というのはこれまでの刑事司法の中になかったんです。なかったからきちっと位置づけようと。私は、やはりこれは基本法の体系をつくって、それからいろいろな手続に入るのが正当な順番だと思っていますが、しかし、閣法からこういうことで提案をされているので、その立法意図からすれば、最高裁が決定をしたところで、遺族やあるいは被害者自身がこれについてなるべく知りたいということを、これは決定だからそれは排除されるんだということにはならないはずなんですね。これについてどのようにお考えなっているのか、ちょっと今の答弁じゃ提案者として不十分ではないかと思うんです。
  200. 古田佑紀

    ○古田政府参考人 最高裁におきまして決定をいたします際には、基本的には、それまでの訴訟記録及び証拠物のあるものはその証拠物など、仮に事実に関する問題が含まれた場合でありましても、そういう範囲の資料で判断をするわけでございます。  ただ、委員御案内のとおり、最高裁の中心の役目は、もちろん法律判断でございます。したがいまして、法律判断につきまして決定が行われる場合、これは普通でございまして、そういうときには、これは特に何か具体的な証拠資料とかそういうものが前提となるものではないということを御理解いただきたいと思います。
  201. 保坂展人

    ○保坂委員 これは司法制度改革の議論そのものになると思うんですけれども、今回の法案、刑事司法手続において犯罪被害者を位置づける、そういう意味では画期的な一歩を記している法案でありながらまだまだ不足点があるというのは参考人の方も午前中述べられたとおりで、例えば、刑事事件犯罪被害者が、真実追求のために、あるいはその損害賠償請求のために民事裁判を起こす場合がありますよね。この場合、これまでは、つまり三年ぐらい前までは、最高裁判所の判決が出るその当日も本人に知らされなかったわけですね。大法廷以外は告知されない。しかしこれは、この法務委員会審議もあって、民訴法の改正によって最高裁規則が改められて、本人には知らされるというふうになったんです。ところが、場合によると、非常にレアケースかもしれませんが、口頭弁論は開かれたけれども、決定になってしまったので、その日は告知されないみたいなケースも民事裁判においてもあるんですね。  これは法務省としても、これはもう裁判所が第一義的には決めることですけれども、犯罪被害者が捜査段階においても、公判段階においても一貫して同じ哲学を持った取り扱いを受けるという意味で、この点もやはり配慮していただきたいと思いますが、大臣はいかがですか。
  202. 臼井日出男

    ○臼井国務大臣 上告申し立ての場合に、口頭弁論を開くか開かないかということは裁判所の判断によるわけでございますが、委員御指摘のとおり、口頭弁論が開かれるような場合については、被害者に対してもしっかりと報告できるようなことにすべきだ、こういうふうな感じを持っております。
  203. 保坂展人

    ○保坂委員 大変踏み込んだ答弁で、裁判所にもぜひそういうふうに努力をしていただきたいと思います。  今回法制審に諮問がされた、被害回復に資するための没収及び追徴に関する制度が検討されたと思いますが、最終的には今回の法案には盛り込まれなかった。この議論とプロセス、時間がないので簡単に、どういう事情だったのかお答えいただきたいと思います。
  204. 古田佑紀

    ○古田政府参考人 お尋ねの件は、いわゆる財産犯につきまして、その被害に係るもので、犯人の方の手元に残っているものについて没収あるいは追徴のための保全をかけ、それを被害回復に充てるということであったわけでございます。  ただ、これにつきましては、この没収保全あるいは追徴保全の制度が、昨年成立いたしました組織犯罪対策法によっていわば本格的に導入されたもので、まだその運用をいろいろ見守ってみなければならないというふうな問題がある、それから、ほかの殺人等の被害者との関係での均衡をどうするかという問題、あるいは、財産犯の中で多数の被害者がいる場合の、起訴された事件被害者の方と不起訴になった方との間のバランスをどうするかというふうな問題などがありますことから、より広い角度でさらに検討を続けて結論を得ることが適当だという判断になったものでございます。
  205. 保坂展人

    ○保坂委員 先日、犯罪被害者の方の御意見を聞く機会がこの委員会でありましたけれども、例えば治療費も莫大なものが請求されてくる、あるいは、あらゆる費用が自費負担である。犯給法という法律はあっても、これは、各委員から指摘されているように、お見舞金程度のものでしかない。国が犯罪という不当にして理不尽な行為によって多くのものを奪われた犯罪被害者に対してこれをきっちり補償していくんだ、基本的に国が私的な報復を禁じている一方で、こういうふうに踏み込むべきじゃないかという議論が各方面からあると思います。私もそう思いますが、法務大臣のこの点についての見解をお願いしたいと思います。
  206. 山本有二

    山本(有)政務次官 先生の御指摘は、犯罪被害者がこうむった損害について国家が補償すべきではないのかということであると思いますが、犯罪による被害につきましては、加害者である犯人がその損害を賠償するのが大原則でございまして、犯罪被害者は犯人に対して不法行為に基づく損害賠償請求をすることができるものとされておりますことから、犯罪被害者に国が直接損害を補償するというような方策については、慎重な検討を要すると考えております。  なお、犯罪被害者被害の緩和を目的に、犯罪被害者等給付金支給法により、人の生命または身体を害する犯罪行為により不慮の死を遂げた者の遺族または重障害を受けた者に対し、国が犯罪被害者等給付金を支給する制度がございます。同制度の充実につきましては、警察当局におきまして、諸般の事情を考慮して適切に対応されるものと承知しております。  以上です。
  207. 保坂展人

    ○保坂委員 大臣、今の政務次官の説明は、実に的確に現状を答弁いただいたと思いますが、この現状が世界各国制度整備に比べて大変貧困なのではないかという指摘を私もしたいと思いますし、各方面からあります。これで十分ではないと思いますので、この点の改善に向けた大臣の決意を伺って、終わりたいと思います。
  208. 臼井日出男

    ○臼井国務大臣 今、政務次官から答弁を申し上げましたとおり、犯罪被害者に対して国が直接損害を補償するというような方策については、やはり慎重な検討を要するというふうに考えております。
  209. 保坂展人

    ○保坂委員 残念なんですが、時間が来たので、では、ぜひ次の機会にその点の決意をじっくり伺いたいと思います。
  210. 武部勤

    武部委員長 次回は、来る二十一日金曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時四十一分散会