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2000-03-29 第147回国会 衆議院 法務委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十二年三月二十九日(水曜日)     午前九時三十分開議  出席委員    委員長 武部  勤君    理事 笹川  堯君 理事 与謝野 馨君    理事 横内 正明君 理事 北村 哲男君    理事 倉田 栄喜君 理事 西村 眞悟君       太田 誠一君    加藤 紘一君       金田 英行君    熊谷 市雄君       左藤  恵君    菅  義偉君       園田 博之君    藤井 孝男君       保岡 興治君    山本 有二君       渡辺 喜美君    枝野 幸男君       坂上 富男君    漆原 良夫君       安倍 基雄君    木島日出夫君       保坂 展人君     …………………………………    法務大臣         臼井日出男君    法務政務次官       山本 有二君    最高裁判所事務総局家庭局    長            安倍 嘉人君    政府参考人    (内閣総理大臣官房管理室    長)           坂東眞理子君    政府参考人    (警察庁長官)      田中 節夫君    政府参考人    (警察庁長官官房長)   石川 重明君    政府参考人    (警察庁長官官房審議官) 佐々木俊雄君    政府参考人    (警察庁刑事局長)    林  則清君    政府参考人    (法務省民事局長)    細川  清君    政府参考人    (法務省刑事局長)    古田 佑紀君    政府参考人    (法務省矯正局長)    鶴田 六郎君    政府参考人    (国税庁課税部長)    河上 信彦君    政府参考人    (厚生省児童家庭局長)  真野  章君    政府参考人    (社会保険庁次長)    高尾 佳巳君    政府参考人    (林野庁長官)      伴  次雄君    法務委員会専門員     井上 隆久君     ————————————— 三月二十九日  子供の視点からの少年法論議に関する請願(伊藤茂紹介)(第八三一号)  同(家西悟紹介)(第八三二号)  同(池端清一紹介)(第八三三号)  同(辻元清美紹介)(第八三四号)  同(深田肇紹介)(第八三五号)  同(村山富市紹介)(第八三六号)  同(山元勉紹介)(第八三七号)  同(家西悟紹介)(第八五三号)  同(池端清一紹介)(第八五四号)  同(石井郁子紹介)(第八五五号)  同(金田誠一紹介)(第八五六号)  同(辻第一君紹介)(第八五七号)  同(辻元清美紹介)(第八五八号)  同(平賀高成紹介)(第八五九号)  同(山元勉紹介)(第八六〇号)  同(金田誠一紹介)(第八九九号)  同(北側一雄紹介)(第九〇〇号)  同(辻第一君紹介)(第九〇一号)  同(辻元清美紹介)(第九〇二号)  同(保坂展人君紹介)(第九〇三号)  同(松沢成文紹介)(第九〇四号)  同(金子満広紹介)(第九二三号)  同(金田誠一紹介)(第九二四号)  同(北側一雄紹介)(第九二五号)  同(辻第一君紹介)(第九二六号)  同(保坂展人君紹介)(第九二七号)  同(松沢成文紹介)(第九二八号)  同(北側一雄紹介)(第九四一号)  同(北村哲男紹介)(第九四二号)  同(斉藤鉄夫紹介)(第九四三号)  同(松沢成文紹介)(第九四四号)  同(斉藤鉄夫紹介)(第九七〇号)  同(日野市朗紹介)(第九七一号)  同(山本孝史紹介)(第九七二号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  政府参考人出頭要求に関する件  裁判所司法行政法務行政及び検察行政国内治安人権擁護に関する件     午前九時三十分開議      ————◇—————
  2. 武部勤

    武部委員長 これより会議を開きます。  裁判所司法行政法務行政及び検察行政国内治安人権擁護に関する件について調査を進めます。  この際、お諮りいたします。  各件調査のため、本日、政府参考人として内閣総理大臣官房管理室長坂東眞理子君、警察庁長官田中節夫君、警察庁長官官房長石川重明君、警察庁長官官房審議官佐々木俊雄君、警察庁刑事局長林則清君、法務省民事局長細川清君、法務省刑事局長古田佑紀君、法務省矯正局長鶴田六郎君、国税庁課税部長河上信彦君、厚生省児童家庭局長真野章君、社会保険庁次長高尾佳巳君、林野庁長官伴次雄君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 武部勤

    武部委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  4. 武部勤

    武部委員長 次に、お諮りいたします。  本日、最高裁判所安倍家庭局長から出席説明要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 武部勤

    武部委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  6. 武部勤

    武部委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。倉田栄喜君。
  7. 倉田栄喜

    倉田委員 公明党の倉田でございます。  前回も、いわゆる犯罪被害者立場権利についてお尋ねをさせていただきました。きょうも、引き続いて犯罪被害者権利、特にきょうは少年犯罪被害者立場権利についてお伺いをさせていただきたいと思います。  その中で、特に犯罪被害者への情報提供について、先般、法務大臣記者会見の中で、不起訴記録情報開示の道がとられるということで、大変結構なことだと評価をしたいと思います。  そこで、犯罪被害者への情報提供ということに関しまして、これも前回お尋ねをいたしましたけれども、警察庁法務省にまとめてお伺いをさせていただきます。  まず、警察庁被害者連絡制度、概要の御説明はこの間いただきました。この被害者連絡制度は、いただきました資料では、連絡適否判断して、適当と認められれば、被害者及びその遺族連絡をする、こういうふうになっております。そこで問題は、連絡適否判断する、これは基本的には警察裁量ということになる。そうすると、どういう判断基準連絡をするのかしないのか。被害者及びその遺族ということになっておりますけれども、被害者が亡くなられた場合については、その遺族のだれに対してやるのか、これをまず警察庁にお聞きをします。  あわせて、次は、検察庁被害者通知制度であります。  これも、通知される範囲被害者等、こうなっているわけでありますけれども、等とは、いただいた資料には書いてあるのでありますけれども、その等の全部に通知をされるわけではないでしょうから、その等のどなたに通知をされるのか。そして、その場合も、通知をしない方がよいと判断される場合が、これは検察庁通知制度でもあるわけであります。この場合の検察官の判断基準はどのようなものか。やはりここの点が明確になっていかないと、犯罪被害者の方の権利宣言の中にも、情報を提供される権利ということが言われるわけであります。また、知る権利と言ってもいいと思いますけれども、そういうことが明確でなく、実効性がどう担保されるかという問題があると思います。  三点まとめて聞きましたけれども、ひとつ簡潔にお答えいただければと思います。
  8. 林則清

    林政府参考人 お答え申し上げます。  警察被害者連絡制度適否判断基準とか、あるいは連絡を受ける者の範囲等についてのお尋ねでございました。  警察におきましては、殺人、強盗や重大な傷害といった身体犯、それからひき逃げ事件及び交通死亡事故を一律に被害者連絡制度対象事件として定めまして、その被害者成人であれば被害者本人に対して、それから被害者少年の場合には原則として保護者被害者連絡を行っておるわけであります。被害者が亡くなられておる場合におきましては、その家族等遺族連絡を行っております。また、これら以外の事件につきましても、各都道府県の実情に応じて、被害者連絡を実施するように努めておるところであります。ちなみに、連絡の時期というものにつきましては、検挙した場合につきましてはその後速やかに、検挙に至っていない場合については、原則として、被害申告後おおむね二カ月を経過した時点連絡を行うということであります。  それから、それが恣意的に行われるんじゃないかといいますか、警察の思いつきで行われるのではないかというようなお尋ねがございました。これにつきましては、各警察署におきましては、被害者連絡経過票というものを持っておりまして、被害者連絡実施状況というものを把握して、その連絡が決められたとおり確実に行われるよう幹部が指導監督するということになっておりまして、そういった連絡適否につきましても組織的な判断を行っておるというのが実情でございます。
  9. 古田佑紀

    古田政府参考人 委員お尋ねの第一点の被害者等範囲でございますけれども、被害者等と申しますのは、被害者、その親族もしくはこれに準ずる者、準ずる者というのは、例えば内縁関係にある者とか、こういうのを含むということでございます。被害者等というのはそういうことでございますが、そのほかに、弁護士さんであります代理人につきましても通知対象とするということにしております。  次に、通知をすることが適当でないという判断基準についてのお尋ねですけれども、これはいろいろな場合があるわけですが、一つは、関係者の名誉その他の利益を不当に害するおそれがある場合、二つは、関連事件捜査または公判運営支障が生ずるおそれのある場合、三点として、将来における刑事事件捜査または公判運営支障が生ずるおそれがある場合、それから四点として、犯人の改善更生を不当に妨げるおそれがある場合、最後に、通知することによって新たな紛争または事件が誘発されるおそれがある場合ということでございます。  それから、対象者をどういうふうに、例えば複数いるようなときにどうするのかということでございますが、基本的には、取り調べを実施した場合に、取り調べをした方に対して通知の希望の有無を確認するということでございます。ただ、死亡事件とかそういうものにつきましては、取り調べをしなくても、最も関心を有すると思われる方に御意向を確認するということにしております。
  10. 倉田栄喜

    倉田委員 警察庁被害者連絡制度もあるいは検察庁被害者通知制度も、従前こういうことがきちっとしていなかったということから比べれば、こういう制度ができていることは評価してしかるべきだ、こういうふうに思います。  ただ、今お答えにもありましたように、いわゆるプライバシーであるとか捜査であるとか、通知をすることによって非常にまずいことが起こるのではないのか、そういう配慮も必要だと思います。これは連絡制度も同じだと思うのですけれども、それが基本的には警察庁なり検察庁のいわゆる判断の中にある。そうすると、これは通知しない方がいいという判断主体はやはり警察であり検察の方であるわけですね。もちろん、一定の場合は、非常に重要事件重大事件については全部通知しますよというお話があったわけでありますけれども、この流れから見る限りはまだまだ、いわゆる通知を受ける被害者立場から見れば、通知をしてもらえるのかもらえないのかという受け身の立場にあるわけであります。  したがって、ここはこれからまた制度も鋭意検討していただいて、通知をしてしかるべきものはきちっと、被害者側権利として必ず通知をしなければならないんだ、その例外は、こういう場合はやはり通知をしないんだということが透明になって、なるほどというふうに、その判断基準というものが明確になるように特に要望をしておきたい、こう思います。  そこで次は、一般に、犯罪被害者の中で少年犯罪被害者がどういう立場に置かれているのか、この点をお聞きしたいと思うわけであります。  少年犯罪被害者の場合、それから一般刑事事件の場合とで、警察庁連絡制度及び検察庁通知制度運用は同じなのか。基本的に連絡制度通知制度対象にはなっていると思います。しかし、裁量であったり、あるいは通知するのが適当でなかったりということで、そこの判断基準には裁量の余地があるわけですね。そうすると、一般刑事事件の場合と少年犯罪の場合と、その連絡通知においてどう異なるのか、そこをまずお尋ねしていきたいと思います。これは警察庁法務省それぞれに。
  11. 林則清

    林政府参考人 少年事件の場合と成人刑事事件の場合に、被害者連絡制度運用がどう異なるのかという趣旨のお尋ねでございますが、警察におきましては、被疑者少年である場合におきましても、御指摘のように、原則として成人事件と同様に被害者の方への連絡を行うということにしております。  ただし、この少年事件の場合には、少年健全育成を期するという観点がございますので、被害者の方に対しても被疑少年更生を図るということの重要性説明することといたしておりまして、さらに、被疑少年が今度はいじめ等被害に遭うなど、具体的にそういった少年健全育成を害するおそれがあると認められるようなときには、被害者連絡においては被疑少年氏名にかえてその保護者氏名連絡にとどめるというような配慮を行っておるところでございます。
  12. 古田佑紀

    古田政府参考人 少年事件につきましての通知あり方については、基本的な考え方はただいま警察御当局から話があったことと同様でございますが、特に少年の場合には、氏名等が推知されるような報道などをしてはならないという規定などもございまして、やはり少年健全育成ということを非常に重視しなければならないという問題がございますので、氏名等通知することについては、そういうことで問題がないかどうかについて非常に慎重な配慮をしながら行っているわけでございます。
  13. 倉田栄喜

    倉田委員 当委員会に後でまた出てくると思いますけれども、今回閣議決定された犯罪被害者保護手続に関する法律の中で、いわゆる公判中の記録謄写閲覧というのも盛り込まれているわけであります。  そこで、少年事件について、家庭裁判所に送致された後の審判中の記録がどうなっているかということでありますけれども、これは少年審判規則七条にたしか規定があるというふうに思います。裁判所許可に係らしめているという規定ぶりだと思いますけれども、この少年審判中のいわゆる記録というのは裁判官許可をすれば見られることになっているんだとは思いますけれども、実際の運用はどういうふうに行われているのか。これは、きょうは裁判所にもお見えいただいておりますけれども、どうでしょうか。
  14. 安倍嘉人

    安倍最高裁判所長官代理者 御説明申し上げます。  委員指摘少年審判規則第七条の規定は、少年事件記録扱いにつきまして、少年健全育成、そして秘密保持要請という観点から、その記録閲覧謄写については裁判官許可に係らせるという制度をとっているものでございます。  今お尋ねの、被害者の方から記録閲覧謄写の申請があったときの扱いでございますけれども、一般的には、記録閲覧等被害者の方の正当な権利行使のために必要な場合におきましては、少年事件秘密性要請を踏まえつつ、少年情操保護更生等の妨げにならない範囲におきまして、記録閲覧謄写に応じる運用がされているという認識でございます。  なお、その閲覧謄写の時期についてでございますが、事実認定が明らかになった時点閲覧等をする方が被害者の方にとってはその目的によりかなうという面があろうかと思われますけれども、事件の係属中であるからといって制度制約があるというものではないということでございます。  以上でございます。
  15. 倉田栄喜

    倉田委員 一般刑事事件被害者の場合と、少年犯罪被害者の場合とで、被害者という立場は同じであったとしても、その立場地位あるいはその権利性というのは、少年審判の中では、先ほどお答えの中にもありましたけれども、少年健全育成、あるいは被疑少年更生を図る、少年審判そのもの非公開とされている。今お答えがありましたように、秘密性をどう保持するか、そこでの制約があるわけですね。そうだとすれば、その制約がある反面、被害者家族あるいは被害者の方はその反面に制約をされるという立場を受けなければならない、こういう立場にあるわけであります。  今度の犯罪被害者保護法の中でも、例えば、和解調書について一定効力を持たせるとか、従来から比べれば相当前向きの法律ができると思うわけであります。しかし、少年事件については、今申し上げましたように、非公開あるいは秘密保持少年健全育成、要保護性観点から、なかなかそうはいかない。そうすると、少年犯罪被害者の方にとっては、確かに理屈の上ではそうだとは思いながらも、同じ被害が起こっているのにどうしてという、感情の問題ではなかなか納得できないということがあるんだと思うのですね。  一方で、例えば、これは申し上げるだけにいたしますけれども、少年による犯罪被害が起こったときに報道がされる。報道の前提としていわゆる警察発表がある。これは事件が起これば翌々日か翌日に、どういうことなんですか、原因は何ですかなんということをマスコミに聞かれると、警察の方が発表される。それが正確であればいいのであるけれども、時として、ここにも例はあると思いますけれども、集団によるいじめがけんかであったり、あるいは本当にそれは刑事事件なのに事故と扱われるような、警察発表があったからそういう報道があるんだろうと思いますけれども、そういうことになって、結局、ではそういうふうに報道された犯罪被害者方々というのは、何だという思いを持たれる。そこにおいては、犯罪報道による一種の二次被害かどうかわかりませんけれども、言葉は悪いけれども一種の逆冤罪みたいな、言い知れない気持ちみたいなものも実際にはあるわけであります。  そういう気持ちがあって、なおかつ、少年審判の中においては、少年健全育成秘密性少年保護育成を図る、そういう観点から、少年犯罪被害者方々は甘んじて受けておられるわけですね。今回の一般刑事事件犯罪被害者保護法に関しても、公判傍聴権であるとかあるいは記録閲覧権であるとか被害者意見陳述権、そして和解調書における一定民事上の効力が認められるということになるんだとすれば、少年犯罪被害者方々はますます、いわば少年健全育成という国家の、国を親とする、そういう目的のために我慢を強いられている部分が多くなるわけですね。そこはやはり何か考えなければいけないのではないのか。  これは法務大臣にお聞きをいたします。これから出てくる犯罪被害者保護法でありますけれども、公判傍聴権とか記録閲覧権とか被害者意見陳述権、そして調書における民事法上の一定効力、これは私も無理だなと思いながらお聞きをするわけでありますけれども、少年犯罪被害者の方に対してはこういう配慮というのはどうしてできないのでしょうか。
  16. 臼井日出男

    臼井国務大臣 ただいまいろいろ御指摘がございましたけれども、委員指摘の御意見一つの見解であると思われますけれども、少年審判手続が、犯罪を犯した者に対し国家刑罰権を発動する刑事訴訟手続とは異なっておりまして、少年健全育成を期して、非行のある少年に対して保護処分を行うことを目的とするものでございますので、被害者に対する配慮あり方も、その点を考慮しつつ慎重に検討する必要があるものと考えているのでございます。
  17. 倉田栄喜

    倉田委員 大変難しい問題があるということは、今大臣お答えぶりからも推察はできるわけであります。しかし、被害者という立場だけを見れば、それはなかなか、少年犯罪であるがゆえに受けなければならない立場をどう納得をしてもらうか、どう理解をしてもらうかということについては、やはりきちんと説明をしなければいけないし、きちんと説得できるようにしなければならないんだと思うのですね。  少年法の基本的な大理念というのをきちっと生かしながら、なおかつ少年犯罪被害者方々にもなるほどとそれを理解してもらいながら、そしてできる限りの中で少年犯罪被害者方々の、家族も含めて、権利地位立場というのをきちっとしていくことは必要であろうかと思うのです。この点から二点だけ。  一点は、つまり少年犯罪被害者方々は、一方で、少年法理念あるいは少年健全育成、国を親とする思想のもとで、その立場の上で理解をして一歩下がっておられる。そこはそれとしてなるほどねと言わなければならないんだとしたら、一方で、ではそこをフォローするものを何かほかの形で考えるべきなのではないのか。  この点は二点だけ申し上げておきたいと思いますが、一点は、少年保護する、保護責任者保護という意味、それは国であったり親であったりするわけですね。そうすると、そこがあるがゆえに少年犯罪被害者立場権利というのは一歩退いているわけでありますから、では保護ということを名目に言うのであれば、保護者責任、これは民法法行為でいけば、保護者に、自分の子供が、少年犯罪を起こした場合に保護者責任はどう問えるかということになれば、それは法行為上いえば監督責任だとか、十分注意していればそういうことを起こすことがわかっていたという、因果関係のもとでの保護責任しかない。だから、民法上の法行為とか因果関係理念からいけばそうなのであります。  しかし、少年犯罪被害者という方は、保護という名目の中で一歩引いているわけですから、私は一方で、保護責任者保護責任というのを国であれ親であれ何らかの形で明確にして、その分我慢してもらうんですから、少年犯罪被害者方々に対してはこういう対応をしますよということは考えられるべきではないのか。そういう意味では、少年犯罪保護者責任ということを一点明確にすべきではないのかということが一つございます。これも大変な問題だなと実は申し上げながら思っているのですけれども、何か考えなければいけない、そのことが一つ。  それから、それに関連して、この間は、一般刑事事件のいわゆる犯罪被害者弁護人国費でつけるべきではないのか、こういう議論をしました、これもなかなか難しい話だと思いますけれども。この少年事件被害者方々は、少年健全育成だとか審判非公開だとか要秘密性だとか、少年更生を図るという観点からそれだけ立場が下がっているわけでありますから、少年事件犯罪被害者の方にとっては、特に国費弁護人支援弁護人というのか、そういうのをつけてもいいのではないのか、私はこういうふうに思います。少年の要保護性という、それだけそこの立場から下がっているわけですから、そういうことが考えられてしかるべきではないのか、こう思うわけでありますけれども、最後法務大臣、この二点についてお伺いして、質問を終わります。
  18. 山本有二

    山本(有)政務次官 前段の保護者責任法律上明確にすべきではないかという御質問に対しましては、先生が御指摘になられたように、少年法というのは、国親思想を背景といたしまして、少年健全育成を期し、非行のある少年に対しまして保護処分を行うことを目的とするものでございます。  また、少年非行に対する保護者の関与の度合いには種々のものがございまして、保護者責任をいかなる内容のものとするか、それが少年健全育成に悪影響を与えるものではないかというような点につきまして、さまざまな角度から慎重に検討すべきものと考えておる次第でございます。  したがいまして、今後、さらに先生の御指摘等を踏まえて検討を重ねていきたいというように考えております。  後段の少年犯罪被害者につきましては支援弁護人制度国費で設けるべきではないかという御指摘に対しましては、犯罪被害者に対しまして国費により弁護士を付する制度につきましては、これが少年審判手続への被害者の関与のあり方にも関連するものでございます。ひいてはその基本構造にかかわるものでございますので、このような関与、さらには基本構造のあり方をどのように考えるか、その弁護活動の範囲、内容はどのようなものとするかなど、さまざまな観点からその必要性などにつきまして慎重に検討する必要があろうと考えております。  なお、現在国会で審議中の民事法律扶助法が成立いたしますれば、犯罪被害者やその遺族で資力に乏しい方々につきまして、扶助を受ける要件を満たす場合には民事法律扶助を活用することが可能となる次第でございます。  以上でございます。
  19. 倉田栄喜

    倉田委員 法務大臣最後に一言だけ。一般刑事事件に比べて、少年犯罪被害者方々少年健全育成という国家理念国親思想のもとで一歩引いた立場にある、そのことについてやはり何か考えるべきであるというふうに今申し上げたわけでありますけれども、大臣はどのようにお考えになりますか。
  20. 臼井日出男

    臼井国務大臣 一般の裁判の場合と少年審判の場合と理念が違うので、手続等も大変大きく違っております。そういった点について、被害者立場から申しますと、被害を受けたということについては何ら変わりないわけでございまして、そうした点も十分配慮しながら今後考えていく必要があると思っておりまして、少年法の改正につきましても、そうした点もぜひとも御討議をいただければと思います。
  21. 倉田栄喜

    倉田委員 終わります。
  22. 武部勤

    武部委員長 坂上富男君。
  23. 坂上富男

    ○坂上委員 坂上富男でございます。  本日、私は質問時間を四十分いただいております。また、私は質問は実は三番手であったのでございますが、西村先生にお願いをいたしまして、二番手で質問をさせてもらうことになりました。法務大臣が途中で、私の三番手のときは全くいられないというような事情もあるんだそうでございまして、お譲りをいただきまして質問をさせていただくという形でございまして、大臣には三問題だけ質問をさせていただきますので、それが終わりましてから、どうぞ御退場いただいて結構でございます。  また、私の質問項目は五項目にわたっております。一つは、登記簿閉鎖問題が大変けさあたりから報道されておりますが、この問題、これはあわせて大臣にも質問させてもらいます。それから、人工授精による嫡出子推定問題、こういうものと立法の関係についてもお聞きをさせてもらいます。それから、新潟県警公電磁的記録不正作出、同供用被疑事件に関連をいたしまして、大臣にも御質問をさせていただく。そのほかに、新潟県警の女性長期監禁事件と、林野庁所属公益法人の二法人の問題点について質問をさせていただく、こういう段取りになって、少し時間が足りませんければ、月曜日の午後から決算行政監視委員会でも質問時間をいただいておりますので、あるいはきょうせっかくお出かけいただきながら質問をできないという結果に終わるかもしれませんが、お許しをいただきまして来週に質問を回してもらう、こういう形になろうと思いますので、御了解をいただきたい、こう思っておるわけでございます。  まず一つは、大変ショッキングな記事でございます。戸籍と登記、これはもう本当に信頼に足るものだ、こう国民は思っておるわけでございます。そういたしましたら、きょうこういう見出しで記事が出ております。代議士秘書が口ききをした、登記簿閉鎖で仮差し押さえを隠した、法務局幹部に働きかけをした、購入者はだまされた、登記制度の根幹を揺るがす問題である、こういう記事がまず載っておるわけでございます。私は、ある程度わかるんでございますが、登記の詳細についてはなかなか事務的なことはわかりませんので、それもあわせながらまず質問をさせていただきたい、こう思っておるわけであります。  これは、簡単な経過を申しますと、ある不動産会社がマンションを建てたところ、そのマンションに対していわゆる整理回収機構が仮差し押さえをした。そして仮差し押さえを受けたこのマンションの社長が代議士さんの事務所へ相談に行って、この仮差し押さえを何とか抹消できないか、こういうお話になって、秘書が東京法務局に話を持ちかけた。しかもその地元の法務局は、どうも千葉のようでございますが、千葉の法務局は、これは抹消することはできませんと拒否をした、こういう話のようでございます。しかしながら、不動産登記法七十六条第四項の規定を準用して登記簿を閉鎖して、新しい登記簿をつくった。そして、新しい登記簿でございますから、仮差し押さえが新しい登記簿に登載をされないでいる、どうもこういうような問題のようでございます。そうだといたしますと、これはなかなか大変な問題でもあるわけであります。  そこで、私が今ちょっと調べてみたところによりますと、不動産登記法の第七十六条の第一項では、「登記用紙ノ枚数過多ニシテ取扱不便ト為ルニ至リタルトキハ其登記ヲ新用紙ニ移スコトヲ得」、こう書いてあるんですね。それから、第四項に「第一項及ビ第二項ノ規定ハ表題部又ハ各区ノ枚数過多ニシテ取扱不便ト為ルニ至リタル場合」もこれを準用する、こう書いてあるわけであります。そこで、今度は七十六条ノ二でございますが、「登記ヲ移シ又ハ転写スル場合ニ於テハ現ニ効力ヲ有スル登記ノミヲ移シ又ハ転写スヘシ」こうあるんですね。  そこで、新しい登記簿謄本に移って仮差し押さえが抹消にならないとき、私たちが登記簿謄本をもらいますと仮差し押さえは載っておりますか、載っておらないんですか、まずそこからどうぞ。簡単でいいですよ。
  24. 細川清

    細川政府参考人 仮差し押さえが現に効力を有するものであるときは、移記されたときでも当然にそれは新しい登記用紙に載るわけでございます。本件では、新聞だけで見て申し上げますが、仮差し押さえは抹消されております。これは債権者と話し合いがついて抹消したんだと思いますが、抹消しておりますので、そういう場合には現に効力を有しませんので、移記されない扱いになるわけでございます。
  25. 坂上富男

    ○坂上委員 今局長が新聞を表示されましたので、私もこの表示を見てみますと、仮差し押さえが抹消になった登記簿謄本が出ているんですね。もしも仮差し押さえが効力があれば、ここに載っているという形になるわけですね。それで今局長の方は、これは新しい登記簿謄本が出る前に合意によって抹消されたんだというような御答弁のようですが、これを見てみるとそういうようなことも全く書いていないわけでございまして、私はこれは今答弁としてはちょっとおかしいんじゃなかろうかなとは思いますが、あるいは私の勘違いかもしれません。  少なくとも報道に関する限りは、まだ仮差し押さえは生きておって、それが新しい登記簿に載ったとしても、この仮差し押さえというのは生きて載っておるべきものがどうも載っていないんじゃなかろうかなという感じがしているんですが、新聞には、合意によって抹消された、こう書いてありますか。
  26. 細川清

    細川政府参考人 登記の抹消の手続は、登記権利者と登記義務者が共同申請いたします。ですから、この仮差し押さえを抹消するためには、この差し押さえの登記権利者である、この新聞に載っております登記簿上ですと整理回収銀行でございますが、その整理回収銀行と、それからその所有者、抹消しようとする人が、双方申請がなければならぬということですから、双方申請ということで、当事者がお互いにそれに同意しているということが当然推定できるわけでございます。
  27. 坂上富男

    ○坂上委員 新聞には載っていないそうですが、推定だ、こうおっしゃっている。私はこれはまだちょっとわかりません。  登記簿謄本をとったら仮差し押さえが載っていないというのは、どうも事実のようでございます。しかも、これは合意によって抹消したんだ、こういう推定だ、局長はこうおっしゃっておりますが、果たしてそうなんでございましょうかね。それはそれで結構です、私の勘違いかわかりませんが。  そこで問題は、そういたしますと、登記簿謄本に仮に仮差し押さえが載っていたとすれば、登記簿謄本をとったら仮差しがあるということはわかる。しかし、登記の閲覧だけだったら、新しい登記簿謄本を見れば、これは登記簿を見ても仮差しが載っていないので、おや、これは差し押さえがあるかないかということがわからぬということになります。これはそういうことを言っているんじゃないですか、どうですか。
  28. 細川清

    細川政府参考人 新登記用紙に移記する場合には、不動産登記法に規定がございますように、現に効力を有する登記を移記しろということになっております。ですから、仮差し押さえが現に効力を有するものであれば当然に移記されるわけで、そのときに、その時点で登記簿謄本をとればそのことがわかります。それから、仮差し押さえが現に効力がない、この新聞では抹消されておりますので、その後に移記されますと、新しい登記簿には仮差し押さえが記載されない、移記されないという扱いになります。ですから、それは過去に仮差し押さえがあったかどうかがわからないということになるわけでございます。  この新聞の「現在の登記簿」という左側の方をごらんいただきますと、最後に、「不動産登記法第七十六条第四項の規定により移記」というふうに記載されていますから、移記の前の登記簿を見たい場合には閉鎖登記簿を閲覧していただければ、あるいは閉鎖登記簿の謄本をとっていただければ、過去に仮差し押さえがあったということはわかります。
  29. 坂上富男

    ○坂上委員 ですから、閉鎖登記簿謄本まで見なければわからぬというところに問題があるというのです。今新しい登記簿謄本を見て、ああ、これはきれいだなと思う、ここが問題じゃないかということを指摘されているんだろうと私は思っているんです。  この点についてどういうふうにお考えになっているかというと、新しい登記簿をつくることは何ら違法性はないとおっしゃっておりますが、これを見てみると、書く欄がもうなくなった場合、新しいのをつくるんですね。それで、これを見ると、まだ書く欄がいっぱいあるんだ。いっぱいあるのにかかわらず新しい登記簿謄本をつくったところに問題がある、こう言っているんじゃないでしょうか。どうです。
  30. 細川清

    細川政府参考人 その点は御指摘のとおりでございまして、どうしてこういうことになったのか、私ども、けさ新聞を見たばかりでございますので、先ほど大臣から早急に事実関係を確認するようにと御指示がございましたので、その点については早急に調査いたしたいと考えております。
  31. 坂上富男

    ○坂上委員 新聞によりますと、うちらの方には違法性はない、こう法務局幹部が言っておられるようでございますが、これは明らかに違法なんじゃないでしょうか。空白がこんなにたくさんあって新しい登記簿謄本をつくるには、確かにある程度相当の作為があったんじゃなかろうか。  法務局も困ったんだろうと思いますよ。いわゆる相当の力のある閣僚経験者の秘書さんが一緒に行かれたんだそうですが、抹消はできません、それは当たり前だと思いますよ。しかし、こういう方法があって、少しは薄まるんじゃなかろうかというようなことで新しい登記簿謄本をつくった、書くべき余白があるにかかわらず。そういう点で違法性があると強く申し上げておかなければならぬ、こう私は思っております。  さらに、前段の、登記簿謄本をとっても、このときまだ登記簿謄本の仮差し押さえの部分が抹消されていないにもかかわらず、抹消されたがごとき登記簿謄本が、どうもこの新聞を見たら、私はちょっと専門的にはわかりませんが、合意によって抹消されたように思われる、こうおっしゃっておりますが、果たしてそうなんだろうか、ちょっと私はわかりかねますが、これもあわせてひとつ調査をして、あるいは私が勘違いしているかもしれません。  少なくとも私の言いたいところは、新しい登記簿謄本はつくるべきでないにかかわらず、余白が十分あるにかかわらず新しい登記簿をつくることによって、一般の人が新しい登記簿謄本だけを見て、ああ、これは仮差し押さえはない、大丈夫なんだなと思うところに大変な問題がある、こういう指摘なものでございまするから、これはやはり相当な問題なんじゃなかろうか、こう私は思っているわけでございます。  しかも、こう書いてあるんですね。「今回、登記用紙は当初から一枚だけで破損もしていなかった。規定を準用することについて、地元の法務局は東京法務局に相談して決めたという。」そう書いてありますよ。それから、司法書士の資格を持つ不動産会社の役員は「条文の拡大解釈を超えた判断で、一般の人が物件の本当の権利関係を知る機会を奪っている。普通に窓口で依頼しても受け付けてもらえないだろう。現場に強い圧力がかかったとしか思えない」、こう言っているんですね。  だから、どうも七十六条第四項の準用というのは、これはもう行き過ぎ、まさにこれに違反をした、こういうふうなことになるのであって、「枚数過多ニシテ取扱不便」じゃないんだ、これは。いわゆる依頼者の便のためにこういうものをつくった、こう言えるんじゃなかろうかと思いますが、大臣、いかがですか。これはもうこれで質問を終わります。
  32. 臼井日出男

    臼井国務大臣 私も、委員がお示しいただきました新聞を拝見しながら伺っておったわけでございますが、本件につきましては、事実関係が明らかではございませんので、事実関係を早急に調査するように指示したところでございます。
  33. 坂上富男

    ○坂上委員 これはまさに登記の信頼にかかわる重大な問題でございますから、ひとつ的確に調査の上、本当に私たちは戸籍と登記だけは信頼していたんですよ。これが、こんなことがあるのかなと思うと本当にがっくりしますので、信頼回復のために、警察の次は今度はまた法務局だなんというのは大変なことでございますから、ぜひ的確な処置と真相の解明をしていただきたい、こう思っておるわけであります。  それから、今度は警察庁質問させてもらいますが、公電磁的記録不正作出、同供用罪についての質問でございます。これは大変残念なことでございますが、私は、共謀共同正犯ということについて聞きたいと思っておるわけであります。  どうも、新聞の報道、あるいは私の読み落としもあるかもしれませんが、出ている記事によりますと、現秘書、元秘書、そして依頼者、この三人は民間人でございますが、この人たちが逮捕された。しかし、それはあくまでも、免停が何とかならないだろうかというような話があった、そしてそれが犯罪の共謀だというような言われ方しか、私は記事を読んだ限りでは得られないのでございますが、それだけでは共謀共同正犯にならない、もっと踏み込んだ事態がなければならない、こう私は思っているわけです。  そこで、法務省から、警察から検察庁に送致されたときの送致事実の要旨というものをいただきました。この送致事実の要旨を読めば、逮捕状も勾留状もほぼ同じことがここに書かれていると思うのであります。そこで、これを読んでみますると、共謀による共同正犯でございます。罪名は、公電磁的記録不正作出、同供用という問題でございます。  そこで、これをちょっと読んでみますると、被疑者三名、さっき言った三名ですが、三名は、警察官大沢それから曽根原と共謀の上、電子計算機内の運転者管理ファイルに登録された被疑者某の交通違反点数の抹消を企てたというんですね。  企てたというのは、共謀によって企てたというんですから、私はこれは、三人の諸君が、いわゆるコンピューターを操作して抹消してくれや、こういう踏み込んだ依頼がここにあったから共謀共同正犯としての取り扱いなんじゃなかろうか。単に、点数あるいは免停は何とかならぬかという程度の話じゃなくて、いわゆるコンピューターそのものを操作してデータを抹消してくれ、こういうような共謀があった、そして、その共謀によって交通違反歴を抹消した、こう書いてある。そして、その抹消したものを運転管理課の事務処理の用に供したというんですね、だから供用罪だと。この二つがあるわけでございます。  したがいまして、私は、この場合の共謀共同正犯というものは、要件としては何と何が要件になっているのかということをお聞きしたいと思っておるわけでございます。  と申し上げますのは、共謀共同正犯というのは、久しぶりに刑法の本を読んでみましたら、こう書いてあるのですね。「共謀共同正犯の成立要件」、「客観的側面として、共謀に参加した者の誰かが実行に着手しなければならない。」これは当たり前。警察の人が着手したのだろうと思います。その次、二番目、「「実行」と評価できるだけの共謀関係が認定されなければならない。ここでは、「共同実行性」が認められるだけの重要な役割を果たしたか否かが、謀議の際の発言内容・その後の行為などから客観的に判断されるのである。「意思を通じ他人の行為をいわば自己の手段として犯罪を実現」する必要がある。共同して犯罪を行う意思を形成するだけの共謀が必要」なのだと。だから、コンピューターを操作しようではないかという意思の共通の共謀がなければならぬ、こう言っているのだろうと思います。  この秘書たちは実行には関与していないわけですから、そこで「単なる意思の連絡又は共同犯行の認識の存在だけでは足りない。判例も形式的に共謀さえあればすべて共同正犯にしているわけではない。」こう言っているのですね。でありまするから、単に免停を何とかしてくれと言っただけではないのであって、それ以上踏み込んだ共同謀議があったのではなかろうか。しかも、送致事実から見ると、はっきりと抹消を企てた、そして警察官が抹消した、こう書いてあるわけです。どうですか、これは送致事実ですから検察庁ですね。法務省は、共謀共同正犯、そしてこの事件を私はどう理解したらいいのか、御答弁いただければ、こう思います。
  34. 古田佑紀

    古田政府参考人 実際、個別の事件でどういう理由で共謀が認められるかということについては、これは現在捜査中でございますので、御説明は差し控えたいと存じます。  お尋ねは、恐らく一般的に共謀が認められるためにはどういうことが必要かということであろうかと思われますが、共謀共同正犯が成立するには、今委員も御指摘があった点がございますけれども、要するに、二人以上の者がある特定の犯罪を行うために、共同の意思のもとに、一体となって互いに他人の行為を利用し、各自が意思を実行に移すことを内容とする、そういう謀議、相談といいますか、そういうことを行った上で、その犯罪を謀議した者の全部または一部が実行するということが必要だということでございます。
  35. 坂上富男

    ○坂上委員 警察庁の方で、大変体の不調をされたそうでございまして、大丈夫でございましょうか。御無理なさらぬで結構なのでございますが、警察の方から検察庁の方に送検になっておりますが、送検になっておるこの中に、はっきりとコンピューター抹消の企てを協議した、いわゆる交通違反点数の抹消を企てた、こういうふうなことが書かれておるわけでございますが、そうすると、共同謀議の内容はこれを含むのですね。
  36. 林則清

    林政府参考人 お答え申し上げます。  先ほど法務省刑事局長お答えしたのと同様のことになりますが、まず前提としては、現に捜査しておる具体的な事件の内容にかかわることでありますので、その内容が具体的にどうであるかということについてお答えするのはなかなか難しいということであります。  それで、一般論として、特に故意の認識の点を今先生から御指摘がありました。我々としても十分傾聴に値する御論議であるというふうには思いますけれども、実際の具体的な捜査においてその辺の中身をどうするかということについては、これはやはりお答えしにくいということでございます。  いずれにいたしましても、現在、共同正犯として、三人の者については必要な要件がそろったものとして我々は捜査をしておるということでございます。
  37. 坂上富男

    ○坂上委員 では、もう一点聞きましょう。  今私が読み上げた送致事実、これは事実でしょうね、どうですか。
  38. 古田佑紀

    古田政府参考人 送致事実の要旨はおおむね委員の御指摘のことでございまして、被疑者五名が共謀の上、新潟県警察本部交通部運転管理課に設置された電子計算機の端末機を使用して、東京都内に所在する警察庁情報処理センターの汎用電子計算機内の運転者管理ファイルに登録された被疑者鴨井の交通違反点数の抹消を企てたということで承知しております。
  39. 坂上富男

    ○坂上委員 それだけ答弁してもらえば結構です。  さてそこで、この結果、免停はどうなったのですか。
  40. 林則清

    林政府参考人 お答えいたします。  ちょうど、当該交通違反者の当時の累積点数と違反の内容からして、本件の抹消があろうがなかろうが免停にはならないといいますか、したがいまして、今回の交通違反歴データの抹消によって免停処分を免れたという事実はないということで承知いたしております。
  41. 坂上富男

    ○坂上委員 大変不謹慎な質問になるかもしれませんが、余計なことをしたためにこうやってひっかかった、これはこういうような事態ですか。何かちょっと、そういうふうに私も聞いているものだから、確かめてみたわけでございます。  さて大臣、これに関連して商品券が三万円ずつ関係者に配られた。そこで青木官房長官は、もうあっせん利得罪をつくらなければだめだ、こういうことを発表なさっておりまして、私は賛成です。私は、本当に十年ぐらい前からあっせん利得罪はつくるべきだと言ったのですが、賛同を得られなくてまだうろうろしているわけです。  大臣、もうこういう事態、この二人は依頼者から商品券三万円ずつもらったということがはっきりしているようです。だから、勾留状を見ても、よって免停を免れたと書いていないのですね。これは何も効果がなかったのですね。やらなくてもいいことをやってしまったという感じのことであることは争えないようです。  しかし、この三万円という意味は、完全にあっせん利得なのですね。あっせん利得罪をつくるべきだ、こういうふうにおっしゃっておりますが、大臣、もう退場でしょうから、一言でいいですから、どういう御見解ですか、青木官房長官。法務省としてはこれは早急につくるべきだ、こう思いますが、いかがですか。
  42. 臼井日出男

    臼井国務大臣 今委員指摘をいただきましたあっせん利得罪につきましては、民主党等からこれに関する法律案が国会に提出されているものと承知をいたしておりますけれども、政府といたしましては、各党各会派の中で十分御論議をいただくことが基本であると考えております。その結果を踏まえて、適切に対処してまいりたいと思います。
  43. 坂上富男

    ○坂上委員 官房長官がおっしゃって、衆法と閣法といいますと閣法の方を大事にされますし、これまたこういう緊急な事態が起きて、これはどうしても必要だと総理大臣直轄の官房長官がおっしゃっているのだから、これはもう本当に早急にする必要性があるのじゃなかろうか。したがって、議論するまでもなくやらなきゃならぬ事態にもう立ち至ったんじゃないか、私はこう思っておりますので、大臣にひとつ対応もしていただいて、衆法は衆法、閣法は閣法でいずれ話ができると思いますので、よろしくお願いをしたいと強く要請をしておきます。  どうぞ御退場、結構でございます。  なお五分ばかり時間があります。続いて、新潟県警女性長期監禁事件について質問させてもらいます。  捜査ミスと言われております。それで警察庁長官は、この点については十分な検討をさせてもらって、検証して、そして反省すべきは反省したい、こうおっしゃっておりますが、これらの検証は、検証といいますか検討はどういう程度に進んでおるのでございましょうか。それから、この検証結果はいつごろ発表される予定なんでございましょうか。
  44. 林則清

    林政府参考人 ただいまの御質問でございますけれども、前回、長官が検証と申しましたのは、従来からお答えをいたしております、この捜査全部の中に、先生がたびたび御指摘なさったような、警察としての手落ちがあるんではなかろうかということについて総体的に見ようということでありまして、とりわけ、事件性を最初から非常に弱く見ておったんではなかろうか、こういうものについてしっかりもう一回見ようということで見てきたわけでございます。そういうことで、先ほどおっしゃった、さらに検証結果を発表するというようなことを考えて申したものではないと私どもは理解をいたしております。  いずれにいたしましても、本件事件、たびたび御指摘ありますように、九年二カ月余にわたって被害者の方を発見し犯人を検挙することができなかった、警察本来の目的である、個人の生命、身体、こういったものを十分保護するという責務を果たし得なかったということで、極めて重く受けとめておるし、また、先ほども申しましたように、具体的には四点にわたるミス、まさに警察活動の中のミスと言えるものがあった。そのいずれもが、もしそれが的確に行われておったらあるいはこういう結果にはならなかった可能性があるだろうということで、今まで御答弁申し上げておるわけであります。  今回の捜査について、このような特異な事件について何としても警察の力が及ばなかったということであり、警察としては深くこれを反省し、今後、そういった一連の検証の結果明らかになった問題点の是正を通じて、そしてこの種事件に生かしていく、もう一回よく心に刻み込んで真摯にこの種事件に生かしていくということが、先ほど御指摘あった長官の、検証してみてその結果をということであろうということで考えております。
  45. 坂上富男

    ○坂上委員 ぜひ検証して、検討していただいて、二度と再びこのような不幸な事態にならないことを期待いたしたいと思っております。  なぜこのことを私は指摘するかといいますと、私の町の隣に加茂市がありますが、交番の隣の店のおかみさんが真夜中に殺されたという事件があって、もう二週間以上たっておりますが、必死な捜査がなされておるようでございますが、これもなかなか犯人が挙がらぬというような事態で、皆さん一生懸命やっているんです、だけれども、市民としては大変気がもめるわけでございます。  でありまするから、警察当局としてはなかなか大変でございましょうが、何としても国民の不安というものだけはできるだけ除去してもらわなければならぬと思っておるものでございまするから、ぜひ反省を、ひとつ検討を十分していただきたい、こう思っておるわけであります。  前事不忘、後事の師、こういう言葉がありますが、私はこの言葉が大好きなんでございます。ぜひ、検察捜査当局におかれましては、そういう点の検討もひとつしていただいて、総括していただいて、今後も捜査を、本当に的確に生かしていただきますことも期待いたしたいと思っております。  さてそこで、また、国家公安委員長は、国家賠償というべきか、あるいは被害者に対する回復のための、あるいはお見舞いといいましょうか、あらゆる観点から警察庁でも検討をしておるところでございますというお話でございます。御検討はしておられるんだろうと思います。  さらにまた、警察刷新会議というものが開かれるようでございますが、これは、この事件はやはり本当に不幸な、特殊な事件でございますから、こういう場合に対する警察あり方として、お見舞いしていただく、あるいは賠償していただく、そういう観点に立って刷新会議においても議論していただいてもいいんじゃなかろうか。いや、まだそこへかけるほどでもありませんということになるのか。  その辺、警察としては、国家賠償あるいは刷新会議におけるこの問題点、どんなふうにお考えになっておられますか。
  46. 林則清

    林政府参考人 まず、先生のお話のありました国家賠償法上の責任の問題につきましては、専門家である委員が一番御承知のとおり、具体的な警察官の行為または不行為について、その違法性や損害の発生との間に因果関係といった要件に該当するか否か、言うまでもなくこういうことを判断していく必要性がございますけれども、御指摘ありましたように、警察庁といたしましては、三月十三日の行政監視委員会における国家公安委員長の答弁をも踏まえまして、被害者や御家族方々にお見舞いを申し上げる、そういう気持ちに立って真摯に検討を進めておるところでございます。  刷新会議関連につきましては、私は確たることを承知しておるわけではございませんけれども、警察のもろもろの問題というものが材料としてそこに提示され、そういったものを踏まえながら、いろいろな警察のありようというものが検討されておるというふうに聞いております。
  47. 坂上富男

    ○坂上委員 時間が参りまして、人工授精問題それから林野庁問題を質問するわけにいきませんでした。出席の皆さんに大変失礼でございます。月曜日に決算委員会質問させていただきますので、お許しをいただきたいと思います。  私は、ぜひ警察刷新会議に、法務委員会の議論の中にこういう問題が出ていたということだけは報告をしていただきたい。そして、ぜひとも議論をすべき問題だと思うんです。この議論が最初の出発になるんだろうと、率直な話、私は思っておるわけであります。まさに、こういう被害者に対するおわびの精神が、全体を、どうやって警察を刷新していくかに通ずると私は思っているからあえて御指摘を申し上げ、要請をした、こういうわけでございますので、ぜひひとつ警察当局においてもお願いをしたい、こう思っておるわけであります。  どうぞ、大変御多忙のところ、なかなか体の調子もあれでしょうから、十分気をつけて、再建のために頑張っていただかなければならぬから、余り御無理なさらぬで結構でございますから、その点だけ付加いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  48. 武部勤

    武部委員長 西村眞悟君。
  49. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 これから、政務次官とフリートーキングということで一般質問をさせていただきます。広く言えば人権擁護の領域、また出入国管理の領域にある問題、しかも今まで戦後日本では余り意識されずに、私の観点からいうならば法整備が全く空洞になっている領域について、まず御質問というか、問題意識の共有を確認させていただきたい。  さて、我が国は一九四九年のジュネーブ四条約というものに署名した国家でありまして、この条約の一つに、捕虜の待遇に関する条約というのがございます。これは、軍人また軍隊に属する者というものが降伏また投降してきた場合には、それにふさわしい名誉ある待遇をしなければならないという条約でありまして、我が国はこれに加入しておるわけですね。  さて、我が国が軍人の待遇に対して全く考慮を払っていなかったという戦後の中で、昨年、一年ぐらい前の期間に二つの事件が起こりました。それは言うまでもなく、昨年の三月二十四日の北朝鮮工作船問題、それからそのすぐ以前の、韓国が北朝鮮の半潜水艇を追撃して、対馬領海直前で撃沈するという問題が起こりました。  このときに、これは現実化はしなかったのでありますから、またその面の問題意識なく経過したわけですが、例えば、昨年三月二十四日の工作船、彼らが我が国の領海内で逃走しようとし、銃撃戦を交わし、しかる後投降してきたという場合、そして投降してきた者が軍隊の構成員であった場合に、我が国はジュネーブ条約に基づいていかなる待遇をすべきなのか。ただ、あの場合は、我が国は被疑事実漁業法違反で追いかけておりまして、そして投降してきた、だから漁業法違反だ。相手は軍服を着た軍隊の構成員であった。したがって、手錠をかけて、警察の留置場に入れて、警察官が被疑事実を尋問したといえば、これは国際法違反なわけですね。政務次官、どうですか。
  50. 山本有二

    山本(有)政務次官 この分野に御造詣の深い先生が一番深い御理解をされておることと存じますが、このジュネーブ四条約、戦争あるいは交戦状態というようなもとに、武力紛争の場合等に機能するわけでございまして、そういう意味におきまして、不審船事件、密入国事件、必ずしも武力紛争等があっておるという前提がない以上、一般の国内法の適用で足りるように存じておる次第でございます。
  51. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 それは一概に言えないわけですね。現在は、アザー・ザン・ウオーといいまして、戦争であるようで戦争でなく、戦争でないようで戦争であるというふうなゲリラコマンドもこのジュネーブ四条約の中に含ませるということですから、堂々と軍服を着て出てきて、投降してきたという者は、敵国といえども、国家の任務としてやっておって、我が国と銃撃戦を交わして投降してきたわけですから、昨年の三月の件では今御答弁になったことでありましょうけれども、もう少しそれが強度が増しまして、局地的な交戦状態で投降した、彼らは軍人であった、そして国家の命令を受けてそれをまさにやったんだという場合には、捕虜の待遇をしなければならないという事態が想定される。これを想定した上で御質問して、また見解もお聞きしたいのです。  我が国は、ジュネーブ四条約によると、軍人としての待遇をしなければならない。したがって、彼に対して、投降者に対しては、捕虜の待遇をもって、尋問は指定されたオーソライズされた士官が、これも軍人が行わねばならない。軍人以外の警察官が手錠をはめていろいろなことをやれば、捕虜虐待ということになりまして、国際法上はその警察官自身が犯罪人とされるということですから、私は、どうしても、我が国の法制に一番欠けている部分、軍人及び軍隊の構成員を律する法を我が国内でも整備する問題意識を持って、具体的検討に入らねばならない時期なのかな、それは法務省のみならず外務省、また防衛庁も含めた検討課題であるんだろう、このように思います。  それであって初めて、武力紛争、また低度の小競り合いが生じて、それが一つの外国の意思のもとに軍人において行われた場合に、我が国は、締結しているジュネーブ条約に基づく国際法上の適切な対処がなせると思うのですが、この私の問題意識について次官はどうお思いですか。
  52. 山本有二

    山本(有)政務次官 ジュネーブ四条約の国内担保法、すなわち四条約を批准しておる以上は国内法をより整備しろというような御命令があることは承知しております。条約の重大な違反行為、すなわち捕虜に対する殺人、拷問、非人道的待遇、身体、健康への苦痛、傷害、財産の破壊、徴発、不法追放、移送、拘禁、敵国軍隊での強制的服務、公正な裁判を受ける権利の剥奪、人質、これらの行為につきましては早急に国内法を制定しろ、こういう趣旨であろうかと思います。  実は、昭和四十三年から、法務省の統一見解というものがございます。それによりますと、我が国は、憲法第九条により戦争を放棄している関係上、これらの重大な違反行為が我が国民により犯されることはあり得ないと思料するので、右諸条約違反の行為の防止を目的とした国内法令を特段制定していない、しかし、仮にこれらの行為が我が国において犯されたとしましても、第一ないし第四条約の各違反行為はいずれも既存の刑法典において処罰し得るというのが統一見解でございます。  したがいまして、捕虜につきましては、一般国民の人権を尊重するというような趣旨で、外国人の方の人権を最大限尊重できるのではないかというように考えております。  さらに、ジュネーブ条約の「第六章 紀律」三十九条には、捕虜収容所の紀律という条文が条約上ございます。それによりますと、「各捕虜収容所は、抑留国の正規の軍隊に属する責任のある将校の直接の指揮下に置かなければならない。」という条文がございまして、これからしますと、「抑留国の正規の軍隊に属する責任」、すなわち、あくまでも憲法九条をいただいておる我が国といたしましては、自衛隊を正規の軍隊というかどうか、大変疑問なしとしないところがございますので、こういう点におきましても、捕虜の扱い、あるいは捕虜として特別にその人を別の法律の傘下に置いて遇するということが必ずしも適切ではないというように考えておるところでございます。
  53. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 捕虜というのは、我が国の正規の軍隊のもとで対応しなければならない、抑留しなければならないわけですね。だから、我が国に正規の軍隊があるのかどうかわからぬけれども、ジュネーブ条約には加盟しておるわけですね。  我が国の国家というものは、戦争が起こるか起こらないかについては、起こる可能性がありという前提で自衛隊を持っておるわけですね。自衛隊を法律的に軍隊と言うか否かについてはまたそれは別にして、それはレッテルの問題ですから。彼らはどういう装備を持っているかといえば、イージス艦を持ち、九〇式戦車を持ち、ロケットを持ち、それは国際法上は軍隊であります。これは政府の見解でも、外国では軍隊と認めていただいております、国内法上では云々ということで、国内法ははっきりよう言わぬわけや。しかし、外国との関係においては軍隊と認められておるというのも政府の見解である。  したがって、我が国は、九条において、自衛の戦争はする、やられればするんだと。そして、日本にしかけてきた者が手を上げた場合にはどういう待遇をするかについては、ジュネーブ条約を締結しておる。しかし、我が国内には、その条約に沿って、今次官が言われたような法がないということですわな、今このやりとりで確認できることは。だから、我々の世代でやらなあかんなと言っておるわけですよ。  そうしなければ、昨年の不審船事件、これは我が国内だけでいろいろ法的な解釈は可能ですけれども、一たん我が国内の主権が及ばない外国の法的判断になれば、明らかに不審船から出てきた者が軍人であって、また、軍人の服装はしていなくても本質的に軍人であって、その国の命を受けて行動してきた者に対して、手錠をはめて連行し、警察で留置し、次官が今言われたような我が国の国内法の既存の刑罰で処罰するならば、我々はジュネーブ条約違反の国家である。したがって、それを実行した警察官は犯罪人だ、国際戦争犯罪人だと言われて召喚の要請をされかねないという事態でありますから、我々はどうしても、今、抑留国の正規の軍隊の法のもとにその捕虜を名誉ある待遇をするという国家にならねばならない、このように思うわけですね。  さて、我が国には市民法というのがありまして、それはもう当然あるわけですが、今次官が指摘されたのは、軍隊及び軍隊の構成員に適用される法律というものにおいて、アメリカもジュネーブ条約に基づくジュネーブ条約法というのを持っておりますし、イギリスもそれに相当する国内法を持っておるわけですね。我が国は、それに基づく国内法、軍隊及び軍隊の構成員を律する法、つまり、戦前の言葉で言うならば軍法会議というものを持っておりません。  私は、これは持たねばならないと思っておりますが、特別裁判所はこれを設置してはならないという憲法の条文をいかにクリアするかなわけですが、そのクリアは、例えば海難審判が海難という特殊の領域を特殊な法制で審査する、しかし、その上訴の道は最高裁に通じておるので、特別裁判所は設置してはならないという憲法の規定に違反しないという意味でクリアされているならば、我々ももうぼつぼつ、この東アジアの情勢の中にある日本として、そして、北朝鮮工作員が日本国に入国するのは食事の途中でトイレに行くより簡単なんだというふうに豪語している以上、軍隊及び軍隊の構成員に適用される法は、我が国の自衛官のためにも、また外国のそのような事態に遭遇したときに対処し得るためにもつくっておかねばならない。これは、有事法制が言われる中で、有事法制の一つの大きな核であるし、また、法務省も関与しなければならない問題であると私は思いますが、次官、いかがですか。
  54. 山本有二

    山本(有)政務次官 先ほど御答弁申し上げました四条約についての担保法について、私が法務省統一見解と申し上げましたが、刑事局長が四十三年ぐらいからそのような答弁をしているということに改めさせていただきたいと思います。  それで、ただいまの御質問の、軍法会議等を設置すべきというように御質問いただいたと思うんですが、先生おっしゃるように、憲法第七十六条、すべての司法権は最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属して、二項で「特別裁判所は、これを設置することができない。」こう書いてありまして、先生は、系列から外れない下級審でやれば軍法会議としてそういう裁判所をつくることも可能ではないかというようにおっしゃられるわけでありますが、それは憲法上は可能かもしれません。しかし、この特別裁判所を設置することができない、こう書いておることの解釈からすると違憲だと言われる人も大勢いらっしゃるというように、解釈上はそう思います。  それで、私個人に、いわば国民の一人としてこういう事態をどう考えるんだという御質問政務次官を離れてお答えさせていただくならば、新しい時代が到来したということは申すまでもないというように思います。特に、昨年の通常国会で行われましたガイドラインの法案につきましては、周辺のことについての議論ばかりしまして、中身の、国内的な、侵略があった場合にどうするかの法制について、いわゆる有事法制についてはこれからの議論にまつという答えであったような気がしてなりません。その意味では、各政党の中で今大いに議論が重ねられ、我が自由民主党の中でも私もその議論に多少参加しているということでございますので、その意識におきましては先生と共通なものがあろうと私は考えております。そして、歴史の偶然の中に憲法九条をいただき、しかも、国際的に見ればそれがやや我が国が異質なように映るということも否定できないことだろうというようには思います。  そしてさらに感想を申し上げれば、ジュネーブ四条約につきましては、非常に武士道的な観点からつくられた、いわゆる戦争その他の武力紛争が生じた場合というときに、傷ついた者や病人、あるいは難船者、捕虜、いわばそういう戦争によって弱い立場になった人たちを守ろう、こういうような条約でございますので、その意味においては、これは世界人権宣言と同じような不文律であるし、これを守らなきゃならぬということにおいては我が国は全く異論がないというように思います。このことの法制を特に軍事面、有事面でなおやっていくべきというような御主張については、そのとおりということを申し上げておきたいと思います。
  55. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 実のある問答ができました。というのは、緊急時、紛争時の世界の人権宣言というべきジュネーブ四条約を守るべき国内法を我が国は持っていないということを実は私は指摘したかったわけですね。しかし、それを整備しようと思えば、戦後一切目を閉ざして封印してきた軍法会議の方に行く、軍隊をいかなる法で規律するのかという方向に行くということですね。  ただ、先ほど触れられたガイドライン等でいきましても、これは我々は非常に危険な領域を放置しているんだということを私はここで指摘したい。つまり、一般民法しか自衛隊を律するものがないわけですね。そこで、武器の使用は正当防衛、緊急避難ということになる。しかし、正当防衛、緊急避難で部隊に武器を使用させるほど恐ろしいことはないわけです。例えば、私がロケットを持っておりまして、私の身に降りかかった危険があるからといって突然私がロケットをぶっ放す要件ができる、そういうふうな軍隊ほど危険なものはありません。我が国がその部分について明確に武力行使の要件というものを見詰めて、部隊としていかに行動するかということに取り組まなければ、反対に、現状のように武器使用は個人の要件だという市民法の武器使用の要件が積み重なっていきましたら、いずれ我が国が危機に、危機というか、例えばPKOでもよろしいですけれども、突発事態に遭遇して突拍子もないことをやりかねないし、また被害を受けかねないという思いがいたします。  さて、私がここで質問をとめても木島先生が待たれると言いますので、あと四分、これは質問というよりも、私がこの法務委員会におって、警察のいろいろな不祥事がありまして、その中で御質問されている内容をずっと聞いておりました。そこで、一つの感想を総括して政務次官にお伝えしたい。  実は、私はこの正月に風邪を引きまして、ただ一つよかったのは、ローマの歴史をちょっとまた勉強し直すことができた。ローマ、ギリシャ時代の同時代的な関心は、ローマの研究の原資料の多くはギリシャ人が書いたわけですが、ギリシャのアテネは衰退するけれども、なぜローマは興隆していくのだという問題意識からローマのシステムを見詰めているのがギリシャ人です。  それで、ギリシャは陶片追放というやり方で政権交代をしていくわけですね。つまり、一つの失敗をした指導者、一つの失敗をした幹部を陶片追放で追放していってアテネの外にほうり出してしまう、こういうシステムで運営されています。片やローマというのはどういうシステムかといえば、例えば失敗した人間がその失敗から一番教訓を得ているんだ、だから、執政官として失敗しても、この執政官は次にまた再登板させるんだと。例えばハンニバル戦記でありましたら、ハンニバルに負けた、その負けたやつが一番教訓を得ているんだから、次にこの負けたやつをまたぶつけていく。決して陶片追放はしない。失敗した人も抱き込んで、異質な人をも危機において抱き込んで、総合的に力を発揮しようとする、こういうシステムがローマなんですな。そしてギリシャから見て、ローマの興隆はこの芸術的なシステムだと。  さて、昨年来、我が国の中で官僚組織に起こったことを我が国会が、政治が非難しておる。我々はギリシャの陶片追放をまねておるのではないか。こういうふうな、人のとがを見詰めて追放のみを考えるシステムはいずれこの国を衰退させるであろう、私はそのように思うのです。失敗を、とがのみを見詰めるのか、それとも、失敗から教訓を得るのは失敗した当の本人であるから、その人がいかなる教訓を今得ておるのか、この部分を見詰めて人事を考えるのか。この二つのシステムが、国家が隆盛するか、社会が隆盛するか衰退するかの分岐点になるというふうに、ローマの歴史を風邪を引いたときに読んで私は感じながら、この国会におけるものを聞いておりました。  私から言わせれば、我が国政治は、新潟県警本部長を非難する資格は全くない。九年間女の子が拉致されて、発見されたときに彼は旅館におった、これは確かだ。それがわかったとき旅館から出なかった、これがとがめられておるといって我々は、またマスコミもかさにかかっておるわけですけれども、我が国政治は、九年間の監禁以上に、十三歳で二十年間以上も北朝鮮に連れ去られた日本人、横田めぐみという少女のことをわかっておりながら、超党派訪朝団が北朝鮮に行けば、その拉致のことを出しては困りますと言われればそのことを言わず、そして大歓待を受けて、そのことに一つも触れずに、新潟県警本部長以上の歓待を受けて帰ってきているじゃありませんか。この政治が新潟県警本部長をとがめることはできない、私はそう思いますよ。  また自民党のある幹部は、横田めぐみさんの御両親が外務省また自民党本部の前で、米十万トンをやるというのはわかるけれども、我が娘はどうなるのですかと座り込んだときに、それを、国内でほえていても帰らないぞと、どこかの、長老さんの選挙区で言ったのだ。ほえるという表現は犬に使う表現なんです。九年間監禁されていた女の子の御両親のことを、警察が何とかしてくれればもう少し早く帰ってこれたのにというふうな、この切実な声をほえると言いますか。しかし、それ以上の悲惨な両親の声をほえると言うのが今の政治なんだ。  この政治がどうして、黙々と働いている組織の中で、そしてその組織があるから横田めぐみさんが拉致されたこともわかるし、結局、九年間監禁した少女も出てくるわけですけれども、しかし、その組織の中の一部の失敗をとがめ立てて全体の牛を殺そうとしている。政治に何ら資格はない。  私は、フリートーキングですから、この問題意識をどうか共有してください。今我々のやっていることは、余り人をとがめ立てる資格のある人間がやっているんじゃないということですね。  どうも済みませんです。
  56. 武部勤

  57. 木島日出夫

    ○木島委員 日本共産党の木島日出夫です。  先週の水曜日、三月二十二日に続きまして、新潟県警の交通違反もみ消し事件についてお伺いします。  最初に、警察庁にお伺いしたいのですが、これまで、交通違反のもみ消しということで警察官が懲戒処分、とりわけ懲戒免職処分などを受けた前例というのはあるのでしょうか。刑法百六十一条の二第二項、いわゆる公電子記録の不正抹消に係る罪等で懲戒免職を受けた例も、あったら答弁していただきたいと思います。
  58. 石川重明

    石川政府参考人 過去におきまして、交通違反記録の抹消事案が刑事事件として立件をされる、あるいはそのことを理由として懲戒処分の対象となったという事例は把握をしておりません。
  59. 木島日出夫

    ○木島委員 警察庁長官をお呼びしておりますので、認識をお伺いしたいと思うのです。  新潟県警の交通違反もみ消し事件はまさに、昨年、神奈川県警の一連の不祥事、そしてまたことしに入ってからの新潟県警をめぐる監察問題、こういう大きな問題のただ中で起きているわけであります。二人の幹部警察官の懲戒免職、それからこの二人を含む五人の関係者が逮捕される、こういう状況になっているわけです。今答弁にありましたように、前代未聞の事態だと思うのです。この事態を警察組織の最高責任者である警察庁長官はどのように受けとめているのか、まずその認識をお伺いしたいと思うのです。
  60. 田中節夫

    田中政府参考人 委員指摘のように、昨年後半、神奈川県警察の不祥事件を初めといたしまして一連の不祥事案が発生いたしました。今回の新潟県警察におきますところのいわゆるもみ消し事案でございますが、この事案は昨年の十月に発生している事案でございます。したがいまして、委員指摘のように、警察が不祥事案再発防止に向けて真剣に取り組んでいるそのさなかに起きた事件であるということは、御指摘のとおりでございます。  それだけに今回の、交通違反事実の登録を不正に抹消した、そして県警の幹部警察官が逮捕されたということにつきましては、運転免許行政及び交通違反取り締まりの公正性に対する国民の信頼を損なうことはもとよりでございますけれども、警察の仕事のあり方あるいは不祥事案再発防止対策の取り組みにつきまして大きな疑問を抱かせたところでありまして、極めて遺憾に存じております。  今後、本件捜査を徹底することはもとよりでございますけれども、このようなことが二度と起きないように、新潟県警におきますところのチェック体制の問題点を解明することはもちろんでございますけれども、全国警察を挙げて不祥事案再発防止対策に真剣に取り組んで、国民の皆さんに対するところの信頼といいますか、その回復に向けて最大限の努力をしてまいらなければいけない、かように考えておるところでございます。
  61. 木島日出夫

    ○木島委員 この問題がマスコミによって表に出たときに、保利耕輔国家公安委員長は、三月二十三日の国家公安委員会で話を聞き、今後の対策を考えていきたいと述べた、そして、まことにあってはならない話で、どうしてそういうことをやったのか、どうやってできたのか、解明していかなければならない、こう発言したことが新聞報道されています。  警察庁長官も三月二十三日の国家公安委員会出席していると思うんですが、どんな報告がされ、どんな論議が交わされたのか、御披露いただけますか。
  62. 田中節夫

    田中政府参考人 今委員指摘のように、三月二十三日の国家公安委員会におきまして、私どもの方から、この一連のいわゆる交通違反もみ消し事件と言われておりますところの概要につきまして御報告いたしましたところ、国家公安委員会の各委員方々からは、このような事案が二度と発生しないよう徹底的な再発防止対策をとるべきであるという旨の御指示がございました。具体的に、通達を発するばかりではなくて根本的な対策を講ずるべきであるというような厳しい御指摘もございました。これを踏まえまして、私どもは、具体的な再発防止対策に現在取り組んでおるところでございます。
  63. 木島日出夫

    ○木島委員 白川代議士の秘書ら三人が逮捕されたのはその後ですね、三月二十六日であります。  そこで聞くんですが、三月二十三日の国家公安委員会での論議あるいは警察庁からの報告では、この事件について、白川代議士の秘書ら三人がどういう役割をしていたのか、またどういう動機で大沢、曽根原がこういう懲役十年以下という重罪に当たる刑法犯を犯したのか、そういうより立ち入った事実についても国家公安委員会に対して報告をしておりますか。
  64. 田中節夫

    田中政府参考人 国家公安委員会への具体的な報告内容でございますけれども、先ほど申し上げましたように、三月二十三日の時点で把握した事柄につきまして御報告申し上げたところでございます。  なお、今委員指摘のように、具体的な犯罪捜査の内容にかかわることにつきましても御報告申し上げることがございますけれども、それにつきましては答弁を差し控えさせていただきます。
  65. 木島日出夫

    ○木島委員 なぜこういうことを聞いたかといいますと、実行犯あるいは実行犯に最も近いところにいた大沢が逮捕されるというのはわかるんですね。しかし、代議士の秘書、元秘書、また元秘書に依頼かお願いをした当事者、これらまで逮捕されるというのは、これはまた重大な事案なんですね。  新聞報道等によりますと、白川代議士は、自分の秘書は依頼はしていない、そう言い切っているわけです。逮捕された後でも言い切っているわけですね。免停になるかどうか問い合わせただけだと言い切っているんです。しかし、それは、既に同僚委員からの先ほどの質問でも明らかなように、この五人は刑法百六十一条の二第二項の共謀共同正犯だということで逮捕状が発付されているわけです。裁判所から逮捕状が出ているんですね。そうでしょう、現行犯じゃないですから。そうすると、厳格な証明はなくても共謀共同正犯を証する疎明はある、あるからこそ逮捕状が出ているわけでありまして、そのこと一つをとってみましても、白川代議士の弁明なるものは根本が崩れているということを言わざるを得ない。  私は、ここに白川さんがおるわけじゃありませんから言いませんけれども、代議士みずから、自分の秘書がやったことですから、徹底して真相を明らかにして、国民の前にそれを示すべきだと思いますが、そういう状況であるからこそ、私は、三月二十三日にどういう論議が国家公安委員会でなされたのか、その直後の三人に対する逮捕ですから、質問しているんです。その点だけまず、そういう重大な問題ですから、どんな論議が出たのか、国家公安委員から、やはり頼んだ方の三人についても厳しく違反を追及しなきゃならぬ、そういう意見も飛び出したんじゃないんですか、どうですか。
  66. 田中節夫

    田中政府参考人 先ほど来御説明申し上げておりますように、今回のいわゆる交通違反もみ消し事件につきまして、事の重大性にかんがみまして、その事実の解明に全力を挙げろというお話はございました。しかし、今お話しのように、具体的なお話があったかどうかにつきましても、これは私どもから申し上げることにつきましては差し控えさせていただきます。
  67. 木島日出夫

    ○木島委員 私、この事件は全容を徹底的に解明して、これは検察の手にもう入っているわけですから、起訴すべきは起訴するということで、徹底追及を捜査当局におかれてもしていただきたいと思います。  もう一つこの事件で大変重要なことは、このような交通違反のもみ消しが、政治家や秘書の口ききが日常茶飯事になっておると言われていることであります。これはそれをうかがうに足る事実が、ずっと、この一連の新聞報道や週刊誌報道からも明らかだと思うんです。  そこで、法務大臣がおられますから、大臣が二十一日ですか、閣議が終わった後、記者に問われてこういうことを述べたということが三月二十一日の朝日新聞の夕刊に出ていました。「「コンピューターが導入される以前は、幅のあるものだったんじゃないか。しかし、コンピューター制度が導入されることによって厳格になり、「どうにかしたい」ということは、できなくなっている」と述べた。そのうえで「依頼はよくある」と述べ、「できないことはできないということをいかに相手に柔らかく理解をしてもらうか技術が必要だと思う」と話した。」こういう記事が出ているんですが、これはどんな趣旨で述べられたのか、正確なところを述べていただきたい。
  68. 臼井日出男

    臼井国務大臣 ただいま委員指摘のことにつきましては、閣議後の記者懇のときにそういう質問を受けたわけでございます。私といたしましては、交通違反について、具体的な記録の方法については承知しているわけではございませんけれども、その記録がコンピューター処理をされる前には、交通違反者にとってみれば、その違反の記録を抹消する余地があると思う人もいたのではないだろうか、それゆえに抹消を依頼する人もいたのではないか、そういう趣旨でお答えをしたのでございます。決して、交通違反の記録をコンピューター処理する以前はその記録を抹消する余地があったという認識のもとでお答えしたものではございません。  さらに、後段の点につきましては、できないことはできないよということをいかにやわらかく理解してもらうことが、そういう技術が必要だというふうにお答えをしたわけでございますが、警察の交通違反の記録を政治の力で抹消するということはできず、そのような依頼は断るべきものと考えておりますので、依頼者にそのことを理解してもらうその断り方には努力が要るという趣旨でお答えをしたものでございます。  私といたしましては、警察の交通違反の記録を不正に抹消するというようなことはあってはならないということでございまして、そのような依頼があったとしても、きちんと断るべきだろうと考えております。
  69. 木島日出夫

    ○木島委員 そういう依頼がよくあるということはお認めになりましたが、最近発行された週刊朝日では、この交通違反もみ消しの事件関係者が逮捕されたということで、「これで逮捕なら警官半減、議員秘書いなくなる」、そういう見出しで「永田町の悲鳴」というような記事が出ているわけで、その中に、私が指摘したように、こういうもみ消し依頼というのは日常茶飯事じゃないかということに対して、警察庁の広報室は「「ご指摘のようなことはまったくない」と否定するが、元警視庁巡査部長の黒木昭雄氏は、こう断言する。「大沢容疑者や新潟県警だけではない。警察の組織ぐるみの問題です。もみ消しは全国の警察署で日常茶飯事ですから」」こういうコメントまで週刊誌には報道されているわけであります。  また、既に新聞報道なんかでは、二十一日の衆議院本会議場では与党の議員から、あれぐらいのことができないやつは国会議員じゃない、こういう擁護する声も聞かれた等々、交通違反のもみ消しなどできないようなやつは国会議員じゃないとか、あたかもそれが日常茶飯事であるかのごとき発言がどんどんマスコミに出ているわけなんです。  こういう事態を警察庁長官はどう認識しているんですか。まず長官の認識を伺います。
  70. 田中節夫

    田中政府参考人 今回の新潟県の県警におきますところのいわゆる交通違反のもみ消し事案をめぐりまして、いろいろな報道がなされ、いろいろなところでいろいろな発言がなされていることは、私どもも承知をしております。  しかし、不正な登録の抹消は決してあってはならないことでありますし、また、これまで登録の抹消には厳正な管理を行うように指導してきたところでございます。にもかかわらず、今回不正な抹消が行われたということは極めて遺憾でありまして、新潟県警におきますところの問題点を解明いたしまして、再発防止、このような事案がないことを徹底していかなければならないというふうに考えております。  各都道府県警察におきますところの抹消登録の実情や管理体制について十分点検し、問題の絶無を期してまいりたいと考えております。
  71. 木島日出夫

    ○木島委員 こんなことがあってはならないことはまさにそのとおりなんですが、現状は日常茶飯事にやられているのじゃないかと、もう公知の事実であるかのごとき指摘はされているんですよ。そこにこそ問題があると思うんです。  既に報道されておりますし、県警も捜査をやっていると思うんですが、白川事務所には数十件の交通違反のもみ消し依頼のファイルがあったということまで出ているわけです。恐らくそのファイルは押収されていると思うんです。本当に、この一件だけじゃないのじゃないかという点は徹底的に解明してもらいたいと思うんです。  そういうことを考えますと、問題の根本には、やはり長年にわたって築かれてきた政権党と警察との根深い癒着があること、この癒着を断ち切らなければ、私は警察と政治に対する国民の信頼は回復しないと思うんです。  そういう癒着を根本から断ち切るためにも、私は、先ほど触れましたように、本件、新潟県警事件の徹底解明とともに、それだけじゃなくて、改めて、過去何年間にさかのぼって全国の同種事犯の徹底調査をやるべきではないか。政治家が関与して、政治家の依頼によって、政治家の圧力によって交通違反がもみ消されたという事案が本当にないのかどうか、徹底的に警察庁としては調査をして、その結果を国会に、そして国民の前に明らかにすべきではないか。それをやらなければ、うみは出ない。この一事案である新潟県警問題だけをつっついても、国民はほかに膨大にあるんじゃないかと疑っているわけですから、そういう調査をぜひやってもらいたい。そして、しかるべき時期に報告してもらいたいと思うんですが、警察庁長官、いかがでしょう。
  72. 田中節夫

    田中政府参考人 先ほど来申し上げておりますように、交通違反の登録の不正な抹消、決してあってはならないことでございます。一般に行われているということにつきましては、我々は考えていないところでございます。  これまでも、登録の抹消には厳正な管理を行うように指導してまいりましたし、今回のこの事案を踏まえまして、各都道府県警察におきますところの抹消登録の実情や管理体制について十分点検し、問題の絶無を期したいと考えております。
  73. 木島日出夫

    ○木島委員 今の長官の認識は、本当に大甘だと思いますよ。一般に行われていると考えていない、とんでもない認識じゃないですか。だから私、先週この委員会でこの事案について詰めたんです。  抹消されたのは去年の十月の下旬だというんですよ。実際、違法、無法、懲役十年以下の違法行為が堂々と新潟県警の中で行われていたのは去年の十月ですよ。しかし、それが初めて表になったのがことしの二月二十七日、二十八日、そのことが上越北署と新潟県警本部に、内部告発か外部告発かわかりませんが、匿名の電話があって初めて警察の知るところになったのでしょう。そしてさらに、それが国民の前に明らかになったのは三月十九日未明でしょう。しかも、私は何で三月十九日の未明なんだと前回詰めましたよ。それは朝日新聞が三月十九日に朝刊ですっぱ抜いたからです。慌てふためいて、前の真夜中に懲戒免職処分をやり、二人を逮捕する。もし内部告発がなければ、朝日新聞が新聞紙によって報道しようとする行為がなければ、一切この事件は一〇〇%うやむやのまま葬り去られ、そして、今懲戒免職処分になりましたから、大沢は本来この三月三十一日付で定年退職で三千二百万円の退職金をもらった、そういうことになっていたはずなんです。  先ほど長官は、一般に行われているとは考えていない、そんなことは、この事件、新潟のもみ消し事件を考えただけでも、この経過を考えただけでも、そんな認識じゃだめだということは明らかじゃないですか。もう一度答弁願います。
  74. 田中節夫

    田中政府参考人 繰り返して恐縮でございますけれども、私どもの今回の認識といたしましては、今回の事案は、決してあってはならないことが起きたということでございます。したがいまして、今回のこの事案につきましても厳正に捜査し、また厳正に処分を行っているところでございます。  大変恐縮でございますけれども、私どもといたしましては、今回のこの事件を機会に、この種の事案が決して再び行われないように、各都道府県警察に対しまして指導を徹底してまいりたいと考えているところでございます。
  75. 木島日出夫

    ○木島委員 これから同種事犯が再び行われないように指導を徹底するためにも、その前提として、過去何年間かにさかのぼって、刑事時効が成立していない部分については調べてもらいたいと私は思うんです。せめて過去何年間にわたって、同種事犯がないか、徹底した警察内部調査をすべきじゃないのですか。うやむやにするつもりですか。調査する気がないのですか。私も過去にあるかどうかわかりません。あるだろうという、これだけのマスコミが指摘しているわけですから。警察庁はやる意思は全然ないのですか。調査をして、事実を明らかにする、やる意思はないのですか。
  76. 田中節夫

    田中政府参考人 先ほど来申し上げておりますように、今回の新潟県警の交通違反のもみ消し事案というのは極めて遺憾なことでございますし、どうしてこのようなことが起きたのか、組織的あるいはシステム的にどこに問題があるのかということにつきまして、各都道府県警察におきますところの抹消登録の実情というものを徹底的に調査してまいりたい。また、管理体制についても十分点検してまいるということでございます。
  77. 木島日出夫

    ○木島委員 過去の同種事犯についての調査をする意思は全くないのですね。現在のこういう交通違反のルールがどうなっているか、それは調べるというのですが。そういうことでもいいでしょう、調べてこういう不法、不当な抹消が摘発されればそれにこしたことはないわけですから、それはやって当然だと思うのです。  そういう観点よりさらに一歩立ち入って、やはり調べるべきじゃないんですか、特に政治家の関与問題は。この週刊誌なんかにはこういう証言も出ていますよ。東京都議会議員の証言として、交通陳情、つまり交通違反のもみ消し陳情を月に二、三件処理していること、多い議員は月に十件、年百件以上やっている、こんなことが紹介されているんですよ。これは都会議員ですよ。  そういうことを徹底して調査すべきだという意見は、三月二十三日の国家公安委員会では公安委員から出ませんでしたか。
  78. 田中節夫

    田中政府参考人 三月二十三日の国家公安委員会の状況につきましては、先ほど御説明申し上げたとおりでございまして、新潟県警におきますところの今回のもみ消し事案につきまして徹底的に調査をするように、また、こういうことが行われないようにするために、どういうようなシステム、あるいはどのような管理体制がいいのかにつきましても、単に通達だけではなくて、具体的な方法について検討するようにという指示がございました。
  79. 木島日出夫

    ○木島委員 過去の不法、不正な事実に目をつぶるようでは、今後同種事犯が起きないという保証は得られない、そういうことを国家公安委員要求しないようであれば、それはもう国家公安委員会そのものが問われると私は指摘して、次の質問に移ります。  本日の東京新聞によりますと、自民党は昨日の総務会で、新潟県警の交通違反もみ消し事件で白川勝彦元国家公安委員長の秘書が逮捕された問題に関連し、国会議員が行政機関に対し法律の執行状況を問い合わせることは正当な行為との見解を確認したと報道されています。この中には個別の交通違反に関する問い合わせも含まれるとしておるようであります。こういう報道が出ています。  私は、これが事実だとすれば、自民党総務会はとんでもない見解を確認したことになると思います。  一つは、先ほど言いましたように、白川議員自身が、自分の秘書はもみ消しを依頼していない、免停になるかどうか問い合わせただけだという主張をし続けているわけでありますが、それはさっき言ったように、共謀共同正犯の逮捕状とは全く抵触する弁解にすぎないわけでありますから、そういうことを前提としてこれを容認するということになること。  もう一つの大問題は、与党の国会議員、あるいは与党だけと限らないかもしれません、国会議員あるいは都議会議員、そういう地位にある者、あるいはその地位にある者の秘書から、とりわけ国家公安委員長などを歴任した者の秘書からそういうたぐいの問い合わせがあること自体、例えば免停になるのか、違反点数は何点になるのかという問い合わせに仮にとどまったとしても、そのこと自体が、取り消してくれぬか、何かうまく処理してくれないかということを暗に意味していることは明らかじゃないですか、口で言わなくても。そういうのを以心伝心というのですよ。そういうことは常識ですよ。  そういう状況であるにもかかわらず、自民党の総務会が、行政機関に対して法律の執行状況を問い合わせるのは正当なんだ、免停になるかならぬか問い合わせすることは正当なんだということを確認して、これからもやりましょうという確認でしょう。  こういう確認に対して、警察庁長官はどういう受けとめですか。まず、警察庁長官としての受けとめを聞きたいと思います。
  80. 田中節夫

    田中政府参考人 一般的に、私どもにいろいろな方がいろいろな形でお問い合わせとか、あるいは要望とか御相談に見えることはございます。それにつきましては、私どもは、警察庁におきましても、あるいは都道府県警察本部におきましても、真剣に、真摯に対応するようにというようなことで従来指導してきているところでございます。  今御指摘のようなお話につきましては、私どもは詳細は承知しておりませんけれども、一般的に、いろいろなお問い合わせが来た場合には、これはどのような方であろうと真剣に対応する。しかしながら、いわゆる法を曲げるような依頼がもし仮にあるとすれば、今までもそういう依頼はございませんし、今後もそういうことはないだろうというふうに私どもは考えておるところでございます。
  81. 木島日出夫

    ○木島委員 では、最後に一点だけ。  法務大臣、あなたも自民党員でございますからお聞きしたいのですが、もし法務大臣なり自民党の代議士が、ある犯罪事実をやった刑事被告人あるいは刑事被疑者の個別問題について、検察当局にあの事件どうなっているんだということを聞いたら、それは、無罪放免してやれという言葉は言わなくても、仮に法務大臣があの事件どうなっているんだということを検察に聞いたら、それは暗に、何とか勘弁してやってくれということを含むと。また、検察当局は含むと理解すると思うのですよ。同じことですよ、警察も。なおさらのことだと私は思うのですが、そういうふうには受けとめませんか。  自民党総務会がきのうこういう見解を確認したとすれば、私はとんでもないことだと思うのですが、法務大臣自身はこの昨日の自民党総務会での見解についてどういう御所見なのか伺って、終わりたいと思うのです。
  82. 臼井日出男

    臼井国務大臣 政党の幹部会のことでございますから、法務大臣としての私からお答えする立場にはないように思います。  また、今委員指摘をいただきました点につきましても、仮定の問題も含まれておりまして、私から答えることはできないのでございます。
  83. 木島日出夫

    ○木島委員 終わりますが、今の警察庁長官の態度では本当にうみは出ない。徹底して過去のこういう同種事案についても調査され、国会に報告されることを私から重ねて要求して、質問を終わります。
  84. 武部勤

  85. 保坂展人

    保坂委員 社会民主党の保坂展人です。  法務大臣に一点だけ伺います。  私も、きょうの東京新聞の、法務局の登記簿が先ほど坂上委員指摘のように変更された、移記されたという点について、重大な事柄だと認識いたしました。細かいやりとりはもう全部省きますが、これについてぜひ徹底した調査をしていただき、この法務委員会でしっかり御報告をいただきたいとお願いしたいのですが、いかがでしょうか。
  86. 臼井日出男

    臼井国務大臣 本件につきましては、先ほど申し上げましたとおり事実関係が明らかではございませんので、事実関係を早急に調査するように指示したところでございます。委員指摘のとおり、この委員会で御報告をさせていただきたいと思います。
  87. 保坂展人

    保坂委員 新聞のコピーを委員各位に配らせていただいております。小さなBという記事の方に、これは千葉県警ですけれども、「拘置女性にわいせつ行為」という記事が出ています。  この程度の大きさの記事ですと、最近よく出るので、これはよくないことなんですが、またかということで、一つ一つ検証するのももう時間がないということになるのですが、ここはちょっと重大な点が幾つかあるようで、急遽警察庁長官においでいただき、何点か確認をいたしたいと思います。  まず、このケースは九五年、大分前です、五年前に、当時二十八歳の女性が、千葉県警の巡査部長とホテルに入り、そして、覚せい剤を所持していたということを告げながら、巡査部長の方は先にホテルから退室をした、帰った。不審に思った従業員が女性を発見したのですね。そして、覚せい剤でもうろうとなっているということで、現行犯逮捕されたという事件です。先にお帰りになった巡査部長は、覚せい剤について捜査もしなければ、署に連絡もしていなかったということもつけ加えておきたいと思います。  この新聞記事にあるように、これは朝日新聞ですが、女性は、今度は別の、拘置されたところの留置場の当直だった巡査長にいわばわいせつ行為をされた、胸や太ももをさわるなどの行為をされた、こういうふうに報道されているのですが、これが事実なんでしょうか。それとも、それ以上の行為ということもあったのかどうか。今長官が把握されている率直な事実認識、お願いしたいと思います。
  88. 田中節夫

    田中政府参考人 委員指摘の事案につきまして千葉県警察からの報告を求めておりまして、現時点での我々が把握している内容はその報告に基づくものでございますが、これによりますと、平成七年十一月二十六日夜、千葉県船橋東警察署留置場で、当時看守係をしていた巡査長、当時四十歳でありますが、この者が留置中の女性の体にさわる等の不適切な行為を行ったものであるということ、当時、関係者から事情聴取するなど事実関係の解明に努めたが、女性に被害申告の意思がなく、刑事事件の立件のための供述が全く得られなかったことから、刑事事件としては検察庁へ送致はしていない、しかし、看守勤務員としてあるまじき行為であり、関係職員を同年十二月二十五日付で諭旨免職処分とするとともに、監督責任として、署長以下関係警察官に対し減給等の懲戒処分をしたという報告を受けております。  現時点で私どもの把握しておる状況は以上でございます。
  89. 保坂展人

    保坂委員 では、田中長官に二点確認したいと思います。  このわいせつ行為の内容ですけれども、性行為を強要したという事実がないというふうに確認できているのかどうか、これが一点です。  二点目は、新聞にも出てきますが、刑事告訴をしない、口外をしない、こういう誓約書を女性に書かせた、これは事実ですか。この二点、お願いします。
  90. 田中節夫

    田中政府参考人 先ほど申し上げましたように、留置中の女性の体にさわる等の不適切な行為を行ったという報告を受けております。その具体的な内容につきましては、今委員指摘のように、性行為を含むものかどうかにつきましては、現時点では私ども把握をしておりません。  それから、今御指摘の告訴の有無でございますが、それにつきましては、私は現時点では把握をしておりませんので、これは調査いたしまして、後にまた御報告いたします。
  91. 保坂展人

    保坂委員 確認になりますが、今長官は言葉を選んで、今発表されたこと以外は確認していないというふうにおっしゃいましたので、逆に、ないということは確認していませんね。先ほど一問目にお話しした、性行為を強要したということがないということの確認はしていないというふうに伺ってよろしいですか。
  92. 田中節夫

    田中政府参考人 不適切な行為というものの中身だと思いますけれども、そういうことにつきましては、千葉県警察から現在報告をしていること以外にどういうことがあったのか、なかったのかにつきましては、私ども把握をしておらないということでございますので、これはあるともないとも申し上げられないというのが実情でございます。
  93. 保坂展人

    保坂委員 ということは、千葉県警からはそれしか報告がなかった、その報告だけだ、それ以外のことについては確認のしようがない、こういうことでしょう。  それでは伺います。個々具体的な個別のいわゆる不祥事というものについてはもう国会で議論するような数じゃないのですね、余りにもあり過ぎて。ですから、私は、やはり組織の構造に絞ってこの問題を考えていきたいと思っています。ですから、きょう取り上げたのは、実はそこに触れる問題があるからなんです。  神奈川県警の不祥事が明らかになった昨年の秋以降、この件について、当該の船橋東警察署の副署長らによるこの件のもみ消しの工作が行われたということを伝え聞いているのですが、これは把握されておりますか。     〔委員長退席、横内委員長代理着席〕
  94. 田中節夫

    田中政府参考人 委員指摘の船橋東警察、当時の上司だと思いますけれども、その者たちによるところのいわゆるもみ消しといいますか、そういう工作があったということについての報告は受けておりません。
  95. 保坂展人

    保坂委員 では、聞き方を変えます。  報告がないということなんでしょうけれども、昨年の秋に、一連の神奈川県警不祥事、さまざま出てくる問題、この報道の中で、当該の被害女性とその後諭旨免職になった元警察官、そして副署長と取り調べに当たった警察官、こういうメンバーで、いわば一堂に会して、その席で三十万円が手渡されたのではないかというふうに言われているのですね。そのただし書きとして、一切の解決金として、こういう領収書が交わされたということも聞いておるのですけれども、こういう事実、もしあったとしたらこれはもう重大だと思いますが、調査されるつもりはございますか。
  96. 田中節夫

    田中政府参考人 今委員指摘のように、被害女性も含めまして関係者がお集まりになられて、そこでどのような話があったのかどうか、そういう事実全体を含めまして、私どもは詳細に把握をしておりませんので、今御指摘のようなことがもしあるとすれば、関心を持って調査したいというふうに思っております。
  97. 保坂展人

    保坂委員 先ほど長官は、千葉県警からの報告の中で、こういった刑事告訴はしないなどの念書というか誓約書、こういうことについては確認をしていないんだということだったのですが、これは事実がどういう事実かによって大きく揺れ動いていきますよね。その後の隠ぺいの問題もさることながら、五年前のこの事実、これは大変重いわけですね。事実によっては再捜査ということも当然射程に入ってこなければならないと思いますが、そこの点を含めて、調査の上、事実を明らかにして、速やかに、事実が重大であれば再捜査も射程に入れるのかどうか、お願いします。
  98. 田中節夫

    田中政府参考人 先ほど御説明申し上げましたように、被害女性の告訴の意思がないということで立件できなかったという報告を受けております。  今委員指摘のように、被害女性の告訴の意思がないというその過程におきましてどのようなことがあったのかにつきましては、御指摘の問題も含めて、千葉県警に詳細調査をするよう指導してまいりたいと思います。
  99. 保坂展人

    保坂委員 それでは次に、交通事故の問題、特に被害者の側に立ってさまざまな法制度をこれから変えていかなければならないと思うのですが、臼井法務大臣に受けとめていただきたく、御質問いたします。  九七年の十一月に、世田谷区で、ダンプカーによって、幼い、可能性に満ちた命を奪われてしまった片山隼君、亡くなって二年と数カ月がたったわけです。失われた生命はもう戻らない。けれども、その尊厳を奪い返したい、亡くなった息子さんは戻ってこないけれども、少なくとも、その直前まで元気だった息子さんの命、その輝きを御両親が果敢に関係機関に訴え、あるいはその道路に立って目撃者を捜し、また街頭に立って署名を集め、物すごく大変な努力で、こういう交通事故で目撃証言を御当人が捜し当てるということはほとんど奇跡に近いことですが、私は奇跡が起こったんだというふうに思っています。  その結果、いろいろな背景がわかってきて、この法務委員会でも、当時、下稲葉法務大臣が、これはもちろん個々具体的な事件についてではなくて、検察庁の窓口でお父さんがどうなっているんですかと言ったときに、教える必要はないんですよ、検察審査会がありますよ、こういう対応について、大変適切を欠いたということで謝罪をされた。その後、東京地検において、これは異例だと思いますけれども、再捜査が行われて、業務上過失致死に限ってこの件が起訴をされ、現在公判が行われ、最近結審したというふうに聞いておりますけれども、判決を待つのみということになっています。  この事件、そして今遺族の御夫妻にも傍聴に来ていただき、また大臣のお気持ちをぜひ率直にお話しいただきたいと思うんです。  大変大きな転換点になった。これは、法務行政それから警察のさまざまな交通事故に対する対応、大きな転換点になったと思うんですけれども、一方で、この件で法務大臣が謝罪をしたり、あるいは非常に適切じゃないということを言いつつも、その適切じゃないことを起こした方々が、私はこれはもう五回目くらいで、毎回聞いて申しわけないんですが、本日に至るまで注意も受けていないというふうに聞いているんですね。この件、何年たってでもいいから、やはり大臣から、不適切な扱いをした者、あるいは、これはよろしくなかった、間違えていたということについては正していただく意味でも、注意はしていただきたいというふうに思うんですが、その点に関していかがでしょうか。
  100. 臼井日出男

    臼井国務大臣 今委員指摘をいただきました片山隼君の事件につきまして、本当に御遺族にとりましてはかけがえのないお子さんを亡くされたということで、心から御同情申し上げる次第でございます。  また、下稲葉法務大臣が当時、受け付けの際に担当官の対応に配慮を欠く点があったという点についておわびを申し上げたということもお聞きをいたしております。こうした場合に、事故被害を受けられた方々に対する配慮というものは、非常に細心の注意を持って相手の方の身になってやるべきものでございまして、決して悪意があったと私は思っておりませんが、そうしたことがあったとするならば本当に遺憾なことでございます。  この点につきましては、私どもといたしましては、現場においてもそうしたことのないような配慮、私はいつも申し上げているわけですが、法務行政というのは厳正公平あるいは不党不偏、そういう正しさということだけではなくて、国民の皆さん方に理解をしていただく、また身近に感じていただけるような、そういった姿勢というものが必要だということを特に申し上げておりまして、今後ともそうした点に心をいたしてまいりたいと思います。
  101. 保坂展人

    保坂委員 これは法務大臣の耳にも届いていることかと思いますが、検察行政としては一種の大きな転換をされた。このこと自体、大変に勇気の要ることで、前大臣あるいはそれ以後の大臣も含めて大変誠実にこの件に取り組んでこられたし、また臼井法務大臣もこの点に対して非常に心を割いて取り組まれている。そこは感謝を申し上げているんです。  しかし、事柄の転換期にはいろいろなことが起きまして、例えば、これは九七年の事故直後、いろいろなことが言われた。その中で、当時、地検の交通部長の方が取材記者に対して、不起訴というのは妥当だったんだ、横断歩道をまたがってダンプカーがとまっていたんだから、片山隼君は前の方を通ってひかれてしまっているが、後ろを通ればよかったじゃないかというようなことを言われているんですね。また、これは一部テレビ局が、この言葉どおりではありませんけれども、そういう東京地検の見解として放送したりもしているんですね、謝罪をされた後なんですけれども、この委員会でも取り上げましたけれども。  これはやはり、いろいろ転換期で起きた出来事とはいえ、遺族にとってみれば暴言ではなかろうか、この暴言は取り消していただきたい、こう思うんですが、いかがでしょうか。
  102. 臼井日出男

    臼井国務大臣 一般論として申し上げれば、そうした心ない発言というものはあってはならないというふうに考えますが、個別の事件についての検察官が現場でどのようなことを言ったかという点については、御答弁は差し控えさせていただきます。
  103. 保坂展人

    保坂委員 大臣、今警察庁長官にもまだ座っていただいていますけれども、長官も御自身のいわれのないことで処分を受けられたわけですね。そして、その事件そのものの渦中にあった方はそれぞれ厳しい処分があり、また、さまざまな、これは重過ぎると言っていい処分を受けたように感じている方もその警察官の中にはいるかもしれません。  この件に関して、私は何も、例えば片山隼君の事件で今の発言をされた方についても、一番重い処分をしろとかそういうことを言っているわけではないんです。それは時と場合に応じた処分というのがあり得べしと思っています。しかし、この方は今、司法修習所で教えていらっしゃる、裁判官や検事、弁護士の卵に指導されるという立場というふうに聞いているんです。それは司法修習所じゃないのかもしれませんが、問題の本質は、現在に至るまで、臼井法務大臣も含めて、一言も注意は受けてないはずなんです。国会答弁で毎回確認しています。  だから、こういうことに対して一言も注意できない、口頭厳重注意というのもあるんですね、こういうこともない、そういうことでいいんだろうか。それは何かおかしなことがあったら、やはりおかしいぞということを一番指揮をとっておられる方が言う、これがないのであれば、これはどうも、検察行政の転換、被害者立場に立ってという転換もそれは形だけだというふうに言われてもいたし方ないのかなと思うんですが、いかがですか。
  104. 臼井日出男

    臼井国務大臣 今お話を伺っておりまして、法務の担当官が過ちを犯した、どのような罰を与えるべきかという点については今後慎重に検討していく必要があろうかと思いますが、現時点で、法務省責任者である私から当時のことについて申し上げるということは考えておらないのでございます。
  105. 保坂展人

    保坂委員 大臣、今も五年前の話で警察庁長官は答弁しているわけですよね。これはまだ二年と少し前の話なんですね。ですから、本当の意味で法務、検察が変わったという姿を見せてほしい。それは何も物すごい重大な、厳重な処分をぜひ出すべきだなんということを言っているわけじゃないんです。やはり、政治がしっかりそこを監督するという気概を見せていただきたいんです。いかがですか。
  106. 臼井日出男

    臼井国務大臣 こうした職員の問題につきましては、それぞれ罰を与える場合には、重い、軽いというものがあろうかと思っておりまして、現時点におきまして、あるいはそうした過去にいろいろな問題点があったかもしれないということは私もよく理解をできるわけでございまして、そうした点につきましては、もしそれが本当の事実であるとするならばそうした方々に対して大変申しわけない、こういうことを感ずるという気持ちはそのとおりでございます。そうした点につきましても、どのような問題に対してどのような罰を加えていくかということにつきましては、今後さらに検討させていただきたいと思います。
  107. 保坂展人

    保坂委員 大臣、お渡ししたと思うんですけれども、お兄さんは横断歩道を渡ったんです、ダンプの後ろを通ればよかったと言いますが、そうしたら僕はもっと危ないと思います、隼ちゃんは悪くないです、隼ちゃんにごめんなさいと言ってくれなかったら隼ちゃんはかわいそうです、こういう幼い弟さんのお手紙もあるわけで、その辺はじっくり受けとめていただきたいというふうに思います。  そして、今回、不起訴の記録を開示するということを大臣は会見で明らかにされましたね。これは画期的なことだと思います。今まで何度も何度も求め続けて、私は、これは本当に解釈でやるべきものなのかな、あるいは、そうではなくて、きちっと根拠として法改正すべきではないかなという気持ちはありますけれども、しかし、不起訴記録の開示ということを出された。  その直後に片山さんの方から、このケースについては業務上過失致死ともう一つひき逃げという、こっちの方が不起訴になっていますから、そういう記録は開示してもらえるんだろうかという、恐らく新聞を見てすぐに電話されたんだと思いますけれども、法務省の回答は積極的なものではなかったというふうに聞いておりますが、この点はいかがなんでしょうか。
  108. 古田佑紀

    古田政府参考人 まず、いろいろな前提の問題を御理解いただきたいと存じますが、第一点といたしまして、本件につきましては、道路交通法違反の記録と業務上過失致死事件記録、これが実は一連の事件でございますので一体となっているわけでございます。したがいまして、その中身と申しますと、二つの記録があるというわけではなくて、実際は中身は非常に同じものが多い、それで、そのかなりの部分は業務上過失致死事件公判の立証のために裁判所に提出されている、そういうものでございます。さて、そうすると、残りは何があるかというと、その公判提出した記録以外の一体となっていた事件記録の残りということになるわけでございます。  そういう記録の構造になっているということを御理解いただいた上で、こういうケースの場合にどうなるかということについて、実際にお見せするかどうかということは、これは検察庁判断でございますので、その点について私から明確なことは申し上げられないわけでございますが、今回、不起訴記録の開示、そういうことでどういうふうなことになるか、一般論を申し上げたいと存じます。  これは、先般、被害者等に対する不起訴記録の開示につきまして新たな方針を策定し、全国の検察庁通知しているわけでございますが、これによって、被害者等民事訴訟などにおきまして被害回復のため損害賠償請求権その他の権利を行使するために必要と認められる場合には、関連事件捜査または公判運営への支障関係者のプライバシーの侵害などを生じない範囲内で、実況見分調書あるいは写真撮影報告書などの代替性のない客観的な証拠につきましてこれを開示するということにするというものでございます。したがいまして、記録がそのようなものに該当する証拠である限りは、これはお見せをするということになるということでございます。
  109. 保坂展人

    保坂委員 時間がないので、これは私の方から要望しておきますけれども、片山さん御夫妻とお話しして、これは大変な努力で大きな転換点をつくっていただいたわけですけれども、御当人もまた被害者の一人でありまして、あるいは家族でありまして、これから法改正していい制度になるんだ、しかし、御当人のことに関しては従前どおりということにならないように、やはり最大限、これまでも努力をしていただいていると思いますけれども、これからもぜひ最善を尽くしていただきたいということを要望しておきます。  警察庁長官に来ていただいていますので、もし御答弁できれば、二点ばかり交通事故の件でお尋ねしたいと思います。  行政処分の聴聞会、これも被害者遺族通知をすべきではないかという議論があったそうでございます。そしてまた、原則的にはこれを通知していくという方向であるようですけれども、この点、今後どのような扱いにしていくのかという点。  時間がないのでもう一問。実は、この片山隼君の事件でいわば最大の争点になったのは、運転されていたドライバーにその自覚があったのかどうかなんですね。気づかなくて行ってしまえばこれはひき逃げではない、気づいていたのであれば、ここが争点になりますよね。これは警察によっていわばテストが行われたそうです。ダンプカーを運転して、ある形の物体を車にひかせてみて、そしてわかったかどうかというテストだそうです。ただ、長官、これを運転していたのはその会社の社長なんですよ。これは利益当事者じゃないでしょうか。こういうテストというのは、そういう関係者がテストドライバーになるというのは実におかしいなと思うんですが、この二点についてお願いいたします。
  110. 田中節夫

    田中政府参考人 第一点目の聴聞の件でございますけれども、道交法の規定に基づきます意見の聴取等につきましては公開により行うということになっておりまして、意見の聴取の期日及び場所を公示することになっております。したがいまして、交通事故被害者または御遺族から、交通事故等を起こした加害者に対する意見の聴取等の期日につきまして問い合わせがあった場合におきましては、これに回答するということは適切であると思っております。  したがいまして、そのような事情、また今御指摘の片山隼君の事件も踏まえまして、昨年の八月から、問い合わせがあった場合にはこれに適切に回答するよう指導しておるところでございまして、この指導をさらに徹底してまいりたい、かように考えておるところでございます。  それから、二点目の実況見分の立会人の問題でございますが、本件捜査の実況見分に被疑者の、被疑者は運転手でございますが、運転手の雇用主にダンプカーを運転させたということは事実でございます。御指摘のとおりでございます。ただ、そのことをもって直ちに実況見分の客観性が損なわれたものとは考えておりません。  ただ、一般論として申し上げますと、見分の立ち会いにつきましては、その方法、立会人等につきまして、当該個別事件捜査ごとに必要かつ適切に行うことが必要でありますし、また、客観的に見てその公正さが疑われないような配慮を今後ともしていく必要があるというふうに考えておるところでございます。
  111. 保坂展人

    保坂委員 法務大臣にお聞きしようと思っていたんですが、もう時間がないので簡潔にしますけれども、免田栄さんという、確定死刑囚として六回目の再審請求で無罪、そして社会に出てきた方から、年金の受給資格がないという大変重い問題のお手紙をいただいて、大臣にもコピーをお渡ししたと思います。このことについて、今後ぜひ一緒に考えていただきたいということだけ一言お願いして終わります。中身はいいです、取り組んでいただきたいということだけ。
  112. 臼井日出男

    臼井国務大臣 この問題につきましては、単に我々刑事関係のことだけではなくて、いわゆる年金制度あり方そのものにも影響するというふうに考えておりまして、今後そうした点も含めて考えていくべきものと思います。
  113. 保坂展人

    保坂委員 時間の関係で、社会保険庁にせっかく来ていただいたのに、時間切れになりました。これで終わります。
  114. 横内正明

    ○横内委員長代理 次回は、来る三十一日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時十分散会