○石橋
委員 今、私の
質問に対して、十二年度予算などではかなり積極的な対応をしている、こういう大臣の答弁がありましたが、それにしても、まだまだ絶対数五千三百人
程度では少ないと思いますし、直接所得補償
制度が導入されるとはいえかなり複雑な
制度でして、全体の農地面積の五分の一が対象だ、こういうような新聞記事もありましたが、ますますこれは重要になってきますので、今後ともひとつ力を入れて拡大をして、充実をさせていただきたい、こういうことをお願いしておきます。
最後の
質問になりますが、これは玉沢
農政の今後の展開を中心にして、
農林水産大臣の
農政の哲学を改めて確認し、決意をひとつ聞いておきたい、こう思うのです。
まず
一つは、フランスの
青年就農者
制度は一九七三年からやられているわけですが、私も四、五年前にフランスの
農業省で
農業次官の話を直接聞いたことがあるのですが、毎年一万人から一万二千人ぐらい、このところちょっと落ちているみたいですが、どっちにしてもずっと一万人前後の
青年就農者が継続的に、持続的に
確保されている。
なぜフランスでそういう
青年就農者の
確保が成功しているか、こういうことをいろいろ考えてみると、まず
一つは、フランスは御承知のとおり農産物の輸出国、EC最大の
農業国であります。国家的にも
農業に対する位置づけが
日本とは違う、ある意味で。そういう意味では、戦略
産業の
一つに位置づけられておるわけですから、
農業に対する国民の考え方、国家の政策、そういうものが非常に重要な位置づけをされておるということが
一つ。
それから、一戸当たりの平均経営面積を見ると約四十一・七ヘクタール、五十ヘクタール以上の
農家の所有する農用地は全体の七割以上を占める。
日本に比べると
農業で自立できる可能性が非常に大きい、そういうことが言えるわけです。
畜産でも、一戸当たりの牛の頭数が平均六十七頭ですから、最近、畜産は、頭数だけからいうと
日本の畜産もECを超えた、こういうようなことも言われるような、ある
程度規模の拡大をしているのですが、しかし、輸入飼料に依存するという弱点を持っている。
フランスの場合はそういうことになっている。
そして、
農業の継承がどうなっているかということを専門家に聞いてみますと、大体八割方小作だというのですね。だから、農地を買って多額の負担をするということはしなくてもいい。ほとんど小作で農地を継承する。親から子への農地の継承も小作だというのです。
だから、これから
農業者年金の問題も恐らく深刻な問題になっていずれ議論しなければならぬことになりますが、フランスみたいにかなりの規模があって、親から子への継承も小作で受け継ぐ、規模も大きいわけですから、両親は小作料がそれなりにある、
農業者年金は要らぬと、こういう
状況かどうか知りませんよ、そういうことかなと思ったりもするのですが、どっちにしてもかなり
新規就農に当たっての負担が軽いわけですね。
そういうようなことがやはり成功の原因かな、こう思ったりするのですが、何よりも
農業について国家的にも個人的にも誇りが持てる、こういう
状況があるということが最大の成功の原因だ、私はこう思うのです。
そのことに関連して、玉沢
農林水産大臣、同じ岩手県の出身ですが、僕は前からこの人について非常に関心を持って見ていますが、東北学院
大学の教授で小笠原裕という人が米問題と
日本の
農業について大変辛らつな書き方をしておるわけですね。
農業なんか要らぬ、こういう書き方をしておる。
それを言うと、まず、一九九二年に「本音で語ろうコメ問題」こういう本を書いている。その中で、時代おくれの尊王攘夷だというわけですよ、米自由化反対などと言っている者は。鎖国
状態にある
日本の米に開国を迫る外国に対して、外夷を打ち払って
日本農業を守れと叫ぶ米市場開放反対論は百年前の尊王攘夷と
一緒だ、こう言っておるわけですね。
日本の米の競争相手は、アメリカの米でもなければタイの米でもない、世界一の国際競争力を持つ
日本の自動車
産業である、そして、
日本の米が
日本の自動車
産業に勝つことは、アメリカの米やタイの米に勝つこと以上に困難だ、要するに、国際競争力のある
日本農業の確立はたわ言である、こう言っておるわけです。厳しいですよ。
米市場開放、米放棄こそ
日本の、そして世界の繁栄につながる、米防衛は
日本を亡国に追いやった、このことは、
日本が三十年前に自由化の道を選択して以来、これまでの
日本の繁栄が証明している、こう言っている。
もう
一つ。この教授が一九九六年に「
農業に明日はない」、こういう著書を出版している。この帯にこうある。今さら
日本農業の再建などナンセンスだ、必要なのは、
農業が安らかに成仏できるよう引導を渡すことだ、こう言っている。
一に、今からでも遅くないから
農業をやめなさい。二つ目に、
農業を続ける者は野たれ死にをする。三番目、農民のために命を賭する者はいない。四番目、これは我々政治家に対する非常な侮辱ですが、農民を食い物にする政治家、農水省、
農協、農学者そしてマスコミがいるだけである。
大変な侮辱ですが、これを大臣はどう受けとめられるか。
同時に、中山間地で、さっき言ったように、
崩壊の危機に直面する中で、ひとり取り残されて死を待つばかりの老いた農民や何かはどういうふうに受けとめるだろうか。私は、率直に言って、この
先生の言うことは真実だ、本当にそのとおりだ、こういうふうに受けとめるのも多いのではないか、こういう気がするわけですね。
どっちにしても、こういうことを言う学者が、今言ったように、堂々と
日本農業亡国論を言っている。こういうことでは、新しい、若い
担い手が積極的に
農業に参入するということにならぬわけです。何としてもこういう
状態は、我が国の
農政を確立する前提として克服しておかなければならぬ問題だ、こう思うのですよ。
このことを最後に大臣の哲学を含めてお聞きして、私の
質問を終わりたいと思います。