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2000-03-23 第147回国会 衆議院 農林水産委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十二年三月二十三日(木曜日)     午前十時一分開議  出席委員    委員長 松岡 利勝君    理事 金田 英行君 理事 岸本 光造君    理事 松下 忠洋君 理事 宮本 一三君    理事 小平 忠正君 理事 鉢呂 吉雄君    理事 宮地 正介君 理事 一川 保夫君       赤城 徳彦君    麻生 太郎君       稲葉 大和君    今村 雅弘君       大石 秀政君    木村 太郎君       北村 直人君    熊谷 市雄君       栗原 博久君    塩谷  立君       園田 修光君    田中 和徳君       棚橋 泰文君    野呂田芳成君       藤本 孝雄君    二田 孝治君       御法川英文君    宮島 大典君       矢上 雅義君    谷津 義男君       安住  淳君    石井 紘基君       石橋 大吉君    大石 正光君       木幡 弘道君    佐藤謙一郎君       漆原 良夫君    福留 泰蔵君       井上 喜一君    佐々木洋平君       菅原喜重郎君    中林よし子君       藤田 スミ君    菊地  董君      知久馬二三子君     …………………………………    農林水産大臣       玉沢徳一郎君    農林水産政務次官     谷津 義男君    政府参考人    (農林水産省経済局統計情    報部長)         西藤 久三君    政府参考人    (農林水産省農産園芸局長    )            木下 寛之君    政府参考人    (農林水産省食品流通局長    )            福島啓史郎君    政府参考人    (農林水産技術会議事務局    長)           三輪睿太郎君    農林水産委員会専門員   外山 文雄君     ————————————— 委員の異動 三月二十三日  辞任         補欠選任   河井 克行君     宮島 大典君   木部 佳昭君     大石 秀政君   園田 修光君     棚橋 泰文君   木幡 弘道君     石井 紘基君   長内 順一君     福留 泰蔵君   菊地  董君     知久馬二三子君 同日  辞任         補欠選任   大石 秀政君     木部 佳昭君   棚橋 泰文君     園田 修光君   宮島 大典君     田中 和徳君   石井 紘基君     木幡 弘道君   福留 泰蔵君     長内 順一君   知久馬二三子君    菊地  董君 同日  辞任         補欠選任   田中 和徳君     河井 克行君     ————————————— 三月二十二日  農業に関する技術研究開発促進に関する特別措置法を廃止する法律案内閣提出第四五号)(参議院送付) 同月二十三日  農林漁業団体職員共済組合法等の一部を改正する法律案(第百四十五回国会閣法第一二三号)(参議院送付) 同月十七日  森林・林業・木材産業基本政策の確立に関する請願北沢清功紹介)(第四九八号)  遺伝子組換え食品表示対象の見直しに関する請願北沢清功紹介)(第四九九号) 同月二十三日  遺伝子組換え農産物安全性遺伝子組換え種苗表示に関する請願平沢勝栄紹介)(第七一五号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  政府参考人出頭要求に関する件  青年等就農促進のための資金の貸付け等に関する特別措置法及び農業信用保証保険法の一部を改正する法律案内閣提出第三一号)  農業に関する技術研究開発促進に関する特別措置法を廃止する法律案内閣提出第四五号)(参議院送付)     午前十時一分開議      ————◇—————
  2. 松岡利勝

    松岡委員長 これより会議を開きます。  内閣提出青年等就農促進のための資金の貸付け等に関する特別措置法及び農業信用保証保険法の一部を改正する法律案及び内閣提出参議院送付農業に関する技術研究開発促進に関する特別措置法を廃止する法律案の両案を議題といたします。  まず、農業に関する技術研究開発促進に関する特別措置法を廃止する法律案について議事を進めます。  これより趣旨説明を聴取いたします。農林水産大臣玉沢徳一郎君。     —————————————  農業に関する技術研究開発促進に関する特別措置法を廃止する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  3. 玉沢徳一郎

    ○玉沢国務大臣 農業に関する技術研究開発促進に関する特別措置法を廃止する法律案につきまして、その提案理由及び内容を御説明申し上げます。  農業に関する技術研究開発促進に関する特別措置法は、緊急かつ計画的に行う必要のある農業技術研究開発促進するため、生物系特定産業技術研究推進機構業務に関する特例措置を講じ、もって農業技術の向上を通じて、効率的かつ安定的な農業経営育成等を図ることを目的として、平成七年に制定されたものであります。  これまで、この法律に基づき、生物系特定産業技術研究推進機構は、民間の研究開発能力を活用して、生産現場に直結した農業技術研究開発を推進してまいりましたが、これらの研究開発については、本年度中に所期の成果が得られる見通しとなっております。  この法律は、平成十二年三月三十一日までに廃止するものとされている時限法であり、また、以上のような研究開発実施状況にかんがみれば、この法律を規定どおり廃止することが必要と考えられます。  このため、農業に関する技術研究開発促進に関する特別措置法平成十二年三月三十一日をもって廃止するとともに、この法律の廃止に伴う生物系特定産業技術研究推進機構業務等に関する経過措置を定めることとし、本法律案を提出した次第であります。  以上が、この法律案提案理由及び内容であります。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。
  4. 松岡利勝

    松岡委員長 これにて趣旨説明は終わりました。     —————————————
  5. 松岡利勝

    松岡委員長 次に、ただいま議題となっております両案について議事を進めます。  この際、お諮りいたします。  両案審査のため、本日、政府参考人として農林水産省経済局統計情報部長西藤久三君、農林水産省農産園芸局長木下寛之君、農林水産省食品流通局長福島啓史郎君及び農林水産技術会議事務局長三輪睿太郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 松岡利勝

    松岡委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  7. 松岡利勝

    松岡委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。金田英行君。
  8. 金田英行

    金田(英)委員 今上程されて審議中の二法案について、自民党を代表して若干の御質問をさせていただきたいというふうに思います。  まず、青年等就農促進法農業信用保証保険法の一部を改正する法律案についての質問からさせていただきたいと思います。  十一年、昨年の七月に公布されました農業基本法につきまして、今我々は、この委員会で各種の法案審議しているわけでございます。特に、農政改革大綱に盛られておりますいろいろな課題があるわけでありますが、その中で、担い手確保育成という問題については、この農業基本法の第二十五条ということで、これをどうしてもやらなければならないということでうたい上げている形でございます。この農業基本法二十五条を受けてのこの法の改正でございますけれども、まさに時宜を得た法案改正であるなというふうに思わせていただいているのでございます。  現状就農状況新規就農者はどんな状態になっているかというようなことでお話しさせていただきますと、平成十年の一月一日現在で日本の総農家戸数は三百二十九万一千戸でございます。前年から見ますと五万三千戸減っているというような状態で、まさに、九年、十年という形で一年間に農家戸数が一・六%減少しているわけでございます。  こういうトレンドはずっと続いております。そういったことで、農家戸数がどんどん減っている、一・六%、二%程度減り続けているという状況にあるわけです。  また一方、耕地面積につきましても、十年の八月一日現在で四百九十万五千ヘクタール、前年比四万四千ヘクタール減ということで、これもまた〇・九%減っている。  耕地面積がどんどん減っているという状況、これは、新しい農業基本法の精神、自給率を向上させなきゃならない、活気ある日本農業をつくらなきゃならないという状況で、これにどう手当てするかというのがこの法案立法趣旨だろうというふうに思うわけでございます。  こういった減り方、農家戸数も減っている、耕地面積も減っている、そういった形で、では、それを補うための新規就農青年、特に青年、三十九歳以下ということで新規就農者はどのぐらい発生しているかということでいいますと、平成十年度で一万一千百人ということでございます。また、中高年の四十歳以上も含めますと、六万四千人の新規就農者というのが確保されているわけでございます。  この新規就農者というのは、平成二年度は四千三百人ほどであったわけですが、今は一万一千四百ということで、徐々に増加している、新規就農者がふえてきているなというようなことでございますが、果たしてこれをどう判断したらいいのか、そこが問題だろうと思います。こういった形で徐々に新規就農者はふえているんだけれども、戸数が減少している状況を埋め合わせるには十分でないという状況でございます。  こういった中で、西藤統計情報部長に聞きたいのですが、減っていってさらに補おうとしているのだけれども、果たして、農業基本法の求めている、理想とする新規就農確保というのはこういうトレンドで大丈夫だというふうに御判断しているのか、さらに一層の努力が必要なのか、そこら辺の見解をお尋ねしたいというふうに思います。
  9. 木下寛之

    木下政府参考人 先生指摘のとおり、平成十年には一万一千人を超えるに至っておるわけでございます。  私ども、今回、食料・農業農村基本計画とあわせまして農林水産省が示すこととしております農業構造の展望では、全体で、家族農業経営が三十三万から三十七万戸程度、また法人経営が三ないし四万戸程度と見ておるということでございます。これを確保するため、世代交代年数等を勘案いたしますと、大体毎年一万三千から一万五千人程度必要というふうに考えているところでございます。  したがいまして、今回の改正を含めまして、各般施策を総合的に実施することにより、目標の確保を目指すこととしたいというふうに考えているところでございます。
  10. 金田英行

    金田(英)委員 今、平成十年度で一万一千百人ぐらいが新規就農で、三十九歳以下の人が新規就農しているという状態はこれでもまだ不足だ、これからの各般施策を講じて一万三千から一万五千人ぐらいの新規就農者確保する必要があるという政府の御見解、まさにそのとおりだろうと思いますので、これから一層の御努力、そして我々もしていかなきゃならないというふうに思うわけであります。  そういったことで、新農業基本法のまさに重要な施策の大きな柱の一つだというふうに金田も思わせていただいているわけでありますが、実際にどうなってきたのかということで、私の地元の状況などを御披露しながらお話を進めていきたいと思うのです。  北海道は、明治四年のころには三万六千人ぐらいの人口でありました。わずか百二十年前であります。そういったことで、その三万六千人の人口が、今どれだけの人口がいるかというと、五百七十万の人口を擁する。百五十倍からの人口増がこの百年間でなし遂げられたという、まさに世界的に見ても屈指の開発成果だというふうに思っております。  こういった人口増というのはどういう形でなされたかというと、明治四年から屯田兵制度が取り入れられまして、本州からどんどん北海道の開拓のために人が導入された、それでどっとふえていった。そして戦後、戦後入植というのがありまして、国土が敗戦によりまして二分の一になったということで戦後入植というのが大々的に行われたということで、今、それ以降は減りっ放しの状態になっているわけであります。規模の拡大も進める必要があるという農政上の指導等もありまして、そういった形で、今五百七十万の北海道人口はぴたっと停止状態になっているというのが現状だろうと思うのです。  それで、振り返って農村現状を見てみますと、どうなっているかということになりますと、農家高齢化がすごく進んでおります。村落にはお年寄りしかいない、後を継ぐ息子娘たちが後を継がないで都会に出て戻ってこないという状態であります。まさに田園地帯というか村落が形成しがたい、赤ん坊の泣き声も聞こえないというような状態になっている。そして、本当に地域崩壊が進んでいるなという状況であるわけでありまして、こういった農村自体崩壊を防ぐためには、どうしても第三次入植計画というのを今我々やらなきゃならないというふうに考えているわけであります。  そういったことで、新規就農北海道に何とかして確保したいものだというようなことで今頑張っているわけであります。農林省の御指導もいただいて、担い手支援センター、各都道府県一つずつつくっていただいて、新規就農者確保、そしてまた労働省でも、東京、名古屋、大阪等についても、ハローワークのところに農業新規就農者募集コーナーを設けるというような、新しい農業後継者あるいは新規就農者確保に一生懸命政府挙げて取り組んでいただいている実態はあるわけですけれども、なかなか思うように確保は難しいという状態であります。  そういったことで、地域崩壊、私の選挙区でいえば、新規就農者確保する、集めてくる、そして担い手をしっかりと支えるということがまさに喫緊の課題過疎対策でもあるわけであります。  そういったことで、私も相当危機感を持っておりまして、昨年の八月八日に、本州東京の新宿、渋谷、池袋で広報車を出しまして、アルバイトを雇いましてチラシを大いにまいた。まいたらどういうことになったか。本州の方で、あるいは東京都心部で、農業に対する期待、そういったものが意外と大きいことにびっくりいたしました。マイクを握って、北海道農業をやってみませんか、もっと生きがいのある人生を構築してみませんかという形でマイクで訴え、就農説明会の開催のチラシをまかせていただきました。たった一日間やっただけでありますけれども、大変な反響がありました。  今の時代は、有効求人倍率が〇・四九倍ですか、そして全国の失業者が三百万人、失業率が四・五%というような状態、この状態を、何とか他産業ということでなくて、農業分野で今の日本の失業問題に対処することが必要だというふうに考えております。そういったことで、大学就職率が七割ぐらいだというような形で、ほとんど大学を卒業するとフリーターになってぶらぶらしているというような状態の中で、自分人生農業に求めていこうという人たちが結構多いことにびっくりしたわけであります。  やはり、満員電車に揺られて、リストラの恐怖におびえながら、自分人生これでいいのかという懐疑心を持つ層が相当出てきたな。今こそ新規農業分野で頑張ってみませんかということにすごい反応が出てきた。八月の二十二日にJAの会議室を借りまして農業就農説明会をやったのですが、たった一日ぐらいで二百人以上の人が集まって、北海道農業をやってみたい、もっと生きがいのある人生北海道でやってみたいという人が随分いた。  まさに新規就農者というのは、やる気がありさえすれば、取り組み次第では幾らでも確保できるという社会情勢であろうかというふうに思うわけであります。この点について、今まだ足りないのだ、新規就農者は一万三千人から五千人確保する必要があるというふうに農産園芸局長からお話があったわけでありますが、今、やり方次第ではどんどん確保できるのだという社会情勢だというふうに私認識しておりまして、やり方次第ではどうにでもなるなという感覚を私自身は持っているのですが、これについて、農産園芸局長の感触、そこいらをちょっとお尋ねしたいと思います。
  11. 木下寛之

    木下政府参考人 先生指摘のとおり、私どもも、現在の雇用状況等々を考えますと、企業等から農業への人材移動を図ることが非常に重要だというふうに考えているところでございます。また、それについての反響が非常に大きいというふうに受けとめているところでございます。  こういうことから、私ども、他産業従事者が働きながら農業の基礎を学べるような就農準備校の開設、また、先生指摘のとおり、労働省とも連携をとりながら、ハローワークにおける農業等就職相談コーナー設置等を行っているところでございます。  今後とも、関係省庁とも十分連携をとりながら、このような動きをさらに一層進めていくよう努力していきたい、こういうふうに考えているところでございます。
  12. 金田英行

    金田(英)委員 そして、今回の法改正について、新規就農者に対する資金支援措置を大幅に拡充していただけたというのはまさに時宜を得た法改正であろうかと思っておりまして、大いにこの労苦を多とするところでございます。  それで、どんなことが今新規入植者課題になっているかということでございます。  確かに、研修が必要でしょう、そして就農準備も必要でしょう、立ち上げのときに耕作地を買わなきゃならない、その資金の手当ても必要でしょう、それから農機具を買わなきゃならない、いろいろなことが、新しく農業を起こすときには大変なハードルがあるわけでございます。  そういったことで、今回の資金就農準備で二百万、そして機械購入等々で二千八百万も無利子で融通してやる、そして、信用保証制度を活用できるから保証人も要らないよ、担保も要らないよというこの制度改革というのは、これからの新規就農者確保のためには大きな効果を発揮するものだろうというふうに思っております。その改正趣旨を多とするところでございます。  それで、問題は、新規就農者紹介されて、例えば担い手支援センター紹介でいろいろと研修農家に入ってくる、あるいは大学校に入ってくる、研修会研修をやるというようなことでありますが、現実に、ロマンだけでなかなか農業というのは立ち上がらないわけでありまして、やはり相当の根性やる気が必要でございます。ちょっとやって、もう疲れたと言って研修をあきらめてしまうというような人も若干いるわけでありますが、こういったときに、問題は三点ぐらい私は気がついているんです。  研修宿泊施設というのは、どうしても各市町村単位研修宿泊施設が必要だなというふうに思っております。というのは、今の研修生は、研修施設がない、現場に行っても、あることはあるんですよ、いろいろなところがあるんですけれども、それは北海道で三つか四つしかないとか、そういったような状況の中ではなかなかうまくいかない。  だから、農協なり市町村が経営する研修宿泊施設農家に同居して、朝飯も一緒、昼飯も一緒、晩飯も一緒、そして女の人なんか、特に息子嫁候補だというような形で朝から晩までそういった周囲の目にさらされておりますと、もう息詰まってしまって、すぐに研修をやめたという形で帰ってしまいますので、何とかプライバシーが確保された、研修先農家に同居するということでないそういった研修宿泊施設整備が必要だろうというふうに思っております。この点が大きな問題の一つだろうと思っております。  なぜかというと、相談件数は結構あるんです。相談件数は結構あるんだけれども、相談件数は七千件ぐらいあるのかな、そして実際に就農するのは六十五人とかなんとか。この差というのは、やはり、研修生を受け入れて、さあ農業をやってみようかなというような状況になるまで現場に配置できない、そういったことがあって、この研修宿泊施設整備こそが急務だというふうに考えておりますけれども、この点についての認識はいかがでしょうか。
  13. 木下寛之

    木下政府参考人 実際に新規就農者研修するに際して、現地でのいろいろな実体験を通しながら研修することは非常に大事だというふうに考えているところでございまして、そのためには、やはり新規就農者技術習得のための研修施設整備が必要だというふうに考えているところでございます。  私ども、市町村がそのような研修施設整備を行う場合、これまでも、経営構造対策事業あるいは新山村振興事業等補助事業も活用して整備をしているところでございます。  今後とも、地域の実情を踏まえながら、できるだけそういうような要望にこたえていきたいというふうに考えているところでございます。
  14. 金田英行

    金田(英)委員 これからも研修宿泊施設整備について、私も力を込めてやってまいりたいと思いますので、農林水産省の御指導の方をよろしくお願い申し上げたいと思います。  また、今後の課題としての二点目でございますが、実際に農業をやってみよう、さあ農家をやろうといったときに、お金が必要になります。農協に行きます、あるいは農林漁業金融公庫に行きます。そうやってお金を貸してほしいというふうに言いますと、保証人を出してもらわないと金は貸せないとか、担保はあるかというようなことを言われてきたのが現状でございます。  ところが、今回の法改正によって農林漁業信用保証制度が活用されるわけでありますが、この運用が問題でありまして、この人こそ大丈夫、やっていける、根性がある男だというふうに見込んでも、お金を貸してやるというような状況というのは、現実問題として現場ではなかなかしり込みをするというのが実態であろうかと思います。新しい制度はできたんだけれども、やはり、回収の見込みがないんじゃないかという不安感が先に立って、実際にはこの新しい信用保証をしてくれないという現場実態が出てこようかと思いますけれども、それについての指導をどういうふうにしようとしているのか。  とにかく、金の円滑な融通が必要でございますので、現場実態として、例えば農協さんなりが、研修生がやってきて、二年間研修したからおれは農業をやってみたい、だからこれだけの金が必要だというような、いろいろな就農計画をつくって認定農家になるわけでありますが、その認定農家になったときの金の融通のあんばいをどんな判断基準でやられるのかなということがすこぶる不安でございますので、そこいら辺、見解がありましたらお尋ね申し上げたいと思います。
  15. 木下寛之

    木下政府参考人 新規就農者につきましては、都道府県知事認定をいたしましたそういうような認定就農計画に即しまして融資をしているところでございます。  私ども、今回拡充いたします、施設設置等に要する資金、多額でございますので、これらにつきましてできるだけ借りやすくするという方策が大事だろうというふうに考えているところでございます。  そういう観点から、農協なり銀行が貸し出します、新たに拡充を予定いたしております資金につきましては、都道府県基金協会保証を付するということができるように措置をしたいというふうに考えているところでございまして、そのような保証を付する際には、各県の基金協会新規就農者に対して担保なり保証人をとらないというような方向で検討しているところでございます。
  16. 金田英行

    金田(英)委員 実際に、さあ金は融通してやるから貸せというようなことでもまた問題があるんだろうと思います。新規就農者の中にはあるいは研修生の中には、いろいろと農業を目指す人の中には、ちょっとロマンだけでやってきたとか、会社ではどうも社会性がなくてもたないから、ああ農業に逃げ込もうかというような、性格的に社会性にちょっと欠けるような研修生も結構いるわけであります。いろいろなことで、そういう問題者というのかな、そういった人を気軽に受け入れて、村落のコミュニティーが破壊されてしまうという問題も散見されるわけであります。  そういった中で、この人はこの地元でしっかりやっていただけるという人の見きわめも本当に大切だろうと思います。そこいら辺もかみ合わせながら、農協の御推薦あるいは地元の役場の御推薦というような中で、そういった推薦を受けた者については、審査もありますけれども、極力資金融通を円滑にやるというような姿勢で取り組んでいただきたいと思います。  それから、今後の課題としての三点目でございますけれども、離農予定者がどこにいるか、あるいは流動可能な農地がどこにあるかというような、何といっても耕作地を手に入れないと農業は始められませんので、そういった情報をどうやって一元的に集約して、そういった新規就農を希望する人方に、あの地域にはこれだけの耕作地があるよ、あるいは、この人はどうも後継ぎがいなくて農家経営が成り立たないから、今後二、三年のうちに離農の予定者だよというような、そんな状況を把握してみんなに提供するということが極めて大切だろうと思いますので、この点についてどういう体制をとろうとしておるのか、お考えがあったらお聞かせいただきたいと思います。
  17. 木下寛之

    木下政府参考人 新規就農に際してのもう一つ課題は、御指摘のとおり、農外からの新規参入者を中心にした農地の確保の問題だろうというふうに考えているところでございます。  このような農地の確保につきまして、従来から、都道府県なり全国段階の新規就農ガイドセンターにおきまして、就農相談の一環として農地情報の提供をしているところでございますし、また、市町村農業委員会におきましても、一番地域の農地の流動化の情報について知り得る立場にあるわけでございますから、それらの情報を十分つかみながら、農地のあっせん事業、あるいは日常の農地相談等を行っているところでございます。  今後とも、こういうような農業委員会あるいは普及等々と相まちまして、円滑な就農促進に努めてまいりたいというふうに考えているところでございます。
  18. 金田英行

    金田(英)委員 本当に、農林大臣を初め農林省の担い手確保に対する取り組み、積極性について、大いに評価させていただきたいと思います。  そこで、これからは、農林漁業信用保証協会の保証で、担保なしで金も借りられるような制度ができたよ、十二年度からできるんだよ、あなた方は何か捨てられているような気分になって農業をやっているかもしらぬけれども、あなた方のような農業をやりたいという希望者は大変たくさんいるんだよというようなことを地元で言って歩きますと、意外と、新規就農者支援措置については、現在の農家の皆さん方から不平不満が出てくるわけであります。  自分のおやじの後を継いで農家をやろうという人たちについては、おれたちには何もそういった支援措置はないのですか。新規就農者本州から来た人方には、三千万円まで無利子で貸してやる制度があるよとか、研修については月これぐらいの補助を出すよというような、そういった支援制度は相当充実しているわけであります。しかし、そういったお話を地元でしますと、地元の農家の人方が、何だと言うわけであります。おれはおやじの後を継ぐのに、そういった支援措置をしてくれないとかいうことで、同じ新しく農業を始める息子でありますから、あるいは娘でありますから、せめてそういった本州から来た新規就農者ぐらいの扱いをしてもらうわけにはいかないのかという、既存の後継ぎたちの不満をどうやって抑えるかということが、すごく私も頭が痛いところでございます。  そのことについて、農家の子弟等について、新規就農者に対する支援措置に準じたような措置についてどう考えるのか、本当にこれを説明して歩いている谷津総括政務次官にお聞きします。
  19. 谷津義男

    谷津政務次官 先生指摘農家出身の新規就農者は、既にある農業経営に対する農協等の支援を親の経営を通じて受けやすいということは御存じのとおりだと思うのです。農地などの経営基盤が既にあること等、就農に当たっての条件がそろっていることから、今後とも将来の農業を担う新規就農者の大宗を占めることが期待をされておるところであります。  このため、就農支援対策については、特に農内外の区別を設けずに、新規就農者が育ちやすい環境づくりという観点から、技術の習得、資金の手当て等への支援を充実していくことが重要ではなかろうかなというふうに考えております。  就農後につきましても、普及センターが行う技術あるいは経営指導等を通しまして、新規就農者が着実に農業経営ができるようにするよう支援をしていくことが大事であるというふうに考えております。
  20. 金田英行

    金田(英)委員 以上で青年等の就業促進あるいは信用保証保険法の一部改正についての質問は終わらせていただきます。本当に、農林省の労苦を多とするところでございます。  あともう一本の生研機構の特措法の廃止に関することについて、一つだけ御質問して終わらせていただきたいというふうに思います。  ガット・ウルグアイ・ラウンド対策、六兆百億円の対策を講じさせていただいた一部であるわけでありますが、五十億円の緊急の研究開発をすることが必要だという形でこの特措法を設置して、五年間やってきたわけであります。  この任期が来て、成果が上がった、上がらない、いろいろあるのでしょうけれども、約束だからこの法律は廃止するということで結構なんですが、三輪技術会議事務局長に、この五年間、今までの農林水産関係の研究開発、そういったこととは違った取り組みだったんだろうと思います。五年間で一定の成果を上げなきゃならない、期限が限られている研究開発だよというようなことで、従来の取り組みと違っておったんだろうと思います。そのことについて、成功したか成功しなかったかも踏まえて、所見があればお答えいただきたいと思います。
  21. 三輪睿太郎

    ○三輪政府参考人 先生お話しされたように、この研究、五年という期間を限って、現場に直結した緊急技術開発をやってきたということ、それから、UR合意という状況を受けて、緊急の現場技術開発という国の方針に従いまして、延べ百三十一社にわたる民間企業等の研究能力を結集したこと、しかも、具体的な成果を上げる、例えば特許を百六件とるというような成果を上げたところ、これは全く、産学官の結節点として生研機構が新しい方式でこれを実践できたということで、十分な成果を上げたということを実感しております。
  22. 金田英行

    金田(英)委員 以上で終わります。
  23. 松岡利勝

    松岡委員長 次に、石橋大吉君。
  24. 石橋大吉

    ○石橋委員 久しぶりに農林水産委員会質問をさせていただきますが、特に、玉沢大臣は、私がこの場へ登場したときのたしか農林水産委員長だったと思っておりますが、そういう意味で個人的にもいささか思い出がある大臣でありますから、ひとつ頑張っていただきたい、こう思っています。  きょうは、大臣の抱負経綸は一番最後の方にしっかり伺うことにして、最初に少し地味な話をしたいと思っていますので、そこは総括政務次官なり局長の方からお答え願っても結構だと思っていますが、そういう意味で、具体的な質問に入ります。  まず、最近非常に新規の就農者がふえつつある、こういうふうになっておりまして、それはそれで喜ばしいことですが、手放しで喜んでばかりはおれないな、こういう感じがあるわけであります。  例えば、平成十年度の農業白書を見ますと、新規就農者は、これは新規学卒と離職就農者の合計ですが、平成二年に一万六千人、これが底で、近年には増加の傾向があって、九年には前年より六千人多い五万七千人となっている。新規青年就農者も、新規学卒就農者と三十九歳以下の離職就農者の合計ですが、平成二年に四千三百人で底を打って、その後増加傾向に転じ、九年には九千七百人となっている。しかしながら、我が国農業を安定的に維持していくためには、現在の水準ではまだ不十分である、こういうふうに白書にも書かれているわけであります。  さっき言いましたように、青年就農者を含めて新規就農者がふえていることは非常に喜ばしいことですが、しかし、中身を見ると、平成六年度以降、新規就農者の五〇%以上が六十歳以上の高齢者になっているわけですね。四十歳から五十九歳層を加えると、八〇%を超えているわけであります。圧倒的に高齢者が多いわけであります。  長期にわたって不況が続いているために、そのもとにおけるリストラの影響もあって、高齢離職者の新規就農が非常にふえている、こういう状況が影響しているんじゃないか、こう思うのです。そういう高齢者に、これから二十一世紀の日本農業農村をしっかり担っていただけるような状況があるのかどうかということになると、やはりこれは問題だ。若い青年就農者がどうしても必要だ、こういうことになってくるわけであります。  御承知のように、連合は、私も直接余り詳しいことを聞きませんが、新聞によると、百万人故郷回帰運動などといって、この際、雇用失業対策も含めて大規模な就農をすべきではないか、こういう提起をしているようですが、私は、今日の農業農村農家には、戦前の農家のように、不況のときに失業者を抱え込むような条件はない、こう思っているわけです。生活様式も違うわけでありまして、昔みたいに、たくあんかじって、みそ汁吸って、麦飯食って、こういう生活じゃないですからね。家族そのものも非常に核家族化をしているわけですし、いろいろな意味で、今日の農村にはそういうリストラで失業した人を抱え込むような条件はない、私はこういうふうにも思っているわけです。  いずれにいたしましても、こういう状況を考えると、青年就農者の確保に向けて一層の努力が必要だ、こう思うんです。大臣の抱負経綸は最後に伺いますから、ここではとりあえず、現状認識をどういうふうにとらえておられるか、このことについて伺いたいと思います。
  25. 谷津義男

    谷津政務次官 ただいまの先生の御指摘のとおりでありますけれども、どうしても、農業の持続的発展を図るためには、若い意欲ある農業者を確保育成していくことが大事であることは御指摘のとおりであります。  平成七年に青年就農促進法施行以来、青年に対する就農支援を積極的に行ってきている結果、先ほどお話がありましたように、平成十年には一万一千人の青年が確実にふえているということでございます。  今後、この若年層の就農促進を図るために、在学中から農業生産の現場に接することが重要ではないかということで、農業高校の学生を対象にした農業大学校や普及センターが実施する実務実習体験や先進農家等の現地見学等をやったり、あるいはまた、農業高校及び大学生を対象とした先進の農家農業法人の経営内で就業体験をしたりとかいうようなことで、積極的にこれを進めていかないとこの若年層の確保はなかなかでき切れないというふうに思いますので、そういう環境づくりを進めていきたいというふうに考えております。
  26. 石橋大吉

    ○石橋委員 次に、全国新規就農ガイドセンター、全国農業会議所に設置をされていますが、これが、新規就農者就農実態に関するアンケート調査というのを平成八年の十二月に実施をしております。  このアンケートの発送者、対象者は千八十一人、回答者は四百二十一人、約四割。集計可能なものが四百十人、全体の三七・九%で、余りデータとしては多くないのでどうかという感じもないことはないんですが、しかし、それにしても十年間の新規就農者実態調査ですから、それはそれで非常に尊重すべき傾向は随所にある、私はこういうふうに思っておるわけであります。  そのアンケート調査の結果を踏まえて、次に幾つか質問します。  まず、このアンケート調査に応じた人々の七割が三十代、四十代で占められている、これは非常にいいことですが、問題は、新規就農者地域分布ですね。入植地を見ると、北海道が最も多くて百四十四人、全体の三五・一%、次に東北一二・九%、関東・東山一一・五%と続き、東日本が全体の約六割を占めているわけです。  北海道は、見ようによっては、広大な農地と自然環境等、夢とロマンにあふれる入植地ですから、これにある程度人が集まるのはよくわかるわけです。そしてまた東北地方も、比較的農用地も広く、新規就農者に魅力的な入植地の一つとして見られている点でうなずける面もないことはないんですが、将来的には、国土の均衡ある発展、全体として、全国的な農用地の保全と食料安全保障、こういう見地からいろいろ考えると、新規就農者が一部の地域に非常に偏在をするということはやはり放置できない、こういうふうに私は思っているわけですが、この辺について政府としてはどういうふうにお考えか、承りたいと思います。
  27. 谷津義男

    谷津政務次官 先生お話のアンケートを私も今手元に持っておるわけでありますけれども、御指摘のとおりでありますが、農外からの新規参入者の就農地は東日本が多くて、北海道、東北、関東・東山の三地区で全体の六割を占めている。あるいはまた、三十九歳以下の新規就農青年の数では、やはり北海道、東北、関東・東山、三地区で五割を占めている。この数字を見ますと、全くそのとおりであります。  しかし、これらの地域が全国の耕地面積農業就業人口に占める割合等を勘案いたしますと、一概に新規参入者の就農地が偏っているということはちょっと言い切れないのではないかなと今思っておるわけであります。  これらの結果は、地域農業を取り巻くさまざまな状況を反映したものと考えられますが、いずれにしましても、全国的に、新規就農が図られるよう、新規就農に関する条件整備等を進めていかなければならないというふうに考えております。
  28. 石橋大吉

    ○石橋委員 二つ目は、地域的な偏りと同時に、新規就農者が選択をする作目がこれまた非常に一部の作目に集中しているんですよね。  新規就農者の希望する作目は、野菜、施設園芸が圧倒的ですね。これだと農地面積も比較的少なくて済みますし、都市近郊に入植することも可能だ、こういうことからこうなっているのかどうか知りませんが、都府県の経営耕地規模を見ると、大体一ヘクタール未満、施設花卉、野菜の集約的経営に集中しているわけであります。中山間地域における施設園芸の割合を見ても、全体の四割を占める。新規参入が農地の面的な保全だとか管理に直結していない。  こういうあり方も、食料安全保障の見地だとか、新農政、新農基法に言う農業農村の多面的機能の発揮だとか公益的機能の維持だとか、そういうことから考えると、これもまた非常に問題ではないか。特に水田、畑地を多面的に活用していく、こういうことが大事になってくるわけでして、そういう意味で、麦だとか大豆の本作化問題もあるわけですが、こういう作物に偏ったままではいけないと思うんですね。  今後の新規就農の誘導政策なども含めて、こういう点についてどういうふうに受けとめられておるのか、伺っておきたいと思います。
  29. 谷津義男

    谷津政務次官 先生指摘のとおり、新規就農のうち、農家子弟以外の就農者については、確かに、初期投資の負担が比較的軽い施設野菜あるいは花卉部門に従事する割合が高い状況にあります。  しかし、この新規就農者平成五年から八年の間に就農した者についての割合を見ますと、施設野菜が一七・七、花卉あるいは花木が一三・三。しかし一方、稲作も一九・一いるという数字がここにあるわけでございます。  しかし、特に、土地利用型作物の場合は、農地の確保が重要な課題というふうに考えておるところでありますし、また、先生指摘のように、これから自給率等を上げていく面から考えて、あるいはまた多面的機能というものを大きく取り上げる面から見ましても、こうした土地利用型農業就農するのをもっともっと多く取り入れなきゃならぬというふうに考えているわけであります。  新規就農ガイドセンターの行う農地情報の提供、あるいは市町村農業委員会の行う農地のあっせん事業等を行ってきたところでありますが、さらに、今般の法改正によって認定就農者に対する農地等の取得資金の据置期間を延長するなどの措置を講ずることによって、この辺のところを確保していきたいというふうに考えておるところであります。
  30. 石橋大吉

    ○石橋委員 次に、最近の新規就農者の動向を見ると、大都市からの希望者が非常に多いんですね。そういう傾向を踏まえたときに、もっと大都市からの青年就農者の確保に力を入れるべきじゃないか、こういうふうに考えられるわけです。  その前に新規就農者就農理由を見ると、一番は「農業が好きだから」二三・四%、二番が「自然や動物が好きだから」が二二・七%、「自ら経営の采配を振れるから」が二二・二%、こういうのが上位を占めているわけですね。  新規就農者の出身地を見ると、関東・東山が百三十人、東山と書いてトウザンと呼んでいますが、農林省の統計の中でどういう読み方をするか私もちょっと知りませんが、うち、東京、千葉、埼玉、神奈川の大都市圏からの参入が百十九人、四百人余りのうちですよ。近畿においても、六十九人のうち大阪、京都、兵庫が六十一人。以上の大都市七都府県で全体の四三・九%を占めているわけです。絶対数が少ないということもありまして問題はありますが、どっちにしても大都市の青年層にかなり潜在的な就農希望者が多い、こういうふうに見ていいんじゃないか、こう思うんです。  そういう意味では、一九六〇年代から七〇年代にかけて、我が国の経済の高度成長のときには、農村から都市へ怒濤のように若い労働者が流出をして、深刻な過疎化を農村では招いた、こういうことは御承知のとおりですが、今や二十一世紀に入って、大都市から農村へ逆に多くの青年就農者が流出をしていく、こういうことを考えて、大都市から農村青年就農者を積極的に導入するための壮大な取り組みをやるべきじゃないか、こういうふうに思うんですよね。  私は、たしか数年前だったと思いますが、青年就農者十年間で十万人、都市から農村へ大動員計画みたいなものを出しまして、集中的な取り組みをすべきだ、こういうような提起をしたことがあるんですが、この辺について、都市から農村への青年就農者の導入について、そういう大都市における青年就農者の意識などを踏まえて考えていただきたい、こう思いますが、どうですか。
  31. 谷津義男

    谷津政務次官 御指摘のように、最近、自然の中での仕事に関心を有する都市住民がふえているということはそのとおりでございます。このような状況を踏まえまして、Uターン希望者や定年退職者等を対象とした、地方への人材の移動を推進していくことが非常に大事ではなかろうかというふうに考えております。  平成十一年度からは、都市部につくりましたハローワークにおいて、農業等の就業相談コーナーを、これは労働省が設置しておるわけでありますけれども、一般の求職者に対して農業への就業情報を提供しているところでございます。  また、就農を希望する方に対しましては、全国段階での各種の情報提供、これは全国の就農ガイドセンターにおいて農地等の情報提供や相談活動を実施しているということであります。あるいはまた、働きながら農業の基礎を学べる就農準備校、これは大都市地域での十校十四教室に加えまして、地方版の農業準備校の開設というのをやっております等の幅広い層を対象とした新規就農対策を推進しているところであります。  先生の御指摘のとおり、しっかりこれはやっていきたいというふうに考えております。     〔委員長退席、松下委員長代理着席〕
  32. 石橋大吉

    ○石橋委員 ぜひひとつそういうことを具体化して頑張っていただきたい、こう思います。  次に、借入金、新規就農資金の問題に関連して幾つか伺いたいと思います。  新規の就農者が就農するに当たって何に一番苦労したか。その第一は、資金をどう確保するか、こういう問題であり、二つ目は、農地の問題であります。  そういう意味で、まず最初に、新規就農者がどういうふうな資金調達をしているか、こういうことについて実態調査から若干紹介しておきますが、資金準備状況を見ると、営農面に関しては、自己資金の平均金額は約八百万円。作目別に見ると、酪農、果樹、肉用牛、その他が一千万円を超えておりますが、その金額もかなりばらつきの大きい実態になっております。これ以外の作目は大体五百万から六百万、大きな違いはなく、ばらつきも少ない、こういう状況になっています。これが新規就農者自分準備をした資金状況。  実際に新規就農した場合にどれだけ金がかかっているか、こういうことに関しては、平均すると約千六百万円。施設野菜、酪農、肉用牛、これはかなりばらつきが大きくて、資本投下額に大きな個人差があります。就農時に準備したトータルの金額は、単純平均で見ると約千二百万円。  借入金の状況は、全体の五六・二%が資金の借り入れを行っており、借入資金のほとんどは制度資金。また、借り入れたときの障害というか支障点としては、保証人担保確保が挙げられています。  こういう実態を見ると、今回の法改正による就農支援資金枠の拡大や債務保証制度の導入は、新規就農者のニーズにそれなりに適合したものとして評価できる、こういうふうに思っております。  しかし、実情は、調査の実態はそういうことになっていますが、それを踏まえながら、幾つか政府にここで念のために質問しておきたいと思います。  まず一つは、今回こういう形で改めて就農支援資金の枠を拡大した、そのことについての理由についてちょっと念のために伺っておきたいと思うんです。  御承知のように、平成七年の二月に、青年就農促進のための資金の貸付け等に関する特別措置法が、ガット・ウルグアイ・ラウンド農業合意関連対策の一環として制定されました。  次代を担う青年就農者数が極めて低い水準にあって、これでは将来の農業農村が維持できない、こういう危機感もあって、青年就農者の就農促進が非常に緊急、緊要の課題だった、こういうことが背景にあったと思うんです。  この法律の制定によりまして、無利子の就農支援資金の創設、農業改良資金の特別措置など、農内外からの新規就農者の積極的な確保を図るための諸対策が実施をされてきたところであります。  平成十年、一九九八年の三月には、我が国農業の発展と農村の活性化を図っていく上で、新規就農者に対する支援措置の対象を中高年層まで拡大することを内容とする改正が行われた。  そういう経過を受けながら、今回の改正において、就農支援資金について、従前の就農研修資金及び就農準備資金に加えて、農業経営を開始する際の施設の設置、機械の購入等に必要な資金を新たに設け、その資金の貸し付けを、都道府県青年農業育成センターのほか、農業協同組合、銀行その他の金融機関が貸し付けることができるようにするとともに、農業協同組合、銀行等から貸し付けられる就農支援資金農業信用基金協会が行う債務保証の対象とするなどの措置が講じられることになっているわけですね。  さっき言いましたように、これは新規就農者に対する措置としては一定の前進として評価できると思いますが、改めて、こういう資金の充実を図ることにした理由について、政府の考え方を承っておきたいと思います。
  33. 玉沢徳一郎

    ○玉沢国務大臣 今委員が御指摘されたように、青年を中心といたしまして、新規就農者数は近年増加しておるところでございます。その新規就農者にとって最大の課題は、何と申しましても資金確保である、このように思います。  したがいまして、意欲的にこれから農業につくという方々のために、経営開始のために必要とする施設の設置、機械の購入等に必要な資金を加えるとともに、資金を借りやすくするという観点から、就農ルートが多様化しておることに応じまして、農協、銀行等を貸付窓口に加える、貸付限度額を引き上げる、また、農協、銀行等が貸し付ける場合に、農業信用保証保険制度の適用を可能にする、こういうことで、機会をできるだけ広げまして、そして就農しやすい環境をつくっていくということが大事であるという観点から、この法律改正をお願いいたしておるところでございます。
  34. 石橋大吉

    ○石橋委員 次に、こういう措置を通じて新規就農者が増加すること、拡大することを期待しているわけですが、農林水産省としては、今後毎年何人ぐらいの新規就農者、特に青年就農者、中高年を含めてもいいのですが、必要であると考えておられるのか、見込みをちょっとお聞きしておきたいと思います。  平成四年、一九九二年に新政策が発表された段階では、効率的かつ安定的な経営体を確保していくために、農業従事者の円滑な世代交代等を勘案すれば、毎年一万三千人から一万五千人、若い世代の新規就農者が必要だ、こういうふうに見込まれていたわけであります。平成十年における新規就農現状は、新規学卒者と三十九歳以下の離職就農者を合わせて一万一千人、本法上の中高年新規就農者、四十歳以上六十五歳未満は三万八千三百人。  さっき言った数字は平成十年の白書の数字でしたが、この就農支援資金の貸し付け等の特別措置によって、現在までの間、就農促進にどのような効果があり、この制度の果たした役割をどのように評価しておられるのかということ等を含めて、現時点において、農業従事者の円滑な世代交代等のためには、今後毎年何人ぐらいの新規就農者が必要だというふうに考えておられるのか、政務次官に。
  35. 谷津義男

    谷津政務次官 食料・農業農村基本計画とあわせまして農水省が示すこととしております農業構造の展望では、効率的かつ安定的な農業経営の数につきましては、家族農業経営で三十三万から三十七万戸程度、また法人経営及び生産組織で三万から四万戸程度と見ております。これを確保するために必要な新規農業者の数につきましては、世代交代年数を勘案いたしまして、毎年一万三千人から一万五千人程度と考えております。  平成十年には、新規就農につきましては、先ほどから何回か申し上げておりますが、一万一千人を超えましたけれども、まだ今正確な数字は出ておりませんが、十一年度も一万人を超える見込みであります。  こういうことで、青年等就農促進法改正を含めまして、各種施策を総合的に実施いたしまして、目標の確保を目指していきたいというふうに考えております。
  36. 石橋大吉

    ○石橋委員 基本的な考え方は余り変わっていないようですが、次に、就農開始をして、次年度以降の運転資金の手当てをどういうふうに考えておられるのか。  今回の就農支援資金は、研修就農準備に必要な資金に加えまして、施設の設置、機械の購入等に必要な資金を貸し付けることができるように拡充をされる。また、経営に必要な運転資金は、経営開始初年度の貸付資金、限度額、青年二千八百万円、中高年千八百万円によって相当額賄うことができるようになった。新規就農者が実際に必要とした資金実態を見ても、経営開始初年度の所要資金としては、過去の実績を見れば、これによって十分確保できるのではないか、こう思われるわけです。  問題は、次年度以降、自立できるまでの運転資金の問題。この間、生活費についても手当てが必要だ、こういう考え方もあるわけですが、償還問題は一番最後に聞きますが、とりあえず次年度以降の運転資金確保についてどういうふうに考えておられるか、承っておきたいと思います。
  37. 谷津義男

    谷津政務次官 今回拡充をお願いしております法案就農支援資金のハード資金は、認定就農者が農業経営を開始する際に必要となる資金を包括的に貸し付けるものでありますことから、運転資金も含めて初年度における貸付対象としておりまして、その償還は、原則として五年間の据置期間を経過した後に始まります。  したがって、経営開始の規模に見合う二年目以降の経営継続に必要な運転資金につきましては、初年度における貸し付けによってカバーされているのではないかと思います。
  38. 石橋大吉

    ○石橋委員 次に、今回の法改正によって拡充される就農支援資金農業信用保証保険制度の対象とすることについて、ちょっと伺っておきたいと思いますが、一つは、債務保証の対象とする就農支援資金創設の背景について、ちょっと聞いておきたいと思うのです。  さっきもちょっと、新規就農者実態調査の中にも、資金で非常に苦労した、担保だとか保証人の関係で特に支障を感じた、こういう回答が多かったのですが、恐らくそういうことを踏まえての改正ではないか、こう思っていますが、その辺について、どういう状況だったのか、政府現状認識というか問題意識について、ちょっと聞かせていただきたいと思います。
  39. 谷津義男

    谷津政務次官 確かに、今までの貸し付けの対象から見ますとなかなか借りづらい面があるというふうな面で、いろいろと御指摘をいただいてきておるところでありますけれども、今般、拡充する就農支援資金につきましては、就農者の状況に応じた貸し付けルートの多様化を図る観点から、貸付主体に農協、銀行等の民間金融機関を加えることとしております。  民間の金融機関につきましては、その貸し付けに当たり、信用リスクを勘案しまして判断せざるを得ない面もあることは、先生も御案内のことかと思います。そういう面から、就農支援資金につきましても、認定就農者が十分な担保を提供できない場合には、政策目的に沿った融資が必ずしも円滑に行われないのではないかというふうな懸念があります。  このため、農協、銀行等の民間金融機関が行う就農支援資金の貸し付けについては、農業者に対する民間の金融機関による融資の円滑化を図るための農業信用保証保険制度を活用することが大事ではなかろうかというふうに考えております。
  40. 石橋大吉

    ○石橋委員 もう一つ、この問題に関連をして、基金協会保証引き受けを行う場合の条件について、各基金協会が決めることになっているようですが、今回農業信用保証保険制度の対象とされる就農資金保証引き受けに当たって、保証料の水準、担保の徴求など保証引き受けの条件についてどういうふうに考えておるのか、政府見解いかん。
  41. 谷津義男

    谷津政務次官 先生指摘のとおり、各県の基金協会がその基準を決めておるわけでありますけれども、この保証料あるいは担保保証人の扱い等の件でありますけれども、今回新たに農協等から貸し付けられることになる就農支援資金は、施設設置等に必要な資金を経営基盤が確立していない新規就農者に対し融通するものでありますから、その保証に当たりましては、担保保証人の要件を緩和することが特に必要ではなかろうかなというふうに考えておるところであります。  そのために、この債務保証に要する経費につきましては、国の助成のもとで、全額を都道府県基金協会に対して出資をすることとしております。この国の助成は、十二年度予算で三億二千万円ほど今確保したところでありますが、このような財源手当てを踏まえまして、各県基金協会の運用の中で、保証引き受けに当たりまして、担保保証人を求めないで、また保証料についてはおおむね〇・三%程度とする方向で今検討を行っているところでございます。
  42. 石橋大吉

    ○石橋委員 わかりました。  資金問題の最後は、新規就農者の営農実態と借入金の返済の問題についてちょっと聞いておきたいと思うのです。  農業所得での生活可能性についての調査がありますが、それを見ますと、全体では、農業所得で生活できない、こう回答した人が五二・四%あるわけです。多くの新規就農者が、十年近くたった今日でも農業で自立できない、そういうことから、不足分は就農前の蓄えだとかあるいは農外収入によって何とか補っている、こういう状況にあるわけですね。  しかし、生活できるというふうに答えた人もいるわけですが、生活できるというふうに回答した者では、就農一年目で生活できるようになった者が約三割、全体の半分の中の三割ですよ。同様に、二年目までで生活できるようになったという者が約五割、三年目までで約七割、五年目まで含めると約八割、こういう結果になっているわけです。  個人差はありますが、経営のめどが立つ年数はおおむね三年から五年かな、こういう感じもするのですが、こういう実態に照らしてみると、就農支援資金の据置期間を四年ないし五年というのは一応妥当なものだ、こういうふうに見られるわけですが、問題は、全体の五二・四%が生活できない、こう答えているという現実ですね。  もちろん、貸付枠の限度いっぱい借りて、借金を山ほど背負っている、こういう状態ではない、それは自分自身の返済能力や営農計画などを踏まえて、返済可能だ、こういうふうに考えられる範囲内で資金の融資を受ける、こういうことだろうと思いますが、それにしても、全体の半分以上が、農業で自立できない、生活できない、こういう回答をしているわけですね。  そういう中で、この貸付金の返済問題、無利子とはいいながら、本当はかなり深刻な問題があるのではなかろうかな、なければ結構ですが、こう思われてならないわけです。  御承知のように、フランスの青年就農者対策では、就農三年の間に、二回に分けて、条件不利地域とそうでない地域とちょっと違いますが、三百万か四百万、助成金で出すことにしているわけですね、融資じゃない。  そういう意味でいうと、我が国も新規、特に青年就農者についてはそういう措置を考えてもいいんじゃないか、こういう気もするわけですが、どっちにしても、ここで伺っておきたいのは、新規就農者の借入金の返済問題、あるいは深刻な負債問題があるとすれば負債対策、そういうことについて、どういうふうに考えておられるか、ちょっと聞いておきたい。
  43. 谷津義男

    谷津政務次官 先生指摘のとおり、借入金の償還が円滑に行われるためには、経営が安定するまでの間、支援が必要だということは御指摘のとおりであります。  フランスの例もお話しになられましたけれども、この支援をするために、経営開始後の償還負担の軽減を図るために、就農支援資金については五年間の据え置きを設けたということであります。  就農に伴いまして生ずるさまざまな問題があろうかと思いますけれども、個別相談を実施するために現地就農アドバイザーを設置する、あるいは新規就農者を重点的に指導対象とした農業改良普及活動による農業技術の向上や経営定着への支援をする、あるいはまた、就農後の研修資金の貸し付けや農業大学校における短期研修の実施等を行いまして、今後こうした問題にしっかり取り組んでまいりたいというふうに考えておるところであります。
  44. 石橋大吉

    ○石橋委員 次に、農業に関する技術習得研修問題についてちょっとお聞きしたいのですが、就農前の技術研修の有無について見ると、大体受けた者が百九十人、受けない者が百八十五人、ほぼ半々。そして、受けた者の研修先は、個人農家法人経営を含みますが、こういうところが多いわけですね。  また、実際問題として、個人経営の農家研修をする、一年か二年か、期間もそれなりにある、こういうこともあってだと思いますが、個人農家研修した人が一番就農後効果を上げているというか、農業で自立できるのも比較的早い、こういう感じになっていますね。  そういう意味で、個人農家の経営を手伝いながら研修をする、技術を身につける、これは新規就農者にとって非常に効果的だ、こういうふうに言えるわけですが、しかし、そうはいっても、どこでもだれでも、個人経営をやっている人が新規就農者研修を引き受けるわけではないと思うのですね。それぞれの家には、家庭の事情もあったり、いろいろなことがあったりして、なかなか受け手は潤沢にあるという状況ではないんじゃないかという気がするのです。これがかなり潤沢にあれば非常に結構なことですが、その辺の状況がどうなっているのか。  もしないとすれば、やはり、今個人で研修を受け入れている農家に対して、支援措置がどうなっているかちょっとわかりませんが、そういうことも含めて、もし必要があればそういう措置ももっと考えなければいかぬ、こういうふうにも思われるわけですが、その辺のことをどういうふうに考えておられるのか。  特に、全国都道府県新規就農ガイドセンターの昭和六十二年以降平成八年度までの十年間に訪れた相談者の職業を見ると、圧倒的にサラリーマンが多いわけですね、当然のことですが。そういう意味では、未経験の人も多いわけですから非常に研修が重要になってくるわけですし、個人の農家研修をめぐる状況について、今言ったようなことがどういうふうになっているのか、ちょっとお聞きしたい。
  45. 谷津義男

    谷津政務次官 石橋先生指摘のとおり、未経験者が多いわけでありますから、この辺のところは研修をしっかりやらなきゃならぬだろうと思うのです。  アンケートによりますと、先生の御指摘にありました、研修先はどうかというふうなものに対しまして、個人農家及び法人経営を含んでいるのですが、それに対しては七六・五%の人がそこで研修をしているということであります。ですから、就農希望者の農業技術や経営方法の習得に当たっては、農業大学校の研修教育施設での研修と並んで、先進農家における生産現場での実地研修が非常に有効な手段であるということが言えるのではなかろうかと思うのです。  各県では、先進的な農業者を指導農業士等として認定する制度を設けておりますけれども、こうした方々による研修の受け入れ体制の整備を進めなければならないというふうに考えているところであります。現在、十年度末で、四十四道府県で八千五百十三人の方が指導農業士として認定を受けております。  ですから、農林水産省といたしましても、指導農業士の研修や受け入れマニュアル等を作成いたしまして、支援をしていきたいというふうに考えております。
  46. 石橋大吉

    ○石橋委員 次に、新規就農者のもう一つの大きな悩みは、やはり住宅を確保することですね。これはもうほとんど個人で探さなければいかぬ。なかなか情報も乏しい。過疎化の進んだ中山間地へ行けば空き家は結構あるけれども、いろいろな考え方があって、そう簡単には借りられない、こういう状況があるわけであります。  アンケート調査の結果によると、住宅の確保については、農家の空き家を利用している者が四六・三%、それでも空き家の利用は結構多いことは多いのですね。続いて、民間の住宅が一一・七%、新築九・七%、公営住宅八・七%、こうなっているわけです。  市町村によっては、過疎対策、定住対策などの観点から、毎年何軒かずつ家を建てて、新規就農者はもちろんですが、定住してくれる人を全国から募集する。私の島根県でも山奥の町村でやっているところがありますが、そういうようなところも結構あるわけですね。  これから新規就農者を拡大していこうとすれば、住宅問題がますます大きな一つのネックになってくることは避けられないと思うのです。そういう意味で、農林水産省としては、新規就農者の住宅の確保の問題について、どう考えておるか。  こういう質問をやろうと思って、きのう若い人が質問をとりに来て、それは建設省の話だ、こういう話でした。しかし、やはりこれは、農道だって建設省の仕事だけれども、農道といって大々的に農林水産省、道路もつくっているわけだし、かつては空港までつくってやろうとしたわけだから、住宅は知らぬ、こういうことでは私はいかぬと思うのですね。建設省なら建設省でも結構だから、ちゃんと建設省にやらすとか、一定の誘導措置はあって当たり前だ、こう思っているわけですが、この辺についてどう考えておりますか。
  47. 谷津義男

    谷津政務次官 これは、先生、農水省においても力を入れていかなきゃならない問題だろうというふうに認識をしております。大臣もそう申しております。  農外からの新規就農者はもちろん、農家の後継者であっても、先ほど金田委員からも質問がありましたけれども、生活の本拠地として住宅の確保が重要であるというふうに考えております。  これがために、県の農業会議に設置しております新規就農ガイドセンターにおいて、農地の情報のほかに住居に関する情報の収集、提供も行っております。  ちなみに、どんなことをやっているかといいますと、例えば北海道等においては家賃の助成として月一万五千円、それを三年間やるとか、あるいは岩手県においては村営住宅を準備しておるとか、あるいはまた三重県におきましては就農資金として住宅も含めて年二十万から三十万支給するとか、いろいろな手当てを各県においてやっているところでありまして、こうした市町村においての住宅の増築、改築、修繕、助成、あるいは住居のあっせん等の措置が講じられております。  いずれにしましても、住宅の確保が重要な課題であることから、今後とも相談活動を通じまして、住宅の手当てに関する情報の提供にも努めていきたいというふうに考えております。     〔松下委員長代理退席、委員長着席〕
  48. 石橋大吉

    ○石橋委員 今話を聞いて、農林水産省新規就農者の住宅について非常に関心を持っていることを改めて認識をしました。大変結構だ、こう思っていますから、頑張ってください。  次に、新規就農ガイド事業における新規就農者相談件数あるいは相談者の数と実際に就農した者との間にかなり大きな開きがあるのですね。この辺の原因をどう見ているか、あるいはこれを解消するためにはどういう手だてを考えているのか、こういうことをちょっと聞きたいのです。  昭和六十二年から平成八年度まで、全国の新規ガイドセンター及び都道府県新規就農ガイドセンター、ここで相談件数は二万七千百二十一件、相談者数は一万六千九百二十六人です。ところが、実際の就農者は何と六百四十二人なんですね。非常に落差が大きい。この原因、問題点はどこにあると見ておられるのか。  あるいは、さっき言いましたように、この落差を埋めるための手だてをやはり考える必要があるのじゃないかなという感じもするのですが、いや、それはまだまだ近々十年の間のことでそう心配は要らないよ、こういうふうに受けとめておられるのかどうか知りませんが、これはやはりどこかに問題があるからこれだけの大きな開きがあるのじゃないか、こう思っているわけでして、その辺についてちょっとどうですか。
  49. 谷津義男

    谷津政務次官 確かに先生指摘のとおり、相談者数が昭和六十二年度から平成十年度までに三万件ぐらいございました。実際に就農したという方が五から七%程度でございます。  この問題につきましては、都会の人等も、あるいは農業ロマンを持ってそういった相談に来た方もかなりあるのじゃなかろうかと思います。実際にいろいろな農業実態等を聞いて、あるいは考え方が変わった方もあろうかと思いますけれども、こういった面をやはり積極的にやっていかなければならないことだろうと思います。  そうした相談者の方々に対しましては、農業技術の習得のための研修を希望する方に対しましては、道府県に設置されている研修教育機関である農業大学校や、あるいは他産業従事者が働きながら農業の基礎を学べる就農準備校等の研修機関の紹介等を行っているところであります。  先生、今ギャップというふうに言われましたけれども、だんだんこういった新規就農者が今ふえてきておりまして、先ほど申し上げましたとおり、十年度で一万一千人、そして十一年度、まだわかりませんけれども、一万人を超えているというふうなことも聞いておりますので、そういった面で確実に就農していくのではなかろうかなというふうにも考えているところであります。
  50. 石橋大吉

    ○石橋委員 次に、ちょっとまた小さい問題ですが、関東の農政局管内での相談件数が非常に多いですね。これは、全国就農ガイドセンターが東京にある、こういうこともあってかどうか知りませんよ。同時に、新規就農者の要望も関東地域が多いわけですね。  この辺、大都市近郊ですから、かなり金もかかるし、大変な面もあると思うのです。しかし、野菜だとか花卉、施設園芸などをすれば、需要と供給の関係からいえばすぐ高く売れる、こういう状況もあると思うのです。  問題は、就農者の必要とする農地と、希望者と受け入れ側の関係、これは今のところそう問題なくいっているのか、将来的にこういう傾向が続くとすればこれはこれで問題だ、こう思っておりまして、場合によっては関東地域に希望をする人でも北海道へ行ってもらうとか九州へ行ってもらうとかというようなことも、条件不利地域に対する積極的な誘導政策などを含めて考えなければいかぬ、こういうようなこともあるかなと思ったりするのですが、この辺について、どういう現状把握になっていますか。
  51. 谷津義男

    谷津政務次官 先生指摘のとおり、今までの具体的な就農状況を見ますと、新規就農者が前から住んでいた地域と同一の地域就農するケースが多いということが見られます。  他地域も含めまして、多様な担い手確保をするためには、都市の就農希望者の相談に応じる新規就農セミナーの開催、これは東京大阪等で開いております、それからハローワーク、これは大都市圏にあるわけでありますけれども、新規就農ガイドセンターにおける就農情報の提供、それから関係団体等のホームページに各地方の研修等の就農情報を掲載する等取り組んでいるところでありますけれども、北海道等離れたところの就農につきましても、いろいろと御説明申し上げ、そして希望者をそういった方向に持ち込めるような方策を考えていかなければならないというふうに考えております。
  52. 石橋大吉

    ○石橋委員 次に、市町村就農支援活動と、それに対する国の支援措置などについてちょっと伺いたいと思うのです。  全国及び都道府県新規就農ガイドセンターによる、全国の市町村段階における農業外からの新規就農者の受け入れ、支援体制の整備状況調査、平成九年の十一月、こういうのがあります。これを見ると、新規参入に対する市町村等の独自の支援措置を行っている市町村は五百四十九、二一・一%、今検討中と今後検討したいを含めると約六割に達する。地域的には、中山間地域で積極的な支援体制がとられている。しかし、これを見たって、二一・一%ですから、町村の中でも非常に数少ないのですね。  今後、農外からの新規就農促進するためには、就農支援のための財源確保と、農地情報や住宅情報などソフト面を総合的に整備する必要があり、そのためにも受け入れ市町村が農外からの新規就農者の位置づけを明確にすることが極めて重要だ、こういうふうに考えるわけです。  同時に、支援措置を実際に行う場合の財源の確保に問題を抱えている市町村も非常に多いわけであります。支援措置にかかわる予算が百万円未満という市町村が五割近くありますね。二百十何ぼのうちの五割近く、百万円未満。受け入れ側の財源確保の厳しさを物語っていると思うんですが、これでは形ばかりじゃないかという感じもするんですね。本腰を入れて新規就農者問題をやるためにはもっと金もかかると思うし力も入れなきゃいかぬ、こういうふうに思うんですが、状況はそういうことになっているわけであります。  市町村新規就農者対策について、地方分権の時代ですから余り農林水産省としてがたがた言えないよ、こう言われるかもしれませんが、それにしても一定の指導はやはりあっていい、こう思いますので、この辺と、財政措置が、さっき言いましたように百万円未満という形ばかり、こういうところが多いんですが、地方財政もますます厳しい折ですから、これから格段に力を入れて新規就農者対策をやるための財政措置などについてどういうふうに考えておられるか、市町村に対する財政措置
  53. 谷津義男

    谷津政務次官 先生指摘のとおり、もう既に行っているというのが二一・一%、五百四十九、検討中というのを入れましても六割ということなんです。また、こういう行っている地域市町村別に見ますと、これは、北海道、山陰、山陽、南九州、あるいは中間農業地域や山間農業地域が高いんですね。  こういうことを見ますと、市町村における新規就農対策につきましては、技術の習得とか農地の確保あるいは情報の入手といった就農時の課題に対応いたしまして、地域への新規参入を目指す方等を対象とする現地実践研修農場の整備をしたり、あるいは新規就農者の初期投資の負担を軽減するためのリース農場事業や現地の就農相談体制を整備しなければならないと思っております。そういった面で財政的支援を実施しております。  これに要する経費としまして、平成十二年度予算では一億六千万円余を計上しているところであります。
  54. 石橋大吉

    ○石橋委員 今後もひとつ、特に金を出すことについては何分の配慮をお願いしておきたいと思います。  地味な質問の最後は、農地の確保のことについてちょっと聞いておきたいと思うんです。  御承知のとおり、中山間地を中心にして耕作放棄地も目立ってふえている。そういう意味では、農地は幾らでもあるじゃないか、後継者難という状況も一面であるわけですから、幾らでもあるんじゃないか、こういうふうに言えば言えないことはないんですが、しかし、新規就農者が希望している農地ということになると、実際には非常に小さい農地があちこち分散をして存在していて、なかなか就農者が希望するような農地が手に入らぬ、こういう状況があるわけであります。  そういう意味では、農地の団地的な利用というか運用などについて、新規就農者の希望する規模がすぐ手に入るような条件整備あるいは情報の整備、そういうことが非常に大事のようであります。資金の問題に次いで農地の確保新規就農者の第二の大きな悩みでもありますから、この辺についてどういうふうに考えておるか。地味な質問の最後です。
  55. 玉沢徳一郎

    ○玉沢国務大臣 やはり新規就農者はこれから農業を意欲的に担っていくという方々でありますから、それにこたえるということが大事だと思うわけでございます。  したがいまして、これまでも、担い手に農地面積を集積することを目標に農地の流動化を進めてきたところでありまして、農地の集団化に配慮しつつ、農地流動化推進員による農用地の貸し手、借り手の結びつけ活動等を初めとする各種施策を積極的に展開してきたところでありますし、また、集落等におきましても、土地の利用計画等をそれぞれの地域でやりまして、中核的農家を中心として営農をやっていく、こういうことが行われているわけでございますが、新規就農者もこういう集落の活動に繰り込んでいくということも大事ではないか、こう思うわけでございます。  所有権移転や賃貸借権設定の促進にとどまらず、経営効率の向上に資する農作業受委託の調整も含めまして、農地の集団的な利用調整を推進してまいりたいと考えております。
  56. 石橋大吉

    ○石橋委員 新規就農をめぐる、現段階で把握できる問題点についてはおおむね総ざらいをしたんじゃないか、こう思っておりますが、どっちにしても、そういう問題点を踏まえて、新規就農のさらなる発展のためにまずひとつ頑張っていただきたい、こういうことを地味な質問の最後に要望しておきます。  最後に、玉沢大臣の抱負経綸にかかわるような少し高邁な質問と答弁をお願いしよう、こう思っておるわけです。  まず、これは一つパネルをつくってきたんですが、余りパネルが立派でいささか私も面映ゆい気がせぬことはないんですが、これは、「農業と経済」の四月号に載っていた京都府の基幹的農業従事者の分布の表です。  見てもわかるように、九五年ですが、ここから上が四十代なんです。五十五、六十歳から上はこうなっている。ごらんのように、非常に極端な逆ピラミッドですね。  こういうことですが、京都をなぜ取り上げたかというと、この論文の著者は、しっかりした担い手が希薄な西日本の代表的な地域であり、それだけに担い手問題をより先鋭的にとらえることができる府県だ、こう言っているわけです。僕のところのこういうあれがあると持ってくるんですが、なかったものだから京都のものを利用しているんですが、これは中四国だとか東北なんかもそうかもしれませんが、中山間地の市町村はほとんどこういう状態だと思うんですね。  これは、担い手の高齢、長寿化とそこへの偏在、若年、若手の担い手の極端な不足を示しているわけですね。当分の間、高齢者の担い手によって地域農業は維持できるとしても、本格的な中高年の担い手を組み込むことがなければ地域農業は一挙に崩壊する、こういう姿を示していると思うんですね。  京都府の場合、九五年で四十九歳以下の基幹的担い手の占める割合はわずか四%、農家百戸当たりの存在量は一・五人、大変な事態ですね。一方、高齢の担い手は、六十—六十四歳層で一部定年帰農、定年回帰、土地持ち非農家農業再参入などもありまして、若干続くような感じになっていますが、これだって、十年もすれば、もう兼業第二、第三世代、農業についての原体験なし、こういう人たちがふえてくるわけですから、こういう人に余り期待することはできない、こういう状況。  そういう意味で見ると、担い手問題は、個別農家の経営継承の問題に限らず、地域農業崩壊かどうか、こういう深刻な問題になっているわけですね。そういう意味で、今までの質問でも繰り返してきましたが、これから昭和一けたが引退をする時期にも直面をして、これからの十年か二十年に集中的、抜本的な新規就農者対策を講じないと、多くの地域農村農業崩壊する、こういう危機的な状況にあると思うんです。  極めてドラスチックな危機を前にしているわけですが、こういう状況についての認識について、とりあえずどうお考えになっているか、聞きたいと思います。
  57. 玉沢徳一郎

    ○玉沢国務大臣 まず、六十代といいますと我々の世代であります。つまり、私は昭和十二年生まれでありますから、一けた世代の次の二けた世代の初め。そして、五十代といいますと昭和二十年代生まれですね。だから、そういう時期におきましては、やはり農業といいますのは地域産業の中心であった。したがいまして、就農人口も極めて大きかった。しかし、その後の経済的な変動によりまして、農村から都市に相当の労働力が流れていきまして、そして今日、現在委員が見られるように、担い手、後継者が不足しまして、地域によっては集落が消滅してしまう、こういう現象を生じておると思います。  それで、この数字でありますけれども、九五年のセンサスによりますと、過去五年間に消滅した農業集落の九割が中間農業地域及び山間農業地域の集落となっておるわけでございまして、これら条件不利地域ではなかなか集落の維持が困難となっているところが多い、こういう認識です。  したがいまして、今回のこの基本法等におきましては、中山間地域に対する支払い制度を設けまして、やはり耕作放棄地とかそういうところに対しましての、手当と言っては大変恐縮でございますが、できるだけ地域を維持して営農することができるような体制をとっていくというのが第一。  それからまた、今論議されております担い手の問題につきましても、若い就農者のみならず、中高年齢層までを含めた幅広い年代層に新規就農促進を図っていく。あえて言えば、都会である程度の仕事をやりまして、そして自分の故郷に帰ってまいりまして農業をやる、こういう方々も大いに歓迎をして、促進していくということが大事ではないかと思います。
  58. 石橋大吉

    ○石橋委員 新規就農者がいかに大事かということを、違った側面から、今大臣はちょっと集落のことを言われましたが、農村集落の現状から、もう一つ強調しておきたいと思うんです。  農林水産省からもらった農業集落数の推移を見ますと、昭和四十五年、一九七〇年の時点と平成二年、一九九〇年の時点との比較、約二十年間の推移を見たんですが、農業集落の戸数が九戸以下の集落についてはわずかにふえていますが、戸数十から四十九戸の集落は大幅に減少して、一万三千八百十一減っているわけですね。戸数が五十戸から九十九戸の集落もかなり減少している、四千五百七十六減っている。今度は、戸数が百戸以上百四十九戸の集落はわずかにふえて、三百五十九ほどふえている。大きくふえたのは百五十戸以上の農村集落、一万三千七百三十九と大幅にふえている。全体で見ると、十四万二千六百九十九の集落が十四万百二十二集落になっているわけです。二千五百余り減少しているわけです。  全体として見ると二千五百余りだから大したことはないかな、こう思うんですが、十ないし四十九戸、五十ないし九十九戸、こういうところを見ると大幅に減っているわけですね。恐らく、ふえたところは都市近郊の集落で、かなり混住化が進み、兼業化が進んでいる地域ではないか、こう思うんですよ。大幅に減っているところは小さい農村農業集落、特に中山間地、こういうところだろうと思うんですね。  集落が消滅すれば、当然、地域資源の維持はできませんし、多面的機能や公益的機能、農業農村の役割は果たせない、こういうことにもつながっていくわけですね。  高知大学の大野という教授は、かつて日本農業年報で限界集落という定義を出しておりまして、六十五歳以上が集落人口の半数以上を占め、高齢化で集落自治の機能が低下して、共同生活、社会的な生活を維持することが困難な集落、そういうのを限界集落と言っているわけですが、恐らくこういう限界集落が今かなりの数あるのではないかという気がするのですね。こういう調査の結果がどうもないようですので、残念ながら、そういう全国的な調査をもとにした質問はできませんが、そういう意味でいうと、農村集落の維持の面からいっても若い就農者を確保することは非常に重要だ、こういうふうになるわけであります。  さっき大臣、集落のことをちょっと触れられましたけれども、この辺をもう一遍改めて聞いておきたいということが一つ。  もう一つ、次の質問一緒くたにやりますが、新規就農者対策、新しい農政もちょっと希薄だなという感じがするのですが、御承知のとおり、我が日本は国土の八割は森林、林野、こういうことになっているわけですが、森林、林野の問題と農業の問題をセットにして、抱き合わせにして考えなければいかぬ。そういう意味で、そういうことをセットにした青年就農者対策というものも当然考えてしかるべきじゃないか、こういう気がするわけですね。  私は、この問題についても数年前に、直接所得補償を導入すべきだという議論をしたことがあるのですが、その当時の農林水産省は、怠け者にただで金を出すようなことはだめだ、こう言って、頑としてけ飛ばされて、今度はやっと本格的に少し手がつけられますが、数年前はそうだったのですね。  そこで私が提起をしたのは、それなら、怠け者に金を出さないというのなら、仕事に対して金を出すなら文句ないだろうということで、森林の手当て、各市町村だとか森林組合だとか、そういう地域の山を管理する計画なら計画を立てて、それに沿って山仕事を年間五十日から百日すると一日一万円か一万五千円か、ちゃんと賃金で出す、そういう所得補償政策を考えることもできるのではないか、非常に有効な手だてではないか、金の問題をどうするかということもありますが、そういう提起をしたこともあるのです。  やはり国土の八割は森林が占めているわけですから、特に中山間地に定住化を促進し、ちゃんと地域資源を良好な状態に維持するという観点からいったって、こういうことを考えてしかるべきじゃないか、こう思っているのですが、どうでしょうか。
  59. 玉沢徳一郎

    ○玉沢国務大臣 これは極めて重要な御指摘であると認識いたします。つまり、今委員がおっしゃられました、農業集落で消滅をしてきたというところは、平場の地域農業集落ではなくして、中山間地域農業集落であるということでございます。  これは戦後の五十年間の変遷を見れば御承知のとおりでございますが、つまり、例えば中山間地域において生業を営むということになりますと、重要なことは例えば木材、林業でございました。これは、戦後の復興期に大変な価格で山がどんどん伐採された。  また同時に、委員の御出身の島根県と私の岩手県は、木炭の王国と言われたわけです、西と東の横綱と言われた。そういうことで、木炭の生産をかなり広範囲に行っておったわけでございますけれども、しかし、これも石油が入ってくることによってほとんど価値がなくなってしまった。あるいは養蚕等もあらゆる中山間地域で行われた極めて重要な産業であったわけでありますけれども、外国からのものが入ってまいりまして、これもできなくなった。  現在、中山間地域で営農できるということになりますと、キノコ栽培とかそういうことで、ごく限られたものになってきておりますから、なかなか中山間地域農業をやりあるいは地域産業をやって生計を立てるということは難しくなってきた。こういうことから、いわゆる出稼ぎをやって収入を得るという形のものが出てきたと思うわけでございます。  これに対してどうするかということにおきましては、先ほども申し上げましたように、地理的な困難な中山間地域農業に対しましては、直接支払い制度というものを導入することによりましてこれを支えていく、これが第一点でございます。同時に、中山間地域に特産物というものがありますから、そういうようなものを地域の戦略作物として育てていくというようなことも大事であると思うわけでございます。  それと同時に、林業におきましては一番何が大事かといいますと、森林資源を今日まで維持してきたというのは、国有林におきましては林野庁でございますけれども、民間の山の場合におきましては民間の林業家であったと思うのです。  ところが、御承知のとおり、日本が昭和三十七年に木材を自由化してから安い木材がどんどん入ってまいりまして、国内の自給率は二〇%で、材価が低い、したがって、林業もなかなかやっていけないわけでありますから、せっかく戦後伐採した一千万町歩の山林面積のうち、これを人工植林をしてやってきた、ところが、これが全国でいまだに手がつけられていないのが四百万町歩あるわけです。  このままで放置していきますと全く資源の価値のない山になってしまいますから、国がこれは率先して行わなければいかぬということで、今まで間伐対策を対象面積二十万町歩をめどにやってきた。それを十二年度からは緊急間伐五カ年対策として五年間で、一年当たり三十万町歩行う、それで予算も約百億近くふやしておるわけでございます。  一応試算してみたわけでございますが、国が百億の予算を確保しますと、それに伴いまして地方自治体におきましても負担をするわけでございますから、それを総合しまして、一億の資金の中で約八千万円が人件費として間伐の場合は使われる、百億の投資効果におきましては約五千三百人の新規雇用が可能になってくるという試算をしたところでございます。  そうしますと、やはりこれを主体として仕事をしていくのは地域の森林組合等があるわけでございますから、そういうところで働く機会が得られればこれはやはり大きな中山間地域対策の一環になるのではないか、多面的な機能を発揮する意味におきましても、国が公益的な機能を守るために予算の措置を講じておるという積極的な意味があると考えるわけでございますので、林業と農業の共同といいますか連携といいますか、こういうことも今後大事なことだと思っていますので、これを進めていきたいと考えておるところであります。
  60. 石橋大吉

    ○石橋委員 今、私の質問に対して、十二年度予算などではかなり積極的な対応をしている、こういう大臣の答弁がありましたが、それにしても、まだまだ絶対数五千三百人程度では少ないと思いますし、直接所得補償制度が導入されるとはいえかなり複雑な制度でして、全体の農地面積の五分の一が対象だ、こういうような新聞記事もありましたが、ますますこれは重要になってきますので、今後ともひとつ力を入れて拡大をして、充実をさせていただきたい、こういうことをお願いしておきます。  最後の質問になりますが、これは玉沢農政の今後の展開を中心にして、農林水産大臣農政の哲学を改めて確認し、決意をひとつ聞いておきたい、こう思うのです。  まず一つは、フランスの青年就農制度は一九七三年からやられているわけですが、私も四、五年前にフランスの農業省で農業次官の話を直接聞いたことがあるのですが、毎年一万人から一万二千人ぐらい、このところちょっと落ちているみたいですが、どっちにしてもずっと一万人前後の青年就農者が継続的に、持続的に確保されている。  なぜフランスでそういう青年就農者の確保が成功しているか、こういうことをいろいろ考えてみると、まず一つは、フランスは御承知のとおり農産物の輸出国、EC最大の農業国であります。国家的にも農業に対する位置づけが日本とは違う、ある意味で。そういう意味では、戦略産業一つに位置づけられておるわけですから、農業に対する国民の考え方、国家の政策、そういうものが非常に重要な位置づけをされておるということが一つ。  それから、一戸当たりの平均経営面積を見ると約四十一・七ヘクタール、五十ヘクタール以上の農家の所有する農用地は全体の七割以上を占める。日本に比べると農業で自立できる可能性が非常に大きい、そういうことが言えるわけです。  畜産でも、一戸当たりの牛の頭数が平均六十七頭ですから、最近、畜産は、頭数だけからいうと日本の畜産もECを超えた、こういうようなことも言われるような、ある程度規模の拡大をしているのですが、しかし、輸入飼料に依存するという弱点を持っている。  フランスの場合はそういうことになっている。  そして、農業の継承がどうなっているかということを専門家に聞いてみますと、大体八割方小作だというのですね。だから、農地を買って多額の負担をするということはしなくてもいい。ほとんど小作で農地を継承する。親から子への農地の継承も小作だというのです。  だから、これから農業者年金の問題も恐らく深刻な問題になっていずれ議論しなければならぬことになりますが、フランスみたいにかなりの規模があって、親から子への継承も小作で受け継ぐ、規模も大きいわけですから、両親は小作料がそれなりにある、農業者年金は要らぬと、こういう状況かどうか知りませんよ、そういうことかなと思ったりもするのですが、どっちにしてもかなり新規就農に当たっての負担が軽いわけですね。  そういうようなことがやはり成功の原因かな、こう思ったりするのですが、何よりも農業について国家的にも個人的にも誇りが持てる、こういう状況があるということが最大の成功の原因だ、私はこう思うのです。  そのことに関連して、玉沢農林水産大臣、同じ岩手県の出身ですが、僕は前からこの人について非常に関心を持って見ていますが、東北学院大学の教授で小笠原裕という人が米問題と日本農業について大変辛らつな書き方をしておるわけですね。農業なんか要らぬ、こういう書き方をしておる。  それを言うと、まず、一九九二年に「本音で語ろうコメ問題」こういう本を書いている。その中で、時代おくれの尊王攘夷だというわけですよ、米自由化反対などと言っている者は。鎖国状態にある日本の米に開国を迫る外国に対して、外夷を打ち払って日本農業を守れと叫ぶ米市場開放反対論は百年前の尊王攘夷と一緒だ、こう言っておるわけですね。日本の米の競争相手は、アメリカの米でもなければタイの米でもない、世界一の国際競争力を持つ日本の自動車産業である、そして、日本の米が日本の自動車産業に勝つことは、アメリカの米やタイの米に勝つこと以上に困難だ、要するに、国際競争力のある日本農業の確立はたわ言である、こう言っておるわけです。厳しいですよ。  米市場開放、米放棄こそ日本の、そして世界の繁栄につながる、米防衛は日本を亡国に追いやった、このことは、日本が三十年前に自由化の道を選択して以来、これまでの日本の繁栄が証明している、こう言っている。  もう一つ。この教授が一九九六年に「農業に明日はない」、こういう著書を出版している。この帯にこうある。今さら日本農業の再建などナンセンスだ、必要なのは、農業が安らかに成仏できるよう引導を渡すことだ、こう言っている。  一に、今からでも遅くないから農業をやめなさい。二つ目に、農業を続ける者は野たれ死にをする。三番目、農民のために命を賭する者はいない。四番目、これは我々政治家に対する非常な侮辱ですが、農民を食い物にする政治家、農水省、農協、農学者そしてマスコミがいるだけである。  大変な侮辱ですが、これを大臣はどう受けとめられるか。  同時に、中山間地で、さっき言ったように、崩壊の危機に直面する中で、ひとり取り残されて死を待つばかりの老いた農民や何かはどういうふうに受けとめるだろうか。私は、率直に言って、この先生の言うことは真実だ、本当にそのとおりだ、こういうふうに受けとめるのも多いのではないか、こういう気がするわけですね。  どっちにしても、こういうことを言う学者が、今言ったように、堂々と日本農業亡国論を言っている。こういうことでは、新しい、若い担い手が積極的に農業に参入するということにならぬわけです。何としてもこういう状態は、我が国の農政を確立する前提として克服しておかなければならぬ問題だ、こう思うのですよ。  このことを最後に大臣の哲学を含めてお聞きして、私の質問を終わりたいと思います。
  61. 玉沢徳一郎

    ○玉沢国務大臣 私は、委員が御指摘されましたように岩手県出身でありますが、その説をなしておる先生も岩手県だそうでございますが、同じ郷里から出た者としまして、まことに残念だと思います。世界的な視野からいっても、基本的な農業というものがわかっていない、そう思います。  まず第一に、ひところは、農業と工業というものは同じなんだと。工業におきましては、日本は非常に厳しい敗戦の中から立ち上がって、そして世界に冠たる工業国になってきた。それは、自由競争あるいは市場経済、そういう中において可能だったということを前提として、この前のウルグアイ・ラウンドの際におきましては、むしろ日本の経済界はそういう発言をして、農業も競争の中にさらせば、同じ日本人なんだから、要するに工業と同じように競争力がつくという発言をしてきたわけであります。  しかし、その後どうなったか。日本の例えば金融界にしましてもあるいは工業界にしましても、私は、相当認識が変わってきていると思うのです。国際競争の実態というものは、必ずしも市場経済だけではやっていけない。  例えば、アメリカが工業等におきましてもアンチダンピングを国策としてやっていく、WTOからいっても、どこに競争の原理というものがあるのかという問題点。あるいは金融市場等におきましても、ノウハウのあるようなところは、赤子の手をひねるように、日本の金融業界もみんな国際市場で敗北しているじゃないですか。そういうようなことを考えてまいりますと、必ずしもすべて自由競争、市場経済が公平に運営されているものではない。  こういう観点から、今回は、WTOのシアトル閣僚会議等におきましても、要するに、農業と工業と同じようなベースでやるべきだという意見は日本の経済界の中からも出なくなりました。  それは、農業の場合におきましては、国民的に一番大事な、生命を維持している食料を生産していく。その場合におきましては、その食料の生産といいますのは歴史的なあるいは地理的なあるいは自然的な条件というものがあるわけでございまして、その中におきまして、その国の独自の農業がある。  日本のように三百年間鎖国をした国は海外に領土を求める機会がなかったわけであります。その間に欧米の国々は、アメリカ、カナダ、中南米、オーストラリア、ニュージーランド、今ケアンズ・グループと言われている国々は、そういう経過を通じて大農的な、一戸当たりの面積も百七十町歩とか二百町歩とか、一戸当たりの牧場でも四万町歩というようなものを持つようなものになってきたでしょう。そういうものと、日本のように、限られた地域で水を管理し、田畑の開発をしてやってきた。しかも、人口がこれだけ多いわけですから、そうすると、一戸当たりの平均耕作面積も極めて少ない。そういうところが全部一緒くたに市場経済と競争原理だけでやったらどうなるか。それは、完全になくなってしまうのです。  ですから、貿易というものは日本に対して大きな利益をもたらしてきたものでありますけれども、同じ貿易協定の中におきましても、農業といいますのは別ですよというのがこの前の農業協定の中にちゃんと盛られているわけですから、それは非貿易的関心事項。  食料の安全保障あるいは環境の保護、国土保全、食の安全、いろいろあるでしょう。そういうものに配慮をしながら貿易ルールというものはあるべきであって、各国の農業といいますのが、やはり主体的には、自分の国の食料といいますのは自分の国の農業確保していくということが明確にならなければ、二十一世紀、もし飢餓が襲ってきた場合にどう対処するかということも考えた場合に、今こそ農業に対する考え方と貿易に対する考え方というものを明確にして、そして、昔から言われてまいりましたように、農は国のもとである、それは政治の根本ですよ、愛国精神です。そうでなければ、農業といいますのは振興できない。  そういう観点から、確かに国際化の波がありますけれども、基本的には食料というものはその国の特質である、これはちゃんと守っていかなければいかぬ、こういう観点に立って、しっかりとやってまいりたいと思っております。
  62. 石橋大吉

    ○石橋委員 いずれにしましても、日本農業農村は重大な岐路に立っていることは間違いありませんし、これまでの歴史からいって、農民も国民も、農業に対する関心という点からいえば、必ずしも十分な状況ではありませんから、特に新規の青年就農者対策はそういう意味では非常に重大な問題になっていますので、格段の取り組みをお願いして、私の質問を終わります。  ありがとうございました。
  63. 松岡利勝

    松岡委員長 次に、漆原良夫君。
  64. 漆原良夫

    ○漆原委員 公明党・改革クラブの漆原でございます。  青年等就農促進のための資金の貸付け等に関する特別措置法及び農業信用保証保険法の一部を改正する法律案についてお尋ねしたいと思います。  まず、農業者の減少、高齢化が進む中で、将来の農業担い手確保を図るために、新規就農の一層の促進を図ることが現在重要な課題となっております。本法案は、このような状況に対応して、新規就農者就農を支援するための制度資金制度の一層の充実を図ろうとするものであって、評価されるべきものであると考えております。  その上で質問申し上げます。  我が国の農業就業人口を見ますと、平成二年の五百六十五万三千人から平成十一年では三百八十四万五千人と、十年間で百八十万人も減少しております。そして、農業就業者の四〇%以上を六十五歳以上の高齢者が占めているというふうに言われておりまして、農業者の減少と高齢化が急速に進んでおります。  日本農業は昭和一けた世代と言われる農業者が主たる担い手となっておりまして、その世代のリタイアの時期が迫っております。今後、農業者は大幅に減少するものと見込まれますが、農業従事者の円滑な世代交代のために、今後、何人くらいの新規就農者が必要であるというふうに大臣は見込んでおるのか、その辺をお尋ねしたいと思います。
  65. 玉沢徳一郎

    ○玉沢国務大臣 食料・農業農村基本計画とあわせて農林水産省が示すこととなっております農業構造の展望におきましては、効率的かつ安定的な農業経営の数につきまして、家族農業経営が三十三万から三十七万戸程度法人経営及び生産組織が三万から四万戸程度と見ております。  これを確保するために必要な新規就農者の数につきましては、世代交代年数を勘案し、毎年一万三千人から一万五千人程度と考えておるところでございます。  平成十年には、新規に就農した青年の数は一万人を超えましたけれども、今回の青年等就農促進法改正を含めまして、また施策を総合的に実施しまして、何としても一万三千人から一万五千人の目標を達成するように頑張ってまいりたいと考えておるところであります。
  66. 漆原良夫

    ○漆原委員 先ほど申しましたように、四割以上が六十五歳以上だ、そうすると、あと十年たつと七十五歳になる、そういう人が、三百八十万のうちの四割ですから、百五十万人ぐらいいらっしゃるわけですね。  そうなってくると、あと十年間で百五十万人くらい減るというふうに考えた場合に、今大臣のおっしゃったような新規就農者、一万三千人から一万五千人、十年たって十三万から十五万人になるわけですね。一けた足りないのかなという感じがするんですが、その辺はいかがでございましょうか。
  67. 玉沢徳一郎

    ○玉沢国務大臣 新規就農者対策とあわせまして、農地の集積化、経営の規模拡大、こうしたことを目指しておるわけでございまして、農地の集積のためにも、日本の国内で八万人の方々が今努力しておるわけでございます。そうした政策と相まって、農地を維持し、農業がさらに展開できるような体制をとっていくということが一番大事なものと考えておるわけでございまして、先ほども言いましたように、今後、何としても目標は達成して、これを実現するということが大事だと考えております。
  68. 漆原良夫

    ○漆原委員 先ほどの家族経営が三十三万から三十七万、それから、あとは三万から五万戸とおっしゃいましたが、それを維持するためにどのくらいの農業従事者が必要というふうに見込んでおられるのか、総数ではどのぐらいの数が必要だというふうに見込んでおられるんでしょうか。
  69. 木下寛之

    木下政府参考人 お答えいたします。  先ほど申し上げましたように、家族農業経営が大体三十三万から三十七万戸、また法人あるいは生産組織の見通しが三ないし四万戸というふうに見ているところでございます。  ただ、その中で、法人あるいは生産組織でございますけれども、一つの法人なり生産組織を組織する戸数が大体三・八戸というふうに九五年のセンサスでなっているわけでございまして、そういたしますと、三ないし四万戸の法人なり生産組織を構成する農家戸数として大体十一万から十五万戸というふうになるわけでございまして、先ほど申しましたように、家族農業経営が大体三十三万から三十七万戸、それから法人なり生産組織を構成する農家戸数が十一万から十五万戸、合わせまして四十四から五十二万戸というふうに平成二十二年では見通しているところでございます。
  70. 漆原良夫

    ○漆原委員 人数は出ていないんですね。農業に従事する人数は、就業人数としては出ていないんでしょうか。
  71. 木下寛之

    木下政府参考人 食料・農業農村基本計画とあわせまして私どもが示すこととしております農業構造の展望では、戸数ということで展望しているところでございます。
  72. 漆原良夫

    ○漆原委員 次に移ります。  新規就農青年の動向を見ますと、六十年には二万人だ、平成十年では半分の一万人になっておりますが、新規就農青年の減少について、なぜ青年農業につきたがらないのか、その辺について大臣はどのように認識されておりますでしょうか。
  73. 玉沢徳一郎

    ○玉沢国務大臣 新規就農者が一番少なかったときは、平成二年の四千三百人でございます。それを底にしまして徐々に上がってきておるわけでございますけれども、やはり平成二年のころは経済状況も非常によかった、そういうようなこともあって他産業の方に魅力を感じていったかと思うわけでございますが、最近におきましては、この数字が徐々に戻ってまいりまして、大体一万人を超えて一万一千人ぐらいになってきておる。  これは、農業の将来というものを考えた場合に、他産業と比べましても、一つの方向性といいますか、魅力があるんじゃないか、あるいはまた、自然の中で生命を育てて収穫するという喜びというものがあるんじゃないか、こういうようなことを考えておるわけでございまして、確かに、経済情勢その他に影響があったということは私としましても認めているところでございます。
  74. 漆原良夫

    ○漆原委員 若者が一生の職業として農業を選択するということでありますから、やはり魅力のあるものでなければならない。何といっても、私は、今大臣もちょっとおっしゃいましたが、所得の確保ということが一番大事だろう、そしてその所得が安定的に確保されていく、これが一番大事な問題じゃないかな、こう思います。  そこで、所得確保と経営安定対策についてしっかりとした展望を示していかなければならないというふうに思いますが、大臣、所得確保と経営安定化対策、どのようにお考えでございましょうか。
  75. 玉沢徳一郎

    ○玉沢国務大臣 委員のおっしゃられるとおりでございます。やはり収益性の高い、経営確立に向けた環境を整備することが大事であると思います。  それで、新規就農者がどのような部門を選んでいるかといいますと、先ほども御指摘がありましたけれども、野菜、花卉などの収益性の高い部門への割合が非常に高くなっておるわけでございます。  したがいまして、そうした努力が報われるような仕組みに改善していく。例えば、集出荷施設等の整備や農地利用の集積等、生産手段の充実による生産性の向上、生産コストの低減、あるいは普及活動を通じた技術、経営ノウハウの一層の向上、流通業者や消費者との連携による経営の多角化、高付加価値化等を推進していくということが政策としては大事なことであると考えております。
  76. 漆原良夫

    ○漆原委員 若い人といろいろ話をしていまして、若い人はそれなりに意欲を持った方がたくさんおられるんですが、よく生産調整の政策についてこう言いますね。三割減反というふうに言われれば、結局のところ、会社勤務にしてみれば、三分の一、一カ月のうち十日間休め、一年のうち四カ月休め、こう言われるのに等しいんだと。したがって、一生の仕事として農業をやろう、存分に作物をつくりたい、こう思っているのに、一年のうち四カ月休め、一カ月のうち十日間休めと言われれば、つらいんだと。  そういう意味では、仕事に誇りが持てないというふうな声をよく聞くのですが、そういう若者に対して、大臣、どういうふうにお答えになるでしょうか。
  77. 玉沢徳一郎

    ○玉沢国務大臣 これはもっと正確を期す必要があると思いますが、稲作経営を一〇〇%やっているという立場からいえば、三〇%減反ということになりますと、三〇%がなくなるというふうに考えるわけでございますけれども、農産物を生産するという観点からいえば、この三〇%のところは、減反ばかりでなく転作をしまして、転作奨励金等を通じまして他作物をつくる。目標としましても、できるだけ米の所得に見合ったようにということでやってきたのですが、ともすれば、これが消極的に受けとめられてきたというところが欠陥ではなかったかと思うわけでございます。  今回の決定におきまして、水田を中心とした土地利用型農業活性化対策等におきましては、従来の対策を抜本的に見直しまして、米の生産ばかりではなくして、水田におきまして、自給率の低い麦、大豆、飼料作物等を本格的に生産する、それをやれば反当七万三千円までは確保できるというような政策も含めまして、つまり、より積極的な政策展開を図っていこう。それで御理解をいただきながら、農地を有効利用する、自給率を上げる、こういう積極的な面での政策展開を図っていくということでございます。  この点についても、何としても農民の皆さんの理解が得られなければ進まないわけでございますので、むしろ積極的な観点からこれを受けとめていただいて御協力を賜れば、こういうふうに考えているところでございます。
  78. 漆原良夫

    ○漆原委員 それでは、法案の各論に入りたいと思いますが、これは総括政務次官にお尋ね申し上げます。  今回の改正は、就農支援資金について、農業経営を開始する際の施設の設置、機材の購入等に必要な資金を新たに設けて、その借り入れについては農業信用基金協会が行う債務保証の対象としようという内容でございます。現行の農業改良資金青年農業者等育成確保資金の経営開始資金では不十分なのかどうか、これも含めて本法改正趣旨をお聞きしたいと思います。
  79. 谷津義男

    谷津政務次官 新規就農者数は、近年増加しておりますけれども、依然として十分な水準とは言えない状況にあります。  一方、新規就農者にとって大きな課題は、全国の新規就農ガイドセンターでアンケートをとったものを見ますと、就農に際して苦労した点は何かといいますと、資金の手当てが四一・五%、それから、新規就農者農業経営に対して望む支援対策は何かというのに対しまして、低利融資等の資金の援助が五五・六%というふうな数字があらわれております。  こういうことから、資金の手当てが非常に大事であるという面で、資金面での支援策の充実を図ることが必要であると考えまして、このため、意欲的な新規就農者に対する無利子資金である就農支援資金を充実いたしまして、新規就農者が経営開始のために必要な施設の設置、機械の購入等に必要な資金を加えるとともに、資金を借りやすくする観点から、就農ルートの多様化にかんがみまして、農協あるいは銀行等を貸し付け窓口に加える、あるいは貸付限度額を引き上げる、そして農協、銀行等が貸し付ける場合に、農業信用保証保険制度の適用を可能にする等の改正を行おうとするところであります。
  80. 漆原良夫

    ○漆原委員 先ほど申しました従来の農業改良資金の経営開始資金、この制度だけでは不十分だったのでしょうか。どんな点が不十分なのか、お聞きしたいと思います。
  81. 谷津義男

    谷津政務次官 今回改正しようとする就農支援資金内容ですが、これは従来のもの等を見まして違う点は、以下のようなことなんです。  貸付主体が青年農業者等の育成センターあるいは農協、銀行等の金融機関、そして貸付限度額が、経営開始年度で二千八百万、次年度以降が九百万ということ。そして、先ほど申し上げました農業信用保証制度の適用等でありまして、特に、銀行等を加えて貸し付けの窓口の幅を広げたということで、今まで以上の、貸し付けのあり方から見れば非常に貸しやすい制度にしている。今までいろいろな希望がありましたけれども、十分に達し得られなかったものがあるものですから、こういうふうな改正を行おうとするものであります。
  82. 漆原良夫

    ○漆原委員 従来の制度では多分、債務保証をすることが難しかったのかな。今回、銀行だとか農協だとかいうところが貸し付けることによって、国の制度として債務保証を法的にしやすくしたという点が大きな違いなのかなというふうに理解しておりますが、それでよろしいのでしょうか。(谷津政務次官「いいです」と呼ぶ)  それから、本法は平成七年の二月に制定されて、そして十年三月にさらにこれを中高年層までに拡大されて現在に至っているわけですね。新規就農青年の動向を見ますと、平成七年は七千六百人、八年は八千五百人、九年、九千七百人、十年で一万一千人。たくさん増加していると見るか微増と見るかは難しいのですが、少しずつふえていると思います。  この新規就農青年の増加に対して、本制度の果たした役割をどのように評価していらっしゃるのか。それからまた、十年に法改正した、中高年を加えたことによって、その目的はどのように達成されたのか。その二点をまとめてお伺いしたいと思います。
  83. 谷津義男

    谷津政務次官 先生の御指摘のとおり、平成七年の青年就農促進法制定以降、平成十年度末までの就農支援資金の貸付実績は、件数で四千六百十七件、貸付額で四十八億円となっております。特に近年、貸付実績は着実に伸びておりまして、十年度におきましては、貸付実績が千五百二十一件、十七億円となっております。  また、認定就農者の認定実績も順調に伸びておりまして、十年度末の認定就農者は六千六百八十九名となっております。  このようなことを背景としまして、新規就農した青年の数は着実にふえてきておりまして、先ほどお話がありましたように、十年には十一年ぶりに一万人を超えて、一万一千人まで回復したという実績がございます。
  84. 漆原良夫

    ○漆原委員 今回の改正は、新規就農を希望する人たちのニーズによってできたものだと思います。本法の改正によって、新規就農者、どのぐらいの人数が増加されると見込んでいるのか、いかがでしょうか。
  85. 谷津義男

    谷津政務次官 先ほど大臣がお答えいたしましたとおり、食料・農業農村基本法にあわせまして、農水省が農業構造の展望を示さなければなりません。そして、農業経営を効率的かつ安定的に行うためには三十三万から三十七万戸、そして生産法人等を入れまして三万から四万戸程度と見ております。これを確保するためには、世代交代年数を勘案しても、一万三千人から一万五千人が必要だというふうに見ておるわけであります。  これがためには、平成十年度で一万人を超えたといいましてもまだ十分ではないというふうに見ておるわけでありまして、今回の青年就農促進法改正を含めまして、各種施策を総合的に実施しまして、目標を確保していかなければならないというふうに思っておるところであります。
  86. 漆原良夫

    ○漆原委員 その目標がぜひ達成されるように心から望んでおります。  今回の改正によって、就農支援資金は、施設の設置、機械の購入等に必要な資金を貸し付けることができるように拡充されることになったわけでございますが、新規就農者にとってみれば、運転資金とかあるいは生活資金、これは経営を開始してから収穫されて販売されるまでの間の生活資金、そういう手当ても重要な問題になってくるのではないかな、こう思います。  法二条二項二号では、「農業経営を開始するのに必要な資金で政令で定めるもの」と規定しておりますが、この政令で定めるものの中に、運転資金とかあるいは生活資金はその対象となっているのかどうか、その辺をお尋ねしたいと思います。
  87. 木下寛之

    木下政府参考人 今回拡大いたします就農支援資金でございますけれども、一つは、先生御承知のとおり、施設の設置費等のハードの資金のほか、種苗あるいは肥料、農薬等、いわゆる経営に必要な運転資金につきましては、その対象としているところでございます。  それから、もう一つの生活に必要な資金でございますけれども、私ども、今回の就農支援資金ではその対象とすることを考えておりません。今回の就農のための研修、あるいは機械、施設等にかかる費用全額について貸し付ける、また据置期間五年を設けるということ等々によりまして、就農までに蓄えた自己資金を生活資金等に活用することが可能だというふうに考えているところでございます。
  88. 漆原良夫

    ○漆原委員 拡充される就農支援資金の初年度限度額、青年は二千八百万、中高年は千八百万、一千万の差がついておりますが、その根拠は何なのか。  それからもう一つは、この二千八百とか千八百とかという支援で、青年または中高年の新規就農が果たして可能なのかどうか。農水省としては、新規就農者がどういう種類の農業を営んで、どういう規模の農業を営む、その辺、どのようなことをイメージされているのか、教えていただきたいと思います。
  89. 木下寛之

    木下政府参考人 今回設けますハード資金の限度額の考え方でございますけれども、私どもは、認定就農者が同世代の他産業従事者と比較して遜色のない所得水準を確保するため、どの程度の投資規模が必要かという観点から試算をいたしております。そういたしますと、いろいろな機械、施設を購入するのに、最大限三千七百万程度必要だというふうな観点から設定したところでございます。  それから、中高年でございますけれども、青年農業者と違いまして、ある程度手持ちの資金があるというのが私どものアンケートでございますので、そういうような中高年の就農者にとりますと、手持ち資金、大体私ども一千万程度あるというふうに見込んでいるわけでございますので、その差を中高年の就農者にとっての貸付限度額というふうに設定したところでございます。  それから、具体的な経営内容あるいは経営規模でございますけれども、私ども、大体いろいろな調査をいたしますと、新規就農者の投資額、稲作あるいは複合経営、花卉、野菜等々ございますけれども、二千万円前後で大体固まっているというふうに承知をいたしておりますので、今回貸付限度額三千七百万円ということにしておりますので、十分対応が可能だというふうに考えているところでございます。
  90. 漆原良夫

    ○漆原委員 償還期間でございますが、据置期間は五年間、それから償還期間は十二年間、こうなっております。  これは結構厳しい内容になっているのではないかなと思うのですが、例えば二千八百万借りた場合に、六年後から毎月二十万円近くのお金を返していくことになるわけですね。親子四人ぐらいで、農業を営んだ、二千八百万借りた、生活資金もそこから出す、それから営農の経費も出していく、そのほかさらに二十万近くも払わなければならない。こうなってくると、二千八百万ぐらいの投資で、果たして六年後にそのくらいの収入が得られるのかどうか。据え置きを五年間にしたことと償還期間を十二年間にしたことの根拠は、一体何に基づいてそういう根拠にされたのか、そこを聞きたいと思います。
  91. 木下寛之

    木下政府参考人 まず、今回設けます就農支援資金のハード資金でございますけれども、償還期間でございます。私どもが、今回見込みます機械、施設等の平均的な耐用年数を試算いたしますと、十二年ということでございますので、平均的な耐用年数に合わせたというのが償還期間の考え方でございます。  また、据置期間の御質問でございますけれども、私ども、これまでの調査によりますと、新規就農者、当初はなかなか経営が安定しないという点で、所得の不安定ということでございますけれども、五年程度を経過しますと相当程度経営が安定してくるということもございますので、据置期間五年というふうにしたところでございます。
  92. 漆原良夫

    ○漆原委員 購入した機械の耐用年数に合わせて償却を考えたというのは、これは逆ではないかなと思うのですね。生活できるだけのどのぐらいの収入が上がる、だから二十万返していける、こういう順序になるのではないかな。ですから、例えば、二千八百万借りた、六年後には親子四人が生活をして、その経費も払っていって、どのぐらいの収入があるものだというふうにお考えになっているのでしょうか。
  93. 木下寛之

    木下政府参考人 私ども、今回の仕組みを考えるに際しまして、どの程度の経営規模かということについて先ほど御説明いたしましたけれども、その際の収入の見込みでございますけれども、同世代の他産業従事者並みの所得を上げるということを念頭に置いて試算をしたわけでございます。  今回の試算例によりますと、例えば、水稲あるいは野菜、切り花等々、経営によってその内容は違いますけれども、粗収入にいたしますと、五年間程度経過いたしますと、一千二百万円、また、所得にして五百万円程度上げられるというような前提で仕組んでいるところでございます。
  94. 漆原良夫

    ○漆原委員 時間がなくなりました。  最後に、基金協会保証の引き受けをするわけでございますけれども、先ほどの話もありましたように、基金協会独自の、自分の基準に基づいてやることになるわけですね。その際に、ここがうまくいかないと、担保の問題、保証料の問題、きつく請求されますと、今回の改正の意味が全くなくなります。したがって、ここのところはしっかりと指導していただいて、この制度がぜひとも円滑に運用されるようにお願いしたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  95. 木下寛之

    木下政府参考人 今回の就農支援資金の債務保証、各県の基金協会の基準により定められるというふうになるわけでございますけれども、その債務保証に要する経費につきまして国と県が全額を出すということを前提にいたしまして、各県の基金協会の運用の中で、保証引き受けに当たりまして、担保なり保証人をとらないという方向で検討を行っているところでございます。
  96. 漆原良夫

    ○漆原委員 以上で終わります。ありがとうございました。
  97. 松岡利勝

    松岡委員長 この際、休憩いたします。     午後零時三十九分休憩      ————◇—————     午後二時五十八分開議
  98. 松岡利勝

    松岡委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。一川保夫君。
  99. 一川保夫

    ○一川委員 では、午前中の質疑に引き続きまして質問をさせていただきたいと思っております。  今回の青年等就農促進のための法案というのは、基本的には担い手対策の一環であろうというふうに思いますけれども、平成七年にこういう制度がスタートいたしましてから今日まで、午前中の質疑を聞いておりましても、それなりの成果があったというふうにお聞きしました。当然、これから新しく農業に従事していただく方々を確保していくための一つの目標的な数字も、先ほど漆原委員の答弁の中にも含まれていたような気がいたします。  それで、私は、確認のためにもう一回そのあたりをちょっとお聞きしたいわけでございます。新規就農者の方々というのは当然、農業の経験は全くないか、あったとしてもごく浅い方々ばかりでございまして、何を期待するかというのは、ある程度年数、経験がたてば中核的な農家に育つ可能性も十分秘めているわけですけれども、新しく農業に就業される方々は、恐らく今まで農業をやっている方々に負けない意欲はあろうかと思います。  では、具体的に、我が国のこれからの農政の中で、そういう新しい方々にどういう分野を受け持っていただくかということも含めて、そのあたりの状況が、土地利用型の米作を中心とする、生産性を上げていく、コストダウンを図っていくという分野に今すぐ本格的に取り組めと言ってもなかなか難しいのではないかなという感じがいたします。そのあたり、何か基本的な考え方をお聞かせいただければ非常にありがたいと思います。
  100. 谷津義男

    谷津政務次官 一川先生の御指摘のとおり、新規就農者は非常に大きな意欲を持って就農するだろうと思うのです。しかし、一方で土地の取得とかいろいろな面があるものですから、どうしても野菜とか花というふうなものに就農する方も数多く見られます。また、稲作にも、先ほどもお答え申し上げましたとおり、一九・一%の方たちが就農しているという面もございます。  そういう面から考え合わせますと、今度の自給率等のことを考えるならば、土地利用型の農業といいましょうか、そういうふうなものにできるだけ多くの方たちに就農してもらうのが一番よいというふうには考えておりますが、さりとてこの問題につきましては、一方においては資金の調達とか何かいろいろあろうかと思います。そういう点を踏まえながら、私ども、適時適切に資金の支援をしたり、また指導をしていきたいというふうに考えております。
  101. 一川保夫

    ○一川委員 きょうのこれまでのいろいろな質疑の中で、年間一万三千人ぐらいの新規の就農者を期待しながらそれを維持していきたいというような御答弁もございました。それからまた、家族経営としては三十数万戸ですか、そういう家族経営を期待したい、または、法人経営としては三万から四万戸を期待したいというような趣旨の御答弁もございました。そういう面では、相当の構造改革が必要になってこようかと私は思います。今回、こういった法案改正して、新しく農業に従事していただく方々を確保し、また育成したいというその背景は、今日の農業そのものを反映しているというふうに私は思っております。  もう御存じのとおり、農業従事者は大幅に減少してきているわけでございます。また一方では、その中身が六十五歳以上の方が四割以上も占めているというような実態の中での高齢化現象、それは、俗に言われていますような昭和一けた台の皆さん方がまだ依然として農業で頑張っていらっしゃるわけですけれども、そういう皆さん方も、あと十年もすれば当然体力的に、意欲があっても農業はできないという実態になるわけです。そうなれば、そういう方々が受け持っている分野をだれが責任を持って受け持っていくかということは、これまた大変重要な課題ですね。そこは新規就農者だけでは私は十分カバーし切れないとは当然思いますし、そういう面では、いろいろな規模拡大等を図りながら構造を改善していくということがその根底にあろうかと思うのです。  今のような状態を放置していった場合に、当然ながら、新しい農業基本法までつくって、これから頑張ろうとする我が国の、例えば先ほどの基本計画の議論の中でもありましたように、食料の自給率なり自給力そのものを向上させていくということに対して、根底から揺らいでくるということにもなります。また、高齢者の皆さん方というのは今農村地域そのものをいろいろな面で引っ張ってきている、そういう方々がリタイアするような時代が来れば農村地域そのものが活力をなくしてしまうというおそれもございます。  また一方では、多面的機能ということが今日重要なことだというふうに言われておりますけれども、それは、農村地域なり森林地帯がしっかりと管理されているという前提の上でそういった多面的機能を発揮するわけでございますので、そういうことをしっかりと、実際に従事し、また指導していただく方々というのは、割と現段階では六十五歳以上の高齢者の方々というのが、そういった地域を引っ張っていただいているのではないかというふうに思っております。  そういうような実情をいろいろと考えてみた場合に、やはり農業に従事している方々のこれからの将来展望をしっかりと分析しながら、そこに農水省のいろいろな施策を総合的に集中していかないと、私は、この問題というのは、単純に新たな就業者を確保したから解決するという問題では当然ないわけでございまして、本当に真剣に取り組んでいただきたい、そのように思っております。  先般も、基本法を受けての基本計画という中で、食料自給率というような目標まで掲げて今頑張っていただくわけでございますけれども、そういう面では、今回のこの法律改正というのは、背景としては、我が国の今日の農業が大きな課題を抱えているということを十分御認識していただきたい、そのように思っております。  そういう中にあって、新しく農業に従事していただく方々に対して、私は、単なる所得だけを期待して入る人ばかりじゃないと思うのです。確かに、今日、我が国全体の経済の状況がこういう低迷した状況ですから、一次産業の中の中心的な産業である農業に従事して一旗上げようという人も中にはいるかもしれません。しかし、私は、農業という産業そのものが、非常に自然に密着しながら、心豊かにいろいろな面で過ごせるという面では、農業という仕事に対する魅力というものを当然皆さん方が感じて、それで新しく希望されるのだろうというふうに思っております。  そういったときに、基本的には、現在、これまで農業をやっている方もそうですし、農家の子弟として生まれた方々もそうですけれども、農業という仕事そのものが世の中全体からしっかりと理解されて支えられている、そういう世論といいますか、日本の国づくり全体の中でしっかりとした役回りを自分たちが担っているんだということを認識できれば、私は、多少所得が低くても、皆さん一生懸命生きがいを持って頑張ると思うのです。そういう面では、義務教育の段階からしっかりと農業の重要性なり役割といったようなものを教育していく、それは単なる学校教育だけじゃないと思いますけれども、地域全体でそういうものを教育していくということも大変重要であるというふうに私は思います。  そういう観点で、幅広く国民の皆さん方に農業というものを理解していただいて、ここで再度、二十一世紀に向けて、国民挙げて農業に従事する方々を応援するというようなムードをつくっていくことが大変大事であるというふうに私は思います。そういったところについて、ちょっと御見解をお聞かせ願いたいと思います。     〔委員長退席、松下委員長代理着席〕
  102. 谷津義男

    谷津政務次官 先生お話しになりましたように、農業が魅力あるものでなければ、なかなか就農といいますか意欲を持ってやれないというのはよくわかります。  特に、食料を供給するという大きな使命といいましょうか、そういう使命感を持って農業に携わる場合が一番私は意欲を持った農業になるのではなかろうか、単なる所得とかなんとかだけではなくして、そういった面が非常に大事な要素であろうと思うのです。  そういう面から、食料・農業農村政策は国民の暮らしと密着しているものでありますから、その推進に当たりましては、農業者だけではなくして、消費者も含めた国民全体の理解と支持を得ることが大事なことではなかろうかなというふうに思っているわけであります。そういう面から、食料・農業農村基本法においても、国民の理解の促進のための施策等を明確に位置づけたところでもございます。  具体的には、各種広報誌やインターネットを利用した情報の提供、食を考える国民会議の活動の展開、あるいはグリーンツーリズムの推進等をもって都市と農村との交流等に取り組んでいきたいというふうに考えております。  また、学校、特に小中学生の段階からの農業体験の学習につきましても、今後とも文部省とも連携をいたしまして、農業体験学習圃場の設置や体験学習に協力できる指導者の紹介、あるいは先生方に対する体験学習に関する研修会等も実施したいのです。  もう一つ大事なことは、都市部の小中学生といいましょうか、そういう方たちに理解をしていただくということは非常に大事だろうと思うのです。前にも申し上げたのですが、都市部の小学生等においては、場合によっては、キュウリとかナスなんかは工場でできるのじゃないかというふうに思っている子もいるようであります。こういった面は、やはり農村部との交流を図りながらそういう認識を深めていくということが大事ではなかろうかなというふうに思っております。
  103. 一川保夫

    ○一川委員 ちょっと通告には入っていなかったかもしれませんけれども、これまでも新規就農者に対するいろいろな政策をやってきまして、先ほどちょっと触れましたように、それなりに効果があったと思うのですが、実際に、新しく農業をやってみようということで従事して、途中で落後をされた方というのはどれくらいいらっしゃるのですか。
  104. 木下寛之

    木下政府参考人 私どもがアンケート調査した結果によりますと、新規に就農した者で離農したような方は八%程度というふうに承知をいたしております。
  105. 一川保夫

    ○一川委員 八%といえば、割と予想以上に低いなという感じがしますけれども、それは非常にありがたいことだというふうに思っております。  ただ、私も、新しく農業に入りたいという人たちのいろいろな意見をお聞きして感じたことでございますが、また一方、いろいろなアンケートの結果にもちょっとその傾向があらわれておりますけれども、もともと農村地域で生まれ育った人間が一時期都会へ出て働いて、あるいは定年でもいいのですけれども、ある時期に自分のふるさとに戻るか、あるいはその地域に戻って農業に従事するという人は、心配はそう大きくないと思うのですね。ただしかし、余り関係ないような地域で新しく農業に従事したいという人は、やはり人間関係だとかいろいろなことに不安感を持っておられると思うのです。  ですから、新しく就農される方々をしっかりと定着させて、本格的な農業者として育成していくためには、やはりその受け入れる地域が、温かい目で見ながらお互いに連携を図っていくという人間関係、また組織の皆さん方もそういう対応をぜひしてほしいわけですけれども、こういうことは皆さん方も当然異論はなかろうかと思います。  では、具体的に今、そういうことを実際に、特に農業技術面の指導とかそういうことを現場で実際にやるとすれば、農業普及員ですか、そういう方々が最も第一線で頑張っていく必要があるというふうに思います。あわせまして、当然ながら各市町村もいろいろな指導をされておりますし、また農協等の農業団体もそれなりの対応はするわけでございますけれども、地域のいろいろな特色、歴史的なものも含めて、そういうものをしっかりと新しく農業に従事する皆さん方にいろいろと指導しながら受け入れていくといった体制なり指導者は、非常に大事であるというふうに私は思っております。  そういう面で、特に普及員、最近、農業を取り巻く情勢が非常に厳しいわけでございますし、またいろいろな面でたくさんの課題を抱えている農業界でもありますので、普及員の皆さん方も勉強するのはなかなか大変だろうと思いますけれども、逆に普及員の皆さん方のレベルアップも一方では必要だというふうに私は思います。  そのあたり、今の普及関係というのは、当然、問題意識を持って取り組んでおられるというふうには思いますが、新しく農業を目指したいという方々に対する指導も含めて、今後の普及関係の皆さん方の対応の方針をお聞かせ願いたいというふうに思います。
  106. 木下寛之

    木下政府参考人 普及組織といたしましては、新規就農者の増大あるいは新たに就農された方々のフォローアップというものについて、私ども、一番重要な課題一つだというふうに位置づけているところでございます。  こうした観点から、普及組織におきましては、将来の農業を担う意欲を持った人材の確保育成を普及指導活動の重点課題として位置づけております。農協なり市町村、また青年農業者等育成センターと連携をとりながら、一つは、技術なり経営管理等につきましての実践的な研修の実施、就農後のフォローアップ、また資金の手当てなり生産物販売先等々につきましてのアドバイスを行っているところでございます。  今回、私ども、協同普及事業の運営に関する指針を新たに制定いたしましたけれども、この中でも、経営感覚にすぐれた農業担い手育成及び支援ということを最大の課題というふうに位置づけているところでございます。
  107. 一川保夫

    ○一川委員 ぜひ頑張っていただきたいと思います。  我々のところでは、専業農家の方に逆に普及員の人が教えてもらっているというところがありますけれども、余りそういうことだけでは困りますので、やはりしっかりと、逆に専業農家の方々を指導できるぐらいに普及員の皆さん方に頑張っていただきたい、そのように思っております。  先ほど、今の高齢者の方々が農業従事者の中では非常に重大な役回りを果たしている、そういう方々がリタイアする段階では大変な問題が起こるのではないかというお話をちょっと提起いたしました。私が先ほど言いましたように、そういう方々が近いうちに体力的に農業に従事できなくなるということであれば、そういう方々が今管理している農地、そういったものをこれからだれがどういう組織でカバーしていくかということが重要な問題です。  当然ながら、新しく農業を目指す方々にもある程度の部分は受け持っていただくということになろうかと思いますけれども、しかし、やはりこれまで農業にそれなりに経験のある方々にそれをしっかりと管理していただくということが非常に大事なことですね。  そのためには、高齢者の皆さん方、高齢者と言ったらしかられるかもしれませんけれども、六十歳なり六十五歳を過ぎたような方々が、今は若い者に負けないぐらい一生懸命頑張っておるわけですが、そういう人たちが今管理している農地を、ある程度優良な農地、要するに、生産基盤の整備も含めて優良な状態整備されておれば、もしその方々が体力的に農業ができないという事態になったとしても、いろいろな組織なり意欲のある方々がその農地をカバーしていただける、利用集積しやすいような状況を今つくっておくということが大変大切なことだというふうに私は思います。  それは、今からやろうと思えば幾らでも間に合う話でございますので、高齢者と称する皆さん方が今頑張って営農していただいている農地については、当然ある程度整備は行き届いているとは思いますけれども、そういったところを点検しながら、しっかりと優良な農地の状態でそれを、将来もしその人たちがリタイアしても、しっかりと受け持っていただけるような状態整備しておくということが非常に大切なことだというふうに思います。  そのあたりに対するお考えをどうぞお願いしたいと思います。
  108. 谷津義男

    谷津政務次官 先生の御指摘は非常に重要な点でございます。農地流動化施策を推進し、担い手の規模拡大を図っていくためには、高齢農家等が所有する農地を担い手に集積していくことが重要ではないかと思っております。  このために、具体的には、地域の実情を踏まえまして、市町村ごとの農地流動化目標の設定等、市町村の主体的取り組みの推進、あるいは高齢農家等の所有する農地の流動化を図るための各種流動化施策の普及活動や農地流動化推進員、これは全国で八万人ぐらいおりますが、その人たちによる農用地の貸し手、借り手の結びつけ活動の実施、あるいは農地保有合理化法人による農用地の賃貸借等の事業の実施が必要ではないかと思うんです。  ちなみに、大臣のところの岩手県、あるいは宮城県におきましては実はマップをつくっております。年齢、面積、機械がどのくらい使われているか、耐用年数がどうか、あるいは後継ぎがいるか、いないか、こういうものをマップに落としておりまして、いつでもそういうふうなときに担い手に引き継いでやれるかどうかというのを既に検討しておるところもあります。スムーズにそういうものが集積できるような対応をしているところもありまして、こういった面をもっともっと進めていきたいなというふうに考えているところであります。
  109. 一川保夫

    ○一川委員 今ほどの、マップをつくっていろいろとしっかりとした分析をしながら対応をされているというお話は非常に参考になりました。全国的にそういう方向でぜひ指導をしていただきたい、そのように思っております。  今回の新しい農業基本法の中でも、人材育成という一環の中で、農村助成の問題とあわせまして、法の第二十七条だったですか、高齢農業者の活動というような一つの柱まで立てて、高齢者の方々にも農業で頑張っていただこうということを期待しているわけですね。先ほど、私は、六十五歳以上の方々がたくさんいらっしゃる、そういう方々がリタイアするというふうに一方的に言いましたけれども、私は決してリタイアを促進しているわけじゃなくて、農業という産業は割と高齢者の方々でも十分対応できる分野がたくさんあると思うんです。  今日、介護保険制度とか、いろいろな社会保障の問題が議論されておりますけれども、私は、基本的には、一生懸命働いていただいて、元気で人生を過ごしていただくというのが最も望ましい姿でありますので、近代的な大型の機械を駆使する分野は高齢者は無理だと思いますけれども、それ以外の分野では、高齢者の方々に十分経験を生かしていただいて、若い人を指導していただくということも含めて頑張っていただくことが非常に大事なことだと思うんです。  そういう面で、高齢者の皆さん方に対するこれからの農政の中での位置づけといいますか、役回り、どういったところを農林省としては期待されているのか。そこのところに対する基本的な考え方をお聞かせ願いたい、そのように思います。
  110. 谷津義男

    谷津政務次官 高齢農業者につきましては、生涯現役を目指して活動でき、また、安心して住み続けられるようにしていくことが重要であると考えております。食料・農業農村基本法におきましても、高齢農業者の活動の促進について規定が設けられたところであります。  このような位置づけを踏まえまして、高齢者の農業地域社会における役割の明確化を図りながら、高齢農業者の生産活動などへの支援、高齢者の活動や介護に配慮した生活環境の整備等を行っているところであります。特に、高齢者といいましょうか、経験豊かな人たち指導というのは非常に大事でありまして、まさにお年寄りは図書館であるというふうに言われておりますが、そういった面ではかなり御指導いただける面があるのではなかろうかと思います。  また、高齢農業者による具体的な取り組みの事例といたしましては、ミニトマトなどの軽量野菜の栽培や、郷土料理の掘り起こしなど料理教室の開催、さらには地元の山ゴボウやウドの農産物を材料にした漬物等をやっております。  全国で幾つも例がございます。例えば福岡県の柳川では、イチジク等を加工しながら、これを販売、高収入を得ているという面もあります。また、埼玉県では、吉田町のふるさとの技術伝承推進協議会というのがございまして、ふるさとの料理を地場でとれたものをもってやっておられる、いろいろな知恵を出しながら、高齢農業者が生き生きと働いておるということで、こういった事例も随分ありますものですから、これはますます進めていかなければならないものではなかろうかなというふうに考えております。
  111. 一川保夫

    ○一川委員 私も、農村地域に住むお年寄りの皆さん方が、介護制度のお世話にならないように、しっかりと農業に従事して頑張っていただけるような地域社会をつくっていくということも、これからの農政一つの大きな課題ではないかというふうに思っておりますので、ぜひそういうことにも気配りをお願いしたい、そのように思っております。  では、最後にちょっと大臣に、決意も含めてお考えをお聞きしたいわけです。今回の新しい農業基本法を受けて、先般、その基本計画というものをいろいろと作業をしてこられて、それなりの成果が今でき上がってきておるわけです。食料自給力とか自給率を向上させていくための基礎的な部分といいますか、そこのところの位置づけを、農水省のいろいろな資料等にも書いてあろうかと思いますけれども、基本的には農地をしっかりと確保するということですね。それと、農業用水を初めとした、農村地域のもろもろの資源をしっかりと必要なものを確保しておくということ。それと、今話題にしております農業担い手というものをしっかりと確保し、育成していくということ。もう一つは、農業に対する技術、そういったものをしっかりと維持向上させていくという四つの大きな柱があろうかと思います。  そういう中で、今回のこの法案は、担い手の部分に対する一つ施策の今日的な課題だというふうに思います。大臣も当然そういった面の問題意識は十分にお持ちだというふうに思いますけれども、我が国の二十一世紀に向けての農業をこれから展開していくためにも、農地をしっかりと守りながら、必要な農村地域の資源を確保し、しかも、担い手生きがいと誇りを持って農業に従事していただくということがポイントになるわけです。大臣の決意を込めての基本的なお考えをお聞きしたい、そのように思います。
  112. 玉沢徳一郎

    ○玉沢国務大臣 委員指摘は、まことに大事なことであると思っております。やはり基本計画におきまして、農地、水、担い手確保するということはまさに基本の基本である、こう考えておるわけでございます。  具体的な農業施策といたしましては、農業振興地域制度等の適切な運用や農業生産基盤の整備によりまして優良農地及び農業用水を確保していく、これが第一点であります。  次に、人に対しましては、新規就農者に対する技術や経営管理手法の習得の促進等を通じた人材の育成確保が大事であると考えております。  また、作物におきましては、麦の高品質品種の育成など、農業生産の現場を支える技術の開発やゲノム解析等の革新的技術研究開発の推進、これを通じて、世界の開発等におくれないように、世界戦略を見据えてしっかりとやっていかなければならぬ、こう考えておるところであります。政府といたしましては、この答申を踏まえて基本計画を決定し、計画に基づく農業施策等の具体化に向けて全力を尽くしてまいる所存であります。
  113. 一川保夫

    ○一川委員 以上で終わります。ありがとうございました。
  114. 松下忠洋

    ○松下委員長代理 次に、藤田スミ君。
  115. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 私は、青年等就農促進のための資金の貸付け等に関する特別措置法及び農業信用保証保険法の一部改正案について質問をいたします。  日本農業の大切な担い手である青年農業後継者を、家族経営を守りながらどう育てていくかは、日本農業にとって緊急かつ最も重要な課題であると考えています。そのためにあらゆる手だてを尽くして、青年就農促進を進めていかなければならないというふうに考えますが、大臣に端的にお答えをいただきたいのです。私は、この施策は政策順位としては極めて高いレベルにあらねばならないというふうに考えますが、端的にお答えください。
  116. 玉沢徳一郎

    ○玉沢国務大臣 これが今回の一番大事なところだと思います。端的に答えてということでございますけれども、農業信用基金協会保証を引き受ける場合の担保保証人の扱いにつきましては、各県の基金協会において定められております。今回、新たに農協等から貸し付けられることになる就農支援資金は、施設設置等に必要な資金を経営基盤が確立してない新規就農者に対し融通するものでありまして、その保証に当たりましては、担保保証人の要件を緩和することが特に重要である……(藤田(ス)委員「わかりました」と呼ぶ)担保保証人をとらない方向で検討してまいります。
  117. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 せっかく御答弁をいただいているのですが、私が端的にと質問をしたのは、青年就農者をこれから育てていくという問題は、政策的順位としてはかなり高いレベルであらねばならない、そう思われるかどうかということでお聞きしたので、そこのところだけをお答えいただきたいわけです。
  118. 玉沢徳一郎

    ○玉沢国務大臣 したがいまして、担保保証人をとらないというような趣旨でやっておるということは、極めて重要視しておるということでございまして、委員のおっしゃられるとおりでございます。
  119. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 担保の問題は後ほどお伺いすることにしたいと思います、少しゆっくりいきますので。  それで、現実には新規就農青年、三十九歳以下になるわけですが、それは最低水準であった九〇年の四千三百人に比べれば、九八年が一万一千人ということですから、これはもう確実にふえてはきております。しかし、振り返って一九八五年のときには二万人おりましたから、多い状態のときに比べればやはり依然として半分の状態にあるわけであります。とりわけ、大臣、新規学卒就農者について見れば、最低水準であった九一年の千七百人に対して九八年は二千二百人ということで、依然として低迷状態にあると言わなければなりません。  確かに、長期不況、リストラのあらしの中で、中高年層の離職就農者というのは増加をしているわけでありますけれども、それでよしというわけにはいかない。やはり、これから長期にわたって日本農業担い手になる新規就農青年、わけても新規学卒就農者が低迷しているということについては、私ども、これまでも一貫してその対策を求めてきましたし、私は大変心を痛めているわけであります。  問題点はたくさんあると思うのです。それは、新規就農者に共通する問題として三つの大きなハードル、大臣もお触れになりましたけれども、資金問題、技術の問題、そして農地の問題、三大ハードルと言われておりますが、このハードルをできるだけ低くしていかなければならない。それからまた、青少年に対して農業の魅力というものをできるだけ理解してもらえるように働きかけていかなければならない。より根本的には、農業を取り巻く環境がいかにも厳し過ぎる。だから、もっと展望の持てる日本農業というものを確立していかなければならない。ここはもう一にかかって政治の問題だというふうに思います。  私はきょうは、もう大臣と政治の問題でやりとりをするということをちょっと横に置いて、大臣、今御答弁をいただきましたけれども、本当に大臣、この三つのハードルの問題、資金技術、農地、このハードルを低めていくためにどうしたらいいのか。それからもう一つは、青少年に働きかけていくということについてどういうふうにお考えなのか。そこのところをお伺いしたいわけであります。
  120. 玉沢徳一郎

    ○玉沢国務大臣 青少年に働きかけていくということが重要である、まさにそのとおりでございまして、例えば一つは文部省とともにやっておるわけでございますが、小中学校の生徒さんたちに農林水産業現場で実習的な教育を行う、こういうことも大事であると考えておるわけでございます。  また、技術の習得等につきましては、県の設置する農業大学校において研修教育を実施しているというのが現状であります。  資金の手当てにつきましては、就農前の技術習得就農準備に対する無利子資金の貸し付けを行っておるわけであります。  農地の確保につきましては、農地集積のいろいろな施策をやっておることと同時に、関係機関を通じた農地情報の提供等も行っておるところでございまして、そういうようなそれぞれの施策が相まって、できるだけ多くの若い方々に対しまして御理解をいただきながら、就農についても取り組んでいく、こういう考えでございます。
  121. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 新規に就農するということになりますと、新たに農業について技術を身につけていくということもあるわけですが、さっきからもうずっと皆さんもおっしゃっておいでですが、農地、住宅、農業機械の確保、そして、就農してもすぐ農業所得が入るわけではありませんから、その収入が得られるまで、農業資材や生活資金も必要になってくるわけであります。  私は、今回法案で示されております内容については、これは前向きに対応されているということを承知しております。農地購入に農地等取得資金貸付限度で三千万、農業機械だとか施設の設置資金は、今回の就農支援資金の拡充で貸付限度が青年には二千八百万、中高年には千八百万、また就農準備金や研修資金というようなものがあるわけであります。問題は、新規就農者にとって使いやすいものになるのかどうか、これで十分と言えるのかどうかという点であります。  今、最初の御答弁の中でも大臣は、基金協会担保の要求をしないようにしたいという御趣旨の御答弁をいただいたのじゃないかと思いますが、間違っていたらもう一度おっしゃってください。  就農支援資金として、無利子の貸付限度二千八百万の施設資金、大変前向きに対応されたこの施設資金、今回は基金協会保証引き受けをするということになっておりますけれども、そのときに担保を要求するというようなことになれば、青年はそんな担保を持っていないわけですから、これは絵にかいたもちになるわけであります。基金協会担保要求はしないようにきちんとした歯どめができるのかどうか、ここのところ、もう一度御答弁をいただきたいと思います。
  122. 玉沢徳一郎

    ○玉沢国務大臣 債務保証に対する経費につきましては、国の助成のもとで全額を都道府県基金協会に対して出資することとしておりまして、各県基金協会の運用の中で、担保保証人をとらない方向で検討を行っております。
  123. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 その検討はかなり確率が高いというふうに受けとめてよろしゅうございますか。
  124. 玉沢徳一郎

    ○玉沢国務大臣 よろしいです。
  125. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 私、今ここに全国農業会議所がまとめた三十五人の新規就農奮闘記、「農をおこす!村をおこす!アグリクリエーターたち」ということで、大変すばらしい参入事例を集めた冊子を持っております。大臣、ごらんになっていただいたことがございますでしょうか。何か機会がありましたら、どうぞごらんになってください。  この参入事例を見てみますと、いろいろな方、若い人も中高年の方もいらっしゃいますけれども、自己資金で新規に参入してきたのだという事例が意外に多いわけです。そして、新規就農の場合は、経営が軌道に乗るかどうか見通しがつかないので、借金はできるだけしたくないのだという気持ちがこの中からつくづく出てくるわけですね。そうすると、新規就農を支援するという点では、借金のメニューをふやすということは、もちろん全く無意味などとは毛頭申し上げませんが、しかし、やはり助成金制度の方が求められているのだなというふうに思いました。しかも、自己資金を用意できる人は、大抵一度サラリーマンを経験して、それなりに自分でつくることができた人たちで、新規学卒就農青年就農の場合は、自己資金は持つことができません。  青年就農者がこの資金施設農業機械をそろえ、農地は借りたとしましょう。しかし、先ほども申し上げましたように、就農してすぐ収入が入るわけではなく、最低でも二、三年、人によったら五年ぐらいは、農業収入によって生活ができるというようなことを考えるのは無理だと言われるわけであります。では、その間生活費はどうするのか。また、先ほど来指摘されておりましたが、都会と違って情報が非常に乏しい農村で住宅問題を解決するということも、これまた非常に難しい問題がついてまいります。  青年就農者を大きくふやさなければならないことは、大臣の先ほどの御答弁でも明らかなように、日本農業にとって重要かつ緊急な課題だ。そういうことで、政策順位としては非常に高い問題でありますから、やはりそういうところまで対応を図る必要があるというふうに考えますが、この点について大臣はいかがお考えでしょうか。
  126. 玉沢徳一郎

    ○玉沢国務大臣 就農するに当たりましては、確かに就農支援の資金も大事でありますけれども、同時にまた、自己資金もある程度用意をしてやっておるというケースが非常に多い。先ほどもアンケートの結果が示されました。したがいまして、安定的にやっていくということを考えていきますならば、やはり自己資金も用意をしていただきまして、無利子の就農支援資金等も十分活用しましてやっていくということが、アンケート上からも一番安定している、数も多い、こういうことでございますので、私は、自己資金も十分必要であるというふうに考えておるところであります。
  127. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 とにかく青年就農者というのは、新卒就農者に至るや余計のこと、自己資金を持つことができない人たちなのですよ。そこを理解して手だてを講じていくべきではないかということを申し上げているわけです。その点では、地方自治体の方を見ましたら、大変行き届いた内容のものを進めるようになってきています。  私は、この間北海道の釧路に近い浜中町という酪農王国と呼ばれる地域に参りましたら、ここは驚いたことに、三年間生活費として十五万円ずつ毎月応援をして、大臣、御夫婦で入ったときには二十五万円ずつ応援をして、三年過ぎたら、五年間は土地、施設、牛、それをリースして、八年目にしてようやく自立できるということで彼らの農地取得が始まる、大変なものだなというふうに思いました。  大臣は、おひざ元になりますが、岩手県の稗貫郡の大迫町、御存じでいらっしゃいますね。ここも新人農家に月十万円ずつ五年間支給をしてお世話をするのだということが言われております。ここの関係者の皆さんは、私に一つの提言をされましたので、このついでに御紹介をしておきたいと思います。  大迫町というのは、ブドウが基幹産業なのです。ワインもつくっていますね、大臣。そうすると、就農者を確保していくために、特に青年就農者を確保するために、月十万円五年間お世話をするということなのだけれども、提言で言っておられたのは、畜産公社だとか第三セクター、そういうところにもっと青年を受け入れて、そこで青年たちがずっとなじんで五年間ぐらい働いてもらえば、その地域の役所だとか農協の皆さんとのつながり、地域のつながりができて、もっとすんなり参入してくることができるだろうという提言なのです。  ただし、ここには条件がありまして、そうはいっても、畜産公社だとか第三セクターだとか、そういったところが給与を自分たちで払うということになったら大変なので、ここは国から直接応援をしてもらうという形になれば、もっと地域とのなじみ、技術確保の点でも、非常に有効なやり方になるのではないかというような提言がございました。  私は、あえてこのことを大臣に申し上げ、やはりもっと、もう一歩進んだ積極的な対応が要るのではないかということを申し上げたいわけであります。就農支援資金の償還免除を実施している都道府県も、今日では十八県に上っております。私は、このことについて大臣にもう一度御答弁を求めたいのと、あわせて、過去三回審議をしてくる中で、私は三回とも、全国の地方自治体の実態というのを農水省はどの程度つかんでいるのかということをしつこく尋ねてきたわけです。  ところが、全国の県も含めて市町村で取り組んでいる就農支援についての実態というのは、まだ十分調査もしていらっしゃらないというのが現状でございます。したがって、この点については、ぜひ調査をお願いしたいと思いますが、もう一度その二つの点について御答弁ください。     〔松下委員長代理退席、委員長着席〕
  128. 玉沢徳一郎

    ○玉沢国務大臣 全国の市町村の中で、約五百八十町村がかなりの支援対策を自治体で行っているという数字が出ておりますし、具体的な事例もつかんでおるというのが現状であります。  今、委員がおっしゃられた岩手県の例でございますが、例えば岩手郡葛巻町というところでは、第三セクターにおきまして酪農青年を受け入れまして、そこで研修をしまして、営農支援をしている。あるいは、九戸郡九戸村におきましては、午前中の話にもありましたけれども、就農青年に対しまして住宅を提供しておる、こういうような事例等がたくさんあるわけでございます。  したがいまして、それぞれの市町村が、みずからの描く町の計画に対して就農青年を受け入れる場合におきまして、いろいろなメニューを用意して支援をしておるわけでございます。そうしたことを私どももしっかりと、こうした事例をよく調査すると同時に、情報を提供する。それから同時に、そうした市町村と国が連携をし合って、新しい就農に対しまして取り組んでいくということが、私は最も大事なことであると思います。
  129. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 自己資金をつくりたくてもつくれない青年たちが、それでもなお就農参入ができるように施策を強化していただきたいということをもう一度申し上げて、次のところに行きたいと思います。  こういうふうな青年就農者をふやすためには、受け入れ体制の確立とともに、青年に対する積極的な働きかけがどうしても必要になってくるというふうに思います。農業の魅力を多くの青年に知ってもらうことは、政府のこれまた重要な仕事の一つじゃないかというふうに考えるわけであります。  そこで、私は、大変平たい例ですが、就農促進に関する広報活動、農水省はどういうふうに取り組んでいるのかということを聞いてみました。お話では、新聞五紙で十六回、それから求人情報誌五誌で十一回、補正の中でその広報費をもらってやっていると。  特に、青年に影響を与える効果が大きいテレビ放映ではどうかということになりますと、政府広報だとか農水省広報番組で、就農促進の広報番組を放映はしているんです。放映はしているんですが、その放映時間が、大体、土曜日の朝六時十五分から十五分間の放映ということになっています。六時十五分といったら、若い人はまだほとんど寝ているんですよ。その寝ているときに、このメッセージというのはなかなか伝わりにくいわけであります。  だから、農水省がもっとまめに、青年が一番、若い人たちが一番見ているところで、魅力的なコマーシャルというようなものを流せないのかというふうに聞きましたら、これが、とても予算がなくて、そんなことはとてもできないというのが、担当の方のお答えなんですよ。  大臣、しかし、私、調べてみたら、政府米古米の販売促進、たくわえくんのコマーシャル、御存じですか。このコマーシャルは、平成十一年で五億二千百五万、一万六千八百五十一回も放映しています。平成十年も、平成九年も、同額あるいはもっとたくさんのお金を入れて、たくわえくんのコマーシャルを流しているんです。  たくわえくんのコマーシャルを流しながら、政策的には極めてレベルが高い位置づけにあり、力を入れていると言われる青年新規就農を促すコマーシャルはどうして流せないのかということになってくるわけでありますので、ひとつここで、青年就農促進のコマーシャルなどはもっと積極的にやるというふうに御答弁いただけませんでしょうか。
  130. 玉沢徳一郎

    ○玉沢国務大臣 今、この広報関係の予算がございましたけれども、農林水産省としましても、いろいろな広報関係の予算を全部総計しますと、約四億ぐらいになるんですね、いろいろなものをやりますと。それから、農林水産省の広報関係では二億四千六百万で、テレビ番組等における新規就農の事例及び施策紹介を行っておるところでございます。  このほか、例えばインターネットであるとか、あるいは全国紙及び求人専門誌、それからJR、地下鉄の車内に新規就農に関する情報の広告掲載を行っておるわけでございます。また、マスメディアに対する情報提供も積極的に行うところでございます。  委員のおっしゃられるとおり、できるだけ若い青少年を対象に、こういう趣旨でございまして、我々もそれに意を用いてやっていかなければならぬと思います。
  131. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 そうすると、これからテレビをつけたら、一番私たちが見るような時間帯に、そんな一遍にと言いませんが、時には、やはり青年就農促進に力を入れているなと思われるようなコマーシャルの一つも出てくる、こういうふうに思っていいんですね。
  132. 玉沢徳一郎

    ○玉沢国務大臣 思ってよろしいと思います。
  133. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 この問題の最後になりますが、さっきも民主党の方からお話が出ておりましたが、大臣、フランスは、「青年たちの就農のための全国憲章」というのがあるんです。少し長いのですが、そこではこう書いています。  青年就農が、我が国農業の将来をほぼ決定的に条件づけることになるというふうに位置づけられまして、我が国農業が人間的な顔を持ち続けるために、すなわち、十分な数の責任ある農業者が、多様な生産部門と我が国の農業空間の管理に参加するために、地域や生産の特性を考慮しつつ、就農者数を増加させるような諸般の措置を講じなければならないというふうに言っているわけであります。  そして、その考えの上に立って、実に、総合的な就農促進施策を立て、その中には、返済不要の就農助成金まで仕組まれているわけです。私は、日本も、青年就農の緊急度からいえば、フランスの比ではないわけですから、フランス以上の対策が本来必要だというふうに考えます。この点について、演説は結構ですから、簡単にお答えください。
  134. 玉沢徳一郎

    ○玉沢国務大臣 フランスの就農憲章は、非常にすばらしいと思いますね。我々も、それに負けないようにしっかりとやっていかなければならぬと思います。
  135. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 その言葉を素直に受けとめておきたいと思います。  質問をしましたように、青年就農をふやすという取り組みは、どちらかというと、地道な取り組みになるわけでありますけれども、そこに予算措置を講じていけば、農業予算の中でそんなにお金を食うというようなものではありません。私たちは、今回、修正案も出しておりますが、そこでも、本当にささいなことで青年就農者の負担がかなり減るわけでありますから、ぜひ、政府の一層の取り組みを促しておきたい。それで、次の質問に入らせていただきます。  次は、農業に関する技術研究開発促進に関する特別措置法廃止法案であります。今回廃止される特措法によって生研機構が民間企業に研究開発を委託したわけでありますが、この五年間の実績概要をいろいろ調べてみました。  皆さんが研究開発成果と期待される効果ということで八十七テーマからより出された一つに、大区画水田における水管理の高度化に関する研究開発というテーマがあります。水田の自動水管理システムを開発したということなんですが、電話回線で送られてくる気象予報の情報をもとに、農家に設置したコンピューターで水田の給排水バルブの開閉指示を出す。給水側の装置には水温計がついていて、電源は太陽電池を使う。十ヘクタール単位で最適な水管理を遠隔集中制御で行えることになっている。気象災害が回避されて、水管理の労力が大幅に減って、総労働時間が二時間減る。こういうふうに結構だらけの内容で書かれています。  しかし、これが本当に農家に普及するのかどうかということになると、一ヘクタール当たり大体七十万円かかって、加えて、給排水パイプラインの設置がないと導入できない設備です。給排水パイプラインが設置されていない水田では、改めて基盤整備が求められる。基盤整備を行った水田でパイプラインの設置はどれぐらいなのかというと、六、七割。こういうことで、結局、このシステムを導入しようとすれば、農家は大変な新たな費用負担がかかってくるわけです。そう価格も安くありません。こういうパイプラインを伴った基盤整備を行っていることが前提であるかのようなシステムは、どの程度普及されるのかな、どういう見通しがあるのかなという点について、一点です。  もう一つは、畜産分野で、紫外線・光触媒による畜舎脱臭装置、これはもう既に商品として販売されていると聞きますが、環境に配慮した畜産増進の効果がもたらされるということで、畜舎の防臭対策の一環として効果があるものというふうに言われております。しかし、これは、畜舎の規模にもよりますが、五百万から一千万。畜産農家は、今ふん尿処理に物すごく頭を痛めている最中に、脱臭装置にこんな五百万から一千万というような商品を本当に設置するのかな、こう思いますが、販売されているところは生ごみ処理業などそういったところだというふうに聞いていますが、この点はどうなんでしょうか。  他の研究開発成果についても、めどが立っているのか、簡潔にお答えをいただきたいと思います。
  136. 三輪睿太郎

    ○三輪政府参考人 まず、先生が例としてお話しされました水田の自動水管理システムの研究でございますが、お話しのとおり、現時点では価格が高いということは事実であります。ただ、今後、量産化等によりまして、こういったハイテク技術のものは低価格化が進むことがまた期待されております。これは畜舎の脱臭装置も同じようなことがありますが、ただ期待しているだけではそうはまいりませんので、この特別措置法の廃止後におきましても生研機構が成果の普及に係る業務を行うことができるよう、附則で規定を設けたところであります。  また、水田の自動水管理システム全体につきまして、パイプライン等の整備がないとできないというような御指摘もございますが、この技術は、その一部、部分技術を、農家のアイデアで使うようなこともできまして、そういう幅広い現場での普及を図っていきたいというふうに思っております。また、補助事業や融資、こういったものを活用しまして実質的に農家の負担の軽減を図るような措置に努めてまいりたいと思っております。
  137. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 次に、委託料の支払いに関連してお伺いしたいわけです。  研究を委託したテーマの中で、実用化の見込みが低いというもの、それから途中で研究開発を中止したものというのが、この中には延べ十三の企業、合計三億五千四百万円の委託料となって出ているということで、特に研究開発を打ち切った六つの企業に二億一千二百万円の委託料を支払っているということであります。私は、業務委託基準第四条のところを見ましたら、「委託料の支払いは、委託研究開発が終了し、その額が確定した後に行うものとする。」というふうに書いておりまして、どうも、そこのところが合点がいきません。  もしあれでしたら、この委託基準の中で、私は見落としているんでしょうか、たとえ中止したものであっても支払えるという根拠、この項目の中のどこにあるのか教えてください。
  138. 三輪睿太郎

    ○三輪政府参考人 まず、御指摘の、九テーマ中止したということでございますが、この事業、いいかげんな結果を出すわけにいきませんので、研究開発につきまして、推進委員会を設けまして、非常に厳しい評価をして、そこで研究の継続をするか否かを決めております。  ただいま先生から御指摘がありました九テーマのうち五テーマは、この評価を踏まえまして中止したものでありまして、残りの四テーマは、残念ながら、最後まで可能性を追求しましたけれども、実用化の見通しは得られなかったものであります。  また、委託の規定につきましては、その規定でございますが、計画を立てた段階でその計画を吟味してきちんとしておれば、研究は経費がかかりますので、研究の実行の初期の段階から委託金を交付するというふうな規定にしております。
  139. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 だから、そこのところ、そういう書き方はこの委託基準の中ではないですね。そのことだけはっきりしてください、あるのか、ないのか。それがけしからぬと言っているんじゃないんです。委託基準の中に、そういうことは一つも項目としてないじゃないかということを聞いているんです。ないはずなんです。どうして、今ごろそんな探すんですか。
  140. 三輪睿太郎

    ○三輪政府参考人 正確に申し上げますと、委託基準の中で、「委託料の支払いは、委託研究開発が終了し、その額が確定した後に行うものとする。」となっていますが、その後、「ただし、受託者からの請求に応じ当該委託料の一部又は全部について前払いをすることができる。」という規定になっております。
  141. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 だから、結局、途中で中止したものも、未完成で終わったものもみんな、受託者からの請求に応じて前払いをしたということで、これは随分いいかげんじゃないか。  私はさっきも言いましたが、畜舎脱臭装置、これも生ごみ処理場で使われている、そういう御説明がありました。これは農業と関係ないわけであります。これがウルグアイ・ラウンド対策というふうに言えるのかなと。  商品化の見通しも十分でない、おまけに途中で打ち切った事業にも委託費を払う、農業以外にも用途の可能性がある製品の開発にも委託料を払う、これでは、結局、企業などに研究開発の費用を提供しただけで、言い方をかえれば、特定企業への補助金のようなものであります。それで企業側の方は特許料なども半分は受け取ることができるということで、今回の研究開発に関連して百六件出されていると聞きますが、メリットは本当にたくさんあります。  しかし、五十億円の予算を出資したウルグアイ・ラウンド対策ということになりますと、これは、国際競争の影響をまともに受けた、厳しい経営を強いられている農家がこの恩恵を受けてはいない、農業とは直接関係のない企業が潤ったにすぎない、そういうふうに言えないでしょうか。  私たちは、特措法を審議したときに、このことを厳しく指摘をして、この特措法に反対をしました。その指摘が実際に裏づけられたとはいえ、特措法の廃止は当然のことだというふうに考えます。  私たちは、そういうことではなしに、本当に、民間に研究開発を委託する特措法が制定されたのも、もとはといえば政府の研究対策が貧弱であったからだという点では、政府研究開発の方を、政府の責任でやはりもっと力を入れていっていただきたい。  それから最後に、この点について大臣のお考えをお伺いしておきたいのと、総務庁は認可法人のディスクロージャーの問題で、ディスクロージャーがおくれているという対象に生研機構を入れています。そういう総務庁からの指導を重く受けとめて財務内容の公開を厳しく行い、それからやはり、ディスクロージャーというものについてきちっと法制化の中で整備をするべきじゃないかというふうに考えますが、最後に御答弁を求めて、終わりたいと思います。
  142. 玉沢徳一郎

    ○玉沢国務大臣 五年間の時限立法で技術開発をやってきたわけでございますが、成果は、これから開発した技術をいかに普及して利用していくかというところにあると考えるわけでございます。  確かに、委員の御指摘なさったように、途中で開発を打ち切ったというケースもあるかとは思いますけれども、かけた費用と効果は、これからその技術をいかに利用していくか、こういうことにあると考えるわけでございますので、積極的な観点から、技術を今後いかに積極的に利用していくかという点でこの施策を進めていきたい、こう思います。  また、今指摘されました生研機構の問題でございますが、御指摘の、総務庁が実施した認可法人の財務内容の公開に関する勧告を受けて、新たに貸借対照表を官報に公告する等の改善措置を既に講じているところであります。  なお、勧告では、これらの措置について法律上明文化するよう求められておるわけでありますが、これにつきましては生研機構法の改正の機会をとらえて、あわせて措置することとしたいと考えております。
  143. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 時間が参りました。終わります。
  144. 松岡利勝

  145. 知久馬二三子

    ○知久馬委員 社会民主党・市民連合の知久馬二三子でございます。  私は、遺伝子組み換え食品の問題について質問したいと思います。今、多くの国民、市民団体や消費者グループ、そして研究者が、遺伝子組み換え食品について大変危惧を抱いています。そのことは、私は次の五点ぐらいにまとめることができるのではないかと思います。  第一としましては、食品としての安全性に疑問があることです。遺伝子組み換えにより予期しないアレルゲンや未知の毒性物質が発生する危険性があること、そして、長期微量摂取が人体に及ぼす影響などが十分に解明されておらず、また、遺伝子組み換え食品が安全だと言える段階になっていないということです。  そして、二つ目としては、表示がないことですね。したがって、表示なしで流通されるために、遺伝子組み換え食品を見分けることができないことです。食品としての安全性に危険がある以上、表示によって遺伝子組み換え食品を選択する権利が消費者に与えられるべきだと思うのでございます。  そして、三つ目といたしましては、環境に与える影響が不明なこと。例えば、除草剤耐性の遺伝子が拡散して逆に除草剤に強い雑草がふえる危険性や、これまで自然界に存在しなかった作物が発生する可能性があるなど、生態系にどのような影響を及ぼすのかまだわからない段階にあるということです。  そして四つ目には、日本農業を一層荒廃させるのではないかということです。遺伝子組み換え作物の最大のメリットは安定的に低コストの農業生産を可能にすることができると宣伝されていますね。しかし、このことは、安い値段の輸入農作物の増大を意味するということです。日本農業崩壊が加速し、国内自給率がさらに低下するのではないかと予測されると思うのです。  そして五つ目としましては、巨大企業による食料支配の可能性です。高度なバイオ技術である遺伝子操作による作物の生産によって、今後世界の食料生産が、この高度技術を占有できるアグリビジネスに左右されるおそれがあるということだと思うのです。  そこで、まず、この遺伝子組み換えの技術の基本的な考え方について、農林水産大臣の御所見、お考えをお伺いしたいと思います。
  146. 玉沢徳一郎

    ○玉沢国務大臣 遺伝子組み換え食品あるいは技術につきましては、この技術の持つ大きな可能性について正当に評価がなされること、最新の科学的知見に基づき環境や健康等に与える影響についての十分な評価が行われる必要があること、消費者の関心に対し的確にこたえる必要があることが基本であるというふうに考えておるわけでございます。したがいまして、表示等につきましては、本年から基本方針を明らかにしまして、明年、遺伝子組み換え食品等の表示を明確にしていく、こういう努力をやってまいることであります。  同時に、遺伝子組み換え食品につきましては、これまで、研究開発促進安全性確保、国民理解の促進を三つの柱としてその実用化に取り組んできたところでありますが、近年、この分野における研究開発競争が国際的に激化してきたことも踏まえまして、今申し上げました基本的考え方に即し、引き続き積極的に取り組んでいかなければならないものと認識をしております。  確かにいろいろな危険性その他指摘をされるところがあります。しかしながら、遺伝子の持ついろいろな機能が正しく利用されまして新たな産業というものも起こる可能性も否定できません。世界的にも、今委員が言われましたアグリビジネスの方で、つまり、世界的な特許を取って、そしてそれを支配するというような面もありますので、研究開発等におきましては、決しておくれをとってはならないと。しかしながら、常に安全性、科学的な保障というものは同時に追求していかなければならない、こういうふうに考えております。
  147. 知久馬二三子

    ○知久馬委員 確かに、大臣おっしゃったとおりだと思います。技術の発達することはいいことなんですけれども、何としても安全性が問われるということなんです。  先がたも遺伝子組み換えの食品については表示があるということを言われましたけれども、この表示につきましては、農水省の食品表示問題懇談会遺伝子組換え食品部会から昨年報告があったわけなんです。これまで表示がなかったことからすると、三十品目を指定食品として表示を義務づけたという内容は確かに一歩前進していると思います。  しかし、大豆油とかしょうゆ、コーン油などは、組み換えられたDNA及びこれによって生じたたんぱく質が加工工程で除去、分解等されることによって食品中に存在していないもの、要するに、現状の科学検査方法では調べてもわからないものとして、指定食品とせず、表示義務を免除されています。畜産用飼料も対象外となっています。このため、実質的には大半の遺伝子組み換え作物を原料とする食品が表示義務の対象にならないことになります。これでは表示に実効性が十分に上がりません。  また、米や小麦など現段階において遺伝子組み換え作物が流通していない農産物及びこれを原料とする加工食品には、遺伝子組み換えではないと表示することは不適切とされています。私は、この不分別表示では消費者の選択の材料にはならないと思います。すべての食品に表示が求められていると考えるのです。  そこで、農水省にお伺いしますが、遺伝子組み換え作物、遺伝子組み換えを分別していない作物と、それらを原料とした食品のすべてに表示を義務づけるべきだと考えますが、その点についてどうでしょうか。  また、主原料使用、上位三位までに限定せず、副原料、添加物を含む食品のすべてを表示対象にすべきだと考えるものですが、その点についてお伺いします。
  148. 福島啓史郎

    ○福島政府参考人 先生、今御質問の義務表示の対象食品でございますが、これにつきましては、科学的または技術的な観点から、表示の合理性なり信頼性あるいは実行可能性が確保されることが基本であるというふうに考えております。  先ほど先生が言われましたように、今回の遺伝子組み換え食品に対する表示につきましては、遺伝子組み換え農産物を原料としているものであって、その加工工程後も組み換えられたDNAやそれによって生じたたんぱく質が存在するものは、義務表示とする。組み換えられたDNAやそれによって生じたたんぱく質が、加工工程におきまして除去、分解されまして食品中に存在しないものにつきましては、義務表示の必要はないというふうにしているわけでございます。  これは、冒頭申し上げましたように、組み換えられたDNAやたんぱく質が存在しない食品につきましては、科学的に差がないことになるわけでございまして、食品の性質に違いがある場合には消費者への情報提供として表示をするという、表示の原則論からいっても合理的な取り扱いだというふうに考えております。また、こうした表示対象品目につきましては、毎年見直しをいたしまして、新しい遺伝子組み換え食品なり、あるいは新しい知見に基づきまして適宜追加することとしているわけでございます。  また、もう一つの御質問でございますが、副原材料の表示の問題でございます。副原材料の原材料の表示をどこまで行うかということも問題になるわけでございますが、これにつきましては、主な原材料に限定するというのがコーデックスを初め国際的な取り扱いであります。したがいまして、これに倣うことが適当と食品表示問題懇談会でも取りまとめられたところでございます。このことを踏まえまして、義務表示といたしましては、重量に占める割合が原材料の上位三位までのもので、かつその五%以上のものとしたところでございます。
  149. 知久馬二三子

    ○知久馬委員 確かに、大変難しい問題だと思いますけれども、消費者自身が目で見て確かめて、安全なものを求めるということについては、やはり表示をすべきだと思うのでございます。  農水省は、昨年十一月の二十九日に、大豆やトウモロコシを主原料とする食品二十四項目について、遺伝子組み換え食品の表示基準、日本農林規格ですか、JAS法の品質表示基準案を公表されています。そこでも大きな問題が残っています。遺伝子組み換え不分別、遺伝子組み換えなどの義務表示の方はいいのですが、生産、流通が分別管理されている場合で、遺伝子組み換えでない農産物を原料とする任意表示の場合です。  ここに、農林水産省委託事業ですか、アメリカ及びカナダ産のバルク輸送非遺伝子組み換え材料、このような流通マニュアルがございますけれども、この中で、「意図せざる混入」として分別生産流通管理をしても、バルク輸送の食品用大豆で最大五%は避けられない、トウモロコシについては「現時点では混入率を目安とした取引は困難です。」と述べられています。  遺伝子組み換え原料は使用していませんと表示されていれば、多くの消費者は混入率はゼロだと解釈します。混入率の上限を設定しないと、不当表示の告発もふえ、混乱を招きかねないと思うのですが、確かに輸入品が大半を占めている大豆のうち、分別されているのは約四%であるという厳しい現状については、私も理解しているつもりでございます。農水省も、実施可能な現実的方法を考えておられるということもわかります。  そこで、お伺いしたいのですけれども、生産、流通の分別管理でせっかく表示するのですから、EU、欧州連合が発表している混入率の上限を一%に設定する中期的な案を検討されてはどうでしょうか。その点について。
  150. 福島啓史郎

    ○福島政府参考人 本年一月に分別生産流通管理マニュアルを作成いたしたところでございます。このマニュアルでは、農家での種子や収穫の状況、それから農機具のクリーニングの状況なり、あるいは輸出国でのカントリーエレベーターなりリバーエレベーターのクリーニングの状況日本への船への船積み状況なり船倉のクリーニング状況日本の港での搬出状況、あるいは国内での輸送車両や選別器具等のクリーニング状況……(知久馬委員「わかりますので、簡単に」と呼ぶ)そういう厳密なチェックを行いましていろいろやっておるわけでございます。  現在、そうした厳密な分別生産流通管理を行っても、最大五%程度は混入する可能性は否定できないわけでございますので、大豆の場合、混入率五%以下を目安とした取引が可能としたわけでございます。  したがって、この水準は、我が国で消費されます大豆の現実の取引実態を十分踏まえました現実的かつ対応可能なものというふうに考えております。  EUの場合は、確かに一%ということを決めておりますが、その表示に当たって、分別生産流通管理の手法によるかどうかは不明でございますし、また、混入率を定量的に把握する手法も示されていないということでございますので、今後どうやって実施していくのか、対応を見守ってまいりたいというふうに考えております。
  151. 知久馬二三子

    ○知久馬委員 済みません、急いで大変申しわけないです。消費者団体の方では〇・五%ぐらいの基準にというような話も出ています。  そこで、次のお尋ねなんですけれども、例えば遺伝子組み換えでないと表示された食品に、五%を超えて多量に遺伝子組み換えの原料が混入していることが判明した場合、農水省はどのような指導をされますか。それからまた、製造業者の公表や制裁などをどのようにされるか、その辺のことについてひとつお伺いします。
  152. 福島啓史郎

    ○福島政府参考人 先ほど申し上げましたように、大豆の場合、混入率の五%以下を目安とした取引が可能としているわけでございます。したがって、このマニュアルに従って分別生産流通管理が適切に行われておれば、遺伝子組み換え原材料が五%を超えて混入することは想定できないというふうに考えております。  したがいまして、仮に五%を超えたような場合には、そもそも適切な分別生産流通管理が行われていなかったというおそれがあるわけでございます。このため、必要に応じまして生産、流通の過程をさかのぼっていく、それで、証明書なり伝票あるいは分別流通の実際の取り扱いをチェックいたしまして、この分別生産流通管理が適切に実施されているか否かを確認した上で、その結果をもちまして、もし適切に行われていなければ、指示するなり公表するなり、改善措置命令をするなりしまして、適切な対応をしてまいりたいというふうに考えております。
  153. 知久馬二三子

    ○知久馬委員 ありがとうございました。しっかりとした指導とか制裁を加えるよう要望しておきたいと思います。  そこで、農水省は一九九九年から二〇〇五年までの六年間で、遺伝子組み換え稲などを実用化するために二十一世紀グリーンフロンティア研究に着手されています。本年度、約四十一億円、前年度より十四億円増しておりますけれども、予算がつけられております。  この研究は、欧米の多国籍企業に組み換え技術の特許をほとんど握られて、その実用化も出おくれているため、日本が唯一進んでいるイネゲノムの解析を加速させ、特に稲での遺伝子組み換えの実用化を重点的に進めようとしているものであります。耐病、害虫抵抗性、ウイルス抵抗性、生産性や食味向上などの新品種開発とうたっていますが、実際には主食である米にまで遺伝子組み換えを行い、除草剤耐性コシヒカリや病害虫抵抗性あきたこまちといった稲をつくることではないでしょうか。  そこで、お尋ねいたします。農水省は、この二十一世紀グリーンフロンティア研究を見直されるお考えはないのでしょうか。
  154. 三輪睿太郎

    ○三輪政府参考人 二十一世紀グリーンフロンティア研究は、内容としましては、先生お話のように、ゲノム研究とか組み換え技術の実用化に向けた技術開発の促進内容としておりますが、同時に、この技術開発の前提としての安全性確保の研究も大変重視しております。具体的には、新しく実用化が見込まれる組み換え体の安全性評価手法の確立、あるいは組み換え農作物由来食品からのDNAの検出技術の高度化とか消費者の疑問や要請にこたえるための研究等を実施することにしております。  このプロジェクトは二十一世紀の新しい農業技術を切り開くものでありまして、国際的な研究開発競争の中で我が国が世界に先駆けて強力に推進してまいりたいと思っております。
  155. 知久馬二三子

    ○知久馬委員 私は、まず、遺伝子組み換え技術の開発研究に比べて本当に立ちおくれているのが、遺伝子組み換えの食品の安全性の研究だと思うのです。そして、環境や生態系に及ぼす研究を重点的に進めるべきだと考えています。  最後になりますけれども、アメリカ農務省やモンサント社などのバイオ企業は、日本の米の関税化移行に伴い、開発中の遺伝子組み換え稲の売り込みをねらっていると報じられています。私は、この外国からの遺伝子組み換えの米の輸入はすべきでないと考えるのでございます。そこで、最後にもう一度、遺伝子組み換え技術の環境への安全確保について、大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
  156. 玉沢徳一郎

    ○玉沢国務大臣 我が国における組み換え農作物の環境に対する安全性につきましては、OECDの専門家会合における基本的な考えをもとに、科学的な知見に基づき、慎重に審査しておるところであります。今後とも、科学的知見に基づき、的確な安全性評価を行い、環境に対する安全性確保に万全を期してまいりたいと考えております。
  157. 知久馬二三子

    ○知久馬委員 ありがとうございました。  今私たちの食卓には、安全性に疑いのある除草剤耐性、殺虫毒素生成など二十二品目もの遺伝子組み換え食品が表示もされずに出ております。その混入率は少なくとも三割に及んでいます。この上、遺伝子操作米まで国内で作付され、毎日食べさせられるようになったら、私たちの食の安全や健康、さらに環境は本当にどうなるのか、多くの国民は不安を持っております。ぜひとも安全性研究に重点を置いていただくよう最後に要望して、私の質問を終わらせていただきます。  大変ありがとうございました。
  158. 松岡利勝

    松岡委員長 これにて両案に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  159. 松岡利勝

    松岡委員長 ただいま議題となっております両案中、まず、青年等就農促進のための資金の貸付け等に関する特別措置法及び農業信用保証保険法の一部を改正する法律案について議事を進めます。  この際、本案に対し、中林よし子君外一名から修正案が提出されております。  提出者から趣旨説明を求めます。中林よし子君。     —————————————  青年等就農促進のための資金の貸付け等に関する特別措置法及び農業信用保証保険法の一部を改正する法律案に対する修正案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  160. 中林よし子

    ○中林委員 私は、日本共産党を代表して、青年等就農促進のための資金の貸付け等に関する特別措置法に対する修正案の提案理由説明します。  九九年現在の農業就業人口は三百八十四万人と一九六〇年の四分の一にまで減少し、このうち六十五歳以上の者が半数を占めるなど、農業労働力の激減とともに、高齢化も加速度的に進行しています。この状況は、八〇年代後半以降の新規就農青年の減少から、今後一層激しく進むと見られ、放置するならば日本農業の存立、国民の食料の安定的確保を脅かすことになりかねません。農業生産を担う労働力の再生産を図る上で、若い新規就農者確保は不可欠であり、本格的な対策は焦眉の課題となっています。  この点で、本法案による制度の拡充は評価できるものの、新規就農者対策を大きく前進させるためにはさらなる施策が必要であると考えます。  日本共産党は、本法を補うために、多くの自治体で独自に就農支援資金の償還免除制度新規就農者に対する助成制度を設けている実態を踏まえ、国の責任で、研修終了後三年間継続して就農した者については、研修資金就農準備資金の償還を免除する制度を設けるよう修正が必要であると考えます。本修正案に必要な予算額は三十八億円となります。  米を初めとする農産物価格の下落等の中で、新規就農者農業経営を成り立たせることが非常に厳しいことは明白です。その上、借入金の償還は新規就農者の安定的な経営維持の障害になりかねません。新規就農者の営農活動が定着する支えをつくることは、新規就農者の拡大につながるものであります。  委員各位の御賛同をお願いいたしまして、修正案の提案理由説明を終わります。
  161. 松岡利勝

    松岡委員長 これにて修正案の趣旨説明は終わりました。  この際、本修正案について、国会法第五十七条の三の規定により、内閣の意見を聴取いたします。農林水産大臣玉沢徳一郎君。
  162. 玉沢徳一郎

    ○玉沢国務大臣 ただいまの修正案につきましては、政府としましては反対であります。     —————————————
  163. 松岡利勝

    松岡委員長 これより原案及びこれに対する修正案を一括して討論に付するのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  まず、中林よし子君外一名提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  164. 松岡利勝

    松岡委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。  次に、原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  165. 松岡利勝

    松岡委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     —————————————
  166. 松岡利勝

    松岡委員長 この際、本案に対し、松下忠洋君外五名から、自由民主党、民主党、公明党・改革クラブ、自由党、日本共産党及び社会民主党・市民連合の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨説明を聴取いたします。宮地正介君。
  167. 宮地正介

    ○宮地委員 私は、自由民主党、民主党、公明党・改革クラブ、自由党、日本共産党及び社会民主党・市民連合を代表して、青年等就農促進のための資金の貸付け等に関する特別措置法及び農業信用保証保険法の一部を改正する法律案に対する附帯決議案の趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     青年等就農促進のための資金の貸付け等に関する特別措置法及び農業信用保証保険法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   我が国農業は、農業者が一貫して減少していることに加え、主たる担い手である「昭和一桁世代」のリタイアの時期が迫るなど憂慮すべき事態にある。こうした状況の中で、食料自給率の向上を始めとした我が国農業の再生・確立を図っていくためには、国民の農業に対する深い理解のもとに、次代を担う経営感覚に優れた農業者を幅広く育成確保することが緊急の課題となっている。   よって政府は、本法の施行に当たり、左記事項の実現に努め、新規就農者確保に万全を期すべきである。       記  一 新規就農者確保を図るためには、地域の他産業従事者と遜色のない生涯所得が得られるなど魅力ある農業経営の確立が不可欠であり、これに向けた地域の実情に応じた各作目ごとの経営展望を明確にするとともに、その実現のための施策の具体化に努めること。  二 新たに拡充される就農支援資金の貸付け制度が円滑に機能するよう、農協等金融機関による貸付け体制の整備等について十分指導するとともに、都道府県農業信用基金協会保証基盤の整備に努めること。  三 新規就農者確保に係る各種施策の総合的・効果的実施を図るとともに、就農後の新規就農者の定着と自立を推進するための一貫したアフターケアーに積極的に取組むこと。  四 都道府県市町村青年農業者等育成センター、新規就農ガイドセンターをはじめ関係機関・団体が有機的に連携し、新規就農者の多様なニーズに応じた弾力的な支援活動を行うよう指導すること。   右決議する。  以上の附帯決議案の趣旨につきましては、質疑の過程等を通じて委員各位の御承知のところと思いますので、説明は省略させていただきます。  何とぞ全員の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。
  168. 松岡利勝

    松岡委員長 これにて趣旨説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  169. 松岡利勝

    松岡委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。  この際、ただいまの附帯決議につきまして、農林水産大臣から発言を求められておりますので、これを許します。農林水産大臣玉沢徳一郎君。
  170. 玉沢徳一郎

    ○玉沢国務大臣 ただいまは法案を可決いただきありがとうございました。  附帯決議につきましては、その趣旨を尊重し、今後最善の努力をいたしてまいります。     —————————————
  171. 松岡利勝

    松岡委員長 次に、農業に関する技術研究開発促進に関する特別措置法を廃止する法律案について議事を進めます。  これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  172. 松岡利勝

    松岡委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました両法律案委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  173. 松岡利勝

    松岡委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  174. 松岡利勝

    松岡委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時四十四分散会