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関澤参考人 月尾先生、
村井先生、それぞれのお
立場で二十分強お話になりました。ダブるところが随分あるなと聞いていて思いましたので、できるだけそういうところを避けまして、
企業の
活動に対しての影響というようなことからお話をさせていただきたいと思います。
今御紹介がいろいろありましたけれども、
アメリカにせよ
日本にせよ、差はあるにしても、非常に今
インターネットあるいはパソコン、そういったものの
普及が急速に進んでおります。その量が大変にふえてきている、
普及が進んでいるということが質の転換をもたらしている、あるいは要求しているということが言えると思います。
先ほどもいろいろ
月尾先生がおっしゃいましたけれども、
個人にしても
企業にしても、あるいは
社会、国家全部、この新しい
情報の流れ、発信、その
構造について、自分
たちの動きあるいはコーポーレートの動き、
仕組み、組織、そういったものを変えないと生きていけないという
時代に入っているというふうに思います。
そういう
意味では、ここ百数十年見まして、
日本で明治維新がありました。敗戦がありました。非常に大きな、人の命も多数失われたような
革命でありました。今IT
革命ということが言われておりますが、IT
革命は、人の命はなくならないんですが、しかし実質はそれに相当するぐらい大きな、
個人、
社会、
企業、国家の基本原則を変えるというような影響があるというふうに思います。
では、
企業にどういう影響があるかということですが、これは
月尾先生がおっしゃった、
距離が物すごく縮まる、同時に時間も大変速くなるということで、そういった
環境で、今までの
企業の中のルールあるいは
企業間のルール、
企業と消費者の間のルールはすっかり変わってくるということが言えると思います。
Eメールなんというのは
一つの代表的な例ですが、こういったことによって何が起こるかというと、
企業のスピード、それからグローバル化、ボーダーレス、こういうことがどうしても起こるわけであります。先ほども紹介がありましたが、同じ
情報が、同じ
新聞が、もちろん
ネットワーク上の
新聞ですが、
世界じゅうで同時に見られる。これは
企業の経営に影響を与えずにおかないわけであります。
それから、二番目に
企業にとって大きな影響を与えるというのは、いわゆる分散型ということでありまして、今、
富士通の中でサーバーと言われる
コンピューターが約七百あります。それは、事業部門の開発を担当しているところ、製造部門の製造を担当しているところ、あるいは人事、経理の部門、あるいは各所に展開している、これは
世界じゅうでありますけれども、営業を担当しているところ、そういったところに、サーバーというと
言葉はかたいですが、要するにホームページを出しているところというふうに御理解いただければ大体間違いないと思いますが、七百あるわけであります。社長から新入社員まで、ほとんどの
情報について平等にそれを手に入れることができる。これは
企業にとって物すごく大きなインパクトであります。従来は紙で上からだんだんおりてきて、その紙を持っているがゆえに権威を維持していたというようなマネジャーは権威失墜するわけであります。要らない。
先ほど商取引の上でバイパス現象ということが説明されましたが、同じことが
企業でも起こるわけで、
情報が発生したところでホームページに
情報を載せると、見る意思があれば全部が見られるわけです。
日本は一番おくれている、特に経営者は一番おくれている、一〇%がせいぜいだ、私は一〇%に入っているつもりなんですけれども。その辺が物すごい改革を
企業の中にもたらすだろう。
いわゆる、
言葉でフラット化と言われておりますが、フラット化というのは目で見られるというか、あるいは
新聞に発表される組織図がフラットになるというだけじゃなくて、
情報そのものが一番必要な人にすぐ届く。例えば、とんでもなく離れたところの営業のサクセスストーリーの
情報が、昔だったら、ずっと上へ報告が上がっていって
東京からずっとまた紙になって下へ下がる、とんでもなく離れた一営業がその
情報を使おうと思ったころには商談は終わっているというような状況だったわけですが、もしそのサクセスストーリーが直ちに
インターネット上に登録されれば、はるかに離れた新人に近い営業マンは超ベテランに近いプロポーザルをお客様に出せる、そういうような
構造で、先ほどの取引上のバイパスとは違いますが、
会社の中の組織すべてバイパスできるわけです。これは、時間と
距離の克服という
意味、スピードを上げるという
意味では非常に大きな改革をもたらすというふうに思います。
さらにそれが広がって、
企業と
企業、
企業と消費者というふうないろいろなそれが起きてくるわけでありますが、コンビニに銀行
端末が出てくる、ATMが出てくるというようなものは
一つの例であります。今までは、お金をおろすのは銀行へ行く、映画の入場券、音楽会の切符を買うのはそういうところへ行く、それが全部、コンビニにあしたの朝の、あるいは今晩のおかずを買いに行ったついでに買えてしまう、そういうことができるわけです。
それから三つ目は、
コンピューターネットワークというのは、これもさっきお話がありましたけれども、一対一とか、ポイント・ツー・ポイントではなくて、わっとみんなで見られるわけですから、これまでとは全く違っている。例えば、福岡のあるお店と札幌のあるお店とどっちが安いかということは、
東京にいてわかるわけです。そんなことは今まであり得なかったわけで、そういった
意味で、非常に
距離の差がなくなってくる。
ただ、いかに付加価値がつけられるか、そうなったら、では値段のたたき合いかということになりますが、先ほど
月尾先生がおっしゃった、もうこれからは
中小企業、大
企業、
零細企業の差がなくなるというお話がございました。これは、ちょっとつけ加えたいのは、
特徴を持った
中小企業、
特徴を持った
零細企業は大
企業に負けない、そういうことだと思います。
例えば、確かに
中小企業、
零細企業でも
インターネットにお店を出せば
世界じゅうから見ることはできます。その際、仮に温泉まんじゅうを出して
世界から注文が来るでしょうか。
ところが、私が知っている
一つの例、これは中部地方のある
中小企業の例ですが、蛇腹の
技術をずっと長年持っております。カメラからスタートして、いろいろな蛇腹の
技術を持っておられたのですが、今、マイクロマシン用のこんな小さい蛇腹という
技術を確立された。そういうものを
インターネットに出すと、
世界じゅうからわっと来るわけです。それは、
中小企業一般が大
企業一般と対等にというのではなくて、物すごく
特徴のある
技術を持っている、
商品を持っている、これが非常に大事で、これはさっきの、
構造を変える、精神基盤とおっしゃいましたが、いろいろな
意味でこういったものを変えるためには、みんな仲よく生きていこうねという、あるレベルにみんな合わせるということはもはや無理だ、
特徴のあるところはもう
世界じゅうに伸びられる、こういうことだと思います。
同じような例。ちょっと時間がないので省きますが、福井県の繊維業者のある
会社が、繊維業はもう非常に斜陽だと言われていますが、
インターネットを使って、
世界じゅうで私しか持っていない洋服というのを、CADを使って、CADというのは
コンピューター・エーデッド・デザインですが、お客様と対応したデザイナーが設計して、
ネットワークを通じて、ぱっと完全自動化した。印刷機は、そこの
特徴なんですが、インクジェットプリンターというものの原理でさっと印刷する、注文してから二日ぐらいで届くわけです。それは、原理的には
世界じゅうに出せるわけです。ニューヨークでもパリでも出せるわけです。
いわゆる著作権法のあれを使って徹底的にそういうことをやりまして、
アメリカの大きなところと提携して、これから
世界に伸びよう、そういうことをやっておられるところは、石川県、福井県の繊維業はこうだ、だから、一律に何とか補助金を出してやらなきゃということじゃない、ちゃんとそういう知恵で見事に
インターネットを使ってやっておられる、こういうことが必要だということだと思います。
時間がありませんのでちょっと飛ばしますけれども、IT投資ということについて、添付のグラフがございますでしょうか、二枚目の上のIT投資比率。全体の設備投資の中でITの占める比率というのをちょっと見ていただきたいのですが、
アメリカは右肩上がり、今はやらない
言葉ですけれども、右肩上がり一本やりで上がっております。
日本は、一九八七年あたりから景気がぐっと落ちてきて、すべての経費を節減せよというので、IT投資も節減された。これは非常に大きな差になって今出てきていると思います。九二年あたりからじりじりと上がってきましたけれども、九七年から八年になって
アメリカは非常にふえております。やはりIT投資というものが非常に大事だということをこのカーブは
一つ示しておると思います。
それから、インフラのお話。先ほど物理基盤、これは既にお話がありましたので、パスいたしまして、雇用の問題であります。
雇用の問題というのは、何かIT
革命ということで
情報通信産業で大量に雇用が生まれるというムードがどうもあるのですが、これも添付の書類をごらんいただきたいと思いますが、ホワイトカラーとブルーカラーというのが
アメリカでどうなっているか。IT投資でホワイトカラーは物すごく大量に職を失っているのです、一九九四年。その辺から、先ほど
月尾先生がおっしゃった、新しい小さなスタートアップ
会社がどんどんできてきて、それがうまく回って雇用がふえてきたわけですね。ホワイトカラーというのは当然一遍下がる。
つまり、経理、総務、人事あるいは秘書というようなものがほとんど要らなくなってくる。上の人が、自分でパソコンを使い、
インターネットを使い、Eメールで、どんどん秘書が要らなくなってくるという前提なんです。やっておいてよという
日本型では人は減らないのですけれども、どんどん減ってきて、失業があって、その人
たちがもう一度自分の値打ちを磨いて、再就職してふえているわけです。
日本の場合に、再教育、
社会教育というのが物すごく大事だ。
村井先生がおっしゃったように、もちろん学校の教育も非常に大事ですが、
社会人の再教育ということが物すごく大事だというふうに思います。IT産業で雇用がふえるのではなくて、ITを使って、IT産業以外で雇用がふえる方がはるかに大きいということが言えると思います。
最後に、政府への期待ということでお話をしたいと思います。
一つは、いろいろなルール。これは、政府が決めるルールもあれば、業界みずから自分
たちを縛っているルールもあるわけです。そういったものが、さっき申し上げたような、やればできる、つまり、瞬時に向こうへ発注できる、瞬時にどこかのデータをとれるというような
環境下で、そのルールは妥当だろうか、これを全面的に見直さなければいけないだろう。いろいろ事件のお話も出ましたけれども、
情報を盗むことは、今刑法では罪にならないのです。紙に印刷した
情報を盗むことは刑法で窃盗罪になる。こういう紙にしないで幾らでも
情報を見ることができるわけですから、その辺はやはり新しい
環境に合わせて法律を変えなければいけない。
それから、ぜひ政府の
情報化をもっと進めていただきたい。これはちゃんとやっているよというお話があると思います。ところが、例えば
情報サービスというものをやります、ワンストップ行政
情報サービス。それが、差しさわりがあるかもしれませんが、ワンストップ行政じゃなくて、ワンストップX省
情報サービス。
つまり、どういうことかといいますと、今度私は
東京から神奈川に土地を買って家を建てて引っ越した、どういう手続をすればいいのということを
ネットワークを通じて問い合わせると、さっきのインタラクティブな、あなたは、神奈川県のどこへ引っ越すのですか、何市ですか、何町ですか、家族は何人ですか、うちはどのくらいですか、そういうのを全部答えていくと、ではどこそこへ行ってこういう手続をしてくださいとか、行かないでもいいですからここに
情報を入れてください、全部終わりますからと。
今どうなっているかというと、建築確認申請ですとか、それから法務省傘下の土地の登記所へ行くとか、区役所へ行くとか、車の番号を変えたいといったら運輸省傘下のそういうところへ行かないといけない、税務署へ行かないといけない。それはワンストップ
サービスでも何でもない。
今申し上げたような本当のワンストップ
サービスをするためのハードウエア、ソフトウエアというのは可能だと思います。一部開発が必要だと思いますが、そういうことに金を使って、本当の
意味でワンストップ
サービスをやっていただきたい。これは、政府がまだ立ち上がっていないこの新しい
世界の最大のユーザーになられるということが一番大事なことで、政府がユーザーとしていろいろな
日本の
社会を引っ張るという、そういうことをやっていただきたい。
三点目が研究開発。これはあちこちで言われておりますが、さっきの
村井さんがおっしゃったセキュリティーの開発なんか、これもやはりぜひ基幹になる部分はしっかり政府として施策を打っていただきたい。
四番目、人材です。人材の育成というのは、学校だけじゃなくて、つまり大学を出て新人として
世の中へ出る人だけじゃなくて、今までやってきた仕事がなくなってしまう人がたくさんいるわけです。その人
たちをもう一遍教育して、この全く新しいIT
革命の中で新しい仕事につけるような教育をしないと、これはもう、年金問題もありますし、いろいろなことがあって非常に問題になる。
年寄りの話が出ました。ディバイドという
言葉じゃなかったですけれども、要するに、年をとっている人、人種、収入、学歴。
アメリカの場合には貧富の差が非常に激しい。それが最もあると思いますが、
日本の場合には、江戸
時代からの読み書きそろばん、平均した非常に優秀な労働力があったから、ここ五十年すばらしい
生産技術ができ上がってきた。本当に均一の労働力があった。そういう背景のある国なんですから、
情報リテラシーというものを徹底的にたたき込めば、全体としての、そういう
情報技術を使いこなしての付加価値をつけるという競争では決して負けないだろうと思います。
それをどうやってやるか。精神基盤まで書いてありますから、キーボードを見ただけでアレルギー、じんま疹というのをどうやって治すかということですが、これはデジタルディバイドということについていえば、やる気になれば、
日本は読み書きそろばんという非常にすぐれた全体のレベルを上げるという教育の例を持っているわけですから、絶対いくというふうに思います。
最後に国際貢献。これはやはりアジア、これから物すごくGNPの比率が重くなってくるのはアジアですが、いろいろなアジアの指導者
たちと会って話をすると、物とか、例えば鉄道を敷く、何をする、そういうことよりも、人材の教育、指導者、こういったITのプロジェクトを指導できる人間をどうやって教育したらいいか。
日本にはいろいろな資格がありますし、資格試験があります。それをどうやっているのか、ぜひそれを教えてもらいたい、あるいは先生を派遣してもらいたいという切実な要求があるわけですね。
私どももアジアで随分ソフト
会社なんか持っていますけれども、そこに行って実際に仕事をやっている連中に聞くと、非常にそういう
意味で、プログラムを書くレベルの人
たちはたくさんいるけれども、本当にリーダーになれる人間はいない、しかも、そういう資格
制度がないから、この人はどのくらい能力を持っているかというのはわからない、雇ってみてだめだったら首切るしかない。
こういう人材に関する育成ノウハウというのは、
日本はやはりあると思います。
アメリカはどっちかといえば勝手たるべしというところがあるんですが、
日本は、読み書きそろばん文化、寺子屋文化がありますから、これは絶対に人材で国際貢献できる。人材及び人材教育でですね。これがじりじりときいてくる。
日本という国はよくやってくれたという
意味で、国際貢献の面でじりじりときいてくるのではないかというふうに思っております。
ちょっと間を飛ばし、時間を超えましたけれども、一応以上で話を終わります。(拍手)