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2000-03-14 第147回国会 衆議院 逓信委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十二年三月十四日(火曜日)     午前九時三十一分開議  出席委員    委員長 前田 武志君    理事 浅野 勝人君 理事 荒井 広幸君    理事 遠藤 利明君 理事 佐藤 剛男君    理事 伊藤 忠治君 理事 中沢 健次君    理事 福留 泰蔵君 理事 西田  猛君       石崎  岳君    今村 雅弘君       江渡 聡徳君    大石 秀政君       小坂 憲次君    佐藤  勉君       坂井 隆憲君    園田 修光君       虎島 和夫君    野田 聖子君       山口 俊一君   吉田六左エ門君       岩田 順介君    小沢 鋭仁君       中田  宏君    富田 茂之君       前田  正君    達増 拓也君       矢島 恒夫君    横光 克彦君     …………………………………    郵政政務次官       小坂 憲次君    郵政政務次官       前田  正君    参考人    (東京大学大学院領域創    世科学研究科教授)    月尾 嘉男君    参考人    (慶應義塾大学環境情報学    部教授)         村井  純君    参考人    (富士通株式会社取締役会    長)           関澤  義君    逓信委員会専門員     大久保 晄君     ————————————— 委員の異動 三月十四日  辞任         補欠選任   野中 広務君     野田 聖子君   中井  洽君     達増 拓也君 同日  辞任         補欠選任   野田 聖子君     野中 広務君   達増 拓也君     中井  洽君     ————————————— 三月十日  放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件(内閣提出承認第一号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  逓信行政に関する件(高度情報化社会展望)     午前九時三十一分開議      ————◇—————
  2. 前田武志

    前田委員長 これより会議を開きます。  逓信行政に関する件、特に高度情報化社会展望について調査を進めます。  本日は、参考人として東京大学大学院領域創世科学研究科教授月尾嘉男君、慶應義塾大学環境情報学部教授村井純君、富士通株式会社取締役会長関澤義君、以上三名の方々に御出席をいただいております。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただき、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  次に、議事の順序について申し上げます。  まず月尾参考人村井参考人関澤参考人の順に、お一人二十分程度意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対しお答えをいただきたいと存じます。  なお、念のため申し上げますが、参考人委員長の許可を得て御発言をお願いいたします。また、委員に対しましては質疑ができないことになっておりますので、あらかじめ御了承願います。なお、御発言は着席のままで結構でございます。  それでは、月尾参考人にお願いいたします。
  3. 月尾嘉男

    月尾参考人 おはようございます。  本日、このような機会をいただきまして、ありがとうございました。お手元に配付されております私の意見概要に沿って御説明させていただきたいと思います。  まず、今高度情報通信社会というものをもたらしている一番大きな要因というのは、当然でございますが、情報処理技術情報通信技術というものが革新的に変化しているということでありまして、その変化内容を三つにわたって御説明させていただきます。  第一点は、コンピューターに代表されるような情報処理技術と、さまざまな通信ネットワークに代表されるような情報通信技術というものが一体となって利用されるというようなことになったということが大変大きな変化だと思います。  以前、オフィスオートメーションとかファクトリーオートメーションが大変騒がれた時代がありました。その時代にはコンピューターというのはそれぞれ独立で使われておりましたけれども、インターネットのようなコンピューター同士をつなぐ通信ネットワークが出てきたことによりまして、現在では世界で数億というコンピューターがつながれていると言われておりますが、そういう変化が出てまいりました。  ちなみに、ある統計によりますと、アメリカでは既に企業が使っているコンピューターの九〇%以上、日本でも五〇%以上が何らかのネットワークに接続されていると言われておりますが、それが今大変大きな変化をもたらしている。  それから二番目には、これまで電気通信技術には二種類大きくありまして、放送のような一方向意見を伝える、情報を伝えるものと、電話のような双方向意見を伝えるものがありました。ところが、現在出現しております新しい情報通信手段はどちらにも使えるというものでありまして、例えばインターネットを使って文字とか音声放送をするということもできますし、一方、従来放送技術であったものを使って個別に情報を伝達することもできるということになりまして、完全に一方向双方向というものが融合していくということが非常に大きな別の変化であります。  それからもう一点は、これまで、音声で伝える場合には主に電話、文章を伝える場合には主にファクシミリ、画像を伝える場合には例えばテレビカメラテレビ受像機というような別々の手段を使っておりましたが、今、デジタル通信が非常に普及しましたことによって、一つ端末と一種類ネットワークであらゆる形態の情報を伝えるというようなことが可能になりました。多くの皆様が使っておられるかと思いますが、ポケットに入るような小さな携帯端末文字やりとりもできますし、画像やりとりもできるというようなことが現実に起こっております。  このような技術というものが次々と社会普及することによって今、高度情報通信社会というものをもたらしていると思いますが、実はそれだけではなくて、その技術の持っている非常に大きな経済とか社会に及ぼす影響力というものが社会を変えているというふうに思います。その詳細につきましては、お手元に別途配付させていただきました三ページほどの私の論文がございますが、それをお時間があるときにごらんいただければ大変光栄でございますけれども、簡単にその特徴を御説明させていただきたいと思います。  一つは、この社会の中から距離というものが余り意味を持たない状態が出現するということであります。  通信というのはもともと距離を克服する技術でありましたけれども、従来の通信手段というものは、距離に応じて料金が高くなるという性質を持っておりました。電話という手段を見てみますと、百キロメーターまでは距離によって料金が変わっていく。国際通信も、一般には国内通信よりも高いという状態になっておりましたが、今あらわれつつあるさまざまな通信手段のほとんどが、世界均一料金というものがふえております。例えば、イリジウムのような携帯電話であるとかインターネットという通信手段は、どこからどこへ通信するという場合でも料金は一定ということであります。  これによって大変大きな変化が出現しておりまして、例えば、今コールセンターというものが沖縄へ次々と移動するということが起こっております。代表的なものは一〇四番で電話番号案内してくれるサービスでありますが、極端に申し上げますと、皆様銀座のクラブの電話番号を一〇四で問い合わせされますと、東京というところへ一度も行ったことのない、また、銀座などは見たこともないという方がコンピューターだけを使って電話番号案内をしてくれるということが現実に起こっておるわけでありますが、それは、料金というものが距離に影響しないから、日本じゅう案内というものを沖縄でするということが可能になったわけであります。  実は、これはさらに重要な問題を含んでおりまして、沖縄にとどまらず、オーストラリアのようなところまで日本コールセンターが移るというようなことも起こっております。つまり、世界規模で大変大きな競争が起こるということが出現しつつあります。  それから二番目は、規模というものがこれまでの社会では非常に重要でありました。  生活する環境でいいますと、小さな村落よりは地方都市の方がより便益が得られる。地方都市よりは東京、大阪のような大都市がより便益が得られるということでありました。それから、企業活動にとってみましても、零細企業よりは中小企業の方がよりビジネスが有利であり、それよりは大企業巨大企業世界規模企業の方がより力を持つというような仕組み経済社会が構築されておりました。  ところが、今どのような場所に我々が生活しておりましても、最低限通信手段は必要でありますが、それさえあればかなりの生活便益というものが全く対等に得られるということになりました。  代表的なものは新聞などを通じて情報を得るということだと思いますけれども、地方都市でありますと、全国紙の夕刊というものが配達されないとか、それから一般に早版と言われる、早くに記事を締め切ったものしか情報が配達されないという仕組みでありますけれども、現在、世界では五千余り新聞が、世界じゅうどのような場所におられる方にも全く対等に情報を提供するということを行っております。しかも、二十四時間絶えず頻繁に記事内容を変えておりますので、今のように一日二回しか記事を配達しないという新聞よりもはるかに便利なサービスをどのような場所にも提供してくれるということが始まっております。  現実ビジネス分野でも大変大きな変化が起こっておりまして、非常に小さな企業が大変大きなビジネスをするということが可能になっております。  例えば、日本での一例を申し上げますと、インターネットを経由した通信販売で大変今有名になっております楽天市場という名前のサイトがございます。ここには、四つの百貨店が参加し、千店以上の専門店が参加しております。売り上げ、今、月に十二億円ということでありまして、年間百億近い売り上げを上げておるわけでありますが、社員はわずか二十名強という程度であります。東京の郊外の小さなオフィスビルワンフロアビジネスをしておりますが、そのようなことが現実に可能になっておる。  もっと大きな逆転も起こっておりまして、これまで世界で最大の書店というのは、バーンズ・アンド・ノーブルというアメリカ書店でありました。アメリカ全体に千店舗以上の店を持ち、従業員二万数千人、年間売り上げ三千億円程度という巨大な書店でありました。  ところが、ほんの数年前、一九九四年に出現したアマゾン・ドット・コムというインターネットだけで世界に向けて書物を販売するという会社が急速に追い上げてまいりまして、もちろん規模は、普通に従来の常識で言う規模は小さいものでありまして、書店の数はゼロ店舗、つまり、通信販売ですからどこにも書店は持っておりません。五カ所ほどの流通センターヘッドクオーターオフィスだけしかないものでありますが、従業員二千人程度で、売り上げは現在、六百億円程度であります。  確かに、三千億円と六百億円ということで、売り上げ規模は新しい書店の方が小さいわけでありますけれども、一人当たり売り上げでいいますと二倍の売り上げを達成しておりますが、もっと大きな変化は、株式時価評価総額を比較しますと、その百数十年の歴史のあるしにせの書店の十五倍の株式時価評価総額を得ているというようなことでありまして、完全な逆転が起こっているということであります。  それから三番目の特徴は、今世の中にあるさまざまな中間的な構造というものがどんどん飛ばされていくということが起こっております。  まず、物の流通分野では大変大きなことが起こっておりまして、ごく最近もさまざまなニュースで紹介されて有名になりましたが、小松左京という小説家の方が、これまで書かれた千数百点の自分の小説をすべてコンピューターに入れ、それをどの小説でも、それからどの小説のどの一章でも直ちに配達するということを始めております。そうしますと、書店はもちろんですが、その前段階の書籍の流通業者も一切要らないということが現実に起こり始めておるということでありまして、このようなことがさまざまな分野で起こってくるということになると思います。  それから四番目は、特に日本のような社会に存在しておりました年功序列というような、一般に年配の方ほど社会的に地位もあり、収入も高まるという構造も急速に崩れ始めております。今インターネットなどの新しい情報技術を使ったビジネスで成功している方は、多くは二十代から三十代、極端な場合は十代の後半で大変巨大なビジネスを運営しているという方も出現しております。一部ではインターネットバブルというような言葉も使われておりますが、突然、ある二十代の若者が数千億の株式時価評価総額を持つような企業を立ち上げるというようなことも起こっております。  それから、特にこれも日本社会に強い傾向でありましたが、男女の格差というものも今急速になくなっておりまして、ネットワークを使えば老若男女だれでも対等にビジネスに参加できるとか、生活便益を受けられるというような社会も出ております。これが恐らく今後非常に大きく社会構造を変えていくということではないかというふうに思います。  それから三番目は、別の視点から社会変化というものをちょっと御説明させていただきたいと思います。  これまで、社会の中で成功する経済活動というものは、より多くの方に大量に同一の製品とかサービスを提供するというものでありました。代表的なものは新聞ではないかと思いますが、同じ新聞を毎朝一千万部近く印刷して全国に一斉に配るというようなことが重要でありました。  ところが、今、小さな新聞社であっても世界情報を発信するというようなことが可能になり、個人でもそういうことが可能になりました。  適切な例かどうかはいろいろ意見があるかと思いますけれども、昨年、東芝の苦情処理事件というものが大きな社会的な話題になりましたが、これは、たった一人の方が発信した情報が一カ月間で六百万人の方に伝わり、最終的には八百万人の方々がその情報を得るというようなことが起こりました。従来、そういう小さな人が特定の関心のある方々情報を伝える手段というのは大変な費用を必要としておりましたが、今極めてわずかな費用でそのようなことができるということになりました。  それから二点目の大きな変化というものは、一般ビジネス社会では計画生産ということが中心でありまして、例えば、コンピューターであればこのモデルを何十万台販売するとか、自動車であればこのモデルを何万台ことしは販売するという計画を立て生産をするという仕組みでありました。ところが、今始まっている新しい動向は、注文生産によって商品生産し、提供するというものであります。  現在、世界パーソナルコンピューターを最も売っている会社はデルというアメリカ会社でありますが、世界のシェアの一五%ほどを占めている会社でありますけれども、この会社は、一切小売店では販売せず、ほとんどを通信販売で販売しておりますが、その通信販売のうち、四割のコンピューター注文生産であります。つまり、私たちがこういう性能のコンピューターを欲しいということでインターネットを通じて注文しますと、それを直ちに生産し、十日から二週間で注文した方に届けるというようなサービスを始めておるわけですが、そのような仕組みがさまざまな分野で今始まっております。  結果としてどういうことか。これまでの経済社会というものは、供給する側が力を持っている社会でありました。つまり、企業が製造しないような商品は、世の中に存在しないために私たちは入手することができませんでした。ところが、今新たに始まった社会は、需要、つまり必要とする人々の方が強い力を持つ新しい社会が出現しようとしております。  それから四番目に大きな変化は、物が流通するということが経済社会の重要なことでありまして、新聞であれば、新聞紙という紙を配達するということのために非常に大きな労力が使われておりました。ところが、新しい経済社会では、情報だけを送るということが可能になってまいりました。  インターネット通販でも、もちろん最後には物が届かないと目的は達成しないわけでありますが、従来のように、小売店の店先に膨大な商品を並べて、それを顧客が選択して買うという仕組みではなくて、写真とか文字情報とか、場合によっては動画という情報だけで私たちは必要なものを判断し、それに対して、その情報で注文すると、最後に物が届くというような仕組みになりまして、情報経済もしくは仮想経済というものが社会の中の非常に大きな動きになってくるということも起きました。  実は、これは大変な変革でございまして、今からおよそ九十数年前にヘンリーフォード一世フォードT型という自動車を発売しました。一九〇七年のことであります。そのヘンリーフォード一世がやった革命というのは、従来個人が一台一台製造会社に注文して供給されていた自動車というものを、あらかじめフォードという会社年間数十万台生産して、それをアメリカじゅうに販売するという仕組みをつくったということであります。  これは何が巨大な変化かといいますと、お手元の資料3の(1)、(2)、(3)のところをすべて右側から左側に移したという変化を行ったわけです。つまり、個人が注文して、その顧客注文どおりに物をつくるという考え方から、アメリカじゅうの大衆にあらかじめ計画生産したものを一気に販売するという仕組みに変えました。  これを実は社会では産業革命というふうに言っておるわけでありますが、今この情報通信社会というものが達成しようとしていることは、ちょうどその逆、フォードが百年近く前に行ったことと全く逆の方向に社会を進めようとしていることでありまして、私は産業逆転革命というふうに呼んでおりますが、そのような大きな変化を今や起こそうとしているということであります。  先生方におかれましては、そういう社会を実現するために大変な御努力をしておられるわけですが、では、何が必要かということを最後にお話しさせていただきたいと思います。  一番目は、まず、その社会を実現するための物理的基盤を整備する。一般にはインフラとか社会基盤という言葉で言われておるわけですけれども、この物理的基盤を整備するということは、まずしなければいけないということであります。  日本は、富士通を初めとする非常に巨大な情報産業並びに通信産業が存在しておりますけれども、実は、社会視点から見ますと大変おくれた国であります。例えば、コンピューター人口当たり普及というのは、現在世界で二十番から二十一番目程度しか普及しておりません。インターネット普及率というものも、大体世界の二十番目程度ということであります。それから、最近盛んに話題になっておりますが、通信のための料金、とりわけ、インターネットのように絶えず使う、接続をし放題、しっ放しの通信手段というものの料金が非常に高いということであります。  こういうような物理的な環境、つまり情報通信手段を使うための物理的環境というものが、今日本は、世界全体からいうと随分おくれた国になっておりまして、これをいかに改革していくかということを考えなければいけないということであります。  それから二番目は、その新しい、場合によっては逆転するような社会に対して、制度を次々に変えていくということを御検討いただかなければいけないかと思います。  例えば、遠隔医療ということを本格的にやろうとしますと、医師法というものを変えなければいけないとか、それから、株主総会世界じゅう株主それから重役などが通信でやろうと思いますと、商法の改正をしないとこれは成立しないということになっております。  それから、もう少し未来を考えますと、今アメリカ、ヨーロッパで非常に大きな課題になっておりますが、ネットワークでの流通に対してどのように課税するかということに対しても、税制を根本から改定しないと適正な課税ができないというようなことも今発生し始めております。  犯罪捜査につきましても同じようなことでありまして、暗号化された情報でさまざまな情報やりとりされると、それに対してうまく今の制度では対応できないというようなこともあります。  このような、従来の、情報通信がこれほど力を持つということを想定しない社会でのさまざまな制度というものを変えていくということを早急にしないと、新しい社会に追随することが非常に困難になるということかと思います。  それから最後が、国民の精神的な構造といいますか、意識そのものを変えるということが重要ではないかというふうに思います。  現在、BツーCと言われる、個人がさまざまな企業インターネットを通じて行う電子商取引は、アメリカの十数分の一と言われております。大変日本はおくれております。それはなぜかというと、一説には、コンビニのような便利なものが全国津々浦々あるので、わざわざ通信販売を利用しなくても十分必要なものは手に入るという意見もありますが、やはり、まだ国民の中に情報だけでさまざまな処理を行うということに対する意識が十分浸透していないということがあるのではないかというふうに思います。  一例として、あるアメリカ調査機関のデータで、企業重役がどの程度この新しい情報通信基盤を利用できるかという統計を見ますと、最高の比率を持っているのはカナダでありますが、九〇%以上の重役が自由に駆使できるということであります。日本は、残念ながら調査対象国の最下位でございまして、一〇%を切っております。そのような、トップの意識といいますか、社会を牽引しておられる方の意識が変わっていかないと、新しい社会にはどうしてもおくれてしまうということで、このあたりについても、今後どのような政策をとっていくかということもぜひ御検討いただければということでございます。  以上で終わらせていただきます。(拍手)
  4. 前田武志

    前田委員長 ありがとうございました。  次に、村井参考人にお願いいたします。
  5. 村井純

    村井参考人 慶応大学の村井でございます。私は、インターネット立場からお話をさせていただきたいと思います。  インターネット世界の話がされるときによく言われるのは、例えば、日本は五年おくれているとか十年おくれている、こういうような表現が使われることがあります。でも、実際には、インターネットの上での本当の民間での商業的な普及ということは一九九五年からですから、十年おくれるということは、そういう意味では、理論的にはほとんどあり得ないということですけれども、そういう印象を持たれているというのが社会の中での受けとめられ方だということはそのとおりではないかと思います。そうすると、この印象というのはどういうところから来ているかということを正しく分析して理解するということが大変大切になるわけです。  そういう中で、例えば技術的なこういう開発というものがきちんと責任を全うしているのかということを見てまいりますと、例えば、IETFというインターネット技術標準化を決める組織があるわけですけれども、ここでの提案文書であるとか、あるいは標準提案というものは最近は目覚ましく伸びてきてまいりまして、今は、世界の中では、国別でいえば第三位の数になっておりますので、文書の数だけですべてを判断することはできませんけれども、そういう意味では、技術的な力というものがそれほど劣っているわけではないんじゃないかなということをこういう数字から見ることができるわけです。  しかしながら、この利用に関しまして、インターネットが私たちどれだけおくれているかな、進んでいるかなということを見るときは、社会の中でどれだけ普及しているかとか、どれだけ社会の中できちんと機能しているかとか、こういうことを見て判断する場合が多いわけです。そういう意味では、インターネットの利用、普及、ここのところで判断をする場合の方がむしろ多いのではないかというふうに考えることができます。  そういう意味では、社会個人の中で、インターネット普及インターネットがどれだけ使われているか、こういう点で見ていったときには、先ほどの月尾先生のお話もありましたように、この利用の部分で幾つかの、例えば国際的に、先進国の間で比較をした場合、あるいは欧米と比較した場合におくれが目立つという部分になるということになるかと思います。  これは、先ほどのお話がありましたように、やはり技術というのは、つくって提供する、ここには十分な力がある程度あるんだろう、しかしながら、これを普及して社会の中で広げていくというところは多少のおくれがある、こういうふうに見ていくのが多分順当なところではないかというふうに思います。  しかしながら、インターネット技術というのは、創造性というものがどうしても、個人の、どのように利用できるかというところの創造性に依存をしている技術だということが言えます。これは、今までの技術社会での利用という関係と比べましても大変大きな違いが出てまいりまして、デジタルテクノロジー、そしてそれを結んだインターネットの基盤というのは、基本的には今までのさまざまな障害あるいは障壁あるいはいろいろな抵抗、こういうものを取り除くという方向に働く技術になります。  したがって、デジタル情報を使って世界じゅうで自由にコミュニケーションができるとか、あるいはいろいろな技術をデジタル情報、数値の情報として表現ができるとか、こういうことの組み合わせの中でできる中には、非常に自由度が高いことになってまいりますので、自由度が高くなってまいりますと今までの制限がなくなるわけですから、新しい創造性が必要になる、こういうことになってまいりまして、つまりこれは、利用の創造性というのが全体を動かしていくための大変大きな力になってくるという背景があると思います。このことが、まずは社会個人の利用というところに大変重点のある動きになっていて、ここでの対策や政策というのが必要になるというのがこの前提の一点目でございます。  それで、もう一つの前提の、二点目というところに私は情報基盤技術の発展の大変大きな変化を感じざるを得ないわけです。  それは、一九九〇年代の後半にインターネット普及のプロセスというのはどういうふうにつくられてきたかというと、概念としては、インターネットはデジタル情報をグローバルに、自由にやりとりできる、こういう環境をつくるのがインターネットの構築のいわば使命だったわけです。しかしながら、この使命を実現するために、私たち人類は、既に持っていた、大変重要な人類のインフラストラクチャーである電話のシステムの上にこれを構築してきたというのがこの一九九〇年代のインターネット構築なんです。ということは、これはいわば電話という既存の通信システムの上にインターネットというデジタル情報流通させる基盤をつくった。これは、技術的には、エミュレーション、仮に、今まであった基盤の上で新しいアイデアを試してみるという、試作のような部分があったかと思います。  これが一九九〇年代の実はインターネットだったわけですけれども、九〇年代の終わりからことしにかけてというのに、新しい技術が使われるようになってまいりました。これは、例えば光ファイバーをWDMという技術で直接インターネットを使うために使っていくような技術、こういうものの構築が進んでまいりまして、これはいわばネーティブインターネットをつくっていく、インターネットをいきなりつくっていくということを、一九九〇年代での試行の結果、その試行の評価が大変すぐれたものであったために、ではそれぞれの新しい通信基盤を初めからインターネットでつくろうというネーティブインターネットの構築というものが準備をされてき始めているということになってきたのではないかと思っています。  そうだとすると、ここで経済問題だとか技術の問題というものがインターネット向きにつくられるという時代が来まして、それで新しいインターネットの基盤がつくられていくという技術的な背景がある、こういうことでして、これが背景の二点目でございます。  この二点の背景をもちまして四つの点をきょうは申し上げたいと思いますけれども、一つは、こういった中で、インターネット普及と、それからそれのいわば試行というのが、試すということが一九九〇年代に行われた結果として、大変多くの人、機能が、社会機能あるいは個人活動というものがインターネットそれからデジタル情報技術で支えられるということのいわば自信を深めたという背景があったと思います。  そうなってくると、大変大きな問題は、これは昨年のアメリカの商務省の報告、Eコマースに関する第二弾の報告の方ですけれども、この中に大変衝撃的な内容が入っていまして、これは、収入別、学歴別そして人種別、地域別、こういった中でインターネット普及を、米国におけるデータを統計処理したことが発表をされました。この中で、インターネットの利用というものが、いろいろな、そういった年齢それから収入、学歴、地域、アメリカの場合は人種というものがありましたけれども、こういったような中で大きな差がそれぞれ出ているということがあります。  つまり、これは、インターネットがいろいろな社会の基盤として進んでいくという中で、ここで置いてきぼりの人が地域的にもあるいはそれ以外のクライテリアでも出てくるんじゃないかという心配が出てきたわけです。したがって、すべての人のためのインターネットというのは大変重要なスローガンになってまいりまして、これは本当に、デジタル情報というもの、インターネットの基盤の恩恵をすべての人が受ける、これは日本国内だけではなくて、世界の中でそういった方向をどうやってつくっていくのか、大変大きな課題になっているということがあります。  それから、そのためには、端末技術も、今まではコンピューターを使った、キーボードとディスプレーのコンピューターだったということから、新しい端末技術が開発されています。特に我が国では携帯電話インターネット端末として普及するということが、これは多分世界で一番進んでいる国ではないかと思いますけれども、これも一つの答えではあると思いますけれども、そういった意味で、すべての人のためのインターネットを追求していくプロセスが大事だ、これが一点目でございます。  二点目は、インターネットのグローバルガバナンスということがあります。  インターネットは、そもそも一番最初はアメリカの研究開発の資金から始まった背景がございますので、インターネットの運用の契約としてアメリカ政府との契約が残っておりまして、このことをいわば正規化するというための動きが米国商務省を初めとしてさまざまな努力で始まっております。  この努力のことをICANNと呼んでおりますけれども、このICANNのプロセスの中に、私もその理事の一人として今この活動をしているんですけれども、基本的にはどこの政府にも属さない、民間の協調でグローバルなインターネットの基盤的な責任を果たしていこう、こういうためのプロセスだというふうにお考えいただいていいと思います。  そういった中で、その責任をどういうふうにつくっていくかということは、我が国として、これは官民を問わず、アジアでの責任、そして世界での責任、それぞれの運用、インターネットの運用開発、これの責任をきちんととっていくというための戦略とビジョンというのが大変必要になっております。  グローバルな空間であるという特性は、インターネットがもたらした大変大きな特徴でもあります。そのための、地球全体を見た上での新しい挑戦、ビジネスの展開、そうした社会活動、こういったものは比較的我が国の活動の中では苦手とされる部分でもありますので、こういったところをどうやって伸ばせばいいかということのためには、若い世代の新しい教育や、そういったさまざまな社会仕組みの中でグローバルな空間でしっかりと自信を持って生きていける日本人をつくる、こういうことはとても大切なことにつながってくるかと思います。  そういったことを含めまして、インターネットのグローバルガバナンスというのが二点目のポイントです。  三点目は、最近は大変大きな話題になっておりますけれども、インターネットのセキュリティーは大丈夫なのかということの御心配が大変あるわけですけれども、技術的には、インターネットはデジタル情報技術でございますので、きちんとセキュリティーやプライバシーに対する要求が定義をされていれば、それを実現するための技術的な背景というものはあるというふうに考えてもいいと思います。  しかしながら、セキュリティーというのは、すぐれたかぎがあってもそのかぎを締め忘れればかぎの役割をなさないのと同様に、セキュリティーの技術というものをどのように使っていけばいいのかということのいわば教育や文化、こういった面での確立がとても重要な部分になってまいります。  それからもう一つの点は、デジタル情報のインフラストラクチャーに大変大きな社会活動が依存をするようになってまいりますと、全体のインフラストラクチャーとしての危機管理に関する考え方というものをもう少し考えていく必要があります。  それで、この危機管理の中では、特にグローバルな空間であるということを考えながらこれを進めることがあるわけですけれども、例えば、先ごろ官庁のホームページがハッカーによって書きかえられるというような事件がございましたけれども、この監視体制一つを考えてみても、監視というのは基本的には遠隔でできる部分がございます。遠隔でできるとなると、これは実は、地球全体の中からその一点を守っていくというようなこともできるわけですから、そうすると、時差の問題が解消しますので、二十四時間を時差八時間ずつの地球上の三点から保守体制をつくっていくとか、やはりグローバルな空間を背景とした危機管理、こういった新しい考え方をつくっていくということができていくんじゃないか。  それで、もう一点、セキュリティーに関して大変重要な項目がございまして、これは暗号化技術のグローバル化の問題です。  これは、地球全体でインターネットの上での正しいセキュリティーとプライバシーが公平につくられるということは大変重要なことですが、これをつくるためには、暗号化技術がやはり一部の国で軍事関係の技術という取り扱いをされることを原因に、この流通が、大変スムーズな流通が阻害されるというケースが出てきます。これに対して、インターネット普及と、そういった安全上の問題との調整をどのように進めていくかということが大変大きなポイントになるのではないかと思います。  そして、四点目として、幾つかの重要な政府に期待する事項ということで書かせていただいておりますけれども、この中で、私は、インターネット普及というのは、三点において我が国での大変大きな課題を持っていたんだなというふうに思っています。  それは、一つは、パブリックサービスの中でデジタル情報を早く利用するという点。それから、教育の中でデジタル情報の利用、インターネットの利用というものをスムーズに導入するという点。それから、金融、経済活動の中でスムーズにインターネットやデジタル情報を使っていくという点。これは一九九〇年代の後半に多少立ちおくれたところがあると思います。教育、パブリックサービス、それから金融、これら三つの項目はかなり政策的にバイアスをかけられる分野じゃないかと思いますので、これは大変政策的に取り組む必要があるという項目だと思います。  そのほか、我が国は、実は、情報家電や携帯電話、こういった部分では大変先進的な、あるいはゲームなんかもありますね、先進的な技術を持っていますので、この技術を、先ほども最初に申し上げた利用と結びつけていくということで、大変楽観的な戦略を私は立てられるんじゃないかというふうに思っています。  最後一つ申し上げますと、私は、インターネットはこの地球全体を流れる血管のようなものだというふうに思っています。それで、血管というのはあらゆる栄養を地球、体の中に伝えていく、細胞一つ一つに伝えていくという大変重要なパイプですけれども、このあらゆるものを体じゅうにめぐらせていくというためにはやはりそのポンプが必要でして、このポンプは人間の体では心臓です。どうも欧米では、この心臓を戦略的につくるということをちゃんとインターネットに対して考えているんではないか。我が国も、血管網であるインターネットの心臓部、これをきちんとつくってその責任を果たしていくという考え方が大変重要なんではないかというふうに考えております。  以上でございます。(拍手)
  6. 前田武志

    前田委員長 ありがとうございました。  次に、関澤参考人にお願いいたします。
  7. 関澤義

    関澤参考人 月尾先生、村井先生、それぞれのお立場で二十分強お話になりました。ダブるところが随分あるなと聞いていて思いましたので、できるだけそういうところを避けまして、企業活動に対しての影響というようなことからお話をさせていただきたいと思います。  今御紹介がいろいろありましたけれども、アメリカにせよ日本にせよ、差はあるにしても、非常に今インターネットあるいはパソコン、そういったものの普及が急速に進んでおります。その量が大変にふえてきている、普及が進んでいるということが質の転換をもたらしている、あるいは要求しているということが言えると思います。  先ほどもいろいろ月尾先生がおっしゃいましたけれども、個人にしても企業にしても、あるいは社会、国家全部、この新しい情報の流れ、発信、その構造について、自分たちの動きあるいはコーポーレートの動き、仕組み、組織、そういったものを変えないと生きていけないという時代に入っているというふうに思います。  そういう意味では、ここ百数十年見まして、日本で明治維新がありました。敗戦がありました。非常に大きな、人の命も多数失われたような革命でありました。今IT革命ということが言われておりますが、IT革命は、人の命はなくならないんですが、しかし実質はそれに相当するぐらい大きな、個人社会企業、国家の基本原則を変えるというような影響があるというふうに思います。  では、企業にどういう影響があるかということですが、これは月尾先生がおっしゃった、距離が物すごく縮まる、同時に時間も大変速くなるということで、そういった環境で、今までの企業の中のルールあるいは企業間のルール、企業と消費者の間のルールはすっかり変わってくるということが言えると思います。  Eメールなんというのは一つの代表的な例ですが、こういったことによって何が起こるかというと、企業のスピード、それからグローバル化、ボーダーレス、こういうことがどうしても起こるわけであります。先ほども紹介がありましたが、同じ情報が、同じ新聞が、もちろんネットワーク上の新聞ですが、世界じゅうで同時に見られる。これは企業の経営に影響を与えずにおかないわけであります。  それから、二番目に企業にとって大きな影響を与えるというのは、いわゆる分散型ということでありまして、今、富士通の中でサーバーと言われるコンピューターが約七百あります。それは、事業部門の開発を担当しているところ、製造部門の製造を担当しているところ、あるいは人事、経理の部門、あるいは各所に展開している、これは世界じゅうでありますけれども、営業を担当しているところ、そういったところに、サーバーというと言葉はかたいですが、要するにホームページを出しているところというふうに御理解いただければ大体間違いないと思いますが、七百あるわけであります。社長から新入社員まで、ほとんどの情報について平等にそれを手に入れることができる。これは企業にとって物すごく大きなインパクトであります。従来は紙で上からだんだんおりてきて、その紙を持っているがゆえに権威を維持していたというようなマネジャーは権威失墜するわけであります。要らない。  先ほど商取引の上でバイパス現象ということが説明されましたが、同じことが企業でも起こるわけで、情報が発生したところでホームページに情報を載せると、見る意思があれば全部が見られるわけです。日本は一番おくれている、特に経営者は一番おくれている、一〇%がせいぜいだ、私は一〇%に入っているつもりなんですけれども。その辺が物すごい改革を企業の中にもたらすだろう。  いわゆる、言葉でフラット化と言われておりますが、フラット化というのは目で見られるというか、あるいは新聞に発表される組織図がフラットになるというだけじゃなくて、情報そのものが一番必要な人にすぐ届く。例えば、とんでもなく離れたところの営業のサクセスストーリーの情報が、昔だったら、ずっと上へ報告が上がっていって東京からずっとまた紙になって下へ下がる、とんでもなく離れた一営業がその情報を使おうと思ったころには商談は終わっているというような状況だったわけですが、もしそのサクセスストーリーが直ちにインターネット上に登録されれば、はるかに離れた新人に近い営業マンは超ベテランに近いプロポーザルをお客様に出せる、そういうような構造で、先ほどの取引上のバイパスとは違いますが、会社の中の組織すべてバイパスできるわけです。これは、時間と距離の克服という意味、スピードを上げるという意味では非常に大きな改革をもたらすというふうに思います。  さらにそれが広がって、企業企業企業と消費者というふうないろいろなそれが起きてくるわけでありますが、コンビニに銀行端末が出てくる、ATMが出てくるというようなものは一つの例であります。今までは、お金をおろすのは銀行へ行く、映画の入場券、音楽会の切符を買うのはそういうところへ行く、それが全部、コンビニにあしたの朝の、あるいは今晩のおかずを買いに行ったついでに買えてしまう、そういうことができるわけです。  それから三つ目は、コンピューターネットワークというのは、これもさっきお話がありましたけれども、一対一とか、ポイント・ツー・ポイントではなくて、わっとみんなで見られるわけですから、これまでとは全く違っている。例えば、福岡のあるお店と札幌のあるお店とどっちが安いかということは、東京にいてわかるわけです。そんなことは今まであり得なかったわけで、そういった意味で、非常に距離の差がなくなってくる。  ただ、いかに付加価値がつけられるか、そうなったら、では値段のたたき合いかということになりますが、先ほど月尾先生がおっしゃった、もうこれからは中小企業、大企業零細企業の差がなくなるというお話がございました。これは、ちょっとつけ加えたいのは、特徴を持った中小企業特徴を持った零細企業は大企業に負けない、そういうことだと思います。  例えば、確かに中小企業零細企業でもインターネットにお店を出せば世界じゅうから見ることはできます。その際、仮に温泉まんじゅうを出して世界から注文が来るでしょうか。  ところが、私が知っている一つの例、これは中部地方のある中小企業の例ですが、蛇腹の技術をずっと長年持っております。カメラからスタートして、いろいろな蛇腹の技術を持っておられたのですが、今、マイクロマシン用のこんな小さい蛇腹という技術を確立された。そういうものをインターネットに出すと、世界じゅうからわっと来るわけです。それは、中小企業一般が大企業一般と対等にというのではなくて、物すごく特徴のある技術を持っている、商品を持っている、これが非常に大事で、これはさっきの、構造を変える、精神基盤とおっしゃいましたが、いろいろな意味でこういったものを変えるためには、みんな仲よく生きていこうねという、あるレベルにみんな合わせるということはもはや無理だ、特徴のあるところはもう世界じゅうに伸びられる、こういうことだと思います。  同じような例。ちょっと時間がないので省きますが、福井県の繊維業者のある会社が、繊維業はもう非常に斜陽だと言われていますが、インターネットを使って、世界じゅうで私しか持っていない洋服というのを、CADを使って、CADというのはコンピューター・エーデッド・デザインですが、お客様と対応したデザイナーが設計して、ネットワークを通じて、ぱっと完全自動化した。印刷機は、そこの特徴なんですが、インクジェットプリンターというものの原理でさっと印刷する、注文してから二日ぐらいで届くわけです。それは、原理的には世界じゅうに出せるわけです。ニューヨークでもパリでも出せるわけです。  いわゆる著作権法のあれを使って徹底的にそういうことをやりまして、アメリカの大きなところと提携して、これから世界に伸びよう、そういうことをやっておられるところは、石川県、福井県の繊維業はこうだ、だから、一律に何とか補助金を出してやらなきゃということじゃない、ちゃんとそういう知恵で見事にインターネットを使ってやっておられる、こういうことが必要だということだと思います。  時間がありませんのでちょっと飛ばしますけれども、IT投資ということについて、添付のグラフがございますでしょうか、二枚目の上のIT投資比率。全体の設備投資の中でITの占める比率というのをちょっと見ていただきたいのですが、アメリカは右肩上がり、今はやらない言葉ですけれども、右肩上がり一本やりで上がっております。  日本は、一九八七年あたりから景気がぐっと落ちてきて、すべての経費を節減せよというので、IT投資も節減された。これは非常に大きな差になって今出てきていると思います。九二年あたりからじりじりと上がってきましたけれども、九七年から八年になってアメリカは非常にふえております。やはりIT投資というものが非常に大事だということをこのカーブは一つ示しておると思います。  それから、インフラのお話。先ほど物理基盤、これは既にお話がありましたので、パスいたしまして、雇用の問題であります。  雇用の問題というのは、何かIT革命ということで情報通信産業で大量に雇用が生まれるというムードがどうもあるのですが、これも添付の書類をごらんいただきたいと思いますが、ホワイトカラーとブルーカラーというのがアメリカでどうなっているか。IT投資でホワイトカラーは物すごく大量に職を失っているのです、一九九四年。その辺から、先ほど月尾先生がおっしゃった、新しい小さなスタートアップ会社がどんどんできてきて、それがうまく回って雇用がふえてきたわけですね。ホワイトカラーというのは当然一遍下がる。  つまり、経理、総務、人事あるいは秘書というようなものがほとんど要らなくなってくる。上の人が、自分でパソコンを使い、インターネットを使い、Eメールで、どんどん秘書が要らなくなってくるという前提なんです。やっておいてよという日本型では人は減らないのですけれども、どんどん減ってきて、失業があって、その人たちがもう一度自分の値打ちを磨いて、再就職してふえているわけです。  日本の場合に、再教育、社会教育というのが物すごく大事だ。村井先生がおっしゃったように、もちろん学校の教育も非常に大事ですが、社会人の再教育ということが物すごく大事だというふうに思います。IT産業で雇用がふえるのではなくて、ITを使って、IT産業以外で雇用がふえる方がはるかに大きいということが言えると思います。  最後に、政府への期待ということでお話をしたいと思います。  一つは、いろいろなルール。これは、政府が決めるルールもあれば、業界みずから自分たちを縛っているルールもあるわけです。そういったものが、さっき申し上げたような、やればできる、つまり、瞬時に向こうへ発注できる、瞬時にどこかのデータをとれるというような環境下で、そのルールは妥当だろうか、これを全面的に見直さなければいけないだろう。いろいろ事件のお話も出ましたけれども、情報を盗むことは、今刑法では罪にならないのです。紙に印刷した情報を盗むことは刑法で窃盗罪になる。こういう紙にしないで幾らでも情報を見ることができるわけですから、その辺はやはり新しい環境に合わせて法律を変えなければいけない。  それから、ぜひ政府の情報化をもっと進めていただきたい。これはちゃんとやっているよというお話があると思います。ところが、例えば情報サービスというものをやります、ワンストップ行政情報サービス。それが、差しさわりがあるかもしれませんが、ワンストップ行政じゃなくて、ワンストップX省情報サービス。  つまり、どういうことかといいますと、今度私は東京から神奈川に土地を買って家を建てて引っ越した、どういう手続をすればいいのということをネットワークを通じて問い合わせると、さっきのインタラクティブな、あなたは、神奈川県のどこへ引っ越すのですか、何市ですか、何町ですか、家族は何人ですか、うちはどのくらいですか、そういうのを全部答えていくと、ではどこそこへ行ってこういう手続をしてくださいとか、行かないでもいいですからここに情報を入れてください、全部終わりますからと。  今どうなっているかというと、建築確認申請ですとか、それから法務省傘下の土地の登記所へ行くとか、区役所へ行くとか、車の番号を変えたいといったら運輸省傘下のそういうところへ行かないといけない、税務署へ行かないといけない。それはワンストップサービスでも何でもない。  今申し上げたような本当のワンストップサービスをするためのハードウエア、ソフトウエアというのは可能だと思います。一部開発が必要だと思いますが、そういうことに金を使って、本当の意味でワンストップサービスをやっていただきたい。これは、政府がまだ立ち上がっていないこの新しい世界の最大のユーザーになられるということが一番大事なことで、政府がユーザーとしていろいろな日本社会を引っ張るという、そういうことをやっていただきたい。  三点目が研究開発。これはあちこちで言われておりますが、さっきの村井さんがおっしゃったセキュリティーの開発なんか、これもやはりぜひ基幹になる部分はしっかり政府として施策を打っていただきたい。  四番目、人材です。人材の育成というのは、学校だけじゃなくて、つまり大学を出て新人として世の中へ出る人だけじゃなくて、今までやってきた仕事がなくなってしまう人がたくさんいるわけです。その人たちをもう一遍教育して、この全く新しいIT革命の中で新しい仕事につけるような教育をしないと、これはもう、年金問題もありますし、いろいろなことがあって非常に問題になる。  年寄りの話が出ました。ディバイドという言葉じゃなかったですけれども、要するに、年をとっている人、人種、収入、学歴。アメリカの場合には貧富の差が非常に激しい。それが最もあると思いますが、日本の場合には、江戸時代からの読み書きそろばん、平均した非常に優秀な労働力があったから、ここ五十年すばらしい生産技術ができ上がってきた。本当に均一の労働力があった。そういう背景のある国なんですから、情報リテラシーというものを徹底的にたたき込めば、全体としての、そういう情報技術を使いこなしての付加価値をつけるという競争では決して負けないだろうと思います。  それをどうやってやるか。精神基盤まで書いてありますから、キーボードを見ただけでアレルギー、じんま疹というのをどうやって治すかということですが、これはデジタルディバイドということについていえば、やる気になれば、日本は読み書きそろばんという非常にすぐれた全体のレベルを上げるという教育の例を持っているわけですから、絶対いくというふうに思います。  最後に国際貢献。これはやはりアジア、これから物すごくGNPの比率が重くなってくるのはアジアですが、いろいろなアジアの指導者たちと会って話をすると、物とか、例えば鉄道を敷く、何をする、そういうことよりも、人材の教育、指導者、こういったITのプロジェクトを指導できる人間をどうやって教育したらいいか。日本にはいろいろな資格がありますし、資格試験があります。それをどうやっているのか、ぜひそれを教えてもらいたい、あるいは先生を派遣してもらいたいという切実な要求があるわけですね。  私どももアジアで随分ソフト会社なんか持っていますけれども、そこに行って実際に仕事をやっている連中に聞くと、非常にそういう意味で、プログラムを書くレベルの人たちはたくさんいるけれども、本当にリーダーになれる人間はいない、しかも、そういう資格制度がないから、この人はどのくらい能力を持っているかというのはわからない、雇ってみてだめだったら首切るしかない。  こういう人材に関する育成ノウハウというのは、日本はやはりあると思います。アメリカはどっちかといえば勝手たるべしというところがあるんですが、日本は、読み書きそろばん文化、寺子屋文化がありますから、これは絶対に人材で国際貢献できる。人材及び人材教育でですね。これがじりじりときいてくる。日本という国はよくやってくれたという意味で、国際貢献の面でじりじりときいてくるのではないかというふうに思っております。  ちょっと間を飛ばし、時間を超えましたけれども、一応以上で話を終わります。(拍手)
  8. 前田武志

    前田委員長 ありがとうございました。  以上で参考人からの意見の開陳は終わりました。     —————————————
  9. 前田武志

    前田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。佐藤剛男君。
  10. 佐藤剛男

    佐藤(剛)委員 佐藤剛男でございます。  まず初めに、月尾参考人村井参考人また関澤参考人から、かくも卓見とそして先見性と明確な認識に基づいた御報告を賜りました。改めまして敬意を表する次第でございます。ありがとうございます。  参考人の三先生とも、いろいろ共通している部分がありますので、私、幾つかのお聞きしました問題について、特に何々参考人ということを明記しない限りお話を承らせていただけたらと思うわけでございます。  それでは、座らせて質問させていただきます。  月尾参考人、私は、郵政政務次官をさせていただいて、いろいろな面でアドバイスを賜り、郵政政策等々に反映させていただいたわけでございます。  月尾参考人はいみじくも、現在のIT革命というのは経済面だけじゃなくて、要するにもう革命に入っちゃっているんだ、社会的、文化的革命とでもいいますか、そういう認識でございます。  とかくIT革命というのは経済的側面ばかりを強調されがちな分野でございますし、例えばクリントン大統領が、本年の一月の白書におきましても、ITというのは雇用全体の八%で、経済成長の三分の一に寄与している、そういうふうな物の言い方をいたしておりますが、私は、本質はまさしく月尾参考人が喝破されたごとく、このIT革命というのは経済面だけじゃなくて、文化、社会面における革命に入っちゃった、これはもう革命の中に入っている、それを第三次産業革命と称するかデジタル革命と称するかはありますけれども、そういう中において、ITが個々の人のライフスタイルとか、あるいは人間性、芸術、文化、そういうふうなものに大きな、広く言えば文明社会を今変革しているんだと。  では、どんな文明社会が出てくるのかというところで、今月尾先生は、それは大衆市場から個別市場へ行く、あるいは計画供給から注文供給へ行く、あるいは供給主導から需要主導へ行く、実物経済から仮想経済へ行くという点を御指摘されたわけでございます。  こういう点につきまして、村井参考人村井参考人はまさしくインターネットの草分け的存在でございますが、文明社会の点について、どういうふうな社会を我々描きながらいろいろ政策誘導等々をやっていくのか。今、関澤参考人からいろいろな政府への注文ございましたが、まずその点についてお聞きさせていただきたいと思います。
  11. 前田武志

    前田委員長 それでは、まず月尾参考人からお一人お一人お答えをいただくということですか。
  12. 佐藤剛男

    佐藤(剛)委員 はい。三人の参考人方々から一言でも二言でもお話賜れば幸いでございます。
  13. 月尾嘉男

    月尾参考人 今から百五十年ほど前とか二百年ほど前、ヨーロッパ中心に起こった産業革命のときに、今佐藤理事が御指摘されましたような非常に大きな社会改革が起きました。  例えば文化という話が出ましたが、芸術という面を見てみますと、それ以前の芸術というのは、教会であるとか貴族であるとか金持ちとか、そういう人々が文化を維持するという仕組み社会の文化というものは育てられてきました。例えば有名な例で申し上げますと、ヨハン・セバスチャン・バッハというのは教会に雇われ作曲をし、ヘンデルという作曲家は貴族に雇われ作曲をしていた。ところが、産業革命以降起こったことは何かというと、そういう階層が没落していくことによって、ベートーベンなどが代表的でありますが、市民が新しい文化をつくるというような方向に進むという非常に大きな変化が起きました。  それから、国土の構造も大変大きく変わりました。日本の例で申し上げますと、明治以降が産業革命に当たるわけでありますが、明治の初期の帝国統計年鑑を見ますと、東京というのは実は日本で十五番目の人口集積しかない府県でございまして、一位が石川県の百八十万人、二位が新潟県の百五十万人で、東京は九十六万人で十五番目という程度でありました。ところが、その産業革命が起こったために、一気に人が集まり、資本が集まり、経済活動が集まり、さらに情報が集まるという仕組みになって、今に続く集中構造というものができてきたわけであります。そのような文化とか国土とかさまざまな変化が起こっております。  それから、政治も実は大変大きな変化をしておりまして、支持政党ががらりと変わるということがイギリスなどでは起こっております。  今佐藤理事がおっしゃいましたような変化というのは、これから社会の、経済を超えた側面に次々起こってくるということでありまして、それをあらかじめさまざまな形で予測して対処していくということが国家にとって非常に重要なことではないかというふうに思っております。
  14. 村井純

    村井参考人 私、まず一つは、今おっしゃったような革命の背景になってくるところは二点ありまして、これは人類に対してどういう貢献ができるか、こういう視点で考えたときに、個人で貢献ができるようになる、この点が一点。それからもう一つは、その貢献の対象はグローバルな、つまりドメスティックな、国内だけにとどまらず、グローバルな貢献ができるのだ、この二点の特徴があります。この特徴が大変大きな、革命とおっしゃいましたけれども、いろいろな大きな意味での変革を生んでいるのだというところが一点目です。  それからもう一点は、個人であるということ、個人の力が貢献できる、それからグローバルな空間だということなんですけれども、よく、コンピューターがつくる空間のことをサイバースペースというふうに表現することがあります。それで、この中で私たちは二つの考え方をすることができます。  これは、サイバースペースを人類のためにどのようにつくっていくかという、現状の、ドメスティックな、国ごとにあるリアルスペースを利用してこのサイバースペースをどうつくるのかという視点と、それから、今のリアルスペース、例えば国であるとか現状の空間をグローバルなサイバースペースを利用してどういうふうによくしていこうか、こういう方法と二つの方法があるわけです。  もう一度申し上げますと、グローバルな空間を人類のためにどうやって新しくつくり出すのか、そのために既存の、今ある社会の機能や仕組みをどういうふうに利用しようか、こういう視点と、それぞれの今ある社会をグローバルな空間を利用してどういうようによくするか、この二つの考え方があるわけです。  この二つの考え方は、もちろんそのサイバースペースをどうクリエートするかということ、あるいはその機能をどうつくり出していくかという方が革命的な印象を持ちます。しかしながら、大変重要なことというのは、私たちはこの両方の側面を同時に現在持っているわけで、その両方の視点を混同しないでやるべきことを考えていくというのが、とても大切な取り組みの方法だというふうに考えております。
  15. 関澤義

    関澤参考人 今の村井さんのお話で、グローバルという言葉、そして個人が中心という話ですが、個人ということは地域ということもあるわけで、両方が要るわけだと思います。バーチャルな社会、あるいはサイバーなスペースというものが現実世界に取ってかわるということではなくて、その二つは非常に密接にリンクしながらこれから発展していくはずだ。  グローカルという言葉が最近出てきています。グローバルでありながら、しかもローカルの特徴を発揮する。そういう意味では、何か全部バーチャルの世界に行くんだという誤解が一部にありますけれども、現実世界といかにうまくつないで新しい価値を生み出していくか。それは、時間、空間を超越した部分というのはバーチャルな方でやっていい、そうでない部分というのはやはり今までの社会、それは一対一にしっかりつながっていなければ人間は生きていけないということだと思います。  文化という話がございましたけれども、ちょっと離れて、例えば皆様方の政治の世界、皆さん方の何人かがホームページをお出しになっていることを見ました。例えば、全国区の先生方にしてみると、どうやって全国津々浦々ということに随分腐心をなさるでしょうが、そういう意味では、さっき札幌と福岡、どっちが安いという話と同じで、大変卑近な例と比べて申しわけないのですが、全国のいろいろな地域の人がどういう考えを持っているかということを知るにはインターネットというのは物すごく有効な手段だ。  そういう意味で、全国区の先生方にとって選挙のやり方というのも変わるのじゃないか。幸か不幸か、非常に多くの人口が集中し、比較的投票率が低くてサラリーマン中心の太平洋ベルト地帯というのは、同時にインターネットを最もよく使っている人たちの住んでいるところだと思います。そういう意味では、インターネットという新しいものが、今申し上げたように、政治そのものも変えていくかもしれないなというふうに思っております。
  16. 佐藤剛男

    佐藤(剛)委員 どうもありがとうございました。  もう時間がなくなりまして、私、村井参考人が指摘されましたICANNでございますが、これについては非常に関心を持っております。そこにきちんとした日本の参加、村井参考人理事として参加せられ、非常に頼もしい限りなんでありますが、これについて村井参考人日本の取り組み方、それからどうすべきかというのを、私あと、五十分までしか時間がないものでございますので簡明で結構でございますが、方向づけをお教えいただければと思います。
  17. 村井純

    村井参考人 インターネット全体を動かすグローバルな責任を民間でどうやって担っていくかというプロセスがICANNでございますので、このために、ICANNを進めていくという仕組みを非常に支援していくという方向を明確に打ち出していく、そして具体的にこの支援に対する実際の、例えば人を出すとか、理事日本から出していく、あるいはアジアの責任を果たしていく、こういうことを明確に打ち出していくというのが一番大切なことではないかというふうに思っています。ちなみに、私の任期は九月まででして、そこから先は新しい選挙に任せるということになっております。
  18. 前田武志

    前田委員長 次に、小沢鋭仁君。
  19. 小沢鋭仁

    ○小沢(鋭)委員 民主党の小沢鋭仁でございます。  民主党からも、三人の参考人の皆さん方の御出席と、そしてすばらしい御意見を賜りましたことを、まずもって御礼を申し上げます。  座らせていただきます。  先ほど、日本企業の役員の一〇%ぐらいしか使いこなせていないんではないか、こういうお話がありました。政治家も同じことがきっと言えるんだろうと思います。民主党は、党首がまさにITを使いこなす党首でございまして、そういった意味ではITの先進政党を目指しておりますので、どうぞお三方にも御理解をいただきたいと思います。  それから、近々「人間中心の情報通信社会を目指して」というビジョンも発表させていただきます。「デジタルジャパン計画」、仮称ではありますけれども、そういった話も発表させていただきますので、ぜひまた御指導いただきたい。こんなお願いも申し上げておきます。  さらにまた、関澤参考人からおっしゃっていただいた、政府がもっとユーザーとして使え、こういう話は「情報サービスステーション構想」、こういう話を一貫して言っておりまして、ぜひそれもまた御理解をいただきたいなと思います。  ということで、宣伝はこれくらいにして、時間がないので、お三方の先生方に、それぞれ一緒に質問をさせていただいて、お答えをぜひいただければと思います。  まず、月尾先生には、ちょっときょうのお話で出ていなかった話ですが、先生の御専門にもなると思います、都市工学の観点から、ニューズウイークで「クール・ストックホルム!」という特集が一月にあって、そしていわゆる都市が情報通信によって物すごく変わる、こういう話がございます。そういったポイントを、これからそういった観点で考えたときにどういう話があり得るんだろうかというお話をいただけるとありがたい。  それからもう一点、きょうのお話の中で、課税の問題がありました。この課税の問題、今民主党も一生懸命取り組んでおりまして、かんかんがくがくの議論をしているわけでありますが、実際、物理的に、少なくてもソフトのダウンロードなんかは把握ができないんではないか、こういう話があります。先生、結論はおっしゃいませんでしたが、先生の現時点での結論をお聞かせいただけるとありがたいと思います。  それから、村井先生にお願いでございます。ネーティブインターネットの構築というお話があったわけでありますけれども、いわゆる電話をベースにした話ではなくて、まさにインターネットを想定したそういう社会インフラを、こういう話だろうと思います。  その場合に、例えば、今メガビットのクラスの話が行われていて、将来はテラビット、こういうような話がありますね。そういったときに、情報というのはもう放送も何も全く関係なくなるんだろう、こう思います。今後、地上波のデジタル化の問題が行われておりますが、こういう話が進行していくと、そういう話は一気に関係なくなるという話になるんでしょうか。その辺の御意見をお聞かせいただきたいと思います。  それからあと、認証というか、暗号技術の話に関係するんですが、私どもは、いわゆる衆議院議員の選挙も、国政の選挙もインターネット投票をやるべき、こういう発表をしておるんですが、アメリカのアリゾナの予備選でこの前インターネット投票がありました。これは、例えば日本の国政選挙を考えたときに、今の技術で十分、そういう暗号技術、認証も含めて、安全に投票ができるだろうか、この点に関しての御意見をお伺いしたいと思います。  それから関澤参考人には、きょうちょっとお話には出ておりませんでして恐縮でございますが、いわゆるビジネスモデルの訴訟というのが最近大変話題になっておるわけですね。それで、東芝事件というのがつい最近ございました。これは物といいますか、ソフトウエアというか、物の問題でありますが、ビジネスモデルそのものも大変訴訟の対象になってくる、こういうことが懸念されているわけで、例えば富士通さん、御社なんかはそういうことに対してどう対応しているのか。あるいは行き過ぎと考えるのか、もう仕方ないと思うのか、その辺の御見解をいただければと思います。  早口で大変恐縮でございましたが、お三方の先生、どうぞよろしくお願い申し上げます。
  20. 月尾嘉男

    月尾参考人 二点についてお答えさせていただきます。  まず都市というものについてどういうことかということで、現実の都市については恐らくこういうことが検討されるべきだろうと思いますが、多くの国家で、国家というか地域といったらいいかと思いますが、工業というものを発展させる段階で都市に対してとられた政策というのは、分離、純化という政策でありました。  つまり、日本の江戸時代をお考えいただきますと、働く場所も住む場所も非常に混然一体としておったわけでありますが、工業というものが導入されたことによって、それが不都合だということで、例えば東京のようなところでありますと、郊外へどんどん住宅だけの地域をつくる、丸の内のようなところはもうビジネスだけにする、それから湾岸地帯は工業だけにするということが行われてきました。これは確かに工業のときには環境問題などで必要だったことでありますが、それは一方では都市にとってさまざまな問題をもたらしてきております。例えば、膨大な通勤であるとか、それからコミュニティーの崩壊であるとか、今の多くの社会問題はこの分離、純化するということによって起こった側面が大変あります。  今、情報というものを使えば、ビジネスも混在していても全く構わないということになります。つまり、マンションの中で幾らでも巨大なビジネスができるということになりますので、もう一度かつての都市の本来の姿であった、住む、働く、憩うというようなものを一体とするような新しい都市へ転換していくということが必要だと思います。  それからもう一点は、情報技術で新しい都市の構想が出ておりまして、今スウェーデンの例も御紹介ありましたが、例えばドイツの新首都ベルリンは、今サイバーシティー・ベルリンというプロジェクトを進めておりまして、すべてのベルリンの市街を三次元の画像世界じゅうの人がインターネット経由で自由に歩き回れるような情報提供をしております。  そこへ参加しますと、町の中を自由に歩けるだけではなくて、博物館へ入れば絵画がほとんど鑑賞できるとか、ホテルへ行けば部屋を一々確認して、もちろん画像の部屋ですが、確認して予約できるとか、レストランも座席とかメニューを確認して予約できるというようなことまで始めております。ヘルシンキもヘルシンキ・アレーナ二〇〇〇ということでそのようなことをしている。こういう情報社会の中での新しい都市を構築し、それを一種の世界への情報発信としていくということも必要かと思います。  それから、課税のことについては、一番大きな問題は暗号というものを多くの方々が使うということになりまして、これについては今世界が大変苦慮しております。アメリカでは、クリントン政権のごく初期から、政府が最高裁判所の令状をもらえば暗号を解いていいという許可を得るというような仕組みを構想しました。一般的に言えばキーエスクローというシステムで、アメリカではクリッパーチップというものを端末に導入するという構想でありましたが、これは大変大きな反対があって難航しております。  しかし、これは大変な国家的な問題だと思いますが、個人はプライバシーその他で暗号でどんどん情報通信をやろうとする。一方、課税とか犯罪捜査ということのためには暗号を解かなければいけない。ここをどうしていくかということは今まだ明確な解決がないですね。重要な問題で、ぜひ国政の場で本格的な御議論をしていただきたいというふうに思っております。
  21. 村井純

    村井参考人 まず一点目の問題ですけれども、インターネットというのは、そもそもデジタル情報を利用するという基盤をそれぞれの技術に依存せずにつくったという技術でございますので、そういう意味では、普通の、例えばテレビの電波なんかの技術そのものに対するコミュニケーションモデルの依存性、こういうものからは切り離されているところに特徴があります。そういう意味では、テレビのような既存のコミュニケーション技術が垂直的なことに対して、インターネットは水平的だという言い方もできます。  つまり、インターネット技術というのは、いろいろな通信技術の上にふろしきをかぶせて、それで抽象化をして、その上でデジタル情報を使ってどんな社会をつくろうか、こういうものをつくり出しているようなイメージを持っていただければいいのではないかと思います。  そうなってきますと、今おっしゃったような地上波のデジタル化であるとか、さまざまな新しいデジタル技術というものは、それぞれ利用しながらインターネットは成長していくだろう。そして高速な、メガビット、ギガビット、テラビットと進んでいく新しい応用に対して、それぞれ適応した技術を使い分けるための、いわばその組み合わせを自由にするところにインターネット技術があるというふうにお考えをいただけるのじゃないかと思いますので、そういう意味では、あらゆる技術がこの技術の恩恵にあずかっていくことができるだろうというのが一点目です。  二点目。この暗号の技術が選挙に使えるようになっているかという御質問ですけれども、ここには三点の問題があります。一つ技術そのものの問題と、この選挙なりのシステムを動かす運用の問題、人も含めた、組織も含めた。そして三つ目は、信頼の問題です。技術の問題は、これはいろいろな論文そして実験等がありまして、多分問題がないんだと思います。ただし、運用をしていく組織づくり、組織の定義、ここには大きな社会的な挑戦があると思います。  そして何より、このシステムが社会の中で選挙のシステムとして受け入れられるためには、デジタルテクノロジーの暗号化技術や認証技術が広く国民から信頼を受ける必要がありまして、ここには文化的な要素、教育的な要素もありますので、ここに努力をしていく必要があると思っています。
  22. 関澤義

    関澤参考人 ビジネスモデルの特許についての御質問ですが、行き過ぎだと思います。ただし、それは今に始まったことではなくて、特にアメリカの特許制度で、従来の物づくりの特許でも、いわゆるアメリカのサブマリン特許というのがあって、ずっと前にアイデアだけ出して、そして特許の申請をしない。それで、先発明主義、先に発明したということで、サブマリンでずっと潜っている、特許として申請すると初めて浮上してくるわけですが。どっちが先に発明したかというのは、例えばノートにアイデアを書いた、それが前だったらそれで、申請のときはいつであるかは別にして、特許だと。  これと全く同じ意味で、最近有名なビジネスモデル特許というのは、さっき話題に出ましたアマゾン・ドット・コムですが、取引で集積されたお客様の情報を使って次のビジネスに結びつけるというビジネスモデル特許です。正直言って、そういうことは世の中にいっぱいやっているところがあるわけなので、これからの争いになると思いますけれども、いずれにせよ、従来の特許制度でいっても、サブマリン特許ということを核にしたアメリカの特許制度というのは行き過ぎだと思っております。個人余りにも、大きな企業を相手に大きな金をとるという、これこそビジネスモデルなんですが、そういうことをやっている。  例えば、私どもとアメリカの大きな会社は、クロスライセンスと言って、お互いの特許をただで使い合う。こういう個人のサブマリン特許というのは、自分たちビジネスにするつもりはありませんから、クロスライセンスということはありません。したがって、金で解決するしかないということで、そういう意味では、今に始まった話ではないんですが、やはり行き過ぎはこちらから強く主張していかなきゃいけないだろうというふうに思います。  社内では、対抗手段ということで、やむを得ず、思いつくビジネスモデルはどんどん特許に出している、それを社内的に奨励している、そういうところであります。
  23. 小沢鋭仁

    ○小沢(鋭)委員 最後に、それに関連して一点なんですが、月尾先生、また村井先生にもお聞かせいただきたいと思います。  政府が、この問題で、いわゆる外交交渉できちっとしっかりやれ、こういう話なのか、あるいは、それはもうそういう時代じゃないだろうというのか、最後、簡潔で結構です。
  24. 月尾嘉男

    月尾参考人 技術については、今やデファクトスタンダードの時代でありまして、恐らくこれは企業もしくは研究者などの競争で決着がつくという問題だと思いますが、一方、政府がかなりデファクトスタンダードをとるための支援をしているものがあります。  例えば、今暗号でアメリカが進めているAESという暗号、つまり、二十一世紀から政府が全面的に使う暗号というものを国際コンペティションで決めておりますが、これは恐らく、アメリカ政府がこの特定の暗号を使うということになれば、それが世界じゅうのデファクトスタンダードになるというのは恐らく目に見えていることだと思いますね。そのようなことに対しては、政府がかなり、日本は、そういうアメリカの政策に対してどのように交渉し、どのように参加するかというようなことについては、外交的な努力が必要だというふうに思います。
  25. 前田武志

    前田委員長 次に、福留泰蔵君。
  26. 福留泰蔵

    ○福留委員 公明党・改革クラブの福留泰蔵でございます。  きょう、月尾先生、村井先生、関澤先生については、大変お忙しいところ貴重なお話を承りまして、ありがとうございました。限られた時間でございますので、早速質問させていただきたいと思います。  座らせていただきます。  きょう、三人の先生に大変貴重なお話を伺ったところであります。実は、私ども公明党としましても、情報通信立国ということで大変力を入れて今推進をしておりまして、その中で、先ほどもいろいろお話がありましたけれども、農業革命産業革命に匹敵する、いわゆる今IT革命の、第三の革命の最中であるという認識のもとで、二十一世紀、日本が国際社会に引き続いてリーダーシップをとる国家となるべく、情報通信立国ということは大変重要であるという認識に基づいて、さまざま活動しているところでございます。  きょう、せっかくでございますので伺いたいことは、先ほど実は月尾先生もまた村井先生もお答えになったと思うんですけれども、IT革命ということで社会が大きく変わっていくわけであります。それで、非常に個人というのが大変重要になってくるんだろうと思ってもおりますが、その際に、国家という概念が私は変わってくるんじゃないかと思っております。コミュニティーの質が変わってくると、当然、そのコミュニティーの集合体としての国家が変質していくのか。あるいは、さっき月尾先生でしたか、さまざまなものが消滅するとおっしゃっていましたけれども、国家までが消滅していくのかどうか。これはちょっともう先の話でわからないことですけれども、変質はしていくんだろうと思っております。  これは私、きょう、三人の先生に同じ質問をまずさせていただきますけれども、国家がどういうふうに変質していくのか、あるいは消滅していくのか、あるいは、IT社会における国家の役割というのはどうなっていくのか。この点について、第一点としてお伺いをしたいと思います。  あわせて、今、実はそれぞれの先生方の、政府のやるべきことの御提案の中にもあったんですけれども、行政の情報化だとかというお話がありましたけれども、私ども公明党としても、電子政府の早期実現ということで今立法準備を進めておりまして、電子政府ということについては、総理もみずからミレニアムプロジェクトの中で電子政府の実現ということをうたっておりますけれども、我々はそれをもう一歩踏み込んで、現状の政府の取り組みというのは、現状の行政の情報化の、また電子化の段階にとどまっている、これは、先ほど関澤先生の方から御指摘があったことと通じると思いますけれども、我々は、IT社会のあるべき姿の中から政府のあるべき姿を論じて、その上でそこに至る過程が電子政府の実現であるというふうな認識をしておりまして、そういった発想での電子政府というものを世界に先駆けてつくっていくべきだという考え方を持っております。  この電子政府についての御見解をあわせて、二点目として、それぞれお三人にお伺いしたいと思います。
  27. 月尾嘉男

    月尾参考人 国家というものについては、大変複雑なもので、私が答えられる範囲を超えておりますが、経済というようなものについては、国家というものは恐らくほとんど意味をなさないという形で現実が動いてしまうというふうに思います。しかし、個人というものについて、その個人が例えばどのような文化に所属するかとか、どのような制度に所属するかというような形では、国家というのはかなり当分の期間必要なものだと思います。  それはなぜかといいますと、世界がもし一斉に国家というもののない社会をつくるということに合意すればいいわけでありますが、今でも、国家というものをより強固にしていこうという国々はたくさんあるわけですね。例えば、その最も代表的なアメリカでありますが、アメリカのような、国家という意識が極めて明確な国が存在する限り、自由に活動する個人を保護するという視点から国家というものの役割は必ず存在するということでありまして、私は、やや極論かもわかりませんが、今以上に国家というものが個人というものをきちんと保護するという役割として重要なものになってくるというふうに思います。  それから、電子政府はぜひこれは積極的に推進していただきたいと思います。今最も早く電子政府に、地方政府といえば政府ですが、ニューヨーク市が既にホームページの上で電子政府のモデルを提示しておりまして、五年以内には完全にすべての今市役所がやっている行政事務を電子政府に置きかえるというようなことも行っております。ですから、これは何とか日本も先頭を切ってやっていただきたいというふうに考えております。
  28. 村井純

    村井参考人 まず、IT社会の国家の役割ということですけれども、やはりこれは二点大変大きな役割があるというふうに私は思います。  これは、民間活動が先ほどのグローバルなIT世界の中で生きていくための強力な支援をするという点。それから、日本国民個人個人がそういったIT社会、IT世界の中で自信を持って生きていけるというための成長の支援をするという点。この二点は大変重要な使命でありまして、これを実現していく、これを両方支援していくということが大変大きな役割だというふうに考えています。  二点目、電子政府の実現に関してですけれども、サイバースペースというものをどういうふうにつくっていくかということは、電子政府が大変強いリーダーシップを持つことによって、先ほどの民間活動の支援あるいは人の、個人の、国民の成長というものを進めていくということになると思いますので、ここには大変積極的に取り組む必要とその重要な意義と責任があるのではないかと思いますけれども、この実現に関しては、大変大きな困難と非常に大胆な取り組みがやはり必要になるというふうには思います。  したがって、このためのいろいろな協力を集めて、これをぜひ実現していくということが必要だと思っています。
  29. 関澤義

    関澤参考人 ITというのは、今IT革命とかいろいろ言われていて大騒ぎになっていますけれども、国家にとっても企業にとっても個人にとってもそれは手段である。したがって、国家というものが国家戦略を持っていて、それをしっかりと実現し、進めていく上において、ITというものが出てきたからそれをどう使うかということであろうと思います。  当然、その国に属する企業個人は、やはりITを手段として、先ほどから話が出ているように非常に変わってきます。その非常に変わってきた日本企業なり個人なりをベースに、国家戦略をITを手段としてどう推進していくかということであって、国家がなくなるというようなことはないと私は思っています。  それから、電子政府というのは先ほど申し上げたとおりでありますが、実行するに当たって、今までのルールというのをそのまま電子化するということではなくて、やはり新しい手段で最も合理的なやり方というのはどうだというアプローチが必要であろう。そういうことをぜひお考えいただきたいというふうに思います。
  30. 福留泰蔵

    ○福留委員 ありがとうございました。  続きまして村井参考人に、先ほどお話しいただいた件でさらにちょっと教えていただきたいと思う件がございます。  インターネットというのは地球全体に流れる血管であって、その血管の中で血が流れていくためにはポンプが必要である、心臓が必要である、その心臓をつくる戦略が今必要なんではないかというふうな趣旨のお話がございました。そのポンプというか心臓ということをもっと具体的に何なのか、教えていただければと思います。
  31. 村井純

    村井参考人 実際には、デジタル情報として取り扱われる情報の中には、今や、通貨をあらわす経済的なエレメントであったり、それからいろいろな知識や教育、こういったものの要素となるもの、それからエンターテインメントの要素となるようなもの、こういうようなものがすべて含まれていくわけです。そうすると、これの世界の中での流通ということは、そのものが日本という国あるいは日本人というものの世界に対する責任を表現していくということになってくるかと思います。  具体的には、どういったものをどのように世界流通させることで日本は成長をしていくのか、それから日本国民は成長をして自信を持っていけるのか、こういうことを考えていくときに、すべてを同時にすることはできませんので、この中の重点領域は何であって、そしてどういった順番でどういうタイミングでこれを実現していくのかということを考えていく必要があり、これを私は戦略というふうに申し上げたつもりです。
  32. 福留泰蔵

    ○福留委員 あわせて今の御説明に対して、戦略というのは、インターネット世界のこれというのは我々の認識は民間主導で行われていると思うんですけれども、その戦略というのは、国が立てる戦略という意味でおっしゃっているんでしょうか。
  33. 村井純

    村井参考人 これは非常に、官民一体となって方針というものを考えていく必要があると思います。そして実際にそれを実行していくのは民間が主体になるというふうに思われますが、戦略そのものをプランしていくという役割は政府にも大変大きな責任があるのではないかというふうに私は思っています。
  34. 福留泰蔵

    ○福留委員 最後に、関澤参考人に伺います。  私どもの認識としては、こういった情報通信立国を推進していく上での一つ手段としても、通信料金は引き下がっていかなければならないという認識をしているわけでございます。携帯電話等も若い人たちに大変普及、若い人だけではございませんけれども、大変な普及をしている。お話を伺うと、最近は皆さんがアルバイトして、携帯電話料金の支払いに追われていてほかの消費に回らないというようなお話があるぐらい、通信料金のそれぞれの生活費に占める割合というのは大きくなっているようであります。  また、この通信料金の割高感というのは、各企業等における活動のコストとしても大変大きいものがあるんではないかという指摘があるわけでございますけれども、こういった現状の企業活動における日本通信料金の負担感というのはどのように認識しておられるのか、お伺いしたいと思うんです。
  35. 関澤義

    関澤参考人 比較の問題で言えば、日本は高いと思います。  ただ、それが例えばインターネットの問題に障害になっているかというと、一部なっているかもしれませんが、さっきから申し上げているように、いろいろな社会的なルールというのが変わらない限り、料金がただになってもなかなか、例えばバイパスされる業界の抵抗もあるかもしれませんし、そういうようなことで、料金というのは恐らく競争がどんどん進んで、携帯電話料金を見ればわかりますように、物すごい勢いで下がりました。一般電話料金もすごい勢いで下がりました。  したがって、こういう料金問題というのは、今確かに相対的に高いかもしれませんが、必ず下がる。下がったときに残るのは何か。料金が高いから日本インターネットはだめなんだと言われていますけれども、ただになっても、いろいろな社会ルールというのを変えない限り普及しないということが出てくると思います。むしろそちらの方を今から、さっき月尾先生が言われた物理基盤、制度基盤、精神基盤、この辺がやがて今のままだと障害になってくるんではないかというふうに思っております。
  36. 福留泰蔵

    ○福留委員 貴重な御意見をありがとうございました。以上で終わります。
  37. 前田武志

    前田委員長 福留泰蔵君の質疑はこれにて終わりました。  次に、達増拓也君。
  38. 達増拓也

    達増委員 自由党の達増拓也でございます。  委員会でパソコンを利用する際に委員長の許可が必要ということ、私ちょっと、きょうは差しかえで来ましたので承知していなかったので、当然使えるものと思って準備……。
  39. 前田武志

    前田委員長 本日はこういう委員会でございますから、どうぞ、お使いくださって結構でございます。
  40. 達増拓也

    達増委員 ありがとうございます。メモ等をこれにつくってきたもので、特段のお計らいに感謝したいと思います。  自由党は、情報化、特に高度情報化の問題についてはこれをシステム変革の問題ととらえておりまして、政治の改革、行政の改革、既存の体制でこの問題に取り組むのではなく、やはり政治のあり方、行政のあり方、そういったところから変えていく中でこの情報化の問題にも対応していかなければならないというふうに考えております。いわば、Eコマース、Eビジネスということが言われておりますけれども、行政においてはE政府、電子政府、そして政治においてもE政治というような、そういった感覚、ビジョン、手法、そして政策で取り組んでいかなければならないというふうに考えているところであります。  そうした大きいシステム変革を進めていくに当たってやはりまず壁になっているのかなと思われるのが、今福留委員からも指摘がありました通信料金の問題。参考人の皆さんもそれぞれ指摘されておりましたけれども、月尾参考人に、特に物理的基盤の整備ということに関連して伺いたいと思います。  NTT、郵政省さんなどに、通信料金の問題、今、接続料の削減、低下、接続料を半分くらいにしないとだめだという議論をする中で、接続料を半分にしたら需要はどのくらい伸びると計算していると聞いたところ、年一割ぐらいで伸びていくと。これは冗談じゃないと思いまして、携帯電話普及の度合いなどを見ていても、やはり今の日本高度情報通信社会を推進していくに当たっては、もう倍々ゲームくらいの勢いでそういうハード、インフラを普及させていかなければならない、そういう大変革を引き起こすくらいの、そういう通信料金の引き下げというものが求められていると考えるんですけれども、この点、いかがでしょうか。
  41. 月尾嘉男

    月尾参考人 今の料金というのは、基本的に、電話という過去の、百年以上続いた通信ネットワークを基準にしてできた体系で料金が決定されているということなんですね。  現在、新しく次の社会通信基盤になるのは、インターネットのようなデジタルパケット通信で、しかも、交換機ではなくてルーターのようなもので自由に情報やりとりするというシステムです。これは、現在、接続の料金にしましてもそれから通信料金が高いというのも、過去の延長の上での料金変革なのでなかなか改革されないんですが、二年ほど前に郵政省の委員会が発表されているビジョンでは、大体二〇〇五年には、接続し放題で、最高六メガビット程度の能力のある通信回線を一月一万円程度で提供できる、それから、十年先には二十メガビット毎秒程度インターネット回線を七、八千円で提供できるというようなビジョンが出されております。  これは、勝手に政府が出したビジョンではなくて、通信事業者もほとんど参加されて決めたことでありまして、実現可能性があるという前提で出されておるものでありまして、重要なことは、もちろん移行期の多少の調整も必要だと思いますが、早く次の世代の通信基盤に切りかえる、そうすれば今の料金問題というものは極めて簡単に解決してしまうものだというふうに私は理解しております。
  42. 達増拓也

    達増委員 次は、村井参考人に伺いたいと思います。  すべての人のためのインターネットということで、いわゆるデジタルディバイドの問題について言及され、そういうことのないように、すべての人に対して開かれたネット社会、またサイバースペースであるべきだ、基本的にそのとおりだと思います。  ただ、一方で、サイバースペース、ネット社会というものがまだまだ、例えて言えばアメリカの西部開拓時代のような無法地帯であったり、あるいは大航海時代の海賊がばっこするような時代、私の電子メールアドレス、公開しているアドレスに対しては、ポルノ映像の通信販売ですとかいろいろなビジネスチャンス、大もうけできます、そういうのがどんどん来る。そういったところにすべての人がぱっと一斉に入れるかというと、今の段階ではかなり、無限の可能性と同時に、生き馬の目を抜く厳しさのようなものがあって、いろいろ、薬物販売の問題ですとかハッカーサイトの問題ですとか、一種、強い者だけが生き残るような、強い意思を持って、ちゃんとビジネスのためにとか、あるいはNPOのような社会活動のために利用すると強い意思を持って参加すれば非常に無限の可能性があるんですが、物見遊山気分で入っていくととんでもないことになる。  そういう可能性はすべてに開かれているべきであるけれども、しかし、普通の人が入っていくと非常に危険、ここをどう解決していくべきか、伺いたいんです。
  43. 村井純

    村井参考人 おっしゃることは大変、そのとおりだと思います。そのとおりだと思いますというのは、つまり、現在のインターネットの中で、あるいは電子メールやウエブのホームページの環境の中で、おっしゃるような、こういった場合には、こういったケースには望ましくない、あるいはこういったケースにはもっとこういうふうにあるべきだ、こういうことに対してそういう整備が十分できていないんじゃないかという御指摘ではないかと思います。  さて、そこで一番大きな問題は、インターネット世界というのはデジタル情報技術世界ですので、要求があったときに、その要求に対応する技術がきちんとつくれるのかという問題、それから、その要求を、きちんと私たち社会はこれを定義できているのかという問題、この二つの問題があるわけです。  それで、コンピューターサイエンスの技術ですので、要求が明確になっている場合は、それに対応した技術をつくっていくということに不可能はない。そして、現実的には、今おっしゃったような幾つかの問題に対しては、それぞれの対応した技術ができ上がっていると申し上げていいと思います。  しかしながら、私たち社会やそれからコミュニティー、そして組織の中で、これはどういうものをどういうふうにしたいのだということの明確な定義をつくるだけの十分な力、そういった社会的な力を私たちはまだ持っていないんですね。したがって、ここが多分大きな問題になるのではないかと思いますが、一方では、それができれば、技術的なバックアップはできるわけですから、したがって、ここの議論を十分に尽くし、その要求を明確にしていくということがとても大切なのではないか、このことによって今おっしゃったことは解決をしていけるんじゃないかというふうに思っています。
  44. 達増拓也

    達増委員 村井参考人に引き続き伺いますが、政府の役割として、費用を使えば、西部開拓時代の騎兵隊とか大航海時代のイギリスの海軍のように、入植者とかあるいは商船隊とか、そういう民間の人たちと一体になって、一緒になりながら、あるときはそれを保護し、あるときは自由にやってもらう、そういう形の役回りが期待されているのかと思うのですが、いかがでしょうか。
  45. 村井純

    村井参考人 私、そのとおりだと思います。  ただし、このことをぜひ考慮して考えておく必要があると思っていることがあります。  それは、この分散処理、みんなが力を合わせてつくっていく世界では、コミットメント、それからポリーシング、ペナルティーというこの三つのことが重要だというふうに言われています。すなわち、何をすべきかということを明確にすること、何をしてほしくないかということを明確にすること、そしてそれをきちんとモニターをして見ていく仕組みをつくること、そして最後にそのペナルティーを与える、こういうことです。  したがって、こういった中で動いていくための仕組みをきちんとつくっていくことがある、これが今おっしゃったことのイエスの意味でありまして、もう一つは、インターネットという空間は国際的でありますので、国際的な協調の中でぜひそういった仕組みをつくり上げていくということが重要だというふうに思っております。
  46. 達増拓也

    達増委員 次に、関澤参考人に伺います。  マイクロソフトという会社が、アメリカのシアトル、地方都市に本拠を置いている。これは日本地方都市の現状からすると非常にうらやましいところがありまして、そういう高度情報産業の拠点というのが日本でも地方都市にどんどん育っていかないものかと産業政策的に考えるわけであります。  まだまだ日本の場合、東京や従来の産業の中心が情報産業の中心にもなっていて、一部、徳島市のジャストシステムとか、地方都市に先端的な産業、全国的な企業が立地するというのはあり得るのですけれども、地方におけるそういう情報産業を推進していくに当たってどういうことが求められているか、伺いたいのであります。
  47. 関澤義

    関澤参考人 まず、その地方なりあるいは知事さんなり、我が県は他県と違ってこういうことをやりますということを明確に打ち出される必要があるだろう。  地方分権ということをテーマにあるディスカッションの場でパネラーとして出ましたけれども、地方分権というのは知事さん同士の競争が始まるということですということを申し上げました。いろいろ、最近地方分権で事が起きておりますが、どの県へ行っても同じ、一律ということではこれからは多分だめだと思います。情報通信ということについてこういうことを考えているぞということであれば、情報産業が出ていくということはあり得るし、また地元でスタートアップ会社ができるということはあり得る。  ちなみに、マイクロソフトは、一社で全米で一番太いバンドウイドスの光のシステムを自社に引いております。それをサービスしている電話会社に私どもが光の通信のシステムを納めていますけれども、そのボリュームのすさまじさというのは大変なものであります。そういうようなことが整備されている、これは非常に大事なことだと。  立地条件ということで、鉄道がある、高速道路がある、飛行場がありますという話以上に、非常にバンド幅の広いインターネットの回線がすぐそこに来ていて、大変ハイスピードで情報やりとりができますというようなことが立地条件の重要なポイントに情報産業にとってはなってくるというふうに言えるかと思います。
  48. 達増拓也

    達増委員 以上で私の質問を終わります。ありがとうございました。
  49. 前田武志

    前田委員長 次に、矢島恒夫君。
  50. 矢島恒夫

    ○矢島委員 日本共産党の矢島恒夫でございます。  きょうは、三人の先生方、本当にいろいろな貴重な御意見をありがとうございました。  座って質問させていただきます。  最初に、私は、バイパスの問題で質問したいわけですが、月尾先生の方のレジュメの中の2の(3)、中間構造の消滅というのがございます。もちろん、参考資料の中で読ませていただきました。いわゆるEコマース、電子商取引、こういうことによって直接注文をやる、産地から直送される。私は、一つは、これは省エネルギーになるだろうと思うのですが、その辺のお考えが一つ。  それから同時に、この場合、マイナス面も出てくるのではないかという心配があるわけです。それは、中間の機構で働いている人たちの問題があろうかと思うのです。仕事がなくなるという事態が起こっていくわけですが、これらの問題について、先生どうお考えか、お答えいただきたい。
  51. 月尾嘉男

    月尾参考人 今御指摘の前半について、一つの例をちょっと御紹介させていただきます。  新聞を紙で各家庭まで配りますと仮に一〇〇というエネルギーが要るとしますと、電子新聞で必要な同じだけの情報を家庭まで配りますと、ほぼ五のエネルギーで済む。二十分の一程度で済みます。それから出版では、本を一冊皆様手元まで届けるエネルギーに対して約二・五で済む。つまり、四十分の一で十分できる。そういう意味で、環境というものに対して非常に大きな貢献をします。それから、余分なものをつくらないという点で、現在書籍の世界では、大体四十数%が本屋まで行ってそのまま戻って廃本になるというような、半分近くが不要なものを生産している。ここが全く節約されるという点でも、資源、環境という問題に対して大きく貢献する。  それはなぜかということですが、一つは、今御指摘の後半の問題と関係しますが、中間で使われている労力とかエネルギーとか資源というものが非常に大きく節減できるということにあります。それが同時に、御指摘のように、その部分で今仕事をしておられる方の失業問題なりさまざまな問題につながるということだと思いますが、これは私は、少し長期に見れば避けられない問題でありますので、早くジョブシフトなり産業構造の転換なりをしてそちらへ移っていく体制を用意していただいた方がいいのではないかと思います。  差しさわりがあるかもしれませんが、石炭というものをいたずらにさまざまな保護政策で長年維持するということをやるよりは、早く石炭をやめて別のエネルギー資源にかえるというようなことをした方が、結果的には社会全体の経費を節減するというようなことになったと思いまして、これはもう避けられないという前提で、いかに中間の方々が新しい仕事につき、より社会に貢献していただくようにできるかという政策をお考えいただいた方がいいのではないかというふうに私は思っております。
  52. 矢島恒夫

    ○矢島委員 同じバイパス現象の問題ということで、関澤会長のお話がありました。  そこで、その問題、特に雇用の問題という点でお尋ねしたいわけなんですけれども、ちょっと古くなるかと思いますが、たしか中央公論が「日本的経営の二十一世紀」というシリーズを出したことがありまして、その中で、企業社会的責任がある以上、首を切るわけにいかないという一文を読ませていただきました。人間でなくていい仕事は自動機やロボットにやらせろ、人間でなければいけない面だけ人間がやっていこう、こういうことだろうと思います。  この雇用の問題と、自動化あるいはコンピューター化との問題、いろいろ考えなければならない面があると思うのですが、その一文の中で、たしか雇用の問題で、社内ベンチャーの制度というのが非常に大切だというお考えを述べていらっしゃるのですが、この社内ベンチャー制度についてお話しいただくということと、それから、ベンチャーに対する、政府としてもあるいは国としても支援の税制やそのほかの面でやっているわけですが、ベンチャーとして成功するかあるいは不成功に終わるか。先ほど特徴を持った中小企業のお話がありましたけれども、不成功になってしまう、こういう考え方では成功しないよという何かございましたら、お話しいただきたいと思います。
  53. 関澤義

    関澤参考人 社内ベンチャー制度というのは、随分前から始めたのですが、今は日本でもベンチャー、ベンチャーということで騒がれておりますが、当時は余り騒がれていなかったのです。ただ、私どもがカリフォルニアのシリコンバレーのベンチャーを探し回って先行投資をするというようなことをやっていたものですから、どうして日本ではそういうことが起きないのだろうと。  当時調べましたら、上場までに大体十五年から二十年、会社をつくってから。ナスダックは一年以内に上場する会社が多数あります。そういう制度の問題。そして、当時のトップテンを見ますと、日本では大体サラ金さんが上を占めていました。ハイテクは一社もありませんでした。アメリカのナスダックはほとんどハイテクでありました。  では、富士通という一企業だけで法に触れずにやれることはどこまでやれるかということで、社内で、どちらかというと、おれはこういういいアイデアを持っていて、ぜひやりたいんだがということを言って、大会社、大企業である富士通の既存のがちがちの体制の中ではやれない、不満を持っているという人を募集してつくった制度であります。  ただし、アメリカのベンチャーというのはハイリスク・ハイリターン、いつつぶれるかわからない、それを承知の上でやれということで、富士通を退社してもらって、彼らが過半数の資本を出して、それでもやるならやりなさいということで、道はいっぱいあります、成功した場合には富士通なんてもう縁がないようにしたい、全部株をおれに売れというのも一つ富士通に全部株を買ってくれ、自分はまた新しいビジネスに転出する、あるいは富士通に戻る、こういうのもある。そういう制度で、今たしか十何社あるのですが、まだ一社もつぶれていませんけれども、非常に成功しているところとそうでもないところがあります。  その差ですが、二番目の御質問ですけれども、そうはいっても、販売チャンネルについて、やはりつてをたどって、富士通を頼るようなところは余り成功しないのです。最初に言ったことは失敗したけれども、インターネット時代を迎えて、全く違ったことを自分で考えて、こういうことをやる、やりたい、そういうところは大体成功しているのですね。  市場環境も随分変わってきて、上場するところは多分近々幾つか出てくると思うのですが、とにかく何か企業に頼る、あるいは自治体、官庁、政府に頼るというようなベンチャーは、これは成功しないという一つの類型に入るのではないか。全部が全部そうだとは申しませんが、そういうことではないかと思います。
  54. 矢島恒夫

    ○矢島委員 村井先生にお聞きしたいと思います。  先ほど、すべての人のためのインターネットというお話がございました。実は、そのお話を聞きながら、たしか財界フォーラムの十二月号だったと思うのですけれども、いわゆる格差の問題ということで、先生が書かれている文章がありました。その中で、竹中先生の言葉を引用されて、日本はフラットかというようなお話も出てきております。  そうした中で、アメリカで先ほど、人種だとか、あるいは年齢、地域とか性別、あるいは貧富の差とか、いろいろな格差が生じている問題についての研究がなされたことのお話もございました。  そこで、日本では、竹中先生おっしゃるように、本当にフラットなのかという点や、貧富の差の問題、その幅の問題などが提起されているわけですが、インターネット・イズ・フォー・エブリワン、こういうことに対する日本での障害というのはどんなものがあるか、お教えいただければと思います。
  55. 村井純

    村井参考人 日本独自な問題と、それから日本独自でない、グローバルにもやはり共通な問題ということ、両方あると思います。  それで、日本独自な問題の方では、やはりインターネットの空間での大きな活動というのは、どうしても二種類に分けることができる。  これはどういうことかというと、ドメスティックな対象で、日本人相手に意見を発信したり、情報を発信したり、あるいはビジネスをやったりするということと、それからやはりグローバルなスペースの中でそれをやるということの二種類活動があるとすれば、これはもう明らかに日本人にとって問題になるのは言語の問題になります。したがって、この問題をどういうふうに考えていくのかということは、インターネットを使う人類全体の中では大変大きな問題になるかと思います。  それからもう一つは、先ほどから話題に出ております、やはり電話の上につくったインターネットであるということから生じる、要はコストの問題ですね。  それで、電話料金の問題というものも、インターネット向きのプライシングに早く移行していくということが、先ほど月尾先生のお話にあったような幾つかのメカニズムを経て進んでいくということでなければ、これは大変そういった意味での、いわばいろいろな意味での、広い意味での格差を生み出す原因になるのじゃないかというふうに思います。  それからもう一つ、グローバルな空間の中で生きていくための言葉の問題ということをちょっと触れましたけれども、この中でもう一つとても大切な問題は、私よく聞かれるのは、英語をしゃべれないと、では、インターネットではだめなのか、こういう問題を聞かれるわけですけれども、これは、本当に必要な情報は必要な言葉で得られるという環境がようやくできたわけですから、そうなってくると、情報の価値というものをどういうふうにとらえて、そしてそれを広げていくかということにより、世界の中での日本語の位置づけというのは大変大きくインターネット世界で変わってくる可能性があると思います。  これに対する戦略と申し上げたら強烈過ぎるのかもしれませんが、この問題をきちんと考えているという人が余りいないことを私はとても心配していまして、ここを考えていくことで、この日本世界に対する個人の位置づけというものをきっちりとらえていきたいというふうに思っております。
  56. 矢島恒夫

    ○矢島委員 ありがとうございました。  時間が来て、もう一つ村井先生にお聞きしたい部分がありましたが、またの機会ということで。  私たち日本共産党もホームページを全員が開きまして、いろいろとインターネットについて今勉強しているところであります。きょうは本当にありがとうございました。
  57. 前田武志

    前田委員長 次に、横光克彦君。
  58. 横光克彦

    ○横光委員 社会民主党の横光克彦でございます。  きょうは本当に貴重なお話をありがとうございました。二、三、ちょっと質問させていただきます。  月尾参考人にお聞きしたいのですが、インターネット普及により社会構造が根底から変革する、いろいろな例をお示しの中でお話ございました。非常に私も、そういう時代が本当に来るだろうなという思いを持っております。距離規模、中間の消滅、こういったものが複合したときに本当に巨大な変化社会全体にもたらすだろうというお話でございました。  その中で、先ほどもちょっとお話に出ましたが、流通段階の省略、こういった時代が始まるのではなかろうか。いわゆる生産から個人へ、消費者へというアクセスができるような時代になりますと、個人という需要の原点を中心に社会が動いていく。そうなりますと、一番心配される部分は中間の流通分野ではないかと私は思うのですが、そのことが、確かに、インターネット普及することによって、流通分野はどの分野よりも大きな変化をもたらすという思いをお持ちなのかということと、そうなると、どのような対応がこれから必要なのか。先ほどちょっとお話ございましたが、いま一度お聞かせいただければと思います。
  59. 月尾嘉男

    月尾参考人 御指摘のように、流通分野が一番大きな影響を受けるということは確実だと思います。しかし、これは一方で、社会には大変大きな効果をもたらしておりまして、サービス商品流通コストを大幅に下げるということになるわけですね。  新聞も今、代金の半分は販売店の経費ということに大体なっておりますから、そこがほとんど要らないということは、大幅に新聞というもののコストを下げるということになります。  それから、先ほど最初の話で御紹介させていただきましたデルというコンピューターは、すべて、途中の流通経路を通さず、製造している工場から直接消費者に届けるということで、非常にコストパフォーマンスのいいコンピューターを提供しているために、世界で最大のシェアを持つということになりました。  では、そこで当然起こるさまざまな雇用問題に対してどう対処していくかということですが、一方では、非常に大きな需要を必要としている雇用市場が存在しております。一言で言えばそれはどういう分野かというと、この新しい情報通信手段を使って社会サービスを提供する分野というものであります。例えば、今、テレビジョンというものが数百チャンネルになりますと、この分野で番組をつくるというような産業というのは巨大な産業に成長してまいります。それから、インターネットを通じて販売をするということのためにかかわる人も、大変大きな雇用分野になるということであります。  これは、郵政省が数年前予測した結果では、現在、そのような情報通信手段を使って行うサービスというのは大体四十兆円弱の産業と想定されておりますが、二〇一〇年には七十兆円程度に拡大するという予測であります。  もちろん、それが正確に的中するかどうかは別として、大体そういう社会の趨勢にあるというふうに考えますと、この七十兆円というのは、現在、公共事業を除いた産業分野で最大の雇用をしております輸送機械産業の約一・七倍程度になるということであります。ということは、その分野で非常に大きな雇用を発生させる、しかも、その分野は大変労働集約型の産業でありますので、自動化が進む工場よりもはるかに雇用力は高いというふうに考えますと、新しい分野での雇用は、失われるものよりもはるかに多いというふうに想定していいと思います。  ですから、先ほども少し意見を申させていただきましたが、いかに早くそちらへ労働者の方々がシフトしていける仕組みをつくるかということですね。これは、社会人教育とか再教育というような問題もありますし、どこに需要があるかということを広く情報公開して多くの国民が知るというようなことにもつながると思いますが、いずれにしても、社会全体として見れば、雇用の需要がなくなるわけではなくて、むしろふえるということでありますので、そこへうまく移していける政策というものを検討することが重要だというふうに思います。
  60. 横光克彦

    ○横光委員 関澤参考人にお聞きしたいんですが、インターネット時代になりますと、ホワイトカラーの分野が減るであろう、ブルーカラーがふえるであろう、いわゆるIT産業で雇用がふえるんではなくて、ITを使って雇用がふえるんだというお話がございました。  同時に、政府への期待の中で、政府が最大のユーザーになるべきだというお話がございましたし、そういった意味で、国際貢献の分野で、人材とか指導者の要求が非常に強いという御紹介もございました。いわゆる技術での国際貢献の時代が必要である、そういった時代が始まるんであろうと思います。  そうしますと、やはり先ほど言いました、ブルーカラーの人たちが新たなITを使って技術を習得して新たな雇用を見つけていくわけですが、その中に、国際貢献の分野で政府がそういった分野にまで対応するといいますか、そういった考えもやるべきではないかと私は思っているんですが、そのお考えはいかがでしょうか。
  61. 関澤義

    関澤参考人 御質問は非常に広い範囲にわたっているように思うんですが、二点お答えしたいと思います。  一つは、ホワイトカラーがどんどん余ってくる、それをどうやって新しい仕事に向けるか、これは、今まさに月尾先生がおっしゃったように、社会人教育だと思います。  私どもは社内で随分やっておりますが、やはりこれだけ社会全体の変化が激しいと、国全体としてそういう社会人の再教育ということが必要だろう。アメリカの場合に、大学に相当そういう社会人がたくさん入りますし、コミュニティーカレッジなんかで随分新しい勉強をして、自分の値打ちを上げて新しい産業につく。小学校から中学、高校、大学、そして企業に就職して終身雇用、こういうルールではなくて、社会全体が激しく変わっている中で、必要なスキル、能力を持った人が勉強して次の職につけるような制度、これはやはり国がやるべきことだろうと思います。  それから、国際貢献ですが、これは既に日本では、例えば私どもの分野で申しますと、情報処理技術者試験というのがあって、一級、二級という資格があります。それを持っていればいいということではありませんが、それを持っていれば、あるレベル、あるスキルがある人というのははっきりしています。  さっき申し上げたマレーシアの例なんかは、そういうことが何もないので、一体この人は、自分では情報処理技術者だと言っているけれども、どういう能力を持っているんだろうかというのがわからない。私どものマレーシアの会社の社長が言うには、とにかく雇ってみるしかないんだ、雇ってやらせてみてじっと見ていて、だめなのはもうしようがないと。  その辺は、私も間接的に霞が関の方から伺うんですが、今申し上げたのは情報産業ですけれども、それだけじゃなくていろいろな、そういう資格制度、今の時代に合わないものもあるかもしれませんが、そういうことはやはりアジアの国々にとっては全くの未整備な世界であります。そういうことをきちっとこれからやらなきゃいけないアジアの国々に伝える、大変大きな財産を日本は持っていると思います。これはやはり国家のやることだろうというふうに思います。
  62. 横光克彦

    ○横光委員 関澤参考人にもう一つお聞きしたいんですが、高度情報化が進展する中で、やはり高齢者とか障害者とそうでない人間との間の情報格差がどうしても広がる懸念がある、心配されるわけですね。  先般、郵政省の情報バリアフリー懇談会が取りまとめた報告書でも、この分野はまだまだ市場が小さい、市場が小さいために国などによるさらなる公的支援が必要であるという報告書が出ておりますが、情報通信機器メーカーとして、高齢者、障害者に対応した機器の開発の取り組み状況というものはどのような御努力をされているのか、お聞かせください。
  63. 関澤義

    関澤参考人 例えば、さっき御質問のありました、ベンチャー制度で生まれた、音声関係を得意とする会社が、いわゆる耳の不自由な方とか目の不自由な方が使えるような技術というのを一生懸命開発しております。  確かに、まだマーケットというのは大きくないかもしれませんが、つまり富士通が乗り出すには、いろいろと株主さんに対する責任もあって、これを今本格的に投資していいのかというのがあるかもしれません。でも、得意なわざを持ったそういうベンチャーがそういったところにどんどん出ていく。私どもの社内制度から生まれたベンチャーの中には、我々のコンペティターの仕事をたくさんもらってやっているところがあります。そういう中で情報格差の仕事なんかをどんどん進めるところが出てくるだろう。  我々のベンチャー制度だけでなくて、そういう小さなところがチャレンジ精神で取り組むということは十分考えられる。そういうところを、広い意味での、ベンチャーよ、どんどん出てくれやという国の政策の中で取り込んでいただければいいんじゃないか。  ただ、さっき申し上げましたように、頼る精神の強いベンチャーというのは育ちませんので、余りおんぶにだっこということをやってはいけないんですけれども、小回りをきかせた、そういうところというのは、今申し上げたような、情報格差なら情報格差の分野、スタートアップの分野に非常に役に立つだろうというふうに思います。
  64. 横光克彦

    ○横光委員 村井先生にもお聞きしたかったんですが、時間が来ましたのでこれで終わります。ありがとうございました。
  65. 前田武志

    前田委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。  この際、参考人に一言御礼申し上げます。  参考人各位におかれましては、本日は、非常に貴重な御意見を御開陳いただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時一分散会