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西尾参考人 西尾です。
この
法律案の問題点についてお話をさせていただきます。座って話させていただきます。
お手元に、この
特定放射性廃棄物の
最終処分に関する
法律案の問題点ということで、
幾つかの問題点を挙げさせていただきました。ただし、これはあくまでも十五分間で話ができる
程度ということで書いてありまして、ほかにもたくさん問題があるというふうに思っています。そういうことからすれば、非常に超
長期の問題を扱う
法律案としては、失礼な言い方になるかもしれないですけれ
ども、余りきちんと考えたものではないのではないかというふうに言わざるを得ないということがあります。
それから、この
法律案が出ていることすらほとんどの国民は知らないだろうと思います。ましてや、その中でどういうことが問題になっているのかということについては、全くと言っていいくらいに知らされていないのではないかというふうに思うんですね。
これはまさに国民一人一人がきちんと考えるべき問題だということを、先ほどからお話に出ている高
レベル放射性廃棄物処分懇談会でも言われてきたことであるわけですけれ
ども、そういうことからすれば、本当に国民一人一人がどういうことが問題なのかということを理解していかないといけない。そういうことからすると、急いでこの法案をつくるということについては余りに拙速という気がいたします。
その意味からすれば、これは一たん廃案にして、もっときちんとした国民的な議論を行うべきだというふうに考えております。
さらに、この法案の中で、例えば安全規制については別に定めるということが書かれているわけですけれ
ども、いわば国民の立場からすれば一番知りたいことが、それは後で決めますから、それでいいでしょうということになってしまうということも問題だろうと思います。
そういう意味からすれば、安全規制のあり方も含めてトータルな提案がなされて、それについて十分な時間をかけて議論して、それから決めていく。この法案が扱っていることの中身の時間的な長さからすれば、それぐらい時間をかけることの方がよりよいことだというふうに考えています。
その上で、
幾つか個別の問題点についてお話をしたいと思うんです。
一つは、この
法律案が
原子力発電の推進ということを目的に掲げている。
確かに、
原子力発電をこれからも進めていくべきだという御
意見はあるだろうと思います。しかし、もう一方で、
原子力発電を進めていくことについてはやはりいろいろ問題があって、むしろできることならやめたいというふうに思っている。これは、総理府の世論調査等を見ても、これからも積極的に進めていきたいというふうに思っている国民は非常に少ない。そのことの、私自身の
意見を別にして言えば、やめられるものならやめたいけれ
ども、結局やめられないんじゃないかというふうには思っているかもしれないけれ
ども、少なくとも積極推進だという国民的な世論はないだろうと思います。
そういうことを考えるときに、これが
原子力発電推進のための
法律ですということになってしまうと、ますます国民の側からはこの法案そのものをきちんと考えないことになっていくのではないか。
いずれにしても、
放射性廃棄物、既に現在目の前にもあるわけですし、残念ながら、これから先も
原子力発電を続けていくとすれば、それに伴って発生をしてくるものがあるわけで、これを何とかして安全に
管理をしていかなくてはいけないということを考えたときには、原発を推進するのかそうじゃないのかというようなことが目的に書かれているのではなくて、むしろこれをいかに
長期的に、きちんと安全に
管理していくのかということが
法律の目的にされるべきであるというふうに考えます。
そのことと絡めていいますと、安全の確保ということについて非常にこの
法律案は意識が薄いというふうに言わざるを得ない。原子力安全
委員会の役割についても非常に軽視をされていると思います。
これはこの
法律案に限ったことではないのかもしれませんけれ
ども、
基本的な政策はすべて原子力
委員会が決め、あるいは場合によっては総合エネルギー調査会原子力部会の方で決めて、その上で、原子力安全
委員会はそれに従って安全規制をすればいいという
考え方になっている。これでは本当の意味で
長期的な
放射性廃棄物の安全性を確保するということは非常に難しいと思います。そういう意味からすれば、
基本的な政策をつくる
段階からきちんと安全
委員会が
関与をするような形にするべきであろうというふうに思っています。
それと、この
法律案は再処理ということを前提にしている、それから
地層処分ということを前提にしているわけですけれ
ども、やはりこれは非常に硬直化した
考え方だと思います。
再処理は再処理のメリットがある、デメリットについてもそれはカバーできるというお話もあるわけですけれ
ども、しかし、一方で再処理そのものに対して内外から非常に強い批判の声があることも確かであるわけですし、
原子力発電を進めている中でもさまざまな
意見がある。そういう中で、ほかのところで決まるのではなくて、この
法律の中で再処理が前提になって決められてしまうというのは、議論の進め方の流れからしてもおかしいのではないか。むしろ、そうではないもっと柔軟な規定の仕方があるのではないかというふうに思います。
それから、
地層処分ということについても、先ほどからもお話がありましたように
地層処分そのものの概念がいろいろと変わってきている。もう将来の世代は全く何もしなくていいんですよというのがもともとの
地層処分の
考え方だったと思うんですけれ
ども、この
法律案の中でも例えば記録を永久に残しておくということがあるわけです。ということは、将来の世代が全く
関係なしでは済まされないことになるわけで、そうすると、その
地層処分そのものの概念も揺らいできているといいますか、さまざまな
考え方が出てきている、そういったことがこの法案では全然反映されていないのではないか。
それから、
施設をつくった後の
長期的な
管理についても、法案の説明の
資料等を見るといろいろなことが書かれていたりはするわけですけれ
ども、
法律案そのものの中には、それではどういう形で
長期的な
管理をしていくのか、回収の可能性みたいなことについてはどうするのかといったようなことについて全く何も書かれていないということがあります。これはやはり非常に問題が大きいというふうに思っております。
それから、
段階的に
処分地を選んでいくということがあるわけですけれ
ども、いわばだんだんに絞り込んでいくそもそもその出発点になるところ、文献調査で決めていくというのですけれ
ども、ではどういうふうな形でその文献調査をする、
場所を選んでどういうふうにそれは調査をするのか、その調査をした結果はどういうふうに公表されるのかといったようなことについては全く知らされていない。そうすると、この法文の上では、
概要調査地区にあなたのところは選ばれましたよということになったときに初めて知らされることになるわけで、これは非常に不透明だというふうに思います。
それから、そのときの基準なんですけれ
ども、どういうところを選ぶのか、これはまさに
最終処分地というものを絞り込んでいく過程ですから、現実にその
処分地はできるところを選ばなくてはいけないわけですけれ
ども、そういったものになっているのかどうかということがあると思います。
通産省の方では、アメリカの核
廃棄物政策法では基準の項目しか規定していないけれ
ども、この法案では
基本的要件を規定しているというようなことを説明されているわけです。お手元の紙の三枚目に今回の法案とアメリカの核
廃棄物政策法の項目を並べて示してありますけれ
ども、それを見ていただくとわかるように、確かに
基本的要件を規定しているという、言葉はあるにしても、その中身について言えば非常に薄い。アメリカの項目だけを挙げているものの方がはるかにさまざまな項目を挙げているわけですし、あるいは先ほどの
坪谷さんのお話の
資料の中にも、選ぶところの「安定な
地質環境の
選定(考慮すべき事項)」として、
地震・
断層、
火山活動、隆起・沈降・侵食、気象・海水準変動、
地下資源の存在というようなことが並べてあるということから比べても、ほとんど何も書かれていないに等しいということが言えるだろうというふうに思います。
あるいは、
核燃料サイクル開発機構のいわゆる第二次取りまとめの中ではそのことが、可否の要件、いわば除外
条件みたいな形と、それから考慮すべき
条件として、
幾つか挙げられている。そういったことすらこの
法律案の中には入ってきていない。
そういうことがきちんと明らかに示されていないとすると、現実問題としては、従来の
方法と言われました、先に
場所を決めて後から
条件がついてくるようなことになりかねない。これではやはり困ったことになるというふうに思います。そういう意味では、きちんとした要件があらかじめもっとはっきり示されるべきであるというふうに思いますし、その要件がきちんと
選定されているのかどうかについて評価をするシステムというものも、あらかじめきちんと決めておく必要があるだろうというふうに思っています。
それから、
概要調査地区等選定の手続で、都道府県知事、市町村長の
意見を聞くことにはなっているわけですけれ
ども、
意見を聞いた後で、ではその
意見に従ってどうするのか。
意見を聞いてノーと言われたらばもうそこは候補地にしないということがここには書かれていないわけですけれ
ども、そうすると、一たん決めたところをいつまででも、何遍も何遍もイエスと言うまで聞き続けるようなことにもなりかねない。そういったことについての歯どめというものもないわけですし、都道府県知事あるいは市町村長の
意見を聞くときに、住民の
意見を聞くことについては全く制度化されていない、そのことも非常に大きな問題だろうというふうに思っています。
それから、金額について、必要な金額が本当に確保されるのかどうかということについて非常に不安です。実際には、今言われている金額よりもはるかに大きな金額がかかるのではないか。しかも、作業が進んでいく、後の方になればなるほどかかってくるときに、今ここで言われているような資金確保の
方法で本当に資金が確保できるのかということがあるだろうと思います。
さらに責任の問題について言えば、電力会社の発生者責任ということについて、この法案はやはり非常に軽いと言わざるを得ない。もともと電力会社が
廃棄物を発生させているわけですけれ
ども、結局この法案ではその電力会社の責任はどこかへ行ってしまって、
処分の実施主体がその責任を負うことになるわけですけれ
ども、その責任の負い方についてもまだはっきりしないところがあります。
特に、埋設が終わった後、閉鎖をしたその後はどうするのかというようなことについての責任の所在というのは、非常にあいまいなままになっていて、通産省の説明
資料として事前に配られているものからすると、かなりのところを国が
関与するようにも見えるし、きのうあたりの国会の答弁を聞いていると、その辺もまたそうでもないようなことも言われている。非常にあいまいなままになっている。そこはやはりきちんと
法律の中に決めておく必要があるだろうというふうに思います。
それに関して言えば、国が最終的に国民の安全を守るという責任はあると思うのですけれ
ども、事業者が本来やるべき責任を国にかぶせるようなことというのは、非常にまずいというふうに思っています。やはり国の責任と事業者の責任ということをきちんと明確に区分することが必要だろうというふうに思っています。
そういったことを含めて、まだまだたくさん問題がある。そのことを本当にきちんと議論するような
機会というのがやはり今までつくられてきていなかったというふうに思います。確かに高レベル
廃棄物の
処分懇談会であるとかで
意見を聞く会みたいなことを何カ所かでやられたりということもしているわけですけれ
ども、残念ながら、多くの国民がそのことについて本当に一人一人自分の問題としてとらえるようになっているかというと、そうはなっていないというふうに思います。
そういうことからすれば、もっときちんとそういうことができるような時間的余裕がないわけではない。確かに諸外国よりおくれているという話もありますけれ
ども、諸外国が進んでいるといっても、実際にそれによって
処分ができているところというのはないわけですから、ここで慌てることよりも、もっと本当に国民的な議論ができるようなことをする方がより堅実な
やり方だというふうに思っています。
特に、高レベル
廃棄物をどういう形で
管理する、あるいは
最終処分ということをするにしても、いずれにしてもその
施設というのは恐らくだれも引き受けたくないところ、しかしどこかでやらざるを得ないということになるとすれば、そのことを、このままでいったらばむしろ
法律はつくったけれ
ども何も進まないということになってしまう。そうではなくて、本当に引き受けるところがきちんとつくられるようにするには、もっときちんとした議論があらかじめ必要だろうというふうに思います。
まとまらない話で大変申しわけないのですが、一応、最初の
意見ということにさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)