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太田参考人 経団連の
太田でございます。座って発言させていただきます。こういう
機会を与えていただきまして、ありがとうございます。
早速、
再生資源の
利用の
促進に関する
法律の一部を改正する
法律案につきまして、
経団連の
考え方を申し述べさせていただきます。
まず最初に、今回の
改正案についての
考え方でありますが、従来の
リサイクル対策に加えまして、新たに
リデュース、
リユース対策を盛り込んだことが特徴と理解をしておりまして、その
方向性に
経団連は賛成をいたしております。
後ほど、
経団連の
循環型社会に向けた
取り組みを御紹介いたしたいと思いますが、今回の
法改正は、
産業界の自主的な
取り組みと一体となって
リサイクル等の
推進を図るものと考えております。
ただ、ここで一点だけ強調をしておきたいと思いますのは、この
法律の
運用に当たりまして、
産業界が既に行ってきた
業種、
業態を踏まえた、
自主的取り組みと言っていいと思いますが、そういう
取り組みを最大限尊重していただきたいという点であります。
政省令を定め、具体的な
取り組みの枠組みをこれから規定されていきますと、それに伴って
業種、
製品についてはそれにある程度従ってまいりますが、その際、十分に実態を踏まえていただくことが不可欠でございます。
それでは、
産業界が、これまで
リサイクル、
リデュース、
リユース、いわゆる三Rへの
取り組みをいろいろやってございますが、それを踏まえまして、今回の
改正法の
運用に当たり特に御考慮いただきたい点について、やや具体的に四点ほど申し上げたいと思います。
まず第一の
廃棄物の
発生抑制、つまり
リデュース対策でございますけれども、
産業界は既に、
設計段階から
製品の
長寿命化に努力するですとか、あるいは
使用済み製品が
リサイクルしやすくするようにさまざまな
取り組みを行っております。
ここでのポイントは、
発生抑制につながる省
資源、
長寿命化というものと
技術革新の
バランスの問題でございます。例えば車を例にとりますと、いわゆる排ガスですとか燃費の
効率ですとか、こういった
環境に配慮することが一方で求められておりますので、
技術進歩に
対応してこうした
対策車を買いかえていただくということも重要でございます。つまり、
製品の
特性に合わせて
長寿命化と
技術進歩の
バランスをうまくとっていただくことが重要であるという点であります。
それから次に、
リユース対策、
部品等の再
使用の問題であります。
ここでは、企業としては
安全性の確保にも努めなければならないということでございますので、これまた自動車の例をとりますと、経年劣化した
部品を組み入れるという場合には、
安全性が十分に担保されていなければならないという問題もございます。
それから、
技術開発との
バランスの
観点から申し上げますと、例えば
情報機器の場合には、省
資源の
観点からしますと、
小型化あるいは多
機能化のための
技術開発が極めて著しい、激しく行われております。したがいまして、
部品を保管しておりましても、必ずしもそのまま使えるわけではないという問題もございます。
それから
三つ目ですが、
回収、
リサイクルの
推進の問題、これは
拡大生産者責任の
考え方に密接に関連していると思いますが、この
回収、
リサイクルの問題について、今後
政省令で定められる際、やはりこれも、
製品の
使用形態等の
特性を踏まえた
製品ごとの仕組みをつくっていただきたいということでございます。
拡大生産者責任の
考え方について
経団連がどんなふうに考えているか、やや皆様には当然のことと思われるかもしれませんが、あえて申し上げさせていただきますと、既に
容器包装リサイクル法や
家電リサイクル法では、
使用済み製品の引き取り、
処理、
リサイクルにかかわる
地方公共団体、
事業者、
消費者の
役割分担が明確にされております。これらは、いわば
業種、
業態の
特性に合った合理的、
実効性のある
製品ごとの
システムであるというふうに
評価をしております。
そこで、問題は、こうした
拡大生産者責任の
議論をしておりますと、いつの間にか
生産者、
事業者が引き取りから
処理まですべての
責任を負うべきであるという、いわば、私どもはこれを
全面生産者責任と言っておりますが、ゼロ
生産者責任というのはつくったものに一切関知しない、関与しないというのがゼロとしますと、その対極にある
全面生産者責任というのは、すべて
責任を負えという、これが無意識のうちに展開されている場合がよくあるという点であります。
この
全面生産者責任という
考え方は、
製品価格に
リサイクルするための
コスト、つまり、引き取り、
回収、
処理コストを上乗せする、あるいは
内部化されているということになりますと、どんな
価格であれ、
消費者が
リサイクル費用をもう既に払っているということになりますので、
生産者、
事業者が個々の
消費者の使い終わった
製品を引き取りに行くべきであるという結論になってしまいます。これは極端なケースですけれども、空き地などに捨てられた
製品の引き取り義務、そして適正
処理する
責任も負わなければならないといういわば極めて不合理なことになってしまいます。つまり、
不法投棄対策の
処理回収コストまで負わなければならない。
しかしながら、申し上げるまでもございませんが、
循環型社会の
形成推進のためには、
生産者はもとよりでございますが、
行政の参画と並んで、
製品の購買、保守を含む
使用段階あるいは
廃棄という
段階で一定の
役割を持つ
消費者の協力が絶対に不可欠であると思います。これは、
製品ごとにいろいろな
システムが組めると思いますが、
基本的には、
消費者が使い終わった
製品を
廃棄する場合には指定の引き取り場所へ持っていくとか、もしそれがかなわない場合には、
運送業者、
運搬業者等、あるいは
販売店等に
負担をして引き取っていただくとか、さらに、
処理費用についても適宜
負担することが妥当ではないかと考えております。
消費者による
排出時の
処理費用の
負担というのは、メンテナンスに注意を払うでありますとか、いわば
長期使用を助長する、そういった
観点から
排出抑制にもつながってくると思います。もちろん、若干、
不法投棄という極めて厄介な問題もあるということは承知しております。そもそも、
製品価格に
内部化をされるといっても、
製品の
販売時に、将来
廃棄される時点での
処理コストというのを算定するというのは極めて困難だという問題もあると思います。
いずれにしましても、
製品の
回収、
リサイクルの
推進というのは、
社会全体として
循環、
効率性、
実効性、
公平性が確保されて、
製品ごとに
流通形態あるいは
消費形態、さらには
製品の持つ
有害性、
処理の
困難性、こういったものに合った形で、
事業者、
消費者、
行政が
一つの輪となって、これはいずれが欠けても成り立たない問題でありますが、輪となって進めるということが重要であるということを申し上げたいと存じます。
それから、次の問題ですが、副産物、いわゆる
産業廃棄物と言われる副産物の
発生抑制、
リサイクル対策の問題であります。既に
産業界では、
リデュース、
リサイクルの結果として、最終処分量を極力減らすということが最重要であるという認識のもとに、最終処分量削減の
観点から
廃棄物対策に取り組んでまいりました。
それで、最終処分量の削減についての
経団連の
取り組みというのは後ほど申し上げたいと思いますが、
原則として、やはり
リデュース、
リサイクルの対策は、みずからの
産業について
技術的、
経済的に熟知したそれぞれの
業種が、業界が最も
効率的と思われるそれぞれのやり方で自主的に取り組むことが、
効率性、
実効性の
観点から望ましいというふうに考えております。
この点に関連して、今回の改正
リサイクル法案について一点申し上げますと、いわゆる
事業者に対する副産物有効
利用計画の策
定義務というのが導入されております。これは、
廃棄物処理法に基づいて既に一部の
地方公共団体において行われている、多量
排出事業者による
産業廃棄物の
処理計画作成との重複という点がございますので、これについて十分留意をしていただきたい。
法案には、第十四条におきまして、
環境大臣と密接に連絡して行うものとすると書かれておりますが、改めて指摘させていただきました。
以上が、改正
リサイクル法案への
経団連の
考え方でありますが、関連して、今後
循環型社会の形成に向けて
社会全体として取り組む必要がある、いわば残された課題というものについて、三点に絞って説明をさせていただきたいと思います。
まず
一つは、
処理・処分場の整備の
促進の問題であります。
リサイクル施設も含めまして、
廃棄物の
処理・処分施設の整備
促進が極めて重要でございます。先ほど触れましたように、
経団連は昨年、
産業廃棄物の最終処分量の減量化目標を発表いたしております。
いろいろ資料をお配りしておりますが、資料第三をごらんいただきたいと存じます。ほかの資料につきましては適宜お目通しをいただければ幸いでございますが、資料第三の一ページをごらんいただきたいと存じます。一番下に、
経団連の
産業廃棄物最終処分量の減量化の目標の内容を記してございます。
かねてから、
廃棄物問題について業界ごとにいろいろな目標と対策を立てて、それを世の中に発表してまいりました。しかし、
産業界全体としてどういう
取り組みをしているかわからないではないかというような御批判もいただきましたので、二〇一〇年度におきましては
産業廃棄物の最終処分量を一九九〇年比七五%削減する、つまり四分の一にするということであります。これを九六年度に比べますと七〇%削減する、つまり三〇%に落とす。これを
産業界全体の目標として設定し、今後、最終処分量の削減を対策の
基本として各業界において
自主的取り組みを一層進め、みずからの定めた目標の達成を目指すことにいたしております。
一ページめくっていただきますと、二ページ目にはグラフを載せてございます。
この目標は、政府が昨年九月に発表いたしました二〇一〇年度の最終処分量を九六年度の半分にするという目標からしますと、
経団連では三〇%にするということで、その目標を上回っております。しかし、農業部門あるいは私どもが使います上下水道から出る汚泥、これは
産業廃棄物に入っておりますが、これが
産業廃棄物全体の三五%強を占めておりまして、
経団連の目標にはこれが入っておりません。したがって、政府の目標とは直接比較することはできません。
そうはいっても、その点を差し引きましても、
産業界の
取り組みというのはかなり思い切ったものであるというふうに我々は自負をいたしております。これは毎年レビューをいたしまして、その結果を公表いたしますし、できれば目標の改善にも努めてまいりたいと思っております。
ここでの問題は、このように
リサイクル対策などを進めて最終処分量をできるだけ減らすといっても、ゼロにはならないということであります。
厚生省の調査によりますと、ここへ来て最終処分場の新規の許可件数というのは激減しておりまして、処分場の残余年数というのは、昨年九月末現在で一年半というようなことになっております。このまま推移いたしますと、幾ら最終処分量を減らしていっても、早晩我が国の
経済社会は行き詰まってしまうのではないかという、いわば非常に緊急事態に直面する可能性があるということであります。
施設整備に当たりまして、
産業廃棄物の
処理、処分の
責任を持つ
排出者である企業が
中心的な
役割を果たすべきは当然であります。しかしながら、企業が土地や資金、設備や人員を手当ていたしましても、周辺住民を初めとする利害
関係者の合意を得ることが極めて難しい、そのために建設許可がおりないというのは御承知のとおりでございます。民間企業の力にはどうしても限界がございます。したがいまして、国や地方の政府が協力をしていただきまして、利害
関係者間の合意形成に向けた透明性のある手続をぜひとも確立していただきたいと考えております。
例えば、施設整備の作成計画についての必要性についての合意、計画そのものについての合意、実行
段階の手続面についての合意、あるいは立地基準、どんなところに立地できるのか、さらには施設基準、それから運営基準、運営には例えば住民の代表者がマネジメントに参画をするとか、情報開示のルール、こういったものを早急に整備をしていただくことが重要と考えております。
二つ目の点は、
不法投棄あるいは不適正
処理対策であります。厚生省の調査によりますと、
不法投棄量そのものは、
産業廃棄物四億トンのうち四十万トン程度でございますが、事態はかなり深刻でございます。しかも、
不法投棄自体が小口化、多発化している、いわば悪質化しているという点であります。
今後は、まず第一に、一層
不法投棄に対する取り締まり、摘発に取り組んでいただく必要があるということであります。
第二は、
処理業者の許可要件の見直しの問題であります。これは捨て得を許すといいますか、捨て得が認められ、優良なといいますか当たり前にビジネスをやる
処理業者が報われない、そういう状況を改善して、当たり前のビジネスが持続可能となるような条件整備をしていただきたい。
例えば、
不法投棄行為者が逮捕されましても、行為者が資金不足であるという場合が間々見受けられます。そこで、あらかじめボンドを積んでいただいて、ボンドを積むことを義務化するということによって、例えば資金不足で支払えないといった場合には、このボンドを徴収するというようなこと。
あるいは、
廃棄物を取り扱う人が何の知識も持たないで運んだり
処理をするというのも問題かと思います。
有害性の有無等について必要最小限の知識を持つ技能者を置くことを義務化するというのも
一つの
考え方であろうかと思います。また、優良な
事業者を国等が選定するいわゆるマル適マークの導入、あるいは
ドイツなどで行われております監査
制度の導入なども有効ではないかと思っております。
最後になりましたが、
不法投棄の問題というのは、
排出元である企業の
責任のとり方の問題もございます。適正な
処理委託料を支払うことでありますとか、最終
処理までの確認を含むマニフェスト
制度の遵守、これを厳密に遵守するということであるとか、あるいはみずから自社
処理を
推進する、優良業者との
連携強化ということについても努力をする必要があると思います。この点については、廃掃法の改正によって若干強化されつつあるというふうに理解しております。
なお、
不法投棄問題につきまして、御参考までに申し上げますと、
経団連は、優良な
産業廃棄物処理施設の整備
促進を図ることを目的といたしまして、財団の設立、運営に協力しておりまして、二十億円の拠出を行っております。また、
不法投棄の対策につきましても、
社会的
責任から、
産業廃棄物の
不法投棄原状回復基金に資金を拠出いたしまして、
地方公共団体が
不法投棄物の撤去などの原状回復事業を行う際には、その必要経費の半分を
負担しております。
最後に、三点目でございますが、現行法において見直すべきやや長期的な課題についてつけ加えておきたいと存じます。
それは、まず一般
廃棄物と
産業廃棄物の区分を見直すといいますか、廃止をしていただくということであります。これは
有害性の有無に着目して、一体的、合理的、適正な
処理を
推進するという
考え方であります。ヨーロッパの多くの国々では、
日本のように一廃、産廃と分けて別々のルートで
処理をするのではなくて、
有害性の度合いに応じて一括して
リサイクル処理あるいは
廃棄物処理をする
体制が確立しております。
また、自区内
処理原則というのがございます。これも
考え方としてはよくわかりますが、例えば東京都をとりましても、都内で発生する
廃棄物をすべて自区内で
処理するということは、実際には困難でございます。そうした実情を踏まえまして、都道府県を超えて広域
処理ができるような必要な措置を講じていただきたい。
今後、
循環型社会を
推進していくに当たって、現行の法
制度の中には、今申し上げたような問題、あるいは規制の問題というのがあるということをつけ加えておきます。
以上、改正
リサイクル法案についておおむね賛成であるということ、そして
循環型社会の形成に向けて取り組むべき課題等について御説明をさせていただきました。
どうも御清聴ありがとうございました。(拍手)