○枝野
議員 私は、ただいま議題となりました
消費者契約法案について、提案者民主党を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。
私たち民主党は、
経済社会においては
市場原理を徹底する一方で、あらゆる人々に安心、安全を保障し、公平な機会の均等を保障する共生
社会の実現を目指しています。このため、行政による
経済的規制の撤廃を推進する一方で、公正な
経済取引ルールの確立に努力してまいりました。
とりわけ、
消費者と
事業者との間に存在する情報力や交渉力の格差を是正し、実質的な公平公正を
確保するためのルールづくりは、共生
社会を実現する上で不可欠な最重要課題として位置づけ、党を挙げて取り組んでおります。
まず、結党から四カ月後の一九九八年八月、党内に
消費者保護プロジェクトチームを設置し、
消費者政策全般について検討を開始いたしました。その結果、近年における
消費者トラブルの増加、
経済のサービス化、国際化の進展、高齢成熟
社会の到来などの動向をも踏まえ、個別法による
対応や行政指導型の規制ではなく、
消費者取引における契約締結過程及び契約条項についての包括的な民事ルールの立法化が必要であるとの認識に至りました。
すなわち、これまで
消費者契約を規律してきた民法は、対等な力
関係にある個人間の取引を前提としてつくられておりますが、施行から既に百年が過ぎ、私たちを取り巻く
環境が大きく
変化しています。個人とは比較しようのない大規模な
企業が商品やサービス提供の中心となり、また、商品
流通の過程が複雑化するとともに、商品やサービスそのものの性質も著しく複雑化しています。もはや、商品やサービスについての情報を独占し、
流通過程にアクセスできる
事業者と、一個人としての
消費者とでは、取引の場面に立った時点で、情報力や交渉力において決定的な格差があることを否定できません。民法だけでは、実質的な不公平、不公正が生じており、民法そのもののルールを包括的、本質的に改める必要があるのです。
こうした視点から、私たちは、
経済企画庁にとどまらず、
消費者団体や弁護士会などからヒアリングを行い、一般
消費者の声も尊重しながら、党独自の
消費者契約法について詰めの作業を進めてまいりました。
その結果、昨年十月のネクストキャビネット発足を経て、足立
消費者・
産業担当ネクスト
大臣のもと、
消費者問題調査会で最終的に
法案を取りまとめ、昨年十二月十日、百四十六国会に
提出するに至ったのが本
法案であります。
以下に、本
法案の概要を説明いたします。
第一は、
法案の
目的であります。
消費者が
事業者と対等な立場において契約を締結することができるよう、
消費者契約の効力等に関し必要な事項を定め、
消費者契約の締結過程及び内容の適正化を図るとともに、
実効性を
確保するための
措置を講ずることにより、
消費者の利益を
確保し、国民の
消費生活の安定及び向上を図ることを
目的としております。
消費者と
事業者との実質的な対等性の
確保という本
法案の趣旨を可能な限り明示した
目的となっております。
第二は、定義であります。
まず、
消費者契約を、個人が主として
事業に関連しない
目的で
事業者と締結する契約と位置づけ、
消費者をこの場合における個人と定義しております。主として
事業に関連しない
目的であるならば、付随的に
事業に関連して使用される場合についても
消費者契約に含まれることを、条文上明確にしております。なお、労働契約は
消費者契約から除外しております。
第三は、
消費者契約における契約締結過程の適正化についてであります。
事業者が、
消費者に対し、重要事項について
消費者が理解することができる程度に情報を提供しなかったり、不実のことを告げた場合、威迫した場合、
消費者の判断力不足に乗じて勧誘した場合などについて、
消費者は、意思表示の取り消しができることとしております。取り消しの時効は、追認が可能になったときから三年、契約締結から十年と定めております。
第四は、
消費者契約における契約内容の適正化についてであります。
まず、
事業者には、契約内容の明示、契約条項の明確化等の
義務を課すことといたしました。また、内容が
社会通念上異常であるためその存在を
消費者が予測できない事項、すなわち不意打ち条項は無効とします。さらに、
事業者が一方的に法律
関係の設定または変更を可能にすることなど、いわゆる不当条項も無効としております。
第五は、
実効性確保の
措置などであります。
内閣総理
大臣による不当条項削除等の勧告及び内閣総理
大臣への申し出などの
規定を盛り込んでおります。さらには、
政府に対し、法施行後三年を目途に、
消費者団体による差しとめ訴訟などについて検討し、必要な
措置を講ずるよう求めています。
なお、
政府からも
消費者契約法案が
提出されておりますが、民主党案から三カ月もおくれての
提出であります。後から出てきた
政府案との違いを詳細に述べるつもりはありませんが、若干違いを説明いたします。
まず、
政府案が
消費者に情報提供すべき重要事項の範囲を殊さら限定しているのに対し、民主党案は必要十分な範囲としております。また、契約取り消しの対象となる悪質な契約締結過程について、
政府案が不退去罪または監禁罪に該当するような著しく狭い範囲で定義しているのに対し、威迫された場合や困惑させられた場合を広く対象としております。さらには、不意打ち条項を無効としていること、契約取り消しの時効を長くとっていること、
実効性確保のための
制度を盛り込んでいることなどにおきまして、
政府案よりもすぐれた内容になっております。また、不当条項に関する一般条項についても、
政府案よりも明確な
規定になっております。なお、
政府案にある「
消費者の努力」という法的に無
意味な
規定は盛り込んでおりません。
以上が本
法案の趣旨と概要であります。
委員会審議における
委員各位の御理解と御協力をお願い申し上げまして、趣旨の説明とさせていただきます。ありがとうございました。