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森参考人 私、
国会等移転審議会の
会長を仰せつかっております
森亘でございます。
本日、この場に
参考人としてお招きいただきましたので、私
どもが昨年の十二月二十日に提出いたしました
答申の
内容について御
説明申し上げたいと存じます。
国会等移転審議会におきましては、
平成八年の十二月でございましたか、ほぼ三年前に、
内閣総理大臣から、
国会等の
移転先の
候補地の
選定及びこれに関連する
事項について
審議会の
意見を求める、そういう諮問をちょうだいいたしまして、以来、約三年にわたりまして
審議を進めてまいりました。
すなわち、私
どもが与えられております最も大きな
使命は
候補地の
選定であるということ、それからまた、その後、より具体的な
事柄については、諸般の
事情を御勘案の上、
国会でお決めになるということ、そのように承知いたしております。
皆様方のお手元に
二つの
資料が配られているかと思いますが、
一つは薄いとじたものでございまして、
国会等移転審議会答申、それからもう
一つは
厚目のとじたものでございまして、
参考資料でございますが、折々これについて引用しながら御
説明申し上げたいと思います。
答申の薄い方の第二ページの第一章、いわば
冒頭に近いところに書いてございますが、
審議会では、こうした
首都機能移転というものが、
日本の将来にとって、
国政のかかわり、あるいは対外的にも極めて重要な問題であって、決して十年、二十年といった短期ではなしに、場合によっては世紀を超えて
考えなくてはならない、育てなくてはならない大きな問題であるという
認識のもとに、
先ほど申し上げましたように、
論議を三年ほど続けまして、そして昨年の十二月二十日に
答申を取りまとめ、
内閣総理大臣に提出した次第でございます。
承っておりますところによれば、翌二十一日には、
移転法第十三条第二項に基づいて、その
答申が
内閣総理大臣から
国会に
報告されたと承知いたしております。
内容を御
説明いたしますに当たって、まず
結論を先に申し上げた方が御理解いただけるかと存じますので、
結論を申し上げるといたしますと、これは
答申の薄い方のとじた
資料の四ページでございますが、
栃木・
福島地域、それから
岐阜・
愛知地域のこの
二つの
地域に関しましては、後ほど御
説明申し上げますが、
総合評価の
点数が非常に高い、それからまた
数字に関する限り、相互に大きな差を認めることができませんので、順位をつけずに
候補地として
選定するといたしました。
また、これに関連いたしまして、
茨城地域は、
栃木・
福島地域及び
岐阜・
愛知地域の
二つの
地域に次いで
総合評価の値が高うございます。それからまた、持っております特色として、
自然災害に対して極めて安全という
数字が出ておりますことから、
栃木・
福島地域と
連携をして、そしてそれを支援、補完する役割が期待される、そのようにいたしました。これは
茨城地域に関してのことでございます。
それから、
三重・
畿央地域につきましては、
総合評価の
点数は低うございますが、地理的に京都、大阪に近く、それからまた
伝統文化の厚みといった他の
地域にはない
特徴がございますので、将来、諸
事情が改善されることがあれば、
候補地の
一つになる
可能性がある、そのような
答申をした次第でございます。
このように
複数の
候補地を
答申いたしました
理由は、わかりやすく申し上げるといたしますれば、
先ほども申しましたように、
総合評価の結果、すなわち
数字でございますが、上位二者については特にはっきりとした大きな差を認めることができなかった、それからまた
冒頭に申し上げましたように、我々の
審議会がちょうだいしております
使命というものが、必ずしもこの問題に関する最終的な
結論を得るということではなしに、私
どもの
意見を添えて、できるだけ多くの
資料を
皆様方に提供いたしまして、
国会におかれまして十分な御
論議をいただきたい、そういう趣旨もあって、あえて
一つに絞ることはせずに
答申した次第でございます。
また、
先ほど申しましたページの三段落のところに、
首都機能の
移転という問題は、これは決して一朝一夕に完結する問題ではございませんし、それからまた
近傍の
都市あるいは同じ
地域の中のほかの
地域、より小さな
地域との
連携が大変必要である。すなわち、
移転を決定することも大事であるけれ
ども、その後それを育てていくということが、場合によってはより以上に大切なことであろうかと
考えております。
このような
答申の
結論に至った経緯を申し上げることがよろしいかと存じますが、
答申の五ページにございますように、
審議会は
客観性と公正さということを最も重視いたしました。
第一
段階では、
全国を
対象とした
調査を行いまして、一応
条件にかなった
三つの
地域、これはかなり広い
地域でございますが、私は仮にこれを
方面などと呼んでおりますが、
北東地域、
東海地域、
三重・
畿央地域という大きな、より広い
地域を
選定いたしました。
第二
段階では、このおのおのの
地域について、十六、正確には十八の
項目について、それは、例えば
交通の便がどうであるかとか、あるいは
地震の
危険性がどうであるかとか、そういったことでございますが、そういう
項目について、
専門家によって詳しい
検討が行われたわけでございます。
そして、第三
段階では、そういった
選定作業をさらに具体的なものにするために、
先ほど申しました
三つのより大きな
対象地域の中から、非常に
具体性を持ち
実現性を持っているものとして、十のより小さな
地域を選んで、そして、この十のより小さな
地域を、いわばその
時点での
候補ということに決めたわけでございます。
この十の
地域を
考えるに当たりましては、
先ほど申し上げましたように、空港とか道路とか鉄道とかという
交通の便利さ、あるいは
安全性、それから
関係府県の意向な
ども伺っております。それからまた、
幾つかの
府県にまたがる場合には、歴史でありますとか
文化でありますとか人の流れでありますとか、そういうこともできる範囲で勘案したつもりでございます。
こういう十の
地域を
評価するに当たりましては、基礎となるその十六ないし十八の
項目についての
専門家による
判断を最も重視いたしましたが、その場合に、重みづけ
手法ということも使って事を進めてまいりました。
重みづけ
手法と申しましても
皆様方にはなじみのない言葉であろうかと存じますが、例えば、
学生が
学校で
成績表というのをもらってまいります。
国語とか
算数とか
社会とか
道徳とか、いろいろな
項目があると思いますが、それは
それなりに大変重要で、いずれも重要な科目と
考えております。ただ、
学生を、
生徒を、そういう
成績表だけによって今度さらに上級の
学校で採用したいというときには、例えば、仮の話でございますけれ
ども、
医科大学であれば、何よりも
道徳が大切であるとか、あるいは患者さんによく
説明できるように
国語の能力もおろそかにできないとか、あるいは、
理学部系統でありますれば何よりも
算数の力が大切であるとか、そういう、受け入れる側によって多少重点の置き方が違ってまいります。
これは、受け入れる組織なり
団体によって違うだけではございませんで、個々人によっても
考え方が違うところでございますので、この場合には、
審議会の各
委員に、いずれも重要な
項目ではあるけれ
ども、そのうちのどれをどの程度重視し、どれは、重視するといえ
どもやや軽くてもいいのではないか、そういう
判断を仰いだ、これが重みづけでございます。したがって、
専門家の
方々によって提出されました基礎的な
資料にそういう重みづけを加えまして、それで若干の補正を加えたということになろうかと思います。
このようにいたしまして、十の
地域すべてについて数値化したわけでございますが、この
内容は
参考資料の中に記されております。
内容と申しますか結果が、
参考資料の二十九ページに、
縦軸にいろいろな
評価項目、それから
横軸の方には十の
地域が並べられて書いてございます。詳細は、時間の
関係もございますので、後で御
質問いただければと存じます。
このようにいたしまして、私
どもは、
専門家による
検討の結果の数値、それから、それを
委員会の各
委員の良識による重みづけということで、総合的に
判断いたしました。
ただ、それにしても、そこに出てくるものはなお
数字でございまして、実際、人間あるいは生き物であろうが、あるいはこういう
都市あるいは
生徒であろうが、
数字だけで
判断するということには時に若干の危険も伴いまして、
数字にはあらわし得ない
特性といったようなものもあるに違いない。
したがって、繰り返しになりますけれ
ども、
数字を最も重視するけれ
ども、そういった
数字にあらわし得ない
特性についても決しておろそかにはすまいという
考えで事を進めてまいりました。
先ほどから十の
候補ということを申し上げておりますが、やはり
答申をするためには数を減らさなくてはなりません。その減らす第一
段階といたしましては、一方には
数字、一方には
特性ということがございましたが、たまたま私
どもの
審議会では、事の進め方として、まず
特性について粗ぶるいをいたしました。そしてその結果、最終的に残っております、
栃木・
福島、
岐阜・
愛知、それから
三重・
畿央、そして、
自然災害に対して極めて
安全性が高い、これも
特性の
一つである、そういう
理由で
茨城と、この
四つにまず絞ったわけでございます。
ただ、
茨城に関しましては、後ほど
報告書の中にも書いてございますけれ
ども、単独の
候補として扱うよりは、そこが持っております
安全性あるいは外国、国内外との
交通の
容易性、
近傍の飛行場などを利用するわけでありますが、そういうことも勘案して、独立のものとは扱わずに、むしろ、
栃木・
福島地域と
連携し補完して事を進めていくのがよいのではないかということでございます。
そして、そのように
四つの
候補あるいは
三つの
候補に絞りまして、その次の
段階として、今度は
数字による
選定をいたしました。その結果は
参考資料の二十八ページに出ているかと思います。二十八ページはやや複雑な表でございますが、その一番上の段だけをごらんいただければ十分であろうかと存じます。
結論的に申し上げますと、
栃木・
福島地域並びに
岐阜・
愛知地域というものが非常に高得点、
評価が高うございました。したがって、この
二つの
地域をこの
時点における正式の
選定すべき
候補といたしました。そして、三番目と申しますか、
三つ目の
三重・
畿央につきましては、
先ほども申したことでございますけれ
ども、ほかにはない
特性があるので、捨てがたい
特性があるので、将来いろいろな
条件が改善されることがあれば
候補の
一つとなり得るであろうという
答申をした次第でございます。
各
地域について、それぞれ、いい点、悪い点といったことをまとめたものもございますけれ
ども、そこに一々言及しておりますとやや時間を超過するおそれがございますので、簡単にいたします。
栃木・
福島地域、これは、
東京や仙台のほか、
日本海側とかほかのところとも
連携が可能でございます。特に
東京との
連携にすぐれておりまして、
冒頭に申し上げましたように、
移転というのは短期間に終わるものではない、ある期間の間は
東京と新
都市の両方にそういう
機能が併存する
可能性が強うございますから、したがって、非常に
東京との
交通連絡が便利であるということは有効に働くと
考えております。
自然ということに関しても非常に有利なところでございますが、ただ、那須岳が噴火いたしますと、
那須地域の
那珂川沿いにはある程度の被害が起こるおそれがございますので、この点は十分に
考えて
都市づくりをしなくてはならないと
考えております。
岐阜・
愛知地域、これは
皆様方御存じのとおり、地理的にも大体
全国の
中央部にございまして、
東京、関西あるいは
日本海側とも
連携が可能なところでございます。内外との
交通も非常に便利なところでございますが、ただ
植生回復力が弱うございまして、
自然環境との共生ということにはやや困難があろうかと存じます。ここでやはり、もし海溝型の大
規模地震が起こるといったことがございますとこれは大問題でございますので、この点は十分に
配慮しなくてはならないと
考えております。
三重・
畿央地域、これは
複数の
国土軸が重なるという
意味で、いわば国内の要衝に位置しております。
東京から自立して、今までの
伝統文化を生かし、そして新しいさらなる
文化を
形成していくことが可能であるという利点があろうかと存じますが、ただ、
東京との
交通には大変時間を要することでございますし、大
規模地震のおそれもございます。また
土地取得がどのくらい容易であるかという点では問題があろうかと存じますので、こういうふうにして一応まとめをいたしました。
残っております時間で、関連する
事項について若干の
説明を申し上げたいと思いますが、
審議会におきましては、
冒頭に申し上げましたとおり、
候補地の
選定ということが、これが与えられた任務である、責務であるということはよく承知しておりますけれ
ども、関連する
事項といたしまして、新
都市のあり方といったことについても
議論をいたしました。その一部は
答申の中にあわせて記させていただいております。
ここで申し上げたいことは全部で四
項目でございますが、まず第一に、十六ページの第三章に書かれていることでございますが、「新
都市の在り方」ということを申しております。この第一の点がさらに
四つに分かれておりまして、「新しい
情報ネットワークシステムの
構築」、「
環境への
配慮」、「
国際政治都市としての
機能の確保」そして「風格ある景観の
形成」といったようなことを申しておりますが、特に最初の点、新しい
情報ネットワークシステムの
構築に関しては、今までとは違う、国、
地方、あるいは民間も横断的に結ぶような
情報基盤を設けて、そして
国民とより密着した政策の立案を可能にすることができるのではないか、また
国政改革なり
地方分権の推進にも役立てていただくことができるのではないか、そういう
考えでございます。
先ほど四つの
項目と申しましたけれ
ども、そのうちの二番目といたしまして、
首都機能移転の意義とか効果といったことにも言及いたしております。この
内容は三
項目でございまして、「
国政全般の
改革」、「
東京一極集中の是正」さらに「
災害対応力の強化」ということでございます。
また、
四つのうちの三番目といたしましては、二十ページに、「
国民合意形成の状況」でありますとか、あるいは「
社会経済情勢の諸
事情」といったようなことが書いてございますし、それから四番目としては、二十二ページの第五章に、「
移転先候補地において
配慮すべき
事項」ということで、若干のお願いをいたしております。
このようなことで、やや時間も超過しぎみでございますから終わりにしたいと存じますが、以来、
審議会といたしましては、あるいは
事務当局といたしましては、いろいろな手段を通じてこの
内容並びに
資料を公表いたしまして、それから、より多くの
方々に知っていただくような
努力を続けているつもりでございます。
この
機会に
国民の一人一人がよくこの問題についてお
考えいただきまして、決して夢ではない、これは
実現の
可能性がある、そして恐らくは
日本国の将来にとってもいい
事柄であろうという、いずれにしても、
賛成にしても
反対にしても、よく
国民の一人一人が十分な
情報についてお
考えいただきたい。
それからまた、
候補地となっております
地方公共団体におかれましても、これは決していいことずくめではないんだ、実際にそういうことが起こるとすれば随分大変なこともあるんだという冷静な御
認識なり御
論議をいただきたい。
そして、何よりも、
首都機能移転ということをみずから決定され、そして終始
主導権を握ってこられました
国会におかれまして、私
どもの
答申を踏まえ、どうか大局的な見地から御
論議をいただきまして、適切な
結論が速やかに導かれるよう心からお願いする次第でございます。
また、本当の最後に、私
どもがこの
答申をまとめるに当たりましては、これは
公聴会その他を通じて多くの
国民から
意見をちょうだいしておりますし、それから、最終的には外れたところも含めて、
候補地の
方々からはいろいろな
資料を提供し、お
考えをいただいております。それからまた、
担当事務局には、中堅、若手の
人たちを含めて、非常に
資料の収集あるいは整理その他について
努力をしていただきましたので、私は、
審議会の一員といたしまして、そういう周辺からの御支持にお礼を申し上げて、一応の御
報告を終わらせていただきたい。
ちょっと時間を超過いたしまして失礼いたしました。(拍手)