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児玉委員 さきに触れた
調査研究班は、二千二百八十六名のうち五百七十七例の治療について詳細に検討をしています。その中で四百四十二例、七六・六%が
保存療法を受けている。薬物療法が二百四十八例、四三・〇%。外科療法が六十九例、一一・〇%です。
そこで、私は、今
厚生省からお話があったけれども、この問題で極めて献身的な
努力をなさっている臨床のお
医者さんたちから、今さまざまな
努力をする場合に最も依拠すべき学術論文として
紹介されたのが、
日本医事新報昭和六十三年一月十六日付、徳島大学心臓血管外科教授加藤逸夫先生の論文です。多分ごらんになったと
思います。
その中で、先ほどの圧倒的な部分が今治療を受けている
保存療法について、加藤先生はこうおっしゃっている。一として、むくみの出た部分の挙上、高く上げるということですね。二として、弾性ストッキング、弾性スリーブの着用。三として、リンパ誘導マッサージ。
そこで
大臣、先ほどお渡ししたこの写真、皆さんにもお見せすればいいんですけれども、余りにも生々しいものですから大きな写真にはしませんでしたが、加藤教授はこういうふうに言っていらっしゃる。リンパ浮腫の治療に当たっては早期から徹底した
保存的療法を開始し、根気よく継続することが重症化を防ぎ、寛解もしくは治癒を得るために重要である、こう述べていらっしゃいます。
そして
大臣、この写真で、これだけむくんでいる。私もこの治療に当たった医師から実際にスライドで拝見しましたが、一カ月この弾性ストッキングを着用することで下の写真になるんですね。
弾性ストッキングというのは、これが片足の方のストッキングであって、これは九千二百円です。そして、腕の場合にはスリーブになるので、スリーブについていえば——これとこれはぜひ見てください。どうぞお持ちいただいて結構です。
加藤教授は、この弾性ストッキングと弾性スリーブは浮腫の進展を抑えるのに極めて有効である、こういうふうに論文の中でおっしゃり、かつ、リンパ誘導マッサージの有効性もこの論文の中で強調されています。
そこで私は言いたいんだけれども、先日、リンパ浮腫の
患者さんを会員とするリンパの会の会員の皆さん方とお会いしました。乳がんや子宮がんの手術でリンパ節を郭清し、腕や足にリンパ浮腫が生じた人、中には放射線治療によって生じた方もいらした。その中で、一人を除けば、手術前に、この手術でリンパ浮腫が発症する危険性があるということを説明された方はいらっしゃらないんですね。六名の方にお会いしたんだけれども、五名の方が説明を受けていらっしゃらない、そういう状態である。
先ほどの徳島大学の加藤教授は、論文の中で、御自身が扱われた三百一例について、浮腫の発現は術後六カ月以内が乳がん四一%、子宮がん二九%、こう言っていらっしゃる。
そういう研究者の研究に触発されつつ、今、例えば癌研
附属病院では、三年前から婦人科がん術後合併症としての下肢のリンパ浮腫について非常に熱心な
調査、指導を行っていらっしゃる。ここの例でいえば、子宮頸がん、子宮体がんの手術でリンパの郭清をした三百十八例中、リンパ浮腫の発症は五十二例、さっきの
厚生省の示されたパーセンテージより高いです。一六・四%です。
そして、癌研ではドクターと
看護婦さんが、
患者さんたちに対して、このリンパ浮腫が生まれる可能性がある問題とどのような注意をすればいいかということについて懇切な指導をされている。その結果、
患者さんの九七%が
病院の指導内容がよく理解でき、指導を受けて満足ですと書いていらっしゃるのですね。
そしてもう
一つ、先ほどの、六人お会いした人の中で一人だけ承知していたというのは、北海道勤労者
医療協会の
病院のケースです。そこではこういうパンフレットを配っている、「乳房の手術を受けた方へ」。そして、手術直後においてリンパ節を郭清した方の腕を余り激しく動かさないようにということを懇切に述べ、退院時に際しては、洗濯、リハビリ、土いじりのときはゴム手袋をはめましょう、ショルダーバッグはなるべく手術しない方の肩にかけましょう、もし腕のはれが起きたら早目に受診しましょう、こういうふうに指示されている。
大臣に申し上げたいんだけれども、さっきのような非常な困難、運動障害、生活障害に対して
保存療法の持っている医学的な位置づけというのは既に確定しています。医学教育の中でもしっかりした地位を占めている。そういう中で、多くの
医療機関が、もちろんそれぞれの専門家性に基づいてではあるけれども、癌研の
附属病院で行われているような
患者に対する懇切な指示、説明を行うことは今後有効だと考えるのですが、
大臣、いかがでしょうか。